(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記下塗り組成物中の、ラジカル重合性モノマーの総含有量に対する、多官能エチレン性不飽和化合物の含有量が70質量%以上であり、かつ、前記インク組成物中の、ラジカル重合性モノマーの総含有量に対する、多官能エチレン性不飽和化合物の含有量が70質量%以上である、請求項1に記載のインクジェット記録方法。
前記記録媒体が、膜厚が10〜90μmであり、かつ、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタラート及びナイロンよりなる群から選ばれた、少なくとも1種の樹脂からなる画像形成面を有する樹脂フィルムである、請求項1〜5のいずれか1項に記載のインクジェット記録方法。
工程cの後に、工程dとして、画像上に接着層及びラミネートフィルムを形成するラミネート加工工程を更に含む、請求項1〜6のいずれか1項に記載のインクジェット記録方法。
工程aと工程bとの間に、工程a’として、下塗り層に活性光線を照射して半硬化する半硬化工程を含有する、請求項1〜請求項7のいずれか1項に記載のインクジェット記録方法。
【発明を実施するための形態】
【0009】
(インクジェット記録方法)
本発明のインクジェット記録方法は、工程aとして、記録媒体に下塗り組成物を付与して下塗り層を設ける付与工程と、工程bとして、下塗り層上にインク組成物を吐出する画像形成工程と、工程cとして、下塗り組成物及びインク組成物に活性光線を照射して、全体を硬化させる硬化工程とをこの順で含み、下塗り組成物は、イソシアネート基を有する化合物と、ラジカル重合性モノマーと、ラジカル重合開始剤とを含有し、インク組成物は、ラジカル重合性モノマーと、ラジカル重合開始剤と、着色剤とを含有することを特徴とする。また、本発明のインクジェット記録方法は、パッケージ印刷用に好適であり、食品包装用のパッケージ印刷に特に好適である。
【0010】
本発明者は、特に、軟包装用の食品包装パッケージ印刷において、従来のインクジェット記録方法により画像を形成すると、画像の密着性やブロッキング抑止が不十分であるとの問題があることを見出した。本発明者は鋭意検討することにより、イソシアネート基を有する化合物と、ラジカル重合性モノマーと、ラジカル重合開始剤とを含有する下塗り組成物を用いて下塗り層を形成し、その上にインク組成物を吐出して画像を形成することにより、密着性が良く、ブロッキング抑止に優れた画像が得られることを見いだした。
詳細なメカニズムは不明であるが、下塗り層中のイソシアネート化合物が、空気中の水分と反応することにより、凝集力の高いウレア結合を形成しているため、形成された画像の密着性が良く、ブロッキング抑止に優れると推定している。
【0011】
なお、明細書中、数値範囲を表す「A〜B」の記載は「A以上B以下」と同義である。また、「工程aとして、記録媒体に下塗り組成物を付与して下塗り層を設ける付与工程」等を単に「工程a」等ともいう。また、「質量%」及び「質量部」は、それぞれ「重量%」及び「重量部」と同義である。
更に、本発明においては、「アクリレート」、「メタクリレート」の双方あるいはいずれかを指す場合「(メタ)アクリレート」と、「アクリル」、「メタクリル」の双方あるいはいずれかを指す場合「(メタ)アクリル」と、それぞれ記載することがある。
以下の説明において、好ましい態様の組合せは、より好ましい態様である。
以下、本発明を詳細に説明する。
【0012】
工程a:記録媒体に下塗り組成物を付与して下塗り層を設ける付与工程
本発明のインクジェット記録方法は、工程aとして、記録媒体に下塗り組成物を付与して下塗り層を設ける付与工程を含む。
上記下塗り組成物は、イソシアネート基を有する化合物と、ラジカル重合性モノマーと、ラジカル重合開始剤を含有する。
本発明における下塗り組成物の好ましい態様については、後述する。
【0013】
本発明のインクジェット記録方法に用いられる記録媒体(基材、支持体、記録材料等)としては、特に制限なく、公知の記録媒体を使用することができる。これらの中でも、軟包装用の食品包装パッケージ印刷用としては透明な記録媒体であることが好ましい。
なお、本発明において「透明」とは、可視光線透過率が80%以上を意味するものとし、可視光線透過率が90%以上であることが好ましい。また、透明な記録媒体は、透明であれば、着色していてもよいが、無色の記録媒体であることが好ましい。
記録媒体として具体的には、例えば、ガラス、石英、プラスチックフィルム(例えば、二酢酸セルロース、三酢酸セルロース、プロピオン酸セルロース、酪酸セルロース、酢酸酪酸セルロース、硝酸セルロース、アクリル樹脂、塩素化ポリオレフィン樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリエチレンテレフタラート(PET)、ポリエチレンナフタレート、ナイロン、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリシクロオレフィン樹脂、ポリイミド樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリビニルアセタール等)等が挙げられる。
また、透明な記録媒体としては、これら樹脂が2種以上混合したものであってもよいし、また、これら樹脂が2層以上積層したものであってもよい。
【0014】
中でも、記録媒体としては、ポリオレフィン樹脂、ポリエステル樹脂及びポリアミド樹脂よりなる群から選ばれた少なくとも1種の樹脂からなる画像形成面を有する記録媒体であることが好ましく、ポリエチレンテレフタラート、ポリエチレン、ポリプロピレン及びナイロンよりなる群から選ばれた少なくとも1種の樹脂からなる画像形成面を有する記録媒体であることがより好ましく、ポリエチレンテレフタラート、ポリエチレン、ポリプロピレン及びナイロンよりなる群から選ばれた少なくとも1種の樹脂からなる記録媒体であることが更に好ましい。
ポリエチレンとしては、LDPE(低密度ポリエチレン)、MDPE(中密度ポリエチレン)、HDPE(高密度ポリエチレン)、ポリプロピレンとしては、CPP(無延伸ポリプロピレン)、OPP(二軸延伸ポリプロピレン)、KOP(ポリ塩化ビニリデンコートOPP)、AOP(PVAコートOPP)、ポリエチレンテレフタラートとしては、二軸延伸ポリエステル、ナイロンとしては、ON(延伸ナイロン)、KON(延伸ナイロン)、CN(無延伸ナイロン)が好ましく用いられる。
その他、EVA(エチレン・酢酸ビニル共重合フィルム)、PVA(ビニロン),EVOH(ポリビニルアルコール)、PVC(ポリ塩化ビニル)、PVDC(ポリ塩化ビニリデン、サラン)、セロハン(PT、MST、Kセロ)、ZX(ゼクロン(ポリアクリロニトリル、PAN))、PS(ポリスチレン、スチロール)との組み合わせを用いることも好ましい。
パッケージの用途により、最適な素材が選択され、また、多層構造のフィルムとすることで、各素材の特徴が組み合わされたフィルムを作製することができる。
また、パッケージの強度向上、酸素遮断等の目的で、AL(アルミニウム箔)、VMフィルム(アルミ蒸着フィルム、透明蒸着フィルム)等を多層構造に組み込むことも可能である。
また、近年、樹脂を、平行した2つ以上のスリットから共に押出し、成膜すると同時にラミネートまで行う、共押出しフィルムも好ましく使用される。フィルム状にできないような数μmという薄いものでも最大5〜7層まで積層可能なので、いろいろな性能・用途のフィルムがつくられている。
【0015】
上記記録媒体の厚さとしては、特に制限はないが、1〜500μmであることが好ましく、2〜200μmであることがより好ましく、5〜100μmであることが更に好ましく、10〜90μmであることが特に好ましい。
【0016】
本発明のインクジェット記録方法において、記録媒体上に下塗り組成物を付与する手段としては、塗布装置又はインクジェットノズル等を用いることができ、塗布装置を用いることが好ましい。
上記塗布装置としては、特に制限はなく、公知の塗布装置の中から目的等に応じて適宜選択することができ、例えば、エアドクターコーター、ブレードコーター、ロットコーター、ナイフコーター、スクイズコーター、含浸コーター、リバースロールコーター、トランスファーロールコーター、グラビアコーター、キスロールコーター、キャストコーター、スプレイコーター、カーテンコーター及び押出コーター等が挙げられる。詳しくは、原崎勇次著「コーティング工学」を参照できる。
中でも、装置コストの点で、下塗り組成物の記録媒体上への付与は、比較的安価なバーコーター又はスピンコーターを用いた塗布が好ましい。
【0017】
下塗り組成物は、工程bにおいて記録媒体上にインク液滴の吐出によって形成される画像と同一領域又は上記画像より広い領域に付与することが好ましく、画像が形成可能な領域の全面を覆うように付与されることが好ましい。
下塗り組成物の付与量(単位面積当たりの質量)は、0.05〜5g/m
2であることが好ましく、0.06〜3g/m
2であることがより好ましい。下塗り組成物の付与量が上記範囲内であると、十分な密着性改良効果が得られると共に、柔軟性に優れた印刷物が得られるので好ましい。
また、下塗り組成物の付与量(単位面積あたりの質量比)としては、単位面積あたりのインク組成物の最大付与量(1色当たり)を1とした場合に0.05〜5の範囲内であることが好ましく、0.07〜4の範囲内であることがより好ましく、0.1〜3の範囲内であることが特に好ましい。
【0018】
工程a’:付与された下塗り組成物に活性光線を照射して半硬化する半硬化工程
本発明のインクジェット記録方法は、工程aと工程bとの間に、工程a’として、下塗り層に活性光線を照射して半硬化する半硬化工程を含有することが好ましい。
半硬化工程を有することにより、イソシアネート化合物の含有量が低い下塗り組成物を用いた場合であっても、高い密着性を有する画像が形成可能となる。
本発明において、「半硬化」とは、部分的な硬化(partially cured; partial curing)を意味し、記録媒体上に付与された下塗り組成物(下塗り層)及び/又は後述するインク組成物(以下、単に「インク」ともいう。)が部分的に硬化しているが完全に硬化していない状態をいう。下塗り組成物又は下塗り組成物上に吐出されたインク組成物が半硬化している場合、硬化の程度は不均一であってもよい。例えば、下塗り組成物及び/又はインク組成物は深さ方向に硬化が進んでいることが好ましい。
