特許第6247905号(P6247905)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6247905
(24)【登録日】2017年11月24日
(45)【発行日】2017年12月13日
(54)【発明の名称】ポリアミド樹脂組成物
(51)【国際特許分類】
   C08L 77/06 20060101AFI20171204BHJP
   C08K 3/22 20060101ALI20171204BHJP
【FI】
   C08L77/06
   C08K3/22
【請求項の数】14
【全頁数】28
(21)【出願番号】特願2013-233511(P2013-233511)
(22)【出願日】2013年11月11日
(65)【公開番号】特開2014-111756(P2014-111756A)
(43)【公開日】2014年6月19日
【審査請求日】2016年7月8日
(31)【優先権主張番号】特願2012-248847(P2012-248847)
(32)【優先日】2012年11月12日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001085
【氏名又は名称】株式会社クラレ
(72)【発明者】
【氏名】武田 英明
【審査官】 中西 聡
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−057975(JP,A)
【文献】 特表2008−540779(JP,A)
【文献】 特表2003−501538(JP,A)
【文献】 特開平05−194841(JP,A)
【文献】 特開2008−050479(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/093722(WO,A1)
【文献】 特開2011−074361(JP,A)
【文献】 特開2011−068874(JP,A)
【文献】 特開2011−057903(JP,A)
【文献】 特開2010−265380(JP,A)
【文献】 特開2010−248324(JP,A)
【文献】 特開2012−167285(JP,A)
【文献】 特開平09−012868(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/027562(WO,A1)
【文献】 米国特許第05965689(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00−101/14
C08K 3/00−13/08
C08G 69/00−69/50
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
数平均分子量2000以上のポリアミド(a−1)を95〜99.95質量%、数平均分子量500以上2000未満のポリアミドオリゴマー(a−2)を0.05〜5質量%の範囲で含有し、前記ポリアミド(a−1)および前記ポリアミドオリゴマー(a−2)を構成する全モノマー単位のうち25モル%以上が下記一般式(I)または一般式(II)で表される環状脂肪族ジカルボン酸に由来する構造単位であり、前記環状脂肪族ジカルボン酸に由来するトランス異性体構造単位の含有率が50〜85モル%であるポリアミド樹脂(A)およびポリアミド樹脂以外の結晶性熱可塑性樹脂(B)を含有し、
前記ポリアミド樹脂(A)において、前記ポリアミド(a−1)と前記ポリアミドオリゴマー(a−2)を構成する前記環状脂肪族ジカルボン酸に由来する構造単位が同一である、ポリアミド樹脂組成物。
【化1】

(式中、Xはカルボキシル基を表し、Zは炭素数3以上の脂環構造を表す。)
【化2】

(式中、XおよびZは前記定義の通りであり、RおよびRはそれぞれ独立して炭素数1以上のアルキレン基を表す。)
【請求項2】
前記ポリアミド樹脂(A)100質量部に対して前記結晶性熱可塑性樹脂(B)1〜150質量部を含有する、請求項1に記載のポリアミド樹脂組成物。
【請求項3】
前記ポリアミド樹脂(A)を構成する前記ポリアミド(a−1)および前記ポリアミドオリゴマー(a−2)の分子鎖の末端基の総量の10%以上が末端封止剤によって封止されている、請求項1または2に記載のポリアミド樹脂組成物。
【請求項4】
前記環状脂肪族ジカルボン酸の炭素数が5〜10である、請求項1〜3のいずれかに記載のポリアミド樹脂組成物。
【請求項5】
前記環状脂肪族ジカルボン酸が1,4−シクロヘキサンジカルボン酸である、請求項1〜のいずれかに記載のポリアミド樹脂組成物。
【請求項6】
前記ポリアミド(a−1)および前記ポリアミドオリゴマー(a−2)が、炭素数4〜12の脂肪族ジアミンに由来する構造単位を含有する、請求項1〜5のいずれかに記載のポリアミド樹脂組成物。
【請求項7】
前記脂肪族ジアミンが1,4−ブタンジアミン、1,5−ペンタンジアミン、1,6−ヘキサンジアミン、2−メチル−1,5−ペンタンジアミン、1,8−オクタンジアミン、1,9−ノナンジアミン、2−メチル−1,8−オクタンジアミン、1,10−デカンジアミン、1,11−ウンデカンジアミンおよび1,12−ドデカンジアミンからなる群より選ばれる少なくとも1種である、請求項6に記載のポリアミド樹脂組成物。
【請求項8】
1,4−シクロヘキサンジカルボン酸に由来する構造単位を25モル%以上含有し、かつ脂肪族ジアミンに由来する構造単位として1,9−ノナンジアミンおよび/または2−メチル−1,8−オクタンジアミンを25モル%以上含有する、請求項7に記載のポリアミド樹脂組成物。
【請求項9】
さらに、ラクタムおよび/またはアミノカルボン酸に由来する構造単位を含有する、請求項1〜8のいずれかに記載のポリアミド樹脂組成物。
【請求項10】
ポリアミド樹脂(A)100質量部に対してルイス塩基として作用する化合物(C)を0.1〜10質量部含有する、請求項1〜9のいずれかに記載のポリアミド樹脂組成物。
【請求項11】
前記ルイス塩基として作用する化合物(C)がアルカリ金属酸化物、アルカリ金属水酸化物、アルカリ土類金属酸化物、アルカリ土類金属水酸化物、酸化亜鉛および水酸化亜鉛からなる群より選ばれる少なくとも1種である、請求項10に記載のポリアミド樹脂組成物。
【請求項12】
前記ルイス塩基として作用する化合物(C)が酸化カリウム、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化亜鉛、水酸化カリウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウムおよび水酸化亜鉛からなる群より選ばれる少なくとも1種である、請求項11に記載のポリアミド樹脂組成物。
【請求項13】
さらに、ポリアミド樹脂(A)100質量部に対して無機充填材(D)を1〜200質量部含有する、請求項1〜12のいずれかに記載のポリアミド樹脂組成物。
【請求項14】
請求項1〜13のいずれかに記載のポリアミド樹脂組成物からなる成形品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリアミド樹脂組成物およびそれからなる成形品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来からポリアミド6(以下、PA6と略称する)、ポリアミド66(以下、PA66と略称する)などに代表されるポリアミドは、その優れた特性と溶融成形の容易さから、衣料用や産業資材用の繊維、または汎用のエンジニアリングプラスチックとして広く用いられている。一方、上記ポリアミドは耐熱性不足、吸水に伴う寸法安定性不良などの問題点が指摘されている。特に近年の表面実装技術(SMT)の進歩に伴うリフローハンダ耐熱性を必要とする電気・電子分野や、年々耐熱性への要求が高まる自動車のエンジンルーム部品などにおいては、従来のポリアミドの使用が困難となってきており、耐熱性、低吸水性、機械的特性、物理化学的特性に優れるポリアミドの開発が望まれてきた。さらに、ロングライフクーラントの用いられるラジエータータンク、リザーバータンクまたはヒータコアのような冷却系部品用途においては、ポリアミドの耐薬品性をさらに向上させることが望まれてきた。
【0003】
PA6およびPA66などの従来のポリアミドの前記課題を解決するために、剛直な環構造を主鎖に有する高融点ポリアミドの開発が進められてきた。例えば芳香環構造を有するポリアミドとして、テレフタル酸と1,6−ヘキサンジアミンからなるポリアミド(以下、PA6Tと略称する)を主成分とする半芳香族ポリアミドが種々提案されている。PA6Tは、融点が370℃付近にあって分解温度を超えるので、溶融重合、溶融成形が困難であるため、アジピン酸、イソフタル酸などのジカルボン酸成分、またはPA6などの脂肪族ポリアミドを共重合することにより、280〜320℃程度の実使用可能な温度領域にまで低融点化した組成で用いられる。このように第3成分を共重合することはポリマーの低融点化には有効だが、結晶化速度、到達結晶化度の低下を伴い、その結果、高温下での剛性、耐薬品性、加熱に伴う寸法安定性などの諸物性が低下するほか、成形サイクルの延長に伴う生産性の低下という問題がある。また、吸水に伴う寸法安定性などの諸物性に関して、芳香族基の導入により従来のPA6やPA66に比べ改善されてはいるが、実用レベルには依然として達していない。
【0004】
特許文献1には、テレフタル酸単位を60〜100モル%含む芳香族ジカルボン酸単位と炭素数6〜18の直鎖脂肪族アルキレンジアミン単位からなる半芳香族ポリアミドに、該ポリアミド100質量部に対して0.5〜200質量部の充填剤を含有してなるポリアミド組成物が、耐熱特性、機械的特性、化学的物理的特性および成形特性のいずれにも優れた性能を兼ね備えていることが記載されている。
【0005】
一方で、脂環構造を有するポリアミドとして、特許文献2には、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸と1,9−ノナンジアミンからなるポリアミド成分と、テレフタル酸と1,6−ヘキサンジアミンからなるポリアミド成分を重量比として25/75〜85/15となるように共重合して得られた共重合ポリアミドが開示されているが、融点が低く、耐熱性の面での改善効果は不十分である。特許文献3に記載されている1,4−シクロヘキサンジカルボン酸と炭素数6〜18の脂肪族ジアミンからなるポリアミドは、耐熱性、耐光性、靭性、低吸水性に優れるが、流動性の点でなお改善の余地がある。
【0006】
さらに、高融点ポリアミドの分野において、成形性と高融点ポリアミドの結晶性との関連性についての知見は十分ではなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特公昭64−11073号公報
