(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明するが、本発明はこれに限定されない。なお、以下で説明する各実施形態の要件は、適宜組み合わせることができる。また、一部の構成要素を用いない場合もある。また、法令で許容される限りにおいて、各実施形態及び変形例で引用したX線源及び検出装置などに関する全ての公開公報及び米国特許の開示を援用して本文の記載の一部とする。
【0013】
以下の説明においては、XYZ直交座標系を設定し、このXYZ直交座標系を参照しつつ各部の位置関係について説明する。X軸とY軸とZ軸とは垂直に交わる。X軸と平行な方向をX軸方向とし、Y軸と平行な方向をY軸方向とし、Z軸と平行な方向をZ軸方向とする。X軸、Y軸、及びZ軸まわりの回転(傾斜)方向をそれぞれ、θX、θY、及びθZ方向とする。なお、本明細書において、ある方向に平行である、又は、ある方向に直交するという場合において、厳密に平行である、又は厳密に直交することには限られず、ほぼ平行である、又はほぼ直交するという意味を含むものとする。
【0014】
<第1実施形態>
第1実施形態について説明する。
図1は、本実施形態に係るX線装置1の一例を示す概略構成図である。
【0015】
X線装置1は、測定物SにX線を照射して、その測定物Sを透過した透過X線を検出する。X線は、例えば波長1pm〜30nm程度の電磁波である。X線は、約50eVの超軟X線、約0.1〜2keVの軟X線、約2〜20keVのX線、及び約20〜100keVの硬X線の少なくとも一つを含む。
【0016】
本実施形態において、X線装置1は、測定物SにX線を照射して、その測定物Sを透過した透過X線を検出して、その測定物Sの内部の情報(例えば、内部構造)を非破壊で取得するX線CT検査装置を含む。本実施形態において、測定物Sは、例えば機械部品、電子部品その他の産業用部品を含む。X線CT検査装置は、産業用部品にX線を照射して、その産業用部品を検査する産業用X線CT検査装置を含む。
【0017】
図1において、X線装置1は、X線を射出するX線源2と、X線源2からのX線が照射される測定物Sを保持して移動可能なステージ装置3と、X線源2から射出され、ステージ装置3に保持された測定物Sを通過したX線(透過X線)の少なくとも一部を検出する検出装置4と、X線装置1全体の動作を制御する制御装置5とを備えている。
【0018】
また、X線装置1は、X線源2から射出されるX線が進行する内部空間SPを形成するチャンバ部材6を備えている。本実施形態において、X線源2、ステージ装置3、及び検出装置4は、内部空間SPに配置される。
【0019】
チャンバ部材6は、支持面FR上に配置される。支持面FRは、工場等の床面を含む。チャンバ部材6は、複数の脚部6Sに支持される。チャンバ部材6は、脚部6Sを介して、支持面FR上に配置される。脚部6Sにより、チャンバ部材6の下面と、支持面FRとは離れる。すなわち、チャンバ部材6の下面と支持面FRとの間に空間が形成される。なお、チャンバ部材6の下面の少なくとも一部と支持面FRとが接触してもよい。
【0020】
本実施形態において、チャンバ部材6は、鉛を含む。チャンバ部材6は、内部空間SPのX線が、チャンバ部材6の外部空間RPに漏出することを抑制する。
【0021】
X線源2は、測定物SにX線を照射する。X線源2は、X線を射出する射出部7を有する。X線源2は、点X線源を形成する。本実施形態において、射出部7は、点X線源を含む。X線源2は、測定物Sに円錐状のX線(所謂、コーンビーム)を照射する。X線源2は、射出するX線の強度を調整可能である。測定物SのX線吸収特性に基づいて、X線源2から射出されるX線の強度が調整されてもよい。なお、X線源2から射出されるX線が拡がる形状は、円錐状に限らず、例えば扇状のX線(所謂、ファンビーム)でもよい。なお、X線源2から射出されるX線が、射出される方向(Z軸方向)において一定の線状のX線(所謂、ペンシルビーム)でもよい。
【0022】
本実施形態において、X線源2からのX線の少なくとも一部は、内部空間SPにおいてZ軸方向に進行する。射出部7から射出されたX線の少なくとも一部は、内部空間SPにおいて、+Z方向に進行する。
【0023】
本実施形態において、X線源2とステージ装置3と検出装置4とは、Z軸方向に配置される。ステージ装置3は、X線源2の+Z側に配置される。検出装置4は、ステージ装置3の+Z側に配置される。
【0024】
本実施形態において、X線装置1は、X線源2、ステージ装置3、及び検出装置4を支持する支持部材8を備えている。支持部材8は、チャンバ部材6の内部空間SPに配置される。支持部材8は、内部空間SPの底面6Tに配置される。支持部材8の位置は、内部空間SPにおいて、実質的に固定される。支持部材8は、X線源2とステージ装置3と検出装置4とを一緒に支持する。
【0025】
支持部材8の熱膨張係数は、チャンバ部材6の熱膨張係数よりも小さい。支持部材8は、少なくともチャンバ部材6よりも熱変形し難い。
【0026】
本実施形態において、支持部材8は、低熱膨張材料によって形成されている。本実施形態において、支持部材8は、例えばインバー(invar)を含む。インバーは、ニッケル約36%程度、鉄約64%程度の合金である。なお、これはあくまでも例示であって、支持部材8に含まれる低膨張材料はインバーには限定されない。
【0027】
本実施形態において、支持部材8は、1つの部材で構成される。なお、支持部材8が、複数の部材の組み合わせでもよい。
【0028】
ステージ装置3は、内部空間SPにおいて移動可能である。ステージ装置3は、内部空間SPのうち、射出部7よりも+Z側の空間で移動可能である。ステージ装置3は、支持部材8上において移動可能である。本実施形態において、ステージ装置3は、X軸、Y軸、Z軸、θX、θY、及びθZ方向の6つの方向に移動可能である。ステージ装置3は、駆動システム9の作動により移動可能である。駆動システム9の作動により、ステージ装置3に保持された測定物Sは、X軸、Y軸、Z軸、θX、θY、及びθZ方向の6つの方向に移動可能である。駆動システム9は、例えばリニアモータ、ボイスコイルモータなどのローレンツ力により作動するモータを含む。なお、駆動システム9が、ピエゾ素子を含んでもよい。例えば、駆動システム9は、ピエゾ素子を用いて、X軸、Y軸、Z軸、θX、θY、及びθZの少なくとも一つの方向にステージ装置3(測定物S)を移動させてもよい。
【0029】
ステージ装置3の少なくとも一部は、射出部7と対向可能である。ステージ装置3は、保持した測定物Sを、射出部7と対向する位置に配置可能である。ステージ装置3は、射出部7から射出されたX線が通過する経路上に、測定物Sを配置可能である。ステージ装置3は、射出部7から射出されたX線の照射範囲内に、測定物Sを配置可能である。
【0030】
検出装置4は、内部空間SPにおいて、X線源2及びステージ装置3よりも+Z側に配置される。検出装置4の位置は、内部空間SPにおいて、実質的に固定される。なお、検出装置4が移動可能でもよい。ステージ装置3は、内部空間SPのうち、X線源2と検出装置4との間の空間を移動可能である。
【0031】
検出装置4は、測定物Sを透過した透過X線を含むX線源2からのX線が入射する入射面10を有するシンチレータ部11と、シンチレータ部11において発生した光を受光する受光部12とを有する。検出装置4の入射面10は、ステージ装置3に保持された測定物Sと対向可能である。
【0032】
シンチレータ部11は、X線が当たることによって、そのX線とは異なる波長の光を発生させるシンチレーション物質を含む。受光部12は、光電子増倍管を含む。光電子増倍管は、光電効果により光エネルギーを電気エネルギーに変換する光電面を含む。受光部12は、シンチレータ部11において発生した光を増幅し、電気信号に変換して出力する。
【0033】
検出装置4は、シンチレータ部11を複数有する。シンチレータ部11は、XY平面内において複数配置される。シンチレータ部11は、アレイ状に配置される。受光部12は、複数のシンチレータ部11のそれぞれに接続されるように、複数配置される。なお、検出装置4は、入射するX線を、そのX線とは異なる波長の光に変換せずに、直接電気信号に変換してもよい。
【0034】
図2は、本実施形態に係るX線源2を示す側面図である。
図3は、本実施形態に係るX線源2の一部を示す断面図である。
【0035】
図2及び
図3において、X線源2は、電子の衝突又は電子の透過によりX線を発生するターゲット13と、ターゲット13に電子を導く導電子部材14とを備えている。
【0036】
また、X線源2は、導電子部材14の少なくとも一部を保持するハウジング15と、ターゲット13の変位が抑制されるようにターゲット13を保持する保持部材16とを備えている。
【0037】
また、X線源2は、電子を放出するフィラメント17を備えている。導電子部材14は、フィラメント17からの電子をターゲット13に導く。本実施形態において、ハウジング15は、フィラメント17及び導電子部材14を保持する。フィラメント17及び導電子部材14は、ハウジング15の内部空間に収容される。なお、X線源2とは別の装置がフィラメント17を有してもよい。
