(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
アルコキシド法により、前記アルミニウム化合物を前記鉄化合物の表面に被覆させることを特徴とする請求項4に記載のリチウムイオン二次電池用正極活物質の製造方法。
【背景技術】
【0002】
近年、モバイル端末などに代表される小型の電子機器が広く普及しており、さらなる小型化、軽量化および長寿命化が強く求められている。市場要求に対し、特に小型かつ軽量で高エネルギー密度を得ることが可能な二次電池の開発が進められている。この二次電池は、小型の電子機器に限らず、自動車などに代表される大型の電子機器、家屋などに代表される電力貯蔵システムへの適用も検討されている。
【0003】
中でも、リチウムイオン二次電池は小型かつ高容量化が行いやすく、大いに期待されている。鉛電池、ニッケルカドミウム電池よりも高いエネルギー密度が得られるからである。
【0004】
リチウムイオン二次電池は、正極、負極、及び、セパレータと共に電解液を備えている。この正極、負極は充放電反応に関わる正極活物質、負極活物質を含んでいる。
【0005】
リチウムイオン二次電池の高容量化の歴史において、負極の容量アップはその大きな割合を占めている。これまでに、酸化珪素に代表されるような高容量の負極を、リチウムイオン二次電池活物質として用い、高容量の電極を得ているが、本発明者らがみる限りにおいては未だ初回充放電時における不可逆容量が大きく、改良する余地がある。
すなわち、不可逆容量が大きいために、充放電サイクルに伴って正極、負極間で動くリチウムイオン量が減少し、その本来持っている容量を十分に活用できないという現象が生じている。
【0006】
電池初期効率を向上させるために、酸化珪素に代表されるような高容量の負極を主材としたリチウムイオン二次電池の電極構成について様々な検討が成されてきた。
【0007】
負極の充放電効率の低下の際のリチウムイオンを補給するために、新たな正極活物質として、Li
5FeO
4で表されるリチウム鉄複合酸化物が提案されている(非特許文献1参照)。
また、特許文献1では、リチウム電池の正極活物質として、逆ホタル石型の結晶構造を有するリチウム含有多価金属酸化物(主成分がLi
6CoO
4、Li
5FeO
4、Li
6MnO
4からなる群より選ばれた1以上の化合物)が提唱されている。
さらに、特許文献2では、リチウム二次電池の正極活物質として、リチウムイオンを挿入・脱離可能である組成式がLi
5Mn
1−xFe
xO
4(0.3≦x<0.5)で表される複合酸化物を提案している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、本発明者らが検討したところ、非特許文献1で提案されているLi
5FeO
4の化合物は、塗料作成の際に塗料中の微量の水分と反応して、分解し、充放電容量が落ちてしまうという問題があることがわかった。
【0011】
また、特許文献1では、逆蛍構造のLi
5FeO
4が主成分となり正極を構成する、とあるが、Li
5FeO
4が正極の主成分となるとエネルギー密度の点で現状の電池に劣り、サイクル性能にも問題が生じることがわかった。
【0012】
さらに、特許文献2においてサイクル性能劣化を防ぐために提案されているLi
5Mn
xFe
1−xO
4のMnが主成分となるFeとの固溶体では、ヤーンテラーイオンである3価のMnが主成分となるため不安定であり、サイクル劣化が完全には抑えられないことがわかった。
【0013】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであって、酸化珪素のような高容量であるが初回充放電時における不可逆容量が大きい負極活物質をリチウムイオン二次電池の負極に用いた場合に、負極の不可逆容量が大きいために充放電サイクルに伴って正極、負極間で動くリチウムイオン量が減少しても、その減少を補うようにリチウムイオンを安定して適宜供給できる正極活物質及びその製造方法、並びにこの正極活物質を用いた正極を有するリチウムイオン二次電池を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記目的を達成するために、本発明は、リチウム鉄複合酸化物からなるリチウムイオン二次電池用正極活物質であって、前記リチウム鉄複合酸化物は、メジアン径が5.0μm以上、30μm以下であり、BET比表面積が200m
2/g以下であり、Li
xFe
1−yM
yO
z(4.5<x<5.5、0≦y≦0.5、3.5<z<4.5、MはFeを除く遷移金属元素、周期表の第2族、第13族、第14族及び第15族の元素から選ばれる1種以上の元素を示す)で表され、前記リチウム鉄複合酸化物をリチウムイオン二次電池の正極活物質として用いたときの初回充放電における充電容量と放電容量の差が500mAh/g以上のものであることを特徴とするリチウムイオン二次電池用正極活物質を提供する。
