特許第6247106号(P6247106)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6247106
(24)【登録日】2017年11月24日
(45)【発行日】2017年12月13日
(54)【発明の名称】半導体装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 23/12 20060101AFI20171204BHJP
   H01L 25/00 20060101ALI20171204BHJP
   H01L 23/00 20060101ALI20171204BHJP
【FI】
   H01L23/12 B
   H01L25/00 B
   H01L23/00 C
【請求項の数】7
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2014-18663(P2014-18663)
(22)【出願日】2014年2月3日
(65)【公開番号】特開2015-146388(P2015-146388A)
(43)【公開日】2015年8月13日
【審査請求日】2016年9月9日
(73)【特許権者】
【識別番号】000190688
【氏名又は名称】新光電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】藤井 朋治
(72)【発明者】
【氏名】井原 義博
【審査官】 豊島 洋介
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−114192(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2009/0026560(US,A1)
【文献】 特開2013−046291(JP,A)
【文献】 特開2011−091436(JP,A)
【文献】 特開昭61−144094(JP,A)
【文献】 特開2013−179152(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L21/54
23/00−23/04
23/06−23/26
25/00−25/07
25/10−25/11
25/16−25/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに対向する第1面及び第2面と、前記第1面に形成されたキャビティと、前記キャビティの周囲の前記第1面に形成された電極パッドと、前記第1面に形成された高周波用の配線とを有する配線基板と、
前記キャビティ内に搭載された半導体素子と、
前記半導体素子と前記電極パッドとを接続するボンディングワイヤと、
前記第1面、前記半導体素子、前記ボンディングワイヤ、及び前記高周波用の配線の表面に沿って、膜状に設けられた第1の保護膜と、
前記第1面に取着され、前記半導体素子と前記ボンディングワイヤを覆うキャップと、
を有し、
前記高周波用の配線は前記キャップから露出していること、
を特徴とする半導体装置。
【請求項2】
前記高周波用の配線はアンテナであり、該アンテナは前記第1の保護膜により被覆されていること、
を特徴とする請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記配線基板の第1面と対向する第2面に形成された接続パッドと、
前記接続パッドを露出する開口部を有し、前記第2面を覆う第2の保護膜と、
を備えたことを特徴とする請求項1または2に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記配線基板の第1面と対向する第2面に形成された接続パッドと、
前記接続パッドを露出する開口を有し前記第2面を覆うソルダーレジスト膜と、
前記ソルダーレジスト膜を被覆する第2の保護膜と、
を備えたことを特徴とする請求項1または2に記載の半導体装置。
【請求項5】
前記第1の保護膜及び前記第2の保護膜と連続し、前記配線基板の側面を覆う第3の保護膜を備えたこと、
を特徴とする請求項またはに記載の半導体装置。
【請求項6】
前記配線基板は複数の配線層を有する多層配線基板であり、
前記高周波用の配線は、前記複数の配線層の配線と接続されて高周波用のアンテナを構成すること、
を特徴とする請求項1〜のいずれか一項に記載の半導体装置。
【請求項7】