【0019】
下塗り層を半硬化させる方法としては、下塗り層に活性光線を照射する、すなわち、露光により硬化反応を起こさせる方法が例示できる。
上記活性光線としては、紫外線の他、例えば可視光線など及びα線、γ線、X線、電子線などが使用可能である。これらのうち、活性光線としては、コスト及び安全性の点で、紫外線、可視光線が好ましく、紫外線が特に好ましい。
下塗り層の半硬化に必要なエネルギー量は、組成、特にラジカル重合開始剤の種類や含有量などによって異なるが、1〜500mJ/cm
2程度であることが好ましい。
【0020】
露光光源としては、水銀ランプやガス・固体レーザー等が主に利用されており、紫外線光硬化型インクジェット記録用インク組成物の硬化に使用される光源としては、水銀ランプ、メタルハライドランプが広く知られている。しかしながら、現在環境保護の観点から水銀フリー化が強く望まれており、GaN系半導体紫外発光デバイスへの置き換えは産業的、環境的にも非常に有用である。更に、LED(UV−LED)、LD(UV−LD)は小型、高寿命、高効率、低コストであり、光硬化型インクジェット用光源として期待されている。
また、発光ダイオード(LED)及びレーザーダイオード(LD)を活性線源として用いることが可能である。特に、紫外線源を要する場合、紫外LED及び紫外LDを使用することができる。例えば、日亜化学(株)は、主放出スペクトルが365nmと420nmとの間の波長を有する紫色LEDを上市している。更に一層短い波長が必要とされる場合、米国特許第6,084,250号明細書は、300nmと370nmとの間に中心付けされた活性線を放出し得るLEDを開示している。また、他の紫外LEDも、入手可能であり、異なる紫外線帯域の放射を照射することができる。本発明で特に好ましい活性線源はUV−LEDであり、特に好ましくは340〜400nmにピーク波長を有するUV−LEDである。
なお、LEDの記録媒体上での最高照度は、10〜2,000mW/cm
2であることが好ましく、20〜1,000mW/cm
2であることがより好ましく、50〜800mW/cm
2であることが特に好ましい。
下塗り層を半硬化するための好適な露光手段としては、メタルハライドランプ、水銀灯、LED光源が挙げられる。中でも、LED光源が好ましい。本発明のインクジェット記録方法は、軟包装パッケージに好適であり、軟包装パッケージでは、上述したように、比較的膜厚の薄い記録媒体を使用することが好ましい。この場合、UV−LED光源を使用すると、熱による記録媒体の変形、収縮が抑制されるので好ましい。
【0021】
本発明において、ラジカル重合性の下塗り組成物を、ラジカル重合抑制作用を有する酸素の共存下で使用して、部分的に光硬化すると、下塗り層の硬化は外部よりも内部にて、より進行する。
特に、上記下塗り層の表面においてはその内部と比べて空気中の酸素の影響で重合反応が阻害されやすい。従って、活性光線の付与条件を制御することにより、下塗り層を半硬化させることができる。
【0022】
活性光線の付与により、ラジカル重合開始剤の分解による活性種の発生が促進されると共に、活性種の増加や温度上昇により、活性種に起因する重合性又は架橋性材料の重合若しくは架橋による硬化反応が促進される。
また、増粘(粘度上昇)も、活性光線の照射によって好適に行うことができる。
【0023】
上記半硬化工程において、例えばエチレン性不飽和化合物に基づく硬化反応の場合には、未重合率をエチレン性不飽和基の反応率により定量的に測定することができる。
上記下塗り液の半硬化状態を活性エネルギー線の照射によって重合を開始するエチレン性不飽和化合物の重合反応によって実現する場合は、印刷物の擦過性を向上させる観点から、未重合率(A(重合後)/A(重合前))は、0.2以上0.9以下であることが好ましく、0.3以上0.9以下であることがより好ましく、0.5以上0.9以下であることが特に好ましい。
ここで、A(重合後)は、重合反応後のエチレン性不飽和基による赤外吸収ピークの吸光度であり、A(重合前)は、重合反応前のエチレン性不飽和基による赤外吸収ピークの吸光度である。例えば、下塗り液の含有するエチレン性不飽和化合物がアクリレートモノマー又はメタクリレートモノマーである場合は、810cm
-1付近に重合性基(アクリレート基、メタクリレート基)に基づく吸収ピークが観測でき、上記ピークの吸光度で、上記未重合率を定義することが好ましい。
また、赤外吸収スペクトルを測定する手段としては、市販の赤外分光光度計を用いることができ、透過型及び反射型のいずれでもよく、サンプルの形態で適宜選択することが好ましい。例えば、BIO−RAD社製赤外分光光度計FTS−6000を用いて測定することができる。
【0024】
工程b:下塗り層上にインク組成物を吐出して画像を形成する画像形成工程
本発明のインクジェット記録方法は、工程bとして、下塗り層上にインク組成物を吐出して画像を形成する画像形成工程を含む。
下塗り層上にインク組成物が吐出されることにより、密着性のよい画像が得られる。
【0025】
インク組成物をインクジェット法により吐出する手段としては、インクジェットヘッドを用いることが好ましい。インクジェットヘッドとしては、例えば、静電誘引力を利用してインクを吐出させる電荷制御方式、ピエゾ素子の振動圧力を利用するドロップオンデマンド方式(圧力パルス方式)、電気信号を音響ビームに変えインクに照射して放射圧を利用してインクを吐出させる音響インクジェット方式、インクを加熱して気泡を形成し、生じた圧力を利用するサーマルインクジェット(バブルジェット(登録商標))方式、等のヘッドが好適である。
【0026】
上記画像形成工程においては、下塗り層上にインク組成物をインクジェット法により吐出する。
本発明のインクジェット記録方法に用いることができるインクジェット記録装置としては、特に制限はなく、目的とする解像度を達成し得る公知のインクジェット記録装置を任意に選択して使用することができる。すなわち、市販品を含む公知のインクジェット記録装置であれば、いずれも、本発明のインクジェット記録方法の画像形成工程における記録媒体へのインク組成物の吐出を実施することができる。
【0027】
本発明で用いることができるインクジェット記録装置としては、例えば、インク供給系、温度センサー、活性エネルギー線源を含む装置が挙げられる。
インク供給系は、例えば、インク組成物を含む元タンク、供給配管、インクジェットヘッド直前のインク供給タンク、フィルター、ピエゾ型のインクジェットヘッドからなる。ピエゾ型のインクジェットヘッドは、好ましくは1〜100pl、より好ましくは8〜30plのマルチサイズドットを、好ましくは320×320〜4,000×4,000dpi、より好ましくは400×400〜1,600×1,600dpi、更に好ましくは1,200×1,200dpiの解像度で吐出できるよう駆動することができる。なお、本発明でいうdpiとは、2.54cm当たりのドット数を表す。
【0028】
インク組成物は、吐出されるインク組成物を一定温度にすることが好ましいことから、インクジェット記録装置には、インク組成物温度の安定化手段を備えることが好ましい。一定温度にする部位はインクタンク(中間タンクがある場合は中間タンク)からノズル射出面までの配管系、部材の全てが対象となる。すなわち、インク供給タンクからインクジェットヘッド部分までは、断熱及び加温を行うことができる。
温度コントロールの方法としては、特に制約はないが、例えば、温度センサーを各配管部位に複数設け、インク流量、環境温度に応じた加熱制御をすることが好ましい。温度センサーは、インク供給タンク及びインクジェットヘッドのノズル付近に設けることができる。また、加熱するヘッドユニットは、装置本体を外気からの温度の影響を受けないよう、熱的に遮断若しくは断熱されていることが好ましい。加熱に要するプリンター立上げ時間を短縮するため、あるいは、熱エネルギーのロスを低減するために、他部位との断熱を行うと共に、加熱ユニット全体の熱容量を小さくすることが好ましい。
【0029】
吐出時におけるインク組成物の温度はできるだけ一定に保つことが好ましい。よって、本発明において、インク組成物の温度の制御幅は、好ましくは設定温度の±5℃、より好ましくは設定温度の±2℃、更に好ましくは設定温度±1℃とすることが適当である。
【0030】
下塗り組成物の付与後、インク組成物の液滴が最初に打滴されるまでの打滴間隔としては、5μ秒以上10秒以下の範囲内であることが好ましい。インク液滴の打滴間隔は、より好ましくは10μ秒以上5秒以下であり、特に好ましくは20μ秒以上5秒以下である。
【0031】
本発明のインクジェット記録方法は、上記下塗り層上にインク組成物を吐出して画像形成を行った後、吐出された上記インク組成物を半硬化する工程を含んでいてもよいが、直後に上記硬化工程を行う場合は、含まないほうが好ましい。
【0032】
また、本発明のインクジェット記録方法においては、インク組成物を1種単独で使用しても、2種以上を使用してもよい。
例えば、カラー画像を形成する場合は、イエロー、シアン、マゼンタ及びブラックの各色インク組成物を少なくとも使用することが好ましく、ホワイト、イエロー、シアン、マゼンタ及びブラックの各色インク組成物を使用することがより好ましい。
また、ライトマゼンタやライトシアン等の淡色インク組成物、オレンジ、グリーン及びバイオレット等の特色インク組成物、クリアインク組成物、メタリックインク組成物等を使用してもよい。
【0033】
本発明のインクジェット記録方法において、2種以上のインク組成物を吐出する場合、1種のインク組成物を吐出した後、次の他の1種のインク組成物を吐出する前に、吐出した上記インク組成物を半硬化する工程を含むことが好ましい。すなわち、本発明のインクジェット記録方法は、使用する各インク組成物毎に、上記下塗り層上にインク組成物を吐出する工程、及び、吐出された上記インク組成物を半硬化する工程を含むことが好ましい。上記態様であると、本発明の効果をより発揮することができる。
なお、2種以上のインク組成物を付与する場合の半硬化工程は、上記工程a’において述べた半硬化工程と同様であり、使用される露光装置及び露光条件、並びに、好ましい態様も同様である。
