特許第6246877号(P6246877)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ DOWAエレクトロニクス株式会社の特許一覧

特許6246877導電性ペーストおよびその製造方法、ならびに太陽電池の製造方法
<>
  • 特許6246877-導電性ペーストおよびその製造方法、ならびに太陽電池の製造方法 図000005
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6246877
(24)【登録日】2017年11月24日
(45)【発行日】2017年12月13日
(54)【発明の名称】導電性ペーストおよびその製造方法、ならびに太陽電池の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01B 1/22 20060101AFI20171204BHJP
   H01B 13/00 20060101ALI20171204BHJP
   B22F 1/00 20060101ALI20171204BHJP
   H01L 31/0224 20060101ALI20171204BHJP
【FI】
   H01B1/22 A
   H01B13/00 Z
   B22F1/00 K
   B22F1/00 R
   B22F1/00 J
   H01L31/04 264
【請求項の数】5
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2016-175884(P2016-175884)
(22)【出願日】2016年9月8日
【審査請求日】2017年9月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】506334182
【氏名又は名称】DOWAエレクトロニクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107515
【弁理士】
【氏名又は名称】廣田 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100107733
【弁理士】
【氏名又は名称】流 良広
(74)【代理人】
【識別番号】100115347
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 奈緒子
(74)【代理人】
【識別番号】100163038
【弁理士】
【氏名又は名称】山下 武志
(72)【発明者】
【氏名】張替 彦一
(72)【発明者】
【氏名】神賀 洋
(72)【発明者】
【氏名】野上 徳昭
【審査官】 仁科 努
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−243500(JP,A)
【文献】 特開2012−033291(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/020694(WO,A1)
【文献】 国際公開第2014/050703(WO,A1)
【文献】 特開2014−022194(JP,A)
【文献】 特開2014−164994(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/144335(WO,A1)
【文献】 特開2016−193813(JP,A)
【文献】 国際公開第2017/158865(WO,A1)
【文献】 国際公開第2017/159762(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01B 1/22
B22F 1/00
H01B 13/00
H01L 31/0224
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
銀を含む導電性粉末と、インジウム粉と、銀テルル被覆ガラス粉と、溶剤と、有機バインダーとを含み、
前記銀テルル被覆ガラス粉が、テルルを20質量%以上含むテルル系ガラス粉の表面に、銀とテルルを主成分とする被覆層を有する銀テルル被覆ガラス粉であることを特徴とする導電性ペースト。
【請求項2】
前記インジウム粉の配合量が、前記銀テルル被覆ガラス粉に含有されるテルル質量に対して、インジウム質量/(インジウム質量+銀テルル被覆ガラス粉中のテルル質量)が、0.05〜0.5の範囲であることを特徴とする請求項1に記載の導電性ペースト。
【請求項3】
前記テルル系ガラス粉が、亜鉛、鉛、ビスマス、ケイ素、およびアルミニウムから選ばれる1種以上を含むことを特徴とする請求項1または2に記載の導電性ペースト。
【請求項4】
テルルを20質量%以上含むテルル系ガラス粉を、銀錯体溶液に添加した後、還元剤を添加して表面に銀とテルルを主成分とする被覆層を形成させることにより銀テルル被覆ガラス粉を得る工程と、
前記銀テルル被覆ガラス粉と、銀を含む導電性粉末と、インジウム粉と、溶剤と、有機バインダーとを混合する工程と、
を有することを特徴とする導電性ペーストの製造方法。
【請求項5】