前記第1の保護膜は、パラキシリレン系樹脂、アクリル系樹脂、フッ素樹脂の何れか1つの樹脂であることを特徴とする請求項1〜のいずれか一項に記載の半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、配線基板に半導体素子を搭載した半導体装置が知られている。ミリ波帯等の高周波回路を有する半導体素子(チップ)を搭載する配線基板には、高周波回路に接続されるアンテナが形成され、そのアンテナはボンディングワイヤを介して半導体素子に接続される。半導体素子及びボンディングワイヤは、配線基板に接着された凹状のキャップにより覆われる(たとえば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011−114192号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記のように、半導体素子及びボンディングワイヤをキャップで覆った半導体装置では、半導体素子を搭載した部分への水分等の浸入を十分に防止することが難しく、半導体素子の保護が不十分であった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一観点による半導体装置は、互いに対向する第1面及び第2面と、前記第1面に形成されたキャビティと、前記キャビティの周囲の前記第1面に形成された第1パッドと、前記第1面に形成された高周波用の配線とを有する配線基板と、前記キャビティ内に搭載された半導体素子と、前記半導体素子と前記第1バッドとを接続するボンディングワイヤと、前記第1面、前記半導体素子、前記ボンディングワイヤ、及び前記高周波用の配線の表面に沿って、膜状に設けられた第1の保護膜と、前記第1面に取着され、前記半導体素子と前記ボンディングワイヤを覆うキャップと、を有し、前記高周波用の配線は前記キャップから露出している
【発明の効果】
【0006】
本発明の一観点によれば、配線基板に半導体素子が搭載された半導体装置の信頼性を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】(a)は半導体装置の概略平面図、(b)は半導体装置の概略断面図。
図2】半導体装置の製造工程を説明するための概略断面図。
図3】半導体装置の製造工程を説明するための概略断面図。
図4】半導体装置の製造工程を説明するための概略断面図。
図5】半導体装置の製造工程を説明するための概略断面図。
図6】半導体装置の製造工程を説明するための概略断面図。
図7】別の半導体装置の概略平面図。
図8】別の半導体装置の概略断面図。
図9】別の半導体装置の概略断面図。
図10】(a)(b)は別の半導体装置の概略断面図。
図11】別の半導体装置の概略断面図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、一実施形態を添付図面を参照して説明する。
なお、添付図面は、部分的に拡大して示している場合があり、寸法,比率などは実際と異なる場合がある。また、断面図では、各部材の断面構造を分かりやすくするために、一部のハッチングを省略している。
【0009】
図1(a)に示すように、半導体装置10は、配線基板20と、半導体素子(チップ)31とを備えている。配線基板20は、たとえば矩形板状に形成されている。配線基板20には矩形状の凹部(キャビティ)21が形成され、この凹部21内に半導体素子31が実装されている。
【0010】
図1(b)に示すように、凹部21の深さは、半導体素子31の厚さとほぼ同じとなるように設定されている。つまり、凹部21は、配線基板20の上面20aと半導体素子31の上面31aがほぼ面一となるように形成されている。
【0011】
半導体素子31は、例えば、シリコンウエハに所要のデバイスプロセスを施して形成された複数のデバイスを各デバイス単位にダイシングして得られたシリコンチップ(「ダイ」ともいう。)である。この半導体素子31は、外部接続のための電極パッド(図示略)が形成されている上面31aを上にしたフェイスアップの態様で、凹部21内に搭載されている。例えば、半導体素子31は、凹部21の底面に塗布した導電性ペースト(エポキシ系樹脂等の熱硬化性樹脂にAgやCu等の金属微粒子を分散させてペースト状にしたもの)を半導体素子31を搭載後に硬化した接着剤により、凹部21内に固定されている。
【0012】
