特許第6247858号(P6247858)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6247858パターン形成方法、及びこれを用いた電子デバイスの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6247858
(24)【登録日】2017年11月24日
(45)【発行日】2017年12月13日
(54)【発明の名称】パターン形成方法、及びこれを用いた電子デバイスの製造方法
(51)【国際特許分類】
   G03F 7/004 20060101AFI20171204BHJP
   G03F 7/038 20060101ALI20171204BHJP
   G03F 7/039 20060101ALI20171204BHJP
   G03F 7/32 20060101ALI20171204BHJP
【FI】
   G03F7/004 501
   G03F7/038 601
   G03F7/039 601
   G03F7/004 503A
   G03F7/32
【請求項の数】13
【全頁数】115
(21)【出願番号】特願2013-160615(P2013-160615)
(22)【出願日】2013年8月1日
(65)【公開番号】特開2015-31795(P2015-31795A)
(43)【公開日】2015年2月16日
【審査請求日】2015年10月30日
(73)【特許権者】
【識別番号】306037311
【氏名又は名称】富士フイルム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002505
【氏名又は名称】特許業務法人航栄特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100115107
【弁理士】
【氏名又は名称】高松 猛
(74)【代理人】
【識別番号】100151194
【弁理士】
【氏名又は名称】尾澤 俊之
(72)【発明者】
【氏名】滝沢 裕雄
(72)【発明者】
【氏名】藤森 亨
(72)【発明者】
【氏名】二橋 亘
(72)【発明者】
【氏名】平野 修史
(72)【発明者】
【氏名】横川 夏海
【審査官】 倉持 俊輔
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2012/169620(WO,A1)
【文献】 特開2013−109012(JP,A)
【文献】 特開2008−304902(JP,A)
【文献】 特開2014−074898(JP,A)
【文献】 特開2013−076991(JP,A)
【文献】 特開2011−191753(JP,A)
【文献】 特開2010−217884(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03F 7/004−7/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(1)感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物を用いて膜を形成することと、
(2)前記膜を活性光線又は放射線で露光することと、
(3)有機溶剤を現像液の全量に対して80質量%以上100質量%以下含んだ現像液を用いて前記露光された膜を現像することと、
を含んだパターン形成方法であって、
前記感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物が、(A)一般式(I)で表される繰り返し単位と、一般式(II)で表される繰り返し単位とを有する樹脂、及び、(C)架橋剤を含有する、パターン形成方法。
【化1】


一般式(I)中、R41、R42及びR43は、各々独立に、水素原子、アルキル基、ハロゲン原子、シアノ基又はアルコキシカルボニル基を表す。但し、R42はArと結合して環を形成していてもよく、その場合のR42は単結合又はアルキレン基を表す。Xは、単結合、−COO−、又は−CONR44−を表し、R42と結合して環を形成していてもよい。XがR42と環を形成する場合には、Xは3価の連結基を表す。R44は、水素原子又はアルキル基を表す。Lは、単結合又はアルキレン基を表す。Arは、(n+1)価の芳香環基を表し、R42と結合して環を形成する場合には(n+2)価の芳香環基を表す。nは、1〜4の整数を表す。
【化2】


一般式(II)中、R61、R62及びR63は、各々独立に、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、ハロゲン原子、シアノ基、又はアルコキシカルボニル基を表す。但し、R62はArと結合して環を形成していてもよく、その場合のR62は単結合又はアルキレン基を表す。Xは、単結合、−COO−、又は−CONR64−を表す。R64は、水素原子又はアルキル基を表す。Lは、単結合又はアルキレン基を表す。Arは、2価の芳香環基を表し、R62と結合して環を形成する場合には3価の芳香環基を表す。R、炭素数が2以上の基を表す。Mは、単結合又は2価の連結基を表す。Qは、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基又はヘテロ環基を表す。Q、M及びRの少なくとも二つが結合して環を形成してもよい。
【請求項2】
前記一般式(II)におけるRが、下記一般式(II−2)で表される基である、請求項1に記載のパターン形成方法。
【化3】


一般式(II−2)中、R81、R82及びR83は、各々独立に、アルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基又はアリール基を表す。n81は0又は1を表す。R81〜R83の少なくとも2つは互いに連結して環を形成してもよい。
【請求項3】
(1)感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物を用いて膜を形成することと、
(2)前記膜を活性光線又は放射線で露光することと、
(3)有機溶剤を現像液の全量に対して80質量%以上100質量%以下含んだ現像液を用いて前記露光された膜を現像することと、
を含んだパターン形成方法であって、
前記感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物が、(A)一般式(I)で表される繰り返し単位と、一般式(III−1’)又は一般式(III−2)で表される繰り返し単位とを有する樹脂、及び、(C)架橋剤を含有する、パターン形成方法。
【化4】


一般式(I)中、R41、R42及びR43は、各々独立に、水素原子、アルキル基、ハロゲン原子、シアノ基又はアルコキシカルボニル基を表す。但し、R42はArと結合して環を形成していてもよく、その場合のR42は単結合又はアルキレン基を表す。Xは、単結合、−COO−、又は−CONR44−を表し、R42と結合して環を形成していてもよい。XがR42と環を形成する場合には、Xは3価の連結基を表す。R44は、水素原子又はアルキル基を表す。Lは、単結合又はアルキレン基を表す。Arは、(n+1)価の芳香環基を表し、R42と結合して環を形成する場合には(n+2)価の芳香環基を表す。nは、1〜4の整数を表す。
【化5】


一般式(III−1’)中、R及びRはそれぞれ独立にアルキル基を表し、R11及びR12はそれぞれ独立にアルキル基を表し、R13は水素原子又はアルキル基を表す。Raは水素原子、アルキル基、シアノ基又はハロゲン原子を表し、Lは単結合、又は、アルキレン基、−COO−L−、−O−L−、及びこれらの2つ以上を組み合わせて形成される基から選択される2価の連結基を表し、Lはアルキレン基またはシクロアルキレン基を表す。
一般式(III−2)中、Xは単環の脂環式基を表す。R及びRはそれぞれ独立にアルキル基を表し、Raは水素原子、アルキル基、シアノ基又はハロゲン原子を表し、Lは単結合、又は、アルキレン基、−COO−L−、−O−L−、及びこれらの2つ以上を組み合わせて形成される基から選択される2価の連結基を表し、Lはアルキレン基またはシクロアルキレン基を表す。
【請求項4】
(1)感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物を用いて膜を形成することと、
(2)前記膜を活性光線又は放射線で露光することと、
(3)有機溶剤を現像液の全量に対して80質量%以上100質量%以下含んだ現像液を用いて前記露光された膜を現像することと、
を含んだパターン形成方法であって、
前記感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物が、(A)一般式(I)で表される繰り返し単位と、一般式(IV)で表される繰り返し単位とを有する樹脂、及び、(C)架橋剤を含有する、パターン形成方法。
【化6】


一般式(I)中、R41、R42及びR43は、各々独立に、水素原子、アルキル基、ハロゲン原子、シアノ基又はアルコキシカルボニル基を表す。但し、R42はArと結合して環を形成していてもよく、その場合のR42は単結合又はアルキレン基を表す。Xは、単結合、−COO−、又は−CONR44−を表し、R42と結合して環を形成していてもよい。XがR42と環を形成する場合には、Xは3価の連結基を表す。R44は、水素原子又はアルキル基を表す。Lは、単結合又はアルキレン基を表す。Arは、(n+1)価の芳香環基を表し、R42と結合して環を形成する場合には(n+2)価の芳香環基を表す。nは、1〜4の整数を表す。
【化7】


一般式(IV)中、R71、R72及びR73は、各々独立に、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、ハロゲン原子、シアノ基又はアルコキシカルボニル基を表す。R72はLと結合して環を形成していてもよく、その場合のR72はアルキレン基を表す。Lは、単結合又は2価の連結基を表し、R72と環を形成する場合には3価の連結基を表す。R74は、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基、アルコキシ基、アシル基又はヘテロ環基を表し、炭素数が2以上の基である。Mは、単結合又は2価の連結基を表す。Qは、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基又はヘテロ環基を表す。Q、M及びR74の少なくとも二つが結合して環を形成してもよい。
【請求項5】
前記架橋剤(C)が、ヒドロキシメチル基、アルコキシメチル基、オキシラン環又はオキセタン環を有する化合物である、請求項1〜のいずれか1項に記載のパターン形成方法。
【請求項6】
前記架橋剤(C)が、ヒドロキシメチル基又はアルコキシメチル基を有する、フェノール誘導体、ウレア系化合物又はメラミン系化合物である、請求項に記載のパターン形成方法。
【請求項7】
前記架橋剤(C)の含有量が、前記感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物の全固形分中、3〜65質量%である、請求項1〜のいずれか1項に記載のパターン形成方法。
【請求項8】
前記一般式(I)におけるX及びLが、単結合である、請求項1〜のいずれか1項に記載のパターン形成方法。
【請求項9】
前記一般式(I)で表される繰り返し単位の含有量が、前記樹脂(A)における全繰り返し単位に対して10〜40モル%である、請求項1〜のいずれか1項に記載のパターン形成方法。
【請求項10】
前記感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物が、更に、(B)活性光線又は放射線により酸を発生する化合物を含む、請求項1〜のいずれか1項に記載のパターン形成方法。
【請求項11】
前記活性光線又は放射線により酸を発生する化合物(B)が、体積240Å以上の大きさの酸を発生する化合物である、請求項10に記載のパターン形成方法。
【請求項12】
前記活性光線又は放射線として電子線又は極紫外線を用いる、請求項1〜11のいずれか1項に記載のパターン形成方法。
【請求項13】
請求項1〜12のいずれか1項に記載のパターン形成方法を含む、電子デバイスの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超LSIや高容量マイクロチップの製造などの超マイクロリソグラフィプロセスやその他のフォトファブリケーションプロセスに好適に用いられる、有機溶剤を含む現像液を用いたパターン形成方法、感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物、及び、レジスト膜、並びに、これらを用いた電子デバイスの製造方法、及び、電子デバイスに関するものである。更に詳しくは、電子線又はEUV光(波長:13nm付近)を用いる半導体素子の微細加工に好適に用いることができる、有機溶剤を含む現像液を用いたパターン形成方法、感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物、及び、レジスト膜、並びに、これらを用いた電子デバイスの製造方法、及び、電子デバイスに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ICやLSIなどの半導体デバイスの製造プロセスにおいては、フォトレジスト組成物を用いたリソグラフィーによる微細加工が行われている。近年、集積回路の高集積化に伴い、サブミクロン領域やクオーターミクロン領域の超微細パターン形成が要求されるようになってきている。それに伴い、露光波長もg線からi線に、更にKrFエキシマレーザー光に、というように短波長化の傾向が見られる。更には、現在では、エキシマレーザー光以外にも、電子線やX線、あるいはEUV光を用いたリソグラフィーも開発が進んでいる。
【0003】
これら電子線やX線、あるいはEUV光リソグラフィーは、次世代若しくは次々世代のパターン形成技術として位置付けられ、高感度、高解像性のレジスト組成物が望まれている。
特にウェハー処理時間の短縮化のため、高感度化は非常に重要な課題であるが、高感度化を追求しようとすると、パターン形状や、限界解像線幅で表される解像力が低下してしまい、これらの特性を同時に満足するレジスト組成物の開発が強く望まれている。
【0004】
高感度と、高解像性、良好なパターン形状はトレードオフの関係にあり、これを如何にして同時に満足させるかが非常に重要である。
感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物には、一般に、アルカリ現像液に難溶性若しくは不溶性の樹脂を用い、放射線の露光によって露光部をアルカリ現像液に対し可溶化することでパターンを形成する「ポジ型」と、アルカリ現像液に可溶性の樹脂を用い、放射線の露光によって露光部をアルカリ現像液に対して難溶化若しくは不溶化することでパターンを形成する「ネガ型」とがある。
かかる電子線、X線、あるいはEUV光を用いたリソグラフィープロセスに適した感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物としては、高感度化の観点から主に酸触媒反応を利用した化学増幅型ポジ型レジスト組成物が検討され、主成分としてアルカリ現像液には不溶又は難溶性で、酸の作用によりアルカリ現像液に可溶となる性質を有するフェノール性樹脂(以下、フェノール性酸分解性樹脂と略す)、及び酸発生剤からなる化学増幅型ポジ型レジスト組成物が有効に使用されている。
【0005】
一方、半導体素子等の製造にあたってはライン、トレンチ、ホール、など種々の形状を有するパターン形成の要請がある。種々の形状を有するパターン形成の要請に応えるためにはポジ型だけではなく、ネガ型の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物の開発も行われている(例えば、特許文献1、2及び3参照)。
超微細パターンの形成においては、解像力の低下、パターン形状の更なる改良が求められている。
この課題を解決するために、ポリマー主鎖、又は側鎖に光酸発生基を有する樹脂の使用が検討されている(特許文献4及び5参照)。また、酸分解性樹脂をアルカリ現像液以外の現像液を用いて現像する方法(特許文献6及び7参照)、PAG担持酸分解性樹脂を用いてアルカリ現像液以外の現像液を用いて現像する方法(特許文献8参照)も提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2002−148806号公報
【特許文献2】特開2008−268935号公報
【特許文献3】特開平7−261392号公報
【特許文献4】特開2010−85971号公報
【特許文献5】特開2010−256856号公報
【特許文献6】特開2010−217884号公報
【特許文献7】特開2011−123469号公報
【特許文献8】国際公開第2012/114963号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、近年のパターンの微細化に伴い、超微細領域(例えば線幅50nm以下の領域)において、高感度、高解像性及び膜べり低減性能を更に高次元で同時に満足することが要求されており、従来のパターン形成方法においては、更に改良の余地があった。
【0008】
本発明の目的は、活性光線又は放射線性を使用する半導体素子の微細加工における性能向上技術の課題を解決することであり、超微細領域(例えば線幅50nm以下の領域)において、高感度、高解像性(高解像力など)、高いラフネス性能、膜べり低減性能、高い露光ラチチュード、及び、高いドライエッチング耐性を極めて高次元で同時に満足するパターン形成方法、感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物、及び、レジスト膜、並びに、これらを用いた電子デバイスの製造方法、及び、電子デバイスを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題は、以下の構成により達成されることを見出した。
<1>
(1)感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物を用いて膜を形成することと、
(2)前記膜を活性光線又は放射線で露光することと、
(3)有機溶剤を現像液の全量に対して80質量%以上100質量%以下含んだ現像液を用いて前記露光された膜を現像することと、
を含んだパターン形成方法であって、
前記感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物が、(A)一般式(I)で表される繰り返し単位と、一般式(II)で表される繰り返し単位とを有する樹脂、及び、(C)架橋剤を含有する、パターン形成方法。
【化1】


一般式(I)中、R41、R42及びR43は、各々独立に、水素原子、アルキル基、ハロゲン原子、シアノ基又はアルコキシカルボニル基を表す。但し、R42はArと結合して環を形成していてもよく、その場合のR42は単結合又はアルキレン基を表す。Xは、単結合、−COO−、又は−CONR44−を表し、R42と結合して環を形成していてもよい。XがR42と環を形成する場合には、Xは3価の連結基を表す。R44は、水素原子又はアルキル基を表す。Lは、単結合又はアルキレン基を表す。Arは、(n+1)価の芳香環基を表し、R42と結合して環を形成する場合には(n+2)価の芳香環基を表す。nは、1〜4の整数を表す。
【化2】


一般式(II)中、R61、R62及びR63は、各々独立に、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、ハロゲン原子、シアノ基、又はアルコキシカルボニル基を表す。但し、R62はArと結合して環を形成していてもよく、その場合のR62は単結合又はアルキレン基を表す。Xは、単結合、−COO−、又は−CONR64−を表す。R64は、水素原子又はアルキル基を表す。Lは、単結合又はアルキレン基を表す。Arは、2価の芳香環基を表し、R62と結合して環を形成する場合には3価の芳香環基を表す。R、炭素数が2以上の基を表す。Mは、単結合又は2価の連結基を表す。Qは、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基又はヘテロ環基を表す。Q、M及びRの少なくとも二つが結合して環を形成してもよい。
<2>
前記一般式(II)におけるRが、下記一般式(II−2)で表される基である、<1>に記載のパターン形成方法。
【化3】


一般式(II−2)中、R81、R82及びR83は、各々独立に、アルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基又はアリール基を表す。n81は0又は1を表す。R81〜R83の少なくとも2つは互いに連結して環を形成してもよい。
<3>
(1)感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物を用いて膜を形成することと、
(2)前記膜を活性光線又は放射線で露光することと、
(3)有機溶剤を現像液の全量に対して80質量%以上100質量%以下含んだ現像液を用いて前記露光された膜を現像することと、
を含んだパターン形成方法であって、
前記感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物が、(A)一般式(I)で表される繰り返し単位と、一般式(III−1’)又は一般式(III−2)で表される繰り返し単位とを有する樹脂、及び、(C)架橋剤を含有する、パターン形成方法。
【化4】


一般式(I)中、R41、R42及びR43は、各々独立に、水素原子、アルキル基、ハロゲン原子、シアノ基又はアルコキシカルボニル基を表す。但し、R42はArと結合して環を形成していてもよく、その場合のR42は単結合又はアルキレン基を表す。Xは、単結合、−COO−、又は−CONR44−を表し、R42と結合して環を形成していてもよい。XがR42と環を形成する場合には、Xは3価の連結基を表す。R44は、水素原子又はアルキル基を表す。Lは、単結合又はアルキレン基を表す。Arは、(n+1)価の芳香環基を表し、R42と結合して環を形成する場合には(n+2)価の芳香環基を表す。nは、1〜4の整数を表す。
【化5】


一般式(III−1’)中、R及びRはそれぞれ独立にアルキル基を表し、R11及びR12はそれぞれ独立にアルキル基を表し、R13は水素原子又はアルキル基を表す。Raは水素原子、アルキル基、シアノ基又はハロゲン原子を表し、Lは単結合、又は、アルキレン基、−COO−L−、−O−L−、及びこれらの2つ以上を組み合わせて形成される基から選択される2価の連結基を表し、Lはアルキレン基またはシクロアルキレン基を表す。
一般式(III−2)中、Xは単環の脂環式基を表す。R及びRはそれぞれ独立にアルキル基を表し、Raは水素原子、アルキル基、シアノ基又はハロゲン原子を表し、Lは単結合、又は、アルキレン基、−COO−L−、−O−L−、及びこれらの2つ以上を組み合わせて形成される基から選択される2価の連結基を表し、Lはアルキレン基またはシクロアルキレン基を表す。
<4>
(1)感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物を用いて膜を形成することと、
(2)前記膜を活性光線又は放射線で露光することと、
(3)有機溶剤を現像液の全量に対して80質量%以上100質量%以下含んだ現像液を用いて前記露光された膜を現像することと、
を含んだパターン形成方法であって、
前記感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物が、(A)一般式(I)で表される繰り返し単位と、一般式(IV)で表される繰り返し単位とを有する樹脂、及び、(C)架橋剤を含有する、パターン形成方法。
【化6】


一般式(I)中、R41、R42及びR43は、各々独立に、水素原子、アルキル基、ハロゲン原子、シアノ基又はアルコキシカルボニル基を表す。但し、R42はArと結合して環を形成していてもよく、その場合のR42は単結合又はアルキレン基を表す。Xは、単結合、−COO−、又は−CONR44−を表し、R42と結合して環を形成していてもよい。XがR42と環を形成する場合には、Xは3価の連結基を表す。R44は、水素原子又はアルキル基を表す。Lは、単結合又はアルキレン基を表す。Arは、(n+1)価の芳香環基を表し、R42と結合して環を形成する場合には(n+2)価の芳香環基を表す。nは、1〜4の整数を表す。
【化7】


一般式(IV)中、R71、R72及びR73は、各々独立に、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、ハロゲン原子、シアノ基又はアルコキシカルボニル基を表す。R72はLと結合して環を形成していてもよく、その場合のR72はアルキレン基を表す。Lは、単結合又は2価の連結基を表し、R72と環を形成する場合には3価の連結基を表す。R74は、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基、アルコキシ基、アシル基又はヘテロ環基を表し、炭素数が2以上の基である。Mは、単結合又は2価の連結基を表す。Qは、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基又はヘテロ環基を表す。Q、M及びR74の少なくとも二つが結合して環を形成してもよい。

前記架橋剤(C)が、ヒドロキシメチル基、アルコキシメチル基、オキシラン環又はオキセタン環を有する化合物である、<1>〜<>のいずれか1項に記載のパターン形成方法。

前記架橋剤(C)が、ヒドロキシメチル基又はアルコキシメチル基を有する、フェノール誘導体、ウレア系化合物又はメラミン系化合物である、<>に記載のパターン形成方法。

前記架橋剤(C)の含有量が、前記感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物の全固形分中、3〜65質量%である、<1>〜<>のいずれか1項に記載のパターン形成方法。

前記一般式(I)におけるX及びLが、単結合である、<1>〜<>のいずれか1項に記載のパターン形成方法。

前記一般式(I)で表される繰り返し単位の含有量が、前記樹脂(A)における全繰り返し単位に対して10〜40モル%である、<1>〜<>のいずれか1項に記載のパターン形成方法。
10
前記感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物が、更に、(B)活性光線又は放射線により酸を発生する化合物を含む、<1>〜<>のいずれか1項に記載のパターン形成方法。
11
前記活性光線又は放射線により酸を発生する化合物(B)が、体積240Å以上の大きさの酸を発生する化合物である、<10>に記載のパターン形成方法。
12
前記活性光線又は放射線として電子線又は極紫外線を用いる、<1>〜<11>のいずれか1項に記載のパターン形成方法。
13
<1>〜<12>のいずれか1項に記載のパターン形成方法を含む、電子デバイスの製造方法。
本発明は、前記<1>〜<13>に係る発明であるが、以下、それ以外の事項(例えば、下記〔1〕〜〔17〕)についても記載している。
【0010】
〔1〕
(1)感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物を用いて膜を形成することと、
(2)前記膜を活性光線又は放射線で露光することと、
(3)有機溶剤を含んだ現像液を用いて前記露光された膜を現像することと、
を含んだパターン形成方法であって、
前記感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物が、(A)一般式(I)で表される繰り返し単位と、一般式(II)〜(IV)のいずれかで表される繰り返し単位とを有する樹脂、及び、(C)架橋剤を含有する、パターン形成方法。
【化1】

一般式(I)中、R41、R42及びR43は、各々独立に、水素原子、アルキル基、ハロゲン原子、シアノ基又はアルコキシカルボニル基を表す。但し、R42はArと結合して環を形成していてもよく、その場合のR42は単結合又はアルキレン基を表す。Xは、単結合、−COO−、又は−CONR44−を表し、R42と環を形成する場合には3価の連結基を表す。R44は、水素原子又はアルキル基を表す。Lは、単結合又はアルキレン基を表す。Arは、(n+1)価の芳香環基を表し、R42と結合して環を形成する場合には(n+2)価の芳香環基を表す。nは、1〜4の整数を表す。
【化2】

一般式(II)中、R61、R62及びR63は、各々独立に、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、ハロゲン原子、シアノ基、又はアルコキシカルボニル基を表す。但し、R62はArと結合して環を形成していてもよく、その場合のR62は単結合又はアルキレン基を表す。Xは、単結合、−COO−、又は−CONR64−を表す。R64は、水素原子又はアルキル基を表す。Lは、単結合又はアルキレン基を表す。Arは、2価の芳香環基を表し、R62と結合して環を形成する場合には3価の芳香環基を表す。Rは、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基、アルコキシ基、アシル基又はヘテロ環基を表す。Mは、単結合又は2価の連結基を表す。Qは、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基又はヘテロ環基を表す。Q、M及びRの少なくとも二つが結合して環を形成してもよい。
一般式(III)中、R51、R52、及びR53は、各々独立に、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、ハロゲン原子、シアノ基、又はアルコキシカルボニル基を表す。R52はLと結合して環を形成していてもよく、その場合のR52はアルキレン基を表す。Lは、単結合、又は、アルキレン基、−COO−L−、−O−L−、及び、これらの2つ以上を組み合わせて形成される基から選択される2価の連結基を表し、Lはアルキレン基またはシクロアルキレン基を表す。但し、LがR52と結合して環を形成する場合には、Lは3価の連結基を表す。R54はアルキル基を表し、R55及びR56は、各々独立に、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、又はアラルキル基を表す。R55及びR56は互いに結合して環を形成してもよい。但し、R55とR56とが同時に水素原子であることはない。
一般式(IV)中、R71、R72及びR73は、各々独立に、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、ハロゲン原子、シアノ基又はアルコキシカルボニル基を表す。R72はLと結合して環を形成していてもよく、その場合のR72はアルキレン基を表す。Lは、単結合又は2価の連結基を表し、R72と環を形成する場合には3価の連結基を表す。R74は、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基、アルコキシ基、アシル基又はヘテロ環基を表す。Mは、単結合又は2価の連結基を表す。Qは、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基又はヘテロ環基を表す。Q、M及びR74の少なくとも二つが結合して環を形成してもよい。
〔2〕
前記架橋剤(C)が、ヒドロキシメチル基、アルコキシメチル基、オキシラン環又はオキセタン環を有する化合物である、上記〔1〕に記載のパターン形成方法。
〔3〕
前記架橋剤(C)が、ヒドロキシメチル基又はアルコキシメチル基を有する、フェノール誘導体、ウレア系化合物又はメラミン系化合物である、上記〔2〕に記載のパターン形成方法。
〔4〕
前記架橋剤(C)の含有量が、前記感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物の全固形分中、3〜65質量%である、上記〔1〕〜〔3〕のいずれか1項に記載のパターン形成方法。
〔5〕
前記樹脂(A)が、前記一般式(II)で表される繰り返し単位を有し、前記一般式(II)におけるRが、炭素数が2以上の基である、上記〔1〕〜〔4〕のいずれか1項に記載のパターン形成方法。
〔6〕
前記樹脂(A)が、前記一般式(II)で表される繰り返し単位を有し、前記一般式(II)におけるRが、下記一般式(II−2)で表される基である、上記〔5〕に記載のパターン形成方法。
【化3】

