特許第6247150号(P6247150)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6247150
(24)【登録日】2017年11月24日
(45)【発行日】2017年12月13日
(54)【発明の名称】光信号受信装置及び光信号受信方法
(51)【国際特許分類】
   H04B 10/272 20130101AFI20171204BHJP
   H04B 10/61 20130101ALI20171204BHJP
   H04L 12/44 20060101ALI20171204BHJP
【FI】
   H04B10/272
   H04B10/61
   H04L12/44 200
【請求項の数】6
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2014-102046(P2014-102046)
(22)【出願日】2014年5月16日
(65)【公開番号】特開2015-220567(P2015-220567A)
(43)【公開日】2015年12月7日
【審査請求日】2016年7月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004226
【氏名又は名称】日本電信電話株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100119677
【弁理士】
【氏名又は名称】岡田 賢治
(74)【代理人】
【識別番号】100115794
【弁理士】
【氏名又は名称】今下 勝博
(72)【発明者】
【氏名】木村 英明
(72)【発明者】
【氏名】浅香 航太
(72)【発明者】
【氏名】木村 俊二
【審査官】 大野 友輝
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−050002(JP,A)
【文献】 特開2005−340931(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 10/272
H04B 10/61
H04L 12/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の光信号送信装置が共通の光信号受信装置に接続されている光伝送システムにおける前記光信号受信装置であって、
前記複数の光信号送信装置から送信されたバースト信号を電気信号に変換する受光部と、
前記受光部からの電気信号の電流値を、前記バースト信号の送信元に応じた増幅率で増幅した電圧値に変換する電流電圧変換部と、
前記電流電圧変換部の出力信号をデジタル信号に変換するデジタル変換部と、
前記デジタル変換部からのデジタル信号を用いて、前記バースト信号の受信データを復調する復調部と、
前記電流電圧変換部の増幅率を前記光信号送信装置ごとに定める増幅率設定テーブルと、
を備え
前記電流電圧変換部は、前記光信号送信装置から受信したバースト信号の光強度に応じた電圧値に基づいて送信元である前記光信号送信装置を判別し、判別した前記光信号送信装置を前記増幅率設定テーブル内の光信号送信装置と照合することで、前記増幅率を設定することを特徴とする光信号受信装置。
【請求項2】
前記電流電圧変換部の前記増幅率は、前記バースト信号の送信元である前記光信号送信装置と前記光信号受信装置間の伝送路損失を補償する増幅率であることを特徴とする請求項1に記載の光信号受信装置。
【請求項3】
前記電流電圧変換部の前記増幅率は、前記デジタル変換部の最大入力電圧振幅以上になる増幅率であることを特徴とする請求項1に記載の光信号受信装置。
【請求項4】
複数の光信号送信装置が共通の光信号受信装置に接続されている光伝送システムにおける前記光信号受信装置の光信号受信方法であって、
前記光信号受信装置は、受光部と、電流電圧変換部と、デジタル変換部と、復調部と、前記電流電圧変換部の増幅率を前記光信号送信装置ごとに定める増幅率設定テーブルと、
を備え、
前記受光部が、前記複数の光信号送信装置から送信されたバースト信号を電気信号に変換する受光手順と、
前記電流電圧変換部が、前記受光部からの電気信号の電流値を、前記バースト信号の送信元に応じた増幅率で増幅した電圧値に変換する電流電圧変換手順と、
前記デジタル変換部が、前記電流電圧変換部の出力信号をデジタル信号に変換するデジタル変換手順と、
前記復調部が、前記デジタル変換部からのデジタル信号を用いて、前記バースト信号の受信データを復調する復調手順と、
を順に実行し、
