(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記活性層の上面と下面との間に存在し、該上面及び下面に平行であり前記導波路まで伸びる仮想面が、前記導波路において該導波路の上面と下面との間に位置することを特徴とする請求項1に記載の集積型半導体光素子。
前記半導体光素子のメサ構造は、前記活性層を含む半導体積層構造がエッチングされて形成されたハイメサ構造であることを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載の集積型半導体光素子。
前記基板はシリコンを含み、前記導波路は前記基板を加工して形成されたシリコン導波路であることを特徴とする請求項1から13のいずれか一項に記載の集積型半導体光素子。
前記半導体光素子形成工程では、前記活性層の位置において前記エッチングをする際にサイドエッチングを生じさせることにより、前記半導体光素子のメサ構造の幅を最も狭くすることを特徴とする請求項15から18のいずれか一項に記載の集積型半導体光素子の製造方法。
前記半導体光素子形成工程において、前記エッチングをする際にサイドエッチングを生じさせることにより、前記半導体積層構造を覆うクラッド層の幅が、前記メサ構造の幅以上となるように前記半導体積層構造をエッチングすることを特徴とする請求項15から19のいずれか一項に記載の集積型半導体光素子の製造方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、非特許文献1に記載されたシリコン・化合物半導体ハイブリッドレーザでは、シリコン導波路と化合物半導体光素子間の光結合損失が内部損失としてレーザ特性に影響し、レーザ発振の閾値電流が上昇したり、エネルギー効率が低下したりする問題があった。
また、前述のシリコン・化合物半導体ハイブリッドレーザは、化合物半導体光素子をシリコン基板上に接合した後に複雑なプロセスを経て製造されるため、製造コストが過剰に高くなる問題もあった。
【0007】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、導波路と半導体光素子間の光結合損失が低く、かつ製造コストが低い集積型半導体光素子、及び集積型半導体光素子の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明の集積型半導体光素子は、活性層を有する半導体光素子と、該半導体光素子に光結合し入力された光を導波する導波路とが基板上に形成された集積型半導体光素子であって、前記導波路の先端が、前記半導体光素子側に形成されかつ前記半導体光素子側とは反対側に向けて漸次幅が増加するテーパ部を少なくとも有し、前記導波路の表面を覆うように形成されるとともに前記半導体光素子に向けて延伸し該半導体光素子に接合する、前記半導体光素子及び前記導波路よりも屈折率が低いクラッド層を備え、前記半導体光素子がメサ構造を有し、前記クラッド層と前記半導体光素子とが光結合している接合断面において、前記半導体光素子のメサ構造の断面が前記クラッド層の断面内に含まれる接合構造を有することを特徴としている。
【0009】
また、本発明の集積型半導体光素子の一態様は、前記活性層の上面と下面との間に存在し、該上面及び下面に平行であり前記導波路まで伸びる仮想面が、前記導波路の先端と交わるか、前記導波路の上面と下面との間に存在し、該上面及び下面に平行であり前記活性層まで伸びる仮想面が、前記活性層の出射端と交わるか、の少なくともいずれか一方を満たすことを特徴としている。
【0010】
また、本発明の集積型半導体光素子の一態様は、前記活性層の上面と下面との間に存在し、該上面及び下面に平行であり前記導波路まで伸びる仮想面が、前記導波路において該導波路の上面と下面との間に位置することを特徴としている。
【0011】
また、本発明の集積型半導体光素子の一態様は、前記活性層の高さの中心位置は、前記導波路の高さの中心位置よりも上方にあることを特徴としている。
【0012】
また、本発明の集積型半導体光素子の一態様は、前記半導体光素子は、前記基板に形成された凹部の底面に設けられていることを特徴としている。
【0013】
また、本発明の集積型半導体光素子の一態様は、前記半導体光素子のメサ構造は、前記活性層を含む半導体積層構造がエッチングされて形成されたハイメサ構造であることを特徴としている。
【0014】
また、本発明の集積型半導体光素子の一態様は、前記半導体光素子のメサ構造は、順メサ構造または逆メサ構造とされていることを特徴としている。
【0015】
