特許第6247091号(P6247091)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6247091印刷装置の印刷位置補正方法及び印刷装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6247091
(24)【登録日】2017年11月24日
(45)【発行日】2017年12月13日
(54)【発明の名称】印刷装置の印刷位置補正方法及び印刷装置
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/01 20060101AFI20171204BHJP
【FI】
   B41J2/01 209
   B41J2/01 305
   B41J2/01 401
   B41J2/01 451
【請求項の数】6
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2013-269381(P2013-269381)
(22)【出願日】2013年12月26日
(65)【公開番号】特開2015-123655(P2015-123655A)
(43)【公開日】2015年7月6日
【審査請求日】2016年10月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】000207551
【氏名又は名称】株式会社SCREENホールディングス
(74)【代理人】
【識別番号】100093056
【弁理士】
【氏名又は名称】杉谷 勉
(74)【代理人】
【識別番号】100142930
【弁理士】
【氏名又は名称】戸高 弘幸
(74)【代理人】
【識別番号】100175020
【弁理士】
【氏名又は名称】杉谷 知彦
(74)【代理人】
【識別番号】100180596
【弁理士】
【氏名又は名称】栗原 要
(73)【特許権者】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100093056
【弁理士】
【氏名又は名称】杉谷 勉
(72)【発明者】
【氏名】山本 隆治
【審査官】 村田 顕一郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−149624(JP,A)
【文献】 特開2005−053167(JP,A)
【文献】 特開2008−074059(JP,A)
【文献】 特開2005−319651(JP,A)
【文献】 特開2011−245802(JP,A)
【文献】 特開2004−122362(JP,A)
【文献】 特開平11−245383(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01−2/215
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
連続した印刷媒体の搬送方向に直交して配置された複数個の印刷ヘッドで構成されている印刷部を備えた印刷装置の印刷位置補正方法であって、
搬送速度の変動の周期内の所定の間隔で、前記印刷部が少なくとも二つの測定パターンを印刷媒体に印刷する印刷工程と、
前記印刷媒体に印刷された前記測定パターンのそれぞれに基づいて、前記複数個の印刷ヘッドによる印刷の位置補正値を算出する位置補正値算出工程と、
前記位置補正値算出工程によって算出された前記位置補正値の平均値を、前記印刷ヘッドの正位置補正値とする確定工程と、
を実施することを特徴とする印刷装置の印刷位置補正方法。
【請求項2】
請求項1に記載の印刷装置における印刷位置補正方法であって、
前記位置補正値は、千鳥状に配置された複数個の印刷ヘッドが、印刷媒体に搬送方向と直交する方向に線分を印刷するためのものであることを特徴とする印刷装置の印刷位置補正方法。
【請求項3】
請求項1または2に記載の印刷装置における印刷位置補正方法であって、
前記印刷ヘッドは、ドットを印刷するドット印刷部を複数列備えていることを特徴とする印刷装置の印刷位置補正方法。
