【文献】
Kaszynski, Piotr et al.,Synthesis and properties of diethyl 5,10-dihetera-5,10-dihydroindeno[2,1-a]indene-2,7-dicarboxylate,Journal of Organic Chemistry,1993年,vol. 58(19),pp. 5209-5220
【文献】
Mery, Stephane et al.,Bipolar carrier transport in a lamello-columnar mesophase of a sanidic liquid crystal,Journal of Materials Chemistry,2002年,vol. 12(1),pp. 37-41
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
このような状況のもと、本発明者らが特許文献1〜5に記載の化合物を用いた有機薄膜トランジスタについて検討したところ、キャリア移動度が低いものであるか、または、ある程度キャリア移動度が高いものについては耐熱性が低いために繰り返し駆動後の閾値電圧変化が大きいか、キャリア移動度のバラツキが大きいものであることがわかった。
【0008】
そこで本発明者らは、このような従来技術の課題を解決するために検討を進めた。本発明が解決しようとする課題は、キャリア移動度が高く、繰り返し駆動後の閾値電圧変化が小さく、移動度バラツキが小さい有機薄膜トランジスタを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するために鋭意検討を行った結果、チエノチオフェン構造を内部に有する骨格に対して、極性が高い特定の種類の置換基を置換させることで、キャリア移動度が高く、繰り返し駆動後の閾値電圧変化が小さく、移動度バラツキが小さい有機薄膜トランジスタが得られることを見出し、本発明に至った。
上記課題を解決するための具体的な手段である本発明は、以下の構成を有する。
【0010】
[1] 下記一般式(1)〜(4)のいずれかで表される化合物を半導体活性層に含む有機薄膜トランジスタ:
一般式(1)
【化1】
一般式(1)中、
R
1〜R
8はそれぞれ独立に水素原子または置換基を表し、R
1〜R
8のうち少なくとも1つは置換もしくは無置換のアリールチオ基、置換もしくは無置換のヘテロアリールチオ基、置換もしくは無置換のアルキルオキシカルボニル基、置換もしくは無置換のアリールオキシカルボニル基または置換もしくは無置換のアルキルアミノ基であり、
X
1およびX
2はそれぞれ独立にS原子、O原子、Se原子またはN−R
xを表し、R
xはそれぞれ独立に水素原子または下記一般式(W)で表される置換基を表す;
一般式(2)
【化2】
一般式(2)中、
R
9〜R
20はそれぞれ独立に水素原子または置換基を表し、R
9〜R
20のうち少なくとも1つは置換もしくは無置換のアリールチオ基、置換もしくは無置換のヘテロアリールチオ基、置換もしくは無置換のアルキルオキシカルボニル基、置換もしくは無置換のアリールオキシカルボニル基または置換もしくは無置換のアルキルアミノ基であり、
X
3およびX
4はそれぞれ独立にS原子、O原子、Se原子またはN−R
xを表し、R
xはそれぞれ独立に水素原子または下記一般式(W)で表される置換基を表す;
一般式(3)
【化3】
一般式(3)中、
R
21〜R
32はそれぞれ独立に水素原子または置換基を表し、R
21〜R
32のうち少なくとも1つは置換もしくは無置換のアリールチオ基、置換もしくは無置換のヘテロアリールチオ基、置換もしくは無置換のアルキルオキシカルボニル基、置換もしくは無置換のアリールオキシカルボニル基または置換もしくは無置換のアルキルアミノ基であり、
X
5およびX
6はそれぞれ独立にS原子、O原子、Se原子またはN−R
xを表し、R
xはそれぞれ独立に水素原子または下記一般式(W)で表される置換基を表す;
一般式(4)
【化4】
一般式(4)中、
R
33〜R
44はそれぞれ独立に水素原子または置換基を表し、R
33〜R
44のうち少なくとも1つは置換もしくは無置換のアリールチオ基、置換もしくは無置換のヘテロアリールチオ基、置換もしくは無置換のアルキルオキシカルボニル基、置換もしくは無置換のアリールオキシカルボニル基または置換もしくは無置換のアルキルアミノ基であり、
X
7およびX
8はそれぞれ独立にS原子、O原子、Se原子またはN−R
xを表し、R
xはそれぞれ独立に水素原子または下記一般式(W)で表される置換基を表す;
*−L−R 一般式(W)
一般式(W)中、
*はR
xと結合する窒素原子との結合部位を表し、
Lは下記一般式(L−1)〜(L−25)のいずれかで表される2価の連結基または2以上の下記一般式(L−1)〜(L−25)のいずれかで表される2価の連結基が結合した2価の連結基を表し、
Rは水素原子、置換または無置換のアルキル基、シアノ基、ビニル基、エチニル基、オキシエチレン基、オキシエチレン単位の繰り返し数が2以上のオリゴオキシエチレン基、シロキサン基、ケイ素原子数が2以上のオリゴシロキサン基、あるいは、置換または無置換のトリアルキルシリル基を表す;
【化5】
一般式(L−1)〜(L−25)中、
波線部分はR
xと結合する窒素原子との結合部位を表し、
*はRとの結合部位を表し、
一般式(L−13)におけるmは4を表し、一般式(L−14)および(L−15)におけるmは3を表し、一般式(L−16)〜(L−20)におけるmは2を表し、(L−22)におけるmは6を表し、
一般式(L−1)、(L−2)、(L−6)および(L−13)〜(L−24)におけるR’はそれぞれ独立に水素原子または置換基を表し、一般式(L−1)および(L−2)中のR’は、それぞれLに隣接するRと結合して縮合環を形成してもよく、
R
Nは水素原子または置換基を表し、
R
siはそれぞれ独立に水素原子、アルキル基、アルケニル基またはアルキニル基を表す。
[2] [1]に記載の有機薄膜トランジスタは、一般式(1)におけるX
1およびX
2の組、一般式(2)におけるX
3およびX
4の組、一般式(3)におけるX
5およびX
6の組、ならびに、一般式(4)におけるX
7およびX
8の組中、それぞれの組に含まれる2つの連結基のうち少なくとも1つがS原子であることが好ましい。
[3] [1]または[2]に記載の有機薄膜トランジスタは、一般式(1)におけるR
2およびR
6の組、一般式(2)におけるR
11およびR
17の組、一般式(3)におけるR
22およびR
28の組、ならびに、一般式(4)におけるR
36およびR
42の組中、それぞれの組に含まれる2つの置換基のうち少なくとも1つが置換もしくは無置換のアリールチオ基、置換もしくは無置換のヘテロアリールチオ基、置換もしくは無置換のアルキルオキシカルボニル基、置換もしくは無置換のアリールオキシカルボニル基または置換もしくは無置換のアルキルアミノ基であることが好ましい。
[4] [1]〜[3]のいずれかに記載の有機薄膜トランジスタは、一般式(1)におけるR
2およびR
6の組、一般式(2)におけるR
11およびR
17の組、一般式(3)におけるR
22およびR
28の組、ならびに、一般式(4)におけるR
36およびR
42の組中、それぞれの組に含まれる2つの置換基のうち少なくとも1つが置換もしくは無置換のアリールチオ基または置換もしくは無置換のヘテロアリールチオ基であることが好ましい。
[5] [1]〜[4]のいずれかに記載の有機薄膜トランジスタは、一般式(1)におけるR
1〜R
8のうち少なくとも1つ、一般式(2)におけるR
9〜R
20のうち少なくとも1つ、一般式(3)におけるR
21〜R
32のうち少なくとも1つまたは一般式(4)におけるR
33〜R
44のうち少なくとも1つが、それぞれ独立に置換アリールチオ基、置換ヘテロアリールチオ基、置換アルキルオキシカルボニル基、置換アリールオキシカルボニル基または置換アルキルアミノ基であり、これらの基が、下記一般式(W’)で表される置換基を有することが好ましい。
−L−R 一般式(W’)
一般式(W’)中、
Lは下記一般式(L−1)〜(L−25)のいずれかで表される2価の連結基または2以上の下記一般式(L−1)〜(L−25)のいずれかで表される2価の連結基が結合した2価の連結基を表し、
Rは水素原子、置換または無置換のアルキル基、シアノ基、ビニル基、エチニル基、オキシエチレン基、オキシエチレン単位の繰り返し数が2以上のオリゴオキシエチレン基、シロキサン基、ケイ素原子数が2以上のオリゴシロキサン基、あるいは、置換または無置換のトリアルキルシリル基を表す;
【化6】
一般式(L−1)〜(L−25)中、
波線部分は、置換アリールチオ基に含まれるアリール環、置換ヘテロアリールチオ基に含まれるヘテロアリール環、置換アルキルオキシカルボニル基に含まれるアルキル基、置換アリールオキシカルボニル基に含まれるアリール基または置換アルキルアミノ基に含まれるアルキル基との結合部位を表し、
*はRとの結合部位を表し、
一般式(L−13)におけるmは4を表し、一般式(L−14)および(L−15)におけるmは3を表し、一般式(L−16)〜(L−20)におけるmは2を表し、(L−22)におけるmは6を表し、
一般式(L−1)、(L−2)、(L−6)および(L−13)〜(L−24)におけるR’はそれぞれ独立に水素原子または置換基を表し、一般式(L−1)および(L−2)中のR’は、それぞれLに隣接するRと結合して縮合環を形成してもよく、
R
Nは水素原子または置換基を表し、
R
siはそれぞれ独立に水素原子、アルキル基、アルケニル基またはアルキニル基を表す。
[6] [1]〜[5]のいずれかに記載の有機薄膜トランジスタは、一般式(1)におけるR
2およびR
6の組、一般式(2)におけるR
11およびR
17の組、一般式(3)におけるR
22およびR
28の組、ならびに、一般式(4)におけるR
36およびR
42の組中、それぞれの組に含まれる2つの置換基のうち少なくとも1つが置換アリールチオ基または置換ヘテロアリールチオ基であり、これらの基が下記一般式(5)〜(7)のいずれかで表される置換基を有することが好ましい:
【化7】
一般式(5)〜(7)中の波線部分は、置換アリールチオ基に含まれるアリール環または置換ヘテロアリールチオ基に含まれるヘテロアリール環との結合部位を表す。
[7] [1]〜[6]のいずれかに記載の有機薄膜トランジスタは、一般式(1)におけるR
1〜R
8のうち少なくとも1つ、一般式(2)におけるR
9〜R
20のうち少なくとも1つ、一般式(3)におけるR
21〜R
32のうち少なくとも1つまたは一般式(4)におけるR
33〜R
44のうち少なくとも1つが、それぞれ独立に置換もしくは無置換のフェニルチオ基または下記群(A)から選ばれるヘテロアリールチオ基であることが好ましい:
群(A)
【化8】
群(A)中、
一般式(A−14)および(A−15)におけるmは4を表し、一般式(A−16)〜(A−18)および(A−20)におけるmは3を表し、一般式(A−21)、(A−23)、(A−24)、(A−26)および(A−27)におけるmは2を表し、
R’およびR
Nはそれぞれ独立に水素原子または置換基を表す。
[8] 下記一般式(1)〜(4)のいずれかで表される化合物:
一般式(1)
【化9】
一般式(1)中、
R
1〜R
8はそれぞれ独立に水素原子または置換基を表し、R
1〜R
8のうち少なくとも1つは置換もしくは無置換のアリールチオ基、置換もしくは無置換のヘテロアリールチオ基、置換もしくは無置換のアルキルオキシカルボニル基、置換もしくは無置換のアリールオキシカルボニル基または置換もしくは無置換のアルキルアミノ基であり、
X
1およびX
2はそれぞれ独立にS原子、O原子、Se原子またはN−R
xを表し、R
xはそれぞれ独立に水素原子または下記一般式(W)で表される置換基を表す;
一般式(2)
【化10】
一般式(2)中、
R
9〜R
20はそれぞれ独立に水素原子または置換基を表し、R
9〜R
20のうち少なくとも1つは置換もしくは無置換のアリールチオ基、置換もしくは無置換のヘテロアリールチオ基、置換もしくは無置換のアルキルオキシカルボニル基、置換もしくは無置換のアリールオキシカルボニル基または置換もしくは無置換のアルキルアミノ基であり、
X
3およびX
4はそれぞれ独立にS原子、O原子、Se原子またはN−R
xを表し、R
xはそれぞれ独立に水素原子または下記一般式(W)で表される置換基を表す;
一般式(3)
【化11】
一般式(3)中、
R
21〜R
32はそれぞれ独立に水素原子または置換基を表し、R
21〜R
32のうち少なくとも1つは置換もしくは無置換のアリールチオ基、置換もしくは無置換のヘテロアリールチオ基、置換もしくは無置換のアルキルオキシカルボニル基、置換もしくは無置換のアリールオキシカルボニル基または置換もしくは無置換のアルキルアミノ基であり、
X
5およびX
6はそれぞれ独立にS原子、O原子、Se原子またはN−R
xを表し、R
xはそれぞれ独立に水素原子または下記一般式(W)で表される置換基を表す;