【0015】
このようなリチウムイオン二次電池用正極活物質であれば、負極活物質の不可逆容量が大きいことに起因して、充放電サイクルに伴って正極、負極間で動くリチウムイオン量が減少しても、その減少を補うようにリチウムイオンを安定して適宜供給することができ、正極、負極間で動くリチウムイオン量の減少に起因するサイクル特性の劣化を抑制することができる。
【0016】
このとき、前記リチウム鉄複合酸化物が、Niを50ppm以上含むことが好ましい。
リチウム鉄複合酸化物が、上記のような添加物を含有することで、良好なサイクル特性を得ることができる。
【0017】
このとき、前記リチウム鉄複合酸化物が、Cuを30ppm以上含むことが好ましい。
リチウム鉄複合酸化物が、上記のような添加物を含有することで、良好なサイクル特性を得ることができる。
【0018】
このとき、前記リチウム鉄複合酸化物が、アルミニウム化合物を含有していることが好ましい。
リチウム鉄複合酸化物が、上記のような添加物を含有することで、酸化珪素のような高容量の負極活物質を用いた場合に起こる正極の動作電位の上昇に起因するサイクル特性の劣化も抑制することができる。
【0019】
また、本発明は、上記のリチウムイオン二次電池用正極活物質を製造する方法であって、前記アルミニウム化合物を表面に被覆させた鉄化合物をリチウム化合物と混ぜて焼成することにより、前記リチウム鉄複合酸化物を形成することを特徴とするリチウムイオン二次電池用正極活物質の製造方法を提供する。
【0020】
このようにして、メジアン径が5.0μm以上、30μm以下であり、BET比表面積が200m
2/g以下であり、初回充放電における充電容量と放電容量の差が500mAh/g以上であり、アルミニウムを含有するリチウム鉄複合酸化物を製造することができる。
【0021】
このとき、アルコキシド法により、前記アルミニウム化合物を前記鉄化合物の表面に被覆させることができる。
このように、アルミニウム化合物を前記鉄化合物の表面に被覆させるために、アルコキシド法を好適に用いることができる。
【0022】
また、本発明は、上記のリチウムイオン二次電池用正極活物質を製造する方法であって、鉄化合物と前記アルミニウム化合物を混合し焼成した後に、更にリチウム化合物と混ぜて再焼成することにより、前記リチウム鉄複合酸化物を形成することを特徴とするリチウムイオン二次電池用正極活物質の製造方法を提供する。
【0023】
このようにして、メジアン径が5.0μm以上、30μm以下であり、BET比表面積が200m
2/g以下であり、初回充放電における充電容量と放電容量の差が500mAh/g以上であり、アルミニウムを含有するリチウム鉄複合酸化物を製造することができる。
【0024】
また、本発明は、リチウムイオン二次電池の負極活物質として用いたときに充放電効率が80%以下である負極活物質粒子を含有する負極と、上記のリチウムイオン二次電池用正極活物質を0.1質量%以上、40質量%以下含む正極とを有し、前記正極の電極密度が3.5g/cm
3より大きいことを特徴とするリチウムイオン二次電池を提供する。
【0025】
このような構成のリチウムイオン二次電池であれば、負極活物質の不可逆容量が大きいことに起因して、充放電サイクルに伴って正極、負極間で動くリチウムイオン量が減少しても、その減少を補うようにリチウムイオンを安定して適宜供給することができ、正極、負極間で動くリチウムイオン量の減少に起因するサイクル特性の劣化を抑制することができる。
【0026】
また、本発明は、酸化珪素(SiOx:0.5≦x<1.6)を含有する負極活物質粒子を含む負極と、上記のリチウムイオン二次電池用正極活物質を0.1質量%以上、40質量%以下含む正極とを有し、前記正極の電極密度が3.5g/cm
3より大きいことを特徴とするリチウムイオン二次電池を提供する。
【0027】
このような構成のリチウムイオン二次電池であれば、負極活物質の不可逆容量が大きいことに起因して、充放電サイクルに伴って正極、負極間で動くリチウムイオン量が減少しても、その減少を補うようにリチウムイオンを安定して適宜供給することができ、正極、負極間で動くリチウムイオン量の減少に起因するサイクル特性の劣化を抑制することができる。
【発明の効果】
【0028】
以上のように、本発明によれば、正極活物質を構成するリチウム鉄複合酸化物のメジアン径が5.0μm以上、30μm以下とし、BET比表面積が200m