また、直後に上記硬化工程を行う場合、本発明のインクジェット記録方法は、最後に吐出されたインク組成物を半硬化する工程を含んでいてもよいし、含んでいなくともよいが、コストや簡便性の観点から、含んでいないほうが好ましい。
また、2種以上のインク組成物を吐出する場合、いずれのインク組成物も下塗り層上、吐出されたインク組成物上、又は、半硬化されたインク組成物上に吐出することが好ましい。すなわち、いずれのインク組成物も、直接接するか、又は、他のインク組成物層を介して、下塗り層上に吐出されることが好ましい。またその際、下塗り層は半硬化されていることが、密着性の観点から好ましい。
【0034】
本発明のインクジェット記録方法において、吐出する各インク組成物の順番は、特に限定されるわけではないが、明度の低いインク組成物から記録媒体に付与することが好ましく、イエロー、シアン、マゼンタ、ブラックを使用する場合には、ブラック→マゼンタ→シアン→イエローの順で記録媒体上に付与することが好ましい。また、これにホワイトを加えて使用する場合にはブラック→マゼンタ→シアン→イエロー→ホワイトの順で記録媒体上に付与することが好ましい。更に、本発明はこれに限定されず、イエロー、ライトシアン、ライトマゼンタ、シアン、マゼンタ、ブラック、ホワイトのインク組成物との計7色が少なくとも含まれる本発明のインクセットを好ましく使用することもでき、その場合には、ブラック→マゼンタ→シアン→イエロー→ライトマゼンタ→ライトシアン→ホワイトの順で記録媒体上に付与することが好ましい。
【0035】
工程c:下塗り層及びインク組成物に活性光線を照射して、硬化させる硬化工程
本発明のインクジェット記録方法は、下塗り層及びインク組成物に活性光線を照射して、硬化させる硬化工程を含む。この工程により、下塗り層及びインク組成物の全体を完全硬化させる。本発明における「完全硬化」とは、記録媒体上の下塗り液及びインク組成物の内部及び表面が完全に硬化した状態をいう。具体的には、普通紙(例えば、富士ゼロックス(株)製コピー用紙C2、商品コードV436)を均一な力(500〜1,000mN/cm
2の範囲内で一定の値)押し当てて、普通紙に液表面が転写したかどうかによって判断することができる。すなわち、全く転写しない場合を完全に硬化した状態という。
【0036】
硬化工程は、活性光線の照射により行い、その好ましい態様は、上記工程a’における露光条件及び露光装置が使用され、好ましい態様も同様である。すなわち、硬化工程は、貧酸素雰囲気において行うことが好ましい。
【0037】
工程d:インク組成物層上に第二の接着層及びラミネートフィルムを形成するラミネート加工工程
本発明のインクジェット記録方法は、工程cの後に、工程dとして、インク組成物層上に接着層及びラミネートフィルムを形成するラミネート加工工程を更に含むことも好ましい。
ラミネート加工により、印刷物からのインク成分の溶出、ブロッキング、臭気を抑制でき、特に食品パッケージ用として、好ましく使用できる。
接着層としては、特に制限は無く、公知の接着剤を、公知の方法により塗布して形成することが可能である。
ラミネートフィルムとしては、樹脂フィルムが用いられ、ポリエチレンテレフタラートフィルム、ポリプロピレンフィルム、ナイロンフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、ポリエチレンフィルム、トリアセチルセルロースフィルムが例示できる。また、それらのフィルムは2軸延伸されていてもよい。
本工程においては、接着層をインク組成物上に形成した後にラミネートフィルムを貼り合わせても、先にラミネートフィルムに接着層を付与した後にインク組成物上に貼り合わせてもよい。
ラミネート加工の方法としては、特に制限なく公知の方法が使用できるが、ドライラミネ−ションが例示できる。
基材に樹脂フィルムを用いた場合、選択するラミネート加工の方法にもよるが、基材のラミネート加工が行われる面に使用されている樹脂フィルムと接着性が高い樹脂フィルムを使用することが好ましい。
【0038】
(印刷物)
本発明の印刷物は、本発明のインクジェット記録方法により得られた印刷物であることが好ましい。
また、本発明の印刷物は、本発明のインクジェット記録方法により得られた印刷物の上に、更に接着層、及び、ラミネートフィルムをこの順で有することが好ましい。
上記接着層及びラミネートフィルムは、上記ラミネート工程において説明した接着層、及び、ラミネートフィルムと同義であり、好ましい態様も同様である。
【0039】
(インクジェット記録装置)
本発明で特に好適に使用されるインクジェット記録装置について、更に詳述する。上記の本発明のインクジェット記録方法は、以下に説明する本発明のインクジェット記録装置により好適に実施される。
本発明のインクジェット記録装置は、記録媒体を搬送する搬送手段と、上記記録媒体上に下塗り組成物を付与する付与手段と、上記下塗り組成物上にインク組成物をインクジェット吐出する吐出手段と、上記下塗り液及びインク組成物を全体硬化させる完全硬化手段と、を有することが好ましく、付与された下塗り組成物を半硬化する半硬化手段を更に有してもよい。
また、本発明のインクジェット記録装置は、所謂シングルパス方式のインクジェット記録装置であることが好ましい。
図1は、本発明で好ましく使用されるインクジェット記録装置の一例を示す模式図である。なお、下記装置は、下塗り組成物半硬化用露光光源17を有するが、このような半硬化光源を有しない装置であっても、本発明には好適に使用することができる。
記録媒体12の搬送手段である、送り出しローラー24及び巻き取りローラー26により張架された記録媒体12は、矢印A方向に搬送され、下塗り組成物塗布ローラー14により下塗り組成物が付与される。続いて、下塗り組成物半硬化用露光光源17により下塗り組成物が半硬化される。続いて、各色のインク組成物を吐出するインクジェットヘッド18K、18C、18M、18Y、18Wにて、各色のインク組成物(K:ブラック、Y:イエロー、M:マゼンタ、C:シアン、W:ホワイト)が吐出され、インクジェットヘッド18K、18C、18M、18Yのすぐ後に設置された半硬化用露光光源20K、20C、20M、20Yにより、吐出されたブラック、イエロー、マゼンタ及びシアンインク組成物が半硬化される。最後に、窒素パージ露光光源ユニット22により、貧酸素雰囲気下において記録媒体が露光され、半硬化された上記下塗り組成物及びインク組成物の全体が硬化される。
窒素パージ露光光源ユニット22は、例えば、LED光源が不活性ガスブランケットに囲まれており、不活性ガス配管を介して不活性ガス発生装置に接続しており、不活性ガス発生装置を稼働させると、ブランケット内の空気は不活性ガスに置換される態様が好ましく挙げられる。不活性ガスは、既述の通り、窒素などを利用することができる。
図1では、搬送制度を向上させるため、ニップロール28が設けられている。下塗り組成物を完全硬化させることにより、本発明のインクジェット記録方法では、ニップロールの使用が可能となり、より正確な搬送性が実現され、見当のずれ(着弾位置のずれ)が抑制される。なお、ニップロール28は必須ではなく、ニップロールを有してない画像形成装置を使用してもよい。
【0040】
(下塗り組成物)
本発明のインクジェット記録方法に使用される下塗り組成物は、イソシアネート基を有する化合物と、ラジカル重合性モノマーと、ラジカル重合開始剤とを含有する。
本発明に使用される下塗り組成物は、活性光線により硬化可能な油性の液体組成物である。
【0041】
<イソシアネート基を有する化合物>
本発明の下塗り組成物に用いられるイソシアネート基を有する化合物としては、特に限定されず公知のイソシアネート化合物を使用することができる。脂肪族、又は芳香族イソシアネートのどちらであってもよいが、安全性や安定性の観点から脂肪族イソシアネートが好ましい。
また、本発明に使用されるイソシアネート化合物としては、上市されている製品を使用することもできる。
例えば、タケネートD103H、D204、D160N、D170N、D165N、D178NL、D110N等のタケネートシリーズ(三井化学(株)製)、コロネートHX、HXR、HXL、HXLV、HK、HK−T、HL、2096(日本ポリウレタン工業(株)製)が好ましく挙げられる
また、TM−550とCAT−RT−37−2K(東洋モートン(株)製)や、XC233−2とXA126−1等のXシリーズの無溶剤接着剤(大日精化工業(株)製)といった、イソシアネート化合物と後述するポリオール化合物との2液混合型接着剤の市販品を使用することもできる。
イソシアネート化合物の添加量は、下塗り組成物の全質量に対し、2〜90質量%であることが好ましく、5〜80質量%であることがより好ましく、10〜75質量%が更に好ましい。
【0042】
<ラジカル重合性モノマー>
本発明の下塗り組成物に用いられるラジカル重合性モノマーとしては、エチレン性不飽和化合物が好ましく、公知のエチレン性化合物を用いることができ、(メタ)アクリレート化合物、ビニルエーテル化合物、アリル化合物、N−ビニル化合物、不飽和カルボン酸類等が例示できる。例えば、特開2009−221414号公報に記載のラジカル重合性モノマー、特開2009−209289号公報に記載の重合性化合物、特開2009−191183号公報に記載のエチレン性不飽和化合物が挙げられる。
エチレン性不飽和化合物としては、(メタ)アクリレート化合物であることが好ましく、アクリレート化合物であることがより好ましい。
下塗り組成物は、多官能エチレン性不飽和化合物を、ラジカル重合性モノマーの総含有量に対して70質量%以上含有することが好ましい。上記の範囲であれば、臭気の発生を抑制することができる。
また、組成物が多官能エチレン性不飽和化合物を含有することが、硬化性及び柔軟性の観点から好ましい。
【0043】
本発明において、下塗り組成物は、多官能エチレン性不飽和化合物として、多官能(メタ)アクリレート化合物を含有することが好ましく、2官能(メタ)アクリレート化合物を含有することがより好ましく、2官能アクリレート化合物を含有することが更に好ましく、低粘度であり、また、反応性に優れるのでジアクリレートモノマーを含有することが特に好ましい。
なお、本発明において、モノマーとは、室温(25℃)における粘度が0.1Pa・s未満であるラジカル重合性化合物を意味する。モノマーは分子量(分子量分布を有する場合には、重量平均分子量)が1,000未満であることが好ましく、オリゴマーとは、一般に有限個(一般的には5〜100個)のモノマーが結合した重合体であり、重量平均分子量が1,000以上であることが好ましい。