また、本発明の集積型半導体光素子の一態様は、前記半導体光素子のメサ構造の幅は、前記活性層の位置において最も狭くされていることを特徴としている。
【0016】
また、本発明の集積型半導体光素子の一態様は、前記半導体光素子のメサ構造は、前記クラッド層で覆われていることを特徴としている。
【0017】
また、本発明の集積型半導体光素子の一態様は、前記メサ構造を覆うクラッド層の幅は、前記メサ構造の幅以上であることを特徴としている。
【0018】
また、本発明の集積型半導体光素子の一態様は、前記半導体光素子は光共振器を有することを特徴としている。
【0019】
また、本発明の集積型半導体光素子の一態様は、前記半導体光素子は、前記活性層に沿って形成された回折格子を有していることを特徴としている。
【0020】
また、本発明の集積型半導体光素子の一態様は、前記光半導体素子は、前記導波路とは反対側に設けられた反射手段を有し、前記導波路は、回折格子を有することを特徴としている。
【0021】
また、本発明の集積型半導体光素子の一態様は、前記基板はシリコンを含み、前記導波路は前記基板を加工して形成されたシリコン導波路であることを特徴としている。
【0022】
本発明の集積型半導体光素子の製造方法は、活性層を有する半導体光素子と、該半導体光素子に光結合し入力された光を導波する導波路とが基板上に形成された集積型半導体光素子の製造方法であって、導波路先端が前記半導体光素子側に形成されかつ前記半導体光素子側とは反対側に向けて漸次幅が増加するテーパ部を少なくとも有する前記導波路を前記基板に形成する導波路形成工程と、活性層を有する半導体積層構造を前記基板上に配設する半導体積層構造配設工程と、前記導波路の表面を覆いかつ前記半導体積層構造に向けて延伸し該半導体積層構造の一方の面を覆うように、前記半導体光素子及び前記導波路よりも屈折率が低くかつ前記半導体積層構造の幅よりも幅狭なクラッド層を形成するクラッド層形成工程と、前記半導体積層構造の一方の面に形成したクラッド層をマスクとして、前記半導体積層構造をエッチングして、メサ構造を有する前記半導体光素子を形成する半導体光素子形成工程と、を備えることを特徴としている。
【0023】
また、本発明の集積型半導体光素子の製造方法の一態様は、前記半導体積層構造配設工程において、前記基板に形成された凹部の底面に、前記半導体積層構造を配設するとともに、前記活性層の上面と下面との間に存在し、該上面及び下面に平行であり前記導波路まで伸びる仮想面が、前記導波路の先端と交わるか、前記導波路の上面と下面との間に存在し、該上面及び下面に平行であり前記活性層まで伸びる仮想面が、前記活性層の出射端と交わるか、の少なくともいずれか一方を満たすように、予め、前記半導体積層構造における前記活性層の位置を調節する、前記凹部の深さを調節する、または/および前記凹部と前記半導体積層構造との間に設けられるコンタクト金属の厚さを調節することを特徴としている。
【0024】
また、本発明の集積型半導体光素子の製造方法の一態様は、前記半導体積層構造配設工程において、前記基板に形成された凹部の底面に、前記半導体積層構造を配設するとともに、前記活性層の上面と下面との間に存在し、該上面及び下面に平行な前記導波路まで伸びる仮想面が、前記導波路の上面と下面との間に位置するように、予め、前記半導体積層構造における前記活性層の位置を調節する、前記凹部の深さを調節する、または/および前記凹部と前記半導体積層構造との間に設けられるコンタクト金属の厚さを調節することを特徴としている。
【0025】
また、本発明の集積型半導体光素子の製造方法の一態様は、前記半導体積層構造配設工程において、前記基板に形成された凹部の底面に、前記半導体積層構造を配設するとともに、前記活性層の高さの中心位置が、前記導波路の高さの中心位置よりも上方となるように、予め、前記半導体積層構造における前記活性層の位置を調節する、前記凹部の深さを調節する、または/および前記凹部と前記半導体積層構造との間に設けられるコンタクト金属の厚さを調節することを特徴としている。
【0026】
また、本発明の集積型半導体光素子の製造方法の一態様は、前記半導体光素子形成工程では、前記活性層の位置において前記エッチングをする際にサイドエッチングを生じさせることにより、前記半導体光素子のメサ構造の幅を最も狭くすることを特徴としている。
【0027】
