特許第6247181号(P6247181)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6247181シリコン又はゲルマニウム又はシリコンゲルマニウム膜の成膜方法および成膜装置
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6247181
(24)【登録日】2017年11月24日
(45)【発行日】2017年12月13日
(54)【発明の名称】シリコン又はゲルマニウム又はシリコンゲルマニウム膜の成膜方法および成膜装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/205 20060101AFI20171204BHJP
   C23C 16/24 20060101ALI20171204BHJP
   C23C 16/02 20060101ALI20171204BHJP
   C23C 16/56 20060101ALI20171204BHJP
   H01L 21/20 20060101ALI20171204BHJP
【FI】
   H01L21/205
   C23C16/24
   C23C16/02
   C23C16/56
   H01L21/20
【請求項の数】14
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2014-181416(P2014-181416)
(22)【出願日】2014年9月5日
(65)【公開番号】特開2016-58444(P2016-58444A)
(43)【公開日】2016年4月21日
【審査請求日】2017年2月28日
(73)【特許権者】
【識別番号】000219967
【氏名又は名称】東京エレクトロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099944
【弁理士】
【氏名又は名称】高山 宏志
(72)【発明者】
【氏名】高木 聡
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 和也
(72)【発明者】
【氏名】村上 博紀
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 大介
【審査官】 河合 俊英
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−281591(JP,A)
【文献】 特開2002−025972(JP,A)
【文献】 特開平09−007909(JP,A)
【文献】 特開平07−183217(JP,A)
【文献】 特開2010−010513(JP,A)
【文献】 特開平5−243148(JP,A)
【文献】 特開平8−55797(JP,A)
【文献】 特開2000−349321(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/205
C23C 16/02
C23C 16/24
C23C 16/56
H01L 21/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被処理体の被処理面上にシリコン又はゲルマニウム又はシリコンゲルマニウム膜を成膜するシリコン又はゲルマニウム又はシリコンゲルマニウム膜の成膜方法であって、
(1) 前記被処理面上に単結晶シリコン又は単結晶ゲルマニウム又は単結晶シリコンゲルマニウムを有した前記被処理体を処理室内に収容する工程と、
(2) 前記処理室内に、成膜されるシリコン又はゲルマニウム又はシリコンゲルマニウムの結晶化を抑制する結晶化抑制処理ガスを供給する工程と、
(3) 前記結晶化抑制処理ガスを供給した後、前記処理室内にシリコン又はゲルマニウム又はシリコンゲルマニウムの原料ガスを供給し、前記被処理体の被処理面上に非晶質シリコン又は非晶質ゲルマニウム又は非晶質シリコンゲルマニウム膜を成膜する工程と、
を備えることを特徴とするシリコン又はゲルマニウム又はシリコンゲルマニウム膜の成膜方法。
【請求項2】
前記結晶化抑制処理ガスは、前記被処理面上の前記単結晶シリコン又は単結晶ゲルマニウム又は単結晶シリコンゲルマニウム表面の、格子定数を変更する作用を持つ物質を含むことを特徴とする請求項1に記載のシリコン又はゲルマニウム又はシリコンゲルマニウム膜の成膜方法。
【請求項3】
前記結晶化抑制処理ガスは、前記単結晶シリコン又は単結晶ゲルマニウム又は単結晶シリコンゲルマニウム表面に、リン、ボロン、炭素のいずれか一つを結合させる作用を、さらに備えることを特徴とする請求項2に記載のシリコン又はゲルマニウム又はシリコンゲルマニウム膜の成膜方法。
【請求項4】
前記結晶化抑制ガスは、
ホスフィン系ガス
ボラン系ガス
炭化水素系ガス
有機シラン系ガス
から選ばれることを特徴とする請求項2又は請求項3に記載のシリコン又はゲルマニウム又はシリコンゲルマニウム膜の成膜方法。
【請求項5】