反射防止層上に請求項1から3のいずれかに記載の導電性ペーストを印刷または塗布し、焼成する工程を有することを特徴とする太陽電池の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽電池の電極用ペースト材料として好適な導電性ペーストおよびその製造方法、ならびに太陽電池の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、pn接合による半導体からなる太陽電池の電極用ペースト材料として、銀粉、バインダー、溶剤、ガラスフリットなどを含有する導電性ペーストが使用されている。このような導電性ペーストを用いて、太陽電池の受光面側の窒化ケイ素に代表される反射防止層上に任意のパターンの表面電極の配線を形成している。
【0003】
このような中、ガラスフリットとして酸化テルルを含むテルル系ガラスフリット(以下、「テルル系ガラス粉」と称することもある)を用いることにより、反射防止層を介して半導体と接続(「ファイヤースルー」と称することもある)を行う際の電気抵抗を下げて良好な太陽電池特性が得られる導電性ペーストが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
また、Ti、Bi、Zn、Y、InおよびMoから選ばれる1種の金属または金属化合物の微細な粉末を含むことで、高い導電性と優れた接着力を有する表面電極を形成することができる導電性ペーストが提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011−96747号公報
【特許文献2】特開2005−243500号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
太陽電池の電極用途として、さらに接触抵抗を下げて良好な太陽電池特性が得られる太陽電池の電極用ペースト材料および導電性ペーストが求められている。
【0006】
本発明は、従来における前記諸問題を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。即ち、本発明は、太陽電池の電極用途に用いた場合に、太陽電池の発電効率を向上させることが可能な導電性ペーストおよびその製造方法、ならびに太陽電池の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らの検討によると、前記特許文献1(特開2011−96747号公報)と前記特許文献2(特開2005−243500号公報)の記載内容を組み合わせたとしても、相乗的な効果は生じず、太陽電池の発電効率は向上しないことが分かった。すなわち、酸化テルルを含むガラスフリット(テルル系ガラス粉)を用いた導電性ペーストにおけるガラスフリットの一部を、例えば、インジウム(In)粉に置換しても、太陽電池の発電効率はほとんど変わらないことを知見した。
しかしながら、本発明者らが、先に提案した特願2016−161348号において得られた銀テルル被覆ガラス粉を用いた導電性ペーストにインジウム(In)粉を添加すると、発電効率が向上した太陽電池が得られることを知見した。
【0008】
本発明は、本発明者らによる前記知見に基づくものであり、前記課題を解決するための手段としては、以下の通りである。すなわち、
本発明の導電性ペーストは、銀を含む導電性粉末と、インジウム粉と、銀テルル被覆ガラス粉と、溶剤と、有機バインダーとを含み、
前記銀テルル被覆ガラス粉が、テルルを20質量%以上含むテルル系ガラス粉の表面に、銀とテルルを主成分とする被覆層を有する銀テルル被覆ガラス粉であることを特徴とする。
前記インジウム粉の配合量が、前記銀テルル被覆ガラス粉に含有されるテルル質量に対して、インジウム質量/(インジウム質量+銀テルル被覆ガラス粉中のテルル質量)が、0.05〜0.5の範囲であることが好ましい。
前記テルル系ガラス粉が、亜鉛、鉛、ビスマス、ケイ素、およびアルミニウムから選ばれる1種以上を含むことが好ましい。
【0009】
また、本発明の導電性ペーストの製造方法は、テルルを20質量%以上含むテルル系ガラス粉を、銀錯体溶液に添加した後、還元剤を添加して表面に銀とテルルを主成分とする被覆層を形成させることにより銀テルル被覆ガラス粉を得る工程と、
前記銀テルル被覆ガラス粉と、銀を含む導電性粉末と、インジウム粉と、溶剤と、有機バインダーとを混合する工程と、
を有することを特徴とする。
【0010】
さらに、本発明の太陽電池の製造方法は、反射防止層上に本発明の導電性ペーストを印刷または塗布し、焼成する工程を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によると、太陽電池の電極用途に用いた場合に、太陽電池の発電効率を向上させることができる導電性ペーストおよびその製造方法、ならびに太陽電池の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、ガラス中のテルル質量に対するIn質量の割合(In/(In+Te)と太陽電池の変換効率との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
(導電性ペースト)
本発明の導電性ペーストは、銀を含む導電性粉末と、インジウム(In)粉と、銀テルル被覆ガラス粉と、溶剤と、有機バインダーとを含み、更に必要に応じてその他の成分を含有する。
【0014】
<銀を含む導電性粉末>
前記銀を含む導電性粉末としては、銀粉もしくは銀を表面に有する金属粉、または導電性ペーストを加熱した際に銀を生成する粉末(例えば、酸化銀)であることが好ましい。