また、本発明の集積型半導体光素子の製造方法の一態様は、前記半導体光素子形成工程において、前記エッチングをする際にサイドエッチングを生じさせることにより、前記半導体積層構造を覆うクラッド層の幅が、前記メサ構造の幅以上となるように前記半導体積層構造をエッチングすることを特徴としている。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、導波路と半導体光素子間の光結合損失が低く、かつ製造コストが低い集積型半導体光素子、及び集積型半導体光素子の製造方法を実現できるという効果を奏する。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下に、図面を参照して本発明に係る集積型半導体光素子、及び集積型半導体光素子の製造方法の実施形態を説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。また、図面の記載において、同一または対応する要素には適宜同一の符号を付している。また、図面は模式的なものであり、各要素の寸法の関係、各要素の比率などは、現実と異なる場合があることに留意する必要がある。図面の相互間においても、互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれている場合がある。
【0031】
まず、本発明の実施形態に係る集積型半導体光素子1について説明する。集積型半導体光素子1は、
図1、2に示すように、基板10と、この基板10の一方の面に配設された半導体光素子20と、この半導体光素子20に光結合する導波路30と、この導波路30の表面を覆うように形成されるとともに半導体光素子20に接合するクラッド層15とを備えている。説明のためクラッド層15は破線で示してある。さらに、集積型半導体光素子1は、導波路30、半導体光素子20、及びクラッド層15を覆うように形成されたパッシベーション層16を備えている。
【0032】
基板10は、SOI(Silicon On Insulator)構造を有するものであり、この基板10の一方の面側には、支持層であるSi層11a上に、絶縁層であるSiO
2層11b(埋込み酸化層(BOX層:Buried OXide))とデバイス層とも呼ばれるSi層11cとが順次形成されている。この基板10の一部の領域には、SiO
2層11b及びSi層11cが除去された凹部12が形成されている(
図2参照)。この基板10に形成された凹部12が、半導体光素子20が配設される領域とされており、基板10の凹部12上(Si層11a上)にSiO
2層11bを介さずに半導体光素子20が設けられている。
【0033】
半導体光素子20は、例えばInPまたはGaAs基板上に活性層22として成長した量子井戸、量子ドット構造を有するものである。量子井戸を構成する化合物半導体材料としては、例えば、InGaAs、InGaAsN、AlInGaAs、InGaAsPなどのIII−V族化合物半導体が挙げられる。また、量子ドットを構成する化合物半導体材料としては、InAs、InGaAs、その他のIII−V族化合物半導体が挙げられる。
【0034】
半導体光素子20は、後述する半導体積層構造40の側面部がエッチングされて形成されたメサ構造を有しており、本実施形態において、メサ構造は、
図2に示すように、活性層22がメサ構造内に含まれるハイメサ構造とされている。さらに、本実施形態においては、ハイメサ構造は、順メサ構造とされている。この半導体光素子20は、InP基板上に、n型不純物添加クラッド層21、回折格子層27、n型不純物添加クラッド層21、分離閉じ込め層(SCH)を含む活性層22(発光層)、InPからなるp型不純物添加クラッド層23、InGaAsからなるp型不純物添加コンタクト層24が順に積層して構成されている。
なお、n型不純物添加クラッド層21中において、基板10との接合部で発生する応力による転位の伝搬を抑制するために、InGaAsやInGaAsPからなる超格子構造を形成しても良い。
【0035】
ここで、本実施形態においては、
図3(a)に示すように、Si層11aの表面を基準とした導波路30の高さ位置と、活性層22の高さ位置とが一致している。
【0036】
導波路30の高さ位置と、活性層22の高さ位置とが一致している場合、活性層22から出射される光のほぼすべてを導波路30に光結合させることができる。
【0037】
なお、導波路30の高さ位置と活性層22の高さ位置とを、必ずしも完全に一致させる必要は無い。例えば、
図3(b)に示すように、活性層22の上面と下面との間に存在し、これらの上面及び下面に平行であり導波路30まで伸びる仮想面P1が、導波路30の先端の辺A−Bで交わる構成としても良い。
また、
