特許第6246952号(P6246952)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6246952酸化物保護膜の製造方法、及び薄膜トランジスタの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6246952
(24)【登録日】2017年11月24日
(45)【発行日】2017年12月13日
(54)【発明の名称】酸化物保護膜の製造方法、及び薄膜トランジスタの製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/316 20060101AFI20171204BHJP
   H01L 29/786 20060101ALI20171204BHJP
   H01L 21/336 20060101ALI20171204BHJP
   G02F 1/1368 20060101ALI20171204BHJP
【FI】
   H01L21/316 C
   H01L29/78 618B
   H01L29/78 619A
   G02F1/1368
【請求項の数】13
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2016-571794(P2016-571794)
(86)(22)【出願日】2015年12月4日
(86)【国際出願番号】JP2015084179
(87)【国際公開番号】WO2016121230
(87)【国際公開日】20160804
【審査請求日】2017年3月2日
(31)【優先権主張番号】特願2015-14626(P2015-14626)
(32)【優先日】2015年1月28日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】306037311
【氏名又は名称】富士フイルム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】特許業務法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高田 真宏
(72)【発明者】
【氏名】田中 淳
(72)【発明者】
【氏名】望月 文彦
(72)【発明者】
【氏名】梅田 賢一
【審査官】 正山 旭
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2009/148154(WO,A1)
【文献】 国際公開第2012/117718(WO,A1)
【文献】 国際公開第2013/190992(WO,A1)
【文献】 特開2012−204502(JP,A)
【文献】 特開2014−107527(JP,A)
【文献】 特開2013−197539(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/316
G02F 1/1368
H01L 21/336
H01L 29/786
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶媒及び50atom%以上がインジウムである金属成分を含む酸化物保護膜前駆体溶液を、基板上に形成されたインジウムを含む酸化物半導体膜上に塗布して酸化物保護膜前駆体膜を形成する工程と、
前記酸化物保護膜前駆体膜を前記酸化物半導体膜よりも比抵抗が高い酸化物保護膜に転化させる工程と、
を含む酸化物保護膜の製造方法。
【請求項2】
前記酸化物半導体膜に含まれる金属成分の50atom%以上がインジウムである請求項1に記載の酸化物保護膜の製造方法。
【請求項3】
前記溶媒が、アシル基を有する溶媒を含む請求項1又は請求項2に記載の酸化物保護膜の製造方法。
【請求項4】
前記アシル基が、アセチル基である請求項3に記載の酸化物保護膜の製造方法。
【請求項5】
前記溶媒が、ポリオールを含む請求項1又は請求項2に記載の酸化物保護膜の製造方法。
【請求項6】
前記溶媒が、アセチルアセトン及びエチレングリコールの少なくとも一方を含む請求項4又は請求項5に記載の酸化物保護膜の製造方法。
【請求項7】
前記酸化物保護膜前駆体溶液に含まれるインジウムが、インジウムイオンである請求項1〜請求項6のいずれか1項に記載の酸化物保護膜の製造方法。
【請求項8】
前記酸化物保護膜前駆体溶液が、硝酸イオンを含む請求項1〜請求項7のいずれか1項に記載の酸化物保護膜の製造方法。
【請求項9】
前記酸化物保護膜前駆体膜を前記酸化物保護膜に転化させる工程において、前記酸化物保護膜前駆体膜が加熱されている条件下で前記酸化物保護膜前駆体膜に紫外線照射を行う請求項1〜請求項8のいずれか1項に記載の酸化物保護膜の製造方法。
【請求項10】
前記酸化物保護膜前駆体膜を前記酸化物保護膜に転化させる工程において、前記基板の温度を120℃超に維持する請求項1〜請求項9のいずれか1項に記載の酸化物保護膜の製造方法。
【請求項11】
前記酸化物保護膜前駆体膜を前記酸化物保護膜に転化させる工程において、前記基板の温度を200℃未満に維持する請求項10に記載の酸化物保護膜の製造方法。
【請求項12】
前記酸化物半導体膜は、溶媒及びインジウムを含む酸化物半導体前駆体溶液を前記基板上に塗布して酸化物半導体前駆体膜を形成した後、前記酸化物半導体前駆体膜を転化させた酸化物半導体膜である請求項1〜請求項11のいずれか1項に記載の酸化物保護膜の製造方法。
【請求項13】
基板上にゲート電極を形成する工程と、
前記基板及び前記ゲート電極上にゲート絶縁膜を形成する工程と、
前記ゲート絶縁膜上にインジウムを含む酸化物半導体膜を形成する工程と、
前記酸化物半導体膜上にソース電極及びドレイン電極を形成する工程と、
前記ソース電極と前記ドレイン電極との間で露出する前記酸化物半導体膜上に請求項1〜請求項12のいずれか1項に記載の酸化物保護膜の製造方法により前記酸化物半導体膜よりも比抵抗が高い酸化物保護膜を形成する工程と、
を有する薄膜トランジスタの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、酸化物保護膜の製造方法、及び薄膜トランジスタの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
酸化物半導体膜を用いた薄膜トランジスタは真空成膜法による製造において実用化がなされ、現在注目を集めている。
一方で、簡便に、低温で、かつ大気圧下で高い半導体特性を有する酸化物半導体膜を形成することを目的とした、液相プロセスによる酸化物半導体膜の作製に関して研究開発が盛んに行われている(例えば、国際公開第2009/081862号参照)。
【0003】
酸化物半導体膜を電子素子に用いる場合には外的要因(水、汚染等)によって動作安定性が悪くなるため、酸化物半導体膜(活性層)を保護膜で覆うことが必要となる。酸化物半導体膜と同様、簡便に、低温で、かつ大気圧下で保護膜を形成するため、保護膜に関しても液相プロセス(塗布法)によって形成することが提案されている(例えば、特開2010−103203号公報参照)。
【0004】