前記電流電圧変換手順において、前記電流電圧変換部が、前記光信号送信装置から受信したバースト信号の光強度に応じた電圧値に基づいて送信元である前記光信号送信装置を判別し、判別した前記光信号送信装置を前記増幅率設定テーブル内の光信号送信装置と照合することで、前記増幅率を設定することを特徴とする光信号受信方法。
【請求項5】
前記電流電圧変換手順において、前記電流電圧変換部が、前記バースト信号の送信元である前記光信号送信装置と前記光信号受信装置間の伝送路損失を補償する増幅率で増幅することを特徴とする請求項に記載の光信号受信方法。
【請求項6】
前記電流電圧変換手順において、前記電流電圧変換部が、前記デジタル変換部の最大入力電圧振幅以上になる増幅率で増幅することを特徴とする請求項に記載の光信号受信方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、デジタル信号処理技術を用いたPONシステムにおける上りバースト信号の光信号受信装置及び光信号受信方法に関する。
【背景技術】
【0002】
PON(Passive Optical Network)システムに代表される光伝送システムにおいて、デジタル信号処理を用いることで光伝送システムを高度化することができる。信号処理技術や集積回路技術の向上に伴って信号処理技術を用いた光伝送システムに対する期待が高まっている。
【0003】
基幹系光伝送システムにおいてはデジタルコヒーレント受信方式を用いた大容量長距離伝送に関する検討が進んでいる。デジタルコヒーレント受信方式は、光受信器において検出した光信号を電流信号に変換し、トランスインピーダンスアンプ(TIA)を用いて電流信号を電圧信号に変換する。この電圧信号データをアナログ・デジタル変換することにより、デジタル信号処理を行うDigital Signal Processor (DSP)に受信データを渡す。
【0004】
デジタルコヒーレント受信方式など、信号処理を用いた光伝送システムにおいては、多くの場合、デジタル信号処理部に与える電圧信号は2値信号では無く、より多くの分解能を要する。すなわち、バースト的に受信した光信号に対して0と1の2値信号の判別を行うだけではなく、受信したバースト信号の光信号強度を線形的に電流および電圧に変換するアナログ信号処理機能が求められる。
【0005】
基幹系光伝送システムにおいてデジタルコヒーレント受信に用いられてきたTIAは、図1に示すように、TIAコア10、ポストアンプ11、可変利得アンプ12、高利得広帯域アンプ13、出力段アンプ14、ピーク検出器15、自動利得制御回路16、自動オフセット制御回路17からなる。TIAコア10において電流信号から電圧信号に変換したのち、自動利得制御回路16により設定された増幅率をもとに可変利得アンプの増幅率を変更し、線形性の高い電圧変換を実現する。また、出力段アンプ14を用いることにより、TIA出力電圧信号であるOT、OCの最大電圧振幅を一定値化する(たとえば、非特許文献1参照。)。
【0006】
TIAにおける増幅率の調整は、図1に示すように、ピーク検出器15と自動利得制御回路16を用いていた。基幹系伝送システムでは、Point−to−Point通信であるため、光信号強度の最大値は一定である。このため、ピーク検出器15を用いて可変利得アンプの出力電圧を検出し、この最大値をもとに自動利得制御回路16のゲイン調整を行ってきた。これにより、可変利得アンプ12において線形性の高い電圧増幅を実現するとともに、TIAの出力電圧信号OT、OCの最大電圧振幅が一定の電圧範囲に収まるよう、可変利得アンプ12の増幅率、および出力段アンプ14の増幅率を決定していた。
【0007】
一方、PONシステムはPoint−to−MultiPointシステムである。このため、光信号送信装置であるOptical Network Unit(ONU)までの伝送距離に応じて、光信号受信装置であるOLT(Optical Line Terminal)における光信号受信強度の最大値が異なる。すなわち、OLTに設置されるTIAは、様々な光信号強度で入力される信号を線形的に電圧変換行うとともに、出力電圧信号の振幅最大値を一定値化する必要がある。
【0008】
しかしながら、図1に示すようなピーク検出器15を用いた手法では、ONUまでの距離の違いに起因する受信光強度の違いにより、電圧変換に非線形性が生じることや、B−TIAの出力電圧信号OT、OCの最大電圧振幅を一定値とすることが出来ないなどの課題が生じていた。
【0009】