図3(c)に示すように、導波路30の上面と下面との間に存在し、これらの上面及び下面に平行であり活性層22まで伸びる仮想面P2が、活性層22の出射端の辺C−Dで交わる構成としても良い。さらに、活性層22の上面と下面との間に存在し、これらの上面及び下面に平行であり導波路30まで伸びる仮想面P1が、導波路30の先端の辺A−Bで交わり、かつ導波路30の上面と下面との間に存在し、これらの上面及び下面に平行であり活性層22まで伸びる仮想面P2が、活性層22の出射端の辺C−Dで交わる構成としても良い。
【0038】
また、
図3(d)に示すように、活性層22と導波路30が互いに平行で、活性層22の上面と下面との間に存在し、これらの上面及び下面に平行であり導波路30まで伸びる仮想面P3が、導波路30において導波路30の上面と下面との間に位置する構成とされていることがより好ましい。
【0039】
導波路30は、
図1及び
図3(a)に示すように、半導体光素子20に光結合しており、入力された光を導波するものである。本実施形態において、導波路30は、Si層11cに形成されたSi導波路とされている。この導波路30は、半導体光素子20側(
図1において左下側)の先端に形成されかつ半導体光素子20側とは反対側(
図1において右上側)に向けて(長手方向に沿って)漸次幅が増加するチャネル型のテーパ部31と、このテーパ部31に接続して光を導波するリブ型の直線部32とを備えている。テーパ部31は後述するようにスポットサイズ変換機能を有する。
【0040】
クラッド層15は、導波路30及び半導体光素子20よりも屈折率が低い材質で構成されており、例えば窒化シリコン(SiN)で構成されている。このクラッド層15は、
図3(a)に示すように、導波路30の表面を覆うとともに半導体光素子20に向けて延伸して接合し、半導体光素子20と導波路30とを光学的に接続するガイド層となっている。また、本実施形態においては、半導体光素子20の一方の面(
図3(a)において上面)にも、クラッド層15が形成されている。クラッド層15には、開口部15aが形成されている。
【0041】
パッシベーション層16は、導波路30、半導体光素子20、及びクラッド層15を覆うように形成されている。パッシベーション層16は、クラッド層15よりも屈折率が低い材料で構成され、例えば酸化シリコン(SiO
2)で構成されている。パッシベーション層16には、開口部16aと2つの開口部16bが形成されている(
図2参照)。さらに、開口部16aおよびクラッド層15の開口部15aを介してp型不純物添加コンタクト層24とオーミック接触するようにp側電極25が形成されている。p側電極25は例えばTi/Pt構造を有する。なお、パッシベーション層16、開口部15a、16a、16b、及びp側電極25は、
図1では図の簡略化のため図示を省略してある。
【0042】
ここで、クラッド層15と半導体光素子20とが光結合している接合断面の構造は、
図3(a)に示すように、半導体光素子20のメサ構造の断面がクラッド層15の断面内に含まれる接合構造とされている。すなわち、クラッド層15と半導体光素子20とが光結合している接合断面におけるメサ構造の断面は、
図3(e)に示すように、クラッド層15の断面内に含まれている。
なお、本実施形態において、メサ構造とは、n型不純物添加クラッド層21に形成される略平坦な部分である平坦部21aよりも上方の領域のことを意味している。また、平坦部21aには、パッシベーション層16に形成された開口部16bを介してn側電極26(
図2参照、
図1では図示を省略)がオーミック接触している。n側電極26は例えばAuGeNiからなる。
【0043】
さらに、本実施形態においては、半導体光素子20の内部に、活性層22に沿って回折格子層27が設けられている。回折格子層27は、GaInAsP層が所定の周期で離散的に配置して回折格子を形成し、かつGaInAsP層の間はInP層で埋められた構成を有する。この回折格子層27により、半導体光素子20は分布帰還(DFB)型レーザ素子として構成されている。回折格子層27の周期は、半導体光素子20のレーザ発振波長に応じて設定されており、例えばレーザ発振波長が光通信用に用いられる1.55μm帯の波長になるように設定されている。
【0044】
次に、本実施形態に係る集積型半導体光素子1の製造方法の一例について説明する。集積型半導体光素子1の製造方法は、例えば、
図4に示すように、導波路形成工程S01と、半導体積層構造配設工程S02と、クラッド層形成工程S03と、半導体光素子形成工程S04とを備えている。
【0045】
(導波路形成工程S01)