例えば、国際公開第2010/38566号では、ゲート絶縁膜上に、インジウム、亜鉛、及びガリウムを含む溶液をインクジェット法によって塗布して半導体前駆体膜を形成し、マイクロ波照射によって酸化物半導体層に変換した後、酸化物半導体層上の保護層を形成する部分に表面処理層を形成し、酸化物半導体層上にポリシラザン溶液をインクジェット法によって塗布し、さらに熱処理を施すことで、二酸化ケイ素からなる保護層を形成する薄膜トランジスタの製造方法が開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、例えば、薄膜トランジスタ(TFT:Thin Film Transistor)の製造工程において、液相プロセスによって酸化物半導体膜(活性層)上に保護膜を形成すると、閾値シフト等、TFT特性に大きな影響が生じ易い。
例えば、特開2010−103203号公報及び国際公開第2010/38566号には、液相プロセスによって酸化物半導体膜(活性層)上に保護膜を形成することが開示されているが、保護膜を形成するための塗布液に含まれる金属成分、転化工程の処理条件、塗布液に含まれる溶媒種等を適切に選択することにより酸化物半導体膜に悪影響を与えずに動作安定性を向上させることは考慮されていない。
【0006】
本発明は、酸化物半導体膜上に液相プロセスによって酸化物保護膜を形成しても酸化物半導体膜の電気特性の変化を小さく抑え、且つ、酸化物半導体膜を有する電子素子の繰り返し動作安定性の低下が抑制される酸化物保護膜の製造方法、及び、酸化物半導体膜の電気特性の変化を小さく抑え、且つ、電子素子の繰り返し動作安定性の低下が抑制される薄膜トランジスタの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、以下の発明が提供される。
<1> 溶媒及び50atom%以上がインジウムである金属成分を含む酸化物保護膜前駆体溶液を、基板上に形成されたインジウムを含む酸化物半導体膜上に塗布して酸化物保護膜前駆体膜を形成する工程と、
酸化物保護膜前駆体膜を酸化物半導体膜よりも比抵抗が高い酸化物保護膜に転化させる工程と、
を含む酸化物保護膜の製造方法。
【0008】
<2> 酸化物半導体膜に含まれる金属成分の50atom%以上がインジウムである<1>に記載の酸化物保護膜の製造方法。
<3> 溶媒が、アシル基を有する溶媒を含む<1>又は<2>に記載の酸化物保護膜の製造方法。
<4> アシル基が、アセチル基である<3>に記載の酸化物保護膜の製造方法。
<5> 溶媒が、ポリオールを含む<1>又は<2>に記載の酸化物保護膜の製造方法。
<6> 溶媒が、アセチルアセトン及びエチレングリコールの少なくとも一方を含む<4>又は<5>に記載の酸化物保護膜の製造方法。
<7> 酸化物保護膜前駆体溶液に含まれるインジウムが、インジウムイオンである<1>〜<6>のいずれか1つに記載の酸化物保護膜の製造方法。
<8> 酸化物保護膜前駆体溶液が、硝酸イオンを含む<1>〜<7>のいずれか1つに記載の酸化物保護膜の製造方法。
<9> 酸化物保護膜前駆体膜を酸化物保護膜に転化させる工程において、酸化物保護膜前駆体膜が加熱されている条件下で酸化物保護膜前駆体膜に紫外線照射を行う<1>〜<8>のいずれか1つに記載の酸化物保護膜の製造方法。
<10> 酸化物保護膜前駆体膜を酸化物保護膜に転化させる工程において、基板の温度を120℃超に維持する<1>〜<9>のいずれか1つに記載の酸化物保護膜の製造方法。
<11> 酸化物保護膜前駆体膜を酸化物保護膜に転化させる工程において、基板の温度を200℃未満に維持する<10>に記載の酸化物保護膜の製造方法。
<12> 酸化物半導体膜は、溶媒及びインジウムを含む酸化物半導体前駆体溶液を基板上に塗布して酸化物半導体前駆体膜を形成した後、酸化物半導体前駆体膜を転化させた酸化物半導体膜である<1>〜<11>のいずれか1つに記載の酸化物保護膜の製造方法。
【0011】
13> 基板上にゲート電極を形成する工程と、
基板及びゲート電極上にゲート絶縁膜を形成する工程と、
ゲート絶縁膜上にインジウムを含む酸化物半導体膜を形成する工程と、
酸化物半導体膜上にソース電極及びドレイン電極を形成する工程と、
ソース電極とドレイン電極との間で露出する酸化物半導体膜上に<1>〜<12>のいずれか1つに記載の酸化物保護膜の製造方法により酸化物半導体膜よりも比抵抗が高い酸化物保護膜を形成する工程と、
を有する薄膜トランジスタの製造方法。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、酸化物半導体膜上に液相プロセスによって酸化物保護膜を形成しても酸化物半導体膜の電気特性の変化を小さく抑え、且つ、酸化物半導体膜を有する電子素子の繰り返し動作安定性の低下が抑制される酸化物保護膜の製造方法、及び、酸化物半導体膜の電気特性の変化を小さく抑え、且つ、電子素子の繰り返し動作安定性の低下が抑制される薄膜トランジスタの製造方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本開示により製造される酸化物保護膜を備えた薄膜トランジスタの構成の一例を示す概略図である。
図2】本開示により製造される酸化物保護膜を備えた薄膜トランジスタの構成の他の例を示す概略図である。
図3】本開示により製造される酸化物保護膜を備えた薄膜トランジスタの構成の他の例を示す概略図である。
図4】実施形態の液晶表示装置の一部分を示す概略図である。
図5図4に示す液晶表示装置の電気配線の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、添付の図面を参照しながら、本発明の実施形態について具体的に説明する。
なお、図中、同一又は対応する機能を有する部材(構成要素)には同じ符号を付して適宜説明を省略する。また、本明細書において「〜」の記号により数値範囲を示す場合、下限値及び上限値として記載されている数値がそれぞれ数値範囲に含まれる。
【0016】
[酸化物保護膜の製造方法]
本開示に係る酸化物保護膜の製造方法は、溶媒及び50atom%以上がインジウムである金属成分を含む酸化物保護膜前駆体溶液を、基板上に形成されたインジウムを含む酸化物半導体膜上に塗布して酸化物保護膜前駆体膜を形成する工程と、酸化物保護膜前駆体膜を酸化物半導体膜よりも比抵抗が高い酸化物保護膜に転化させる工程と、を含む。
以下、上記の酸化物保護膜前駆体溶液を「保護膜前駆体溶液」又は単に「溶液」という場合があり、上記の酸化物半導体膜を「半導体膜」という場合があり、上記の酸化物保護膜前駆体膜を「保護膜前駆体膜」という場合があり、上記の酸化物保護膜を「保護膜」という場合がある。
【0017】
酸化物半導体膜上に液相プロセスにより酸化物保護膜を形成すると、酸化物保護膜を形成するための溶液と酸化物半導体膜との反応、保護膜前駆体膜から酸化物保護膜への転化、あるいは、酸化物保護膜と酸化物半導体膜との反応により、酸化物半導体膜の特性が変化し易いと考えられる。そのため、例えば薄膜トランジスタ(TFT)等の電子素子の製造工程において、酸化物半導体膜上に酸化物保護膜を形成し、その後の工程において酸化物保護膜によって酸化物半導体膜を保護したとしても、電子素子の電気特性が変化したり、繰り返し動作安定性(以下、単に「動作安定性」という場合がある。)が低下すると考えられる。
【0018】
これに対し、本開示に係る酸化物保護膜の製造方法によれば、酸化物半導体膜上に液相プロセスによって酸化物保護膜を形成しても酸化物半導体膜の電気特性(例えば、TFTの線形移動度及び閾値)の変化を小さく抑え、且つ、酸化物半導体膜を有する電子素子の繰り返し動作安定性の低下(例えば、TFTの閾値シフト)が抑制される。