【0044】
多官能エチレン性不飽和化合物としては、炭素数6〜12の脂肪族炭化水素ジオールのジ(メタ)アクリル酸エステル(2官能(メタ)アクリレート化合物)が好ましく例示される。炭化水素ジオールは、直鎖炭化水素ジオール、分岐炭化水素ジオール及び環状炭化水素ジオールのいずれでもよく、直鎖炭化水素ジオール及び分岐炭化水素ジオールが好ましく例示される。
炭素数6〜12の脂肪族炭化水素ジオールのジ(メタ)アクリル酸エステルは、粘度が低く、また、それ自体の臭気が比較的低いため好ましい。
炭素数6〜12の脂肪族炭化水素ジオールのジ(メタ)アクリル酸エステルとしては、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,7−ヘプタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,8−オクタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、1,10−デカンジオールジ(メタ)アクリレート、1,12−ドデカンジオールジ(メタ)アクリレート、3−メチル−1,5−ペンタンジオールジ(メタ)アクリレート、2−n−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオールジ(メタ)アクリレート、シクロヘキサンジメタノールジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレートが好ましく例示される。
これらの中でも、デカンジオールジアクリレート、ドデカンジオールジアクリレート、3−メチル−1,5−ペンタンジオールジメタアクリレートがより好ましく、3−メチル−1,5−ペンタンジオールジアクリレートが更に好ましい。
また、本発明において、(メタ)アクリレートモノマーとは、分子内に(メタ)アクリロイルオキシ基を1つ以上含有し、かつ、室温(25℃)における粘度が0.1Pa・s未満の化合物を意味する。粘度が上記範囲内であると、印刷物のマイグレーション及び臭気の抑制と、反応性とを両立できる。
【0045】
その他の2官能(メタ)アクリレート化合物としては、具体的には、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド(EO)変性ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレンオキサイド(PO)変性ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、EO変性ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、PO変性ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレートが好ましく挙げられる。
【0046】
また、3官能以上の(メタ)アクリレート化合物としては、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタンテトラ(メタ)アクリレート、オリゴエステル(メタ)アクリレートが例示できる。
【0047】
〔単官能エチレン性不飽和化合物〕
下塗り組成物は、ラジカル重合性モノマーとして、単官能エチレン性不飽和化合物を含有してもよい。単官能エチレン性不飽和化合物としては、単官能(メタ)アクリレート化合物、単官能(メタ)アクリルアミド化合物、単官能芳香族ビニル化合物、単官能ビニルエーテル化合物(トリエチレングリコールジビニルエーテルなど)、単官能N−ビニル化合物(N−ビニルカプロラクタムなど)、などが挙げられる。
【0048】
単官能(メタ)アクリレート化合物としては、例えば、ヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、tert−オクチル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、4−n−ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、ボルニル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシルジグリコール(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、2−クロロエチル(メタ)アクリレート、4−ブロモブチル(メタ)アクリレート、シアノエチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、ブトキシメチル(メタ)アクリレート、3−メトキシブチル(メタ)アクリレート、2−(2−メトキシエトキシ)エチル(メタ)アクリレート、2−(2−ブトキシエトキシ)エチル(メタ)アクリレート、2,2,2−テトラフルオロエチル(メタ)アクリレート、1H,1H,2H,2H−パーフルオロデシル(メタ)アクリレート、4−ブチルフェニル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、2,4,5−テトラメチルフェニル(メタ)アクリレート、4−クロロフェニル(メタ)アクリレート、フェノキシメチル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、グリシジロキシブチル(メタ)アクリレート、グリシジロキシエチル(メタ)アクリレート、グリシジロキシプロピル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、
【0049】
4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、トリメトキシシリルプロピル(メタ)アクリレート、トリメチルシリルプロピル(メタ)アクリレート、ポリエチレンオキサイドモノメチルエーテル(メタ)アクリレート、オリゴエチレンオキサイドモノメチルエーテル(メタ)アクリレート、ポリエチレンオキサイド(メタ)アクリレート、オリゴエチレンオキサイド(メタ)アクリレート、オリゴエチレンオキサイドモノアルキルエーテル(メタ)アクリレート、ポリエチレンオキサイドモノアルキルエーテル(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコール(メタ)アクリレート、ポリプロピレンオキサイドモノアルキルエーテル(メタ)アクリレート、オリゴプロピレンオキサイドモノアルキルエーテル(メタ)アクリレート、2−メタクリロイロキシチルコハク酸、2−メタクリロイロキシヘキサヒドロフタル酸、2−メタクリロイロキシエチル−2−ヒドロキシプロピルフタレート、ブトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、パーフルオロオクチルエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド(EO)変性フェノール(メタ)アクリレート、EO変性クレゾール(メタ)アクリレート、EO変性ノニルフェノール(メタ)アクリレート、プロピレンオキサイド(PO)変性ノニルフェノール(メタ)アクリレート、EO変性−2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、(3−エチル−3−オキセタニルメチル)(メタ)アクリレート、フェノキシエチレングリコール(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0050】
(メタ)アクリルアミド化合物としては、例えば、(メタ)アクリルアミド、N−メチル(メタ)アクリルアミド、N−エチル(メタ)アクリルアミド、N−プロピル(メタ)アクリルアミド、N−n−ブチル(メタ)アクリルアミド、N−t−ブチル(メタ)アクリルアミド、N−ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチル(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリロイルモルフォリンが挙げられる。
【0051】
芳香族ビニル化合物としては、例えば、スチレン、ジメチルスチレン、トリメチルスチレン、イソプロピルスチレン、クロロメチルスチレン、メトキシスチレン、アセトキシスチレン、クロロスチレン、ジクロロスチレン、ブロモスチレン、ビニル安息香酸メチルエステル、3−メチルスチレン、4−メチルスチレン、3−エチルスチレン、4−エチルスチレン、3−プロピルスチレン、4−プロピルスチレン、3−ブチルスチレン、4−ブチルスチレン、3−ヘキシルスチレン、4−ヘキシルスチレン、3−オクチルスチレン、4−オクチルスチレン、3−(2−エチルヘキシル)スチレン、4−(2−エチルヘキシル)スチレン、アリルスチレン、イソプロペニルスチレン、ブテニルスチレン、オクテニルスチレン、4−t−ブトキシカルボニルスチレン、4−t−ブトキシスチレン等が挙げられる。
【0052】
更に具体的には、山下晋三編「架橋剤ハンドブック」(1981年、大成社);加藤清視編「UV・EB硬化ハンドブック(原料編)」(1985年、高分子刊行会);ラドテック研究会編「UV・EB硬化技術の応用と市場」79頁(1989年、(株)シーエムシー出版);滝山栄一郎著「ポリエステル樹脂ハンドブック」(1988年、(株)日刊工業新聞社)等に記載の市販品又は業界で公知のラジカル重合性又は架橋性のモノマー、オリゴマー及びポリマーを用いることができる。
【0053】
ラジカル重合性モノマーは、1種単独で使用しても、2種以上を併用してもよい。
上記下塗り組成物におけるラジカル重合性モノマーの総含有量は、密着性・ブロッキング抑止両立の観点から、組成物全体の10〜80質量%であることが好ましく、15〜75質量%であることが好ましく、60〜72質量%であることが更に好ましい。
また、下塗り組成物中の、ラジカル重合性モノマーの総含有量に対する、多官能モノマーの含有量は、70質量%以上であることが好ましく、70〜100質量%であることがより好ましく、80〜100質量%であることがより好ましい。
【0054】
<バインダーポリマー>
