特許第6246961号(P6246961)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6246961
(24)【登録日】2017年11月24日
(45)【発行日】2017年12月13日
(54)【発明の名称】成膜装置
(51)【国際特許分類】
   C23C 14/34 20060101AFI20171204BHJP
   C23C 14/24 20060101ALI20171204BHJP
   H05B 33/10 20060101ALI20171204BHJP
   H01L 51/50 20060101ALI20171204BHJP
【FI】
   C23C14/34 K
   C23C14/24 K
   H05B33/10
   H05B33/14 A
【請求項の数】13
【全頁数】27
(21)【出願番号】特願2017-12178(P2017-12178)
(22)【出願日】2017年1月26日
(62)【分割の表示】特願2013-131588(P2013-131588)の分割
【原出願日】2013年6月24日
(65)【公開番号】特開2017-82342(P2017-82342A)
(43)【公開日】2017年5月18日
【審査請求日】2017年1月26日
(31)【優先権主張番号】特願2012-230625(P2012-230625)
(32)【優先日】2012年10月18日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000231464
【氏名又は名称】株式会社アルバック
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】大野 哲宏
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 優
(72)【発明者】
【氏名】中島 鉄兵
【審査官】 山田 頼通
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−085933(JP,A)
【文献】 国際公開第2008/050662(WO,A1)
【文献】 実開平02−091340(JP,U)
【文献】 特開2009−019243(JP,A)
【文献】 特開2001−185364(JP,A)
【文献】 特開平06−073542(JP,A)
【文献】 特開2005−285576(JP,A)
【文献】 特開2011−184751(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2001/0023820(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2012/0118541(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23C 14/00−14/58
H01L 51/50
H05B 33/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
膜の形成材料を含む粒子を基板に向けて放出する成膜部と、
冷却部材を冷却する冷却部と、
前記冷却部材から離れて前記冷却部材と対向する位置に前記基板を配置する2つの配置部と、
変位方向に沿って前記冷却部材の位置を変える冷却部材変位部と、
を備え、
前記成膜部と前記2つの配置部とが前記変位方向に沿ってこの順に並び、
前記2つの配置部のうち、前記成膜部に近い配置部が第1配置部であり、前記成膜部から遠い配置部が第2配置部であり、
前記冷却部材変位部は、
前記変位方向における前記第1配置部と前記第2配置部との間の位置である第1位置と、前記変位方向において前記第2配置部よりも前記成膜部から遠い第2位置との間で前記冷却部材の位置を変え、
前記第1配置部が前記基板を配置している状態で前記冷却部材を前記第1位置に位置させ、前記第2配置部が前記基板を配置している状態で前記冷却部材を前記第2位置に位置させる成膜装置。
【請求項2】
前記冷却部材が収められる真空槽を更に備え、
前記冷却部は、
前記真空槽内に含まれる気体の前記冷却部材の温度での蒸気圧が前記真空槽内の圧力よりも高くなる温度に前記冷却部材を冷却する
請求項1に記載の成膜装置。
【請求項3】
前記冷却部は、
前記冷却部材の温度を100K以上273K未満に設定する
請求項2に記載の成膜装置。
【請求項4】
前記気体がアルゴンガスを含み、
前記冷却部は、
前記冷却部材の温度を100K以上250K以下に設定する
請求項3に記載の成膜装置。
【請求項5】
前記冷却部は、
気体の断熱膨張を用いて前記冷却部材を冷却する
請求項1から4のいずれか一項に記載の成膜装置。
【請求項6】
前記冷却部材のうち前記基板と対向する表面が黒色部分を含む
請求項1から5のいずれか一項に記載の成膜装置。
【請求項7】
前記冷却部材は、前記冷却部によって冷却される複数の冷却部材のうちの1つであり、
前記複数の冷却部材は、前記配置部に配置される前記基板の異なる部分と対向するように配置される
請求項1から6のいずれか一項に記載の成膜装置。
【請求項8】
前記冷却部材変位部は、前記冷却部材を異なる複数の位置に移動させることによって、前記基板における前記冷却部材と向かい合う部位を変えることが可能であり、
前記冷却部材の位置の変更によって、前記基板における前記冷却部材と向かい合う部位が変更される前と後とで、前記基板と前記冷却部材との間の距離が同じである
請求項1から7のいずれか一項に記載の成膜装置。
【請求項9】
前記成膜部は、
プラズマを用いて前記膜の形成材料を前記基板に放出し、
前記基板が前記プラズマに曝される
請求項1から8のいずれか一項に記載の成膜装置。
【請求項10】
前記成膜部は、
前記膜の形成材料を蒸発させることによって前記形成材料を前記基板に放出する
請求項1から9のいずれか一項に記載の成膜装置。
【請求項11】
前記冷却部材と前記基板との間に気体を供給するガス供給部を更に備える
請求項1から10のいずれか一項に記載の成膜装置。
【請求項12】
前記成膜部と前記冷却部材とが収められる真空槽を更に備え、
前記成膜部と前記冷却部材とが互いに向かい合う位置に配置され、
前記配置部は、前記成膜部と前記冷却部材との間に前記基板を配置する
請求項1に記載の成膜装置。
【請求項13】
前記成膜部が収められる第1の真空槽と、
前記冷却部材が収められる第2の真空槽と、を備える
請求項1から12のいずれか一項に記載の成膜装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示の技術は、膜の形成材料を含む粒子を基板に向けて放出して基板に膜を形成する成膜装置に関する。
【背景技術】
【0002】
フラットパネルディスプレイの1つである有機ELディスプレイには、有機発光素子と薄膜トランジスタとを備える多数の画素が形成され、各画素は、駆動回路から延びる配線に接続されている。各画素を構成する各種膜及び配線は、成膜装置である蒸着装置やスパッタ装置によって形成される(例えば特許文献1及び特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−274366号公報
【特許文献2】特開2012−174609号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このうち、スパッタ装置によって膜が形成される場合には、高いエネルギーを有したスパッタ粒子が基板に到達することによって、基板上に膜が堆積する。そのため、衝突したスパッタ粒子のエネルギーが基板に伝わることによって、基板の温度が高まる。また、蒸着装置によって膜が形成される場合には、加熱によって蒸発した材料が基板に到達することによって、基板上に膜が堆積する。そのため、スパッタ装置と同様、蒸発した材料のエネルギーが基板に伝わることによって、さらには、蒸着源そのもののエネルギーが基板に伝わることによって、基板の温度が高まる。こうした基板の温度の上昇は、基板の耐熱性を高めることや成膜条件の変更などを強いるため、上述の成膜装置では基板を冷却する技術が求められている。
【0005】
本開示の技術は、基板の温度が高まることを抑えることのできる成膜装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の技術における成膜装置の一態様は、膜の形成材料を含む粒子を基板に向けて放出する成膜部と、冷却部材を冷却する冷却部と、前記冷却部材から離れて前記冷却部材と対向する位置に前記基板を配置する2つの配置部と、変位方向に沿って前記冷却部材の位置を変える冷却部材変位部と、を備え、前記成膜部と前記2つの配置部とが前記変位方向に沿ってこの順に並び、前記2つの配置部のうち、前記成膜部に近い配置部が第1配置部であり、前記成膜部から遠い配置部が第2配置部であり、前記冷却部材変位部は、前記変位方向における前記第1配置部と前記第2配置部との間の位置である第1位置と、前記変位方向において前記第2配置部よりも前記成膜部から遠い第2位置との間で前記冷却部材の位置を変え、前記第1配置部が前記基板を配置している状態で前記冷却部材を前記第1位置に位置させ、前記第2配置部が前記基板を配置している状態で前記冷却部材を前記第2位置に位置させる。
【0007】
本開示の技術における成膜装置の一態様では、冷却部によって冷却される冷却部材と基板とが互いに対向するため、基板の温度が高まることが抑えられる。この際に、基板と冷却部材とが相互に接触しないため、基板が冷却されることに際して、基板と冷却部材との接触によって亀裂や欠けが基板に生じることも抑えられる。また、冷却部材が、第1配置部が配置する基板と、第2配置部が配置する基板との両方を冷却することができる。
【0008】
本開示の技術における成膜装置の他の態様は、前記冷却部材が収められる真空槽を更に備える。そして、前記冷却部は、前記真空槽内に含まれる気体の前記冷却部材の温度での蒸気圧が前記真空槽内の圧力よりも高くなる温度に前記冷却部材を冷却する。
【0009】