一般式(4)
【化12】
一般式(4)中、
R
33〜R
44はそれぞれ独立に水素原子または置換基を表し、R
33〜R
44のうち少なくとも1つは置換もしくは無置換のアリールチオ基、置換もしくは無置換のヘテロアリールチオ基、置換もしくは無置換のアルキルオキシカルボニル基、置換もしくは無置換のアリールオキシカルボニル基または置換もしくは無置換のアルキルアミノ基であり、
X
7およびX
8はそれぞれ独立にS原子、O原子、Se原子またはN−R
xを表し、R
xはそれぞれ独立に水素原子または下記一般式(W)で表される置換基を表す;
*−L−R 一般式(W)
一般式(W)中、
*はR
xと結合する窒素原子との結合部位を表し、
Lは下記一般式(L−1)〜(L−25)のいずれかで表される2価の連結基または2以上の下記一般式(L−1)〜(L−25)のいずれかで表される2価の連結基が結合した2価の連結基を表し、
Rは水素原子、置換または無置換のアルキル基、シアノ基、ビニル基、エチニル基、オキシエチレン基、オキシエチレン単位の繰り返し数が2以上のオリゴオキシエチレン基、シロキサン基、ケイ素原子数が2以上のオリゴシロキサン基、あるいは、置換または無置換のトリアルキルシリル基を表す;
【化13】
一般式(L−1)〜(L−25)中、
波線部分はR
xと結合する窒素原子との結合部位を表し、
*はRとの結合部位を表し、
一般式(L−13)におけるmは4を表し、一般式(L−14)および(L−15)におけるmは3を表し、一般式(L−16)〜(L−20)におけるmは2を表し、(L−22)におけるmは6を表し、
一般式(L−1)、(L−2)、(L−6)および(L−13)〜(L−24)におけるR’はそれぞれ独立に水素原子または置換基を表し、一般式(L−1)および(L−2)中のR’は、それぞれLに隣接するRと結合して縮合環を形成してもよく、
R
Nは水素原子または置換基を表し、
R
siはそれぞれ独立に水素原子、アルキル基、アルケニル基またはアルキニル基を表す。
[9] [8]に記載の化合物は、一般式(1)におけるX
1およびX
2の組、一般式(2)におけるX
3およびX
4の組、一般式(3)におけるX
5およびX
6の組、ならびに、一般式(4)におけるX
7およびX
8の組中、それぞれの組に含まれる2つの連結基のうち少なくとも1つがS原子であることが好ましい。
[10] [8]または[9]に記載の化合物は、一般式(1)におけるR
2およびR
6の組、一般式(2)におけるR
11およびR
17の組、一般式(3)におけるR
22およびR
28の組、ならびに、一般式(4)におけるR
36およびR
42の組中、それぞれの組に含まれる2つの置換基のうち少なくとも1つが置換もしくは無置換のアリールチオ基、置換もしくは無置換のヘテロアリールチオ基、置換もしくは無置換のアルキルオキシカルボニル基、置換もしくは無置換のアリールオキシカルボニル基または置換もしくは無置換のアルキルアミノ基であることが好ましい。
[11] [8]〜[10]のいずれかに記載の化合物は、一般式(1)におけるR
2およびR
6の組、一般式(2)におけるR
11およびR
17の組、一般式(3)におけるR
22およびR
28の組、ならびに、一般式(4)におけるR
36およびR
42の組中、それぞれの組に含まれる2つの置換基のうち少なくとも1つが置換もしくは無置換のアリールチオ基または置換もしくは無置換のヘテロアリールチオ基であることが好ましい。
[12] [8]〜[11]のいずれかに記載の化合物は、一般式(1)におけるR
1〜R
8のうち少なくとも1つ、一般式(2)におけるR
9〜R
20のうち少なくとも1つ、一般式(3)におけるR
21〜R
32のうち少なくとも1つまたは一般式(4)におけるR
33〜R
44のうち少なくとも1つが、それぞれ独立に置換アリールチオ基、置換ヘテロアリールチオ基、置換アルキルオキシカルボニル基、置換アリールオキシカルボニル基または置換アルキルアミノ基であり、これらの基が、下記一般式(W’)で表される置換基を有することが好ましい。
−L−R 一般式(W’)
一般式(W’)中、
Lは下記一般式(L−1)〜(L−25)のいずれかで表される2価の連結基または2以上の下記一般式(L−1)〜(L−25)のいずれかで表される2価の連結基が結合した2価の連結基を表し、
Rは水素原子、置換または無置換のアルキル基、シアノ基、ビニル基、エチニル基、オキシエチレン基、オキシエチレン単位の繰り返し数が2以上のオリゴオキシエチレン基、シロキサン基、ケイ素原子数が2以上のオリゴシロキサン基、あるいは、置換または無置換のトリアルキルシリル基を表す;
【化14】
一般式(L−1)〜(L−25)中、
波線部分は、置換アリールチオ基に含まれるアリール環、置換ヘテロアリールチオ基に含まれるヘテロアリール環、置換アルキルオキシカルボニル基に含まれるアルキル基、置換アリールオキシカルボニル基に含まれるアリール基または置換アルキルアミノ基に含まれるアルキル基との結合部位を表し、
*はRとの結合部位を表し、
一般式(L−13)におけるmは4を表し、一般式(L−14)および(L−15)におけるmは3を表し、一般式(L−16)〜(L−20)におけるmは2を表し、(L−22)におけるmは6を表し、
一般式(L−1)、(L−2)、(L−6)および(L−13)〜(L−24)におけるR’はそれぞれ独立に水素原子または置換基を表し、一般式(L−1)および(L−2)中のR’は、それぞれLに隣接するRと結合して縮合環を形成してもよく、
R
Nは水素原子または置換基を表し、
R
siはそれぞれ独立に水素原子、アルキル基、アルケニル基またはアルキニル基を表す。
[13] [8]〜[12]のいずれかに記載の化合物は、一般式(1)におけるR
2およびR
6の組、一般式(2)におけるR
11およびR
17の組、一般式(3)におけるR
22およびR
28の組、ならびに、一般式(4)におけるR
36およびR
42の組中、それぞれの組に含まれる2つの置換基のうち少なくとも1つが置換アリールチオ基または置換ヘテロアリールチオ基であり、これらの基が下記一般式(5)〜(7)のいずれかで表される置換基を有することが好ましい:
【化15】
一般式(5)〜(7)中の波線部分は、置換アリールチオ基に含まれるアリール環または置換ヘテロアリールチオ基に含まれるヘテロアリール環との結合部位を表す。
[14] [8]〜[13]のいずれかに記載の化合物は、一般式(1)におけるR
1〜R
8のうち少なくとも1つ、一般式(2)におけるR
9〜R
20のうち少なくとも1つ、一般式(3)におけるR
21〜R
32のうち少なくとも1つまたは一般式(4)におけるR
33〜R
44のうち少なくとも1つが、それぞれ独立に置換もしくは無置換のフェニルチオ基または下記群(A)から選ばれるヘテロアリールチオ基であることが好ましい:
群(A)
【化16】
群(A)中、
一般式(A−14)および(A−15)におけるmは4を表し、一般式(A−16)〜(A−18)および(A−20)におけるmは3を表し、一般式(A−21)、(A−23)、(A−24)、(A−26)および(A−27)におけるmは2を表し、
R’およびR
Nはそれぞれ独立に水素原子または置換基を表す。
[15] [8]〜[14]のいずれかに記載の化合物を含有する非発光性有機半導体デバイス用有機半導体材料。
[16] [8]〜[14]のいずれかに記載の化合物を含有する有機薄膜トランジスタ用材料。
[17] [8]〜[14]のいずれかに記載の化合物を含有する非発光性有機半導体デバイス用塗布溶液。
[18] [8]〜[14]のいずれかに記載の化合物とポリマーバインダーとを含有する非発光性有機半導体デバイス用塗布溶液。
[19] [8]〜[14]のいずれかに記載の化合物を含有する非発光性有機半導体デバイス用有機半導体薄膜。
[20] [8]〜[14]のいずれかに記載の化合物とポリマーバインダーとを含有する非発光性有機半導体デバイス用有機半導体薄膜。
[21] [19]または[20]に記載の非発光性有機半導体デバイス用有機半導体薄膜は、溶液塗布法により作製されたことが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、キャリア移動度が高く、繰り返し駆動後の閾値電圧変化が小さく、移動度バラツキが小さい有機薄膜トランジスタを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下において、本発明について詳細に説明する。以下に記載する構成要件の説明は、代表的な実施形態や具体例に基づいてなされることがあるが、本発明はそのような実施形態に限定されるものではない。なお、本明細書において「〜」を用いて表される数値範囲は「〜」前後に記載される数値を下限値および上限値として含む範囲を意味する。
本発明において、各一般式の説明において特に区別されずに用いられている場合における水素原子は同位体(重水素原子等)も含んでいることを表す。さらに、置換基を構成する原子は、その同位体も含んでいることを表す。
【0014】
[有機薄膜トランジスタ]
本発明の有機薄膜トランジスタは、下記一般式(1)〜(4)のいずれかで表される化合物を半導体活性層に含むことを特徴とする。
一般式(1)
【化17】
一般式(1)中、
R
1〜R
8はそれぞれ独立に水素原子または置換基を表し、R
1〜R
8のうち少なくとも1つは置換もしくは無置換のアリールチオ基、置換もしくは無置換のヘテロアリールチオ基、置換もしくは無置換のアルキルオキシカルボニル基、置換もしくは無置換のアリールオキシカルボニル基または置換もしくは無置換のアルキルアミノ基であり、
X
1およびX
2はそれぞれ独立にS原子、O原子、Se原子またはN−R
xを表し、R
xはそれぞれ独立に水素原子または下記一般式(W)で表される置換基を表す;
一般式(2)
【化18】
一般式(2)中、
R
9〜R
20はそれぞれ独立に水素原子または置換基を表し、R
9〜R
20のうち少なくとも1つは置換もしくは無置換のアリールチオ基、置換もしくは無置換のヘテロアリールチオ基、置換もしくは無置換のアルキルオキシカルボニル基、置換もしくは無置換のアリールオキシカルボニル基または置換もしくは無置換のアルキルアミノ基であり、
X
3およびX
4はそれぞれ独立にS原子、O原子、Se原子またはN−R
xを表し、R
xはそれぞれ独立に水素原子または下記一般式(W)で表される置換基を表す;
一般式(3)
【化19】
一般式(3)中、
R
21〜R
32はそれぞれ独立に水素原子または置換基を表し、R
21〜R
32のうち少なくとも1つは置換もしくは無置換のアリールチオ基、置換もしくは無置換のヘテロアリールチオ基、置換もしくは無置換のアルキルオキシカルボニル基、置換もしくは無置換のアリールオキシカルボニル基または置換もしくは無置換のアルキルアミノ基であり、
X
5およびX
6はそれぞれ独立にS原子、O原子、Se原子またはN−R
xを表し、R
xはそれぞれ独立に水素原子または下記一般式(W)で表される置換基を表す;
一般式(4)
【化20】
一般式(4)中、
R
33〜R
44はそれぞれ独立に水素原子または置換基を表し、R
33〜R
44のうち少なくとも1つは置換もしくは無置換のアリールチオ基、置換もしくは無置換のヘテロアリールチオ基、置換もしくは無置換のアルキルオキシカルボニル基、置換もしくは無置換のアリールオキシカルボニル基または置換もしくは無置換のアルキルアミノ基であり、
X
7およびX
8はそれぞれ独立にS原子、O原子、Se原子またはN−R
xを表し、R
xはそれぞれ独立に水素原子または下記一般式(W)で表される置換基を表す;
*−L−R 一般式(W)
一般式(W)中、
*はR
xと結合する窒素原子との結合部位を表し、
Lは下記一般式(L−1)〜(L−25)のいずれかで表される2価の連結基または2以上の下記一般式(L−1)〜(L−25)のいずれかで表される2価の連結基が結合した2価の連結基を表し、
Rは水素原子、置換または無置換のアルキル基、シアノ基、ビニル基、エチニル基、オキシエチレン基、オキシエチレン単位の繰り返し数が2以上のオリゴオキシエチレン基、シロキサン基、ケイ素原子数が2以上のオリゴシロキサン基、あるいは、置換または無置換のトリアルキルシリル基を表す;
【化21】
一般式(L−1)〜(L−25)中、
波線部分はR
xと結合する窒素原子との結合部位を表し、
*はRとの結合部位を表し、
一般式(L−13)におけるmは4を表し、一般式(L−14)および(L−15)におけるmは3を表し、一般式(L−16)〜(L−20)におけるmは2を表し、(L−22)におけるmは6を表し、
一般式(L−1)、(L−2)、(L−6)および(L−13)〜(L−24)におけるR’はそれぞれ独立に水素原子または置換基を表し、一般式(L−1)および(L−2)中のR’は、それぞれLに隣接するRと結合して縮合環を形成してもよく、
R
Nは水素原子または置換基を表し、
R
siはそれぞれ独立に水素原子、アルキル基、アルケニル基またはアルキニル基を表す。
【0015】
このような構成により、本発明の有機薄膜トランジスタは、キャリア移動度が高く、繰り返し駆動後の閾値電圧変化が小さく、移動度バラツキが小さい。