一般式(II−2)中、R81、R82及びR83は、各々独立に、アルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基又はアリール基を表す。n81は0又は1を表す。R81〜R83の少なくとも2つは互いに連結して環を形成してもよい。
〔7〕
前記樹脂(A)が、前記一般式(III)で表される繰り返し単位を有し、前記一般式(III)で表される繰り返し単位が、下記一般式(III−1)で表される繰り返し単位である、上記〔1〕〜〔4〕のいずれか1項に記載のパターン形成方法。
【化4】

一般式(III−1)中、R及びRはそれぞれ独立にアルキル基を表し、R11及びR12はそれぞれ独立にアルキル基を表し、R13は水素原子又はアルキル基を表す。R11及びR12は連結して環を形成してもよく、R11及びR13は連結して環を形成しても良い。Raは水素原子、アルキル基、シアノ基又はハロゲン原子を表し、Lは、単結合、又は、アルキレン基、−COO−L−、−O−L−、及びこれらの2つ以上を組み合わせて形成される基から選択される2価の連結基を表し、Lはアルキレン基またはシクロアルキレン基を表す。
〔8〕
前記一般式(III−1)におけるR11及びR12が、連結して環を形成する、上記〔7〕に記載のパターン形成方法。
〔9〕
前記一般式(I)におけるX及びLが、単結合である、上記〔1〕〜〔8〕のいずれか1項に記載のパターン形成方法。
〔10〕
前記一般式(I)で表される繰り返し単位の含有量が、前記樹脂(A)における全繰り返し単位に対して10〜40モル%である、上記〔1〕〜〔9〕のいずれか1項に記載のパターン形成方法。
〔11〕
前記感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物が、更に、(B)活性光線又は放射線により酸を発生する化合物を含む、上記〔1〕〜〔10〕のいずれか1項に記載のパターン形成方法。
〔12〕
前記活性光線又は放射線により酸を発生する化合物(B)が、体積240Å以上の大きさの酸を発生する化合物である、上記〔11〕に記載のパターン形成方法。
〔13〕
前記活性光線又は放射線として電子線又は極紫外線を用いる、上記〔1〕〜〔12〕のいずれか1項に記載のパターン形成方法。
〔14〕
上記〔1〕〜〔13〕のいずれか1項に記載のパターン形成方法を供せられる感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物。
〔15〕
上記〔14〕に記載の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物を用いて形成されるレジスト膜。
〔16〕
上記〔1〕〜〔13〕のいずれか1項に記載のパターン形成方法を含む、電子デバイスの製造方法。
〔17〕
上記〔16〕に記載の電子デバイスの製造方法により製造された電子デバイス。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、超微細領域(例えば線幅50nm以下の領域)において、高感度、高解像性(高解像力など)、高いラフネス性能、膜べり低減性能、高い露光ラチチュード、及び、高いドライエッチング耐性を極めて高次元で同時に満足するパターン形成方法、感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物、及び、レジスト膜、並びに、これらを用いた電子デバイスの製造方法、及び、電子デバイスを提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。
本明細書に於ける基(原子団)の表記に於いて、置換及び無置換を記していない表記は、置換基を有さないものと共に置換基を有するものをも包含するものである。例えば、「アルキル基」とは、置換基を有さないアルキル基(無置換アルキル基)のみならず、置換基を有するアルキル基(置換アルキル基)をも包含するものである。
本明細書中における「活性光線」又は「放射線」とは、例えば、水銀灯の輝線スペクトル、エキシマレーザーに代表される遠紫外線、極紫外線(EUV光)、X線、電子線(EB)等を意味する。また、本発明において光とは、活性光線又は放射線を意味する。
また、本明細書中における「露光」とは、特に断らない限り、水銀灯、エキシマレーザーに代表される遠紫外線、極紫外線、X線、EUV光などによる露光のみならず、電子線、イオンビーム等の粒子線による描画も露光に含める。
【0013】
本発明のパターン形成方法は、
(1)感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物を用いて膜を形成することと、(2)上記膜を活性光線又は放射線で露光することと、(3)有機溶剤を含んだ現像液(以下、必要に応じて、「有機系現像液」ともいう。)を用いて上記露光された膜を現像することを有している。
そして、上記感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物は、(A)後述の一般式(I)で表される繰り返し単位と、後述の一般式(II)〜(IV)のいずれかで表される繰り返し単位とを有する樹脂、及び、(C)架橋剤を含有している。
【0014】
活性光線又は放射線としては、例えば、赤外光、可視光、紫外光、遠紫外光、X線、及び電子線が挙げられる。これら活性光線又は放射線としては、例えば250nm以下、特には220nm以下の波長を有したものがより好ましい。このような活性光線又は放射線としては、例えば、KrFエキシマレーザー(248nm)、ArFエキシマレーザー(193nm)、Fエキシマレーザー(157nm)、X線、及び電子線が挙げられる。好ましい活性光線又は放射線としては、例えば、KrFエキシマレーザー、ArFエキシマレーザー、電子線、X線及び極紫外線(EUV光)が挙げられる。より好ましくは、電子線及び極紫外線である。
【0015】
上記の本発明のパターン形成方法によれば、高感度、高解像性(高解像力など)、高いラフネス性能、膜べり低減性能、高い露光ラチチュード、及び、高いドライエッチング耐性を極めて高次元で同時に満足するパターン形成方法、感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物、及び、レジスト膜、並びに、これらを用いた電子デバイスの製造方法、及び、電子デバイスを提供できる。特に活性光線又は放射線が電子線、X線及びEUV光である時にその効果は顕著である。その理由は定かではないが、以下のように推定される。
【0016】
本発明のパターン形成方法においては、先ず、樹脂(A)が後述の一般式(I)で表される繰り返し単位を、すなわち、フェノール構造などの芳香環を有することで、露光部において、二次電子を充分に放出する。また、一般式(II)〜(IV)で表される繰り返し単位を使用することにより、酸の作用により分解して極性基を発生するための活性化エネルギーを低くできる。これらの要因により、露光部において、樹脂が極性基を生じる反応、及び、架橋剤による架橋反応が効率良く進行するため、高感度となると考えられる。
また、EUV露光に関しては、アウトオブバンド光(波長100〜400nmの紫外光領域に発生する漏れ光)が、レジスト膜の表面ラフネス性を悪化させ、その結果、ブリッジパターンやパターンの断線による解像性の低下や膜べりの悪化を引き起こしやすい。しかし、芳香環が、アウトオブバンド光を吸収し、内部フィルターとして機能することで、解像性及び膜べり低減性能が優れると考えられる。
【0017】
また、例えば、電子線又は極紫外線により露光を行うパターン形成方法は、極めて微細なパターン(例えば、線幅50nm以下の領域を有するパターン)を良好に形成できるものとして期待されている。
しかしながら、例えば、線幅が50nm以下であり、かつ、線幅とスペース幅との比が1:1のラインアンドスペースパターンを形成する場合においては、現像時に形成された微細なスペース空間内には、より強い毛管力(キャピラリーフォース)が発生じやすく、上記スペース空間から現像液が排出される際には、この毛管力が、微細な線幅を有するパターンの側壁に掛かる。そして、アルカリ現像液によりポジ型のパターンを形成する場合には、樹脂を主成分とするパターンとアルカリ現像液との親和性は低い傾向となるため、パターンの側壁に掛かる毛管力が大きく、パターンの倒れが発生しやすい。一方、本発明のように、有機系現像液によりネガ型のパターンを形成する場合、樹脂を主成分とするパターンと有機系現像液との親和性は高い傾向にあり、パターン側壁における現像液の接触角が高くなるため、毛管力を低減することができる。結果として、パターン倒れを防止し、高解像性を達成できる(限界解像力に優れる)ものと考えられる。
【0018】
更に、露光部は、樹脂が極性基を生じることによって有機系現像液に対する溶解度が低下するのみならず、架橋剤の架橋反応が進行することによっても有機系現像液に対する溶解度が低下する。また、一般式(II)〜(IV)で表される繰り返し単位は、有機系現像液に対する親和性が高い一方、酸の作用により分解して極性基を生じた場合には、有機系現像液に対する親和性が大きく低下する繰り返し単位(すなわち、極性基の発生前後で有機系現像液に対する親和性のコントラストが大きい繰り返し単位)である。これらの要因により、膜べり低減性能が向上するとともに、露光部と未露光部との有機系現像液に対する溶解コントラストが向上し、その結果、解像性、及び、ラフネス性能がより向上するものと考えられる。
また、露光部は、架橋剤の架橋反応により、硬膜化する。これにより、ドライエッチング耐性が向上するとともに、露光部において発生した酸が未露光部へ拡散し難くなることによって、露光ラチチュードが向上するものと考えられる。また、パターンの倒れが生じにくくなることから、解像性が向上するものと考えられる。
さらに、ヒドロキシスチレンに代表される一般式(I)で表される繰り返し単位が有するフェノール性水酸基は、架橋剤と反応しやすいため、上記のドライエッチング耐性の向上、露光ラチチュードの向上、及び、解像性の向上をさらに顕著に達成することができる。
【0019】
以下、本発明のパターン形成方法について詳細に説明する。
【0020】
<パターン形成方法>
本発明に係るパターン形成方法は、上記工程(1)上で説明した組成物を用いて膜(レジスト膜)を形成することと、(2)この膜を活性光線又は放射線で露光することと、(3)有機系現像液を用いて露光された膜を現像することとを含んでいる。この方法は、本発明の効果がより優れるという理由から、(4)リンス液を用いて、現像された膜をリンスすることを更に含んでいるのが好ましい。
また、本発明に係るパターン形成方法は、典型的には、ネガ型パターン形成方法である。
本発明は、上記組成物を用いて形成されたレジスト膜にも関する。
製膜後、露光工程の前に、前加熱(PB;Prebake)工程を含むことも好ましい。また、露光工程の後かつ現像工程の前に、露光後加熱(PEB;Post Exposure Bake)工程を含むことも好ましい。
【0021】
加熱温度は、PB工程及びPEB工程共に、40〜130℃で行うことが好ましく、50〜120℃で行うことがより好ましく、60〜110℃で行うことが更に好ましい。特に、PEB工程を60〜90℃の低温で行った場合、露光ラチチュード(EL)及び解像力を顕著に向上させることができる。
また、加熱時間は、30〜300秒が好ましく、30〜180秒がより好ましく、30〜90秒が更に好ましい。
【0022】
本発明に係るパターン形成方法において、組成物による膜を基板上に形成する工程、膜を露光する工程、加熱工程、及び現像工程は、一般的に知られている方法により行うことができる。
【0023】
上記の露光に用いられる光源は、極紫外線(EUV光)又は電子線(EB)であることが好ましい。
【0024】
本発明に係るレジスト組成物から形成された膜について、活性光線又は放射線の照射時に、膜とレンズの間に空気よりも屈折率の高い液体(液浸媒体)を満たして露光(液浸露光)を行ってもよい。これにより解像性を高めることができる。用いる液浸媒体としては空気よりも屈折率の高い液体であればいずれのものでも用いることができるが好ましくは純水である。
液浸露光する際に使用する液浸液については、特開2013−76991号公報の段落〔0059〕及び〔0060〕の記載を参酌でき、これらの内容は本願明細書に組み込まれる。
【0025】
本発明の組成物による膜と液浸液との間には、膜を直接、液浸液に接触させないために、液浸液難溶性膜(以下、「トップコート」ともいう)を設けてもよい。トップコートに必要な機能としては、組成物膜上層部への塗布適正、液浸液難溶性である。トップコートは、組成物膜と混合せず、さらに組成物膜上層に均一に塗布できることが好ましい。
【0026】
トップコートは、特開2013−76991号公報の段落〔0061〕及び〔0062〕の記載を参酌でき、これらの内容は本願明細書に組み込まれる。
【0027】
EUV露光やEB露光の際、アウトガス抑止の目的、ブロッブ欠陥抑止の目的、逆テーパー形状改良による倒れ悪化、表面荒れによるLWR悪化等を防止する目的で、本発明の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物から形成されるレジスト膜の上層にトップコート層を形成しても良い。以下、トップコート層の形成に用いられるトップコート組成物について説明する。
【0028】
本発明におけるトップコート組成物は溶媒が水又は有機溶剤であることが好ましい。より好ましくは水又はアルコール系溶剤である。
溶媒が有機溶剤である場合、レジスト膜を溶解しない溶剤であることが好ましい。使用しうる溶剤としては、アルコール系溶剤、フッ素系溶剤、炭化水素系溶剤を用いることが好ましく、非フッ素系のアルコール系溶剤を用いることが更に好ましい。アルコール系溶剤としては、塗布性の観点からは1級のアルコールが好ましく、更に好ましくは炭素数4〜8の1級アルコールである。炭素数4〜8の1級アルコールとしては、直鎖状、分岐状、環状のアルコールを用いることができるが、直鎖状、分岐状のアルコールが好ましい。具体的には、例えば1−ブタノール、1−ヘキサノール、1−ペンタノールおよび3−メチル−1−ブタノールなどが挙げられる。
【0029】
本発明におけるトップコート組成物の溶媒が水、アルコール系溶剤等である場合、水溶性樹脂を含有することが好ましい。水溶性樹脂を含有することにより、現像液への溶解性の均一性をより高めることができると考えられる。好ましい水溶性樹脂としては、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリヒドロキシスチレン、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、ポリビニルエーテル、ポリビニルアセタール、ポリアクリルイミド、ポリエチレングリコール、ポリエチレンオキサイド、ポリエチレンイミン、ポリエステルポリオールおよびポリエーテルポリオール、多糖類、等が挙げられる。特に好ましくは、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリヒドロキシスチレン、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコールである。なお、水溶性樹脂としてはホモポリマーのみに限定されず、共重合体であっても構わない。例えば、上記で挙げたホモポリマーの繰り返し単位に相当するモノマーと、それ以外のモノマー単位を有する共重合体であってもよい。具体的には、アクリル酸―メタクリル酸共重合体、アクリル酸−ヒドロキシスチレン共重合体なども本発明に用いることができる。
また、トップコート組成物用の樹脂としては、特開2009−134177、特開2009−91798記載の酸性基を有する樹脂も、好ましく用いることができる。
水溶性樹脂の重量平均分子量は、特に制限はないが、2000から100万が好ましく、更に好ましくは5000から50万、特に好ましくは1万から10万である。ここで、樹脂の重量平均分子量は、GPC(キャリア:THFあるいはN−メチル−2−ピロリドン(NMP))によって測定したポリスチレン換算分子量を示す。
【0030】
トップコート組成物のpHは、特に制限はないが、好ましくは0〜10、更に好ましくは0〜8、特に好ましくは1〜7である。
【0031】
トップコート組成物の溶剤が有機溶媒である場合、トップコート組成物は、感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物の項において後述する疎水性樹脂(E)のような疎水性の樹脂を含有していてもよい。疎水性樹脂としては、特開2008−209889号公報に記載の疎水性樹脂を用いることも好ましい。
【0032】
トップコート組成物中の樹脂の濃度は、好ましくは0.1から10質量%、さらに好ましくは0.2から5質量%、特に好ましくは0.3から3質量%である。
トップコート材料には樹脂以外の成分を含んでもよいが、トップコート組成物の固形分に占める樹脂の割合は、好ましくは80から100質量%であり、更に好ましくは90から100質量%、特に好ましくは95から100質量%である。
本発明におけるトップコート組成物の固形分濃度は、0.1〜10であることが好ましく、0.2〜6質量%であることがより好ましく、0.3〜5質量%であることが更に好ましい。固形分濃度を前記範囲とすることで、トップコート組成物をレジスト膜上に均一に塗布することができる。
【0033】
トップコート材料に添加し得る樹脂以外の成分としては、界面活性剤、光酸発生剤、塩基性化合物などが挙げられる。光酸発生剤及び塩基性化合物の具体例としては、上述した活性光線又は放射線の照射により酸を発生する化合物及び塩基性化合物と同様の化合物が挙げられる。
【0034】
界面活性剤を使用する場合、界面活性剤の使用量は、トップコート組成物の全量に対して、好ましくは0.0001〜2質量%、より好ましくは0.001〜1質量%である。
トップコート組成物に界面活性剤を添加することによって、トップコート組成物を塗布する場合の塗布性が向上し得る。界面活性剤としては、ノニオン性、アニオン性、カチオン性および両性界面活性剤が挙げられる。
ノニオン性界面活性剤としては、BASF社製のPlufaracシリーズ、青木油脂工業社製のELEBASEシリーズ、ファインサーフシリーズ、ブラウノンシリーズ、旭電化工業社製のアデカプルロニック P−103、花王ケミカル社製のエマルゲンシリーズ、アミートシリーズ、アミノーン PK−02S、エマノーン CH−25、レオドールシリーズ、AGCセイミケミカル社製のサーフロン S−141、第一工業製薬社製のノイゲンシリーズ、竹本油脂社製のニューカルゲンシリーズ、日信化学工業社製のDYNOL604、エンバイロジェムAD01、オルフィンEXPシリーズ、サーフィノールシリーズ、菱江化学社製のフタージェント 300、等を用いることができる。
アニオン性界面活性剤として、花王ケミカル社製のエマール20T、ポイズ 532A、TOHO社製のフォスファノール ML−200、クラリアントジャパン社製のEMULSOGENシリーズ、AGCセイミケミカル社製のサーフロンS−111N、サーフロンS−211、第一工業製薬社製のプライサーフシリーズ、竹本油脂社製のパイオニンシリーズ、日信化学工業社製のオルフィンPD−201、オルフィンPD−202、日本サーファクタント工業社製のAKYPO RLM45、ECT−3、ライオン社製のライポン、等を用いる事ができる。
カチオン性界面活性剤として、花王ケミカル社製のアセタミン24、アセタミン86等を用いる事ができる。
両性界面活性剤として、サーフロンS−131(AGCセイミケミカル社製)、エナジコールC−40H、リポミン LA (以上 花王ケミカル社製)等を用いる事ができる。
またこれらの界面活性剤を混合して用いることもできる。
【0035】
本発明のパターン形成方法では、基板上に上記感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物を用いてレジスト膜を形成し得、該レジスト膜上に上記トップコート組成物を用いてトップコート層を形成し得る。このレジスト膜の膜厚は、好ましくは10〜100nmであり、トップコート層の膜厚は、好ましくは10〜200nm、更に好ましくは20〜100nm、特に好ましくは40〜80nmである。
基板上に感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物を塗布する方法としては、スピン塗布が好ましく、その回転数は1000〜3000rpmが好ましい。
例えば、感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物を精密集積回路素子の製造に使用されるような基板(例:シリコン/二酸化シリコン被覆)上にスピナー、コーター等の適当な塗布方法により塗布、乾燥し、レジスト膜を形成する。なお、予め公知の反射防止膜を塗設することもできる。また、トップコート層の形成前にレジスト膜を乾燥することが好ましい。
次いで、得られたレジスト膜上に、上記レジスト膜の形成方法と同様の手段によりトップコート組成物を塗布、乾燥し、トップコート層を形成することができる。
トップコート層を上層に有するレジスト膜に、通常はマスクを通して、電子線(EB)、X線又はEUV光を照射し、好ましくはベーク(加熱)を行い、現像する。これにより良好なパターンを得ることができる。
なお、トップコートに求められる性能及びその使用法などについては、シーエムシー出版「液浸リソグラフィのプロセスと材料」の第7章に解説されている。
【0036】
露光後にトップコートを剥離する際は、現像液を使用してもよいし、別途剥離剤を使用してもよい。剥離剤としては、膜への浸透が小さい溶剤が好ましい。剥離工程が膜の現像処理工程と同時にできるという点では、現像液により剥離できることが好ましい。
【0037】
本発明において膜を形成する基板には、特に制限はない。この基板としては、IC等の半導体製造工程、液晶及びサーマルヘッド等の回路基板の製造工程、並びにその他のフォトファブリケーションのリソグラフィー工程で一般的に用いられる基板を用いることができる。このような基板としては、例えば、シリコン、SiN及びSiO等の無機基板、並びに、SOG等の塗布系無機基板が挙げられる。更に、必要に応じて、膜と基板との間に、有機反射防止膜を形成させてもよい。
【0038】
有機系現像液としては、例えば、ケトン系溶剤、エステル系溶剤、アルコール系溶剤、アミド系溶剤及びエーテル系溶剤等の極性溶剤、並びに、炭化水素系溶剤を含んだ現像液が挙げられる。また、これらの混合溶剤であってもよい。
【0039】
ケトン系溶剤としては、例えば、1−オクタノン、2−オクタノン、1−ノナノン、2−ノナノン、アセトン、4−ヘプタノン、1−ヘキサノン、2−ヘキサノン、ジイソブチルケトン、シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサノン、フェニルアセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルアミルケトン、アセチルアセトン、アセトニルアセトン、イオノン、ジアセトニルアルコール、アセチルカービノール、アセトフェノン、メチルナフチルケトン、イソホロン、及びプロピレンカーボネートが挙げられる。
【0040】
エステル系溶剤としては、例えば、酢酸メチル、酢酸ブチル、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸アミル、酢酸イソアミル、酢酸n−ペンチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチルー3−エトキシプロピオネート、3−メトキシブチルアセテート、3−メチル−3−メトキシブチルアセテート、蟻酸メチル、蟻酸エチル、蟻酸ブチル、蟻酸プロピル、乳酸エチル、乳酸ブチル、乳酸プロピル、プロピオン酸メチル、3−メトキシプロピオン酸メチル(MMP)、プロピオン酸エチル、3−エトキシプロピオン酸エチル(EEP)、及び、プロピオン酸プロピルが挙げられる。特には、酢酸メチル、酢酸ブチル、酢酸エチル、酢酸イソプロピル及び酢酸アミル等の酢酸アルキルエステル又はプロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、及びプロピオン酸プロピルなどのプロピオン酸アルキルエステルが好ましい。
【0041】
アルコール系溶剤としては、例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、sec−ブチルアルコール、tert−ブチルアルコール、イソブチルアルコール、n−ヘキシルアルコール、4−メチルー2−ペンタノール、n−ヘプチルアルコール、n−オクチルアルコール及びn−デカノール等のアルコール;エチレングリコール、ジエチレングリコール及びトリエチレングリコール等のグリコール;並びに、エチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル及びメトキシメチルブタノール等のグリコールエーテルが挙げられる。
【0042】
エーテル系溶剤としては、例えば、上記のグリコールエーテルの他、ジオキサン及びテトラヒドロフラン等が挙げられる。
【0043】
アミド系溶剤としては、例えば、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、ヘキサメチルホスホリックトリアミド、及び1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノンが挙げられる。
【0044】
炭化水素系溶剤としては、例えば、トルエン、キシレン及びアニソール等の芳香族炭化水素系溶剤、並びに、ペンタン、ヘキサン、オクタン及びデカン等の脂肪族炭化水素系溶剤が挙げられる。
【0045】
上記の溶剤は、2種類以上を混合して用いてもよい。また、十分な性能を発揮できる範囲内で、上記以外の溶剤及び/又は水と混合して用いてもよい。但し、現像液全体としての含水率が10質量%未満であることが好ましく、現像液が実質的に水分を含有しないことがより好ましい。即ち、この現像液は、実質的に有機溶剤のみからなる現像液であることが好ましい。なお、この場合であっても、現像液は、後述する界面活性剤を含み得る。また、この場合、現像液は、雰囲気由来の不可避的不純物を含んでいてもよい。
【0046】
現像液に対する有機溶剤の使用量は、現像液の全量に対して、80質量%以上100質量%以下であることが好ましく、90質量%以上100質量%以下であることがより好ましく、95質量%以上100質量%以下であることが更に好ましい。
【0047】
特に、現像液が含んでいる有機溶剤は、ケトン系溶剤、エステル系溶剤、アルコール系溶剤、アミド系溶剤及びエーテル系溶剤から選択される少なくとも1つであることが好ましい。
【0048】