【請求項4】
請求項1から3のいずれかに記載の印刷装置の印刷位置補正方法であって、
前記印刷装置は、前記印刷媒体を前記搬送方向に搬送する駆動ローラと、前記駆動ローラの回転軸に取り付けられ、前記駆動ローラの回転による前記印刷媒体の搬送速度を検出するエンコーダとを備え、
前記駆動ローラの回転による前記印刷媒体の搬送速度が所定の変動周期Tで変動するときに、前記所定の間隔は、前記変動周期Tの半分の時間間隔であることを特徴とする印刷装置の印刷位置補正方法。
【請求項5】
請求項1から4のいずれかに記載の印刷装置の印刷位置補正方法であって、
前記印刷ヘッドは、インク滴を吐出して印刷を行うインクジェット式であることを特徴とする印刷装置の印刷位置補正方法。
【請求項6】
連続した印刷媒体の搬送方向に直交して配置された複数個の印刷ヘッドで構成されている印刷部を備えた印刷装置であって、
搬送速度の変動の周期内の所定の間隔で、前記印刷部に対して少なくとも二つの測定パターンを印刷媒体に印刷させる測定パターン印刷手段と、
前記印刷媒体に印刷された前記測定パターンのそれぞれに基づいて、前記複数個の印刷ヘッドによる印刷の位置補正値を算出する位置補正値算出手段と、
前記位置補正値算出手段によって算出された前記位置補正値の平均値を、前記印刷ヘッドの正位置補正値とする確定手段と、
を備えていることを特徴とする印刷装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷媒体の搬送方向に対する印刷のずれである段差ずれを補正する印刷装置の印刷位置補正方法及び印刷装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の印刷装置として、印刷用紙の搬送方向と直交する方向に複数個の印刷ヘッドを配置して一つの印刷部が構成されている印刷装置がある(例えば、特許文献1参照)。印刷部は、複数個の印刷ヘッドが搬送方向に対して前後して配置される、いわゆる千鳥配置で構成されているものがある。
【0003】
このような構成の印刷部では、搬送方向に前後した印刷ヘッドにおいて印刷タイミングを変えることにより、搬送方向に対する段差ずれが抑制された、搬送方向と直交する方向への直線を印刷することができる。この印刷タイミングは、印刷用紙の搬送速度や前後した印刷ヘッドの間隔など基づいて決められる。
【0004】
具体的には、駆動ローラを駆動して印刷用紙を搬送方向に搬送させつつ、印刷部により補正用チャートを印刷させる。そして、その補正用チャートを検査し、搬送方向に対する段差ずれを求め、このずれをなくすような位置補正値を求める。この位置補正値に基づいて印刷部を制御することにより、千鳥配置の印刷ヘッドを備えた印刷部により、段差ずれが抑制された印刷を行うことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−42629号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、このような構成を有する従来例の場合には、次のような問題がある。
すなわち、従来の装置は、駆動ローラで印刷用紙を搬送するが、その搬送速度には機械的な誤差からバラツキが生じる。したがって、その位置補正値に基づいて印刷を行っても、印刷のタイミングによって段差ずれが大きくなったりすることがある。
【0007】
そこで、駆動ローラの回転速度を検出するエンコーダの出力に基づいて制御を行い、搬送速度の一定化を図ることが行われる。しかしながら、エンコーダの回転軸を駆動ローラの回転中心に完全に一致して取り付けることが精度的に困難であったり、エンコーダローラが真円でなかったりなどの理由により、エンコーダの出力では搬送速度が一定となっていても、実際の搬送速度には周期的なバラツキが残り、やはり印刷のタイミングによっては段差ずれが大きくなることがあるという問題がある。
