(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記濃縮分散液回収工程で得られるマイクロカプセル分散液に比べてマイクロカプセル濃度の低いマイクロカプセル分散液を回収する希薄分散液回収工程をさらに含む、請求項1に記載の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施形態について説明する。以下の説明では、同一の部品には同一の符号を付してある。それらの名称及び機能も同一である。したがって、それらについての詳細な説明は繰返さない。
【0022】
[マイクロカプセル粉末の製造方法の説明]
図1は、本発明の実施形態にかかるマイクロカプセル粉末の製造方法の工程を示す図である。本実施形態にかかるマイクロカプセル粉末の製造方法は
図1に基づいて説明される。本実施形態にかかるマイクロカプセル粉末の製造方法は、分散液製造工程S90と、濃縮工程S92と、凍結乾燥工程S94とを備える。
【0023】
分散液製造工程S90は、マイクロカプセルを水(水は後述する乳化剤を含んでいてもよい)に分散させた液(以下の説明では、マイクロカプセルを水に分散させた液を「水分散液」と称する。)を製造する工程である。以下において、分散液製造工程S90の一例が説明される。ただし分散液製造工程S90の具体的な内容は以下の例に限定されない。
【0024】
本発明で用いられるマイクロカプセルは、例えば(i)生理活性物質を含む内水相と、乳酸重合体若しくはその塩または乳酸―グリコール酸共重合体もしくはその塩を含む油相とからなるW(内水相)/O(油相)エマルションを乳化して得られるW(内水相)/O(油相)/W(外水相)エマルション、又は(ii)生理活性物質と、乳酸重合体もしくはその塩または乳酸―グリコール酸共重合体もしくはその塩とを含む油相を乳化して得られるO(油相)/W(外水相)エマルションを、水中乾燥法に付することによって製造される。本発明では、上記した水中乾燥法において、生理活性物質を用いずに得られるマイクロカプセルも用いることができる。しかし、本発明で用いられるマイクロカプセルは生理活性物質を含むことが好ましい。
【0025】
上記(i)、即ち、生理活性物質を含む内水相と、乳酸重合体若しくはその塩または乳酸―グリコール酸共重合体もしくはその塩を含む油相とからなるW/Oエマルションは、以下のようにして製造される。
まず、生理活性物質を水に溶解、分散又は懸濁し、内水相を製造する。生理活性物質の水中の濃度は、例えば0.001ないし90%(w/w)、好ましくは0.01ないし80%(w/w)である。
上記生理活性物質の使用量は、生理活性物質の種類、所望の薬理効果及び効果の持続期間等により異なるが、乳酸重合体若しくはその塩または乳酸―グリコール酸共重合体もしくはその塩に対して、例えば約0.01ないし約50%(w/w)、好ましくは約0.1ないし約30%(w/w)、さらに好ましくは約1ないし約20%(w/w)である。
必要であれば、生理活性物質のマイクロカプセルへの取り込みを上げるために、内水相にゼラチン、寒天、アルギン酸ナトリウム、ポリビニルアルコールあるいは塩基性アミノ酸(例えばアルギニン、ヒスチジン、リジン等)等の薬物保持物質を加えてもよい。該薬物保持物質の添加量は、生理活性物質に対し、通常約0.01ないし約10重量倍である。
内水相は、一旦凍結乾燥して粉末状態とした後、適当な濃度となるように水を添加して溶解して用いてもよい。
別に、乳酸重合体若しくはその塩または乳酸―グリコール酸共重合体もしくはその塩を有機溶媒に溶解し、油相を製造する。
前記有機溶媒としては、例えばハロゲン化炭化水素(例えばジクロロメタン、クロロホルム、クロロエタン、トリクロロエタン、四塩化炭素)、脂肪酸エステル(例えば酢酸エチル、酢酸ブチル)、芳香族炭化水素(例えばベンゼン、トルエン、キシレン)が挙げられ、中でもジクロロメタンが好ましい。
有機溶媒中の乳酸重合体若しくはその塩または乳酸―グリコール酸共重合体もしくはその塩の濃度は、該乳酸重合体若しくはその塩または乳酸―グリコール酸共重合体もしくはその塩の種類及び重量平均分子量、有機溶媒の種類により異なるが、[乳酸重合体若しくはその塩または乳酸―グリコール酸共重合体もしくはその塩の重量/(有機溶媒の重量+乳酸重合体若しくはその塩または乳酸―グリコール酸共重合体もしくはその塩の重量)](×100%)は、通常約0.01ないし約90%(w/w)、好ましくは約0.01ないし約70%(w/w)である。前記油相では不溶物を含まないことが望ましい。
このようにして得られる乳酸重合体若しくはその塩または乳酸―グリコール酸共重合体もしくはその塩の有機溶媒溶液(油相)に、生理活性物質の水溶液、分散液又は懸濁液(内水相)を添加し、ホモミキサー等で分散、乳化し、W/Oエマルションを製造する。
W/Oエマルションの製造を室温(約19〜25℃)で行った場合には、製造されたW/Oエマルションは経時的に後述の二次乳化には好ましくない態様(例、ゲル状)に変化し、高い収率でマイクロカプセルを製造することが困難となる場合がある(ここで収率とは、W/Oエマルションのために使用した生理活性物質の重量に占める、マイクロカプセルに含まれる生理活性物質の重量の割合を指す)。
【0026】
一方、上記(ii)、即ち、生理活性物質と乳酸重合体若しくはその塩または乳酸―グリコール酸共重合体もしくはその塩とを含む油相は、以下のようにして製造される。
まず、乳酸重合体若しくはその塩または乳酸―グリコール酸共重合体もしくはその塩の有機溶媒溶液を製造する。該有機溶媒としては、上記W/Oエマルションを製造する際に用いた有機溶媒と同様のものが用いられる。
有機溶媒溶液中の乳酸重合体若しくはその塩または乳酸―グリコール酸共重合体もしくはその塩の濃度は、該乳酸重合体若しくはその塩または乳酸―グリコール酸共重合体もしくはその塩の種類及び重量平均分子量、有機溶媒の種類によって異なるが、[乳酸重合体若しくはその塩または乳酸―グリコール酸共重合体もしくはその塩の重量/(有機溶媒の重量+乳酸重合体若しくはその塩または乳酸―グリコール酸共重合体もしくはその塩の重量)](×100%)は、通常約0.01ないし約70%(w/w)、好ましくは約1ないし約60%(w/w)である。
次に、生理活性物質を乳酸重合体若しくはその塩または乳酸―グリコール酸共重合体もしくはその塩の有機溶媒溶液に溶解あるいは懸濁して油相を製造する。油相の製造は、生理活性物質をアルコールに溶解した溶液を乳酸重合体若しくはその塩または乳酸―グリコール酸共重合体もしくはその塩の有機溶媒溶液に溶解あるいは懸濁することによっても製造できる。生理活性物質を溶解するアルコールとしては、例えばメタノールが挙げられる。
生理活性物質の使用量は、生理活性物質の乳酸重合体またはその塩に対する割合が上記(i)W/Oエマルションを製造する場合と同様になるように選択すればよい。
【0027】
ついで上記の(i)W/Oエマルション又は(ii)油相を、外水相に添加し、ホモミキサー等を用いて分散、乳化(二次乳化)し、それぞれのエマルション(以下では、W/Oエマルションから得られるエマルションをW/O/Wエマルション、(ii)の油相から得られるエマルションをO/Wエマルションと呼ぶことがある)を製造する。
外水相の使用量は、通常上記W/Oエマルション又は油相の約1ないし約10,000容量倍、好ましくは約10ないし約5,000容量倍、特に好ましくは約50ないし約1,000容量倍である。
外水相中には、通常乳化剤を添加する。該乳化剤としては、一般的に安定なW/O/Wエマルション又はO/Wエマルションを形成し得るものであればよく、例えばアニオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、ポリオキシエチレンヒマシ油誘導体、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース、レシチン、ゼラチン、ヒアルロン酸が挙げられるが、中でもポリビニルアルコールが好ましい。外水相中の乳化剤の濃度は、通常約0.001ないし約20%(w/w)、好ましくは約0.01ないし約10%(w/w)、特に好ましくは約0.05ないし約5%(w/w)である。
【0028】
このようにして得られるW/O/Wエマルション又はO/Wエマルション(以下、これらを単にエマルションと略記する場合がある)を水中乾燥法に付すことにより、これらエマルションに含まれる有機溶媒を除去してマイクロカプセルの水分散液を得ることができる。
上記有機溶媒の除去後、必要に応じて篩過、遠心分離機によるマイクロカプセルの取出し、および凍結乾燥を行い、得られたマイクロカプセル粉末をさらに乳化剤とともに水に分散させた液をマイクロカプセルの水分散液として用いてもよい。
【0029】
また、前記したW/O/Wエマルション又はO/Wエマルションを用いる方法の他に、生理活性物質を含む固相と、乳酸重合体若しくはその塩または乳酸―グリコール酸共重合体もしくはその塩を含む油相とからなるS(固相)/O(油相)エマルションを水中乾燥法に付すことによっても製造することもできる。
【0030】
まず乳酸重合体若しくはその塩または乳酸―グリコール酸共重合体もしくはその塩を有機溶媒に溶解し、得られる有機溶媒液中に生理活性物質を分散させる。この際、生理活性物質と乳酸重合体またはその塩との使用量は、生理活性物質の乳酸重合体若しくはその塩または乳酸―グリコール酸共重合体もしくはその塩に対する割合が上記(i)W/Oエマルションを製造する場合と同様になるように選択すればよい。また、生理活性物質を前記有機溶媒液中に均一に分散させるため、例えば超音波照射、タービン型撹拌器、ホモジナイザー等が用いられる。