下塗り組成物は、バインダーポリマーを含んでもよい。バインダーポリマーとしては、重合性基を有しない不活性な樹脂が好ましい。
バインダーポリマーとしては、ポリエステル系樹脂、ポリウレタン樹脂、ビニル樹脂、アクリル樹脂、ゴム系樹脂等の公知のバインダーポリマーを使用できるが、アクリル樹脂が好ましく、不活性な、メチルメタクリレート単独重合体及び/又は共重合体がより好ましい。例えば、Aldrich社製のポリメチルメタクリレート(分子量10,000、カタログ番号81497;分子量20,000、カタログ番号81498;分子量50,000、カタログ番号81501)、メチルメタクリレート/n−ブチルメタクリレート共重合体(質量比85/15、分子量75,000;カタログ番号474029)等;Lucite Intenational社製のELVACITE2013(メチルメタクリレート/n−ブチルメタクリレート共重合体、質量比36/64、分子量37,000)、2021、2614、4025、4026、4028等;Rohm and Haas社製のParaloid DM55、B66等;Dianal America社製のBR113、115等が挙げられる。
バインダーポリマーの重量平均分子量(Mw)は、1,000以上であることが好ましく、1,000〜1,000,000であることがより好ましく、5,000〜200,000であることが更に好ましく、8,000〜100,000であることが特に好ましい。
バインダーポリマーは、1種単独で使用しても、2種以上を併用してもよい。
バインダーポリマーの含有量は、下塗り組成物全体の0.2〜15質量%であることが好ましく、1〜10質量%であることがより好ましい。
バインダーポリマーの含有量が上記範囲内であれば、ブロッキング抑止に優れる印刷物を得ることができる。
【0055】
<ラジカル重合開始剤>
本発明において、下塗り組成物は、ラジカル重合開始剤を含有する。
ラジカル重合開始剤としては、ラジカル光重合開始剤であることがより好ましい。
ラジカル重合開始剤としては、(a)芳香族ケトン類、(b)アシルホスフィン化合物、(c)芳香族オニウム塩化合物、(d)有機過酸化物、(e)チオ化合物、(f)ヘキサアリールビイミダゾール化合物、(g)ケトオキシムエステル化合物、(h)ボレート化合物、(i)アジニウム化合物、(j)メタロセン化合物、(k)活性エステル化合物、(l)炭素ハロゲン結合を有する化合物、及び(m)アルキルアミン化合物等が挙げられる。これらのラジカル重合開始剤は、上記(a)〜(m)の化合物を単独若しくは組み合わせて使用してもよい。上記ラジカル重合開始剤の詳細については、例えば、特開2009−185186号公報の段落0090〜0116に記載されているものが例示できる。
本発明におけるラジカル重合開始剤は、1種単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
ラジカル重合開始剤としては、アシルホスフィン化合物、α−ヒドロキシケトン化合物及び/又はα−アミノケトン化合物が好ましく挙げられる。中でも、アシルホスフィン化合物及び/又はα−アミノケトン化合物がより好ましく、アシルホスフィン化合物が更に好ましい。
【0056】
アシルホスフィン化合物の好適な例としては、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,6−ジメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−2−メトキシフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,6−ジメチルベンゾイル)−2−メトキシフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−2,4−ジメトキシフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,6−ジメチルベンゾイル)−2,4−ジメトキシフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−2,4−ジペンチルオキシフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,6−ジメチルベンゾイル)−2,4−ジペンチルオキシフェニルホスフィンオキサイド、2,4,6−トリメチルベンゾイルエトキシフェニルホスフィンオキサイド、2,6−ジメチルベンゾイルエトキシフェニルホスフィンオキサイド、2,4,6−トリメチルベンゾイルメトキシフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルフェニルホスフィンオキサイド、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド(LUCIRIN TPO、BASF社製)、2,6−ジメチルベンゾイルメトキシフェニルホスフィンオキサイド、2,4,6−トリメチルベンゾイル(4−ペンチルオキシフェニル)フェニルホスフィンオキサイド、2,6−ジメチルベンゾイル(4−ペンチルオキシフェニル)フェニルホスフィンオキサイドが挙げられる。
【0057】
これらの中でも、アシルホスフィンオキサイド化合物としては、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキサイド(IRGACURE 819、BASF社製)、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルフェニルホスフィンオキサイドが好ましく、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキサイドが特に好ましい。
【0058】
また、ラジカル重合開始剤としては、硬化性の観点から、芳香族ケトン類が好ましい。
芳香族ケトン類としては、α−ヒドロキシケトン化合物及び/又はα−アミノケトン化合物が好ましい。
α−ヒドロキシケトン化合物としては、公知のものを用いることができるが、例えば、1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン等が挙げられ、中でも、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン化合物が好ましい。なお、本発明において、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン化合物には、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンが任意の置換基で置換された化合物も含まれる。置換基としては、ラジカル重合開始剤としての能力を発揮し得る範囲で任意に選択することができ、具体的には炭素数1〜4のアルキル基が例示できる。
また、α−アミノケトン化合物としては、公知のものを用いることができ、具体的には例えば、2−メチル−1−フェニル−2−モルフォリノプロパン−1−オン、2−メチル−1−[4−(ヘキシル)フェニル]−2−モルフォリノプロパン−1−オン、2−エチル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)ブタン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタン−1−オン、2−ジメチルアミノ−2−(4−メチルベンジル)−1−(4−モルフォリン−4−イル−フェニル)−ブタン−1−オン等が挙げられる。また、市販品としては、IRGACURE907(2−メチル−1−(4−メチルチオフェニル)−2−モルフォリノプロパン−1−オン)、IRGACURE369(2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−1−ブタノン)、IRGACURE379(2−(ジメチルアミノ)−2−[(4−メチルフェニル)メチル]−1−[4−(4−モルホリニル)フェニル]−1−ブタノン)(以上、BASF社製)等が好ましく例示できる。
【0059】
本発明おいて、マイグレーションと臭気を抑制する観点から、重量平均分子量が500〜3,000であるラジカル重合開始剤を併用してもよい。重量平均分子量は、800〜2,500であることがより好ましく、1,000〜2,000であることが更に好ましい。分子量が500以上であると、硬化膜からの化合物の溶出が抑制され、マイグレーション、臭気及びブロッキングが抑制されたインク組成物が得られる。一方、3,000以下であると、分子の立体障害が少なく、また、分子の液/膜中での自由度が維持され、高い感度が得られる。
なお、重量平均分子量は、GPC法(ゲルパーミエーションクロマトグラフ法)にて測定し、標準ポリスチレンで換算して求める。例えば、GPCは、HLC−8220GPC(東ソー(株)製)を用い、カラムとして、TSKgeL SuperHZM−H、TS
KgeL SuperHZ4000、TSKgeL SuperHZ2000(東ソー(株)製、4.6mmID×15cm)を3本用い、溶離液としてTHF(テトラヒドロフラン)を用いる。また、条件としては、試料濃度を0.35質量%、流速を0.35ml/min、サンプル注入量を10μl、測定温度を40℃とし、IR検出器を用いて行う。また、検量線は、東ソー(株)製「標準試料TSK standard,polysty
rene」:「F−40」、「F−20」、「F−4」、「F−1」、「A−5000」、「A−2500」、「A−1000」、「n−プロピルベンゼン」の8サンプルから作製する。
重量平均分子量が500〜3,000である分子量を有するラジカル重合開始剤としては、SPEEDCURE 7010(1,3-di({α-[1-chloro-9-oxo-9H-thioxanthen-4-yl]oxy}acetylpoly[oxy(1-methylethylene)])oxy)-2,2-bis({α-[1-chloro-9-oxo-9H-thioxanthen-4-yl]oxy}acetylpoly[oxy(1-methylethylene)])oxymethyl)propane、CAS No. 1003567-83-6)、OMNIPOL TX(Polybutyleneglycol bis(9-oxo-9H-thioxanthenyloxy)acetate、CAS No. 813452-37-8)、OMNIPOL BP(Polybutyleneglycol bis(4-benzoylphenoxy)acetate、CAS No. 515136-48-8)等が例示できる。重量平均分子量が500〜3,000である分子量を有するラジカル重合開始剤は、下塗り組成物全体の0.01〜10質量%であることが好ましく、0.05〜8.0質量%であることがより好ましく、0.1〜5.0質量%であることが更に好ましく、0.1〜2.4質量%であることが特に好ましい。上記範囲内であると、硬化性に優れる。
