【文献】
RICART, Guy, et al.,REVUE ROUMAINE DE CHIMIE,1981年,26(2),253-268
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
アミン化合物の添加量が、工程(1)で得られる4−メチル−3,4−ジヒドロ−2H−ピランを含む反応生成物の質量に対して 0.1〜50質量%の範囲である、請求項2または3に記載の4−メチル−3,4−ジヒドロ−2H−ピランの製造方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の方法は、キシレンを溶媒として使用した場合、収率は92%と高いものの、生成物中の4−メチル−3,4−ジヒドロ−2H−ピランの純度は不明であり、精製に関する記述も一切ない。また原料である4−メチル−5,6−ジヒドロ−2H−ピランを工業的に安価に入手することが困難である。
特許文献2の方法では、3−メチル−3−ブテン−1−オールの転化率が73.5%のとき、4−メチル−3,4−ジヒドロ−2H−ピランの選択率は54%と不十分であり、反応選択率に改善の余地がある。特許文献3の方法では、反応の選択性に依然として改善の余地がある。
しかして、本発明の目的は、4−メチル−3,4−ジヒドロ−2H−ピランを工業的に有利に、安価に、かつ高純度で製造し得る方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明によれば、上記の目的は、
[1]2−ヒドロキシ−4−メチルテトラヒドロピランを酸および/または酸塩の存在下で脱水させる工程(1)を有することを特徴とする、4−メチル−3,4−ジヒドロ−2H−ピランの製造方法;
[2]酸および/または酸塩が、リン酸、硫酸、塩酸、硝酸、過塩素酸からなる群から選択される少なくとも1種の無機酸または前記無機酸の塩である、[1]の4−メチル−3,4−ジヒドロ−2H−ピランの製造方法;
[3]工程(1)で得られる4−メチル−3,4−ジヒドロ−2H−ピランを含む反応生成物にアミン化合物を添加した後に、蒸留して4−メチル−3,4−ジヒドロ−2H−ピランを取得する工程(2)をさらに有する、[1]の4−メチル−3,4−ジヒドロ−2H−ピランの製造方法;
[4]アミン化合物の添加量が、工程(1)で得られる4−メチル−3,4−ジヒドロ−2H−ピランを含む反応生成物の質量に対して0.5〜50質量%の範囲である、[3]の4−メチル−3,4−ジヒドロ−2H−ピランの製造方法;および
[5]アミン化合物が、大気圧下で130℃以上の沸点を有する1級または2級アミンである、[3]または[4]の4−メチル−3,4−ジヒドロ−2H−ピランの製造方法;
を提供することにより達成される。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、医農薬化合物の合成原料、リチウムイオン電池やコンデンサの電解液、レジスト材料などの電子部品などの電子材料の用途にも使用可能な、高純度の4−メチル−3,4−ジヒドロ−2H−ピランを工業的に有利に、安価にかつ高純度で製造できる。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本発明の4−メチル−3,4−ジヒドロ−2H−ピラン(以下、αMDHPと略称する)の製造方法は、2−ヒドロキシ−4−メチルテトラヒドロピラン(以下、MHPと略称する)を酸および/または酸塩の存在下で脱水させる工程(1)を有する。
好適には、本発明のαMDHPの製造方法は、上記工程(1)で得られるαMDHPを含む反応生成物にアミン化合物を添加した後に、蒸留してαMDHPを取得する工程(2)をさらに有する。以下、各工程について説明する。
【0008】
本発明の方法で出発原料として用いるMHPは、例えば特許4890107号に記載されているとおり、3−メチル−3−ブテン−1−オールをロジウム化合物の存在下に一酸化炭素および水素と反応させる方法によって工業的に得ることができる。
【0009】
本発明の方法の工程(1)で用いる酸および/または酸塩の種類に特に制限はなく、有機酸、無機酸、有機酸の塩、無機酸の塩、固体酸、酸性イオン交換樹脂などのいずれをも用いることができる。