次いでこのようにして調製されたS/Oエマルションを、更に外水相に添加し、例えば超音波照射、タービン型撹拌器、あるいはホモジナイザー等を用いて、分散、乳化し、エマルション(以下ではS(固相)/O(油相)/W(水相)エマルションと呼ぶことがある)を製造する。以後、油相溶媒を蒸発させマイクロカプセルを製造する。この際の外水相体積は、一般的には油相体積の約1倍ないし約10,000倍から選ばれる。更に好ましくは約10倍ないし約5,000倍、特に好ましくは約50倍ないし約1,000倍から選ばれる。
上記外水相中には、前記乳化剤を加えてもよい。外水相の使用量、外水相に添加される乳化剤の種類および濃度は、前記W/O/Wエマルションを製造する場合と同様である。 このようにして得られるS/O/Wエマルションを水中乾燥法に付すことにより、有機溶媒を除去して、マイクロカプセルの水分散液を得ることができる。
【0031】
このようにして得られたマイクロカプセルを含む水分散液を濃縮工程S92に供することもできるし、該水分散液を篩過した後に濃縮工程S92に供することもできる。
【0032】
なお、本実施形態における「生理活性物質」とは、マイクロカプセルの内部に封じ込められる、生理活性をもった物質のことである。
本発明で用いられる生理活性物質は薬理学的に有用なものであれば特に限定を受けず、非ペプチド化合物でもペプチド化合物でもよい。非ペプチド化合物としては、アゴニスト、アンタゴニスト、酵素阻害作用を有する化合物などがあげられる。また、ペプチド化合物としては、例えば、生理活性ペプチドが好ましく、分子量約300〜約40,000、好ましくは約400〜約30,000、さらに好ましくは約500〜約20,000の生理活性ペプチドなどが好適である。
【0033】
生理活性ペプチドの例としては、黄体形成ホルモン放出ホルモン(LH-RH)、インスリン、ソマトスタチン、ソマトトロピン、成長ホルモン放出ホルモン(GH−RH)、プロラクチン、エリスロポイエチン、副腎皮質ホルモン、メラノサイト刺激ホルモン、甲状腺ホルモン放出ホルモン、甲状腺刺激ホルモン、黄体形成ホルモン、卵胞刺激ホルモン、パソプレシン、オキシトシン、カルシトニン、ガストリン、セクレチン、パンクレオザイミン、コレシストキニン、アンジオテンシン、ヒト胎盤ラクトーゲン、ヒト絨毛性ゴナドトロピン、エンケファリン、エンドルフィン、キョウトルフィン、タフトシン、サイモポイエチン、サイモシン、サイモチムリン、胸腺液性因子、血中胸腺因子、腫瘍壊死因子、コロニー誘導因子、モチリン、デイノルフィン、ボンベシン、ニューロテンシン、セルレイン、ブラジキニン、心房性ナトリウム排泄増加因子、神経成長因子、細胞増殖因子、神経栄養因子、エンドセリン桔抗作用を有するペプチド類など及びその誘導体、さらにはこれらのフラグメント又はフラグメントの誘導体が挙げられる。
【0034】
上述した生理活性物質はそれ自身であっても、薬理学的に許容される塩であってもよい。このような塩として、生理活性物質がアミノ基等の塩基性基を有する場合、無機酸(無機の遊離酸とも称する)又は有機酸(有機の遊離酸とも称する)との塩が挙げられる。無機酸としては、炭酸、重炭酸、塩酸、硫酸、硝酸、ホウ酸が挙げられる。有機酸としては、コハク酸、酢酸、プロピオン酸、トリフルオロ酢酸が挙げられる。
【0035】
生理活性物質の塩として、生理活性物質がカルボキシル基等の酸性基を有する場合、無機塩基(無機の遊離塩基とも称する)又は有機塩基(有機の遊離塩基とも称する)等との塩が挙げられる。無機塩基の例としては、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属、カルシウム、マグネシウム等のアルカリ土類金属が挙げられる。有機塩基の例としては、トリエチルアミン等の有機アミン類、アルギニン等の塩基性アミノ酸類が挙げられる。
【0036】
また、生理活性ペプチドは金属錯体化合物(例、銅錯体、亜鉛錯体)を形成していてもよい。生理活性ペプチドの好ましい例としては、ホルモン依存性疾患、特に性ホルモン依存性癌(例、前立腺癌、子宮癌、乳癌、下垂体腫瘍)、前立腺肥大症、子宮内膜症、子宮筋腫、思春期早発症、月経困難症、無月軽症、月差前症候群、多房性卵巣症候群等の性ホルモン依存性の疾患及び避妊(もしくは、その休業後のリバウンド効果を利用した場合には、不妊症)に有効なLH-RH誘導体又はその塩が挙げられる。さらに性ホルモン非依存性であるがLH-RH感受性である良性又は悪性腫瘍などに有効なLH-RH誘導体又はその塩も挙げられる。
【0037】
LH-RH誘導体又はその塩の具体例としては、例えば、トリートメントウィズ GnRH アナログ:コントラバーシス・アンド パースペクティブ(Treatment with GnRH analogs: Controversies and perspectives)[パルテノン パブリッシング グループ(株)(The Parthenon Publishing Group Ltd.)発行1996年]、特表平3-503165号公報、特開平3-101695号、同7-97334号及び同8-259460号公報などに記載されているペプチド類が挙げられる。
【0038】
LH-RH誘導体としては、LH-RHアゴニスト又はLH-RHアンタゴニストが挙げられる。LH-RHアンタゴニストとしては、例えば、デガレリクス、セトロレリクス又はその塩(例えば、酢酸塩)が用いられる。
【0039】
LH-RHアゴニストとしては、例えば、一般式〔II〕
5-oxo-Pro-His-Trp-Ser-Tyr-Y-Leu-Arg-Pro-Z
〔式中、YはDLeu、DAla、DTrp、DSer(tBu)、D2Mal及びDHis(ImBzl)から選ばれる残基を、ZはNH-C
2H
5又はGly-NH
2をそれぞれ示す〕で表わされる生理活性ペプチド又はその塩が挙げられる。特に、LH-RHアゴニストとしては、YがDLeuで、ZがNH-C
2H
5であるペプチド(即ち、5-oxo-Pro-His-Trp-Ser-Tyr-Dleu-Leu-Arg-Pro-NH-C
2H
5で表されるペプチド;リュープロレリン)又はその塩(例えば、酢酸塩)が好適である(本明細書中、酢酸リュープロレリンを化合物Bと称することがある)。
【0040】
生理活性物質は、好ましくはリュープロレリンまたはその塩、さらに好ましくはリュープロレリンまたはその酢酸塩、特に好ましくは酢酸リュープロレリンである。
また生理活性物質の好適な例として、WO2007/072997に記載されているAc-D-Tyr-Hyp-Asn-Thr-Phe-AzaGly-Leu-Arg(Me)-Trp-NH
2(化合物番号723)またはその塩(好ましくは酢酸塩)が挙げられる。とりわけ、化合物番号723の酢酸塩(本明細書中、化合物Aと称することがある)が好ましい。
【0041】
本明細書において乳酸重合体とは、乳酸のみから構成される重合体を意味する。
本明細書で用いられる乳酸重合体またはその塩の重量平均分子量は約5,000ないし約40,000であるが、好ましくは約5,000ないし約30,000であり、さらに好ましくは約6,000ないし約20,000である。
乳酸重合体またはその塩の分散度(重量平均分子量/数平均分子量)は、好ましくは約1.2ないし約4.0、さらに好ましくは約1.5ないし約3.5である。
なお、乳酸重合体またはその塩としては市販品を用いることができる。
【0042】
本明細書において乳酸―グリコール酸共重合体またはその塩とは、乳酸とグリコール酸とから構成される重合体またはその塩を意味する。本明細書で用いられる乳酸―グリコール酸共重合体におけるグリコール酸含有量は0重量%を超え約60重量%以下であるが、好ましくは1重量%以上55重量%以下、より好ましくは5重量%以上約50重量%以下であり、さらに好ましくは約15%以上約35%以下であり、特に好ましくは約25重量%である。
本明細書で用いられる乳酸―グリコール酸共重合体の重量平均分子量は約5,000ないし約40,000であるが、好ましくは約5,000ないし約30,000であり、さらに好ましくは約6,000ないし約20,000である。
乳酸―グリコール酸共重合体の分散度(重量平均分子量/数平均分子量)は、好ましくは約1.2ないし約4.0、さらに好ましくは約1.5ないし約3.5である。
なお、乳酸―グリコール酸共重合体としては市販品を用いることができる。
【0043】
本明細書で用いられる重量平均分子量および分散度は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)で測定した値を意味する。重量平均分子量及び各重合体含有量は、例えば、単分散ポリスチレンを基準物質としてGPCで測定したポリスチレン換算の重量平均分子量及びそれらから算出した各重合体含有量である。重量平均分子量及び各重合体含有量の測定は、例えば、高速GPC装置(東ソー(株)製;HLC−8120GPC)で行うことができ、カラムはSuperH4000×2及びSuperH2000(何れも東ソー(株)製)を使用することができる。移動相としては、テトラヒドロフランを用いることができ、流速は0.6 mL/minとすることができる。検出方法では示差屈折率を用いることができる。
