(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記特許文献1,2のいずれにおいても、積層超電導体を形成する超電導線の全てに同じ方向(一方向)のみに通電していた。
そのため、積層超電導体に自己磁界が発生し、例えば、超電導ケーブルとして複数の積層超電導体を一つの管材内に収容する際に、互いに磁界の影響を受けてしまい積層超電導体に流すことができる臨界電流が低下するという問題があった。
このような問題を解決するために、積層超電導体における超電導線の積層方向の上半分と下半分に互いに逆方向となるように通電することも考えられるが、自己磁界を完全に消すことはできず、臨界電流が低下するという問題を解消することはできなかった。
【0005】
そこで、本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、積層超電導体の自己磁界を消して、臨界電流の低下を防止することができる積層超電導体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明は、基板と、前記基板の一方の面に形成された超電導層とを有する超電導線を厚さ方向に複数積層し、超電導線同士を絶縁体で電気絶縁した積層超電導体であって、積層方向に隣り合う前記超電導線に流す電流の向きが逆方向であることを特徴とする。
【0007】
この発明の一態様として、積層方向に隣り合う前記超電導線の一方にのみ絶縁処理を施したことが好ましい。
【0008】
この発明の一態様として、積層超電導体の端部において一方向に電流が流れる超電導線の端部と、他方向に電流が流れる超電導線の端部とを有することが好ましい。
【0009】
この発明の一態様として、前記一方向に電流が流れる超電導線の端部と前記他方向に電流が流れる超電導線の端部の積層方向の位置が異なることが好ましい。
【0010】
この発明の一態様として、前記一方向に電流が流れる超電導線の端部は、前記他方向に電流が流れる超電導線の長手方向に対して交差する方向に沿って延在する引出導線部を有することが好ましい。
【0011】
この発明の一態様として、前記一方向に電流が流れる超電導線の端部は、前記他方向に電流が流れる超電導線から離れる方向に延在する引出導線部を有し、前記他方向に電流が流れる超電導線の端部は、前記一方向に電流が流れる超電導線から離れる方向に延在する引出導線部を有することが好ましい。
【0012】
この発明の一態様として、前記一方向に電流が流れる超電導線と前記他方向に電流が流れる超電導線のうち、一方の超電導線のみに絶縁処理を施したことが好ましい。
【0013】
この発明の一態様として、前記一方向に電流が流れる超電導線は、第1の本体部と、前記第1の本体部に接続され、電流を供給する端子に接続される第1の引出導線部とを有し、前記他方向に電流が流れる超電導線は、第2の本体部と、前記第2の本体部に接続され、電流を供給する端子に接続される第2の引出導線部とを有し、前記第1の本体部は、その端部に第1の切欠部を有し、前記第2の本体部は、その端部に第2の切欠部を有し、前記第1の切欠部と前記第2の切欠部は、積層方向に互いに少なくとも一部が重ならない位置にそれぞれ形成され、前記第1の引出導線部は、前記第1の切欠部に前記積層方向に重ならないように、かつ少なくとも一部が前記第2の切欠部に前記積層方向に重なるように前記第1の本体部の端部に接続され、前記第2の引出導線部は、前記第2の切欠部に前記積層方向に重ならないように、かつ少なくとも一部が前記第1の切欠部に前記積層方向に重なるように前記第2の本体部の端部に接続されていることが好ましい。
【0014】
この発明の一態様として、前記第1の引出導線部と前記第2の引出導線部は、互いに隣接するように本体部に接続されていることが好ましい。
【0015】
この発明の一態様として、各切欠部は、各本体部の長手方向において幅が変化する変化部を有することが好ましい。
【0016】
この発明の一態様として、各切欠部は、前記変化部に連続し、各本体部の長手方向において幅が変化しない直線部を有することが好ましい。
【0017】
この発明の一態様として、前記変化部は、直線状に形成されていることが好ましい。
【0018】
この発明の一態様として、前記変化部は、曲線状に形成されていることが好ましい。
【0019】
この発明の一態様として、各変化部の長さは、少なくとも前記本体部の幅よりも長いことが好ましい。
【0020】
この発明の一態様として、前記直線部の幅は、前記本体部の幅の1/2であることが好ましい。
