(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
光通信は大容量、超高速性という特長があり、近年では多くの情報通信網で実用化されている。このようなネットワークでは、大容量化に向けた方策として、伝送速度の高速化や複数の波長を重畳する波長多重化の研究開発が行われている。
【0003】
一方、各ネットワークノードは、複数のノードと光ファイバによってリンク接続されており、効率的なトラフィックを実現するにはノード間を接続する経路を柔軟に変更することが必要になる。
【0004】
ここで、ポイントトゥポイントで光接続された場合には、ノードの入力端で光/電気変換をして電気スイッチでスイッチングし、ノードの出力端で再度、電気/光変換して信号が伝送される。この場合は、光/電気変換をする際や、電気スイッチで高速スイッチングをする際に多くの電力を消費する。
【0005】
これに対して、ノード内に光スイッチを配置してスイッチングすることが研究開発されている。この場合には、光スイッチで光信号の経路自体をスイッチングして光信号のまま経路変更させるため、光/電気変換や電気スイッチでの高速スイッチングが不要となり、高速な光信号を低消費電力でスイッチングすることができる。
【0006】
このような光スイッチとしては、ガラス系の平面光導波路(PLC:Planar Light wave Circuit)上に構成した熱光学スイッチ(TOSW:Thermo-Optic Switch)、InP系の光変調器や半導体光増幅器(SOA:Semiconductor Optical Amplifier)を用いたスイッチ、LiNbO
3系の光変調器を用いたスイッチなどが研究開発されている。
【0007】
主な光スイッチ構成としては、用途により、N×Nの光スイッチングが行えるクロスバー型光スイッチ構成や、1×Nの光スイッチングが行えるツリー型光スイッチ構成などが研究開発されている。
また、1×Nのツリー型光スイッチ構成を入力側にN個用い、N×1のツリー型光スイッチ構成を出力側にN個用い、入力側のツリー型光スイッチ構成と出力側のツリー型光スイッチ構成とを結線することで、ノンブロッキングのN×N光スイッチを実現することもできる(例えば非特許文献1参照)。
【0008】
ここで、従来技術に係る1×N(1入力、N出力)のツリー型光スイッチ構成10を、
図5を参照して説明する。
なお、以下の説明において、光スイッチを総称するときには符号「SW」を用い、個々の光スイッチを区別する場合には符号「SW11,SW21,SW22・・・」等を用いる。
【0009】
図5に示す従来のツリー型光スイッチ構成10は、1×2(1入力、2出力)の光スイッチSWを基本構成要素としており、合計で7つの光スイッチSWを、3段、ツリー状に接続して構成したものである。これにより、ツリー型光スイッチ構成10は、1×8の光スイッチとして機能する。
【0010】
更に詳述すると、ツリー型光スイッチ構成10では、1段目(最上段)に1つの光スイッチSW11を配置し、2段目に2つの光スイッチSW21,SW22を配置し、3段目(最下段)に4つの光スイッチSW31,SW32,SW33,SW34を配置している。
各光スイッチSWは、上段側に1本の入力ポートIが位置し、下段側に2本の出力ポートOが位置する向きに配列されており、上段側の光スイッチの各出力ポートOに、下段側の光スイッチの入力ポートIが接続されるように、上段側と下段側の光スイッチSWが光導波路LLにより接続されている。
【0011】
1×2の光スイッチSWの代表的なものとしては、マッハツェンダー(MZ:Mach-Zehnder)型の光位相変調器が用いられている。
【0012】
MZ型の光位相変調器は、
図6に示すように、入力側の方向性結合器Y1と、出力側の方向性結合器Y2と、入力側と出力側の方向性結合器Y1,Y2を接続する2つのアーム光導波路A1,A2と、入力側の方向性結合器Y1に接続された1つの入力ポートIと、出力側の方向性結合器Y2に接続された2つの出力ポートOを有している。
入力側の方向性結合器Y1は光強度を2等分する特性を有し、出力側の方向性結合器Y2は光を結合する特性を有している。また、2つのアーム光導波路A1,A2の光導波路長は等しくなっている。そして、一方のアーム光導波路A1には位相変調領域PMが形成され、この位相変調領域PM上には電極端子ETが配置されている。
【0013】
このようなMZ型の光位相変調器による光スイッチSWでは、入力ポートIに信号光Pを入力したときに、電極端子ETに電圧または電流を供給して位相変調領域PMにおいて位相変調することにより、アーム光導波路A1,A2間の位相差を、0または
πに変化させることによって、出力側の2つの出力ポートOのいずれか一方から信号光Pを出力すること、即ちスイッチングをすることができる。
つまり、アーム光導波路A1,A2間の位相差を0にすれば、クロスポート(
図6では右側の出力ポートO)から信号光Pが出力され、光アーム光導波路A1,A2間の位相差を
πにすれば、スルーポート(
図6では左側の出力ポートO)から信号光Pが出力されるようにしている。
【0014】
図5に戻り説明を続けると、ツリー型光スイッチ構成10は、光スイッチSWの配置数(7個)と同数(7個)の制御端子CT1〜CT7を備えている。各光スイッチSWの各電極端子ETには、制御電子回路C1〜C7から、制御端子CT1〜CT7及び電気配線LEを介して、電圧または電流が個別に供給されるようになっている。
【0015】
電極端子ETに電圧または電流が供給されることにより、光スイッチ(MZ型の光位相変調器)SWの位相変調領域PMの屈折率が変化して、位相が変調され、スイッチング動作が行なわれる。