【0044】
分散液製造工程S90の後、作業者は濃縮工程S92を実施する。濃縮工程S92は、水分散液をサイクロン10へ供給し、ついでその水分散液を濃縮する工程である。濃縮工程S92の具体的な内容は後述される。
【0045】
濃縮工程S92の後、凍結乾燥工程S94を実施する。凍結乾燥工程S94は、濃縮工程S92により得られた液を周知の凍結乾燥機により凍結乾燥する工程である。この工程で、マイクロカプセル分散液から水分が除去される。周知の凍結乾燥工程と本実施形態にかかる凍結乾燥工程S94との相違点は、凍結され乾燥される物の含水率である。周知の凍結乾燥工程の場合、凍結され乾燥される物は、遠心分離機又はろ過装置によって大部分の水分が除去された後のマイクロカプセルである。本実施形態にかかる凍結乾燥工程S94の場合、凍結され乾燥される物は、マイクロカプセル分散液である。マイクロカプセル分散液は、遠心分離機又はろ過装置によって大部分の水分が除去されたマイクロカプセルに比べると、大量の水分を含んでいる。その他の点において、本実施形態にかかる凍結乾燥工程S94は、周知の凍結乾燥工程と同様である。したがって、ここではその詳細な説明を繰返さない。
【0046】
[サイクロンの説明]
図2は、本実施形態にかかるサイクロン10の構造を示す図である。
図2においてサイクロン10の一部は切り欠かれている。本実施形態にかかるサイクロン10の構成は、濃縮工程S92の具体的な内容の説明に先立ち、
図2に基づいて説明される。
【0047】
本実施形態にかかるサイクロン10の素材は、日本工業規格に定めるSUS304,SUS316,又は,SUS316Lであることが好ましい。本実施形態にかかるサイクロン10の素材はSUS316Lであることが特に好ましい。本実施形態にかかるサイクロン10は、筒部20と、錐状部22と、管部24と、緩和部材26とを有している。筒部20は円筒状空間30を形成する。筒部20は筒部供給口40を有している。錐状部22は筒部20の一端に連結される。筒部20と錐状部22とは一体となっている。錐状部22は円錐状空間32を形成する。円錐状空間32は円筒状空間30と連通している。錐状部22は錐状部排出口50を有している。また、本実施形態にかかるサイクロン10は、図示しないケーシングに収容されていてもよい。そのケーシングの形状及び構造は本発明と直接の関係がない。したがって、そのケーシングの形状及び構造の説明は行わない。
【0048】
管部24は筒部20の他端に連結される。管部24は、外管60と、内管62とを有している。外管60と内管62とは二重管になっている。外管60の側面に途中排出口64が設けられている。外管60の端は塞がれている。内管62の端に管部排出口66が設けられている。途中排出口64は、筒部供給口40より管部排出口66に近い位置に設けられている。すなわち、管部排出口66から途中排出口64までの距離は管部排出口66から筒部供給口40までの距離より短い。途中排出口64は、管部排出口66より筒部供給口40に近い位置に設けられている。すなわち、筒部供給口40から途中排出口64までの距離は筒部供給口40から管部排出口66までの距離より短い。外管60の内部空間70は、円筒状空間30及び円錐状空間32と連通している。内管62の内部空間72は、円筒状空間30及び円錐状空間32と連通している。
上記管部排出口の内径は、0.1ないし3.0mmが好ましく、1.5ないし2.5mmがより好ましく、2.0mmがさらに好ましい。
【0049】
緩和部材26は錐状部22に接続される。緩和部材26は流入空間34を形成する。流入空間34にはマイクロカプセル分散液が流入する。このマイクロカプセル分散液は錐状部排出口50から排出される。緩和部材26はマイクロカプセル分散液の排出の勢いを緩和する。
上記錐状部排出口の内径は、0.1ないし2.5mmが好ましく、1.0ないし2.0mmがより好ましく、1.5mmがさらに好ましい。
【0050】
本実施形態の場合、緩和部材26は、流入口80と、流入側屈曲部82と、直管部84と、流出側屈曲部86と、濃縮分散液流出口88とを有している。流入口80は錐状部22の錐状部排出口50に連通する。これにより、円錐状空間32から流入空間34にマイクロカプセル分散液が流入できる。
流入側屈曲部82と流出側屈曲部86とは、緩和部材26の中の屈曲した部分である。これらが存在するので、本実施形態の場合、緩和部材26の形状は「Z」字状となっている。流入側屈曲部82と流出側屈曲部86とが存在するので、流入空間34に流入したマイクロカプセル分散液には抵抗がかかる。抵抗がかかるので、流入空間34に流入したマイクロカプセル分散液の勢いが緩和される。直管部84は、流入側屈曲部82と流出側屈曲部86との間のまっすぐな部分である。
【0051】
[濃縮工程の説明]
図3は、本発明の実施形態にかかる濃縮工程S92の具体的内容を示す図である。本実施形態にかかる濃縮工程S92は
図2と
図3とに基づいて説明される。本実施形態にかかる濃縮工程S92は、水分散液供給工程S100と、濃縮分散液回収工程S102と、希薄分散液回収工程S104とを有する。
【0052】
まず水分散液供給工程S100を実施する。水分散液供給工程S100は、サイクロン10の筒部供給口40へ水分散液を供給する工程である。該水分散液は、周知のポンプ、または圧力エアあるいは窒素を用いて筒部供給口40へ供給される。
上記供給時のポンプ圧は、0.3ないし1.5mPaが好ましく、0.5ないし1.0mPaがより好ましく、0.8mPaがさらに好ましい。
【0053】
水分散液供給工程S100の後、濃縮分散液回収工程S102が実施される。濃縮分散液回収工程S102は錐状部排出口50から排出されるマイクロカプセル分散液を回収する工程である。これが、本実施形態における「濃縮分散液」である。濃縮分散液回収工程S102の具体的な内容は後述される。
【0054】
濃縮分散液回収工程S102の後、希薄分散液回収工程S104が実施される。希薄分散液回収工程S104は、濃縮分散液に比べてマイクロカプセル濃度の低いマイクロカプセル分散液を回収する工程である。これが、本実施形態における「希薄分散液」である。希薄分散液回収工程S104の具体的な内容は後述される。
【0055】
[濃縮分散液回収工程の説明]
図4は、本発明の実施形態にかかる濃縮分散液回収工程S102の具体的内容を示す図である。本実施形態にかかる濃縮分散液回収工程S102は
図2と
図4とに基づいて説明される。本実施形態にかかる濃縮分散液回収工程S102は、流入工程S110と、排出工程S112とを有する。
【0056】
まず流入工程S110が実施される。流入工程S110は、円錐状空間32内から流入空間34へ濃縮分散液が流入する工程である。本実施形態の場合、この工程は、水分散液供給工程S100に続いて自動的に実施される。このため、錐状部排出口50から流入口80までの区間はまっすぐで短い管により予め接続されている。サイクロン10の中で濃縮分散液にかかる圧力は、緩和部材26内の気圧(流入空間34の気圧)より高い。これにより、円錐状空間32から流入空間34へ濃縮分散液が流入する時、錐状部排出口50から濃縮分散液が噴出することとなる。錐状部排出口50から噴出した濃縮分散液には、流入空間34内で抵抗がかかる。抵抗がかかるので、錐状部排出口50を出た濃縮分散液にかかる圧力は緩和部材26の外の気圧より高くなる。濃縮分散液にかかる圧力が緩和部材26の外の気圧より高いと、逆の場合に比べ、濃縮分散液の排出の勢いが緩和される。
【0057】
流入工程S110の後、排出工程S112が実施される。排出工程S112は緩和部材26(流入空間34)内の濃縮分散液を緩和部材26の外へ排出する工程である。本実施形態の場合、この工程は流入工程S110に続いて自動的に実施される。このため、緩和部材26の下流側には図示しない容器が予め設置されている。既に濃縮分散液の排出の勢いは緩和されているので、濃縮分散液は緩和部材26の外へ出る際に噴出が抑制される。
【0058】
[希薄分散液回収工程の説明]
図5は、本発明の実施形態にかかる希薄分散液回収工程S104の具体的内容を示す図である。本実施形態にかかる希薄分散液回収工程S104は
図4と
図5とに基づいて説明される。本実施形態にかかる希薄分散液回収工程S104は、管部排出液回収工程S120と、途中排出液回収工程S122とを有する。
【0059】
まず、管部排出液回収工程S120が実施される。管部排出液回収工程S120は管部排出口66から排出されるマイクロカプセル分散液を回収する工程である。このマイクロカプセル分散液が、本実施形態における「管部排出液」である。管部排出液は筒部供給口40へ供給されたマイクロカプセルの水分散液に比べマイクロカプセルの濃度が低い。管部排出液を回収するための具体的な方法は特に限定されない。たとえば、それは周知の容器を設置することであってもよい。
【0060】
また、途中排出液回収工程S122が実施される。途中排出液回収工程S122は、途中排出口64から排出されるマイクロカプセル分散液を回収する工程である。このマイクロカプセル分散液が、本実施形態における「途中排出液」である。途中排出液は濃縮分散液に比べマイクロカプセルの濃度が低い。途中排出液を回収するための具体的な方法は特に限定されない。たとえば、それも、管部排出液回収工程S120と同様に、周知の容器を設置することであってもよい。なお、
