特許第6247087号(P6247087)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6247087
(24)【登録日】2017年11月24日
(45)【発行日】2017年12月13日
(54)【発明の名称】処理装置および活性種の生成方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/31 20060101AFI20171204BHJP
   H01L 21/318 20060101ALI20171204BHJP
   H05H 1/46 20060101ALI20171204BHJP
【FI】
   H01L21/31 A
   H01L21/318 A
   H05H1/46 M
   H05H1/46 L
   H05H1/46 B
【請求項の数】15
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2013-261157(P2013-261157)
(22)【出願日】2013年12月18日
(65)【公開番号】特開2015-119025(P2015-119025A)
(43)【公開日】2015年6月25日
【審査請求日】2016年5月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】000219967
【氏名又は名称】東京エレクトロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099944
【弁理士】
【氏名又は名称】高山 宏志
(72)【発明者】
【氏名】長谷部 一秀
(72)【発明者】
【氏名】清水 亮
【審査官】 河合 俊英
(56)【参考文献】
【文献】 特表2013−501384(JP,A)
【文献】 特開2011−154973(JP,A)
【文献】 特開平08−279495(JP,A)
【文献】 国際公開第2010/082561(WO,A1)
【文献】 特開2010−225792(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2011/0034035(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/31
H01L 21/318
H05H 1/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の圧力に保持されるとともに、活性種源を含む第1のガスが供給され、前記第1のガスから無声放電により相対的に高い第1の濃度の第1の活性種を生成する第1の生成室を有した第1の活性種生成ユニットと、
前記第1の活性種生成ユニットの下流に設けられ、前記第1の圧力より低い第2の圧力に保持され、前記第1の生成室から前記第1の活性種が供給されるとともに、活性種源を含む第2のガスが供給され、前記第2のガスから誘導結合プラズマ、容量結合プラズマ、およびマイクロ波プラズマの少なくとも1つのプラズマにより、相対的に低い第2の濃度の第2の活性種を生成する第2の生成室を有した第2の活性種生成ユニットと、
前記第2の活性種生成ユニットの下流に設けられ、被処理体に対して、前記第2の生成室から供給された前記第1、第2の活性種を用いて処理を施す処理室と
を具備し、
前記第1の活性種は、前記第1の生成室から前記第2の生成室に供給された際に、前記第2の活性種により失活が抑制され、前記第1の濃度の前記第1の活性種が前記第2の活性種とともに前記処理室に導かれることを特徴とする処理装置。
【請求項2】
前記第1の圧力は、常圧であることを特徴とする請求項に記載の処理装置。
【請求項3】
前記第2の圧力は、13.33Pa〜1333Paの範囲であることを特徴とする請求項又は請求項に記載の処理装置。
【請求項4】
前記第1の活性種は、前記第1の生成室の圧力と前記第2の生成室の圧力との圧力差を利用して、前記第1の生成室から前記第2の生成室へと送られることを特徴とする請求項から請求項のいずれか一項に記載の処理装置。
【請求項5】
前記第1の濃度が1×1014cm−3オーダーであることを特徴とする請求項1から請求項のいずれか一項に記載の処理装置。