本開示の技術における成膜装置の他の態様では、冷却部材の温度は、その冷却部材の温度下での気体の蒸気圧を、真空槽内の圧力よりも高くする値に設定される。このため、真空槽内の気体が冷却部材に付着しにくくなる。結果として、真空槽内の気体の冷却部材への付着が抑えられるため、真空槽内における気体の状態、ひいては、冷却部材による冷却の度合いが変わりにくくなる。
【0010】
本開示の技術における成膜装置の他の態様は、前記冷却部は、前記冷却部材の温度を100K以上273K未満に設定する。
本開示の技術における成膜装置の他の態様では、冷却部材の温度が273K以上に設定される構成と比べて、成膜対象が冷却されやすくなる。
【0011】
本開示の技術における成膜装置の他の態様は、前記気体がアルゴンガスを含み、前記冷却部は、前記冷却部材の温度を100K以上250K以下に設定する。
本開示の技術における成膜装置の他の態様では、冷却部材の温度が100K以上250K以下に設定されるため、冷却部材へのアルゴンガスの吸着が、より確実に抑えられる。
【0012】
本開示の技術における成膜装置の他の態様は、前記冷却部が、気体の断熱膨張を用いて前記冷却部材を冷却する。
本開示の技術における成膜装置の他の態様では、例えば、冷却水等の液状の冷媒によって冷却部材が冷却される構成に比べて、こうした冷媒が成膜装置内に漏れ出すことによって成膜装置が汚染されることが避けられる。
【0013】
本開示の技術における成膜装置の他の態様は、前記冷却部材のうち前記基板と対向する表面が黒色部分を含む。
本開示の技術における成膜装置の他の態様では、冷却部材の表面が黒色であるため、冷却部材の表面が、例えば白色等、黒色よりも輻射率の低い色である構成と比べて、冷却部材から基板に向けた熱の反射が抑えられる。それゆえに、基板の温度が高まることは、より抑えられる。
【0014】
本開示の技術における成膜装置の他の態様は、前記冷却部材は、前記冷却部によって冷却される複数の冷却部材のうちの1つであり、前記複数の冷却部材は、前記配置部に配置される前記基板の異なる部分と対向するように配置される。
【0015】
本開示の技術における成膜装置の他の態様によれば、複数の冷却部材が、基板における相互に異なる部分に対向するため、1つの冷却部材が基板における一部分と対向する構成と比べて、基板の面内において基板の冷却される度合いがばらつくことが抑えられる。結果として、基板の面内での温度のばらつきが抑えられる。
【0016】
本開示の技術における成膜装置の他の態様では、前記冷却部材変位部は、前記冷却部材を異なる複数の位置に移動させることによって、前記基板における前記冷却部材と向かい合う部位を変えることが可能であり、前記冷却部材の位置の変更によって、前記基板における前記冷却部材と向かい合う部位が変更される前と後とで、前記基板と前記冷却部材との間の距離が同じである。
【0017】
本開示の技術における成膜装置の他の態様によれば、基板に対する冷却部材の位置が変わっても、基板と冷却部材との間の距離が変わらないため、冷却部材による基板の冷却度合いも変わらない。それゆえに、基板と冷却部材との間の距離が変わる構成と比べて、基板において冷却部材による冷却の度合いがばらつくことが抑えられる。
【0018】
本開示の技術における成膜装置の他の態様は、前記成膜部が、プラズマを用いて前記膜の形成材料を前記基板に放出し、前記基板が前記プラズマに曝される。
本開示の技術における成膜装置の他の態様では、基板がプラズマに曝される場合であっても、基板の温度が高まることが抑えられる。
【0019】
本開示の技術における成膜装置の他の態様は、前記成膜部が、前記膜の形成材料を蒸発させることによって前記形成材料を前記基板に放出する。
本開示の技術における成膜装置の他の態様によれば、加熱によって蒸発した形成材料が基板に向けて放出されても、基板の温度が高まることが抑えられる。
【0020】
本開示の技術における成膜装置の他の態様は、前記冷却部材と前記基板との間に気体を供給するガス供給部を更に備える。
本開示の技術における成膜装置の他の態様では、冷却部による冷却に加えて、気体と基板との間での熱交換も行われるため、冷却部の駆動の状態が同一であるという前提では、気体による熱交換の分、基板の温度がより高まりにくくなる。
【0021】
本開示の技術における成膜装置の他の態様は、前記成膜部と前記冷却部材とが収められる真空槽を更に備え、前記成膜部と前記冷却部材とが互いに向かい合う位置に配置され、前記配置部は、前記成膜部と前記冷却部材との間に前記基板を配置する。
【0022】
本開示の技術における成膜装置の他の態様によれば、成膜部が基板に膜を形成する際に、基板の温度が高まることが抑えられる。
【0023】
本開示の技術における成膜装置の他の態様は、前記成膜部が収められる第1の真空槽と、前記冷却部材が収められる第2の真空槽と、を備える。
【0024】
本開示の技術における成膜装置の他の態様では、成膜部が基板に膜を形成する前や、成膜部が基板に膜を形成した後に基板の温度を下げることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本開示の技術における一実施形態での成膜装置の装置構成を示すブロック図である。
図2】一実施形態における成膜装置の備える冷却部材と連結部材との断面構造の一部を拡大して示す拡大部分断面図である。
図3】成膜装置の一例であるスパッタ装置の全体構成を成膜装置に収められる基板とともに示すブロック図である。
図4】スパッタ装置の備える第1スパッタ室の内部構成を示すブロック図である。
図5】スパッタ装置の電気的構成を示すブロック図である。
図6】冷却部材が移動する状態を示す作用図である。
図7】冷却部材が移動する状態を示す作用図である。
図8】成膜装置の一例であるクラスター型のスパッタ装置の全体構成を示すブロック図である。
図9】スパッタ装置の備える第1スパッタ室の内部構成を示すブロック図である。
図10】スパッタ装置の電気的構成を示すブロック図である。
図11】冷却部材と基板ステージとが移動する状態を示す作用図である。
図12】実施例及び比較例における基板温度の推移を示すグラフである。
図13】変形例における成膜装置の冷却部を模式的に示すブロック図である。
図14】変形例におけるスパッタ装置の電気的構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
[成膜装置の構成]
図1及び図2を参照して一実施形態の成膜装置の構成を説明する。
図1に示されるように、成膜装置は、板状をなす基板Sを成膜装置内に配置する配置部10と、基板Sの表面Sfに膜の形成材料FMを放出する成膜部20とを備えている。基板Sは、例えば、紙面の手前に向かって延びる矩形状のガラス基板であり、こうした基板Sの幅は、紙面の上下方向に沿って2200mm、紙面の手前側に向かって2500mmである。基板Sはガラス基板に限らず、セラミック基板や金属基板でもよい。また、基板Sの形状は、矩形状に限らず、円板状でもよいし、シート状でもよいし、基板Sの大きさも上記の大きさよりも大きくてもよいし、小さくてもよい。基板Sでは、基板Sを構成する複数の面のうち、膜の形成材料を受ける面が基板Sの表面Sfとして設定され、基板Sにて表面Sfと反対側の面が裏面Sbとして設定される。
【0027】
配置部10は、基板Sと一箇所、あるいは、複数箇所で接することによって、成膜部20から離れた位置にて成膜部20と向かい合うように、基板Sを配置する。成膜部20は、基板Sの表面Sfに対して略平行な方向から形成材料を供給してもよいし、表面Sfの鉛直方向から形成材料を供給してもよい。成膜部20は、例えば、ターゲットのスパッタによって基板Sに膜の形成材料FMを堆積させる構成でもよいし、形成材料FMを加熱して蒸発させることによって基板Sに膜の形成材料FMを蒸着させる構成でもよい。
【0028】
成膜装置では、基板Sを冷却する冷却機構30が、基板Sの裏面Sbから離れた位置にて、基板Sの裏面Sbと向かい合っている。冷却機構30は、冷却部としてのクライオポンプ31と、紙面の手前側に延びる矩形の板状をなして基板Sの裏面Sbと離れた位置に配置される冷却部材33と、これらクライオポンプ31と冷却部材33とを接続する接続部材32とを備えている。接続部材32の一端は、クライオポンプ31の冷却面に接続され、接続部材32の他端は、冷却部材33の裏面に接続されている。接続部材32の形成材料は、冷却部材33の熱をクライオポンプ31の冷却面に伝達することに適した高い熱伝導性を有し、例えば、銅等の金属によって構成されている。
【0029】
冷却機構30は、気体の断熱膨脹を用いるクライオポンプ31によって接続部材32を介して冷却部材33を冷却する。すなわち、冷却部材33の冷却源であるクライオポンプ31の冷却面が気体の断熱膨脹によって冷却されることで、固体の構造物である接続部材32を介して冷却部材33が冷却される。そのため、例えば、冷却水などの液状の冷媒を冷却部材33に通して冷却部材33が冷却される構成に比べて、こうした冷媒が成膜装置内に漏れ出すことによって成膜装置が汚染されることが避けられる。また、冷却部材33が基板Sの裏面Sbから離れて配置されるため、冷却部材33と基板Sの裏面Sbとが接触している構成と比べて、基板Sが冷却部材33との接触によって傷付けられることによって、亀裂や欠けが基板に生じることが抑えられる。
【0030】
ただし、冷却機構30は、液状の冷媒を冷却部材33に通して冷却部材33を冷却する構成でもよい。冷却機構30は、冷媒を冷却する冷媒冷却部と、冷媒を冷却機構30内で循環させる循環部とを含む。冷媒には、例えば、フッ素系溶液、すなわちHFC系溶液、エチレングリコール溶液、及び、冷却水等が用いられる。
【0031】
フッ素系溶液を用いた場合には、冷却部材33の温度が、例えば、253K以上313K以下、好ましくは、253K以上273K未満に設定される。フッ素系溶液には、例えば、フロリナート(登録商標)FC−3283(3M社製)、及び、ガルデン(登録商標)HT135(ソルベイソレクシス社製)等が用いられる。エチレングリコール溶液を用いた場合には、冷却部材33の温度が、例えば、253K以上363K以下、好ましくは、253K以上273K未満に設定される。冷却部材33の温度が273K未満に設定されるため、冷媒として例えば水を用いることによって冷却部材33の温度が273K以上に設定される構成と比べて、基板Sが冷却されやすくなる。