図5では管部排出液回収工程S120の実施後に途中排出液回収工程S122が実施されることが示されているが、管部排出液回収工程S120の実施前に途中排出液回収工程S122が実施されてもよい。管部排出液回収工程S120と途中排出液回収工程S122とが並行して実施されてもよい。
【0061】
[変形例の説明]
今回開示された実施形態はすべての点で例示である。本発明の範囲は上述した実施形態に基づいて制限されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の設計変更をしてもよいのはもちろんである。
【0062】
例えば、本発明にかかるマイクロカプセル粉末の製造方法は、凍結乾燥工程S94とは異なる、濃縮分散液から水分を除去するための工程を有していてもよい。
【0063】
また、本発明にかかるマイクロカプセル粉末の製造方法において、緩和部材26の構造は上述したものに限定されない。例えば、上述した緩和部材26に代えて、周知のアキュームレータを備える管が緩和部材として用いられてもよい
。
【0064】
また、錐状部22の形状は、厳密な意味での円錐状でなくともよい。たとえば、錐状部の形状は錐台状(錐体の尖った部分が取り除かれて平面となっている形状)に近い形状であってもよい。この場合、その錐台の先端の平面部分に濃縮分散液排出口が設けられてもよい。
本発明のマイクロカプセル粉末の製造方法は、その濃縮工程で非常に小さい粒子径(例、5μm以下)のマイクロカプセルが除去されることが好ましい。非常に小さい粒子径(例、5μm以下)のマイクロカプセルが除去されることにより、マイクロカプセル個数当りの平均粒子径および体積当りの平均粒子径が大きくなり、生理活性物質のマイクロカプセルからの初期過剰放出を抑制し、生理活性物質のマイクロカプセルからの長期にわたる安定的な放出を実現できる。なお、非常に小さい粒子径のマイクロカプセルを除去するためには、管部排出口66が設けられているサイクロン10が適している。
【0065】
本発明に用いられるサイクロンの構造は
図2に示されたものと異っていてもよい。例えば、管部24に代えて円筒形の管が取り付けられており、かつ、その他の点は
図2に示されたサイクロン10と同一の構造のサイクロン(以下このサイクロンを「2液分級サイクロン」と称する)が本発明に用いられてもよい。2液分級サイクロンの場合、
図2に示されたサイクロン10の管部排出口66の相当する箇所の内径(管部24に代えて取り付けられる管の内径)は、0.1ないし10.0mmが好ましく、5.0ないし7.0mmがより好ましく、6.0mmがさらに好ましい。
【0066】
[実施例の説明]
以下、本発明の実施例が説明される。ただし、本発明は以下の実施例に限定されない。
【実施例1】
【0067】
この実施例では上述したサイクロン10と同一構造のサイクロン(図示せず)が使用された。ただし、このサイクロンは、
図2に示したサイクロン10と異なり、ケーシングに収容されている。その本実施例で使用されたサイクロンの錐状部排出口の内径は1.0mmであった。そのサイクロンの途中排出口の内径は6.0mmであった。このサイクロンの管部排出口の内径は、2.0mmであった。このサイクロンには周知のポンプが接続されていた。そのポンプが供給する流体の圧力は0.6MPaであった。
【0068】
以下においてこの実施例における作業手順が説明される。まず、酢酸1932.0gとメタノール644.0gを混合し、酢酸・メタノール混液が調製された。次に乳酸グリコール酸共重合体(L/G比=75/25 重量平均分子量10000 和光純薬工業社製)2807.7gがジクロロメタン3864.0gに溶解されポリマー溶解液が調製された。上記ポリマー溶解液6671.7gに酢酸・メタノール混合液2576.0gを混合してO相を得た。次いで、このO相を0.2μmフィルター(PHOBIC DURAPOREOPTICAXL5:Millipore社)で濾過した。その後、予め約18℃(291.15K)にしておいた0.1%(w/w)ポリビニルアルコール(EG−40、日本合成化学製)水溶液200リットル(0.2立方メートル)中にこのO相8041.5gが注入された。そのO相が注入された水溶液はタービン型ホモミキサー(特殊機化製)によって二次乳化された(タービン回転数約7,000rpm)。これによりO/Wエマルションが形成された。このO/Wエマルションは約3時間攪拌 (水中乾燥工程)された後、75マイクロメートルの標準篩を用いて篩過された。これにより、75マイクロメートルの標準篩を通過できないマイクロカプセルはO/Wエマルションから取り除かれた。篩過の後、流速500mL/minにてO/Wエマルションが濾布式遠心機(HC−130C特型、コクサン製)に送液され、マイクロカプセルが回収された。このマイクロカプセル回収液にマンニトール338.8gが添加され、凍結乾燥機(DFM−05A−S特,ULVAC社製)で凍結乾燥された。これによりマイクロカプセル粉末が得られた。0.1%ポリビニルアルコール(PVA)水溶液20リットル中へ140g(0.14kg)の上記マイクロカプセル粉末が分散された。これにより水分散液が製造された。水分散液におけるマイクロカプセルの濃度は約6.0g/リットル(約6kg/立方メートル)である。水分散液が製造された後、濃縮工程S92が実施された。これにより、錐状部排出口50と、途中排出口64と、管部排出口66とから、マイクロカプセル分散液が回収された。錐状部排出口50から回収されたマイクロカプセル分散液が濃縮分散液である。途中排出口64から回収されたマイクロカプセル分散液が途中排出液である。管部排出口66から回収されたマイクロカプセル分散液が管部排出液である。途中排出液は水分散液と自動的に混合された(この混合は、上述したポンプからサイクロン10までの流路に途中排出液の流路が接続されることにより実現される)。管部排出液は廃棄された。水分散液の供給が終了した直後、洗浄のため、上述したポンプによってサイクロン10に約2リットル(0.002立方メートル)の蒸留水が供給された。蒸留水の供給後、上述したポンプによってサイクロン10に濃縮分散液が供給された。これにより、濃縮分散液はさらに濃縮された。その濃縮の結果途中排出口64から排出された液は濃縮分散液と自動的に混合された。濃縮された濃縮分散液が回収された後、その濃縮された濃縮分散液は周知の凍結乾燥機により凍結乾燥された。また、管部排出液は周知の凍結乾燥機により凍結乾燥された。
【実施例2】
【0069】
この実施例では実施例1で使用されたサイクロンと同様のサイクロンが使用された。ただし、このサイクロンの管部排出口の内径が1.5mmである点で、実施例1で使用されたサイクロンとは異なる。その他の点は実施例1で使用されたサイクロンと同様である。作業手順は実施例1と同様である。
【実施例3】
【0070】
この実施例では実施例1で使用されたサイクロンと同様のサイクロンが使用された。ただし、このサイクロンの錐状部排出口の内径が1.5mmである点で、実施例1で使用されたサイクロンとは異なる。その他の点は実施例1で使用されたサイクロンと同様である。作業手順は実施例1と同様である。
【実施例4】
【0071】
この実施例では実施例1で使用されたサイクロンと同様のサイクロンが使用された。ただし、このサイクロンの錐状部排出口の内径が1.5mmであり、また管部排出口の内径が1.5mmである点で、実施例1で使用されたサイクロンとは異なる。その他の点は実施例1で使用されたサイクロンと同様である。作業手順は実施例1と同様である。
【実施例5】
【0072】
この実施例では実施例1で使用されたサイクロンと同様のサイクロンが使用された。このサイクロンには周知のポンプが接続されていた。そのポンプが供給する流体の圧力は0.8MPaであった。その他の点は実施例1で使用されたサイクロンと同様である。作業手順は実施例1と同様である。
【実施例6】
【0073】
この実施例では実施例1で使用されたサイクロンと同様のサイクロンが使用された。ただし、このサイクロンの管部排出口の内径が1.5mmである点と、このサイクロンに接続された周知のポンプが供給する流体の圧力が0.8MPaである点で、実施例1で使用されたサイクロンとは異なる。その他の点は実施例1で使用されたサイクロンと同様である。作業手順は実施例1と同様である。
【実施例7】
【0074】
この実施例では実施例1で使用されたサイクロンと同様のサイクロンが使用された。ただし、このサイクロンの錐状部排出口の内径が1.5mmである点、管部排出口の内径が2.0mmである点、及びこのサイクロンに接続された周知のポンプが供給する流体の圧力が0.8MPaである点で、実施例1で使用されたサイクロンとは異なる。その他の点は実施例1で使用されたサイクロンと同様である。作業手順は実施例1と同様である。
【0075】
[実施例1ないし実施例7にかかる実験結果]
実施例1ないし実施例7にかかる実験結果を表1に示す。表1に示されているのは、サイクロンの処理速度(サイクロンに供給される水分散液の流量)と、濃縮された濃縮分散液中のマイクロカプセルの平均粒子径(濃縮液平均粒子径)と、管部排出液中のマイクロカプセルの平均粒子径(管部液平均粒子径)と、回収率とである。回収率は、凍結乾燥の結果得られたマイクロカプセル末の質量÷0.1%ポリビニルアルコール水溶液中へ分散させたマイクロカプセル末の質量×100である。
【表1】
【0076】