図1(a)に示すように、配線基板20の上面20aであって凹部21の周囲には複数(図では6個)の電極パッド22が形成されている。電極パッド22の材料は例えば銅、銅を含む合金である。半導体素子31の上面31aに形成された電極パッド(図示略)は、ボンディングワイヤ32を介して電極パッド22と接続されている。ボンディングワイヤ32の材料は、たとえば金(Au)である。
【0013】
配線基板20には、アンテナ23が形成されている。アンテナ23は、上記複数の電極パッド22のうちの1つの電極パッド22aに接続されている。この電極パッド22aは、ボンディングワイヤ32を介して半導体素子31に接続されている。したがって、半導体素子31は、ボンディングワイヤ32と電極パッド22を介してアンテナ23に接続されている。
【0014】
本実施形態において、配線基板20は、後述する複数の配線層を有する多層配線基板である。アンテナ23は、配線基板20の上面20aに形成された配線24と、配線基板20の内部に形成された複数の配線層の一部の配線と、これらの配線を接続するビアとにより構成されている。
【0015】
図1(a)では、配線基板20の上面20aの配線層(図1(b)に示す配線層54)が示されている。この配線層54は、上記の電極パッド22,22a、アンテナ23を構成する配線24、電極パッド22に接続された配線25、を含む。アンテナ23の配線24は、たとえば、半導体素子31が収容された凹部21に沿って延び中央部が電極パッド22に接続された配線部24aと、その配線部の両端から配線基板20の端部に向って延びる配線部24b,24c,を有している。
【0016】
配線基板20について説明する。
図1(b)に示すように、配線基板20はコア基板41を有している。
コア基板41は、例えば補強材であるガラスクロス(ガラス織布)にエポキシ樹脂を主成分とする熱硬化性の絶縁性樹脂を含浸させ硬化させた、いわゆるガラスエポキシ基板である。補強材としてはガラスクロスに限らず、例えばガラス不織布、アラミド織布、アラミド不織布、液晶ポリマ(Liquid Crystal Polymer:LCP)織布やLCP不織布を用いることができる。また、熱硬化性の絶縁性樹脂としては、エポキシ樹脂に限らず、例えばポリイミド樹脂やシアネート樹脂などの絶縁性樹脂を用いることができる。
【0017】
コア基板41は、上面41aと下面41bの間を貫通する貫通孔42a,42bを有している。貫通孔42a,42b内には、貫通電極43a,43bが形成されている。貫通電極43a,43bの材料は、たとえば銅や銅合金である。
【0018】
コア基板41の上面41aには配線層44が形成され、下面41bには配線層45が形成されている。これら配線層44,45は、貫通電極43a,43bを介して互いに電気的に接続されている。配線層44,45は、上記のアンテナ23を形成する配線44a,45aを含む。
【0019】
コア基板41の上面41a側には、絶縁層51,配線層52,絶縁層53,配線層54がこの順番で積層されている。絶縁層51,53の材料は、たとえばエポキシ樹脂やポリイミド樹脂等の絶縁性樹脂である。配線層52,54の材料は、たとえば銅である。配線層54は、図1(a)に示す配線24、配線25、電極パッド22,22aを含む。配線層52は、上記アンテナ23を形成する配線52aを含む。配線層52は絶縁層51を貫通するビア55を介して配線層44に接続されている。配線52aは絶縁層51を貫通するビア55aを介して配線44aに接続されている。配線層54は絶縁層53を貫通するビア56を介して配線層52に接続されている。配線24は絶縁層53を貫通するビア56aを介して配線52aに接続されている。
【0020】
同様に、コア基板41の下面41b側には、絶縁層61,配線層62,絶縁層63,配線層64がこの順番で積層されている。絶縁層61,63の材料は、たとえばエポキシ樹脂やポリイミド樹脂等の絶縁性樹脂である。配線層62,64の材料は、たとえば銅である。配線層62は、上記アンテナ23を形成する配線62aを含む。配線層62は絶縁層61を貫通するビア65を介して配線層45に接続されている。配線62aは絶縁層61を貫通するビア65aを介して配線45aに接続されている。配線層64は絶縁層63を貫通するビア66を介して配線層62に接続されている。
【0021】
