特許第6247939号(P6247939)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6247939
(24)【登録日】2017年11月24日
(45)【発行日】2017年12月13日
(54)【発明の名称】レーダ装置の配置構造
(51)【国際特許分類】
   G01S 7/03 20060101AFI20171204BHJP
   G01S 13/93 20060101ALI20171204BHJP
   B60R 21/00 20060101ALI20171204BHJP
【FI】
   G01S7/03 246
   G01S13/93 220
   B60R21/00 628A
【請求項の数】8
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2014-8122(P2014-8122)
(22)【出願日】2014年1月20日
(65)【公開番号】特開2015-137877(P2015-137877A)
(43)【公開日】2015年7月30日
【審査請求日】2016年9月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005290
【氏名又は名称】古河電気工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】391045897
【氏名又は名称】古河AS株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100114292
【弁理士】
【氏名又は名称】来間 清志
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】田島 秀一
(72)【発明者】
【氏名】井上 大輔
(72)【発明者】
【氏名】石田 祥之
(72)【発明者】
【氏名】松嶋 禎央
【審査官】 公文代 康祐
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−069634(JP,A)
【文献】 特開2006−140956(JP,A)
【文献】 特開平08−148922(JP,A)
【文献】 特開2009−124485(JP,A)
【文献】 特開平10−079616(JP,A)
【文献】 米国特許第04517566(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S 7/00− 7/42
G01S 13/00−13/95
H01Q 1/42
B60R 21/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
波長λの電波を出射して反射波を測定することにより検知対象物を検知するレーダ装置と、
前記レーダ装置と検知対象物との間に介在する介在物と、
を有するレーダ装置の配置構造であって、
前記介在物の厚さは、当該厚さ方向に前記電波が伝搬する電気長が実質的にλ/2の整数倍となる厚さであり、
前記レーダ装置は、車両に搭載され、
前記介在物は、前記車両の車両外板と、前記車両外板における前記電波が透過する位置に配置された所定の誘電体とから構成され、
前記所定の誘電体の厚さは、前記車両外板を電波が透過する電気長と前記所定の誘電体を電波が透過する電気長との和が実質的にλ/2の整数倍となるように調整されており、
前記車両外板の前記電波が伝搬する部位に、前記電気長が実質的にλ/2の整数倍となる厚さに調整された凹部又は凸部が形成されていることを特徴とするレーダ装置の配置構造。
【請求項2】
前記所定の誘電体は、前記レーダ装置を前記車両外板側もしくは前記車両側に取り付けるための構造を有する樹脂ブラケットであることを特徴とする請求項1記載のレーダ装置の配置構造。
【請求項3】
前記所定の誘電体は、粘着層と基材から構成された誘電材料であることを特徴とする請求項1記載のレーダ装置の配置構造。
【請求項4】
前記所定の誘電体は、前記誘電材料を少なくとも2層以上重ねて用いられることを特徴とする請求項記載のレーダ装置の配置構造。
【請求項5】
前記基材は、前記粘着層に対して少なくとも5倍以上の厚みを持つことを特徴とする請求項乃至記載のレーダ装置の配置構造。
【請求項6】