【0021】
この発明の一態様として、各引出導線部の幅は、各切欠部の幅よりも大きいことが好ましい。
【0022】
この発明の一態様として、前記第1の引出導線部は、前記本体部の端部と接触していない第1の引出部を有し、前記第2の引出導線部は、前記本体部の端部と接触していない第2の引出部を有し、積層された第1の引出部同士が溶材によって一体化され、積層された第2の引出部同士が溶材によって一体化されていることが好ましい。
【0023】
また、本発明は、上記の積層超電導体と、電流を前記積層超電導体に流すための通電端子とが接続された直流超電導ケーブルである。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、積層超電導体の自己磁界を消して、臨界電流の低下を防止することができる。
【発明を実施するための形態】
【0026】
この発明の好ましい実施形態1〜4について、図面を参照しながら説明する。なお、以下に示す実施形態は一つの例示であり、本発明の範囲において、種々の実施形態をとり得る。
【0027】
[実施形態1]
<積層超電導体>
図1に示すように、積層超電導体100は、テープ状の超電導線1,2を当該超電導線1,2の厚さ方向に複数積層することによって形成されている。
超電導線1,2は、金属材料から形成された基板と、この基板の一方の面に形成された超電導層とを有している。超電導層は、中間層を介して基板に設けられており、超電導層における中間層と反対側の面には、保護層が形成されている。
各超電導線1,2は、例えば、絶縁材料によって被覆されることで、超電導線1,2同士が互いに電気的に絶縁されている。なお、各超電導線1,2を全て絶縁材料で被覆してもよいが、材料の節約、通電のための端子接続時の被覆の剥離作業を軽減するため、積層された超電導線の積層方向に隣接する超電導線1,2の一方にのみ絶縁被覆を施してもよい。
【0028】
図1は、積層方向に隣接する超電導線1,2の端部を拡大した斜視図である。
積層超電導体100は、積層方向に隣接する超電導線1,2に流す電流の向きが逆方向となっている。
【0029】
(積層方向上側に位置する超電導線)
積層方向上側に位置する超電導線1は、超電導線1の端部に接続される通電用の端子を介して一方向に電流が流される。
超電導線1は、本体部11と、引出導線部12とを有している。
本体部11は、一方向に長尺なテープ状に形成されており、その端部に切欠部13が形成されている。
切欠部13は、本体部11の長手方向に直交する幅方向の一方の側縁部11aから端縁部11bにわたって切り欠かれている。切欠部13は、本体部11の長手方向において幅が変化する変化部14と、この変化部14に連続して形成され、本体部11の長手方向において幅が変化しない直線部15とを有している。
変化部14は、本体部11の端部において、一方の側縁部11aから徐々に幅が広くなるように形成されており、本体部11の幅方向のほぼ中間位置まで切り欠かれている。変化部14の変化は、直線的(一次関数的)に幅が広がっている。すなわち、変化部14を形成する縁部は、本体部11の一方の側縁部11aから他方の側縁部11cに向かって直線状に形成されている。
直線部15は、変化部14において最も広い幅となる位置から連続するように形成されており、本体部11の端縁部11bまで一定の幅で切り欠かれている。すなわち、直線部15を形成する縁部は、本体部11の一方の側縁部11aに対して平行となるよう直線状に形成されている。直線部15は、その幅が本体部11の幅の1/2程度となるように形成されている。
【0030】
引出導線部12は、本体部11の端部に半田を介して接合されており、超電導線1に電流を供給する端子に電気的に接続される。引出導線部12は、本体部11の切り欠かれた端部の幅よりも大きい幅を有するように形成されており、本体部11に接合した際に幅方向の一端部が本体部11よりも外側(他方の側縁部11c側)に張り出すように形成されている。引出導体部12は、本体部11と同じ厚さに形成されている。
引出導線部12は、本体部11に接合される接合部16と、接合部16と本体部11の端部とが接合された際に、本体部11の端部と接触することなく、本体部11の他方の側縁部11cから外側に張り出す引出部17とを有している。
接合部16は、切欠部13の直線部15が形成された本体部11の幅とほぼ等しい幅を有するように形成されている。接合部16の角は、直線状に切り落とされており、この切落部16aの直線の長さは本体部11の幅よりも長くなるように、好適には、本体部11の幅の5倍程度の長さとなるように形成されている。