【特許文献2】特公昭47−42397号公報
【特許文献3】特開平9−12868号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかして、本発明の目的は、耐熱性、低吸水性、高温下での剛性、耐薬品性、流動性、難燃性、離型性に優れ、80℃の金型で成形しても十分に結晶化が進行し、かつ製造時の金型汚染の少ないポリアミド樹脂組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明によれば、上記の目的は、
(1)数平均分子量2000以上のポリアミド(a−1)を95〜99.95質量%、数平均分子量500以上2000未満のポリアミドオリゴマー(a−2)を0.05〜5質量%の範囲で含有し、前記ポリアミド(a−1)および前記ポリアミドオリゴマー(a−2)を構成する全モノマー単位のうち25モル%以上が下記一般式(I)または一般式(II)で表される脂環式モノマーに由来する構造単位であり、前記脂環式モノマーに由来するトランス異性体構造単位の含有率が50〜85モル%であるポリアミド樹脂(A)およびポリアミド樹脂以外の結晶性熱可塑性樹脂(B)を含有するポリアミド樹脂組成物
【化1】
(式中、Xはカルボキシル基またはアミノ基を表し、Zは炭素数3以上の脂環構造を表す。)
【化2】
(式中、XおよびZは前記定義の通りであり、RおよびRはそれぞれ独立して炭素数1以上のアルキレン基を表す。);
(2)前記ポリアミド樹脂(A)100質量部に対して前記結晶性熱可塑性樹脂(B)1〜150質量部を含有する、上記(1)のポリアミド樹脂組成物;
(3)前記ポリアミド樹脂(A)を構成する前記ポリアミド(a−1)および前記ポリアミドオリゴマー(a−2)の分子鎖の末端基の総量の10%以上が末端封止剤によって封止されている、上記(1)または(2)のポリアミド樹脂組成物;
(4)前記脂環式モノマーが、前記一般式(I)または一般式(II)におけるXがカルボキシル基である環状脂肪族ジカルボン酸である、上記(1)〜(3)いずれかのポリアミド樹脂組成物;
(5)前記環状脂肪族ジカルボン酸が1,4−シクロヘキサンジカルボン酸である、上記(4)のポリアミド樹脂組成物;
(6)前記ポリアミド(a−1)および前記ポリアミドオリゴマー(a−2)が、炭素数4〜12の脂肪族ジアミンに由来する構造単位を含有する、上記(1)〜(5)のいずれかのポリアミド樹脂組成物;
(7)前記脂肪族ジアミンが1,4−ブタンジアミン、1,5−ペンタンジアミン、1,6−ヘキサンジアミン、2−メチル−1,5−ペンタンジアミン、1,8−オクタンジアミン、1,9−ノナンジアミン、2−メチル−1,8−オクタンジアミン、1,10−デカンジアミン、1,11−ウンデカンジアミンおよび1,12−ドデカンジアミンからなる群より選ばれる少なくとも1種である、上記(6)のポリアミド樹脂組成物;
(8)1,4−シクロヘキサンジカルボン酸に由来する構造単位を25モル%以上含有し、かつ脂肪族ジアミンに由来する構造単位として1,9−ノナンジアミンおよび/または2−メチル−1,8−オクタンジアミンを25モル%以上含有する、上記(7)のポリアミド樹脂組成物;
(9)さらに、ラクタムおよび/またはアミノカルボン酸に由来する構造単位を含有する、上記(1)〜(8)のいずれかのポリアミド樹脂組成物;
(10)ポリアミド樹脂(A)100質量部に対してルイス塩基として作用する化合物(C)を0.1〜10質量部含有する、上記(1)〜(9)のいずれかのポリアミド樹脂組成物;
(11)前記ルイス塩基として作用する化合物(C)がアルカリ金属酸化物、アルカリ金属水酸化物、アルカリ土類金属酸化物、アルカリ土類金属水酸化物、酸化亜鉛および水酸化亜鉛からなる群より選ばれる少なくとも1種である、上記(10)のポリアミド樹脂組成物;
(12)前記ルイス塩基として作用する化合物(C)が酸化カリウム、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化亜鉛、水酸化カリウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウムおよび水酸化亜鉛からなる群より選ばれる少なくとも1種である、上記(11)のポリアミド樹脂組成物;
(13)さらに、ポリアミド樹脂(A)100質量部に対して無機充填材(D)を1〜200質量部含有する、上記(1)〜(12)のいずれかのポリアミド樹脂組成物;および
(14)上記(1)〜(13)のいずれかのポリアミド樹脂組成物からなる成形品;
を提供することにより達成される。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、耐熱性、低吸水性、高温下での剛性、耐薬品性、流動性に優れ、80℃の金型で成形しても十分に結晶化が進行し、かつ製造時の金型汚染の少ないポリアミド樹脂組成物を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】参考例1で得られたポリアミド樹脂(A)のGPC溶出曲線(縦軸:シグナル強度、横軸:溶出時間)である。
図2】金型汚染性を評価する際に射出成形に用いた金型の正面図である。
図3】金型汚染性を評価する際に射出成形に用いた金型の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明について詳細に説明する。
【0013】
〔ポリアミド樹脂(A)〕
ポリアミド樹脂(A)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(以下、GPCと略称する)を用いて、後述する実施例での測定条件において得られる各試料の溶出曲線から、ベースラインと溶出曲線によって囲まれる数平均分子量2000以上から主ピークの検出が終了する分子量以下の領域の面積より算出できる、標準ポリメチルメタクリレート(標準PMMA)換算で求められる数平均分子量が2000以上のポリアミド(a−1)を95〜99.95質量%含有する。また、ポリアミド樹脂(A)は、前記ポリアミド(a−1)と同様の条件でのGPC測定によって求められる数平均分子量が500以上2000未満のポリアミドオリゴマー(a−2)を0.05〜5質量%含有する。
【0014】
ポリアミド(a−1)とポリアミドオリゴマー(a−2)の含有量(質量%)が上述の範囲であると、ポリアミド樹脂組成物の流動性が向上し、かつ80℃の金型で成形しても十分に結晶化が進行する。また、ポリアミドオリゴマー(a−2)に由来する金型汚染を防止できる。
【0015】
かかる効果が得られる理由は明確ではないが、例えば以下のように推定される。すなわち、溶融状態でのポリアミドオリゴマー(a−2)の分子鎖の運動性が高いために結晶化に有利に働くものと考えている。
【0016】
なお、本発明の効果をより一層奏することができる観点からは、ポリアミド(a−1)を97〜99.95質量%含有することが好ましく、98〜99.95質量%含有することがより好ましい。それに応じて、ポリアミドオリゴマー(a−2)を0.05〜3質量%含有することが好ましく、0.05〜2質量%含有することがより好ましい。
【0017】
ポリアミド樹脂(A)は、ポリアミド(a−1)およびポリアミドオリゴマー(a−2)を構成する全モノマー単位のうち25モル%以上が、下記一般式(I)または一般式(II)で表される脂環式モノマーに由来する構造単位であり、該脂環式モノマーに由来するトランス異性体構造単位の含有率が50〜85モル%である。
【0018】
【化3】
【0019】
【化4】
【0020】
(式中、X、Z、RおよびRは前記定義の通りである。)
【0021】
Zが表す炭素数3以上の脂環構造としては、例えばシクロプロピレン基、シクロブチレン基、シクロペンチレン基、シクロヘキシレン基、シクロヘプチレン基、シクロオクチレン基、シクロノニレン基、シクロデシレン基、シクロウンデシレン基、シクロドデシレン基、ジシクロペンチレン基、ジシクロヘキシレン基、トリシクロデカレン基、ノルボルニレン基、アダマンチレン基などの単環式または多環式のシクロアルキレン基などが挙げられる。
【0022】
およびRがそれぞれ表す炭素数1以上のアルキレン基としては、例えばメチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基、ヘキシレン基、ヘプチレン基、オクチレン基などの飽和脂肪族アルキレン基が挙げられる。これらは置換基を有していてもよい。かかる置換基としてはメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基などの好ましくは炭素数1〜4のアルキル基、ヒドロキシル基、ハロゲン基などが挙げられる。
【0023】
脂環式モノマーとしては、Xがカルボキシル基である環状脂肪族ジカルボン酸、Xがアミノ基である環状脂肪族ジアミンを単独で用いてもよいし、または併用してもよい。
【0024】
環状脂肪族ジカルボン酸としては、例えば炭素数が3〜10である環状脂肪族ジカルボン酸、好ましくは炭素数が5〜10である環状脂肪族ジカルボン酸が挙げられ、より具体的には1,4−シクロへキサンジカルボン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、および1,3−シクロペンタンジカルボン酸が挙げられる。
【0025】
環状脂肪族ジカルボン酸は、脂環骨格上にカルボキシル基以外の置換基を有していてもよい。置換基としては、例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基およびtert−ブチル基などの好ましくは炭素数1〜4のアルキル基などが挙げられる。
【0026】
環状脂肪族ジカルボン酸としては、耐熱性、流動性、高温下での剛性などの観点から、1,4−シクロへキサンジカルボン酸がより好ましい。なお、環状脂肪族ジカルボン酸は1種類を単独で用いてもよいし、2種類以上を併用してもよい。
【0027】
環状脂肪族ジカルボン酸にはトランス体とシス体の幾何異性体が存在し、一般式(I)の場合は環構造に対し二つのカルボキシル基が異なる側にある場合はトランス体、環構造に対し二つのカルボキシル基が同じ側にある場合はシス体となる。なお、一般式(II)の場合は二組のXとZのトランス異性体構造単位の割合の平均値を採った。
【0028】
例えば、環状脂肪族ジカルボン酸として1,4−シクロヘキサンジカルボン酸を用いる場合は、現代有機化学(第4版)上巻(K.P.C.Vollhardt,N.E.Schore,(株)化学同人,2004年4月1日発行,174頁)に記載されている通り、二つの置換基の両方がアキシアル位もしくはエクアトリアル位を占める場合にはトランス体、それぞれアキシアル位、エクアトリアル位を占める場合にはシス体となる。