前記粘着層は、アクリル系材料であることを特徴とする請求項乃至記載のレーダ装置の配置構造。
【請求項7】
前記基材は、発泡性材料であることを特徴とする請求項乃至記載のレーダ装置の配置構造。
【請求項8】
前記基材は、熱可塑性エラストマーであることを特徴とする請求項乃至記載のレーダ装置の配置構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーダ装置と検知対象物との間に介在物を有するレーダ装置の配置構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、車両用バンパなどの被覆部品の裏側に配置されたレーダ装置から電波を出射して、検知対象物からの反射波を計測することで、検知対象物の距離を検知している(例えば特許文献1〜4を参照)。レーダ装置から出射される電波は、被覆部品を透過するため、例えば被覆部品の塗装面の影響によって透過特性が劣化する。このような問題に対して、特許文献1に記載された発明では、被覆部品の表面と、電波の経路部分に形成した凹凸形状の表面とからそれぞれ反射した電波を干渉させることで、透過特性の劣化を防止することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2013−257275号公報
【特許文献2】特開2009−156705号公報
【特許文献3】特開2008−249678号公報
【特許文献4】特開平11−231041号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上述した特許文献1に記載された発明を含め、従来のレーダ装置の配置構造では、レーダ装置と検知対象物との間に介在する介在物から反射してレーダ装置が受ける電波を抑制するため、様々な試行錯誤を行っている。このような試行錯誤の結果、レーダ装置が検知可能な検知範囲の外周(レーダチャート)は、ほぼ理想的な略扇形となることとされている。しかし、このように調整できるのは、あらかじめレーダ装置と検知対象物との間に介在する介在物が特定されていて、その介在物に対して様々な調整作業が行われた場合に限られる。例えば、レーダ装置を任意の介在物が存在する環境に事後的に取り付ける場合には、介在物の種類や形状によっては、レーダチャートにノコギリ歯のような刻み目が生じてしまうことがあるため、介在物の種類毎に調整作業を行わなければ、精度良く検知対象物を検知することができないことがあった。
【0005】
本発明は、以上のような従来の課題を解決するものであって、介在物による反射の影響を容易に軽減し、検知対象物を精度良く検知可能なレーダ装置の配置構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するため、本発明は、波長λの電波を出射して反射波を測定することにより検知対象物を検知するレーダ装置と、前記レーダ装置と検知対象物との間に介在する介在物と、を有するレーダ装置の配置構造であって、前記介在物の厚さは、当該厚さ方向に前記電波が伝搬する電気長が実質的にλ/2の整数倍となる厚さであることを特徴とする。
【0007】
本発明によれば、介在物の厚さを、当該厚さ方向に電波が伝搬する電気長が実質的にλ/2の整数倍となる厚さにすることによって、レーダ装置と検知対象物との間に介在する介在物から反射してレーダ装置が受ける電波自体を抑制することができる。介在物から反射してレーダ装置が受ける電波自体を抑制することにより、検知対象物を精度良く検知することができる。
【0008】
本発明の好ましい態様では、レーダ装置は、車両に搭載され、前記介在物は、前記車両の車両外板から構成されることを特徴とする。本態様では、レーダ装置が搭載された車両の車両外板の見栄えを損なうことなく、車両周辺の検知対象物を精度良く検知することができる。
【0009】
本発明の好ましい態様では、前記介在物は、前記車両外板と、前記車両外板における前記電波が透過する位置に配置された所定の誘電体とから構成され、前記所定の誘電体の厚さは、前記車両外板を電波が伝搬する電気長と前記所定の誘電体を電波が伝搬する電気長との和が実質的にλ/2の整数倍となる厚さであることを特徴とする。本態様では、車両の強度設計などの要請によって車両外板の厚みが予め固定であっても、車両外板に配置される所定の誘電体の厚みを調整するという簡易的な手法により、車両周辺の検知対象物を精度良く検知することができる。