2/g以下とし、正極の初回充放電における充電容量と放電容量の差を500mAh/g以上とすることで、負極活物質の不可逆容量が大きいことに起因して、充放電サイクルに伴って正極、負極間で動くリチウムイオン量が減少しても、その減少を補うようにリチウムイオンを安定して適宜供給することができ、正極、負極間で動くリチウムイオン量の減少に起因するサイクル特性の劣化を抑制することができる。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明について、実施態様の一例として、図を参照しながら詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
前述のように、酸化珪素に代表されるような高容量の活物質をリチウムイオン二次電池用負極活物質として用い、高容量の負極電極を得ているが、本発明者らがみる限りにおいては未だ初回充放電時における不可逆容量が大きく、負極の不可逆容量が大きいために、充放電サイクルに伴って正極、負極間で動くリチウムイオン量が減少し、その本来持っている容量を十分に活用できないという現象が生じている。
上記を考慮して、負極の充放電効率の低下の際にリチウムイオンを補給するために、正極活物質からリチウムイオンを供給する様々な検討が試みられているが、いずれも改善の余地があった。
【0030】
そこで、発明者らは、充放電サイクルに伴って正極、負極間で動くリチウムイオン量が減少しても、その減少を補うようにリチウムイオンを安定して適宜供給できる正極活物質について鋭意検討を重ねた。
その結果、リチウム鉄複合酸化物からなる正極活物質のメジアン径を5.0μm以上、30μm以下とし、BET比表面積を200m
2/g以下とし、正極の初回充放電における充電容量と放電容量の差を500mAh/g以上とすることで、充放電サイクルに伴う正極、負極間で動くリチウムイオン量の減少を補うようにリチウムイオンを安定して適宜供給でき、正極、負極間で動くリチウムイオン量の減少に起因するサイクル特性の劣化を抑制することができることを見出し、本発明をなすに至った。
【0031】
本発明のリチウムイオン二次電池用正極活物質を構成するリチウム鉄複合酸化物は、組成式がLi
xFe
1−yM
yO
zで表されるものである。ただし、式中xは、4.5<x<5.5、好ましくは4.7<x<5.3の範囲であり、yは、0≦y≦0.5、好ましくは0<y<0.5の範囲であり、zは、3.5<z<4.5の範囲であり、MはFeを除く遷移金属元素、周期表の第2族、第13族、第14族及び第15族の元素から選ばれる1種以上の元素(例えば、アルミニウム)を示している。
上記のリチウム鉄複合酸化物は、BET比表面積が200m
2/g以下であり、好ましくは100m
2/g以下、さらに好ましくは50m
2/g以下である。ここで、BET比表面積とは、BET法(窒素等の気体粒子を固体粒子に吸着させ、吸着した量から表面積を測定する方法)で求めた単位質量当たりの表面積を意味する。
また、上記のリチウム鉄複合酸化物の平均粒子径(メジアン径)は、5.0〜30μm、好ましくは15〜25μmである。ここで平均粒子径の基準は、体積基準である。
さらに、上記のリチウム鉄酸化物は、リチウムイオン二次電池の正極活物質として用いたときの初回の充電容量と放電容量の差が500mAh/g以上、好ましくは520mAh/g以上、さらに好ましくは530mAh/g以上である。
このようなリチウムイオン二次電池用正極活物質であれば、負極活物質の不可逆容量が大きいことに起因して、充放電サイクルに伴って正極、負極間で動くリチウムイオン量が減少しても、その減少を補うようにリチウムイオンを安定して適宜供給することができ、正極、負極間で動くリチウムイオン量の減少に起因するサイクル特性の劣化を抑制することができる。
【0032】
本発明の正極活物質を構成するリチウム鉄複合酸化物は、Niを好ましくは50ppm以上、より好ましくは100ppm以上、さらに好ましくは150ppm以上含む。
リチウム鉄複合酸化物が、上記のような添加物を含有することで、良好なサイクル特性を得ることができる。
【0033】
本発明の正極活物質を構成するリチウム鉄複合酸化物は、Cuを好ましくは30ppm以上、より好ましくは40ppm以上、さらに好ましくは50ppm以上含む。
リチウム鉄複合酸化物が、上記のような添加物を含有することで、良好なサイクル特性を得ることができる。
【0034】
本発明の正極活物質を構成するリチウム鉄複合酸化物は、アルミニウム化合物を含有していることが好ましい。
リチウム鉄複合酸化物が、上記のような添加物を含有することで、酸化珪素のような高容量の負極活物質を用いた場合に起こる正極の動作電位の上昇に起因するサイクル特性の劣化も抑制することができる。
【0035】
また、本発明の正極活物質は、リチウムイオン二次電池の負極活物質として用いたときに充放電効率が80%以下である負極活物質粒子を含有する負極を有するリチウムイオン二次電池に、好適に用いることができる。負極の充放電効率が80%以下であることに起因して、充放電サイクルに伴って正極、負極間で動くリチウムイオン量が減少しても、本発明の正極活物質であれば、その減少を補うようにリチウムイオンを安定して適宜供給することができるからである。
