(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、この文献では、カーボンブラックおよび/または紫外線吸収剤を繊維表面に付着することにより耐候性を改善させているため、繊維からカーボンブラックおよび/または紫外線吸収剤が剥離または揮発した場合、繊維の耐候性を維持することができない。
【0007】
かかる状況において、本発明が解決しようとする課題は、カーボンブラックや紫外線吸収剤などを外的に付与しなくとも、優れた耐候性を実現できる液晶ポリマー、およびそれよりなる成形品を提供することである。
【0008】
本発明者らは、前記課題を達成するため鋭意研究を行った結果、サーモトロピック液晶ポリマーに対して、特定の構造を有するモノマーを共重合させることにより、サーモトロピック液晶ポリマーの耐候性を改良できることを見出し、本発明を完成した。
【課題を解決するための手段】
【0009】
すなわち、本発明は、サーモトロピック液晶性構成単位と、ベンゾフェノン構造、ベンゾトリアゾール構造、およびトリアジン構造からなる群から選択される少なくとも一種の構造を、構成単位の母核部分の少なくとも一部として、または構成単位の置換基として有する紫外線吸収性芳香族構成単位とを含む、サーモトロピック液晶ポリマーである。
【0010】
前記ポリマーにおいて、例えば、紫外線吸収性芳香族構成単位は、下記一般式(1)で示される構成単位であってもよい。
【0011】
【化1】
【0012】
(式中、nは0または1であり、置換基R
1は芳香環のどの位置にあってもよく、下記一般式(2)
【0013】
【化2】
【0014】
または一般式(3)
【0015】
【化3】
【0016】
または一般式(4)
【0017】
【化4】
【0018】
で表される構造を有する。但し、R
2〜R
20は、同一または異なって、水素原子,ハロゲン原子,ヒドロキシル基,アルキル基,アリール基,アラルキル基,アルコキシ基,アリールオキシ基又はアラルキルオキシ基を示す。)
【0019】
例えば、一般式(1)中、n=0、カルボン酸残基に対してm位に置換基R
1を有していてもよい。
また、一般式(2)中、R
2〜R
6がいずれも水素原子;R
2およびR
4がヒドロキシル基であり、その他が水素原子;または、R
2がヒドロキシル基であり、R
4がアルコキシ基であり、その他が水素原子であるか、
一般式(3)中、R
7〜R
10がいずれも水素原子;R
8が塩素原子であり、その他が水素原子;R
7がアルキル基であり、その他が水素原子;またはR
8がアルキル基であり、その他が水素原子であるか、または
一般式(4)中、R
11〜R
20がいずれも水素原子;R
11およびR
13がアルキル基であり、その他が水素原子;または、R
11、R
13、R
16およびR
18がアルキル基であり、その他が水素原子であってもよい。
【0020】
好ましくは、サーモトロピック液晶性構成単位が、下記一般式(A)および(B)で示される構成単位を含んでいる。また、一般式(A)と(B)で表される構成単位の合計が、全構成単位の50モル%以上であってもよい。
【0021】
【化5】
【0022】
【化6】
【0023】
例えば、(サーモトロピック液晶性構成単位)/(紫外線吸収性芳香族構成単位)=99.99/0.01〜80/20の範囲であってもよい。
【0024】
本発明は、前記サーモトロピック液晶ポリマーを成形してなる成形品についても包含する。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、サーモトロピック液晶ポリマーの構成単位に対して、特定の共重合成分を共重合させることにより、従来のサーモトロピック液晶ポリマーに比べて、耐候性が著しく改善される、液晶ポリマーおよびその成形品を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明のサーモトロピック液晶ポリマーは、サーモトロピック液晶性構成単位と、紫外線吸収性芳香族構成単位とを共重合成分として含んでいる。
【0027】
(サーモトロピック液晶性構成単位)