有機酸としては、例えばp−トルエンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、メタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、カンファースルホン酸、フルオロスルホン酸などのスルホン酸;メチルホスホン酸、エチルホスホン酸、プロピルホスホン酸、イソプロピルホスホン酸、n−ブチルホスホン酸、tert−ブチルホスホン酸、n−ヘキシルホスホン酸、n−オクチルホスホン酸、n−デシルホスホン酸、フェニルホスホン酸などのホスホン酸;ギ酸、酢酸、プロピオン酸、ブタン酸、ペンタン酸、ヘキサン酸、ヘプタン酸、オクタン酸などのカルボン酸が挙げられる。
有機酸の塩としては、前記したスルホン酸、ホスホン酸、カルボン酸などのアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、遷移金属塩などが挙げられる。
無機酸としては、例えばリン酸、硫酸、塩酸、硝酸、過塩素酸、ポリリン酸などが挙げられる。
無機酸の塩としては、前記した無機酸のアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、遷移金属塩などが挙げられ、例えばリン酸水素カリウム、リン酸水素ナトリウム、硫酸水素カリウム、硫酸水素ナトリウムなどが挙げられる。
固体酸としては、例えばγアルミナ、ゼオライト、およびこれらに金属などの他元素をドープした固体酸などが挙げられる。
酸性イオン交換樹脂としては、例えばアンバーリスト15、アンバーリスト16〔いずれも商品名、ローム&ハース(株)社製〕、ダウエックス マラソンC〔商品名、ダウケミカル社製〕、ダイアイオン SK−1Bの酸型〔商品名、三菱化学(株)社製〕などが挙げられる。
入手の容易さ、取扱いの容易さ、反応の選択性および反応を円滑に進行させる観点などを考慮すると、上記した中でも無機酸または無機酸の塩が好ましく、リン酸、硫酸、塩酸、硝酸、過塩素酸からなる群から選択される少なくとも1種の無機酸または前記無機酸の塩であるのがより好ましく、リン酸、硫酸水素カリウム、硫酸水素ナトリウムがさらに好ましく、リン酸または硫酸水素カリウムが特に好ましい。
【0010】
酸および/または酸塩の使用量に厳密な意味での制限はないが、有機酸、有機酸の塩、無機酸、無機酸の塩を用いる場合には、MHPの分解やαMDHPの重合などの副反応を抑制する観点から、通常、最初に反応器に仕込むMHPに対しての仕込み量比として0.005mol%〜15mol%の範囲が好ましく、0.05mol%〜10mol%の範囲がより好ましい。
一方、固体酸または酸性イオン交換樹脂を用いる場合には、反応開始時に反応系内に存在する反応液の容積量に対して、通常0.5〜20質量%の範囲が好ましい。
なお、本発明の製造方法の工程(1)は、後述するとおり、酸および/または酸塩が存在する反応系にMHPを連続的または間欠的に添加して、反応の進行に伴って生成するαMDHPを反応系外へ除去しながら反応を行うことが好ましい。係る場合には、反応系内に存在させる酸および/または酸塩の量は、通常、最初に反応器へ仕込むMHPに対しての質量比として0.05mol%〜10mol%の範囲が好ましい。
【0011】
本発明の製造方法の工程(1)は、溶媒の存在下または不存在下で行うことができる。溶媒の存在下で行う場合、溶媒の種類はMHPを酸および/または酸塩の存在下で脱水させる反応に影響を及ぼさず、および反応の目的生成物であるαMDHPに対して不活性であれば特に制限はなく、例えばヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン、ドデカン、ペンタデカン、流動パラフィンなどの飽和脂肪族炭化水素;ベンゼン、トルエン、エチルベンゼン、キシレン、クメン、メシチレン、ジイソプロピルベンゼン、ナフタレンなどの芳香族炭化水素;ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル、ジイソアミルエーテル、ジオクチルエーテル、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、ジオキサン、2−メチルテトラヒドロフラン、4−メチルテトラヒドロピラン、シクロペンチルメチルエーテルなどの鎖状または環状の飽和エーテル;1,3−ジメチル−2−オキサゾリジノン、ジメチルスルホキシド、スルホラン、ヘキサメチルホスホリックトリアミド、アセトニトリル、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン、α−メチル−γ−ブチロラクトンなどの非プロトン性極性溶媒;などが挙げられる。