【0038】
ハウジング15の内部空間は、実質的に真空に保たれている。本実施形態においては、ハウジング15の内部空間は、真空装置2Aと接続されている。真空装置2Aは、内部空間の空気を外に排出するためのポンプを含む。また、本実施形態においては、X線源2は、ハウジング15の温度を一定に保つための冷却装置2Bを含む。冷却装置2Bにより、ターゲット13の温度が一定に保たれる。なお、ハウジング15の温度を一定に保つための冷却装置とターゲット13の温度を一定に保つための冷却装置とは別の装置でもよい。また、冷却装置が、ターゲット13の内部に設けられた流路に温度調整された流体(液体もしくは空気)を導入する装置を含んでもよい。すなわち、ターゲット13の内部に設けられた流路に温度調整された液体もしくは空気を導入することによってターゲット13の温度を一定に保ってもよい。なお、空気に代えて、温度調整された気体を用いてもよい。
【0039】
なお、冷却装置は、ターゲット13の温度が所定温度を超えないように、そのターゲット13の温度調整をしてもよい。ターゲット13の温度が所定温度を超えなければ、ターゲット13の温度は変動しても構わない。なお、本実施形態においては、X線源2が冷却装置2Bを備えているが、X線源2が冷却装置2Bを備えていなくてもよい。例えば、チャンバ部材6が冷却装置を備えてもよい。また、例えば、X線装置1が冷却装置を備えていなくてもよい。X線装置1とは別の装置が冷却装置を備えてもよい。
【0040】
フィラメント17は、例えばタングステンを含む。フィラメント17は、コイル状に巻かれている。フィラメント17に電流が流れ、その電流によってフィラメント17が加熱されると、フィラメント17から電子(熱電子)が放出される。フィラメント17の先端は、尖っている。フィラメント17の尖った部分から電子が放出される。
【0041】
ターゲット13は、例えばタングステンを含み、電子の衝突又は電子の透過によりX線を発生する。本実施形態において、X線源2は、所謂、反射型である。本実施形態において、ターゲット13は、電子の衝突により、X線を発生する。
【0042】
例えば、ターゲット13を陽極とし、フィラメント17を陰極として、ターゲット13とフィラメント17との間に電圧が加えられると、フィラメント17から飛び出した熱電子が、ターゲット(陽極)13に向かって加速し、ターゲット13に照射される。これにより、ターゲット13からX線が発生する。本実施形態においては、ターゲット13に照射される熱電子のもつエネルギーのうち約99.9%は熱に変換され、約0.1%がX線に変換される。
【0043】
導電子部材14は、フィラメント17とターゲット13との間において、フィラメント17からの電子の通路の周囲の少なくとも一部に配置される。導電子部材14は、例えば集束レンズ及び対物レンズ等の電子レンズ、若しくは偏光器を含む。また、導電子部材14は、ターゲット13での収差を低減する部材でもよい。導電子部材14は、例えば、光軸上の非点収差を補正するスティグメータでもよい。導電子部材14は、フィラメント17からの電子をターゲット13に導く。導電子部材14は、ターゲット13の一部の領域(X線焦点)に電子を衝突させる。ターゲット13において電子が衝突する領域(部分)が射出部7(点X線源)である。ターゲット13において電子が衝突する領域の寸法(スポットサイズ)は、十分に小さい。これにより、実質的に点X線源が形成される。
【0044】
図4及び
図5は、ターゲット13及び保持部材16の近傍を示す図である。本実施形態において、保持部材16の少なくとも一部は、ハウジング15の外側に配置される。ターゲット13の少なくとも一部は、ハウジング15の外側に配置される。本実施形態においては、保持部材16の全部が、ハウジング15の外側に配置される。ターゲット13の全部が、ハウジング15の外側に配置される。
【0045】
なお、保持部材16の一部がハウジング15の内部空間に配置され、保持部材16の一部がハウジング15の外部空間に配置されてもよい。なお、ターゲット13の一部がハウジング15の内部空間に配置され、ターゲット13の一部がハウジング15の外部空間に配置されてもよい。
【0046】
本実施形態において、ターゲット13とハウジング15とは接触するように配置される。保持部材16とハウジング15とは間隙を介して配置される。すなわち、ターゲット13とハウジング15とは接触する。保持部材16とハウジング15とは接触しない。なお、ターゲット13とハウジング15とが接触しなくてもよい。例えば、ターゲット13とハウジング15との間に部材が配置されてもよい。すなわち、ターゲット13と部材とが接触し、ハウジング15と部材とが接触してもよい。
【0047】
なお、保持部材16とハウジング15の少なくとも一部とが接触してもよい。ターゲット13とハウジング15の少なくとも一部とが接触してもよい。
【0048】
本実施形態において、保持部材16は、ハウジング15の外側(外部空間)に配置されるターゲット13の一部を保持する。
【0049】
本実施形態において、ターゲット13は、ロッド状の部材である。保持部材16は、ターゲット13の一端部を保持する第1部材16Aと、ターゲット13の他端部を保持する第2部材16Bとを含む。
【0050】
ハウジング15は、電子が通過可能な通過部153を有する。フィラメント17から発生した電子は、ハウジング15の内部空間を移動した後、通過部153を介して、ハウジング15に接触しているターゲット13に衝突する。ターゲット13のうち、通過部153に囲まれた領域に、ハウジング15の内部空間を移動した電子が衝突する。これにより、ターゲット13からX線が発生する。ハウジング15の内部空間は、実質的に真空である。
【0051】
本実施形態においては、ハウジング15と接触するケーシング18が設けられる。ターゲット13は、ケーシング18の内部に配置される。ケーシング18とハウジング15とが接触することで、ハウジング15の内部空間が実質的に真空に保たれる。ケーシング18は、真空用のパッキンである。ケーシング18は、電子が通過可能な第1通過部18Aを有する。フィラメント17からの電子は、第1通過部18Aを介してターゲット13に衝突する。ケーシング18は、X線が透過可能な第2通過部18Bを有する。ターゲット13において発生したX線は、第2通過部18Bを介してケーシング18の外側に射出される。ターゲット13において発生し、ケーシング18の外側に射出されたX線の少なくとも一部は、ステージ装置3に保持された測定物Sに照射される。
【0052】
保持部材16は、ターゲット13の位置が変化しないように、ターゲット13を保持する。保持部材16は、検出装置4とターゲット13との相対位置の変化が抑制されるように、ターゲット13を保持する。本実施形態においては、保持部材16によって、ターゲット13の位置は、内部空間SPにおいて、実質的に固定される。
【0053】
本実施形態において、保持部材16は、支持部材8に支持される。本実施形態において、X線装置1は、X線源2を支持する支持機構19を有する。支持機構19は、支持部材8に支持される。本実施形態において、保持部材16は、支持機構19に支持される。本実施形態において、保持部材16は、支持機構19を介して、支持部材8に支持される。
【0054】
X線源2は、ハウジング15を保持する保持部材20を有する。保持部材20は、支持部材8に支持される。本実施形態において、保持部材20は、支持機構19に支持される。本実施形態において、保持部材20は、支持機構19を介して、支持部材8に支持される。
【0055】
本実施形態において、保持部材20は、ハウジング15を可動に保持する。本実施形態において、保持部材20は、フィラメント17とターゲット13とを結ぶ仮想線と実質的に平行な方向(フィラメント17からの電子の通路と実質的に平行な方向)に関して、ハウジング15を可動に保持する。以下の説明において、フィラメント17とターゲット13とを結ぶ仮想線と実質的に平行な方向を適宜、ハウジング15の軸方向、と称する。
【0056】
本実施形態において、保持部材20は、スライド機構21を有する。スライド機構21は、保持部材20とハウジング15との間に配置される車輪を含む。スライド機構21によって、ハウジング15の少なくとも一部は、ハウジング15の軸方向に移動可能である。
【0057】
本実施形態において、保持部材20は、スライド機構21を介して、ハウジング15の部分151を保持する。ハウジング15の軸方向に関して、部分151とフィラメント17との距離は、部分151とターゲット13(通過部153)との距離よりも短い。
【0058】
また、本実施形態において、保持部材20は、部材22を介して、ハウジング15の部分152を保持する。ハウジング15の軸方向に関して、部分152とフィラメント17との距離は、部分152とターゲット13(通過部153)との距離よりも長い。
【0059】
また、本実施形態において、保持部材20は、保持部材16を支持する。保持部材16は、保持部材20を介して、支持機構19(支持部材8)に支持される。