ここで、特開2009−054830号公報には、本発明の一般式(1)〜(4)のいずれかで表される化合物が有してもよい置換基である、置換もしくは無置換のアルキルオキシカルボニル基、および、置換もしくは無置換のアリールオキシカルボニル基を広義には含む「−CO−で表される連結基を部分構造として有する置換基」について記載されている。しかしながら、特開2009−054830号公報では低極性の置換基に限定されてチエノチオフェンなどの芳香族炭化水素環または芳香族複素環に導入されており、「−CO−で表される連結基を部分構造として有する置換基」の例としてアシル基のみが挙げられている。置換もしくは無置換のアルキルオキシカルボニル基や、置換もしくは無置換のアリールオキシカルボニル基などの高極性の置換基は挙げられていない。その他、上述した特許第4945757号公報、特開2009−1252355号公報、特許第4581062号公報、特許第4958119号公報にそれぞれ記載されているチエノチオフェン構造を有する骨格への置換基も、いずれも低極性の置換基である。
チエノチオフェン構造を有する化合物は、チエノチオフェン構造を有する縮合環(コアともいう)間のCH−π相互作用およびチエノチオフェン構造を有する縮合環同士の相互作用が強く、高移動度を実現している。
これに対し、本発明で用いる一般式(1)〜(4)のいずれかで表される化合物は、それらコア間の相互作用に加えて、側鎖同士の相互作用を増やすことで移動度、繰り返し駆動後の閾値電圧変化および移動度バラツキのすべてを同時に改善する効果がある。このような効果が得られた理由としては、いかなる理論に拘泥するものでもないが、本発明で用いる一般式(1)〜(4)のいずれかで表される化合物のような局所的なダイポールモーメントを持つような側鎖部を導入することで、コア間だけでなく側鎖同士の相互作用が増加したのではないかと本発明者らは考えている。
【0016】
なお、繰り返し駆動後の閾値電圧変化を小さくするためには、有機半導体材料のHOMOが浅すぎずかつ深すぎないこと、有機半導体材料の化学的安定性(特に耐空気酸化性、酸化還元安定性)、薄膜状態の熱安定性、空気や水分が入りこみにくい高い膜密度、電荷がたまりにくい欠陥の少ない膜質、等が必要である。一般式(1)〜(4)のいずれかで表される化合物はこれらを満足するため、繰り返し駆動後の閾値電圧変化が小さいと考えられる。すなわち、繰り返し駆動後の閾値電圧変化が小さい有機薄膜トランジスタは、半導体活性層が高い化学的安定性や膜密度等を有し、長期間に渡ってトランジスタとして有効に機能し得る。
【0017】
なお、有機EL素子材料として有用なものが、ただちに有機薄膜トランジスタ用半導体材料として有用であると言うことはできない。これは、有機EL素子と有機薄膜トランジスタでは、有機化合物に求められる特性が異なるためである。有機EL素子を駆動するには10
-3cm
2/Vs程度の移動度があれば十分であり、有機EL特性向上には電荷輸送性よりもむしろ発光効率を高めることが重要であり、発光効率が高く、面内での発光が均一な素子が求められている。通常、結晶性の高い(移動度が高い)有機化合物は、面内の電界強度不均一、発光不均一、発光クエンチ等、発光欠陥を生じさせる原因となるため、有機EL素子用材料は結晶性を低くし、アモルファス性の高い材料(低い移動度)が望まれる。一方、有機薄膜トランジスタ用半導体材料では、求められる移動度が格段に高いため、分子の配列秩序が高い、結晶性が高い有機化合物が求められている。また、高い移動度発現のため、π共役平面は基板に対して直立していることが好ましい。
【0018】
以下、本発明の化合物や本発明の有機薄膜トランジスタなどの好ましい態様を説明する。
【0019】
<一般式(1)〜(4)のいずれかで表される化合物>
本発明の化合物は、一般式(1)〜(4)のいずれかで表されることを特徴とする。本発明の化合物は、本発明の有機薄膜トランジスタにおいて、後述の半導体活性層に含まれる。すなわち、本発明の化合物は、有機薄膜トランジスタ用材料として用いることができる。
【0020】
一般式(1)
【化22】
一般式(1)中、
R
1〜R
8はそれぞれ独立に水素原子または置換基を表し、R
1〜R
8のうち少なくとも1つは置換もしくは無置換のアリールチオ基、置換もしくは無置換のヘテロアリールチオ基、置換もしくは無置換のアルキルオキシカルボニル基、置換もしくは無置換のアリールオキシカルボニル基または置換もしくは無置換のアルキルアミノ基であり、
X
1およびX
2はそれぞれ独立にS原子、O原子、Se原子またはN−R
xを表し、R
xはそれぞれ独立に水素原子または下記一般式(W)で表される置換基を表す;
一般式(2)
【化23】
一般式(2)中、
R
9〜R
20はそれぞれ独立に水素原子または置換基を表し、R
9〜R
20のうち少なくとも1つは置換もしくは無置換のアリールチオ基、置換もしくは無置換のヘテロアリールチオ基、置換もしくは無置換のアルキルオキシカルボニル基、置換もしくは無置換のアリールオキシカルボニル基または置換もしくは無置換のアルキルアミノ基であり、
X
3およびX
4はそれぞれ独立にS原子、O原子、Se原子またはN−R
xを表し、R
xはそれぞれ独立に水素原子または下記一般式(W)で表される置換基を表す;
一般式(3)
【化24】
一般式(3)中、
R
21〜R
32はそれぞれ独立に水素原子または置換基を表し、R
21〜R
32のうち少なくとも1つは置換もしくは無置換のアリールチオ基、置換もしくは無置換のヘテロアリールチオ基、置換もしくは無置換のアルキルオキシカルボニル基、置換もしくは無置換のアリールオキシカルボニル基または置換もしくは無置換のアルキルアミノ基であり、
X
5およびX
6はそれぞれ独立にS原子、O原子、Se原子またはN−R
xを表し、R
xはそれぞれ独立に水素原子または下記一般式(W)で表される置換基を表す;
一般式(4)
【化25】
一般式(4)中、
R
33〜R
44はそれぞれ独立に水素原子または置換基を表し、R
33〜R
44のうち少なくとも1つは置換もしくは無置換のアリールチオ基、置換もしくは無置換のヘテロアリールチオ基、置換もしくは無置換のアルキルオキシカルボニル基、置換もしくは無置換のアリールオキシカルボニル基または置換もしくは無置換のアルキルアミノ基であり、
X
7およびX
8はそれぞれ独立にS原子、O原子、Se原子またはN−R
xを表し、R
xはそれぞれ独立に水素原子または下記一般式(W)で表される置換基を表す;
*−L−R 一般式(W)
一般式(W)中、
*はR
xと結合する窒素原子との結合部位を表し、
Lは下記一般式(L−1)〜(L−25)のいずれかで表される2価の連結基または2以上の下記一般式(L−1)〜(L−25)のいずれかで表される2価の連結基が結合した2価の連結基を表し、
Rは水素原子、置換または無置換のアルキル基、シアノ基、ビニル基、エチニル基、オキシエチレン基、オキシエチレン単位の繰り返し数が2以上のオリゴオキシエチレン基、シロキサン基、ケイ素原子数が2以上のオリゴシロキサン基、あるいは、置換または無置換のトリアルキルシリル基を表す;
【化26】
一般式(L−1)〜(L−25)中、
波線部分はR
xと結合する窒素原子との結合部位を表し、
*はRとの結合部位を表し、
一般式(L−13)におけるmは4を表し、一般式(L−14)および(L−15)におけるmは3を表し、一般式(L−16)〜(L−20)におけるmは2を表し、(L−22)におけるmは6を表し、
一般式(L−1)、(L−2)、(L−6)および(L−13)〜(L−24)におけるR’はそれぞれ独立に水素原子または置換基を表し、一般式(L−1)および(L−2)中のR’は、それぞれLに隣接するRと結合して縮合環を形成してもよく、
R
Nは水素原子または置換基を表し、
R
siはそれぞれ独立に水素原子、アルキル基、アルケニル基またはアルキニル基を表す。
【0021】
<一般式(1)で表される化合物>
まず、一般式(1)で表される化合物について説明する。
【0022】
一般式(1)
【化27】
一般式(1)中、
R
1〜R
8はそれぞれ独立に水素原子または置換基を表し、R
1〜R
8のうち少なくとも1つは置換もしくは無置換のアリールチオ基、置換もしくは無置換のヘテロアリールチオ基、置換もしくは無置換のアルキルオキシカルボニル基、置換もしくは無置換のアリールオキシカルボニル基または置換もしくは無置換のアルキルアミノ基であり、
X
1およびX
2はそれぞれ独立にS原子、O原子、Se原子またはN−R
xを表し、R
xはそれぞれ独立に水素原子または上述の一般式(W)で表される置換基を表す。
【0023】
一般式(1)のX
1およびX
2は、それぞれ独立にS原子、O原子、Se原子またはN−R
xを表す。X
1およびX
2のうち少なくとも1つがS原子であることが、キャリア移動度を高める観点から好ましい。X
1およびX
2は、同じ連結基であることが好ましい。X
1およびX
2はいずれもS原子であることがより好ましい。
R
xはそれぞれ独立に水素原子または下記一般式(W)で表される置換基を表す。
【0024】
*−L−R 一般式(W)
一般式(W)中、*はR
xと結合する窒素原子との結合部位を表し、Lは下記一般式(L−1)〜(L−25)のいずれかで表される2価の連結基または2以上の下記一般式(L−1)〜(L−25)のいずれかで表される2価の連結基が結合した2価の連結基を表し、Rは水素原子、置換または無置換のアルキル基、シアノ基、ビニル基、エチニル基、オキシエチレン基、オキシエチレン単位の繰り返し数が2以上のオリゴオキシエチレン基、シロキサン基、ケイ素原子数が2以上のオリゴシロキサン基、あるいは、置換または無置換のトリアルキルシリル基を表す。
【0026】
一般式(L−1)〜(L−25)中、
波線部分はR
xと結合する窒素原子との結合部位(ただし、Lが一般式(L−1)〜(L−25)のいずれかで表される2価の連結基が結合した2価の連結基である場合は、他のLの一般式(L−1)〜(L−25)で表される基の*を表してもよい)を表し、
*はRとの結合部位(ただし、Lが一般式(L−1)〜(L−25)のいずれかで表される2価の連結基が結合した2価の連結基である場合は、他のLの一般式(L−1)〜(L−25)で表される基の波線部分を表してもよい)を表し、
一般式(L−13)におけるmは4を表し、一般式(L−14)および(L−15)におけるmは3を表し、一般式(L−16)〜(L−20)におけるmは2を表し、(L−22)におけるmは6を表し、
一般式(L−1)、(L−2)、(L−6)および(L−13)〜(L−24)におけるR’はそれぞれ独立に水素原子または置換基を表し、一般式(L−1)および(L−2)中のR’は、それぞれLに隣接するRと結合して縮合環を形成してもよく、
R
Nは水素原子または置換基を表し、
R
siはそれぞれ独立に水素原子、アルキル基、アルケニル基またはアルキニル基を表す。
【0027】
一般式(L−1)および(L−2)中のR’はそれぞれLに隣接するRと結合して縮合環を形成してもよい。
この中でも、一般式(L−17)〜(L−21)、(L−23)および(L−24)で表される2価の連結基は、下記一般式(L−17A)〜(L−21A)、(L−23A)および(L−24A)で表される2価の連結基であることがより好ましい。
【化29】
【0028】
ここで、置換または無置換のアルキル基、オキシエチレン基、オキシエチレン単位の繰り返し数vが2以上のオリゴオキシエチレン基、シロキサン基、ケイ素原子数が2以上のオリゴシロキサン基、あるいは、置換または無置換のトリアルキルシリル基が一般式(W)で表される置換基の末端に存在する場合は、一般式(W)における−R単独と解釈することもでき、一般式(W)における−L−Rと解釈することもできる。
本発明では、主鎖が炭素数N個の置換または無置換のアルキル基が一般式(W)で表される置換基の末端に存在する場合は、一般式(W)で表される置換基の末端から可能な限りの−CR
R2−で表される連結基をRに含めた上で一般式(W)における−L−Rと解釈することとし、一般式(W)における−R単独とは解釈しない。なお、R
Rは水素原子または置換基を表す。具体的には「一般式(W)におけるLに相当する(L−1)1個」と「一般式(W)におけるRに相当する主鎖が炭素数N−1個の置換または無置換のアルキル基」とが結合した置換基として解釈する。例えば、炭素数8のアルキル基であるn−オクチル基が置換基の末端に存在する場合、2個のR’が水素原子である(L−1)1個と、炭素数7のn−ヘプチル基とが結合した置換基として解釈する。また、一般式(W)で表される置換基が炭素数8のアルコキシ基である場合、−O−である一般式(L−4)で表される連結基1個と、2個のR’が水素原子である(L−1)で表される連結基1個と、炭素数7のn−ヘプチル基とが結合した置換基として解釈する。一般式(W)で表される置換基がアルキル基の場合におけるLとRの分け方は以下の例のとおりであり、Lは一般式(L−1)で表される2価の連結基を表す。
【化30】