PONシステムでは、0と1の2値信号により通信を行っており、TIAにおいて電流電圧変換した後に非線形等化増幅回路を用いてTIAの出力電圧信号を非線形増幅することにより信号の判別を行ってきた。このため、信号強度の異なるバースト信号受信においても、TIA出力電圧信号の最大振幅を一定値化する必要はなかった。したがって、PONシステムで用いられてきたTIAをそのままデジタル信号処理技術を用いた光伝送システムにおける光信号受信装置に用いることはできない。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】佐野公一、吉松俊英、福山裕之、村本好史、児玉聡及び村田浩一:「100Gbit/sデジタルコヒーレント通信用フォトダイオード・トランスインピーダンスアンプ」、NTT技術ジャーナル、p.67〜70、2011年3月
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
そこで本発明では、デジタル信号処理技術を用いて信号受信を行うPONシステムの上り光信号受信装置において、可変利得アンプの増幅率を変更することにより高い線形性を有する電圧変換を行うとともに、出力段アンプの増幅率を変更することによりTIA出力電圧信号の最大振幅を一定値化し、TIAの後段に接続するアナログ・デジタル変換器の入力電圧振幅範囲に適合した電圧信号に線形変換することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
具体的には、本発明に係る光信号受信装置は、
複数の光信号送信装置が共通の光信号受信装置に接続されている光伝送システムにおける前記光信号受信装置であって、
前記複数の光信号送信装置から送信されたバースト信号を電気信号に変換する受光部と、
前記受光部からの電気信号の電流値を、前記バースト信号の送信元に応じた増幅率で増幅した電圧値に変換する電流電圧変換部と、
前記電流電圧変換部の出力信号をデジタル信号に変換するデジタル変換部と、
前記デジタル変換部からのデジタル信号を用いて、前記バースト信号の受信データを復調する復調部と、
を備える。
【0013】
本発明は、送信元の光信号送信装置ごとに異なる増幅率で増幅するため、デジタル信号処理技術を用いて信号受信を行うPONシステムの上り受信装置において、TIAの後段に接続するアナログ・デジタル変換器の入力電圧振幅範囲に適合した電圧信号に線形変換することができる。
【0014】
本発明に係る光信号受信装置では、前記電流電圧変換部の前記増幅率は、前記バースト信号の送信元である前記光信号送信装置と前記光信号受信装置間の伝送路損失を補償する増幅率であってもよい。
本発明によれば、光信号送信装置と光信号受信装置間の伝送路損失に関する情報を用いて可変利得増幅部の増幅率を変更することにより、光信号受信装置が受信する光信号の強度に依存することなく高い線形性を有する電圧変換を実現することができる。
【0015】
本発明に係る光信号受信装置では、前記電流電圧変換部の前記増幅率は、前記デジタル変換部の最大入力電圧振幅以上になる増幅率であってもよい。
本発明によれば、光信号受信装置が受信する光信号の強度に依存することなく、電流電圧変換部からの出力電圧の最大振幅を一定値化することができる。
【0016】
本発明に係る光信号受信装置では、
前記電流電圧変換部の増幅率を前記光信号送信装置ごとに定める増幅率設定テーブルをさらに備え、
前記電流電圧変換部は、前記複数の光信号送信装置から前記光信号受信装置への信号割り当てスケジュール情報に基づいて送信元である前記光信号送信装置を判別し、判別した前記光信号送信装置を前記増幅率設定テーブル内の光信号送信装置と照合することで、前記増幅率を設定してもよい。
【0017】
本発明に係る光信号受信装置では、
前記電流電圧変換部の増幅率を前記光信号送信装置ごとに定める増幅率設定テーブルをさらに備え、
前記電流電圧変換部は、前記光信号送信装置から受信したバースト信号の光強度に応じた電圧値に基づいて送信元である前記光信号送信装置を判別し、判別した前記光信号送信装置を前記増幅率設定テーブル内の光信号送信装置と照合することで、前記増幅率を設定してもよい。
【0018】
具体的には、本発明に係る光信号受信方法は、
複数の光信号送信装置が共通の光信号受信装置に接続されている光伝送システムにおける前記光信号受信装置の光信号受信方法であって、
受光部が、前記複数の光信号送信装置から送信されたバースト信号を電気信号に変換する受光手順と、
電流電圧変換部が、前記受光部からの電気信号の電流値を、前記バースト信号の送信元に応じた増幅率で増幅した電圧値に変換する電流電圧変換手順と、
デジタル変換部が、前記電流電圧変換部の出力信号をデジタル信号に変換するデジタル変換手順と、