【0060】
支持機構19は、保持部材16及び保持部材20を介して、X線源2を支持する。本実施形態において、支持機構19は、保持部材20(保持部材16)をY軸方向に移動可能なスライド機構23を有する。支持機構19は、Y軸方向に関するハウジング15及びターゲット13の位置を調整可能である。また、支持機構19は、X軸方向、及びZ軸方向に関するハウジング15及びターゲット13の位置を調整可能である。なお、支持機構19は、X軸、Y軸、Z軸、θX、θY、及びθZの6つの方向に関するハウジング15及びターゲット13の位置を調整可能でもよい。
【0061】
本実施形態において、保持部材20に対して、保持部材16は可動である。すなわち、ハウジング15(フィラメント17及び導電子部材14)に対して、ターゲット13は可動である。換言すれば、本実施形態においては、ハウジング15(フィラメント17及び導電子部材14)とターゲット13の相対位置は、調整可能である。
【0062】
次に、本実施形態に係るX線源2の保持方法について説明する。
【0063】
フィラメント17及び導電子部材14がハウジング15の内部空間に配置される。ハウジング15は、フィラメント17及び導電子部材14を保持する。
【0064】
ハウジング15が、保持部材20を介して、支持機構19に支持される。また、ターゲット13が、保持部材16を介して、支持機構19に支持される。支持機構19によって、ハウジング15の位置が調整される。また、支持機構19によって、ターゲット13(射出部7、点X線源)の位置が調整される。以下の説明においては、射出部7(点X線源)の位置を適宜、スポット位置、と称する。
【0065】
本実施形態においては、支持機構19によって、検出装置4に対するハウジング15の位置が調整される。また、支持機構19によって、検出装置4に対するターゲット13の位置(スポット位置)が調整される。検出装置4に対する最適なスポット位置(射出部7の位置)は一義的に定められる。最適なスポット位置は、予め定められる。最適なスポット位置は、既知である。以下の説明において、最適なスポット位置を適宜、最適位置、と称する。
【0066】
スポット位置が最適位置に配置されるように、支持機構19によってターゲット13の位置が調整される。また、ターゲット13に対してハウジング15(フィラメント17及び導電子部材14)が最適な位置に配置されるように、支持機構19によってハウジング15の位置が調整される。
【0067】
ターゲット13の変位が抑制されるように、ターゲット13が保持部材16によって保持される。保持部材16は、最適位置に対するスポット位置の変位が抑制されるように、ターゲット13を保持する。保持部材16は、最適位置とスポット位置との距離が小さくなるように、ターゲット13を保持する。保持部材16は、最適位置とスポット位置とが合致するように、ターゲット13を保持する。保持部材16は、最適位置にスポット位置が固定されるように、ターゲット13を保持する。保持部材16は、スポット位置が最適位置に配置された状態から、スポット位置が移動しないように、ターゲット13の移動を規制する。保持部材16は、最適位置とスポット位置との距離が小さくなるように、ターゲット13の移動を規制する。
【0068】
図6は、X線装置1Jの一例を示す図である。X線源2Jにおいて、ターゲット13Jに電子が照射されると、その電子のエネルギーのうち、一部のエネルギーが、X線となり、一部のエネルギーが、熱となる。ターゲット13Jに対する電子の照射により、ターゲット13Jの温度が上昇する可能性がある。また、ターゲット13Jの周囲の空間の温度が上昇する可能性がある。
【0069】
ターゲット13J等の温度が上昇すると、ハウジング15Jの温度も上昇する可能性がある。その結果、ハウジング15Jが熱変形する可能性がある。
【0070】
ターゲット13Jがハウジング15Jに保持されている場合、ハウジング15Jが熱変形すると、射出部7Jの位置が変動する可能性がある。その結果、
図6に示すように、射出部7Jの位置が、検出装置4Jに対する最適位置からずれたり、検出装置4の入射面10Jにおける測定物Sの像(投影画像)が移動したりする可能性がある。例えば、検出装置4Jにおける投影像を撮像する間に、射出部7Jの位置がX軸方向に移動する場合、X軸方向に沿って射出部7Jが拡がることになる。そのため、測定物Sの像がX軸方向に拡がった像になる。この場合、測定物Sの内部を構成する部材の境界部分もしくは外側の境界部分がぼけた像になってしまう可能性がある。その結果、取得される測定物Sの像(投影画像)の質が低下する等、透過X線の検出精度が低下する可能性がある。
【0071】
本実施形態においては、保持部材16によって、ターゲット13の変位が抑制されている。保持部材16によって、射出部7の位置(スポット位置)の変動が抑制されている。したがって、測定物Sの像(投影画像)の質の低下が抑制され、測定物Sの測定不良(検出不良)の発生が抑制される。また、透過X線の検出精度の低下が抑制され、X線装置1の検出精度(検査精度、測定精度)の低下が抑制される。
【0072】
本実施形態においては、ハウジング15とは異なる保持部材16でターゲット13が保持される。本実施形態においては、保持部材16は、ハウジング15の外側に配置されている。ターゲット13は、ハウジング15の外側に配置されている。保持部材16は、ハウジング15の外側で、ターゲット13を保持する。したがって、ハウジング15が熱変形しても、ターゲット13(スポット位置)の変位が抑制される。
【0073】
また、本実施形態においては、スポット位置(射出部7)と保持部材16(第1、第2部材16A、16B)との距離は、スポット位置(射出部7)とハウジング15との距離よりも大きい。換言すれば、保持部材16は、ハウジング15よりも、スポット位置(射出部7)から離れている。したがって、スポット位置(射出部7)が発熱する場合、保持部材16の熱変形は、ハウジング15の熱変形よりも抑制される。
【0074】
なお、保持部材16の熱膨張係数は、ハウジング15の熱膨張係数よりも小さくてもよい。すなわち、保持部材16は、少なくともハウジング15よりも熱変形し難い材料で形成されてもよい。なお、保持部材16の熱膨張係数は、ハウジング15の熱膨張係数と実質的に等しくてもよい。なお、保持部材16の熱膨張係数は、ハウジング15の熱膨張係数よりも大きくてもよい。
【0075】
また、本実施形態においては、ハウジング15が保持部材20によって保持される。また、ハウジング15は、保持部材20に可動に保持される。そのため、ハウジング15が熱変形しても、ハウジング15の周囲の部材が変形してしまうことが抑制される。
【0076】
また、本実施形態においては、ターゲット13及び検出装置4の両方が、支持部材8に支持されている。そのため、ターゲット13と検出装置4との相対位置の変動(理想的な相対位置に対する変化)が抑制される。したがって、ターゲット13(スポット位置)と検出装置4との相対位置の変動に伴うX線装置1の検出精度(検査精度、測定精度)の低下が抑制される。また、測定物Sの測定不良(検出不良)の発生が抑制される。
【0077】
なお、本実施形態においては、ターゲット13の少なくとも一部がハウジング15の外側(外部空間)に配置されることとした。ターゲット13の全部がハウジング15の内部空間に配置されてもよい。ハウジング15の内部空間に配置されるターゲット13とハウジング15とが接触しないように、保持部材16がターゲット13を保持してもよい。
【0078】
なお、本実施形態においては、ターゲット13、ステージ装置3、及び検出装置4が支持部材8に支持されることとした。保持部材16は、支持部材8に支持されなくてもよい。検出装置4を支持する支持部材8とは別の支持部材に保持部材16が支持されてもよい。ステージ装置3を支持する支持部材8とは別の支持部材に保持部材16が支持されてもよい。ステージ装置3を支持する支持部材とは別の支持部材に検出装置4が支持されてもよい。
【0079】
次に、本実施形態に係るX線装置1の動作の一例について説明する。検出において、ステージ装置3に測定物Sが保持される。制御装置5は、ステージ装置3を制御して、測定物SをX線源2と検出装置4との間に配置する。
【0080】
制御装置5は、X線源2からX線を射出するために、フィラメント17に電流を流す。これにより、フィラメント17が加熱され、フィラメント17から電子(熱電子)が放出される。フィラメント17から放出された電子は、フィラメント17とターゲット13の間に印加された電圧により加速されつつ、ターゲット13に照射される。これにより、ターゲット13からX線が発生する。
【0081】
X線源2から発生したX線の少なくとも一部は、測定物Sに照射される。測定物SにX線源2からのX線が照射されると、その測定物Sに照射されたX線の少なくとも一部は、測定物Sを透過する。測定物Sを透過した透過X線は、検出装置4の入射面10に入射する。検出装置4は、測定物Sを透過した透過X線を検出する。検出装置4は、測定物Sを透過した透過X線に基づいて得られた測定物Sの像を検出する。検出装置4の検出結果は、制御装置5に出力される。