【0016】
各制御電子回路C1〜C7は、電圧値が0ボルトとなっている制御電圧V
0と、アーム光導波路A1,A2間の位相差を
πとする電圧値となっている制御電圧
Vπを出力する。したがって、各制御電子回路C1〜C7から各光スイッチSWの電極端子ETに制御電圧V
0を入力すると、クロスポートから信号光が出力され、各制御電子回路C1〜C7から各光スイッチSWの電極端子ETに制御電圧
Vπを入力すると、スルーポートから信号光が出力されて、スイッチング動作を行うことができる。
なお
図7は、1×2光スイッチSWの電圧印加による位相変動状態を示すものである。
【0017】
図5に示すツリー型光スイッチ構成10では、各段の光スイッチSWをスイッチング動作させることにより、最終的には、3段目の光スイッチSW31,SW32,SW33,SW34に形成された合計8個の出力ポートOのうちのいずれか1つの出力ポートOから光信号Pを出力することができる。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、本発明に係るツリー型光スイッチ構成を、実施例に基づき詳細に説明する。
【0033】
[実施例1]
図1は本発明の実施例1に係る、ツリー型光スイッチ構成20を示す構成図である。
実施例1に係るツリー型光スイッチ構成20は、1×2の光スイッチSWを基本構成要素としており、合計で3つの光スイッチSWを、2段、ツリー状に接続して構成したものである。
【0034】
更に詳述すると、ツリー型光スイッチ構成20では、1段目(最上段)に1つの光スイッチSW11を配置し、2段目(最下段)に2つの光スイッチSW21,SW22を配置している。
各光スイッチSWは、上段側に1本の入力ポートIが位置し、下段側に2本の出力ポートOが位置する向きに配列されており、上段側の光スイッチの各出力ポートOに、下段側の光スイッチの入力ポートIが接続されるように、上段側と下段側の光スイッチSWが光導波路LLにより接続されている。
【0035】
各光スイッチSWとしては、マッハツェンダー(MZ:Mach-Zehnder)型の光位相変調器を用いている。
【0036】
MZ型の光位相変調器は、
図2に示すように、入力側の方向性結合器Y1と、出力側の方向性結合器Y2と、入力側と出力側の方向性結合器Y1,Y2を接続する2つのアーム光導波路A1,A2と、入力側の方向性結合器Y1に接続された1つの入力ポートIと、出力側の方向性結合器Y2に接続された2つの出力ポートOを有している。
入力側の方向性結合器Y1は光強度を2等分する特性を有し、出力側の方向性結合器Y2は光を結合する特性を有している。また、2つのアーム光導波路A1,A2の長さは等しくなっている。
【0037】
アーム光導波路A1,A2のうち、一方のアーム光導波路A1には、位相変調領域PMが形成され、この位相変調領域PM上には、電極端子ETが配置されている。光の伝送方向に沿う、位相変調領域PMの長さについては後述する。
更に、一方のアーム光導波路A1には、位相調整領域PAが形成されている。位相調整領域PAによる位相調整量については後述する。
結局、アーム光導波路A1,A2のうち一方のアーム光導波路A1には、位相変調領域PMと位相調整領域PAが直列状態になって配置されている。
【0038】
位相変調領域PMにおいて位相変調を得るには光導波路の屈折率を変化させれば良い。ガラス系の光導波路では、ヒータ(この場合には、電極端子がヒータになる)へ電流を通電することで温度制御し、TO(Thermo-Optic)効果を用いて屈折率を変化させる。InP系の光導波路では、電圧印加によるフランツケルディッシュ(FK:Franz-Keldysh)効果や量子閉じ込めシュタルク(QCSE:Quantum Confined Stark Effect)効果もしくは電流注入によるプラズマ効果を用いて屈折率を変化させる。LN系の光導波路では、電圧印加によるポッケルス効果を用いて屈折率を変化させる。
【0039】
ここではInP系の光導波路で電圧印加によるFK効果を用いて説明する。
MZ型の光変調器の一方のアーム光導波路A1の一部にp-i-n構造で電圧印加できる位相変調領域PMを作製する。この部分に逆バイアスで電圧を印加すると、FK効果による吸収変化とともに位相変動が生じる。位相変動量は、印加電圧による単位長さ当たりの屈折率変化量と位相変調領域PMの長さの積で決まる。
【0040】
このようなMZ型の光位相変調器による光スイッチSWでは、入力ポートIに信号光Pを入力したときに、電極端子ETに電圧を供給して位相変調領域PMにおいて位相変調すると共に、位相調整領域PAにおいて位相調整することにより、出力側の2つの出力ポートOのいずれか一方から信号光Pを出力すること、即ちスイッチングをすることができる。
つまり、2つのアーム光導波路A1,A2間の
位相差が±2nπであれば入力したのと反対の光導波路(クロスポート)から光出力し、2つのアーム光導波路A1,A2間の位相差が
±(2n+1)πであれば光入力したのと同じ光導波路(スルーポート)から光出力される(但し、nは整数)。
【0041】
図1に戻りツリー型光スイッチ構成20について説明を続ける。
前述したように、光スイッチ(MZ型の光位相変調器)SW11,SW21,SW22の一方のアーム光導波路A1には、それぞれ、位相変調領域PMと位相調整領域PAが形成されている。
【0042】
位相変調領域PMは、従来のツリー型光スイッチ構成でも存在していた構成要素ではあるが、従来の位相変調領域PMの長さは、光スイッチSWが配置される段が異なっていても、同一であった。