溶媒を用いる場合、その使用量に特に制限はない。本発明の方法で溶媒を用いる場合には、生成物であるαMDHPとの分離容易性の観点から、大気圧において、αMDHPの沸点よりも高い沸点を有することが極めて好ましく、具体的には、大気圧において、αMDHPの沸点よりも15℃以上高い沸点を有することが好ましく、30℃以上高い沸点であることがより好ましく、50℃以上高い沸点であることがさらに好ましい。
【0012】
本発明の製造方法の工程(1)は、反応が進行する限りにおいて反応温度、反応時間、反応圧力、反応の雰囲気などに特に制限はない。反応温度は通常、好ましくは50℃〜250℃の範囲であり、反応を円滑に進行させる観点から80℃〜200℃の範囲がより好ましく、100℃〜200℃の範囲がさらに好ましい。反応時間は反応の実施の形態や進行の程度によっても異なりうるが、通常、1分〜48時間であるのが好ましい。反応は、大気圧下でも減圧下でも加圧下でもいずれの圧力条件でも実施することができる。反応は窒素、ヘリウム、アルゴンなどの不活性ガス雰囲気下で行うのが好ましいが、反応の進行を阻害しない限りにおいて空気雰囲気下であってもよい。
【0013】
本発明の製造方法の工程(1)の反応形式に特に制限はなく、回分式反応でも連続式反応でも他の反応形式のいずれでもよい。本発明の製造方法の工程(1)では、酸および/または酸塩、ならびに必要に応じて溶媒の混合物の存在する反応系内に、MHPを間欠的または連続的に添加し、αMDHPを含む反応生成物を連続的に反応系外に留出させながら反応を行うことが好ましい。なお、必要に応じて、MHPを間欠的または連続的に添加する際に、酸および/または酸塩を反応系に追加してもよい。
【0014】
工程(1)で得られるαMDHPを含む反応生成物中には、主な副生成物として例えば次式のようなアルデヒド化合物類が含まれている。これらのアルデヒド化合物類はαMDHPとの沸点差が小さいため[沸点(大気圧):MHP 188℃、αMDHP 117℃、アルデヒド化合物(1−a)116℃、アルデヒド化合物(1−b)126℃、アルデヒド化合物(1−c)123℃]単に工程(1)で得られるαMDHPを含む反応生成物を蒸留するのみでは、純度の高いαMDHPを収率良く得ることは困難である。
本発明の方法では、工程(1)で得られるαMDHPを含む反応生成物にアミン化合物を添加した後に、蒸留してαMDHPを取得する工程(2)をさらに有することで純度の高いαMDHPを収率よく得ることができる。
【0016】
本発明の方法の工程(2)で用いるアミン化合物としては、大気圧下での沸点が130℃以上の1級または2級アミン化合物が好ましい。かかる1級アミン化合物としては、例えばヘキシルアミン、ヘプチルアミン、オクチルアミン、2−エチルヘキシルアミン、ノニルアミン、デシルアミン、ウンデシルアミン、ドデシルアミン、ベンジルアミン、4−フェニルブチルアミン、2−フェニルブチルアミンなどが挙げられ、2級アミン化合物としては、例えばジ(2−エチルヘキシル)アミン、ジイソブチルアミン、ジオクチルアミン、ジベンジルアミン、ジフェニルアミンなどが挙げられる。これらのアミン化合物は1種を単独で使用しても良いし、2種類以上を併用してもよい。アミン化合物の沸点は、工程(2)での蒸留操作におけるαMDHPとの分離容易性の観点から、大気圧において、αMDHPの沸点よりも高い沸点を有することが極めて好ましく、具体的には、大気圧においてαMDHPの沸点よりも15℃以上高い沸点を有することが好ましく、30℃以上高い沸点であることがより好ましく、50℃以上高い沸点であることがさらに好ましい。
【0017】