前記(2)工程の前に、
(4) 前記被処理面から酸化膜を除去する工程を備えていることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一項に記載のシリコン又はゲルマニウム又はシリコンゲルマニウム膜の成膜方法。
【請求項6】
前記(4)工程における前記酸化膜の除去に水素を含む物質を用いることを特徴とする請求項5に記載のシリコン又はゲルマニウム又はシリコンゲルマニウム膜の成膜方法。
【請求項7】
前記(3)工程の後に、
(5) 非晶質シリコン又は非晶質ゲルマニウム又は非晶質シリコンゲルマニウム膜を結晶化させる工程
を、さらに備えることを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか一項に記載のシリコン又はゲルマニウム又はシリコンゲルマニウム膜の成膜方法。
【請求項8】
単結晶シリコン又は単結晶ゲルマニウム又は単結晶シリコンゲルマニウムの表面上に、シリコン又はゲルマニウム又はシリコンゲルマニウム膜を成膜するシリコン又はゲルマニウム又はシリコンゲルマニウム膜の成膜方法であって、
(1) 単結晶シリコン又は単結晶ゲルマニウム又は単結晶シリコンゲルマニウムの表面の格子定数を変更する工程と、
(2) 前記格子定数を変更した後、前記単結晶シリコン又は単結晶ゲルマニウム又は単結晶シリコンゲルマニウムの表面上に、非晶質シリコン又は非晶質ゲルマニウム又は非晶質シリコンゲルマニウム膜を成膜する工程と、
を備えることを特徴とするシリコン又はゲルマニウム又はシリコンゲルマニウム膜の成膜方法。
【請求項9】
前記(1)工程の前に、
(3) 前記単結晶シリコン又は単結晶ゲルマニウム又は単結晶シリコンゲルマニウムの表面から酸化膜を除去する工程を備えていることを特徴とする請求項8に記載のシリコン又はゲルマニウム又はシリコンゲルマニウム膜の成膜方法。
【請求項10】
前記(2)工程の後に、
(4) 非晶質シリコン又は非晶質ゲルマニウム又は非晶質シリコンゲルマニウム膜を結晶化させる工程
を、さらに備えることを特徴とする請求項8又は請求項9に記載のシリコン又はゲルマニウム又はシリコンゲルマニウム膜の成膜方法。
【請求項11】
被処理体の被処理面上にシリコン膜を成膜する成膜装置であって、
前記被処理体を収容する処理室と、
前記処理室内に結晶化抑制処理ガス、シリコンを含むガス、および不活性ガスを供給するガス供給機構と、
前記処理室内を加熱する加熱装置と、
前記処理室内を排気する排気装置と、
前記ガス供給機構、前記加熱装置、前記排気装置を制御するコントローラと、を備え、
前記コントローラが、前記処理室内において、請求項1から請求項7のいずれか一項に記載されたシリコン膜の成膜方法が前記被処理体に対して実施されるように、前記ガス供給機構、前記加熱装置、前記排気装置を制御することを特徴とする成膜装置。
【請求項12】
被処理体の被処理面上にゲルマニウム膜を成膜する成膜装置であって、
前記被処理体を収容する処理室と、
前記処理室内に結晶化抑制処理ガス、ゲルマニウムを含むガスおよび不活性ガスを供給するガス供給機構と、
前記処理室内を加熱する加熱装置と、
前記処理室内を排気する排気装置と、
前記ガス供給機構、前記加熱装置、前記排気装置を制御するコントローラと、を備え、
前記コントローラが、前記処理室内において、請求項1から請求項7のいずれか一項に記載されたゲルマニウム膜の成膜方法が前記被処理体に対して実施されるように、前記ガス供給機構、前記加熱装置、前記排気装置を制御することを特徴とする成膜装置。
【請求項13】
被処理体の被処理面上にシリコンゲルマニウム膜を成膜する成膜装置であって、
前記被処理体を収容する処理室と、
前記処理室内に結晶化抑制処理ガス、シリコンを含むガス、ゲルマニウムを含むガスおよび不活性ガスを供給するガス供給機構と、
前記処理室内を加熱する加熱装置と、
前記処理室内を排気する排気装置と、
前記ガス供給機構、前記加熱装置、前記排気装置を制御するコントローラと、を備え、
前記コントローラが、前記処理室内において、請求項1から請求項7のいずれか一項に記載されたシリコンゲルマニウム膜の成膜方法が前記被処理体に対して実施されるように、前記ガス供給機構、前記加熱装置、前記排気装置を制御することを特徴とする成膜装置。
【請求項14】
前記ガス供給機構が、処理室内に結晶化処理ガスをさらに供給することを特徴とする請求項11から請求項13のいずれか一項に記載の成膜装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、シリコン又はゲルマニウム又はシリコンゲルマニウム膜の成膜方法および成膜装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体製造プロセスにおいては、半導体基板上に、例えば、新たな半導体層を形成するための手法としてエピタキシャル成長法が広く用いられている。例えば、単結晶シリコン(Si)基板上に、新たなSi単結晶層(Siエピタキシャル層)を形成する場合である。