【0010】
本発明の好ましい態様では、前記車両外板の前記電波が透過する部位に、前記電気長が実質的にλ/2の整数倍となる厚さに調整された凹部又は凸部が形成されていることを特徴とする。本態様では、車両の強度設計などの要請により車両外板の厚みが予め固定であっても、車両外板の一部に凹部又は凸部を形成して厚みを調整するという簡易的な手法により、車両周辺の検知対象物を精度良く検知することができる。
【0011】
本発明の好ましい態様では、前記所定の誘電体は、前記レーダ装置を前記車両外板側もしくは前記車両側に取り付けるための構造を有する樹脂ブラケットであることを特徴とする。本態様では、車両毎に車両外板の厚さが異なっていても、前記レーダ装置を車両に取り付けるために設けられる樹脂ブラケットの厚みを調整することにより、追加部品を必要としないため低コストで、車両周辺の検知対象物を精度良く検知することができる。
【0012】
本発明の好ましい態様では、前記介在物は、前記レーダ装置が格納された樹脂筐体で構成されることを特徴とする。本態様では、車載に限定されない用途において、外観や耐久性等の制約から前記レーダ装置を樹脂筐体に格納する必要が生じた場合においても、検知対象物を精度良く検知することができる。
【0013】
本発明の好ましい態様では、前記介在物は、前記樹脂筐体と、前記樹脂筐体における前記電波が透過する位置に配置された所定の誘電体とから構成され、前記所定の誘電体の厚さは、前記樹脂筐体を電波が伝搬する電気長と前記所定の誘電体を電波が伝搬する電気長との和が実質的にλ/2の整数倍となる厚さであることを特徴とする。本態様では、外観や耐久性等の制約から前記レーダ装置を樹脂筐体に格納する必要が生じた場合においても、樹脂筐体に配置される所定の誘電体の厚みを調整するという簡易的な手法により、検知対象物を精度良く検知することができる。
【0014】
本発明の好ましい態様では、前記樹脂筐体の前記電波が伝搬する部位に、前記電気長が実質的にλ/2の整数倍となる厚さに調整された凹部又は凸部が形成されていることを特徴とする。本態様では、強度設計などの要請により樹脂筐体の厚みが予め固定であっても、樹脂筐体の一部に凹部又は凸部を形成して厚みを調整するという簡易的な手法により、検知対象物を精度良く検知することができる。
【0015】
本発明の好ましい態様では、前記所定の誘電体は、粘着層と基材から構成された誘電材料であることを特徴とする。本態様では、所定の厚みを持つテープ或いはシート状の前記誘電材料を、前記車両外板或いは前記樹脂筐体に貼り付けるという簡易的な手法により、検知対象物を精度良く検知することができる。また、前記誘電材料は1層に限らず、2層以上重ねることにより、厚みを調整しても良い。なお、一般的に前記誘電材料の前記粘着層は誘電損が大きく、厚くなるほど通過損失が大きくなってしまうため、前記基材は、前記粘着層に対して少なくとも5倍以上の厚みを持つことが望ましい。またこの場合、貼り付け工程に好ましい粘着層様態として、初期粘着性の確保のためアクリル系の接着材であることが望ましい。また、基材においてはたわむことなく任意の形状に曲げることが可能である、発泡性材料又は熱可塑性エラストマーが望ましい。
【発明の効果】
【0016】
以上のような本発明によれば、レーダ装置を任意の介在物が存在する環境に事後的に取り付ける場合であっても、レーダ装置と検知対象物との間に介在する介在物から反射してレーダ装置が受ける電波自体を容易に抑制して、検知対象物を精度良く検知可能なレーダ装置の配置構造を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の実施形態に係るレーダ装置の配置構造の具体例を示す概略図である。
図2】第1の評価試験を行うための装置構成について説明するための図である。
図3】誘電体厚さに応じて変化する反射特性及び通過特性について説明するための図である。
図4】第1の評価試験を行うための装置構成について説明するための図である。
図5】ドップラシフト発生器により所定のドップラ周波数を持つように設定された検知対象物の振幅特性について説明するための図である。