【0032】
図2に示されるように、冷却部材33は、冷却層41と、バッファ層42と、黒色層43とが順に積層された多層構造をなし、冷却層41が冷却部材33の裏面33bを構成し、黒色層43が冷却部材33の表面33fを構成している。
【0033】
冷却層41の形成材料は、接続部材32の温度が伝わりやすい材料であることが好ましく、例えば、銅等の金属が好ましい。バッファ層42は、黒色層43が冷却層41から剥がれることを抑える層であり、バッファ層42の形成材料の熱膨張係数が、冷却層41の熱膨張係数と、黒色層43の熱膨張係数との間であることが好ましい。バッファ層42の形成材料は、例えば、ニッケルであることが好ましい。黒色層43は、冷却部材33の他の層と比べて輻射率の高い材料によって形成され、黒色層43の形成材料の輻射率は、0.8以上1以下であることが好ましい。なお、黒色層43の全体が輻射率の高い材料によって形成されていなくともよく、少なくとも冷却部材33の表面33fが輻射率の高い材料によって形成されていればよい。黒色層43の形成材料は、例えば、表面に陽極酸化被膜を有するアルミニウムやカーボンが好ましい。
【0034】
基板Sの裏面Sbと向かい合う冷却部材33の表面33fが黒色層43であるため、冷却部材33の表面が輻射率のより低い色である構成と比べて、冷却部材33の表面33fから基板Sの裏面Sbに向けて反射する熱を小さくすることができる。それゆえに、基板Sの温度が高められることをより抑えることができる。
【0035】
[スパッタ装置の構成]
図3から図7を参照して成膜装置の一例であるスパッタ装置の構成を説明する。
図3に示されるように、スパッタ装置50では、搬出入室51、前処理室52、第1スパッタ室53、及び、第2スパッタ室54が一列に連結され、真空槽である各処理室の間には、ゲートバルブ55が取り付けられている。
【0036】
搬出入室51は、成膜前の基板Sをスパッタ装置50の外部から搬入し、成膜後の基板Sをスパッタ装置50の外部に搬出する。前処理室52は、前処理室52内を排気する排気部56と、冷却機構30とを備え、成膜前の基板Sに所定の前処理、例えば、加熱処理や洗浄処理を行う。前処理室52が冷却機構30を備えているため、基板Sに対する成膜処理が行われていないときにも基板Sを冷却することができる。前処理室52は、冷却機構30を備えていなくともよい。
【0037】
第1スパッタ室53の一側面には、2つの排気部56が、処理室の連結方向にて並んで取り付けられ、連結方向における2つの排気部56の間に、冷却機構30が搭載されている。一側面とは反対側の他側面には、ターゲットを備える成膜部20が搭載されている。第1スパッタ室53は、基板Sの表面Sfに所定の膜、例えば、銅膜を形成する。第2スパッタ室54は、第1スパッタ室53と同様の構成であり、成膜部20の備えるターゲットの形成材料が第1スパッタ室と異なる。第2スパッタ室54は、銅膜が形成された基板Sの表面Sfに所定の膜、例えば、金属膜や金属化合物膜等を形成する。第1スパッタ室53では、銅膜以外の膜が形成されてもよいし、第2スパッタ室54では、第1スパッタ室53と同じく銅膜が形成されてもよい。
【0038】
スパッタ装置50には、連結方向に延びる成膜レーン50aと、回収レーン50bとが、4つの処理室にわたって形成されている。なお、成膜レーン50aは、図1に示す配置部10の一例である。また、成膜レーン50aは第1配置部の一例であり、回収レーン50bは第2配置部の一例である。成膜レーン50aは、スパッタ装置50の底壁における成膜部20側に形成され、回収レーン50bは、スパッタ装置50の底壁における成膜レーン50aよりも排気部56側に形成されている。成膜レーン50aと回収レーン50bとの各々は、例えば、連結方向に延びるレールと、レールに対して所定の間隔を空けて取り付けられた複数のローラーと、ローラーを自転させるモーターとから構成されている。成膜レーン50aは、成膜前あるいは成膜中の基板Sを支えながら搬送し、回収レーン50bは、成膜後の基板Sを支えながら搬送する。なお、第2スパッタ室54には、成膜レーン50aに配置された基板Sを回収レーン50bに移動させるレーン変更部が搭載されている。
【0039】
スパッタ装置50は、基板Sを搬入すると、搬出入室51における成膜レーン50aに基板Sを配置し、スパッタ装置50は、成膜レーン50aに沿って搬出入室51から第2スパッタ室54に向けて基板Sを搬送する。そして、スパッタ装置50は、第2スパッタ室54にてレーン変更部によって基板Sを成膜レーン50aから回収レーン50bに運ぶ。スパッタ装置50は、回収レーン50bに沿って第2スパッタ室54から搬出入室51に向けて基板Sを搬送する。
【0040】
スパッタ装置50は、前処理室52を備えていなくともよいし、2つ以上の前処理室を備えていてもよい。また、スパッタ装置50は、スパッタ室を1つだけ備えていてもよいし、3つ以上のスパッタ室を備えていてもよい。
【0041】
[第1スパッタ室の構成]
図4を参照して第1スパッタ室53の構成をより詳しく説明する。なお、第2スパッタ室54は、上述のように成膜部20の備えるターゲットの形成材料が第1スパッタ室53とは異なるものの、その他の構成は同様である。
【0042】
図4に示されるように、第1スパッタ室53において基板Sは略垂直に立った状態で成膜される。第1スパッタ室53における真空槽53aの側壁のうち、成膜部20が搭載される成膜側側壁53bには、連結方向(図4において左右方向)と直交する立設方向(図4において紙面垂直方向)に延びる複数のターゲット21が、連結方向にて並んで配置されている。各ターゲット21は、例えば、銅を主成分とする材料で形成されている。各ターゲット21には、立設方向に延びて成膜側側壁53bに取り付けられたバッキングプレート22が固定されている。各バッキングプレート22には、ターゲット21に電力を供給するターゲット電源23が接続されている。各バッキングプレート22には、ターゲット電源23が1つずつ接続されていてもよいし、全てのバッキングプレート22に、1つのターゲット電源23が共通して接続されていてもよい。真空槽53aには、成膜ガスとしてのスパッタガスを供給するスパッタガス供給部24が接続されている。スパッタガスは、例えばアルゴンガスである。成膜部20は、ターゲット21、バッキングプレート22、ターゲット電源23、及び、スパッタガス供給部24によって構成される。
【0043】
成膜側側壁53bとは向かい合う排気側側壁53cには、2つの排気部56が連結方向にて並んで配置されている。各排気部56は、例えば、ターボ分子ポンプを備えている。成膜側側壁53bには、連結方向における2つの排気部56の間に冷却機構30が配置されている。冷却機構30のクライオポンプ31は、真空槽53aの外部に配置されている。接続部材32は、排気側側壁53cを貫通する冷却孔53hを介して、真空槽53a内に配置された冷却部材33に接続されている。
【0044】
排気側側壁53cの外側面には、冷却孔53hの外縁を囲む環状をなすベローズ61が取り付けられ、ベローズ61における排気側側壁53cとは反対側の端部が、クライオポンプ31に取り付けられている。排気側側壁53cの冷却孔53hは、クライオポンプ31とベローズ61とによって塞がれている。排気側側壁53cの外側面には、連結方向と立設方向との両方に直交する変位方向(図4において上下方向)に延びる変位レール62が取り付けられている。
【0045】
クライオポンプ31には、クライオポンプ31から変位レール62に向けて連結方向に延びる棒状をなす変位シャフト63が取り付けられている。変位シャフト63の先端部は、変位レール62に変位方向に形成された溝に差し込まれ、先端部には、変位シャフト63の位置を変位レール62に沿って変える変位モーターが接続されている。例えば、変位モーターが正回転することにより、変位シャフト63とともにクライオポンプ31が排気側側壁53cに近付き、変位モーターが逆回転することにより、変位シャフト63が排気側側壁53cから遠ざかる。ベローズ61、変位レール62、変位シャフト63、及び、変位モーターによって変位部が構成されている。変位部が、冷却部材変位部の一例である。
【0046】
真空槽53aには、連結方向に延びる成膜レーン50aと回収レーン50bとが、成膜側側壁53b側から順に変位方向にて並んで配置されている。すなわち、回収レーン50bは、変位方向において成膜レーン50aよりも成膜部20から遠い位置に形成されている。成膜レーン50aには、四角枠状のトレイTに取り付けられた四角板状の基板Sが、表面Sfと成膜部20とが向かい合い、且つ、裏面Sbと冷却部材33の表面33fとが向かい合う状態で配置される。基板Sは、例えば、ガラス基板である。トレイTには、基板Sの裏面Sbを支持板が取り付けられていてもよく、支持板は、矩形板状をなしていてもよいし、格子状をなしていてもよい。なお、冷却機構30による基板Sの冷却効果を高める上では、トレイTには支持板が備えられていないことが好ましい。
【0047】
[スパッタ装置の電気的構成]
図5を参照してスパッタ装置50の電気的構成を説明する。なお、以下では、スパッタ装置50の電気的構成のうち、第1スパッタ室53の駆動に関わる構成についてのみ説明する。
【0048】
図5に示されるように、スパッタ装置50には、スパッタ装置50の駆動を制御する制御装置50Cが搭載されている。制御装置50Cには、複数のターゲット電源23、スパッタガス供給部24、クライオポンプ31、2つの排気部56、及び、変位モーター60Mが接続されている。
【0049】
制御装置50Cは、各ターゲット電源23からの電力の供給を開始させるための供給開始信号、及び、各ターゲット電源23からの電力の供給を停止させるための供給停止信号を各ターゲット電源23に出力する。各ターゲット電源23は、制御装置50Cからの制御信号に応じて電力の供給及び停止を行う。