【請求項6】
前記第1、第2のガスはそれぞれ、活性種源として窒素成分を含むことを特徴とする請求項1から請求項のいずれか一項に記載の処理装置。
【請求項7】
前記第1のガスが含む窒素成分は窒素ガスであり、前記第2のガスの活性種源としての窒素成分は、窒素ガスと水素ガスとの混合ガス、及び/又は窒素と水素との化合物ガスが含まれることを特徴とする請求項1から請求項のいずれか一項に記載の処理装置。
【請求項8】
前記第1の活性種は窒素ラジカルであり、前記第2の活性種は、窒素ラジカル、水素ラジカル、及びアンモニアラジカルであることを特徴とする請求項7に記載の処理装置。
【請求項9】
前記第2の生成室の形状は、円筒型であることを特徴とする請求項1から請求項のいずれか一項に記載の処理装置。
【請求項10】
前記円筒型は、前記第1の生成室の側で径が細く、前記処理室の側で径が太いものであることを特徴とする請求項に記載の処理装置。
【請求項11】
前記第1の生成室の側で細く、前記処理室の側で太い円筒型は、コニカル型、ベル型、よびホーン型の少なくとも1つの形状、又はコニカル型、ベル型、およびホーン型の少なくとも2つを組み合わせた形状を含むことを特徴とする請求項10に記載の処理装置。
【請求項12】
第1の生成室を第1の圧力に保持し、前記第1の生成室に活性種源を含む第1のガスを供給し、前記第1の生成室内で前記第1のガスから無声放電により相対的に高い第1の濃度の第1の活性種を生成し、
前記第1の生成室の下流に設けられた第2の生成室を前記第1の圧力より低い第2の圧力に保持し、前記第2の生成室に、前記第1の生成室から前記第1の活性種を供給するとともに、活性種源を含む第2のガスを供給し、前記第2の生成室で、前記第2のガスから誘導結合プラズマ、容量結合プラズマ、およびマイクロ波プラズマの少なくとも1つにより、相対的に低い第2の濃度の第2の活性種を生成し、
前記第1の活性種を、前記第1の生成室から前記第2の生成室を介して、被処理体に処理を施す処理室に送り、
その際に、前記第2の生成室において、前記第1の活性種は前記第2の活性種により失活が抑制され、前記第1の濃度の前記第1の活性種が前記第2の活性種とともに前記処理室に導かれることを特徴とする活性種の生成方法。
【請求項13】
前記第1の活性種を、前記第1の生成室の圧力と前記第2の生成室の圧力との圧力差を利用して、前記第1の生成室から前記第2の生成室へ送ることを特徴とする請求項12に記載の活性種の生成方法。
【請求項14】
前記第1の濃度が1×1014cm−3オーダーであることを特徴とする請求項12または請求項13に記載の活性種の生成方法。
【請求項15】
前記第1の活性種は窒素ラジカルであり、前記第2の活性種は、窒素ラジカル、水素ラジカル、及びアンモニアラジカルであることを特徴とする請求項12から請求項14のいずれか一項に記載の活性種の生成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、処理装置および活性種の生成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体集積回路装置には、例えば、絶縁物として、シリコン窒化膜(SiN)、シリコン酸窒化膜(SiON)などの窒化物膜が用いられる。窒化物膜を形成するには、窒素を含むガスからNラジカル、NHラジカルといった窒化活性種を生成し、生成した窒化活性種を窒化剤として用いるものがある。窒素を含むガスから窒化活性種を生成するには、容量結合プラズマ、誘導結合プラズマ、マイクロ波プラズマといった手段が用いられる。例えば、誘導結合プラズマを用いた例は、特許文献1に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−79254号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、容量結合プラズマ、誘導結合プラズマ、およびマイクロ波プラズマでは、生成される活性種の濃度が低い、という事情がある。
【0005】