【0036】
また、本発明の正極活物質は、組成式がSiO
x(0.5≦x<1.6)で表される酸化珪素を負極活物質をとして含有する負極を有するリチウムイオン二次電池に、好適に用いることができる。上記の負極活物質を用いることに起因して、充放電サイクルに伴って正極、負極間で動くリチウムイオン量が減少しても、本発明の正極活物質であれば、その減少を補うようにリチウムイオンを安定して適宜供給することができるからである。
【0037】
本発明の正極活物質を構成するリチウム鉄複合酸化物は、鉄化合物及びアルミニウム化合物を混合し焼成した後、リチウム化合物と混ぜて再焼成することによって製造することができる。
このようにして、メジアン径が5.0μm以上、30μm以下であり、BET比表面積が200m
2/g以下であり、初回充放電における充電容量と放電容量の差が500mAh/g以上であり、アルミニウムを含有するリチウム鉄複合酸化物を製造することができる。
【0038】
また、本発明の正極活物質を構成するリチウム鉄複合酸化物は、アルミニウム化合物を鉄化合物の表面に被覆させた後に、リチウム化合物と混ぜて焼成することにより、アルミニウムを含有させることができる。
このようにして、メジアン径が5.0μm以上、30μm以下であり、BET比表面積が200m
2/g以下であり、初回充放電における充電容量と放電容量の差が500mAh/g以上であり、アルミニウムを含有するリチウム鉄複合酸化物を製造することができる。
【0039】
アルミニウム化合物を鉄化合物の表面に被覆させる方法としては、微粒の水酸化アルミニウムを乾式混合する方法、水溶性の硝酸アルミニウムを水に溶解させて、水中に分散させた鉄化合物表面にディッピングしてコートする方法、アルミニウムイソプロポキシドのようなアルコキシド(水と反応してその表面がアルコール基になる材料)をエタノールなどの溶媒中で、加水分解することにより、鉄化合物表面に均一にコートする方法等があるが、アルコキシド法(金属アルコキシドを水と反応させて加水分解を起こし、金属酸化物の微粒子を生成する方法)を用いることが、鉄化合物の表面に微粒で均一に分散する点でさらに好ましい。
【0040】
リチウム化合物は例えば水酸化リチウム、酸化リチウム等が挙げられるが、好ましくは酸化リチウムである。酸化リチウムは、焼成時、水分が出ないので、好ましい。
【0041】
鉄化合物は、例えば酸化鉄、水酸化鉄Fe(OH)
2、Fe(OH)
3等が挙げられるが、好ましくは酸化鉄である。酸化鉄が好ましい理由は、水分を含まないためである。すなわち、水分が大量に存在することで、リチウム鉄複合酸化物の反応が十分進まなくなることを確実に防止できるためである。
【0042】
また、上記の焼成工程において、焼成温度は800〜1000℃、好ましくは850〜950℃であり、焼成時間は1〜50時間、好ましくは2〜15時間である。
【0043】
上記の焼成は、不活性雰囲気中(例えば、窒素雰囲気中)で行うことが好ましい。
【0044】
本発明の正極活物質は、他の正極活物質、例えばLi
aCoO
2、Li
aNi
1−x−yCo
xMn
yO2(0<x<1、0<y<1)、Li
aNi
xCo
1−xO
2(0<x<1)、Li
aNi
1−x―yCo
xAl
yO
2(0<x<1、0<y<1)、Li
aMn
2O
4、Li
aM’PO
4(M’はCo、Mn、Fe等)等のリチウム含有化合物と併用して使用することが好ましい。
これら記述される正極活物質の中でもニッケル、鉄、マンガン、コバルトの少なくとも1種以上を有する化合物が好ましく、その添加量は、0.1質量%〜40質量%である。
本発明の正極活物質を構成するリチウム鉄複合酸化物は、初期充電容量と初期放電容量との差で表される初期充放電容量差が大きく、充放電サイクルに伴ってリチウムイオンが負極で不活性化した際に、併用する正極活物質にリチウムを補給することができ、併用する正極活物質の劣化を抑制することができる。
なお、aの値は電池の充放電状態によって異なる値を示すが、一般的に0.05≦a≦1.10で示される。
【0045】
[正極活物質層]
正極活物質層は、リチウムイオンの吸蔵放出可能な正極活物質のいずれか1種又は2種以上を含んでおり、設計に応じて結着剤、導電助剤、分散剤などの他の材料を含んでいてもよい。
正極物質層は、本発明の正極活物質を0.1〜40質量%含んでいる。
【0046】
[正極]
正極は、例えば、正極集電体の両面または片面に正極活物質層を有している。正極集電体は、例えば、アルミニウムなどの導電性材により形成されている。
【0047】
[負極活物質層]
本発明のリチウムイオン二次電池の負極に用いられる負極活物質は、一般式SiO
x(0.5≦x<1.6)で表される酸化珪素のいずれか、又はこれらのうち2以上の混合物であることが好ましい。