図6】ドップラシフト周波数を持たない静止した検知対象物の振幅特性について説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明を実施するための形態について具体例を示して説明する。本実施形態は、レーダ装置と検知対象物との間に介在物を有するレーダ装置の配置構造に関する。
【0019】
(1)全体構成
本実施形態のレーダ装置の配置構造は、例えば車両に搭載されるレーダ装置の配置構造であって、具体的には図1(A)乃至図1(D)に示すような配置構造となる。
【0020】
まず、第1の実施例に係る配置構造1aは、図1(A)に示すようにレーダ装置11と、レーダ装置11と被検知対象物との間に介在するバンパ12及び誘電体13と、を有する。
【0021】
レーダ装置11は、波長λの電波を測定面11aから出射するとともに測定面11aで受ける反射波を測定することにより検知対象物を検知する。また、レーダ装置11の測定面11aは、図1(A)に示すように、誘電体13と密着した状態で、バンパ12と対向するように配置される。
【0022】
また、レーダ装置11は、測定面11aで受信した反射波を、距離(又はレンジビン)毎にサンプリングし、サンプリングされたデータをプリサム処理し、その結果をFFT(Fast Fourier Transform)処理する。FFT処理では、各距離の信号について周波数解析を行って周波数毎に振幅出力を求める。このような処理を行った後、信号が検出された距離から対象物までの距離を、信号が検出された周波数シフト量からその距離で検出された対象物の相対速度を求めている。
【0023】
バンパ12は、PP樹脂などの合成樹脂素材からなる厚さd12(単位:mm)の車両外板である。つまり、バンパ12は、レーダ装置11と、当該レーダ装置11の検知対象物との間に介在する介在物である。
【0024】
また、誘電体13は、バンパ12の車両内部側表面12aの電波が透過する部位12a1と、レーダ装置11の測定面11aとの間に配置される厚さd13(単位:mm)の誘電体であって、バンパ12と同様、レーダ装置11と検知対象物との間に介在する介在物である。具体的に、レーダ装置11をバンパ12もしくは車両に取り付けるための構造を有する樹脂ブラケットを、誘電体13として用いることができる。
【0025】
樹脂ブラケット以外にも、粘着層と基材から構成された誘電材料を、誘電体13として用いることができる。当該誘電材料を誘電体13として用いる場合、貼り付け工程に好ましい態様として、粘着層は、初期粘着性の確保のためアクリル系の接着材であることが望ましい。また、基材は、たわむことなく任意の形状に曲げることが可能である、発泡性材料又は熱可塑性エラストマーが望ましい。
【0026】
このような構成からなる第1の実施例に係る配置構造1aでは、後述の性能評価などから明らかなように、介在物の厚さd(単位:mm)を、当該厚さ方向に電波が伝搬する電気長が実質的にλ/2の整数倍となる厚さとする。つまり、すなわち、厚さd12と厚さd13との和を、当該厚さ方向に電波が伝搬する電気長が実質的にλ/2の整数倍となる厚さとすることで、レーダ装置11と検知対象物との間に介在する介在物から反射してレーダ装置11が受ける電波自体を抑制する。
【0027】
なお、誘電体13とレーダ装置11の測定面11aとは必ずしも密着した状態である場合に限らず、図1(B)に示す第2の実施例に係る配置構造1bのように、誘電体13とレーダ装置11の測定面11aとが離間していてもよい。
【0028】
また、レーダ装置11と検知対象物との間に介在する介在物は、第1及び第2の実施例に係る配置構造1a、1bのように、バンパ12と誘電体13とから構成される場合に限らず、例えば図1(C)に示す第3の実施例に係る配置構造1cのように、バンパ12のみから構成されていてもよい。ここで、バンパ12の厚みは、車両の強度設計などの要請により予め固定される。このため、第3の実施例に係る配置構造1cに係るバンパ12には、電波が伝搬する部位に、厚み方向に電波が伝搬する電気長が実質的にλ/2の整数倍となる厚さに調整された凹部12bが形成されている。また、レーダ装置11は、その測定面11aが凹部12bの表面12b1に配置する。なお、当該電気長が実質的にλ/2の整数倍となる厚さに調整可能であれば、凹部12bの代わりにレーダ装置11側に突出した凸部がバンパ12に形成されていてもよい。
【0029】