復調部が、前記デジタル変換部からのデジタル信号を用いて、前記バースト信号の受信データを復調する復調手順と、
を順に有する。
【0019】
本発明は、送信元の光信号送信装置ごとに異なる増幅率で増幅するため、デジタル信号処理技術を用いて信号受信を行うPONシステムの上り受信装置において、TIAの後段に接続するアナログ・デジタル変換器の入力電圧振幅範囲に適合した電圧信号に線形変換することができる。
【0020】
本発明に係る光信号受信方法では、前記電流電圧変換手順において、電流電圧変換部が、前記バースト信号の送信元である前記光信号送信装置と前記光信号受信装置間の伝送路損失を補償する増幅率で増幅してもよい。
本発明によれば、光信号送信装置と光信号受信装置間の伝送路損失に関する情報を用いて可変利得増幅部の増幅率を変更することにより、光信号受信装置が受信する光信号の強度に依存することなく高い線形性を有する電圧変換を実現することができる。
【0021】
本発明に係る光信号受信方法では、前記電流電圧変換手順において、電流電圧変換部が、前記デジタル変換部の最大入力電圧振幅以上になる増幅率で増幅してもよい。
本発明によれば、光信号受信装置が受信する光信号の強度に依存することなく、電流電圧変換部からの出力電圧の最大振幅を一定値化することができる。
【0022】
なお、上記各発明は、可能な限り組み合わせることができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、デジタル信号処理技術を用いて信号受信を行うPONシステムの上り受信装置において、可変利得アンプの増幅率を変更することにより高い線形性を有する電圧変換を行うとともに、出力段アンプの増幅率を変更することによりTIA出力電圧信号の最大振幅を一定値化し、TIAの後段に接続するアナログ・デジタル変換器の入力電圧振幅範囲に適合した電圧信号に線形変換することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】基幹系光伝送システムにおいてデジタルコヒーレント受信に用いられてきたTIAの構成の概要を示す図である。
図2】本発明の実施形態に係る光伝送システムの一例を示す。
図3】増幅率設定テーブルの一例を示す。
図4】実施形態2に係るB−TIAの構成の一例を示す。
図5】実施形態3に係るB−TIAの構成の一例を示す。
図6】実施形態4に係るB−TIAの構成の一例を示す。
図7】実施形態5に係るB−TIAの構成の一例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、本発明は、以下に示す実施形態に限定されるものではない。これらの実施の例は例示に過ぎず、本発明は当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を施した形態で実施することができる。なお、本明細書及び図面において符号が同じ構成要素は、相互に同一のものを示すものとする。
【0026】
以降の説明では、線形性の高い電圧信号の増幅を実現することを目的として可変利得アンプの増幅率を決定するB−TIAの機能に着目する。以降の説明では、B−TIAに求められる機能であるオフセット制御や高利得広帯域アンプによる増幅に関する機能については記載しないが、本発明で実現する高い線形性と最大出力電圧振幅一定値化を実現するB−TIA増幅とオフセット制御などその他の機能は排他的に利用されるものでは無く、同時に用いても良い。
【0027】
本実施形態は、PONシステムに関するものであり、距離の異なるONUを収容するOLTにおけるバースト信号受信に関するものである。本実施形態は、レンジング機能によって得られる各ONUからの距離情報から伝送路損失情報を作り、当該伝送路損失情報に基づいて、光信号から変換された電圧信号を制御する構成をとることにより、DSPへの入力信号の最大電圧振幅を一定値化することを可能としている。また、電圧信号の制御手段を出力段アンプの前段に設けることにより、出力段アンプの線形領域における増幅を可能とする。
【0028】
(実施形態1)
図2に、本実施形態に係る光伝送システムの一例を示す。本実施形態に係る光伝送システムは、PONシステムであり、複数のONU91と1つのOLT92とが光伝送路で接続されている。OLT92は光信号受信装置として機能し、ONU91は光信号送信装置として機能する。
【0029】
OLT92は、光信号受信部21、ADC(Analog Digital Converter)22、信号処理部DSP23を備える。ADC22は、デジタル変換部として機能し、光信号受信部21の出力信号をデジタル信号に変換する。DSP23は、復調部として機能し、ADC22からのデジタル信号を用いて、バースト信号の受信データを復調する。