その理由は定かでないが、酸化物保護膜を形成するための酸化物保護膜前駆体溶液が、半導体膜に含まれるインジウムと同種の金属成分であるインジウムを金属成分全体に対して50atom%以上の比率で含むことで酸化物保護膜成膜時に半導体膜と保護膜前駆体膜又は酸化物保護膜との界面でのインジウムの拡散が抑制されて半導体膜の電気特性の変化が抑制され、一方、酸化物半導体膜よりも酸化物保護膜の比抵抗が高いことで酸化物保護膜による半導体膜の電気伝導性への影響が抑えられ、電子素子の繰り返し動作安定性が向上すると考えられる。
【0019】
なお、本明細書において、酸化物半導体膜を保護する酸化物保護膜とは、酸化物半導体膜を形成した後、酸化物半導体膜に対する外気又は溶液による影響及び酸化物半導体膜上に形成される他の層による影響を防止又は緩和して酸化物半導体膜の電気特性の変化を抑制するために設けられる膜であって、酸化物半導体膜よりも比抵抗が高く、酸化物半導体膜の少なくとも一部と接触した状態で積層される膜である。本開示に係る酸化物保護膜は、比抵抗が高いほど好ましく、絶縁膜であることがより好ましい。
【0020】
また、本実施形態において、「導電膜」とは、比抵抗値が10−2Ωcm未満の膜を意味し、「半導体膜」とは比抵抗値が10−2Ωcm以上10Ωcm以下の膜を意味し、「絶縁膜」とは比抵抗値が10Ωcm超の膜を意味する。
なお、膜の比抵抗値は、ホール効果・比抵抗測定装置(東陽テクニカ社製)を用い、van der pauw法によって測定することができる。
【0021】
本開示に係る酸化物保護膜の製造方法によれば、酸化物半導体膜の本来の特性が変化することを抑制して電子素子を形成することが可能である。そのため、例えば薄膜トランジスタの酸化物半導体膜を保護する酸化物保護膜の形成に適用すれば、高い電子伝達特性を有し、また、酸化物保護膜の形成により動作安定性が極めて高い薄膜トランジスタを提供することが可能となる。
【0022】
また、本開示に係る酸化物保護膜は、液相プロセスで製造することができるため、大掛かりな真空装置を用いる必要がない点、比較的低温での形成が可能であるため耐熱性の低い安価な樹脂基板を用いることができる点、原料が安価である点等から電子素子の作製コストを大幅に低減可能となる。
また、本開示の酸化物保護膜の製造方法は、耐熱性の低い樹脂基板にも適用できることからフレキシブルディスプレイ等のフレキシブル電子デバイスを安価に作製することが可能となる。
【0023】
以下、本開示に係る酸化物保護膜の製造方法における各工程について具体的に説明する。
【0024】
<酸化物保護膜前駆体膜形成工程>
酸化物保護膜前駆体膜形成工程では、溶媒及び50atom%以上がインジウムである金属成分を含む酸化物保護膜前駆体溶液を、基板上に形成されたインジウムを含む酸化物半導体膜上に塗布して酸化物保護膜前駆体膜を形成する。
【0025】
(基板)
まず、保護対象となる膜として基板上にインジウムを含む酸化物半導体膜が形成された被塗布物(酸化物半導体膜付き基板)を用意する。
基板の形状、構造、大きさ等については特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。基板の構造は単層構造であってもよいし、積層構造であってもよい。
【0026】
基板を構成する材料としては特に限定はなく、ガラス、YSZ(Yttria−Stabilized Zirconia;イットリア安定化ジルコニア)等の無機材料、樹脂(有機材料)、又は無機材料と有機材料との複合材料からなる基板等を用いることができる。中でも軽量である点、可撓性を有する点から樹脂基板又は複合材料からなる基板が好ましい。
具体的には、樹脂基板として、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレート、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリアリレート、アリルジグリコールカーボネート、ポリアミド、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド、ポリベンズアゾール、ポリフェニレンサルファイド、ポリシクロオレフィン、ノルボルネン樹脂、ポリクロロトリフルオロエチレン等のフッ素樹脂、液晶ポリマー、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、アイオノマー樹脂、シアネート樹脂、架橋フマル酸ジエステル、環状ポリオレフィン、芳香族エーテル、マレイミド・オレフィン、セルロース、エピスルフィド化合物等の合成樹脂基板が挙げられる。
複合材料からなる基板としては、酸化珪素粒子を含む複合プラスチック材料、金属ナノ粒子、無機酸化物ナノ粒子、又は無機窒化物ナノ粒子等を含む複合プラスチック材料、カーボン繊維、又はカーボンナノチューブ等を含む複合プラスチック材料、ガラスフレーク、ガラスファイバー、又はガラスビーズ等を含む複合プラスチック材料、粘土鉱物又は雲母派生結晶構造を有する粒子を含む複合プラスチック材料、厚みの薄いガラスと既述のいずれかの合成樹脂との間に少なくとも1つの接合界面を有する積層プラスチック材料、無機層と有機層を交互に積層することで少なくとも1つ以上の接合界面を有し、バリア性能を有する複合材料等の基板が挙げられる。
無機材料からなる基板としては、ステンレス基板或いはステンレスと異種金属を積層した金属多層基板、アルミニウム基板或いは表面に酸化処理(例えば陽極酸化処理)を施すことで表面の絶縁性を向上させた酸化皮膜付きのアルミニウム基板、酸化膜付きシリコン基板等を用いることができる。
また、樹脂基板は耐熱性、寸法安定性、耐溶剤性、電気絶縁性、加工性、低通気性、低吸湿性等に優れていることが好ましい。樹脂基板は、水分及び酸素の透過を防止するためのガスバリア層、樹脂基板の平坦性及び下部電極との密着性を向上するためのアンダーコート層等を備えていてもよい。
【0027】
本開示で用いる基板の厚みに特に制限はないが、50μm以上500μm以下であることが好ましい。基板の厚みが50μm以上であると、基板自体の平坦性がより向上する。また、基板の厚みが500μm以下であると、基板自体の可撓性がより向上し、フレキシブルデバイス用基板としての使用がより容易となる。
【0028】
(酸化物半導体膜)
基板上に形成されたインジウムを含む酸化物半導体膜は、インジウムと酸素とを含み、半導体膜として機能する電子伝達特性を有する膜であれば特に限定されない。容易に高い電子伝達特性を得る上で、酸化物半導体膜に含まれる金属成分の50atom%以上がインジウムであることが好ましい。
酸化物半導体膜を構成する材料として、具体的には、酸化インジウム(In)、In−Ga−Zn−O(IGZO)、In−Zn−O(IZO)、In−Ga−O(IGO)、In−Sn−O(ITO)、In−Sn−Zn−O(ITZO)等が挙げられる。
【0029】
酸化物半導体膜は基板に直接接している必要はなく、必要に応じて基板と酸化物半導体膜との間に絶縁膜、導電膜などの膜を有していてもよい。
【0030】
酸化物半導体膜の成膜方法に制限はなく、印刷方式、コーティング方式等の湿式方式、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法等の物理的方式、化学気相蒸着(CVD:Chemical Vapor Deposition)、プラズマCVD法等の化学的方式等の中から使用する材料との適性を考慮して選択することができる。大気圧下で簡便に膜形成が可能な点から湿式方式を用いることが好ましい。
【0031】