これに対して実施例1では、位相
変調領域PMの長さ(光の伝送方向に沿う長さ)は光スイッチの配置段によって異ならせている。具体的には次のように設定している。
・1段目の第1の光スイッチSW11の位相
変調領域PMの長さは予め設定した所定の長さLである。
・2段目の第1,第2の光スイッチSW21,SW22の位相変調領域PMの長さは、L/2である。
【0043】
位相調整領域PAは、従来のツリー型光スイッチ構成では存在していなかった構成要素である。実施例1では、位相調整領域PAにおいて位相調整することにより付与することができる位相差ΔΦを、次のように設定している。
なお位相差ΔΦとは、位相調整領域PAに入力される信号光Pに対する、位相調整領域PAを通過してきた信号光Pの位相差を意味する。
・1段目の光スイッチSW11の位相調整領域PAにより付与することができる位相差ΔΦは0である。
・2段目の第1の光スイッチSW21の位相調整領域PAにより付与することができる位相差ΔΦは0である。
・2段目の第2の光スイッチSW22の位相調整領域PAにより付与することができる位相差ΔΦは
−π/2である。
【0044】
実施例1のツリー型光スイッチ構成20は、光スイッチSWの配置数に関係なく、1つの制御端子CT1を備えている。各光スイッチSWの各電極端子ETには、1つの制御電子回路C1から制御端子CT1及び電気配線LEを介して、電圧が供給されるようになっている。
【0045】
制御電子回路C1は、制御電圧V
0,V
1,V
2,V
3のうちのいずれかを選択的に出力し、出力した制御電圧が光スイッチSW11,SW21,SW22の各電極端子ETに共通に入力される。このことにより、位相変調領域PMにおいて位相変調することにより位相差を付与することができる。
各制御電圧V
0,V
1,V
2,V
3の電圧値は、次のように設定されている。
【0046】
(1)制御電圧V
0の電圧値は、0ボルトである。このため、制御電圧V
0を位相変調領域PMに入力しても、位相変調領域PMにおいて位相変調は生じない(位相変調領域PMにおいて位相差は付与されない)。
【0047】
(2)制御電圧V
1の電圧値は、長さがLとなっている位相変調領域PMに電圧印加されると、位相変調領域PMにおいて、
+πの位相差を付与することができる値に設定されている。
したがって、制御電圧V
1が、長さがL/2となっている位相変調領域PMに電圧印加されると、この位相変調領域PMにおいては、
+π/2の位相差を付与することができる。
【0048】
(3)制御電圧V
2の電圧値は、長さがLとなっている位相変調領域PMに電圧印加されると、位相変調領域PMにおいて、
+2πの位相差を付与することができる値に設定されている。
したがって、制御電圧V
2が、長さがL/2となっている位相変調領域PMに電圧印加されると、この位相変調領域PMにおいては、
+πの位相差を付与することができる。
【0049】
(4)制御電圧V
3の電圧値は、長さがLとなっている位相変調領域PMに印加されると、位相変調領域PMにおいて、
+3πの位相差を付与することができる値に設定されている。
したがって、制御電圧V
3が、長さがL/2となっている位相変調領域PMに印加されると、この位相変調領域PMにおいては、
+3π/2の位相差を付与することができる。
【0050】
このような複数の電圧を生成する制御電子回路C1としては、一般的なデジタル/アナログ変換回路(DAC:Digital to Analog Converter)を用いればよい。この電子回路(デジタル/アナログ変換回路)は、FPGA(Field Programmable Gate Array)等のIC回路から論理的に生成された複数ビットのデジタル信号dを、アナログ信号に変換する回路である。
上記の場合には、少なくとも2ビットのデジタル信号を、4階調のアナログ信号に変換することで、容易に実現することができる。
【0051】
次に、上述した構成になっているツリー型光スイッチ構成20のスイッチング動作を説明する。
【0052】
1段目の光スイッチSW11の位相変調領域PMに、制御電子回路C1から制御電圧V
0を印加するとアーム光導波路A1,A2間の位相差が0となり、制御電圧V
2を印加するとアーム光導波路A1,A2間の位相差が
+2πとなり、右側の出力ポート(クロスポート)Oから信号光Pが出力される。
光スイッチSW11の位相変調領域PMに、制御電子回路C1から制御電圧V
1を印加するとアーム光導波路A1,A2間の位相差が
+πとなり、制御電圧V
3を印加するとアーム光導波路A1,A2間の位相差が
+3πとなり、左側の出力ポート(スルーポート)Oから信号光Pが出力される。
なお、光スイッチSW11では、位相調整領域PAおいて位相差は付与されない。
結局、1×2光スイッチSW11での電圧印加による位相変動は
図3(a)のようになる。
【0053】
2段目の第1の光スイッチSW21では、制御電圧V=V
1,V
3のときは、光スイッチSW21に信号光Pが入力されないので、どちらの出力ポートOからも信号光Pは出力されず、特に考慮する必要がない。
光スイッチSW21の位相変調領域PMに、制御電圧V
0を印加するとアーム光導波路A1,A2間の位相差が0となり、右側の出力ポート(クロスポート)Oから信号光Pが出力される。
光スイッチSW21の位相変調領域PMに、制御電圧V
2を印加するとアーム光導波路A1,A2間の位相差が
+πとなり、左側の出力ポート(スルーポート)Oから信号光Pが出力される。
なお、光スイッチSW21では、位相調整領域PAにおいて位相差は付与されない。