導電性ペーストにおける前記銀を含む導電性粉末の配合量は、70質量%以上92質量%以下であることが好ましい。
【0015】
前記銀を含む導電性粉末のレーザー回折式粒度分布測定法による体積基準の粒子径分布における累積50%粒子径(D50)は、1μm以上3μm以下であることが好ましい。
前記銀を含む導電性粉末の形状としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、球状、扁平状、棒状、線状や、不定形状であってよく、それら形状の組み合わせや平均粒径違いの組み合わせであってもよい。
【0016】
<インジウム(In)粉>
前記In粉は、金属In粉または銀を含むIn粉であることが好ましい。本発明の効果を有するうえで、前記In粉に含まれるIn以外の他の元素は20質量%未満であることが好ましい。本実施形態においては、In粉は金属In粉である場合を挙げているが、Inと銀との合金の粉やIn粉を銀で被覆した粉であっても同様の効果を奏することができる。
前記In粉が銀を含む場合には、その銀量に合わせて、銀を含む導電性粉末(例えば、銀粉)の銀量を調整すればよい。
前記In粉に含まれるInと銀以外の他の元素としては、導電性の高い元素(例えば、金、銅、アルミニウム)もしくは、シリコンに対してn型ドーパントとなる元素が含まれていてもよい。
前記In粉は、粒子表面が酸化していてもよいが、全体として酸化物粉末(In)となっているものは含まれない。
【0017】
前記In粉の走査型電子顕微鏡(SEM)による粒子径(SEM粒子径)は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、1μm以上40μm以下が好ましく、太陽電池のフィンガー電極に使用する点から、1μm以上10μm以下がより好ましい。
前記In粉の形状としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、球状、扁平状、棒状、線状、不定形状などが挙げられる。
【0018】
前記In粉の製造方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、テトラエチレングリコール等の高沸点溶剤中でInのインゴットをその融点以上の温度に加熱・融解し、脂肪酸や脂肪酸アミドなどの存在下で強撹拌した後、急冷する方法などで得ることができる。
【0019】
なお、前記In粉は、酸化を防止するために高沸点溶剤の中に存在している状態で、導電性ペースト製造時に配合してもよい。
【0020】
<銀テルル被覆ガラス粉>
前記銀テルル被覆ガラス粉は、テルル(Te)を20質量%以上含むテルル系ガラス粉の表面に、銀とテルルを主成分とする被覆層を有する。
前記銀テルル被覆ガラス粉の詳細については、特願2016−161348号明細書の段落[0012]から[0030]に記載の<テルル系ガラス粉>、<銀とテルルを主成分とする被覆層>を参照するものとする。
【0021】
前記銀テルル被覆ガラス粉の導電性ペーストにおける配合量は、導電性ペーストの全量に対して、1質量%以上5質量%以下であることが好ましい。前記配合量が、1質量%未満であると、ファイヤースルーが不十分になることがあり、太陽電池の直列抵抗が高くなることがある。一方、前記配合量が、5質量%を超えると、抵抗成分の増加のため、ライン抵抗が高くなり、太陽電池の発電効率が悪化することがある。
【0022】
前記銀テルル被覆ガラス粉は、特願2016−161348号明細書に記載されているように、テルル系ガラス粉表面上に銀とテルルを主成分とする物質が存在しており、銀とテルルを主成分とする被覆層とは、テルル系ガラス粉表面上に存在する銀とテルルを主成分とする物質であって、前記銀とテルルを主成分とするとは、銀とテルルの合計が被覆層中の主成分(50質量%以上100質量%以下)であることを意味する。なお、前記被覆層中のAgおよびTeは、各々10質量%以上含まれるものとする。
前記銀とテルルを主成分とする被覆層の厚さは、10nm以上200nm以下が好ましく、20nm以上150nm以下がより好ましい。
【0023】
前記テルル系ガラス粉中のテルルの含有量としては、20質量%以上であれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、太陽電池の発電効率の向上(ファイヤースルー性による電極のオーミック抵抗の低減)のためには、30質量%以上が好ましく、40質量%以上90質量%以下がより好ましい。前記テルルの含有量は、蛍光X線による組成分析を行った場合において、ガラス粉中に含まれる含有量とする。
【0024】
前記テルル系ガラス粉に含まれるテルル以外の成分としては、例えば、ビスマス(Bi)、亜鉛(Zn)、リチウム(Li)、ナトリウム(Na)、カリウム(K)、ホウ素(B)、ケイ素(Si)、アルミニウム(Al)、タングステン(W)、モリブデン(Mo)、マンガン(Mn)、鉄(Fe)、バナジウム(V)、リン(P)、鉛(Pb)、アンチモン(Sb)、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)、バリウム(Ba)、チタン(Ti)、ジルコニウム(Zr)、およびランタン(La)から選択される1種以上を含むことが好ましく、亜鉛、鉛、ビスマス、ケイ素、およびアルミニウムから選ばれる1種以上を含むことがより好ましい。