有機系現像液の蒸気圧は、20℃に於いて、5kPa以下であることが好ましく、3kPa以下であることが更に好ましく、2kPa以下であることが特に好ましい。現像液の蒸気圧を5kPa以下にすることにより、基板上又は現像カップ内での現像液の蒸発が抑制され、ウェハ面内の温度均一性が向上し、結果として、ウェハ面内の寸法均一性が向上する。
【0049】
5kPa以下の蒸気圧を有する現像液の具体例としては、1−オクタノン、2−オクタノン、1−ノナノン、2−ノナノン、4−ヘプタノン、2−ヘキサノン、ジイソブチルケトン、シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサノン、フェニルアセトン及びメチルイソブチルケトン等のケトン系溶剤;酢酸ブチル、酢酸アミル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチル−3−エトキシプロピオネート、3−メトキシブチルアセテート、3−メチル−3−メトキシブチルアセテート、蟻酸ブチル、蟻酸プロピル、乳酸エチル、乳酸ブチル及び乳酸プロピル等のエステル系溶剤;n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、sec−ブチルアルコール、tert−ブチルアルコール、イソブチルアルコール、n−ヘキシルアルコール、4−メチルー2−ペンタノール、n−ヘプチルアルコール、n−オクチルアルコール、及びn−デカノール等のアルコール系溶剤;エチレングリコール、ジエチレングリコール及びトリエチレングリコール等のグリコール系溶剤;エチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル及びメトキシメチルブタノール等のグリコールエーテル系溶剤;テトラヒドロフラン等のエーテル系溶剤;N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミド及びN,N−ジメチルホルムアミド等のアミド系溶剤;トルエン及びキシレン等の芳香族炭化水素系溶剤;並びに、オクタン及びデカン等の脂肪族炭化水素系溶剤が挙げられる。
【0050】
2kPa以下の蒸気圧を有する現像液の具体例としては、1−オクタノン、2−オクタノン、1−ノナノン、2−ノナノン、4−ヘプタノン、2−ヘキサノン、ジイソブチルケトン、シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサノン及びフェニルアセトン等のケトン系溶剤;酢酸ブチル、酢酸アミル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチル−3−エトキシプロピオネート、3−メトキシブチルアセテート、3−メチル−3−メトキシブチルアセテート、乳酸エチル、乳酸ブチル及び乳酸プロピル等のエステル系溶剤;n−ブチルアルコール、sec−ブチルアルコール、tert−ブチルアルコール、イソブチルアルコール、n−ヘキシルアルコール、4−メチルー2−ペンタノール、n−ヘプチルアルコール、n−オクチルアルコール及びn−デカノール等のアルコール系溶剤;エチレングリコール、ジエチレングリコール及びトリエチレングリコール等のグリコール系溶剤;エチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル及びメトキシメチルブタノール等のグリコールエーテル系溶剤;N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミド及びN,N−ジメチルホルムアミドのアミド系溶剤;キシレン等の芳香族炭化水素系溶剤;並びに、オクタン及びデカン等の脂肪族炭化水素系溶剤が挙げられる。
【0051】
現像液には、必要に応じて、界面活性剤を適当量添加することができる。
この界面活性剤に特に制限はないが、例えば、イオン性又は非イオン性のフッ素系及び/又はシリコン系界面活性剤を用いることができる。これらのフッ素及び/又はシリコン系界面活性剤として、例えば、特開昭62−36663号公報、特開昭61−226746号公報、特開昭61−226745号公報、特開昭62−170950号公報、特開昭63−34540号公報、特開平7−230165号公報、特開平8−62834号公報、特開平9−54432号公報、特開平9−5988号公報、米国特許第5405720号明細書、同5360692号明細書、同5529881号明細書、同5296330号明細書、同5436098号明細書、同5576143号明細書、同5294511号明細書、同5824451号明細書記載の界面活性剤を挙げることができる。この界面活性剤は、非イオン性であることが好ましい。非イオン性の界面活性剤としては、フッ素系界面活性剤又はシリコン系界面活性剤を用いることが更に好ましい。
【0052】
なお、界面活性剤の使用量は、現像液の全量に対して、通常は0.001〜5質量%であり、好ましくは0.005〜2質量%であり、更に好ましくは0.01〜0.5質量%である。
【0053】
また、有機系現像液には、特開2013−11833号公報の特に[0032]〜[0063]に記載されているように、塩基性化合物を含ませることもできる。また、塩基性化合物としては、感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物が含有してもよい後述の塩基性化合物(N)を挙げることもできる。
【0054】
現像方法としては、例えば、現像液が満たされた槽中に基板を一定時間浸漬する方法(ディップ法)、基板表面に現像液を表面張力によって盛り上げて一定時間静止することで現像する方法(パドル法)、基板表面に現像液を噴霧する方法(スプレー法)、及び、一定速度で回転している基板上に一定速度で現像液吐出ノズルをスキャンしながら現像液を吐出しつづける方法(ダイナミックディスペンス法)が挙げられる。
【0055】
上記各種の現像方法が、現像装置の現像ノズルから現像液をレジスト膜に向けて吐出する工程を含む場合、吐出される現像液の吐出圧(吐出される現像液の単位面積あたりの流速)は、好ましくは2mL/sec/mm以下であり、より好ましくは1.5mL/sec/mm以下であり、さらに好ましくは1mL/sec/mm以下である。流速の下限は特に無いが、スループットを考慮すると、0.2mL/sec/mm以上であることが好ましい。
吐出される現像液の吐出圧を上記の範囲とすることにより、現像後のレジスト残渣に由来するパターンの欠陥を著しく低減することができる。
【0056】
このメカニズムの詳細は定かではないが、恐らくは、吐出圧を上記範囲とすることで、現像液がレジスト膜に与える圧力が小さくなり、組成物膜及び/又はパターンが不用意に削られたり崩れたりすることが抑制されるためと考えられる。
なお、現像液の吐出圧(mL/sec/mm)は、現像装置中の現像ノズル出口における値である。
【0057】
現像液の吐出圧を調整する方法としては、例えば、ポンプなどで吐出圧を調整する方法、及び、加圧タンクからの供給で圧力を調整する方法が挙げられる。
また、現像を行う工程の後に、他の溶媒に置換しながら、現像を停止する工程を実施してもよい。
【0058】
本発明に係るパターン形成方法は、上記の現像工程の後に、リンス工程(有機溶剤を含んだリンス液を用いて膜を洗浄する工程)を更に含んでいることが好ましい。
【0059】
リンス工程に用いるリンス液としては、現像後のパターンを溶解しないものであれば特に制限はなく、一般的な有機溶剤を含んだ溶液を使用することができる。
【0060】
リンス液としては、例えば、炭化水素系溶剤、ケトン系溶剤、エステル系溶剤、アルコール系溶剤、アミド系溶剤及びエーテル系溶剤から選択される少なくとも1種類の有機溶剤を含んだものが挙げられる。このリンス液は、より好ましくは、ケトン系溶剤、エステル系溶剤、アルコール系溶剤及びアミド系溶剤から選択される少なくとも1種類の有機溶剤を含んだものであり、更に好ましくは、アルコール系溶剤又はエステル系溶剤を含んだものである。
【0061】
このリンス液は、1価アルコールを含んでいることがより好ましく、炭素数5以上の1価アルコールを含んでいることが更に好ましい。
これら1価アルコールは、直鎖状であってもよく、分岐鎖状であってもよく、環状であってもよい。これら1価アルコールとしては、例えば、1−ブタノール、2−ブタノール、3−メチル−1−ブタノール、tert−ブチルアルコール、1−ペンタノール、2−ペンタノール、1−ヘキサノール、4−メチル−2−ペンタノール(メチルイソブチルカルビノール)、1−ヘプタノール、1−オクタノール、2−ヘキサノール、シクロペンタノール、2−ヘプタノール、2−オクタノール、3−ヘキサノール、3−ヘプタノール、3−オクタノール、及び4−オクタノールが挙げられる。炭素数5以上の1価アルコールとしては、例えば、1−ヘキサノール、2−ヘキサノール、4−メチルー2−ペンタノール、1−ペンタノール、及び3−メチル−1−ブタノールが挙げられる。
【0062】
上記の各成分は、2種類以上を混合して使用してもよく、上記以外の有機溶剤と混合して使用してもよい。
【0063】
リンス液の含水率は、10質量%未満であることが好ましく、5質量%未満であることが好ましく、3質量%未満であることが更に好ましい。即ち、リンス液に対する有機溶剤の使用量は、リンス液の全量に対して、90質量%以上100質量%以下であることが好ましく、95質量%以上100質量%以下であることがより好ましく、97質量%以上100質量%以下であることが特に好ましい。リンス液の含水率を10質量%未満にすることにより、更に良好な現像特性を達成し得る。
【0064】
リンス液の蒸気圧は、20℃に於いて、0.05kPa以上且つ5kPa以下であることが好ましく、0.1kPa以上且つ5kPa以下であることがより好ましく、0.12kPa以上且つ3kPa以下であることが更に好ましい。リンス液の蒸気圧を0.05kPa以上且つ5kPa以下にすることにより、ウェハ面内の温度均一性が向上すると共に、リンス液の浸透に起因した膨潤が抑制され、ウェハ面内の寸法均一性が良化する。
なお、リンス液には、界面活性剤を適当量添加してもよい。
【0065】
リンス工程においては、現像を行ったウェハを、上記のリンス液を用いて洗浄する。洗浄処理の方法は特に限定されないが、例えば、一定速度で回転している基板上にリンス液を吐出しつづける方法(回転塗布法)、リンス液が満たされた槽中に基板を一定時間浸漬する方法(ディップ法)、及び、基板表面にリンス液を噴霧する方法(スプレー法)が挙げられる。この中でも、回転塗布法で洗浄処理を行った後、基板を2000rpm〜4000rpmの回転数で回転させ、リンス液を基板上から除去することが好ましい。
【0066】
本発明のパターン形成方法は、更に、アルカリ水溶液を用いて現像を行い、レジストパターンを形成する工程(アルカリ現像工程)を含むことができる。これにより、より微細なパターンを形成することができる。
本発明において、有機溶剤現像工程によって露光強度の弱い部分が除去されるが、更にアルカリ現像工程を行うことによって露光強度の強い部分も除去される。このように現像を複数回行う多重現像プロセスにより、中間的な露光強度の領域のみを溶解させずにパターン形成が行えるので、通常より微細なパターンを形成できる(特開2008−292975号公報[0077]と同様のメカニズム)。
アルカリ現像は、有機溶剤を含む現像液を用いて現像する工程の前後どちらでも行うことが出来るが、有機溶剤現像工程の前に行うことがより好ましい。
【0067】
アルカリ現像液の種類は特に限定されないが、通常は、テトラメチルアンモニウムヒドロキシドの水溶液が用いられる。アルカリ現像液には、アルコール類及び/又は界面活性剤を適当量添加してもよい。
【0068】
アルカリ現像液のアルカリ濃度は、通常0.1〜20質量%である。アルカリ現像液のpHは、通常10.0〜15.0である。アルカリ現像液としては、テトラメチルアンモニウムヒドロキシドの2.38質量%水溶液を用いることが特に好ましい。
【0069】
アルカリ現像液を用いた現像の後にリンス処理を行う場合、リンス液としては、典型的には純水を使用する。このリンス液には、界面活性剤を適当量添加してもよい。
【0070】
また、本発明は、上記した本発明のパターン形成方法を含む、電子デバイスの製造方法、及び、この製造方法により製造された電子デバイスにも関する。
本発明の電子デバイスは、電気電子機器(家電、OA・メディア関連機器、光学用機器及び通信機器等)に、好適に、搭載されるものである。
【0071】
<感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物>
以下、本発明で使用し得る感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物について説明する。
本発明に係る感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物は、ネガ型の現像(露光されると現像液に対して溶解性が減少し、露光部がパターンとして残り、未露光部が除去される現像)に用いられる。即ち、本発明に係る感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物は、有機溶剤を含む現像液を用いた現像に用いられる有機溶剤現像用の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物とすることができる。ここで、有機溶剤現像用とは、少なくとも、有機溶剤を含む現像液を用いて現像する工程に供される用途を意味する。
このように、本発明は、上記した本発明のパターン形成方法に供せられる感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物にも関する。
本発明の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物は、典型的にはレジスト組成物であり、ネガ型のレジスト組成物(即ち、有機溶剤現像用のレジスト組成物)であることが、特に高い効果を得ることができることから好ましい。また本発明に係る組成物は、典型的には化学増幅型のレジスト組成物である。
【0072】
本発明で使用する組成物は、(A)一般式(I)で表される繰り返し単位と、一般式(II)〜(IV)のいずれかで表される繰り返し単位とを有する樹脂及び(C)架橋剤を含有する。
さらに、本発明で使用する組成物は、(B)活性光線又は放射線により酸を発生する化合物、(D)塩基性化合物、および、溶剤を含んでいるのが好ましく、(E)疎水性樹脂、(F)界面活性剤、及び(G)その他の添加剤の少なくとも1つを更に含んでいてもよい。
以下、これら各成分について、順に説明する。
【0073】
(A)一般式(I)で表される繰り返し単位と、一般式(II)〜(IV)のいずれかで表される繰り返し単位とを有する樹脂
【0074】
樹脂(A)は、下記一般式(I)で表される繰り返し単位を有する。ここで、一般式(I)で表される繰り返し単位は、フェノール性水酸基を有する繰り返し単位に相当する。
【0075】
【化5】
【0076】
一般式(I)中、R41、R42及びR43は、各々独立に、水素原子、アルキル基、ハロゲン原子、シアノ基又はアルコキシカルボニル基を表す。但し、R42はArと結合して環を形成していてもよく、その場合のR42は単結合又はアルキレン基を表す。Xは、単結合、−COO−、又は−CONR44−を表し、R42と環を形成する場合には3価の連結基を表す。R44は、水素原子又はアルキル基を表す。Lは、単結合又はアルキレン基を表す。Arは、(n+1)価の芳香環基を表し、R42と結合して環を形成する場合には(n+2)価の芳香環基を表す。nは、1〜4の整数を表す。
【0077】
式(I)におけるR41、R42、R43のアルキル基、ハロゲン原子、アルコキシカルボニル基、及びこれらの基が有し得る置換基の具体例としては、後述する一般式(III)におけるR51、R52、及びR53により表される各基について説明される具体例と同様である。
Arは、(n+1)価の芳香環基を表す。nが1である場合における2価の芳香環基は、置換基を有していてもよく、例えば、フェニレン基、トリレン基、ナフチレン基、アントラセニレン基などの炭素数6〜18のアリーレン基、あるいは、例えば、チオフェン、フラン、ピロール、ベンゾチオフェン、ベンゾフラン、ベンゾピロール、トリアジン、イミダゾール、ベンゾイミダゾール、トリアゾール、チアジアゾール、チアゾール等のヘテロ環を含む芳香環基を好ましい例として挙げることができる。
【0078】
nが2以上の整数である場合における(n+1)価の芳香環基の具体例としては、2価の芳香環基の上記した具体例から、(n−1)個の任意の水素原子を除してなる基を好適に挙げることができる。
(n+1)価の芳香環基は、更に置換基を有していても良い。
【0079】
上述したアルキル基、アルコキシカルボニル基、アルキレン基及び(n+1)価の芳香環基が有し得る置換基としては、後述する一般式(III)におけるR51〜R53で挙げられるアルキル基、メトキシ基、エトキシ基、ヒドロキシエトキシ基、プロポキシ基、ヒドロキシプロポキシ基、ブトキシ基等のアルコキシ基、フェニル基等のアリール基が挙げられる。
により表わされる−CONR44−(R44は、水素原子、アルキル基を表す)におけるR44のアルキル基としては、R41〜R43のアルキル基と同様のものが挙げられる。
としては、単結合、−COO−、−CONH−が好ましく、単結合、−COO−がより好ましい。
【0080】
におけるアルキレン基としては、好ましくは置換基を有していてもよいメチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ヘキシレン基、オクチレン基等の炭素数1〜8個のものが挙げられる。
Arとしては、置換基を有していても良い炭素数6〜18の芳香環基がより好ましく、ベンゼン環基、ナフタレン環基、ビフェニレン環基が特に好ましい。
一般式(I)で表される繰り返し単位は、ヒドロキシスチレン構造を備えていることが好ましい。即ち、Arは、ベンゼン環基であることが好ましい。
【0081】
一般式(I)において、X、Lとも単結合であることが好ましい。
以下に、一般式(I)で表される繰り返し単位の具体例を示すが、本発明はこれに限定されるものではない。式中、aは1又は2を表す。
【0082】
【化6】
【0083】
【化7】
【0084】
樹脂(A)は、繰り返し単位(I)を2種類以上含んでいてもよい。
【0085】
樹脂(A)における繰り返し単位(I)の含有率は、上述した露光時2次電子発生量増加による高感度化という観点からは多い方がよいものの、酸分解性基を有する繰り返し単位としての一般式(II)〜(IV)のいずれかで表される繰り返し単位を多くしてコントラストを確保する観点からはあまり多すぎないほうがよい。このような理由から、樹脂(A)における繰り返し単位(I)の含有率は、樹脂(A)中の全繰り返し単位に対し、5〜80モル%が好ましく、より好ましくは10〜75モル%、更に好ましくは10〜40モル%であり、特に好ましくは20〜40モル%である。
【0086】
また、樹脂(A)は、下記一般式(II)〜(IV)のいずれかで表される繰り返し単位を有する。ここで、一般式(II)〜(IV)のいずれかで表される繰り返し単位は、酸の作用により分解して極性基を生じる基(酸分解性基)を有する繰り返し単位に相当する。すなわち、一般式(II)で表される繰り返し単位は、酸の作用により分解して、極性基としての−ArOHで表される基を生じ、一般式(III)及び(IV)で表される繰り返し単位は、酸の作用により分解して、極性基としてのカルボン酸基を生じる。
【0087】
【化8】
【0088】
一般式(II)中、
61、R62及びR63は、各々独立に、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、ハロゲン原子、シアノ基、又はアルコキシカルボニル基を表す。但し、R62はArと結合して環を形成していてもよく、その場合のR62は単結合又はアルキレン基を表す。
は、単結合、−COO−、又は−CONR64−を表す。R64は、水素原子又はアルキル基を表す。
は、単結合又はアルキレン基を表す。
Arは、2価の芳香環基を表し、R62と結合して環を形成する場合には3価の芳香環基を表す。
は、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基、アルコキシ基、アシル基又はヘテロ環基を表す。
は、単結合又は2価の連結基を表す。
は、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基又はヘテロ環基を表す。
、M及びRの少なくとも二つが結合して環を形成してもよい。
【0089】
一般式(II)について更に詳細に説明する。
一般式(II)におけるR61〜R63は、後述する一般式(III)中のR51、R52、R53と同義であり、また好ましい範囲も同様である。
【0090】
62がアルキレン基を表す場合、アルキレン基としては、好ましくは置換基を有していてもよいメチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ヘキシレン基、オクチレン基等の炭素数1〜8個のものが挙げられる。
により表わされる−CONR64−(R64は、水素原子、アルキル基を表す)におけるR64のアルキル基としては、R61〜R63のアルキル基と同様のものが挙げられる。
としては、単結合、−COO−、−CONH−が好ましく、単結合、−COO−がより好ましい。
におけるアルキレン基としては、好ましくは置換基を有していてもよいメチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ヘキシレン基、オクチレン基等の炭素数1〜8個のものが挙げられる。R62とLとが結合して形成する環は、5又は6員環であることが特に好ましい。
Arは、2価の芳香環基を表す。2価の芳香環基は、置換基を有していても良く、例えば、フェニレン基、トリレン基、ナフチレン基などの炭素数6〜18のアリーレン基、あるいは、例えば、チオフェン、フラン、ピロール、ベンゾチオフェン、ベンゾフラン、ベンゾピロール、トリアジン、イミダゾール、ベンゾイミダゾール、トリアゾール、チアジアゾール、チアゾール等のヘテロ環を含む2価の芳香環基を好ましい例として挙げることができる。
Arは、複数個の置換基を有していてもよく、この場合、複数個の置換基は互いに結合して環を形成してもよい。
【0091】
上述したアルキル基、シクロアルキル基、アルコキシカルボニル基、アルキレン基及び2価の芳香環基が有し得る置換基としては、後述する一般式(III)におけるR51〜R53により表わされる各基が有し得る置換基と同様の具体例が挙げられる。
【0092】
が表すアルキル基は、直鎖状であっても分岐状であってもよく、炭素数1〜8のアルキル基が好ましく、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、へキシル基、オクチル基等を挙げることができる。
が表すシクロアルキル基は、単環型でも、多環型でもよい。単環型としては、炭素数3〜10のシクロアルキル基が好ましく、例えば、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロへキシル基、シクロオクチル基等を挙げることができる。多環型としては、炭素数6〜20のシクロアルキル基が好ましく、例えば、アダマンチル基、ノルボルニル基、イソボロニル基、カンファニル基、ジシクロペンチル基、α−ピネル基、トリシクロデカニル基、テトラシクロドデシル基、アンドロスタニル基等を挙げることができる。なお、シクロアルキル基中の炭素原子の一部が酸素原子等のヘテロ原子によって置換されていてもよい。
が表すアリール基は、炭素数6〜10のアリール基が好ましく、例えば、フェニル基、ナフチル基、アントリル基等のアリール基、チオフェン、フラン、ピロール、ベンゾチオフェン、ベンゾフラン、ベンゾピロール、トリアジン、イミダゾール、ベンゾイミダゾール、トリアゾール、チアジアゾール、チアゾール等のヘテロ環を含む2価の芳香環基を挙げることができる。
が表すアラルキル基は、炭素数7〜12のアラルキル基が好ましく、例えば、ベンジル基、フェネチル基、ナフチルメチル基等を挙げることができる。
が表すアルコキシ基のアルキル基部分としては、前述のRが表すアルキル基と同様であり、また好ましい範囲も同様である。
が表すアシル基としては、ホルミル基、アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基、イソブチリル基、バレリル基、ピバロイル基、ベンゾイル基、ナフトイル基などの炭素数1〜10の脂肪族アシル基が挙げられ、アセチル基又はベンゾイル基であることが好ましい。
が表すヘテロ環基としては、前述のヘテロ原子を含むシクロアルキル基及びヘテロ原子を含むアリール基が挙げられ、ピリジン環基又はピラン環基であることが好ましい。
【0093】
は、炭素数1〜8個の直鎖又は分岐のアルキル基(具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、2−エチルヘキシル基、オクチル基)、炭素数3〜15個のシクロアルキル基(具体的には、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、ノルボルニル基、アダマンチル基等)であることが好ましく、炭素数2個以上の基であることが好ましい。Rは、エチル基、i−プロピル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ネオペンチル基、シクロヘキシル基、アダマンチル基、シクロヘキシルメチル基又はアダマンタンメチル基であることがより好ましく、tert−ブチル基、sec−ブチル基、ネオペンチル基、シクロヘキシルメチル基又はアダマンタンメチル基であることが更に好ましい。
【0094】
が表す2価の連結基は、例えば、アルキレン基(例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ヘキシレン基、オクチレン基など)、シクロアルキレン基(例えば、シクロペンチレン基、シクロヘキシレン基、アダマンチレン基など)、アルケニレン基(例えば、エチレン基、プロペニレン基、ブテニレン基など)、2価の芳香環基(例えば、フェニレン基、トリレン基、ナフチレン基など)、−S−、−O−、−CO−、−SO−、−N(R)−、及びこれらの複数を組み合わせた2価の連結基である。Rは、水素原子又はアルキル基(例えば炭素数1〜8個のアルキル基であって、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、ヘキシル基、オクチル基など)である。
【0095】