【0060】
下塗り組成物における分子量が340未満のラジカル重合開始剤の含有量は、マイグレーション、臭気及びブロッキングを抑制する観点から、含有しないか、又は、下塗り組成物全体の0質量%を超え1.0質量%以下であることが好ましく、含有しないか、又は、0質量%を超え0.5質量%以下であることがより好ましく、含有しないか、又は、0質量%を超え0.3質量%以下であることが更に好ましく、含有しないことが特に好ましい。
【0061】
また、下塗り組成物は、ラジカル重合開始剤として、特定の活性エネルギー線を吸収してラジカル重合開始剤の分解を促進させるため、増感剤として機能する化合物(以下、単に「増感剤」ともいう。)を含有してもよい。
増感剤としては、例えば、多核芳香族類(例えば、ピレン、ペリレン、トリフェニレン、2−エチル−9,10−ジメトキシアントラセン等)、キサンテン類(例えば、フルオレッセイン、エオシン、エリスロシン、ローダミンB、ローズベンガル等)、シアニン類(例えば、チアカルボシアニン、オキサカルボシアニン等)、メロシアニン類(例えば、メロシアニン、カルボメロシアニン等)、チアジン類(例えば、チオニン、メチレンブルー、トルイジンブルー等)、アクリジン類(例えば、アクリジンオレンジ、クロロフラビン、アクリフラビン等)、アントラキノン類(例えば、アントラキノン等)、スクアリウム類(例えば、スクアリウム等)、クマリン類(例えば、7−ジエチルアミノ−4−メチルクマリン等)、チオキサントン類(例えば、イソプロピルチオキサントン等)、チオクロマノン類(例えば、チオクロマノン等)等が挙げられる。
中でも、増感剤としては、チオキサントン類が好ましく、イソプロピルチオキサントンがより好ましい。
また、増感剤は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0062】
下塗り組成物の全質量に対するラジカル重合開始剤の総含有量は、1.0〜15.0質量%であることが好ましく、1.5〜10.0質量%であることがより好ましく、2.0〜8.0質量%であることが更に好ましい。上記範囲であると、硬化性に優れる。
【0063】
<ポリオール化合物>
本発明に用いられる下塗り組成物は、ポリオール化合物を含有してもよい。
ポリオール化合物としてはジオール化合物が好ましい。
ポリオール化合物としては、特に限定されないが、イソシアネート化合物がTM−550である場合には、CAT−RT−37−2K(東洋モートン(株)製)、イソシアネート化合物がXC233−2である場合には、XA126−1等のXシリーズの無用剤接着剤(大日精化工業(株)製)といった、イソシアネート化合物とポリオール化合物との2液混合型接着剤として市販されている製品を用いることが可能である。
本発明に用いられる下塗り組成物がポリオール化合物を含有する場合、下塗り組成物の全質量に対するポリオール化合物の含有量は、5〜50質量%であることが好ましく、10〜40質量%であることがより好ましい。
【0064】
<着色剤>
本発明に用いることができる下塗り組成物は、着色剤を含有してもよいが、白色着色剤を含有するか、又は含有しないことが好ましく、含有しないことがより好ましい。
白色顔料としては、Pigment White 6,18,21などが目的に応じて使用できる。
また、下塗り組成物が着色剤を含有する場合、組成物中における着色剤の含有量は、色、及び使用目的により適宜選択されるが、下塗り液全体の質量に対し、0.01〜30質量%であることが好ましい。
【0065】
<分散剤>
本発明において、下塗り組成物は、分散剤を含有してもよい。
特に、下塗り組成物が上記着色剤を含有する場合、着色剤の分散のため、分散剤を含むことが好ましい。
分散剤としては、高分子分散剤が好ましい。なお、本発明における「高分子分散剤」とは、重量平均分子量が1,000以上の分散剤を意味する。
【0066】
高分子分散剤としては、DISPERBYK−101、DISPERBYK−102、DISPERBYK−103、DISPERBYK−106、DISPERBYK−111、DISPERBYK−161、DISPERBYK−162、DISPERBYK−163、DISPERBYK−164、DISPERBYK−166、DISPERBYK−167、DISPERBYK−168、DISPERBYK−170、DISPERBYK−171、DISPERBYK−174、DISPERBYK−182(BYKケミー社製);EFKA4010、EFKA4046、EFKA4080、EFKA5010、EFKA5207、EFKA5244、EFKA6745、EFKA6750、EFKA7414、EFKA745、EFKA7462、EFKA7500、EFKA7570、EFKA7575、EFKA7580(エフカアディティブ社製);ディスパースエイド6、ディスパースエイド8、ディスパースエイド15、ディスパースエイド9100(サンノプコ(株)製);ソルスパース(SOLSPERSE)3000、5000、9000、12000、13240、13940、17000、22000、24000、26000、28000、32000、36000、39000、41000、71000などの各種ソルスパース分散剤(Noveon社製);アデカプルロニックL31、F38、L42、L44、L61、L64、F68、L72、P95、F77、P84、F87、P94、L101、P103、F108、L121、P−123((株)ADEKA製)、イオネットS−20(三洋化成工業(株)製);ディスパロン KS−860、873SN、874(高分子分散剤)、#2150(脂肪族多価カルボン酸)、#7004(ポリエーテルエステル型)(楠本化成(株)製)が挙げられる。
下塗り組成物中における分散剤の含有量は、使用目的により適宜選択されるが、組成物全体の質量に対し、0.05〜15質量%であることが好ましい。
【0067】
<界面活性剤>
下塗り組成物には、長時間安定した吐出性を付与するため、界面活性剤を添加してもよい。
界面活性剤としては、特開昭62−173463号、同62−183457号の各公報に記載されたものが挙げられる。例えば、ジアルキルスルホコハク酸塩類、アルキルナフタレンスルホン酸塩類、脂肪酸塩類等のアニオン性界面活性剤、ポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンアルキルアリルエーテル類、アセチレングリコール類、ポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレンブロックコポリマー類等のノニオン性界面活性剤、アルキルアミン塩類、第四級アンモニウム塩類等のカチオン性界面活性剤が挙げられる。また、上記界面活性剤としてフッ素系界面活性剤(例えば、有機フルオロ化合物等)やシリコーン系界面活性剤(例えば、ポリシロキサン化合物等)を用いてもよい。上記有機フルオロ化合物は、疎水性であることが好ましい。上記有機フルオロ化合物としては、例えば、フッ素系界面活性剤、オイル状フッ素系化合物(例、フッ素油)及び固体状フッ素化合物樹脂(例、四フッ化エチレン樹脂)が含まれ、特公昭57−9053号(第8〜17欄)、特開昭62−135826号の各公報に記載されたものが挙げられる。
【0068】
上記ポリシロキサン化合物としては、ジメチルポリシロキサンのメチル基の一部に有機基を導入した変性ポリシロキサン化合物であることが好ましい。変性の例として、ポリエーテル変性、メチルスチレン変性、アルコール変性、アルキル変性、アラルキル変性、脂肪酸エステル変性、エポキシ変性、アミン変性、アミノ変性、メルカプト変性などが挙げられるが、特にこれらに限定されるものではない。これらの変性の方法は組み合わせて用いられてもかまわない。また、中でもポリエーテル変性ポリシロキサン化合物がインクジェットにおける吐出安定性改良の観点で好ましい。
ポリエーテル変性ポリシロキサン化合物の例としては、例えば、SILWET L−7604、SILWET L−7607N、SILWET FZ−2104、SILWET FZ−2161(日本ユニカー(株)製)、BYK306、BYK307、BYK331、BYK333、BYK347、BYK348等(BYK Chemie社製)、KF−351A、KF−352A、KF−353、KF−354L、KF−355A、KF−615A、KF−945、KF−640、KF−642、KF−643、KF−6020、X−22−6191、X−22−4515、KF−6011、KF−6012、KF−6015、KF−6017(信越化学工業(株)製)が挙げられる。
これらの中でも、界面活性剤としてはシリコーン系界面活性剤が好ましく挙げられる。
下塗り組成物中における界面活性剤の含有量は使用目的により適宜選択されるが、組成物全体の質量に対し、0.0001〜5質量%であることが好ましく、0.001〜2質量%であることがより好ましい。
【0069】
<その他の成分>
本発明において、下塗り組成物は、必要に応じて、上記各成分以外に、共増感剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、褪色防止剤、導電性塩類、溶剤、高分子化合物、塩基性化合物等を含んでもよい。これらその他の成分としては、公知のものを用いることができ、例えば、特開2009−221416号公報に記載されているものが挙げられる。
【0070】
また、下塗り組成物は、保存性、及び、ヘッド詰まりの抑制という観点から、重合禁止剤を含有してもよい。
重合禁止剤の含有量は、組成物の全質量に対し、200〜20,000ppmであることが好ましい。
重合禁止剤としては、ニトロソ系重合禁止剤や、ヒンダードアミン系重合禁止剤、ハイドロキノン、ベンゾキノン、p−メトキシフェノール、TEMPO、TEMPOL、クペロンAl等が挙げられる。
