【実施例】
【0044】
以下に実施例及び比較例を示して本発明について更に詳しく説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0045】
油脂組成物及び米菓の調製は、以下のとおり行った。
【0046】
〔A:カロテン及び/又はレシチンを添加した油脂組成物〕
カロテンを菜種油に100ppmあるいは1000ppmの濃度となるように配合し、50℃、10分間加熱攪拌することによりカロテン含有濃厚油を2種類調製した。また、
90℃で4時間加温溶解しておいたレシチンに菜種油を、10倍希釈となるように配合し、60℃、10分間加熱攪拌することによりレシチン含有濃厚油を調製した。
上記カロテン含有濃厚油(2種類のうちいずれかを選択)及び/又は上記レシチン含有濃厚油を後述の各表中に示す実施例及び比較例の濃度になるように菜種油に添加し、60℃、5分間加熱攪拌することによりカロテン及び/又はレシチンを添加した油脂組成物を調製した。
【0047】
〔B:カロテン、レシチン及びアスコルビン酸パルミテートを添加した油脂組成物〕
上記のカロテン含有濃厚油及びレシチン含有濃厚油に加え、アスコルビン酸パルミテートを菜種油に1000ppmあるいは10000ppmの濃度となるように配合し、120℃、10分間加熱攪拌することによりアスコルビン酸パルミテート含有濃厚油を2種類調製した。
上記カロテン含有濃厚油(2種類のうちいずれかを選択)、上記レシチン含有濃厚油、及び上記アスコルビン酸パルミテート含有濃厚油(2種類のうちいずれかを選択)を後述の各表中に示す実施例の濃度になるように菜種油に添加し、60℃、5分間加熱攪拌することによりカロテン、レシチン及びアスコルビン酸パルミテートを添加した油脂組成物を調製した。
【0048】
〔C:カロテン、レシチン、アスコルビン酸パルミテート及びトコフェロールを添加した油脂組成物〕
上記のカロテン含有濃厚油、レシチン含有濃厚油及びアスコルビン酸パルミテート含有濃厚油に加え、トコフェロールを菜種油に100ppmあるいは10000ppmの濃度となるように配合し、25℃、5分間攪拌することによりトコフェロール含有濃厚油を2種類調製した。
上記カロテン含有濃厚油(2種類のうちいずれかを選択)、上記レシチン含有濃厚油、上記アスコルビン酸パルミテート含有濃厚油(2種類のうちいずれかを選択)及びトコフェロール含有濃厚油(2種類のうちいずれかを選択)を後述の各表中に示す実施例の濃度になるように菜種油に添加し、60℃、5分間加熱攪拌することによりカロテン、レシチン、アスコルビン酸パルミテート及びトコフェロールを添加した油脂組成物を調製した。
【0049】
〔D:米菓〕
25℃の上記油脂組成物100gに対して105℃、30分間乾燥させた素焼き米菓(1枚、約2g)5枚を3分間浸し、水切り器で米菓表面に塗布した油脂組成物を切った。油切りした米菓を室温で1時間乾燥させ、油切りした米菓に対し1質量%の食塩を加えて均一になるように混合した。
【0050】
〔使用した食用油脂及び添加物〕
菜種油:「AJINOMOTO さらさらキャノーラ油」(株式会社J−オイルミルズ)
コーン油:「AJINOMOTO 胚芽の恵みコーン油」(株式会社J−オイルミルズ)
米油:「J 米白絞油NS」(株式会社J−オイルミルズ)
パーム分別軟質油:「パームオレイン」(ヨウ素価67)(株式会社J−オイルミルズ)
カロテン:「β-カロテン30%FS」(DSMニュートリションジャパン株式会社)(β−カロテン純度30%)
レシチン:「AYレシチン」(株式会社J−オイルミルズ)(アセトン不溶物60質量%以上(食品添加物公定法分析試験法))
アスコルビン酸パルミテート:「L−Ascorbyl Palmitate」(DSMニュートリションジャパン株式会社)