なお、バンパ12の凹部12bとレーダ装置11の測定面11aとは必ずしも密着した状態である場合に限らず、図1(D)に示す第3の実施例に係る配置構造1dのように、バンパ12の凹部12bとレーダ装置11の測定面11aとが離間していてもよい。
【0030】
(2)性能評価
(2−1)第1の評価試験
第1の評価試験として、図2に示すように、ベクトルネットワークアナライザ21に接続された第1のホーンアンテナ23と第2のホーンアンテナ24との間に介在物を配置し、当該介在物の厚さに応じた反射特性及び通過特性について評価する。具体的には、図2に示すように、ベクトルネットワークアナライザ21の第1のポートport1に第1のホーンアンテナ23を接続し、第2のポートport2に第2のホーンアンテナ24を接続する。バンパ22は、第1のホーンアンテナ23と第2のホーンアンテナ24との間に介在するように配置する。第2のホーンアンテナ24とバンパ22の離間距離は1mとした。以上のような構成では、反射特性S11は、第1のポートport1から出力して第1のポートport1に戻ってくる信号の変化量であり、通過特性S21は、第1のポートport1から出力して第2のポートport1で受ける信号の変化量である。
【0031】
具体的な測定条件として、次の値を設定した。つまり、ベクトルネットワークアナライザ21の測定対象となる周波数帯を23.7〜24.5GHzにした。また、バンパ22の材質は、比誘電率が約2.3のPP樹脂で、その厚さは2.1mmとした。バンパ22のホーンアンテナ23側に挿入する誘電体には、比誘電率が約2.4の材料を使用した。
【0032】
図3(A)には、横軸に挿入する誘電体の厚さを示し、縦軸に反射特性S11を示したグラフL311が記載され、図3(B)には、横軸に挿入する誘電体の厚さを示し、縦軸に通過特性S21を示したグラフL321が記載されている。ここで、グラフL311、L321は、それぞれ測定中心が24.15GHzで±100MHz範囲の平均値を示している。また、図3(A)及び図3(B)は、バンパ22がない状態での反射特性S11を示したグラフL312及び通過特性S21を示したグラフL322が記載されている。
【0033】
図3(A)及び図3(B)から明らかなように、挿入する誘電体の厚さを変化させることにより、反射特性、通過特性がともに、1周期が約4mmの周期的な挙動を示している。バンパ21がないグラフL312、L322に近い条件については、挿入する誘電体の厚さが1.9mmであった。つまり、バンパ21の厚さと挿入する誘電体の厚さとを合わせた値が介在物の厚みであるため、介在物の厚みが約4mmのときが、バンパ21がない状態に近い条件となった。
【0034】
ここで、バンパ22と誘電体とから構成される介在物の誘電率を2.4と仮定すると、介在物の電気長は、測定中心の24.15GHzの波長をλとしたとき、およそλ/2となる。このような結果から明らかなように、介在物の厚みを、当該厚さ方向に電波が伝搬する電気長が実質的にλ/2の整数倍となる厚さとすることで、反射波をもっともよく抑圧する最適厚さとなった。具体的に、図3の結果を参照すれば、介在物を最適厚さ、つまり、当該厚さ方向に電波が伝搬する電気長が実質的にλ/2の整数倍となる厚さとすることで、反射特性で最大約22.5dB、通過特性で最大約1.2dBの改善が見られた。
【0035】
(2−2)第2の評価試験
次に、第2の評価試験として、図4に示すように、レーダ装置41の測定面41aと、ドップラシフト発生器42の反射面42aとを対向させ、レーダ装置41とドップラシフト発生器42との間にバンパ43を介在させて、ドップラシフト発生器42の検出結果を評価した。ここで、ドップラシフト発生器とは、レーダ装置から到来した特定周波数を持つ電波に対し、所定のドップラシフト周波数を生じさせた後、再放射させる装置のことである。
【0036】
また、バンパ43の材質は、第1の評価試験と同様、比誘電率が約2.3のPP樹脂とし、その厚さを2.1mmとした。バンパ43のレーダ装置41側に挿入する誘電体は、第1の評価試験と同様、比誘電率が約2.4のものを使用した。つまり、バンパ43のレーダ装置41側に挿入する誘電体の厚さは、第1の評価試験で最も良好な反射特性及び通過特性を示す厚さに設定した。また、レーダ装置41の測定面41aとドップラシフト発生器42の反射面42aとの離間距離は、2.4mとした。