例えば、容量結合プラズマを用いた場合には、生成される活性種の濃度は1×1010cm−3程度であり、誘導結合プラズマ、又はマイクロ波プラズマを用いた場合であっても、生成される活性種の濃度は1×1012cm−3程度にとどまる。例えば、アンモニアガス、又は窒素ガスと水素ガスとの混合ガスから、Nラジカル、NHラジカルといった窒化活性種や、Hラジカルといった水素活性種を生成した場合には、これら活性種の総量は、上記濃度となる。
【0006】
これに対して、高濃度の活性種を生成できる方法として、放電、例えば、無声放電がある。無声放電によれば、生成される活性種の濃度は、誘導結合プラズマ、又はマイクロ波プラズマを用いた場合に比較して、およそ100倍、即ち1×1014cm−3程度まで引き上げることが可能である。
【0007】
しかしながら、無声放電では高濃度の活性種を生成はできるものの、活性種が高濃度であることや、無声放電は、通常、常圧下で行われ、圧力も高いことから活性種が失活しやすい、という事情がある。
【0008】
この発明は、高濃度の活性種を生成することが可能であり、かつ、生成された高濃度の活性種を、失活を抑制しつつ処理室へ送ることが可能な処理装置および活性種の生成方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明の第1の態様に係る処理装置は、第1の圧力に保持されるとともに、活性種源を含む第1のガスが供給され、前記第1のガスから無声放電により相対的に高い第1の濃度の第1の活性種を生成する第1の生成室を有した第1の活性種生成ユニットと、前記第1の活性種生成ユニットの下流に設けられ、前記第1の圧力より低い第2の圧力に保持され、前記第1の生成室から前記第1の活性種が供給されるとともに、活性種源を含む第2のガスが供給され、前記第2のガスから誘導結合プラズマ、容量結合プラズマ、およびマイクロ波プラズマの少なくとも1つのプラズマにより、相対的に低い第2の濃度の第2の活性種を生成する第2の生成室を有した第2の活性種生成ユニットと、前記第2の活性種生成ユニットの下流に設けられ、被処理体に対して、前記第2の生成室から供給された前記第1、第2の活性種を用いて処理を施す処理室とを具備し、
前記第1の活性種は、前記第1の生成室から前記第2の生成室に供給された際に、前記第2の活性種により失活が抑制され、前記第1の濃度の前記第1の活性種が前記第2の活性種とともに前記処理室に導かれる
【0010】
この発明の第2の態様に係る活性種の生成方法は、第1の生成室を第1の圧力に保持し、前記第1の生成室に活性種源を含む第1のガスを供給し、前記第1の生成室内で前記第1のガスから無声放電により相対的に高い第1の濃度の第1の活性種を生成し、前記第1の生成室の下流に設けられた第2の生成室を前記第1の圧力より低い第2の圧力に保持し、前記第2の生成室に、前記第1の生成室から前記第1の活性種を供給するとともに、活性種源を含む第2のガスを供給し、前記第2の生成室で、前記第2のガスから誘導結合プラズマ、容量結合プラズマ、およびマイクロ波プラズマの少なくとも1つにより、相対的に低い第2の濃度の第2の活性種を生成し、前記第1の活性種を、前記第1の生成室から前記第2の生成室を介して、被処理体に処理を施す処理室に送り、その際に、前記第2の生成室において、前記第1の活性種は前記第2の活性種により失活が抑制され、前記第1の濃度の前記第1の活性種が前記第2の活性種とともに前記処理室に導かれる
【発明の効果】
【0011】
この発明によれば、高濃度の活性種を生成することが可能であり、かつ、生成された高濃度の活性種を、失活を抑制しつつ処理室へ送ることが可能な処理装置および活性種の生成方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】この発明の一実施形態に係る処理装置の一例を概略的に示す断面図
図2】活性種生成部を拡大して示す断面図
図3A】第2の活性種生成ユニットが有する生成室の一例を示す断面図
図3B】第2の活性種生成ユニットが有する生成室の第1の変形例を示す断面図
図3C】第2の活性種生成ユニットが有する生成室の第2の変形例を示す断面図
図3D】第2の活性種生成ユニットが有する生成室の第3の変形例を示す断面図
図4】処理装置の第1の変形例を概略的に示す断面図