トコフェロール:「AT−160」(株式会社J−オイルミルズ)(トコフェロール組成が、α−トコフェロール7質量%、β−トコフェロール2質量%、γ−トコフェロール68質量%及びδ−トコフェロール23質量%)
【0051】
上記で調製した油脂組成物及び米菓の評価は、以下のとおり行った。
【0052】
〔I:光照射〕
外径3cm(内径2.6cm)のガラスシャーレに油脂組成物を5g入れ、蓋を閉め、24℃、1400Luxの光照射を行い、菜種油のみのサンプル(比較例)の過酸化物価が10〜15meq/kg程度になるまで保存した。
【0053】
〔II:過酸化物価の測定〕
上記光照射後の油脂組成物の過酸化物価(POV)を、電位差滴定法にて分析した。分析には、メトローム社製自動滴定装置809Titrandoを用い、イソオクタン−酢酸混液(イソオクタン2:酢酸3)を溶媒とし、0.01規定のチオ硫酸ナトリウム標準液にて滴定して、過酸化物価を求めた。
【0054】
〔III:油脂組成物の酸敗風味の評価〕
上記光照射後の油脂組成物の酸敗風味に関する官能評価を、専門パネラー2名により、下記に示す基準で実施した。その際、比較対象として添加物(カロテン、レシチン、アスコルビン酸パルミテート及びトコフェロール)を含まない菜種油を0.5点として、フリーディスカッション形式で評価した。
0点:非常に強い酸敗風味が感じられる。
1点:強い酸敗風味が感じられる。
2点:やや強い酸敗風味が感じられる。
3点:酸敗風味が感じられる。
4点:弱い酸敗風味を感じることができる。
5点:酸敗風味が感じられない。
【0055】
〔IV:添加物由来の異風味の評価〕
上記光照射後の油脂組成物の添加物由来の異風味に関する官能評価を、専門パネラー2名により、下記に示す基準で実施した。その際、比較対象として添加物(カロテン、レシチン、アスコルビン酸パルミテート及びトコフェロール)を含まない菜種油を5点として、フリーディスカッション形式で評価した。
0点:非常に強い添加物由来風味が感じられる。
1点:強い添加物由来風味が感じられる。
2点:やや強い添加物由来風味が感じられる。
3点:添加物由来風味が感じられる。
4点:弱い添加物由来風味を感じることができる。
5点:添加物由来風味が感じられない。
【0056】
〔V:米菓の評価〕
米菓サンプルに対し24℃、1400Luxの光照射を5日間行い、その光照射後の米菓サンプルの実食官能評価を、専門パネラー2名で行った。具体的には、実食を行った後、米菓の風味と食味をフリーディスカッション形式で評価した。
【0057】
〔実施例1〜15、比較例1〜3〕
表1に記載の配合で添加物を含有する油脂組成物を、上記Aの方法で調製し、上記Iの方法で光照射した後、上記II〜IVの方法で評価して、油脂に添加したカロテン及びレシチンの効果を調べた。結果を表1に示す。
【0058】
【表1】
【0059】
その結果、実施例1〜15に示されるように、油脂にカロテン及びレシチンを添加することにより、光照射による過酸化物価の上昇が抑えられ、菜種油に光照射した際に発生する酸敗風味が抑えられた。また、カロテンやレシチンには、互いにそれぞれに由来する異風味を低減する効果が認められた。一方、比較例1、2に示されるように、添加物を加えない場合やレシチンのみを添加した場合には、光照射による油脂の過酸化物価の上昇は抑えられずに酸敗風味を抑制することができなかった。また、比較例3に示されるように、カロテンのみを添加した場合には、光照射による油脂の過酸化物価の上昇を抑える効果が限定的であるうえ、カロテン風味が顕著に感じられた。なお、表には示さないが、レシチン添加量を更に増加させて30000ppm以上にすると、光照射による油脂の過酸化物価が逆に上昇する傾向がみられ、菜種油に光照射した際に発生する酸敗風味を抑制することができなかった。
【0060】
〔実施例16〜23、比較例4〕