酸化物半導体膜を形成するための塗布液(酸化物半導体前駆体溶液)を湿式方式で基板上に塗布する方法としては、スプレーコート法、スピンコート法、ブレードコート法、ディップコート法、キャスト法、ロールコート法、バーコート法、ダイコート法、ミスト法、インクジェット法、ディスペンサー法、スクリーン印刷法、凸版印刷法、及び凹版印刷法等が挙げられる。特に、微細パターンを容易に形成する観点から、インクジェット法、ディスペンサー法、凸版印刷法、及び凹版印刷法から選択される少なくとも一種の塗布法を用いることが好ましい。
【0032】
酸化物半導体前駆体溶液に用いる溶媒としては、溶質として用いる金属原子含有化合物が溶解する溶媒であれば特に制限されず、水、アルコール溶媒(メタノール、エタノール、プロパノール、エチレングリコール等)、アミド溶媒(N,N−ジメチルホルムアミド等)、ケトン溶媒(アセトン、N−メチルピロリドン、スルホラン、N,N−ジメチルイミダゾリジノン等)、エーテル溶媒(テトラヒドロフラン、メトキシエタノール等)、ニトリル溶媒(アセトニトリル等)、その他上記以外のヘテロ原子含有溶媒等が挙げられる。溶媒は1種単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。特に、溶解性及び塗れ性の向上、コスト及び環境負荷の軽減の観点から、メタノール、メトキシエタノール、及び水から選ばれる少なくとも1種を用いることが好ましい。
【0033】
また、低温で緻密な酸化物半導体膜を得る観点から、溶媒及びインジウムを含む酸化物半導体前駆体溶液を基板上に塗布して酸化物半導体前駆体膜を形成した後、酸化物半導体前駆体膜を転化させた酸化物半導体膜であることが好ましい。
酸化物半導体前駆体膜を酸化物半導体膜に転化させる方法としては、酸化物半導体前駆体膜が加熱されている条件下で紫外線照射を行うことにより酸化物半導体膜に転化させることが好ましい。なお、酸化物半導体前駆体膜を酸化物半導体膜に転化させる際の基板の加熱温度、紫外線照射等の条件は、後述する酸化物保護膜前駆体膜を酸化物保護膜に転化させる工程と同様の条件を適用することができる。
【0034】
(酸化物保護膜前駆体溶液)
酸化物半導体膜上に酸化物保護膜前駆体膜を形成するための酸化物保護膜前駆体溶液を用意する。本開示では、酸化物保護膜前駆体溶液として、溶媒及び50atom%以上がインジウムである金属成分を含む酸化物保護膜前駆体溶液を用いる。溶液に含まれる金属成分の50atom%以上がインジウムである金属組成とすることで、インジウムを含む酸化物半導体膜との反応が極めて少ない酸化物保護膜を形成することができる。
【0035】
酸化物保護膜前駆体溶液に含まれる金属成分に占めるインジウムの割合は高いことが好ましく、インジウム以外の金属成分を含まないことが好ましいが、比抵抗がより高い酸化物保護膜を形成する観点から、酸化物保護膜前駆体溶液は、必要に応じてインジウム以外の他の金属成分を含有してもよい。インジウム以外の金属成分として、亜鉛、錫、ガリウム及びアルミニウムが挙げられる。
【0036】
本開示において製造する酸化物保護膜の比抵抗(絶縁性)は、例えば、酸化物保護膜前駆体溶液に含まれる各金属成分の種類及び含有量、酸化物保護膜前駆体溶液に含まれる金属成分以外の種類及び含有量、転化工程における雰囲気に含まれる酸素濃度、保護膜の厚みなどによって変化する。
【0037】
一方、本発明者らは、特に、酸化物保護膜前駆体溶液に含まれる溶媒の種類が酸化物保護膜の比抵抗(絶縁性)に大きく影響することを見出した。酸化物保護膜の比抵抗(絶縁性)を高くする観点から、本開示で用いる酸化物保護膜前駆体溶液は、溶媒として、アシル基を有する溶媒及びポリオールの少なくとも一方を含むことが好ましい。
【0038】
ここで、アシル基とは、カルボン酸からOHを取り除いたR−CO−の骨格を有する基を意味し、具体的にはアセチル基、ホルミル基、プロピオニル基、ベンゾイル基、アクリロイル基等が挙げられる。アシル基の中でも得られる酸化物保護膜の比抵抗等の観点からアセチル基を有する溶媒が好ましい。アセチル基を有する溶媒としては、アセチルアセトン、酢酸、アセト酢酸、アセトフェノン等が挙げられ、溶解性、濡れ性等の観点からアセチルセトンが好ましい。
【0039】
また、ポリオールとは、分子骨格中に水酸基(−OH)を二つ以上含む化合物を意味する。具体的にはエチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ブタンジオール、グリセリン等が挙げられ、溶解性、濡れ性等の観点からエチレングリコールが好ましい。
【0040】
本開示で用いる酸化物保護膜前駆体溶液は、溶媒として、アセチルアセトン及びエチレングリコールの少なくとも一方を含むことが好ましい。酸化物保護膜前駆体溶液がアセチルアセトン及びエチレングリコールの少なくとも一方の溶媒を含むことで、酸化物保護膜に含まれる金属成分の50atom%以上がインジウムであっても、酸化物保護膜の導電性が抑制され、半導体としてはではなく、絶縁性の保護膜として機能させることが可能となる。
【0041】
酸化物膜の導電性は、一般的に膜中の酸素欠陥の影響が大きく、酸素欠陥が少ないほど導電性が低下する傾向となる。上記の溶媒を用いて保護膜前駆体膜を形成して酸化物保護膜に転化させた場合、酸素が主たる金属成分であるインジウムと結合し易くなり、酸素欠陥が低減されていると推測される。一方、本発明者らの実験によれば、上記の溶媒を用いて本開示に係る保護膜前駆体膜を形成した場合、酸化物保護膜中の炭素濃度が高くなることがわかった。膜中に単なる不純物として炭素が含まれていれば電子素子の電気特性に影響して動作安定性が低下するが、インジウムと結合して膜中に存在することで酸化物半導体膜の電子伝達特性への影響が抑制され、電子素子の動作安定性に寄与していると推測される。
【0042】
酸化物保護膜前駆体溶液に含まれるインジウムは、溶液の調製が容易である点、酸化物保護膜の平坦性等の点から、インジウムイオンとして含まれることが好ましい。尚、本開示におけるインジウムイオンは、溶媒分子等の配位子が配位したインジウム錯イオンであってもよい。また、溶液に含み得るインジウム以外の他の金属成分もイオンとして含まれることが好ましい。
【0043】
本開示で用いる酸化物保護膜前駆体溶液は、金属成分の原料として金属原子含有化合物(溶質)が用いられる。金属原子含有化合物としては金属塩、金属ハロゲン化物、有機金属化合物等を挙げることができる。
酸化物保護膜前駆体溶液は、原料となる金属塩等の溶質を、溶液が所望の濃度となるように秤量し、溶媒中で攪拌、溶解させて得られる。攪拌を行う時間及び攪拌中の溶液の温度は溶質が十分に溶解されれば特に制限はない。
【0044】
金属塩としては、硝酸塩、硫酸塩、燐酸塩、炭酸塩、酢酸塩、蓚酸塩等、金属ハロゲン化物としては塩化物、ヨウ化物、臭化物等、有機金属化合物としては金属アルコキシド、有機酸塩、金属β−ジケトネート等がそれぞれ挙げられる。
【0045】
酸化物保護膜前駆体溶液は、インジウムのほかに硝酸イオンを含むことが好ましく、少なくとも硝酸インジウムを溶解させた溶液であることがより好ましい。硝酸インジウムを溶解させた溶液を塗布して得られた酸化物保護膜前駆体膜は、比較的低温で、容易に緻密なインジウム含有酸化物保護膜に転化させることができる。尚、硝酸インジウムは水和物であってもよい。
【0046】
酸化物保護膜前駆体溶液中の金属成分の合計濃度は、目標とする粘度、膜厚、比抵抗等に応じて選択することができる。酸化物保護膜の平坦性及び生産性の観点から0.01mol/L以上0.5mol/L以下であることが好ましい。
【0047】
(塗布)
次に、酸化物保護膜前駆体溶液を酸化物半導体膜上に塗布する。