引出部17は、超電導線1に通電するための端子と接続される部分であり、接合部16と一体に形成されている。積層された各超電導線1の引出部17は、溶材としての半田によって一体化されている。
【0031】
(積層方向下側に位置する超電導線)
積層方向下側に位置する超電導線2は、超電導線2の端部に接続される通電用の端子を介して、超電導線1とは逆方向に電流が流される。
超電導線2は、本体部21と、引出導線部22とを有している。
本体部21は、本体部11と同様の構成であり、一方向に長尺なテープ状に形成されており、その端部に切欠部23が形成されている。
切欠部23は、本体部21の長手方向に直交する幅方向の一方の側縁部21aとは反対側の他方の側縁部21cから端縁部21bにわたって切り欠かれている。切欠部23は、本体部21の長手方向において幅が変化する変化部24と、この変化部24に連続して形成され、本体部21の長手方向において幅が変化しない直線部25とを有している。
変化部24は、本体部21の端部において、他方の側縁部21cから徐々に幅が広くなるように形成されており、本体部21の幅方向のほぼ中間位置まで切り欠かれている。変化部24の変化は、直線的(一次関数的)に幅が広がっている。すなわち、変化部24を形成する縁部は、本体部21の他方の側縁部21cから一方の側縁部21aに向かって直線状に形成されている。
直線部25は、変化部24において最も広い幅となる位置から連続するように形成されており、本体部21の端縁部21bまで一定の幅で切り欠かれている。すなわち、直線部25を形成する縁部は、本体部21の他方の側縁部21cに対して平行となるよう直線状に形成されている。直線部25は、その幅が本体部21の幅の1/2程度となるように形成されている。
ここで、変化部24は、変化部14と同じ長さに形成されており、直線部25は、直線部15と同じ長さに形成されている。すなわち、切欠部13と切欠部23は同じ大きさとなるように形成されている。
【0032】
引出導線部22は、本体部21の端部に半田を介して接合されており、超電導線2に電流を供給する端子に電気的に接続される。引出導線部22は、本体部21の切り欠かれた端部の幅よりも大きい幅を有するように形成されており、本体部21に接合した際に幅方向の一端部が本体部21よりも外側(一方の側縁部側)に張り出すように形成されている。引出導線部22は、本体部21と同じ厚さに形成されている。
引出導線部22は、本体部21に接合される接合部26と、接合部26と本体部21の端部とが接合された際に、本体部21の端部と接触することなく、本体部21の一方の側縁部21aから外側に張り出す引出部27とを有している。
接合部26は、切欠部23の直線部25が形成された本体部21の幅とほぼ等しい幅を有するように形成されている。接合部26の角は、直線状に切り落とされており、この切落部26aの直線の長さは本体部21の幅よりも長くなるように、好適には、本体部21の幅の5倍程度の長さとなるように形成されている。
引出部27は、超電導線2に通電するための端子と接続される部分であり、接合部26と一体に形成されている。積層された各超電導線2の引出部27は、溶材としての半田によって一体化されている。
引出導線部22は、引出導線部12と表面積及び厚さが同じになるように形成されている。
【0033】
(隣接する超電導線の端部の接続構造)
図1に示すように、隣接する超電導線1,2の端部は、互いに逆の側縁部に切欠部13,23が形成されており、超電導層1,2を積層した際に、切欠部13,23が積層方向に互いに重ならないように形成されている。
引出導線部12は、接合部16が本体部11の切欠部13に積層方向に重ならないように、かつ、接合部16が本体部21の切欠部23に積層方向に重なるように、本体部11に接合されている。接合部16の一部は、切欠部23の形状に対して相補的に形成されている。
引出導線部22は、接合部26が本体部21の切欠部23に積層方向に重ならないように、かつ、接合部26が本体部11の切欠部13に積層方向に重なるように、本体部11に接合されている。接合部26の一部は、切欠部13の形状に対して相補的に形成されている。
【0034】
このような構成を採用することにより、