【0003】
例えば、特許文献1には、
・単結晶Si基板上に、非晶質Si層を形成すること
・形成された非晶質Si層に熱処理を施し、露出した単結晶Si表面を種として、固相エピタキシャル成長を行うこと
が記載されている。
【0004】
また、Siの他、更なる半導体集積回路装置の高性能化を実現できる半導体材料として、シリコンゲルマニウム(SiGe)やゲルマニウム(Ge)が注目されている。SiGeやGeは、Siよりもキャリア移動度が高くなるため、SiGeやGeを用いることで、トランジスタの更なる動作の高速化を図ることができる。
【0005】
例えば、特許文献2には、
・単結晶Si基板上に、SiGeエピタキシャル層を成長させること
が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第5023004号公報
【特許文献2】特開2009―231836号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、主にホモエピタキシャル成長、例えば、単結晶Si基板上にSiエピタキシャル層を成長させると、Siエピタキシャル層の表面に“ファセット”と呼ばれる“ピラミッド状に尖った部位”が発生する。
【0008】
また、主にヘテロエピタキシャル成長、例えば、単結晶Si基板上にSiGeエピタキシャル層を成長させると、Siの格子定数とSiGeの格子定数との違いにより、SiGeエピタキシャル層の表面に“クロスハッチパターン”と呼ばれる“荒れ”が発生する。
【0009】
また、単結晶上に、非晶質の膜を堆積形成することは困難である。下地の単結晶の上に堆積された膜が、下地の単結晶の格子定数を引きずるためである。
【0010】
この発明は、単結晶Si又は単結晶Ge又は単結晶SiGe上に、結晶化させたSi膜又はGe膜又はSiGe膜を成長させても、表面に“ファセット”や“クロスハッチパターン”等による凹凸の発生を抑制することが可能なシリコン又はゲルマニウム又はシリコンゲルマニウム膜の成膜方法、およびその成膜方法を実施することが可能な成膜装置を提供する。
【0011】
また、この発明は、単結晶Si又は単結晶Ge又は単結晶SiGe上に、非晶質のSi膜又はGe膜又はSiGe膜を堆積形成することが可能なシリコン又はゲルマニウム又はシリコンゲルマニウム膜の成膜方法、およびその成膜方法を実施することが可能な成膜装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
この発明の第1の態様に係るシリコン又はゲルマニウム又はゲルマニウム膜の成膜方法は、被処理体の被処理面上にシリコン又はゲルマニウム又はシリコンゲルマニウム膜を成膜するシリコン又はゲルマニウム又はシリコンゲルマニウム膜の成膜方法であって、(1)前記被処理面上に単結晶シリコン又は単結晶ゲルマニウム又は単結晶シリコンゲルマニウムを有した前記被処理体を処理室内に収容する工程と、(2)前記処理室内に、成膜されるシリコン又はゲルマニウム又はシリコンゲルマニウムの結晶化を抑制する結晶化抑制処理ガスを供給する工程と、(3)前記結晶化抑制処理ガスを供給した後、前記処理室内にシリコン又はゲルマニウム又はシリコンゲルマニウムの原料ガスを供給し、前記被処理体の被処理面上に非晶質シリコン又は非晶質ゲルマニウム又は非晶質シリコンゲルマニウム膜を成膜する工程と、を備える。
【0013】
この発明の第2の態様に係るシリコン又はゲルマニウム又はシリコンゲルマニウム膜の成膜方法は、単結晶シリコン又は単結晶ゲルマニウム又は単結晶シリコンゲルマニウムの表面上に、シリコン又はゲルマニウム又はシリコンゲルマニウム膜を成膜するシリコン又はゲルマニウム又はシリコンゲルマニウム膜の成膜方法であって、(1)単結晶シリコン又は単結晶ゲルマニウム又は単結晶シリコンゲルマニウムの表面の格子定数を変更する工程と、(2)前記格子定数を変更した後、前記単結晶シリコン又は単結晶ゲルマニウム又は単結晶シリコンゲルマニウムの表面上に、非晶質シリコン又は非晶質ゲルマニウム又は非晶質シリコンゲルマニウム膜を成膜する工程と、を備える。
【0014】
この発明の第3の態様に係る成膜装置は、被処理体の被処理面上にシリコン膜を成膜する成膜装置であって、前記被処理体を収容する処理室と、前記処理室内に結晶化抑制処理ガス、シリコンを含むガス、および不活性ガスを供給するガス供給機構と、前記処理室内を加熱する加熱装置と、前記処理室内を排気する排気装置と、前記ガス供給機構、前記加熱装置、前記排気装置を制御するコントローラと、を備え、前記コントローラが、前記処理室内において、第1の態様に係るシリコン膜の成膜方法が前記被処理体に対して実施されるように、前記ガス供給機構、前記加熱装置、前記排気装置を制御する。
【0015】