結局、1×2光スイッチSW21での電圧印加による位相変動は
図3(b)のようになる。
【0054】
2段目の第2の光スイッチSW22では、制御電圧V=V
0,V
2のときは、光スイッチSW22に信号光が入力されないので、どちらの出力ポートOからも信号光Pは出力されず、特に考慮する必要がない。
光スイッチSW22の位相変調領域PMに、制御電圧V
1を印加すると、位相変調領域PMにおいて信号光Pに
+π/2の位相差を付与することができる。また、位相調整領域PAにおいて信号光Pに
−π/2の位相差が付与される。この結果、アーム光導波路A1,A2間の位相差が0(=
+π/2−π/2)となり、右側の出力ポート(クロスポート)Oから信号光Pが出力される。
光スイッチSW22の位相変調領域PMに、制御電圧V
3を印加すると位相変調領域PMにおいて信号光Pに
+3π/2の位相差を付与することができる。また、位相調整領域PAにおいて信号光Pに
−π/2の位相差が付与される。この結果、アーム光導波路A1,A2間の位相差が
+π(=
+3π/2−π/2)となり、左側の出力ポート(スルーポート)Oから信号光Pが出力される。
結局、1×2光スイッチSW22での電圧印加による位相変動は
図3(c)のようになる。
【0055】
以上を整理すると、表1のようになる。
【表1】
【0056】
したがって、ツリー型光スイッチ構成20は、次のようなスイッチング動作を行うことができる。
(1)光スイッチSW11,SW21,SW22の電極端子ETに、制御電圧V
0を入力したときには、2段目の第1の光スイッチSW21のクロスポートから信号光Pを出力する。
(2)光スイッチSW11,SW21,SW22の電極端子ETに、制御電圧V
1を入力したときには、2段目の第2の光スイッチSW22のクロスポートから信号光Pを出力する。
(3)光スイッチSW11,SW21,SW22の電極端子ETに、制御電圧V
2を入力したときには、2段目の第1の光スイッチSW21のスルーポートから信号光Pを出力する。
(4)光スイッチSW11,SW21,SW22の電極端子ETに、制御電圧V
3を入力したときには、2段目の第2の光スイッチSW22のスルーポートから信号光Pを出力する。
【0057】
このように、ツリー型光スイッチ構成20の最終段の出力ポートOは4つあるが、ツリー型光スイッチ構成20には1つの制御端子C1を備えるだけで済む。このため、ツリー型光スイッチ構成20は、電気配線LEを簡略化でき、小型化を図ることができる。
またツリー型光スイッチ構成20には1つの制御電子回路C1を接続するだけで済むため、ツリー型光スイッチ構成20と制御電子回路C1から成る光スイッチ装置では、小型化や省電力化を図ることができる。
【0058】
[実施例2]
図4は本発明の実施例2に係る、ツリー型光スイッチ構成20Aを示す構成図である。
実施例2に係るツリー型光スイッチ構成20Aは、1×2の光スイッチSWを基本構成要素としており、合計で7つの光スイッチSWを、3段、ツリー状に接続して構成したものである。
【0059】
更に詳述すると、ツリー型光スイッチ構成20Aでは、1段目(最上段)に1つの光スイッチSW11を配置し、2段目に2つの光スイッチSW21,SW22を配置し、3段目(最下段)に4つの光スイッチSW31,SW32,SW33,SW34を配置している。
各光スイッチSWは、上段側に1本の入力ポートIが位置し、下段側に2本の出力ポートOが位置する向きに配列されており、上段側の光スイッチの各出力ポートOに、下段側の光スイッチの入力ポートIが接続されるように、上段側と下段側の光スイッチSWが光導波路LLにより接続されている。
【0060】
各光スイッチSWとしては、マッハツェンダー(MZ:Mach-Zehnder)型の光位相変調器を用いている。
MZ型の光位相変調器は、
図2に示す構成のものである。つまり、長さの等しいアーム光導波路A1,A2のうち一方のアーム光導波路A1には、位相変調領域PMと位相調整領域PAが直列状態になって配置されており、位相変調領域PM上には、電極端子ETが配置されている。
位相変調領域PMは、InP系の光導波路であるアーム光導波路A1,A2のうち、一方のアーム光導波路A1の一部にp-i-n構造で電圧印加できる領域として作製しており、この部分に逆バイアスで電圧を印加すると、FK効果による吸収変化とともに位相変動が生じる。
【0061】
このようなMZ型の光位相変調器による光スイッチSWでは、入力ポートIに信号光Pを入力したときに、電極端子ETに電圧を供給して位相変調領域PMにおいて位相変調すると共に、位相調整領域PAにおいて位相調整することにより、出力側の2つの出力ポートOのいずれか一方から信号光Pを出力すること、即ちスイッチングをすることができる。
つまり、2つのアーム光導波路A1,A2間の
位相差が±2nπであれば入力したのと反対の光導波路(クロスポート)から光出力し、2つのアーム光導波路A1,A2間の位相差が
±(2n+1)πであれば光入力したのと同じ光導波路(スルーポート)から光出力される(但し、nは整数)。
【0062】
図4に戻りツリー型光スイッチ構成20Aについて説明を続ける。
前述したように、光スイッチ(MZ型の光位相変調器)SW11,SW21,SW22,SW31,SW32,SW33,SW34の一方のアーム光導波路A1には、それぞれ、位相変調領域PMと位相調整領域PAが形成されている。
【0063】
実施例2では、位相
変調領域PMの長さ(光の伝送方向に沿う長さ)は光スイッチの配置段によって異ならせている。具体的には次のように設定している。