まず、SOI構造を有するシリコン基板上に、フォトリソグラフィを用いてシリコン導波路パターンを描画する。具体的には、例えばHBrガスを用いてSi層11cをエッチングし、リブ導波路構造を得る。そして、再度、フォトリソグラフィ及びエッチングを行い、テーパ部31及び直線部32を有するチャネル導波路構造を有する導波路30を形成する。ここで、エッチングにより生じた導波路30の側面粗さを低減する目的で、水蒸気を用いない熱酸化を行っても良い。
【0046】
次いで、半導体光素子20が配設される領域となる部分のSiO
2層11bを除去するため、フォトリソグラフィ及びエッチングを行う。
こうして、
図5に示すように、導波路30が形成されるとともに、半導体光素子20が配設される領域である凹部12が形成された基板10(シリコンフォトニクスプラットフォーム)が得られる。ここで、凹部12の深さを調節することによって、後述する活性層22の高さ位置を調節することができる。
【0047】
(半導体積層構造配設工程S02)
次に、基板10の凹部12に配設する半導体積層構造40(
図6参照)を作製するための化合物半導体エピウェハを作製する。
まず、MOCVD法にて、InP基板上に、InGaAsからなるp型不純物添加コンタクト層24、InPからなるp型不純物添加クラッド層23の順に積層し、分離閉じ込め層(SCH)を含む活性層22(発光層)をさらに積層する。次いで、n型不純物添加クラッド層21、回折格子層27を積層する。続いて、リソグラフィにより回折格子パターンを描画し、エッチングにより回折格子を形成する。その後、再度MOCVD法にて、n型不純物添加クラッド層21を形成する。このn型不純物添加クラッド層21上面が接合界面になるため、必要に応じてInGaAsやInGaAsPなどからなる表面保護層を設けても良い。なお、この表面保護層を設けた場合には、接合プロセスの直前でエッチングにより除去すれば良い。
【0048】
次いで、化合物半導体エピウェハを所定のサイズに切出し、必要に応じて前述の表面保護層をエッチングで除去し、n型不純物添加クラッド層21を露出させる。このとき、エッチング量を調節することによって、基板10上に配設される活性層22の高さ位置を調節することができる。なお、予め、エッチング停止層を設けておいても良い。以上のようにして、半導体積層構造40が形成される。
次に、基板10の凹部12(SiO
2層11bが除去された領域)に、前述の表面保護層をエッチングにより除去した側の面(n型不純物添加クラッド層21の表面)を接合する。接合方法は、プラズマ活性化接合、接着接合、共晶接合、金属接合などのCMOS互換プロセスの方法が望ましい。そして、接合後に、半導体積層構造40のInP基板を除去するプロセスを行う。
こうして、
図6に示す、半導体積層構造40が基板10の凹部12に配設される。この段階において、半導体積層構造40は、上から、p型不純物添加コンタクト層24、p型不純物添加クラッド層23、分離閉じ込め層(SCH)を含む活性層22、n型不純物添加クラッド層21、回折格子層27、n型不純物添加クラッド層21の順に積層されている。
【0049】
(クラッド層形成工程S03)
次に、スパッタリング堆積法、プラズマ化学堆積法などを用いて、SiNからなるクラッド層15を構成するためのとなる積層膜を形成する。クラッド層15は、フォトリソグラフィにて、所定の幅のストライプパターンを導波路30及び半導体積層構造40に連続的に形成し、例えばCF
4ガスによりエッチングを行い、
図7に示すように、半導体積層構造40及び基板10上に形成される。
【0050】
(半導体光素子形成工程S04)
次に,半導体積層構造40上に形成されたクラッド層15をマスクとし、半導体積層構造40のエッチングを行う。エッチングはドライエッチング、ウェットエッチングのいずれかの方法で行えば良く、n型不純物添加クラッド層21が露出した状態になるまで行う。具体的には、クラッド層15をマスクとして半導体積層構造40をエッチングすると、
図8に示すように、エッチングされた半導体積層構造40がメサ構造として形成される。また、平坦部21aも同時に形成される。このとき、エッチングにおいてサイドエッチングが生じると、メサ構造の幅がマスクの幅よりも狭くなるため、クラッド層15と半導体積層構造40との接合部分において、クラッド層15の断面が、半導体光素子20のメサ構造の断面を含むようにエッチングされることになる。本実施形態においては、
図2に示すように、活性層22がメサ構造内に含まれるハイメサ構造である順メサ構造となるまでエッチングを行っている。
【0051】