【0029】
環状脂肪族ジカルボン酸は、トランス体とシス体のどちらか一方を用いてもよく、トランス体とシス体の任意の比率の混合物を用いてもよい。
【0030】
環状脂肪族ジカルボン酸として1,4−シクロヘキサンジカルボン酸を用いる場合には、高温で異性化しトランス体とシス体の比率が収斂することや、シス体の方がトランス体に比べてジアミンとの当量塩の水溶性が高いという観点から、重合に用いる際にトランス体/シス体比が、50/50〜0/100(モル比)であることが好ましく、40/60〜10/90であることがより好ましく、35/65〜15/85であることがさらに好ましい。なお、環状脂肪族ジカルボン酸のトランス体/シス体比(モル比)は、H−NMRにより求めることができる(後述する実施例参照)。
【0031】
環状脂肪族ジアミンとしては、例えば炭素数が3〜10、好ましくは炭素数5〜10である環状脂肪族ジアミンが挙げられ、具体的には1,4−シクロへキサンジアミン、1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1,4−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1−アミノ−3−アミノメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキサン、ビス(4−アミノシクロヘキシル)メタン、ビス(3−メチル−4−アミノシクロヘキシル)メタン、2,2−ビス(4−アミノシクロヘキシル)プロパン、ビス(アミノプロピル)ピペラジン、アミノエチルピペラジン、メチルシクロヘキサンジアミン、イソホロンジアミン、ノルボルナンジアミン、トリシクロデカンジアミンなどが挙げられる。
【0032】
環状脂肪族ジアミンは、脂環骨格上にアミノ基以外の置換基を有していてもよい。置換基としては、例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基などの好ましくは炭素数1〜4のアルキル基などが挙げられる。なお、環状脂肪族ジアミンは1種類を単独で用いてもよいし、2種類以上を併用してもよい。
【0033】
環状脂肪族ジアミンには、環状脂肪族ジカルボン酸と同様にトランス体とシス体の幾何異性体が存在し、一般式(I)の場合は環構造に対し二つのアミノ基が異なる側にある場合はトランス体、環構造に対し二つのアミノ基が同じ側にある場合はシス体となる。なお、一般式(II)の場合は二組のXとZのトランス異性体構造単位の割合の平均値を採った。
【0034】
例えば、環状脂肪族ジアミンとして1,4−シクロヘキサンジアミンを用いる場合は、現代有機化学(第4版)上巻(K.P.C.Vollhardt,N.E.Schore,(株)化学同人,2004年4月1日発行,174頁)に記載されている通り、二つの置換基の両方がアキシアル位もしくはエクアトリアル位を占める場合にはトランス体、それぞれアキシアル位、エクアトリアル位を占める場合にはシス体となる。
【0035】
環状脂肪族ジアミンは、トランス体とシス体のどちらか一方を用いてもよく、トランス体とシス体の任意の比率の混合物を用いてもよい。
【0036】
環状脂肪族ジアミンとして1,4−シクロヘキサンジアミンを用いる場合には、高温で異性化しトランス体とシス体の比率が収斂することや、シス体の方がトランス体に比べてジカルボン酸との当量塩の水溶性が高いという観点から、重合に用いる際にトランス体/シス体比が50/50〜0/100(モル比)であることが好ましく、40/60〜10/90であることがより好ましく、35/65〜15/85であることがさらに好ましい。なお、環状脂肪族ジアミンのトランス体/シス体比(モル比)はH−NMRにより求めることができる。
【0037】
ポリアミド樹脂(A)において、脂環式モノマーに由来する構造単位はトランス異性体構造単位およびシス異性体構造単位として存在する。かかるトランス異性体構造単位の含有率は、ポリアミド樹脂(A)を構成する脂環式モノマーに由来する構造単位の50〜85モル%であり、60〜85モル%が好ましく、70〜85モル%がより好ましく、80〜85モル%がさらに好ましい。トランス異性体構造単位の含有率が上記範囲内にあると、ポリアミド樹脂(A)の高温下での剛性、流動性に優れ、80℃の金型で成形しても十分に結晶化が進行する。これらは、脂環式モノマーとして1,4−シクロヘキサンジカルボン酸を用いたポリアミド樹脂(A)の場合に、特に顕著である。
【0038】
なお、本明細書中で、ポリアミド樹脂(A)の脂環式モノマーに由来する「トランス異性体構造単位」とは、一般式(I)の場合はアミド結合が脂環構造に対し異なる側に存在する構造単位を意味し、一般式(II)の場合はアミド結合とZが脂環構造に対し異なる側に存在する構造単位を意味する。
【0039】
ポリアミド樹脂(A)は、一般式(I)または一般式(II)で表される脂環式モノマーに由来する構造単位のほか、アミド結合を形成しうる他のモノマーに由来する構造単位を含有していてもよい。かかる他のモノマーとしては、例えば脂肪族ジカルボン酸および芳香族ジカルボン酸などのジカルボン酸、3価以上の多価カルボン酸、脂肪族ジアミンおよび芳香族ジアミンなどのジアミン、3価以上の多価アミン、ラクタム、アミノカルボン酸が挙げられ、これらは1種類を単独で用いてもよいし、2種類以上を併用してもよい。
【0040】
脂肪族ジカルボン酸としては、例えばシュウ酸、マロン酸、ジメチルマロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、2−メチルアジピン酸、ピメリン酸、2,2−ジメチルグルタル酸、スペリン酸、3,3−ジエチルコハク酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸、トリデカン二酸、テトラデカン二酸、ペンタデカン二酸、ヘキサデカン二酸、ヘプタデカン二酸、オクタデカン二酸、ノナデカン二酸、エイコサン二酸、ダイマー酸などの炭素数3〜20の直鎖または分岐状飽和脂肪族ジカルボン酸が挙げられる。
【0041】
芳香族ジカルボン酸としては、例えばテレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、2,7−ナフタレンジカルボン酸、1,4−フェニレンジオキシジ酢酸、1,3−フェニレンジオキシジ酢酸、ジフェン酸、4,4’−オキシジ安息香酸、ジフェニルメタン−4,4’−ジカルボン酸、ジフェニルスルホン−4,4’−ジカルボン酸、4,4’−ビフェニルジカルボン酸などが挙げられる。3価以上の多価カルボン酸としては、例えばトリメリット酸、トリメシン酸、ピロメリット酸などが挙げられる。
【0042】
脂肪族ジアミンとしては、例えばエチレンジアミン、1,3−プロパンジアミン、1,4−ブタンジアミン、1,5−ペンタンジアミン、1,6−ヘキサンジアミン、1,7−ヘプタンジアミン、1,8−オクタンジアミン、1,9−ノナンジアミン、1,10−デカンジアミン、1,11−ウンデカンジアミン、1,12−ドデカンジアミン、1,13−トリデカンジアミン、1,14−テトラデカンジアミン、1,15−ペンタデカンジアミン、1,16−ヘキサデカンジアミン、1,17−ヘプタデカンジアミン、1,18−オクタデカンジアミン、1,19−ノナデカンジアミン、1,20−エイコサデカンジアミンなどの直鎖状飽和脂肪族ジアミン;1,2−プロパンジアミン、1−ブチル−1,2−エタンジアミン、1,1−ジメチル−1,4−ブタンジアミン、1−エチル−1,4−ブタンジアミン、1,2−ジメチル−1,4−ブタンジアミン、1,3−ジメチル−1,4−ブタンジアミン、1,4−ジメチル−1,4−ブタンジアミン、2,3−ジメチル−1,4−ブタンジアミン、2−メチル−1,5−ペンタンジアミン、3−メチル−1,5−ペンタンジアミン、2,5−ジメチル−1,6−ヘキサンジアミン、2,4−ジメチル−1,6−ヘキサンジアミン、3,3−ジメチル−1,6−ヘキサンジアミン、2,2−ジメチル−1,6−ヘキサンジアミン、2,2,4−トリメチル−1,6−ヘキサンジアミン、2,4,4−トリメチル−1,6−ヘキサンジアミン、2,4−ジエチル−1,6−ヘキサンジアミン、2,2−ジメチル−1,7−ヘプタンジアミン、2,3−ジメチル−1,7−ヘプタンジアミン、2,4−ジメチル−1,7−ヘプタンジアミン、2,5−ジメチル−1,7−ヘプタンジアミン、2−メチル−1,8−オクタンジアミン、3−メチル−1,8−オクタンジアミン、4−メチル−1,8−オクタンジアミン、1,3−ジメチル−1,8−オクタンジアミン、1,4−ジメチル−1,8−オクタンジアミン、2,4−ジメチル−1,8−オクタンジアミン、3,4−ジメチル−1,8−オクタンジアミン、4,5−ジメチル−1,8−オクタンジアミン、2,2−ジメチル−1,8−オクタンジアミン、3,3−ジメチル−1,8−オクタンジアミン、4,4−ジメチル−1,8−オクタンジアミン、5−メチル−1,9−ノナンジアミン、3,7−ジメチル−1,10−デカンジアミン、7,8−ジメチル−1,10−デカンジアミンなどの分岐状飽和脂肪族ジアミンが挙げられる。
【0043】
芳香族ジアミンとしては、例えばメタキシリレンジアミン、パラキシリレンジアミンなどが挙げられる。3価以上の多価アミンとしては、例えばビスヘキサメチレントリアミンなどが挙げられる。
【0044】
ラクタムとしては、例えばε−カプロラクタム、ω−ラウロラクタム、ブチロラクタム、ピバロラクタム、カプリロラクタム、エナントラクタム、ウンデカノラクタム、ラウロラクタム(ドデカノラクタム)などが挙げられ、中でもε−カプロラクタム、ω−ラウロラクタムが好ましい。また、アミノカルボン酸としては、α,ω−アミノカルボン酸などが挙げられ、例えば6−アミノカプロン酸、11−アミノウンデカン酸、12−アミノドデカン酸などのω位がアミノ基で置換された炭素数4〜14の飽和脂肪族アミノカルボン酸、パラアミノメチル安息香酸などが挙げられる。ラクタムおよび/またはアミノカルボン酸単位を有している場合、ポリアミド樹脂(A)を含有するポリアミド樹脂組成物の靭性を向上させる作用がある。
【0045】