負極活物質層は、上記の負極活物質を含んでおり、設計に応じて結着剤、導電助剤、分散剤などの他の材料を含んでいてもよい。
【0048】
[負極]
負極は、上記したリチウムイオン二次電池用正極と同様の構成を有し、例えば、集電体の片面もしくは両面に負極活物質層を有している。この負極は、正極活物質剤から得られる電気容量(電池として充電容量)に対して、負極充電容量が大きくなることが好ましい。負極上でのリチウム金属の析出を抑制するためである。
【0049】
[結着材]
結着剤として、例えば高分子材料、合成ゴムなどのいずれか1種類以上を用いることができる。高分子材料は、例えば、ポリフッ化ビニリデン、ポリイミド、ポリアミドイミド、アラミド、ポリアクリル酸、あるいはポリアクリル酸リチウム、カルボキシメチルセルロース等である。合成ゴムは、例えば、スチレンブタジエン系ゴム、フッ素系ゴム、エチレンプロピレンジエン等である。
【0050】
[導電助剤]
正極導電助剤、負極導電助剤としては、例えば、カーボンブラック、アセチレンブラック、黒鉛、ケチェンブラック、カーボンナノチューブ、カーボンナノファイバーなどの炭素材料のいずれか1種以上を用いることができる。
【0051】
[電解液]
活物質層の少なくとも一部、またはセパレータには液状の電解質(電解液)が含浸されている。この電解液は、溶媒中に電解質塩が溶解されており、添加剤など他の材料を含んでいても良い。
溶媒は、例えば非水溶媒が挙げられる。非水溶媒として、例えば次の材料が挙げられる。炭酸エチレン、炭酸プロピレン、炭酸ブチレン、炭酸ジメチル、炭酸ジエチル、炭酸エチルメチル、炭酸メチルプロピル、1,2−ジメトキシエタンあるいはテトラヒドロフランである。
その中でも、炭酸エチレン、炭酸プロピレン、炭酸ジメチル、炭酸ジエチル、炭酸エチルメチルのうちの少なくとも1種以上が望ましい。より良い特性が得られるからである。またこの場合、炭酸エチレン、炭酸プロピレンなどの高粘度溶媒と、炭酸ジメチル、炭酸エチルメチル、炭酸ジエチルなどの低粘度溶媒を組み合わせるとより優位な特性を得ることができる。電解質塩の解離性やイオン移動度が向上するためである。
【0052】
特に溶媒としてハロゲン化鎖状炭酸エステルまたはハロゲン化環状炭酸エステルのうち少なくとも1種を含んでいることが望ましい。
充放電時、特に充電時において負極活物質表面に安定な被膜が形成されるからである。ハロゲン化鎖状炭酸エステルは、ハロゲンを構成元素として有する(少なくとも1つの水素がハロゲンにより置換された)鎖状炭酸エステルである。ハロゲン化環状炭酸エステルは、ハロゲンを構成元素として有する(少なくとも1つの水素がハロゲンにより置換された)環状炭酸エステルである。
ハロゲンの種類は特に限定されないが、フッ素がより好ましい。他のハロゲンよりも良質な被膜を形成するからである。またハロゲン数は、多いほど望ましく、得られる被膜がより安定的であり、電解液の分解反応が低減されるからである。
ハロゲン化鎖状炭酸エステルは、例えば、炭酸フルオロメチルメチル、炭酸ジフルオロメチルメチルなどが挙げられる。ハロゲン化環状炭酸エステルとしては、4−フルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オンあるいは4,5−ジフルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オンなどが挙げられる。
【0053】
溶媒添加物として、不飽和炭素結合環状炭酸エステルを含んでいることが好ましい。充放電時に負極表面に安定な被膜が形成され、電解液の分解反応が抑制できるからである。
不飽和炭素結合環状炭酸エステルとして、例えば炭酸ビニレンまたは炭酸ビニルエチレンなどが挙げられる。
また、溶媒添加物として、スルトン(環状スルホン酸エステル)を含んでいることも好ましい。電池の化学的安定性が向上するからである。スルトンとしては、例えば、プロパンスルトン、プロペンスルトンが挙げられる。
【0054】
さらに、溶媒は、酸無水物を含んでいることが好ましい。電解液の化学的安定性が向上するからである。酸無水物としては、例えば、プロパンジスルホン酸無水物が挙げられる。
【0055】
電解質塩は、例えば、リチウム塩などの軽金属塩のいずれか1種類以上含むことができる。リチウム塩として、例えば、六フッ化リン酸リチウム(LiPF
6)、四フッ化ホウ酸リチウム(LiBF
4)等が挙げられる。
電解質塩の含有量は、溶媒に対して0.5mol/kg以上、2.5mol/kg以下であることが好ましい。高いイオン伝導性が得られるからである。
【0056】
[集電体]