【0082】
本実施形態において、制御装置5は、測定物SにおけるX線源2からのX線の照射領域を変えるために、測定物Sの位置を変えながら、その測定物SにX線源2からのX線を照射する。すなわち、制御装置5は、複数の測定物Sの位置ごとで、測定物SにX線源2からのX線を照射し、その測定物Sを透過した透過X線を、検出装置4で検出する。
【0083】
本実施形態において、制御装置5は、測定物Sを保持したステージ装置3(ステージ装置3のうち、測定物Sを保持する保持部)を回転して、X線源2に対する測定物Sの位置を変えることによって、測定物SにおけるX線源2からのX線の照射領域を変える。
【0084】
すなわち、本実施形態において、X線が測定物Sに照射される期間の少なくとも一部において、ステージ装置3は、測定物SをθY方向に移動(回転)させる。制御装置5は、測定物Sを保持したステージ装置3(ステージ装置3のうち、測定物Sを保持する保持部)を回転させながら、その測定物SにX線を照射する。ステージ装置3の各位置(各回転角度)において測定物Sを通過した透過X線(X線透過データ)は、検出装置4に検出される。検出装置4は、各位置における測定物Sの像を取得する。
【0085】
制御装置5は、検出装置4の検出結果から、測定物Sの内部構造を算出する。本実施形態において、制御装置5は、測定物Sの各位置(各回転角度)のそれぞれにおいて測定物Sを通過した透過X線(X線透過データ)に基づく測定物Sの像を取得する。すなわち、制御装置5は、測定物Sの像を複数取得する。
【0086】
制御装置5は、測定物Sを回転させつつその測定物SにX線を照射することにより得られた複数のX線透過データ(像)に基づいて演算を行って、測定物Sの断層画像を再構成して、測定物Sの内部構造の三次元データ(三次元構造)を取得する。これにより、測定物Sの内部構造が算出される。測定物の断層画像の再構成方法としては、例えば、逆投影法、フィルタ補正逆投影法、及び逐次近似法が挙げられる。逆投影法及びフィルタ補正逆投影法に関しては、例えば、米国特許出願公開第2002/0154728号に記載されている。また、逐次近似法に関しては、例えば、米国特許出願公開第2010/0220908号に記載されている。
【0087】
以上説明したように、本実施形態によれば、ターゲット13の変位が抑制されるように、保持部材16でターゲット13を保持するようにしたので、ターゲット13(射出部7、スポット位置)と検出装置4との相対位置の変動が抑制される。したがって、X線源2と検出装置4との相対位置の変動に伴うX線装置1の検出精度(検査精度、測定精度)の低下を抑制できる。例えば、X線装置1は、測定物Sの内部構造に関する情報を正確に取得することができる。
【0088】
<第2実施形態>
第2実施形態について説明する。以下の説明において、上述の実施形態と同一又は同等の構成部分については同一の符号を付し、その説明を簡略若しくは省略する。
【0089】
図7は、第2実施形態に係るX線装置1Bの一例を示す図である。X線源2B´は、ターゲット13を保持する保持部材16B´と、ハウジング15を保持する保持部材20Bとを有する。保持部材16B´は、支持部材8に支持される。
【0090】
保持部材16B´及びターゲット13は、ハウジング15の外側に配置される。なお、保持部材16B´の少なくとも一部が、ハウジング15の内部空間に配置されてもよい。ターゲット13の少なくとも一部が、ハウジング15の内部空間に配置されてもよい。
【0091】
保持部材20Bは、支持部材24に支持される。支持部材24は、支持部材8とは異なる部材である。支持部材24は、ハウジング15よりも上方(+Y方向)に配置される。支持部材8は、ハウジング15よりも下方(−Y方向)に配置される。支持部材24は、チャンバ部材6の一部でもよい。支持部材24の下面(支持面)は、内部空間SPの天井面6Uでもよい。
【0092】
本実施形態において、ハウジング15は、保持部材20Bによって、支持部材24から吊り下げられる。そのため、ハウジング15が熱変形しても、ハウジング15の周囲の部材が変形してしまうことが抑制される。
【0093】
<第3実施形態>
第3実施形態について説明する。以下の説明において、上述の実施形態と同一又は同等の構成部分については同一の符号を付し、その説明を簡略若しくは省略する。
【0094】
図8は、本実施形態に係るX線源2Cの一例を示す図である。
図8において、X線源2Cは、電子を放出するフィラメント17と、電子の衝突又は電子の透過によりX線を発生するターゲット13と、フィラメント17からの電子をターゲット13に導く導電子部材14と、フィラメント17と導電子部材14とターゲット13とを保持するハウジング15Cとを備えている。
【0095】
また、X線源2Cは、ハウジング15Cの部分154を保持する保持部材25を備えている。部分154は、ハウジング15Cの外面の一部である。保持部材25は、ハウジング15Cの外面の少なくとも一部に接触するように配置される。
【0096】
本実施形態において、部分154とターゲット13との距離L1は、部分154とフィラメント17との距離L2よりも短い。なお、本実施形態において、部分154とターゲット13との距離L1は、部分154とターゲット13上の電子線が照射される位置との距離である。なお、本実施形態においては、ロット状のターゲット13を用いているため、距離L1は、部分154と、ターゲット13において電子線が照射される方向に沿ったターゲット13の中心との距離でもよい。
【0097】
本実施形態において、部分154と導電子部材14との距離L3は、部分154とフィラメント17との距離L2よりも短い。
【0098】
本実施形態においては、導電子部材14とターゲット13との間に、部分154が配置される。部分154は、ハウジング15Cの軸方向に関して、導電子部材14とターゲット13との間に配置される。
【0099】
本実施形態において、導電子部材14は、ハウジング15Cの軸方向に関して複数配置される。距離L3は、部分154と、複数の導電子部材14のうちターゲット13に最も近い導電子部材14との距離である。なお、本実施形態においては、ターゲット13に最も近い導電子部材14は、電磁レンズである。その場合、距離L3は、部分154と、電磁レンズの主面との距離である。本実施形態において、電磁レンズの主面とは、電子線の光軸に平行な光線の高さを変化させながら電磁レンズに入射する場合に、入射前及び射出後の光線をそれぞれ延長した2直線を考え、2直線の交点が描く軌跡である。主点とは主面と電子レンズの光軸とが直交する点である。
【0100】
なお、本実施形態においては、ターゲット13に最も近い導電子部材14が電磁レンズであることとしたが、偏光器、スティグメータでもよい。スティグメータが2組の4極子である場合、その2組の中心位置とターゲット13との距離を距離L3としてもよい。
【0101】
本実施形態においては、複数の導電子部材14のうちターゲット13に最も近い導電子部材14とターゲット13との間に部分154が配置される。
【0102】
なお、ターゲット13の周囲に部分154が配置されてもよい。導電子部材14の周囲に部分154が配置されてもよい。
【0103】
なお、導電子部材14は、複数配置されなくてもよい。導電子部材14は、1つでもよい。
【0104】
また、X線源2Cは、ハウジング15Cの部分155を保持する保持部材26を備えている。部分155は、ハウジング15Cの外面の一部である。部分155は、部分154よりもフィラメント17に近い。
【0105】
保持部材26は、ハウジング15Cを可動に保持する。保持部材26は、スライド機構27を有する。スライド機構27は、保持部材26とハウジング15Cとの間に配置される車輪を含む。スライド機構27によって、ハウジング15Cの少なくとも一部は、ハウジング15Cの軸方向に移動可能である。
【0106】
本実施形態において、保持部材26は、スライド機構27を介して、ハウジング15Cの部分155を保持する。
【0107】
本実施形態において、保持部材26は、保持部材25を支持する。保持部材25及び保持部材26は、支持部材8に支持される。X線装置1Cは、保持部材26を移動可能に支持する支持機構19を有する。保持部材25は、保持部材26を介して、支持機構19(支持部材8)に支持される。支持機構19は、支持部材8上に配置される。支持部材8は、支持機構19、ステージ装置3、及び検出装置4を支持する。保持部材25及び保持部材26は、支持機構19を介して、支持部材8に支持される。
【0108】