・1段目の第1の光スイッチSW11の位相
変調領域PMの長さは予め設定した所定の長さLである。
・2段目の第1,第2の光スイッチSW21,SW22の位相変調領域PMの長さは、L/2である。
・3段目の第1,第2,第3,第4の光スイッチSW31,SW32,SW33,SW34の位相変調領域PMの長さは、L/4である。
【0064】
実施例2では、位相調整領域PAにおいて位相調整することにより付与することができる位相差ΔΦを、次のように設定している。
・1段目の光スイッチSW11の位相調整領域PAにより付与することができる位相差ΔΦは0である。
・2段目の第1の光スイッチSW21の位相調整領域PAにより付与することができる位相差ΔΦは0である。
・2段目の第2の光スイッチSW22の位相調整領域PAにより付与することができる位相差ΔΦは
−π/2である。
・3段目の第1の光スイッチSW31の位相調整領域PAにより付与することができる位相差ΔΦは0である。
・3段目の第2の光スイッチSW32の位相調整領域PAにより付与することができる位相差ΔΦは
−2π/4である。
・3段目の第3の光スイッチSW33の位相調整領域PAにより付与することができる位相差ΔΦは
−π/4である。
・3段目の第4の光スイッチSW34の位相調整領域PAにより付与することができる位相差ΔΦは
−3π/4である。
【0065】
実施例2のツリー型光スイッチ構成20Aは、光スイッチSWの配置数に関係なく、1つの制御端子CT1を備えている。各光スイッチSWの各電極端子ETには、1つの制御電子回路C1から制御端子CT1及び電気配線LEを介して、電圧が供給されるようになっている。
【0066】
制御電子回路C1は、制御電圧V
0,V
1,V
2,V
3,V
4,V
5,V
6,V
7のうちのいずれかを選択的に出力し、出力した制御電圧が光スイッチSW11,SW21,SW22,SW31,SW32,SW33,SW34の電極端子ETに共通に入力される。このことにより、位相変調領域PMにおいて位相変調することにより位相差を付与することができる。
各制御電圧V
0,V
1,V
2,V
3,V
4,V
5,V
6,V
7の電圧値は、次のように設定されている。
【0067】
(1)制御電圧V
0の電圧値は、0ボルトである。このため、制御電圧V
0を位相変調領域PMに入力しても、位相変調領域PMにおいて位相変調は生じない(位相変調領域PMにおいて位相差は付与されない)。
【0068】
(2)制御電圧V
1の電圧値は、長さがLとなっている位相変調領域PMに電圧印加されると、位相変調領域PMにおいて、
+πの位相差を付与することができる値に設定されている。
したがって、制御電圧V
1が、長さがL/2となっている位相変調領域PMに電圧印加されると、この位相変調領域PMにおいては、
+π/2の位相差を付与することができる。
また、制御電圧V
1が、長さがL/4となっている位相変調領域PMに電圧印加されると、この位相変調領域PMにおいては、
+π/4の位相差を付与することができる。
【0069】
(3)制御電圧V
2の電圧値は、長さがLとなっている位相変調領域PMに電圧印加されると、位相変調領域PMにおいて、
+2πの位相差を付与することができる値に設定されている。
したがって、制御電圧V
2が、長さがL/2となっている位相変調領域PMに電圧印加されると、この位相変調領域PMにおいては、
+πの位相差を付与することができる。
また、制御電圧V
2が、長さがL/4となっている位相変調領域PMに電圧印加されると、この位相変調領域PMにおいては、
+π/2の位相差を付与することができる。
【0070】
(4)制御電圧V
3の電圧値は、長さがLとなっている位相変調領域PMに印加されると、位相変調領域PMにおいて、
+3πの位相差を付与することができる値に設定されている。
したがって、制御電圧V
3が、長さがL/2となっている位相変調領域PMに印加されると、この位相変調領域PMにおいては、
+3π/2の位相差を付与することができる。
また、制御電圧V
3が、長さがL/4となっている位相変調領域PMに電圧印加されると、この位相変調領域PMにおいては、
+3π/4の位相差を付与することができる。
【0071】
(5)制御電圧V
4の電圧値は、長さがLとなっている位相変調領域PMに印加されると、位相変調領域PMにおいて、
+4πの位相差を付与することができる値に設定されている。
したがって、制御電圧V
4が、長さがL/2となっている位相変調領域PMに印加されると、この位相変調領域PMにおいては、
+2πの位相差を付与することができる。
また、制御電圧V
4が、長さがL/4となっている位相変調領域PMに電圧印加されると、この位相変調領域PMにおいては、
+πの位相差を付与することができる。
【0072】
(6)制御電圧V
5の電圧値は、長さがLとなっている位相変調領域PMに印加されると、位相変調領域PMにおいて、
+5πの位相差を付与することができる値に設定されている。
したがって、制御電圧V
5が、長さがL/2となっている位相変調領域PMに印加されると、この位相変調領域PMにおいては、
+5π/2の位相差を付与することができる。
また、制御電圧V
5が、長さがL/4となっている位相変調領域PMに電圧印加されると、この位相変調領域PMにおいては、
+5π/4の位相差を付与することができる。
【0073】
(7)制御電圧V
6の電圧値は、長さがLとなっている位相変調領域PMに印加されると、位相変調領域PMにおいて、
+6πの位相差を付与することができる値に設定されている。
したがって、制御電圧V