【0050】
制御装置50Cは、スパッタガス供給部24からのスパッタガスの供給を開始させるための供給開始信号、及び、スパッタガス供給部24からのスパッタガスの供給を停止させるための供給停止信号をガス供給部駆動回路24Dに出力する。ガス供給部駆動回路24Dは、制御装置50Cからの制御信号に応じてスパッタガス供給部24を駆動するための駆動信号を生成し、生成された駆動信号をスパッタガス供給部24に出力する。
【0051】
制御装置50Cは、クライオポンプ31の駆動を開始させるための駆動開始信号、及び、クライオポンプ31の駆動を停止させるための駆動停止信号をポンプ駆動回路31Dに出力する。ポンプ駆動回路31Dは、制御装置50Cからの制御信号に応じてクライオポンプ31を駆動するための駆動信号を生成し、生成された駆動信号をクライオポンプ31に出力する。
【0052】
制御装置50Cは、各排気部56の駆動を開始させるための駆動開始信号、及び、各排気部56の駆動を停止させるための駆動停止信号を排気部駆動回路56Dに出力する。排気部駆動回路56Dは、制御装置50Cからの制御信号に応じて各排気部56を駆動するための駆動信号を生成し、生成された駆動信号を排気部56に出力する。
【0053】
制御装置50Cは、変位モーター60Mの正回転を開始させるための正回転開始信号、変位モーター60Mの逆回転を開始させるための逆回転開始信号、及び、変位モーター60Mの回転を停止させるための回転停止信号をモーター駆動回路60Dに出力する。モーター駆動回路60Dは、制御装置50Cからの制御信号に応じて変位モーター60Mを駆動するための駆動信号を生成し、生成された駆動信号を変位モーター60Mに出力する。
【0054】
[スパッタ装置の作用]
図6及び図7を参照してスパッタ装置50の作用を説明する。
図6に示されるように、基板Sの表面に銅膜が形成されるときには、まず、制御装置50Cが各排気部56に対する駆動開始信号を出力し、各排気部56が真空槽53a内を排気する。そして、制御装置50Cが、クライオポンプ31に対する駆動開始信号を出力し、冷却部材33の温度が、冷却部材33の温度でのアルゴンガスの蒸気圧が真空槽53a内のアルゴンガスの圧力よりも高い温度、好ましくは、100K以上250K以下の温度とされる。
【0055】
なお、冷却機構30では、クライオポンプ31の温度が所定の温度に設定されることによって、クライオポンプ31に接続された接続部材32が冷却され、かつ、接続部材32に接続された冷却部材33が冷却される。これにより、冷却部材33の温度が、例えば、100K以上250K以下の温度とされる。ここで、冷却機構30では、クライオポンプ31によって冷却部材33の冷却が行われているとき、クライオポンプ31の設定温度と接続部材32の温度とが略等しく、かつ、接続部材32の温度と冷却部材33の温度とが略等しい。そのため、例えば、接続部材32の温度が測定される構成では、測定された接続部材32の温度を冷却部材33の温度とみなすことが可能である。
【0056】
そして、成膜前の基板Sが、成膜レーン50aによって前処理室52から第1スパッタ室53内に搬入され、基板Sが基板Sの表面Sf全体と成膜部20とが向かい合う配置位置で静止される。次いで、制御装置50Cが、変位モーター60Mに対する正回転開始信号を出力し、変位モーター60Mが正回転を開始する。これにより、変位シャフト63が排気側側壁53cに向けて変位し、且つ、ベローズ61が縮む。そして、冷却部材33の表面と基板Sの裏面Sbとの間の距離が、例えば、250mm、あるいは、50mmになると、制御装置50Cは、変位モーター60Mに対する回転停止信号を出力し、変位モーター60Mが回転を停止する。そのため、変位方向における冷却部材33の位置は、冷却部材33の表面と基板Sの裏面Sbとの間の距離が250mmや50mmである第1位置に保たれる。第1位置は、変位方向における成膜レーン50aと回収レーン50bとの間の位置である。
【0057】
なお、冷却部材33の表面と基板Sの裏面Sbとの間の距離は、250mmや50mm以外の長さでもよいし、基板Sに対する成膜処理が行われる間に変えられてもよい。冷却部材33の表面と基板Sの裏面Sbとの間の距離が小さいほど、基板Sは冷却機構30によって冷却されやすく、冷却部材33の表面と基板Sの裏面Sbとの間の距離が大きいほど、基板Sは冷却機構30によって冷却されにくい。そのため、変位部によれば、クライオポンプ31の温度を変えずとも、冷却部材33の表面と基板Sの裏面Sbとの間の距離を変えることで、基板Sが冷却機構30によって冷却される度合いを調節することができる。
【0058】
また、第1スパッタ室53では、銅膜の形成は、静止している基板Sに対して行われるのではなく、成膜レーン50aを搬送されている基板Sに対して行われてもよい。この場合には、冷却機構30による基板Sの冷却は、搬送されている基板Sに対して行われればよい。
【0059】
次いで、制御装置50Cは、スパッタガス供給部24に対する供給開始信号と、ターゲット電源23に対する供給開始信号とを出力する。これにより、スパッタガス供給部24が真空槽53a内へのアルゴンガスの供給を開始し、ターゲット電源23がバッキングプレート22への電力の供給を開始する。これにより、真空槽53a内には、アルゴンガスからプラズマが生成され、プラズマ中の正イオンがターゲット21に衝突することによって弾き出されたスパッタ粒子が基板Sの表面Sfに堆積する。結果として、基板Sの表面には銅膜が形成される。
【0060】
このとき、基板Sの裏面Sbは、クライオポンプ31によって冷却された冷却部材33と向かい合っているため、冷却部材33を備えていない構成と比べて、基板Sの温度が高められにくくなる。
【0061】
例えば、有機ELディスプレイや液晶ディスプレイを構成する配線の抵抗を低くするために、配線の形成材料を銅とし、且つ、配線の厚さを1μm以上とする場合もある。この場合には、基板Sが加熱されることや、基板Sの熱膨張係数と銅膜との熱膨張係数とが異なること等の熱により生じる応力に加えて、銅膜の膜応力も大きくなる。そのため、基板Sが変形しやすくなり、基板Sが割れてしまう場合もある。もしくは、基板Sの変形による基板Sの反りによって、その後の工程処理にてデバイスを形成する上で不都合が生じる場合もある。基板Sの温度が高められることは、銅膜の形成を間欠的に行うことによって抑えることが可能ではある。しかしながら、こうした成膜では、基板Sに対して同じ厚さの銅膜を形成する前提では、銅膜の形成を連続して行う場合と比べて、銅膜の形成にかかる時間が長くなってしまう。
【0062】
この点で、第1スパッタ室53には、基板Sを冷却する冷却機構30が備えられているため、銅膜の形成にかかる時間が長くなることを抑えながら、基板Sの温度が高められることで基板Sが変形することを抑えることができる。
【0063】
銅膜の形成時には、基板Sの表面Sfがターゲット21と基板Sの表面Sfとの間に生成されたプラズマに曝されるため、基板Sの表面Sfがプラズマに曝されない構成と比べて、基板Sの温度が高められやすい。それゆえに、冷却機構30による基板Sの冷却効果がより顕著になる。
【0064】
また、例えば、有機ELディスプレイを構成する有機発光層上には、高屈折率層である酸化ニオブ層がスパッタにより形成される。酸化ニオブ層の下層となる有機発光層は、有機発光層の膜質の変化を抑えるために、所定の温度以下、例えば100℃以下に保たれることが好ましい。この点で、冷却機構30により基板Sを冷却しながら酸化ニオブ層を形成することにより、基板Sと基板Sに形成された有機発光層の温度が高められることを抑えられ、結果として、有機発光層の膜質が変化することが抑えられる。
【0065】
第1スパッタ室53にて膜が形成されるときには、通常、真空槽53a内の圧力は、1×10−1Pa以下に維持される。真空槽53a内に供給されるスパッタガスがアルゴンガスのみであれば、膜形成時のアルゴンガスの圧力は、凡そ真空槽53a内の圧力に等しい。冷却部材33の温度が、100K以上250以下に設定される場合には、冷却部材33の温度でのアルゴンガスの蒸気圧が、1×10Paを超える圧力になるため、冷却部材33の温度でのアルゴンガスの蒸気圧は、真空槽53a内のアルゴンガスの圧力に対して十分に大きくなる。それゆえに、真空槽53a内に供給されたアルゴンガスは、冷却部材33によってはほとんど吸着されない。
【0066】
一方で、冷却部材33には、真空槽53a内のガスが少なからず吸着するため、クライオポンプ31の駆動時間が経過するにつれて、冷却部材33による冷却の効率が変わりやすい。冷却部材33にて冷却の効率が変わることは、真空槽53a内にて行われるスパッタの条件を変えるため、冷却部材33の温度は、冷却部材33の冷却の効率が変わりにくい温度に設定することが好ましい。この点で、冷却部材33の温度が100K以上250K以下に設定されれば、真空槽53a内のアルゴンガスの圧力よりも冷却部材33でのアルゴンガスの蒸気圧が高くなる。そのため、冷却部材33の冷却の効率を変わりにくくすることで、スパッタの条件が変わることが抑えられる。また、冷却部材33へのアルゴンガスの吸着が抑えられる分、冷却部材33の吸着した気体を排出するための処理を行う回数を少なくすることができる。
【0067】
なお、100K以上250K以下では、水の蒸気圧は、1×10−11Pa以上1×10−1Pa以下の圧力範囲を含む圧力であるため、冷却部材33の温度での水の蒸気圧が、真空槽53a内の水の圧力よりも小さくなることが多い。このように、冷却部材33の温度が100K以上250K以下では、真空槽53a内の水を吸着しながら、アルゴンガスが排気されることを抑えることができる。
【0068】