前記テルル系ガラス粉中のテルルは、酸化物、金属、および合金のいずれの形態であってもよく、酸化物は二酸化テルル(TeO)であることが好ましい。
【0025】
前記銀テルル被覆ガラス粉の粒度分布として、累積10%粒子径(D10)は、0.1μm以上10μm以下が好ましく、0.3μm以上5μm以下がより好ましく、0.5μm以上2μm以下が特に好ましい。また、累積50%粒子径(D50)は、0.1μm以上20μm以下が好ましく、0.3μm以上10μm以下がより好ましく、1μm以上5μm以下が特に好ましい。また、累積90%粒子径(D90)は、1μm以上60μm以下が好ましく、1.5μm以上30μm以下がより好ましく、1.5μm以上20μm以下が特に好ましい。
前記銀テルル被覆ガラス粉の粒度分布は、例えば、レーザー回折式粒度分布測定装置(例えば、日機装株式会社製のマイクロトラック)により測定することができる。
【0026】
前記銀テルル被覆ガラス粉のBET比表面積としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、0.1m/g以上70m/g以下が好ましく、0.5m/g以上10m/g以下がより好ましい。
前記BET比表面積は、例えば、市販のBET比表面積測定装置などを用いて測定することができる。
【0027】
前記銀テルル被覆ガラス粉は、脂肪酸等の有機物からなる表面処理剤にて表面が被覆されていてもよい。
上記以外の点についても、本発明に用いる銀テルル被覆ガラス粉については、特願2016−161348号明細書に記載の銀テルル被覆ガラス粉を参照することができる。
なお、特願2016−161348号明細書に記載の銀テルル被覆ガラス粉に限らずとも、銀とテルルの合金、金属間化合物、および非晶質のいずれかを具えた粉末(例えば、特願2016−006613号明細書に記載の銀被覆テルル粉)と、インジウム(In)粉との両方が存在するように導電性ペーストを構成するのであれば、本発明の効果を奏する可能性はある。
【0028】
前記銀とテルルを主成分とする被覆層を有する銀テルル被覆ガラス粉を導電性ペーストに用いた場合に、被覆層を有さないテルル系ガラス粉に比べて太陽電池の発電効率を向上させることが可能な理由として、導電性ペーストの焼成温度よりも低い温度帯においてテルル系ガラス粉の内部に銀が拡散することでテルル系ガラス粉内にも導通経路を形成することが容易となることが予想される。また、導電性ペーストの粘度が被覆層を有さないテルル系ガラス粉に比べて上がりにくいため、溶剤を足して(銀を含む導電性粉末の配合量を下げて)粘度を下げる必要性が少ない。そのため、焼成後の導電膜の導電性が向上し、結果として、太陽電池の発電効率を向上させることが考えられる。
【0029】
前記In粉は、銀テルル被覆ガラス粉の太陽電池の発電効率を向上させる機能をさらに向上させることができる。前記In粉の配合量としては、導電性ペースト中の(本実施形態では銀テルル被覆ガラス粉中の)テルル含有量(質量)に対して、インジウム質量/(インジウム質量+銀テルル被覆ガラス粉中のテルル質量)が、0.05〜0.5の範囲であることが好ましく、0.1〜0.3の範囲がより好ましい。前記インジウム質量/(インジウム質量+銀テルル被覆ガラス粉中のテルル質量)が、0.05未満であると、ファイヤースルーへの補助効果がほとんどなくなり、0.5を超えると、抵抗成分が多くなるため悪影響が現れ、太陽電池の発電効率が悪化傾向となる。
なお、本発明におけるIn粉の配合量の計算における「銀テルル被覆ガラス粉中のテルル含有量」とは、銀テルル被覆ガラス粉を蛍光X線により組成分析したTe含有量の質量%に、導電性ペースト中の銀テルル被覆ガラス粉の質量%を掛けた値とする。
すなわち、後述する実施例と比較例において、銀テルル被覆ガラス粉を蛍光X線により組成分析したTe含有量の質量%の値と、その値から銀テルル被覆ガラス粉中の銀以外のテルル等の金属が酸化物であるとして再計算した場合の値とを併記しているが、上記の導電性ペースト中のIn粉の配合量の計算においては、蛍光X線による分析結果のテルル含有量の質量%の値をそのまま用いるものとした。
【0030】
前記In粉と前記銀テルル被覆ガラス粉との組み合わせが、さらに太陽電池の発電効率を向上させることが可能な理由としては、焼成時の温度上昇に伴い、太陽電池の反射防止層であるSiN層とテルルまたはテルルの酸化物が反応し(ファイヤースルー)、導通経路を形成すると同時に銀の拡散が起こり導通を確保すると推測される。このときに、Inが銀およびテルルと合金化し、溶解温度を低下させることにより上記の反応が起こりやすくなる。または、それぞれの金属が近くに存在するためにより反応が起こりやすくなり、焼成後の導電膜の導電性と太陽電池としての導電性とが向上し、結果として、太陽電池の発電効率を向上させることが考えられる。
【0031】
<有機バインダー>
前記有機バインダーとしては、太陽電池の電極用途として800℃近辺で焼成する樹脂組成物として用いられてきた熱分解性を有するものであれば特に制限はなく、公知の樹脂を用いることができ、例えば、メチルセルロース、エチルセルロース、カルボキシメチルセルロース等のセルロース誘導体、ポリビニルアルコール類、ポリビニルピロリドン類、アクリル樹脂、アルキド樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ロジン系樹脂、テルペン系樹脂、フェノール系樹脂、脂肪族系石油樹脂、酢酸ビニル系樹脂、酢酸ビニル−アクリル酸エステル共重合体、ポリビニルブチラール等のブチラール樹脂誘導体の有機バインダーなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0032】