【0008】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、位置補正値の収集手法を工夫することにより、搬送速度に周期的なバラツキがあっても段差ずれが大きくなることを抑制できる印刷装置の印刷位置補正方法及び印刷装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、このような目的を達成するために、次のような構成をとる。
すなわち、請求項1に記載の発明は、連続した印刷媒体の搬送方向に直交して配置された複数個の印刷ヘッドで構成されている印刷部を備えた印刷装置の印刷位置補正方法であって、搬送速度の変動の周期内の所定の間隔で、前記印刷部が少なくとも二つの測定パターンを印刷媒体に印刷する印刷工程と、前記印刷媒体に印刷された前記測定パターンのそれぞれに基づいて、前記複数個の印刷ヘッドによる印刷の位置補正値を算出する位置補正値算出工程と、前記位置補正値算出工程によって算出された前記位置補正値の平均値を、前記印刷ヘッドの正位置補正値とする確定工程と、を実施することを特徴とするものである。
【0010】
[作用・効果]請求項1に記載の発明によれば、印刷工程では、印刷部が搬送速度の変動の周期内における所定の間隔で少なくとも二つの測定パターンを印刷し、位置補正値算出工程では、測定パターンのそれぞれについて、印刷部を構成している複数個の印刷ヘッドによる印刷の位置補正値を算出し、確定工程では、位置補正値の平均値を印刷ヘッドの位置補正値とする。搬送速度の変動の周期内において印刷された測定パターンは、それぞれ搬送速度の変動の影響を受けているが、位置補正値の平均値とすることで、それぞれの搬送速度のバラツキの影響をほぼ相殺することができる。したがって、搬送速度に周期的なバラツキがあっても段差ずれが大きくなることを抑制できる。
【0011】
また、本発明において、前記位置補正値は、千鳥状に配置された複数個の印刷ヘッドが、印刷媒体に搬送方向と直交する方向に線分を印刷するためのものであることが好ましい(請求項2)。
【0012】
段差ずれが目立つ千鳥配置の印刷ヘッドを備えた印刷部であっても、段差ずれが大きくなることを抑制できる。
【0013】
また、本発明において、前記印刷ヘッドは、ドットを印刷するドット印刷部を複数列備えていることが好ましい(請求項3)。
【0014】
解像度を高めるために、ドットを印刷するドット印刷部を複数列備えている印刷ヘッドであっても、段差ずれが大きくなることを抑制できる。
【0015】
また、本発明において、前記印刷装置は、前記印刷媒体を前記搬送方向に搬送する駆動ローラと、前記駆動ローラの回転軸に取り付けられ、前記駆動ローラの回転による前記印刷媒体の搬送速度を検出するエンコーダとを備え、前記駆動ローラの回転による前記印刷媒体の搬送速度が所定の変動周期Tで変動するときに、前記所定の間隔は、前記変動周期Tの半分の時間間隔であることが好ましい(請求項4)。
【0016】
エンコーダローラの外周面の長さは、搬送速度のバラツキの一周期(変動周期T)となる。したがって、その長さの半分は、変動周期Tの半分の時間間隔となるので、その間隔で二つの測定パターンを印刷すると、搬送速度のバラツキの中心値から互いに逆方向に存在する搬送速度における位置補正値となる。したがって、二つの位置補正値の平均値とすることで、それらの搬送速度のバラツキの影響をほぼ相殺することができる。したがって、搬送速度に周期的なバラツキがあっても段差ずれが大きくなることを抑制できる。
【0017】
また、本発明において、前記印刷ヘッドは、インク滴を吐出して印刷を行うインクジェット式であることが好ましい(請求項5)。
【0018】
また、請求項6に記載の発明は、連続した印刷媒体の搬送方向に直交して配置された複数個の印刷ヘッドで構成されている印刷部を備えた印刷装置であって、搬送速度の変動の周期内の所定の間隔で、前記印刷部に対して少なくとも二つの測定パターンを印刷媒体に印刷させる測定パターン印刷手段と、前記印刷媒体に印刷された前記測定パターンのそれぞれに基づいて、前記複数個の印刷ヘッドによる印刷の位置補正値を算出する位置補正値算出手段と、前記位置補正値算出手段によって算出された前記位置補正値の平均値を、前記印刷ヘッドの正位置補正値とする確定手段と、を備えていることを特徴とするものである。