上記の配線44a,45a,52a,62aを平面視した形状は、図1(a)に示す配線24の形状と等しい。なお、図1(b)では、配線24,52aを接続する1つのビア56aが示されているが、配線24,52aは複数のビア56aにより接続されている。他の配線44a,45a,62aについても同様に、複数のビア55a,65a、貫通電極43aにより接続されている。
【0022】
このように、各配線層54,52,44,45,62の一部の配線24,52a,44a,45a,62aと、それらを接続するビア56a,55a,65a及び貫通電極43aは、上記のアンテナ23を構成する。
【0023】
配線基板20と半導体素子31とボンディングワイヤ32は、保護膜71により被覆されている。図1(b)に示すように、配線基板20の上面20aは、保護膜71a(第1の保護膜)により被覆されている。この保護膜71aは、半導体素子31の表面、ボンディングワイヤ32を被覆する。さらに、保護膜71aは、半導体素子31が搭載された状態の凹部21において露出する底面21aと内側面21bを被覆する。そして、保護膜71aは、配線基板20の上面20a、半導体素子31、ボンディングワイヤ32、配線24の表面に沿って膜状に設けられている。配線基板20の下面20bは、保護膜71b(第2の保護膜)により被覆されている。そして、保護膜71bは、配線基板20の下面20b、配線層64の表面に沿って膜状に設けられている。また、図1(a)に示すように、配線基板20の側面20cは、保護膜71c(第3の保護膜)により被覆されている。保護膜71cは、配線基板20の側面20cに沿って膜状に設けられている。各保護膜71a〜71cは、連続的に形成されている。なお、図1(a)において、上面20a上の保護膜71aを省略している。
【0024】
保護膜71の材料は、たとえば、パラキシリレン系樹脂,アクリル系樹脂,フッ素樹脂である。これらの膜は、電気的に低誘電率であり、絶縁性を有している。また、保護膜71の誘電率は、配線基板20のコア基板41や絶縁層51,53,61,63の誘電率より低い。保護膜71(71a〜71c)の膜厚は、数μm(たとえば、1〜3μm)である。たとえば、パラキシリレン系樹脂の誘電率は、2〜3である。
【0025】
配線基板20の下面20bを覆う保護膜71bには、配線層64に対応し、その配線層64の一部を接続パッドP1として露出する開口部71Xが形成されている。接続パッドP1には、外部接続端子81が接続されている。外部接続端子81は、たとえばはんだボールである。
【0026】
上記の半導体装置10の作用を説明する。
図1(b)に示すように、配線基板20の上面20aと半導体素子31の上面31aとがほぼ同じ高さとなっている。したがって、短いボンディングワイヤ32により、半導体素子31と配線基板20に形成されたアンテナ23とを接続することができる。これにより、半導体素子31とアンテナ23との間において伝送される高周波信号の品質低下が抑制される。
【0027】
配線基板20の上面20a、半導体素子31の表面、ボンディングワイヤ32は、保護膜71により被覆されている。保護膜71は、低誘電率で絶縁性を有する膜である。そして、保護膜71の膜厚は、数μmである。このような保護膜71は、アンテナ23やボンディングワイヤ等の経路により伝達される高周波信号に対する影響が少ない。
【0028】
そして、配線基板20の上面20aに形成された配線層54,半導体素子31,ボンディングワイヤ32は、保護膜71により被覆されている。したがって、レジスト膜やキャップ等を用いることなく、配線層54,半導体素子31,ボンディングワイヤ32に対する水分等の異物の付着や酸化等を防止することができる。
【0029】
次に、上記の半導体装置の製造工程を説明する。
なお、各図において、工程の説明に必要な符号を付し、一部の符号を省略することがある。
【0030】
先ず、図2に示す構造を形成するまでの工程を説明する。
たとえばコア基板41となる銅張積層板に貫通孔42a,42bを形成し、電解めっきやペースト充填などの方法により貫通孔42a,42b内に貫通電極43a,43bを形成する。銅張積層板は、たとえばプリプレグの両面に銅箔を載せ、加熱加圧することで形成される。貫通孔42a,42bは、たとえばレーザ加工機やドリル機により形成される。続いて、たとえばサブトラクティブ法により、コア基板41の上面41aに配線層44を形成するとともに、コア基板41の下面41bに配線層45を形成する。配線層44,45はそれぞれアンテナを構成する配線44a,45aを含む。なお、配線層44,45を、例えばセミアディティブ法、アディティブ法により形成してもよい。