が表すアルキル基は、例えば炭素数1〜8個のアルキル基であって、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、ヘキシル基、オクチル基を好ましく挙げることができる。
が表すシクロアルキル基は、例えば炭素数3〜15個のシクロアルキル基であって、具体的には、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、ノルボルニル基、アダマンチル基等を好ましい例として挙げることができる。
が表すアリール基は、例えば炭素数6〜15個のアリール基であって、具体的には、フェニル基、トリル基、ナフチル基、アントリル基等を好ましい例として挙げることができる。
が表すヘテロ環基としては、ヘテロ原子を含むシクロアルキル基及びヘテロ原子を含むアリール基が挙げられる。
としてのヘテロ原子を含んでいてもよいシクロアルキル基及びヘテロ原子を含んでいてもよいアリール基に於ける、ヘテロ原子を含まない肪族炭化水素環基及びへテロ原子を含まないアリール基としては、上述のQとしてのシクロアルキル基、及びアリール基などが挙げられ、好ましくは、炭素数3〜15である。
ヘテロ原子を含むシクロアルキル基及びヘテロ原子を含むアリール基としては、例えば、チイラン、シクロチオラン、チオフェン、フラン、ピロール、ベンゾチオフェン、ベンゾフラン、ベンゾピロール、トリアジン、イミダゾール、ベンゾイミダゾール、トリアゾール、チアジアゾール、チアゾール、ピロリドン等のヘテロ環構造を有する基が挙げられるが、一般にヘテロ環と呼ばれる構造(炭素とヘテロ原子で形成される環、あるいはヘテロ原子にて形成される環)であれば、これらに限定されない。
【0096】
、M及びRの少なくとも二つが結合して形成してもよい環としては、Q、M及びRの少なくとも二つが結合して、例えば、プロピレン基、ブチレン基を形成して、酸素原子を含有する5員又は6員環を形成する場合が挙げられる。
【0097】
一般式(II)におけるR、M、Qで表される各基は、置換基を有していてもよく、置換基としては、例えば、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アミノ基、アミド基、ウレイド基、ウレタン基、ヒドロキシル基、カルボキシル基、ハロゲン原子、アルコキシ基、チオエーテル基、アシル基、アシルオキシ基、アルコキシカルボニル基、シアノ基、ニトロ基等を挙げることができ、置換基の炭素数は8以下が好ましい。
−M−Qで表される基として、炭素数1〜30個で構成される基が好ましい。
【0098】
前記一般式(II)におけるRは、炭素数が2以上の基であることが好ましく、下記一般式(II−2)で表される基であることがより好ましい。
【0099】
【化9】
【0100】
上記一般式(II−2)中、R81、R82及びR83は、各々独立に、アルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基又はアリール基を表す。n81は0又は1を表す。
81〜R83の少なくとも2つは互いに連結して環を形成してもよい。
81〜R83で表されるアルキル基としては、直鎖であっても分岐であってもよく、炭素数1〜8個のアルキル基であることが好ましい。
81〜R83で表されるアルケニル基としては、直鎖であっても分岐であってもよく、炭素数1〜8個のアルケニル基であることが好ましい。
81〜R83で表されるシクロアルキル基としては、前述のRのシクロアルキル基として記載したものと同様のものが挙げられる。
81〜R83で表されるアリール基としては、前述のRのアリール基として記載したものと同様のものが挙げられる。
81〜R83としては、アルキル基であることが好ましく、メチル基であることがより好ましい。
81〜R83の少なくとも2つが形成し得る環としてシクロペンチル基、シクロヘキシル基、ノルボルニル基又はアダマンチル基であることが好ましい。
【0101】
以下に、一般式(II)で表される繰り返し単位の具体例を示すが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0102】
【化10】
【0103】
【化11】
【0104】
【化12】
【0105】
【化13】
【0106】
【化14】
【0107】
【化15】
【0108】
【化16】
【0109】
【化17】
【0110】
一般式(III)中、
51、R52、及びR53は、各々独立に、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、ハロゲン原子、シアノ基、又はアルコキシカルボニル基を表す。R52はLと結合して環を形成していてもよく、その場合のR52はアルキレン基を表す。
は、単結合、又は、アルキレン基、−COO−L−、−O−L−、及び、これらの2つ以上を組み合わせて形成される基から選択される2価の連結基を表し、Lはアルキレン基またはシクロアルキレン基を表す。但し、LがR52と結合して環を形成する場合には、Lは3価の連結基を表す。
54はアルキル基を表し、R55及びR56は、各々独立に、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、又はアラルキル基を表す。R55及びR56は互いに結合して環を形成してもよい。但し、R55とR56とが同時に水素原子であることはない。
【0111】
一般式(III)について、更に詳細に説明する。
一般式(III)におけるR51〜R53のアルキル基としては、好ましくは置換基を有していても良いメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、ヘキシル基、2−エチルヘキシル基、オクチル基、ドデシル基など炭素数20以下のアルキル基が挙げられ、より好ましくは炭素数8以下のアルキル基、特に好ましくは炭素数3以下のアルキル基が挙げられる。
アルコキシカルボニル基に含まれるアルキル基としては、上記R51〜R53におけるアルキル基と同様のものが好ましい。
シクロアルキル基としては、単環型でも、多環型でもよい。好ましくは置換基を有していても良いシクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基のような炭素数3〜10個で単環型のシクロアルキル基が挙げられる。
ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子及びヨウ素原子が挙げられ、フッ素原子が特に好ましい。
【0112】
上記各基における好ましい置換基としては、例えば、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アミノ基、アミド基、ウレイド基、ウレタン基、ヒドロキシル基、カルボキシル基、ハロゲン原子、アルコキシ基、チオエーテル基、アシル基、アシルオキシ基、アルコキシカルボニル基、シアノ基、ニトロ基等を挙げることができ、置換基の炭素数は8以下が好ましい。
【0113】
またR52がアルキレン基でありLと結合して環を形成する場合、アルキレン基としては、好ましくはメチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ヘキシレン基、オクチレン基等の炭素数1〜8のアルキレン基が挙げられる。炭素数1〜4のアルキレン基がより好ましく、炭素数1〜2のアルキレン基が特に好ましい。R52とLとが結合して形成する環は、5又は6員環であることが特に好ましい。
【0114】
式(III)におけるR51及びR53としては、水素原子、アルキル基、ハロゲン原子がより好ましく、水素原子、メチル基、エチル基、トリフルオロメチル基(−CF)、ヒドロキシメチル基(−CH−OH)、クロロメチル基(−CH−Cl)、フッ素原子(−F)が特に好ましい。R52としては、水素原子、アルキル基、ハロゲン原子、アルキレン基(Lと結合して環を形成)がより好ましく、水素原子、メチル基、エチル基、トリフルオロメチル基(−CF)、ヒドロキシメチル基(−CH−OH)、クロロメチル基(−CH−Cl)、フッ素原子(−F)、メチレン基(Lと結合して環を形成)、エチレン基(Lと結合して環を形成)が特に好ましい。
【0115】
についてのアルキレン基としては、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ヘキシレン基、オクチレン基等の炭素数1〜8のアルキレン基が挙げられる。炭素数1〜4のアルキレン基がより好ましく、炭素数1又は2のアルキレン基が特に好ましい。
【0116】
についてのシクロアルキレン基は、炭素数3〜20のシクロアルキレン基であることが好ましく、例えば、シクロプロピレン基、シクロブチレン基、シクロペンチレン基、シクロヘキシレン基、シクロヘプチレン基、シクロオクチレン基、ノルボルニレン基又はアダマンチレン基が挙げられる。
についてのシクロアルキレン基は、環を構成する炭素(環形成に寄与する炭素)は、カルボニル炭素であってもよく、酸素原子等のヘテロ原子であってもよく、エステル結合を含有しラクトン環を形成していても良い。
【0117】
は、単結合、又は、−COO−L−で表される基であることが好ましく、単結合であることがより好ましい。
【0118】
についての2価の連結基として好ましい具体例を以下に例示するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0119】
【化18】
【0120】
がR52と結合して環を形成する場合における、Lで表される3価の連結基としては、Lで表される2価の連結基の上記した具体例から1個の任意の水素原子を除してなる基を好適に挙げることができる。
54〜R56のアルキル基としては炭素数1〜20のものが好ましく、より好ましくは炭素数1〜10のものであり、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基などの炭素数1〜4のものが特に好ましい。
55及びR56で表されるシクロアルキル基としては、炭素数3〜20のものが好ましく、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等の単環性のものであってもよいし、ノルボニル基、アダマンチル基、テトラシクロデカニル基、テトラシクロドデカニル基、等の多環性のものであってもよい。
【0121】
また、R55及びR56が互いに結合して形成される環としては、炭素数3〜20のものが好ましく、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等の単環性のものであってもよいし、ノルボニル基、アダマンチル基、テトラシクロデカニル基、テトラシクロドデカニル基、等の多環性のものであってもよい。R55及びR56が互いに結合して環を形成する場合、R54は炭素数1〜3のアルキル基が好ましく、メチル基、エチル基がより好ましい。
55及びR56で表されるアリール基としては、炭素数6〜20のものが好ましく、単環でも多環でもよく、置換基を有しても良い。例えば、フェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基、4−メチルフェニル基、4―メトキシフェニル基等が挙げられる。R55及びR56のどちらか一方が水素原子の場合、他方はアリール基であることが好ましい。
55及びR56で表されるアラルキル基としては、単環でも多環でもよく、置換基を有しても良い。好ましくは炭素数7〜21であり、ベンジル基、1−ナフチルメチル基等が挙げられる。
【0122】
一般式(III)で表される繰り返し単位に相当するモノマーの合成方法としては、一般的な重合性基含有エステルの合成法を適用することが可能であり、特に限定されることはない。
以下に、一般式(III)で表される繰り返し単位の具体例を示すが、本発明はこれに限定されるものではない。
具体例中、Rx、Xaは、水素原子、CH、CF、又はCHOHを表す。Rxa、Rxbは、それぞれ独立して、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数6〜18のアリール基、又は、炭素数7〜19のアラルキル基を表す。Zは、置換基を表す。pは0又は正の整数を表し、好ましくは0〜2であり、より好ましくは0又は1である。Zが複数存在する場合、互いに同じでも異なっていてもよい。Zとしては、酸分解前後での有機溶剤を含有する現像液に対する溶解コントラストを増大させる観点から、水素原子及び炭素原子のみからなる基が好適に挙げられ、例えば、直鎖又は分岐のアルキル基、シクロアルキル基であることが好ましい。
【0123】
【化19】
【0124】
【化20】
【0125】
【化21】
【0126】
【化22】
【0127】
【化23】
【0128】
【化24】
【0129】
【化25】
【0130】
【化26】
【0131】
【化27】
【0132】
【化28】
【0133】
【化29】
【0134】
【化30】
【0135】
【化31】
【0136】
【化32】
【0137】
一般式(III)で表される繰り返し単位は、本発明の効果がより優れるという理由から、下記一般式(III−1)で表される繰り返し単位であるのが好ましい。
【0138】
【化33】
【0139】
上記一般式(III−1)中、
及びRはそれぞれ独立にアルキル基を表し、R11及びR12はそれぞれ独立にアルキル基を表し、R13は水素原子又はアルキル基を表す。R11及びR12は連結して環を形成してもよく、R11及びR13は連結して環を形成しても良い。
Raは水素原子、アルキル基、シアノ基又はハロゲン原子を表し、Lは単結合、又は、アルキレン基、−COO−L−、−O−L−、及びこれらの2つ以上を組み合わせて形成される基から選択される2価の連結基を表し、Lはアルキレン基またはシクロアルキレン基を表す。
【0140】
上記一般式(III−1)において、R、R、R11〜R13としてのアルキル基は、炭素数1〜10のアルキル基であることが好ましく、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、2−エチルヘキシル基、オクチル基及びドデシル基などが挙げられる。
及びRについてのアルキル基としては、本発明の効果をより確実に達成する観点から、炭素数2〜10のアルキル基であることがより好ましく、R及びRのいずれもがエチル基であることが更に好ましい。
11及びR12についてのアルキル基としては、炭素数1〜4のアルキル基であることがより好ましく、メチル基又はエチル基であることが更に好ましく、メチル基であることが特に好ましい。
13としては水素原子又はメチル基であることがより好ましい。
11及びR12が連結して環を形成していることが特に好ましく、R11及びR13が連結して環を形成しても良い。
11及びR12が連結して形成する環としては、3〜8員環であることが好ましく、5又は6員環であることがより好ましい。
11及びR13が連結して形成する環としては、3〜8員環であることが好ましく、5又は6員環であることがより好ましい。
11及びR13が連結して環を形成するときは、R11及びR12が連結して環を形成するときであることが好ましい。
11及びR12(ないしR11及びR13)が連結して形成する環としては、一般式(1−1)のXとして後述する脂環式基であることが更に好ましい。
【0141】
、R、R11〜R13としてのアルキル基、R11及びR12(ないしR11及びR13)が連結して形成する環は、置換基を更に有していてもよい。
、R、R11〜R13としてのアルキル基、R11及びR12(ないしR11及びR13)が連結して形成する環が更に有し得る置換基としては、例えば、シクロアルキル基、アリール基、アミノ基、ヒドロキシ基、カルボキシ基、ハロゲン原子、アルコキシ基、アラルキルオキシ基、チオエーテル基、アシル基、アシロキシ基、アルコキシカルボニル基、シアノ基及びニトロ基などが挙げられる。上記置換基同士が互いに結合して環を形成してもよく、上記置換基同士が互いに結合して環を形成するときの環は、炭素数3〜10のシクロアルキル基又はフェニル基が挙げられる。
【0142】
Raについてのアルキル基は置換基を有していてもよく、炭素数1〜4のアルキル基であることが好ましい。
Raのアルキル基が有していてもよい好ましい置換基としては、水酸基、ハロゲン原子が挙げられる。
Raのハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、沃素原子を挙げることができる。
Raとして、好ましくは、水素原子、メチル基、ヒドロキシメチル基、炭素数1〜4のパーフルオロアルキル基(例えば、トリフルオロメチル基)であることが好ましく、樹脂(A)のガラス転移点(Tg)を向上させ、解像力、スペースウィズスラフネスを向上させる観点からメチル基であることが特に好ましい。
【0143】
及びLの具体例及び好ましい例は、一般式(III)のL及びLにおいて説明したものと同様である。
【0144】
より高いコントラスト(γ値が高い)を達成し、高解像、高い膜べり低減性能及び高感度を鼎立させるためには、前記一般式(III−1)で表される繰り返し単位が、下記一般式(III−2)で表される繰り返し単位であることが好ましい。
【0145】
【化34】
【0146】
上記一般式(III−2)中、
Xは脂環式基を表す。
、R、Ra及びLは、それぞれ、一般式(III−1)におけるR、R、Ra及びLと同義であり、具体例、好ましい例についても一般式(III−1)におけるR、R、Ra及びLと同様である。
【0147】
Xとしての脂環式基は、単環、多環、有橋式であってもよく、好ましくは炭素数3〜25の脂環式基を表す。
また、脂環式基は置換基を有してもよく、置換基としては、例えば、R、R、R11〜R13としてのアルキル基、R11及びR12(ないしR11及びR13)が連結して形成する環が有し得る置換基として前述した置換基と同様のもの、及びアルキル基(メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、パーフルオロアルキル基(例えば、トリフルオロメチル基)等)等を挙げることができる。
Xは、好ましくは炭素数3〜25の脂環式基を表し、より好ましくは炭素数5〜20の脂環式基を表し、特に好ましくは炭素数5〜15のシクロアルキル基である。
また、Xは3〜8員環の脂環式基又はその縮合環基であることが好ましく、5又は6員環又はその縮合環基であることが更に好ましい。
以下に、Xとしての脂環基の構造例を示す。
【0148】
【化35】
【0149】
【化36】
【0150】
【化37】
【0151】
上記脂環式基の好ましいものとしては、アダマンチル基、ノルアダマンチル基、デカリン残基、トリシクロデカニル基、テトラシクロドデカニル基、ノルボルニル基、セドロール基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、シクロデカニル基、シクロドデカニル基を挙げることができる。シクロヘキシル基、シクロペンチル基、アダマンチル基、ノルボルニル基であることがより好ましく、シクロヘキシル基、シクロペンチル基であることが更に好ましく、シクロヘキシル基であることが特に好ましい。
【0152】
以下に、上記一般式(III−1)又は(III−2)で表される繰り返し単位の具体例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0153】
【化38】
【0154】
【化39】
【0155】
【化40】
【0156】
【化41】
【0157】
【化42】
【0158】
【化43】
【0159】
【化44】
【0160】
【化45】
【0161】
一般式(IV)中、
71、R72及びR73は、各々独立に、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、ハロゲン原子、シアノ基又はアルコキシカルボニル基を表す。R42はLと結合して環を形成していてもよく、その場合のR72はアルキレン基を表す。
は、単結合又は2価の連結基を表し、R72と環を形成する場合には3価の連結基を表す。
74は、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基、アルコキシ基、アシル基又はヘテロ環基を表す。
は、単結合又は2価の連結基を表す。
は、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基又はヘテロ環基を表す。
、M及びR74の少なくとも二つが結合して環を形成してもよい。
【0162】
71、R72及びR73としての各基の具体例及び好ましい例は、前述の一般式(III)中のR51、R52及びR53について説明したものと同様である。
【0163】
で表される2価の連結基としては、アルキレン基、2価の芳香環基、−COO−L−、−O−L−、これらの2つ以上を組み合わせて形成される基等が挙げられる。ここで、Lはアルキレン基、シクロアルキレン基、2価の芳香環基、アルキレン基と2価の芳香環基を組み合わせた基を表す。
【0164】
におけるアルキレン基及びシクロアルキレン基の具体例及び好ましい例は、一般式(III)におけるLとしてのアルキレン基及びシクロアルキレン基について説明したものと同様である。
における2価の芳香環基としては、1,4−フェニレン基、1,3−フェニレン基、1,2−フェニレン基、1,4−ナフチレン基が好ましく、1,4−フェニレン基がより好ましい。
は、単結合、−COO−L−で表される基又は2価の芳香環基が好ましく、単結合であることがより好ましい。
【0165】
74としての各基の具体例及び好ましい例は、前述の一般式(II)中のRについて説明したものと同様である。
【0166】
の具体例及び好ましい例は、前述の一般式(II)中のMについて説明したものと同様である。
【0167】
の具体例及び好ましい例は、前述の一般式(II)中のQについて説明したものと同様である。Q、M及びR44の少なくとも二つが結合して形成される環の具体例及び好ましい例としては、Q、M及びRの少なくとも二つが結合して形成される環について説明したものと同様である。
【0168】
以下に一般式(IV)で表される繰り返し単位の具体例を示すが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0169】
【化46】
【0170】
【化47】
【0171】
【化48】
【0172】
【化49】
【0173】
上記一般式(II)〜(IV)のいずれかで表される繰り返し単位は、1種類であってもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0174】
樹脂(A)における上記一般式(II)〜(IV)のいずれかで表される繰り返し単位の含有量(複数種類含有する場合はその合計)は、上記樹脂(A)中の全繰り返し単位に対して5モル%以上80モル%以下であることが好ましく、5モル%以上75モル%以下であることがより好ましく、10モル%以上70モル%以下であることが更に好ましい。
【0175】
(c)一般式(I)で表される繰り返し単位以外の極性基を有する繰り返し単位
樹脂(A)は、一般式(I)で表される繰り返し単位以外の極性基を有する繰り返し単位(c)を含むことが好ましい。繰り返し単位(c)を含むことにより、例えば、樹脂を含んだ組成物の感度を向上させることができる。繰り返し単位(c)は、非酸分解性の繰り返し単位であること(すなわち、酸分解性基を有さないこと)が好ましい。
繰り返し単位(c)が含み得る「極性基」、及び、極性基を有する繰り返し単位としては、特開2013−76991号公報の段落〔0149〕〜〔0157〕の記載を参酌でき、これらの内容は本願明細書に組み込まれる。
【0176】
繰り返し単位(c)が極性基としてアルコール性ヒドロキシ基又はシアノ基を有する場合、好ましい繰り返し単位の一つの態様として、水酸基又はシアノ基で置換された脂環炭化水素構造を有する繰り返し単位であることが挙げられる。このとき、酸分解性基を有さないことが好ましい。水酸基又はシアノ基で置換された脂環炭化水素構造に於ける、脂環炭化水素構造としては、アダマンチル基、ジアマンチル基、ノルボルナン基が好ましい。好ましい水酸基又はシアノ基で置換された脂環炭化水素構造としては、下記一般式(VIIa)〜(VIIc)で表される部分構造が好ましい。これにより基板密着性、及び現像液親和性が向上する。
【0177】
【化50】
【0178】
一般式(VIIa)〜(VIIc)に於いて、
c〜Rcは、各々独立に、水素原子、水酸基又はシアノ基を表す。ただし、Rc〜Rcの内の少なくとも1つは、水酸基を表す。好ましくは、Rc〜Rcの内の1つ又は2つが、水酸基で、残りが水素原子である。一般式(VIIa)に於いて、更に好ましくは、Rc〜Rcの内の2つが、水酸基で、残りが水素原子である。
【0179】
一般式(VIIa)〜(VIIc)で表される部分構造を有する繰り返し単位としては、下記一般式(AIIa)〜(AIIc)で表される繰り返し単位を挙げることができる。
【0180】
【化51】
【0181】
一般式(AIIa)〜(AIIc)に於いて、
cは、水素原子、メチル基、トリフロロメチル基又はヒドロキシメチル基を表す。
【0182】
c〜Rcは、一般式(VIIa)〜(VIIc)に於ける、Rc〜Rcと同義である。
【0183】
樹脂(A)は水酸基又はシアノ基を有する繰り返し単位を含有していても含有していなくてもよいが、含有する場合、水酸基又はシアノ基を有する繰り返し単位の含有量は、樹脂(A)中の全繰り返し単位に対し、1〜60モル%が好ましく、より好ましくは3〜50モル%、更に好ましくは5〜40モル%である。
【0184】
水酸基又はシアノ基を有する繰り返し単位の具体例を以下に挙げるが、本発明はこれらに限定されない。
【0185】
【化52】
【0186】
繰り返し単位(c)は、極性基としてラクトン構造を有する繰り返し単位であってもよい。
ラクトン構造を有する繰り返し単位としては、下記一般式(AII)で表される繰り返し単位がより好ましい。
【0187】
【化53】
【0188】
一般式(AII)中、
Rbは、水素原子、ハロゲン原子又は置換基を有していてもよいアルキル基(好ましくは炭素数1〜4)を表す。
Rbのアルキル基が有していてもよい好ましい置換基としては、水酸基、ハロゲン原子が挙げられる。Rbのハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、沃素原子を挙げることができる。Rbとして、好ましくは、水素原子、メチル基、ヒドロキシメチル基、トリフルオロメチル基であり、水素原子、メチル基が特に好ましい。
【0189】
Abは、単結合、アルキレン基、単環又は多環のシクロアルキル構造を有する2価の連結基、エーテル結合、エステル結合、カルボニル基、又はこれらを組み合わせた2価の連結基を表す。Abは、好ましくは、単結合、−Ab−CO−で表される2価の連結基である。
Abは、直鎖又は分岐アルキレン基、単環又は多環のシクロアルキレン基であり、好ましくはメチレン基、エチレン基、シクロヘキシレン基、アダマンチレン基、ノルボルニレン基である。