酸化物保護膜前駆体溶液を塗布する方法としては、スプレーコート法、スピンコート法、ブレードコート法、ディップコート法、キャスト法、ロールコート法、バーコート法、ダイコート法、ミスト法、インクジェット法、ディスペンサー法、スクリーン印刷法、凸版印刷法、凹版印刷法等が挙げられる。特に、選択的に酸化物半導体膜上にパターンを形成する観点から、インクジェット法、ディスペンサー法、凸版印刷法、及び凹版印刷法から選択される少なくとも一種の塗布法を用いることが好ましい。
【0048】
(乾燥)
酸化物半導体膜上に酸化物保護膜前駆体溶液を塗布した後、自然乾燥して酸化物保護膜前駆体膜としてもよいが、加熱処理によって塗布膜を乾燥させ、酸化物保護膜前駆体膜を得ることが好ましい。乾燥によって、塗布膜の流動性を低減させ、最終的に得られる酸化物保護膜の平坦性を向上させることができる。また、適切な乾燥温度(例えば、35℃以上100℃以下)を選択することにより、最終的により緻密な酸化物保護膜を得ることができる。加熱処理の方法は特に限定されず、ホットプレート加熱、電気炉加熱、赤外線加熱、マイクロ波加熱等から選択することができる。
乾燥は膜の平坦性を均一に保つ観点から、基板上に溶液を塗布後、5分以内に開始することが好ましい。
また、乾燥を行う時間は特に制限はないが、膜の均一性、生産性の観点から15秒以上10分以下であることが好ましい。
また、乾燥における雰囲気に特に制限はないが、製造コスト等の観点から大気圧下、大気中で行うことが好ましい。
【0049】
<酸化物保護膜への転化工程>
酸化物保護膜への転化工程(以下、「転化工程」という場合がある。)では、酸化物保護膜前駆体膜を酸化物半導体膜よりも比抵抗が高い酸化物保護膜に転化させる。
酸化物保護膜前駆体膜を酸化物保護膜に転化させる方法に特に制限はなく、加熱、プラズマ、紫外光、マイクロ波等を用いる手法が挙げられ、より低温で酸化物保護膜への転化を行う観点から、酸化物保護膜前駆体膜が加熱されている条件下で紫外線照射を行う手法が好ましい。
【0050】
転化する際の雰囲気は酸素濃度が8%以下(80000ppm以下)であることが好ましく、3%以下(30000ppm以下)であることがより好ましい。酸素濃度が80000ppm以下であればより緻密な酸化物保護膜が得られやすく、電子デバイスとしての繰り返し動作安定性が向上しやすい。
転化工程における雰囲気中の酸素濃度を上記濃度範囲に調整する手段としては、例えば基板上の酸化物保護膜前駆体膜を転化させる処理室内に供給する窒素ガス等の不活性ガスの流速を調整する方法、処理室内に供給するガス中の酸素濃度を調整する方法、事前に処理室内を真空引きし、そこに所望の酸素濃度のガスを充填する方法等が挙げられる。
【0051】
転化工程における基板温度は200℃未満であることが好ましく、且つ120℃超であることがより好ましい。200℃未満であれば耐熱性の低い樹脂基板への適用が容易となり、120℃超であれば、短時間で緻密な酸化物保護膜を得ることができる。
転化工程における基板に対する加熱手段は特に限定されず、ホットプレート加熱、電気炉加熱、赤外線加熱、マイクロ波加熱等から選択すればよい。また、短時間で緻密な酸化物保護膜を得る観点から転化工程において基板が昇温又は降温する速度を±0.5℃/min以内にすることが好ましく、基板温度を一定に保持することがより好ましい。
転化工程は、生産性の観点から、5秒以上120分以下であることが好ましい。
【0052】
また、高い電子伝達特性を達成する観点から、紫外線照射中の基板が昇温又は降温する速度を±0.5℃/min以内にすることが好ましく、紫外線照射中の基板温度は一定にすることがより好ましい。紫外線照射中の基板温度は、基板を加熱するホットプレート等の加熱手段の出力を調整すること等によって制御することができる。なお、基板の温度は、熱電対付きSi基板によって基板の表面温度を測定することができる。
【0053】
酸化物保護膜前駆体膜の膜面には波長300nm以下の紫外光を10mW/cm以上の照度で照射することが好ましい。上記波長範囲の紫外光を上記照度範囲で照射することでより短い時間で酸化物保護膜前駆体膜から酸化物保護膜への転化を行うことができる。
【0054】
なお、紫外線の照度は、用いる光源の選択、集光機構、減光フィルタ等によって調整することができる。
【0055】
転化工程で用いる紫外線の光源としては、UV(Ultraviolet)ランプ、レーザー等が挙げられる。大面積に均一に、安価な設備で紫外線照射を行う観点からUVランプが好ましい。UVランプとしては、例えばエキシマランプ、重水素ランプ、低圧水銀ランプ、高圧水銀ランプ、超高圧水銀ランプ、メタルハライドランプ、ヘリウムランプ、カーボンアークランプ、カドミウムランプ、無電極放電ランプ等が挙げられ、特に低圧水銀ランプを用いると酸化物保護膜前駆体膜から酸化物保護膜への転化が容易に行えることから好ましい。
【0056】
以上の工程を経て、インジウムを含む酸化物半導体膜上にインジウムを含む酸化物保護膜を簡便に製造することができる。
【0057】
[薄膜トランジスタの製造方法及び薄膜トランジスタ]
本開示により製造された酸化物保護膜は、酸化物半導体膜の半導体特性の低下を抑制し、高い動作安定性を付与できることから、薄膜トランジスタ(TFT:Thin Film Transistor)における活性層(半導体層)を保護する酸化物保護膜として好適に用いることができる。
【0058】
以下、本開示に係る製造方法を用いて作製された酸化物保護膜を薄膜トランジスタの活性層を保護する酸化物保護膜として用いる実施形態について説明する。尚、本開示に係る酸化物保護膜の製造方法及びそれにより製造される酸化物保護膜は、TFTの作製における利用に限定されない。
【0059】
一般的に、TFTの素子構造は、TFTが形成されている基板を最下層としたときに、ゲート絶縁膜の上側にゲート電極が配置され、ゲート絶縁膜の下側に活性層が形成された、いわゆるスタガ構造(トップゲート型又はトップゲート構造とも呼ばれる)と、ゲート絶縁膜の下側にゲート電極が配置され、ゲート絶縁膜の上側に活性層が形成された逆スタガ構造(ボトムゲート型又はボトムゲート構造とも呼ばれる)がある。
また、活性層とソース電極及びドレイン電極(適宜、「ソース・ドレイン電極」という。)との接触部分に基づき、ソース・ドレイン電極が半導体層よりも先に形成されて半導体層の下面がソース・ドレイン電極に接触するボトムコンタクト型(ボトムコンタクト構造)と、半導体層がソース・ドレイン電極よりも先に形成されて半導体層の上面がソース・ドレイン電極に接触するトップコンタクト型(トップコンタクト構造)とがある。
【0060】
本開示に係る酸化物保護膜の製造方法を薄膜トランジスタに適用する場合、薄膜トランジスタの素子構造は特に限定されないが、ボトムゲート構造のTFTを製造する際、活性層となる酸化物半導体膜を形成した後、外気、溶液、上層等によって酸化物半導体膜の電気特性が影響を受けやすい。そのため、本開示に係る酸化物保護膜の製造方法は、ボトムゲート構造のTFTを製造する際に、酸化物半導体膜を保護する保護膜の形成に適用することで、効果が顕在化し易い。
【0061】
以下、本開示に係る酸化物保護膜の製造方法を適用して製造する電子素子の代表例として、ゲート電極と、ゲート絶縁膜と、インジウムを含む酸化物半導体膜と、酸化物半導体膜の少なくとも一部を保護する前述した実施形態に係る酸化物保護膜と、ソース電極と、ドレイン電極と、を有する薄膜トランジスタ及びその製造方法について説明する。
【0062】