【0019】
[作用・効果]請求項6に記載の発明によれば、測定パターン印刷手段は、搬送速度の変動の周期内における所定の間隔で少なくとも二つの測定パターンを印刷部に対して印刷させ、位置補正値算出手段は、測定パターンのそれぞれに基づいて、印刷部を構成している複数個の印刷ヘッドによる印刷の位置補正値を算出する。確定手段は、位置補正値の平均値を印刷ヘッドの位置補正値とする。搬送速度の変動の周期内において印刷された測定パターンは、それぞれ搬送速度の変動の影響を受けているが、位置補正値の平均値とすることで、それぞれの搬送速度のバラツキの影響をほぼ相殺することができる。したがって、搬送速度に周期的なバラツキがあっても段差ずれが大きくなることを抑制できる。
【発明の効果】
【0020】
本発明に係る印刷装置の印刷位置補正方法によれば、印刷工程では、印刷部が搬送速度の変動の周期内における所定の間隔で少なくとも測定パターンを印刷し、位置補正値算出工程では、測定パターンのそれぞれについて、印刷部を構成している複数個の印刷ヘッドによる印刷の位置補正値を算出し、確定工程では、位置補正値の平均値を印刷ヘッドの位置補正値とする。搬送速度の変動の周期内において印刷された測定パターンは、それぞれ搬送速度の変動の影響を受けているが、位置補正値の平均値とすることで、それぞれの搬送速度のバラツキの影響をほぼ相殺することができる。したがって、搬送速度に周期的なバラツキがあっても段差ずれが大きくなることを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】実施例に係る実施例に係る印刷装置の概略構成を示す全体図である。
図2】印刷部の概略構成を示す平面図である。
図3】搬送速度のバラツキと測定パターンの一般的な関係を示す模式図である。
図4】印刷位置補正処理における二つの測定パターンの印刷タイミング例を示す模式図である。
図5】本実施例における印刷位置補正処理を示すフローチャートである。
図6】印刷部の他の構成例を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面を参照して本発明の一実施例について説明する。
図1は、実施例に係る実施例に係る印刷装置の概略構成を示す全体図であり、図2は、印刷部の概略構成を示す平面図である。
【0023】
本実施例に係る印刷装置1は、給紙部3と、印刷ユニット5と、排紙部7とを備えている。
【0024】
給紙部3は、ロール状の連続紙WPを供給する。印刷ユニット5は、例えば、連続紙WPに対してインク滴を吐出させて印刷を行うインクジェット式で構成され、連続紙WPに対して印刷を行う。排紙部7は、印刷を終えた連続紙WPをロール状に巻き取る。
【0025】
印刷ユニット5は、給紙部3からの連続紙WPを取り込むための駆動ローラ9を上流側に備えている。駆動ローラ9によって給紙部3から巻き出された連続紙WPは、複数個の搬送ローラ11に沿って、下流側の排紙部7に向かって搬送される。最下流の搬送ローラ11と排紙部7との間には、駆動ローラ13が配置されている。この駆動ローラ13は、搬送ローラ11上を搬送されている連続紙WPを排紙部7に向かって送り出す。
【0026】
印刷ユニット5は、駆動ローラ9と駆動ローラ13との間に、印刷部ユニット15と、乾燥部17と、検査部19とを上流側からその順で備えている。乾燥部17は、印刷部ユニット15によって印刷された部分の乾燥を行う。検査部19は、印刷された部分に汚れや抜け等がないかを検査したり、後述する測定パターンを読み取って段差ずれ量を検出したりする。
【0027】