【0030】
光信号受信部21は、偏波分離スプリッタPBS211,パワースプリッタPS212,90度ハイブリッド213、PD214、B−TIA215を備える。これにより、B−TIA215は、伝送路の損失によって入力振幅の異なる受信電気信号に対して線形性の高い増幅を実現するとともに、ADC22の最大入力電圧振幅に応じてB−TIA215の出力電圧に係る増幅率を変更する。
【0031】
本実施形態に係る光信号受信方法は、受光手順と、電流電圧変換手順と、デジタル変換手順と、復調手順と、を順に有する。
受光手順では、PD214が、受光部として機能し、ONU91から送信されたバースト信号を電気信号に変換する。
電流電圧変換手順では、B−TIA215が、電流電圧変換部として機能し、PD214からの電気信号の電流値を、バースト信号の送信元に応じた増幅率で増幅した電圧値に変換する。
デジタル変換手順では、ADC22が、B−TIA215の出力信号をデジタル信号に変換する。
復調手順では、DSP23が、ADC22からのデジタル信号を用いて、バースト信号の受信データを復調する。
【0032】
本実施形態では、電流電圧変換手順において増幅するB−TIA215の増幅率は、バースト信号の送信元であるONU91とOLT92間の伝送路の損失を補償する増幅率である。B−TIA215の増幅率は、例えば、ONU91からOLT92までの伝送距離を用いて決定する。すなわち、OLTとONUで通信を確立するときに行うPONシステムのレンジング機能により光伝送遅延を測定し、OLT92−ONU91間の伝送距離情報を取得する。
【0033】
この伝送距離情報を用いて、OLT92−ONU91間の伝送路の損失を推定し、OLT92の受信光信号強度を推定することが可能である。推定した受信光信号強度に応じて、伝送路の損失を補償する増幅率にB−TIA215の増幅率を決定し、高い線形性とB−TIA215からの出力電圧の出力振幅を変更しても良い。
【0034】
バースト信号受信時は、バースト信号を送信するONU91に応じてB−TIA215の増幅率を変更することにより、ADC22への入力に与える電圧信号の最大振幅を決定する。これにより、ADC22の最大分解能を用いたアナログ・デジタル変換を行うことが可能となり、受信信号処理における誤差を低減することが出来る。
【0035】
また、B−TIA215の増幅率を変更することにより、ADC22が許容する最大入力電圧振幅より大きな電圧信号を出力することも可能である。たとえば、OFDM(Orthogonal Frequency−Division Multiplexing)のようにピーク対平均電力比PAPR(Peak to Average Power Ratio)が大きな信号を受信する場合、ADC22に備わるクリッピング機能を用いることでより信号受信精度を改善することが可能である。クリッピング機能を用いるために、B−TIA215の増幅率変更を利用しても良い。
【0036】
光伝送システムにおいては、OLT92−ONU91間で通信を確立した後にこの伝送路の損失が変化することは少ない。このため、B−TIA215は、ONU91からOLT92までの伝送距離に応じた増幅率を定めた増幅率設定テーブルを有しても良い。図3に、増幅率設定テーブルの一例を示す。増幅率設定テーブルは、たとえば、伝送距離情報ごとに増幅率を定める。伝送距離に応じて増幅率を定めることで、バースト信号の送信元であるONU91とOLT92間の伝送路の損失を補償することができる。増幅率設定テーブルは、ONU IDが含まれていてもよい。これにより、ONU91ごとに増幅率を可変することができる。
【0037】
増幅率設定テーブルは、OLT92が通信確立時のレンジングを行った際に、利得設定部35が作成し、利得情報格納部36に保存する。あるいは、増幅率設定テーブル作成部を別途用意し通信確立時に増幅率設定テーブルを作成したり、OLT92−ONU91間の線路設計情報を参照して通信確立前に手動で予め増幅率設定テーブルを作成し利得情報格納部36に保存したりしてもよい。そして、バースト信号としてデータを受信した際には、B−TIA215は、この増幅率設定テーブルを参照することによりB−TIA増幅率を変更する。これにより、バースト信号を受信時に毎回B−TIA215の増幅率を再計算する必要がなくなり、簡易な演算回路によりB−TIA215の増幅率を決定することが可能となる。
【0038】