図2に示すように、本体部11と本体部21とが積層された際に、超電導線1の切欠部13によって超電導線2の端部の上面に引出導線部22を接合するスペースができ、このスペースに引出導線部22が嵌り込むように引出導線部22を本体部21に接合する。一方、超電導線2の切欠部23によって、超電導線2の積層方向下側に位置する超電導線1の端部の下面に引出導線部12を接合するスペースができ、このスペースに引出導線部12が嵌り込むように引出導線部12を本体部11に接合する。また、引出導線部12と引出導線部22は、本体部11と本体部21を積層した際に、互いに隣接して配置される。これにより、引出導線部12,22を本体部11,21に積層方向に重ねて接合しても、引出導線部12,22の厚さがそのまま超電導線1,2の厚さを増加させることにならず、超電導線1,2を薄型化することができる。
なお、
図3に示すように、超電導線1,2が積層された積層超電導体100において、半田で一体化された引出導線部12の引出部17を治具によって積層方向上方向に折り曲げ、半田で一体化された引出導線部22の引出部27を治具によって積層方向下方向に折り曲げてもよい。これにより、通電のための端子同士をより遠くに離すことで、超電導線1と超電導線2の絶縁効果を高めることができる。
【0035】
以上のように、積層超電導体100によれば、交互に積層された超電導線1,2に対して、互いに逆方向に電流を流すことにより、各超電導線1,2に発生する自己磁界は隣接する自己磁界によって打ち消し合う。これにより、積層超電導体100は、通電によって発生する自己磁界の影響によって臨界電流が低下することを防止できる。
また、同じ方向に電流を流す超電導線1,2を一つにまとめて超電導線1,2の幅方向に分岐させることができるので、従来のように、超電導線の導体層を順次段階的に露出させる必要がなくなり、端子接続の際の導体層の引き出し構造を簡易かつ小型化することができる。
また、従来のように段階的に導体層を露出させると、その露出部分については、超電導線の層が薄くなり、強度が低下するが、実施形態1によれば、各超電導線1,2の導体層を段階的に露出させる必要がないため、強度の低下を防止でき、熱応力やねじり応力に対する耐性を低下させることがない。
また、電流を流す方向毎に分けて一括して端子に接続することができるため、施工性の低下を防止できる。
また、切欠部13,23の変化部14,24の長さは、本体部11,21の幅よりも長いので、引出導体部12,22と本体部11,21との接続部分で電流の流れを阻害することがなくなり、臨界電流の低下を防止できる。
【0036】
[実施形態2]
次に、実施形態2について説明する。
図4は、積層方向に隣接する超電導線3,4の端部を拡大した斜視図である。
積層超電導体101は、積層方向に隣接する超電導線3,4に流す電流の向きが逆方向となっている。
【0037】
(積層方向上側に位置する超電導線)
積層方向上側に位置する超電導線3は、超電導線3の端部に接続される通電用の端子を介して一方向に電流が流される。
超電導線3は、本体部31と、引出導線部32とを有している。
本体部31は、一方向に長尺なテープ状に形成されており、その端部に切欠部33が形成されている。
切欠部33は、本体部31の長手方向に直交する幅方向の一方の側縁部31aから端縁部31bにわたって切り欠かれている。切欠部33は、本体部31の長手方向において幅が変化する変化部34と、を有している。
変化部34は、本体部31の端部において、一方の側縁部31aから徐々に幅が広くなるように形成されており、本体部31の幅方向のほぼ中間位置まで切り欠かれている。変化部34の変化は、直線的(一次関数的)に幅が広がっている。すなわち、変化部34を形成する縁部は、本体部31の一方の側縁部31aから他方の側縁部31cに向かって直線状に形成されており、端縁部31bまで連続している。
【0038】
引出導線部32は、本体部31の端部に半田を介して接合されており、超電導線3に電流を供給する端子に電気的に接続される。引出導線部32は、本体部31の端縁部31bの幅よりも大きい幅を有するように形成されており、本体部31に接合した際に幅方向の一端部が本体部31よりも外側(他方の側縁部31c側)に張り出すように形成されている。引出導線部32は、本体部31と同じ厚さに形成されている。
引出導線部32は、本体部31に接合される接合部36と、接合部36と本体部31の端部とが接合された際に、本体部31の端部と接触することなく、本体部31の他方の側縁部31cから外側に張り出す引出部37とを有している。