印刷部ユニット15は、インク滴を吐出する複数個の印刷部21を備えている。この例では、4個の印刷部21が連続紙WPの搬送方向に所定の間隔を隔てて配置されている。4個の印刷部21は、例えば、それぞれが異なる色を印刷するためのものであり、この例ではブラック(K)、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)となっている。各印刷部21は、連続紙WPの幅方向(図1における紙面の奥手前方向)における印刷領域を移動することなく印刷できるだけの印刷幅を有し、幅方向へ複数個の印刷ヘッド23を備えている。つまり、本実施例における印刷ユニット5は、印刷部ユニット15が連続紙WPの搬送方向と直交する方向に主走査のために移動することがなく、位置が固定のままで連続紙WPを副走査方向に送りながら連続紙WPに対して印刷を行う。以下の説明では、印刷部21のうち各色の印刷部21を区別する必要がある場合には、ブラックの印刷部21を印刷部21K、シアンの印刷部21を印刷部21C、マゼンタの印刷部21を印刷部21M、イエローの印刷部21を印刷部21Yと称することにする。
【0028】
各印刷部21は、図2に示すように、4個の印刷ヘッド23を、連続紙WPの幅方向に長手方向が位置するように直線的に配置されているとともに、隣接する印刷ヘッド23の端部が一部重複するように、搬送方向に前後して二列に配置された千鳥配置により構成されている。また、各印刷ヘッド23は、一列で直線的に、あるいは線状に形成されたノズル列25を備えている。この実施例では、ノズル列25がインク滴の複数個の吐出口となっている。
【0029】
なお、上述したノズル列25が本発明における「ドット印刷部」に相当する。
【0030】
上述した駆動ローラ9,13による連続紙WPの搬送制御と、印刷部ユニット15によるインク滴の吐出制御と、乾燥部17による乾燥処理と、検査部19による検査処理等は、制御部31によって統括的に制御される。制御部31は、CPUやメモリなどによって構成されている。制御部31には、情報を記憶するための記憶部33が接続されている。記憶部33の情報としては、例えば、後述する測定パターンや駆動ローラ9の周長の半分の長さ、またはその長さに相当する時間などが挙げられる。また、制御部31は、検査部19で検出された段差ずれ量に基づいて位置補正量を算出し、この位置補正値に基づいて印刷部ユニット15による印刷タイミングを調整する。
【0031】
また、上述した駆動ローラ9には、その回転軸にエンコーダ35が取り付けられている。このエンコーダ35は、駆動ローラ9の回転とともに回転し、パルス信号を制御部31に出力する。制御部31は、このパルス信号に基づいて連続紙WPの搬送速度を求める。エンコーダ35は、駆動ローラ9の回転軸に取り付けられているものの、その回転中心同士が正確に一致しているわけではなく、ある程度のずれがある。制御部31は、連続紙WPの搬送制御を行う際に、エンコーダ35のパルス信号に基づく搬送速度が指定速度となるようにフィードバック制御を行う。
【0032】
なお、上述した駆動ローラ9とエンコーダ35とが本発明における「エンコーダローラ」に相当する。
【0033】
ここで図3を参照する。なお、図3は、搬送速度のバラツキと測定パターンの一般的な関係を示す模式図である。
【0034】
ここでは、印刷部ユニット15のうち印刷部21Kによって測定パターンを印刷する場合を例にとって説明するが、他の印刷部21Y、21M、21Cであっても同様である。なお、測定パターンとは、印刷部21Kによって連続紙WPに印刷されたものであり、印刷部21Kを構成している4個の印刷ヘッド23によって連続紙WPの搬送方向と直交する方向に描かれた直線状のものである。
【0035】
連続紙WPの搬送速度Vは、上述したようにエンコーダ35の出力に基づいて指定速度VDとなるように制御部31によって制御が行われている。しかしながら、エンコーダ35の回転中心が駆動ローラ9の回転中心に対して一致していないことなどから、搬送速度Vは、例えば、図3上に示すように周期的にゆらぐようにバラツキが発生する。ここでは、例えば、測定パターンMP1は、搬送速度Vが指定速度VDの時点で印刷されたものであり、測定パターンMP2は、搬送速度Vが指定速度VDよりも速い搬送速度VHに近い時点で印刷されたものであり、測定パターンMP3は、搬送速度Vが指定速度VDよりも遅い搬送速度VLの時点で印刷されたものであるとする。また、指定速度VDの際には、測定パターンMP1のように段差ずれが最小となるように、印刷タイミングが調整されているものとする。なお、図2において、印刷部21Kのうち、連続紙WPが送られてくる側(上流側)の印刷ヘッド23は、測定パターンMP1〜MP3を点線で描き、連続紙WPが送られてゆく側(下流側)の印刷ヘッド23は、測定パターンMP1〜MP3を実線で描いている。これは見やすくするために線種を分けているだけであり、実際の測定パターンMP1〜MP3は全て実線である。