図5】処理装置の第2の変形例を概略的に示す断面図
【発明を実施するための形態】
【0013】
この発明の一実施形態を、図面を参照して説明する。なお、全図にわたり、共通の部分には共通の参照符号を付す。
【0014】
<処理装置>
図1はこの発明の一実施形態に係る処理装置の一例を概略的に示す断面図、図2は処理装置の一例が備える活性種生成部を拡大して示す断面図である。
【0015】
図1および図2に示すように、この発明の一実施形態に係る処理装置1は、活性種源を含むガスを供給する処理ガス供給源2と、処理ガス供給源2から供給された活性種源を含むガスから活性種を生成する活性種生成部3を備えている。活性種生成部3において生成された活性種は、被処理体、例えば、シリコンウエハWを収容し、収容されたシリコンウエハWに対して、活性種を用いて処理を施す処理室4に供給される。
【0016】
処理室4内には載置台5が配置され、シリコンウエハWは載置台5の載置面上に載置される。処理室4の側壁には、シリコンウエハWの搬入出を行う搬入出口6が形成されている。搬入出口6はゲートバルブ7により開閉される。処理室4の底板には、排気口8が形成されている。排気口8は、排気機構9に排気管10を介して接続されている。排気機構9は、処理室4内の排気、および圧力調整を行う。処理室4の天板には、活性種供給孔11が形成されている。活性種供給孔11は活性種生成部3に接続され、活性種生成部3において生成された活性種は、活性種供給孔11を介して処理室4の内部に供給される。
【0017】
処理ガス供給源2は、処理ガス、本例においては、活性種源を含むガスを活性種生成部3に供給する。本例においては、処理装置1は、例えば、シリコンウエハW上に形成されたシリコン膜やシリコン酸化物膜などの薄膜をラジカル窒化するラジカル窒化処理装置を例示している。係る窒化処理装置の処理ガス供給源2には、例えば、3つのガス供給機構を備えている。1つは窒素ガス供給機構21であり、もう1つはアンモニアガス供給機構22であり、残りの一つは水素ガス供給機構23である。
【0018】
活性種生成部3は、本例においては、2つの活性種生成ユニットを備えている。1つは、活性種源を含む第1のガスから無声放電により第1の活性種を生成する第1の活性種生成ユニット12である。もう1つは、活性種源を含む第2のガスから誘導結合プラズマ、容量結合プラズマ、およびマイクロ波プラズマの少なくとも1つにより第2の活性種を生成する第2の活性種生成ユニット13である。本例においては、第2の活性種生成ユニット13は、誘導結合プラズマにより第2の活性種を生成する。
【0019】
第1の活性種生成ユニット12は、第1の活性種を生成する第1の生成室121を有している。第1の生成室121の、例えば、天板には、活性種源を含む第1のガスが供給される活性種源供給孔122が設けられている。処理ガス供給源2は、第1のガスとして窒素ガス(N図2参照)を、活性種源供給孔122を介して第1の生成室121の内部に供給する。
【0020】
第1の生成室121の内部の圧力は、例えば、常圧とされる。常圧は、例えば、大気圧であり、約1013hPa(760Torr:図2参照。なお、本明細書では1Torrを133.3Paと定義する)である。内部の圧力を常圧とした第1の生成室121においては、窒素ガス(N)から無声放電により第1の活性種として窒素ラジカル(N図2参照)が生成される。
【0021】
第1の生成室121の内部には、高周波電極対123a、123bが設けられている。高周波電極対123a、123bは相対向して第1の生成室121の内部に配置されており、その表面は、例えば、絶縁膜124により覆われている。高周波電極対123a、123bには第1の高周波電源125に接続されている。第1の高周波電源125からの高周波電力が、高周波電極対123a、123bに印加されると、第1の生成室121の内部には放電が起こり、これにより、供給された窒化ガス(N)から窒素ラジカル(N)が生成される。窒素ラジカル(N)の濃度(ラジカル濃度)は、無声放電を用いることから、例えば、1×1014cm−3オーダーとなる。
【0022】