次いで、プラズマ化学堆積法などを用いて酸化シリコンからなる積層膜を形成し、パッシベーション層16とする。その後、クラッド層15、パッシベーション層16に、フォトリソグラフィによりp型不純物添加コンタクト層24及びn型不純物添加クラッド層21の平坦部21aの直上の一部分にそれぞれ窓開けを行い開口部15a、16a、16bを形成する。その後、それぞれの開口部の上にp側電極25、n側電極26を形成する。
【0052】
次に、本実施形態に係る集積型半導体光素子1の動作の一例について説明する。半導体光素子20のp側電極25とn側電極26との間に所定の駆動電圧を印加し、電流を供給すると、活性層22に電子及び正孔のキャリアが注入され、キャリアの再結合により発光が生じる。発光した光のうち回折格子層27によって選択的に分布帰還する波長の光がレーザ発振する。半導体光素子20は、発振したレーザ光を、クラッド層15と光結合している接合面からクラッド層15へ出力する。クラッド層15は、入力されたレーザ光をより屈折率の高い導波路30へ入力させる。導波路30は入力されたレーザ光を導波する。
【0053】
また、集積型半導体光素子1では、半導体光素子20から出力されるレーザ光の光路となるとともに半導体積層構造40をエッチングする際のマスクにもなるクラッド層15を備えているので、製造時において、マスクを形成するための工程を省略し、製造コストを低減することができる。さらには、クラッド層15をマスクとしてエッチングして半導体光素子20を形成するため、エッチングが完了すると、半導体光素子20はクラッド層15と幅方向で自己整列(セルフアライン)される。したがって、半導体光素子20とクラッド層15との煩雑なアラインメントは不要となる。
【0054】
また、集積型半導体光素子1は、導波路30が、半導体光素子20側に形成されかつ半導体光素子20側とは反対側に向けて漸次幅が増加するテーパ部31を少なくとも有している。この構成により、クラッド層15からテーパ部31に入力されたレーザ光は、テーパ部31によってそのスポットサイズが徐々に直線部32のスポットサイズへと変換されるので、半導体光素子20から出力された光の光損失を低減して、導波路30の直線部32側に導波させることができる。
【0055】
また、集積型半導体光素子1では、半導体光素子20が基板10の凹部12に配設されており、絶縁層であるSiO
2層11を介在させずに基板10上に半導体光素子20が接合された構成とされているので、半導体光素子20から発せられる熱を効率的に基板10側に逃がすことができ、半導体光素子20の温度が過剰に上昇することを抑制可能である。
【0056】
また、本実施形態の集積型半導体光素子1においては、導波路30の高さ位置と、活性層22の高さ位置とが一致しているので、活性層22から出射される光のほぼすべてを導波路30に光結合させることができ、活性層22からの光を導波路30へ効率的に導波することが可能となる。
【0057】
なお、活性層22の上面と下面との間に存在し、これらの上面及び下面に平行であり導波路30まで伸びる仮想面P1が、導波路30の先端の辺A−Bで交わる構成とした場合や、導波路30の上面と下面との間に存在し、これらの上面及び下面に平行であり活性層22まで伸びる仮想面P2が、活性層22の出射端の辺C−Dで交わる構成とした場合においても、導波路30を導波する光と活性層22を導波する光が互いに結合される。これにより、活性層22と導波路30とを光結合させることができる。
また、活性層22の上面と下面との間に存在し、これらの上面及び下面に平行であり導波路30まで伸びる仮想面P3が、導波路30において導波路30の上面と下面との間に位置する構成とする場合においても、活性層22からの光を導波路30へ効率的に導波することができる。さらに、活性層22の上面と下面との間に存在し、これらの上面及び下面に平行であり導波路30まで伸びる仮想面P1が、導波路30の先端の辺A−Bで交わり、かつ導波路30の上面と下面との間に存在し、これらの上面及び下面に平行であり活性層22まで伸びる仮想面P2が、活性層22の出射端の辺C−Dで交わる構成とする場合には、活性層22からの光を導波路30へより効率的に導波することができる。
上記のような構成により、仮想面P1〜3は、活性層22と導波路30の内部に存在することになるので、少なくとも仮想面P1〜3を通る光に関しては、活性層22と導波路30との間で光結合させることができる。これにより、クラッド層15と半導体光素子20との最低限の光結合を確保することができる。
【0058】