この発明の第4の態様に係る成膜装置は、被処理体の被処理面上にゲルマニウム膜を成膜する成膜装置であって、前記被処理体を収容する処理室と、前記処理室内に結晶化抑制処理ガス、ゲルマニウムを含むガス、および不活性ガスを供給するガス供給機構と、前記処理室内を加熱する加熱装置と、前記処理室内を排気する排気装置と、前記ガス供給機構、前記加熱装置、前記排気装置を制御するコントローラと、を備え、前記コントローラが、前記処理室内において、第1の態様に係るゲルマニウム膜の成膜方法が前記被処理体に対して実施されるように、前記ガス供給機構、前記加熱装置、前記排気装置を制御する。
【0016】
この発明の第5の態様に係る成膜装置は、被処理体の被処理面上にシリコンゲルマニウム膜を成膜する成膜装置であって、前記被処理体を収容する処理室と、前記処理室内に結晶化抑制処理ガス、シリコンを含むガス、ゲルマニウムを含むガスおよび不活性ガスを供給するガス供給機構と、前記処理室内を加熱する加熱装置と、前記処理室内を排気する排気装置と、前記ガス供給機構、前記加熱装置、前記排気装置を制御するコントローラと、を備え、前記コントローラが、前記処理室内において、第1の態様に係るシリコンゲルマニウム膜の成膜方法が前記被処理体に対して実施されるように、前記ガス供給機構、前記加熱装置、前記排気装置を制御する。
【発明の効果】
【0017】
この発明によれば、単結晶Si又は単結晶Ge又は単結晶SiGe上に、結晶化させたSi膜又はGe膜又はSiGe膜を成長させても、表面に“ファセット”や“クロスハッチパターン”等による凹凸の発生を抑制することが可能なシリコン又はゲルマニウム又はシリコンゲルマニウム膜の成膜方法、およびその成膜方法を実施することが可能な成膜装置を提供できる。また、単結晶Si又は単結晶Ge又は単結晶SiGe上に、非晶質のSi膜又はGe膜又はSiGe膜を堆積形成することが可能なシリコン又はゲルマニウム又はシリコンゲルマニウム膜の成膜方法、およびその成膜方法を実施することが可能な成膜装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】この発明の第1の実施形態に係るシリコン膜の成膜方法の一例を示す流れ図
図2A図1に示すシーケンス中の被処理体の状態を概略的に示す断面図
図2B図1に示すシーケンス中の被処理体の状態を概略的に示す断面図
図2C図1に示すシーケンス中の被処理体の状態を概略的に示す断面図
図2D図1に示すシーケンス中の被処理体の状態を概略的に示す断面図
図2E図1に示すシーケンス中の被処理体の状態を概略的に示す断面図
図3A】参考例を示す断面図
図3B】参考例を示す断面図
図4A】単結晶Siの構造を模式的に示した図
図4B】単結晶Siの構造を模式的に示した図
図4C】単結晶Siの構造を模式的に示した図
図5】この発明の第2の実施形態に係るシリコンゲルマニウム膜の成膜方法の一例を示す流れ図
図6A図5に示すシーケンス中の被処理体の状態を概略的に示す断面図
図6B図5に示すシーケンス中の被処理体の状態を概略的に示す断面図
図6C図5に示すシーケンス中の被処理体の状態を概略的に示す断面図
図6D図5に示すシーケンス中の被処理体の状態を概略的に示す断面図
図6E図5に示すシーケンス中の被処理体の状態を概略的に示す断面図
図7A】参考例を示す断面図
図7B】参考例を示す断面図
図8】この発明の第3の実施形態に係る成膜装置の一例を概略的に示す断面図
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、この発明の実施形態のいくつかを、図面を参照して説明する。なお、全図にわたり、共通の部分には共通の参照符号を付す。
(第1の実施形態)
<成膜方法>
第1の実施形態は、主にホモエピタキシャル成長に関する形態である。
図1はこの発明の第1の実施形態に係るシリコン膜の成膜方法の一例を示す流れ図、図2A図2E図1に示すシーケンス中の被処理体の状態を概略的に示す断面図である。
【0020】
まず、図2Aに示すように、被処理体として、例えば、シリコンウエハ(以下ウエハという)1を用意する。ウエハ1は単結晶Siである。単結晶Siの被処理面上には、薄い皮膜状の自然酸化膜2が形成されている。なお、本例では自然酸化膜2を例示しているが、自然酸化膜2以外に、大気以外との化学的な反応により単結晶Siの被処理面上に形成されたケミカル酸化膜の場合もある。
【0021】
次に、図1中のステップ1および図2Bに示すように、ウエハ1の被処理面から自然酸化膜2を除去する。自然酸化膜2の除去方法としては、自然酸化膜を除去可能な水素を含む物質、例えば、希フッ酸(DHF)を用いたウェット洗浄(ウェットエッチングとも称される)、もしくはアンモニア(NH)ガスとフッ酸(HF)ガスとを用いた化学的酸化膜除去(COR)を挙げることができる。これにより、ウエハ1の被処理面には単結晶Siが露出する。
【0022】
次に、図1中のステップ2および図2Cに示すように、ウエハ1の被処理面に露出した単結晶Siの表面に対して結晶化抑制処理を行う。本例で述べる“結晶化抑制”とは、後に形成する非晶質Si膜の結晶化を抑制することを意味する。結晶化抑制処理は、本例においては、ガスを用いた化学的な処理である。本例では、結晶化抑制処理に、水素を含むガス、例えば、ホスフィン(PH)ガスを用いた。PHガスは、例えば、ウエハ1が収容されている成膜装置の処理室内に供給される。