ポリアミド樹脂(A)は、耐熱性、低吸水性、流動性の観点から、ポリアミド(a−1)およびポリアミドオリゴマー(a−2)を構成するモノマー単位として、炭素数4〜12の脂肪族ジアミンに由来する構造単位を含有することが好ましい。炭素数が4〜12の脂肪族ジアミンに由来する構造単位としては、1,4−ブタンジアミン、1,5−ペンタンジアミン、1,6−ヘキサンジアミン、2−メチル−1,5−ペンタンジアミン、1,8−オクタンジアミン、1,9−ノナンジアミン、2−メチル−1,8−オクタンジアミン、1,10−デカンジアミン、1,11−ウンデカンジアミン、1,12−ドデカンジアミンのいずれか1種以上であることが好ましく、1,9−ノナンジアミンおよび/または2−メチル−1,8−オクタンジアミンに由来する構造単位を含有することがより好ましく、ポリアミド樹脂(A)を構成する脂肪族ジアミンに由来する構造単位として1,9−ノナンジアミンおよび/または2−メチル−1,8−オクタンジアミンに由来する構造単位を25モル%以上含有することがさらに好ましい。1,9−ノナンジアミンと2−メチル−1,8−オクタンジアミンを併用する場合には、1,9−ノナンジアミン:2−メチル−1,8−オクタンジアミン=99:1〜1:99(モル比)であることが好ましく、95:5〜50:50であることがより好ましい。
【0046】
中でも、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸に由来する構造単位を25モル%以上含有し、かつ脂肪族ジアミンに由来する構造単位として1,9−ノナンジアミンおよび/または2−メチル−1,8−オクタンジアミンに由来する構造単位を25モル%以上含有するポリアミド樹脂(A)を含有するポリアミド樹脂組成物は、耐熱性、低吸水性、流動性に特に優れる。
【0047】
脂環式モノマーとして1,4−シクロヘキサンジカルボン酸や1,4−シクロヘキサンジアミンを用いる場合には、トランス異性体構造単位の含有率が高い方が得られるポリアミド樹脂(A)の融点が成形するにあたり好ましくなることから、トランス異性体構造単位の含有率としては50〜100モル%が好ましく、50〜90モル%がより好ましく、50〜85モル%であることがより好ましく、60〜85モル%がさらに好ましく、70〜85モル%が特に好ましく、80〜85モル%が最も好ましい。
【0048】
ポリアミド樹脂(A)において、ポリアミド(a−1)とポリアミドオリゴマー(a−2)を構成する脂環式モノマーに由来する構造単位は、同一であっても異なっていてもよいが、ポリアミド樹脂組成物の80℃の金型における成形性の観点から、同一であることが好ましい。
【0049】
ポリアミド樹脂(A)は、構成成分であるポリアミド(a−1)およびポリアミドオリゴマー(a−2)の分子鎖の末端基の総量の10%以上が末端封止剤により封止されていると、溶融成形性などの物性がより優れたものとなる。
【0050】
ここで、末端封止率は、ポリアミド樹脂(A)の構成成分であるポリアミド(a−1)およびポリアミドオリゴマー(a−2)の分子鎖の末端のカルボキシル基、末端のアミノ基および末端封止剤によって封止された末端基の数を、例えばH−NMRにより、各末端基に対応する特性シグナルの積分値に基づいてそれぞれ測定し、算出できる(後述する実施例参照)。
【0051】
末端封止剤としては、アミノ基またはカルボキシル基との反応性を有する単官能性の化合物であれば特に制限はなく、モノカルボン酸、モノアミン、酸無水物、モノイソシアネート、モノ酸ハロゲン化物、モノエステル類、モノアルコール類などが挙げられる。中でも反応性および封止末端の安定性などの点から、モノカルボン酸またはモノアミンが好ましく、取扱いの容易さなどの点から、モノカルボン酸がより好ましい。
【0052】
前記モノカルボン酸としては、例えば酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、カプリル酸、ラウリン酸、トリデカン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ピバリン酸、イソ酪酸などの脂肪族モノカルボン酸;シクロヘキサンカルボン酸などの脂環式モノカルボン酸;安息香酸、トルイル酸、α−ナフタレンカルボン酸、β−ナフタレンカルボン酸、メチルナフタレンカルボン酸、フェニル酢酸などの芳香族モノカルボン酸;これらの任意の混合物などが挙げられる。中でも、反応性、封止末端の安定性、価格などの点から、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、カプリル酸、ラウリン酸、トリデカン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、シクロへキサンカルボン酸、安息香酸が好ましい。
【0053】
末端封止剤は、重合時に予め末端封止剤を添加しておく方法、重合中に添加する方法、溶融混練や成形工程において添加する方法などのいずれで添加してもよく、どの方法においても末端封止剤としての機能を果たす。
【0054】
ポリアミド樹脂(A)は、濃硫酸中の試料濃度0.2g/dL、30℃で測定したηinhが0.4〜3.0dL/gの範囲内であることが好ましく、0.5〜2.0dL/gの範囲内であることがより好ましく、0.6〜1.8dL/gの範囲内であることがさらに好ましい。ηinhが上記の範囲内のポリアミド樹脂(A)を用いると、得られるポリアミド樹脂組成物の耐熱性、高温下での剛性などがより優れる。
【0055】
ポリアミド樹脂(A)の製造方法としては、数平均分子量および分子量分布の異なるポリアミドを製造した後に混合し、ポリアミド(a−1)とポリアミドオリゴマー(a−2)の含有量(質量%)が本発明の規定する範囲になるよう、適宜調整する方法が挙げられる。前記ポリアミドは、公知の方法、例えばジカルボン酸とジアミンを原料とする溶融重合法、固相重合法、溶融押出重合法などの方法により製造できる。
【0056】
混合方法としては、例えば前記した数平均分子量および分子量分布の異なるポリアミドをドライブレンドし、溶融混練装置へ同時にまたは別々に投入する方法が挙げられる。
【0057】
ポリアミド樹脂(A)の別の製造方法として、ポリアミド樹脂(A)を製造する際に適当な重合条件を選択することによって、ポリアミド(a−1)とポリアミドオリゴマー(a−2)の含有量(質量%)が本発明の規定する範囲になるように重合する方法が挙げられる。適当な重合条件としては、例えばまずポリアミド樹脂(A)を構成するジカルボン酸成分、ジアミン成分、必要に応じて触媒および末端封止剤を一括して添加してナイロン塩を製造した後、200〜260℃の温度において加熱することで、好ましくは含水率10〜40%のプレポリマーを含有する溶液を得、その溶液をさらに100〜150℃の雰囲気下へ噴霧することで、濃硫酸中の試料濃度0.2g/dL、30℃におけるηinhが0.1〜0.6dL/gの粉末状のプレポリマーを得る。そして、さらに固相重合するか、あるいは押出機を用いて溶融重合する方法が挙げられる。
【0058】
触媒としては、例えばリン酸、亜リン酸、次亜リン酸、それらの塩またはエステルが挙げられ、具体的には、リン酸、亜リン酸または次亜リン酸とカリウム、ナトリウム、マグネシウム、バナジウム、カルシウム、亜鉛、コバルト、マンガン、錫、タングステン、ゲルマニウム、チタン、アンチモンなどの金属との塩;リン酸、亜リン酸または次亜リン酸のアンモニウム塩;リン酸、亜リン酸または次亜リン酸のエチルエステル、イソプロピルエステル、ブチルエステル、ヘキシルエステル、イソデシルエステル、オクタデシルエステル、デシルエステル、ステアリルエステル、フェニルエステルなどが挙げられる。ここで、プレポリマーのηinhが0.1〜0.6dL/gの範囲内であると、後の重合の段階においてカルボキシル基とアミノ基のモルバランスのずれや重合速度の低下が少なく、各種物性に優れたポリアミド樹脂(A)が得られる。
【0059】
なお、プレポリマーを得た後の重合を固相重合で行う場合、不活性ガス雰囲気下または不活性ガス流通下もしくは減圧下で行うことが好ましく、重合温度が200℃以上〜ポリアミドの融点よりも20℃低い温度の範囲内であり、重合時間が1〜8時間であれば、重合速度が大きく、生産性に優れ、着色やゲル化を有効に抑制することができると共に、ポリアミド(a−1)とポリアミドオリゴマー(a−2)の含有量(質量%)を本発明の規定する範囲に調整することが容易となる。一方、プレポリマーを得た後の重合を溶融押出機を用いて行う場合、重合温度としては370℃以下であり、重合時間が5〜60分であることが好ましい。かかる条件で重合すると、ポリアミドの分解がほとんどなく、劣化の無いポリアミド樹脂(A)が得られると共に、ポリアミド(a−1)とポリアミドオリゴマー(a−2)の含有量(質量%)を本発明の規定する範囲に調整することが容易となる。
【0060】
ポリアミド樹脂(A)を構成するポリアミド(a−1)とポリアミドオリゴマー(a−2)の含有量はGPCを用いて、後述する実施例での測定条件における溶出曲線より求める。GPC測定の際にポリアミド樹脂(A)またはポリアミド樹脂組成物中に、例えばポリアミド樹脂(A)を溶解させる溶媒に可溶である他の成分が含有される場合は、ポリアミド樹脂(A)は不溶だが該他の成分は可溶な溶媒を用いて、該他の成分を抽出して除去した後、GPC測定を行えばよい。また、例えばポリアミド樹脂(A)を溶解させる溶媒に不溶であるルイス塩基として作用する化合物(C)などは、ポリアミド樹脂組成物をポリアミド樹脂(A)を溶解させる溶媒に溶解させ、次いでろ過して不溶物を除去した後、GPC測定を行えばよい。
【0061】
〔ポリアミド樹脂以外の結晶性熱可塑性樹脂(B)〕
本発明で用いるポリアミド樹脂以外の結晶性熱可塑性樹脂(B)としては、ポリアミド樹脂以外の結晶性熱可塑性樹脂であれば特に制限はなく、公知のものを使用できる。結晶性熱可塑性樹脂(B)としては、例えばポリエステル、ポリアリールケトン、ポリフェニレンスルフィド、シンジオタクチックポリスチレンなどが挙げられる。
【0062】
<ポリエステル>
上記ポリエステルとは、熱可塑性であって、且つ芳香環を重合体の連鎖単位に有するポリエステルであり、好ましくは、芳香族ジカルボン酸(およびそのエステル形成性誘導体)とジオール(およびそのエステル形成性誘導体)を主原料とする縮合反応により得られる重合体および共重合体である。
【0063】
芳香族ジカルボン酸としては、例えばテレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、2,7−ナフタレンジカルボン酸、1,5−ナフタレンジカルボン酸、ビス(p−カルボキシフェニル)メタン、アントラセンジカルボン酸、4,4’−ジフェニルジカルボン酸、4,4’−ジフェニルエーテルカルボン酸、1,2−ビス(p−カルボキシフェノキシ)エタン、およびそれらのエステル形成性誘導体が挙げられる。なお、ポリエステル中30モル%以下であれば、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、ドデカンジオン酸、ダイマー酸などの脂肪族ジカルボン酸;1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸などの環状脂肪族カルボン酸を含んでいてもよい。