高い線形性を実現する電圧変換に適したB−TIA215の電圧レンジと、ADC22への入力振幅の最大値は常に一致しているとは限らない。このため、B−TIA215において、線形性の高い電圧変換を実現するための利得アンプ調整と出力信号の最大振幅を調整する出力段アンプ調整は、異なる2つの増幅率決定回路を用いて設定しても良い。また、図1に示すようにTIAコア10を用いて電流電圧変換時のインピーダンスを変更しても良いが、高い線形性の実現をTIAコア10のインピーダンス調整において実現するためには、正確な光入力強度の推定が要求される。
【0039】
(実施形態2)
図4に、本実施形態に係るB−TIAの構成の一例を示す。本実施形態に係るB−TIA215は、TIAコア30、可変利得アンプ31、出力段アンプ32、利得制御回路33を持つ。本実施形態に係るB−TIA215は、OLT92に備わる信号割り当てスケジュール部34、利得設定部35及び利得情報格納部36を用いて、線形性の高い電圧変換機能を実現する。
【0040】
B−TIA215においては、可変利得アンプ31の電圧増幅率設定によっては、B−TIA215において非線形電圧増幅となる可能性がある。このため、線形性の高い電流電圧変換を実現するために、可変利得アンプ31の増幅率を変更する必要がある。例えば、可変利得アンプ31において飽和領域を選択してしまうと線形性の高い電流電圧変換は期待できない。したがって、入力電流強度に応じて可変利得アンプ31の増幅率を変更し、飽和領域以外での電流電圧変換を行う必要がある。
【0041】
本実施形態では、PONシステムのレンジング機能を用いてONU91からOLT92までの伝送距離情報を取得し、伝送距離情報から算出した伝送路損失情報をもとに、ONU91毎に線形性の高い電圧変換を実現するための可変利得アンプ31の増幅率を利得情報格納部36に保存している。
【0042】
信号割り当てスケジュール部34は、ONU91からOLT92への信号割り当てスケジュール情報に基づいて送信元であるONU91を判別し、任意の時刻における光信号送信元情報を利得設定部35に送信する。利得設定部35は、利得情報格納部36の情報を参照することにより増幅率パラメータを決定し、利得制御回路33に与える。
【0043】
利得情報格納部36は、図3で説明した増幅率設定テーブルを格納する。本実施形態の増幅率は、レンジング機能により算出した各ONU91から送信された光信号を受信した時にB−TIA215において高い線形性を有する電圧変換を実現する利得可変アンプ31の増幅率である。利得情報格納部36を参照することにより、バースト信号毎に利得制御回路33に与える増幅率パラメータを再計算することなく、参照のみで増幅率パラメータを指定することが可能となり、高い応答性能を実現することが出来る。
【0044】
利得情報部36に格納された高い線形性を有する電圧変換を実現する利得可変アンプ31の増幅率はバースト信号毎に更新する必要は無い。しかしながら、長期的には光伝送ケーブルのゆがみや経年劣化等により特性が変化する可能性があるため、利得情報格納部36の情報は一定時間間隔で更新しても良い。
【0045】
本実施形態では、利得設定部35、利得情報格納部36といった高い線形性を実現するための増幅率パラメータの設定に関する処理はB−TIA215の外部装置として記述しているが、B−TIA215内部で増幅率パラメータの設定を行ってもよい。すなわち、B−TIA215は、信号割り当てスケジュール部34と光信号送信元に関する情報をやり取りし、B−TIA215内部において利得情報格納部36を参照することにより利得設定を行っても良い。
【0046】
(実施形態3)
図5に、本実施形態に係るB−TIAの構成の一例を示す。本実施形態に係るB−TIA215は、TIAコア40、可変利得アンプ41、出力段アンプ42、電圧検出器43、利得制御回路44を備える。本実施形態に係るB−TIA215は、OLT92に備わるONU ID識別部45、利得設定部46、利得情報格納部47を用いて、B−TIA215の線形性の高い電圧変換機能を実現する。
【0047】
本実施形態は、実施形態2と同様に、利得情報格納部47は、可変利得アンプ41の増幅率を定めた増幅率設定テーブルを保存している。
【0048】
