特許第6247096号(P6247096)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6247096
(24)【登録日】2017年11月24日
(45)【発行日】2017年12月13日
(54)【発明の名称】接着性促進組成物
(51)【国際特許分類】
   C09D 201/00 20060101AFI20171204BHJP
   C08L 75/06 20060101ALI20171204BHJP
   C08K 5/544 20060101ALI20171204BHJP
   C09D 5/00 20060101ALI20171204BHJP
   C09D 167/00 20060101ALI20171204BHJP
   C09D 7/12 20060101ALI20171204BHJP
【FI】
   C09D201/00
   C08L75/06
   C08K5/544
   C09D5/00 D
   C09D167/00
   C09D7/12
【請求項の数】17
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2013-552149(P2013-552149)
(86)(22)【出願日】2012年1月24日
(65)【公表番号】特表2014-509336(P2014-509336A)
(43)【公表日】2014年4月17日
(86)【国際出願番号】EP2012051021
(87)【国際公開番号】WO2012104170
(87)【国際公開日】20120809
【審査請求日】2015年1月22日
(31)【優先権主張番号】11153249.5
(32)【優先日】2011年2月3日
(33)【優先権主張国】EP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】506416400
【氏名又は名称】シーカ テクノロジー アクチェンゲゼルシャフト
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100123593
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 宣夫
(74)【代理人】
【識別番号】100173107
【弁理士】
【氏名又は名称】胡田 尚則
(74)【代理人】
【識別番号】100170874
【弁理士】
【氏名又は名称】塩川 和哉
(72)【発明者】
【氏名】ジェラルディーヌ ガイヤール
【審査官】 桜田 政美
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−070585(JP,A)
【文献】 特開2009−114384(JP,A)
【文献】 特開2006−113575(JP,A)
【文献】 特開平11−131033(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D 201/00
C08K 5/544
C08L 75/06
C09D 5/00
C09D 7/12
C09D 167/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記を含有している、接着性促進組成物(但し、エポキシ樹脂を含有するものを除く)
ポリエステル樹脂である、少なくとも一つのフィルム形成樹脂、
少なくとも一つの芳香族ポリイソシアネート、
少なくとも一つの溶媒、及び
下式(I)の少なくとも一つのイソシアヌレート:
【化1】
(Rは、互いに独立して、任意に一つ以上のC―C多重結合を有し、かつ/又は任意に脂環式及び/若しくは芳香族部分を有する、炭素原子数1〜12の直鎖又は分岐鎖の一価炭化水素基を表し、
は、互いに独立して、任意に一つ以上のヘテロ原子を有し、任意に一つ以上のC―C多重結合を有し、かつ/又は任意に脂環式及び/若しくは芳香族部分を有する、炭素原子数1〜12の直鎖又は分岐鎖の一価炭化水素基を表し、
aは0、1、又は2の値を表し、
は、互いに独立して、任意に一つ以上のヘテロ原子を有し、任意に一つ以上のC―C多重結合を有し、かつ/又は任意に脂環式及び/若しくは芳香族部分を有する、炭素原子数1〜12の直鎖又は分岐鎖の二価炭化水素基を表す)。
【請求項2】
前記フィルム形成樹脂が、前記接着性促進組成物中の芳香族ポリイソシアネートのイソシアネート基と反応した少なくとも一つのヒドロキシル基を有するポリエステル樹脂であることを特徴とする、請求項1に記載の接着性促進組成物。
【請求項3】
下記を含有している、接着性促進組成物:
ポリエステル樹脂である、少なくとも一つのフィルム形成樹脂、
少なくとも一つの芳香族ポリイソシアネート、
少なくとも一つの溶媒、及び
下式(I)の少なくとも一つのイソシアヌレート:
【化2】
(Rは、互いに独立して、任意に一つ以上のC―C多重結合を有し、かつ/又は任意に脂環式及び/若しくは芳香族部分を有する、炭素原子数1〜12の直鎖又は分岐鎖の一価炭化水素基を表し、
は、互いに独立して、任意に一つ以上のヘテロ原子を有し、任意に一つ以上のC―C多重結合を有し、かつ/又は任意に脂環式及び/若しくは芳香族部分を有する、炭素原子数1〜12の直鎖又は分岐鎖の一価炭化水素基を表し、
aは0、1、又は2の値を表し、
は、互いに独立して、任意に一つ以上のヘテロ原子を有し、任意に一つ以上のC―C多重結合を有し、かつ/又は任意に脂環式及び/若しくは芳香族部分を有する、炭素原子数1〜12の直鎖又は分岐鎖の二価炭化水素基を表す)、
ここで、前記ポリエステル樹脂が、前記接着性促進組成物中の芳香族ポリイソシアネートのイソシアネート基と反応した少なくとも一つのヒドロキシル基を有する。
【請求項4】
下記を含有している、接着性促進組成物:
3000〜100,000g/molの分子量、及び1〜10mgKOH/gの平均OH数を有するポリエステル樹脂である、少なくとも一つのフィルム形成樹脂、
少なくとも一つの芳香族ポリイソシアネート、
少なくとも一つの溶媒、及び
下式(I)の少なくとも一つのイソシアヌレート:
【化3】
(Rは、互いに独立して、任意に一つ以上のC―C多重結合を有し、かつ/又は任意に脂環式及び/若しくは芳香族部分を有する、炭素原子数1〜12の直鎖又は分岐鎖の一価炭化水素基を表し、
は、互いに独立して、任意に一つ以上のヘテロ原子を有し、任意に一つ以上のC―C多重結合を有し、かつ/又は任意に脂環式及び/若しくは芳香族部分を有する、炭素原子数1〜12の直鎖又は分岐鎖の一価炭化水素基を表し、
aは0、1、又は2の値を表し、
は、互いに独立して、任意に一つ以上のヘテロ原子を有し、任意に一つ以上のC―C多重結合を有し、かつ/又は任意に脂環式及び/若しくは芳香族部分を有する、炭素原子数1〜12の直鎖又は分岐鎖の二価炭化水素基を表す)
【請求項5】
少なくとも一つの芳香族ポリイソシアネートが、少なくとも1つのホスフェート基、チオホスフェート基、又はチオホスファン基を有する芳香族ポリイソシアネートであることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一項に記載の接着性促進組成物。
【請求項6】
下記を含有している、接着性促進組成物:
少なくとも一つのフィルム形成樹脂、
少なくとも1つのホスフェート基、チオホスフェート基、又はチオホスファン基を有する、少なくとも一つの芳香族ポリイソシアネート、
少なくとも一つの溶媒、及び
下式(I)の少なくとも一つのイソシアヌレート:
【化4】
(Rは、互いに独立して、任意に一つ以上のC―C多重結合を有し、かつ/又は任意に脂環式及び/若しくは芳香族部分を有する、炭素原子数1〜12の直鎖又は分岐鎖の一価炭化水素基を表し、
は、互いに独立して、任意に一つ以上のヘテロ原子を有し、任意に一つ以上のC―C多重結合を有し、かつ/又は任意に脂環式及び/若しくは芳香族部分を有する、炭素原子数1〜12の直鎖又は分岐鎖の一価炭化水素基を表し、
aは0、1、又は2の値を表し、
は、互いに独立して、任意に一つ以上のヘテロ原子を有し、任意に一つ以上のC―C多重結合を有し、かつ/又は任意に脂環式及び/若しくは芳香族部分を有する、炭素原子数1〜12の直鎖又は分岐鎖の二価炭化水素基を表す)。
【請求項7】
少なくとも1つのホスフェート基、チオホスフェート基、又はチオホスファン基を有する前記芳香族ポリイソシアネートが、トリス(p―イソシアナトフェニル)チオホスフェートであることを特徴とする、請求項5又は6に記載の接着性促進組成物。
【請求項8】
前記接着性促進組成物が、少なくとも2つの芳香族ポリイソシアネートを含み、そのうちの少なくとも1つが、少なくとも1つのホスフェート基、チオホスフェート基、又はチオホスファン基を有する芳香族ポリイソシアネートであることを特徴とする、請求項1〜7のいずれか一項に記載の接着性促進組成物。
【請求項9】
式(I)の前記イソシアヌレートにおいて、aが0の値を表し、かつ/又はRが、互いに独立して、メチル、エチル、又はイソプロピル基を表すことを特徴とする、請求項1〜8のいずれか一項に記載の接着性促進組成物。
【請求項10】
式(I)の前記イソシアヌレートのRが、炭素原子数1〜6の直鎖アルキレン基を表すことを特徴とする、請求項1〜9のいずれか一項に記載の接着性促進組成物。
【請求項11】
前記接着性促進組成物が少なくとも一つの脂肪族ポリイソシアネートを更に含むことを特徴とする、請求項1〜10のいずれか一項に記載の接着性促進組成物。
【請求項12】
前記接着性促進組成物が、式R―Si(R(OR3−aの少なくとも1つのシランを更に含み、
は、任意にイソシアネート基と反応する官能基である、少なくとも一つの官能基を有するアルキル基を表し、かつ
前記シランの前記官能基は任意に、前記接着性促進組成物中に存在する芳香族又は脂肪族のポリイソシアネートのイソシアネート基と反応して、付加体を形成していること
を特徴とする、請求項1〜11のいずれか一項に記載の接着性促進組成物。
【請求項13】
前記溶媒の量が、前記接着性促進組成物の合計質量に基づいて10〜90質量%であることを特徴とする、請求項1〜12のいずれか一項に記載の接着性促進組成物。
【請求項14】
前記接着性促進組成物が少なくとも一つの充填材を更に含むことを特徴とする、請求項1〜13のいずれか一項に記載の接着性促進組成物。
【請求項15】
前記接着性促進組成物の合計質量に基づいて、下記の成分が下記の量であることを特徴とする、請求項1〜14のいずれか一項に記載の接着性促進組成物:
フィルム形成樹脂が1〜30質量%、
芳香族ポリイソシアネートが0.01〜40質量%、
溶媒が10〜90質量%、
式(I)のイソシアヌレートが0.1〜10質量%、
脂肪族ポリイソシアネートが0〜20質量%、
式R―Si(R(OR3―aのシランが0〜5質量%、及び
充填材が0〜20質量%。
【請求項16】
接着剤及び封止剤の、ガラス又はガラスセラミックに対する接着性を改善するための、請求項1〜15のいずれか一項に記載の接着性促進組成物の使用。
【請求項17】
請求項1〜15のいずれか一項に記載の接着性促進組成物でコーティングした基材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接着性促進組成物、並びに接着剤及び封止剤のためのプライマーとしてのそれらの使用の分野に関する。
【背景技術】
【0002】
接着性促進組成物は、様々な基材に対する接着剤及び封止剤の接着性を改善するために、長い間使用されてきた。接着性促進組成物の使用は自動車産業の分野で広範囲にわたっているように、接着性の特に高い要求は、自動車産業における接着にある。
【0003】
例えば、米国特許出願公開第2008/0268261号明細書A1は、特に自動車工行においてフロントガラスを接着する際に使われる、ガラス基材のための接着性促進組成物を記載している。そのような組成物は、単一成分及び二成分ポリウレタンの接着剤又は封止剤の、ガラス基材上への良好な接着特性を与える。しかしながら、そのような組成物の短所は、多くの場合、熱安定性において、及び低温領域における接着性結合の安定性において、弱点を有するということである。
【0004】