ジオールとしては、例えば炭素数2〜10の脂肪族ジオールが挙げられ、具体的にはエチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、1,5−ペンタングリコール、デカメチレングリコール、3−メチル−1,3−プロペンジオール、ネオペンチルグリコール、シクロヘキサンジメタノールおよびシクロヘキサンジオール等が挙げられる。
【0064】
ポリエステルとしては、上記の芳香族ジカルボン酸とジオールを主原料とする縮合反応により得られる重合体を用いることができるが、中でも、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリエチレン−1,2−ビス(フェノキシ)エタン−4,4’−ジカルボキシレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレートおよびポリ−1,4−シクロヘキサンジメチレンテレフタレートといった重合ポリエステル、並びにポリエチレンテレフタレート/イソフタレート、ポリブチレンテレフタレート/イソフタレート、ポリブチレンテレフタレート/セバケート、ポリブチレンテレフタレート/デカンジカルボキシレート、およびポリ−1,4−シクロヘキサンジメチレンテレフタレート/イソフタレートといった共重合ポリエステルが好ましく、耐熱性を向上させる観点から、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートおよびポリブチレンナフタレートがより好ましく、ポリエチレンナフタレートがさらに好ましい。なお、これらは1種類を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0065】
<ポリアリールケトン>
上記ポリアリールケトンとは、その構造単位に芳香環、エーテル結合およびカルボニル基を含有する熱可塑性樹脂である。その代表例として、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトンおよびポリエーテルケトンケトン等が挙げられる。また、本実施の形態の主旨を超えない範囲でビフェニル構造やスルホニル基等の共重合可能な他の単量体単位を含むものであってもよい。本実施の形態においては、下記一般式(III)で表される繰り返し単位を有するポリエーテルエーテルケトンが好適に使用される。
【0066】
【化5】
【0067】
(式中、Arはアリーレン基を示す。)
前記アリーレン基として、以下に制限されないが、例えば、p−フェニレン基、m−フェニレン基、置換フェニレン基(かかる置換基として、好ましくは炭素数1〜10のアルキル基および/またはフェニル基である。)、p,p’−ジフェニレンスルホン基、p,p’−ビフェニレン基、p,p’−ジフェニレンカルボニル基、ナフチレン基などが挙げられる。
【0068】
上記一般式(III)で表される繰り返し単位を有するポリエーテルエーテルケトンの具体例は、特開昭59−115353号公報、特開昭59−187054号公報、特表昭61−500023号公報、米国特許第5110880号公報などの他、J.E.Harris and L.M.Robeson,J.Appl.Polym.Sci.,35,1877−1891(1988)、G.Crevecoeur and G.Groeninckx,Macronolecules,24,1190−1195(1990)、Benjamin S.Hsiao and Bryan B.Sauer,J.Polym.Sci.,Polym.Phys.Ed.,31,901−915(1993)等の文献に記載されている。また、上記ポリエーテルエーテルケトンの市販品としては、例えばビクトレックス社製の「PEEK151G」、「PEEK381G」、「PEEK450G」、ソルベイアドバンストポリマーズ社製の「キータスパイアKT−820NT」、「キータスパイアKT−880NT」が挙げられる。これらのポリアリールケトンは1種類を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0069】
<ポリフェニレンスルフィド>
上記ポリフェニレンスルフィドは、下記一般式(IV)で示されるアリーレンスルフィドの繰り返し単位を、好ましくは50モル%以上、より好ましくは70モル%以上、さらに好ましくは90モル%以上含有する重合体である。
【0070】
【化6】
【0071】
(式中、Arはアリーレン基を示す。)
前記アリーレン基として、以下に制限されないが、例えば、p−フェニレン基、m−フェニレン基、置換フェニレン基(かかる置換基として、好ましくは炭素数1〜10のアルキル基及び/又はフェニル基である。)、p,p’−ジフェニレンスルホン基、p,p’−ビフェニレン基、p,p’−ジフェニレンカルボニル基、ナフチレン基などが挙げられる。
【0072】
なお、ポリフェニレンスルフィドは、構成単位であるアリーレン基が1種であるホモポリマーであってもよいし、加工性や耐熱性の観点から、2種以上の異なるアリーレン基を混合して得られるコポリマーであってもよい。中でも、加工性および耐熱性に優れ、且つ工業上入手が容易であるという観点から、主な構成要素として、p−フェニレンスルフィドの繰り返し単位を有するポリフェニレンスルフィドが好ましい。
【0073】
ポリフェニレンスルフィドの製造方法としては、例えばハロゲン置換芳香族化合物(例えばp−ジクロルベンゼン)を硫黄および炭酸ソーダの存在下で重合させる方法、極性溶媒中で重合させる方法、またはp−クロルチオフェノールを自己縮合させる方法などが挙げられる。
【0074】
これらの製造方法は公知である。例えば米国特許第2513188号明細書、特公昭44−27671号公報、特公昭45−3368号公報、特公昭52−12240号公報、特開昭61−225217号、米国特許第3274165号明細書、特公昭46−27255号公報、ベルギー特許第29437号明細書および特開平5−222196号公報などに記載された方法、並びにこれらの文献に開示されている先行技術の方法を用いて、ポリフェニレンスルフィドを得ることができる。上記した重合方法により得られるポリフェニレンスルフィドは通常、リニア型ポリフェニレンスルフィドである。かかるポリフェニレンスルフィドを重合した後、さらに、酸素の存在下でポリフェニレンスルフィドの融点以下の温度(例えば200〜250℃)で加熱処理し、酸化架橋を促進する。このようにして、ポリマー分子量および粘度を適度に高めたものは、架橋型ポリフェニレンスルフィドとして分類される。なお、ここで分類される上記の架橋型ポリフェニレンスルフィドには、その架橋程度を微少に留めた半架橋型(部分架橋型)ポリフェニレンスルフィドも含まれる。
【0075】
ポリフェニレンスルフィドとして、上記したリニア型ポリフェニレンスルフィドおよび/または架橋型ポリフェニレンスルフィドを用いることができる。上記のポリフェニレンスルフィドの剪断速度100sec-1における300℃の溶融粘度は、好ましくは10〜200Pa・sec、より好ましくは10〜150Pa・sec、さらに好ましくは10〜120Pa・secである。前記溶融粘度が10Pa・sec以上であることにより、機械的物性に優れたポリアミド樹脂組成物が得られる。一方、前記溶融粘度が200Pa・sec以下であることにより、流動性に優れたポリアミド樹脂組成物が得られる。
【0076】
なお、このポリフェニレンスルフィドの溶融粘度は、キャピラリー式のレオメータによって測定できる。例えば、キャピログラフ(株式会社東洋精機製作所製)で、キャピラリー(キャピラリー長=10mm、キャピラリー径=1mm)を用いて、温度300℃および剪断速度100sec-1の条件下で測定できる。
【0077】
結晶性熱可塑性樹脂(B)としては、上記のようにポリエステル、ポリアリールケトン、ポリフェニレンスルフィド、シンジオタクチックポリスチレンなどを用いることができるが、中でも耐熱性を向上させる観点から、ポリ乳酸、ポリ琥珀酸ブチレン、ポリヒドロキシブタン酸、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレート、ポリ−1,4−シクロヘキサンジメチレンテレフタレート、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルケトンケトン、ポリフェニレンスルフィド、シンジオタクチックポリスチレンが好ましい。
【0078】
加えて、得られるポリアミド樹脂組成物の靭性を向上させる観点から、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレート、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルケトンケトン、ポリフェニレンスルフィドおよびシンジオタクチックポリスチレンからなる群より選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。なお、上記で列挙した成分は1種類を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0079】
結晶性熱可塑性樹脂(B)は、ポリアミド樹脂組成物の耐熱性および加工性を向上させる観点から、融点が265〜355℃であることが好ましい。なお、結晶性熱可塑性樹脂(B)の融点は、ポリアミドの融点の場合と同様にして測定することができる(後述する実施例参照)。
【0080】
本発明のポリアミド樹脂組成物において、ポリアミド樹脂(A)と結晶性熱可塑性樹脂(B)との含有量(質量比)は特に限定されないが、得られるポリアミド樹脂組成物のウェルド強度の観点から、ポリアミド樹脂(A)100質量部に対し、結晶性熱可塑性樹脂(B)1〜150質量部が好ましく、1〜100質量部がより好ましく、10〜100質量部がさらに好ましい。
【0081】
〔ルイス塩基として作用する化合物(C)〕
本発明のポリアミド樹脂組成物は、ポリアミド樹脂(A)100質量部に対してルイス塩基として作用する化合物(C)を0.1〜10質量部含有していてもよく、0.1〜5質量部含有していることがより好ましい。ルイス塩基として作用する化合物(C)の量を前記範囲内にすることで、ポリアミド(a−1)およびポリアミドオリゴマー(a−2)を構成する、一般式(I)または一般式(II)で表される脂環式モノマー由来のトランス異性体構造単位の含有率を高めることができ、高融点すなわち耐熱性や高温下での剛性に優れるポリアミド樹脂組成物が得られる。さらに、トランス異性体構造単位の含有率が高くなることで、得られるポリアミド樹脂組成物の結晶構造がより強固なものとなり、耐薬品性も向上する。