電極の集電体は、構成されたリチウムイオン二次電池において化学変化を起こさない電子伝導体であれば特に制限されるものではないが、例えばステンレス鋼、ニッケル、アルミニウム、チタン、焼成炭素、アルミニウムやステンレス鋼の表面をカーボン、ニッケル、銅、チタンまたは銀で表面処理したもの、負極にはステンレス鋼、ニッケル、銅、チタン、アルミニウム、焼成炭素などの他に、銅やステンレス鋼の表面をカーボン、ニッケル、チタンまたは銀などで処理したもの、Al−Cd合金などが用いられる。
【0057】
[セパレータ]
セパレータは、正極、負極を隔離し、両極接触に伴う電流短絡を防止しつつ、リチウムイオンを通過させるものである。このセパレータは、例えば、合成樹脂、あるいはセラミックからなる多孔質膜により形成されており、2種以上の多孔質膜が積層された積層構造を有しても良い。合成樹脂として、例えば、ポリテトラフルオロエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンなどが挙げられる。
【0058】
[リチウムイオン二次電池]
リチウムイオン二次電池の形状は、コイン、ボタン、シート、シリンダー、角型などのいずれにも適用できる。本発明のリチウムイオン二次電池の用途は、特に制限されないが、例えばノートパソコン、ラップトップパソコン、ポケットワープロ、携帯電話、コードレス電話機、ポータブルCD、ラジオなどの電子機器、自動車、電動車両、ゲーム機器などの民生用電子機器などが挙げられる。
【実施例】
【0059】
以下、実施例及び比較例を示して本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0060】
(実施例1)
Fe(III)
2O
3(Aldrich社製)、Li
2O(Aldrich社製)の粉末をLi/Feの当量比が5.00/1.00になるようにして、混合した。混合はミニブレンダー(アズワン株式会社製)を用いて、15秒混合処理を行い、焼成原料混合物を得た。焼成原料混合物を、850℃で約15時間、窒素雰囲気中で熱処理した。焼成後、冷却し、粉砕を行なった。目開き75μmの篩で分級し、Li
5.0FeO
4の組成をもつ結晶性を有するリチウム鉄複合酸化物を製造した。
【0061】
(実施例2)
Fe(III)
2O
3(Aldrich社製)、Li
2O(Aldrich社製)の粉末をLi/Feの当量比が5.10/1.00になるようにして混合した。混合はミニブレンダー(アズワン株式会社製)を用いて、15秒混合処理を行い、焼成原料混合物を得た。焼成原料混合物を、950℃で約15時間、窒素雰囲気中で熱処理した。焼成後、冷却し、粉砕を行なった。目開き75μmの篩で分級し、Li
5.0FeO
4の組成をもつ結晶性を有するリチウム鉄複合酸化物を製造した。
【0062】
(実施例3)
Fe(III)
2O
3(Aldrich社製)、Li
2O(Aldrich社製)の粉末をLi/Feの当量比が5.10/1.00になるようにして混合した。混合はミニブレンダー(アズワン株式会社製)を用いて、15秒混合処理を行い、焼成原料混合物を得た。焼成原料混合物を、830℃で約15時間、窒素雰囲気中で熱処理した。焼成後、冷却し、粉砕を行なった。目開き75μmの篩で分級し、Li
5.0FeO
4の組成をもつ結晶性を有するリチウム鉄複合酸化物を製造した。
【0063】
(実施例4)
Fe(III)
2O
3(Aldrich社製)、Li
2O(Aldrich社製)の粉末をLi/Feの当量比が5.10/1.00になるように計量して混合し、さらに酸化アルミニウムをFe原子に対して、Al原子が2モル%になるように添加した。混合はミニブレンダー(アズワン株式会社製)を用いて、15秒混合処理を行い、焼成原料混合物を得た。その後、830℃で約15時間熱処理した。焼成後、冷却し、粉砕を行なった。目開き75μmの篩で分級し、Li
5.0Fe
0.98Al
0.02O
4の組成をもつ結晶性を有するリチウム鉄複合酸化物を製造した。
【0064】
(実施例5)
Fe(III)
2O
3(Aldrich社製)、Li
2O(Aldrich社製)の粉末をLi/Feの当量比が5.10/1.00になるように計量して混合し、さらに酸化アルミニウムをFe原子に対して、Al原子が5モル%になるように添加した。混合はミニブレンダー(アズワン株式会社製)を用いて、15秒混合処理を行い、焼成原料混合物を得た。その後、900℃で約15時間熱処理した。焼成後、冷却し、粉砕を行なった。目開き75μmの篩で分級し、Li
5.0Fe
0.95Al
0.05O
4の組成をもつ結晶性を有するリチウム鉄複合酸化物を製造した。
【0065】
(実施例6)
Fe(III)
2O
3(Aldrich社製)をエタノール中に分散させ、Fe(III)
2O
3中のFe原子に対して、Al原子が2モル%に相当するアルミニウムイソプロポキシドを混合した。混合は、スターラーを用いて約60分間均一混合した。混合物を乾燥炉を用いて70℃で約24時間乾燥した後、細かく粉砕した。その後、上記の粉砕した粉末、Li