それに加えて、国際公開第2008/087175号A1は、優れた接着特性を有するだけでなく、良好な熱安定性及び低温領域における接着性結合の安定性も有する、ポリマー基材のための接着性促進組成物を記載している。しかしながら、そのような組成物は、ガラス及びガラスセラミックスに対する接着性を改善するためには適していない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従って、本発明の目的は、ガラス及びガラスセラミックスに対する接着性の改善につながり、また、良好な熱安定性及び低温領域における接着性結合の安定性を有する、接着剤組成物を利用可能とすることである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
驚くべきことに、この目的は、下記の〈1〉項に従う接着性促進組成物によって達成されることが分かった。
【0007】
本発明の接着性促進組成物は、驚くべきことに、ガラス及びガラスセラミックスに対する優れた接着性、並びに同時に高温及び低温領域において接着性結合の非常に良好な安定性を有することによって特徴づけられる。
【0008】
本発明の更なる側面は、下記の更なる独立の発明主題である。本発明の特に好ましい実施形態は、下記の従属の発明主題である。
〈1〉下記を含有している、接着性促進組成物:
少なくとも一つのフィルム形成樹脂、
少なくとも一つの芳香族ポリイソシアネート、
少なくとも一つの溶媒、及び
下式(I)の少なくとも一つのイソシアヌレート:
【化1】
(Rは、互いに独立して、任意に一つ以上のC―C多重結合を有し、かつ/又は任意に脂環式及び/若しくは芳香族部分を有する、炭素原子数1〜12の直鎖又は分岐鎖の一価炭化水素基を表し、
は、互いに独立して、任意に一つ以上のヘテロ原子を有し、任意に一つ以上のC―C多重結合を有し、かつ/又は任意に脂環式及び/若しくは芳香族部分を有する、炭素原子数1〜12の直鎖又は分岐鎖の一価炭化水素基を表し、
aは0、1、又は2の値を表し、
は、互いに独立して、任意に一つ以上のヘテロ原子を有し、任意に一つ以上のC―C多重結合を有し、かつ/又は任意に脂環式及び/若しくは芳香族部分を有する、炭素原子数1〜12の直鎖又は分岐鎖の二価炭化水素基を表す)。
〈2〉前記フィルム形成樹脂がポリエステル樹脂であることを特徴とする、上記〈1〉項に記載の接着性促進組成物。
〈3〉前記ポリエステル樹脂が、前記接着性促進組成物中の芳香族ポリイソシアネートのイソシアネート基と反応した少なくとも一つのヒドロキシル基を有することを特徴とする、上記〈2〉項に記載に記載の接着性促進組成物。
〈4〉前記ポリエステル樹脂が、3000〜100,000g/molの分子量、及び1〜10mgKOH/gの平均OH数を有することを特徴とする、上記〈2〉又は〈3〉項に記載のいずれか一項に記載の接着性促進組成物。
〈5〉少なくとも一つの芳香族ポリイソシアネートが、少なくとも1つのホスフェート基、チオホスフェート基、又はチオホスファン基を有する芳香族ポリイソシアネートであることを特徴とする、上記〈1〉〜〈4〉項に記載のいずれか一項に記載の接着性促進組成物。
〈6〉少なくとも1つのホスフェート基、チオホスフェート基、又はチオホスファン基を有する前記芳香族ポリイソシアネートが、トリス(p―イソシアナトフェニル)チオホスフェートであることを特徴とする、上記〈1〉〜〈5〉項のいずれか一項に記載の接着性促進組成物。
〈7〉前記接着性促進組成物が、少なくとも2つの芳香族ポリイソシアネートを含み、そのうちの少なくとも1つが、少なくとも1つのホスフェート基、チオホスフェート基、又はチオホスファン基を有する芳香族ポリイソシアネートであることを特徴とする、上記〈1〉〜〈6〉項に記載のいずれか一項に記載の接着性促進組成物。
〈8〉式(I)の前記イソシアヌレートにおいて、aが0の値を表し、かつ/又はRが、互いに独立して、メチル、エチル、又はイソプロピル基を表すことを特徴とする、上記〈1〉〜〈7〉項に記載のいずれか一項に記載の接着性促進組成物。
〈9〉式(I)の前記イソシアヌレートのRが、炭素原子数1〜6の直鎖アルキレン基を表すことを特徴とする、上記〈1〉〜〈8〉項に記載のいずれか一項に記載の接着性促進組成物。
〈10〉前記接着性促進組成物が少なくとも一つの脂肪族ポリイソシアネートを更に含むことを特徴とする、上記〈1〉〜〈9〉項に記載のいずれか一項に記載の接着性促進組成物。
〈11〉前記接着性促進組成物が、式R―Si(R(OR3−aの少なくとも1つのシランを更に含み、
は、任意にイソシアネート基と反応する官能基である、少なくとも一つの官能基を有するアルキル基を表し、かつ
前記シランの前記官能基は任意に、前記接着性促進組成物中に存在する芳香族又は脂肪族のポリイソシアネートのイソシアネート基と反応して、付加体を形成していること
を特徴とする、上記〈1〉〜〈10〉項に記載のいずれか一項に記載の接着性促進組成物。
〈12〉前記溶媒の量が、前記接着性促進組成物の合計質量に基づいて10〜90質量%であることを特徴とする、上記〈1〉〜〈11〉項に記載のいずれか一項に記載の接着性促進組成物。
〈13〉前記接着性促進組成物が少なくとも一つの充填材を更に含むことを特徴とする、上記〈1〉〜〈12〉項に記載のいずれか一項に記載の接着性促進組成物。
〈14〉前記接着性促進組成物の合計質量に基づいて、下記の成分が下記の量であることを特徴とする、上記〈1〉〜〈13〉項に記載のいずれか一項に記載の接着性促進組成物:
フィルム形成樹脂が1〜30質量%、
芳香族ポリイソシアネートが0.01〜40質量%、
溶媒が10〜90質量%、
式(I)のイソシアヌレートが0.1〜10質量%、
脂肪族ポリイソシアネートが0〜20質量%、
式R―Si(R(OR3―aのシランが0〜5質量%、及び
充填材が0〜20質量%。
〈15〉接着剤及び封止剤の、ガラス又はガラスセラミックに対する接着性を改善するための、上記〈1〉〜〈14〉項に記載のいずれか一項に記載の接着性促進組成物の使用。