工程(2)において、アミン化合物の添加量には厳密な意味での制限はないが、工程(2)の操作性などの観点から、通常、好ましくは工程(1)で得られるαMDHPを含む反応生成物の質量に対して0.01〜50質量%の範囲であり、より好ましくは0.1〜20質量%の範囲である。また、好ましくは工程(1)で得られるαMDHPを含む反応生成物中のαMDHPの質量に対して0.01〜50質量%の範囲であり、より好ましくは0.1〜20質量%の範囲である。なお、かかるアミン化合物の添加量は、工程(1)で得られるαMDHPを含む反応生成物中に含まれる上述したアルデヒド化合物類に対して等モル以上であることを満たしているのが好ましく、等モル〜10モル倍の範囲が好ましく、2〜5モル倍の範囲がより好ましい。
なお、工程(1)で得られるαMDHPを含む反応生成物中のαMDHPの量、およびアルデヒド化合物類の量は、該反応生成物の
1H−NMR分析または内部標準法を用いたガスクロマトグラフィー分析によって算出することができる。
【0018】
工程(2)において、アミン化合物の添加の形態には特に制限はない。そのまま添加しても良いし、溶媒、好ましくはαMDHPと共沸せず十分な沸点差を有する溶媒に該アミン化合物を溶解させた溶液の形態で添加してもよい。かかる溶媒としては、例えば工程(1)で必要に応じて使用できる溶媒と同種の溶媒が挙げられる。
また、アミン化合物の添加方法にも特に制限はなく、工程(1)で得られるαMDHPを含む反応生成物にアミン化合物またはアミン化合物の溶液を一括または連続的に添加することも、アミン化合物またはアミン化合物の溶液に工程(1)で得られるαMDHPを含む反応生成物を一括または連続的に添加しても良い。工業的には、例えば工程(1)で得られるαMDHPを含む反応生成物およびアミン化合物をラインミキサーに供給して混合するか別途槽内で混合した後に蒸留する方法などが、好適な実施形態として挙げられる。
【0019】
工程(2)において、アミン化合物を添加した後の蒸留の条件や形式はMHPおよびアミン化合物が目的生成物のαMDHPと分離できれば特に制限はなく、大気圧下でも減圧下でも、回分方式でも連続方式であってもよい。好ましくは、蒸留操作時におけるαMDHPの熱安定性の観点から、蒸留を15kPa〜80kPaの減圧下で行うことが好ましく、40kPa〜70kPaがより好ましい。かかる圧力範囲に設定した減圧条件で蒸留を行えば、蒸留釜中の液の温度を50℃〜110℃、好ましくは70℃〜100℃の範囲に設定してαMDHPを蒸留により取得できるので、αMDHPの熱安定性の観点からも有利となる。
【0020】
工程(2)の蒸留操作においては、エーテル化合物であるαMDHPからの過酸化物の生成および濃縮を抑制し、蒸留収率向上および安全性を確保する観点から、トリフェニルホスフィン、ジエチルフェニルホスフィン、フェニルジブチルホスフィン、フェニルジイソプロピルホスフィン、1,1−ビス(ジフェニルホスフィノ)メタン、1,1−ビス(ジフェニルホスフィノ)エタンなどのホスフィン化合物;フェニルメチルスルフィドなどのスルフィド化合物;脂肪族アミンなどのアミン化合物をアルミナやシリカゲルなどに担持させた処理剤(特開平6−248250号参照);などを、αMDHPを含む反応生成液に対して1〜20質量%の範囲で共存させておくことが好ましい。
【0021】
なお、本発明の方法の工程(1)で得られるαMDHPを含む反応生成物中にアルデヒド化合物類が含まれる理由としては、例えば原料のMHPが工程(1)の反応条件においてその少なくとも一部が開環し、次いで脱水が起こることにより生成すると考えられる(下式を参照)。
【0023】
工程(2)において、蒸留を行う前にアルデヒド化合物類が消失していることをガスクロマトグラフィー分析やNMR分析などの手段で確認しておくことが好ましい。
【実施例】
【0024】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により何ら限定されない。なお、ガスクロマトグラフィーでの測定は下記の条件で行なった。
分析機器:GC−14A(株式会社島津製作所製)
検出機器:FID(水素炎イオン化型検出器)(株式会社島津製作所製)
使用カラム:CBP−1(長さ50m、内径0.22mm、膜厚0.25μm)
(一般財団法人 化学物質評価研究機構製)
分析条件:Injection Temp. 250℃、
Detection Temp. 250℃
昇温温度条件:50℃(5分)→10℃/分で昇温→250℃