第1の生成室121の、例えば、底板には、第1の活性種を吐出する吐出孔126が設けられている。濃度が1×1014cm−3オーダーの窒素ラジカル(N)は、吐出孔126から吐出されることで、第2の活性種生成ユニット13が有する第2の生成室131の内部へと供給される。
【0023】
第2の活性種生成ユニット13は、第1の活性種生成ユニット12の下流に設けられている。第2の活性種生成ユニット13は、第2の活性種を生成する円筒型の第2の生成室131を有している。第2の生成室131の天板は、例えば、第1の生成室121の底板と共通とされ、第2の生成室131の天板には吐出孔126が形成されている。吐出孔126からは、第1の生成室121から、例えば、濃度が1×1014cm−3オーダーの第1の活性種、本例においては窒素ラジカル(N)が供給される。また、第2の生成室131の側面には、活性種源を含む第2のガスが供給される活性種源供給孔132が設けられている。処理ガス供給源2は、第2のガスとしてアンモニアガス(NH図2参照)、窒素ガス(N)、および水素ガス(H)を、活性種源供給孔132を介して第2の生成室131の内部に供給する。
【0024】
第2の生成室131の内部の圧力は、第1の生成室121の内部の圧力よりも低く設定される。本例では、第2の生成室131の内部の圧力は、約13.33Pa〜約1333Pa(0.1Torr〜10Torr:図2参照)の範囲に設定される。第1の活性種、本例では窒素ラジカル(N)は、第1の生成室121の圧力と第2の生成室131の圧力との圧力差を利用して、第1の生成室121から吐出孔126を介して第2の生成室131へと送られてくる。円筒型の第2の生成室131の径は、吐出孔126の径よりも十分に大きい。内部の圧力を約13.33Pa〜約1333Paとした第2の生成室131においては、濃度が1×1014cm−3オーダーとされた窒素ラジカル(N)が勢いよく吐出されてくる。このようにして、濃度が1×1014cm−3オーダーとされた窒素ラジカル(N)を第2の生成室131の内部に供給しつつ、第2の生成室131の内部においては、さらに、窒素ガス(N)、アンモニアガス(NH)、水素ガス(H)から誘導結合プラズマにより第2の活性種として窒素ラジカル(N図2参照)、アンモニアラジカル(NH図2参照)、水素ラジカル(H図2参照)を生成する。
【0025】
第2の生成室131の外部には、高周波コイル133が設けられている。高周波コイル133は円筒型の第2の生成室131の周囲を、例えば、らせん状に取り巻く。高周波コイル133には第2の高周波電源134に接続され、第2の高周波電源134からの高周波電力が、高周波コイル133に印加されると、第2の生成室131の内部には誘導電界が生成され、これにより、供給された窒化ガス(N)、アンモニアガス(NH)、水素ガス(H)から窒素ラジカル(N)、アンモニアラジカル(NH)、水素ラジカル(H)が生成される。これらのラジカルを総計した濃度は、誘導結合プラズマを用いることから、例えば、1×1012cm−3オーダーとなる。
【0026】
なお、第2のガスのうち、水素ガス(H)は、成膜される窒化物膜の膜質を制御するための添加剤である。膜質の制御のために窒化物膜中に取り込む水素は、アンモニアガス(NH)から生成されるアンモニアラジカル(NH)や水素ラジカル(H)から得ることが可能である。もしも、取り込む水素の量が、アンモニアガス(NH)だけでは不足する場合には、本例のように水素ガス(H)を供給し、供給した水素ガス(H)からも水素ラジカル(H)を生成するようにしてもよい。
【0027】
第2の生成室131の下流には処理室4が設けられている。第2の生成室131の、底部は、下流に設けられた処理室4の天板に設けられた活性種供給孔11に接続されている。第1の生成室121において生成された濃度が1×1014cm−3オーダーの窒素ラジカル(N)は、第2の生成室131において生成された濃度が1×1012cm−3オーダーの窒素ラジカル(N)、アンモニアラジカル(NH)、水素ラジカル(H)と混合されて、活性種供給孔11を介して処理室4の内部へと供給される。これにより、処理室4の内部において、少なくとも1×1014cm−3オーダー以上の濃度の窒素ラジカル(N)含んだ雰囲気を用いた窒化処理を、シリコンウエハWの被処理面に対して施すことができる。