〈16〉上記〈1〉〜〈14〉項に記載のいずれか一項に記載の接着性促進組成物でコーティングした基材。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明は、下記を含む接着性促進組成物に関する:
少なくとも一つのフィルム形成樹脂、
少なくとも一つの芳香族ポリイソシアネート、
少なくとも一つの溶媒、及び、
下式(I)の少なくとも一つのイソシアヌレート:
【0010】
【化1】
【0011】
基は、互いに独立して、任意に一つ以上のC―C多重結合を有し、かつ/又は任意に脂環式及び/若しくは芳香族部分を有する、炭素原子数1〜12の直鎖又は分岐鎖の一価炭化水素基を表す。
【0012】
基は、互いに独立して、任意に一つ以上のヘテロ原子を有し、任意に一つ以上のC―C多重結合を有し、かつ/又は任意に脂環式及び/若しくは芳香族部分を有する、炭素原子数1〜12の直鎖又は分岐鎖の一価炭化水素基を表す。
【0013】
添字aは、互いに独立して、0、1、又は2の値を表す。
【0014】
基はそれぞれ、互いに独立して、任意に一つ以上のヘテロ原子を有し、任意に一つ以上のC―C多重結合を有し、かつ/又は任意に脂環式及び/若しくは芳香族部分を有する、炭素原子数1〜12の直鎖又は分岐鎖の二価炭化水素基を表す。
【0015】
「ポリ」から始まる物質名、例えば本明細書中のポリオール又はポリイソシアネートは、一分子当たりにそれらの名に存在する官能性基を形式的に二つ以上含む材料を指す。
【0016】
本明細書中の用語「ポリマー」は、一方では、化学的に均一であるが、重合度、分子量、及び鎖長に関して異なる一群の高分子を含み、これらの高分子はポリ反応(重合、重付加、重縮合)によって合成されたものである。一方では、用語ポリマーはまた、そのようなポリ反応の一群の高分子の誘導体、すなわち、例えば、所定の高分子上の官能基の付加又は置換反応によって得られる化合物を含み、これらは化学的に均一であってもよく又は化学的に不均一であってもよい。この用語はまた、いわゆるプレポリマー、すなわち、反応性オリゴマー前付加体であって、これらの官能基が高分子の合成に関与する反応性オリゴマー前付加体を含む。
【0017】
用語「ポリウレタンポリマー」は、いわゆるポリイソシアネート重付加プロセスによって合成した全てのポリマーを含む。これはまた、ウレタン基がほとんど又は完全にないポリマーを含む。ポリウレタンポリマーの例としては、ポリエーテルポリウレタン、ポリエステルポリウレタン、ポリエーテルポリウレア、ポリウレア、ポリエステルポリウレア、ポリイソシアヌレート、及びポリカルボジイミドが挙げられる。
【0018】
本明細書中の用語「シラン」及び/又は「有機シラン」は、一方では、Si―O結合によって、少なくとも1つの、通常は2つ又は3つのアルコキシ基又はアシルオキシ基がケイ素原子と直接結合しており、かつ他方では、Si―C結合によって少なくとも1つの有機基がケイ素原子と直接結合している化合物を指す。当業者は、有機アルコキシシラン及び/又は有機アシルオキシシランのようなシランも知っている。
【0019】
有機シランは、有機基がアミノ基、メルカプト基、及び/又はエポキシ基を含む、「アミノシラン」、「メルカプトシラン」、又は「エポキシシラン」としても知られている。
【0020】
用語「分子量」は、本明細書において、平均分子量Mn(数平均)を指すものと常に理解される。
【0021】
本発明の接着性促進組成物は、少なくとも一つのフィルム形成樹脂を含む。適切な樹脂としては、例えばポリ(メタ)アクリレート、エポキシ、ポリエステル、ポリエーテルポリエステル、ポリ塩化ビニル、塩化ゴム、エチレン酢酸ビニル、及びこれらと同種のもの、並びにこれらの組み合わせのような樹脂が挙げられる。
【0022】
フィルム形成樹脂は、特にポリエステル樹脂である。ポリエステル樹脂は、好ましくは少なくとも一つのヒドロキシル基を有する。それは、好ましくは非晶質であり、室温において固体である。環球法で測定したポリエステル樹脂の融点(メルトフロー)は、典型的に140℃より高く、特に150℃〜160℃の範囲である。それに加えて、ポリエステル樹脂は、好ましくは25℃において70〜85、特に75〜85、特に77〜82のショアD硬度を有する。
【0023】
少なくとも一つのジカルボン酸と、少なくとも一つのグリコールとから合成したポリエステル樹脂が適切である。ポリエステル樹脂は、好ましくは3,000〜100,000g/mol、特に15,000〜40,000g/molの分子量を有する。
【0024】
それに加えて、ポリエステル樹脂は、好ましくは1〜10mgKOH/g、特に2〜9mgKOH/g、好ましくは3〜6mgKOH/gの平均OH数を有する。
【0025】
ポリエステル樹脂として特に好ましいものは、Bostik社からのVitel(商標)2000の製品ラインとして商業上入手可能である。特に、これらとしては、Vitel(商標)2100、Vitel(商標)2180、Vitel(商標)2190、Vitel(商標)2000、Vitel(商標)2200、Vitel(商標)2300、及びVitel(商標)2700が挙げられる。特に好ましいものとして、Vitel(商標)2200、及びVitel(商標)2200Bが挙げられる。
【0026】
それに加えて、接着性促進組成物は、少なくとも一つの芳香族ポリイソシアネートもまた含む。これは、特に芳香族ジイソシアネート、例えば2,4―及び2,6―トルイレンジイソシアネート(TDI)、4,4’―、2,4’―、及び2,2’―ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、1,3―、及び1,4―フェニレンジイソシアネート、2,3,5,6―テトラメチル―1,4―ジイソシアネートベンゼン、ナフタレン 1,5―ジイソシアネート(NDI)、又は3,3’―ジメチル―4,4’―ジイソシアネートジフェニル(TODI)である。
【0027】
それに加えて、芳香族ポリイソシアネートは、少なくとも一つのホスフェート基、チオホスフェート基、又はチオホスファン基を有する芳香族ポリイソシアネートでもよい。少なくとも一つのホスフェート基、チオホスフェート基、又はチオホスファン基を有する芳香族ポリイソシアネートは、特に、Bayer Material Science社から、商品名Desmodur(商標)RFEで入手可能なものである、トリス(p―イソシアネートフェニル)チオホスフェートである。