2O(Aldrich社製)の粉末をLi/Feの当量比が5.10/1.00になるように計量し、混合した。混合はミニブレンダー(アズワン株式会社製)を用いて、15秒混合処理を行い、焼成原料混合物を得た。その後、900℃で約15時間熱処理した。焼成後、冷却し、粉砕を行なった。目開き75μmの篩で分級し、Li
5.0Fe
0.98Al
0.02O
4の組成をもつ結晶性を有するリチウム鉄複合酸化物を製造した。
【0066】
(実施例7)
Fe(III)
2O
3(Aldrich社製)をエタノール中に分散させ、Fe(III)
2O
3中のFe原子に対してAl原子が5モル%に相当するアルミニウムイソプロポキシドを混合した。混合は、スターラーを用いて約60分間均一混合した。混合物を乾燥炉を用いて70℃で約24時間乾燥した後、細かく粉砕した。その後、上記の粉砕した粉末、Li
2O(Aldrich社製)の粉末をLi/Feの当量比が5.10/1.00になるように計量して、混合した。混合は、ミニブレンダー(アズワン株式会社製)を用いて、15秒混合処理を行い、焼成原料混合物を得た。その後、900℃で約15時間熱処理した。焼成後、冷却し、粉砕をなった。目開き75μmの篩で分級し、Li
5.0Fe
0.95Al
0.05O
4の組成をもつ結晶性を有するリチウム鉄複合酸化物を製造した。
【0067】
(比較例1)
Fe(III)
2O
3(Aldrich社製)、Li
2O(Aldrich社製)の粉末をLi/Feの当量比が5.00/1.00になるようにして、混合した。混合は、ミニブレンダー(アズワン株式会社製)を用いて、15秒混合処理を行い、焼成原料混合物を得た。焼成原料混合物を、1000℃で約15時間、窒素雰囲気中で熱処理した。焼成後、冷却し、粉砕を行なった。目開き75μmの篩で分級し、結晶性を有するLi
5.0FeO
4の組成をもつリチウム鉄複合酸化物を製造した。
【0068】
(比較例2)
Fe(III)
2O
3(Aldrich社製)、Li
2O(Aldrich社製)の粉末をLi/Feの当量比が5.00/1.00になるようにして、混合した。混合は、ミニブレンダー(アズワン株式会社製)を用いて、15秒混合処理を行い、焼成原料混合物を得た。焼成原料混合物を、820℃で約15時間、窒素雰囲気中で熱処理した。焼成後、冷却し、粉砕を行なった。目開き75μmの篩で分級し、結晶性を有するLi
5.0FeO
4の組成をもつリチウム鉄複合酸化物を製造した。
【0069】
(比較例3)
Fe(III)
2O
3(Aldrich社製)、Li
2O(Aldrich社製)の粉末をLi/Feの当量比が5.00/1.00になるようにして、混合した。混合は、ミニブレンダー(アズワン株式会社製)を用いて、15秒混合処理を行い、焼成原料混合物を得た。焼成原料混合物を、800℃で約15時間、窒素雰囲気中で熱処理した。焼成後、冷却し、粉砕を行なった。目開き75μmの篩で分級し、結晶性を有するLi
5.0FeO
4の組成をもつリチウム鉄複合酸化物を製造した。
【0070】
実施例1−7、比較例1−3のリチウム鉄複合酸化物のそれぞれの組成式、成分比、Ni含有量、Cu含有量を表1に示す。
なお、表1のNi含有量、Cu含有量、Li:Fe:Al比率は、製造されたリチウム鉄複合酸化物を酸で溶解し、その溶解液をICP(Induced Coupled Plasma)発光分光分析法により測定して求めた値である。
なお、実施例1−7、比較例1−3のリチウム鉄複合酸化物には、いずれもNi、Cuが含まれているが、これらは原料のFe(III)
2O
3の中に含まれている不純物から来たものである。また、上記のリチウム鉄複合酸化物を作製する際に、Ni、Cuを別途添加することもできる。
【0071】
【表1】
【0072】
(平均粒子径(メジアン径)の測定)
実施例1−7、比較例1−3のリチウム鉄複合酸化物の粒度分布の測定は、イオン交換水を分散媒とし、マイクロトラックMK−II(SRA)(LEED&NORTHRUP、レーザー散乱光検出型)を用いて行った。
なお、粒度分布の測定における分散剤、環流量、超音波出力を以下に示す。
分散剤 :10%ヘキサメタりん酸ソーダ水溶液2ml
環流量 :40ml/sec
超音波出力 :40W 60秒
平均粒子径の測定結果を表2に示す。
【0073】
(BET比表面積の測定)
実施例1−7、比較例1−3のリチウム鉄合酸化物のBET比表面積の測定は、フローソーブ2300型(島津製作所製)を用いて行った。
BET比表面積の測定結果を表2に示す。
【0074】
<試験I>
(負極活物質として酸化珪素を用いたコイン型非水電解質二次電池の作製)