6が、長さがL/2となっている位相変調領域PMに印加されると、この位相変調領域PMにおいては、
+6π/2の位相差を付与することができる。
また、制御電圧V
6が、長さがL/4となっている位相変調領域PMに電圧印加されると、この位相変調領域PMにおいては、
+6π/4の位相差を付与することができる。
【0074】
(8)制御電圧V
7の電圧値は、長さがLとなっている位相変調領域PMに印加されると、位相変調領域PMにおいて、
+7πの位相差を付与することができる値に設定されている。
したがって、制御電圧V
7が、長さがL/2となっている位相変調領域PMに印加されると、この位相変調領域PMにおいては、
+7π/2の位相差を付与することができる。
また、制御電圧V
7が、長さがL/4となっている位相変調領域PMに電圧印加されると、この位相変調領域PMにおいては、
+7π/4の位相差を付与することができる。
【0075】
このような複数の電圧を生成する制御電子回路C1としては、一般的なデジタル/アナログ変換回路(DAC:Digital to Analog Converter)を用いればよい。この電子回路(デジタル/アナログ変換回路)は、FPGA(Field Programmable Gate Array)等のIC回路から論理的に生成された複数ビットのデジタル信号dを、アナログ信号に変換する回路である。
上記の場合には、少なくとも2ビットのデジタル信号を、8階調のアナログ信号に変換することで、容易に実現することができる。
【0076】
次に、上述した構成になっているツリー型光スイッチ構成20Aのスイッチング動作を説明する。
【0077】
1段目の光スイッチSW11の位相変調領域PMに、制御電子回路C1から制御電圧V
0を印加するとアーム光導波路A1,A2間の位相差が0となり、制御電圧V
2を印加するとアーム光導波路A1,A2間の位相差が
+2πとなり、制御電圧V
4を印加するとアーム光導波路A1,A2間の位相差が
+4πとなり、制御電圧V
6を印加するとアーム光導波路A1,A2間の位相差が
+6πとなり、右側の出力ポート(クロスポート)Oから信号光Pが出力される。
光スイッチSW11の位相変調領域PMに、制御電子回路C1から制御電圧V
1を印加するとアーム光導波路A1,A2間の位相差が
+πとなり、制御電圧V
3を印加するとアーム光導波路A1,A2間の位相差が
+3πとなり、制御電圧V
5を印加するとアーム光導波路A1,A2間の位相差が
+5πとなり、制御電圧V
7を印加するとアーム光導波路A1,A2間の位相差が
+7πとなり、左側の出力ポート(スルーポート)Oから信号光Pが出力される。
なお、光スイッチSW11では、位相調整領域PAにおいて位相差は付与されない。
【0078】
2段目の第1の光スイッチSW21では、制御電圧V=V
1,V
3,V
5,V
7のときは、光スイッチSW21に信号光Pが入力されないので、どちらの出力ポートOからも信号光Pは出力されず、特に考慮する必要がない。
光スイッチSW21の位相変調領域PMに、制御電圧V
0を印加するとアーム光導波路A1,A2間の位相差が0となり、右側の出力ポート(クロスポート)Oから信号光Pが出力される。
光スイッチSW21の位相変調領域PMに、制御電圧V
2を印加するとアーム光導波路A1,A2間の位相差が
+πとなり、左側の出力ポート(スルーポート)Oから信号光Pが出力される。
光スイッチSW21の位相変調領域PMに、制御電圧V
4を印加するとアーム光導波路A1,A2間の位相差が
+2πとなり、右側の出力ポート(クロスポート)Oから信号光Pが出力される。
光スイッチSW21の位相変調領域PMに、制御電圧V
6を印加するとアーム光導波路A1,A2間の位相差が
+3πとなり、左側の出力ポート(スルーポート)Oから信号光Pが出力される。
なお、光スイッチSW21では、位相調整領域PAにおいて位相差は付与されない。
【0079】
2段目の第2の光スイッチSW22では、制御電圧V=V
0,V
2,V
4,V
6のときは、光スイッチSW22に信号光が入力されないので、どちらの出力ポートOからも信号光Pは出力されず、特に考慮する必要がない。
光スイッチSW22の位相変調領域PMに、制御電圧V
1を印加すると、位相変調領域PMにおいて信号光Pに
+π/2の位相差を付与することができる。また、位相調整領域PAにおいて信号光Pに
−π/2の位相差が付与される。この結果、アーム光導波路A1,A2間の位相差が0(=
+π/2−π/2)となり、右側の出力ポート(クロスポート)Oから信号光Pが出力される。
光スイッチSW22の位相変調領域PMに、制御電圧V
3を印加すると位相変調領域PMにおいて信号光Pに
+3π/2の位相差を付与することができる。また、位相調整領域PAにおいて信号光Pに
−π/2の位相差が付与される。この結果、アーム光導波路A1,A2間の位相差が
+π(=
+3π/2−π/2)となり、左側の出力ポート(スルーポート)Oから信号光Pが出力される。
光スイッチSW22の位相変調領域PMに、制御電圧V
5を印加すると、位相変調領域PMにおいて信号光Pに
+5π/2の位相差を付与することができる。また、位相調整領域PAにおいて信号光Pに
−π/2の位相差が付与される。この結果、アーム光導波路A1,A2間の位相差が
2π(=
+5π/2−π/2)となり、右側の出力ポート(クロスポート)Oから信号光Pが出力される。
光スイッチSW22の位相変調領域PMに、制御電圧V
7を印加すると位相変調領域PMにおいて信号光Pに
+7π/2の位相差を付与することができる。また、位相調整領域PAにおいて信号光Pに