【0023】
本願発明者らは、単結晶、例えば、単結晶Si上に、結晶化させたSiを成長させると、表面に“ファセット”が発生する原因の一つとして、単結晶Siである被処理面に、極微量に残留した“酸素原子”があることをつきとめた。
【0024】
図3Aおよび図3Bは、参考例を示す断面図である。
自然酸化膜2等の薄い皮膜状のSiOは、ステップ1におけるウェット洗浄やCOR処理によって除去することはできる。しかし、例えば、図3Aに示すように、極微量の酸素原子3が、被処理面の最上層にあるSiの未結合手に結合して残留することがある。局所的に酸素原子3が残留した被処理面上にSiを堆積し、Si膜4を成膜すると、酸素原子3が残留している部分と、それ以外の部分とでは、Si膜4の堆積レートが変わる。
【0025】
このため、図3Bに示すように、結晶化したSi膜4aの表面にはピラミッド状の“ファセット6”が発生する。
【0026】
このようなピラミッド状の“ファセット6”の発生を抑制するために、第1の実施形態においては、自然酸化膜2等の薄い皮膜状のSiOをウェット洗浄やCOR処理によって除去した後、さらに残留した“酸素原子”を除去する。
【0027】
図4A図4Cは、単結晶Siの構造を模式的に示した図である。
図4Aに示すように、単結晶Siでは、Si原子が持つ4つの結合手それぞれにSi原子が結合し、Siが規則正しく配列されている。しかし、単結晶Siの最上層(被処理面)においては、Si原子の結合手が1つ余る。この余った結合手には、例えば、酸素原子(O)や、ウェット洗浄やCOR処理の際、溶液あるいはガスに含まれていた“水素(H)原子”が、通常は結合しているか、未結合のままである。
【0028】
そこで、図4Bに示すように、残留した“酸素(O)原子”や“水素(H)原子”を、被処理面から可能な限り離脱させ、図4Cに示すように、Si原子の結合手に、複数のSi原子に対して吸着する物質を吸着させる。吸着のモードとしては、複数のSi原子に対して“共有結合”や“分子間結合”する物質である。図4Cにおいては、例えば“PH”を結合させる。
【0029】
このように図1中のステップ2に示す“結晶化抑制処理”においては、Si原子の未結合手に、複数のSi原子に対して吸着する物質を吸着させる。このような処理により、ウエハ1の格子定数が変更され、次に成膜される非晶質Si膜に発生する局所的な結晶化を抑えることができる。
【0030】
ステップ2の処理条件の一例は、
PH流 量 :100〜1000sccm
処 理 時 間 :1〜60min
処 理 温 度 :300〜800℃
処 理 圧 力 :133.3〜53320Pa(1〜400Torr)
(本明細書では、1Torrを133.3Paと定義する)
である。
【0031】
本例においては“結晶化抑制処理”に用いる処理ガスとしてPH、即ちホスフィン系ガス(PH、P等)を用いたが、ホスフィン系ガス以外のガスとしては
ボラン系ガス
炭化水素系ガス
有機シラン系ガス
なども“結晶化抑制処理”に使用することができる。このように結晶化抑制処理ガスには、P、B、Cなどを含むガスを用いるとよい。
【0032】
次に、図1中のステップ3および図2Dに示すように、ウエハ1の、結晶化抑制処理が施された被処理面上にSiを堆積し、非晶質Si膜4を形成する。非晶質Si膜4は、例えば、シリコン原料ガスを、ウエハ1が収容されている成膜装置の処理室内に供給することで成膜される。本例ではシリコン原料ガスとして、水素を含むシリコン原料ガス、例えば、ジシラン(Si)を用いた。
【0033】
ステップ3の処理条件の一例は、
Si流 量:10〜1000sccm
処 理 時 間 :1min以上
処 理 温 度 :350〜450℃
処 理 圧 力 :13.3〜1333.3Pa(0.1〜10Torr)
である。
【0034】
本例においては、シリコン原料ガスとしてSiを用いたが、シリコン原料ガスはSiに限られるものではない。非晶質Si膜4を成膜するための原料ガスとしては、水素とシリコンとを含むガスであればよい。
【0035】
次に、図1中のステップ4および図2Eに示すように、非晶質Si膜4が形成されたウエハ1に対して固相エピタキシャル成長処理を行う。固相エピタキシャル成長処理は、例えば、不活性ガス中で行われる熱処理である。不活性ガスの一例は、例えば、窒素ガスである。固相エピタキシャル成長処理が行われることによって、非晶質Si膜4は、結晶化したSi膜4aとなる。結晶化したSi膜4aは、例えば、単結晶である。
【0036】
ステップ4の処理条件の一例は、不活性ガス雰囲気中、
処 理 時 間 : 60min
処 理 温 度 : 300〜1000℃
処 理 圧 力 :133.3〜101308Pa(1〜760Torr)
である。
【0037】
また、本例においては、固相エピタキシャル成長処理を不活性ガス雰囲気中で行ったが、水素ガス雰囲気中で行ってもよく、成膜装置の処理室内を引ききりの状態として行っても良い。