本開示に係る薄膜トランジスタの製造方法は、好ましくは、基板上にゲート電極を形成する工程と、基板及びゲート電極上にゲート絶縁膜を形成する工程と、ゲート絶縁膜上にインジウムを含む酸化物半導体膜を形成する工程と、酸化物半導体膜上にソース電極及びドレイン電極を形成する工程と、ソース電極とドレイン電極との間で露出する酸化物半導体膜上に前述した実施形態に係る酸化物保護膜の製造方法により酸化物半導体膜よりも比抵抗が高い酸化物保護膜を形成する工程と、を有する。
【0063】
図1は、本開示に係るTFTの構成の一例を示す概略図である。図1に示すTFT10では、ボトムゲート構造及びトップコンタクト構造を有し、基板12の一方の主面上にゲート電極14と、ゲート絶縁膜16と、活性層としてインジウムを含む酸化物半導体膜18と、が順に積層されている。活性層18の表面上にはソース電極20及びドレイン電極22(適宜、「ソース・ドレイン電極」という)が間隙を有して設けられており、さらに、ソース電極20とドレイン電極22の間隙から露出する酸化物半導体膜18上には酸化物半導体膜18を保護する酸化物保護膜24が設けられている。
【0064】
図2は、本開示に係るTFTの構成の他の例を示す概略図である。図2に示すTFT30もボトムゲート構造を有し、基板12、ゲート電極14、ゲート絶縁膜16、酸化物半導体膜18の配置は図1に示すTFT10と同様である。酸化物半導体膜18上には酸化物保護膜24が設けられ、さらに酸化物保護膜24上にソース電極20及びドレイン電極22が間隙を有して設けられている。
【0065】
図3は、本開示に係るTFTの構成の他の例を示す概略図である。図3に示すTFT40もボトムゲート構造及びボトムコンタクト構造を有し、基板12、ゲート電極14、ゲート絶縁膜16の配置は図1に示すTFT10と同様である。ゲート絶縁膜16上には、ソース電極20及びドレイン電極22が間隙を有して設けられ、ソース電極20とドレイン電極22とに接触して酸化物半導体膜18が設けられている。さらに酸化物半導体膜18上には酸化物保護膜24が設けられている。
【0066】
図1図3に示す構成のTFT10,30,40のうち、簡便に製造できる点、酸化物保護膜24によって酸化物半導体膜18を効果的に保護する点、線形移動度、閾値シフト(繰り返し動作安定性)等のTFT特性に優れる点から、図1に示すTFT10のように、ボトムゲート構造であり、且つ、酸化物半導体膜18上にソース電極20及びドレイン電極22が形成されており、且つ、ソース電極20とドレイン電極22との間で露出する酸化物半導体膜18上に酸化物保護膜24が形成されている構造を有することが特に好ましい。
以下、代表例として、主に図1に示すTFT10の構成及び製造方法について詳細に説明する。なお、以下の説明では、符号は適宜省略する。
【0067】
(ゲート電極)
基板上にゲート電極を形成する。ゲート電極は高い導電性を有する材料を用い、例えばAl,Mo,Cr,Ta,Ti,Au,Ag等の金属、Al−Nd,Ag合金、酸化錫、酸化亜鉛、酸化インジウム、酸化インジウム錫(ITO)、酸化亜鉛インジウム(IZO)、In−Ga−Zn−O(IGZO)等の金属酸化物の導電膜を用いて形成することができる。ゲート電極としてはこれらの導電膜を単層構造又は2層以上の積層構造として用いることができる。
【0068】
ゲート電極は、例えば印刷方式、コーティング方式等の湿式方式、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法等の物理的方式、CVD、プラズマCVD法等の化学的方式等の中から使用する材料との適性を考慮して適宜選択した方法に従って成膜する。
ゲート電極を形成するための導電膜の膜厚は、成膜性、エッチング又はリフトオフ法によるパターンニング性、導電性等を考慮すると、10nm以上1000nm以下とすることが好ましく、50nm以上200nm以下とすることがより好ましい。
成膜後、エッチング又はリフトオフ法により所定の形状にパターンニングし、ゲート電極を形成してもよく、インクジェット法等により直接パターン形成してもよい。この際、ゲート電極及びゲート配線を同時にパターンニングすることが好ましい。
【0069】
(ゲート絶縁膜)
ゲート電極及び配線を形成した後、ゲート絶縁膜を形成する。ゲート絶縁膜は高い絶縁性を有する膜が好ましく、例えばSiO,SiN,SiON,Al,Y,Ta,HfO等の絶縁膜、又はこれらの化合物を少なくとも二つ以上含む絶縁膜としてもよく、単層構造であっても積層構造であってもよい。
ゲート絶縁膜は、印刷方式、コーティング方式等の湿式方式、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法等の物理的方式、CVD、プラズマCVD法等の化学的方式等の中から使用する材料との適性を考慮して適宜選択した方法に従って成膜する。
【0070】
ゲート絶縁膜はリーク電流の低下及び電圧耐性の向上のための厚みを有する必要がある一方、ゲート絶縁膜の厚みが大きすぎると駆動電圧の上昇を招いてしまう。ゲート絶縁膜は材質にもよるが、ゲート絶縁膜の厚みは10nm以上10μm以下が好ましく、50nm以上1000nm以下がより好ましく、100nm以上400nm以下が特に好ましい。
【0071】
(酸化物半導体膜)
ゲート絶縁膜上に酸化物半導体膜を含む活性層をパターン形成する。活性層のパターン形成は、前述したインクジェット法、ディスペンサー法、凸版印刷法、及び凹版印刷法によって予め活性層のパターンを有する酸化物半導体前駆体膜を形成して酸化物半導体膜に転化してもよいし、酸化物半導体膜をフォトリソグラフィー及びエッチングにより活性層の形状にパターンニングしてもよい。フォトリソグラフィー及びエッチングによりパターン形成を行うには、残存させる部分にフォトリソグラフィーによりレジストパターンを形成し、塩酸、硝酸、希硫酸、又は燐酸、硝酸及び酢酸の混合液等の酸溶液によりエッチングすることによりパターンを形成する。
酸化物半導体膜(活性層)の膜厚は、平坦性及び膜形成に要する時間の観点から5nm以上50nm以下であることが好ましい。
【0072】
(ソース・ドレイン電極)
活性層上にソース・ドレイン電極を形成する。ソース・ドレイン電極はそれぞれ電極として機能するように高い導電性を有する材料を用い、Al,Mo,Cr,Ta,Ti,Au,Ag等の金属、Al−Nd、Ag合金、酸化錫、酸化亜鉛、酸化インジウム、酸化インジウム錫(ITO)、酸化亜鉛インジウム(IZO)、In−Ga−Zn−O(IGZO)等の金属酸化物の導電膜等を用いて形成することができる。
【0073】
ソース・ドレイン電極の形成は、例えば印刷方式、コーティング方式等の湿式方式、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法等の物理的方式、CVD、プラズマCVD法等の化学的方式等の中から使用する材料との適性を考慮して適宜選択した方法に従って成膜すればよい。
ソース・ドレイン電極の膜厚は、成膜性、エッチング又はリフトオフ法によるパターンニング性、導電性等を考慮すると、10nm以上1000nm以下とすることが好ましく、50nm以上100nm以下とすることがより好ましい。
ソース・ドレイン電極は、エッチング又はリフトオフ法により所定の形状にパターンニングして形成してもよく、インクジェット法等により直接パターン形成してもよい。この際、ソース・ドレイン電極の全ての層及びこれらの電極に接続する配線を同時にパターンニングすることが好ましい。
【0074】
(酸化物保護膜)