【0028】
例えば、上記の芳香族ポリイソシアネートのオリゴマー及びポリマー、それらのビウレット、イソシアヌレート、及び/又は二価若しくは多価低分子アルコールとそれらの付加体、並びに上記のポリイソシアネートの任意の混合物もまた、芳香族ポリイソシアネートとして適切である。
【0029】
例えば、適切な二価又は多価の低分子アルコールとしては、1,2―エタンジオール、1,2―及び1,3―プロパンジオール、ネオペンチルグリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、異性体のジプロピレングリコール及びトリプロピレングリコール、異性体のブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、ヘプタンジオール、オクタンジオール、ノナンジオール、デカンジオール、ウンデカンジオール、1,3―及び1,4―シクロヘキサンジメタノール、水素化ビスフェノールA、二量体脂肪アルコール、1,1,1―トリメチロールエタン、1,1,1―トリメチロールプロパン、グリセロール、ペンタエリスリトール、糖アルコール、例えばキシリトール、ソルビトール、又はマンニトール、糖、例えばスクロース、他のより多価のアルコール、上記の二価及び多価アルコールの低分子アルコキシ化生成物、並びに上記のアルコールの混合物が挙げられる。他の適切な二価又は多価の低分子アルコールとしては、2〜10、特に2〜4の官能価、及び特に50〜2500g/molの分子量を有するポリオール、例えばポリエーテル、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリオレフィンポリオールが挙げられる。
【0030】
芳香族ポリイソシアネートの、二価又は多価の低分子アルコールとの好ましい付加体は、特に300〜30,000g/mol、好ましくは500〜5000g/mol、最も好ましくは500〜3000g/molの分子量を有する。
【0031】
例えば、そのような芳香族ポリイソシアネートは、Dow Chemical Company社からの商品名Echelon(商標)MP100及びMP400タイプの製品、Bayer Material Science社からのDesmodur(商標)E14、E15、E21、E22、E23、及びLタイプの製品、並びにChemtura Corporation社からのAdiprene(商標)LF、LFM、及びLFP製品として商業的に入手可能である。
【0032】
本発明の接着性促進組成物の製造において、本発明の接着性促進組成物中に用いる芳香族ポリイソシアネートの量は、接着性促進組成物の合計に基づいて、好ましくは0.01〜40質量%、特に0.1〜30質量%、好ましくは1〜20質量%である。
【0033】
好ましい実施形態において、接着性促進組成物は少なくとも2つの芳香族ポリイソシアネートを含み、そのうち少なくとも1つは、少なくとも1つのホスフェート基、チオホスフェート基、又はチオホスファン基を有する芳香族ポリイソシアネートである。
【0034】
接着性促進組成物が、少なくとも2つの芳香族ポリイソシアネートを含み、そのうち少なくとも1つが、少なくとも1つのホスフェート基、チオホスフェート基、又はチオホスファン基を有する芳香族ポリイソシアネートである場合、少なくとも1つのホスフェート基、チオホスフェート基、又はチオホスファン基を有する芳香族ポリイソシアネートを、本発明の接着性促進組成物の製造において本発明の接着性促進組成物中で使用する量は、接着性促進組成物の合計に基づいて、好ましくは0.01〜20質量%、特に0.1〜12質量%、好ましくは1〜8質量%である。
【0035】
それに加えて、接着性促進組成物は、少なくとも一つの脂肪族ポリイソシアネートを含んでもよい。これは、特に脂肪族ジイソシアネート、例えば1,6―ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、2―メチルペンタメチレン−1,5―ジイソシアネート、2,2,4―及び2,4,4―トリメチル―1,6―ヘキサメチレンジイソシアネート(TMDI)、1,12―ドデカメチレンジイソシアネート、リシン、及びリシンエステルジイソシアネート、シクロヘキサン−1,3―ジイソシアネート、シクロヘキサン―1,4―ジイソシアネート、1―イソシアナト―3,3,5―トリメチル―5―イソシアナトメチルシクロヘキサン(=イソホロンジイソシアネート、又はIPDI)、ペルヒドロ―2,4’―ジフェニルメタンジイソシアネート、及びペルヒドロ―4,4’―ジフェニルメタンジイソシアネート、1,4―ジイソシアナト―2,2,6―トリメチルシクロヘキサン(TMCDI)、1,3―及び1,4―ビス―(イソシアナトメチル)―シクロヘキサン、m―及びp―キシリレンジイソシアネート(m―及びp―XDI)、m―及びp―テトラメチル―1,3―キシリレンジイソシアネート、m―及びp―テトラメチル―1,4―キシリレンジイソシアネート、ビス―(1―イソシアナト―1―メチルエチル)ナフタレン、上記のポリイソシアネートのオリゴマー及びポリマー、それらのビウレット、又はイソシアヌレート、並びに上記のポリイソシアネートの任意の混合物である。
【0036】
例えば、上記の脂肪族ポリイソシアネートと、二価又は多価の低分子アルコール、例えば上記に開示した二価又は多価の低分子アルコールとの付加体は、上記のポリイソシアネートの任意の混合物との付加体と並んで、脂肪族ポリイソシアネートとして適切である。
【0037】
脂肪族ポリイソシアネートと二価又は多価の低分子アルコールとの好ましい付加体は、特に300〜30,000g/mol、好ましくは500〜5000g/mol、最も好ましくは500〜3000g/molの分子量を有する。
【0038】