Vは、ラクトン構造を有する基を表す。
【0190】
ラクトン構造を有する基としては、ラクトン構造を有していればいずれでも用いることができるが、好ましくは5〜7員環ラクトン構造であり、5〜7員環ラクトン構造にビシクロ構造、スピロ構造を形成する形で他の環構造が縮環しているものが好ましい。下記一般式(LC1−1)〜(LC1−17)のいずれかで表されるラクトン構造を有する繰り返し単位を有することがより好ましい。また、ラクトン構造が主鎖に直接結合していてもよい。好ましいラクトン構造としては(LC1−1)、(LC1−4)、(LC1−5)、(LC1−6)、(LC1−8)、(LC1−13)、(LC1−14)である。
【0191】
【化54】
【0192】
ラクトン構造部分は、置換基(Rb)を有していても有していなくてもよい。好ましい置換基(Rb)としては、炭素数1〜8のアルキル基、炭素数4〜7の1価のシクロアルキル基、炭素数1〜8のアルコキシ基、炭素数2〜8のアルコキシカルボニル基、カルボキシル基、ハロゲン原子、水酸基、シアノ基、酸分解性基などが挙げられる。より好ましくは炭素数1〜4のアルキル基、シアノ基、酸分解性基である。nは、0〜4の整数を表す。nが2以上の時、複数存在する置換基(Rb)は、同一でも異なっていてもよく、また、複数存在する置換基(Rb)同士が結合して環を形成してもよい。
【0193】
ラクトン基を有する繰り返し単位は、通常光学異性体が存在するが、いずれの光学異性体を用いてもよい。また、1種の光学異性体を単独で用いても、複数の光学異性体を混合して用いてもよい。1種の光学異性体を主に用いる場合、その光学純度(ee)が90%以上のものが好ましく、より好ましくは95%以上である。
【0194】
樹脂(A)はラクトン構造を有する繰り返し単位を含有しても含有しなくてもよいが、ラクトン構造を有する繰り返し単位を含有する場合、樹脂(A)中の前記繰り返し単位の含有量は、全繰り返し単位に対して、1〜50モル%の範囲が好ましく、より好ましくは3〜40モル%の範囲であり、更に好ましくは5〜30モル%の範囲である。
以下に、樹脂(A)中のラクトン構造を有する繰り返し単位の具体例を示すが、本発明はこれに限定されるものではない。式中、Rxは、H,CH,CHOH,又はCFを表す。
【0195】
【化55】
【0196】
【化56】
【0197】
また、樹脂(A)が有するスルトン基としては、下記一般式(SL−1)、(SL−2)が好ましい。式中のRb、nは、上述した一般式(LC1−1)〜(LC1−17)と同義である。
【0198】
【化57】
【0199】
樹脂(A)が有するスルトン基を含む繰り返し単位としては、前述したラクトン基を有する繰り返し単位におけるラクトン基を、スルトン基に置換したものが好ましい。
【0200】
繰り返し単位(c)は、極性基として、環状炭酸エステル構造を有する繰り返し単位であってもよい。
環状炭酸エステル構造を有する繰り返し単位は、下記一般式(A−1)で表される繰り返し単位であることが好ましい。
【0201】
【化58】
【0202】
一般式(A−1)中、Rは、水素原子又はアルキル基を表す。
は、nが2以上の場合は各々独立して、置換基を表す。
Aは、単結合、又は2価の連結基を表す。
Zは、式中の−O−C(=O)−O−で表される基と共に単環又は多環構造を形成する原子団を表す。
nは0以上の整数を表す。
【0203】
一般式(A−1)について詳細に説明する。
で表されるアルキル基は、フッ素原子等の置換基を有していてもよい。Rは、水素原子、メチル基又はトリフルオロメチル基を表すことが好ましく、メチル基を表すことがより好ましい。
で表される置換基は、例えば、アルキル基、シクロアルキル基、ヒドロキシル基、アルコキシ基、アミノ基、アルコキシカルボニルアミノ基である。好ましくは炭素数1〜5のアルキル基であり、炭素数1〜5の直鎖状アルキル基;炭素数3〜5の分岐状アルキル基等を挙げることができる。アルキル基はヒドロキシル基等の置換基を有していてもよい。
nは置換基数を表す0以上の整数である。nは、例えば、好ましくは0〜4であり、より好ましくは0である。
【0204】
Aにより表される2価の連結基としては、例えば、アルキレン基、シクロアルキレン基、エステル結合、アミド結合、エーテル結合、ウレタン結合、ウレア結合、又はその組み合わせ等が挙げられる。アルキレン基としては、炭素数1〜10のアルキレン基が好ましく、炭素数1〜5のアルキレン基がより好ましい。
本発明の一形態において、Aは、単結合、アルキレン基であることが好ましい。
【0205】
Zにより表される、−O−C(=O)−O−を含む単環としては、例えば、下記一般式(a)で表される環状炭酸エステルにおいて、n=2〜4である5〜7員環が挙げられ、5員環又は6員環(n=2又は3)であることが好ましく、5員環(n=2)であることがより好ましい。
Zにより表される、−O−C(=O)−O−を含む多環としては、例えば、下記一般式(a)で表される環状炭酸エステルが1又は2以上の他の環構造と共に縮合環を形成している構造や、スピロ環を形成している構造が挙げられる。縮合環又はスピロ環を形成し得る「他の環構造」としては、脂環式炭化水素基であってもよいし、芳香族炭化水素基であってもよいし、複素環であってもよい。
【0206】
【化59】
【0207】
樹脂(A)には、環状炭酸エステル構造を有する繰り返し単位のうちの1種が単独で含まれていてもよいし、2種以上が含まれていてもよい。
樹脂(A)において、環状炭酸エステル構造を有する繰り返し単位(好ましくは、一般式(A−1)で表される繰り返し単位)の含有率は、樹脂(A)を構成する全繰り返し単位に対して、3〜80モル%であることが好ましく、3〜60モル%であることが更に好ましく、3〜30モル%であることが特に好ましく、10〜15モル%であることが最も好ましい。このような含有率とすることによって、レジストとしての現像性、低欠陥性、低LWR、低PEB温度依存性、プロファイル等を向上させることができる。
【0208】
以下に、一般式(A−1)で表される繰り返し単位の具体例を挙げるが、本発明はこれらに限定されない。
なお、以下の具体例中のRは、一般式(A−1)におけるRと同義である。
【0209】
【化60】
【0210】
また、繰り返し単位(c)が有しうる極性基が酸性基であることも特に好ましい態様の一つである。好ましい酸性基としてはフェノール性水酸基、カルボン酸基、スルホン酸基、フッ素化アルコール基(例えばヘキサフロロイソプロパノール基)、スルホンアミド基、スルホニルイミド基、(アルキルスルホニル)(アルキルカルボニル)メチレン基、(アルキルスルホニル)(アルキルカルボニル)イミド基、ビス(アルキルカルボニル)メチレン基、ビス(アルキルカルボニル)イミド基、ビス(アルキルスルホニル)メチレン基、ビス(アルキルスルホニル)イミド基、トリス(アルキルカルボニル)メチレン基、トリス(アルキルスルホニル)メチレン基が挙げられる。なかでも繰り返し単位(c)はカルボキシル基を有する繰り返し単位であることがより好ましい。酸性基を有する繰り返し単位としては、アクリル酸、メタクリル酸による繰り返し単位のような樹脂の主鎖に直接酸性基が結合している繰り返し単位、あるいは連結基を介して樹脂の主鎖に酸性基が結合している繰り返し単位、更には酸性基を有する重合開始剤や連鎖移動剤を重合時に用いてポリマー鎖の末端に導入のいずれも好ましい。特に好ましくはアクリル酸、メタクリル酸による繰り返し単位である。
【0211】
繰り返し単位(c)が有しうる酸性基は、芳香環を含んでいてもいなくてもよいが、芳香環を有する場合はフェノール性水酸基以外の酸性基から選ばれることが好ましい。樹脂(A)が酸性基を有する繰り返し単位を含有する場合、樹脂(A)における酸性基を有する繰り返し単位の含有量は、通常、1モル%以上である。
酸性基を有する繰り返し単位の具体例を以下に示すが、本発明は、これに限定されるものではない。
具体例中、RxはH、CH、CHOH又はCFを表す。
【0212】
【化61】
【0213】
(d)複数の芳香環を有する繰り返し単位
樹脂(A)は複数の芳香環を有する繰り返し単位(d)を有していても良い。
複数の芳香環を有する繰り返し単位(d)としては、特開2013−76991号公報の段落〔0194〕〜〔0207〕の記載を参酌でき、これらの内容は本願明細書に組み込まれる。
【0214】
樹脂(A)は、繰り返し単位(d)を含有してもしなくても良いが、含有する場合、繰り返し単位(d)の含有率は、樹脂(A)の全繰り返し単位に対して、1〜30モル%の範囲であることが好ましく、より好ましくは1〜20モル%の範囲であり、更に好ましくは1〜15モル%の範囲である。樹脂(A)に含まれる繰り返し単位(d)は2種類以上を組み合わせて含んでもよい。
【0215】
本発明における樹脂(A)は、上記した繰り返し単位以外の繰り返し単位を適宜有していてもよい。そのような繰り返し単位の一例として、更に極性基(例えば、前記酸基、水酸基、シアノ基)を持たない脂環炭化水素構造を有し、酸分解性を示さない繰り返し単位を有することができる。これにより、有機溶剤を含む現像液を用いた現像の際に樹脂の溶解性を適切に調整することができる。このような繰り返し単位としては、一般式(IV)で表される繰り返し単位が挙げられる。
【0216】
【化62】
【0217】
一般式(IV)中、Rは少なくとも1つの環状構造を有し、極性基を有さない炭化水素基を表す。
Raは水素原子、アルキル基又は−CH−O−Ra基を表す。式中、Raは、水素原子、アルキル基又はアシル基を表す。Raは、水素原子、メチル基、ヒドロキシメチル基、トリフルオロメチル基が好ましく、水素原子、メチル基が特に好ましい。
【0218】
一般式(IV)における各基の説明は、特開2013−76991号公報の段落〔0212〕〜〔0216〕の記載を参酌でき、これらの内容は本願明細書に組み込まれる。
【0219】
樹脂(A)は、極性基を持たない脂環炭化水素構造を有し、酸分解性を示さない繰り返し単位を含有してもしなくてもよいが、含有する場合、この繰り返し単位の含有量は、樹脂(A)中の全繰り返し単位に対し、1〜20モル%が好ましく、より好ましくは5〜15モル%である。
極性基を持たない脂環炭化水素構造を有し、酸分解性を示さない繰り返し単位の具体例を以下に挙げるが、本発明はこれらに限定されない。式中、Raは、H、CH、CHOH、又はCFを表す。
【0220】
【化63】
【0221】
また、樹脂(A)は、Tgの向上やドライエッチング耐性の向上、先述のアウトオブバンド光の内部フィルター等の効果を鑑み、下記の繰り返し単位を含んでも良い。
【0222】
【化64】
【0223】
また、樹脂(A)は、下記一般式(P)により表される繰り返し単位を更に含んでも良い。
【0224】
【化65】
【0225】
41は、水素原子又はメチル基を表す。L41は、単結合又は2価の連結基を表す。L42は、2価の連結基を表す。Sは、電子線又は極紫外線の照射により分解して側鎖に酸を発生させる構造部位を表す。
【0226】
以下に、一般式(P)で表される繰り返し単位の具体例を示すが、本発明がこれに限定されるものではない。また、一般式(P)で表される繰り返し単位の具体例としては、特開2013−80002号公報の段落〔0168〕〜〔0210〕及び特開2013−137537号公報の段落〔0191〕〜〔0203〕の記載も参酌でき、これらの内容は本願明細書に組み込まれる。
【0227】
【化66】
【0228】
【化67】
【0229】
樹脂(A)における一般式(P)で表される繰り返し単位の含有量は、樹脂(A)の全繰り返し単位に対して、1〜40モル%の範囲が好ましく、2〜30モル%の範囲がより好ましく、5〜25モル%の範囲が特に好ましい。
【0230】
本発明の組成物に用いられる樹脂(A)において、各繰り返し構造単位の含有モル比は、レジストのドライエッチング耐性や標準現像液適性、基板密着性、レジストプロファイル、更にはレジストの一般的な必要性能である解像力、耐熱性、感度等を調節するために適宜設定される。
【0231】
本発明の樹脂(A)の形態としては、ランダム型、ブロック型、クシ型、スター型のいずれの形態でもよい。
樹脂(A)は、例えば、各構造に対応する不飽和モノマーのラジカル、カチオン、又はアニオン重合により合成することができる。また各構造の前駆体に相当する不飽和モノマーを用いて重合した後に、高分子反応を行うことにより目的とする樹脂を得ることも可能である。
例えば、一般的合成方法としては、不飽和モノマー及び重合開始剤を溶剤に溶解させ、加熱することにより重合を行う一括重合法、加熱溶剤に不飽和モノマーと重合開始剤の溶液を1〜10時間かけて滴下して加える滴下重合法などが挙げられ、滴下重合法が好ましい。
【0232】
重合に使用される溶媒としては、例えば、後述の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物を調製する際に使用することができる溶剤等を挙げることができ、より好ましくは本発明の組成物に用いられる溶剤(D)と同一の溶剤を用いて重合することが好ましい。これにより保存時のパーティクルの発生が抑制できる。
重合反応は窒素やアルゴンなど不活性ガス雰囲気下で行われることが好ましい。重合開始剤としては市販のラジカル開始剤(アゾ系開始剤、パーオキサイドなど)を用いて重合を開始させる。ラジカル開始剤としてはアゾ系開始剤が好ましく、エステル基、シアノ基、カルボキシル基を有するアゾ系開始剤が好ましい。好ましい開始剤としては、アゾビスイソブチロニトリル、アゾビスジメチルバレロニトリル、ジメチル2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)などが挙げられる。必要に応じて連鎖移動剤(例えば、アルキルメルカプタンなど)の存在下で重合を行ってもよい。
【0233】
反応の濃度は5〜70質量%であり、好ましくは10〜50質量%である。反応温度は、通常10℃〜150℃であり、好ましくは30℃〜120℃、更に好ましくは40〜100℃である。
反応時間は、通常1〜48時間であり、好ましくは1〜24時間、更に好ましくは1〜12時間である。
反応終了後、室温まで放冷し、精製する。精製は、水洗や適切な溶媒を組み合わせることにより残留単量体やオリゴマー成分を除去する液々抽出法、特定の分子量以下のもののみを抽出除去する限外ろ過等の溶液状態での精製方法や、樹脂溶液を貧溶媒へ滴下することで樹脂を貧溶媒中に凝固させることにより残留単量体等を除去する再沈澱法やろ別した樹脂スラリーを貧溶媒で洗浄する等の固体状態での精製方法等の通常の方法を適用できる。例えば、上記樹脂が難溶あるいは不溶の溶媒(貧溶媒)を、該反応溶液の10倍以下の体積量、好ましくは10〜5倍の体積量で、接触させることにより樹脂を固体として析出させる。
【0234】
ポリマー溶液からの沈殿又は再沈殿操作の際に用いる溶媒(沈殿又は再沈殿溶媒)としては、該ポリマーの貧溶媒であればよく、ポリマーの種類に応じて、炭化水素、ハロゲン化炭化水素、ニトロ化合物、エーテル、ケトン、エステル、カーボネート、アルコール、カルボン酸、水、これらの溶媒を含む混合溶媒等の中から適宜選択して使用できる。これらの中でも、沈殿又は再沈殿溶媒として、少なくともアルコール(特に、メタノールなど)又は水を含む溶媒が好ましい。
沈殿又は再沈殿溶媒の使用量は、効率や収率等を考慮して適宜選択できるが、一般には、ポリマー溶液100質量部に対して、100〜10000質量部、好ましくは200〜2000質量部、更に好ましくは300〜1000質量部である。
沈殿又は再沈殿する際の温度としては、効率や操作性を考慮して適宜選択できるが、通常0〜50℃程度、好ましくは室温付近(例えば20〜35℃程度)である。沈殿又は再沈殿操作は、攪拌槽などの慣用の混合容器を用い、バッチ式、連続式等の公知の方法により行うことができる。
沈殿又は再沈殿したポリマーは、通常、濾過、遠心分離等の慣用の固液分離に付し、乾燥して使用に供される。濾過は、耐溶剤性の濾材を用い、好ましくは加圧下で行われる。乾燥は、常圧又は減圧下(好ましくは減圧下)、30〜100℃程度、好ましくは30〜50℃程度の温度で行われる。
【0235】
なお、一度、樹脂を析出させて、分離した後に、再び溶媒に溶解させ、該樹脂が難溶あるいは不溶の溶媒と接触させてもよい。即ち、上記ラジカル重合反応終了後、該ポリマーが難溶あるいは不溶の溶媒を接触させ、樹脂を析出させ(工程a)、樹脂を溶液から分離し(工程b)、改めて溶媒に溶解させ樹脂溶液Aを調製(工程c)、その後、該樹脂溶液Aに、該樹脂が難溶あるいは不溶の溶媒を、樹脂溶液Aの10倍未満の体積量(好ましくは5倍以下の体積量)で、接触させることにより樹脂固体を析出させ(工程d)、析出した樹脂を分離する(工程e)ことを含む方法でもよい。
重合反応は窒素やアルゴンなど不活性ガス雰囲気下で行われることが好ましい。重合開始剤としては市販のラジカル開始剤(アゾ系開始剤、パーオキサイドなど)を用いて重合を開始させる。ラジカル開始剤としてはアゾ系開始剤が好ましく、エステル基、シアノ基、カルボキシル基を有するアゾ系開始剤が好ましい。好ましい開始剤としては、アゾビスイソブチロニトリル、アゾビスジメチルバレロニトリル、ジメチル2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)などが挙げられる。所望により開始剤を追加、あるいは分割で添加し、反応終了後、溶剤に投入して粉体あるいは固形回収等の方法で所望のポリマーを回収する。反応の濃度は5〜50質量%であり、好ましくは10〜30質量%である。反応温度は、通常10℃〜150℃であり、好ましくは30℃〜120℃、更に好ましくは60〜100℃である。
【0236】
本発明に係わる樹脂(A)の分子量は、特に制限されないが、GPC法によりポリスチレン換算値として、重量平均分子量が1000〜100000の範囲であることが好ましく、1500〜60000の範囲であることがより好ましく、2000〜30000の範囲であることが特に好ましい。重量平均分子量を1000〜100000の範囲とすることにより、耐熱性やドライエッチング耐性の劣化を防ぐことができ、且つ現像性が劣化したり、粘度が高くなって製膜性が劣化することを防ぐことができる。
【0237】
また分散度(Mw/Mn)は、好ましくは1.00〜5.00、より好ましくは1.00〜3.50であり、更に好ましくは、1.00〜2.50である。分子量分布の小さいものほど、解像度、レジスト形状が優れ、且つレジストパターンの側壁がスムーズであり、ラフネス性に優れる。
【0238】
本明細書において、樹脂の重量平均分子量(Mw)及び分散度は、例えば、HLC−8120(東ソー(株)製)を用い、カラムとしてTSK gel Multipore HXL−M(東ソー(株)製、7.8mmHD×30.0cm)を、溶離液としてTHF(テトラヒドロフラン)又はNMP(N−メチル−2−ピロリドン)を用いることによって求めることができる。
【0239】
樹脂(A)は、1種類単独で、又は2種類以上を組み合わせて使用することができる。樹脂(A)の含有率は、感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物中の全固形分を基準にして、20〜99質量%が好ましく、30〜99質量%がより好ましく、40〜99質量%が更に好ましい。
【0240】
(C)架橋剤
感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物は、酸の作用により樹脂(A)を架橋する化合物(以下、架橋剤と称する)を含有する。ここでは公知の架橋剤を有効に使用することができる。
架橋剤(C)は、例えば、樹脂(A)を架橋しうる架橋性基を有している化合物であり、架橋性基としては、ヒドロキシメチル基、アルコキシメチル基、アシルオキシメチル基、アルコキシメチルエーテル基、オキシラン環、及びオキセタン環などを挙げることができる。
架橋性基は、ヒドロキシメチル基、アルコキシメチル基、オキシラン環又はオキセタン環であることが好ましい。
架橋剤(C)は、架橋性基を2個以上有する化合物(樹脂も含む)であることが好ましい。
架橋剤(C)は、ヒドロキシメチル基又はアルコキシメチル基を有する、フェノール誘導体、ウレア系化合物(ウレア構造を有する化合物)又はメラミン系化合物(メラミン構造を有する化合物)であることがより好ましい。
【0241】
特に好ましい架橋剤(C)としては、分子量が1200以下、分子内にベンゼン環を3〜5個含み、更にヒドロキシメチル基又はアルコキシメチル基を合わせて2個以上有し、そのヒドロキシメチル基、アルコキシメチル基を少なくともいずれかのベンゼン環に集中させ、あるいは振り分けて結合してなるフェノール誘導体を挙げることができる。このようなフェノール誘導体を用いることにより、本発明の効果をより顕著にすることができる。ベンゼン環に結合するアルコキシメチル基としては、炭素数6個以下のものが好ましい。具体的にはメトキシメチル基、エトキシメチル基、n−プロポキシメチル基、i−プロポキシメチル基、n−ブトキシメチル基、i−ブトキシメチル基、sec−ブトキシメチル基、t−ブトキシメチル基が好ましい。更に、2−メトキシエトキシ基及び、2−メトキシ−1−プロポキシ基の様に、アルコキシ置換されたアルコキシ基も好ましい。
架橋剤(C)は、分子内にベンゼン環を有するフェノール誘導体であることが好ましく、分子内にベンゼン環を2個以上有するフェノール誘導体であることがより好ましく、また、窒素原子を含まないフェノール誘導体であることが好ましい。
架橋剤(C)は、樹脂(A)を架橋しうる架橋性基を1分子あたり2〜8個有するフェノール誘導体であることが好ましく、架橋性基を3〜6個有することがより好ましい。
【0242】
これらのフェノール誘導体の内、特に好ましいものを以下に挙げる。式中、L〜Lはアルコキシメチル基等の架橋性基を示し、同じであっても異なっていてもよく、架橋性基としては好ましくはヒドロキシメチル基、メトキシメチル基又はエトキシメチル基を示す。
【0243】
【化68】
【0244】
【化69】
【0245】
【化70】
【0246】
【化71】
【0247】
架橋剤(C)は、市販されているものを用いることもでき、また公知の方法で合成することもできる。例えば、ヒドロキシメチル基を有するフェノール誘導体は、対応するヒドロキシメチル基を有さないフェノール化合物(上記式においてL〜Lが水素原子である化合物)とホルムアルデヒドを塩基触媒下で反応させることによって得ることができる。この際、樹脂化やゲル化を防ぐために、反応温度を60℃以下で行うことが好ましい。具体的には、特開平6−282067号、特開平7−64285号等に記載されている方法にて合成することができる。
【0248】
アルコキシメチル基を有するフェノール誘導体は、対応するヒドロキシメチル基を有するフェノール誘導体とアルコールを酸触媒下で反応させることによって得ることができる。この際、樹脂化やゲル化を防ぐために、反応温度を100℃以下で行うことが好ましい。具体的には、EP632003A1等に記載されている方法にて合成することができる。このようにして合成されたヒドロキシメチル基又はアルコキシメチル基を有するフェノール誘導体は、保存時の安定性の点で好ましいが、アルコキシメチル基を有するフェノール誘導体は保存時の安定性の観点から特に好ましい。ヒドロキシメチル基又はアルコキシメチル基を合わせて2個以上有し、いずれかのベンゼン環に集中させ、あるいは振り分けて結合してなるこのようなフェノール誘導体は、単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0249】
また架橋剤としては、以下のN−ヒドロキシメチル基、N−アルコキシメチル基、若しくはN−アシルオキシメチル基を有する化合物も挙げることができる。
【0250】
N−ヒドロキシメチル基、N−アルコキシメチル基、若しくはN−アシルオキシメチル基を有する化合物としては、下記一般式(CLNM−1)で表される部分構造を2個以上(より好ましくは2〜8個)有する化合物が好ましい。
【0251】
【化72】
【0252】
一般式(CLNM−1)に於いて、
NM1は、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基又はオキソアルキル基を表す。
【0253】
一般式(CLNM−1)に於ける、RNM1のアルキル基は、炭素数1〜6の直鎖又は分岐のアルキル基が好ましい。RNM1のシクロアルキル基は、炭素数5〜6のシクロアルキル基が好ましい。RNM1のオキソアルキル基は、炭素数3〜6のオキソアルキル基が好ましく、例えば、β‐オキソプロピル基、β‐オキソブチル基、β‐オキソペンチル基、β‐オキソへキシル基等を挙げることができる。
【0254】
一般式(CLNM−1)で表される部分構造を2個以上有する化合物のより好ましい態様として、下記一般式(CLNM−2)で表されるウレア系化合物、下記一般式(CLNM−3)で表されるアルキレンウレア系化合物、下記一般式(CLNM−4)で表されるグリコールウリル系化合物、下記一般式(CLNM−5)で表されるメラミン系化合物が挙げられる。
【0255】
【化73】
【0256】
一般式(CLNM−2)に於いて、
NM1は、各々独立に、一般式(CLNM−1)に於ける、RNM1と同様のものである。
NM2は、各々独立に、水素原子、アルキル基(炭素数1〜6が好ましい)、又はシクロアルキル基(炭素数5〜6が好ましい)を表す。
【0257】
一般式(CLNM−2)で表されるウレア系化合物の具体例としては、例えば、N,N−ジ(メトキシメチル)ウレア、N,N−ジ(エトキシメチル)ウレア、N,N−ジ(プロポキシメチル)ウレア、N,N−ジ(イソプロポキシメチル)ウレア、N,N−ジ(ブトキシメチル)ウレア、N,N−ジ(t−ブトキシメチル)ウレア、N,N−ジ(シクロヘキシルオキシメチル)ウレア、N,N−ジ(シクロペンチルオキシメチル)ウレア、N,N−ジ(アダマンチルオキシメチル)ウレア、N,N−ジ(ノルボルニルオキシメチル)ウレア等が挙げられる。
【0258】
【化74】
【0259】
一般式(CLNM−3)に於いて、
NM1は、各々独立に、一般式(CLNM−1)に於ける、RNM1と同様のものである。
NM3は、各々独立に、水素原子、ヒドロキシル基、直鎖又は分岐のアルキル基(炭素数1〜6が好ましい)、シクロアルキル基(炭素数5〜6が好ましい)、オキソアルキル基(炭素数1〜6が好ましい)、アルコキシ基(炭素数1〜6が好ましい)又はオキソアルコキシ基(炭素数1〜6が好ましい)を表す。
Gは、単結合、酸素原子、硫黄原子、アルキレン基(炭素数1〜3が好ましい)又はカルボニル基を表す。より具体的には、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、1−メチルエチレン基、ヒドロキシメチレン基、シアノメチレン基等が挙げられる。
【0260】