【0071】
<下塗り組成物の物性>
本発明においては、下塗り層をインクジェット法により設ける場合、吐出性を考慮し、下塗り組成物の25℃における粘度は、40mPa・s以下であることが好ましく、5〜40mPa・s、更に好ましくは7〜30mPa・sである。また、吐出温度(好ましくは25〜80℃、より好ましくは25〜50℃)における粘度が、3〜15mPa・sであることが好ましく、3〜13mPa・sであることがより好ましい。下塗り組成物は、粘度が上記範囲になるように適宜組成比を調整することが好ましい。室温(25℃)での粘度を高く設定することにより、多孔質な記録媒体(支持体)を用いた場合でも、記録媒体中への下塗り組成物の浸透を回避し、未硬化モノマーの低減が可能となる。
上記の下塗り組成物の粘度は、E型粘度計(東機産業(株)製)を用いて測定される。
【0072】
下塗り組成物の25℃における表面張力は、15mN/m〜40mN/mであることが好ましく、20mN/m〜35mN/mであることがより好ましく、20mN/m〜30mN/mであることが更に好ましい。
なお、下塗り組成物の25℃における表面張力の測定方法としては、公知の方法を用いることができるが、吊輪法、又は、ウィルヘルミー法で測定することが好ましい。例えば、協和界面科学(株)製自動表面張力計CBVP−Zを用いて測定する方法、又は、KSV INSTRUMENTS LTD社製 SIGMA702を用いて測定する方法が好ましく挙げられる。
【0073】
<下塗り組成物の調製>
本発明の下塗り組成物の調製方法としては、各成分を撹拌混合することにより調製することができる。
ここで、下塗り液の調製時には、下塗り液に含まれる全ての成分を同時に撹拌混合してもよいし、イソシアネート化合物及び/又はラジカル重合開始剤以外の各成分を撹拌混合してた溶液を保存しておき、イソシアネート化合物及び/又はラジカル重合開始剤は使用前に追加することにより下塗り液を調製してもよい。
本発明のインクジェット記録方法の工程aにおいて、下塗り組成物は調製後一日以内に記録媒体に塗布されることが塗布性の観点から好ましい。
【0074】
(インク組成物)
本発明のインクジェット記録方法に使用されるインク組成物は、ラジカル重合性モノマーと、ラジカル重合開始剤と、着色剤とを含有する。
インク組成物におけるラジカル重合性モノマーの総含有量は、硬化性の観点から、組成物全体の70〜98質量%であることが好ましく、70〜95質量%であることがより好ましく、80〜93質量%であることが更に好ましい。
また、インク組成物中の、ラジカル重合性モノマーの総含有量に対する、多官能エチレン性不飽和化合物の含有量は、70質量%以上であることが好ましく、70〜100質量%であることがより好ましく、80〜100質量%であることがより好ましい。
その他、上記ラジカル重合性モノマー及びラジカル重合開始剤は、下塗り組成物におけるラジカル重合性モノマー及びラジカル重合開始剤と同義であり、好ましい態様も同様である。また、多官能エチレン性不飽和化合物(より好ましくは、多官能エチレン性不飽和モノマー)として、ポリアルキレングリコールジアクリレートを含むことが好ましい。 ポリアルキレングリコールジアクリレートとしては、ポリエチレングリコールジアクリレート又はポリプロピレングリコールジアクリレートであることが好ましい。
また、ポリアルキレングリコールジアクリレートにおけるアルキレングリコール単位の繰り返し数、すなわち、アルキレンオキシ基の繰り返し数は、2以上であり、2〜100であることが好ましく、2〜20であることがより好ましい。
下塗り組成物及びインク組成物は、それぞれ2官能(メタ)アクリレート化合物を含むことが好ましい。
また、本発明において、インク組成物は、活性光線硬化型のインク組成物であり、水性インク組成物や溶剤インク組成物とは異なる。インク組成物は、水及び揮発性溶剤をできるだけ含有しないことが好ましく、含有していたとしても、インク組成物の全質量に対し、1質量%以下であることが好ましく、0.5質量%以下であることがより好ましく、0.1質量%以下であることが更に好ましい。
【0075】
<着色剤>
本発明において、インク組成物は、形成された画像部の視認性を向上させるため、着色剤を含有する。
着色剤としては、特に制限はないが、耐候性に優れ、色再現性に富んだ顔料及び油溶性染料が好ましく、溶解性染料等の公知の着色剤から任意に選択して使用できる。着色剤は、活性放射線による硬化反応の感度を低下させないという観点から、重合禁止剤として機能しない化合物を選択することが好ましい。
【0076】
本発明に使用できる顔料としては、特に限定されるわけではないが、例えばカラーインデックスに記載される下記の番号の有機又は無機顔料が使用できる。
赤又はマゼンタ顔料としては、Pigment Red 3,5,19,22,31,38,42,43,48:1,48:2,48:3,48:4,48:5,49:1,53:1,57:1,57:2,58:4,63:1,81,81:1,81:2,81:3,81:4,88,104,108,112,122,123,144,146,149,166,168,169,170,177,178,179,184,185,208,216,226,257、Pigment Violet 3,19,23,29,30,37,50,88、Pigment Orange 13,16,20,36、青又はシアン顔料としては、Pigment Blue 1,15,15:1,15:2,15:3,15:4,15:6,16,17−1,22,27,28,29,36,60、緑顔料としては、Pigment Green 7,26,36,50、黄顔料としては、Pigment Yellow 1,3,12,13,14,17,34,35,37,55,74,81,83,93,94,95,97,108,109,110,120,137,138,139,153,154,155,157,166,167,168,180,185,193、黒顔料としては、Pigment Black 7,28,26、白色顔料としては、Pigment White 6,18,21などが目的に応じて使用できる。
本発明においては、水非混和性有機溶媒に溶解する範囲で分散染料を用いることもできる。分散染料は一般に水溶性の染料も包含するが、本発明においては水非混和性有機溶媒に溶解する範囲で用いることが好ましい。
分散染料の好ましい具体例としては、C.I.ディスパースイエロー 5,42,54,64,79,82,83,93,99,100,119,122,124,126,160,184:1,186,198,199,201,204,224及び237;C.I.ディスパーズオレンジ 13,29,31:1,33,49,54,55,66,73,118,119及び163;C.I.ディスパーズレッド 54,60,72,73,86,88,91,92,93,111,126,127,134,135,143,145,152,153,154,159,164,167:1,177,181,204,206,207,221,239,240,258,277,278,283,311,323,343,348,356及び362;C.I.ディスパーズバイオレット 33;C.I.ディスパーズブルー 56,60,73,87,113,128,143,148,154,158,165,165:1,165:2,176,183,185,197,198,201,214,224,225,257,266,267,287,354,358,365及び368;並びにC.I.ディスパーズグリーン 6:1及び9;等が挙げられる。
【0077】
着色剤は、インク組成物に添加された後、適度に上記インク組成物内で分散することが好ましい。着色剤の分散には、例えば、ボールミル、サンドミル、アトライター、ロールミル、アジテータ、ヘンシェルミキサ、コロイドミル、超音波ホモジナイザー、パールミル、湿式ジェットミル、ペイントシェーカー等の各分散装置を用いることができる。
【0078】
着色剤は、インク組成物の調製に際して、各成分と共に直接添加してもよい。また、分散性向上のため、予め溶剤又は本発明に使用する重合性化合物のような分散媒体に添加し、均一分散あるいは溶解させた後、配合することもできる。
本発明において、溶剤が硬化画像に残留する場合の耐溶剤性の劣化、及び、残留する溶剤のVOC(Volatile Organic Compound:揮発性有機化合物)の問題を避けるためにも、着色剤は、重合性化合物のような分散媒体に予め添加して、配合することが好ましい。なお、分散適性の観点のみを考慮した場合、着色剤の添加に使用する重合性化合物は、粘度の低いモノマーを選択することが好ましい。着色剤はインク組成物の使用目的に応じて、1種又は2種以上を適宜選択して用いればよい。
【0079】
なお、インク組成物中において固体のまま存在する顔料などの着色剤を使用する際には、着色剤粒子の平均粒径は、好ましくは0.005〜0.5μm、より好ましくは0.01〜0.45μm、更に好ましくは0.015〜0.4μmとなるよう、着色剤、分散剤、分散媒体の選定、分散条件、ろ過条件を設定することが好ましい。この粒径管理によって、ヘッドノズルの詰まりを抑制し、インク組成物の保存安定性、透明性及び硬化感度を維持することができるので好ましい。
インク組成物中における着色剤の含有量は、色、及び使用目的により適宜選択されるが、インク組成物全体の質量に対し、0.01〜30質量%であることが好ましい。
【0080】
<その他の成分>
本発明に用いられるインク組成物は、分散剤、界面活性剤、及び、その他の成分を含有してもよい。
インク組成物における分散剤、界面活性剤、及び、その他の成分は、下塗り組成物における分散剤、界面活性剤、及び、その他の成分と同義であり、好ましい態様も同様である。
【0081】
<インク組成物の物性>
本発明においては、吐出性を考慮し、25℃における粘度が40mPa・s以下であるインク組成物を使用することが好ましい。より好ましくは5〜40mPa・s、更に好ましくは7〜30mPa・sである。また、吐出温度(好ましくは25〜80℃、より好ましくは25〜50℃)における粘度が、3〜15mPa・sであることが好ましく、3〜13mPa・sであることがより好ましい。インク組成物は、粘度が上記範囲になるように適宜組成比を調整することが好ましい。室温(25℃)での粘度を高く設定することにより、多孔質な記録媒体(支持体)を用いた場合でも、記録媒体中へのインク組成物の浸透を回避し、未硬化モノマーの低減が可能となる。更にインク組成物の液滴着弾時のインクにじみを抑えることができ、その結果として画質が改善されるので好ましい。