−π/2の位相差が付与される。この結果、アーム光導波路A1,A2間の位相差が
+3π(=
+7π/2−π/2)となり、左側の出力ポート(スルーポート)Oから信号光Pが出力される。
【0080】
3段目の第1の光スイッチSW31では、制御電圧V=V
1,V
2,V
3,V
5,V
6,V
7のときは、光スイッチSW31に信号光Pが入力されないので、どちらの出力ポートOからも信号光Pは出力されず、特に考慮する必要がない。
光スイッチSW31の位相変調領域PMに、制御電圧V
0を印加するとアーム光導波路A1,A2間の位相差が0となり、右側の出力ポート(クロスポート)Oから信号光Pが出力される。
光スイッチSW31の位相変調領域PMに、制御電圧V
4を印加するとアーム光導波路A1,A2間の位相差が
+πとなり、左側の出力ポート(スルーポート)Oから信号光Pが出力される。
【0081】
3段目の第2の光スイッチSW32では、制御電圧V=V
0,V
1,V
3,V
4,V
5,V
7のときは、光スイッチSW32に信号光が入力されないので、どちらの出力ポートOからも信号光Pは出力されず、特に考慮する必要がない。
光スイッチSW32の位相変調領域PMに、制御電圧V
2を印加すると、位相変調領域PMにおいて信号光Pに
+2π/4の位相差を付与することができる。また、位相調整領域PAにおいて信号光Pに
−2π/4の位相差が付与される。この結果、アーム光導波路A1,A2間の位相差が0(=
+2π/4−2π/4)となり、右側の出力ポート(クロスポート)Oから信号光Pが出力される。
光スイッチSW32の位相変調領域PMに、制御電圧V
6を印加すると位相変調領域PMにおいて信号光Pに
+6π/4の位相差を付与することができる。また、位相調整領域PAにおいて信号光Pに
−2π/4の位相差が付与される。この結果、アーム光導波路A1,A2間の位相差が
+π(=
+6π/4−2π/4)となり、左側の出力ポート(スルーポート)Oから信号光Pが出力される。
【0082】
3段目の第3の光スイッチSW33では、制御電圧V=V
0,V
2,V
3,V
4,V
6,V
7のときは、光スイッチSW33に信号光が入力されないので、どちらの出力ポートOからも信号光Pは出力されず、特に考慮する必要がない。
光スイッチSW33の位相変調領域PMに、制御電圧V
1を印加すると、位相変調領域PMにおいて信号光Pに
+π/4の位相差を付与することができる。また、位相調整領域PAにおいて信号光Pに
−π/4の位相差が付与される。この結果、アーム光導波路A1,A2間の位相差が0(=
+π/4−π/4)となり、右側の出力ポート(クロスポート)Oから信号光Pが出力される。
光スイッチSW33の位相変調領域PMに、制御電圧V
5を印加すると位相変調領域PMにおいて信号光Pに
+5π/4の位相差を付与することができる。また、位相調整領域PAにおいて信号光Pに
−π/4の位相差が付与される。この結果、アーム光導波路A1,A2間の位相差が
+π(=
+5π/4−π/4)となり、左側の出力ポート(スルーポート)Oから信号光Pが出力される。
【0083】
3段目の第4の光スイッチSW34では、制御電圧V=V
0,V
1,V
2,V
4,V
5,V
6,のときは、光スイッチSW34に信号光が入力されないので、どちらの出力ポートOからも信号光Pは出力されず、特に考慮する必要がない。
光スイッチSW34の位相変調領域PMに、制御電圧V
3を印加すると、位相変調領域PMにおいて信号光Pに
+3π/4の位相差を付与することができる。また、位相調整領域PAにおいて信号光Pに
−3π/4の位相差が付与される。この結果、アーム光導波路A1,A2間の位相差が0(=
+3π/4−3π/4)となり、右側の出力ポート(クロスポート)Oから信号光Pが出力される。
光スイッチSW34の位相変調領域PMに、制御電圧V
7を印加すると位相変調領域PMにおいて信号光Pに
+7π/4の位相差を付与することができる。また、位相調整領域PAにおいて信号光Pに
−3π/4の位相差が付与される。この結果、アーム光導波路A1,A2間の位相差が
+π(=
+7π/4−3π/4)となり、左側の出力ポート(スルーポート)Oから信号光Pが出力される。
【0084】
以上を整理すると、表2のようになる。なお表2において、空白の欄は、信号光が入力されない光スイッチを表している。
【表2】
【0085】
したがって、ツリー型光スイッチ構成20Aは、次のようなスイッチング動作を行うことができる。
(1)光スイッチSW11,SW21,SW22,SW31,SW32,SW33,SW34の電極端子ETに、制御電圧V
0を入力したときには、3段目の第1の光スイッチSW31のクロスポートから信号光Pを出力する。
(2)光スイッチSW11,SW21,SW22,SW31,SW32,SW33,SW34の電極端子ETに、制御電圧V
1を入力したときには、3段目の第3の光スイッチSW33のクロスポートから信号光Pを出力する。
(3)光スイッチSW11,SW21,SW22,SW31,SW32,SW33,SW34の電極端子ETに、制御電圧V
2を入力したときには、3段目の第2の光スイッチSW31のクロスポートから信号光Pを出力する。
(4)光スイッチSW11,SW21,SW22,SW31,SW32,SW33,SW34の電極端子ETに、制御電圧V
3を入力したときには、3段目の第4の光スイッチSW34のクロスポートから信号光Pを出力する。
(5)光スイッチSW11,SW21,SW22,SW31,SW32,SW33,SW34の電極端子ETに、制御電圧V