保持部材25は、ターゲット13の変位が抑制されるように、部分154を保持する。保持部材25は、検出装置4とターゲット13との相対位置の変化が抑制されるように、部分154を保持する。保持部材25は、最適位置に対するスポット位置の変位が抑制されるように、部分154を保持する。保持部材25は、最適位置とスポット位置との距離が小さくなるように、部分154を保持する。保持部材25は、最適位置とスポット位置とが合致するように、部分154を保持する。保持部材25は、最適位置にスポット位置が固定されるように、部分154を保持する。保持部材25は、スポット位置が最適位置に配置された状態から、スポット位置が移動しないように、ターゲット13(部分154)の移動を規制する。保持部材25は、最適位置とスポット位置との距離が小さくなるように、ターゲット13(部分154)の移動を規制する。
【0109】
X線源2Cは、所謂、反射型である。ターゲット13は、電子の衝突によりX線を発生する。ターゲット13から発生したX線は、ステージ装置3に保持されている測定物Sに照射される。X線が測定物Sに照射される期間の少なくとも一部において、ステージ装置3は、測定物Sを回転させてもよい。測定物Sを通過するX線の少なくとも一部は、検出装置4で検出される。
【0110】
以上説明したように、本実施形態においても、ターゲット13の変位が抑制される。X線装置1の検出精度(検査精度、測定精度)の低下を抑制できる。例えば、X線装置1は、測定物Sの内部構造に関する情報を正確に取得することができる。
【0111】
<第4実施形態>
第4実施形態について説明する。以下の説明において、上述の実施形態と同一又は同等の構成部分については同一の符号を付し、その説明を簡略若しくは省略する。
【0112】
図9は、本実施形態に係るX線源2Dの一例を示す図である。X線源2Dは、ターゲット13Dと、ターゲット13Dに電子を導く導電子部材14Dと、導電子部材14Dの少なくとも一部を保持するハウジング15Dとを備えている。
【0113】
本実施形態において、X線源2Dは、所謂、透過型である。本実施形態において、ターゲット13Dは、電子の透過により、X線を発生する。
【0114】
X線源2Dは、ターゲット13Dを保持する保持部材29を有する。保持部材29は、ターゲット13Dの変位が抑制されるように、ターゲット13Dを保持する。保持部材29は、ハウジング15Dとは別の部材である。保持部材29は、ハウジング15Dの外側に配置される。ターゲット13Dは、ハウジング15Dの外側に配置される。保持部材29は、ハウジング15Dの外側で、ターゲット13Dを保持する。
【0115】
保持部材29は、ハウジング15Dと接触しないように配置される。保持部材29は、ハウジング15Dとターゲット13Dとが接触しないように、ターゲット13Dを保持する。
【0116】
なお、ターゲット13Dの少なくとも一部がハウジング15Dの内部空間に配置されてもよい。なお、保持部材29の少なくとも一部がハウジング15Dの内部空間に配置されてもよい。なお、保持部材29とハウジング15Dの少なくとも一部とが接触してもよい。なお、ターゲット13Dとハウジング15Dの少なくとも一部とが接触してもよい。
【0117】
保持部材29は、ステージ装置3及び検出装置4を支持する支持部材8に支持されてもよい。保持部材29は、ステージ装置3及び検出装置4を支持する支持部材8とは別の支持部材に支持されてもよい。
【0118】
なお、本実施形態において、ハウジング15Dを保持する保持部材が配置されてもよい。その保持部材は、ハウジング15Dを可動に保持してもよい。
【0119】
<第5実施形態>
第5実施形態について説明する。以下の説明において、上述の実施形態と同一又は同等の構成部分については同一の符号を付し、その説明を簡略若しくは省略する。
【0120】
図10は、本実施形態に係るX線源2Eの一例を示す図である。X線源2Eは、電子を放出するフィラメントと、ターゲット13Eと、ターゲット13Eに電子を導く導電子部材14Eと、フィラメントと導電子部材14Eとターゲット13Eとを保持するハウジング15Eとを備えている。
【0121】
なお、
図10においてはフィラメントが図示されていない。上述の各実施形態と同様、フィラメントは、導電子部材14Eよりもターゲット13Eから離れた位置に配置される。フィラメントとターゲット13Eとの間に導電子部材14Eが配置される。
【0122】
本実施形態において、X線源2Eは、所謂、透過型である。本実施形態において、ターゲット13Eは、電子の透過により、X線を発生する。
【0123】
X線源2Eは、ハウジング15Eの部分157を保持する保持部材30を有する。部分157とターゲット13Eとの距離は、部分157とフィラメントとの距離よりも短い。また、部分157と導電子部材14Eとの距離は、部分157とフィラメントとの距離よりも短い。
【0124】
部分157は、導電子部材14Eとターゲット13Eとの間に配置されてもよい。部分157は、ターゲット13Eの周囲に配置されてもよい。部分157は、導電子部材14Eの周囲に配置されてもよい。導電子部材14Eが複数配置される場合、部分157は、複数の導電子部材14Eのうちターゲット13Eに最も近い導電子部材14Eの周囲に配置されてもよい。
【0125】
保持部材30は、ステージ装置3及び検出装置4を支持する支持部材8に支持されてもよい。保持部材30は、ステージ装置3及び検出装置4を支持する支持部材8とは別の支持部材に支持されてもよい。
【0126】
保持部材30は、ターゲット13Eの変位が抑制されるように、部分157を保持する。保持部材30は、検出装置4とターゲット13Eとの相対位置の変化が抑制されるように、部分157を保持する。保持部材30は、最適位置に対するスポット位置の変位が抑制されるように、部分157を保持する。保持部材30は、最適位置とスポット位置との距離が小さくなるように、部分157を保持する。保持部材30は、最適位置とスポット位置とが合致するように、部分157を保持する。保持部材30は、最適位置にスポット位置が固定されるように、部分157を保持する。保持部材30は、スポット位置が最適位置に配置された状態から、スポット位置が移動しないように、ターゲット13E(部分157)の移動を規制する。保持部材30は、最適位置とスポット位置との距離が小さくなるように、ターゲット13E(部分157)の移動を規制する。
【0127】
なお、本実施形態において、部分157よりもフィラメントに近いハウジング15Eの一部分を保持する保持部材が配置されてもよい。その保持部材は、ハウジング15Eを可動に保持してもよい。
【0128】
<第6実施形態>
第6実施形態について説明する。以下の説明において、上述の実施形態と同一又は同等の構成部分については同一の符号を付し、その説明を簡略若しくは省略する。
【0129】
図11は、本実施形態に係るX線装置1Fの一例を示す図である。本実施形態において、X線装置1Fは、ターゲット13Fを含むX線源2Fと、ターゲット13FからのX線が照射される測定物Spをステージ装置3Fと、測定物Spを通過したX線(透過X線)の少なくとも一部を検出する検出装置4Fとを備えている。
【0130】
本実施形態において、X線源2Fは、所謂、反射型である。本実施形態において、ターゲット13Fは、電子の衝突により、X線を発生する。
【0131】
X線源2Fは、ターゲット13Fを保持する保持部材31を備えている。保持部材31は、ターゲット13Fの変位が抑制されるように、ターゲット13Fを保持する。保持部材31は、ハウジング15Fとは別の部材である。ハウジング15Fは、フィラメント及び導電子部材を保持する。ターゲット13Fの少なくとも一部は、ハウジング15Fの外側に配置される。保持部材31の少なくとも一部は、ハウジング15Fの外側に配置される。なお、保持部材31がハウジング15Fの内側に配置されてもよい。ターゲット13Fがハウジング15Fの内側に配置されてもよい。保持部材31とハウジング15Fとは、接触してもよいし接触しなくてもよい。ターゲット13Fとハウジング15Fとは、接触してもよいし接触しなくてもよい。
【0132】
また、X線源2Fは、ハウジング15Fを保持する保持部材32を有する。
【0133】
X線装置1Fは、保持部材31及び保持部材32を支持する支持部材8Fを備える。また、X線装置1Fは、支持部材8Fを移動する駆動装置33を有する。支持部材8Fが移動することによって、ハウジング15F(フィラメント、導電子部材)、ターゲット13F、保持部材31、及び保持部材32が、支持部材8Fと一緒に移動する。
【0134】
保持部材31は、支持部材8Fに対するターゲット13Fの変位が抑制されるように、ターゲット13Fを保持する。
【0135】
本実施形態において、ステージ装置3Fの位置は、実質的に固定される。X線源2F(ターゲット13F)からのX線が測定物Spに照射される期間において、測定物Spは、移動しない。X線が測定物Spに照射される期間において、測定物Spの位置は、実質的に固定される。
【0136】
X線装置1Fは、支持部材8Fの移動と同期して、検出装置4Fを移動する駆動装置34を有する。
【0137】
X線源2Fは、ステージ装置3Fの一側(−Z側)に配置される。検出装置4Fは、ステージ装置3Fの他側(+Z側)に配置される。X線源2Fは、ステージ装置3Fの一側の空間において移動する。検出装置4Fは、ステージ装置3Fの他側の空間において移動する。
【0138】