<溶剤>
前記溶剤は、上記有機バインダーを溶解することができるものであれば特に制限はなく、公知の溶剤を用いることができ、導電性ペーストの製造において前記有機バインダーを予め溶解、混合して用いることが好ましい。
前記溶剤としては、例えば、ジオキサン、ヘキサン、トルエン、エチルセロソルブ、シクロヘキサノン、ブチルセロソルブ、ブチルセロソルブアセテート、ブチルカルビトール、ブチルカルビトールアセテート、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジアセトンアルコール、テルピネオール、メチルエチルケトン、ベンジルアルコール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールモノイソブチレートなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0033】
<その他の成分>
前記その他の成分としては、例えば、界面活性剤、分散剤、粘度調整剤などが挙げられる。
【0034】
(導電性ペーストの製造方法)
本発明の導電性ペーストの製造方法は、テルルを20質量%以上含むテルル系ガラス粉を、銀錯体溶液に添加した後、還元剤を添加して表面に銀とテルルを主成分とする被覆層を形成させることにより銀テルル被覆ガラス粉を得る工程と、
前記銀テルル被覆ガラス粉と、銀を含む導電性粉末と、インジウム(In)粉と、溶剤と、有機バインダーとを混合する工程と、を有し、さらに必要に応じてその他の工程を有する。
前記銀テルル被覆ガラス粉を得る工程については、特願2016−161348号明細書の段落[0031]から[0042]に記載の「銀テルル被覆ガラス粉の製造方法」を参照することができる。
なお、前記In粉は、そのままペーストに添加してもよいし、予め銀テルル被覆ガラス粉と混合した後に添加してもよい。
【0035】
前記混合する工程としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、銀を含む導電性粉末、インジウム粉、銀テルル被覆ガラス粉、有機バインダー、溶剤、および必要に応じてその他の成分を、超音波分散、ディスパー、三本ロールミル、ボールミル、ビーズミル、二軸ニーダー、自公転式攪拌機などを用いて、混合することができる。
【0036】
前記導電性ペーストの粘度は、コーンプレートタイプ粘度計を用いて、25℃、1rpm値で、100Pa・s以上1,000Pa・s以下となるように各々の配合量の調整することが好ましい。前記粘度が、100Pa・s未満であると、低粘度の領域では「にじみ」が発生することがあり、1,000Pa・sを超えると、高粘度の領域では「かすれ」、と言った印刷の不具合が発生することがある。
【0037】
本発明の銀テルル被覆ガラス粉およびIn粉を含有した前記導電性ペーストは、従来の導電性ペーストに比較して、焼成型太陽電池の電極、種々の電子部品の電極や回路などを形成するための導電性ペーストとして、好適に利用可能である。
【0038】
(太陽電池の製造方法)
本発明の太陽電池の製造方法は、反射防止層上に本発明の導電性ペーストを印刷または塗布し、焼成する工程を有し、さらに必要に応じてその他の工程を有する。
前記反射防止層は、シリコンウエハ上に作製されている。
前記太陽電池の製造方法により得られた太陽電池は、本発明の導電性ペーストを用いて製造されているので、さらに接触抵抗を下げることができ、良好な太陽電池特性が得られる。
【実施例】
【0039】
以下、本発明の実施例を説明するが、本発明は、これらの実施例に何ら限定されるものではない。
【0040】
(実施例1)
−銀テルル被覆ガラス粉の作製−
テルル系ガラス粉は、組成として蛍光X線による分析結果がTe:69.5質量%、Bi:23.8質量%、Zn:6.8質量%であり、酸化物として計算すると、TeO:67.4質量%、Bi:25.5質量%、ZnO:7.0質量%とし、軟化点334℃、密度5.2g/cmであるものを10g用意した。
前記蛍光X線による分析は、日本電子株式会社製、JSX−3201を用い、電圧30kV、電流0.080mA、ライブタイム400sec、パス:Airで行った。以下同様である。
銀含有量が32質量%の硝酸銀水溶液3.47gを純水787gが攪拌されている状態の1Lビーカーに混合して希釈し、銀を1.11g含む硝酸銀水溶液とした。
引き続き、このビーカー中へ錯体化剤としての28質量%のアンモニア水2.5gを添加し、銀アンミン錯塩水溶液を得た(pHは11)。この銀アンミン錯塩水溶液の液温を30℃とした後、前記テルル系ガラス粉を10g投入した。その直後に、還元剤としてのヒドラジン0.3g、銀コロイド[溶媒は純水、含有するナノ粒子銀の透過型電子顕微鏡(TEM)による粒子径(TEM粒子径)は5nm〜40nmであり、ナノ粒子銀量は0.01g(水溶液中の銀量に対して0.001倍)]10.3g、および純水20gを予め混合したものを投入し、熟成時間(未還元銀が液中に残らないようにする待ち時間)を5分間として、銀とテルルを主成分とする被覆層を前記テルル系ガラス粉表面に形成させた。