【0082】
ルイス塩基として作用する化合物(C)としては、アルカリ金属酸化物、アルカリ金属水酸化物、アルカリ土類金属酸化物、アルカリ土類金属水酸化物、酸化亜鉛および水酸化亜鉛からなる群より選ばれる少なくとも1種を用いることが好ましい。
【0083】
アルカリ金属酸化物およびアルカリ土類金属酸化物としては、例えば酸化カリウム、酸化マグネシウム、酸化カルシウム等が挙げられ、アルカリ金属水酸化物およびアルカリ土類金属水酸化物としては、例えば水酸化カリウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム等が挙げられる。これらは1種類を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0084】
〔無機充填材(D)〕
本発明のポリアミド樹脂組成物は、機械的物性(強度・剛性など)の観点から、無機充填材(D)をさらに含有していてもよい。無機充填材(D)としては、例えばガラス繊維、炭素繊維、ケイ酸カルシウム繊維、チタン酸カリウム繊維、ホウ酸アルミニウム繊維、ガラスフレーク、ウォラストナイト、カオリン、マイカ、タルク、ハイドロタルサイト、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、チタン酸カリウム、ホウ酸アルミニウム、クレー、炭酸亜鉛、リン酸一水素カルシウム、シリカ、ゼオライト、アルミナ、ベーマイト、水酸化アルミニウム、酸化チタン、酸化ケイ素、ケイ酸カルシウム、アルミノケイ酸ナトリウム、ケイ酸マグネシウム、ケッチェンブラック、アセチレンブラック、ファーネスブラック、カーボンナノチューブ、グラファイト、黄銅、銅、銀、アルミニウム、ニッケル、鉄、フッ化カルシウム、雲母、モンモリロナイト、膨潤性フッ素雲母およびアパタイトが挙げられる。中でも機械的強度をより一層向上させる観点から、ガラス繊維、炭素繊維、ウォラストナイト、カオリン、マイカ、タルク、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、チタン酸カリウム、ホウ酸アルミニウムおよびクレーからなる群より選ばれる少なくとも1種が好ましい。さらにその中でも、ガラス繊維、炭素繊維、ウォラストナイト、カオリン、マイカ、タルク、炭酸カルシウムおよびクレーからなる群より選ばれる少なくとも1種がより好ましく、得られるポリアミド樹脂組成物の耐熱エージング性、低吸水性を向上させる観点からは、ガラス繊維や炭素繊維などの繊維状強化材が好ましい。
【0085】
繊維状強化材は、断面長径D2および断面短径D1の、D2/D1で表される扁平率が1.5以上のものであることが好ましい。扁平率はメーカーによる公称値があればそれをそのまま使用できるが、公称値が無い場合は顕微鏡で繊維状強化材の断面を観察してD2およびD1を算出できる。繊維状強化材の断面形状としては、例えば長方形、長方形に近い長円形、楕円形、繭型、長手方向の中央部がくびれた繭型などが挙げられる。中でも繊維状強化材の断面形状が、長方形、長方形に近い長円形、楕円形または繭型のものが好ましい。
【0086】
本発明のポリアミド樹脂組成物から板状成形品を作製した場合、該板状成形品の反りの低減(形状安定性)、耐熱性、靭性、耐熱エージング性、低吸水性に優れるという観点から、繊維状強化材の扁平率は1.5以上が好ましく、1.5〜10.0がより好ましく、2.5〜10.0がさらに好ましく、3.1〜6.0が最も好ましい。なお、扁平率が15〜20程度に大きいと、他の成分との混合、混練、成形等の処理の際に破砕される場合があり、本発明の所望の効果が得られない場合がある。
【0087】
繊維状強化材の繊維径は、通常、断面短径D1が0.5〜25μm、断面長径D2が1.25〜250μmであることが好ましい。前記範囲より繊維径が小さい場合には繊維の紡糸が困難な場合があり、前記範囲より大きい場合は樹脂との接触面積の減少等により、成形品の機械的強度が低下する場合がある。
【0088】
繊維状強化材は、例えば特公平3−59019号公報、特公平4−13300号公報、特公平4−32775号公報等に記載されている方法により製造できる。特に底面に多数のオリフィスを有するオリフィスプレートにおいて、複数のオリフィス出口を囲み、当該オリフィスプレート底面より下方に延びる凸状縁を設けたオリフィスプレート、または、単数もしくは複数のオリフィス孔を有するノズルチップの外周部先端から下方に延びる複数の凸状縁を設けた異形断面ガラス繊維紡糸用ノズルチップを使用して製造された、扁平率が1.5以上のガラス繊維が好ましい。繊維状強化材は、繊維ストランドをロービングとしてそのまま使用してもよく、さらに切断工程を経て、チョップドガラスストランドとして用いてもよい。
【0089】
繊維状強化材には、必要に応じ、シランカップリング剤やチタネート系カップリング剤などを用いて表面処理を施してもよい。前記シランカップリング剤としては、以下に制限されないが、例えばγ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン及びN−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン等のアミノシラン類、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシランおよびγ−メルカプトプロピルトリエトキシシラン等のメルカプトシラン類、エポキシシラン類、並びにビニルシラン類が挙げられる。中でも、上記の列挙した成分からなる群より選ばれる少なくとも1種であることが好ましく、アミノシラン類がより好ましい。
【0090】
また、繊維状強化材には、必要に応じ、集束剤による処理を施すこともできる。集束剤としては、例えばカルボン酸無水物含有不飽和ビニル単量体および前記カルボン酸無水物含有不飽和ビニル単量体を除く不飽和ビニル単量体を構成単位として含む共重合体、エポキシ化合物、ポリウレタン樹脂、アクリル酸のホモポリマー、アクリル酸およびその他の共重合性モノマーとのコポリマー、並びにこれらの第1級、第2級および第3級アミンとの塩等を含んでもいてもよい。これらは、1種類を単独で用いてもよいし、2種類以上を併用してもよい。
【0091】
繊維状強化材は、公知の該繊維の製造工程において、ローラー型アプリケーターなどの公知の方法を用いて、上記の集束剤を、該繊維に付与して製造した繊維ストランドを乾燥することにより、連続的に反応させて得られる。前記繊維ストランドをロービングとしてそのまま使用してもよく、さらに切断工程を経て、チョップドガラスストランドとして使用してもよい。かかる集束剤は、ガラス繊維または炭素繊維100質量%に対し、固形分率として、好ましくは0.2〜3質量%相当を付与(添加)し、より好ましくは0.3〜2質量%相当を付与(添加)する。すなわち、該繊維の集束を維持する観点から、集束剤の添加量が、ガラス繊維または炭素繊維100質量%に対し、固形分率として0.2質量%以上であることが好ましい。一方、得られるポリアミド樹脂組成物の熱安定性を向上させる観点から、3質量%以下であることが好ましい。ストランドの乾燥は切断工程後に行ってもよいし、ストランドを乾燥した後に切断してもよい。
【0092】
無機充填材(D)が繊維状強化材以外である場合、無機充填材(D)の平均粒径は0.01〜38μmであることが好ましく、0.03〜30μmでありることがより好ましく、0.05〜25μmがさらに好ましく、0.10〜20μmであることが最も好ましい。平均粒径を38μm以下とすることにより、靭性および成形品の表面外観に優れたポリアミド樹脂組成物が得られる。一方、0.01μm以上とすることにより、コスト面および粉体のハンドリング面と物性(流動性など)とのバランスに優れたポリアミド樹脂組成物が得られる。
【0093】
無機充填材(D)として、ウォラストナイトのような針状の形状を持つものに関しては、平均繊維径を平均粒径とする。また、断面が円でない場合はその長さの最大値を繊維径とする。
【0094】
無機充填材(D)として、針状の形状を持つものの重量平均繊維長(L)と平均繊維径(D)のL/Dで表わされるアスペクト比は、得られる成形品の表面外観を向上させ、且つ射出成形機などの金属性パーツの磨耗を防止する観点から、1.5〜10.0であることが好ましく、2.0〜5.0であることがより好ましく、2.5〜4.0であることがさらに好ましい。
【0095】
また、無機充填材(D)として、ガラス繊維および炭素繊維以外のものは、ガラス繊維や炭素繊維の場合と同様にシランカップリング剤やチタネート系カップリング剤などを用いて表面処理してもよい。
【0096】
本発明のポリアミド樹脂組成物において無機充填材(D)の含有量は、ポリアミド樹脂(A)100質量部に対して1〜200質量部であり、2〜150質量部が好ましく、5〜120質量部がより好ましく、10〜80質量部がさらに好ましい。無機充填材(D)の含有量を1質量部以上とすることにより、得られるポリアミド樹脂組成物の強度および剛性が向上する。一方、上記の含有量を200質量部以下とすることにより、得られるポリアミド樹脂組成物を用いて成形する際に、金型へのポリアミド樹脂組成物の充填が容易になる。
【0097】
〔その他の成分〕
本発明のポリアミド樹脂組成物には、必要に応じて本発明の効果を損なわない範囲で、上記ポリアミド樹脂(A)、ポリアミド樹脂以外の結晶性熱可塑性樹脂(B)、ルイス塩基として作用する化合物(C)および無機充填材(D)以外の他の成分を含んでいてもよい。他の成分としては、例えばポリアミド樹脂(A)および結晶性熱可塑性樹脂(B)以外の熱可塑性樹脂、相溶化剤、有機充填材、シランカップリング剤、結晶核剤、銅系熱安定剤、染料、顔料、光安定剤、帯電防止剤、可塑剤、滑剤、難燃剤、難燃助剤、加工助剤、潤滑剤、蛍光漂白剤、安定剤、ゴムおよび強化剤などが挙げられる。
【0098】
〔ポリアミド樹脂組成物の製造方法〕
本発明のポリアミド樹脂組成物の製造方法としては、ポリアミド樹脂(A)にポリアミド樹脂以外の結晶性熱可塑性樹脂(B)を含有させる方法などが挙げられる。ポリアミド樹脂以外の結晶性熱可塑性樹脂(B)の含有方法としては、ポリアミド樹脂(A)と均一に混合させる方法であればよく、通常、単軸押出機、二軸押出機、ニーダー、バンバリーミキサーなどを使用して溶融混練する方法が採用される。溶融混練条件は特に限定されないが、例えばポリアミド樹脂(A)(場合によっては、ポリアミド樹脂以外の結晶性熱可塑性樹脂(B))の融点よりも30〜50℃高い温度範囲で1〜30分間溶融混練することにより、本発明のポリアミド樹脂組成物が得られる。