ステージ装置3Fは、測定物Spを保持する保持面35を有する。本実施形態において、保持面35は、XY平面と実質的に平行である。保持面35は、+Z方向を向く。ステージ装置3Fは、保持面35の反対方向(−Z方向)を向く面36を有する。
【0139】
X線は、ステージ装置3Fを通過(透過)可能である。X線源2F(ターゲット13F)からのX線の少なくとも一部は、面36に入射し、ステージ装置3Fを透過した後、保持面35から射出される。保持面35から射出されるX線の少なくとも一部が、保持面35に保持されている測定物Spに照射される。測定物Spを通過したX線の少なくとも一部は、検出装置4Fに入射する。
【0140】
本実施形態において、駆動装置33は、仮想線Jの周囲をX線源2Fが移動するように、そのX線源2F(支持部材8F)を移動する。仮想線Jは、保持面35と交わり、測定物Spを通る線である。仮想線Jは、Z軸と実質的に平行である。
【0141】
X線源2F(ターゲット13F)からのX線は、仮想線Jに対して傾斜する方向に進行する。ターゲット13FからのX線は、保持面35に対して斜め方向から保持面35に入射する。
【0142】
駆動装置34は、仮想線Jの周囲を検出装置4Fが移動するように、その検出装置4Fを移動する。駆動装置34は、X線源2F(ターゲット13F)から射出され、測定物Spを通過したX線の少なくとも一部が検出装置4Fに入射するように、検出装置4Fの位置を調整しながら、その検出装置4Fを移動する。制御装置5は、駆動装置33及び駆動装置34を制御して、X線源2F(ターゲット13F、支持部材8F)の移動と同期して、検出装置4Fを移動させる。
【0143】
保持部材31は、検出装置4Fとターゲット13Fとの相対位置の変化が抑制されるように、ターゲット13Fを保持する。また、制御装置5は、検出装置4Fとターゲット13Fとの相対位置の変化が抑制されるように、駆動装置33及び駆動装置34を制御して、支持部材8F及び検出装置4Fを移動する。
【0144】
以上説明したように、本実施形態においては、保持部材31によって、支持部材8Fに対するターゲット13Fの変位が抑制される。保持部材31によって、支持部材8Fとターゲット13Fとの相対位置の変化が抑制される。また、保持部材31によって、検出装置4Fとターゲット13Fとの相対位置の変化が抑制される。これにより、X線装置1Fの検出精度(検査精度、測定精度)の低下が抑制される。
【0145】
なお、本実施形態において、X線源2Gが、所謂、反射型でもよい。
【0146】
なお、本実施形態において、駆動装置33によって移動される支持部材8F上に、
図12に示すようなX線源2Gが配置されてもよい。X線源2Gは、フィラメントと導電子部材とターゲット13Gとを保持するハウジング15Gと、ハウジング15Gの部分158を保持する保持部材37とを有する。保持部材37は、支持部材8Fに支持される。また、X線源2Gは、ハウジング15Gを保持する保持部材38を有する。保持部材38は、支持部材8Fに支持される。
【0147】
本実施形態において、X線源2Fは、所謂、反射型である。なお、X線源2Fは、所謂、透過型でもよい。
【0148】
部分158とターゲット13Gとの距離は、部分158とフィラメントとの距離よりも短い。部分158と導電子部材との距離は、部分158とフィラメントとの距離よりも短い。
【0149】
部分158は、ターゲット13Gと導電子部材との間に配置されてもよい。部分158は、ターゲット13Gの周囲に配置されてもよい。部分158は、導電子部材の周囲に配置されてもよい。
【0150】
保持部材37は、支持部材8Fとターゲット13Gとの相対位置の変化が抑制されるように、ハウジング15Gを保持する。また、保持部材37は、検出装置4Fとターゲット13Gとの相対位置の変化が抑制されるように、ハウジング15Gを保持する。
【0151】
<第7実施形態>
次に、第7実施形態について説明する。以下の説明において、上述の実施形態と同一又は同等の構成部分については同一の符号を付し、その説明を簡略若しくは省略する。
【0152】
本実施形態においては、上述したX線装置1などのX線装置を備えた構造物製造システムについて説明する。
【0153】
図13は、本実施形態に係る構造物製造システム200の一例を示すブロック構成図である。構造物製造システム200は、上述の各実施形態で説明したX線装置(検査装置)1と、設計装置110と、成形装置120と、制御システム130と、リペア装置140とを備える。本実施形態において、X線装置1は、構造物の形状に関する座標を測定する形状測定装置として機能する。制御システム130は、座標記憶部131及び検査部132を有する。
【0154】
本実施形態においては、構造物製造システム200は、自動車のドア部分、エンジン部品、ギア部品、及び回路基板を備える電子部品等の成形品を作成する。
【0155】
本実施形態においては、構造物製造システム200において、構造物の形状に関する設計情報が作成される設計工程と、設計情報に基づいて構造物が作成される成形工程と、作成された構造物の形状がX線装置により計測される測定工程と、測定工程で取得された形状情報と設計情報とが比較される検査工程とが行われる。
【0156】
また、本実施形態においては、構造物製造システム200において、検査工程の比較結果に基づいて、構造物の再加工が実施されるリペア工程が行われる。
【0157】
設計工程において、設計装置110は、構造物の形状に関する設計情報を作成する。設計装置110は、作成した設計情報を、成形装置120に送信する。設計情報は、成形装置120に入力される。また、設計装置110は、作成した設計情報を、制御システム130に送信する。設計情報は、制御システム130の座標記憶部131に記憶される。
【0158】
設計情報とは、構造物の各位置の座標を示す情報である。
【0159】
成形工程において、成形装置120は、構造物を作成する。成形装置120は、設計装置110からの設計情報に基づいて、構造物を作成する。成形工程において、鋳造、鍛造、及び切削の少なくとも一つが行われてもよい。
【0160】
測定工程において、X線装置1は、作成された構造物の形状を測定する。X線装置1は、測定した座標を示す情報を制御システム130へ送信する。
【0161】
検査工程において、検査部132は、測定工程で取得された形状情報と、設計工程で作成された設計情報とを比較する。制御システム130の座標記憶部131には、設計装置110から送信された設計情報が記憶されている。検査部132は、座標記憶部131から設計情報を読み出す。
【0162】
検査部132は、X線装置1から送信された座標を示す情報から、作成された構造物を示す情報(形状情報)を作成する。検査部132は、X線装置1から送信された座標を示す情報(形状情報)と、座標記憶部131から読み出した設計情報とを比較する。検査部132は、比較結果に基づいて、構造物が設計情報通りに成形されたか否かを判定する。換言すれば、検査部132は、作成された構造物が良品であるか否かを判定する。
【0163】
検査部132は、構造物が設計情報通りに成形されていない場合、修復可能であるか否か判定する。修復できる場合、検査部132は、比較結果に基づいて、不良部位と修復量とを算出する。検査部132は、不良部位を示す情報と修復量を示す情報とをリペア装置140に送信する。
【0164】
リペア工程において、リペア装置140は、制御システム130から受信した不良部位を示す情報と修復量を示す情報とに基づいて、構造物の不良部位を加工する。リペア工程において、構造物の再加工が実施される。リペア工程において、成形工程が再実行される。
【0165】
図14は、構造物製造システム200における処理の流れを示したフローチャートである。
【0166】
設計装置110は、構造物の形状に関する設計情報を作製する(ステップS101)。
【0167】
次に、成形装置120は、設計情報に基づいて構造物を作製する(ステップS102)。
【0168】
次に、X線装置1は、構造物の形状に関する座標を計測する(ステップS103)。
【0169】
次に,制御システム130の検査部132は、X線装置1によって作成された構造物の形状情報と、設計情報とを比較することにより、構造物が設計情報通りに作成された否かを検査する(ステップS104)。
【0170】
次に、制御システム130の検査部132は、作成された構造物が良品であるか否かを判定する(ステップS105)。
【0171】
作成された構造物が良品である場合(ステップS105においてYESと判断された場合)、構造物製造システム200は、その処理を終了する。
【0172】
作成された構造物が良品でない場合(ステップS105においてNOと判断された場合)、制御システム130の検査部132は、作成された構造物が修復できるか否か判定する(ステップS106)。
【0173】
作成された構造物が修復できる場合(ステップS106においてYESと判断された場合)、リペア装置140は、構造物の再加工を実施し(ステップS107)、ステップS103の処理に戻る。
【0174】