還元剤投入から5分間後に、銀被覆ガラス粉含有スラリーを吸引濾過し、純水を用いて洗浄後液の電気伝導率が0.5mS/m以下となるまで水洗して、ケーキを得た。得られたケーキを75℃の真空乾燥機で10時間乾燥させ、実施例1の銀とテルルを主成分とする被覆層を有する銀テルル被覆ガラス粉を得た。
前記吸引ろ過時のろ液のpHは9.6であり、ICP発光分析(SII社製、SPS5100)したところ、Teが89.7ppmであった。
【0041】
次に、得られた銀テルル被覆ガラス粉について、蛍光X線を用いて組成分析を行ったところ、Ag:17.3質量%、Te:56.0質量%、Bi:20.9質量%、Zn:5.9質量%であることがわかった。
ここで、Ag以外の組成は酸化物として含有量を計算すると、Ag:14.6質量%、TeO:59.4質量%、Bi:19.8質量%、ZnO:6.2質量%である。
次に、得られた銀テルル被覆ガラス粉について、以下のようにして、諸特性の測定を行った。結果を表1に示した。
【0042】
[粒度分布]
銀テルル被覆ガラス粉の粒度分布は、レーザー回折式粒度分布装置[日機装株式会社製のマイクロトラック粒度分布測定装置(Microtrac社製、MT3300EXII)]により測定して、累積10%粒子径(D10)、累積50%粒子径(D50)、および累積90%粒子径(D90)を求めた。
【0043】
[BET比表面積]
銀テルル被覆ガラス粉のBET比表面積は、比表面積測定装置(装置名:Macsorb、Mountech社製)を用いて窒素吸着によるBET1点法で測定した。なお、BET比表面積の測定において、測定前の脱気条件は60℃で10分間とした。
【0044】
−In粉の作製−
溶剤としてテトラエチレングリコール100g中でInの99.99質量%インゴット96gを170℃に加熱してInを融解した後、エチレンビスカプリン酸を添加して710rpmで強撹拌した後、急冷することにより、金属InからなるIn粉を得た。
得られたIn粉のSEM粒子径は10μm〜400μmであり、150メッシュの篩を通して、粒径を10μm〜100μmとした。
【0045】
次に、得られた銀テルル被覆ガラス粉およびIn粉を用い、以下のようにして、導電性ペーストを作製した。
−導電性ペーストの作製−
前記銀テルル被覆ガラス粉(銀含有量17.3質量%)1.677質量%、銀粉(DOWAハイテック株式会社製、AG−2.5−8F、累積50%粒子径(D50)=1.5μm)90.0質量%、前記In粉0.096質量%、ビヒクル(エチルセルロース10cps 30質量%(和光純薬工業株式会社製)ブチルカルビトールアセテート溶液)0.41質量%、ビヒクル(EU−5638、アクリル樹脂46.1質量%ブチルカルビトールアセテート溶液、日本カーバイド工業株式会社製)2.40質量%、溶剤(CS−12、JNC株式会社製、テキサノール)3.11質量%、溶剤(和光純薬工業株式会社製、ブチルカルビトールアセテート)1.54質量%、ステアリン酸マグネシウム(和光純薬工業株式会社製)0.26質量%、およびオレイン酸(和光純薬工業株式会社製)0.51質量%となるように秤量し、自公転式撹拌装置(株式会社シンキー製、ARE−310)により混合(予備混練)した後、3本ロール(EXAKT社製、M−80S)により混練することにより、導電性ペーストを得た。
【0046】
銀テルル被覆ガラス粉の蛍光X線を用いて組成分析でのTe含有量は56.0質量%であるため、銀テルル被覆ガラス粉1.677質量%におけるTe質量は0.94質量%となり、In粉のIn量(0.096質量%)に対し、In質量/(In質量+銀テルル被覆ガラス粉中のテルル質量)=0.09となる。
【0047】
得られた導電性ペーストの粘度を測定した後、その粘度に合わせてテキサノールとブチルカルビトールの質量比1:1の混合溶剤をペースト量に対して適量(実施例1では0.35質量%)を追加で添加して、粘度計(ブルックフィールド社製、HBDV−IIIULTRA)にCPE−52のコーンプレートを用いて1rpmの5分値と5rpmの1分値について測定した場合における1rpmでの粘度が290±20Pa・s、5rpmでの粘度が70±2Pa・sとなるように粘度調整した。
この範囲の1rpmの5分値と5rpmの1分値による高品質な印刷パターンにて、以下に示すように導電性ペーストの性能評価を行った。結果を表2に示した。
【0048】
得られた導電性ペーストを用い、以下のようにして、太陽電池を作製した。
<太陽電池の作製>
太陽電池用シリコン基板(105Ω/□)上に、スクリーン印刷機(マイクロテック社製、MT−320T)を用いて基板裏面に、アルミニウムペースト(東洋アルミニウム株式会社製、アルソーラー14−7021)を用いて154mm□のベタパターンを形成した。
熱風乾燥機を用いて200℃で10分間乾燥させた。
基板表面に、実施例1の導電性ペーストを用いて40μm幅のフィンガー電極と、3本のバスバー電極を形成した。
熱風乾燥機を用いて200℃で10分間乾燥させた。
高速焼成IR炉(日本碍子株式会社製)を用いて、ピーク時の温度(焼成温度)を820℃としてin−out 21secにて高速焼成した。以上により、太陽電池を作製した。
【0049】
<太陽電池特性の評価>
作製した太陽電池について、WACOM社製ソーラーシュミレーターを用いて太陽電池特性を評価した。