【0025】
実施例1
[工程(1)]
温度計、滴下漏斗、メカニカルスターラー、冷却管および受器を備えた内容量100mlの三口フラスコに、窒素雰囲気下、窒素雰囲気下でMHP60gおよびリン酸0.12g(MHPに対して0.2mol%)を入れた。ついで液温が180℃となるまで昇温させ、滴下漏斗からMHP1200gをゆっくりと滴下しながら、αMDHPを含む反応生成物を蒸留により受器へ連続的に抜き出し、13時間反応を行った。反応終了後、受器内の反応生成物から有機層を分離し、ガスクロマトグラフィ−で分析したところ、MHPの転化率は95%、αMDHPの選択率は97%であった。有機層の回収量は1040gであり、各成分の含有量(GC面積%)はαMDHP96.0%、MHP1.5%、アルデヒド化合物類2.1%、その他0.4%であった。
[工程(2)]
温度計、電磁攪拌装置、ガス吹き込み口およびサンプリング口を備えた内容量1000mlの三口フラスコに、上記工程(1)で得られたαMDHP、MHP、アルデヒド化合物類およびその他の成分を含む反応生成物(有機層の部分)730gおよびn−オクチルアミン36g(反応生成物中のαMDHPの含有量に対して概ね5質量%に相当)を入れ、バス温度を80℃に設定して3時間撹拌後(内温は77.9〜81.0℃であった)にガスクロマトグラフィーで内容物を分析したところ、各成分の含有量(GC面積%)はαMDHP96.0%、MHP1.5%、その他の成分2.5%であり、アルデヒド化合物類は消失していた。トリフェニルホスフィン36g(反応生成物に対して5質量%)を添加し、理論段数10段の蒸留塔を用いて熱媒温度110℃、還流比3、減圧度46kPaの条件で蒸留精製を行うことで、純度99.9%以上のαMDHPを蒸留収率90%で得た。
【0026】
実施例2
実施例1の工程(1)において、温度計、滴下漏斗、メカニカルスターラー、冷却管および受器を備えた内容量100mlの三口フラスコに、窒素雰囲気下でMHP140gおよび硫酸水素カリウム1.6g(MHPに対して0.9mol%)、溶媒として流動パラフィンを40g加えた。ついで液温が200℃となるまで昇温させ、滴下漏斗からMHPgをゆっくりと滴下しながら、生成するαMDHPを含む反応生成物を蒸留により受器へ連続的に抜き出し、13時間反応を行った。その結果、MHPの転化率は98%、αMDHPへの選択率は96%であった。次いで、実施例1の工程(2)と同様の蒸留精製条件によって蒸留を行うことで、純度99.9%以上のαMDHPを蒸留収率90%で得た。
【0027】
実施例3
実施例1の工程(2)においてオクチルアミン36gの代わりにジ(2−エチルヘキシル)アミン70g(反応混合液中のαMDHPの含有量に対して概ね10質量%に相当)を使用したこと以外は、実施例1と同様の操作を行った。その結果、純度99.9%以上のαMDHPを蒸留収率88%で得た。
【0028】
実施例4
実施例1の工程(1)において、温度計、滴下漏斗、メカニカルスターラー、冷却管および受器を備えた内容量1000mlの三口フラスコに、窒素雰囲気下、窒素雰囲気下でMHP60gおよびリン酸0.12g(MHPに対して0.2mol%)を入れた。ついで液温が180℃となるまで昇温させ、滴下漏斗からMHP745gをゆっくりと滴下しながら、9時間反応を行った。反応終了後、反応混合液からαMDHPを含む有機層を分離したのち、ガスクロマトグラフィーで内容物を分析した結果、MHPの転化率は90%、αMDHPへの選択率は96%であった。次いで単蒸留装置によって未反応のMHPを除去したのち、実施例1の工程(2)と同様の蒸留精製条件によって蒸留を行うことで、純度99.9%以上のαMDHPを蒸留収率84%で得た。
【0029】
比較例1
実施例1の工程(1)においてリン酸を添加せずに同様の反応操作を行ったところ、反応生成物の受器への留出はまったく見られず、ガスクロマトグラフィーによって反応釜内の内容物を分析したが、αMDHPは全く生成していなかった。
【0030】
比較例2
実施例1の工程(2)においてn−オクチルアミンを添加せずに、工程(1)で得られた反応混合液について同様の蒸留操作を行ったところ、得られたαMDHPの純度は98%であり、アルデヒド化合物類が1.9%、その他不純物が0.1%含まれていた。