接合部36は、本体部31の端縁部31bの幅とほぼ等しい幅を有するように形成されている。接合部36の角は、直線状に切り落とされており、この切落部36aの直線の長さは本体部31の幅よりも長くなるように、好適には、本体部31の幅の5倍程度の長さとなるように形成されている。
引出部37は、超電導線3に通電するための端子と接続される部分であり、接合部36と一体に形成されている。積層された各超電導線3の引出部37は、溶材としての半田によって一体化されている。
【0039】
(積層方向下側に位置する超電導線)
積層方向下側に位置する超電導線4は、超電導線4の端部に接続される通電用の端子を介して、超電導線3とは逆方向に電流が流される。
超電導線4は、本体部41と、引出導線部42とを有している。
本体部41は、一方向に長尺なテープ状に形成されており、その端部に切欠部43が形成されている。
切欠部43は、本体部41の長手方向に直交する幅方向の一方の側縁部41aとは反対側の他方の側縁部41cから端縁部41bにわたって切り欠かれている。切欠部43は、本体部41の長手方向において幅が変化する変化部44を有している。
変化部44は、本体部41の端部において、他方の側縁部41cから徐々に幅が広くなるように形成されており、本体部41の幅方向のほぼ中間位置まで切り欠かれている。変化部44の変化は、直線的(一次関数的)に幅が広がっている。すなわち、変化部44を形成する縁部は、本体部41の他方の側縁部41cから一方の側縁部41aに向かって直線状に形成されており、端縁部41bまで連続している。
ここで、変化部44は、変化部34と同じ長さに形成されている。すなわち、切欠部33と切欠部43は同じ大きさとなるように形成されている。
【0040】
引出導線部42は、本体部41の端部に半田を介して接合されており、超電導線4に電流を供給する端子に電気的に接続される。引出導線部42は、本体部41の端縁部41bの幅よりも大きい幅を有するように形成されており、本体部41に接合した際に幅方向の一端部が本体部41よりも外側(一方の側縁部41a側)に張り出すように形成されている。引出導線部42は、本体部41と同じ厚さに形成されている。
引出導線部42は、本体部41に接合される接合部46と、接合部46と本体部41の端部とが接合された際に、本体部41の端部と接触することなく、本体部41の一方の側縁部41aから外側に張り出す引出部47とを有している。
接合部46は、本体部41の端縁部41bの幅とほぼ等しい幅を有するように形成されている。接合部46の角は、直線状に切り落とされており、この切落部46aの直線の長さは本体部41の幅よりも長くなるように、好適には、本体部41の幅の5倍程度の長さとなるように形成されている。
引出部47は、超電導線4に通電するための端子と接続される部分であり、接合部46と一体に形成されている。積層された各超電導線4の引出部47は、溶材としての半田によって一体化されている。
引出導線部42は、引出導線部32と表面積及び厚さが同じになるように形成されている。
【0041】
(隣接する超電導線の端部の接続構造)
図4に示すように、隣接する超電導線3,4の端部は、互いに逆の側縁部に切欠部33,43が形成されており、超電導層3,4を積層した際に、切欠部33,43が積層方向に互いに重ならないように形成されている。
引出導線部32は、接合部36が本体部31の切欠部33に積層方向に重ならないように、かつ、接合部36が本体部41の切欠部43に積層方向に重なるように、本体部41に接合されている。接合部36の一部は、切欠部43の形状に対して相補的に形成されている。
引出導線部42は、接合部46が本体部41の切欠部43に積層方向に重ならないように、かつ、接合部46が本体部31の切欠部33に積層方向に重なるように、本体部31に接合されている。接合部46の一部は、切欠部33の形状に対して相補的に形成されている。
【0042】
その結果、引出導線部32が接合された本体部31と引出導線部42が接合された本体部41とが積層された際に、超電導線3の切欠部33によって超電導線4の端部の上面に引出導線部42を接合するスペースができ、このスペースに引出導線部42が嵌り込み、超電導線4の切欠部43によって、超電導線4の積層方向下側に位置する超電導線3の端部の下面に引出導線部32を接合するスペースができ、このスペースに引出導線部32が嵌り込む。また、引出導線部32と引出導線部42は、本体部31と本体部41を積層した際に、互いに隣接して配置される。これにより、引出導線部32,42を本体部31,41に積層方向に重ねて接合しても、引出導線部32,42の厚さがそのまま超電導線3,4の厚さを増加させることにならず、超電導線3,4を薄型化することができる。