さらに、集積型半導体光素子1は、ハイメサ構造とされているので、半導体光素子20から出力されるレーザ光がメサ構造内に集まりやすくなり、光を効率的に出力することができる。すなわち、半導体光素子20がハイメサ構造を有する場合は、活性層22の屈折率とハイメサ構造の外部(パッシベーション層16及び空気)における幅方向の屈折率の差が大きいので、活性層22に閉じ込められたレーザ光はハイメサ構造の幅方向の全体にわたって分布する強い閉じ込めになる。このとき、クラッド層15と半導体光素子20とが光結合している接合断面において、半導体光素子20のハイメサ構造の断面がクラッド層15の断面内に含まれる接合構造とされていることから、半導体光素子20からクラッド層15の方向にレーザ光が入力すると、ハイメサ構造の断面において分布する光のほぼすべてがクラッド層15外に漏れることなく、より屈折率の低いクラッド層15に入力する。これにより、半導体光素子20から導波路30への光結合効率を向上させることができる。また、半導体光素子20から導波路30への光結合に光学部品を使用していないため、光学部品の実装の煩雑さが不要であり、製造が容易であり、かつ低コストになる。
【0059】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態により本発明が限定されるものではない。上述した各構成要素を適宜組み合わせて構成したものも本発明に含まれる。また、さらなる効果や変形例は、当業者によって容易に導き出すことができる。よって、本発明のより広範な態様は、上記の実施形態に限定されるものではなく、様々な変更が可能である。
【0060】
例えば、上記実施形態では、半導体光素子20が、順メサ構造を有する場合について説明したが、
図9に示すように、逆メサ構造とされた半導体光素子120でも良い。
また、半導体光素子20は、
図10に示すように、両側壁のエッチング面が垂直に形成された半導体光素子220であっても良い。なお、メサ構造をエッチングによって形成する場合、サイドエッチングの量が比較的少ないドライエッチングを用いると、エッチング条件を制御することによって、メサ構造のエッチング面をほぼ垂直にすることができる。ただし、このときメサ構造のエッチング面が垂直になるエッチング条件の場合にも、サイドエッチングが発生し、そのエッチング面の垂直形状が維持されたままメサ構造の幅が狭くなる場合がある(
図10に破線で示す)。ただし、このような場合においても、メサ構造の幅は半導体光素子220上に形成されたクラッド層15の幅よりも狭くなるので、クラッド層15と半導体光素子220とが光結合している接合断面において、半導体光素子220のメサ構造の断面がクラッド層15の断面内に含まれる接合構造となる。
【0061】
また、ハイメサ構造において、
図11に示す半導体光素子320のように、活性層22の幅が、この活性層22を挟むp型不純物添加クラッド層23及びn型不純物添加クラッド層21の幅よりも狭くしてもよい。このとき、活性層22の屈折率はp型不純物添加クラッド層23及びn型不純物添加クラッド層21の屈折率よりも高いため、ハイメサ構造において活性層22が最も屈折率が高い構成となる。さらに、この活性層22が最も幅が狭い領域となる。ここで、半導体光素子320と、p型不純物添加クラッド層23及びn型不純物添加クラッド層21との屈折率差が大きいほど、半導体光素子320からクラッド層15側へ入射する光は、より広がろうとする。このとき、最も屈折率の高い活性層22の幅が最も狭ければ、活性層22で発生したほぼ全ての光をクラッド層15側に導くことが出来る。これにより、半導体光素子320から導波路30への光結合効率が低下することを抑制することができる。
例えば、活性層22がAlInGaAs、クラッド層15がInPからなる場合、ハイメサ構造の形成時にウェットエッチングを行うと、エッチング液の種類によっては、活性層22の方がクラッド層15よりもサイドエッチング量が大きくなる。このように、エッチングの際にサイドエッチングを生じさせることにより、
図11に示す半導体光素子320を形成することができる。
【0062】
また、上記実施形態では、半導体光素子20がハイメサ構造を有する場合について説明したが、半導体光素子20に代えて、
図12に示すように、活性層22がメサ構造内に含まれていないローメサ構造を有する半導体光素子420を用いても良い。このメサ構造の場合においても、クラッド層15と半導体光素子420とが光結合している接合断面において、半導体光素子420のメサ構造の断面がクラッド層15の断面内に含まれる接合構造となっている場合、半導体光素子420と導波路30との光結合効率の低減を抑制することができる。
【0063】
また、上記実施形態では、活性層22の高さと導波路30との高さとが一致している場合について説明したが、