一般式(CLNM−3)で表されるアルキレンウレア系化合物の具体例としては、例えば、N,N−ジ(メトキシメチル)‐4,5−ジ(メトキシメチル)エチレンウレア、N,N−ジ(エトキシメチル)‐4,5−ジ(エトキシメチル)エチレンウレア、N,N−ジ(プロポキシメチル)‐4,5−ジ(プロポキシメチル)エチレンウレア、N,N−ジ(イソプロポキシメチル)‐4,5−ジ(イソプロポキシメチル)エチレンウレア、N,N−ジ(ブトキシメチル)‐4,5−ジ(ブトキシメチル)エチレンウレア、N,N−ジ(t−ブトキシメチル)‐4,5−ジ(t−ブトキシメチル)エチレンウレア、N,N−ジ(シクロヘキシルオキシメチル)‐4,5−ジ(シクロヘキシルオキシメチル)エチレンウレア、N,N−ジ(シクロペンチルオキシメチル)‐4,5−ジ(シクロペンチルオキシメチル)エチレンウレア、N,N−ジ(アダマンチルオキシメチル)‐4,5−ジ(アダマンチルオキシメチル)エチレンウレア、N,N−ジ(ノルボルニルオキシメチル)‐4,5−ジ(ノルボルニルオキシメチル)エチレンウレア等が挙げられる。
【0261】
【化75】
【0262】
一般式(CLNM−4)に於いて、
NM1は、各々独立に、一般式(CLNM−1)に於ける、RNM1と同様のものである。
NM4は、各々独立に、水素原子、ヒドロキシル基、アルキル基、シクロアルキル基又はアルコキシ基を表す。
【0263】
NM4のアルキル基(炭素数1〜6が好ましい)、シクロアルキル基(炭素数5〜6が好ましい)、アルコキシ基(炭素数1〜6が好ましい)として、より具体的には、メチル基、エチル基、ブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、メトキシ基、エトキシ基、ブトキシ基等が挙げられる。
【0264】
一般式(CLNM−4)で表されるグリコールウリル系化合物の具体例としては、例えば、N,N,N,N−テトラ(メトキシメチル)グリコールウリル、N,N,N,N−テトラ(エトキシメチル)グリコールウリル、N,N,N,N−テトラ(プロポキシメチル)グリコールウリル、N,N,N,N−テトラ(イソプロポキシメチル)グリコールウリル、N,N,N,N−テトラ(ブトキシメチル)グリコールウリル、N,N,N,N−テトラ(t−ブトキシメチル)グリコールウリル、N,N,N,N−テトラ(シクロヘキシルオキシメチル)グリコールウリル、N,N,N,N−テトラ(シクロペンチルオキシメチル)グリコールウリル、N,N,N,N−テトラ(アダマンチルオキシメチル)グリコールウリル、N,N,N,N−テトラ(ノルボルニルオキシメチル)グリコールウリル等が挙げられる。
【0265】
【化76】
【0266】
一般式(CLNM−5)に於いて、
NM1は、各々独立に、一般式(CLNM−1)に於ける、RNM1と同様のものである。
NM5は、各々独立に、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、又は下記一般式(CLNM−5´)で表される原子団を表す。
NM6は、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、又は下記一般式(CLNM−5´´)で表される原子団を表す。
【0267】
【化77】
【0268】
一般式(CLNM−5´)において、
NM1は、一般式(CLNM−1)に於ける、RNM1と同様のものである。
一般式(CLNM−5´´)において、
NM1は、一般式(CLNM−1)に於ける、RNM1と同様のものであり、RNM5は、一般式(CLNM−5)に於けるRNM5と同様のものである。
【0269】
NM5及びRNM6のアルキル基(炭素数1〜6が好ましい)、シクロアルキル基(炭素数5〜6が好ましい)、アリール基(炭素数6〜10が好ましい)として、より具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、t‐ブチル基、ペンチル基、シクロペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、フェニル基、ナフチル基等が挙げられる。
【0270】
一般式(CLNM−5)で表されるメラミン系化合物としては、例えば、N,N,N,N,N,N−ヘキサ(メトキシメチル)メラミン、N,N,N,N,N,N−ヘキサ(エトキシメチル)メラミン、N,N,N,N,N,N−ヘキサ(プロポキシメチル)メラミン、N,N,N,N,N,N−ヘキサ(イソプロポキシメチル)メラミン、N,N,N,N,N,N−ヘキサ(ブトキシメチル)メラミン、N,N,N,N,N,N−ヘキサ(t−ブトキシメチル)メラミン、N,N,N,N,N,N−ヘキサ(シクロヘキシルオキシメチル)メラミン、N,N,N,N,N,N−ヘキサ(シクロペンチルオキシメチル)メラミン、N,N,N,N,N,N−ヘキサ(アダマンチルオキシメチル)メラミン、N,N,N,N,N,N−ヘキサ(ノルボルニルオキシメチル)メラミン、N,N,N,N,N,N−ヘキサ(メトキシメチル)アセトグアナミン、N,N,N,N,N,N−ヘキサ(エトキシメチル)アセトグアナミン、N,N,N,N,N,N−ヘキサ(プロポキシメチル)アセトグアナミン、N,N,N,N,N,N−ヘキサ(イソプロポキシメチル)アセトグアナミン、N,N,N,N,N,N−ヘキサ(ブトキシメチル)アセトグアナミン、N,N,N,N,N,N−ヘキサ(t−ブトキシメチル)アセトグアナミン、N,N,N,N,N,N−ヘキサ(メトキシメチル)ベンゾグアナミン、N,N,N,N,N,N−ヘキサ(エトキシメチル)ベンゾグアナミン、N,N,N,N,N,N−ヘキサ(プロポキシメチル)ベンゾグアナミン、N,N,N,N,N,N−ヘキサ(イソプロポキシメチル)ベンゾグアナミン、N,N,N,N,N,N−ヘキサ(ブトキシメチル)ベンゾグアナミン、N,N,N,N,N,N−ヘキサ(t−ブトキシメチル)ベンゾグアナミン、等が挙げられる。
【0271】
一般式(CLNM−1)〜(CLNM−5)に於ける、RNM1〜RNM6で表される基は、更に置換基を有してもよい。RNM1〜RNM6が有してもよい置換基としては、例えば、ハロゲン原子、水酸基、ニトロ基、シアノ基、カルボキシル基、シクロアルキル基(好ましくは炭素数3〜20)、アリール基(好ましくは炭素数6〜14)、アルコキシ基(好ましくは炭素数1〜20)、シクロアルコキシ基(好ましくは炭素数3〜20)、アシル基(好ましくは炭素数2〜20)、アシルオキシ基(好ましくは炭素数2〜20)等を挙げることができる。
以下に、上記一般式(CLNM−1)で表される部分構造を2個以上有する化合物の具体例を例示するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0272】
【化78】
【0273】
オキシラン環を有する化合物(エポキシ系化合物)としては、下記一般式(EP1)で表される化合物が挙げられる。
【0274】
【化79】
【0275】
式(EP1)中、
EP1〜REP3は各々独立に、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基又はシクロアルキル基を表し、該アルキル基及びシクロアルキル基は置換基を有していてもよい。またREP1とREP2、REP2とREP3は、互いに結合して環構造を形成していてもよい。
アルキル基及びシクロアルキル基が有していてもよい置換基としては例えば、ヒドロキシル基、シアノ基、アルコキシ基、アルキルカルボニル基、アルコキシカルボニル基、アルキルカルボニルオキシ基、アルキルチオ基、アルキルスルホン基、アルキルスルホニル基、アルキルアミノ基、アルキルアミド基、などが挙げられる。
EPは単結合若しくはnEP価の有機基を表す。REP1〜REP3は、これら同士だけでなくQEPとも結合して環構造を形成していても良い。
EPは2以上の整数を表し、好ましくは2〜10、更に好ましくは2〜6である。但しQEPが単結合の場合、nEPは2である。
【0276】
EPがnEP価の有機基の場合、鎖状若しくは環状のnEP価の飽和炭化水素基(炭素数2〜20が好ましい)、nEP価の芳香環基(炭素数6〜30が好ましい)、又は鎖状若しくは環状の飽和炭化水素若しくは芳香族炭化水素に、エーテル、エステル、アミド、スルホンアミド、アルキレン(炭素数1〜4が好ましく、メチレンがより好ましい)等の2価の連結基、−N(−)等の3価の連結基又はこれらの組み合わせが連結した構造を有するnEP価の有機基などが好ましい。
【0277】
以下にオキシラン環を有する化合物の具体例を例示するが、本発明はこれらに限定されるものではない。また、オキシラン環を有する化合物の具体例としては、例えば、特開2012−252080号公報の段落〔0112〕及び〔0113〕に記載の化合物も挙げられ、これらの内容は本願明細書に組み込まれる。
【0278】
【化80】
【0279】
【化81】
【0280】
オキセタン環を有する化合物としては、下記一般式(EP2)で表される化合物が挙げられる。
【0281】
【化82】
【0282】
式(EP2)中、
EP1A〜REP5Aは各々独立に、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基又はシクロアルキル基を表し、該アルキル基及びシクロアルキル基は置換基を有していてもよい。またREP2AとREP3A、REP2AとREP4A、REP4AとREP5Aは、互いに結合して環構造を形成していてもよい。
アルキル基及びシクロアルキル基が有していてもよい置換基の具体例は、式(EP1)においてアルキル基及びシクロアルキル基が有していてもよい置換基として説明したものと同様である。
EPAは単結合若しくはnEPA価の有機基を表す。REP1A〜REP5Aは、これら同士だけでなくQEPAとも結合して環構造を形成していても良い。
EPAは2以上の整数を表し、好ましくは2〜10、更に好ましくは2〜6である。但しQEPAが単結合の場合、nEPAは2である。
【0283】
EPAがnEPA価の有機基の場合、鎖状若しくは環状のnEPA価の飽和炭化水素基(炭素数2〜20が好ましい)、nEPA価の芳香環基(炭素数6〜30が好ましい)、又は鎖状若しくは環状の飽和炭化水素若しくは芳香族炭化水素に、エーテル、エステル、アミド、スルホンアミド、アルキレン(炭素数1〜4が好ましく、メチレンがより好ましい)等の2価の連結基、−N(−)等の3価の連結基又はこれらの組み合わせが連結した構造を有するnEPA価の有機基などが好ましい。
【0284】
オキセタン環を有する化合物の具体例としては、例えば、下記に例示する化合物が挙げられる。また、特開2012−252080号公報の段落〔0114〕に記載の化合物も挙げられ、これらの内容は本願明細書に組み込まれる。
【0285】
【化83】
【0286】
本発明において、架橋剤は単独で用いてもよいし、2種以上組み合わせて用いてもよい。
架橋剤(C)の含有量は、残膜率及び解像力が低下することを防止するとともに、レジスト液の保存時の安定性を良好に保つ観点から、組成物の全固形分中、好ましくは3〜65質量%、より好ましくは5〜50質量%、更に好ましくは10〜45質量%の添加量で用いられる。
【0287】
(B)活性光線又は放射線により酸を発生する化合物
本発明の組成物は、(B)活性光線又は放射線により酸を発生する化合物(以下、「酸発生剤」ともいう)を含有することが好ましい。
活性光線又は放射線の照射により酸を発生する化合物(B)は、低分子化合物の形態であっても良く、重合体の一部に組み込まれた形態であっても良い。また、低分子化合物の形態と重合体の一部に組み込まれた形態を併用しても良い。
活性光線又は放射線の照射により酸を発生する化合物(B)が、低分子化合物の形態である場合、分子量が3000以下であることが好ましく、2000以下であることがより好ましく、1000以下であることが更に好ましい。
活性光線又は放射線の照射により酸を発生する化合物(B)が、重合体の一部に組み込まれた形態である場合、前述した樹脂(A)の一部に組み込まれても良く、樹脂(A)とは異なる樹脂に組み込まれても良い。
酸発生剤(B)としては、公知のものであれば特に限定されないが、活性光線又は放射線、好ましくは電子線又は極紫外線の照射により、有機酸、例えば、スルホン酸、ビス(アルキルスルホニル)イミド、又はトリス(アルキルスルホニル)メチドの少なくともいずれかを発生する化合物が好ましい。
より好ましくは下記一般式(ZI)、(ZII)、(ZIII)で表される化合物を挙げることができる。
【0288】
【化84】
【0289】
上記一般式(ZI)において、
201、R202及びR203は、各々独立に、有機基を表す。
201、R202及びR203としての有機基の炭素数は、一般的に1〜30、好ましくは1〜20である。
また、R201〜R203のうち2つが結合して環構造を形成してもよく、環内に酸素原子、硫黄原子、エステル結合、アミド結合、カルボニル基を含んでいてもよい。R201〜R203の内の2つが結合して形成する基としては、アルキレン基(例えば、ブチレン基、ペンチレン基)を挙げることができる。
は、非求核性アニオン(求核反応を起こす能力が著しく低いアニオン)を表す。
【0290】
非求核性アニオンとしては、例えば、スルホン酸アニオン(脂肪族スルホン酸アニオン、芳香族スルホン酸アニオン、カンファースルホン酸アニオンなど)、カルボン酸アニオン(脂肪族カルボン酸アニオン、芳香族カルボン酸アニオン、アラルキルカルボン酸アニオンなど)、スルホニルイミドアニオン、ビス(アルキルスルホニル)イミドアニオン、トリス(アルキルスルホニル)メチドアニオン等を挙げられる。
【0291】
脂肪族スルホン酸アニオン及び脂肪族カルボン酸アニオンにおける脂肪族部位、及び、芳香族スルホン酸アニオン及び芳香族カルボン酸アニオンにおける芳香族基としては、特開2013−76991号公報の段落〔0234〕及び〔0235〕の記載を参酌でき、これらの内容は本願明細書に組み込まれる。
【0292】
上記で挙げたアルキル基、シクロアルキル基及びアリール基は、置換基を有していてもよい。この具体例としては、特開2013−76991号公報の段落〔0236〕の記載を参酌でき、これらの内容は本願明細書に組み込まれる。
【0293】
アラルキルカルボン酸アニオン
、スルホニルイミドアニオン、ビス(アルキルスルホニル)イミドアニオン、及び、トリス(アルキルスルホニル)メチドアニオンとしては、特開2013−76991号公報の段落〔0237〕〜〔0239〕の記載を参酌でき、これらの内容は本願明細書に組み込まれる。
【0294】
その他の非求核性アニオンとしては、特開2013−76991号公報の段落〔0240〕の記載を参酌でき、これらの内容は本願明細書に組み込まれる。
【0295】
非求核性アニオンとしては、スルホン酸の少なくともα位がフッ素原子で置換された脂肪族スルホン酸アニオン、フッ素原子又はフッ素原子を有する基で置換された芳香族スルホン酸アニオン、アルキル基がフッ素原子で置換されたビス(アルキルスルホニル)イミドアニオン、アルキル基がフッ素原子で置換されたトリス(アルキルスルホニル)メチドアニオンが好ましい。非求核性アニオンとして、より好ましくはパーフロロ脂肪族スルホン酸アニオン(更に好ましくは炭素数4〜8)、フッ素原子を有するベンゼンスルホン酸アニオン、更により好ましくはノナフロロブタンスルホン酸アニオン、パーフロロオクタンスルホン酸アニオン、ペンタフロロベンゼンスルホン酸アニオン、3,5−ビス(トリフロロメチル)ベンゼンスルホン酸アニオンである。
【0296】
酸強度の観点からは、発生酸のpKaが−1以下であることが、感度向上のために好ましい。
【0297】
また、非求核性アニオンとしては、以下の一般式(AN1)で表されるアニオンも好ましい態様として挙げられる。
【0298】
【化85】
【0299】
式中、
Xfは、それぞれ独立に、フッ素原子、又は少なくとも1つのフッ素原子で置換されたアルキル基を表す。
、Rは、それぞれ独立に、水素原子、フッ素原子、又は、アルキル基を表し、複数存在する場合のR、Rは、それぞれ同一でも異なっていてもよい。
Lは、二価の連結基を表し、複数存在する場合のLは同一でも異なっていてもよい。
Aは、環状の有機基を表す。
xは1〜20の整数を表し、yは0〜10の整数を表し、zは0〜10の整数を表す。
【0300】
一般式(AN1)について、更に詳細に説明する。
Xfのフッ素原子で置換されたアルキル基におけるアルキル基としては、好ましくは炭素数1〜10であり、より好ましくは炭素数1〜4である。また、Xfのフッ素原子で置換されたアルキル基は、パーフルオロアルキル基であることが好ましい。
Xfとして好ましくは、フッ素原子又は炭素数1〜4のパーフルオロアルキル基である。Xfの具体的としては、フッ素原子、CF、C、C、C、CHCF、CHCHCF、CH、CHCH、CH、CHCH、CH、CHCHが挙げられ、中でもフッ素原子、CFが好ましい。特に、双方のXfがフッ素原子であることが好ましい。
【0301】
、Rのアルキル基は、置換基(好ましくはフッ素原子)を有していてもよく、炭素数1〜4のものが好ましい。更に好ましくは炭素数1〜4のパーフルオロアルキル基である。R、Rの置換基を有するアルキル基の具体例としては、CF、C、C、C、C11、C13、C15、C17、CHCF、CHCHCF、CH、CHCH、CH、CHCH、CH、CHCHが挙げられ、中でもCFが好ましい。
、Rとしては、好ましくはフッ素原子又はCFである。
【0302】
xは1〜10が好ましく、1〜5がより好ましい。
yは0〜4が好ましく、0がより好ましい。
zは0〜5が好ましく、0〜3がより好ましい。
Lの2価の連結基としては特に限定されず、―COO−、−OCO−、−CO−、−O−、−S―、−SO―、―SO−、アルキレン基、シクロアルキレン基、アルケニレン基又はこれらの複数が連結した連結基などを挙げることができ、総炭素数12以下の連結基が好ましい。このなかでも―COO−、−OCO−、−CO−、−O−が好ましく、―COO−、−OCO−がより好ましい。
【0303】
Aの環状の有機基としては、環状構造を有するものであれば特に限定されず、脂環基、アリール基、複素環基(芳香族性を有するものだけでなく、芳香族性を有さないものも含む)等が挙げられる。
脂環基としては、単環でも多環でもよく、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロオクチル基などの単環のシクロアルキル基、ノルボルニル基、トリシクロデカニル基、テトラシクロデカニル基、テトラシクロドデカニル基、アダマンチル基などの多環のシクロアルキル基が好ましい。中でも、ノルボルニル基、トリシクロデカニル基、テトラシクロデカニル基、テトラシクロドデカニル基、アダマンチル基等の炭素数7以上のかさ高い構造を有する脂環基が、露光後加熱工程での膜中拡散性を抑制でき、MEEF向上の観点から好ましい。
アリール基としては、ベンゼン環、ナフタレン環、フェナンスレン環、アントラセン環が挙げられる。
複素環基としては、フラン環、チオフェン環、ベンゾフラン環、ベンゾチオフェン環、ジベンゾフラン環、ジベンゾチオフェン環、ピリジン環由来のものが挙げられる。中でもフラン環、チオフェン環、ピリジン環由来のものが好ましい。
【0304】
また、環状の有機基としては、ラクトン構造も挙げることができ、具体例としては、前述の樹脂(A)が有していてもよい一般式(LC1−1)〜(LC1−17)で表されるラクトン構造を挙げることができる。
【0305】
上記環状の有機基は、置換基を有していてもよく、該置換基としては、特開2013−76991号公報の段落〔0251〕の記載を参酌でき、これらの内容は本願明細書に組み込まれる。
【0306】
201、R202及びR203の有機基としては、アリール基、アルキル基、シクロアルキル基などが挙げられる。
201、R202及びR203のうち、少なくとも1つがアリール基であることが好ましく、三つ全てがアリール基であることがより好ましい。アリール基、アルキル基、及び、シクロアルキル基としては、特開2013−76991号公報の段落〔0252〕の記載を参酌でき、これらの内容は本願明細書に組み込まれる。
【0307】
また、R201〜R203のうち2つが結合して環構造を形成する場合における一般式(A1)で表される構造としては、特開2013−76991号公報の段落〔0253〕〜〔0257〕の記載を参酌でき、これらの内容は本願明細書に組み込まれる。
【0308】
なお、R201、R202及びR203のうち、少なくとも1つがアリール基でない場合の好ましい構造としては、特開2004−233661号公報の段落0046〜0048、特開2003−35948号公報の段落0040〜0046、米国特許出願公開第2003/0224288A1号明細書に式(I−1)〜(I−70)として例示されている化合物、米国特許出願公開第2003/0077540A1号明細書に式(IA−1)〜(IA−54)、式(IB−1)〜(IB−24)として例示されている化合物等のカチオン構造を挙げることができる。
【0309】
一般式(ZII)、(ZIII)中、
204〜R207は、各々独立に、アリール基、アルキル基又はシクロアルキル基を表す。
【0310】
204〜R207のアリール基、アルキル基、シクロアルキル基としては、前述の化合物(ZI)におけるR201〜R203のアリール基、アルキル基、シクロアルキル基として説明したアリール基と同様である。
204〜R207のアリール基、アルキル基、シクロアルキル基は、置換基を有していてもよい。この置換基としても、前述の化合物(ZI)におけるR201〜R203のアリール基、アルキル基、シクロアルキル基が有していてもよいものが挙げられる。
【0311】
は、非求核性アニオンを表し、一般式(ZI)に於けるZの非求核性アニオンと同様のものを挙げることができる。
【0312】
酸発生剤として、更に、特開2013−76991号公報の段落〔0262〕〜〔0264〕に記載の一般式(ZIV)、(ZV)、(ZVI)で表される化合物も挙げられる。
【0313】
酸発生剤の中で、特に好ましい例を以下に挙げる。
【0314】
【化86】
【0315】
【化87】
【0316】
【化88】
【0317】
【化89】
【0318】
【化90】
【0319】
【化91】
【0320】
【化92】
【0321】
【化93】
【0322】
【化94】
【0323】
本発明においては、上記酸を発生する化合物(B)は、露光で発生した酸の非露光部への拡散を抑制し解像性を良好にする観点から、電子線又は極紫外線の照射により、体積240Å以上の大きさの酸を発生する化合物であることが好ましく、体積300Å以上の大きさの酸を発生する化合物であることがより好ましく、体積350Å以上の大きさの酸を発生する化合物であることが更に好ましく、体積400Å以上の大きさの酸を発生する化合物であることが特に好ましい。ただし、感度や塗布溶剤溶解性の観点から、上記体積は、2000Å以下であることが好ましく、1500Å以下であることが更に好ましい。上記体積の値は、富士通株式会社製の「WinMOPAC」を用いて求めた。すなわち、まず、各例に係る酸の化学構造を入力し、次に、この構造を初期構造としてMM3法を用いた分子力場計算により、各酸の最安定立体配座を決定し、その後、これら最安定立体配座についてPM3法を用いた分子軌道計算を行うことにより、各酸の「accessible volume」を計算することができる。
【0324】
酸発生剤は、1種類単独で又は2種類以上を組み合わせて使用することができる。
酸発生剤の組成物中の含有率は、組成物の全固形分を基準として、0.1〜50質量%が好ましく、より好ましくは5〜50質量%、更に好ましくは10〜40質量%である。特に、電子線や極紫外線露光の際に高感度化、高解像性を両立するには酸発生剤の含有率は高いほうが好ましく、更に好ましくは15〜40質量%、最も好ましくは20〜40質量%である。
【0325】
(D)塩基性化合物
本発明に係る感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物は、塩基性化合物(D)を更に含むことが好ましい。塩基性化合物(D)は、好ましくは、フェノールと比較して塩基性がより強い化合物である。また、この塩基性化合物は、有機塩基性化合物であることが好ましく、含窒素塩基性化合物であることが更に好ましい。
【0326】
使用可能な含窒素塩基性化合物は特に限定されないが、例えば、以下の(1)〜(7)に分類される化合物を用いることができる。
【0327】
(1)一般式(BS−1)により表される化合物
【0328】
【化95】
【0329】
一般式(BS−1)中、
Rは、各々独立に、水素原子又は有機基を表す。但し、3つのRのうち少なくとも1つは有機基である。この有機基は、直鎖若しくは分岐鎖のアルキル基、単環若しくは多環のシクロアルキル基、アリール基又はアラルキル基である。
【0330】
Rとしてのアルキル基の炭素数は、特に限定されないが、通常1〜20であり、好ましくは1〜12である。
Rとしてのシクロアルキル基の炭素数は、特に限定されないが、通常3〜20であり、好ましくは5〜15である。
【0331】
Rとしてのアリール基の炭素数は、特に限定されないが、通常6〜20であり、好ましくは6〜10である。具体的には、フェニル基及びナフチル基等が挙げられる。
Rとしてのアラルキル基の炭素数は、特に限定されないが、通常7〜20であり、好ましくは7〜11である。具体的には、ベンジル基等が挙げられる。
【0332】
Rとしてのアルキル基、シクロアルキル基、アリール基及びアラルキル基は、水素原子が置換基により置換されていてもよい。この置換基としては、例えば、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基、ヒドロキシ基、カルボキシ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルカルボニルオキシ基及びアルキルオキシカルボニル基等が挙げられる。
【0333】
なお、一般式(BS−1)により表される化合物では、Rのうち少なくとも2つが有機基であることが好ましい。
【0334】
一般式(BS−1)により表される化合物の具体例としては、トリ−n−ブチルアミン、トリ−n−ペンチルアミン、トリ−n−オクチルアミン、トリ−n−デシルアミン、トリイソデシルアミン、ジシクロヘキシルメチルアミン、テトラデシルアミン、ペンタデシルアミン、ヘキサデシルアミン、オクタデシルアミン、ジデシルアミン、メチルオクタデシルアミン、ジメチルウンデシルアミン、N,N−ジメチルドデシルアミン、メチルジオクタデシルアミン、N,N−ジブチルアニリン、N,N−ジヘキシルアニリン、2,6−ジイソプロピルアニリン、及び2,4,6−トリ(t−ブチル)アニリンが挙げられる。
【0335】
また、一般式(BS−1)により表される好ましい塩基性化合物として、少なくとも1つのRがヒドロキシ基で置換されたアルキル基であるものが挙げられる。具体的には、例えば、トリエタノールアミン及びN,N−ジヒドロキシエチルアニリンが挙げられる。
【0336】