実施例1から7の検討から、ポンプ圧、錐状部排出口の内径および管部排出口の内径を適宜設定することにより、サイクロンを用いてマイクロカプセルの水分散液を濃縮できることが判明した。
特に、ポンプ圧を0.8MPa、錐状部排出口の内径を1.5mm、管部排出口の内径を2.0mmとした場合には、処理速度が高く、回収率に優れた濃縮が可能であった。
【実施例8】
【0077】
この実施例では実施例7と同一のサイクロンが使用された。このサイクロンには実施例7と同一のポンプが接続されていた。
【0078】
以下においてこの実施例における作業手順が説明される。本実験では、実施例1に記載されたマイクロカプセル粉末140gを0.1%ポリビニルアルコール(PVA)水溶液20リットル中へ分散され、マイクロカプセルの水分散液が製造された。該水分散液におけるマイクロカプセルの濃度は約6.0g/リットル(約6kg/立方メートル)である。該水分散液を、濃縮工程S92に供した。これにより、錐状部排出口50と、途中排出口64と、管部排出口66とから、マイクロカプセル分散液が回収された。途中排出液は1分(60秒)ごとに10ミリリットル(10マイクロ立方メートル)ずつ採取された。残りの途中排出液は実施例1と同様の方法により水分散液と自動的に混合された。管部排出液は廃棄された。採取された途中排出液は周知の凍結乾燥機により凍結乾燥された。
【0079】
[実施例8にかかる実験結果]
実施例8にかかる実験結果を表2に示す。表2に示されているのは、サンプリング時間(すなわちサイクロンによる処理の経過時間)が途中排出液中のマイクロカプセルの平均粒子径(途中排出液平均粒子径)とマイクロカプセルの乾燥質量とに及ぼす影響である。
【表2】
表2の結果から、経過時間が10分(600秒)以上の場合に途中排出液平均粒子径と乾燥質量との変動が少なくなることは明らかである。
【実施例9】
【0080】
この実施例では実施例7と同一のサイクロンが使用された。このサイクロンには実施例7と同一のポンプが接続されていた。
【0081】
以下においてこの実施例における作業手順が説明される。水分散液が製造された後、濃縮工程S92が実施された。これにより、錐状部排出口50と、途中排出口64と、管部排出口66とから、マイクロカプセル分散液が回収された。途中排出液は実施例1と同様の方法により水分散液と自動的に混合された。管部排出液は廃棄された。水分散液の濃縮は10分間(600秒間)継続された。濃縮が10分間(600秒間)継続された後、その時点で水分散液と混合されていなかった途中排出液は廃棄された。水分散液の供給が終了した直後、洗浄のため、上述したポンプによってサイクロン10に約2リットル(0.002立方メートル)の蒸留水が供給された。蒸留水の供給後、濃縮分散液は周知の凍結乾燥機により凍結乾燥された。凍結乾燥の後、水分散液の製造から凍結乾燥までの作業が2回繰返された。これにより、水分散液の製造から凍結乾燥までの作業が3回繰返されたことになる。
【0082】
[実施例9にかかる実験結果]
実施例9にかかる実験結果を表3に示す。表3に示されているのは、上述した作業それぞれにおける、処理速度と、濃縮率と、管部液平均粒子径と、回収率とである。濃縮率は、回収された濃縮分散液の体積÷サイクロンに供給した水分散液の体積×100である。
【表3】
表3の結果から、処理速度と、濃縮率と、回収率と、平均粒子径とにおいて、再現性があることは明らかである。
【実施例10】
【0083】
この実施例では実施例7と同一のサイクロンが5本使用された。これらのサイクロンには周知のポンプが1台接続されていた。
【0084】
以下においてこの実施例における作業手順が説明される。0.01重量%PVA液40リットル(0.04立方メートル)に240gのマイクロカプセル粉末が分散された。これにより、マイクロカプセルの水分散液と同様の物が製造された。これが本実施例における「水分散液」である。水分散液におけるマイクロカプセルの濃度は約5.2g/リットル(約5.2kg/立方メートル)である。水分散液が製造された後、濃縮工程S92と同一の作業が実施された。これにより、錐状部排出口50と、途中排出口64と、管部排出口66とから、マイクロカプセル分散液が回収された。サイクロン10への水分散液の供給開始から2分間(120秒間)、途中排出液は水分散液と自動的に混合された(この混合は、上述したポンプからサイクロン10までの流路に途中排出液の流路が接続されることにより実現される)。管部排出液が廃棄された。サイクロン10への水分散液の供給開始から120秒間経過後、作業者は濃縮分散液にマンニトールを約30g(約0.030kg)加えた。マンニトールが加えられた後、その濃縮分散液は周知の凍結乾燥機により凍結乾燥された。
【0085】
[実施例10にかかる実験結果]
この実施例における処理速度は16リットル/分(0.000267立方メートル/秒)であった。濃縮倍率は16.7倍であった。回収率は78.3%であった。管部液平均粒子径は5.7マイクロメートルであった。途中排出液(濃縮が120秒間継続された時点のもの)の平均粒子径は6.2マイクロメートルであった。濃縮分散液の平均粒子径は19.9マイクロメートルであった。濃縮倍率は、サイクロン10に供給した水分散液の体積÷回収された濃縮分散液の体積である。
【実施例11】
【0086】
この実施例では上述した実施例7と同一のサイクロンが使用された。このサイクロンには周知のポンプが接続されていた。
【0087】
以下においてこの実施例におけるマイクロカプセル粉末の製造手順が説明される。乳酸グリコール酸共重合体(L/G比=75/25 重量平均分子量7800 和光純薬工業社製)138.0gがジクロロメタン252.5gに溶解された。これにより得られた溶液の312.4gと、化合物Aの粉末14.8gが注射用蒸留水12.0gに溶解した溶液とが混合された。これにより得られた混合物は、小型ミニミキサー(ロボミックスPrimix社製)で乳化された(回転数10000rpm、時間60秒)。これにより、W/Oエマルションが形成された。次いで、このW/Oエマルションの温度が32℃(305.15K)に調整された。温度調整が終わった後、予め約18℃(291.15K)にしておいた0.01%(w/w)ポリビニルアルコール(EG−40、日本合成化学製)水溶液20リットル(0.02立方メートル)中にこのW/Oエマルションが注入された。そのW/Oエマルションが注入された水溶液はタービン型ホモミキサー(特殊機化製)によって二次乳化された(タービン回転数約7,000rpm)。これによりW/O/Wエマルションが形成された。このW/O/Wエマルションは約3時間攪拌 (水中乾燥工程)された後、75マイクロメートルの標準篩を用いて篩過された。これにより、75マイクロメートルの標準篩を通過できないマイクロカプセルはW/O/Wエマルションから取り除かれた。篩過の後、上述したサイクロン10を用いてW/O/Wエマルション(すなわちマイクロカプセルの水分散液)は濃縮された。途中排出液は実施例1と同様の方法によりW/O/Wエマルションと自動的に混合された。濃縮が12分間(720秒間)継続された後、その時点でW/O/Wエマルションと混合されていなかった途中排出液は廃棄された。10分間(600秒)の濃縮によって得られた濃縮分散液は、0.63リットル(6.3×10
−4立方メートル)であった。この濃縮分散液に、マンニトール16.0gが添加された。マンニトールの添加の後、この濃縮分散液は凍結乾燥機(DFM−05A−S特,ULVAC社製)で凍結乾燥された。これによりマイクロカプセル粉末が得られた。この実施例における処理速度は1.9リットル/分(3.17×10
−5立方メートル/秒)であった。この実施例における濃縮倍率は38.1倍であった。この実施例における回収率は74.4%であった。管部排出液におけるマイクロカプセルの平均粒子径は4.5マイクロメートルであった。途中排出液(濃縮が720秒間継続された時点のもの)におけるマイクロカプセルの平均粒子径は5.4マイクロメートルであった。凍結乾燥により得られたマイクロカプセル粉末の平均粒子径(濃縮分散液平均粒子径)は26.7マイクロメートルであった。凍結乾燥により得られたマイクロカプセル粉末の化合物含量は8.4%であった。このマイクロカプセル粉末の粒度分布は
図6に示される。
図6に示されているグラフにおいて横軸はマイクロカプセルの直径を意味する。このグラフにおいて縦軸はマイクロカプセル粉末中のマイクロカプセルの個数を意味する。このグラフの作成のため、マイクロカプセル粉末中のマイクロカプセルの個数は複数回繰返して数えられている。このグラフに示されている個数は、そのようにして数えられた個数の平均値を意味している。
【実施例12】
【0088】
この実施例では上述した実施例7と同一のサイクロンが使用された。このサイクロンには周知のポンプが接続されていた。
【0089】