サーモトロピック液晶性を発現する構成単位は、芳香族ジオール、芳香族ジカルボン酸、芳香族ヒドロキシカルボン酸、芳香族ジアミン、芳香族ヒドロキシアミン、芳香族アミノカルボン酸から由来する構成単位であり、溶融成形できる液晶性ポリマーを形成できる構成単位であれば、その化学的構成については特に限定されるものではない。
例えば、その構造単位としては、表1に示す例が挙げられる。
【0029】
上記Y中、ハロゲン原子としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子などが挙げられ;アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、イソプロピル基、t−ブチル基などのC
1−4アルキル基などが挙げられ;アリール基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基などが挙げられ;アラルキル基としては、例えば、ベンジル基(フェニルメチル基)、フェネチル基(フェニルエチル基)などが挙げられ;アルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基などが挙げられ;アリールオキシ基としては、例えば、フェノキシ基などが挙げられ、アラルキルオキシ基としては、例えば、ベンジルオキシ基などが挙げられる。
これらのうち、好ましいYとしては、水素原子が挙げられる。
【0030】
これらのうち、好ましい液晶ポリマーは、一般式(A)で示されるp−ヒドロキシ安息香酸由来の構造単位と、一般式(B)で示される6−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸由来の構造単位の両方を含んでいる。
【0033】
溶融成形性を向上する観点から、(A)の構造単位と(B)の構造単位の比率は、好ましくは9/1〜1/1、より好ましくは7/1〜1/1、さらに好ましくは5/1〜1/1の範囲であってもよい。
【0034】
また、(A)の構造単位と(B)の構造単位の合計は、例えば、全構造単位に対し50モル%以上となることが好ましく、より好ましくは70モル%以上、さらに好ましくは80モル%以上であってもよい。
【0035】
(紫外線吸収性芳香族構成単位)
紫外線吸収性芳香族構成単位は、ベンゾフェノン構造、ベンゾトリアゾール構造、およびトリアジン構造からなる群から選択される少なくとも一種の構造を有する紫外線吸収性芳香族構成単位である。また、前記構造は、構成単位の母核部分の少なくとも一部として、構成単位を形成していてもよいし、構成単位の置換基として、構成単位を形成していてもよい。
【0036】
例えば、具体的には、紫外線吸収性芳香族構成単位としては、下記一般式(1)で示される各種紫外線吸収性芳香族構成単位が挙げられる。これらの紫外線吸収性芳香族構成単位は、単独でまたは二種以上組み合わせて使用してもよい。
【0038】
(式中、nは0または1であり、置換基R
1は芳香環のどの位置にあってもよく、下記一般式(2)
【0044】
で表される構造を有する。但し、R
2〜R
20は、同一または異なって、水素原子,ハロゲン原子,ヒドロキシル基,アルキル基,アリール基,アラルキル基,アルコキシ基,アリールオキシ基又はアラルキルオキシ基を示す。)
【0045】
上記R
2〜R
20において、ハロゲン原子としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子などが挙げられ;アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、イソプロピル基、t−ブチル基、ペンチル基、1-メチルブチル基、1,1−ジメチルプロピル基、t−オクチル基などの直鎖または分岐鎖C
1−8アルキル基などが挙げられ;アリール基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基などが挙げられ;アラルキル基としては、例えば、ベンジル基(フェニルメチル基)、フェネチル基(フェニルエチル基)などが挙げられ;アルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基、オクトキシ基、ドデシルオキシ基などの直鎖または分岐鎖C