【0099】
無機充填材(D)および前記以外の成分は、あらかじめポリアミド樹脂組成物に含有させておいてもよい。また、これらの成分を含有させる方法としては、これらの成分を均一に混合させる方法であればよく、通常、単軸押出機、二軸押出機、ニーダー、バンバリーミキサーなどを使用して溶融混練する方法が採用される。溶融混練条件は特に限定されないが、例えば、ポリアミド樹脂組成物の融点よりも30〜50℃高い温度範囲で1〜30分間溶融混練することにより、本発明のポリアミド樹脂組成物が得られる。
【0100】
〔ポリアミド樹脂組成物からなる成形品〕
本発明のポリアミド樹脂組成物を、目的とする成形品の種類、用途、形状などに応じて、射出成形、押出成形、プレス成形、ブロー成形、カレンダー成形、流延成形など、熱可塑性重合体組成物に対して一般に用いられる成形方法を適用することにより、各種の成形品を製造できる。また上記の成形方法を組み合わせた成形方法を採用してもよい。さらに、本発明のポリアミド樹脂組成物を、各種熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、紙、金属、木材、セラミックスなどの各種材料と接着、溶着、接合した複合成形体とすることもできる。
【0101】
本発明のポリアミド樹脂組成物は、上述したような成形プロセスを経て、電気電子部品、自動車部品、産業部品、繊維、フィルム、シート、家庭用品、その他の任意の形状および用途の各種成形品の製造に有効に使用することができる。
【0102】
電気電子部品としては、例えばFPCコネクタ、BtoBコネクタ、カードコネクタ、同軸コネクタ等のSMTコネクタ;SMTスイッチ、SMTリレー、SMTボビン、メモリーカードコネクタ、CPUソケット、LEDリフレクタ、カメラモジュールのベース・バレル・ホルダ、ケーブル電線被覆、光ファイバー部品、AV・OA機器の消音ギア、自動点滅機器部品、携帯電話部品、複写機用耐熱ギア、エンドキャップ、コミュテーター、業務用コンセント、コマンドスイッチ、ノイズフィルター、マグネットスイッチ、太陽電池基板、液晶板、LED実装基板、フレキシブルプリント配線板、フレキシブルフラットケーブルなどが挙げられる。
【0103】
自動車部品としては、例えばサーモスタットハウジング、ラジエータータンク、ラジエーターホース、ウォーターアウトレット、ウォーターポンプハウジング、リアジョイントなどの冷却部品;インタークーラータンク、インタークーラーケース、ターボダクトパイプ、EGRクーラーケース、レゾネーター、スロットルボディ、インテークマニホールド、テールパイプなどの吸排気系部品;燃料デリバリーパイプ、ガソリンタンク、クイックコネクタ、キャニスター、ポンプモジュール、燃料配管、オイルストレーナー、ロックナット、シール材などの燃料系部品;マウントブラケット、トルクロッド、シリンダヘッドカバーなどの構造部品;ベアリングリテイナー、ギアテンショナー、ヘッドランプアクチュエータギア、スライドドアローラー、クラッチ周辺部品などの駆動系部品;エアブレーキチューブなどのブレーキ系統部品;エンジンルーム内のワイヤーハーネスコネクタ、モーター部品、センサー、ABSボビン、コンビネーションスイッチ、車載スイッチなどの車載電装部品;スライドドアダンパー、ドラミラーステイ、ドアミラーブラケット、インナーミラーステイ、ルーフレール、エンジンマウントブラケット、エアクリーナーのインレートパイプ、ドアチェッカー、プラチェーン、エンブレム、クリップ、ブレーカーカバー、カップホルダー、エアバック、フェンダー、スポイラー、ラジエーターサポート、ラジエーターグリル、ルーバー、エアスクープ、フードバルジ、バックドア、フューエルセンダーモジュールなどの内外装部品等が挙げられる。
【0104】
産業部品としては、例えばガスパイプ、油田採掘用パイプ、ホース、防蟻ケーブル(通信ケーブル、パスケーブルなど)、粉体塗装品の塗料部(水道管の内側コーティング)、海底油田パイプ、耐圧ホース、油圧チューブ、ペイント用チューブ、燃料ポンプ、セパレーター、スーパーチャージ用ダクト、バタフライバルブ、搬送機ローラー軸受、鉄道の枕木バネ受け、船外機エンジンカバー、発電機用エンジンカバー、灌漑用バルブ、大型開閉器(スイッチ)、漁網などのモノフィラメント(押出糸)などが挙げられる。
【0105】
繊維としては、例えばエアバック基布、耐熱フィルター、補強繊維、ブラシ用ブリッスル、釣糸、タイヤコード、人工芝、絨毯、座席シート用繊維などが挙げられる。
【0106】
フィルムやシートとしては、例えば耐熱マスキング用テープ、工業用テープなどの耐熱粘着テープ;カセットテープ、デジタルデータストレージ向けデータ保存用磁気テープ、ビデオテープなどの磁気テープ用材料;レトルト食品のパウチ、菓子の個包装、食肉加工品の包装などの食品包装材料;半導体パッケージ用の包装などの電子部品包装材料などが挙げられる。
【0107】
その他、本発明のポリアミド樹脂組成物は、プラスチックマグネット、シューソール、テニスラケット、スキー板、ボンド磁石、メガネフレーム、結束バンド、タグピン、サッシ用クレセント、電動工具モーター用ファン、モーター固定子用絶縁ブロック、芝刈機用エンジンカバー、芝刈機の燃料タンク、超小型スライドスイッチ、DIPスイッチ、スイッチのハウジング、ランプソケット、コネクタのシェル、ICソケット、ボビンカバー、リレーボックス、コンデンサーケース、小型モーターケース、ギヤ、カム、ダンシングプーリー、スペーサー、インシュレーター、ファスナー、キャスター、ワイヤークリップ、自転車用ホイール、端子台、スターターの絶縁部分、ヒューズボックス、エアクリーナーケース、エアコンファン、ターミナルのハウジング、ホイールカバー、ベアリングテーナー、ウォーターパイプインペラ、クラッチレリーズベアリングハブ、耐熱容器、電子レンジ部品、炊飯器部品、プリンターリボンガイドなどにも好適に使用することができる。
【実施例】
【0108】
以下、実施例、参考例および比較例(以下、実施例等と略称する)により本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されない。なお、以下の実施例等において、融点、溶液粘度、ポリアミド(a−1)とポリアミドオリゴマー(a−2)の含有量(質量%)、末端封止率、脂環式モノマーに由来するトランス異性体構造単位含有率、吸水率、荷重たわみ温度、耐薬品性、溶融粘度、相対結晶化度、金型汚染性は以下の方法で測定または評価した。
【0109】
<融点>
各実施例等で用いたポリアミド(後述するポリアミド9C−1〜4。以下同様。)の融点は、メトラー・トレド(株)製の示差走査熱量分析装置(DSC822)を使用して、窒素雰囲気下で、30℃から360℃へ10℃/minの速度で昇温した時に現れる融解ピークのピーク温度を融点(℃)とすることで求めた。なお、融解ピークが複数ある場合は最も高温側の融解ピークのピーク温度を融点とした。
【0110】
<溶液粘度>
各実施例等で用いたポリアミドの溶液粘度ηinhは、ポリアミド50mgをメスフラスコ中で98%濃硫酸25mLに溶解させ、ウベローデ型粘度計にて、得られた溶液の30℃での落下時間(t)を計り、濃硫酸の落下時間(t)から下記数式(1)より算出した。
ηinh(dL/g)={ln(t/t)}/0.2 (1)
【0111】
<ポリアミド(a−1)とポリアミドオリゴマー(a−2)の含有量>
各実施例等で用いるポリアミド樹脂(A)におけるポリアミド(a−1)とポリアミドオリゴマー(a−2)の含有量(質量%)は、GPCを用いて得られる各試料の溶出曲線(縦軸:検出器から得られるシグナル強度、横軸:溶出時間)から、ベースラインと溶出曲線によって囲まれる数平均分子量500以上2000未満の領域の面積、およびベースラインと溶出曲線によって囲まれる数平均分子量2000以上から主ピークの検出が終了する数平均分子量以下の領域の面積より算出した。測定は下記の条件で行った。
・検出器:UV検出器(波長:210nm)
・ カラム:昭和電工株式会社製 HFIP−806M(内径8mm×長さ300mm)
・ 溶媒:トリフルオロ酢酸ナトリウムを0.01モル/Lの濃度で含有するヘキサフルオロイソプロパノール
・ 温度:40℃
・ 流速:1mL/min
・ 注入量:90μL
・ 濃度:0.5mg/mL
・ 試料調製:トリフルオロ酢酸ナトリウムを0.01モル/L含有するヘキサフルオロイソプロパノールに、各実施例等で得られたポリアミド樹脂(A)またはポリアミド樹脂組成物を、ポリアミド樹脂(A)換算で0.5mg/mLになるように秤量して室温で1時間攪拌して溶解させ、得られた溶液をメンブレンフィルター(孔径0.45μm)でろ過して試料を調製した。
・ PMMA標準試料:昭和電工株式会社製 STANDARD M−75(数平均分子量範囲:1,800〜950,000)を用いて標準溶出曲線(校正曲線)を作成した。
後述する参考例1で得られたポリアミド樹脂組成物(実際にはポリアミド樹脂(A)単独に相当する)を上記の条件で測定した際の溶出曲線を、ポリアミド(a−1)およびポリアミドオリゴマー(a−2)の領域とともに図1に示す。
【0112】
<末端封止率>
各実施例等で得られたポリアミド樹脂組成物を用いて、各々の融点よりも約20℃高いシリンダー温度で射出成形(金型温度:80℃)を行い、長さ100mm、幅40mm、厚み1mmの試験片を作製し、得られた試験片から20〜30mgを削りとって、トリフルオロ酢酸−d(CFCOOD)1mLに溶解し、日本電子株式会社製核磁気共鳴装置JNM−ECX400(400MHz)を用いて、室温、積算回数256回の条件でH−NMRを測定した。そして、カルボキシル基末端(a)、アミノ基末端(b)および末端封止剤によって封止された末端(D)を各末端基の特性シグナルの積分値よりそれぞれ求め、数式(2)から末端封止率(%)を求めた。
末端封止率(%)=c/(a+b+c)×100 (2)
【0113】
<トランス異性体構造単位含有率>
各実施例等で得られたポリアミド樹脂組成物を用いて、各々の融点よりも約20℃高いシリンダー温度で射出成形(金型温度:80℃)を行い、長さ100mm、幅40mm、厚み1mmの試験片を作製し、得られた試験片から20〜30mgを削りとって、トリフルオロ酢酸−d(CFCOOD)1mLに溶解させ、グラスフィルターでろ過して不溶物を除去して測定試料を調製し、日本電子株式会社製核磁気共鳴装置JNM−ECX400(400MHz)を用いて、室温、積算回数256回の条件でH−NMRを測定した。1,4−シクロヘキサンジカルボン酸構造単位のシス異性体のβ水素に由来する2.10ppmのピーク面積と、トランス異性体構造単位のβ水素に由来する2.20ppmのピーク面積の比率から、トランス異性体構造単位含有率を求めた。