以下においてこの実施例におけるマイクロカプセル粉末の製造手順が説明される。化合物Aの粉末12.0gが12.0gの純水に溶解された。ポリ乳酸グリコール酸共重合体(L/G比=75/25 重量平均分子量8200 和光純薬工業社製)138.0gがジクロロメタン252.5gで溶解された。これにより得られた溶液の312.4gと、上述した化合物Aの水溶液とが混合された。これにより得られた混合物は、小型ミニミキサー(ロボミックスPrimix社製)で乳化された(回転数10000rpm、時間60秒)。これにより、W/Oエマルションが形成された。次いで、予め約18℃(291.15K)に調整された0.01%(w/w)ポリビニルアルコール(EG−40、日本合成化学製)水溶液40リットル(0.04立方メートル)中にこのW/Oエマルションが注入された。そのW/Oエマルションが注入された水溶液はタービン型ホモミキサー(Primix製)によって二次乳化された(タービン回転数約7,000rpm)。これによりW/O/Wエマルションが形成された。このW/O/Wエマルションは約3時間攪拌 (水中乾燥工程)された後、75マイクロメートルの標準篩を用いて篩過された。これにより、75マイクロメートルの標準篩を通過できないマイクロカプセルはW/O/Wエマルションから取り除かれた。篩過の後、上述したサイクロン10を用いてW/O/Wエマルション(すなわちマイクロカプセルの水分散液)は濃縮された。途中排出液は実施例1と同様の方法によりW/O/Wエマルションと自動的に混合された。濃縮が12分間(720秒間)継続された後、その時点でW/O/Wエマルションと混合されていなかった途中排出液は作業者により廃棄された。10分間(600秒)の濃縮によって得られた濃縮分散液は、0.68リットル(6.8×10
−4立方メートル)であった。この濃縮分散液に、マンニトール15.2gが添加された。マンニトールの添加の後、この濃縮分散液は凍結乾燥機(DFM−05A−S特,ULVAC社製)で凍結乾燥された。これによりマイクロカプセル粉末が得られた。回収率は67.5%であった。得られたマイクロカプセル粉末の化合物含量は8.2%であった。得られたマイクロカプセル粉末の平均粒子径は26.7マイクロメートルであった。このマイクロカプセル粉末の粒度分布は
図7に示される。
図7に示されているグラフにおいて横軸はマイクロカプセルの直径を意味する。このグラフにおいて縦軸はマイクロカプセル粉末中のマイクロカプセルの個数を意味する。このグラフの作成のため、マイクロカプセル粉末中のマイクロカプセルの個数は複数回繰返して数えられている。このグラフに示されている個数は、そのようにして数えられた個数の平均値を意味している。
【0090】
実施例11および12の検討から、本発明の実施形態にかかるマイクロカプセル粉末の製造方法により、約5〜約10μmの粒子径を有する粒子の割合が低い、約5〜約70μmの粒子径を含むマイクロカプセル粉末を製造できることが判明した。
【実施例13】
【0091】
この実施例では上述した実施例7と同一のサイクロンが5本使用された。これらのサイクロンには周知のポンプが1台接続されていた。
【0092】
以下においてこの実施例におけるマイクロカプセル粉末の製造手順が説明される。乳酸グリコール酸共重合体(L/G比=75/25 重量平均分子量8200 和光純薬工業社製)315.0gがジクロロメタン525.2gに溶解された。これにより得られた溶液646.3gと注射用蒸留水24.0gとが混合された。これにより得られた混合物は、小型ミニミキサー(ロボミックスPrimix社製)で乳化された(回転数10000rpm、時間60秒)。これにより、W/Oエマルションが形成された。次いで、予め約18℃(291.15K)に調整された0.01%(w/w)ポリビニルアルコール(EG−40、日本合成化学製)水溶液40リットル(0.04立方メートル)中にこのW/Oエマルションが注入された。そのW/Oエマルションが注入された水溶液はタービン型ホモミキサー(Primix製)によって二次乳化された(タービン回転数約7,000rpm)。これによりW/O/Wエマルションが形成された。このW/O/Wエマルションは約3時間攪拌 (水中乾燥工程)された後、75マイクロメートルの標準篩を用いて篩過された。これにより、75マイクロメートルの標準篩を通過できないマイクロカプセルはW/O/Wエマルションから取り除かれた。篩過の後、上述した5本のサイクロン10を用いてW/O/Wエマルション(すなわちマイクロカプセルの水分散液)は濃縮された。途中排出液は実施例1と同様の方法によりW/O/Wエマルションと自動的に混合された。濃縮が12分間(720秒間)継続された後、その時点でW/O/Wエマルションと混合されていなかった途中排出液は廃棄された。濃縮分散液の量は、2.26リットル(0.00226立方メートル)であった。この濃縮分散液に、マンニトール30.0gが添加された。マンニトールの添加の後、この濃縮分散液は凍結乾燥機(DFM−05A−S特,ULVAC社製)で凍結乾燥された。これによりマイクロカプセル粉末が得られた。処理速度は15.5リットル/分(2.583×10
−4立方メートル/秒)であった。濃縮倍率は17.7倍であった。回収率は62.8%であった。管部排出液におけるマイクロカプセルの平均粒子径は4.3マイクロメートルであった。途中排出液(濃縮が120秒間継続された時点のもの)におけるマイクロカプセルの平均粒子径は5.6マイクロメートルであった。凍結乾燥により得られたマイクロカプセル粉末の平均粒子径は23.6マイクロメートルであった。
【実施例14】
【0093】
この実施例では上述した実施例7と同一のサイクロンが5本使用された。このサイクロンには周知のポンプが接続されていた。
【0094】
以下においてこの実施例におけるマイクロカプセル粉末の製造手順が説明される。乳酸グリコール酸共重合体(L/G比=75/25 重量平均分子量10000 和光純薬工業社製) 2700.0gがジクロロメタン4545.0gに溶解された。これにより得られた溶液の6440.0gと注射用蒸留水240.0gとが混合された。これにより得られた混合物は、小型ミニミキサー(ロボミックスPrimix社製)で乳化された(回転数10000rpm、時間60秒)。これにより、W/Oエマルションが形成された。次いで、予め約18℃(291.15K)に調整された0.01%(w/w)ポリビニルアルコール(EG−40、日本合成化学製)水溶液200リットル(0.200立方メートル)中にこのW/Oエマルションが注入された。そのW/Oエマルションが注入された水溶液はタービン型ホモミキサー(Primix製)によって二次乳化された(タービン回転数約7,000rpm)。これによりW/O/Wエマルションが形成された。このW/O/Wエマルションは約3時間攪拌 (水中乾燥工程)された後、75マイクロメートルの標準篩を用いて篩過された。これにより、75マイクロメートルの標準篩を通過できないマイクロカプセルはW/O/Wエマルションから取り除かれた。篩過の後、上述した5本のサイクロン10を用いてW/O/Wエマルション(すなわちマイクロカプセルの水分散液)は濃縮された。途中排出液は実施例1と同様の方法によりW/O/Wエマルションと自動的に混合された。濃縮が10分間(600秒間)継続された後、その時点でW/O/Wエマルションと混合されていなかった途中排出液は廃棄された。これにより得られた濃縮分散液に、マンニトール338.3gが添加された。マンニトールの添加後、この濃縮分散液は凍結乾燥機(DFM−05A−S特,ULVAC社製)で凍結乾燥された。これによりマイクロカプセル粉末1900.2gが得られた。
【実施例15】
【0095】
この実施例では上述した
図2に示すサイクロン10が使用された。このサイクロンの素材はSUS316Lである。このサイクロン10には周知のポンプが接続されていた。
【0096】
以下においてこの実施例におけるマイクロカプセル粉末の製造手順が説明される。化合物Aの粉末(含量81.2%)14.8gが12.0gの純水に溶解された。乳酸グリコール酸共重合体(L/G比=75/25 重量平均分子量8200 和光純薬工業社製)138.1gがジクロロメタン252.5gに溶解された。これにより得られた溶液312.5gと、上述した化合物Aの水溶液とが混合された。これにより得られた混合物は、小型ミニミキサー(ロボミックスPrimix社製)で乳化された(回転数10000rpm、時間60秒)。これにより、W/Oエマルションが形成された。次いで、予め約18℃(291.15K)に調整された0.01%(w/w)ポリビニルアルコール(EG−40、日本合成化学製)水溶液40リットル(0.04立方メートル)中にこのW/Oエマルションが注入された。このポリビニルアルコール水溶液は、ホモミキサー付タンク(Primix製)に入っている。そのW/Oエマルションが注入された水溶液はそのホモミキサーによって二次乳化された(タービン回転数約7,000rpm)。これによりW/O/Wエマルションが形成された。このW/O/Wエマルションは約3時間攪拌 (水中乾燥工程)された後、75マイクロメートルの標準篩を用いて篩過された。これにより、75マイクロメートルの標準篩を通過できないマイクロカプセルはW/O/Wエマルションから取り除かれた。篩過の後、上述したサイクロン10を用いてW/O/Wエマルション(すなわちマイクロカプセルの水分散液)は濃縮された。途中排出液と管部排出液とは廃棄された。得られた濃縮分散液は、0.5リットル(0.0005立方メートル)であった。この濃縮分散液に、マンニトール15.2gが添加された。マンニトールの添加の後、この濃縮分散液は凍結乾燥機(DFM−05A−S特,ULVAC社製)で凍結乾燥された。これによりマイクロカプセル粉末が得られた。回収率は64.6%であった。得られたマイクロカプセル粉末の化合物含量は7.3%であった。得られたマイクロカプセル粉末の平均粒子径は31.0マイクロメートルであった。このマイクロカプセル粉末の粒度分布は
図8に示される。