また、一般式(W)で表される置換基が炭素数8のアルコキシ基である場合、−O−である一般式(L−4)で表される連結基1個と、2個のR’が水素原子である一般式(L−1)で表される連結基1個と、炭素数7のn−ヘプチル基とが結合した置換基として解釈する。一般式(W)で表される置換基がアルキル基以外の場合におけるLとRの分け方は次のとおりであり、Lは「一般式(L−1)で表される連結基以外の2価の連結基」と「一般式(L−1)で表される2価の連結基」が結合した2価の連結基を表す。
【化31】
【0029】
一方、本発明では、オキシエチレン基、オキシエチレン単位の繰り返し数vが2以上のオリゴオキシエチレン基、シロキサン基、ケイ素原子数が2以上のオリゴシロキサン基、あるいは、置換または無置換のトリアルキルシリル基が一般式(W)で表される置換基の末端に存在する場合は、一般式(W)で表される置換基の末端から可能な限りの連結基をRに含めた上で、一般式(W)における−R単独と解釈することとし、−L−Rとは解釈しない。例えば、−(OCH
2CH
2)−(OCH
2CH
2)−OCH
3基が置換基の末端に存在する場合、オキシエチレン単位の繰り返し数vが2のオリゴオキシエチレン基単独の置換基として解釈する。オキシエチレン基、オキシエチレン単位の繰り返し数vが2以上のオリゴオキシエチレン基、シロキサン基、ケイ素原子数が2以上のオリゴシロキサン基、あるいは、置換または無置換のトリアルキルシリル基が一般式(W)で表される置換基の末端に存在する場合におけるLとRの分け方は以下の例のとおりである。
【化32】
【0030】
Lが一般式(L−1)〜(L−25)のいずれかで表される2価の連結基が結合した連結基を形成する場合、一般式(L−1)〜(L−25)のいずれかで表される2価の連結基の結合数は2〜4であることが好ましく、2または3であることがより好ましい。
【0031】
一般式(L−1)、(L−2)、(L−6)および(L−13)〜(L−24)中の置換基R’としては、上記の一般式(1)のR
1〜R
8が採りうる置換基として例示したものを挙げることができる。その中でも一般式(L−6)中の置換基R’はアルキル基であることが好ましく、(L−6)中のR’がアルキル基である場合は、該アルキル基の炭素数は1〜9であることが好ましく、4〜9であることが化学的安定性、キャリア輸送性の観点からより好ましく、5〜9であることがさらに好ましい。(L−6)中のR’がアルキル基である場合は、該アルキル基は直鎖アルキル基であることが、キャリア移動度を高めることができる観点から好ましい。
R
Nは水素原子または置換基を表し、R
Nとしては、上記の一般式(1)のR
1〜R
8が採りうる置換基として例示したものを挙げることができる。その中でもR
Nとしては水素原子またはメチル基が好ましい。
R
siはそれぞれ独立に水素原子、アルキル基、アルケニル基アルキニル基を表し、アルキル基であることが好ましい。R
siがとり得るアルキル基としては特に制限はないが、R
siがとり得るアルキル基の好ましい範囲はRがシリル基である場合に該シリル基がとり得るアルキル基の好ましい範囲と同様である。R
siがとり得るアルケニル基としては特に制限はないが、置換または無置換のアルケニル基が好ましく、分枝アルケニル基であることがより好ましく、該アルケニル基の炭素数は2〜3であることが好ましい。R
siがとり得るアルキニル基としては特に制限はないが、置換または無置換のアルキニル基が好ましく、分枝アルキニル基であることがより好ましく、該アルキニル基の炭素数は2〜3であることが好ましい。
【0032】
化学的安定性、キャリア輸送性の観点からLは一般式(L−1)で表される2価の連結基を含む2価の連結基であることが好ましく、一般式(L−1)で表される2価の連結基をRに隣接する位置に含む2価の連結基であることがより好ましく、一般式(L−1)で表される2価の連結基であることが特に好ましい。Lが一般式(L−1)で表される2価の連結基であり、Rが、置換または無置換のアルキル基であることがより特に好ましい。
【0033】
一般式(W)において、Rは置換または無置換のアルキル基、シアノ基、ビニル基、エチニル基、オキシエチレン基、オキシエチレン単位の繰り返し数が2以上のオリゴオキシエチレン基、シロキサン基、ケイ素原子数が2以上のオリゴシロキサン基、あるいは、置換または無置換のトリアルキルシリル基を表す。
一般式(W)において、Rに隣接するLが一般式(L−1)で表される2価の連結基である場合は、Rは置換または無置換のアルキル基、オキシエチレン基、オキシエチレン単位の繰り返し数が2以上のオリゴオキシエチレン基、シロキサン基、ケイ素原子数が2以上のオリゴシロキサン基であることが好ましく、置換または無置換のアルキル基であることがより好ましい。
一般式(W)において、Rに隣接するLが一般式(L−2)および(L−4)〜(L−25)で表される2価の連結基である場合は、Rは置換または無置換のアルキル基であることがより好ましい。
一般式(W)において、Rに隣接するLが一般式(L−3)で表される2価の連結基である場合は、Rは置換または無置換のアルキル基、置換または無置換のシリル基であることが好ましい。
【0034】
Rが置換または無置換のアルキル基の場合、炭素数は4〜17であることが好ましく、6〜14であることが化学的安定性、キャリア輸送性の観点からより好ましく、6〜12であることがさらに好ましい。Rが上記の範囲の長鎖アルキル基であること、特に長鎖の直鎖アルキル基であることが、分子の直線性が高まり、キャリア移動度を高めることができる観点から好ましい。
Rがアルキル基を表す場合、直鎖アルキル基でも、分枝アルキル基でも、環状アルキル基でもよいが、直鎖アルキル基であることが、分子の直線性が高まり、キャリア移動度を高めることができる観点から好ましい。
これらの中でも、一般式(W)におけるRとLの組み合わせとしては、Lが一般式(L−1)で表される2価の連結基であり、かつ、Rが直鎖の炭素数7〜17のアルキル基であるか;あるいは、Lが一般式(L−3)、(L−13)または(L−18)のいずれか1つで表される2価の連結基と一般式(L−1)で表される2価の連結基が結合した2価の連結基であり、かつ、Rが直鎖のアルキル基であることが、キャリア移動度を高める観点から好ましい。
Lが一般式(L−1)で表される2価の連結基であり、かつ、Rが直鎖の炭素数7〜17のアルキル基である場合、Rが直鎖の炭素数7〜14のアルキル基であることがキャリア移動度を高める観点からより好ましく、直鎖の炭素数7〜12のアルキル基であることが特に好ましい。
Lが一般式(L−3)、(L−13)または(L−18)のいずれか1つで表される2価の連結基と一般式(L−1)で表される2価の連結基が結合した2価の連結基であり、かつ、Rが直鎖のアルキル基である場合、Rが直鎖の炭素数4〜17のアルキル基であることがより好ましく、直鎖の炭素数6〜14のアルキル基であることが化学的安定性、キャリア輸送性の観点からより好ましく、直鎖の炭素数6〜12のアルキル基であることがキャリア移動度を高める観点から特に好ましい。
一方、有機溶媒への溶解度を高める観点からは、Rが分枝アルキル基であることが好ましい。
Rが置換基を有するアルキル基である場合の該置換基としては、ハロゲン原子などを挙げることができ、フッ素原子が好ましい。なお、Rがフッ素原子を有するアルキル基である場合は該アルキル基の水素原子が全てフッ素原子で置換されてパーフルオロアルキル基を形成してもよい。ただし、Rは無置換のアルキル基であることが好ましい。
【0035】
Rがエチレンオキシ基、または、オキシエチレン基の繰り返し数が2以上のオリゴエチレンオキシ基の場合、Rが表す「オリゴオキシエチレン基」とは本明細書中、−(OCH
2CH
2)
vOYで表される基のことを言う(オキシエチレン単位の繰り返し数vは2以上の整数を表し、末端のYは水素原子または置換基を表す)。なお、オリゴオキシエチレン基の末端のYが水素原子である場合はヒドロキシ基となる。オキシエチレン単位の繰り返し数vは2〜4であることが好ましく、2〜3であることがさらに好ましい。オリゴオキシエチレン基の末端のヒドロキシ基は封止されていること、すなわちYが置換基を表すことが好ましい。この場合、ヒドロキシ基は、炭素数が1〜3のアルキル基で封止されること、すなわちYが炭素数1〜3のアルキル基であることが好ましく、Yがメチル基やエチル基であることがより好ましく、メチル基であることが特に好ましい。
【0036】
Rが、シロキサン基、または、ケイ素原子数が2以上のオリゴシロキサン基の場合、シロキサン単位の繰り返し数は2〜4であることが好ましく、2〜3であることがさらに好ましい。また、Si原子には、水素原子やアルキル基が結合することが好ましい。Si原子にアルキル基が結合する場合、アルキル基の炭素数は1〜3であることが好ましく、例えば、メチル基やエチル基が結合することが好ましい。Si原子には、同一のアルキル基が結合してもよく、異なるアルキル基または水素原子が結合してもよい。また、オリゴシロキサン基を構成するシロキサン単位はすべて同一であっても異なっていてもよいが、すべて同一であることが好ましい。
【0037】
Rに隣接するLが一般式(L−3)で表される2価の連結基である場合、Rが置換または無置換のトリアルキルシリル基であることも好ましい。Rが置換または無置換のトリアルキルシリル基である場合はその中でも、Rが置換トリアルキルシリル基であることが好ましい。トリアルキルシリル基の置換基としては特に制限はないが、置換または無置換のアルキル基が好ましく、分枝アルキル基であることがより好ましい。Rがトリアルキルシリル基の場合、Si原子に結合するアルキル基の炭素数は1〜3であることが好ましく、例えば、メチル基やエチル基やイソプロピル基が結合することが好ましい。Si原子には、同一のアルキル基が結合してもよく、異なるアルキル基が結合してもよい。Rがアルキル基上にさらに置換基を有するトリアルキルシリル基である場合の置換基としては、特に制限はない。
【0038】
一般式(W)において、LおよびRに含まれる炭素数の合計は5〜18であることが好ましい。LおよびRに含まれる炭素数の合計が上記範囲の下限値以上であると、キャリア移動度が高くなり、駆動電圧を低くなる。LおよびRに含まれる炭素数の合計が上記範囲の上限値以下であると、有機溶媒に対する溶解性が高くなる。
LおよびRに含まれる炭素数の合計は5〜14であることが好ましく、6〜14であることがより好ましく、6〜12であることが特に好ましく、8〜12であることがより特に好ましい。
【0039】
一般式(1)のR
1〜R
8は、それぞれ独立に水素原子または置換基を表し、R
1〜R
8のうち少なくとも1つは置換もしくは無置換のアリールチオ基、置換もしくは無置換のヘテロアリールチオ基、置換もしくは無置換のアルキルオキシカルボニル基、置換もしくは無置換のアリールオキシカルボニル基または置換もしくは無置換のアルキルアミノ基である。
【0040】
アリールチオ基としては、炭素数6〜20のアリール基に硫黄原子が連結した基が好ましく、ナフチルチオ基、フェニルチオ基がより好ましく、フェニルチオ基が特に好ましい。
【0041】
ヘテロアリールチオ基としては、3〜10員環のヘテロアリール基に硫黄原子が連結した基が好ましく、5または6員環のヘテロアリール基に硫黄原子が連結した基がより好ましく、下記群(A)が特に好ましい。
【0042】
群(A)
【化33】
一般式(A−14)および(A−15)におけるmは4を表し、一般式(A−16)〜(A−18)および(A−20)におけるmは3を表し、一般式(A−21)、(A−23)、(A−24)、(A−26)および(A−27)におけるmは2を表し、
群(A)中、R’およびR
Nはそれぞれ独立に水素原子または置換基を表す。
群(A)中、R’は水素原子または一般式(W’)で表される置換基を表すことが好ましい。
群(A)中、R
Nは置換基を表すことが好ましく、アルキル基、アリール基、ヘテロアリール基がより好ましく、アルキル基、アルキル基で置換されたアリール基、アルキル基で置換されたヘテロアリール基が特に好ましく、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のアルキル基で置換されたフェニル基、炭素数1〜4のアルキル基で置換された5員のヘテロアリール基がより特に好ましい。
【0043】
アルキルオキシカルボニル基としては、炭素数1〜12のアルキルオキシ基にカルボニル基が連結した基が好ましい。アルキル基の炭素数は4〜12がより好ましく、6〜10が特に好ましい。
【0044】
アリールオキシカルボニル基としては、炭素数6〜20のアリールオキシ基にカルボニル基が連結した基が好ましい。アリール基の炭素数は、6〜14がより好ましく、6〜10が特に好ましい。
【0045】
アルキルアミノ基としては、炭素数1〜12のアルキル基にアミノ基が連結した基が好ましい。アルキル基の炭素数は、4〜12がより好ましく、6〜10が特に好ましい。
【0046】
R
1〜R