例えば、そのような脂肪族ポリイソシアネートは、Bayer Material Science社からの商品名Desmodur(商標)XP2617、XP2599、及びE305、Chemtura Corporation社からのAdiprene(商標)LFH製品、並びにIncorez社からのIncorez700製品として商業的に入手可能である。
【0039】
本発明の接着性促進組成物の合成において用いる、脂肪族ポリイソシアネートの比率は、接着性促進組成物の合計に基づいて、好ましくは0〜20質量%、特に0.1〜20質量%、好ましくは1〜10質量%となる。
【0040】
接着性促進組成物は、好ましくは、接着性促進組成物中に、少なくとも一つのヒドロキシル基を有するフィルム形成樹脂として、ポリエステル樹脂を含み、それによって少なくとも一つのヒドロキシル基が、接着性促進組成物中のイソシアネート基を含む成分のイソシアネート基と反応するようにする。特に、好ましいポリエステル樹脂の少なくとも一つのヒドロキシル基は、芳香族ポリイソシアネートのイソシアネート基、好ましくは少なくとも1つのホスフェート基、チオホスフェート基、又はチオホスファン基を有する芳香族ポリイソシアネートのイソシアネート基と共に、接着性促進組成物中に存在する。
【0041】
本発明の接着性促進組成物の合成において使用するポリエステル樹脂の比率は、接着性促進組成物の合計に基づいて、好ましくは1〜30質量%、特に2〜20質量%、好ましくは7〜10質量%である。
【0042】
それに加えて、本発明は、上記の式(I)の、少なくとも一つのイソシアヌレートを含む。
【0043】
式(I)のイソシアヌレートは、好ましくは、添字aが0の値を表し、かつ/又はR基がそれぞれ、互いに独立して、メチル、エチル、又はイソプロピル基を表すものである。それに加えて、Rはアシル基を表してもよい。特に、aは0を表し、かつRはメチル基を表す。
【0044】
適切なイソシアヌレートは、例えば、ポリイソシアネート、特にジイソシアネートのイソシアヌレートと、イソシアネート基と反応する少なくとも一つの官能基を有するシランとの反応から合成することができる。これは、特にアミノシラン、又はメルカプトシランである。
【0045】
好ましいイソシアヌレートは、イソシアナトシランのイソシアヌレートである。これらは好ましくは、式(I)のイソシアヌレートが得られるような、直鎖脂肪族イソシアナトシランであり、ここで、R基は、炭素原子数1〜6の直鎖アルキレン基を表す。
【0046】
基は、好ましくは炭素原子数3の直鎖アルキレン基を表す。
【0047】
3―イソシアナトプロピルトリアルコキシシラン、例えば3―イソシアナトプロピルトリメトキシシランのイソシアヌレートが最も好ましい。
【0048】
式(I)のイソシアヌレートの合成のための好ましい出発物質は、3―イソシアナトプロピルトリアルコキシシランである。これは、このような出発物質が、より短いアルキレン基を有するイソシアナトシラン、すなわち例えばα―イソシアナトシランと比較すると、反応性が低く、したがってより扱いが容易であるという理由による。炭素原子数3以上のアルキレン基を有するイソシアナトシランと比較した利点は、3―イソシアナトプロピルトリアルコキシシランの商業上の入手可能性である。
【0049】
イソシアナトシランから得られるイソシアヌレートの利点は、例えば、ジイソシアネートとアミノシランから得られるイソシアヌレートと比較して、特に、前者が合成しやすいという事実から成る。イソシアナトシランから出発するイソシアヌレートは、典型的に、高温及び特定の触媒の存在下で合成する。当業者は、そのような合成プロセスに精通している。
【0050】
例えば、式(I)の特に好ましいイソシアヌレートは、Momentive Performance Materials社から商品名Silquest(商標)A―Link 597として商業上入手可能である。
【0051】
式(I)のイソシアヌレートの比率は、接着性促進組成物の合計の、好ましくは0.1〜10質量%、特に1%〜10質量%、好ましくは3%〜6質量%である。
【0052】
接着性促進組成物は、少なくとも1つの溶媒を更に含む。使用する溶媒としては、特にエーテル、ケトン、エステル、又は炭化水素、好ましくはジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、メチルエチルケトン、アセトン、キシレン、トルエン、又はアセテート、特に酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、メトキシブチルアセテート、又はメトキシプロピルアセテートが挙げられる。
【0053】
異なる溶媒の混合物を使用することは十分可能であり、有利でさえある。
【0054】
溶媒の比率は、接着性促進組成物の合計の、特に10〜90質量%、好ましくは40〜80質量%である。
【0055】
接着性促進組成物は、好ましくは、式R―Si(R(OR3−aの少なくとも1つのシランも含む。
【0056】
及びR基、並びに添字aは、互いに独立して、すでに上記のような基及び/又は値を表す。
【0057】
基は、任意にイソシアネート基と反応する官能基である、少なくとも一つの官能基を有するアルキル基を表す。官能基は、特にエポキシ基、(メタ)アクリレートエステル基、アミン基、メルカプト基、又はビニル基である。
【0058】
本発明による接着性促進組成物の合成において用いる、式R―Si(Ra(OR3−aのシランの比率は、接着性促進組成物の合計に基づいて、好ましくは0〜5質量%、特に0.1〜3質量%、好ましくは0.5%〜1.5質量%となる。
【0059】
官能基がイソシアネート基と反応するものである場合、これは任意に、接着性促進組成物中に存在する芳香族又は脂肪族のポリイソシアネートのイソシアネート基と反応して、付加体を形成する。
【0060】
特に、上記のように、イソシアネート基と反応する官能基を有するシランと脂肪族ポリイソシアネートとの反応生成物である付加体が、接着性促進組成物中に存在する。
【0061】