【0028】
このような一実施形態に係る処理装置1によれば、第1の生成室121において、例えば、1×1014cm−3オーダーといった高濃度の窒素ラジカル(N)を生成し、高濃度の窒素ラジカル(N)を、第2の生成室131の内部を介して、処理室4の内部へと送る。第2の生成室131においては、例えば、誘導結合プラズマが生成されており、エネルギが印加されている。このため、第2の生成室131に供給された高濃度の窒素ラジカル(N)は、第2の生成室131の中においては失活しにくい。したがって、1×1014cm−3オーダーといった高濃度の窒素ラジカル(N)を、処理室4の内部に送ることが可能となる。
【0029】
また、第2の生成室131においても、1×1012cm−3オーダーといった低濃度の窒素ラジカル(N)、アンモニアラジカル(NH)、水素ラジカル(H)を生成し、上記1×1014cm−3オーダーといった高濃度の窒素ラジカル(N)に混合させるようにしている。このため、100分1程度とわずかではあるが、窒素ラジカル(N)の濃度を、さらに上げることも可能である。
【0030】
また、例えば、窒化処理する膜の膜質を制御するために、微量の添加物を添加する場合があるが、この添加物を含むラジカルについては、第2の生成室131において生成することもできる。上記の例では、添加物を含むラジカルは、アンモニアラジカル(NH)、水素ラジカル(H)という水素を含んだものである。特に、添加物を含むラジカルが1×1014cm−3オーダーでは多すぎる場合には、第2の生成室131を利用しての生成が有利である。添加物を含むラジカルを1×1012cm−3オーダー、第1の生成室121に比較して、100分1の量で生成できるためである。
【0031】
このように、一実施形態に係る処理装置1によれば、高濃度の活性種を生成することが可能であり、生成された高濃度の活性種を、失活を抑制しつつ処理室へ送ることが可能となる、という利点を得ることができる。
【0032】
<第2の生成室131の変形例>
図3Aは、図1および図2に示した第2の活性種生成ユニット13が有する生成室131の一例を示す断面図である。
【0033】
図3Aに示すように、図1および図2に示した第2の活性種生成ユニット13においては、第2の生成室131の形状が円筒型であった。第2の生成室131の形状は円筒型が基本的な形状である。しかし、第2の生成室131が円筒型であり、その径が、吐出孔126の径よりも十分に大きい場合には、第2の生成室131の隅において乱流200が発生することもあり得る。乱流200が発生すると、窒素ラジカル(N)が乱流200に巻き込まれ、第2の生成室131の内壁面に接触し、失活する確率が高まる。
【0034】
このような乱流200の発生による窒素ラジカル(N)の失活を抑制するには、円筒型として、第1の生成室121の側で径を細くし、処理室4の側で径を太くすることがよい。以下、第2の生成室131の代表的な変形例のいくつかを説明する。
【0035】
<<第1の変形例>>
図3Bは、第2の活性種生成ユニットが有する生成室の第1の変形例を示す断面図である。
【0036】
図3Bに示すように第2の変形例に係る第2の活性種ユニット13aが有する第2の生成室131aの形状は、コニカル型である。コニカル型は、吐出孔126から活性種供給孔11にかけて、第2の生成室131aの側面を直線状に広げたものである。
【0037】
このように、第2の生成室131aの側面を、吐出孔126から活性種供給孔11にかけて直線状に広げることで、図3Aに示す第2の生成室131に比較して、乱流200が発生するような箇所を無くすことができる。
【0038】
したがって、第2の生成室131aによれば、乱流200の発生を抑制することができ、窒素ラジカル(N)が乱流200に巻き込まれることに起因した失活を抑制できる、という利点を得ることができる。
【0039】
<<第2の変形例>>
図3Cは、第2の活性種生成ユニットが有する生成室の第2の変形例を示す断面図である。
【0040】
図3Cに示すように第2の変形例に係る第2の活性種ユニット13bが有する第2の生成室131bの形状は、ベル型である。ベル型は、吐出孔126から活性種供給孔11にかけて第2の生成室131bの側面を外側に膨らんだ形状で広げていくものである。