8が、置換アリールチオ基、置換ヘテロアリールチオ基、置換アルキルオキシカルボニル基、置換アリールオキシカルボニル基または置換アルキルアミノ基を示す場合における置換基としては、特に限定はないが、ハロゲン原子、アルキル基(メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基等の炭素数1〜40のアルキル基、ただし、2,6−ジメチルオクチル基、2−デシルテトラデシル基、2−ヘキシルドデシル基、2−エチルオクチル基、2−デシルテトラデシル基、2−ブチルデシル基、1−オクチルノニル基、2−エチルオクチル基、2−オクチルテトラデシル基、2−エチルヘキシル基、シクロアルキル基、ビシクロアルキル基、トリシクロアルキル基等を含む)、アルケニル基(1−ペンテニル基、シクロアルケニル基、ビシクロアルケニル基等を含む)、アルキニル基(1−ペンチニル基、トリメチルシリルエチニル基、トリエチルシリルエチニル基、トリ−i−プロピルシリルエチニル基、2−p−プロピルフェニルエチニル基等を含む)、アリール基(フェニル基、ナフチル基、p−ペンチルフェニル基、3,4−ジペンチルフェニル基、p−ヘプトキシフェニル基、3,4−ジヘプトキシフェニル基の炭素数6〜20のアリール基等を含む)、複素環基(ヘテロ環基といってもよい。2−ヘキシルフラニル基等を含む)、シアノ基、ヒドロキシル基、ニトロ基、アシル基(ヘキサノイル基、ベンゾイル基等を含む)、アルコキシ基(ブトキシ基等を含む)、アリールオキシ基、シリルオキシ基、ヘテロ環オキシ基、アシルオキシ基、カルバモイルオキシ基、アミノ基(アニリノ基を含む)、アシルアミノ基、アミノカルボニルアミノ基(ウレイド基含む)、アルコキシおよびアリールオキシカルボニルアミノ基、アルキルおよびアリールスルホニルアミノ基、メルカプト基、アルキルおよびアリールチオ基(メチルチオ基、オクチルチオ基等を含む)、ヘテロ環チオ基、スルファモイル基、スルホ基、アルキルおよびアリールスルフィニル基、アルキルおよびアリールスルホニル基、アルキルおよびアリールオキシカルボニル基、カルバモイル基、アリールおよびヘテロ環アゾ基、イミド基、ホスフィノ基、ホスフィニル基、ホスフィニルオキシ基、ホスフィニルアミノ基、ホスホノ基、シリル基(ジトリメチルシロキシメチルブトキシ基等)、ヒドラジノ基、ウレイド基、ボロン酸基(−B(OH)
2)、ホスファト基(−OPO(OH)
2)、スルファト基(−OSO
3H)、その他の公知の置換基が挙げられる。
また、これら置換基は、さらに上記置換基を有していてもよい。また、一般式(1)で表される化合物が繰り返し構造を有する高分子化合物である場合は、重合性基由来の基を有していてもよい。
これらの中でも、とりうる置換基として、アルキル基、アリール基、アルケニル基、アルキニル基、複素環基、アルコキシ基、アルキルチオ基、後述の一般式(W)で表される基が好ましく、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数6〜20のアリール基、炭素数2〜12のアルケニル基、炭素数2〜12のアルキニル基、炭素数1〜11のアルコキシ基、炭素数5〜12の複素環基、炭素数1〜12のアルキルチオ基、後述の一般式(W’)で表される基がより好ましい。後述する一般式(W’)で表される基が特に好ましい。
また、R
1〜R
8が、置換アリールチオ基、または、置換ヘテロアリールチオ基で表される場合においては、後述する一般式(W’)で表される基の中でも下記一般式(5)〜(7)のいずれかで表される置換基がより特に好ましい。
【0047】
【化34】
一般式(5)〜(7)中の波線部分は、置換アリールチオ基に含まれるアリール環または置換ヘテロアリールチオ基に含まれるヘテロアリール環との結合部位を表す。
【0048】
一般式(W’)について説明する。
−L−R 一般式(W’)
一般式(W’)中、Lは下記一般式(L−1)〜(L−25)のいずれかで表される2価の連結基または2以上の下記一般式(L−1)〜(L−25)のいずれかで表される2価の連結基が結合した2価の連結基を表し、Rは水素原子、置換または無置換のアルキル基、シアノ基、ビニル基、エチニル基、オキシエチレン基、オキシエチレン単位の繰り返し数が2以上のオリゴオキシエチレン基、シロキサン基、ケイ素原子数が2以上のオリゴシロキサン基、あるいは、置換または無置換のトリアルキルシリル基を表す。
【0050】
一般式(L−1)〜(L−25)中、
波線部分は、置換アリールチオ基に含まれるアリール環、置換ヘテロアリールチオ基に含まれるヘテロアリール環、置換アルキルオキシカルボニル基に含まれるアルキル基、置換アリールオキシカルボニル基に含まれるアリール基または置換アルキルアミノ基に含まれるアルキル基との結合部位を表し、
*はRとの結合部位を表し、
一般式(L−13)におけるmは4を表し、一般式(L−14)および(L−15)におけるmは3を表し、一般式(L−16)〜(L−20)におけるmは2を表し、(L−22)におけるmは6を表し、
一般式(L−1)、(L−2)、(L−6)および(L−13)〜(L−24)におけるR’はそれぞれ独立に水素原子または置換基を表し、一般式(L−1)および(L−2)中のR’は、それぞれLに隣接するRと結合して縮合環を形成してもよく、
R
Nは水素原子または置換基を表し、
R
siはそれぞれ独立に水素原子、アルキル基、アルケニル基またはアルキニル基を表す。
【0051】
一般式(W’)のRおよびLは、上述した一般式(W)のRおよびLで説明した範囲と同様である。
一般式(W’)におけるRとLとの好ましい組み合わせとしては、Lが一般式(L−1)で表される2価の連結基であり、かつ、Rが炭素数1〜12のアルキル基、炭素数1〜12のアルケニル基、または、ケイ素原子数が2以上のオリゴシロキサン基が挙げられ、上述の一般式(5)〜(7)のいずれかで表される置換基が好ましい。
一般式(W’)におけるRが、アルキル基で表される場合、有機溶媒への溶解度を高める観点からは、分枝アルキル基であることが好ましく、上述の一般式(6)で表される置換基がより好ましい。
一般式(W’)におけるRがアルケニル基で表される場合、有機溶媒への溶解度を高める観点からは、分枝アルケニル基であることが好ましく、上述の一般式(5)で表される置換基がより好ましい。
一般式(W’)におけるケイ素原子数が2以上のオリゴシロキサン基で表される場合、有機溶媒への溶解度を高める観点からは、分枝アルケニル基であることが好ましく、上述の一般式(7)で表される置換基がより好ましい。
一般式(W’)におけるRが置換基を有する基である場合の置換基としては、ハロゲン原子などを挙げることができ、フッ素原子が好ましい。なお、Rがフッ素原子を有するアルキル基である場合はアルキル基の水素原子が全てフッ素原子で置換されてパーフルオロアルキル基を形成してもよい。ただし、Rは無置換の基であることが好ましい。
【0052】
一般式(1)のR
1〜R
8は、R
2およびR
6のうち少なくとも1つが、置換もしくは無置換のアリールチオ基、置換もしくは無置換のヘテロアリールチオ基、置換もしくは無置換のアルキルオキシカルボニル基、置換もしくは無置換のアリールオキシカルボニル基または置換もしくは無置換のアルキルアミノ基であることが好ましい。より好ましくは、置換もしくは無置換のアリールチオ基、または、置換もしくは無置換のヘテロアリールチオ基である。更に好ましくは、R
2およびR
6のいずれもが、置換もしくは無置換のアリールチオ基、または、置換もしくは無置換のヘテロアリールチオ基である。特に好ましくは置換もしくは無置換のフェニルチオ基または下記群(A)から選ばれるヘテロアリールチオ基である。より特に好ましくは置換もしくは無置換のフェニルチオ基または下記一般式(A−17)、(A−18)、(A−20)で表されるヘテロアリールチオ基である。
なお、置換もしくは無置換のアリールチオ基、置換もしくは無置換のヘテロアリールチオ基の間では、置換もしくは無置換のヘテロアリールチオ基の方がキャリア移動度を高める観点からは好ましい。
また、R
2およびR
6は同じ基であることが好ましい。
R
2およびR
6のうち少なくとも1つを上述した置換基とすることで、側鎖同士の相互作用を増やしてキャリア移動度をより向上できる。更には、繰り返し駆動後の閾値電圧変化を小さくでき、性能バラつきを抑えることが可能となる。
【0053】
群(A)
【化36】
一般式(A−14)および(A−15)におけるmは4を表し、一般式(A−16)〜(A−18)および(A−20)におけるmは3を表し、一般式(A−21)、(A−23)、(A−24)、(A−26)および(A−27)におけるmは2を表し、
R’およびR
Nはそれぞれ独立に水素原子または置換基を表す。
【0054】
R
1〜R
8のうち、置換もしくは無置換のアリールチオ基、置換もしくは無置換のヘテロアリールチオ基、置換もしくは無置換のアルキルオキシカルボニル基、置換もしくは無置換のアリールオキシカルボニル基または置換もしくは無置換のアルキルアミノ基以外の置換基(以下、他の置換基ともいう)は、0〜4個であることが好ましく、0〜2個であることがより好ましく、0または1個であることが特に好ましく、0個であることがより特に好ましい。
【0055】
R
1〜R
8が他の置換基である場合、他の置換基は、それぞれ独立に炭素数2以下の置換または無置換のアルキル基、炭素数2以下の置換または無置換のアルキニル基、炭素数2以下の置換または無置換のアルケニル基、炭素数2以下の置換または無置換のアシル基であることが好ましく、炭素数2以下の置換または無置換のアルキル基であることがより好ましい。
R
1〜R
8が他の置換基として炭素数2以下の置換アルキル基を表す場合、アルキル基がとり得る置換基としては、シアノ基、フッ素原子、重水素原子などを挙げることができ、シアノ基が好ましい。炭素数2以下の置換または無置換のアルキル基としては、メチル基、エチル基、シアノ基置換のメチル基が好ましく、メチル基またはシアノ基置換のメチル基がより好ましく、シアノ基置換のメチル基が特に好ましい。
R
1〜R
8が他の置換基として炭素数2以下の置換アルキニル基を表す場合、アルキニル基がとり得る置換基としては、重水素原子などを挙げることができる。炭素数2以下の置換または無置換のアルキニル基としては、エチニル基、重水素原子置換のアセチレン基を挙げることができ、エチニル基が好ましい。
R
1〜R
8が他の置換基として炭素数2以下の置換アルケニル基を表す場合、アルケニル基がとり得る置換基としては、重水素原子などを挙げることができる。炭素数2以下の置換または無置換のアルケニル基としては、エテニル基、重水素原子置換のエテニル基を挙げることができ、エテニル基が好ましい。
R
1〜R
8が他の置換基として炭素数2以下の置換アシル基を表す場合、アシル基がとり得る置換基としては、フッ素原子などを挙げることができる。炭素数2以下の置換または無置換のアシル基としては、ホルミル基、アセチル基、フッ素置換のアセチル基を挙げることができ、ホルミル基が好ましい。
【0056】
<一般式(2)で表される化合物>
次に、一般式(2)で表される化合物について説明する。
【0057】
一般式(2)
【化37】
一般式(2)中、
R
9〜R
20はそれぞれ独立に水素原子または置換基を表し、R
9〜R
20のうち少なくとも1つは置換もしくは無置換のアリールチオ基、置換もしくは無置換のヘテロアリールチオ基、置換もしくは無置換のアルキルオキシカルボニル基、置換もしくは無置換のアリールオキシカルボニル基または置換もしくは無置換のアルキルアミノ基であり、
X
3およびX
4はそれぞれ独立にS原子、O原子、Se原子またはN−R
xを表し、R
xはそれぞれ独立に水素原子または上述の一般式(W)で表される置換基を表す。
【0058】
一般式(2)のR
9〜R
20はそれぞれ独立に水素原子または置換基を表し、R
9〜R
20のうち少なくとも1つは置換もしくは無置換のアリールチオ基、置換もしくは無置換のヘテロアリールチオ基、置換もしくは無置換のアルキルオキシカルボニル基、置換もしくは無置換のアリールオキシカルボニル基または置換もしくは無置換のアルキルアミノ基である。
【0059】
一般式(2)のR
9〜R
20の具体例及び好ましい範囲は、上述した一般式(1)のR
1〜R
8にて説明した範囲と同様である。
【0060】
一般式(2)のR
9〜R
20は、R
11およびR
17のうち少なくとも1つが、置換もしくは無置換のアリールチオ基、置換もしくは無置換のヘテロアリールチオ基、置換もしくは無置換のアルキルオキシカルボニル基、置換もしくは無置換のアリールオキシカルボニル基または置換もしくは無置換のアルキルアミノ基であることが好ましい。より好ましくは、置換もしくは無置換のアリールチオ基、または、置換もしくは無置換のヘテロアリールチオ基である。更に好ましくは、R
11およびR
17のいずれもが、置換もしくは無置換のアリールチオ基、または、置換もしくは無置換のヘテロアリールチオ基である。特に好ましくは置換もしくは無置換のフェニルチオ基または下記群(A)から選ばれるヘテロアリールチオ基である。より特に好ましくは置換もしくは無置換のフェニルチオ基または下記一般式(A−17)、(A−18)、(A−20)で表されるヘテロアリールチオ基である。