図8に示されているグラフにおいて横軸はマイクロカプセルの直径を意味する。このグラフにおいて縦軸はマイクロカプセル粉末中のマイクロカプセルの個数を意味する。このグラフの作成のため、マイクロカプセル粉末中のマイクロカプセルの個数は複数回繰返して数えられている。このグラフに示されている個数は、そのようにして数えられた個数の平均値を意味している。
図8から、本発明の実施形態にかかるマイクロカプセル粉末の製造方法により、約5〜約10μmの粒子径を有する粒子の割合が低い、約5〜約70μmの粒子径を含むマイクロカプセル粉末を製造できることが判明した。
【0097】
このマイクロカプセル粉末をラット(Jcl:SD、♂、投与時7週齢)の皮下に注射(1.6mg/rat)し、その後、そのラットを用いて血中薬物濃度評価試験を実施した。その結果5週以上に渡ってこのマイクロカプセル粉末から良好に薬物が放出されたことを確認した。このマイクロカプセル粉末は、遠心分離機にて回収したマイクロカプセル粉末とほとんど同様に薬物を放出した。ラットの血中薬物濃度と皮下注射後の経過期間との関係を
図9に示す。
図9に示されているグラフの縦軸は化合物Aの血中濃度を意味する。このグラフの横軸は注射以降の経過時間を意味する。このグラフの三角印は遠心分離機を用いて液体成分が除去されたマイクロカプセルについてのデータを意味する。このグラフの丸印は本実施例にかかるマイクロカプセルについてのデータを意味する。
【実施例16】
【0098】
この実施例では上述した実施例15と同一のサイクロン10が使用された。このサイクロン10には周知のポンプが接続されていた。
【0099】
以下においてこの実施例におけるマイクロカプセル粉末の製造手順が説明される。化合物Aの粉末(化合物含量81.2%)22.2gが84.0gのメタノールに溶解された。乳酸グリコール酸共重合体(L/G比=75/25 重量平均分子量8000 和光純薬工業社製)130.4gがジクロロメタン223.1gに溶解された。これにより得られた溶液の282.8gと、上述した化合物Aのメタノール溶液とを混合した。これによりO相が形成された。次いで、予め約18℃(291.15K)に調整された0.01%(w/w)ポリビニルアルコール(EG−40、日本合成化学製)水溶液40リットル(0.04立方メートル)中にこのO相が注入された。このポリビニルアルコール水溶液は、ホモミキサー付タンク(Primix製)に入っている。そのO相が注入された水溶液はそのホモミキサーによって二次乳化された(タービン回転数約7,000rpm)。これによりO/Wエマルションが形成された。このO/Wエマルションは約3時間攪拌 (水中乾燥工程)された後、75マイクロメートルの標準篩を用いて篩過された。これにより、75マイクロメートルの標準篩を通過できないマイクロカプセルはO/Wエマルションから取り除かれた。篩過の後、上述したサイクロン10を用いてO/Wエマルション(すなわちマイクロカプセルの水分散液)は濃縮された。途中排出液と管部排出液とは廃棄された。得られた濃縮分散液は、0.6リットル(0.0006立方メートル)であった。この濃縮分散液に、マンニトール16.9gが添加された。マンニトールの添加の後、この濃縮分散液は凍結乾燥機(DFM−05A−S特,ULVAC社製)で凍結乾燥された。これによりマイクロカプセル粉末97.3gが得られた。回収率は74.8%であった。得られたマイクロカプセル粉末の化合物含量は11.7%であった。得られたマイクロカプセル粉末の平均粒子径は32.0マイクロメートルであった。このマイクロカプセル粉末の粒度分布は
図10に示される。
図10に示されているグラフにおいて横軸はマイクロカプセルの直径を意味する。このグラフにおいて縦軸はマイクロカプセル粉末中のマイクロカプセルの個数を意味する。このグラフの作成のため、マイクロカプセル粉末中のマイクロカプセルの個数は複数回繰返して数えられている。このグラフに示されている個数は、そのようにして数えられた個数の平均値を意味している。
【0100】
図10から、本発明の実施形態にかかるマイクロカプセル粉末の製造方法により、約5〜約10μmの粒子径を有する粒子の割合が低い、約5〜約70μmの粒子径を含むマイクロカプセル粉末を製造できることが判明した。
【0101】
このマイクロカプセル粉末をラット(Jcl:SD、♂、投与時7週齢)の皮下に注射(1.6mg/rat)し、その後、そのラットを用いて血中薬物濃度評価試験を実施した。その結果5週以上に渡ってこのマイクロカプセル粉末から良好に薬物が放出されたことが確認された。ラットの血中薬物濃度と皮下注射後の経過期間との関係を
図11に示す。
図11に示されているグラフの縦軸は化合物Aの血中濃度を意味する。このグラフの横軸は注射以降の経過時間を意味する。
【0102】
また、このマイクロカプセル粉末をイヌ(ビーグル♂、投与時8〜9カ月齢)の皮下に注射(0.5mg/kg)し、その後、そのイヌを用いて血中薬物濃度評価試験を実施した。その結果6週以上に渡ってこのマイクロカプセル粉末から良好に薬物が放出されたことが確認された。イヌの血中薬物濃度と皮下注射後の経過期間との関係を
図12に示す。
図12に示されているグラフの縦軸は化合物Aの血中濃度を意味する。このグラフの横軸は注射以降の経過時間を意味する。
【実施例17】
【0103】
この実施例では上述した実施例15と同一のサイクロン10が使用された。このサイクロン10には周知のポンプが接続されていた。
【0104】
以下においてこの実施例におけるマイクロカプセル粉末の製造手順が説明される。化合物Aの粉末(含量81.2%)22.2gが84.0gのメタノールに溶解された。これにより、化合物Aのメタノール溶液が得られた。乳酸グリコール酸共重合体(L/G比=75/25 重量平均分子量7900 和光純薬工業社製)129.0gがジクロロメタン223.1gに溶解された。これにより得られた溶液281.7gと、上述した化合物Aのメタノール溶液とが混合された。これによりO相が形成された。次いで、予め約18℃(291.15K)に調整された0.01%(w/w)ポリビニルアルコール(EG−40、日本合成化学製)水溶液40リットル(0.04立方メートル)中にこのO相が注入された。このポリビニルアルコール水溶液は、ホモミキサー付タンク(Primix製)に入っている。そのO相が注入された水溶液はそのホモミキサーによって二次乳化された(タービン回転数約7,000rpm)。これによりO/Wエマルションが形成された。このO/Wエマルションは約3時間攪拌 (水中乾燥工程)された後、75マイクロメートルの標準篩を用いて篩過された。これにより、75マイクロメートルの標準篩を通過できないマイクロカプセルはO/Wエマルションから取り除かれた。篩過の後、上述したサイクロン10を用いてO/Wエマルション(すなわちマイクロカプセルの水分散液)は濃縮された。途中排出液と管部排出液とは廃棄された。得られた濃縮分散液は、0.53リットル(0.00053立方メートル)であった。この濃縮分散液に、マンニトール16.9gが添加された。マンニトールの添加の後、この濃縮分散液は凍結乾燥機(DFM−05A−S特,ULVAC社製)で凍結乾燥された。これによりマイクロカプセル粉末95.9gが得られた。回収率は69.5%であった。得られたマイクロカプセル粉末の化合物含量は11.9%であった。得られたマイクロカプセル粉末の平均粒子径は26.6マイクロメートルであった。このマイクロカプセル粉末の粒度分布は
図13に示される。
図13に示されているグラフにおいて横軸はマイクロカプセルの直径を意味する。このグラフにおいて縦軸はマイクロカプセル粉末中のマイクロカプセルの個数を意味する。このグラフの作成のため、マイクロカプセル粉末中のマイクロカプセルの個数は複数回繰返して数えられている。このグラフに示されている個数は、そのようにして数えられた個数の平均値を意味している。
図13から、本発明の実施形態にかかるマイクロカプセル粉末の製造方法により、約5〜約10μmの粒子径を有する粒子の割合が低い、約5〜約70μmの粒子径を含むマイクロカプセル粉末を製造できることが判明した。
【0105】
このマイクロカプセル粉末をラット(Jcl:SD、♂、投与時7週齢)の皮下に注射(1.6mg/rat)し、その後、そのラットを用いて血中薬物濃度評価試験を実施した。その結果、5週以上に渡ってこのマイクロカプセル粉末から良好に薬物が放出されたことが確認された。ラットの血中薬物濃度と皮下注射後の経過期間との関係を
図14に示す。
図14に示されているグラフの縦軸は化合物Aの血中濃度を意味する。このグラフの横軸は注射以降の経過時間を意味する。
【0106】
また、このマイクロカプセル粉末をイヌ(ビーグル♂、投与時8〜9カ月齢)の皮下に注射(0.5mg/kg)し、その後、そのイヌを用いて血中薬物濃度評価試験を実施した。その結果、6週以上に渡ってこのマイクロカプセル粉末から良好に薬物が放出されたことが確認された。イヌの血中薬物濃度と皮下注射後の経過期間との関係を
図15に示す。
図15に示されているグラフの縦軸は化合物Aの血中濃度を意味する。このグラフの横軸は注射以降の経過時間を意味する。
【実施例18】
【0107】
この実施例では上述した実施例15と同一のサイクロン10が使用された。このサイクロン10には周知のポンプが接続されていた。
【0108】