なお、Rとしてのアルキル基は、アルキル鎖中に酸素原子を有していてもよい。即ち、オキシアルキレン鎖が形成されていてもよい。オキシアルキレン鎖としては、−CHCHO−が好ましい。具体的には、例えば、トリス(メトキシエトキシエチル)アミン、及び、US6040112号明細書のカラム3の60行目以降に例示されている化合物が挙げられる。
【0337】
一般式(BS−1)で表される塩基性化合物のうち、そのようなヒドロキシル基や酸素原子等を有するものの例としては、例えば、以下のものが挙げられる。
【0338】
【化96】
【0339】
【化97】
【0340】
(2)含窒素複素環構造を有する化合物
この含窒素複素環は、芳香族性を有していてもよく、芳香族性を有していなくてもよい。また、窒素原子を複数有していてもよい。更に、窒素以外のヘテロ原子を含有していてもよい。具体的には、例えば、イミダゾール構造を有する化合物(2−フェニルベンゾイミダゾール、2,4,5−トリフェニルイミダゾールなど)、ピペリジン構造を有する化合物〔N−ヒドロキシエチルピペリジン及びビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケートなど〕、ピリジン構造を有する化合物(4−ジメチルアミノピリジンなど)、並びにアンチピリン構造を有する化合物(アンチピリン及びヒドロキシアンチピリンなど)が挙げられる。
【0341】
好ましい含窒素複素環構造を有する化合物の例としては、例えば、グアニジン、アミノピリジン、アミノアルキルピリジン、アミノピロリジン、インダゾール、イミダゾール、ピラゾール、ピラジン、ピリミジン、プリン、イミダゾリン、ピラゾリン、ピペラジン、アミノモルフォリン及びアミノアルキルモルフォリンが挙げられる。これらは、置換基を更に有していてもよい。
【0342】
好ましい置換基としては、例えば、アミノ基、アミノアルキル基、アルキルアミノ基、アミノアリール基、アリールアミノ基、アルキル基、アルコキシ基、アシル基、アシロキシ基、アリール基、アリールオキシ基、ニトロ基、水酸基及びシアノ基が挙げられる。
【0343】
特に好ましい塩基性化合物としては、例えば、イミダゾール、2−メチルイミダゾール、4−メチルイミダゾール、N−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、4,5−ジフェニルイミダゾール、2,4,5−トリフェニルイミダゾール、2−アミノピリジン、3−アミノピリジン、4−アミノピリジン、2−ジメチルアミノピリジン、4−ジメチルアミノピリジン、2−ジエチルアミノピリジン、2−(アミノメチル)ピリジン、2−アミノ−3−メチルピリジン、2−アミノ−4−メチルピリジン、2−アミノ5−メチルピリジン、2−アミノ−6−メチルピリジン、3−アミノエチルピリジン、4−アミノエチルピリジン、3−アミノピロリジン、ピペラジン、N−(2−アミノエチル)ピペラジン、N−(2−アミノエチル)ピペリジン、4−アミノ−2,2,6,6テトラメチルピペリジン、4−ピペリジノピペリジン、2−イミノピペリジン、1−(2−アミノエチル)ピロリジン、ピラゾール、3−アミノ−5−メチルピラゾール、5−アミノ−3−メチル−1−p−トリルピラゾール、ピラジン、2−(アミノメチル)−5メチルピラジン、ピリミジン、2,4−ジアミノピリミジン、4,6−ジヒドロキシピリミジン、2−ピラゾリン、3−ピラゾリン、N−アミノモルフォリン及びN−(2−アミノエチル)モルフォリンが挙げられる。
【0344】
また、環構造を2つ以上有する化合物も好適に用いられる。具体的には、例えば、1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]ノナ−5−エン及び1,8−ジアザビシクロ〔5.4.0〕−ウンデカ−7−エンが挙げられる。
【0345】
(3)フェノキシ基を有するアミン化合物
フェノキシ基を有するアミン化合物とは、アミン化合物が含んでいるアルキル基のN原子と反対側の末端にフェノキシ基を備えた化合物である。フェノキシ基は、例えば、アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、カルボキシ基、カルボン酸エステル基、スルホン酸エステル基、アリール基、アラルキル基、アシロキシ基及びアリールオキシ基等の置換基を有していてもよい。
【0346】
この化合物は、より好ましくは、フェノキシ基と窒素原子との間に、少なくとも1つのオキシアルキレン鎖を有している。1分子中のオキシアルキレン鎖の数は、好ましくは3〜9個、更に好ましくは4〜6個である。オキシアルキレン鎖の中でも−CHCHO−が特に好ましい。
【0347】
具体例としては、2−[2−{2―(2,2―ジメトキシ−フェノキシエトキシ)エチル}−ビス−(2−メトキシエチル)]−アミン、及び、US2007/0224539A1号明細書の段落[0066]に例示されている化合物(C1−1)〜(C3−3)が挙げられる。
【0348】
フェノキシ基を有するアミン化合物は、例えば、フェノキシ基を有する1級又は2級アミンとハロアルキルエーテルとを加熱して反応させ、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム及びテトラアルキルアンモニウム等の強塩基の水溶液を添加した後、酢酸エチル及びクロロホルム等の有機溶剤で抽出することにより得られる。また、フェノキシ基を有するアミン化合物は、1級又は2級アミンと、末端にフェノキシ基を有するハロアルキルエーテルとを加熱して反応させ、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム及びテトラアルキルアンモニウム等の強塩基の水溶液を添加した後、酢酸エチル及びクロロホルム等の有機溶剤で抽出することによって得ることもできる。
【0349】
(4)アンモニウム塩
塩基性化合物として、アンモニウム塩も適宜用いることができる。
アンモニウム塩のカチオンとしては、炭素数1〜18のアルキル基が置換したテトラアルキルアンモニウムカチオンが好ましく、テトラメチルアンモニウムカチオン、テトラエチルアンモニウムカチオン、テトラ(n−ブチル)アンモニウムカチオン、テトラ(n−ヘプチル)アンモニウムカチオン、テトラ(n−オクチル)アンモニウムカチオン、ジメチルヘキサデシルアンモニウムカチオン、ベンジルトリメチルカチオン等がより好ましく、テトラ(n−ブチル)アンモニウムカチオンがもっとも好ましい。
アンモニウム塩のアニオンとしては、例えば、ヒドロキシド、カルボキシレート、ハライド、スルホネート、ボレート及びフォスフェートが挙げられる。これらのうち、ヒドロキシド又はカルボキシレートが特に好ましい。
【0350】
ハライドとしては、クロライド、ブロマイド及びアイオダイドが特に好ましい。
スルホネートとしては、炭素数1〜20の有機スルホネートが特に好ましい。有機スルホネートとしては、例えば、炭素数1〜20のアルキルスルホネート及びアリールスルホネートが挙げられる。
【0351】
アルキルスルホネートに含まれるアルキル基は、置換基を有していてもよい。この置換基としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、アルコキシ基、アシル基及びアリール基が挙げられる。アルキルスルホネートとして、具体的には、メタンスルホネート、エタンスルホネート、ブタンスルホネート、ヘキサンスルホネート、オクタンスルホネート、ベンジルスルホネート、トリフルオロメタンスルホネート、ペンタフルオロエタンスルホネート及びノナフルオロブタンスルホネートが挙げられる。
【0352】
アリールスルホネートに含まれるアリール基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基及びアントリル基が挙げられる。これらアリール基は、置換基を有していてもよい。この置換基としては、例えば、炭素数1〜6の直鎖若しくは分岐鎖アルキル基及び炭素数3〜6のシクロアルキル基が好ましい。具体的には、例えば、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、i−ブチル、t−ブチル、n−ヘキシル及びシクロヘキシル基が好ましい。他の置換基としては、炭素数1〜6のアルコキシ基、ハロゲン原子、シアノ、ニトロ、アシル基及びアシロキシ基が挙げられる。
【0353】
カルボキシレートとしては、脂肪族カルボキシレートでも芳香族カルボキシレートでも良く、アセテート、ラクテート、ビルベート、トリフルオロアセテート、アダマンタンカルボキシレート、ヒドロキシアダマンタンカルボキシレート、ベンゾエート、ナフトエート、サリチレート、フタレート、フェノレート等が挙げられ、特にベンゾエート、ナフトエート、フェノレート等が好ましく、ベンゾエートが最も好ましい。
この場合、アンモニウム塩としては、テトラ(n−ブチル)アンモニウムベンゾエート、テトラ(n−ブチル)アンモニウムフェノレート等が好ましい。
ヒドロキシドの場合、このアンモニウム塩は、炭素数1〜8のテトラアルキルアンモニウムヒドロキシド(テトラメチルアンモニウムヒドロキシド及びテトラエチルアンモニウムヒドロキシド、テトラ−(n−ブチル)アンモニウムヒドロキシド等のテトラアルキルアンモニウムヒドロキシドであることが特に好ましい。
【0354】
(5)プロトンアクセプター性官能基を有し、かつ、活性光線又は放射線の照射により分解してプロトンアクセプター性が低下、消失、又はプロトンアクセプター性から酸性に変化した化合物を発生する化合物(PA)
本発明に係る組成物は、塩基性化合物として、プロトンアクセプター性官能基を有し、かつ、活性光線又は放射線の照射により分解してプロトンアクセプター性が低下、消失、又はプロトンアクセプター性から酸性に変化した化合物を発生する化合物〔以下、化合物(PA)ともいう〕を更に含んでいてもよい。
プロトンアクセプター性官能基を有し、かつ、活性光線又は放射線の照射により分解してプロトンアクセプター性が低下、消失、又はプロトンアクセプター性から酸性に変化した化合物を発生する化合物(PA)としては、特開2012−32762号公報の段落[0379]〜[0425](対応する米国特許出願公開第2012/0003590号明細書の[0386]〜[0435])の記載を参酌でき、これらの内容は本願明細書に組み込まれる。
【0355】
(6)グアニジン化合物
本発明の組成物は、下式で表される構造を有するグアニジン化合物を更に含有していてもよい。
【0356】
【化98】
【0357】
グアニジン化合物は3つの窒素によって共役酸のプラスの電荷が分散安定化されるため、強い塩基性を示す。
本発明のグアニジン化合物(A)の塩基性としては、共役酸のpKaが6.0以上であることが好ましく、7.0〜20.0であることが酸との中和反応性が高く、ラフネス特性に優れるため好ましく、8.0〜16.0であることがより好ましい。
【0358】
このような強い塩基性のため、酸の拡散性を抑制し、優れたパターン形状の形成に寄与することができる。
【0359】
なお、ここで「pKa」とは、水溶液中でのpKaのことを表し、例えば、化学便覧(II)(改訂4版、1993年、日本化学会編、丸善株式会社)に記載のものであり、この値が低いほど酸強度が大きいことを示している。水溶液中でのpKaは、具体的には、無限希釈水溶液を用い、25℃での酸解離定数を測定することにより実測することができ、また、下記ソフトウェアパッケージ1を用いて、ハメットの置換基定数及び公知文献値のデータベースに基づいた値を、計算により求めることもできる。本明細書中に記載したpKaの値は、全て、このソフトウェアパッケージを用いて計算により求めた値を示している。
【0360】
ソフトウェアパッケージ1:AdvancedChemistryDevelopment(ACD/Labs)SoftwareV8.14forSolaris(1994−2007ACD/Labs)。
【0361】
本発明において、logPとは、n−オクタノール/水分配係数(P)の対数値であり、広範囲の化合物に対し、その親水性/疎水性を特徴づけることのできる有効なパラメータである。一般的には実験によらず計算によって分配係数は求められ、本発明においては、CSChemDrawUltraVer.8.0softwarepackage(Crippen’sfragmentationmethod)により計算された値を示す。
【0362】
また、グアニジン化合物(A)のlogPが10以下であることが好ましい。上記値以下であることによりレジスト膜中に均一に含有させることができる。
【0363】
本発明におけるグアニジン化合物(A)のlogPは2〜10の範囲であることが好ましく、3〜8の範囲であることがより好ましく、4〜8の範囲であることが更に好ましい。
【0364】
また、本発明におけるグアニジン化合物(A)はグアニジン構造以外に窒素原子を有さないことが好ましい。
【0365】
以下、グアニジン化合物の具体例を示すが、これらに限定されるものではない。
【0366】
【化99】
【0367】
(7)窒素原子を有し、酸の作用により脱離する基を有する低分子化合物
本発明の組成物は、窒素原子を有し、酸の作用により脱離する基を有する低分子化合物(以下において、「低分子化合物(D)」又は「化合物(D)」ともいう)を含有することができる。低分子化合物(D)は、酸の作用により脱離する基が脱離した後は、塩基性を有することが好ましい。
低分子化合物(D)としては、特開2012−133331号公報の段落[0324]〜[0337]の記載を参酌でき、これらの内容は本願明細書に組み込まれる。
本発明において、低分子化合物(D)は、一種単独でも又は2種以上を混合しても使用することができる。
【0368】
その他、本発明に係る組成物に使用可能なものとして、特開2002−363146号公報の実施例で合成されている化合物、及び特開2007−298569号公報の段落0108に記載の化合物等が挙げられる。
【0369】
塩基性化合物として、感光性の塩基性化合物を用いてもよい。感光性の塩基性化合物としては、例えば、特表2003−524799号公報、及び、J.Photopolym.Sci&Tech.Vol.8,P.543−553(1995)等に記載の化合物を用いることができる。
【0370】
塩基性化合物の分子量は、通常は100〜1500であり、好ましくは150〜1300であり、より好ましくは200〜1000である。
【0371】
これらの塩基性化合物(D)は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わ
せて用いてもよい。
【0372】
本発明に係る組成物が含む塩基性化合物(D)の含有量は、組成物の全固形分を基準として、0.01〜8.0質量%であることが好ましく、0.1〜5.0質量%であることがより好ましく、0.2〜4.0質量%であることが特に好ましい。
【0373】
塩基性化合物(D)の酸発生剤に対するモル比は、好ましくは0.01〜10とし、より好ましくは0.05〜5とし、更に好ましくは0.1〜3とする。このモル比を過度に大きくすると、感度及び/又は解像度が低下する場合がある。このモル比を過度に小さくすると、露光と加熱(ポストベーク)との間において、パターンの細りを生ずる可能性がある。より好ましくは0.05〜5、更に好ましくは0.1〜3である。なお、上記モル比における酸発生剤とは、上記樹脂(A)の上記一般式(P)で表される繰り返し単位と上記樹脂(A)が更に含んでいてもよい酸発生剤との合計の量を基準とするものである。
【0374】
溶剤
本発明に係る組成物は、溶剤を含んでいることが好ましい。この溶剤は、(S1)プロピレングリコールモノアルキルエーテルカルボキシレートと、(S2)プロピレングリコールモノアルキルエーテル、乳酸エステル、酢酸エステル、アルコキシプロピオン酸エステル、鎖状ケトン、環状ケトン、ラクトン、及びアルキレンカーボネートからなる群より選択される少なくとも1つとの少なくとも一方を含んでいることが好ましい。なお、この溶剤は、成分(S1)及び(S2)以外の成分を更に含んでいてもよい。
【0375】
本発明者らは、このような溶剤と上述した樹脂とを組み合わせて用いると、組成物の塗布性が向上すると共に、現像欠陥数の少ないパターンが形成可能となることを見出している。その理由は必ずしも明らかではないが、本発明者らは、これら溶剤は、上述した樹脂の溶解性、沸点、及び粘度のバランスが良いため、組成物膜の膜厚のムラやスピンコート中の析出物の発生などを抑制できることに起因していると考えている。
【0376】
成分(S1)としては、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルプロピオネート、及び、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテートからなる群より選択される少なくとも1つが好ましく、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートが特に好ましい。
【0377】
成分(S2)としては、以下のものが好ましい。
プロピレングリコールモノアルキルエーテルとしては、プロピレングリコールモノメチルエーテル又はプロピレングリコールモノエチルエーテルが好ましい。
乳酸エステルとしては、乳酸エチル、乳酸ブチル、又は乳酸プロピルが好ましい。
酢酸エステルとしては、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、酢酸プロピル、酢酸イソアミル、蟻酸メチル、蟻酸エチル、蟻酸ブチル、蟻酸プロピル、又は酢酸3−メトキシブチルが好ましい。
アルコキシプロピオン酸エステルとしては、3−メトキシプロピオン酸メチル(MMP)、又は、3−エトキシプロピオン酸エチル(EEP)が好ましい。
鎖状ケトンとしては、1−オクタノン、2−オクタノン、1−ノナノン、2−ノナノン、アセトン、4−ヘプタノン、1−ヘキサノン、2−ヘキサノン、ジイソブチルケトン、フェニルアセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、アセチルアセトン、アセトニルアセトン、イオノン、ジアセトニルアルコール、アセチルカービノール、アセトフェノン、メチルナフチルケトン、又はメチルアミルケトンが好ましい。
環状ケトンとしては、メチルシクロヘキサノン、イソホロン、又はシクロヘキサノンが好ましい。
ラクトンとしては、γ−ブチロラクトンが好ましい。
アルキレンカーボネートとしては、プロピレンカーボネートが好ましい。
【0378】
成分(S2)としては、プロピレングリコールモノメチルエーテル、乳酸エチル、3−エトキシプロピオン酸エチル、メチルアミルケトン、シクロヘキサノン、酢酸ブチル、酢酸ペンチル、γ−ブチロラクトン又はプロピレンカーボネートがより好ましい。
【0379】
成分(S2)としては、引火点(以下、fpともいう)が37℃以上であるものを用いることが好ましい。このような成分(S2)としては、プロピレングリコールモノメチルエーテル(fp:47℃)、乳酸エチル(fp:53℃)、3−エトキシプロピオン酸エチル(fp:49℃)、メチルアミルケトン(fp:42℃)、シクロヘキサノン(fp:44℃)、酢酸ペンチル(fp:45℃)、γ−ブチロラクトン(fp:101℃)又はプロピレンカーボネート(fp:132℃)が好ましい。これらのうち、プロピレングリコールモノエチルエーテル、乳酸エチル、酢酸ペンチル、又はシクロヘキサノンが更に好ましく、プロピレングリコールモノエチルエーテル又は乳酸エチルが特に好ましい。なお、ここで「引火点」とは、東京化成工業株式会社又はシグマアルドリッチ社の試薬カタログに記載されている値を意味している。
【0380】
溶剤は、成分(S1)を含んでいることが好ましい。溶剤は、実質的に成分(S1)のみからなるか、又は、成分(S1)と他の成分との混合溶剤であることがより好ましい。後者の場合、溶剤は、成分(S1)と成分(S2)との双方を含んでいることが更に好ましい。
【0381】
成分(S1)と成分(S2)との質量比は、100:0乃至15:85の範囲内にあることが好ましく、100:0乃至40:60の範囲内にあることがより好ましく、100:0乃至60:40の範囲内にあることが更に好ましい。即ち、溶剤は、成分(S1)のみからなるか、又は、成分(S1)と成分(S2)との双方を含んでおり且つそれらの質量比が以下の通りであることが好ましい。即ち、後者の場合、成分(S2)に対する成分(S1)の質量比は、15/85以上であることが好ましく、40/60以上であることよりが好ましく、60/40以上であることが更に好ましい。このような構成を採用すると、現像欠陥数を更に減少させることが可能となる。
【0382】
なお、溶剤が成分(S1)と成分(S2)との双方を含んでいる場合、成分(S2)に対する成分(S1)の質量比は、例えば、99/1以下とする。
【0383】
上述した通り、溶剤は、成分(S1)及び(S2)以外の成分を更に含んでいてもよい。この場合、成分(S1)及び(S2)以外の成分の含有量は、溶剤の全量に対して、5質量%乃至30質量%の範囲内にあることが好ましい。
【0384】
組成物に占める溶剤の含有量は、全成分の固形分濃度が2〜30質量%となるように定めることが好ましく、3〜20質量%となるように定めることがより好ましい。こうすると、組成物の塗布性を更に向上させることができる。
【0385】
(E)疎水性樹脂
本発明の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物は、上記樹脂(A)とは別に疎水性樹脂(E)を有していてもよい。
上記疎水性樹脂(E)は、膜表面に偏在するために、フッ素原子を有する基、珪素原子を有する基、又は炭素数5以上の炭化水素基を含有することが好ましい。これらの基は樹脂の主鎖中に有していても、側鎖に置換していてもよい。以下に疎水性樹脂(E)の具体例を示す。
【0386】
【化100】
【0387】
【化101】
【0388】
【化102】
【0389】
なお、疎水性樹脂としてはこの他にも特開2011−248019号公報、特開2010−175859号公報、特開2012−032544号公報記載のものも好ましく用いることができる。
【0390】
(F)界面活性剤
本発明に係る組成物は、界面活性剤(F)を更に含んでいてもよい。界面活性剤を含有することにより、波長が250nm以下、特には220nm以下の露光光源を使用した場合に、良好な感度及び解像度で、密着性及び現像欠陥のより少ないパターンを形成することが可能となる。
界面活性剤としては、フッ素系及び/又はシリコン系界面活性剤を用いることが特に好ましい。
フッ素系及び/又はシリコン系界面活性剤としては、例えば、米国特許出願公開第2008/0248425号明細書の[0276]に記載の界面活性剤が挙げられる。また、エフトップEF301若しくはEF303(新秋田化成(株)製);フロラードFC430、431若しくは4430(住友スリーエム(株)製);メガファックF171、F173、F176、F189、F113、F110、F177、F120若しくはR08(DIC(株)製);サーフロンS−382、SC101、102、103、104、105若しくは106(旭硝子(株)製);トロイゾルS−366(トロイケミカル(株)製);GF−300若しくはGF−150(東亜合成化学(株)製)、サーフロンS−393(セイミケミカル(株)製);エフトップEF121、EF122A、EF122B、RF122C、EF125M、EF135M、EF351、EF352、EF801、EF802若しくはEF601((株)ジェムコ製);PF636、PF656、PF6320若しくはPF6520(OMNOVA社製);又は、FTX−204G、208G、218G、230G、204D、208D、212D、218D若しくは222D((株)ネオス製)を用いてもよい。なお、ポリシロキサンポリマーKP−341(信越化学工業(株)製)も、シリコン系界面活性剤として用いることができる。
【0391】
また、界面活性剤は、上記に示すような公知のものの他に、テロメリゼーション法(テロマー法ともいわれる)又はオリゴメリゼーション法(オリゴマー法ともいわれる)により製造されたフルオロ脂肪族化合物を用いて合成してもよい。具体的には、このフルオロ脂肪族化合物から導かれたフルオロ脂肪族基を備えた重合体を、界面活性剤として用いてもよい。このフルオロ脂肪族化合物は、例えば、特開2002−90991号公報に記載された方法によって合成することができる。
【0392】
フルオロ脂肪族基を有する重合体としては、フルオロ脂肪族基を有するモノマーと(ポリ(オキシアルキレン))アクリレート若しくはメタクリレート及び/又は(ポリ(オキシアルキレン))メタクリレートとの共重合体が好ましく、不規則に分布していても、ブロック共重合していてもよい。
【0393】
ポリ(オキシアルキレン)基としては、例えば、ポリ(オキシエチレン)基、ポリ(オキシプロピレン)基及びポリ(オキシブチレン)基が挙げられる。また、ポリ(オキシエチレンとオキシプロピレンとオキシエチレンとのブロック連結体)及びポリ(オキシエチレンとオキシプロピレンとのブロック連結体)等の、同じ鎖内に異なる鎖長のアルキレンを有するユニットであってもよい。
【0394】
さらに、フルオロ脂肪族基を有するモノマーと(ポリ(オキシアルキレン))アクリレート若しくはメタクリレートとの共重合体は、異なる2種以上のフルオロ脂肪族基を有するモノマー及び異なる2種以上の(ポリ(オキシアルキレン))アクリレート若しくはメタクリレート等を同時に共重合してなる3元系以上の共重合体であってもよい。
【0395】
例えば、市販の界面活性剤として、メガファックF178、F−470、F−473、F−475、F−476及びF−472(DIC(株)製)が挙げられる。さらに、C13基を有するアクリレート若しくはメタクリレートと(ポリ(オキシアルキレン))アクリレート若しくはメタクリレートとの共重合体、C13基を有するアクリレート若しくはメタクリレートと(ポリ(オキシエチレン))アクリレート若しくはメタクリレートと(ポリ(オキシプロピレン))アクリレート若しくはメタクリレートとの共重合体、C17基を有するアクリレート若しくはメタクリレートと(ポリ(オキシアルキレン))アクリレート若しくはメタクリレートとの共重合体、及び、C17基を有するアクリレート若しくはメタクリレートと(ポリ(オキシエチレン))アクリレート若しくはメタクリレートと(ポリ(オキシプロピレン))アクリレート若しくはメタクリレートとの共重合体等が挙げられる。
また、米国特許出願公開第2008/0248425号明細書の[0280]に記載されているフッ素系及び/又はシリコン系以外の界面活性剤を使用してもよい。
【0396】
これら界面活性剤は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0397】