なお、実施形態2においては、互いに逆方向に電流を流す引出導線部32,42の隣接部分が省かれているため、絶縁は十分にされており、実施形態1のように、超電導線3,4が積層された積層超電導体101において、半田で一体化された引出部37及び引出部47を治具によって積層方向に折り曲げる必要がない。
【0043】
以上のように、積層超電導体101によれば、実施形態1の積層超電導体100によって奏する効果はもちろんのこと、実施形態1の積層超電導体100における直線部15,25が省かれているため、互いに逆方向に電流を流す引出導線部32,42の隣接部分がなく、絶縁が十分に行われている。よって、通電のための端子との接続領域は小さくなるものの、絶縁に関しては実施形態1の積層超電導体100よりもより効果的である。
【0044】
[実施形態3]
次に、実施形態3について説明する。
図5は、積層方向に隣接する超電導線5,6の端部を拡大した斜視図である。
積層超電導体102は、積層方向に隣接する超電導線5,6に流す電流の向きが逆方向となっている。
【0045】
(積層方向上側に位置する超電導線)
積層方向上側に位置する超電導線5は、超電導線5の端部に接続される通電用の端子を介して一方向に電流が流される。
超電導線5は、超電導線1の本体部のみで形成されており、一方向に長尺なテープ状に形成されている。また、超電導線5は、上記実施形態1,2の超電導線1〜4のように、引出導線部を有しておらず、切欠部も形成されていない。
【0046】
(積層方向下側に位置する超電導線)
積層方向下側に位置する超電導線6は、超電導線6の端部に接続される通電用の端子を介して、超電導線5とは逆方向に電流が流される。
超電導線6は、本体部61と、引出導線部62とを有している。
本体部61は、一方向に長尺なテープ状に形成されている。
引出導線部62は、本体部61の下面側における端部に接合されており、その端部が本体部61の長手方向に対して交差する方向に沿って、本体部61の一方の側縁部61aから外側に向けて延びている。引出導線部62は、超電導線6に電流を供給する端子に電気的に接続される。引出導線部62は、積層方向に重なる本体部61から端子に接続するための引出線として機能すればよいため、本体部61よりも短く、本体部61と同じ幅に形成されている。
本体部61の一方の側縁部61aが引出導線部62の上面と交差する直線の長さは、本体部61の幅よりも長くなるように、好適には、本体部61の幅の5倍程度の長さとなるように形成されている。
引出導線部62のうち、本体部61から外側に向けて引き出されている部分は、超電導線6に通電するための端子と接続される部分であり、溶材としての半田によって一体化されている。
ここで、引出導線部62は、超電導線6のみが有しているため、超電導線5だけに絶縁被膜等の絶縁処理を施し、超電導線6には絶縁処理を行わないことも可能である。
【0047】
(隣接する超電導線の端部の接続構造)
図5に示すように、一方向に電流が流れる超電導線5と超電導線5とは逆方向に電流が流れる超電導線6とを交互に積層することにより、超電導線5の端部と超電導線6の端部(引出導線部62の端部)とが互いに離間されると共に、それぞれが一つにまとめられる。
【0048】
以上のように、積層超電導体102によれば、交互に積層された超電導線5,6に対して、互いに逆方向に電流を流すことにより、各超電導線5,6に発生する自己磁界は隣接する自己磁界によって打ち消し合う。これにより、積層超電導体102は、通電によって発生する自己磁界の影響によって臨界電流が低下することを防止できる。
また、同じ方向に電流を流す超電導線3,4を一つにまとめて超電導線3,4の幅方向に分岐させることができるので、従来のように、超電導線の導体層を順次段階的に露出させる必要がなくなり、端子接続の際の導体層の引き出し構造を簡易かつ小型化することができる。
また、従来のように段階的に導体層を露出させると、その露出部分については、超電導線の層が薄くなり、強度が低下するが、実施形態3によれば、各超電導線3,4の導体層を段階的に露出させる必要がないため、強度の低下を防止でき、熱応力やねじり応力に対する耐性を低下させることがない。
また、電流を流す方向毎に分けて一括して端子に接続することができるため、施工性の低下を防止できる。
また、積層超電導体100と同じ層数を形成した場合に、積層超電導体102の厚さは増すものの、実施形態1,2のように、本体部及び引出導線部の形状を簡易化することができ、積層超電導体の構造をより簡易なものとすることができる。