【0036】
制御部31によって搬送速度Vが指定速度VDとなるように制御されているが、搬送速度Vが周期的に変動するので、指定速度VDとなるt2時点で描かれた測定パターンMP1は段差ずれがほぼないものとなる。しかし、指定速度VDよりも速いt1時点で描かれた測定パターンMP2は、上流側の印刷ヘッド23による線分(実線)よりも上流側(遅れた位置)に下流側の印刷ヘッド23による線分(点線)が描かれて段差ずれが生じる。また、指定速度VDよりも遅いt3時点で描かれた測定パターンMP3は、上流側の印刷ヘッド23による線分(実線)よりも下流側(速い位置)に下流側の印刷ヘッド23による線分(点線)が描かれて段差が生じる。
【0037】
従来、このように指定速度VDで制御されているものの、搬送速度Vがバラツキのある状態で印刷された測定パターンは、測定パターンMP1〜MP3のどれに近いものになるかは不明である。したがって、一つの測定パターンに基づいて検査部19が段差ずれ量を検出しても、制御部31が製品等の印刷を行う際の搬送速度Vにバラツキがあるので、段差ずれが抑制されないことがある。例えば、測定パターンMP3となった状態で段差ずれ量の補正を行った後、製品等の印刷の際の搬送速度Vが搬送速度VLの対極にある搬送速度VHであった場合には、製品等の印刷時には測定パターンMP2よりも大きな段差ずれを生じることになる。
【0038】
そこで、本実施例では、以下のようにして、段差ずれが大きくならないよう抑制する印刷位置補正処理を実施する。
【0039】
ここで図4を参照する。なお、図4は、印刷位置補正処理における二つの測定パターンの印刷タイミング例を示す模式図である。
【0040】
図4上における間隔Tは、駆動ローラ9の外周面の周の長さに相当する。所定の間隔T/2は、駆動ローラ9の外周面の周の長さの半分に相当する。換言すると、所定の間隔T/2は、駆動ローラ9の全周の周長の半分を表すので、搬送速度Vの変動周期の半分の長さ(時間)に等しい。つまり、制御部31は、一つ目の測定パターンMP1を印刷した後、一つ目の測定パターンMP1から所定の間隔T/2離れた位置に二つの測定パターンMP2を印刷する。この例では、t1時点で一つ目の測定パターンMP1を印刷し、そこから所定の間隔T/2だけ離れたt3a時点で二つの測定パターンMP2を印刷したが、一つ目のパターンMP1を印刷するタイミングは任意であり、その箇所から所定の間隔T/2だけ離れた位置に二つ目の測定パターンMP2を印刷することがポイントである。
【0041】
制御部31は、二つの測定パターンMP1,MP2の段差ずれ量を検査部19から受け取り、それぞれの段差ずれ量に基づいて位置補正値を算出するとともに、それらの平均値を算出する。そして、二つの段差ずれ量の平均値を正位置補正値として確定する。制御部31は、確定した正位置補正値により段差ずれ量を抑制するように位置補正を行いつつ印刷を行う。その際に搬送速度Vが指定速度VDからずれたとしても、二つの測定パターンMP1,MP2の位置補正値の平均値を正位置補正値としているので、それぞれの搬送速度Vのバラツキの影響をほぼ相殺することができる。したがって、搬送速度Vに周期的なバラツキがあっても段差ずれが大きくなることを抑制できる。
【0042】
なお、上述した制御部31が本発明における「測定パターン印刷手段」、「位置補正値算出手段」、「確定手段」に相当する。
【0043】
次に、図5を参照する。なお、図5は、本実施例における印刷位置補正処理を示すフローチャートである。