以下においてこの実施例におけるマイクロカプセル粉末の製造手順が説明される。化合物Bの粉末(含量96.8%)12.4gが12.0gの精製水に溶解された。これにより、化合物Bの水溶液が得られた。乳酸グリコール酸共重合体(L/G比=75/25 重量平均分子量11100、 和光純薬工業社製)119.2gがジクロロメタン192.0gに溶解された。これにより得られた溶液259.3gと、上述した化合物Bの水溶液とが混合された。これにより得られた混合物は、小型ミニミキサー(ロボミックス、Primix社製)で乳化された(回転数10000rpm、時間30秒)。これによりW/Oエマルションが形成された。次いで、このW/Oエマルションの温度が約18℃(291.15K)に調整された。次いで、予め約18℃(291.15K)に調整された0.1%(w/w)ポリビニルアルコール(EG−40、日本合成化学製)水溶液20リットル(0.02立方メートル)中にこのW/Oエマルションが注入された。このポリビニルアルコール水溶液は、ホモミキサー付タンク(Primix製)に入っている。そのW/Oエマルションが注入された水溶液はそのホモミキサーによって二次乳化され(タービン回転数約7,000rpm)、これによりW/O/Wエマルションが形成された。このW/O/Wエマルションは約3時間攪拌 (水中乾燥工程)された後、75マイクロメートルの標準篩を用いて篩過された。途中、4リットルの精製水が追加された。これにより、75マイクロメートルの標準篩を通過できないマイクロスフィアはW/O/Wエマルションから取り除かれた。篩過後に得られた20リットル(0.02立方メートル)のうち10リットル(0.01立方メートル)のW/O/Wエマルション(すなわちマイクロカプセルの水分散液)は、上述したサイクロン10を用いて濃縮された。途中排出液と管部排出液とは廃棄された。得られた濃縮分散液は、0.20リットル(0.00020立方メートル)であった。この濃縮分散液に、マンニトール6.54gが添加された。マンニトールの添加の後、この濃縮分散液は凍結乾燥機(DFM−05A−S特,ULVAC社製)で凍結乾燥された。これによりマイクロカプセル粉末22.7gが得られた。回収率は36.9%であった。得られたマイクロカプセル粉末の化合物含量は3.2%であった。得られたマイクロカプセル粉末の平均粒子径は28.1マイクロメートルであった。このマイクロカプセル粉末の粒度分布は
図16に示される。
図16に示されているグラフにおいて横軸はマイクロカプセルの直径を意味する。このグラフにおいて縦軸はマイクロカプセル粉末中のマイクロカプセルの個数を意味する。このグラフの作成のため、マイクロカプセル粉末中のマイクロカプセルの個数は複数回繰返して数えられている。このグラフに示されている個数は、そのようにして数えられた個数の平均値を意味している。
図16から、本発明の実施形態にかかるマイクロカプセル粉末の製造方法により、約5〜約10μmの粒子径を有する粒子の割合が低いマイクロカプセル粉末を製造できることが判明した。
【0109】
このマイクロカプセル粉末約0.1gを精密に量り、120mLのガラス製試験容器に入れた。次いで、0.02mol/L乳酸、0.1(w/v)%ポリソルベート80及び0.4(w/v)%ポリビニルアルコールからなる試験液100mLを正確に加えた。ゴム栓で密栓した後に毎分125回(往復)、48±0.5℃に振とうし、開始1時間後の試験液中に放出された化合物B量を測定したところ、4.8%であった。なお、一般的に、本試験法で15%以下であれば初期放出に問題はないとされる。
【0110】
このマイクロカプセル粉末をラット(Jcl:SD、♂、投与時7週齢)の皮下に注射(0.9mg/rat)し、その後、そのラットを用いて血中薬物濃度評価試験を実施した。その結果、4週以上に渡ってこのマイクロカプセル粉末から良好に薬物が放出されたことが確認された。
【実施例19】
【0111】
この実施例では2液分級サイクロンが使用される。この2液分級サイクロンには周知のポンプが接続されている。
【0112】
以下においてこの実施例におけるマイクロカプセル粉末の製造手順が説明される。化合物Bの粉末を精製水に溶解し、化合物Bの水溶液を得る。乳酸グリコール酸共重合体をジクロロメタンに溶解する。これにより得られた溶液と、上述した化合物Bの水溶液とを混合し、これにより得られる混合物を小型ミニミキサー(ロボミックス、Primix社製)で乳化する(回転数10000rpm、時間30秒)。これによりW/Oエマルションが形成される。次いで、このW/Oエマルションの温度が約18℃(291.15K)に調整される。次いで、予め約18℃(291.15K)に調整された0.1%(w/w)ポリビニルアルコール(EG−40、日本合成化学製)水溶液中にこのW/Oエマルションが注入される。このポリビニルアルコール水溶液は、ホモミキサー付タンク(Primix製)に入っている。そのW/Oエマルションが注入された水溶液はそのホモミキサーによって二次乳化される(タービン回転数約7,000rpm)。これによりW/O/Wエマルションが形成される。このW/O/Wエマルションは約3時間攪拌 (水中乾燥工程)された後、75マイクロメートルの標準篩を用いて篩過される。途中、精製水が追加される。これにより、75マイクロメートルの標準篩を通過できないマイクロスフィアはW/O/Wエマルションから取り除かれる。篩過後に得られたW/O/Wエマルション(すなわちマイクロカプセルの水分散液)は、上述した2液分級サイクロンを用いて濃縮される。途中排出液は廃棄される。得られる濃縮分散液に、マンニトールが添加される。マンニトールの添加の後、この濃縮分散液は凍結乾燥機(DFM−05A−S特,ULVAC社製)で凍結乾燥される。これによりマイクロカプセル粉末が得られる。
【0113】
[本実施形態にかかる効果の説明]
本実施形態にかかるマイクロカプセル粉末の製造方法において、マイクロカプセルの水分散液はサイクロン10によってマイクロカプセルの濃度が高くなるように濃縮される。水分散液が濃縮されると、遠心分離機あるいはろ過装置によって水分を除去した場合に比べ、水分の除去に要する時間を容易に短くできる。その結果、水分散液中からマイクロカプセルを取出す取出作業の生産性を改善できる。
【0114】
また、本実施形態にかかるマイクロカプセル粉末の製造方法において、マイクロカプセルの水分散液がサイクロン10の筒部供給口40に供給され、サイクロン10から濃縮分散液と希薄分散液とが回収される。サイクロン10から濃縮分散液と希薄分散液とが回収されると、遠心分離機あるいはろ過装置によって水分を除去した場合に比べ、水分の除去に要する時間を容易に短くできる。遠心分離機あるいはろ過装置によって水分を除去する場合に比べ、分散液の除去率を容易に抑えられるためである。その結果、水分散液中からマイクロカプセルを取出す取出作業の生産性を改善できる。
【0115】
また、本実施形態にかかるマイクロカプセル粉末の製造方法において、サイクロン10が緩和部材26を有する。緩和部材26は濃縮分散液の排出の勢いを緩和する。これにより、錐状部排出口50での濃縮分散液の噴出を抑え得る。噴出を抑えることができるので、濃縮分散液の飛散を抑えることができる。飛散を抑えることができるので、マイクロカプセル生産の歩留まりを向上させることができる。歩留まりを向上させることができるので、水分の除去に要する時間を容易に短くできることと相まって、水分散液中からマイクロカプセルを取出す取出作業の生産性を改善できる。
【0116】
また、本実施形態にかかるマイクロカプセル粉末の製造方法は、凍結乾燥工程S94を備える。水分散液中の水分の一部が濃縮工程S92において除去される。これにより、遠心分離機あるいはろ過装置によって水分を除去する場合に比べ、凍結乾燥工程S94を開始する時点での、水分散液の流動性を高くすることができる。流動性が高いので、凍結乾燥工程S94を開始するためにマイクロカプセルを移すことが容易になる。マイクロカプセルを移すことが容易になるので、その分、生産性を改善できる。水分散液中の水分の残りは凍結乾燥工程S94において除去される。これにより、凍結乾燥工程S94が完了した時点において、遠心分離機あるいはろ過装置によって水分散液から水分を除去する場合と同様に水分を除去することが可能である。その結果、遠心分離機あるいはろ過装置を用いた場合と同様に水分を除去でき、かつ、水分散液中からマイクロカプセルを取出す取出作業の生産性を改善できる。
【0117】
本実施形態にかかるマイクロカプセル粉末の製造方法によれば、作業者がマイクロカプセルを人手により集める必要がなくなる。作業者がマイクロカプセルを人手により集める必要がない場合、作業者がマイクロカプセル又はそれに付着した化学物質にさらされる可能性は、マイクロカプセルを人手により集める必要がある場合よりも低くなる。その可能性が低くなることにより、作業者に健康上の被害をもたらす危険性が低減される。また、この危険性から作業者を保護するために必要な安全確保の労力が軽減される。
【0118】
また、本実施形態にかかるマイクロカプセル粉末の製造方法は、遠心分離機あるいはろ過装置によって水分を除去する場合と異なり、遠心分離機あるいはろ過装置から人手によってマイクロカプセルを掻き取る必要がない。そのような掻き取り作業が必要な場合、掻き取り作業時の無菌レベルを維持するための対策を追加する必要が生じる。そのような掻き取り作業が不要になると、そのような対策の追加も不要となる。その結果、そのような対策の追加のための費用も不要となる。