図7に示されるように、成膜後の基板Sが回収レーン50bを通過することによって搬出入室51に向けて搬送されるときにも、制御装置50Cが各排気部56に対する駆動開始信号を出力し、各排気部56が真空槽53a内を排気している。また、制御装置50Cは、クライオポンプ31に対する駆動開始信号も出力し、冷却部材33の温度が、上述の温度とされる。なお、冷却部材33の温度が室温から所定の温度まで低下するには所定の時間がかかるため、スパッタ装置50にて複数の基板Sに対して連続して成膜処理が行われる場合には、複数の基板Sの全てに対する成膜処理が終わるまで、クライオポンプ31の駆動は保たれる。
【0069】
そして、制御装置50Cは変位モーター60Mに対する逆回転開始信号を出力し、変位モーター60Mが逆回転を開始する。これにより、変位シャフト63が排気側側壁53cから遠ざかる方向に変位し、且つ、ベローズ61が伸びることによって、冷却部材33が回収レーン50bよりも排気側側壁53cに近付くと、制御装置50Cは、変位モーター60Mに対する回転停止信号を出力し、変位モーター60Mが回転を停止する。これにより、冷却部材33が回収レーン50bよりも排気側側壁53cの近くに配置される。すなわち、冷却部材33が、変位方向において回収レーン50bよりも成膜部20から遠い第2位置に配置される。
【0070】
その後、成膜後の基板Sは、回収レーン50bによって第2スパッタ室54から第1スパッタ室53内に搬入される。成膜後の基板Sが回収レーン50bによって搬送されるときには、冷却部材33は、回収レーン50bよりも排気側側壁53cの近くに位置しているため、基板Sの搬送が、冷却部材33によって妨げられない。
【0071】
なお、スパッタ装置50では、前処理室52が冷却機構30を備えているため、第1スパッタ室53から前処理室52に搬入された基板Sが前処理室52で静止されることによって、成膜後の基板Sを前処理室52にて冷却することができる。そのため、例えば、成膜後の基板Sを所定の温度にまで冷却した上でスパッタ装置50の外部に搬出する構成では、前処理室52に冷却機構30が備えられている分、基板Sの冷却にかかる時間を短くすることができる。それゆえに、スパッタ装置50における基板Sあたりの処理時間を短くすることができる。
【0072】
[クラスター型スパッタ装置]
図8から図11を参照して成膜装置の一例であるクラスター型スパッタ装置の構成を説明する。
【0073】
図8に示されるように、スパッタ装置70は、搬送ロボット71Rが搭載された搬送室71を備え、搬送室71には、搬出入室72、前処理室73、第1スパッタ室74、第2スパッタ室75、及び、第3スパッタ室76の各々が、搬送室71と連通可能に連結されている。
【0074】
搬出入室72は、成膜前の基板Sをスパッタ装置70の外部から搬送室71へ搬入し、成膜後の基板Sを搬送室71からスパッタ装置70の外部へ搬出する。前処理室73は、冷却機構30を備え、搬送室71から搬入される成膜前の基板Sに所定の前処理、例えば、加熱処理や洗浄処理を行う。
【0075】
第1スパッタ室74には、ターゲットを備える成膜部20と、基板Sを冷却する冷却機構30とが搭載されている。第1スパッタ室74は、基板Sの表面Sfに所定の膜、例えば、銅膜を形成する。第2スパッタ室75は、第1スパッタ室74と同様の構成であり、成膜部20の備えるターゲットの形成材料のみが第1スパッタ室74と異なる。第2スパッタ室75は、銅膜が形成された基板Sの表面Sfに所定の膜、例えば、金属膜や金属化合物膜等を形成する。第3スパッタ室76は、第1スパッタ室74と同様の構成であり、成膜部20の備えるターゲットの形成材料のみが第1スパッタ室74と異なる。第3スパッタ室76は、基板Sの表面Sfに所定の膜、例えば、金属膜や金属化合物膜等を形成する。第1スパッタ室74、第2スパッタ室75、及び、第3スパッタ室76の各々では、相互に異なる材料からなる膜が形成されてもよいし、第2スパッタ室75、及び、第3スパッタ室76では、第1スパッタ室74と同じく銅膜が形成されてもよい。
【0076】
スパッタ装置70は、前処理室73を備えていなくともよいし、2つ以上の前処理室を備えていてもよい。また、スパッタ装置70は、スパッタ室を1つあるいは2つだけ備えていてもよいし、4つ以上のスパッタ室を備えていてもよい。
【0077】
[第1スパッタ室の構成]
図9を参照して第1スパッタ室74の構成をより詳しく説明する。なお、第2スパッタ室75、及び、第3スパッタ室76の各々は、上述のように成膜部20の備えるターゲットの形成材料が第1スパッタ室74と異なるものの、その他の構成は同様である。
【0078】
図9に示されるように、第1スパッタ室74における真空槽74aの一側面である搬送側側壁74bには、ゲートバルブ74gが取り付けられている。ゲートバルブ74gは、搬送室71から第1スパッタ室74へ成膜前の基板Sが搬入されるとき、及び、第1スパッタ室74から搬送室71へ成膜後の基板Sが搬出されるときに開くことで、第1スパッタ室74と搬送室71とが連通される。
【0079】
真空槽74aにおけるゲートバルブ74gと向かい合う成膜側側壁74cには、紙面と直交する方向に延びる四角板状をなすターゲット21が、同じく紙面と直交する方向に延びる四角板状をなすバッキングプレート22によって固定されている。ターゲット21は、例えば銅を主成分とする材料で形成されている。バッキングプレート22には、ターゲット電源23が接続されている。真空槽74aには、真空槽74a内に成膜ガスであるスパッタガスを供給するスパッタガス供給部24が接続され、スパッタガス供給部24は、例えばアルゴンガスを供給する。
【0080】
真空槽74a内には、紙面と直交する方向に延びる円柱状をなす基板回転軸11が配置され、基板回転軸11の両端部は、回転が可能な状態で真空槽74aの壁部に支えられている。以下、基板回転軸11の中心軸が延びる方向が、回転軸方向として設定される。基板回転軸11には、例えば、基板回転軸用のモーターである基板モーターが接続され、基板回転軸11は、モーターの正回転及び逆回転によって、2つの方向に自転する。
【0081】
基板回転軸11には、回転軸方向に延びる四角板状をなす基板ステージ12が取り付けられ、基板ステージ12には、複数のピン孔12aが、基板ステージ12を構成する各辺に沿って形成されている。基板ステージ12は、基板回転軸11の回転によって、ターゲット21と略平行な位置と、ターゲット21と略直交する位置との間で変位する。基板ステージ12がターゲット21と略平行な位置に配置される状態で、基板ステージ12上の基板Sの表面Sfがターゲット21と向かい合う。
【0082】
真空槽74a内における基板回転軸11よりも下方には、回転軸方向に延びる四角板状をなす昇降板81が配置され、昇降板81における基板ステージ12と向かい合う面には、複数の昇降ピン82が取り付けられている。複数の昇降ピン82は、昇降板81を構成する各辺に沿って取り付けられている。
【0083】
なお、基板Sが搬送室71から第1スパッタ室74内に搬入されるときには、昇降板81が基板ステージ12に向けて上昇することで、昇降ピン82の各々が、異なるピン孔12aに通される。これにより、各昇降ピン82の端部がピン孔12aから突出する。そして、基板Sが搬送ロボット71Rによって昇降ピン82上に載せられ、この状態で、昇降板81が基板ステージ12に向けて下降することによって、基板Sが基板ステージ12上に配置される。
【0084】
真空槽74aにおける昇降板81と向かい合う壁部である上壁74dの外表面には、クライオポンプ31が取り付けられ、クライオポンプ31の冷却面は、真空槽74a内に露出している。クライオポンプ31の冷却面には、上記スパッタ装置50のクライオポンプ31と同様、接続部材32が接続され、接続部材32におけるクライオポンプ31には接続されない側の端部には、回転軸方向に延びる四角板状をなす冷却部材33が取り付けられている。冷却部材33におけるターゲット21に向かい合う側面には、回転軸方向に延びる円柱状をなす冷却回転軸34が取り付けられている。冷却回転軸34は、中心軸の延びる方向が基板回転軸11の延びる方向と平行であり、冷却回転軸34の両端部の各々は、回転が可能な状態で真空槽74aの壁部に支えられている。冷却回転軸34には、基板回転軸11と同様、例えば、冷却回転軸用のモーターである冷却モーターが接続され、冷却回転軸34は、モーターの正回転及び逆回転によって、2つの方向に自転する。冷却部材33は、冷却回転軸34の回転によって、ターゲット21と略平行な状態と、ターゲット21と略直交する方向とに配置される。
【0085】
接続部材32の形成材料は、スパッタ装置50の接続部材と同様、冷却部材33の熱をクライオポンプ31に伝達することに適した材料、例えば、銅等の金属によって構成されている。また、接続部材32は、上壁74dと冷却部材33との間にて、回転軸方向とは直交する方向で複数回折りたたまれた蛇腹状をなしている。接続部材32は、冷却部材33がターゲット21と略直交する状態、すなわち、上壁74dと冷却部材33との間の距離が最も小さい状態のときに、最も縮んだ状態である。これに対し、接続部材32は、冷却部材33がターゲット21と略平行な状態、すなわち、上壁74dと冷却部材33との間の距離が最も大きい状態のときに、最も伸びた状態である。なお、第1スパッタ室74には、真空槽74a内を排気する排気部が取り付けられ、排気部は、例えばターボ分子ポンプを備えている。
【0086】
[スパッタ装置の電気的構成]
図10を参照してスパッタ装置70の電気的構成を説明する。なお、以下では、スパッタ装置70の電気的構成のうち、第1スパッタ室74の駆動に関わる構成についてのみ説明する。
【0087】
図10に示されるように、スパッタ装置70には、スパッタ装置70の駆動を制御する制御装置70Cが搭載されている。制御装置70Cには、ターゲット電源23、スパッタガス供給部24、クライオポンプ31、基板モーター11M、及び、冷却モーター34Mが接続されている。
【0088】
制御装置70Cは、上記制御装置50Cと同様、ターゲット電源23からの電力の供給を開始させるための供給開始信号、及び、ターゲット電源23からの電力の供給を停止させるための供給停止信号を各ターゲット電源23に出力する。ターゲット電源23は、制御装置70Cからの制御信号に応じて電力の供給及び停止を行う。
