(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記計算手段は、前記Db及び前記Ageを変数として、Ageの多項式によって前記intervalごとに前記Daを予測することを特徴とする請求項1記載のジオプター値予測システム。
前記計算手段は、前記Db、前記Age、性別Sex、眼球の左右RLを変数として、前記Ageの多項式によってintervalごとに前記Daを予測することを特徴とする請求項2記載のジオプター値予測システム。
前記出力手段は、前記Ageの多項式により予測したジオプター値に基づいて勧めるメガネのジオプター値を出力することを特徴とする請求項2記載のジオプター値予測システム。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して詳細に説明する。
(実施形態)
図1は、本発明の実施形態に係るジオプター値予測システムの構成図である。
本実施形態に係るジオプター値予測システム及び方法は、将来のジオプター値を予測するためのものである。
【0012】
図1に示すように、ジオプター値予測システム1は、入力手段2と、計算手段3と、記憶手段4と、出力手段5と、を備える。入力手段2、計算手段3、記憶手段4、及び出力手段5は、例えばハードウェアを含むコンピュータから構成される。入力手段2は、例えば、入力インタフェースから構成されており、ポインティングデバイスなどのユーザ操作、外部記憶媒体や通信線やネットワークからのデータの取込を含む。出力手段5は、例えば、出力インタフェースから構成されており、ディスプレイなどの表示部やプリンタ、外部記憶媒体への書き出し、通信線への出力などを含む。
【0013】
計算手段3は、例えば、CPU(Central Processing Unit)や専用回路から構成される。記憶手段4は、例えば、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、HDD(Hard Disk Drive)、フラッシュ(登録商標)メモリの記憶媒体から構成される。計算手段3がCPUから構成される場合、その制御部を含むコンピュータによる計算処理は、CPUによるプログラム実行処理で実現する。また、そのコンピュータが含む記憶部は、CPUが指令し、そのコンピュータの機能を実現するためのプログラム(ジオプター値予測プログラムを含む)を記憶する。これによりソフトウェアとハードウェアの協働が実現される。
【0014】
入力手段2は、Db(現在のジオプター値)、Age(年令)、Sex(性別)及びRL(眼球の左右)を入力する。
計算手段3は、Db(現在のジオプター値)及びAge(年令)に基づいて、interval(時間)が経過した後のジオプター値Daを予測する。詳細には、計算手段3は、Db、Ageを変数として、将来のジオプター値の予測式(式(4)(請求項2のAgeの多項式)
又は式(5))(後記)によってintervalごとにDaを予測する。より詳細には、計算手段3は、Db、Age、Sex(性別)、RL(眼球の左右)を変数として、上記Ageの多項式によってintervalごとにDaを予測する。
記憶手段4は、将来のジオプター値の予測式(式(4)
又は式(5))、及び当該予測式(式(4)
又は式(5))のテーブル値(
例えば〔表4〕参照)(後記)を記憶する。
出力手段5は、将来のジオプター値の予測式(式(4)
又は式(5))により予測したジオプター値を出力し、さらに、その予測したジオプター値に基づいて、勧めるメガネ(コンタクトレンズを含む。以下同様)のジオプター値を出力する。
【0015】
以下、ジオプター値予測システム1について詳細に説明する。
5年後のジオプター値の変化の予測について考察する。
5年の間隔のデータを準備した。5年の間隔のデータには、595,389のエントリ(116,549人の個人の来歴)がある。1つのエントリは、次式(1)から成る。
【0016】
ID, RL, Sex, Age, Db, Da (1)
ただし、
ID:個人の識別記号
RL:右/左を1/2
Sex:男/女を1/2
Age:現在の年令
Db:現在のジオプター値
Da:期間経過後(5年後)のジオプター値
【0017】
本発明者らは、年令に対するスプライン関数(つなぎ目で滑らかな補間関数)の導入による改善が非常に大きいことに着目した。また、Dbに対するスプライン関数の導入による改善も大きいことに着目した。
【0018】
スプライン関数のプロットは、
図2及び
図3に示される。
図2は、データの分布とその回帰曲線を示す図であり、横軸は「現在の年令」(Age)、縦軸は「5年後のジオプター値−現在のジオプター値」(Da−Db)である。
図2に示すように、若い頃は近視が急に進行し、高齢になると遠視が緩やかに進行することが分かる。
【0019】
図3は、データの分布とその回帰曲線を示す図であり、横軸は「現在のジオプター値」(Db)、縦軸は「5年後のジオプター値」(Da)である(都合により
図3のDaには定数が加算されている。)。
図3に示すように、傾きがほぼ一定の直線状であることから、変化が「現在のジオプター値」に依存しない、つまり時系列として定常的であることが分かる。
【0020】