酸化物半導体膜上に酸化物保護膜を上述した実施形態の手法に従って形成する。
酸化物保護膜は、酸化物半導体膜を形成した後に酸化物半導膜上に形成する。酸化物半導体膜の成膜に続けて成膜してもよいし、酸化物半導体膜を活性層の形状にパターンニングした後に酸化物保護膜を成膜してもよい。
また、酸化物保護膜は、図1に示すTFT10のように、ソース・ドレイン電極の形成後にソース・ドレイン電極間で露出する酸化物半導体膜上に形成してもよいし、図2に示すTFT30のように、ソース・ドレイン電極の形成前に酸化物半導体膜上に形成してもよい。あるいは、図3に示すTFT40のように、ソース・ドレイン電極の形成後に、酸化物半導体膜を形成し、酸化物半導体膜上に酸化物保護膜を形成してもよい。
【0075】
本開示により製造される薄膜トランジスタにおける酸化物半導体膜中の炭素濃度をC(atom/cm)、酸化物保護膜中の炭素濃度をC(atom/cm)としたとき、以下の関係式(I−1)を満たすことが好ましい。
/C≧10 (I−1)
【0076】
式(I−1)を満たすことで、高い線形移動度を有し、繰り返し動作安定性が向上した(閾値シフトが小さい)薄膜トランジスタを得ることができる。
かかる観点から、下記式(I)を満たすことがより好ましい。
100≧C/C≧10 (I)
【0077】
酸化物半導体膜中の炭素濃度Cに対し、酸化物保護膜中の炭素濃度Cが上記関係式(I)を満たすことで、酸化物保護膜の導電性が抑制され、半導体ではなく、絶縁性の保護膜として機能させることが可能となる。
上記関係式を満たす酸化物半導体膜及び酸化物保護膜を得る手法としては、酸化物半導体膜と酸化物保護膜を異なる成膜方法より形成する手法(例えば酸化物半導体膜を真空成膜で、酸化物保護膜を溶液プロセスで成膜する)、酸化物半導体膜と酸化物保護膜をともに溶液プロセスにて成膜する場合には異なる溶媒種の溶液を用いる手法等が挙げられる。
【0078】
酸化物半導体膜中の炭素濃度Cは1×1021atoms/cm以下であることが好ましい。上記炭素濃度範囲にすることで高い電子伝達特性を有する酸化物半導体膜が得られやすい。
【0079】
酸化物保護膜中の炭素濃度Cは1×1022atoms/cm以下であることが好ましい。上記炭素濃度範囲にすることで高い動作安定性が得られやすい。
【0080】
酸化物半導体膜及び酸化物保護膜中のそれぞれの炭素濃度、窒素濃度、及び水素濃度は二次イオン質量分析法(Secondary Ion Mass Spectrometry:SIMS)による測定で求めることができる。尚、SIMSはその原理上、試料表面近傍及び異種材料の界面近傍において正確なデータを得ることが困難なことが知られている。膜中の不純物濃度の厚さ方向の分布をSIMSで分析する場合、測定対象となる膜が存在する範囲において、極端な強度変動がなく、ほぼ一定の強度が得られる領域の値を採用する。
【0081】
酸化物保護膜の膜厚は、酸化物半導体膜を保護し、さらに、平坦性及び膜形成に要する時間の観点から、5nm以上50nm以下であることが好ましい。
【0082】
[電子デバイス]
以上で説明した本開示に係る薄膜トランジスタの用途には特に限定はないが、本開示に係る薄膜トランジスタは高いTFT特性を示すことから、例えば電気光学装置(例えば液晶表示装置、有機EL(Electro Luminescence)表示装置、無機EL表示装置等の表示装置等)における駆動素子として、耐熱性の低い樹脂基板上に形成したフレキシブルディスプレイに用いる場合に好適である。
また、本開示に係る電子素子は、X線センサー等の各種センサー、MEMS(Micro Electro Mechanical System)等、種々の電子デバイスにおける駆動素子(駆動回路)として、好適に用いられる。
本開示により製造される薄膜トランジスタを適用することで、電気特性に優れた電子デバイスの製造コストを抑制することができる。
【0083】
以下、本開示に係る電子デバイスの代表例として、本実施形態により製造される薄膜トランジスタを備えた液晶表示装置について具体的に説明する。
【0084】
<液晶表示装置>
本発明の一実施形態である液晶表示装置について、図4にその一部分の概略断面図を示し、図5に電気配線の概略構成図を示す。
【0085】
図4に示すように、本実施形態の液晶表示装置100は、図1に示したボトムゲート構造のTFT10と、パッシベーション層102上の画素下部電極104およびその対向上部電極106で挟まれた液晶層108と、各画素に対応させて異なる色を発色させるためのR(赤)G(緑)B(青)のカラーフィルタ110とを備え、TFT10の基板12側およびRGBカラーフィルタ110上にそれぞれ偏光板120a、120bを備えた構成である。
【0086】
また、図5に示すように、本実施形態の液晶表示装置100は、互いに平行な複数のゲート配線112と、ゲート配線112と交差する、互いに平行なデータ配線114とを備えている。ここでゲート配線112とデータ配線114は電気的に絶縁されている。ゲート配線112とデータ配線114との交差部付近に、TFT10が備えられている。
【0087】
TFT10のゲート電極14は、ゲート配線112に接続されており、TFT10のソース電極20はデータ配線114に接続されている。また、TFT10のドレイン電極22はパッシベーション層102に設けられたコンタクトホール116を介して(コンタクトホール116に導電体が埋め込まれて)画素下部電極104に接続されている。この画素下部電極104は、接地された対向上部電極106とともにキャパシタ118を構成している。
【0088】
なお、上記実施形態の液晶表示装置100においては、図1に示す構造のTFTを備えるが、TFTは図1に示す構造のTFTに限定されず、例えば、図2に示す構造のTFTであってもよい。
また、本開示に係る電子デバイスは図4及び図5に示す構成を有する液晶表示装置に限定されず、本開示に係る酸化物保護膜の製造方法は、有機EL表示装置、X線センサ等の他の電子デバイスにも適用することができる。
【実施例】
【0089】
以下に実施例を説明するが、本発明はこれら実施例により何ら限定されない。
【0090】
<実施例1>
以下のような手順でTFTを作製し、評価を行った。
【0091】
基板上に以下の手法で酸化物半導体膜を形成した。
硝酸インジウム(In(NO・xHO、純度:4N,(株)高純度化学研究所製)を2−メトキシエタノール(試薬特級、和光純薬工業社製)中に溶解させ、0.1mol/Lの濃度の硝酸インジウム溶液(酸化物半導体前駆体溶液)を作製した。
基板として熱酸化膜付p型シリコン基板を用い、熱酸化膜をゲート絶縁膜として用いる簡易型のTFTを作製した。熱酸化膜付p型シリコン25mm角の基板上に、作製した硝酸インジウム溶液を1500rpmの回転速度で30秒スピンコートした後、60℃に加熱されたホットプレート上で5分間乾燥を行った。
【0092】
得られた酸化物半導体前駆体膜を、下記条件で酸化物半導体膜に転化させた。
装置としては低圧水銀ランプを備えた真空紫外(VUV:Vacuum Ultraviolet)ドライプロセッサ(オーク製作所社製、VUE−3400−F)を用いた。
試料を装置内の、表面温度160℃に加熱されたホットプレート上にセットした後、5分間待機した。この間、装置処理室内に30L/minの窒素をフローさせることで、処理室内の酸素濃度を27000ppmにした。尚、装置処理室内の酸素濃度は酸素濃度計(横河電機社製、OX100)を使用して測定した。
【0093】