得られた太陽電池の変換効率は、焼成温度820℃で18.86%であった。結果を表2に示した。
【0050】
<体積抵抗率の評価>
Si基板上に実施例1の導電性ペーストを以下の条件でスクリーン印刷し、導電膜を形成した。
・印刷装置:マイクロテック社製 MT−320T
・版:線幅500μm、引き回し37.5mm、250メッシュ、線径23μm
・印刷条件:スキージ圧180Pa、印刷速度80mm/s、クリアランス1.3mm
得られた膜を、大気循環式乾燥機を用い、150℃で10分間の条件で加熱処理した。
次いで、高速焼成炉を用いて、ピーク温度820℃、in−out21secで焼成を行い、導電膜を作製した。
次に、得られた導電膜を、表面粗さ計(株式会社東京精密製、サーフコム480B−12、)を用いて、Si基板上で膜を印刷していない部分と導電膜の部分との段差を測定することにより、導電膜の平均厚みを測定した。
次に、デジタルマルチメーター(株式会社エーディーシー製、R7451A)を用いて、導電膜の長さ(間隔)の位置の抵抗値を測定した。各導電膜のサイズ(平均厚み、幅、長さ)より、導電膜の体積を求め、この体積と測定した抵抗値から、導電膜の体積抵抗率を求めたところ、1.88μΩ・cmであった。
【0051】
(実施例2)
実施例1において、テルル系ガラス粉の組成が、蛍光X線による分析結果でTe:51.3質量%、Pb:38.6質量%、Zn:10.0質量%であって鉛を含むものであり、軟化点421℃、密度5.1g/cmであるものとした以外は、実施例1と同様にして、銀テルル被覆ガラス粉を得た。
次に、得られた銀テルル被覆ガラス粉(Pb含む)について、蛍光X線を用いて組成分析を行ったところ、Ag:10.4質量%、Te:46.3質量%、Pb:34.1質量%、Zn:9.2質量%含むことがわかった。
実施例1と同様にして、Ag以外の組成を酸化物として含有量を計算すると、Ag:9.4質量%、TeO:48.1質量%、PbO:32.6質量%、ZnO:9.9質量%である。
また、実施例1と同様にして、銀テルル被覆ガラス粉の諸特性の測定を行った。結果を表1に示した。
ろ液のpHは9.6であり、ICP発光分析(SII社製、SPS5100)したところ、Teが93ppmであり、Pbが1ppm以下であった。
【0052】
次に、得られた銀テルル被覆ガラス粉(Pb含む)を用いた以外は、実施例1と同様にして、導電性ペーストを作製し、テキサノールとブチルカルビトールの質量比1:1の混合溶剤をペースト量に対して適量(実施例2では0.42質量%)添加し、1rpmでの粘度が290±20Pa・s、5rpmでの粘度が70±2Pa・sとなるように粘度調整した。
銀テルル被覆ガラス粉の蛍光X線を用いて組成分析でのTe含有量は46.3質量%であるため、銀テルル被覆ガラス粉1.677質量%におけるTe質量は0.78質量%と算出され、In粉0.096質量%に対し、In質量/(In質量+銀テルル被覆ガラス粉中のテルル質量)=0.11となる。
【0053】
次に、実施例1と同様にして、太陽電池を作製し、太陽電池特性を評価した。結果を表2に示した。
得られた太陽電池の変換効率は、焼成温度820℃で18.55%であった。
また、導電膜の体積抵抗率は、1.98μΩ・cmであった。
【0054】
(比較例1)
実施例1において、In粉を添加せずに銀テルル被覆ガラス粉の配合量を1.77質量%とした以外は、実施例1と同様にして、導電性ペーストおよび太陽電池を作製し、導電性ペーストの性能および太陽電池特性を評価した。結果を表2に示した。
得られた太陽電池の変換効率は、焼成温度820℃で18.68%であった。また、導電膜の体積抵抗率は、2.03μΩ・cmであった。
【0055】
(比較例2)
実施例2において、In粉を添加せずに銀テルル被覆ガラス粉(Pb含む)の配合量を1.77質量%とした以外は、実施例2と同様にして、導電性ペーストおよび太陽電池を作製し、導電性ペーストの性能および太陽電池特性を評価した。結果を表2に示した。
得られた太陽電池の変換効率は、焼成温度820℃で18.38%であった。また、導電膜の体積抵抗率は、1.92μΩ・cmであった。
【0056】
(比較例3)
実施例1において、銀テルル被覆ガラス粉に替えて、銀テルル被覆ガラス粉の原料であるテルル系ガラス粉を1.6質量%用い、銀粉(DOWAハイテック株式会社製、AG−2.5−8F、累積50%粒子径(D50)=1.5μm)を90.2質量%、In粉を0.1質量%(In質量/(In質量+テルル系ガラス粉中のテルル質量)=0.1)とした以外は、実施例1と同様にして、導電性ペーストおよび太陽電池を作製し、導電性ペーストの性能および太陽電池特性を評価した。結果を表2に示した。
得られた太陽電池の変換効率は、焼成温度820℃で18.50%であった。また、導電膜の体積抵抗率は、2.00μΩ・cmであった。
【0057】
(比較例4)
比較例3において、In粉を添加しない以外は、比較例3と同様にして、導電性ペーストおよび太陽電池を作製し、実施例1と同様にして、導電性ペーストの性能および太陽電池特性を評価した。結果を表2に示した。
得られた太陽電池の変換効率は、焼成温度820℃で18.51%であった。また、導電膜の体積抵抗率は、1.98μΩ・cmであった。
【0058】
(比較例5)