【0114】
<吸水率>
各実施例等で得られたポリアミド樹脂組成物を用いて、各々の融点よりも約20℃高いシリンダー温度で射出成形(金型温度80℃)を行い、ISO 62に準じて長さ60mm、幅60mm、厚み2mmの試験片を作製した。得られた試験片を、23℃の水中に1日間浸漬したときの質量増加分を測定し、浸漬前質量に対する増加割合(%)を算出し、低吸水性の指標とした。値が小さいほど低吸水性である。
【0115】
<荷重たわみ温度>
各実施例等で得られたポリアミド樹脂組成物を用いて、各々の融点よりも約20℃高いシリンダー温度で射出成形(金型温度80℃)を行い、ISO多目的試験片A型(長さ80mm、幅10mm、厚み4mm)を作製した。得られた試験片を用いて、ISO 75−2/Afに従って1.8MPaの負荷を与えたときの荷重たわみ温度(℃)を測定し、高温下での剛性の指標とした。
【0116】
<耐薬品性>
各実施例等で得られたポリアミド樹脂組成物を用いて、各々の融点よりも約20℃高いシリンダー温度で射出成形(金型温度80℃)を行い、ISO多目的試験片A型を作製した。得られた試験片をトヨタ製スーパーロングライフクーラント(ピンク)を水で2倍希釈した水溶液中に浸漬し、130℃、500時間浸漬した後の引張強さをISO 527に従って測定し、浸漬する前の試験片の引張強さに対する割合(%)を算出することで、耐薬品性の指標とした。
【0117】
<溶融粘度>
各実施例等で得られたポリアミド樹脂組成物について、キャピログラフ(株式会社東洋精機製作所製)を用いて、バレル温度340℃、せん断速度121.6sec−1(キャピラリー:内径1.0mm×長さ10mm、押出速度10mm/min)の条件下で溶融粘度(Pa・s)を測定し、流動性の指標とした。
【0118】
<相対結晶化度>
各実施例等で得られたポリアミド樹脂組成物を用い、下記条件にて射出成形を行い、長さ100mm、幅40mm、厚み1mmの試験片を作製した。得られた試験片から約10mgを削りとり、DSC822を用いて窒素雰囲気下で、30℃から360℃へ10℃/minの速度で昇温した。ポリアミド樹脂組成物を構成するポリアミド樹脂(A)に非晶領域が存在すれば、この昇温過程のうち80〜150℃の温度領域において該非晶領域の結晶化が進むことに起因する結晶化ピークが観測される。本明細書では、かかる結晶化ピークから算出される熱量を「結晶化熱量ΔHc」と称する。上述の、30℃から360℃へ10℃/minの速度での昇温過程において、前記した結晶化ピークが検出される後か結晶化ピークが検出されずに、結晶融解ピークが観測される。本明細書では、かかる結晶融解ピークから算出される熱量を「結晶融解熱量ΔHm」と称する。かかるΔHcとΔHmを用いて、相対結晶化度(%)を下記数式(3)にて算出し、80℃の金型での成形性の指標とした。
・射出成形時のポリアミド樹脂(A)またはポリアミド樹脂組成物温度:340℃
・金型温度:80℃
・ 射出速度:60mm/sec
・ 射出時間:2sec
・ 冷却時間:5sec
相対結晶化度(%)=(ΔHm−ΔHc)/ΔHm×100 (3)
【0119】
<金型汚染性>
各実施例等で得られたポリアミド樹脂組成物を用いて、図2および3に示す形状の金型(図2:正面図、図3:k軸を切断面とする断面図)で下記条件にて射出成形を行った。ポリアミド樹脂組成物は、図中の突出末端mから浸入し、図2の円nの外周部から流動末端Оに向かって流れる。金型の流動末端部Оの汚れ(変色度)を500ショット連続射出後に目視で確認し、金型に曇りが付着物や曇りが認められなかった場合を○、金型に曇りが認められた場合を△、金型に付着物の認められた場合を×で評価することで、金型汚染性の指標とした。
・ 射出成形時のポリアミド樹脂組成物温度:340℃
・金型温度:80℃
・ 射出速度:60mm/sec
・ 射出時間:2sec
・ 冷却時間:5sec
【0120】
各実施例等で使用したポリアミド樹脂(A)、ポリアミド樹脂以外の結晶性熱可塑性樹脂(B)、ルイス塩基として作用する化合物(C)および無機充填材(D)を以下に示す。
【0121】
<ポリアミド樹脂(A)>
以下のポリアミドを表1および2に示す割合で配合してポリアミド樹脂(A)とした。
【0122】
ポリアミド9C−1:
トランス体/シス体比=30/70(モル比)の1,4−シクロヘキサンジカルボン酸5111.2g(29.7モル)、1,9−ノナンジアミン4117.6g(26.0モル)、2−メチル−1,8−オクタンジアミン726.6g(4.59モル)、末端封止剤としての酢酸110.4g(1.84モル)、触媒として次亜リン酸ナトリウム一水和物10g、および蒸留水2.5Lを、内容積40Lのオートクレーブに入れ、窒素置換した。2時間かけて内部温度を200℃に昇温した。この時、オートクレーブは2MPaまで昇圧した。その後2時間、水蒸気を徐々に抜いて圧力を2MPaに保ちながら反応させた。次いで、30分かけて圧力を1.2MPaまで下げ、プレポリマーを得た。このプレポリマーを粉砕し、120℃、減圧下で12時間乾燥した。これを230℃、13.3Paの条件で10時間固相重合し、溶液粘度ηinhが0.87dL/gであるポリアミド9C−1を得た。
【0123】
ポリアミド9C−2:
トランス体/シス体比=30/70(モル比)の1,4−シクロヘキサンジカルボン酸5111.2g(29.7モル)、1,9−ノナンジアミン4117.6g(26.0モル)、2−メチル−1,8−オクタンジアミン726.6g(4.59モル)、末端封止剤としての酢酸110.4g(1.84モル)、触媒として次亜リン酸ナトリウム一水和物10g、および蒸留水2.5Lを、内容積40Lのオートクレーブに入れ、窒素置換した。2時間かけて内部温度を200℃に昇温した。この時、オートクレーブは2MPaまで昇圧した。その後2時間、水蒸気を徐々に抜いて圧力を2MPaに保ちながら反応させた。次いで、30分かけて圧力を1.2MPaまで下げ、プレポリマーを得た。このプレポリマーを粉砕し、120℃、減圧下で12時間乾燥し、溶液粘度ηinhが0.23dL/gであるポリアミド9C−2を得た。
【0124】
ポリアミド9C−3:
ポリアミドPA9C−1を80℃の熱水中で8時間、抽出処理を行った。その後、120℃、減圧下で12時間乾燥し、溶液粘度がηinh0.89dL/gであるポリアミド9C−3を得た。
【0125】
ポリアミド9C−4:
トランス体/シス体比=30/70(モル比)の1,4−シクロヘキサンジカルボン酸5111.2g(29.7モル)、1,9−ノナンジアミン4117.6g(26.0モル)、2−メチル−1,8−オクタンジアミン726.6g(4.59モル)、末端封止剤としての酢酸110.4g(1.84モル)、触媒として次亜リン酸ナトリウム一水和物10g、および蒸留水2.5Lを、内容積40Lのオートクレーブに入れ、窒素置換した。2時間かけて内部温度を200℃に昇温した。この時、オートクレーブは2MPaまで昇圧した。その後2時間、水蒸気を徐々に抜いて圧力を2MPaに保ちながら反応させた。次いで、30分かけて圧力を1.2MPaまで下げ、プレポリマーを得た。このプレポリマーを粉砕し、120℃、減圧下で12時間乾燥した。これを温度350℃、減圧下、押出重合装置にて滞留時間が30分になるように重合することで、溶液粘度ηinhが0.78dL/gであるポリアミド9C−4を得た。
【0126】
<ポリアミド樹脂以外の結晶性熱可塑性樹脂(B)>
(1)ポリフェニレンスルフィド(PPS):
東レ株式会社製、「トレリナM2588」(融点:288℃、ガラス転移温度:87℃、結晶化温度:219℃)
(2)ポリエーテルエーテルケトン(PEEK):
ソルベイアドバンストポリマーズ株式会社製、「キータスパイアKT−880NT」 (融点:340℃、ガラス転移温度:150℃)
(3)ポリエチレンナフタレート(PEN):
帝人株式会社製「テオネックスTN8065」(融点:269℃、ガラス転移温度:113℃)
【0127】
<ルイス塩基として作用する化合物(C)>
(1)酸化マグネシウム:
協和化学工業株式会社製、「MF−150」(平均粒子径:0.71μm)
(2)酸化カルシウム:
関東化学株式会社製、「酸化カルシウム」(平均粒子径:15μm)
(3)酸化亜鉛:
和光純薬工業株式会社製、「酸化亜鉛」(平均粒子径:5.0μm以下)
【0128】
<無機充填材(D)>
(1)ガラス繊維:
日東紡績株式会社製、「CS−3J−256」(横断面形状は円形(異形比=1)、直径11μm、繊維長3mm)
【0129】
〔実施例1〜14、参考例1および比較例1〜3〕
ポリアミド9C−1〜4を表1および表2で示す量で配合した混合物を減圧下、120℃で24時間乾燥した後、表1および表2に示す量のポリアミド樹脂以外の結晶性熱可塑性樹脂(B)およびルイス塩基として作用する化合物(C)をドライブレンドし、得られた混合物を二軸押出機(スクリュー径:30mm、L/D=28、シリンダー温度350℃、回転数150rpm)のホッパーからフィードして溶融混練し、ストランド状に押出した後、ペレタイザにより切断してペレット状のポリアミド樹脂組成物を得た。無機充填材(D)を配合する場合には、ホッパーよりも下流側(ストランド出口側)からフィードした。得られたポリアミド樹脂組成物を使用し、前記した方法に従って所定形状の試験片を作製し、各種物性を評価した。結果を表1および表2に示す。
【0130】
【表1】
【0131】
【表2】
【0132】
実施例1〜13は、ポリアミド(a−1)とポリアミドオリゴマー(a−2)の含有量、トランス異性体構造単位含有率が特定範囲にあり、さらにポリアミド樹脂以外の結晶性熱可塑性樹脂(B)を含有するため、耐熱性、低吸水性、高温下での剛性、耐薬品性、流動性、成形性(相対結晶化度が大きい)に優れ、かつ金型汚染が起こらない。中でも実施例7〜13は、ルイス塩基として作用する化合物(C)を含有するため、トランス異性体構造単位含有率が高く、それに伴い高温下での剛性や耐薬品性がより優れている。実施例14は耐熱性、低吸水性、高温下での剛性、耐薬品性、流動性、成形性に優れるものの、金型汚染性には僅かな差異が見られる。
比較例1〜3はポリアミドオリゴマー(a−2)が少ないため、耐薬品性、流動性および成形性に劣る。
なお、参考例1は結晶性熱可塑性樹脂(B)を含まないため、低吸水性、耐薬品性に劣る。
【産業上の利用可能性】
【0133】
本発明のポリアミド樹脂組成物は、耐熱性、低吸水性、高温下での剛性、耐薬品性、流動性に優れ、80℃の金型で成形しても十分に結晶化が進行し、かつ製造時の金型汚染が少なく、例えば、電気電子部品、自動車部品、産業資材部品、日用品および家庭用品用などの各種部品材料として幅広く利用できる。
図1
図2
図3