1−15アルキルオキシ基などが挙げられ;アリールオキシ基としては、例えば、フェノキシ基などが挙げられ、アラルキルオキシ基としては、例えば、ベンジルオキシ基などが挙げられる。
【0046】
これらのうち、例えば、一般式(1)は、n=0、カルボン酸残基に対してm位に置換基R
1を有する組み合わせ;n=1、カルボン酸残基を2位として4位に置換基R
1を有する組み合わせなどが好ましく、特に、n=0、カルボン酸残基に対してm位に置換基R
1を有する組み合わせが好ましい。
【0047】
また、一般式(2)としては、R
2〜R
6がいずれも水素原子;R
2およびR
4がヒドロキシル基であり、その他が水素原子;R
2がヒドロキシル基であり、R
4がアルコキシ基であり、その他が水素原子である組み合わせなどが好ましい。
【0048】
また、一般式(3)としては、R
7〜R
10がいずれも水素原子;R
8が塩素原子であり、その他が水素原子;R
7がアルキル基であり、その他が水素原子;R
8がアルキル基であり、その他が水素原子である組み合わせなどが好ましい。
【0049】
また、一般式(4)としては、R
11〜R
20がいずれも水素原子;R
11およびR
13がアルキル基であり、その他が水素原子;R
11、R
13、R
16およびR
18がアルキル基であり、その他が水素原子である組み合わせなどが好ましい。
【0050】
これらの紫外線吸収性モノマーは、公知の文献を参照して合成することができる。
例えば、一般式(1)および(2)で構成された構成単位を形成するモノマーは、p−ベンゾイルオキシ安息香酸誘導体の光フリース(Fries)転位反応と続く無水酢酸を用いたアセチル化反応により合成することができる。
また、一般式(1)および(3)で構成された構成単位を形成するモノマーは、ヘテロサイクルズ(Heterocycles)65巻6号1393ページ2005年に記載された方法により各種置換基を有する誘導体を合成することができる。
さらに、一般式(1)および(4)で構成された構成単位を形成するモノマーは、4−アセチルオキシ安息香酸−3−イルボロン酸誘導体と6−ブロモ−2,4−ジアリール−1,3,5−トリアジン誘導体のPd触媒によるクロスカップリング反応と続くカルボン酸エステル部位の加水分解によって合成することができる。
【0051】
液晶性ポリマーの液晶性を維持するとともに、耐候性を向上させる観点から、例えば、サーモトロピック液晶性構成単位と、紫外線吸収性芳香族構成単位との比率(モル%)は、例えば、(サーモトロピック液晶性構成単位)/(紫外線吸収性芳香族構成単位)=99.99/0.01〜80/20であることが好ましく、99.99/0.01〜90/10であることがより好ましく、99.9/0.1〜95/5であることがさらに好ましい。
【0052】
また、溶融成型液晶性構成単位が、一般式(A)と(B)で表される構成単位を含む場合、例えば、一般式(A)と(B)で表される構成単位の合計と、一般式(1)で表される構成単位の合計との比率(モル%)は、例えば、{(A)+(B)}/(1)=99.99/0.01〜80/20であることが好ましく、99.99/0.01〜90/10であることがより好ましく、99.9/0.1〜95/5であることがさらに好ましい。
【0053】
なお、全構造単位に対する、一般式(A)および(B)の構成単位、並びに一般式(1)で表される構造単位以外の構造単位の割合は、本発明の目的を達成することができる範囲で適宜設定することができるが、例えば、49モル%以下であることが好ましく、より好ましくは29モル%以下、さらに好ましくは19モル%以下であってもよい。
【0054】
(サーモトロピック液晶ポリマー)
本発明の液晶ポリマーは重縮合法により合成することができる。重縮合に供するモノマーとして、各種芳香族ジオール、芳香族ジカルボン酸、芳香族ヒドロキシカルボン酸などを用いた直接重合法であってもよく、各構成単位のエステル結合部位を、アセトキシ基とカルボキシル基により置換されたモノマーを選択することで、エステル交換反応により容易にポリマーを合成してもよい。
【0055】