【0031】
次に、図3に示す構造を形成するまでの工程を説明する。
たとえばビルドアップ法により、絶縁層51,53,61,63、配線層52,54,62,64、ビア55,56,65,66を形成する。
【0032】
先ず、コア基板41の上面41aと配線層44を覆う絶縁層51を形成するとともに、コア基板41の下面41bと配線層45を覆う絶縁層61を形成する。絶縁層51,61は、たとえばコア基板41の上面41aと下面41bをそれぞれ樹脂フィルムにて覆い、その樹脂フィルムを硬化することにより形成される。樹脂フィルムの材料は、例えばエポキシ樹脂やポリイミド樹脂等の熱硬化性樹脂であり、例えばB−ステージ状態(半硬化状態)のものである。これらの樹脂フィルムを減圧雰囲気にてプレス装置等によりコア基板41の上面41aと下面41bとに向って加圧し、加熱して樹脂を硬化させることにより、絶縁層51,61が形成される。
【0033】
次に、絶縁層51,61に開口部を、たとえばレーザ加工機により形成する。次に、ビア55,55a,65,65a及び配線層52(配線52a),62(配線62a)を形成する。ビア55,55a,65,65a及び配線層52(配線52a),62(配線62a)は、たとえばセミアディティブ法により形成される。同様に、絶縁層51と配線層52(配線52a)を覆う絶縁層53を形成するとともに、絶縁層61と配線層62(配線62a)を覆う絶縁層63を形成する。それらの絶縁層53,63に開口部を形成し、ビア56,56a,66及び配線層54(配線24),64(配線64a)を形成する。これにより、上面20aと下面20bとにそれぞれ配線層54,64が露出した配線基板20が形成される。
【0034】
次に、図4に示すように、配線基板20の上面20aから、たとえばルータ加工機等による切削加工によって、半導体素子31(図1(b)参照)に対応する深さの凹部21を形成する。
【0035】
次に、図5に示すように、凹部21内に半導体素子31を搭載する。たとえば、凹部21の底面に導電性ペースト等の接着剤を塗布し、半導体素子31を搭載する。そして、接着剤を硬化することにより、半導体素子31を凹部21内に固定する。次に、半導体素子31の上面31aに形成されたパッド(図示略)と、配線基板20の上面20aに形成した電極パッド22,22aを、ボンディングワイヤ32により接続する。
【0036】
次に、図6に示すように、保護膜71を形成する。保護膜71は、真空プロセスにより形成される。たとえば、図5に示す構造体(配線基板20、半導体素子31及びボンディングワイヤ32)を真空チャンバーに収容し、その真空チャンバー内に反応性の高いガスを供給する。これにより、構造体(配線基板20,半導体素子31,ボンディングワイヤ32)に対し、その構造体の形状に応じた保護膜71が形成される。このとき、配線基板20の下面20bにおいて露出する配線層64の一部を、レジスト膜等のマスクにて覆い、保護膜71の形成後にマスクを除去する。これにより、保護膜71(71b)に開口部71Xを形成し、その開口部71Xから露出する配線層64を接続パッドP1とする。その接続パッドP1にはんだ等のペーストを塗布し、リフローして図1(b)に示す外部接続端子81を形成する。保護膜71は、高い耐熱性(たとえば、350℃以上)を有している。このため、外部接続端子81を形成するとき等のリフローの際の熱による影響を受けにくい。
【0037】
以上記述したように、本実施形態によれば、以下の効果を奏する。
(1)配線基板20の凹部(キャビティ)21には半導体素子31が搭載されている。配線基板20の上面20aにはアンテナ23の配線24が形成され、この配線24は電極パッド22aとボンディングワイヤ32を介して半導体素子31に接続されている。配線基板20の上面20aの配線24、半導体素子31、及びボンディングワイヤ32は、保護膜71(71a)により被覆されている。したがって、レジスト膜やキャップ等を用いることなく、配線層54,半導体素子31,ボンディングワイヤ32に対する水分等の異物の付着や酸化等を防止することができる。これにより、半導体装置10の信頼性を向上できる。
【0038】