接着性促進組成物は、好ましくは、少なくとも一つの充填材を更に含む。適切な充填材としては、有機及び無機充填材、例えば、脂肪酸、特にステアリン酸によって任意に被覆されている、天然、粉砕、又は沈降炭酸カルシウム、硫酸バリウム、焼成カオリン、酸化アルミニウム、水酸化アルミニウム、ケイ酸、特に熱分解プロセスからの高分散ケイ酸、カーボンブラック、特に産業的に製造されたカーボンブラック、PVC粉末又は中空ビーズが挙げられる。様々な充填材の混合物を使用することは十分可能であり、有利でさえある。接着性促進組成物は、最も好ましくは充填材としてカーボンブラックを含む。
【0062】
充填材の比率は、接着性促進組成物の合計の、特に0〜20質量%、好ましくは1〜15質量%である。
【0063】
それに加えて、本発明による接着性促進組成物は、好ましくは、イソシアネート基の反応を加速する少なくとも一つの触媒もまた含む。適切な触媒としては、例えば、有機スズ化合物、例えばジブチルスズジラウレート、二塩化ジブチルスズ、ジブチルスズジアセチルアセトネート、有機ビスマス化合物、又はビスマス錯体、又はアミン基を含む化合物、例えば、2,2’―ジモルホリノジエチルエーテル、又は1,4―ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン、又はポリウレタン化学において一般に用いられる他の触媒が挙げられる。
【0064】
触媒の比率は、接着性促進組成物の合計の、特に0.01〜1質量%である。
【0065】
それに加えて、本発明の接着性促進組成物は、接着性促進組成物中のイソシアネート基を含む成分を架橋させるための、少なくとも一つの潜在的な硬化剤を含んでもよい。これらは特に、ポリアルジミン又はオキサゾリジンに基づく潜在的な硬化剤、好ましくはポリアルジミンに基づく潜在的な硬化剤である。これは例えば、国際公開第2009/080731号明細書A1においてポリアルジミンとして言及される。ここで、この文献は、この引用によってその内容の記載を本明細書の記載に含める。
【0066】
接着性促進組成物中において潜在的な硬化剤を使用する利点は、潜在的な硬化剤のないものと比較して、接着性促進組成物の接着性の増強を加速できるということである。一方では、これは、接着剤又は封止剤を適用するまでの接着性促進組成物のフラッシュ―オフ(flash−off)時間を低減でき、他方では、これは、約0〜20℃の低い温度範囲でさえ、及び/又は20%〜50%の低い大気中の相対湿度でさえ、接着性促進組成物の使用を可能にするという利点を有する。
【0067】
この特性は、特に、上記のように、低温領域の接着性結合の安定性に関して、非常に有利である。
【0068】
接着性促進組成物は、更なる成分、例えば乾燥剤、チキソトロピー剤、分散剤、湿潤剤、腐食抑制剤、他の粘着性促進剤、UV及び熱安定剤、願料、着色剤、及びUVインジケーターを含んでもよい。
【0069】
接着性促進組成物は、好ましくは、典型的に溶媒中に溶解しているフィルム形成樹脂から出発し、次いでイソシアネート基を含む化合物を加えることによって製造する。イソシアネート基を含む複数の化合物を使用する場合、すなわち、例えば、チオホスフェート基を有する芳香族ポリイソシアネート、及び脂肪族ポリイソシアネートを使用する場合、それらを、予め混合した形態で又は個々に順次に、溶解した樹脂に加えてもよい。
【0070】
代替の製造工程としては、イソシアネート基を含む化合物から出発して、次にフィルム形成樹脂を加えることが挙げられる。
【0071】
本発明の接着性促進組成物の調製は、特に個々の成分を組み合わせる順序に関して、どのような成分の付加体を所望するかに依存している。
【0072】
例えば、ヒドロキシル基を有するポリエステル樹脂と、少なくとも1つのホスフェート基、チオホスフェート基、又はチオホスファン基を有する芳香族ポリイソシアネートとの付加体を所望する場合、他のイソシアネート基含有成分を加える前に、これらの2つの成分を第一の工程において組み合わせる。
【0073】
例えば、脂肪族ポリイソシアネートと、イソシアネート基と反応する官能基を有するシランとの付加体を所望する場合に、同様のことがあてはまる。
【0074】
そのような付加体は、上記の触媒を使用して、高温で製造することができる。
【0075】
それに加えて、本発明は、接着剤及び封止剤の、特にポリウレタン接着剤及び封止剤の、ガラス及びガラスセラミックスへの接着性を改善するための、上記のような接着性促進組成物の使用に関する。本発明の接着性促進組成物は、特に、短いフラッシュ―オフ(flash−off)時間、すなわち15分未満での使用に適している。
【0076】
本発明の接着性促進組成物の利点は、従来技術と比較して、良好な熱安定性及び低温領域における接着性結合の安定性を有するとともに、ガラス及びガラスセラミックスに対する同等の又は改善された接着性を有するという事実から成る。
【0077】
接着性促進組成物は、布、フェルト、ローラー、吹付け、スポンジ、ペイントブラシ、浸漬被覆、又はこれらと同種のものを用いて適用することができ、手動で行ってもよく、又は自動プロセスで行ってもよい。
【0078】
それに加えて、本発明は、上記のような接着性促進組成物でコーティングした基材に関する。この基材は、特にガラス又はガラスセラミックスである。それは特に、例えば典型的に、自動車のフロントガラス及びウインドウにおいて使用されるガラス又はガラスセラミック、並びに/又は自動車のフロントガラス及びウインドウのエッジ領域において適用されるガラス又はガラスセラミックである。そのような基材の設計及び製造は、当業者によく知られている。
【0079】
基本的に、任意の単一成分又は多成分の接着剤を、接着剤又は封止剤として使用してもよい。好ましくは、水分硬化性の接着剤又は封止剤、特に大気中の湿度によって硬化する接着剤又は封止剤が使用される。これらは、典型的に、シラン基又はイソシアネート基で終端するポリマーを主成分とする接着剤又は封止剤である。
【0080】
接着性の有利な改善が、特にポリウレタン接着剤及び封止剤で、特にイソシアネート基を有するポリウレタンポリマーを含むポリウレタン接着剤で、明らかとなった。そのようなポリウレタン接着剤は、例えば、Sika Schweiz AG.社から、商品名Sikaflex(商標)又はSikaTack(商標)として、広く商業的に入手可能である。