本実施形態に係るB−TIA215は、図1に示すピーク検出器15に代えて電圧検出器43を備える。電圧検出器43は、可変利得アンプ41の直前の電圧を検出する。図1に示すTIAが用いられる基幹系光伝送システムは、Point−to−Pointシステムであり、システムが構築されると送信元は一意に規定される。このため、TIAにおいて線形性の高い電流電圧変換を行うようフィードバック制御を適用するためにピーク検出器15を用いてきた。一方、本実施形態は、Point−to−Multipointシステムを対象としており、電圧検出器43は光信号送信元を判別するために用いる。したがって、可変利得アンプ41により増幅率を調整する前に電圧情報を取得するフィードフォワード制御により増幅率を決定する方式を用いる。電圧検出器43は、フィードフォワード制御のために用いる。
【0049】
電圧検出器43は、可変利得アンプ12の前段の電圧振幅情報を取得する。ONU ID識別部45は、この電圧振幅情報を用いてONU91を識別する。このように、ONU ID識別部45は、ONU91から受信したバースト信号の光強度に応じた電圧値に基づいて送信元であるONU91を判別する。利得設定部46は、利得情報格納部47に格納されている増幅率設定テーブルを参照することにより利得制御回路44に与える増幅率パラメータを設定する。
【0050】
ここで、TIAコア40からの出力電圧はバースト信号の光強度に応じて増減し、伝送距離が長いほどバースト信号の光強度は減衰する。このため、ONU ID識別部45は、電圧検出器43の取得した電圧に基づいてONU91のIDを識別することができる。ONU91からの伝送距離は変化しないため、ONU ID識別部45は、各ONU91からバースト信号を受信した際の電圧検出器43の取得する電圧振幅を記憶する電圧参照テーブルを有し、これを参照する。
【0051】
また、OFDM伝送のように時刻によって最大電圧振幅が変化するような伝送においては、ONU91は電圧振幅が最大となるプリアンブル信号を送信し、プリアンブル信号を受信したOLT92において伝送路損失を計測することにより、ONU ID識別部45が送信元ONUを識別しても良い。同等の距離に複数のONU91が存在する場合には、異なるONU91から送信された信号と判断する可能性がある。しかしながら、このような場合であっても、可変利得アンプ41に対して同等の増幅率を設定することになるためB−TIA215において線形増幅を実現するよう利得制御回路44の増幅率パラメータを設定することができる。
【0052】
本実施形態では、ONU ID識別部45、利得設定部46、利得情報格納部47といった高い線形性を実現するための増幅率パラメータの設定に関する処理はB−TIA215の外部装置として記述しているが、B−TIA215内部で増幅率パラメータの設定を行ってもよい。
【0053】
(実施形態4)
図6に、本実施形態に係るB−TIAの構成の一例を示す。本実施形態に係るB−TIA215は、TIAコア50、可変利得アンプ51、出力段アンプ52、利得制御回路53を備える。本実施形態に係るB−TIA215は、OLT92に備わる信号割り当てスケジュール部54、利得設定部55、利得情報格納部56を用いて、B−TIA215の最大出力電圧振幅を一定化する機能を実現する。
【0054】
B−TIA215の後段にADC22を接続し、デジタル信号処理により補償や復調を行う構成においては、B−TIA215の入力電流の強弱に依存することなく、出力電圧の最大電圧振幅を一定値化する必要がある。例えば、B−TIA215の電圧出力がADC22の入力電圧分解能と比較して非常に小さい場合、デジタル信号処理による復調が困難となる。このため、本実施形態のB−TIA215は、可変利得アンプ51により線形的に増幅された電圧信号を、ADC22の最大入力電圧振幅と一致するよう出力段アンプ52の増幅率を変更する。
【0055】
この時、出力段アンプ52からの最大電圧振幅とADC22の最大入力電圧振幅が一致するよう出力段アンプ52の増幅率を決定しても良いし、出力段アンプ52から出力される最大電圧振幅がADC22の最大入力電圧振幅より大きくなるよう出力段アンプ52の増幅率を設定しても良い。後者のような設定を用いることにより、ADC22においてクリッピング機能を実現できる。
【0056】
本実施形態は、伝送距離情報を用いて伝送路の損失を推定し、出力段アンプ52の入力電圧を推定する。出力段アンプ52の入力電圧とB−TIA215の出力、すなわちB−TIA215の後段に接続されるADC22の最大入力電圧振幅に応じて、出力段アンプ52の増幅率を決定することができる。利得情報格納部56は、出力段アンプ52の増幅率を定めた増幅率設定テーブルを保存する。ADC22にクリッピング機能を持たせる場合、増幅率は、出力段アンプ52からの出力電圧がADC22の最大入力電圧振幅以上になる増幅率である。
【0057】