予測について説明する。予測のモデルとして二次元スプラインによるものが良いと考えられる。しかし、計算コストを考慮すると、実用的なモデルは一次元スプラインによるものであり、その予測値は、次式(2)になる。
【0021】
Da=−0.4112653+0.9871306Db+s(Age)+0.0288855Sex+0.0032082RL (2)
ただし、s(Age):年令に対するスプライン関数
【0022】
Dbの係数は約1である。このモデルは、年令に対して非線形であり、平均二乗誤差において線形モデルを10.8%改善することができる。そして、ジオプター値が5年の間一定であるという仮定と比較するならば、このモデルは予測誤差が42.5%減少する。その予測の信頼区間の幅は、ジオプター値において約2である。
【0023】
[任意の年の後のジオプター値予測]
任意の年の後のジオプター値の予測ついて述べる。元になるデータセットは、時間間隔が5年より長い125,679のエントリを含む。何人かは複数の時点で測定されているので、より短い時間間隔は、5年の間隔データから推測することもできる。
【0024】
前記式(1)と同様に、データを準備した。1つのエントリは、次式(3)から成る。
ID, RL, Sex, Age-1, ... , Age-n, D1, ... , Dn (3)
ただし、
Age-n:年令第n才
Dn:第n才におけるジオプター値
【0025】
式(3)において、1つのエントリに、n個のジオプター値があり、このためn(n−1)/2個の年間隔があり、年間隔の数は、極めて大きく、全体で、3,930,164のカウントから成る。
【0026】
〔表1〕は、各年間隔の数を示している。
【0028】
データ全体から、期間0年のデータ、すなわち、同一年令における複数のジオプター値、を除外した。すなわち、使用した年間隔のデータの数は、3,930,164−35,367=3,894,797である。
式(3)、〔表1〕に示すデータから、1−10年後のジオプター値を予測するモデルを作成することができる。
【0029】
モデルは、式(2)、及び次式(4)の年令に関する多項式回帰
Da=β0+β1Age+β2Age
2+・・・+βiAge
i+β5Db+β6Sex+β7RL
(4)
ただし、i=2〜5の整数
について検証した。
これらのモデルによる結果は、〔表2〕に示される。
【0030】
【表2】
ただし、
interval:2回のジオプター値の測定の年間隔
Db:Db(前のジオプター値)をDa(後のジオプター値)の予測量としたときのRMSE(平方根平均二乗誤差)の推定値(以下E_bという。)
s:年令のs(スプライン関数)を用いたDaの予測量のRMSEの推定値(以下E_sという。)
R_by_s:(E_b−E_s)/E_b(年令のスプライン関数を用いることによる誤差の減少率に相当する)
2:年令の2次関数を用いたDaの予測量のRMSEの推定値
3:年令の3次関数を用いたDaの予測量のRMSEの推定値
4:年令の4次関数を用いたDaの予測量のRMSEの推定値(以下E_4という。)
R_by_4:(E_b−E_4)/E_b(年令の4次関数を用いることによる誤差の減少率に相当する)
5:年令の5次関数を用いたDaの予測量のRMSEの推定値
【0031】
〔表2〕の結果を参照すると、スプライン回帰に基づく予測は、interval≧4年においてR_by_s、すなわち、誤差の減少率が40〜50%に達している。
また、多項式回帰は、スプライン回帰よりわずかに悪い予測である。しかし、違いはわずかである。実際、4次多項式回帰による誤差の減少率R_by_4は、スプライン回帰による誤差の減少率R_by_sとほとんど同じである。違いは一般に1%未満である。
そして、多項式回帰の誤差の推定値である2,3,4,5を比較すると、大体5が一番小さいが、10年では4が最小であることと、モデルの簡便性、誤差の低減は2〜4の間と比べて4〜5の間は僅かであることから、4が良いと結論した。
【0032】
一般により高い次元の多項式は、より小さい誤差になるので、より高次の多項式を選べば良いように思える。しかしながら、実際のアプリケーションに対しては、下記の理由から、4次多項式を用いることが好ましい。まず、4次多項式は、単純な計算機で計算することができる。また、4次多項式回帰による誤差の減少は十分に満足されるものである。
4次多項式による予測の95%の信頼区間の幅は、〔表3〕に示す値となる。
【0034】
[将来のジオプター値の予測式]
将来のジオプター値の予測式(Ageの多項式)は、次式
(5)の一般式によって示される。ただし、係数は、〔表4〕のテーブルで与えられる。式
(5)のジオプター値の予測式は、Ageに関する4次関数であり、本発明者らが初めて開示するものである。
【0035】
Da=β0+β1Age+β2Age
2+β3Age
3+β4Age
4+β5Db+β6Sex+β7RL
(5)
ただし、
Da:期間経過後のジオプター値
βn:各年令と多項式の各項により示される表の値をとる係数
Age:現在の年令
Db:現在のジオプター値
Sex:男/女を1/2
RL:右/左を1/2
【0037】
以下、上述のように構成されたジオプター値予測システム1の動作について説明する。
図4は、ジオプター値予測システム1のジオプター値予測を示すフローチャートである。本フローは、例えば、計算手段3を構成するCPUにより実行される。