(2)保護膜71(71a)は、低誘電率で絶縁性を有する膜である。そして、保護膜71の膜厚は、数μmである。このような保護膜71は、アンテナ23やボンディングワイヤ32等の経路により伝達される高周波信号に対する影響が少ない。そして、配線基板20の上面20aに形成された配線層54,半導体素子31,ボンディングワイヤ32は、保護膜71により被覆されている。したがって、レジスト膜やキャップ等を用いることなく、配線層54,半導体素子31,ボンディングワイヤ32に対する異物の付着や酸化等を防止することができる。したがって、キャップなどで半導体素子31及びボンディングワイヤ32を覆う必要がないため、半導体装置10を小型化することができる。
【0039】
(3)半導体装置10は、たとえば携帯電話などの電子機器に搭載される。このため、半導体装置10を搭載する電子機器の大型化を抑制することができる。
(4)配線基板20の上面20aと半導体素子31の上面31aとがほぼ同じ高さとなっている。したがって、短いボンディングワイヤ32により、半導体素子31と配線基板20に形成されたアンテナ23とを接続することができる。これにより、半導体素子31とアンテナ23との間において伝送される高周波信号の品質低下を抑制することができる。
【0040】
(別の実施形態)
尚、上記各実施形態は、以下の態様で実施してもよい。
・上記実施形態に対し、アンテナ23の形状を適宜変更してもよい。
【0041】
たとえば、図7に示すように、配線基板20に形成されたアンテナ23は、矩形枠状に形成された配線24を有している。なお、図示及び説明を省略するが、上記実施形態と同様に、アンテナ23は配線基板20内部の配線層の一部の配線を含み、それらの配線は、配線24と同様の形状に形成されている。このアンテナ23の配線は、電極パッド22aとボンディングワイヤ32を介して半導体素子31に接続されている。なお、アンテナの形状を例えば矩形状としてもよい。また、アンテナを構成する配線層の数を適宜変更してもよい。たとえば、配線基板20の上面に形成した配線層によりアンテナを構成してもよい。
【0042】
・上記実施形態において、凹部21の深さは、その凹部21に収容される半導体素子31の厚さに応じて設定されればよい。
したがって、図8に示す半導体装置100のように、複数の絶縁層51,53を貫通し、更にコア基板41を切削加工して凹部21を形成してもよい。このように形成した凹部(キャビティ)21によって半導体素子31の上面31aの高さを配線基板20の上面20aの高さとほぼ一致させ、短いボンディングワイヤ32によって半導体素子31と配線基板20の電極パッド22,22aとを接続し、半導体素子31とアンテナ23(配線24)とを接続することができる。
【0043】
・上記実施形態に対し、図9に示す半導体装置110のように、配線基板20の下面20bを覆うソルダーレジスト91を形成し、そのソルダーレジスト91を保護膜71により覆うようにしてもよい。保護膜71の誘電率は、ソルダーレジスト91の誘電率より低い。このように形成された半導体装置110は、上記実施形態と同様の効果を奏する。
【0044】
詳述すると、この半導体装置110は、配線基板20と、配線基板20の凹部21に実装された半導体素子31を有している。半導体素子31の上面31aに形成された電極パッド(図示略)は、ボンディングワイヤ32を介して、配線基板20の上面20aに形成された電極パッド22aに接続されている。配線基板20には、アンテナ23が形成され、そのアンテナ23に含まれる配線24は、電極パッド22aとボンディングワイヤ32を介して半導体素子31に接続されている。
【0045】
配線基板20は、コア基板41と、コア基板41の上面41aに積層された絶縁層51,53,配線層52,54と、コア基板41の下面41bに積層された絶縁層61,63、配線層62,64を有している。絶縁層63と配線層64はソルダーレジスト91により覆われている。ソルダーレジスト91は保護膜71(71b)により覆われている。ソルダーレジスト91と保護膜71(71b)には、配線層64の一部を接続パッドP1として露出する開口部91X,71Xが形成されている。ソルダーレジスト91の開口部91Xと保護膜71の開口部71Xは互いに同じ形状であり、たとえば配線層64の一部を覆うマスクを除去することにより形成される。接続パッドP1には外部接続端子81が形成されている。
【0046】