本発明に係る組成物が界面活性剤を含んでいる場合、その含有量は、組成物の全固形分を基準として、好ましくは0〜2質量%、より好ましくは0.0001〜2質量%、更に好ましくは0.0005〜1質量%である。
【0398】
(G)その他の添加剤
本発明に係る組成物は、溶解阻止化合物、染料、可塑剤、光増感剤、光吸収剤、及び/又は現像液に対する溶解性を促進させる化合物(例えば、分子量1000以下のフェノール化合物、又はカルボキシ基を含んだ脂環族若しくは脂肪族化合物)を更に含んでいてもよい。
【0399】
本発明に係る組成物は、溶解阻止化合物を更に含んでいてもよい。ここで「溶解阻止化合物」とは、酸の作用により分解して有機系現像液中での溶解度が減少する、分子量3000以下の化合物である。
【0400】
この溶解阻止化合物としては、波長が220nm以下の光に対する透過性を低下させないため、Proceeding of SPIE,2724,355(1996)に記載されている酸分解性基を含むコール酸誘導体等の、酸分解性基を含有する脂環族又は脂肪族化合物が好ましい。この酸分解性基及び脂環構造としては、例えば、先に説明したのと同様のものが挙げられる。
【0401】
なお、本発明に係るレジスト組成物をKrFエキシマレーザーで露光するか又は電子線で照射する場合には、溶解阻止化合物としては、フェノール化合物のフェノール性ヒドロキシ基を酸分解基で置換した構造を含んだ化合物が好ましい。フェノール化合物としては、フェノール骨格を1〜9個含有するものが好ましく、2〜6個含有するものが更に好ましい。
【0402】
本発明に係る組成物が溶解阻止化合物を含んでいる場合、その含有量は、組成物の全固形分を基準として、好ましくは3〜50質量%であり、より好ましくは5〜40質量%である。
以下に、溶解阻止化合物の具体例を挙げる。
【0403】
【化103】
【0404】
分子量1000以下のフェノール化合物は、例えば、特開平4−122938号、特開平2−28531号、米国特許第4,916,210号、及び欧州特許第219294等に記載の方法を参考にして、容易に合成することができる。
【0405】
カルボキシ基を含んだ脂環族若しくは脂肪族化合物としては、例えば、コール酸、デオキシコール酸及びリトコール酸等のステロイド構造を含んだカルボン酸誘導体、アダマンタンカルボン酸誘導体、アダマンタンジカルボン酸、シクロヘキサンカルボン酸、並びにシクロヘキサンジカルボン酸が挙げられる。
【実施例】
【0406】
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明の内容はこれにより限定されるものではない。
【0407】
<A.樹脂>
〔合成例1:樹脂(P−1)の合成〕
ポリ(p−ヒドロキシスチレン)(VP−2500、日本曹達株式会社製)20.0gをプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)80.0gに溶解した。この溶液に、2−シクロヘキシルエチルビニルエーテル10.3g及びカンファースルホン酸10mgを加え、室温(25℃)で3時間撹拌した。84mgのトリエチルアミンを加え、しばらく撹拌した後、反応液を酢酸エチル100mLの入った分液ロートに移した。この有機層を蒸留水50mLで3回洗浄後、有機層をエバポレーターで濃縮した。得られたポリマーをアセトン300mLに溶解した後、ヘキサン3000gに滴下再沈して、沈殿をろ過することで、(P−1)を17.5g得た。
【0408】
【化104】
【0409】
〔合成例2:樹脂(P−11)の合成〕
p−アセトキシスチレン10.00gを酢酸エチル40gに溶解させ、0℃に冷却し、ナトリウムメトキシド(28質量%メタノール溶液)4.76gを30分かけて滴下して加え、室温で5時間撹拌した。酢酸エチルを加えて、有機相を蒸留水で3回洗浄した後、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、溶媒を留去して、p−ヒドロキシスチレン(下記式(1)で表される化合物、54質量%酢酸エチル溶液)13.17gを得た。得られたp−ヒドロキシスチレン(1)の54質量%酢酸エチル溶液6.66g(p−ヒドロキシスチレン(1)を3.6g含有)、下記式(2)で表される化合物(神戸天然物化学(株)製)14.3g、下記式(3)で表される化合物(ダイセル(株)製)2.2g及び重合開始剤V−601(和光純薬工業(株)製)2.3gをプロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)14.2gに溶解させた。反応容器中にPGME3.6gを入れ、窒素ガス雰囲気下、85℃で先程調整した溶液を4時間かけて滴下した。反応溶液を2時間加熱撹拌した後、室温まで放冷した。得られた反応溶液を、ヘキサン/酢酸エチル(8/2(質量比))の混合溶液889gに滴下再沈して、沈殿をろ過することで、(P−11)を14.9g得た。
【0410】
【化105】
【0411】
以下、合成例1及び2と同様の方法を用いて、樹脂P−2〜P−10および樹脂P−12〜P−33を合成した。
以下、樹脂P−1〜P−33のポリマー構造、重量平均分子量(Mw)、分散度(Mw/Mn)を示す。また、下記ポリマー構造の各繰り返し単位の組成比をモル比で示した。
【0412】
【化106】
【0413】
【化107】
【0414】
【化108】
【0415】
<比較用樹脂>
比較例1−3、1−4、2−3、及び、2−4においては、下記樹脂を使用した。樹脂の重量平均分子量(Mw)及び分散度(Mw/Mn)を以下に記す。また、樹脂の各繰り返し単位の組成比をモル比で示す。
【0416】
【化109】
【0417】
<B.光酸発生剤>
光酸発生剤としては先に挙げた酸発生剤z1〜z141から適宜選択して用いた。
【0418】
<C.架橋剤>
【0419】
〔架橋剤の合成〕
(C−1)の合成
1−〔α−メチル−α−(4−ヒドロキシフェニル)エチル〕−4−〔α,α−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エチル〕ベンゼン20g(本州化学工業(株)製Trisp−PA)を10質量%水酸化カリウム水溶液に加え、撹拌、溶解した。次にこの溶液を撹伴しながら、37質量%ホルマリン水溶液60mlを室温下で1時間かけて徐々に加えた。更に室温下で6時間撹伴した後、希硫酸水溶液に投入した。析出物をろ過し、十分水洗した後、メタノール30mlより再結晶することにより、下記構造のヒドロキシメチル基を有するフェノール誘導体〔C−1〕の白色粉末20gを得た。純度は92%であった(液体クロマトグラフィー法)。
【0420】
【化110】
【0421】
(C−2)の合成
上記合成例で得られたヒドロキシメチル基を有するフェノール誘導体〔C−1〕20gを1リットルのメタノールに加え、加熱撹拌し、溶解した。次に、この溶液に濃硫酸1mlを加え、12時間加熱還流した。反応終了後、反応液を冷却し、炭酸カリウム2gを加えた。この混合物を十分濃縮した後、酢酸エチル300mlを加えた。この溶液を水洗した後、濃縮乾固させることにより、下記構造のメトキシメチル基を有するフェノール誘導体〔C−2〕の白色固体22gを得た。純度は90%であった(液体クロマトグラフィー法)。
【0422】
【化111】
【0423】
更に、同様にして以下に示すフェノール誘導体を合成した。
【0424】
【化112】
【0425】
またその他の架橋剤に関しても、市販されているか、公知の方法により合成することができる。架橋剤としては、上記C−1〜C−8、下記C−9〜C−21から適宜選択して用いた。
【0426】
【化113】
【0427】
<塩基性化合物>
塩基性化合物としては、下記化合物(N−1)〜(N−11)の何れかを用いた。
【0428】
【化114】
【0429】
【化115】
【0430】
【化116】
【0431】
<界面活性剤>
界面活性剤としては、下記W−1〜W−4を用いた。
W−1:メガファックR08(DIC(株)製;フッ素及びシリコン系)
W−2:ポリシロキサンポリマーKP−341(信越化学工業(株)製;シリコン系)
W−3:トロイゾルS−366(トロイケミカル(株)製;フッ素系)
W−4:PF6320(OMNOVA社製;フッ素系)
【0432】
<塗布溶剤>
塗布溶剤としては、以下のものを用いた。
S1:プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)
S2:プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)
S3:乳酸エチル
S4:シクロヘキサノン
【0433】
<現像液>
現像液としては、以下のものを用いた。
SG−1:アニソール
SG−2:メチルアミルケトン(2−ヘプタノン)
SG−3:酢酸ブチル
TM−1:テトラメチルアンモニウムヒドロキシド2.38質量%水溶液(比較例用アルカリ現像液)
【0434】
<リンス液>
リンス液を用いる場合は、以下のものを用いた。
SR−1:2−ペンタノール
SR−2:1−ヘキサノール
SR−3:メチルイソブチルカルビノール
【0435】
〔実施例1−1〜1−36、比較例1−1〜1−4(電子線(EB)露光)〕
(1)感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物の塗液調製及び塗設
下表に示した組成を有する塗液組成物を0.1μm孔径のメンブレンフィルターで精密ろ過して、固形分濃度3.5質量%の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物(レジスト組成物)溶液を得た。
この感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物溶液を、予めヘキサメチルジシラザン(HMDS)処理を施した6インチSiウェハ上に東京エレクトロン製スピンコーターMark8を用いて塗布し、100℃、60秒間ホットプレート上で乾燥して、膜厚50nmのレジスト膜を得た。
【0436】
(2)EB露光及び現像
上記(1)で得られたレジスト膜が塗布されたウェハを、電子線描画装置((株)日立製作所製HL750、加速電圧50KeV)を用いて、パターン照射を行った。この際、1:1のラインアンドスペースが形成されるように描画を行った。電子線描画後、ホットプレート上で、110℃で60秒間加熱した後、下表に記載の有機系現像液を30秒間パドルして現像し、必要により、 下表に記載のリンス液で30秒間パドルしてリンスを行った。(リンス液の記載が無い実施例については、リンスを行っていないことを意味する。)4000rpmの回転数で30秒間ウェハを回転させた後、90℃で60秒間加熱を行うことにより、線幅50nmの1:1ラインアンドスペースパターンのレジストパターンを得た。
【0437】
(3)レジストパターンの評価
走査型電子顕微鏡((株)日立製作所製S−9220)を用いて、得られたレジストパターンを下記の方法で、感度、解像力を評価した。また、膜べり量も評価した。結果を下表に示す。
【0438】
(3−1)感度
線幅50nmの1:1ラインアンドスペースパターンを解像する時の照射エネルギーを感度(Eop)とした。この値が小さいほど性能が良好であることを示す。
【0439】
(3−2)解像力
前記Eopに於いて、分離している(1:1)のラインアンドスペースパターンの最小線幅を解像力とした。この値が小さいほど性能が良好であることを示す。
【0440】
(3−3)ラインウィズスラフネス(LWR)
ラインウィズスラフネスは、前記Eopに於いて、線幅50nmの1:1ラインアンドスペースパターンの長手方向0.5μmの任意の50点について、線幅を計測し、その標準偏差を求め、3σを算出した。値が小さいほど良好な性能であることを示す。
【0441】
(3−4)膜べり量
一連のプロセス完了後、残存するレジスト膜の膜厚を測定し、初期膜厚から残存膜厚を引いた値を膜減り量(nm)とした。なお、膜厚測定には光干渉式膜厚測定装置(ラムダエース、大日本スクリーン製造社製)を用いた。
【0442】
(3−5)露光ラチチュード(EL)
線幅が50nmのラインアンドスペース(ライン:スペース=1:1)のマスクパターンを再現する露光量を求め、これを最適露光量Eoptとした。次いで線幅が目的の値である50nmの±10%(即ち、45nm及び55nm)となるときの露光量を求めた。そして、次式で定義される露光ラチチュード(EL)を算出した。ELの値が大きいほど、露光量変化による性能変化が小さい。
[EL(%)]=[(線幅が55nmとなる露光量)−(線幅が45nmとなる露光量)]/Eopt×100
【0443】
(3−6)ドライエッチング耐性
上記(1)で得られたレジスト膜が塗布されたウェハを、電子線描画装置((株)日立製作所製HL750、加速電圧50KeV)を用いて全面照射を行った。電子線照射後、ホットプレート上で、110℃で60秒間加熱した後、下表に記載の有機系現像液を30秒間パドルして現像し、必要により、下表に記載のリンス液で30秒間パドルしてリンスを行った。4000rpmの回転数で30秒間ウェハを回転させた後、90℃で60秒間加熱を行うことにより、ドライエッチング評価用のレジスト膜を得た。
上記で得られたレジスト膜の初期膜厚(FT1、Å)を測定した。次いで、ドライエッチャー(日立ハイテクノロジー社製、U−621)を用いて、Cガスを供給しながら、30秒間エッチングを行った。その後、エッチング後に得られたレジスト膜の膜厚(FT2、Å)を測定した。そして、次式で定義されるドライエッチング速度(DE)を算出した。
〔ドライエッチング速度(DE、Å/sec)〕=(FT1−FT2)/30
【0444】
以下の基準に従いDEの優劣を評価した。DEの値が小さいほど、エッチングによる膜厚変化が小さいことを表し、性能良好である。
A・・・ドライエッチング速度 10Å/sec未満
B・・・ドライエッチング速度 10Å/sec以上12Å/sec未満
C・・・ドライエッチング速度 12Å/sec以上
【0445】
【表1】
【0446】
実施例1−1、1−6、1−8、1−9、1−10、1−18、1−19及び1−31は、それぞれ参考例1−1、1−6、1−8、1−9、1−10、1−18、1−19及び1−31に読み替えるものとする。
例えば、特許文献3では、KrF光源を用いての250nmハーフピッチの解像性でしか評価されていないのに対し、上記表から分かるように、本発明の実施例1−1〜1−36は、35nm以下という高解像性にて、高感度、高いLWR性能、膜べり低減性能、高いEL、及び、高いドライエッチング耐性を極めて高次元で同時に満足することができる。
【0447】
さらに詳しく見ると、まず、架橋剤を用いない比較例1−1に対し、架橋剤を用いた以外は成分が同じである実施例1−14は、高解像性、高感度、高いLWR性能、膜べり低減性能、高いEL、高いドライエッチング耐性をすべて備えていることが分かる。これは、露光部にて、樹脂が有する酸分解性基の脱保護反応によりカルボン酸基やフェノール性水酸基等の酸基が生成することに加え、架橋剤が架橋反応も起こすことができるため、露光部をより不溶化かつ硬膜化させることができるためと考えられる。架橋反応による露光部のさらなる不溶化は、膜ベリ低減やコントラスト向上による高解像度化、LWR性能の良化、及び、高感度化の鼎立に有効であると考えられ、架橋反応による露光部の硬膜化は、酸拡散抑制によるEL向上、倒れ防止による高解像度化、ドライエッチング耐性向上等の鼎立に有効であるためと考えられる。
さらに実施例1−23と同じ組成物をアルカリ現像した比較例1−2においてはそれらの性能は劣ることから、有機系現像液による現像を組み合わせることが前記効果の発現に重要であることが分かる。
【0448】
次に、ヒドロキシスチレン繰り返し単位等の一般式(I)で表される繰り返し単位を有さない樹脂(CP−2)を使用した比較例1−3に対し、他の成分は同じままさらにヒドロキシスチレン繰り返し単位を有する樹脂(P−13)を用いた実施例1−14は、高解像性、高感度、高いLWR性能、膜べり低減性能、高いEL、及び、高ドライエッチング耐性をすべて備えていることがわかる。これはヒドロキシスチレン繰り返し単位におけるフェノール性水酸基が架橋反応を受けやすいことに基づき、前記の不溶化や硬膜化による効果がより大きくなることと、さらに、露光によってフェノール構造から二次電子が多く発生し、結果、酸が多く発生して樹脂が有する酸分解性基の脱保護反応が早くかつ多く進行することにより、さらなる高感度、高いLWR性能、及び、高解像性を鼎立できる寄与があるものと考えられる。
なお、実施例1−7や実施例1−8とその他の実施例の比較から、その効果は、同じフェノール構造の中でも、ヒドロキシフェニルメタクリレート構造やヒドロキシフェニルメタクリルアミド構造よりもヒドロキシスチレン構造にてより顕著で好ましいこともわかる。
さらに、一般式(IV)で表される酸分解性基(例えば実施例1−19〜1−28、1−32〜1−34、1−36)や一般式(III−1)で表される酸分解性基(例えば実施例1−11〜1−13、1−16、1−30)を有する樹脂は、例えば実施例1−6〜1−10のように一般式(IV)や一般式(III−1)で表される酸分解性基を有さない樹脂に対し、解像性、感度、膜べり低減性能、及び、LWR性能が共に特に優れることもわかる。これは、樹脂における酸分解性基の脱保護活性化エネルギーが低く、少量の酸にて容易にカルボン酸を発生することができるためであると考えられる。
一方、脱保護エネルギーが大きく脱保護しにくい、特許文献3記載のブチルオキシカルボニル(BOC)基により保護されたヒドロキシスチレン繰り返し単位を有する樹脂(CP−1)を用いた比較例1−4は、本発明の実施例に比較しそれらの性能にて大きく劣ることが分かる。
その他、酸発生剤としては、発生する酸の大きさが大きい酸発生剤を使用するほど、好ましい性能となるといえる。
その他、架橋剤としては、ヒドロキシメチル基又はアルコキシメチル基を有する、フェノール誘導体又はウレア化合物が優れることもわかる。
【0449】
〔実施例2−1〜2−36、比較例2−1〜2―4(極紫外線(EUV)露光)〕
(4)感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物の塗液調製及び塗設
下表に示した組成を有する塗液組成物を0.05μm孔径のメンブレンフィルターで精密ろ過して、固形分濃度2.0質量%の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物(レジスト組成物)溶液を得た。
この感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物溶液を、予めヘキサメチルジシラザン(HMDS)処理を施した6インチSiウェハ上に東京エレクトロン製スピンコーターMark8を用いて塗布し、100℃、60秒間ホットプレート上で乾燥して、膜厚50nmのレジスト膜を得た。
【0450】
(5)EUV露光及び現像
上記(4)で得られたレジスト膜の塗布されたウェハを、EUV露光装置(Exitech社製 Micro Exposure Tool、NA0.3、Quadrupole、アウターシグマ0.68、インナーシグマ0.36)を用い、露光マスク(ライン/スペース=1/1)を使用して、パターン露光を行った。照射後、ホットプレート上で、110℃で60秒間加熱した後、下表に記載の有機系現像液を30秒間パドルして現像し、必要により、下表に記載のリンス液で30秒間パドルしてリンスを行った。(リンス液の記載が無い実施例については、リンスを行っていないことを意味する。)4000rpmの回転数で30秒間ウェハを回転させた後、90℃で60秒間加熱を行うことにより、線幅50nmの1:1ラインアンドスペースパターンのレジストパターンを得た。
【0451】
(6)レジストパターンの評価
走査型電子顕微鏡((株)日立製作所製S−9380II)を用いて、得られたレジストパターンを下記の方法で、感度、解像力を評価した。また、膜べり量も評価した。結果を下表に示す。
【0452】
(6−1)感度
線幅50nmの1:1ラインアンドスペースパターンを解像する時の露光量を感度(Eop)とした。この値が小さいほど性能が良好であることを示す。
【0453】
(6−2)解像力
前記Eopに於いて、分離している(1:1)のラインアンドスペースパターンの最小線幅を解像力とした。この値が小さいほど性能が良好であることを示す。
【0454】
(6−3)ラインウィズスラフネス(LWR)
ラインウィズスラフネスは、前記Eopに於いて、線幅50nmの1:1ラインアンドスペースパターンの長手方向0.5μmの任意の50点について、線幅を計測し、その標準偏差を求め、3σを算出した。値が小さいほど良好な性能であることを示す。
【0455】
(6−4)膜べり量
一連のプロセス完了後、残存するレジスト膜の膜厚を測定し、初期膜厚から残存膜厚を引いた値を膜減り量(nm)とした。なお、膜厚測定には光干渉式膜厚測定装置(ラムダエース、大日本スクリーン製造社製)を用いた。
【0456】
(6−5)露光ラチチュード(EL)
線幅が50nmのラインアンドスペース(ライン:スペース=1:1)のマスクパターンを再現する露光量を求め、これを最適露光量Eoptとした。次いで線幅が目的の値である50nmの±10%(即ち、45nm及び55nm)となるときの露光量を求めた。そして、次式で定義される露光ラチチュード(EL)を算出した。ELの値が大きいほど、露光量変化による性能変化が小さい。
[EL(%)]=[(線幅が55nmとなる露光量)−(線幅が45nmとなる露光量)]/Eopt×100
【0457】
(6−6)ドライエッチング耐性
上記(4)で得られたレジスト膜が塗布されたウェハを、EUV露光装置(Exitech社製 Micro Exposure Tool、NA0.3、Quadrupole、アウターシグマ0.68、インナーシグマ0.36)を用いて全面照射を行った。照射後、ホットプレート上で、110℃で60秒間加熱した後、下表に記載の有機系現像液を30秒間パドルして現像し、必要により、下表に記載のリンス液で30秒間パドルしてリンスを行った。4000rpmの回転数で30秒間ウェハを回転させた後、90℃で60秒間ベークを行なうことにより、ドライエッチング評価用のレジスト膜を得た。
上記で得られたレジスト膜の初期膜厚(FT1、Å)を測定した。次いで、ドライエッチャー(日立ハイテクノロジー社製、U−621)を用いて、Cガスを供給しながら、30秒間エッチングを行った。その後、エッチング後に得られたレジスト膜の膜厚(FT2、Å)を測定した。そして、次式で定義されるドライエッチング速度(DE)を算出した。
〔ドライエッチング速度(DE、Å/sec)〕=(FT1−FT2)/30
以下の基準に従いDEの優劣を評価した。DEの値が小さいほど、エッチングによる膜厚変化が小さいことを表し、性能良好である。
A・・・ドライエッチング速度 10Å/sec未満
B・・・ドライエッチング速度 10Å/sec以上12Å/sec未満
C・・・ドライエッチング速度 12Å/sec以上
【0458】
【表2】
【0459】
実施例2−1、2−6、2−8、2−9、2−10、2−18、2−19及び2−31は、それぞれ参考例2−1、2−6、2−8、2−9、2−10、2−18、2−19及び2−31に読み替えるものとする。
例えば、特許文献3では、KrF光源を用いての250nmハーフピッチの解像性でしか評価されていないのに対し、上記表から分かるように、本発明の実施例2−1〜2−36は、28nm以下という高解像性にて、高感度、高いLWR性能、膜べり低減性能、高いEL、及び、高ドライエッチング耐性を極めて高次元で同時に満足することができる。
さらに詳しく見ると、まず、架橋剤を用いない比較例2−1に対し、架橋剤を用いた以外は成分が同じである実施例2−14は、高解像性、高感度、高いLWR性能、膜べり低減性能、高いEL、高いドライエッチング耐性をすべて兼ね備えていることが分かる。これは、露光部にて、樹脂が有する酸分解性基の脱保護反応によりカルボン酸基やフェノール性水酸基等の酸基が生成することに加え、架橋剤が架橋反応も起こすことができるため、露光部をより不溶化かつ硬膜化させることができるためと考えられる。架橋反応による露光部のさらなる不溶化は、膜ベリ低減やコントラスト向上による高解像度化、LWR性能の良化、高感度化の鼎立に有効であると考えられ、架橋反応による露光部硬膜化は、酸拡散抑制によるEL向上、倒れ防止による高解像度化、ドライエッチング耐性向上等の鼎立に有効であるためと考えられる。
さらに実施例2−23と同じ組成物をアルカリ現像した比較例2−2においてはそれらの性能は劣ることから、有機系現像液による現像を組み合わせることが前記効果の発現に重要であることがわかる。
【0460】
次に、ヒドロキシスチレン繰り返し単位等の一般式(I)で表される繰り返し単位を有さない樹脂(CP−1)を使用した比較例2−3に対し、他の成分は同じままさらにヒドロキシスチレン繰り返し単位を有する樹脂(P−13)を用いた実施例2−14は、高解像性、高感度、高いLWR性能、膜べり低減性能、高いEL、及び、高ドライエッチング耐性を兼ね備えていることがわかる。これはヒドロキシスチレン繰り返し単位におけるフェノール性水酸基が架橋反応を受けやすいことに基づき、前記の不溶化や硬膜化による効果がより大きくなることと、さらに、露光によってフェノール構造から二次電子が多く発生し、結果、酸が多く発生して樹脂が有する酸分解性基の脱保護反応が早くかつ多く進行することにより、さらなる高感度、高いLWR性能、及び、高解像性を鼎立できる寄与があるものと考えられる。
なお、実施例2−7や実施例2−8とその他の実施例の比較から、その効果は同じフェノール部位の中でも、ヒドロキシフェニルメタクリレート構造やヒドロキシフェニルメタクリルアミド構造よりもヒドロキシスチレン構造にてより顕著で好ましいこともわかる。
さらに、一般式(IV)で表される酸分解性基(例えば実施例2−19〜2−28、2−32〜2−34、2−36)や一般式(III−1)で表される酸分解性基(例えば実施例2−11〜2−13、2−16、2−30)を有するポリマーは、例えば実施例2−6〜2−10のように一般式(IV)や一般式(III−1)で表される酸分解性基を有さないポリマーに対し、解像性、感度、膜べり低減性能、LWR性能が共に特に優れることもわかる。これは、酸分解性基の脱保護活性化エネルギーが低く、少量の酸にて容易にカルボン酸を発生することができるためであると考えられる。
一方、脱保護エネルギーが大きく脱保護しにくい、特許文献3記載のブチルオキシカルボニル(BOC)基により保護されたヒドロキシスチレン繰り返し単位を有する樹脂(CP−1)を用いた比較例2−4は、本発明の実施例に比較しそれらの性能にて大きく劣ることが分かる。
その他、酸発生剤としては、発生する酸の大きさが大きい酸発生剤を使用するほど、好ましい性能となるといえる。
その他、架橋剤としては、ヒドロキシメチル基又はアルコキシメチル基を有するフェノール誘導体又はウレア化合物が優れることもわかる。