【0041】
このように、第2の生成室131bはベル型であっても、第1の変形例と同様に、図3Aに示す第2の生成室131に比較して、乱流200が発生するような箇所を無くすことができる。
【0042】
したがって、第2の生成室131bにおいても、乱流200の発生を抑制することができ、窒素ラジカル(N)が乱流200に巻き込まれることに起因した失活を抑制できる、という利点を得ることができる。
【0043】
<<第3の変形例>>
図3Dは、第2の活性種生成ユニットが有する生成室の第3の変形例を示す断面図である。
【0044】
図3Dに示すように第3の変形例に係る第2の活性種ユニット13cが有する第2の生成室131cの形状は、ホーン型である。ホーン型は、ベル型とは反対に、吐出孔126から活性種供給孔11にかけて第2の生成室131cの側面を内側に凹ませた形状で広げていくものである。
【0045】
このように、第2の生成室131cはホーン型であっても、第1の変形例と同様に、図3Aに示す第2の生成室131に比較して、乱流200が発生するような箇所を無くすことができる。
【0046】
したがって、第2の生成室131cにおいても、乱流200の発生を抑制することができ、窒素ラジカル(N)が乱流200に巻き込まれることに起因した失活を抑制できる、という利点を得ることができる。
【0047】
<処理装置の変形例>
<<第1の変形例:成膜装置への適用>>
図1および図2に示した処理装置は、例えば、窒化処理装置であった。しかしながら、この発明の一実施形態に係る処理装置は、窒化処理装置のような表面処理/改質装置ばかりに適用されるものではなく、成膜装置にも適用することができる。
【0048】
図4は処理装置の第1の変形例を概略的に示す断面図である。
図4に示すように、第1の変形例に係る処理装置1aが、図1に示した処理装置1と異なるところは、処理室4に、成膜原料ガスを供給する成膜原料ガス供給ノズル50を設けたことである。成膜原料ガス供給ノズル50は、成膜原料ガス供給機構51に接続されている。成膜原料ガス供給機構51は、成膜原料ガス供給ノズル50を介して、成膜原料ガスを処理室4の内部に供給する。これにより、処理室4の内部には、1×1014cm−3オーダー以上の濃度窒素ラジカル(N)等の他、成膜原料ガスが供給される。
【0049】
そして、成膜原料ガスを処理室4の内部へ供給しながら、1×1014cm−3オーダー以上の濃度の窒素ラジカル(N)等を供給することによって、シリコンウエハWの被処理面上に窒化物膜を成膜することができる。
【0050】
また、成膜原料ガスを処理室4の内部へ供給し、シリコンウエハWの被処理面上に薄膜を成膜する手順と、成膜された薄膜に対し、1×1014cm−3オーダー以上の濃度の窒素ラジカル(N)等を供給して窒化する手順とを繰り返すことでも、シリコンウエハWの被処理面上に窒化物膜を成膜することができる。
【0051】
例えば、成膜原料ガスの一例は、モノシラン(SiH)ガスである。成膜原料ガスをモノシランガスとし、活性種を窒素ラジカル(N)、アンモニアラジカル(NH)、水素ラジカル(H)とすると、シリコンウエハWの被処理面上には、シリコン窒化物膜を成膜することができる。このようにして成膜されたシリコン窒化物膜は、窒素ラジカル(N)、アンモニアラジカル(NH)、水素ラジカル(H)の総量が、例えば、1×1014cm−3オーダー以上の濃度となる雰囲気で窒化することができることから、例えば、微細パターンの上に対しても良好な膜質を持つシリコン窒化物膜を形成できる、という利点を得ることができる。
【0052】
このように、この発明の一実施形態に係る処理装置は、窒化処理装置のような表面処理/改質装置ばかりに適用されるものではなく、成膜装置にも適用できる。
【0053】
<<第2の変形例:活性種成膜部3の変形>>
図1および図2に示した処理装置は、活性種生成部3を1つだけ有していた。しかしながら、この発明の一実施形態に係る処理装置は、活性種生成部3は1つだけ有するものに限られるものではなく、活性種生成部3を複数有していてもよい。
【0054】