【0038】
このような第1の実施形態に係るシリコン膜の成膜方法によれば、単結晶Si上に非晶質Si膜4を成膜する前に、単結晶Siの被処理面に対して“結晶化抑制処理”を行う。これにより、“結晶化抑制処理”を行わない場合に比較して、非晶質Si膜4を結晶化した際に表面に発生する“ファセット”等の凹凸を抑制することが可能となる、という利点を得ることができる。
【0039】
また、第1の実施形態においては、単結晶Siの上に結晶化させたSiを形成したが、単結晶Geの上に結晶化させたGeを形成してもよいし、単結晶SiGeの上に結晶化させたSiGeを形成してもよい。
【0040】
(第2の実施形態)
<成膜方法>
第2の実施形態は、主にヘテロエピタキシャル成長に関する形態である。
図5はこの発明の第2の実施形態に係るシリコンゲルマニウム膜の成膜方法の一例を示す流れ図、図6A図6E図5に示すシーケンス中の被処理体の状態を概略的に示す断面図である。
【0041】
図5および図6A図6Eに示すように、第2の実施形態が第1の実施形態と異なるところは、第1の実施形態では、単結晶Si上に結晶化したSi膜4aを成膜したのに対し、単結晶Si上に結晶化したSiGe膜8aを成膜したことである。
【0042】
まず、図5中のステップ1、ステップ2、並びに図6A図6Cに示すように、第1の実施形態と同様にして、ウエハ1の被処理面に露出した単結晶Siの表面に対して結晶化抑制処理を行う。
【0043】
次に、図5中のステップ3aおよび図6Dに示すように、ウエハ1の、結晶化抑制処理が施された被処理面上にSiGeを堆積し、非晶質SiGe膜8を形成する。非晶質SiGe膜8は、例えば、シリコンを含むガスとゲルマニウムを含むガスとを含んだシリコンゲルマニウム原料ガスを、ウエハ1が収容されている成膜装置の処理室内に供給することで成膜される。本例ではシリコンゲルマニウム原料ガスとして、水素およびシリコンを含むガス、例えば、モノシラン(SiH)と、ゲルマニウムを含むガス、例えば、モノゲルマン(GeH)を用いた。
【0044】
ステップ3aの処理条件の一例は、
SiH流 量:0を超え〜5000sccm
Ge流 量:0を超え〜5000sccm
処 理 時 間 :5min以上
処 理 温 度 :250〜450℃
処 理 圧 力 :13.33〜533.2Pa(0.1〜4Torr)
である。
【0045】
本例においては、シリコンゲルマニウム原料ガスとしてSiH、およびGeHを用いたが、シリコンゲルマニウム原料ガスはSiH、およびGeHに限られるものではない。非晶質SiGe膜8を成膜するための原料ガスとしては、水素、シリコン、およびゲルマニウムを含むガスであればよい。
【0046】
第2の実施形態は、単結晶Si上に結晶化したSiGe膜を成膜しようとする、いわゆる“ヘテロエピタキシャル”である。ヘテロエピタキシャルにおいては結晶の不整合を一因として“ミスフィット転移”が発生する。第2の実施形態を参照して述べれば、ウエハ1のSiの格子定数と、成膜されるSiGeの格子定数とが違う。このため、成膜されるSiGe膜の方に“ミスフィット転移”が発生する。
【0047】
図7Aおよび図7Bは、参考例を示す断面図である。
例えば、図7Aおよび図7Bに示すように、ウエハ1の被処理面に露出した単結晶Si上にSiGe膜8を形成したとする。結晶化したSiGe膜8aにはミスフィット転移7が、例えば、規則的に発生する。ミスフィット転移7が発生したまま、結晶成長させると、SiGe膜8aの表面には“ミスフィット転移7に沿った段差”(クロスハッチパターン)が発生する。
【0048】
このような“ミスフィット転移7に沿った段差”の発生を抑制するには、第1の実施形態と同様に、非晶質SiGe膜8を形成する前に、被処理面の表面の格子定数を変更するとよい。第2の実施形態では、図5中のステップ2において、ウエハ1の被処理面の表面の格子定数が変更されている。
【0049】
次に、図5中のステップ4および図6Eに示すように、非晶質SiGe膜8が形成されたウエハ1に対して、第1の実施形態と同様に、固相エピタキシャル成長処理を行う。固相エピタキシャル成長処理の条件は、例えば、第1の実施形態と同様でよい。固相エピタキシャル成長処理が行われることによって、非晶質SiGe膜8は、結晶化したSiGe膜8aとなる。
【0050】
このような第2の実施形態に係るシリコンゲルマニウム膜の成膜方法によれば、単結晶Si上に非晶質SiGe膜8を成膜する前に、単結晶Siの被処理面に対して“結晶化抑制処理”を行う。非晶質SiGe膜8が結晶化されたSiGe膜8aには“ミスフット転移”7は発生するが、非晶質SiGe膜8が形成された状態で、固相エピタキシャル成長処理が行われる。このため、“結晶化抑制処理”を行わない場合に比較して、非晶質SiGe膜8の内部にミスフィット転移が生ずるだけである。したがって、非晶質SiGe膜8を結晶化した際に表面に発生する“ミスフィット転移に起因した段差”といった凹凸を抑制することが可能となる、という利点を得ることができる。