【0044】
ステップS1(印刷工程)
制御部31は、連続紙WPを指定速度VDで搬送させつつ一つ目の測定パターンMP1を印刷させる。
【0045】
ステップS2(印刷工程)
制御部31は、連続紙WPの搬送距離が所定の間隔T/2になったか否かによって処理を分岐する。所定の間隔T/2でない場合には、ステップS2を繰り返す一方、所定の間隔T/2になった場合には、ステップS3に移行する。
【0046】
ステップS3(印刷工程)
制御部31は、二つの測定パターンMP2を印刷させる。
【0047】
ステップS4(位置補正値算出工程)
検査部19により、一つ目の測定パターンMP1と、二つの測定パターンMP2の段差ずれ量を測定する。そして、それらに基づいて制御部31は、それぞれの位置補正値を算出する。
【0048】
ステップS5(確定工程)
制御部31は、算出した二つの位置補正値の平均値を算出し、それを正位置補正値として確定する。制御部31は、この確定された正位置補正値により、製品等の印刷時に印刷タイミングを調整する。
【0049】
本実施例によると、印刷部21が搬送速度Vの変動の周期内における所定の間隔T/2で二つの測定パターンMP1,MP2を印刷し、二つの測定パターンMP1,MP2のそれぞれについて、印刷部21を構成している4個の印刷ヘッド23による印刷の位置補正値を算出し、二つの位置補正値の平均値を印刷ヘッド23の位置補正値とする。搬送速度Vの変動の周期T内において印刷された二つの測定パターンMP1,MP2は、それぞれ搬送速度Vの変動の影響を受けているが、二つの位置補正値の平均値とすることで、それぞれの搬送速度Vのバラツキの影響をほぼ相殺することができる。したがって、搬送速度Vに周期的なバラツキがあっても段差ずれが大きくなることを抑制できる。
【0050】
本発明は、上記実施形態に限られることはなく、下記のように変形実施することができる。
【0051】
(1)上述した実施例では、印刷ヘッド23にノズル列25が一列である構成について説明した。しかしながら、本発明は、解像度を高めるために印刷ヘッド23に複数のノズル列25を備えた構成にも適用することができる。具体的には、図6に示すように、搬送方向に二列のノズル列25を備えた印刷ヘッド23Aが例示される。印刷ヘッド23Aは、図示しているように、ノズル列25が搬送方向に複数配設されている。したがって、印刷ヘッド23Aのノズル列25による吐出を行うと、搬送速度Vのバラツキによって段差ずれが生じることになる。しかし、本発明では、印刷ヘッド23Aに配設されたノズル間の段差ずれがあっても、上述した印刷ヘッド23ごとの段差ずれに対するのと同様の処理を行うことにより、搬送速度Vのバラツキによる段差ずれが大きくなるのを抑制できる。
【0052】
(2)上述した実施例では、印刷部21がインクジェット式であるとして説明したが、本発明はこれ以外の方式の印刷装置、例えば、ライン配置された発熱素子を備えたサーマル式印刷装置、あるいはライン配置されたLEDを備えた静電式印刷装置などであっても適用できる。
【0053】
(3)上述した実施例では、印刷部21が印刷ヘッド23を千鳥配置で備えている構成を説明した。しかしながら、本発明は印刷部21が千鳥配置であることに限定されるものではない。
【0054】
(4)上述した実施例では、測定パターンを二つとして説明したが、測定パターンを4以上の偶数個形成して位置補正値を算出し、これら位置補正値から平均値を取得するよういにしてもよい。測定パターンを4個以上形成することにより、搬送速度のバラツキが単純なサインカーブではない場合であっても、段差ずれの抑制を行うことができる。
【符号の説明】
【0055】
1 … 印刷装置
3 … 給紙部
5 … 印刷ユニット
7 … 排紙部
9,13 … 駆動ローラ
15 … 印刷部ユニット
21 … 印刷部
23 … 印刷ヘッド
25 … ノズル列
31 … 制御部
35 … エンコーダ
T … 駆動ローラの外周面の長さ
T/2 … 所定の間隔
図1
図2
図3
図4
図5
図6