作成された構造物が修復できない場合(ステップS106においてNOと判断された場合)、構造物製造システム200は、その処理を終了する。
【0175】
以上で、本フローチャートの処理を終了する。
【0176】
以上説明したように、X線装置1が構造物の座標を正確に測定できるため、構造物製造システム200は、作成された構造物が良品であるか否か判定することができる。また、構造物製造システム200は、構造物が良品でない場合、構造物の再加工を実施し、修復することができる。
【0177】
また、構造物製造システム200は、X線装置1を用いて、構造物の欠陥の検出のみならず、構造物の内部の情報を非破壊で取得する非破壊検査を行うことができる。また、構造物製造システム200は、X線装置1を用いて、構造物の外形の寸法を計測することができる。また、構造物製造システム200は、X線装置1を用いて、リバースエンジニアリングを行うことができる。
【0178】
なお、上述の各実施形態においては、X線装置がX線源を有することとしたが、X線源がX線装置に対する外部装置でもよい。換言すれば、X線源がX線装置の少なくとも一部を構成しなくてもよい。
【0179】
また、上述の各実施形態は、例えば米国特許出願公開第2005/0254621号、米国特許第7233644号等に開示されているような、複数のX線源を備えたX線装置にも適用できる。
【0180】
また、上述の各実施形態は、例えば米国特許出願公開第2007/685985号、米国特許出願公開第2001/802468号等に開示されているような、被検物を回転させる回転軸に沿って、被検物を順次移動させるヘリカル方式のX線装置にも適用できる。
【0181】
また、上述の各実施形態は、米国特許出願公開第2010/0220834号に開示されているような、被検物中を進む際にX線に生じるわずかな偏向を評価する位相コントラスト方式のX線装置にも適用できる。
【0182】
また、上述の各実施形態は、例えば米国特許出願公開第2009/0003514号、米国特許出願公開第2007/0230657号等に開示されているような、ベルトコンベアーで手荷物を移動し、X線により手荷物の含有物を明らかにするようなX線装置にも適用することができる。
【0183】
なお、ターゲット13は、タングステン合金を含む。例えば、タングステンレニウム合金を含む。
【0184】
<第8実施形態>
次に、第8実施形態について、
図15から
図20を参照して説明する。以下の説明において、上述の実施形態と同一又は同等の構成部分については同一の符号を付し、その説明を簡略若しくは省略する。
【0185】
図15は、本実施形態のX線射出装置100を示す図である。
図16は、本実施形態のX線源2Hを示すY−Z平面図である。
図17は、本実施形態のX線源2Hを示すX−Y平面図である。
図18は、本実施形態のX線源2Hを示す図であって、保持装置400のY−Z断面を示す図である。
図19は、本実施形態の保持装置400を示す図である。
図20は、本実施形態のターゲット装置600を示す断面図である。言いかえると、
図20は、X線源2Hを
図16の矢印Dと逆向きに見た図である。
【0186】
X線射出装置100は、
図15に示すように、ハウジング15Hと、冷却装置160と、ターゲット装置600と、を備えている。
【0187】
ハウジング15Hは、供給接続部300と、供給接続部300側の第1ハウジング15Haと、ターゲット装置600側の第2ハウジング15Hbと、を備えている。ハウジング15Hの内部構成は、第1実施形態におけるハウジング15と同様である。
第1ハウジング15Haの表面には、ノッチ部111が対向して2つ形成されている。第1ハウジング15Haは、部分151を備えている。部分151は、ノッチ部111の一方側に、外周がノッチ部111の側面112と固定されている。
【0188】
第2ハウジング15Hbは、ターゲット装置600側の先端部121と、第1ハウジング15Ha側の基部122と、を備えている。先端部121の直径は、基部122の直径より小さい。先端部121は、円柱状の後方部(第1実施形態の部分152に相当する部分)と、後方部からターゲット装置600側に向かって突出しているテーパ状の前方部と、を備えている。
【0189】
第1ハウジング15Ha及び第2ハウジング15Hbの断面は円形状である。しかしながら、該断面は、例えば多角形状、矩形状や楕円形状のような他の形状であってもよい。
X線射出装置100には、電力が供給される。また、X線射出装置100には、供給接続部300を通じて冷却液等の供給物が供給される。
【0190】
冷却装置160は、
図3に示した冷却装置2Bの一例を示したものである。
ターゲット装置600は、ターゲット13Hと、ケーシング18Cと、を備えている。ターゲット13Hは、第1実施形態のターゲット13の一例を示したものであり、ケーシング18Cは、第1実施形態のケーシング18の一例を示したものである。ターゲット13H及びケーシング18Cについては、後段において詳述する。
【0191】
図15には示されていないが、ハウジング15H内には、第1実施形態において示したフィラメント17が設けられている。フィラメント17から射出された電子ビームは、X線射出装置100の長手方向に沿って進み、ターゲット13Hに衝突する。これにより、X線射出装置100から、略Z軸方向にX線が射出される。なお、Z軸方向は、フィラメント17が電子ビームを射出する方向(X線射出装置100の長手方向)に対して所定の角度θを成している。
【0192】
X線源2Hは、
図16から
図18に示すように、X線射出装置100と、保持装置400と、を備えている。
X線源2Hは、保持装置400を介して、支持機構500に固定されている。
保持装置400は、マウントフレーム201と、補償装置211と、部材250と、保持部材230と、を備えている。
【0193】
マウントフレーム201は、X線射出装置100を支持する部材である。X線射出装置100は、補償装置211を介して、マウントフレーム201に固定される。マウントフレーム201における、X線射出装置100の長手方向前方側(
図16の矢印Dの向き側)には、部材250が接続されている。
マウントフレーム201は、後述するサポートアーム270を介して、支持機構500に固定されている。
【0194】
補償装置211は、
図18,19に示すように、固定部211aと、可動部211bと、バネ部211cと、スライド部211dと、を備えている。
固定部211aは、マウントフレーム201に固定されている。
可動部211bは、第1ハウジング15Haの部分151に固定されている。可動部211bは、スライド部211dに沿ってX線射出装置100の長手方向に移動可能に設けられている。
【0195】
バネ部211cは、固定部211aと可動部211bとを結合させている。バネ部211cは、可動部211bに対して、常に可動部211bを固定部211aと離間させる向きの付勢力を与えている。本実施形態においては、バネ部211cは、可動部211b及び固定部211aにそれぞれに配設された潤滑軸受内で動作する2つの付勢バネである。
【0196】
バネ部211cが、マウントフレーム201に固定された固定部211aと、部分151に固定された可動部211bと、を結合していることによって、マウントフレーム201は、X線射出装置100を支持している。
【0197】
図19に示すように、固定部211a及びマウントフレーム201には、軸受調整ネジ212が結合されており、マウントフレーム201に対する固定部211aの所定位置を変更することができる。これにより、固定部211aと可動部211bとの距離を変更できるため、バネ部211cの長さを変更でき、結果として、バネ部211cによる付勢力の大きさを変更できる。したがって、X線射出装置100の重量に応じて、軸受調整ネジ212を操作することで、X線射出装置100の重量を補償するようにバネ部211cの付勢力を調整できる。
【0198】
上記のような機構によって、X線射出装置100の全重量が、バネ部211cによる付勢力で補償される。したがって、X線射出装置100の全重量は、マウントフレーム201によって支持されるので、X線射出装置100の重量は、保持部材230において全く支持されないか、又は最小限度において支持されるにすぎない。
【0199】
部材250は、第1実施形態における部材22と対応する部材であり、
図16,20に示すように、下方側クランプ251と、上方側クランプ252と、を備えている。下方側クランプ251には、第2ハウジング15Hbの先端部121を挟んで両側に、後述するサポートアーム233が取り付けられている(
図19,20参照)。下方側クランプ251は、上方側クランプ252と接合されている。
【0200】
下方側クランプ251および上方側クランプ252の固定用開口部の形状及び大きさは、第2ハウジング15Hb(特に先端部121の後方部)を適切に固定できる範囲内において、特に限定されない。本実施形態においては、
図20に示すように、先端部121の後方部の断面が円形状であるため、下方側クランプ251および上方側クランプ252の固定用開口部の形状は、それぞれ半円形状となっている。