【0051】
また、第2の実施形態においては、単結晶Siの上に結晶化させたSiGeを形成したが、結晶化させたGeを形成してもよいし、単結晶Geの上に結晶化させたSiGeやSiを形成してもよい。また、単結晶SiGeの上に、結晶化させたSiやGeを形成してもよい。
【0052】
(第3の実施形態)
第3の実施形態は、上記第1、第2の実施形態に係るシリコン又はシリコンゲルマニウム膜の成膜方法を実施することが可能な成膜装置の一例に関する。
【0053】
図8はこの発明の第3の実施形態に係る成膜装置の一例を概略的に示す断面図である。
図8に示すように、成膜装置100は、下端が開口された有天井の円筒体状の処理室101を有している。処理室101の全体は、例えば、石英により形成されている。処理室101内の天井には、石英製の天井板102が設けられている。処理室101の下端開口部には、例えば、ステンレススチールにより円筒体状に成形されたマニホールド103がOリング等のシール部材104を介して連結されている。
【0054】
マニホールド103は処理室101の下端を支持している。マニホールド103の下方からは、被処理体として複数枚、例えば、50〜100枚の半導体ウエハ、本例では、シリコンウエハ1を多段に載置可能な石英製のウエハボート105が処理室101内に挿入可能となっている。ウエハボート105は複数本の支柱106を有し、支柱106に形成された溝により複数枚のウエハ1が支持されるようになっている。
【0055】
ウエハボート105は、石英製の保温筒107を介してテーブル108上に載置されている。テーブル108は、マニホールド103の下端開口部を開閉する、例えば、ステンレススチール製の蓋部109を貫通する回転軸110上に支持される。回転軸110の貫通部には、例えば、磁性流体シール111が設けられ、回転軸110を気密にシールしつつ回転可能に支持している。蓋部109の周辺部とマニホールド103の下端部との間には、例えば、Oリングよりなるシール部材112が介設されている。これにより処理室101内のシール性が保持されている。回転軸110は、例えば、ボートエレベータ等の昇降機構(図示せず)に支持されたアーム113の先端に取り付けられている。これにより、ウエハボート105および蓋部109等は、一体的に昇降されて処理室101内に対して挿脱される。
【0056】
成膜装置100は、処理室101内に、処理に使用するガスを供給する処理ガス供給機構114と、処理室101内に、不活性ガスを供給する不活性ガス供給機構115と、を有している。
【0057】
処理ガス供給機構114は、結晶化抑制処理ガス供給源117a、Siを含む処理ガス供給源117b、Geを含む処理ガス供給源117c、および結晶化処理ガス供給源117dを含んで構成されている。
【0058】
本例においては、結晶化抑制処理ガス供給源117aは結晶化抑制処理ガスとしてPHガスを、Siを含む処理ガス供給源117bはSiを含む処理ガスとしてSiガスを、Geを含む処理ガス供給源117cはGeを含む処理ガスとしてGeHガスを、結晶化処理ガス供給源117dは結晶化処理ガスとしてHガスを、それぞれ処理室101内に供給する。
【0059】
不活性ガス供給機構115は、不活性ガス供給源120を含んで構成されている。不活性ガス供給源は不活性ガスとしてNガスを、処理室101内に供給する。
【0060】
なお、成膜装置100が“シリコン膜の成膜”専用とする場合には、Geを含む処理ガス供給源117cは省略してもよいし、“ゲルマニウム膜の成膜”専用とする場合には、Siを含む処理ガス供給源117bは省略してもよい。また、成膜装置100が“結晶化処理”に際し、不活性ガス、例えば、Nガスを使用する場合には、結晶化処理ガス供給源117dを省略してもよい。この場合には、結晶化処理ガスとしてNガスが、不活性ガス供給源120から処理室101内に供給される。
【0061】
結晶化抑制処理ガス供給源117aは、流量制御器121a及び開閉弁122aを介して、分散ノズル123aに接続されている。同様に、Siを含む処理ガス供給源117bは流量制御器121b及び開閉弁122bを介して図示せぬ分散ノズル123bに、同様に、Geを含む処理ガス供給源117cは流量制御器121c及び開閉弁122cを介して図示せぬ分散ノズル123cに、結晶化処理ガス供給源117dは流量制御器121d及び開閉弁122dを介して分散ノズル123dに、それぞれ接続されている。
【0062】
分散ノズル123a〜123dは石英管よりなり、マニホールド103の側壁を内側へ貫通して上方向へ屈曲されて垂直に延びる。分散ノズル123a〜123dの垂直部分には、複数のガス吐出孔124a〜124dが所定の間隔を隔てて形成されている。結晶化抑制処理ガス、Siを含む処理ガス、Geを含む処理ガス、結晶化処理ガスはそれぞれ、ガス吐出孔124a〜124dから処理室101内に向けて水平方向に略均一に吐出される。
【0063】