5分間の待機後、装置内のシャッターを開け、90分間、160℃の加熱処理下での紫外線照射処理を酸化物半導体前駆体膜に行うことで酸化物半導体膜を得た。加熱処理下での紫外線照射処理の間、50L/minの窒素を常にフローさせた。
試料位置での波長254nmをピーク波長とする紫外線照度は、紫外線積算光量計(浜松ホトニクス社製、コントローラーC9536、センサヘッドH9536−254、200nm超300nm以下程度の範囲に分光感度を持つ)を用いて測定し、105mW/cmであった。また、波長185nmをピーク波長とする紫外線照度は、紫外線積算光量計(浜松ホトニクス社製、コントローラーC9536、センサヘッドH9536−185、150〜200nm程度の範囲に分光感度を持つ)を用いて測定し、8.2mW/cmであった。
【0094】
上記得られた酸化物半導体膜上にソース・ドレイン電極を蒸着により成膜した。ソース・ドレイン電極の成膜は、メタルマスクを用いたパターン成膜にて作製し、Ti膜を50nmの厚みに成膜した。ソース・ドレイン電極のサイズは各々1mm角とし、電極間距離は0.2mmとした。
【0095】
次に、ソース・ドレイン電極間の酸化物半導体膜上に酸化物保護膜をインクジェット法を用いて形成した。
酸化物保護膜前駆体溶液としては、硝酸インジウム(In(NO・xHO、純度:4N,(株)高純度化学研究所製)をエチレングリコール(試薬特級、和光純薬工業社製)中に溶解させ、0.3mol/Lの濃度の硝酸インジウム溶液を作製した。
酸化物保護膜前駆体溶液(硝酸インジウム溶液)を富士フイルム社製 マテリアルプリンターDMP−2831を用いて、ソース・ドレイン電極間全体を覆う2mm×0.4mmの酸化物保護膜前駆体膜をパターン形成した。インクカートリッジは室温とし、基板を配置した加熱機能付きステージは60℃に加熱してインクジェットにより硝酸インジウム溶液を塗布した。
【0096】
次いで、酸化物保護膜前駆体膜を酸化物保護膜に転化させた。酸化物保護膜への転化工程は、上述した酸化物半導体膜への転化工程と同様の加熱処理下(90分間、160℃)での紫外線照射による酸化物半導体膜の転化工程と同じ条件で行った。
以上の工程を経て、薄膜トランジスタを作製した。
【0097】
<実施例2>
酸化物保護膜前駆体溶液の溶媒としてアセチルアセトン(試薬特級、和光純薬工業社製)を用いて酸化物半導体膜上に酸化物保護膜を作製したこと以外は実施例1と同じ手法で薄膜トランジスタを作製した。
【0098】
<比較例1>
保護膜前駆体溶液として、NN120−20(ポリシラザン20質量%、キシレン80質量%、AZエレクトロニックマテリアルズ社製)をAZ−Thinner(酢酸2−エトキシエチル)にて2倍希釈し、ポリシラザン溶液を得た。このポリシラザン溶液を用いて酸化物半導体膜上に酸窒化珪素保護膜を作製したこと以外は実施例1と同じ手法で薄膜トランジスタを作製した。
【0099】
<比較例2>
ソース・ドレイン電極形成後に酸化物保護膜を形成しないこと以外は実施例1と同じ手法で薄膜トランジスタを作製した。
【0100】
<実施例3>
酸化物保護膜前駆体溶液として、実施例1で用いた0.3mol/Lの濃度の硝酸インジウム溶液と、硝酸亜鉛(Zn(NO・6HO、純度:3N,(株)高純度化学研究所製)をエチレングリコールに溶解させて作製した0.3mol/Lの濃度の硝酸亜鉛溶液を1:1の割合で混合し、溶液中に含まれる金属成分の50atom%がインジウムである酸化物保護膜前駆体溶液を作製した。この酸化物保護膜前駆体溶液を用いたこと以外は実施例1と同じ手法で酸化物半導体膜上に酸化物保護膜を作製し、薄膜トランジスタを作製した。
【0101】
<比較例3>
酸化物保護膜前駆体溶液として、実施例1で用いた0.3mol/Lの濃度の硝酸インジウム溶液と、実施例3で用いた0.3mol/Lの濃度の硝酸亜鉛溶液を1:4の割合で混合し、溶液中に含まれる金属成分の20atom%がインジウムである酸化物保護膜前駆体溶液を作製した。この酸化物保護膜前駆体溶液を用いたこと以外は実施例1と同じ手法で酸化物半導体膜上に酸化物保護膜を作製し、薄膜トランジスタを作製した。
【0102】
[評価]
(TFT特性の評価)
実施例及び比較例で作製した薄膜トランジスタについて、半導体パラメータ・アナライザー4156C(アジレントテクノロジー社製)を用い、トランジスタ特性V−Iの測定を行った。V−I特性の測定は、ドレイン電圧(V)を+1Vに固定し、ゲート電圧(V)を−15V〜+30Vの範囲内で変化させ、各ゲート電圧におけるドレイン電流(I)を測定することにより行った。
【0103】
また、−15V〜+30V〜−15Vのゲート電圧掃引終了後、1分経過してから再度−15V〜+30V〜−15Vの掃引を行う作業を10回繰り返し、1回目の掃引時の閾値(Vth)と10回目の掃引時のVthの差を閾値シフト(ΔVth)として求めた。
【0104】
表1に実施例及び比較例で用いた保護膜前駆体溶液に含まれる金属成分の総量に対するインジウム(In)の割合及び溶媒種並びにV−I特性から求めた線形移動度、Vth、ΔVthを示す。
【0105】
【表1】

【0106】
実施例1〜3については保護膜形成前の特性(比較例2)と同等の線形移動度とVthを示しており、保護膜形成によって酸化物半導体膜の特性がほとんど変化していないことがわかる。
加えて酸化物保護膜の形成前では繰り返し駆動による閾値シフト(ΔVth)が極めて大きかったのに対して、酸化物保護膜の形成によりΔVthが大幅に低減していることがわかる。比較例1のポリシラザン溶液を用いた酸化物保護膜の形成では保護膜の形成により閾値(Vth)が大幅にマイナス方向にシフトしてしまった。
酸化物保護膜における金属成分のうちインジウムの含有量が50atom%以上であればΔVthが−2Vよりも小さい安定な動作が可能だが、インジウム含有量が20atom%(比較例3)となるとΔVthが大きい不安定な動作となることがわかる。
【0107】
(炭素濃度の評価)
実施例1及び比較例1の条件で作製した酸化物保護膜についてSIMS分析を行った。測定装置はULVAC PHI社製PHI ADEPT1010を用い、測定条件としては一次イオン種はCs+、一次加速電圧は1.0kV、検出領域は140μm×140μmとした。
【0108】
表2にSIMSによって見積もられた、実施例1〜3及び比較例1、3の酸化物保護膜中の炭素濃度Cを示す。
なお、各例における酸化物半導体膜中の炭素濃度Cは5.0×1020[atoms/cm]である。酸化物半導体膜中の炭素濃度C(atoms/cm)と酸化物保護膜中の炭素濃度C(atoms/cm)との比(C/C)も表2に示す。
【0109】
【表2】

【0110】
すなわち、酸化物半導体膜中の炭素濃度Cと酸化物保護膜中の炭素濃度Cとの関係が、実施例1〜3では、100≧C/C≧10であったが、比較例1では、C/C<10であり、比較例3では、C/C>100であった。
以上より、酸化物保護膜中の炭素濃度Cと酸化物半導体膜中の炭素濃度Cとの比が、特にTFTの動作安定性(ΔVth)に大きく影響しており、100≧C/C≧10の関係を満たすことで、TFTの動作安定性が向上すると考えられる。
【0111】
2015年1月28日に出願された日本特許出願2015−014626の開示はその全体が参照により本明細書に取り込まれる。
本明細書に記載された全ての文献、特許、特許出願、および技術規格は、個々の文献、特許、特許出願、および技術規格が参照により取り込まれることが具体的かつ個々に記された場合と同程度に、本明細書中に参照により取り込まれる。
図1
図2
図3
図4
図5