【0089】
制御装置70Cは、制御装置50Cと同様、スパッタガス供給部24からのスパッタガスの供給を開始させるための供給開始信号、及び、スパッタガス供給部24からのスパッタガスの供給を停止させるための供給停止信号をガス供給部駆動回路24Dに出力する。ガス供給部駆動回路24Dは、制御装置70Cからの制御信号に応じてスパッタガス供給部24を駆動するための駆動信号を生成し、生成された駆動信号をスパッタガス供給部24に出力する。
【0090】
制御装置70Cは、制御装置50Cと同様、クライオポンプ31の駆動を開始させるための駆動開始信号、及び、クライオポンプ31の駆動を停止させるための駆動停止信号をポンプ駆動回路31Dに出力する。ポンプ駆動回路31Dは、制御装置70Cからの制御信号に応じてクライオポンプ31を駆動するための駆動信号を生成し、生成された駆動信号をクライオポンプ31に出力する。
【0091】
制御装置70Cは、基板モーター11Mの正回転を開始させるための正回転開始信号、基板モーター11Mの逆回転を開始させるための逆回転開始信号、及び、基板モーター11Mの回転を停止させるための回転停止信号を基板モーター駆動回路11Dに出力する。基板モーター駆動回路11Dは、制御装置70Cからの制御信号に応じて基板モーター11Mを駆動するための駆動信号を生成し、生成された駆動信号を基板モーター11Mに出力する。
【0092】
制御装置70Cは、冷却モーター34Mの正回転を開始させるための正回転開始信号、冷却モーター34Mの逆回転を開始させるための逆回転開始信号、及び、冷却モーター34Mの回転を停止させるための回転停止信号を冷却モーター駆動回路34Dに出力する。冷却モーター駆動回路34Dは、制御装置70Cからの制御信号に応じて冷却モーター34Mを駆動するための駆動信号を生成し、生成された駆動信号を冷却モーター34Mに出力する。
【0093】
[スパッタ装置の作用]
図11を参照してスパッタ装置70の作用を説明する。
図11に示されるように、基板Sの表面に銅膜が形成されるときには、制御装置70Cが、基板モーター11Mに対する正回転開始信号を出力し、基板モーター11Mが正回転を開始する。これにより、基板回転軸11が紙面における例えば右回りに自転することによって、基板ステージ12が、基板Sの表面Sfとターゲット21とが略平行となる位置に配置される。次いで、制御装置70Cが、基板モーター11Mに対する回転停止信号を出力し、基板モーター11Mが回転を停止する。これにより、基板ステージ12は、ターゲット21と略平行に保たれる。そして、スパッタ装置50と同様、排気部が真空槽74a内を排気し、クライオポンプ31が駆動することによって、冷却部材33の温度が、所定の温度、好ましくは100K以上250K以下の温度とされる。
【0094】
次いで、制御装置70Cが、冷却モーター34Mに対する正回転開始信号を出力し、冷却モーター34Mが正回転を開始する。これにより、冷却回転軸34が紙面における例えば左回りに自転することによって、冷却部材33が、基板Sと略平行となり、基板Sの裏面Sbと向かい合う位置に配置される。このとき、冷却部材33が移動することに伴い、接続部材32がクライオポンプ31に対するターゲット21側に向けて伸びる。そして、制御装置70Cは、冷却モーター34Mに対する回転停止信号を出力し、冷却モーター34Mが回転を停止する。これにより、冷却部材33は、基板Sと略平行に保たれる。
【0095】
次いで、スパッタ装置50と同様、スパッタガス供給部24が真空槽74a内へのアルゴンガスの供給を開始し、ターゲット電源23がバッキングプレート22への電力の供給を開始する。これにより、真空槽74a内には、アルゴンガスからプラズマが生成され、プラズマ中の正イオンがターゲット21に衝突することによって弾き出されたスパッタ粒子が基板Sの表面Sfに堆積する。結果として、基板Sの表面には銅膜が形成される。
【0096】
このとき、基板Sの裏面Sbは、クライオポンプ31によって冷却された冷却部材33と向かい合っているため、スパッタ装置50と同様、冷却部材33を備えていない構成と比べて、基板Sの温度が高められにくくなり、結果として、基板Sの変形が抑えられる。また、冷却部材33の温度が100K以上250K以下に設定されるため、クライオポンプ31の排気の効率が変わりにくくなり、結果として、真空槽74a内でのスパッタの条件が変わることが抑えられる。
【0097】
成膜後の基板Sが第1スパッタ室74から搬出されるときには、スパッタ装置50と同様、排気部の駆動と、クライオポンプ31の駆動とが保たれている。そして、制御装置70Cが冷却モーター34Mに対する逆回転開始信号を出力し、冷却モーター34Mが逆回転を開始する。これにより、冷却回転軸34が紙面における例えば右回りに回転することによって、冷却部材33が、基板Sと略直交する。このとき、冷却部材33が移動することに伴い、接続部材32が、冷却部材33に対するクライオポンプ31側に縮む。そして、制御装置70Cは、冷却モーター34Mに対する回転停止信号を出力し、冷却モーター34Mが回転を停止する。これにより、冷却部材33が基板ステージ12と略直交する位置に配置される。
【0098】
その後、制御装置70Cが、基板モーター11Mに対する逆回転開始信号を出力し、基板モーター11Mが逆回転を開始する。これにより、基板回転軸11が紙面における例えば左回りに自転することによって、基板ステージ12が、ターゲット21と略直交する。そして、制御装置70Cは、基板モーター11Mに対する回転停止信号を出力し、基板モーター11Mが回転を停止する。これにより、基板ステージ12がターゲット21と略直交する位置に保たれる。このように、基板ステージ12が変位するときには、冷却部材33が基板Sとは略直交する位置に配置されているため、基板ステージ12の変位は、冷却部材33によって妨げられない。
【0099】
[実施例]
図12を参照して実施例及び比較例を説明する。なお、図12では、実施例が実線で示され、比較例が二点鎖線で示されている。
【0100】
図3に示されるスパッタ装置50を用いてガラス基板に対して成膜し、ターゲット電源23からターゲット21への電力を供給した時点から500秒までのガラス基板の温度を測定した。ターゲットがスパッタされている間は、冷却部材33の表面とガラス基板の裏面との間の距離を50mmとした。実施例では、冷却部材33によるガラス基板の冷却を行う一方、比較例では、冷却部材33によるガラス基板の冷却を行わなかった。
【0101】
図12に示されるように、実施例における基板温度の最小値が16.5℃であり、最大値が79℃であること、及び、比較例における基板温度の最小値が22.5℃であり、最大値が97.5℃であることが認められた。そして、同一の時刻における実施例の基板温度と比較例の基板温度との温度差ΔTの最大値が、19.5℃であることが認められた。このように、スパッタ装置50に搭載された冷却機構30によれば、ガラス基板の温度の上昇が抑えられることが認められた。
【0102】
なお、図8に示されるクラスター型スパッタ装置70によっても、スパッタ装置50と同様にガラス基板の温度の上昇が抑えられることが認められた。
【0103】
以上説明したように、成膜装置における上記実施形態によれば、以下に列挙する効果を得ることができる。
(1)気体の断熱膨脹を用いて冷却される冷却部材33と基板Sとが互いに対向するため、基板Sの温度が高まることが抑えられる。この際に、基板Sと冷却部材33とが相互に接触しないため、基板Sが冷却されることに際して、基板Sと冷却部材33との接触によって亀裂や欠けが基板Sに生じることも抑えられる。
【0104】
(2)冷却部材33の温度は、その冷却部材33の温度下での気体の蒸気圧を、真空槽53a,74a内の圧力よりも高くする値に設定される。このため、真空槽53a,74a内の気体が冷却部材33に吸着されにくくなる。結果として、真空槽53a,74a内の気体の冷却部材33への吸着が抑えられるため、真空槽53a,74a内における気体の状態、ひいては、冷却部材33による冷却の度合いが変わりにくくなる。
【0105】
(3)冷却部材33の温度が100K以上250K以下に設定されるため、冷却部材33へのアルゴンガスの吸着が、より確実に抑えられる。
(4)冷却部材33の表面が黒色であるため、冷却部材33の表面が、例えば白色等、黒色よりも輻射率の低い色である構成と比べて、冷却部材33から基板Sに向けた熱の反射が抑えられる。それゆえに、基板Sの温度が高まることは、より抑えられる。
【0106】
(5)基板Sに対して冷却部材33が固定される構成に比べて、冷却される範囲を基板Sにおいて広げることが可能になる。
(6)冷却部材33と基板Sとの間の距離の変更によって、基板Sが冷却部材33によって冷却される度合いを調節することができる。
【0107】
(7)基板Sがプラズマに曝されても、基板Sの温度が高まることが抑えられる。
(8)成膜部20と冷却部材33とが収められる真空槽53a,74aを更に備え、成膜部20と冷却部材33とが互いに向かい合う位置に配置され、配置部は、成膜部20と冷却部材33との間に基板Sを配置する。そのため、成膜部20が基板Sに膜を形成する際に、基板Sの温度が高まることが抑えられる。
【0108】
(9)前処理室52,73にも冷却部材33が収められているため、成膜部20が基板Sに膜を形成する前や、成膜部が膜を形成した後に基板Sの温度を下げることが可能になる。
【0109】
なお、上記実施形態は、以下のように適宜変更して実施することもできる。
・冷却機構30は、基板Sに対する成膜処理が行われている間にわたってではなく、成膜処理が行われている間の少なくとも一部にて基板Sの冷却を行う構成でもよい。こうした構成であっても、基板Sの冷却が行われる以上、基板Sの温度が高まることを抑えることは可能である。
【0110】
・冷却部材33の温度は、冷却部材33の温度での蒸気圧が、真空槽53a,74a内でのアルゴンガスの圧力以下の温度に設定されてもよい。こうした構成であっても、冷却機構30による基板Sの冷却が行われる以上、基板Sの温度が高まることを抑えることは可能である。