【0201】
下方側クランプ251及び上方側クランプ252それぞれの固定用開口部が半円形状であるため、それぞれの内部クランプ面は、半円状の固定用空洞の境界を規定するように形成されている。これにより、下方側クランプ251と上方側クランプ252とで先端部121を挟持し、例えば保持ネジ(図示しない)やラッチ、またはこれらに類する圧縮手段によって下方側クランプ251及び上方側クランプ252を押圧して固定することで、先端部121を保持できる。
【0202】
また、下方側クランプ251及び上方側クランプ252の内部クランプ面には、弾性パッド253が設けられている。弾性パッド253は、好ましくは発泡ゴムや類似する圧縮可能な高摩擦材料で構成されている。但し、これらはあくまでも例示であって、弾性パッド253の材料が発泡ゴム、及び類似する圧縮可能な高摩擦材料に限定されるわけではない。
【0203】
以上に説明したように、マウントフレーム201が第1ハウジング15Haの部分151を支持し、部材250が第2ハウジング15Hbの先端部121を保持することによって、X線射出装置100は、保持装置400によって保持される。一方で、マウントフレーム201は、補償装置211のバネ部211cを介して、X線射出装置100を支持しているため、X線射出装置100は、長手方向に沿って変位可能となっている。
【0204】
保持部材230は、
図20に示すように、一組のサポートアーム233と、第1クランプ231と、第2クランプ232と、を備えている。保持部材230は、サポートアーム233を介して下方側クランプ251と接続されている。
【0205】
サポートアーム233は、X線射出装置100の長手方向前方側(
図16の矢印Dの向き)に向かって突出している(
図16,19参照)。
第1クランプ231は、一方のサポートアーム233に接合され、第2クランプ232は、他方のサポートアーム233に接合されている。
第1クランプ231は、ブッシュ234を備えている。ブッシュ234は、たとえば、アイオライトを材料とするような潤滑ブッシュである。
【0206】
第1クランプ231と第2クランプ232との間に、ターゲット装置600が保持されている。
ターゲット装置600は、前述したように、ターゲット13Hと、ケーシング18Cと、を備えている。
ターゲット13Hは、
図20に示すように、中央部13Hbと、中央部13Hbの両側に配置された端部13Ha,13Hcと、を備えている。
中央部13Hbおよび端部13Ha,13Hcは、一体かつ一様に構成されている。中央部13Hbおよび端部13Ha,13Hcは、X線に適合する材料から作られている。
【0207】
ターゲット13Hの長手方向長さ(X軸方向長さ)は、ケーシング18Cの幅方向長さ(X軸方向長さ)より、大きい。
端部13Haは、第2クランプ232によって固定されている。端部13Hcは、第1クランプ231に設けられたブッシュ234の穴部に嵌合されている。端部13Hcは、ブッシュ234の穴部によって径方向の動きが抑制されると共に、ターゲット13Hの長手方向(X軸方向)に移動可能となっている。すなわち、ターゲット13Hは、保持部材230によって、Z軸方向およびY軸方向の移動が制限されると共に、長手方向(X軸方向)に移動可能となるように保持されている。
【0208】
ケーシング18Cは、内部に一組のターゲットブッシュ143を備えている。
ターゲット13Hは、ケーシング18Cの内部に配置され、ターゲットブッシュ143に挿入されている。
【0209】
ターゲット装置600は、先端部121から射出される電子ビームがターゲットブッシュ143同士の間を通過するようにして、先端部121の射出端部に設けられている。これにより、先端部121から射出される電子ビームが、ターゲット13Hの中央部13Hbと交差し、X線を発生させる。
【0210】
支持機構500は、
図16,17に示すように、サポートアーム270と、Y軸エレベータ260と、を備えている。
Y軸エレベータ260は、Y軸スライド機構261と、Y軸送りネジ262と、ギヤボックス264と、クランクハンドル265と、を備えている。
【0211】
サポートアーム270は、
図17に示すように、Y軸送りネジ262、及びY軸スライド機構261に取り付けられている従動ナット263を介して、Y軸エレベータ260に固定されている。サポートアーム270のY軸エレベータ260に固定されている側と反対側には、マウントフレーム201が固定されている。これにより、保持装置400と、支持機構500と、が接続されている。
【0212】
ギヤボックス264を駆動させるためのクランクハンドル265を利用してY軸送りネジ262を回転させることによって、Y軸スライド機構261が昇降する。そして、Y軸スライド機構261の昇降に合わせて従動ナット263が昇降し、サポートアーム270が昇降する。これにより、X線源2HをY軸に沿って所望の向きに駆動できる。
【0213】
また、サポートアーム270は、
図16,17に示すように、X軸スライド機構281及びX軸ストッパ282によって構成されるX軸移動機構を備えている。X軸スライド機構281によって、サポートアーム270がX軸に沿ってY軸送りネジ262に対して相対的に移動可能となっている。サポートアーム270のX軸方向の移動は、X軸ストッパ282によって制限される。なお、X軸移動機構は、X軸方向にサポートアーム270の位置を移動できる範囲において、特に限定されない。
【0214】
以上に詳細に説明した本実施形態のX線源2Hによれば、X線射出装置100が熱膨張することによる、ターゲット13Hの位置の変動を抑制できる。以下、詳細に説明する。
【0215】
従来のX線源では、たとえば、
図15に示すX線射出装置100を、部分151のみを介して支持機構に固定する構成であった。そのため、たとえば、ハウジング15Hが熱膨張によって長手方向に延伸すると、ターゲット13Hの位置が変動し、X線の射出位置が変動してしまう場合があった。
【0216】
これに対して、本実施形態によれば、補償装置211の可動部211bに第1ハウジング15Haの部分151が固定され、可動部211bの移動と共に、部分151、すなわち、第1ハウジング15Haが移動する構成となっている。そして、可動部211bは、バネ部211cによって常に第1ハウジング15Haの長手方向の供給接続部300側(後方側)の向きに付勢力を受けている。そのため、第1ハウジング15Ha(または、その他のX線射出装置100の構成部材)が熱膨張により、長手方向に延伸すると、第1ハウジング15Haの延伸に伴って、可動部211bが、長手方向後方側に移動する。その結果、第1ハウジング15Ha、すなわち、X線射出装置100全体が、長手方向後方側に移動する。これにより、先端部121における電子ビーム射出口と、保持部材230によって保持されるターゲット13Hと、の相対位置の変化が抑制されると共に、ターゲット13Hの位置の変動が抑制される。
【0217】
また、本実施形態によれば、第2ハウジング15Hbの先端部121は、部材250によって摩擦嵌めによって保持されている。そのため、第1ハウジング15Ha(もしくは、ハウジング15Hのその他の部分)が、熱膨張により長手方向後方側に移動する際に、第1ハウジング15Haの移動に応じた先端部121の移動を阻害することが抑制される。
【0218】
また、本実施形態によれば、下方側クランプ251及び上方側クランプ252の内部クランプ面には、弾性パッド253が設けられている。そのため、第2ハウジング15Hbの先端部121を堅固に保持すると共に、熱膨張に応じた先端部121の移動を容易にすることができる。
【0219】
また、本実施形態によれば、ターゲット13Hの端部13Hcは、ブッシュ234に挿入され、ターゲット13Hの長手方向(X軸方向)に移動可能となっている。そのため、X線の射出による熱で、ターゲット13Hが熱膨張した場合であっても、端部13Hcの位置が熱膨張により延伸した長さに応じてブッシュ234内を移動し、ターゲット13Hが破損することを抑制できる。
【0220】
また、ターゲット13Hは、ケーシング18C内に設けられたターゲットブッシュ143に挿入されているため、ケーシング18Cに対する相対的な移動が容易となっており、ターゲット13Hの熱膨張による破損をより抑制できる。
【0221】
また、本実施形態では、ターゲット13Hは、一体かつ一様に形成されているため、製造が容易である。
【0222】
なお、本実施形態においては、下記の構成を採用することもできる。
【0223】
ターゲット装置600は、冷却ボアや支持基板を含んでいてもよい。
また、ターゲット13Hの端部13Ha,13Hcそれぞれが、中央部13Hbを形成する合金又は材料に対して相違する合金又は完全に相違する材料から形成されていてもよい。
【0224】
ターゲット13Hを保持する機構としては、少なくともY軸方向及びZ軸方向においてターゲット13Hを位置固定状態で捕捉する任意の方法が適合可能であるので、例えばクリップ、グリップ、保持ピンやネジのような、任意の従来技術に基づく保持機構であってもよい。