例えば、一般式(1)で示される構造単位を導入するには、モノマーとしてp−アセトキシ安息香酸を選択すればよい。また、一般式(2)で示される構造単位を導入するには、モノマーとして6−アセトキシ−2−ナフトエ酸を選択すればよい。また、共重合組成は、仕込みの際のモノマーのモル比率により調整することができる。
【0056】
本発明の液晶ポリマーの分子量は、数平均分子量5,000〜200,000であることが好ましく、より好ましくは、数平均分子量7,000〜150,000、さらに好ましくは、数平均分子量9,000〜100,000であってもよい。分子量が小さすぎると、得られる成形品の強度が低下してしまう。一方、分子量が大きすぎると、流動性が低下するため、成形性加工性が悪化して外観や性能の良好な成形品を得ることが難しくなる。分子量は、重合温度、重合時間、重合時の真空度によって調節することが可能である。なお、液晶ポリマーの液晶性は、試料をホットステージに載せ、窒素雰囲気下で昇温加熱し、試料の透過光を目視により観察することにより認定できる。
【0057】
本発明の液晶ポリマーの融点は、例えば200〜400℃であってもよく、好ましくは220〜380℃程度、より好ましくは240〜350℃程度であってもよい。融点が低すぎると、得られる成形品の耐熱性や強度が低下してしまう。一方、融点が高すぎると、溶融成形することが難しくなる。融点は、ポリマー中の各構成単位の比率を変更することで調整することができる。なお、液晶ポリマーの融点は、後述する実施例に記載された方法により測定された値を示す。
【0058】
本発明の液晶ポリマーは、他の成分を含む樹脂組成物であってもよく、樹脂組成物には、本発明のポリマーの効果を損なわない範囲内で、ポリエチレンテレフタレート、ポリオレフィン、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリアミド、ポリフェニレンサルファイド、ポリエーテルエーテルケトン、フッソ樹脂等の熱可塑性ポリマーを添加してもよい。また、本発明のポリマーの効果を損なわない範囲内で、樹脂組成物には、酸化チタンやカオリン、シリカ、酸化バリウム等の無機物、カーボンブラック、染料や顔料等の着色剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤等の各種添加剤を添加してもよい。
【0059】
本発明の液晶ポリマーは、紫外線吸収性芳香族構成単位を共重合成分として含まない液晶ポリマーと比較して、耐候性に優れている。例えば、環境試験機などを用いて紫外線に暴露した前後の樹脂の強度を比較すると、本発明の方法により得られる液晶ポリマーの方が高い強度保持率を示す。また、同様に紫外線暴露前後の樹脂の溶液粘度を比較すると、本発明の方法により得られる液晶ポリマーの方が粘度低下を抑制できるため、ポリマー鎖の切断が抑制できているものと考えられる。
【0060】
特に、本発明では、共重合成分として、紫外線吸収性を有する構成単位を用いているため、従来紫外線吸収剤として用いられていた低分子量成分が液晶ポリマーから揮散するのを抑制することが可能である。また、従来カーボンブラックによる耐候性付与で行われていたようなコーティング成分とともに脱落性の高い物質を付着させる必要もないため、そのようなカーボンブラックおよび/または紫外線吸収剤の脱離についても抑制することが可能である。
【0061】
また、本発明の方法により得られたサーモトロピック液晶ポリマーは、高い耐熱性を有するにもかかわらず、溶融成形性が良好である。したがって、液晶ポリマーを、射出成形、押出成形、圧縮成形などに溶融成形することにより、各種成形品(例えば、立体成形品、繊維、フィルム、シートなどを得ることができる。特に、本発明のサーモトロピック液晶ポリマーは、フィルムや繊維またはこれらの加工品などの成形品を作製するために、有用である。例えば、繊維加工品としては、織物、編物、不織布等の布帛やコード、ロープ、ネットなどの繊維構造体が挙げられる。
【0062】