【0111】
・冷却部材33の温度は、100Kよりも低い温度に設定されてもよいし、250Kよりも高い温度でもよい。なお、冷却部材33の温度は、スパッタ装置50,70が設置される環境の温度、すなわち室温よりも低い温度に設定されることが好ましいものの、通常、成膜処理によって高められる基板Sの温度が室温よりも高い。そのため、冷却部材33の温度は、少なくとも成膜処理によって昇温されたときの基板Sの温度よりも低い温度に設定されれば、基板Sは冷却機構30によって冷却されることになる。
【0112】
・スパッタガスはアルゴンガスに限らず、希ガスであるヘリウムガス、ネオンガス、クリプトンガス、及び、キセノンガスであってもよい。
・成膜処理時には、スパッタガスに加えて、酸素ガスや窒素ガス等の反応ガスを用いることによって、金属化合物膜が形成されてもよい。
【0113】
・各スパッタ室53,54,74,75での基板Sにおける1つの面に対する膜の形成が行われるときに、膜の形成材料FMの放出が、所定の休止期間を空けて複数回行われてもよい。こうした構成では、冷却機構30は、各スパッタ室53,54,74,75での膜の形成が開始されてから終了されるまでの間にわたって基板Sの冷却を行ってもよいし、形成材料FMの放出が行われているときに基板Sを冷却し、休止期間には基板Sの冷却を行わない構成でもよい。
【0114】
・冷却部材33の表面は黒色でなくともよい。つまり、冷却部材33の表面は、輻射率が0.8よりも小さくともよい。
・冷却部材33は、基板Sと対向する表面の少なくとも一部が黒色であればよい。こうした構成によれば、表面の一部が黒色である以上、表面の全てが黒色よりも輻射率の小さい色である構成と比べて、基板Sが冷却されやすくはなる。
【0115】
・冷却部材33は、冷却層41、バッファ層42、及び、黒色層43を備える構成としたが、バッファ層42が割愛されてもよいし、バッファ層42と黒色層43との両方が割愛されてもよい。また、冷却部材33は、黒色層43のみを備える構成でもよい。
【0116】
・第1スパッタ室53,74は、ベローズ61、変位レール62、変位シャフト63、及び、変位モーター60Mを備える変位部を備えていなくともよい。すなわち、基板Sの裏面Sbに対する冷却部材33の表面の位置は固定されていてもよい。
【0117】
・冷却部材33の表面と基板Sの裏面Sbとの間の距離は、基板Sに対する成膜処理の途中で変えられてもよい。この場合には、制御装置50Cの備える記憶部に成膜処理に関わるレシピが記憶され、レシピにて冷却部材33の表面と基板Sの裏面Sbとの間の距離の変え方が予め決められていればよい。例えば、冷却部材33は、基板Sに対する成膜処理が開始されてから所定時間毎に所定の距離だけ基板Sに近付けられてもよい。基板Sの温度は、成膜処理の開始からの経過時間が長くなるほど高くなるため、冷却部材33の表面と基板Sの裏面Sbとの間の距離が次第に小さくなることによって、基板Sの温度が一定に保たれやすくなる。
【0118】
あるいは、冷却部材33の表面と基板Sの裏面Sbとの間の距離が、成膜処理の開始から所定時間が経過する毎に大きくされてもよい。また、冷却部材33の表面と基板Sの裏面Sbとの間の距離を小さくすることと、大きくすることとが交互に行われてもよい。成膜処理における冷却部材33の表面と基板Sの裏面Sbとの間の距離は、基板Sに形成される膜の材料や、膜の厚さによって変えることができる。
【0119】
・変位部は、ベローズ61、変位レール62、変位シャフト63、及び、変位モーター60Mを備える構成に限らず、真空槽53a,74a内の真空雰囲気が保たれ、且つ、基板Sの裏面Sbと冷却機構30、特に冷却部材33の表面との間の距離を変えることができる構成であればよい。
【0120】
・スパッタ装置50では、変位部が、基板Sの裏面Sbと冷却部材33の表面との間の距離のみを変えることができる構成とした。これに限らず、変位部は、静止している基板Sの裏面Sb内において冷却部材33の表面と向かい合う部位を変えることができる構成でもよい。この際に、冷却部材33が移動する前と後とで、基板Sの裏面Sbと冷却部材33の表面との間の距離が同じであることが好ましい。すなわち、変位部が、基板Sの裏面Sbと冷却部材33の表面との間の距離を保ちながら、冷却部材33の表面に基板Sの裏面Sbを走査させる構成であってもよい。
【0121】
この際に、例えば、冷却部材33は、連結方向や立設方向、あるいは、これらの方向のいずれかと交差する方向に沿って走査される。言い換えれば、変位部は、基板Sの裏面Sbに沿って冷却部材33を平行に移動させる。あるいは、変位部は、基板Sの裏面Sbに沿って冷却部材33を平行に移動させつつ、基板Sの裏面Sbと冷却部材33の表面との間の距離を変えるように構成されてもよい。こうした構成によれば、基板Sの裏面Sb内において冷却部材33の表面と向かい合う部位が変わらない構成と比べて、基板Sの全体が冷却されやすくなる。
【0122】
なお、基板Sに加えられる熱量が基板Sの面内において略同じであるときには、変位部が基板Sに対する冷却部材33の位置を変えても、基板Sの裏面Sbと冷却部材33の表面との間の距離が同じであれば、基板Sの面内にて冷却の度合いがばらつくことが抑えられる。結果として、基板Sの面内にて、基板Sの温度がばらつくことが抑えられる。
【0123】
一方、基板Sに加えられる熱量が基板Sの面内においてばらついているときには、変位部は、高い熱量が加えられる基板Sの部分で、基板Sの裏面Sbと冷却部材33との間の距離を小さくすることが好ましい。こうした構成によれば、より冷却が必要な基板Sの部分で冷却部材33による冷却の度合いが大きくなる。このため、基板Sの裏面Sbと冷却部材33の表面との間の距離が一定に保たれる構成と比べて、基板Sの面内における温度のばらつきが抑えられる。
【0124】
なお、スパッタ装置70においても、変位部が、基板Sの裏面Sbと冷却部材33の表面との間の距離を変えることができる構成としてもよいし、変位部が、冷却部材33の表面に基板Sの裏面Sbを走査させる構成でもよい。
【0125】
・また、冷却機構30が搬送されている基板Sを冷却する構成であっても、変位部が、上述の立設方向における冷却部材33の位置や、連結方向における冷却部材33の位置を変えることによって、基板Sの全体が冷却されやすくなる。また、変位部は、基板Sが搬送されているときに、基板Sの搬送方向と同じ方向に冷却部材33の位置を変える構成でもよいし、基板Sの搬送方向とは反対の方向に冷却部材33の位置を変える構成であってもよい。こうした構成においても、変位部は、基板Sの裏面Sbと冷却部材33の表面との間の距離を保った状態で搬送方向における冷却部材33の位置を変えてもよいし、基板Sの裏面Sbと冷却部材33の表面との間の距離を変えながら、搬送方向における冷却部材33の位置を変えてもよい。
【0126】
・スパッタ装置50では、基板Sが第1スパッタ室53に搬入された後に変位部によって冷却機構30の位置を変えるのではなく、変位部によって冷却機構30の位置を変えた後に、基板Sが第1スパッタ室53に搬入されてもよい。
【0127】
・スパッタ装置50は、搬出入室51から第2スパッタ室54に向けて成膜レーン50aに沿って基板Sを搬送し、第2スパッタ室54から搬出入室51に向けて回収レーン50bに沿って基板Sを搬送する。この際、スパッタ装置50は、成膜レーン50aに配置された基板Sに向けて膜の形成材料FMを放出する。
【0128】
これに限らず、スパッタ装置50は、以下のように基板Sの搬送と、基板Sに向けた形成材料FMの放出とを行ってもよい。すなわち、スパッタ装置50は、基板Sを搬入すると、搬出入室51における回収レーン50bに基板Sを配置し、回収レーン50bに沿って搬出入室51から第2スパッタ室54に向けて基板Sを搬送する。この際、スパッタ装置50は、前処理室52、第1スパッタ室53、及び、第2スパッタ室54を通過する基板Sを第2位置に配置された冷却部材33によって冷却してもよいし、冷却しなくてもよい。
【0129】
そして、スパッタ装置50は、第2スパッタ室54にてレーン変更部によって回収レーン50bから成膜レーン50aに運ぶ。スパッタ装置50は、成膜レーン50aに沿って第2スパッタ室54から搬出入室51に向けて基板Sを搬送する。この際、スパッタ装置50は、第1スパッタ室53及び第2スパッタ室54にて、成膜レーン50aに配置された基板Sに向けて膜の形成材料FMを放出する。また、冷却機構30が、膜の形成材料FMが放出されている基板Sを第1位置に配置された冷却部材33によって冷却する。
【0130】
なお、スパッタ装置50が、回収レーン50bに配置された基板Sを冷却するとき、第2位置に位置する冷却部材33と、基板Sとの間の距離は、成膜レーン50aが基板Sを配置するときと同様、例えば、50mmや250mmであることが好ましい。
【0131】
こうした構成によっても、冷却機構30が、膜の形成材料FMが放出されている基板Sを冷却するため、上述した(1)に準じた効果を得ることはできる。
・スパッタ装置50は、成膜レーン50aに配置された基板Sに向けて膜の形成材料FMを放出する。これに限らず、スパッタ装置50は、回収レーン50bに配置された基板Sに向けて膜の形成材料FMを放出してもよい。
【0132】
・成膜装置は、スパッタ装置50,70のように、基板Sに形成材料が供給されるときに基板Sの表面がプラズマに曝される装置ではなく、プラズマが生成されない装置、例えば、蒸着装置として具体化されてもよい。
【0133】
例えば、有機ELディスプレイでは、画素を構成する有機発光層が蒸着装置によって形成される。この場合には、蒸着装置の備える蒸着源によって有機発光材料が加熱によって蒸発し、蒸発した有機発光材料が基板Sの表面に堆積することによって、有機発光層が、基板Sの表面に形成される。基板Sには加熱された有機発光材料が堆積するため、基板Sの温度が、有機発光材料が蒸発する温度にまで高められてしまう場合もある。結果として、一旦基板S上に形成された有機発光材料が再び蒸発したり、有機発光材料の特性が劣化したりしてしまう。