また、積層方向に隣接する超電導線の一方にのみ絶縁被覆等の絶縁処理を施すことにより、同じ方向に電流を流す超電導線と逆方向に電流を流す超電導線とを区別することができ、接続ミスを防止できる。また、一方だけに絶縁処理を施せばよいので、絶縁処理の手間、絶縁被覆を除去する際の手間を軽減することができる。
【0049】
[実施形態4]
次に、実施形態4について説明する。
図6は、積層方向に隣接する超電導線7,8の端部を拡大した斜視図である。
積層超電導体103は、積層方向に隣接する超電導線7,8に流す電流の向きが逆方向となっている。
【0050】
(積層方向上側に位置する超電導線)
積層方向上側に位置する超電導線7は、超電導線7の端部に接続される通電用の端子を介して一方向に電流が流される。
超電導線7は、本体部71と、引出導線部72とを有している。
本体部71は、一方向に長尺なテープ状に形成されている。
引出導線部72は、本体部71の下面側における端部に接合されており、その端部が本体部71の一方の側縁部71aから外側に向けて延びている。引出導線部72は、超電導線7に電流を供給する端子に電気的に接続される。引出導線部72は、積層方向に重なる本体部71から端子に接続するための引出線として機能すればよいため、本体部71よりも短く、本体部71と同じ幅に形成されている。
本体部71の一方の側縁部71aが引出導線部72の上面と交差する直線の長さは、本体部71の幅よりも長くなるように、好適には、本体部71の幅の5倍程度の長さとなるように形成されている。
引出導線部72のうち、本体部71から外側に向けて引き出されている部分は、超電導線7に通電するための端子と接続される部分であり、溶材としての半田によって一体化されている。
【0051】
(積層方向下側に位置する超電導線)
積層方向下側に位置する超電導線8は、超電導線8の端部に接続される通電用の端子を介して、超電導線7とは逆方向に電流が流される。
超電導線8は、本体部81と、引出導線部82とを有している。
本体部81は、一方向に長尺なテープ状に形成されている。
引出導線部82は、本体部81の下面側における端部に接合されており、その端部が本体部81の一方の側縁部81aとは反対側の側縁部81bから引出導線部72に対して反対方向となる外側に向けて延びている。超電導線8に電流を供給する端子に電気的に接続される。引出導線部82は、積層方向に重なる本体部81から端子に接続するための引出線として機能すればよいため、本体部81よりも短く、本体部81と同じ幅に形成されている。
本体部81の一方の側縁部81aが引出導線部82の上面と交差する直線の長さは、本体部81の幅よりも長くなるように、好適には、本体部81の幅の5倍程度の長さとなるように形成されている。
引出導線部82のうち、本体部81から外側に向けて引き出されている部分は、超電導線8に通電するための端子と接続される部分であり、溶材としての半田によって一体化されている。
ここで、引出導線部81と引出導線部82は、引き出されている方向が異なるため、一方の引出導線部だけに絶縁被膜等の絶縁処理を施し、他方の引出導線部には絶縁処理を行わないことも可能である。
【0052】
(隣接する超電導線の端部の接続構造)
図6に示すように、一方向に電流が流れる超電導線7と超電導線7とは逆方向に電流が流れる超電導線8とを交互に積層することにより、超電導線7の端部と超電導線8の端部(引出導線部82の端部)とが互いに離間されると共に、それぞれが一つにまとめられる。
【0053】
以上のように、積層超電導体102によれば、上記実施形態3と同様の効果を奏することができるのはもちろんのこと、両超電導線7,8が引出導線部72,82を有し、互いに離れる方向に延びているため、超電導線7,8間の絶縁効果を実施形態3よりも向上させることができる。
【0054】
なお、本発明は上記実施形態に限られるものではない。
例えば、切欠部を形成する変化部は、直線状に形成されているものに限らず、曲線状に形成されているものであってもよい。これにより、引出導線部と本体部の接続断面がより大きくなり、臨界電流の低下を防止できる。
また、切欠部は、超電導線の積層方向に完全に重ならないように積層されているものに限らず、少なくとも一部が重ならないように形成されていてもよく、その場合、重なっていない領域において引出導線部が本体部と接続されていればよい。すなわち、本体部に引出導線部を接続しても、全体として本体部の層数分の厚さであればよい。