【0037】
次に、図5を参照して、ドップラシフト発生器42により所定のドップラ周波数を持つように設定された検知対象物の振幅特性について評価する。
【0038】
図5(A)のP511では、バンパ43に誘電体を挿入しない場合における、距離(横軸)毎の振幅値(縦軸)のスペクトルを示している。図5(A)のP512では、レーダ装置41とドップラシフト発生器42との間にバンパ43を介在させない場合における、距離(横軸)毎の振幅値(縦軸)のスペクトルを示している。図5(A)から明らかなように、P511では、P512と比較して、2.4mの振幅が減少し、振幅のピークが3mに変化している。すなわち、図5(A)のP512の結果からでは、本来であれば検知対象物の位置が2.4mに相当する位置であるところを、3mに相当する位置であると誤って検知してしまうことになる。
【0039】
また、図5(B)のP521では、バンパ43に厚さ1.9mmの誘電体を挿入した場合における、距離(横軸)毎の振幅値(縦軸)のスペクトルを示している。図5(B)のP522では、レーダ装置41とドップラシフト発生器42との間にバンパ43を介在させない場合における、距離(横軸)毎の振幅値(縦軸)のスペクトルを示している。図5(B)から明らかなように、P521では、P522と同様に、振幅のピークが2.4mとなっている。つまり、図5(B)のP521の結果により、検知対象物の位置が2.4mに相当する位置であることを正確に検知することができる。
【0040】
上述した図5(A)及び図5(B)の結果から、バンパ43に誘電体を挿入し、レーダ装置41とドップラシフト発生器42との間の介在物の厚みを、当該厚さ方向に電波が伝搬する電気長が実質的にλ/2の整数倍となる厚さとすることで、振幅のピークが2.4mに戻り、振幅値も大きくなっていることが分かる。つまり、介在物の厚みを当該厚さ方向に電波が伝搬する電気長が実質的にλ/2の整数倍となる厚さにすることで、検知対象物を正確に検知することができる。
【0041】
次に、図6を参照して、ドップラシフト周波数を持たない、すなわち静止した検知対象物の振幅特性について評価する。
【0042】
具体的に、図6(A)のグラフP612およびP611は、バンパがない場合の、距離(横軸)毎の振幅(縦軸)および、バンパ43に誘電体を挿入しない場合の、距離毎の振幅をそれぞれ示している。また、図6(B)のグラフP622およびP621では、バンパがない場合の、距離(横軸)毎の振幅(縦軸)および、バンパ43に誘電体を挿入した場合の、距離毎の振幅を示している。
【0043】
図6(A)及び図6(B)から明らかなように、バンパ43に誘電体を挿入しない場合には、バンパ43がない場合と比べて、距離約3m以下では振幅値が極端に高く、3m以上においても全体的に振幅値が大きくなる傾向があるのに対し、バンパ43に1.9mmの誘電体を挿入した場合には、約1.8m以遠で、バンパ43がない場合と同等の振幅値になっている。
【0044】
すなわち、誘電体を挿入しない場合には、バンパ43からの不要反射の影響が約3m以上にまで及んでいる一方で、誘電体を挿入した場合は、パンパ43からの不要反射を抑制できたことにより、約1.8m以遠の比較的近距離から、バンパ43がない場合と同等の検知性能を実現することが可能になる。
【0045】
(3)他の適用例
本発明が適用されるレーダ装置の配置構造は、上述したようなレーダ装置が車両に搭載される適用例に限定されず、例えばレーダ装置が格納される樹脂筐体を、レーダ装置と検知対象物との間に介在する介在物として扱うことが可能である。つまり、当該樹脂筐体の厚さを、当該厚さ方向に電波が伝搬する電気長が実質的にλ/2の整数倍となる厚さとすることにより、外観や耐久性等の制約からレーダ装置を樹脂筐体に格納する必要が生じた場合においても、検知対象物を精度良く検知することができる。
【0046】
また、介在物は、樹脂筐体と、樹脂筐体における電波が透過する位置に配置された誘電体とから構成されてもよい。この場合、誘電体の厚さは、樹脂筐体を電波が伝搬する電気長と誘電体を電波が伝搬する電気長との和が実質的にλ/2の整数倍となる厚さにする。上記の通り、介在物が樹脂筐体と誘電体とから構成されることにより、外観や耐久性等の制約からレーダ装置を樹脂筐体に格納する必要が生じた場合においても、樹脂筐体に配置される電体の厚みを調整するという簡易的な手法により、検知対象物を精度良く検知することができる。