なお、置換もしくは無置換のアリールチオ基、置換もしくは無置換のヘテロアリールチオ基の間では、置換もしくは無置換のヘテロアリールチオ基の方がキャリア移動度を高める観点からは好ましい。
また、R
11およびR
17は同じ基であることが好ましい。
R
11およびR
17のうち少なくとも1つを上述した置換基とすることで、側鎖同士の相互作用を増やしてキャリア移動度をより向上できる。更には、繰り返し駆動後の閾値電圧変化を小さくでき、性能バラつきを抑えることが可能となる。
【0061】
群(A)
【化38】
一般式(A−14)および(A−15)におけるmは4を表し、一般式(A−16)〜(A−18)および(A−20)におけるmは3を表し、一般式(A−21)、(A−23)、(A−24)、(A−26)および(A−27)におけるmは2を表し、
R’およびR
Nはそれぞれ独立に水素原子または置換基を表す。
【0062】
一般式(2)のX
3およびX
4は、それぞれ独立にS原子、O原子、Se原子またはN−R
xを表し、R
xはそれぞれ独立に水素原子または上述した一般式(W)で表される置換基を表す。
一般式(W)については、上述した一般式(1)にて説明した一般式(W)と同様であり、好ましい範囲も同様である。
X
3およびX
4のうち少なくとも1つがS原子であることが、キャリア移動度を高める観点から好ましい。X
3およびX
4は、同じ連結基であることが好ましい。X
3およびX
4はいずれもS原子であることがより好ましい。
【0063】
<一般式(3)で表される化合物>
次に、一般式(3)で表される化合物について説明する。
【0064】
一般式(3)
【化39】
R
21〜R
32はそれぞれ独立に水素原子または置換基を表し、R
21〜R
32のうち少なくとも1つは置換もしくは無置換のアリールチオ基、置換もしくは無置換のヘテロアリールチオ基、置換もしくは無置換のアルキルオキシカルボニル基、置換もしくは無置換のアリールオキシカルボニル基または置換もしくは無置換のアルキルアミノ基であり、
X
5およびX
6はそれぞれ独立にS原子、O原子、Se原子またはN−R
xを表し、R
xはそれぞれ独立に水素原子または上述の一般式(W)で表される置換基を表す。
【0065】
一般式(3)のR
21〜R
32はそれぞれ独立に水素原子または置換基を表し、R
21〜R
32のうち少なくとも1つは置換もしくは無置換のアリールチオ基、置換もしくは無置換のヘテロアリールチオ基、置換もしくは無置換のアルキルオキシカルボニル基、置換もしくは無置換のアリールオキシカルボニル基または置換もしくは無置換のアルキルアミノ基である。
【0066】
一般式(3)のR
21〜R
32の具体例及び好ましい範囲は、上述した一般式(1)のR
1〜R
8にて説明した範囲と同様である。
【0067】
一般式(3)のR
21〜R
32は、R
22およびR
28のうち少なくとも1つが、置換もしくは無置換のアリールチオ基、置換もしくは無置換のヘテロアリールチオ基、置換もしくは無置換のアルキルオキシカルボニル基、置換もしくは無置換のアリールオキシカルボニル基または置換もしくは無置換のアルキルアミノ基であることが好ましい。より好ましくは、置換もしくは無置換のアリールチオ基、または、置換もしくは無置換のヘテロアリールチオ基である。更に好ましくは、R
22およびR
28のいずれもが、置換もしくは無置換のアリールチオ基、または、置換もしくは無置換のヘテロアリールチオ基である。特に好ましくは置換もしくは無置換のフェニルチオ基または下記群(A)から選ばれるヘテロアリールチオ基である。より特に好ましくは置換もしくは無置換のフェニルチオ基または下記一般式(A−17)、(A−18)、(A−20)で表されるヘテロアリールチオ基である。
なお、置換もしくは無置換のアリールチオ基、置換もしくは無置換のヘテロアリールチオ基の間では、置換もしくは無置換のヘテロアリールチオ基の方がキャリア移動度を高める観点からは好ましい。
また、R
22およびR
28は同じ基であることが好ましい。
R
22およびR
28のうち少なくとも1つを上述した置換基とすることで、側鎖同士の相互作用を増やしてキャリア移動度をより向上できる。更には、繰り返し駆動後の閾値電圧変化を小さくでき、性能バラつきを抑えることが可能となる。
【0068】
群(A)
【化40】
一般式(A−14)および(A−15)におけるmは4を表し、一般式(A−16)〜(A−18)および(A−20)におけるmは3を表し、一般式(A−21)、(A−23)、(A−24)、(A−26)および(A−27)におけるmは2を表し、
R’およびR
Nはそれぞれ独立に水素原子または置換基を表す。
【0069】
一般式(3)のX
5およびX
6は、それぞれ独立にS原子、O原子、Se原子またはN−R
xを表し、R
xはそれぞれ独立に水素原子または上述した一般式(W)で表される置換基を表す。
一般式(W)については、上述した一般式(1)にて説明した一般式(W)と同様であり、好ましい範囲も同様である。
X
5およびX
6のうち少なくとも1つがS原子であることが、キャリア移動度を高める観点から好ましい。X
5およびX
6は、同じ連結基であることが好ましい。X
5およびX
6はいずれもS原子であることがより好ましい。
【0070】
<一般式(4)で表される化合物>
次に、一般式(4)で表される化合物について説明する。
【0071】
一般式(4)
【化41】
R
33〜R
44はそれぞれ独立に水素原子または置換基を表し、R
33〜R
44のうち少なくとも1つは置換もしくは無置換のアリールチオ基、置換もしくは無置換のヘテロアリールチオ基、置換もしくは無置換のアルキルオキシカルボニル基、置換もしくは無置換のアリールオキシカルボニル基または置換もしくは無置換のアルキルアミノ基であり、
X
7およびX
8はそれぞれ独立にS原子、O原子、Se原子またはN−R
xを表し、R
xはそれぞれ独立に水素原子または上述の一般式(W)で表される置換基を表す。
【0072】
一般式(4)のR
33〜R
44はそれぞれ独立に水素原子または置換基を表し、R
33〜R
44のうち少なくとも1つは置換もしくは無置換のアリールチオ基、置換もしくは無置換のヘテロアリールチオ基、置換もしくは無置換のアルキルオキシカルボニル基、置換もしくは無置換のアリールオキシカルボニル基または置換もしくは無置換のアルキルアミノ基である。
【0073】
一般式(4)のR
33〜R
44の具体例及び好ましい範囲は、上述した一般式(1)のR
1〜R
8にて説明した範囲と同様である。
【0074】
一般式(4)のR
33〜R
44は、R
36およびR
42のうち少なくとも1つが、置換もしくは無置換のアリールチオ基、置換もしくは無置換のヘテロアリールチオ基、置換もしくは無置換のアルキルオキシカルボニル基、置換もしくは無置換のアリールオキシカルボニル基または置換もしくは無置換のアルキルアミノ基であることが好ましい。より好ましくは、置換もしくは無置換のアリールチオ基、または、置換もしくは無置換のヘテロアリールチオ基である。更に好ましくは、R
36およびR
42のいずれもが、置換もしくは無置換のアリールチオ基、または、置換もしくは無置換のヘテロアリールチオ基である。特に好ましくは置換もしくは無置換のフェニルチオ基または下記群(A)から選ばれるヘテロアリールチオ基である。より特に好ましくは置換もしくは無置換のフェニルチオ基または下記一般式(A−17)、(A−18)、(A−20)で表されるヘテロアリールチオ基である。
なお、置換もしくは無置換のアリールチオ基、置換もしくは無置換のヘテロアリールチオ基の間では、置換もしくは無置換のヘテロアリールチオ基の方がキャリア移動度を高める観点からは好ましい。
また、R
36およびR
42は同じ基であることが好ましい。
R
36およびR
42のうち少なくとも1つを上述した置換基とすることで、側鎖同士の相互作用を増やしてキャリア移動度をより向上できる。更には、繰り返し駆動後の閾値電圧変化を小さくでき、性能バラつきを抑えることが可能となる。
【0075】
群(A)
【化42】
一般式(A−14)および(A−15)におけるmは4を表し、一般式(A−16)〜(A−18)および(A−20)におけるmは3を表し、一般式(A−21)、(A−23)、(A−24)、(A−26)および(A−27)におけるmは2を表し、
R’およびR
Nはそれぞれ独立に水素原子または置換基を表す。
【0076】
一般式(4)のX
7およびX
8は、それぞれ独立にS原子、O原子、Se原子またはN−R
xを表し、R
xはそれぞれ独立に水素原子または上述した一般式(W)で表される置換基を表す。
一般式(W)については、上述した一般式(1)にて説明した一般式(W)と同様であり、好ましい範囲も同様である。
X
7およびX
8のうち少なくとも1つがS原子であることが、キャリア移動度を高める観点から好ましい。X
7およびX
8は、同じ連結基であることが好ましい。X
7およびX
8はいずれもS原子であることがより好ましい。
【0077】
上記一般式(1)〜(4)のいずれかで表される化合物の具体例を以下に示すが、本発明で用いることができる一般式(1)〜(4)のいずれかで表される化合物は、これらの具体例により限定的に解釈されるべきものではない。
【0082】
上記一般式(1)〜(4)のいずれかで表される化合物は、繰り返し構造をとってもよく、低分子でも高分子でも良い。一般式(1)〜(4)のいずれかで表される化合物が低分子化合物の場合は、分子量が3000以下であることが好ましく、2000以下であることがより好ましく、1000以下であることがさらに好ましく、850以下であることが特に好ましい。分子量を上記上限値以下とすることにより、溶媒への溶解性を高めることができるため好ましい。
一方で、薄膜の膜質安定性の観点からは、分子量は400以上であることが好ましく、450以上であることがより好ましく、500以上であることがさらに好ましい。
また、一般式(1)〜(4)のいずれかで表される化合物が繰り返し構造を有する高分子化合物の場合は、重量平均分子量が3万以上であることが好ましく、5万以上であることがより好ましく、10万以上であることがさらに好ましい。一般式(1)〜(4)のいずれかで表される化合物が繰り返し構造を有する高分子化合物である場合に、重量平均分子量を上記下限値以上とすることにより、分子間相互作用を高めることができ、高い移動度が得られるため好ましい。
繰り返し構造を有する高分子化合物としては、一般式(1)〜(4)のいずれかで表される化合物が少なくとも1つ以上のアリーレン基、ヘテロアリーレン基(チオフェン、ビチオフェン)を介して繰り返し構造を示すπ共役ポリマーや、一般式(1)〜(4)のいずれかで表される化合物が高分子主鎖に側鎖を介して結合したペンダント型ポリマーがあげられ、高分子主鎖としては、ポリアクリレート、ポリビニル、ポリシロキサンなどが好ましく、側鎖としては、アルキレン基、ポリエチレンオキシド基などが好ましい。
【0083】
前記一般式(1)〜(4)のいずれかで表される化合物は、Journal OF American Chemical Society, 129, 15732 (2007)を参考に合成することができる。
本発明の化合物の合成において、いかなる反応条件を用いてもよい。反応溶媒としては、いかなる溶媒を用いてもよい。また、環形成反応促進のために、酸または塩基を用いることが好ましく、特に塩基を用いることが好ましい。最適な反応条件は、目的とする化合物の構造により異なるが、上記の文献に記載された具体的な反応条件を参考に設定することができる。
【0084】
各種置換基を有する合成中間体は公知の反応を組み合わせて合成することができる。また、各置換基はいずれの中間体の段階で導入してもよい。中間体の合成後は、カラムクロマトグラフィー、再結晶等による精製を行った後、昇華精製により精製する事が好ましい。昇華精製により、有機不純物を分離できるだけでなく、無機塩や残留溶媒等を効果的に取り除くことができる。
【0085】
<有機薄膜トランジスタの構造>
本発明の有機薄膜トランジスタは、一般式(1)〜(4)のいずれかで表される化合物を含む半導体活性層を有する。
本発明の有機薄膜トランジスタは、さらに半導体活性層以外にその他の層を含んでいてもよい。
本発明の有機薄膜トランジスタは、有機電界効果トランジスタ(Field Effect Transistor、FET)として用いられることが好ましく、ゲート−チャンネル間が絶縁されている絶縁ゲート型FETとして用いられることがより好ましい。
以下、本発明の有機薄膜トランジスタの好ましい構造の態様について、図面を用いて詳しく説明するが、本発明はこれらの態様に限定されるものではない。
【0086】
(積層構造)
有機電界効果トランジスタの積層構造としては特に制限はなく、公知の様々な構造のものとすることができる。
本発明の有機薄膜トランジスタの構造の一例としては、最下層の基板の上面に、電極、絶縁体層、半導体活性層(有機半導体層)、2つの電極を順に配置した構造(ボトムゲート・トップコンタクト型)を挙げることができる。この構造では、最下層の基板の上面の電極は基板の一部に設けられ、絶縁体層は、電極以外の部分で基板と接するように配置される。また、半導体活性層の上面に設けられる2つの電極は、互いに隔離して配置される。