図5は処理装置の第2の変形例を概略的に示す断面図である。
図5に示すように、第2の変形例に係る処理装置1bが、図1に示した処理装置1と異なるところは、処理室4に、複数、例えば、2つの活性種生成部3−1、3−2が取り付けられているところである。このように、1つの処理室4に、複数、例えば、2つの活性種生成部3−1、3−2を取り付け、複数、例えば、2つの活性種供給孔11−1、11−2を介して、1×1014cm−3オーダー以上の濃度となる窒素ラジカル(N)等を処理室4の内部へ供給することも可能である。
【0055】
複数の活性種生成部3−1、3−2を取り付けたことによる利点は、処理室4の内部における窒素ラジカル(N)等の分布をより均一化させることが可能なことである。これにより、例えば、窒化処理される膜の膜質の更なる均一化、あるいは成膜処理される膜の膜質や膜厚の更なる均一化を図ることが可能となる。
【0056】
以上、この発明を一実施形態により説明したが、この発明は上記一実施形態に限られるものではなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲において様々に変形することが可能である。また、この発明の実施形態は、上記一実施形態が唯一のものでもない。
【0057】
例えば、上記一実施形態においては、第1の活性種として、窒素ラジカル(N)を例示したが、第1の活性種は窒素ラジカル(N)に限られるものではない。例えば、第1の活性種として酸素ラジカル(O)や、OHラジカル(OH)に変更することも可能である。この場合の活性種源となるガスとしては、HOガスや、NOガスなどを挙げることができる。
【0058】
また、第2の活性種として、窒素ラジカル(N)、アンモニアラジカル(NH)、水素ラジカル(H)を例示したが、第2の活性種についても、これら3種のラジカルに限られるものではない。これらのうち、少なくとも1つが含まれていればよい。第2の活性種源となるガスには、窒素ガス、水素ガス、窒素と水素との化合物ガス(例えばアンモニアガス)を用いたが、窒素ガスと水素ガスとの混合ガスのみ、又は窒素と水素との化合物ガスのみを用いるようにしてもよい。
【0059】
また、第2の活性種として、酸素ラジカル(O)や、OHラジカル(OH)に変更することも可能である。そして、この場合の活性種源となるガスとしては、HOガスや、NOガスなどを挙げることができる。
【0060】
また、第2の活性種生成ユニット13においては、活性種源を含むガスから第2の活性種を、誘導結合プラズマを用いて生成したが、第2の活性種の生成手段は、誘導結合プラズマに限られるものではない。例えば、誘導結合プラズマの他、容量結合プラズマ、およびマイクロ波プラズマなども用いることができる。即ち、第2の活性種は、誘導結合プラズマ、容量結合プラズマ、およびマイクロ波プラズマの少なくとも1つにより生成されればよい。
【0061】
また、第2の生成室131の形状として、第1の生成室121の側で細く、処理室4の側で太い円筒型とした場合、コニカル型、ベル型、およびホーン型を例示したが、第2の生成室131の形状は、コニカル型、ベル型、およびホーン型の少なくとも2つを組み合わせた形状とすることも可能である。
【0062】
また、上記実施形態は、枚葉式処理装置を例示したが、バッチ式処理装置に適用することも可能である。さらに、バッチ式処理装置においては、被処理体、例えば、シリコンウエハWを高さ方向に積層させて処理を行う縦型のバッチ式成膜装置にも、この発明を適用することができる。その他、この発明はその要旨を逸脱しない範囲で様々に変形することができる。
【符号の説明】
【0063】
1、1a、1b…処理装置、2…処理ガス供給源、3、3−1、3−2…活性種生成部、4…処理室、5…載置台、11…活性種供給孔、12…第1の活性種生成ユニット、13、13a〜13c…第2の活性種生成ユニット、121…第1の生成室、122…活性種源供給孔、123a、123b…高周波電極対、124…絶縁膜、125…第1の高周波電源、126…吐出孔、131…第2の生成室、132…活性種源供給孔、133…高周波コイル、134…第2の高周波電源。
図1
図2
図3A
図3B
図3C
図3D
図4
図5