例えば、作製した繊維は、従来品と比較して耐候性に優れるため、本発明の耐候性の改良された液晶ポリマー繊維としても有用であり、一般産業資材、スポーツ、防護衣等の分野に広く用いられる。特に有効な用途としては、比較的径の小さいロープ、コード、漁網、陸上ネット(安全ネット、ゴルフ練習場のネット他)、釣糸、パラグライダー、気球、カイト等のライン、アンテナ支持、ペット用クサリ代替晶、ブラインド用コード、テント用ロープ、登山用ロープ、自動車内各種コード、電気製品内の張力伝達コード、ロボットの力伝達コード等がある。
【実施例】
【0063】
以下に実施例および比較例を示して本発明をより具体的に説明する。なお、本発明は以下の実施例によって制限されるものではない。以下の実施例および比較例における分析および評価は以下の方法によって実施した。
【0064】
(1)液晶ポリマーの分子量測定
特開平6-281646に記載の分析方法に従い、ポリマーをプロピルアミンで分解し、高速液体クロマトグラフ(島津製作所、20A)を用い、数平均分子量を求めた。
【0065】
(2)液晶ポリマーの融点測定
DSC分析により融点を求めた。
<分析条件>
装置:株式会社リガク製 Thermo plus DSC 8230
サンプルパン:アルミニウム
昇温速度:10℃/分
測定範囲:25℃→320℃(2nd runの値を採用)
雰囲気:窒素(50mL/分)
【0066】
(3)引張強度
紫外線照射前後の試験片(幅15mm)を引張試験装置(株式会社オリエンテック、テンシロンRTG-1250)を用い、チャック間の初期距離80mm、引張速度40mm/minの条件で引張試験を行い、フィルムが破断したときの過重とフィルムの厚みから引張強度を求めた。
紫外線照射は、紫外線フェードメーター(スガ試験機株式会社、U48H)を用い、ブラックパネル温度63℃、照射時間25hの条件で行った。
フィルムの厚みは、微小測厚器(株式会社東洋精機製作所)を用いて求めた。
【0067】
(4)固有粘度
ポリマーを溶媒に溶解し、各濃度における還元粘度を測定した。還元粘度の無限希釈(濃度c→0)における極限値を算出し、固有粘度とした。
<分析条件>
装置:オストワルド粘度計
温度:60℃
溶媒:ペンタフルオロフェノール
濃度:0.025g/dL,0.05g/dL,0.075g/dL,0.1g/dL
【0068】
(5)液晶性の確認
試料をホットステージに載せ、窒素雰囲気下で昇温加熱し、試料の透過光を目視により観察し、真珠様光沢または乳白色が現れた場合、液晶性を有するとして判断した。
【0069】
(モノマーの準備)
サーモトロピック液晶性構成単位を形成するモノマーとして、p−アセトキシ安息香酸および6−アセトキシ−2−ナフトエ酸は和光純薬(株)製を用いた。また、紫外線吸収性芳香族構成単位を形成するモノマーとして用いた4−アセトキシ−3−ベンゾイル安息香酸は、以下の方法で合成した。
【0070】
モノマー合成例(4−アセトキシ−3−ベンゾイル安息香酸)
500mlフラスコにp−ヒドロキシ安息香酸メチル9.1g(60mmol)、炭酸カリウム20g、脱水アセトン300mLを入れ懸濁させた。そこに塩化ベンゾイル7mLlをゆっくり滴下したのち、昇温し還流下で2時間反応させた。エバポレータで反応液からアセトンを留去したのち、クロロホルム100mLを加え、一規定の水酸化ナトリウム水溶液を加えて分液し、酸成分を除去した。有機相のクロロホルムを留去して得られた粗生成物を酢酸エチル−へキサン混合液から再結晶させることで、13.8g(54mmol;収率90%)のp−ベンゾイルオキシ安息香酸を得ることができた。
【0071】
次に、p−ベンゾイルオキシ安息香酸10g(39mmol)をトルエン400mLに溶解し、系内を常温に保った状態で、400W水銀ランプで紫外線を11時間照射した。反応液から3−ベンゾイル−4−ヒドロキシ安息香酸メチルを1規定の水酸化ナトリウム水溶液200mLで抽出し、水相を75℃で2時間加熱することでエステルを加水分解した。塩酸で中和して発生した沈殿を回収し、エタノールを用いて再結晶で精製することで、3.3g(13.7mmol;収率35%)の3−ベンゾイル−4−ヒドロキシ安息香酸を得た。
【0072】
次に、3−ベンゾイル−4−ヒドロキシ安息香酸3g(12.4mmol)に対して8mLの無水酢酸と約1mgの酢酸カリウムを加え、還流条件下1hr反応させた。反応液から酢酸および無水酢酸を減圧留去したのち、エタノールから再結晶することで、4−アセトキシ−3−ベンゾイル安息香酸2.3g(8.1mmol;収率65%)を得た。得られた化合物の構造は、