表2に記載の配合で添加物を含有する油脂組成物を、上記Bの方法で調製し、上記Iの方法で光照射した後、上記II〜IVの方法で評価して、カロテン及びレシチンに加えて油脂に添加したアスコルビン酸パルミテートの効果を調べた。結果を表2に示す。なお、表2中の実施例16には、上記表1中の実施例6と同じ配合で再度評価した結果を示す。また、表2中の比較例4には、上記表1中の比較例1と同じ配合で再度評価した結果を示す。
【0061】
【表2】
【0062】
その結果、実施例17〜23に示されるように、油脂にカロテン及びレシチンに加えてアスコルビン酸パルミテートを添加することにより、光照射による過酸化物価の上昇が、カロテン及びレシチンを添加した場合に比べてよりいっそう抑えられ、これにより菜種油に光照射した際に発生する酸敗風味が抑えられた。
【0063】
〔実施例24〜32、比較例5〕
表3に記載の配合で添加物を含有する油脂組成物を、上記Cの方法で調製し、上記Iの方法で光照射した後、上記II〜IVの方法で評価して、カロテン、レシチン、及びアスコルビン酸パルミテートに加えて油脂に添加したトコフェロールの効果を調べた。結果を表3に示す。なお、表3中の実施例24には、上記表1中の実施例6と同じ配合で再度評価した結果を示し、表3中の実施例25には、上記表2中の実施例20と同じ配合で再度評価した結果を示す。また、表3中の比較例5には、上記表1中の比較例1と同じ配合で再度評価した結果を示す。
【0064】
【表3】
【0065】
その結果、実施例26〜32に示されるように、油脂にカロテン、レシチン、及びアスコルビン酸パルミテートに加えてトコフェロールを添加することにより、光照射による過酸化物価の上昇が抑えられるとともに、カロテン、レシチン、及びアスコルビン酸パルミテートを添加した場合に比べて、よりいっそう、菜種油に光照射した際に発生する酸敗風味が抑えられた。
【0066】
〔実施例33〜36、比較例6〜9〕
表4に記載の配合で添加物を含有する油脂組成物を、油脂として菜種油のほか、コーン油、米油、またはパーム分別軟質油を用いた以外は、上記Cの方法で調製し、上記Iの方法で光照射した後、上記II〜IVの方法で評価した。結果を表4に示す。なお、表4中の比較例6には、上記表1中の比較例1と同じ配合で再度評価した結果を示す。また、表4中の実施例33には、上記表3中の実施例28と同じ配合で再度評価した結果を示す。
【0067】
【表4】
【0068】
その結果、実施例33〜36に示されるように、油脂として菜種油のほか、コーン油、米油、またはパーム分別軟質油を用いた場合でも、油脂にカロテン、レシチン、アスコルビン酸パルミテート、及びトコフェロールを添加することにより、光照射による過酸化物価の上昇が抑えられ、これにより、それぞれの油脂組成物に光照射した際に発生する酸敗風味が抑えられた。また、添加物に由来する異風味も抑えられていた。これに対して、それぞれの油脂に添加物を加えない場合には、光照射による油脂の過酸化物価の上昇は抑えられずに酸敗風味を抑制することができなかった(比較例6〜9)。
【0069】
〔実施例6、18、23、比較例1〕(米菓の評価)
比較例1の無添加菜種油、あるいは実施例6(カロテン及びレシチン)、実施例18(カロテン、レシチン、及びアスコルビン酸パルミテート)、実施例23(カロテン、レシチン、アスコルビン酸パルミテート、及びトコフェロール)の各油脂組成物を用いて、上記Dの方法にて米菓を調製した。各製造米菓の油分は比較例1の油脂の場合19.3質量%、実施例6の油脂組成物の場合12.8質量%、実施例18の場合12.3質量%、及び実施例23の油脂組成物の場合11.5質量%であった。
【0070】
各実施例の油脂組成物を用いた米菓と、比較例1の油脂(菜種油)を用いた米菓とを実食比較したところ、各実施例の油脂組成物を用いた米菓は、比較例1の油脂を用いた米菓に比べ、酸敗風味が格段に抑制され、素材感と塩味が向上した好ましい米菓であった。