・上記実施形態に対し、コア基板41の上面41a側に積層した絶縁層と配線層の層数を適宜変更してもよい。同様に、コア基板41の下面41b側に積層した絶縁層と配線層の層数を適宜変更してもよい。
【0047】
・上記実施形態に対し、コア基板41を複数の絶縁層及び配線層により構成してもよい。その場合、アンテナ23は、コア基板を形成する各配線層の一部の配線を含み、それらの配線は図1(b)に示すビア55a,56a,65aと同様のビアや貫通電極43aにより電気的に接続される。
【0048】
図1(b)に示した、コア基板41の上面41a側の配線層及び絶縁層の層数は一例であり、適宜変更してもよい。同様に、コア基板41の下面41b側の配線層及び絶縁層の層数を適宜変更してもよい。
【0049】
・上記実施形態に対し、たとえば樹脂材を含む塗料をスプレーにて図5に示す構造体(配線基板20、半導体素子31、ボンディングワイヤ32)に吹き付け、それを硬化することにより保護膜71を形成してもよい。
【0050】
・上記実施形態に対し、保護膜71が覆う面を適宜設定してもよい。
たとえば、図10(a)に示す半導体装置120のように、配線基板20の側面20cを露出する、つまり図1(b)に示す保護膜71cを省略してもよい。たとえば、複数の半導体装置を形成する構造体の上面と下面に保護膜71(71a,71b)を形成し、その構造体を個片化して複数の半導体装置を形成する。このようにして形成された半導体装置においても、上記実施形態と同様の効果が得られる。
【0051】
また、図10(b)に示す半導体装置130のように、配線基板20の上面20aと半導体素子31とボンディングワイヤ32を保護膜71(71a)にて覆い、配線基板20の側面20cと下面20bを露出するようにしてもよい。また、側面20cを露出し下面20bを覆うソルダーレジストが露出するようにしてもよい。このようにして形成された半導体装置においても、上記実施形態と同様の効果が得られる。
【0052】
・上記実施形態に対し、半導体素子31やボンディングワイヤ32に対する接触を防止するようにしてもよい。
たとえば図11に示すように、半導体装置140は、キャップ141を有している。キャップ141は、半導体素子31及びボンディングワイヤ32より外側であって、保護膜71(71a)の上面に、接着剤142によって取着されている。キャップ141は、凹状に成形された中空状に形成され、半導体素子31及びボンディングワイヤ32を覆っている。そして、アンテナ23の配線24とこれを覆う保護膜71dは、キャップ141によって覆われることなく露出している。キャップ141の材料は、耐熱性を有する樹脂であり、たとえばエポキシ系樹脂である。接着剤142は、耐熱性を有する樹脂であり、例えばエポキシ系樹脂等の熱硬化性樹脂である。なお、保護膜71の誘電率は、キャップ141や接着剤142の誘電率より低い。キャップ141と接着剤142は、外部接続端子81を形成する際のリフロー温度(例えば、240〜260℃前後)に耐え得るものである。このキャップ141は、半導体素子31やボンディングワイヤ32に対して、半導体装置140外部からの接触等を防止する。半導体素子31やボンディングワイヤ32に対する接触は、半導体素子31の損傷やボンディングワイヤ32の断線の要因となる。したがって、キャップ141により、半導体装置140の信頼性向上を図ることができる。なお、キャップ141に対して配線24が露出するため、キャップ141はアンテナ23の特性に影響しない。
【0053】
なお、このようなキャップ141を、上記各形態に適用してもよい。たとえば、配線基板20の側面20cを覆う保護膜71cや下面20bを覆う保護膜71bを省略してもよい。また、下面20bをソルダーレジスト91(図9参照)にて覆うようにしてもよい。
【0054】
・上記実施形態に対し、コア基板41の材料を適宜変更してもよい。たとえば、ガラス、セラミック等の基板を用いてもよい。
【符号の説明】
【0055】
20 配線基板
20a 上面(第1面)
20b 下面(第2面)
20c 側面
22,22a 電極パッド
23 アンテナ
24 配線
21 凹部(キャビティ)
31 半導体素子
32 ボンディングワイヤ
44a,45a,52a,62a 配線
43a 貫通電極
55a,56a,65a ビア
71,71a〜71c 保護膜
71X 開口部
P1 接続パッド
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11