上記のように製造した実施例1−7、比較例1−3のリチウム鉄複合酸化物5質量%、及び、コバルト酸リチウム90質量%を、黒鉛粉末2.5質量%、及び、ポリフッ化ビニリデン2.5質量%と混合して正極材とし、これをN−メチル−2−ピロリジノン(以下、NMPと称する)に分散させて混練ペーストを調製した。該混練ペーストをアルミ箔に塗布したのち乾燥、プレスして直径15mmの円盤に打ち抜いて正極板を得た。
【0075】
次に負極を作製した。負極活物質は金属ケイ素と二酸化ケイ素を混合した原料を反応炉へ設置し、10Paの真空化で堆積し、十分に冷却した後、堆積物を取出しボールミルで粉砕した。粒径を調整した後、必要に応じて熱分解CVDを行う事で炭素層を得た。作成した粉末はプロピレンカーボネート及びエチレンカーボネートの1:1混合溶媒(電解質塩1.3mol/Kg)中で電気化学法を用いバルク改質を行った。得られた材料は必要に応じて炭酸雰囲気下で乾燥処理を行った。続いて、負極活物質粒子と負極結着剤の前駆体、導電助剤1と導電助剤2とを80:8:10:2の乾燥重量比で混合して負極剤とし、NMPで希釈してペースト状の負極合剤スラリーとした。この場合には、ポリアミック酸の溶媒としてNMPを用いた。続いて、コーティング装置で負極集電体に負極合剤スラリーを塗布してから乾燥させた。この負極集電体としては、電解銅箔(厚さ=15μm)を用いた。最後に、真空雰囲気中で400℃1時間焼成した。これにより、負極結着剤(ポリイミド)が形成される。プレスして直径16mmの円盤に打ち抜いて負極板を得た。
【0076】
この正極板、負極板を用いて、セパレータ、負極、正極、集電板、取り付け金具、外部端子、電解液等の各部材を使用して非水電解質二次コイン電池を作製した。なお、電解液にはエチレンカーボネートとジジエチルカーボネートとフルオロエチレンカーボネイトの2:7:1混練液1リットルにLiPF
61モルを溶解したものを使用した。
【0077】
<サイクル特性の測定>
実施例1−7、比較例1−3のリチウム鉄複合酸化物を用いて上記のようにして作製したコイン型非水電解質二次電池(負極活物質:酸化珪素)を用いて、サイクル特性を測定した。
サイクル特性については、以下のようにして調べた。
最初に、1サイクル充放電を行い、1サイクル目の放電容量を測定した。続いて、総サイクル数が20サイクルとなるまで充放電を行い、その都度放電容量を測定した。最後に、20サイクル目の放電容量を1サイクル目の放電容量で割り、容量維持率を算出した。
なお、サイクル条件として、0.5Cに相当する電流で定電圧4.25Vまで5時間充電し、次いで0.1Cに相当する電流で定電圧2.5Vまで放電した。
サイクル特性の測定結果を表2に示す。
【0078】
(正極の電極密度の測定)
実施例1−7、比較例1−3のリチウム鉄複合酸化物を用いて上記のようにして作製した正極の電極密度を測定した。その結果を表2に示す。
【0079】
<試験II>
(正極初回充放電容量差の測定)
実施例1−7、比較例1−3のリチウム鉄複合酸化物をコバルト酸リチウムを混合せず単独で用いて、リチウム鉄複合酸化物初期充放電容量差を測定した。
リチウム鉄複合酸化物80質量%を、黒鉛粉末10.0質量%、及び、ポリフッ化ビニリデン10.0質量%と混合して正極材とし、これをN−メチル−2−ピロリジノン(以下、NMPと称する)に分散させて混練ペーストを調製した。該混練ペーストをアルミ箔に塗布したのち乾燥し、プレスして直径15mmの円盤に打ち抜いて正極板を得た。負極には金属リチウムを用いた。
上記の正極及び負極を用いて作製したコイン型非水電解質二次電池(負極:金属リチウム)を用いて、正極初回充放電容量差を測定した。
0.5Cに相当する電流で定電圧4.35Vまで5時間充電し、次いで0.1Cに相当する電流で定電圧2.5Vまで放電する充放電試験を行い、正極初回充放電容量差(すなわち、充電容量と放電容量との差)とした。その結果を表2に示す。
【0080】
【表2】
【0081】
表2からわかるように、メジアン径が5.0μm以上、30μm以下であり、BET比表面積が200m
2/g以下であり、正極初回充放電における充電容量と放電容量の差が500mAh/g以上である実施例1−7では、メジアン径及びBET比表面積が上記範囲外である比較例1、比較例3、正極初回充放電容量差が上記範囲外である比較例2よりもサイクル特性(容量維持率)が高くなっている。
また、表2からわかるように、実施例1−7では、正極の電極密度が3.5g/cm
3より大きくなっているのに対して、比較例1−3では、3.5g/cm
3以下になっている。
さらに、Alを含有している実施例4−7では、Alを含有していない実施例1−3と比較してサイクル特性(容量維持率)がさらに高くなっていることがわかる。
【0082】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は、例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。