図13に示す半導体光素子520のように、活性層22の高さの中心位置が、導波路30の高さの中心位置よりも上方に配置されている構成としても良い。
この場合、半導体光素子520から出力されるレーザ光は、SiO
2層11bよりも高い位置から出力されることになり、クラッド層15とSiO
2層11bとの屈折率差を感じにくくなるので、基板10のSiO
2層11によって散乱されて光損失することなく、導波路30へと伝搬することができる。これにより、半導体光素子520から導波路30への光結合効率が向上する。
【0064】
また、上記実施形態では、半導体光素子20、120、220、320、420、520はDFB型レーザ素子であるが、これらの半導体光素子20〜520に代えて、半導体光素子として、その両端面(クラッド層15に接合する側の端面及びこれと反対側に位置する端面)に反射膜(反射手段)が形成されており、これらの反射膜(反射手段)が主要な共振器を構成しているファブリーペロー型レーザ素子を用いてもよい。さらには、半導体光素子の端面に、反射膜(反射手段)として分布反射型(DBR)ミラーを形成したDBR型レーザ素子を用いてもよい。これらのレーザ素子であれば、共振器長が短く、かつレーザ素子内で発振波長を調整できる。さらに、これらのレーザ素子であれば、導波路との光結合損失はレーザ素子の内部損失に含まれないので、レーザ発振の閾値電流の上昇や、エネルギー効率の低下が抑制され、レーザ素子単体が有するレーザ特性が維持される。
【0065】
なお、半導体光素子として半導体光増幅(SOA)素子を用い、導波路として
図14に示すように、テーパ部131に接続する直線部132に屈折率が周期的に変調した構造の回折格子133が設けられている導波路130を用いてもよい。
使用する半導体光増幅素子は、導波路130が存在する側とは反対側に反射膜等の反射手段を形成する。このような半導体光増幅素子を用いた場合、半導体光増幅素子の反射手段と導波路130に設けられた回折格子133が反射鏡の作用を示すので、反射手段と回折格子133とで共振器が構成される。
【0066】
また、上記実施形態の製造方法では、基板10の凹部12に、半導体積層構造40のn型不純物添加クラッド層21の表面を接合しているが、コンタクト金属を介して接合するようにしてもよい。以下に、上記実施形態に係る集積型半導体光素子の製造方法の変形例として、コンタクト金属を介して接合を行う場合について説明する。この集積型半導体光素子の製造方法は、コンタクト金属に関連する工程が異なること以外は、上記の実施形態と同様の構成であるので、その相違点に関連する工程について主に説明する。
まず、基板の凹部に配設する半導体積層構造を作製するための化合物半導体エピウェハを作製する際には、上記の実施形態の場合と同様に、InP基板上に、InGaAsからなるp型不純物添加コンタクト層、InPからなるp型不純物添加クラッド層の順に積層し、さらに、分離閉じ込め層(SCH)を含む活性層(発光層)を積層する。続いて、InPからなるn型不純物添加クラッド層や回折格子層を形成する。このとき、必要に応じてInGaAsやInGaAsPからなる表面保護層を設けてもよい。
【0067】
次いで、本変形例では、化合物半導体エピウェハの表面保護層を必要に応じてエッチングで除去し、n型不純物添加クラッド層を露出させた後、n型不純物添加クラッド層の表面にn側コンタクト金属を蒸着してから、適当なサイズに切出し、半導体積層構造を形成する。一方、基板の凹部の位置には、選択的にn側コンタクト金属を蒸着する。
ここで、n側コンタクト金属の厚さを調節することによって、後に接合される半導体積層構造の活性層の高さ位置を調節することができる。
続いて、基板上のn側コンタクト金属と、半導体積層構造のn側コンタクト金属との間で、金属接合または共晶接合を行う。これによって、基板と半導体積層構造とが接合される。n側コンタクト金属としては、AuGeNi、TiAu等の材料を用いることができる。また、n型不純物添加クラッド層の表面に蒸着するn側コンタクト金属と基板側に蒸着するn側コンタクト金属とは同じ材料でも互いに異なる材料でもよい。接合後、InP基板を除去するプロセスを行う。よって、この時点での積層構造は上から、p型不純物添加コンタクト層、p型不純物添加クラッド層、分離閉じ込め層(SCH)を含む活性層、n型不純物添加クラッド層、回折格子層、n型不純物添加クラッド層、n側コンタクト金属、基板である。
【0068】
なお、その後のクラッド層の堆積、ストライプパターンの形成、半導体積層構造のエッチング、さらなるクラッド層の堆積については、上記実施形態と同様に行うことができる。