【0082】
インク組成物の25℃における表面張力は、20mN/m以上40mN/m以下であることが好ましく、20.5mN/m以上35.0mN/m以下であることがより好ましく、21mN/m以上30.0mN/m以下であることが更に好ましく、21.5mN/m以上28.0mN/m以下であることが特に好ましい。上記範囲であると、ブロッキング抑止に優れる印刷物が得られる。
【実施例】
【0083】
以下に実施例及び比較例を示し、本発明をより具体的に説明する。ただし、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
なお、以下の記載における「部」とは、特に断りのない限り「質量部」を示すものとする。
【0084】
(実施例)
本発明で使用した素材は下記に示す通りである。
<着色剤>
・IRGALITE BLUE GLVO(シアン顔料、BASFジャパン社製)
・CINQUASIA MAGENTA RT−355−D(マゼンタ顔料、BASFジャパン社製)
・NOVOPERM YELLOW H2G(イエロー顔料、クラリアント社製)
・SPECIAL BLACK 250(ブラック顔料、BASFジャパン社製)
・タイペークCR60−2(ホワイト顔料、石原産業(株)製)
【0085】
<分散剤>
・SOLSPERSE32000(Noveon社製分散剤)
【0086】
<ラジカル重合性モノマー>
・SR9003:プロポキシ化(2)ネオペンチルグリコールジアクリレート(Sartomer社製)
・SR341:3−メチル−1,5−ペンタンジオールジアクリレート(Sartomer社製)
・SR489D:トリデシルアクリレート(Sartomer社製)
・DVE−3:トリエチレングリコールジビニルエーテル(BASF社製)
・SR344:ポリエチレングリコール(400)ジアクリレート(Sartomer社製)
<バインダーポリマー>
・DIANAL BR113(アクリル樹脂、Dianal America社製)
【0087】
<ラジカル重合開始剤>
・IRGACURE 819(ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキサイド、BASF社製、分子量419)
・Speedcure7010(Lambson社製、分子量1,899)
【0088】
<イソシアネート化合物>
・TM−550(NCO型ウレタンエステル樹脂、東洋モートン(株)製)
・XC233−2(末端NCO型ポリエーテルウレタン樹脂、大日精化工業(株)製)
・タケネートD103H(トリレンジイソシアネートとトリメチロールプロパンとのアダクト体、三井化学ポリウレタン(株)製)
・タケネートD204(トリレンジイソシアネートのイソシアヌレート体、三井化学ポリウレタン(株)製)
・タケネートD160N(ヘキサメチレンジイソシアネートとトリメチロールプロパンとのアダクト体、三井化学ポリウレタン(株)製)
・タケネートD170N(ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート体、三井化学ポリウレタン(株)製)
・タケネートD165N(ヘキサメチレンジイソシアネートのビウレット体、三井化学ポリウレタン(株)製)
・タケネートD178NL(ヘキサメチレンジイソシアネートのアロファネート体、三井化学ポリウレタン(株)製)
・タケネートD110N(キシリレンジイソシアネートとトリメチロールプロパンとのアダクト体、三井化学ポリウレタン(株)製)
【0089】
<ポリオール化合物>
・CAT−RT−37−2K(東洋モートン(株)製)
・XA126−1(大日精化工業(株)製)
【0090】
<重合禁止剤>
・UV−22(Irgastab(登録商標) UV-22、Poly[oxy(methyl-1,2-ethanediyl)],.alpha.,.alpha.',.alpha.''-1,2,3-propanetriyltris[.omega.-[(1-oxo-2-propen-1-yl)oxy]-、2,6-bis(1,1-dimethylethyl)-4-(phenylenemethylene)cyclohexa-2,5-dien-1-one、BASF社製)
【0091】
<界面活性剤>
・BYK−307(シリコーン系界面活性剤(ポリエーテル変性ポリジメチルシロキサン)、BYK Chemie社製)
【0092】
(各ミルベースの調製)
<シアンミルベースAの調製>
IRGALITE BLUE GLVOを300質量部と、SR9003を620質量部と、SOLSPERSE32000を80質量部とを撹拌混合し、シアンミルベースAを得た。なお、シアンミルベースAの調製は分散機モーターミルM50(アイガー社製)に入れて、直径0.65mmのジルコニアビーズを用い、周速9m/sで4時間分散を行った。
【0093】
<マゼンタビルベースB、イエローミルベースC、ブラックミルベースD及びホワイトミルベースEの調製>
シアンミルベースAと同様にして、表1に示す組成、分散条件でマゼンタミルベースB、イエローミルベースC、ブラックミルベースD及びホワイトミルベースEを調製した。
【0094】
【表1】
【0095】
<下塗り組成物、及び、インク組成物の調製>
表2及び表3に示す割合で各素材を、ミキサー(シルバーソン社製L4R)を用いて室温(25℃)で5,000回転/分にて20分撹拌混合し、実施例1〜18、比較例1〜3で使用した下塗り組成物及びインク組成物をそれぞれ調製した。また、比較例2において使用した下塗り組成物は、実験に使用するまで、室温下で一日間保管した。なお、表2及び表3における各成分の含有量の単位は、質量部である。また、表中の「−」の記載は、上記成分を含有していないことを意味する。表中の「2.4<」の記載は、剥離力が2.4N/cmを超えていることを意味する。
【0096】
<画像形成方法>
図1に示すように、ロール搬送系の最上流部にローラー塗布機(下塗り液の塗布量;2μm)を配置し、その下流にLED光源、ブラック用ヘッド、LED光源、シアン用ヘッド、LED光源、マゼンタ用ヘッド、LED光源、W用ヘッド、窒素パージLED露光機を配置した。
インクジェットヘッドとして、東芝テック(株)製CA3ヘッドを各色4つずつ並列に配置し、ヘッドを45℃に加温して、42pLの打滴サイズで描画できるよう、周波数をコントロールした。LED光源として、ピークは長385nmのLED光源ユニット(LEDZero Solidcure、Integration Technolohy社製)を使用した。窒素パージは、不活性ガス源として、コンプレッサー付きN
2ガス発生装置Maxi−Flow30(Inhouse Gas社製)を0.2MPa・sの圧力で接続し、ブランケット内の窒素濃度を99%、酸素濃度を1%となるように、2〜10L/分の流量で窒素をフローさせ、窒素濃度を設定した。記録媒体としては、OPP(延伸ポリプロピレン) 厚さ25μm、PET(ポリエチレンテレフタラート) 厚さ12μm、ナイロン 厚さ15μmを用いた。
30m/minの速度で走査させ、下塗り液を塗布した記録媒体を、LED光源(半硬化用の露光量40W/cm
2)を用いて半硬化状態にした。その上にインク組成物を吐出して、更にLED光源(半硬化用の露光量40W/cm
2)を用いてインク組成物を半硬化状態にし、100%ベタ画像の描画を行った。その後LED光源によって画像を完全に硬化させた。以下に示す諸性能のテストを行った。
なお、窒素パージ露光前のLED光源は、下塗り液及びインク組成物が、半硬化状態に保てるように光量を調節した。
なお、本発明における「完全硬化」とは、記録媒体上の下塗り液及びインク組成物の内部及び表面が完全に硬化した状態をいう。具体的には、普通紙(例えば、富士ゼロックス(株)製コピー用紙C2、商品コードV436)を均一な力(500〜1,000mN/cm
2の範囲内で一定の値)押し当てて、普通紙に液表面が転写したかどうかによって判断することができる。すなわち、全く転写しない場合を完全に硬化した状態という。
【0097】
<密着性測定方法>
記録媒体としてPETを用いて、上記画像形成方法によって得られた画像サンプルの画像面に、1cm幅のセロテープ(登録商標)を貼り付け、記録媒体と下塗り層間の剥離力(剥離するまでにかかる力:N/cm 剥離速度:300mm/min.)を、IMADA製標準タイプデジタルフォースゲージ ZTSシリーズと縦型電動計測スタンドMX2シリーズと90°剥離試験治具P90‐200N/200N−EZフィルムチャックFCシリーズを用いて測定した。
剥離力が大きいほど、密着性がよいと判断できる。実施例1のインクを用いて、記録媒体としてOPPフィルムを用いた以外はPETの場合と同様にして剥離力評価を行ったところ、PETの場合と同様の密着性評価を得られた。
【0098】
<臭気評価>
上記画像形成方法によって得られた画像サンプル(A4サイズのベタ画像)を、30cm×30cmのジップ付きビニール袋に内包し、24時間放置した。その後、ジップを解放し、臭気の評価を行った。評価は10人の平均を採用した。なお、平均値の小数点以下は四捨五入するものとする。評価が3以上であれば実用上問題はない。
1:非常に強い臭気がある
2:強い臭気がある
3:ある程度の臭気があるが、不快なレベルでない
4:わずかな臭気があるがほとんど気にならない
5:ほぼ無臭である
【0099】
<ブロッキング評価>
上記画像形成方法において、インク組成物を吐出せず完全に硬化させた下塗りしたPET基材にPETを重ね合わせ、1kgの重りを1分間載せ、重ねたPETを剥がした際の状態を評価した。また、OPP基材の場合は、OPPを重ね合わせ、1kgの重りを1分間載せ、重ねたOPPを剥がした際の状態を評価した。
4:剥がしたPET、OPPともに転写物もなく、剥がした際に音もしない
3:剥がしたPET、OPPともに転写物はなく、OPPは剥がした際に音もしないが、PETは剥がした際に音がする
2:剥がしたOPPに転写物はなく、剥がした際に音もしないが、剥がしたPETは転写物がある
1:剥がしたPET、OPPともに転写物がある
【0100】
【表2】
【0101】
【表3】