【0081】
イソシアネート基で終端するポリウレタンポリマーを主成分とする適切な接着剤は、第一の成分がアミン又はポリオールであり、また、第二の成分がイソシアネート基又はポリイソシアネートを含むポリウレタンポリマーである二成分のポリウレタン接着剤であることもまた理解される。室温で硬化するそのような二成分のポリウレタン接着剤の例としては、Sika Schweiz AG.社から商業上入手可能なSikaForce(商標)タイプの製品のポリウレタン接着剤が挙げられる。
【0082】
イソシアネート基で終端するポリマーを主成分とする適切な接着剤が、反応性ポリウレタンホットメルト接着剤を含むことも理解される。ここで、この反応性ポリウレタンホットメルトタイプ接着剤は、熱可塑性樹脂のポリマー及びイソシアネート基で終端するポリマー、又はイソシアネート基で終端する熱可塑性樹脂のポリマーを含む。そのような反応性ポリウレタンホットメルト接着剤は溶融し、一方では冷却することで凝固し、他方では大気中の湿度との反応によって架橋する。例えば、そのような反応性ポリウレタンホットメルト接着剤は、Sika Schweiz AG.社から商品名SikaMelt(商標)として商業的に入手可能である。
【0083】
それに加えて、本発明は、上記のような接着性促進組成物を基材に対して適用し、そしてフラッシュ―オフ(flash−off)の後に接着剤又は封止剤を適用し、これを第二の基材と接触させることによって得られる、接着した又は封止した物品も含む。ここで、この第二の基材も任意に、接着性促進組成物及び/又は接着剤若しくは封止剤を具備している。
【0084】
これらの物品は好ましくは、輸送手段のフロントガラス及びウインドウ、特に自動車及びトラックのフロントガラス及びウインドウである。
【実施例】
【0085】
より詳細に本発明を説明すべき例示的な実施形態を以下に記載する。本発明は、当然、ここに記載する例示的な実施形態に限定されない。
【0086】
《接着性促進組成物の製造》
まず、表1に掲げる量に基づいて、Vitel(商標)2200Bを、メチルエチルケトン中に入れた。次に、連続的に撹拌しながら、Desmodur(商標)RFE、Voranate(商標)M580、Desmodur(商標)N3300、及び/又はSilquest(商標)A―Link597を、窒素雰囲気下で順番に加え、この混合物を30℃で1時間撹拌した。次に、この混合物を40℃に加熱して、NCO含有量が一定となるまで撹拌した。次にカーボンブラックを加えた。しっかりと封止できる金属缶内で、ガラスビーズを用いて組成物を混合し、次いでRed Devilシェーカーを用いて、封止しながら1時間混合した。
【0087】
【表1】
【0088】
《適用及び硬化》
接着性促進組成物を、それぞれブラシを用いて様々な基材に適用した。10分のフラッシュ―オフ(flash−off)時間の後、カートリッジプレス及びノズルを用いて、接着性促進組成物でコーティングした基材に対して、接着剤を丸いビーズとして適用した。接着剤は、室温(23℃)で適用した。
【0089】
次に、接着剤を23℃、及び50%の相対湿度で7日間硬化させ(「7dRT」)、ビーズの1/3を以下に記載する剥離試験によって試験した。次に、サンプルを、更に23℃で7日間、水中に置いた(「7dWL」)。次に、他の1/3のビーズについて、剥離試験によって接着性を試験した。その後、基材を更に相対湿度100%及び70℃のカタプラスミック(cataplasmic)気候に7日間暴露し(「7dCL」)、次いで最後の1/3のビーズの接着性を決定した。
【0090】
それと並列して、保管(「7dRT」)及び最初の1/3のビーズの接着性試験から始まり、サンプルを120℃で1日間保管し(「1d120℃」)、その後、他の1/3のビーズで接着性を試験した。同条件下で同じサンプルを再び保管した後、最後の1/3のビーズで接着性を試験した。
【0091】
それぞれRocholl社から商業上入手可能な、フロートガラス(空気側)、及びESG Ferro 14 251セラミックを基材として用いた。
【0092】
Sika Schweiz AG社のSikaflex(商標)250 HMA―3、及びSikaflex(商標)250 DP―2を、接着剤として使用した。
【0093】
《試験方法》
接着剤の接着性は、室温及び相対湿度50%において、「剥離試験」によって試験した。ビーズ末端において、接着剤表面の直上に切り込みを入れた。切り込まれたビーズの末端を、ラウンドノーズトングで保持して、基材から引き離した。これは、ビーズを慎重にトングの先端上へ巻き上げることにより、また、裸の基材に至るまでの切り込みを、ビーズを引く方向に対して垂直にすることにより行った。ビーズの剥離速度は、3秒毎に1回の切断が起こるように選択した。試験部分は、少なくとも8cmの長さでなければならない。ビーズを引き離した後に基材上に残っている接着剤を評価した(凝集破壊)。接着性領域の凝集性の構成要素を測定することによって、接着特性を評価した。
1は、95%以上が凝集破壊である。
2は、75〜95%が凝集破壊である。
3は、25〜75%が凝集破壊である。
4は、25%以下が凝集破壊である。
5は、0%が凝集破壊(純粋な粘着破壊)である。
評価の「P」は、基材からのプライマーの分離を意味する。凝集破壊が75%未満の値である試験結果は、不適当であるとみなす。
【0094】
引張剪断強度は、ISO4587/DIN EN 1465に従い、Zwick/Roell Z005引張試験機で決定し、それによって、基材(フロートガラス(空気側)100×40×6mm)を、基材(フロートガラス(空気側)75×25×6mm)に接着した(接着面積:12×25mm;接着層厚:4〜5mm;測定速度:20mm/min;温度:−40℃)。ブラシを使用して、接着性促進組成物を、両方の基材の接着面に適用した。接着した基材は、測定前に約20分間かけて−40℃の条件にした。
【0095】
【表2】
【0096】
【表3】
【0097】
【表4】