信号割り当てスケジュール部54は、任意の時刻における光信号送信元情報を利得設定部55に送信する。利得設定部55は、利得情報格納部56の情報を参照することにより増幅率パラメータを決定し、利得制御回路53に与える。
【0058】
利得情報格納部56は、出力段アンプ52に設定する増幅率パラメータをONU91毎に保持している。利得情報格納部56を参照することにより、バースト信号毎に利得制御回路53に与える増幅率パラメータを再計算することなく、参照のみで増幅率パラメータを指定することが可能となり、高い応答性能を実現することが出来る。
【0059】
本実施形態では、利得設定部55、利得情報格納部56といった出力段アンプ52の増幅率パラメータ設定に関する処理はB−TIA215の外部装置として記述しているが、B−TIA215の内部装置として増幅率パラメータの設定を行ってもよい。
【0060】
(実施形態5)
図7に、本実施形態に係るB−TIAの構成の一例を示す。本実施形態に係るB−TIA215は、TIAコア60、可変利得アンプ61、出力段アンプ62、電圧検出器63、利得制御回路64を備える。本実施形態に係るB−TIA215は、OLT92に備わるONU ID識別部65、利得設定部66、利得情報格納部67を用いて、B−TIA215の最大出力電圧振幅を一定化する機能を実現する。
【0061】
本実施形態は、実施形態4と同様に、レンジング機能を用いて伝送距離情報を取得し、伝送距離情報から算出した伝送路損失情報をもとに、出力段アンプ62の増幅率を変更することにより、B−TIA512の最大出力電圧振幅を一定化する機能を提供する。
【0062】
本実施形態は、実施形態3と同様に、フィードフォワード制御により増幅率を設定する。出力段アンプ62の入力電圧情報から光信号送信元ONUを識別し、利得情報格納部67を参照することにより利得情報を設定する。利得情報格納部67は、出力段アンプ62の増幅率を定めた増幅率設定テーブルを保存する。ADC22にクリッピング機能を持たせる場合、増幅率は、出力段アンプ62からの出力電圧がADC22の最大入力電圧振幅以上になる増幅率である。
【0063】
電圧検出器63は、出力段アンプ62の入力電圧を取得する。ONU ID識別部65は、電圧検出器63の取得した入力電圧を用いて、送信元ONU91を識別する。OFDM伝送のように時刻によって最大電圧振幅が変化するような伝送においては、ONU91は電圧振幅が最大となるプリアンブル信号を送信し、プリアンブル信号を受信したOLT92において伝送路損失を計測することにより、ONU ID識別部65が送信元ONU91を識別しても良い。同等の距離に複数のONU91が存在する場合には、異なるONU91から送信された信号と判断した場合であっても、出力段アンプ62に対して同等の増幅率を設定することになるため、B−TIA215の最大出力電圧振幅を一定値化することができる。
【0064】
利得設定部66は、利得情報格納部67に保存されている、B−TIA215の最大出力電圧振幅を一定化する出力段アンプ62の利得情報を参照して増幅率パラメータを決定し、増幅率パラメータを利得制御回路64に送付する。
【0065】
本実施形態では、電圧検出器63が出力段アンプ62の入力電圧信号を検出することにより送信元のONU91のIDを識別しているが、実施形態3で説明した電圧検出器43のように、TIAコア60の出力電圧信号を用いて送信元のONU91を伝送距離情報を取得しても良い。
【0066】
実施形態2から実施形態5は、組み合わせて使用しても良い。例えば、実施形態2により線形性の高い変換を行うよう高利得広帯域アンプの増幅率を変更した後、実施形態4や実施形態5を適用してB−TIA215の出力電圧の最大振幅を一定値化しても良い。
【産業上の利用可能性】
【0067】
本発明は情報通信産業に適用することができる。
【符号の説明】
【0068】
10、30、40、50、60:TIAコア
11:ポストアンプ
12、31、41、51、61、:可変利得アンプ
13:高利得広帯域アンプ
14、32、42、52、62:出力段アンプ
15:ピーク検出器
16:自動利得制御回路
17:自動オフセット制御回路
21:光信号受信部
22:ADC
23:DSP
33、44、53、64:利得制御回路
34、54:信号割り当てスケジュール部
35、46、55、66:利得設定部
36、47、56、67:利得情報格納部
43:電圧検出器
45、65:ONU ID識別部
91:ONU
92:OLT
211:PBS
212:PS
213:90度ハイブリッド
214:受光部
215:B−TIA
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7