まず、ステップS1で入力手段2は、Db(現在のジオプター値)、Age(年令)、Sex(性別)及びRL(眼球の左右)を入力する。入力手段2は、例えば、ポインティングデバイスなどのユーザ操作、外部記憶媒体や通信線からのDb(現在のジオプター値)、Age(年令)データの取り込みである。
次いで、ステップS2で計算手段3は、記憶手段4に格納されている将来のジオプター値の予測式(式
(5))、及びテーブル値(〔表4〕)を読み出す。
【0038】
次いで、ステップS3で計算手段3は、Db、Age、Sex(性別)、RL(眼球の左右)を変数として、Ageの多項式(式
(5))によってinterval(時間)ごとに、intervalが経過した後のジオプター値Daを予測する。
次いで、ステップS4で出力手段5は、予測したジオプター値を出力し、さらに、その予測したジオプター値に基づいて、勧めるメガネのジオプター値を出力する。出力手段5は、例えば、表示部やプリンタに予測したジオプター値及び勧めるメガネのジオプター値を出力する。外部記憶媒体への書き出し、ネットワークなどの通信線への出力を含む。
【0039】
以上説明したように、本実施形態のジオプター値予測システム1は、Db(現在のジオプター値)、Age(年令)、Sex(性別)及びRL(眼球の左右)を入力する入力手段2と、Db(現在のジオプター値)及びAge(年令)に基づいて、interval(時間)が経過した後のジオプター値Daを予測する計算手段3と、将来のジオプター値の予測式(式
(5))及びテーブル値(〔表4〕)を記憶する記憶手段4と、予測したジオプター値を出力し、さらに、その予測したジオプター値に基づいて、勧めるメガネのジオプター値を出力する出力手段5と、を備える。
本実施形態では、計算手段3は、Db、Age、Sex(性別)、RL(眼球の左右)を変数として、将来のジオプター値の予測式(式
(5))及びテーブル値(〔表4〕)によってintervalごとにDaを予測する。
【0040】
また、ジオプター値予測システム1のジオプター値予測方法では、現在のジオプター値Db及び年令Ageを入力する入力ステップと、記憶手段3から将来のジオプター値の予測式(式(4)
又は式(5))及びテーブル値(
例えば〔表4〕)を読み出し、入力された前記Db及び前記Ageに基づいて、Db、Age、Sex(性別)、RL(眼球の左右)を変数として、将来のジオプター値の予測式(式(4)
又は式(5))及びテーブル値(
例えば〔表4〕)によってintervalごとにDaを予測する計算ステップと、予測したジオプター値を出力し、さらに、その予測したジオプター値に基づいて、勧めるメガネのジオプター値を出力する出力ステップと、をコンピュータにより実行する。
【0041】
これにより、将来(例えば5年後)のジオプター値を予測することができる。更に、その予測に合わせて着用するメガネのジオプター値を出力することができる。将来のジオプター値を予測することで、将来の近視等のリスクを推し量ることができ、また事前に対応が可能となる。
【0042】
本発明は上記の実施形態例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した本発明の要旨を逸脱しない限りにおいて、他の変形例、応用例を含む。
【0043】
また、ジオプター値予測システム、ジオプター値予測方法は、計算機能を独立したハードでもよいし、ジオプター値予測システムにおけるソフトウェアでもよい。また、ジオプター値予測システム、ジオプター値予測方法及びプログラムの計算、演算処理はコンピュータのプログラムでなくとも、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)等を用いてもよい。
【0044】
また、各機能を実現するプログラム、テーブル、ファイル等の情報は、メモリや、ハードディスク、SSD(Solid State Drive)等の記録装置、又は、IC(Integrated
Circuit)カード、SD(Secure Digital)カード、光ディスク等の記録媒体に保持することができる。また、本明細書において、時系列的な処理を記述する処理ステップは、記載された順序に沿って時系列的に行われる処理はもちろん、必ずしも時系列的に処理されなくとも、並列的あるいは個別に実行される処理(例えば、並列処理あるいはオブジェクトによる処理)をも含むものである。
また、上記実施の形態では、ジオプター値予測システム及びジオプター値予測方法という名称を用いたが、これは説明の便宜上であり、名称はジオプター値予測装置、ジオプター値算出方法等であってもよい。
【解決手段】ジオプター値予測システム1は、ジオプター値予測システム1は、Db(現在のジオプター値)、Age(年令)、Sex(性別)及びRL(眼球の左右)を入力する入力手段2と、Db(現在のジオプター値)及びAge(年令)に基づいて、interval(時間)が経過した後のジオプター値Daを予測する計算手段3と、下記の将来のジオプター値の予測式及びテーブル値を記憶する記憶手段4と、予測したジオプター値を出力し、さらに、その予測したジオプター値に基づいて、勧めるメガネのジオプター値を出力する出力手段5と、を備える。