4を入力したときには、3段目の第1の光スイッチSW31のスルーポートから信号光Pを出力する。
(6)光スイッチSW11,SW21,SW22,SW31,SW32,SW33,SW34の電極端子ETに、制御電圧V
5を入力したときには、3段目の第3の光スイッチSW33のスルーポートから信号光Pを出力する。
(7)光スイッチSW11,SW21,SW22,SW31,SW32,SW33,SW34の電極端子ETに、制御電圧V
6を入力したときには、3段目の第2の光スイッチSW31のスルーポートから信号光Pを出力する。
(8)光スイッチSW11,SW21,SW22,SW31,SW32,SW33,SW34の電極端子ETに、制御電圧V
7を入力したときには、3段目の第4の光スイッチSW34のスルーポートから信号光Pを出力する。
【0086】
このように、ツリー型光スイッチ構成20Aの最終段の出力ポートOは8つあるが、ツリー型光スイッチ構成20Aには1つの制御端子C1を備えるだけで済む。このため、ツリー型光スイッチ構成20Aは、電気配線LEを簡略化でき、小型化を図ることができる。
またツリー型光スイッチ構成20Aには1つの制御電子回路C1を接続するだけで済むため、ツリー型光スイッチ構成20Aと制御電子回路C1から成る光スイッチ装置では、小型化や省電力化を図ることができる。
【0087】
[変形例等]
本発明は、上述した1×4のツリー型光スイッチ構成(実施例1)や、1×8のツリー型光スイッチ構成(実施例2)のみならず、1×16や1×32や1×2
Mのツリー型光スイッチ構成などの多ポート化にも対応できる(但しMは2以上の整数)。
【0088】
1×2
Mのツリー型光スイッチ構成においては、次のように設定する。
(1)光スイッチSWのうち第1段目の光スイッチSWに形成した位相変調領域PMの長さは、予め設定した長さLになっており、第2段目以降の光スイッチSWに形成した位相変調領域PMの長さは、当該段の光スイッチSWに対して1段だけ上段側の光スイッチに形成した位相変調領域PMの長さの半分になっている。
(2)第1段目では、光スイッチSWの位相調整領域PAが付与する位相差は0である。
(3)第2段目以降では、光スイッチSWの位相調整領域PAが付与する位相差は、−(
2π/2
M)×Q(但しQは、0から1ずつ増加する数であり、最大値は2
(M-1)−1である)のうちのいずれか一つである。
【0089】
上記の設定条件のうち(3)に記載した「光スイッチSWの位相調整領域PAが付与する位相差は、−(
2π/2
M)×Q(但しQは、0から1ずつ増加する数であり、最大値は2
(M-1)−1である)のうちのいずれか一つである。」について、具体的に説明する。
M=2である場合には、Qは1である。このため位相差Δφは、−(
2π/2
2)×1=
−π/2となる。
M=3である場合には、Qは、1,2,3である。このため位相差Δφは、−(
2π/2
3)×1=
−π/4、−(
2π/2
3)×2=
−2π/4、−(
2π/2
3)×3=
−3π/4となる。
【0090】
制御電圧は、電圧値の異なる2
M種類の制御電圧V0,V1,V2,・・・V2
M−1である。制御電圧の値は次のように設定する。
制御電圧V0の電流値は0であり、制御電圧V1の電流値は第1段目の位相変調領域に入力されたときに信号光に対して
+πの位相差を付与できる値であり、以降、制御電圧V2,V3・・・V2
M−1となるに従い、第1段目の位相変調領域に入力されたときに信号光に対して付与する位相差が
+πに順次
+πずつ増加していく値であるようにする。
【0091】
なお多ポート化することにより必要となる位相変調量が大きくなるが、この場合には印加電圧の増加は抑え、その代わりに位相変調領域を長尺化することで、対処することができる。
また多値の制御電圧を精度よく供給する必要があるが、一般的なデジタル/アナログ変換回路(DAC)のビット数(8−16ビット)を勘案すると、1×128程度までは大きな問題とはならない。
【0092】
また上記のようにDACの制御電圧を多値化して基本構成のポート数を増加させる手法だけでなく、基本構成のポート数は作製が簡便な1×4や1×8を用いて、これらを多段構成にしてポート数を増加してもよい。
この場合にはDACの必要個数は増加するものの、従来例と比べると制御端子数および制御電気回路数を大幅に削減できる。例えば、1×64の光スイッチは21個の1×4の光スイッチで構成でき、制御端子数は21個となる。
それに対して、従来例の構成では制御端子が63個必要なので1/3まで削減することができる。また7個の1×8の光スイッチでも構成でき、制御端子数は7個となって1/9まで削減できる。
【0093】
更に上記の実施例1,2では、制御電子回路Cからツリー型光スイッチ構成へ制御電圧を入力していたが、電流注入によるプラズマ効果を用いて屈折率を変化させるInP系の光導波路に形成した位相変調領域PMや、ヒータ(電極端子)へ電流を通電することでTO(Thermo-Optic)効果を用いて屈折率を変化させるガラス系の光導波路に形成した位相変調領域PMを採用した場合には、制御電圧の代わりに制御電流を入力する。
【0094】
制御電流は、電流値の異なる2
M種類の制御電流I0,I1,I2,・・・I2
M−1である。制御電流の値は次のように設定する。
制御電流I0の電流値は0であり、制御電流I1の電流値は第1段目の位相変調領域に入力されたときに信号光に対して
+πの位相差を付与できる値であり、以降、制御電流I2,I3・・・I2
M−1となるに従い、第1段目の位相変調領域に入力されたときに信号光に対して付与する位相差が
+πに順次
+πずつ増加していく値であるようにする。