ボトムゲート・トップコンタクト型素子の構成を
図1に示す。
図1は、本発明の有機薄膜トランジスタの一例の構造の断面を示す概略図である。
図1の有機薄膜トランジスタは、最下層に基板11を配置し、その上面の一部に電極12を設け、さらに該電極12を覆い、かつ電極12以外の部分で基板11と接するように絶縁体層13を設けている。さらに絶縁体層13の上面に半導体活性層14を設け、その上面の一部に2つの電極15aと15bとを隔離して配置している。
図1に示した有機薄膜トランジスタは、電極12がゲートであり、電極15aと電極15bはそれぞれドレインまたはソースである。また、
図1に示した有機薄膜トランジスタは、ドレイン−ソース間の電流通路であるチャンネルと、ゲートとの間が絶縁されている絶縁ゲート型FETである。
【0087】
本発明の有機薄膜トランジスタの構造の一例としては、ボトムゲート・ボトムコンタクト型素子を挙げることができる。
ボトムゲート・ボトムコンタクト型素子の構成を
図2に示す。
図2は本発明の実施例でFET特性測定用基板として製造した有機薄膜トランジスタの構造の断面を示す概略図である。
図2の有機薄膜トランジスタは、最下層に基板31を配置し、その上面の一部に電極32を設け、さらに該電極32を覆い、かつ電極32以外の部分で基板31と接するように絶縁体層33を設けている。さらに絶縁体層33の上面に半導体活性層35を設け、電極34aと34bが半導体活性層35の下部にある。
図2に示した有機薄膜トランジスタは、電極32がゲートであり、電極34aと電極34bはそれぞれドレインまたはソースである。また、
図2に示した有機薄膜トランジスタは、ドレイン−ソース間の電流通路であるチャンネルと、ゲートとの間が絶縁されている絶縁ゲート型FETである。
【0088】
本発明の有機薄膜トランジスタの構造としては、その他、絶縁体、ゲート電極が半導体活性層の上部にあるトップゲート・トップコンタクト型素子や、トップゲート・ボトムコンタクト型素子も好ましく用いることができる。
【0089】
(厚さ)
本発明の有機薄膜トランジスタは、より薄いトランジスタとする必要がある場合には、例えばトランジスタ全体の厚さを0.1〜0.5μmとすることが好ましい。
【0090】
(封止)
有機薄膜トランジスタ素子を大気や水分から遮断し、有機薄膜トランジスタ素子の保存性を高めるために、有機薄膜トランジスタ素子全体を金属の封止缶やガラス、窒化ケイ素などの無機材料、パリレンなどの高分子材料や、低分子材料などで封止してもよい。
以下、本発明の有機薄膜トランジスタの各層の好ましい態様について説明するが、本発明はこれらの態様に限定されるものではない。
【0091】
<基板>
(材料)
本発明の有機薄膜トランジスタは、基板を含むことが好ましい。
基板の材料としては特に制限はなく、公知の材料を用いることができ、例えば、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリエチレンテレフタレート(PET)などのポリエステルフィルム、シクロオレフィンポリマーフィルム、ポリカーボネートフィルム、トリアセチルセルロース(TAC)フィルム、ポリイミドフィルム、およびこれらポリマーフィルムを極薄ガラスに貼り合わせたもの、セラミック、シリコン、石英、ガラス、などを挙げることができ、シリコンが好ましい。
【0092】
<電極>
(材料)
本発明の有機薄膜トランジスタは、電極を含むことが好ましい。
電極の構成材料としては、例えば、Cr、Al、Ta、Mo、Nb、Cu、Ag、Au、Pt、Pd、In、NiあるいはNdなどの金属材料やこれらの合金材料、あるいはカーボン材料、導電性高分子などの既知の導電性材料であれば特に制限することなく使用できる。
【0093】
(厚さ)
電極の厚さは特に制限はないが、10〜50nmとすることが好ましい。
ゲート幅(またはチャンネル幅)Wとゲート長(またはチャンネル長)Lに特に制限はないが、これらの比W/Lが10以上であることが好ましく、20以上であることがより好ましい。
【0094】
<絶縁層>
(材料)
絶縁層を構成する材料は必要な絶縁効果が得られれば特に制限はないが、例えば、二酸化ケイ素、窒化ケイ素、PTFE、CYTOP等のフッ素ポリマー系絶縁材料、ポリエステル絶縁材料、ポリカーボネート絶縁材料、アクリルポリマー系絶縁材料、エポキシ樹脂系絶縁材料、ポリイミド絶縁材料、ポリビニルフェノール樹脂系絶縁材料、ポリパラキシリレン樹脂系絶縁材料などが挙げられる。
絶縁層の上面は表面処理がなされていてもよく、例えば、二酸化ケイ素表面をヘキサメチルジシラザン(HMDS)やオクタデシルトリクロロシラン(OTS)の塗布により表面処理した絶縁層を好ましく用いることができる。
【0095】
(厚さ)
絶縁層の厚さに特に制限はないが、薄膜化が求められる場合は厚さを10〜400nmとすることが好ましく、20〜200nmとすることがより好ましく、50〜200nmとすることが特に好ましい。
【0096】
<半導体活性層>
(材料)
本発明の有機薄膜トランジスタは、半導体活性層が一般式(1)〜(4)のいずれかで表される化合物、すなわち本発明の化合物を含むことを特徴とする。
半導体活性層は、本発明の化合物からなる層であってもよく、本発明の化合物に加えて後述のポリマーバインダーがさらに含まれた層であってもよい。また、成膜時の残留溶媒が含まれていてもよい。
半導体活性層中におけるポリマーバインダーの含有量は、特に制限はないが、好ましくは0〜95質量%の範囲内で用いられ、より好ましくは10〜90質量%の範囲内で用いられ、さらに好ましくは20〜80質量%の範囲内で用いられ、特に好ましくは30〜70質量%の範囲内で用いられる。
【0097】
(厚さ)
半導体活性層の厚さに特に制限はないが、薄膜化が求められる場合は厚さを10〜400nmとすることが好ましく、10〜200nmとすることがより好ましく、10〜100nmとすることが特に好ましい。
【0098】
[非発光性有機半導体デバイス用有機半導体材料]
本発明は、一般式(1)〜(4)のいずれかで表される化合物、すなわち本発明の化合物を含有する非発光性有機半導体デバイス用有機半導体材料にも関する。
【0099】
(非発光性有機半導体デバイス)
なお、本明細書において、「非発光性有機半導体デバイス」とは、発光することを目的としないデバイスを意味する。非発光性有機半導体デバイスは、薄膜の層構造を有するエレクトロニクス要素を用いた非発光性有機半導体デバイスとすることが好ましい。非発光性有機半導体デバイスには、有機薄膜トランジスタ、有機光電変換素子(光センサ用途の固体撮像素子、エネルギー変換用途の太陽電池等)、ガスセンサ、有機整流素子、有機インバータ、情報記録素子などが包含される。有機光電変換素子は光センサ用途(固体撮像素子)、エネルギー変換用途(太陽電池)のいずれにも用いることができる。好ましくは、有機光電変換素子、有機薄膜トランジスタであり、さらに好ましくは有機薄膜トランジスタである。すなわち、本発明の非発光性有機半導体デバイス用有機半導体材料は、上述のとおり有機薄膜トランジスタ用材料であることが好ましい。
【0100】
(有機半導体材料)
本明細書において、「有機半導体材料」とは、半導体の特性を示す有機材料のことである。無機材料からなる半導体と同様に、正孔をキャリアとして伝導するp型(ホール輸送性)有機半導体材料と、電子をキャリアとして伝導するn型(電子輸送性)有機半導体材料がある。
本発明の化合物はp型有機半導体材料、n型の有機半導体材料のどちらとして用いてもよいが、p型として用いることがより好ましい。有機半導体中のキャリアの流れやすさはキャリア移動度μで表される。キャリア移動度μは高い方がよく、5×10
-2cm
2/Vs以上であることが好ましく、1×10
-2cm
2/Vs以上であることがより好ましく、5×10
-1cm
2/Vs以上であることが特に好ましく、1cm
2/Vs以上であることがより特に好ましく、2cm
2/Vs以上であることがよりさらに特に好ましい。キャリア移動度μは電界効果トランジスタ(FET)素子を作製したときの特性や飛行時間計測(TOF)法により求めることができる。
【0101】
[非発光性有機半導体デバイス用有機半導体薄膜]
(材料)
本発明は、上記一般式(1)〜(4)のいずれかで表される化合物、すなわち本発明の化合物を含有する非発光性有機半導体デバイス用有機半導体薄膜にも関する。
本発明の非発光性有機半導体デバイス用有機半導体薄膜は、一般式(1)〜(4)のいずれかで表される化合物、すなわち本発明の化合物を含有し、ポリマーバインダーを含有しない態様も好ましい。
また、本発明の非発光性有機半導体デバイス用有機半導体薄膜は、一般式(1)〜(4)のいずれかで表される化合物、すなわち本発明の化合物とポリマーバインダーを含有してもよい。
【0102】
ポリマーバインダーとしては、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリエステル、ポリアミド、ポリイミド、ポリウレタン、ポリシロキサン、ポリスルフォン、ポリメチルメタクリレート、ポリメチルアクリレート、セルロース、ポリエチレン、ポリプロピレンなどの絶縁性ポリマー、およびこれらの共重合体、ポリビニルカルバゾール、ポリシランなどの光伝導性ポリマー、ポリチオフェン、ポリピロール、ポリアニリン、ポリパラフェニレンビニレンなどの導電性ポリマー、半導体ポリマーを挙げることができる。
ポリマーバインダーは、単独で使用してもよく、あるいは複数併用してもよい。
また、有機半導体材料とポリマーバインダーとは均一に混合していてもよく、一部または全部が相分離していてもよいが、電荷移動度の観点では、膜中で膜厚方向に有機半導体とバインダーが相分離した構造が、バインダーが有機半導体の電荷移動を妨げず最も好ましい。
薄膜の機械的強度を考慮するとガラス転移温度の高いポリマーバインダーが好ましく、電荷移動度を考慮すると極性基を含まない構造のポリマーバインダーや光伝導性ポリマー、導電性ポリマーが好ましい。
ポリマーバインダーの使用量は、特に制限はないが、本発明の非発光性有機半導体デバイス用有機半導体薄膜中、好ましくは0〜95質量%の範囲内で用いられ、より好ましくは10〜90質量%の範囲内で用いられ、さらに好ましくは20〜80質量%の範囲内で用いられ、特に好ましくは30〜70質量%の範囲内で用いられる。
【0103】
さらに、本発明では、化合物が上述した構造をとることにより、膜質の良い有機薄膜を得ることができる。具体的には、本発明で得られる化合物は、結晶性が良いため、十分な膜厚を得ることができ、得られた本発明の非発光性有機半導体デバイス用有機半導体薄膜は良質なものとなる。
【0104】
(成膜方法)
本発明の化合物を基板上に成膜する方法はいかなる方法でもよい。
成膜の際、基板を加熱または冷却してもよく、基板の温度を変化させることで膜質や膜中での分子のパッキングを制御することが可能である。基板の温度としては特に制限はないが、0℃から200℃の間であることが好ましく、15℃〜100℃の間であることがより好ましく、20℃〜95℃の間であることが特に好ましい。
本発明の化合物を基板上に成膜するとき、真空プロセスあるいは溶液プロセスにより成膜することが可能であり、いずれも好ましい。
【0105】
真空プロセスによる成膜の具体的な例としては、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、分子ビームエピタキシー(MBE)法などの物理気相成長法あるいはプラズマ重合などの化学気相蒸着(CVD)法が挙げられ、真空蒸着法を用いることが特に好ましい。
【0106】
溶液プロセスによる成膜とは、ここでは有機化合物を溶解させることができる溶媒中に溶解させ、その溶液を用いて成膜する方法をさす。具体的には、キャスト法、ディップコート法、ダイコーター法、ロールコーター法、バーコーター法、スピンコート法などの塗布法、インクジェット法、スクリーン印刷法、グラビア印刷法、フレキソグラフィー印刷法、オフセット印刷法、マイクロコンタクト印刷法などの各種印刷法、Langmuir−Blodgett(LB)法などの通常の方法を用いることができ、キャスト法、スピンコート法、インクジェット法、グラビア印刷法、フレキソグラフィー印刷法、オフセット印刷法、マイクロコンタクト印刷法を用いることが特に好ましい。
本発明の非発光性有機半導体デバイス用有機半導体薄膜は、溶液塗布法により作製されたことが好ましい。また、本発明の非発光性有機半導体デバイス用有機半導体薄膜がポリマーバインダーを含有する場合、層を形成する材料とポリマーバインダーとを適当な溶媒に溶解させ、または分散させて塗布液とし、各種の塗布法により形成されることが好ましい。
以下、溶液プロセスによる成膜に用いることができる、本発明の非発光性有機半導体デバイス用塗布溶液について説明する。
【0107】
[非発光性有機半導体デバイス用塗布溶液]
本発明は、一般式(1)〜(4)のいずれかで表される化合物、すなわち本発明の化合物を含有する非発光性有機半導体デバイス用塗布溶液にも関する。