不活性ガス供給源120は流量制御器121e及び開閉弁122eを介して、ノズル128に接続されている。ノズル128は、マニホールド103の側壁を貫通し、その先端から不活性ガスを処理室101内に水平方向に向けて吐出させる。
【0064】
処理室101内の、分散ノズル123a〜123dと反対側の部分には、処理室101内を排気するための排気口129が設けられている。排気口129は処理室101の側壁を上下方向へ削りとることによって細長く形成されている。処理室101の排気口129に対応する部分には、排気口129を覆うように断面がコの字状に成形された排気口カバー部材130が溶接により取り付けられている。排気口カバー部材130は、処理室101の側壁に沿って上方に延びており、処理室101の上方にガス出口131を規定している。ガス出口131には、真空ポンプ等を含む排気機構132が接続される。排気機構132は、処理室101内を排気することで処理に使用した処理ガスの排気、及び処理室101内の圧力を処理に応じた処理圧力とする。
【0065】
処理室101の外周には筒体状の加熱装置133が設けられている。加熱装置133は、処理室101内に供給された処理ガスを活性化するとともに、処理室101内に収容された被処理体、本例ではウエハ1を加熱する。
【0066】
成膜装置100の各部の制御は、例えば、マイクロプロセッサ(コンピュータ)からなるコントローラ150により行われる。コントローラ150には、ユーザーインターフェース151が接続されている。ユーザーインターフェース151は、オペレータが成膜装置100を管理するために、コマンドの入力操作等を行うためのタッチパネルディスプレイやキーボードなどを含む入力部、および成膜装置100の稼働状況を可視化して表示するディスプレイなどを含む表示部が備えられている。
【0067】
コントローラ150には記憶部152が接続されている。記憶部152は、成膜装置100で実施される各種処理をコントローラ150の制御にて実現するための制御プログラムや、処理条件に応じて成膜装置100の各構成部に処理を実施させるためのプログラムすなわちレシピが格納される。レシピは、例えば、記憶部152の中の記憶媒体に記憶される。記憶媒体は、ハードディスクや半導体メモリであってもよいし、CD-ROM、DVD、フラッシュメモリ等の可搬性のものであってもよい。また、他の装置から、例えば専用回線を介してレシピを適宜伝送させるようにしてもよい。レシピは、必要に応じて、ユーザーインターフェース151からの指示等にて記憶部152から読み出され、読み出されたレシピに従った処理をコントローラ150が実施することで、成膜装置100は、コントローラ150の制御のもと、所望の処理が実施される。
【0068】
本例では、コントローラ150の制御のもと、上記第1、第2の実施形態に係るシリコン又はシリコンゲルマニウム膜の成膜方法を実施する。上記第1、第2の実施形態に係る成膜方法は、図8に示すような成膜装置100によって実施することができる。
【0069】
以上、この発明を第1、第2の実施形態に従って説明したが、この発明は、上記第1、第2の実施形態に限定されることは無く、その趣旨を逸脱しない範囲で種々変形可能である。
【0070】
例えば、上記第1、第2の実施形態においては、ウエハ1、即ち、元々単結晶として形成された単結晶Siの被処理面に対して“結晶化抑制処理”を行ったが、非晶質Siを固相エピタキシャル成長処理によって結晶化されたSiを被処理面とする場合にも、上述した利点と同様の利点を得ることができる。つまり上記第1、第2の実施形態は、元々単結晶であったもの、および結晶化処理により結晶化(単結晶化)させたものの双方ともに有効である。
【0071】
また、第1、第2の実施形態においては、単結晶又は結晶化されたSiの被処理面に対して“結晶化抑制処理”を行ってから結晶化したSi膜4a又は結晶化したSiGe膜8aを成膜する例を示した。しかし、単結晶又は結晶化されたSiGeの被処理面に対して“結晶化抑制処理”を行ってから結晶化したSi膜4a又は結晶化したSiGe膜8aを成膜するようにしてもよいし、単結晶又は結晶化されたGeの被処理面に対して、結晶化したSi膜又は結晶化したGe膜又は結晶化したSiGe膜を成膜するようにしてもよい。
【0072】
また、第1、第2の実施形態においては処理条件を具体的に例示したが、処理条件は、上記具体的な例示に限られるものではない。処理条件は、例えば、被処理体を収容する処理室の容積や、処理圧力の変更等に応じて変更することが可能である。
【0073】
その他、この発明はその要旨を逸脱しない範囲で様々に変形することができる。
【符号の説明】
【0074】
1…シリコンウエハ、2…自然酸化膜、3…酸素原子、4…非晶質Si膜、4a…結晶化したSi膜、6…ファセット、7…ミスフィット転移、8…非晶質SiGe膜、8a…結晶化したSiGe膜。
図1
図2A
図2B
図2C
図2D
図2E
図3A
図3B
図4A
図4B
図4C
図5
図6A
図6B
図6C
図6D
図6E
図7A
図7B
図8