【0047】
また、誘電体を用いる以外に、樹脂筐体の電波が伝搬する部位に、電気長が実質的にλ/2の整数倍となる厚さに調整された凹部又は凸部を形成してもよい。この場合、強度設計などの要請により樹脂筐体の厚みが予め固定であっても、樹脂筐体の一部に凹部又は凸部を形成して厚みを調整するという簡易的な手法により、検知対象物を精度良く検知することができる。
【0048】
(4)本実施形態に係る効果
本実施形態に係るレーダ装置の配置構造は、介在物の厚さを、当該厚さ方向に電波が伝搬する電気長が実質的にλ/2の整数倍となる厚さにすることによって、上述した第1及び第2の評価試験から明らかなように、レーダ装置と検知対象物との間に介在する介在物から反射してレーダ装置が受ける電波自体を抑制することができる。このようにして、介在物から反射してレーダ装置が受ける電波自体を抑制して、検知対象物を精度良く検知することができる。
【0049】
また、本実施形態に係るレーダ装置の配置構造は、上述した第1乃至第4の実施例に係る配置構造1a〜1dに示したように、レーダ装置が搭載された車両の車両外板(バンパ)の見栄えを損なうことなく、車両周辺の検知対象物を精度良く検知することができる。
【0050】
また、本実施形態に係るレーダ装置の配置構造は、上述した第1及び第2の実施例に係る配置構造1a、1bに示したように、車両の強度設計などの要請によって車両外板の厚みが予め固定であっても、車両外板に配置される所定の誘電体の厚みを調整するという簡易的な手法により、車両周辺の検知対象物を精度良く検知することができる。
【0051】
また、本実施形態に係るレーダ装置の配置構造は、上述した第3及び第4の実施例に係る配置構造1c、1dに示したように、車両の強度設計などの要請により車両外板の厚みが予め固定であっても、車両外板の一部に凹部又は凸部を形成して厚みを調整するという簡易的な手法により、車両周辺の検知対象物を精度良く検知することができる。
【0052】
また、本実施形態に係るレーダ装置の配置構造は、車両毎に車両外板の厚さが異なっていても、レーダ装置を車両に取り付けるために設けられる樹脂ブラケットの厚みを調整することにより、追加部品を必要としないため低コストで、車両周辺の検知対象物を精度良く検知することができる。
【0053】
また、本実施形態に係るレーダ装置の配置構造は、外観や耐久性等の制約からレーダ装置を樹脂筐体に格納する必要が生じた場合においても、検知対象物を精度良く検知することができる。このようにレーダ装置を樹脂筐体に格納する必要が生じた場合においても、樹脂筐体に配置される所定の誘電体の厚みを調整するという簡易的な手法により、検知対象物を精度良く検知することができる。また、当該樹脂筐体の厚みが予め固定であっても、樹脂筐体の一部に凹部又は凸部を形成して厚みを調整するという簡易的な手法により、検知対象物を精度良く検知することができる。
【0054】
また、本実施形態に係るレーダ装置の配置構造は、所定の厚みを持つテープ或いはシート状の誘電材料を、車両外板或いは前記樹脂筐体に貼り付けるという簡易的な手法により、検知対象物を精度良く検知することができる。また、誘電材料は1層に限らず、2層以上重ねることにより、厚みを調整しても良い。なお、一般的に誘電材料の前記粘着層は誘電損が大きく、厚くなるほど通過損失が大きくなってしまうため、基材は、粘着層に対して少なくとも5倍以上の厚みを持つことが望ましい。また、テープ或いはシート状の誘電材料を用いる場合、貼り付け工程に好ましい粘着層様態として、初期粘着性の確保のためアクリル系の接着材であることが望ましい。また、基材においてはたわむことなく任意の形状に曲げることが可能である、発泡性材料又は熱可塑性エラストマーが望ましい。
【0055】
なお、本実施形体及び効果の一部は、距離、相対速度を求めるパルス方式レーダについて記述しているが、求める数値や、方式に限定されることなく、FM−CW方式レーダなどの連続波レーダ等、いずれの方式にも適用できることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0056】
1a〜1d 配置構造
11、41 レーダ装置
12、22、43 バンパ
13 誘電体
図1
図2
図3
図4
図5
図6