1H−NMRおよびGC−MSにより確認した。
【0073】
[実施例1]
蒸留装置をつけた200mL3つ口フラスコに、p−アセトキシ安息香酸19.7g、6−アセトキシ−2−ナフトエ酸9.3g、4−アセトキシ−3−ベンゾイル安息香酸1.3gを投入し、窒素置換したのち、攪拌しながら250℃の塩浴で加熱し、発生する酢酸を留去しながら1時間反応させた。ついで、塩浴を280℃に昇温し、さらに1時間反応させた。次に、塩浴を320℃に昇温してさらに30分間反応させたのち、フラスコ内を真空(10Torr)にすることで、さらに重合を進めた。30分後に真空を解除し、ポリマーを取出すことで、約15gを得た。その分子量および融点を測定した。また300〜330℃で熱プレスをすることで、厚さ約150μmのフィルムを作製し、UV暴露試験を実施した。暴露前後の引張強度、固有粘度の変化を測定した。その結果を表2に示す。
【0074】
[実施例2]
蒸留装置をつけた200mL3つ口フラスコに、p−アセトキシ安息香酸19.7g、6−アセトキシ−2−ナフトエ酸9.3g、4−アセトキシ−3−ベンゾイル安息香酸0.4gを投入し、窒素置換したのち、攪拌しながら250℃の塩浴で加熱し、発生する酢酸を留去しながら1時間反応させた。ついで、塩浴を280℃に昇温し、さらに1時間反応させた。次に、塩浴を320℃に昇温してさらに30分間反応させたのち、フラスコ内を真空(10Torr)にすることで、さらに重合を進めた。30分後に真空を解除し、ポリマーを取出すことで、約15gを得た。その分子量および融点を測定した。また300〜330℃で熱プレスをすることで、厚さ約150μmのフィルムを作製し、UV暴露試験を実施した。暴露前後の引張強度、固有粘度の変化を測定した。その結果を表2に示す。
【0075】
[実施例3]
蒸留装置をつけた200mL3つ口フラスコに、p−アセトキシ安息香酸19.7g、6−アセトキシ−2−ナフトエ酸9.3g、4−アセトキシ−3−ベンゾイル安息香酸0.1gを投入し、窒素置換したのち、攪拌しながら250℃の塩浴で加熱し、発生する酢酸を留去しながら1時間反応させた。ついで、塩浴を280℃に昇温し、さらに1時間反応させた。次に、塩浴を320℃に昇温してさらに30分間反応させたのち、フラスコ内を真空(10Torr)にすることで、さらに重合を進めた。30分後に真空を解除し、ポリマーを取出すことで、約15gを得ることができた。その分子量および融点を測定した。また300〜330℃で熱プレスをすることで、厚さ約150μmのフィルムを作製し、UV暴露試験を実施した。暴露前後の引張強度、固有粘度の変化を測定した。その結果を表2に示す。
【0076】
[比較例1]
蒸留装置をつけた200mL3つ口フラスコに、p−アセトキシ安息香酸19.7g、6−アセトキシ−2−ナフトエ酸9.3gを投入し、窒素置換したのち、攪拌しながら250℃の塩浴で加熱し、発生する酢酸を留去しながら1時間反応させた。ついで、塩浴を280℃に昇温し、さらに1時間反応させた。次に、塩浴を320℃に昇温してさらに30分間反応させたのち、フラスコ内を真空(10Torr)にすることで、さらに重合を進めた。30分後に真空を解除し、ポリマーを取出すことで、約15gを得た。その分子量および融点を測定した。また300〜330℃で熱プレスをすることで、厚さ約150μmのフィルムを作製し、UV暴露試験を実施した。暴露前後の引張強度、固有粘度の変化を測定した。その結果を表2に示す。
【0077】
【表2】
【0078】
表2に示すように、実施例1〜3の液晶ポリマーは比較例1の液晶ポリマーと比較して、紫外線を照射した後でも引張強度の保持率が高く、また、固有粘度についても比較例より高い保持率を示している。
特に、紫外線吸収性モノマーの量が増加すると、その引張強度が向上するため、紫外線吸収性モノマーを共重合することにより、ポリマーの耐候性を向上させるだけでなく、ポリマー自体の物理的強度についても向上することが可能である。
また、実施例1〜3のポリマーは、いずれも270℃以上の高い融点を有しているため、耐候性が高く、耐熱性、強度にも優れている。