【0134】
この点で、上述した冷却機構30によって基板Sを冷却しながら有機発光層の形成を行うことによって、有機発光層が再蒸発もしくは劣化することを抑えることができる。
・成膜装置では、各種膜が、マスクの取り付けられた基板Sに対して形成される場合もある。この場合、成膜装置は、基板Sにマスクを取り付けるための前処理室を備える。マスクの形成材料には、金属、例えばインバー等の熱膨張率の低い合金、樹脂材料、および、セラミックのいずれかが用いられる。マスクは、例えば、基板Sに形成される配線のパターンに対応する複数の開口を有している。
【0135】
各種膜の形成材料が放出されるときに基板Sが冷却されると、マスクも冷却されるため、マスクの温度が、室温、例えば300Kから、室温よりも低い温度になる。このとき、マスクの温度が大きく低下すると、マスクの熱変形のために基板Sに対するマスクの位置が変わってしまう場合もある。そのため、マスクの熱変形を抑えながら、基板Sの温度を基板Sの形状が変わらない100℃以下とする上では、形成材料FMが放出されるときの冷却部材33の温度が、273K以上300K以下の温度に設定されることが好ましい。
【0136】
また、基板Sが冷却されるときには、基板Sを支えるトレイTや基板SをトレイTに取り付けるための部材等、基板Sに接する部材も冷却される。これにより、基板Sに接する部材も、上述したマスクと同様に熱変形する場合もある。こうした場合には、基板Sに接する部材の熱変形によって、基板Sには基板Sを変形させる力が加わる。そのため、基板Sの変形を抑えながら、基板Sの温度を基板Sの形状が変わらない100℃以下とする上では、冷却部材33の温度が、273K以上300K以下の温度に設定されることが好ましい。
【0137】
更には、膜の形成材料が放出されていない状態で、成膜後の基板Sが冷却部材33によって冷却されるときには、膜が基板Sから剥がれてしまう程度に膜応力が大きくなる場合もある。そのため、膜が基板Sから剥がれることを抑える上では、冷却部材33の温度が、273K以上300K以下の温度に設定されることが好ましい。
【0138】
・成膜装置の冷却機構30には、基板Sの裏面Sbに気体である冷却ガスを供給する冷却ガス供給部が備えられていてもよい。図13、及び、図14を参照して冷却ガス供給部を備える冷却機構30について説明する。
【0139】
図13に示されるように、冷却機構30は、クライオポンプ31、接続部材32、及び、冷却部材33に加えて、冷却ガス供給部35を更に備えている。冷却ガス供給部35には、冷却ガス配管35aが接続され、冷却ガス配管35aは、接続部材32の内部に通されることで、冷却部材33の表面に形成された冷却ガス供給孔33hに接続されている。冷却ガス供給孔33hは、冷却ガス供給部35からの冷却ガスGを冷却部材33の表面と基板Sの裏面Sbとの間に放出する。基板Sの裏面Sbに冷却ガスGが供給されることによって、基板Sと冷却ガスGとの間で熱交換が行われるため、冷却ガスGが供給されない構成と比べて、基板Sの温度が高まりにくくなる。
【0140】
冷却ガスGの蒸気圧は、成膜ガスの蒸気圧以下であることが好ましく、成膜ガスがアルゴンガスである場合には、冷却ガスはヘリウムガス、及び、アルゴンガスであることが好ましい。これにより、冷却ガスGがクライオポンプ31によって吸着されにくくなる。
【0141】
図14に示されるように、成膜装置がスパッタ装置50として具体化され、且つ、冷却機構30が冷却ガス供給部35を備える場合には、制御装置50Cには、冷却ガス供給部35が接続される。制御装置50Cは、冷却ガス供給部35に対する冷却ガスの供給を開始させる供給開始信号、及び、冷却ガスの供給を停止させる供給停止信号を冷却ガス供給部駆動回路35Dに出力する。冷却ガス供給部駆動回路35Dは、制御装置50Cからの制御信号に応じて冷却ガス供給部35を駆動するための駆動信号を生成し、生成された駆動信号を冷却ガス供給部35に出力する。また、制御装置50Cは、冷却ガス供給部35から供給されるガスの流量を調節する。
【0142】
ここで、冷却ガスの種類と温度とが同一である前提では、基板Sの裏面Sbに供給される冷却ガスの流量が大きいほど、基板Sが冷却されやすくなり、冷却ガスの流量が小さいほど、基板Sが冷却されにくくなる。そのため、制御装置50Cが冷却ガスの流量を調節することによって、基板Sの温度を調節することが可能である。
【0143】
・冷却ガス供給部35の冷却ガス配管35aは、真空槽に直接接続されることで、接続部材32及び冷却部材33を介さずに、真空槽内における冷却部材33に対して基板Sが配置される側に冷却ガスを供給してもよい。
【0144】
・冷却機構30は、クライオポンプ31、接続部材32、及び、冷却部材33の組を2つ以上備えてもよい。こうした構成によれば、複数の冷却部材33の表面と基板Sの裏面Sbとが向かい合うため、冷却部材33の冷却効率が同じである前提では、冷却部材33の数が多い分、基板Sの温度がより高められにくくなる。また、いずれかのクライオポンプ31に対して保守点検が行われていても、他のクライオポンプ31を用いて基板Sを冷却しながら基板Sの表面に膜を形成することができる。
【0145】
・冷却機構30では、接続部材32が複数の端部を有し、接続部材32の各端部に1つずつ冷却部材33が接続されてもよい。すなわち、冷却機構30が複数の冷却部材33を備えてもよい。この構成では、複数の冷却部材33が基板Sの裏面Sbの異なる部分と向かい合うように配置されることが好ましい。こうした構成によれば、成膜部20が膜の形成材料FMを基板Sの表面に放出しているときに、基板Sの裏面Sbが複数の箇所で冷却される。このため、基板Sが裏面Sbの1つの箇所で冷却される構成と比べて、基板Sの面内において冷却の度合いがばらつくことが抑えられる。結果として、基板Sの面内での温度のばらつきが抑えられる。
【0146】
・第1スパッタ室53,74では、クライオポンプ31と、真空槽53a,74aとの間を連通されていない状態と連通されている状態とにするゲートバルブが備えられてもよい。こうした構成によれば、真空槽53a,74a内の真空雰囲気を保ちながら、クライオポンプ31の吸着した液体を排出するための保守点検を行うことができる。
【0147】
・第1スパッタ室53では、クライオポンプ31が、排気側側壁53cにて連結方向に並んだ2つの排気部56の間に搭載されているが、クライオポンプ31は、排気側側壁53cにて立設方向に並んだ2つの排気部の間に搭載されてもよい。また、第1スパッタ室53には、排気部56が1つだけ備えられていてもよく、1つの排気部56と1つのクライオポンプ31とが排気側側壁53cにて連結方向に並んで搭載されてもよいし、1つの排気部56と1つのクライオポンプ31とが、排気側側壁53cにて立設方向に並んで搭載されてもよい。また、排気部56が成膜側側壁53bと排気側側壁53cとに搭載され、クライオポンプ31が排気側側壁53cに搭載された構成でもよいし、排気部56が成膜側側壁53bにのみ搭載され、クライオポンプ31が排気側側壁53cに搭載された構成でもよい。
【0148】
・上述したスパッタ装置50、及び、クラスター型のスパッタ装置70に搭載される冷却機構30は、クライオポンプ31を備える冷却機構30に限らず、上述した液状の冷媒によって冷却部材33を冷却する冷却機構30であってもよい。また、冷媒を用いた冷却機構は、上述の蒸着装置に搭載されてもよい。こうした構成であっても、基板Sが冷却されるため、基板Sの温度が高められることが抑えられる。更には、スパッタ装置50,70のように複数の処理室を備える成膜装置であれば、複数の処理室に搭載される冷却機構30が相互に異なってもよい。例えば、基板Sに与えられる熱量が相対的に大きい処理室には、クライオポンプ31を備える冷却機構30が搭載される一方、基板に与えられる熱量が相対的に小さい処理室には、液状の冷媒を用いる冷却機構30が搭載される構成とすることもできる。
【0149】
なお、こうした冷却機構30においても、冷却部材33の温度が、冷却部材33の温度での蒸気圧が真空槽内に含まれる気体の圧力よりも高い温度に設定されることが好ましい。こうした構成によれば、真空槽内に含まれる気体から生じた液体が冷却部材33の表面に付着することが抑えられる。
【0150】
・基板Sの搬送方向は、冷却部材33の変位方向と直交する方向でなくともよく、変位方向と交差する方向であればよい。また、基板Sの搬送方向は、上述した連結方向に一致していなくともよく、連結方向と交差する方向であってもよい。
【0151】
・各スパッタ室53,54,74,75,76で形成される膜は、金属膜や金属化合物膜に限らず、例えば、半導体膜や半導体化合物膜でもよい。要は、各スパッタ室53,54,74,75,76で形成される膜は、スパッタにより形成することの可能な膜であればよい。
【符号の説明】
【0152】
10…配置部、11…基板回転軸、12…基板ステージ、12a…ピン孔、20…成膜部、21…ターゲット、22…バッキングプレート、23…ターゲット電源、24…スパッタガス供給部、30…冷却機構、31…クライオポンプ、32…接続部材、33…冷却部材、33b…裏面、33f…表面、33h…冷却ガス供給孔、34…冷却回転軸、35…冷却ガス供給部、35a…冷却ガス配管、41…冷却層、42…バッファ層、43…黒色層、50,70…スパッタ装置、50a…成膜レーン、50b…回収レーン、51,72…搬出入室、52,73…前処理室、53,74…第1スパッタ室、53a,74a…真空槽、53b,74c…成膜側側壁、53c,74d…排気側側壁、54,75…第2スパッタ室、55,74g…ゲートバルブ、56…排気部、61…ベローズ、62…変位レール、63…変位シャフト、71…搬送室、74b…搬送側側壁、76…第3スパッタ室、81…昇降板、82…昇降ピン、FM…形成材料、G…冷却ガス、S…基板、Sf…表面、Sb…裏面。
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