溶液プロセスを用いて基板上に成膜する場合、層を形成する材料を適当な有機溶媒(例えば、ヘキサン、オクタン、デカン、トルエン、キシレン、メシチレン、エチルベンゼン、デカリン、1−メチルナフタレンなどの炭化水素系溶媒、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン系溶媒、例えば、ジクロロメタン、クロロホルム、テトラクロロメタン、ジクロロエタン、トリクロロエタン、テトラクロロエタン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、クロロトルエンなどのハロゲン化炭化水素系溶媒、例えば、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸アミルなどのエステル系溶媒、例えば、メタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、シクロヘキサノール、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、エチレングリコールなどのアルコール系溶媒、例えば、ジブチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、アニソールなどのエーテル系溶媒、例えば、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、1−メチルー2−ピロリドン、1−メチルー2−イミダゾリジノン等のアミド・イミド系溶媒、ジメチルスルフォキサイドなどのスルホキシド系溶媒、アセトニトリルなどのニトリル系溶媒)および/または水に溶解、または分散させて塗布液とし、各種の塗布法により薄膜を形成することができる。溶媒は単独で用いてもよく、複数組み合わせて用いてもよい。これらの中でも、炭化水素系溶媒、ハロゲン化炭化水素系溶媒またはエーテル系溶媒が好ましく、トルエン、キシレン、メシチレン、テトラリン、ジクロロベンゼンまたはアニソールがより好ましく、トルエン、キシレン、テトラリン、アニソールが特に好ましい。その塗布液中の一般式(1)〜(4)のいずれかで表される化合物の濃度は、好ましくは、0.1〜80質量%、より好ましくは0.1〜10質量%、特に好ましくは0.5〜10重量%とすることにより、任意の厚さの膜を形成できる。
【0108】
溶液プロセスで成膜するためには、上記で挙げた溶媒などに材料が溶解することが必要であるが、単に溶解するだけでは不十分である。通常、真空プロセスで成膜する材料でも、溶媒にある程度溶解させることができる。しかし、溶液プロセスでは、材料を溶媒に溶解させて塗布した後で、溶媒が蒸発して薄膜が形成する過程があり、溶液プロセス成膜に適さない材料は結晶性が高いものが多いため、この過程で不適切に結晶化(凝集)してしまい良好な薄膜を形成させることが困難である。一般式(1)〜(4)のいずれかで表される化合物は、このような結晶化(凝集)が起こりにくい点でも優れている。
【0109】
本発明の非発光性有機半導体デバイス用塗布溶液は、一般式(1)〜(4)のいずれかで表される化合物、すなわち本発明の化合物を含み、ポリマーバインダーを含有しない態様も好ましい。
また、本発明の非発光性有機半導体デバイス用塗布溶液は、一般式(1)〜(4)のいずれかで表される化合物、すなわち本発明の化合物とポリマーバインダーを含有してもよい。この場合、層を形成する材料とポリマーバインダーとを前述の適当な溶媒に溶解させ、または分散させて塗布液とし、各種の塗布法により薄膜を形成することができる。ポリマーバインダーとしては、上述したものから選択することができる。
【実施例】
【0110】
以下に実施例と比較例を挙げて本発明の特徴をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。したがって、本発明の範囲は以下に示す具体例により限定的に解釈されるべきものではない。
【0111】
[実施例1]
<合成例1> 化合物7の合成
以下のスキームに示した具体的合成手順にしたがって、一般式(1)〜(4)のいずれかで表される化合物である、化合物7を合成した。
【0112】
スキーム1
【化47】
【0113】
得られた化合物7の同定は元素分析、NMRまたはMASSスペクトルにより行った。
【0114】
他の実施例に用いた一般式(1)〜(4)のいずれかで表される化合物である化合物6、14、16、40、48、53および58も化合物7と同様にして合成した。
なお、得られた一般式(1)〜(4)のいずれかで表される各化合物の同定は元素分析、NMRまたはMASSスペクトルにより行った。
【0115】
比較素子の半導体活性層(有機半導体層)に用いた比較化合物1〜6を、以下の各文献に記載の方法にしたがって合成した。
比較化合物1は特許第4581062号に記載の化合物16であり、比較化合物2〜5はそれぞれ特開2009−54830号公報に記載の化合物(9)、(12)、(13)および(14)であり、比較化合物6は特開2009−152355号公報に記載の有機半導体材料3である。
比較化合物1〜6の構造を以下に示す。
【化48】
【0116】
<素子作製・評価>
素子作製に用いた材料は全て昇華精製を行い、高速液体クロマトグラフィー(東ソーTSKgel ODS−100Z)により純度(254nmの吸収強度面積比)が99.5%以上であることを確認した。
【0117】
[実施例2]
<化合物単独で半導体活性層(有機半導体層)を形成>
本発明の化合物または比較化合物(各1mg)とトルエン(1mL)を混合し、100℃に加熱したものを、非発光性有機半導体デバイス用塗布溶液とした。この塗布溶液を窒素雰囲気下、90℃に加熱したFET特性測定用基板上にキャストすることで、非発光性有機半導体デバイス用有機半導体薄膜を形成し、FET特性測定用の実施例1の有機薄膜トランジスタ素子を得た。FET特性測定用基板としては、ソースおよびドレイン電極としてくし型に配置されたクロム/金(ゲート幅W=100mm、ゲート長L=100μm)、絶縁膜としてSiO
2(膜厚200nm)を備えたボトムゲート・ボトムコンタクト構造のシリコン基板(
図2に構造の概略図を示した)を用いた。
実施例2の有機薄膜トランジスタ素子のFET特性は、セミオートプローバー(ベクターセミコン製、AX−2000)を接続した半導体パラメーターアナライザー(Agilent製、4156C)を用いて常圧・窒素雰囲気下で、キャリア移動度、繰り返し駆動後の閾値電圧変化および移動度バラツキの観点で以下の基準で評価した。
得られた結果を下記表1に示す。
【0118】
(a)キャリア移動度
各有機薄膜トランジスタ素子(FET素子)のソース電極−ドレイン電極間に−80Vの電圧を印加し、ゲート電圧を20V〜−100Vの範囲で変化させ、ドレイン電流I
dを表わす式I
d=(w/2L)μC
i(V
g−V
th)
2(式中、Lはゲート長、Wはゲート幅、C
iは絶縁層の単位面積当たりの容量、V
gはゲート電圧、V
thは閾値電圧)を用いてキャリア移動度μを算出した。
【0119】
(b)繰り返し駆動後の閾値電圧変化
各有機薄膜トランジスタ素子(FET素子)のソース電極−ドレイン電極間に−80Vの電圧を印加し、ゲート電圧を+20V〜−100Vの範囲で100回繰り返して(a)と同様の測定を行い、繰り返し駆動前の閾値電圧V前と繰り返し駆動後の閾値電圧V後の差(|V後−V前|)を以下の3段階で評価した。この値は小さいほど素子の繰り返し駆動安定性が高く、好ましい。実用上、繰り返し駆動後の閾値電圧変化はAまたはB評価であることが必要であり、A評価であることが好ましい。
A:|V後−V前|≦5V
B:5V<|V後−V前|≦10V
C:|V後−V前|>10V
【0120】
(c)移動度バラツキ
一定の条件で作製した有機薄膜トランジスタ素子(FET素子)を各種の素子について30素子ずつ用意し、(a)の方法で求められる移動度のバラツキを以下の式より求めた。この値は小さいほど素子間の移動度バラツキが小さく、好ましい。実用上、移動度バラツキはAまたはB評価であることが必要であり、A評価であることが好ましい。
A:移動度バラツキ≦10%
B:10%<移動度バラツキ≦30%
C:移動度バラツキ>40%
【0121】
【表1】
【0122】
上記表1より、本発明の化合物を用いた有機薄膜トランジスタ素子は、キャリア移動度が高く、繰り返し駆動後の閾値電圧変化が小さく、移動度バラツキが小さいことがわかった。そのため、本発明の化合物は非発光性有機半導体デバイス用有機半導体材料として好ましく用いられることがわかった。
一方、比較化合物2、3および5を用いた有機薄膜トランジスタ素子は、キャリア移動度が低いものであった。比較化合物1、4および6を用いた有機薄膜トランジスタ素子は、繰り返し駆動後の閾値電圧変化が大きいものであった。比較化合物2、4および6を用いた有機薄膜トランジスタ素子は、移動度バラツキが大きいものであった。
【0123】
[実施例3]
<化合物をバインダーとともに用いて半導体活性層(有機半導体層)を形成>
本発明の化合物または比較化合物(各1mg)、PαMS(ポリ(α−メチルスチレン、Mw=300,000)、Aldrich製)1mg、トルエン(1mL)を混合し、100℃に加熱したものを塗布溶液として用いる以外は実施例1と同様にしてFET特性測定用の有機薄膜トランジスタ素子を作製し、実施例2と同様の評価を行った。
得られた結果を下記表2に示す。
【0124】
【表2】
【0125】
上記表2より、本発明の化合物をバインダーとともに用いて半導体活性層を形成した有機薄膜トランジスタ素子は、キャリア移動度が高く、繰り返し駆動後の閾値電圧変化が小さく、移動度バラツキが小さいことがわかった。そのため、本発明の化合物は非発光性有機半導体デバイス用有機半導体材料として好ましく用いられることがわかった。
一方、比較化合物2〜5をバインダーとともに用いて半導体活性層を形成した有機薄膜トランジスタ素子は、キャリア移動度が低いものであった。比較化合物1および6をバインダーとともに用いて半導体活性層を形成した有機薄膜トランジスタ素子は、繰り返し駆動後の閾値電圧変化が大きいものであった。比較化合物6をバインダーとともに用いて半導体活性層を形成した用いた有機薄膜トランジスタ素子は、移動度バラツキが大きいものであった。
【0126】
さらに、実施例3で得られた各有機薄膜トランジスタ素子について、光学顕微鏡観察を行ったところ、バインダーとしてPαMSを用いた薄膜はいずれも膜の平滑性・均一性が非常に高いことが分かった。
【0127】
以上より、比較素子ではバインダーと比較化合物の複合系で半導体活性層を形成した場合にキャリア移動度が非常に低くなるのに対し、本発明の有機薄膜トランジスタ素子では本発明の化合物をバインダーとともに用いて半導体活性層を形成した場合も良好なキャリア移動度を示し、繰り返し駆動後の閾値電圧変化および移動度バラツキが小さく、膜の平滑性・均一性が非常に高い素子を得ることができることが分かった。
【0128】
[実施例4]
<半導体活性層(有機半導体層)形成>
ゲート絶縁膜としてSiO
2(膜厚370nm)を備えたシリコンウエハーを用い、オクチルトリクロロシランで表面処理をおこなった。
本発明の化合物または比較化合物(各1mg)とトルエン(1mL)を混合し、100℃に加熱したものを、非発光性有機半導体デバイス用塗布溶液とした。この塗布溶液を窒素雰囲気下、90℃に加熱したオクチルシラン表面処理シリコンウエハー上にキャストすることで、非発光性有機半導体デバイス用有機半導体薄膜を形成した。
更にこの薄膜表面にマスクを用いて金を蒸着することで、ソースおよびドレイン電極を作製し、ゲート幅W=5mm、ゲート長L=80μmのボトムゲート・トップコンタクト構造の有機薄膜トランジスタ素子を得た(
図1に構造の概略図を示した)。
実施例4の有機薄膜トランジスタ素子のFET特性は、セミオートプローバー(ベクターセミコン製、AX−2000)を接続した半導体パラメーターアナライザー(Agilent製、4156C)を用いて常圧・窒素雰囲気下で、キャリア移動度、繰り返し駆動後の閾値電圧変化、移動度バラツキの観点で、実施例2と同様の基準で評価した。
得られた結果を下記表3に示す。
【0129】
【表3】
【0130】
上記表3より、本発明の化合物を用いた有機薄膜トランジスタ素子は、キャリア移動度が高く、繰り返し駆動後の閾値電圧変化が小さく、移動度バラツキが小さいことがわかった。そのため、本発明の化合物は非発光性有機半導体デバイス用有機半導体材料として好ましく用いられることがわかった。
一方、比較化合物5を用いた有機薄膜トランジスタ素子は、キャリア移動度が低いものであった。比較化合物1〜6を用いた比較素子13〜18は、本発明の化合物を用いた素子17〜25に比べて、繰り返し駆動後の閾値電圧変化が大きく、移動度バラツキが大きいものであった。特に、比較化合物2、4および5を用いた有機薄膜トランジスタ素子は、繰り返し駆動後の閾値電圧変化が大きいものであった。また、比較化合物1、2および6を用いた有機薄膜トランジスタ素子は、移動度バラツキが大きいものであった。