比較例3において、In粉の替わりに、Inの配合量は同じとなるように酸化インジウム粉(DOWAハイテック株式会社製)を0.121質量%添加し、銀粉(DOWAハイテック株式会社製、AG−2.5−8F、累積50%粒子径(D50)=1.5μm)を90.2質量%とした以外は、比較例3と同様にして、導電性ペーストおよび太陽電池を作製し、実施例1と同様にして、導電性ペーストの性能および太陽電池特性を評価した。結果を表2に示した。
得られた太陽電池の変換効率は、焼成温度820℃で18.27%であった。また、導電膜の体積抵抗率は、1.99μΩ・cmであった。
【0059】
(比較例6)
実施例1において、ガラス粉を、テルルを含有していない市販品ASF−1898B(旭硝子株式会社製(ホウケイ酸ガラス、軟化点438℃、密度3.4g/cm)とした以外は、実施例1と同様にして、銀被覆ガラス粉を得た。この場合、ガラス粉にはテルルが含まれていないため、ガラス表面が銀により被覆される。
実施例1と導電性ペーストの比較評価を行うため、銀粉(DOWAハイテック株式会社製、AG−2.5−8F、累積50%粒子径(D50)=1.5μm)を87.6質量%、In粉0.10質量%、二酸化テルル(和光純薬工業株式会社製)2.4質量%(In質量/(In質量+テルル質量)=0.05)、上記銀被覆ガラス粉を1.58質量%、ファイヤースルー助剤として、酸化ビスマス(DOWAハイテック株式会社製)0.19質量%、ビヒクル(エチルセルロース10cps 30質量%(和光純薬工業株式会社製)ブチルカルビトールアセテート溶液)0.41質量%、ビヒクル(EU−5638、アクリル樹脂46.1質量%ブチルカルビトールアセテート溶液、日本カーバイド工業株式会社製)2.38質量%、溶剤(CS−12、JNC株式会社製、テキサノール)1.56質量%、溶剤(和光純薬工業株式会社製、ブチルカルビトールアセテート)3.03質量%、ステアリン酸マグネシウム(和光純薬工業株式会社製)0.25質量%、およびオレイン酸(和光純薬工業株式会社製)0.51質量%となるように秤量し、実施例1と同様にして、導電性ペーストを作製し、導電性ペーストの性能を評価した。
次に、実施例1と同様にして、太陽電池を作製し、太陽電池特性を評価した。結果を表2に示した。得られた太陽電池の変換効率は、焼成温度820℃で17.83%であった。また、導電膜の体積抵抗率は、2.63μΩ・cmであった。
【0060】
(比較例7)
比較例6において、In粉を添加せずに銀被覆ガラス粉の配合を1.68質量%とした以外は、比較例6と同様にして、導電性ペーストおよび太陽電池を作製し、実施例1と同様にして、導電性ペーストの性能および太陽電池特性を評価した。結果を表2に示した。
得られた太陽電池の変換効率は、焼成温度820℃で17.85%であった。また、導電膜の体積抵抗率は、2.68μΩ・cmであった。
【0061】
【表1】
【0062】
【表2】
【0063】
上記の結果から、実施例1および2の銀テルル被覆ガラス粉およびIn粉を配合した導電性ペーストは、In粉を用いない場合、または、銀とテルルを主成分とする被覆層を有していないテルル系ガラス粉を用いた場合に比べて、体積抵抗率が低い導電膜を得ることができ、さらに、太陽電池の変換効率を向上させる効果を有することがわかった。
【0064】
また、比較例3と比較例4との比較により、銀テルル被覆が無い場合には、In粉を添加しても太陽電池の変換効率や導電膜の体積抵抗率にはほとんど差が見られないことがわかった。
【0065】
また、比較例3〜5の比較により、酸化In粉を添加しても太陽電池の変換効率や導電膜の体積抵抗率は向上せず、むしろ悪化することがわかった。このことは、銀テルル被覆ガラスでも同様のことが予想される。
【0066】
また、実施例および比較例6と7の比較により、ガラスにテルルが含まれていない場合には、同様に銀被覆する処理を行って得られた銀被覆ガラス粉を用いた場合であっても、In粉の添加効果は見られないことが分かった。
【0067】
次に、実施例1において、In粉と銀テルル被覆ガラスの量比を変えて、インジウム(In)質量/(インジウム(In)質量+銀テルル被覆ガラス粉中のテルル(Te)質量)を変化させた以外は、実施例1と同様にして、導電性ペーストに添加するIn量の適正範囲について調査した結果を、表3および図1に示す。
【0068】
【表3】
表3および図1の結果から、In粉の配合量としては、前記銀テルル被覆ガラス粉に含有されるテルル質量に対して、インジウム質量/(インジウム質量+銀テルル被覆ガラス粉中のテルル質量)が0.05〜0.5となる範囲が好ましく、0.1〜0.3となる範囲がより好ましいことがわかった。
【産業上の利用可能性】
【0069】
本発明の銀テルル被覆ガラス粉は、種々の電子部品の電極や回路を形成するための導電性ペースト材料として利用可能であり、特に太陽電池の電極用の導電性ペーストとして好適に利用可能である。

【要約】
【課題】太陽電池の電極用途に用いた場合に、太陽電池の発電効率を向上させることが可能な導電性ペーストおよびその製造方法、ならびに太陽電池の製造方法の提供。
【解決手段】銀を含む導電性粉末と、インジウム粉と、銀テルル被覆ガラス粉と、溶剤と、有機バインダーとを含み、前記銀テルル被覆ガラス粉が、テルルを20質量%以上含むテルル系ガラス粉の表面に、銀とテルルを主成分とする被覆層を有する銀テルル被覆ガラス粉である導電性ペーストである。
【選択図】なし
図1