特許第6247971号(P6247971)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6247971化合物、着色組成物、インクジェット記録用インク、インクジェット記録方法、インクジェットプリンタカートリッジ、及びインクジェット記録物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6247971
(24)【登録日】2017年11月24日
(45)【発行日】2017年12月13日
(54)【発明の名称】化合物、着色組成物、インクジェット記録用インク、インクジェット記録方法、インクジェットプリンタカートリッジ、及びインクジェット記録物
(51)【国際特許分類】
   C09B 33/12 20060101AFI20171204BHJP
   C09D 11/328 20140101ALI20171204BHJP
   B41J 2/01 20060101ALI20171204BHJP
   B41M 5/00 20060101ALI20171204BHJP
【FI】
   C09B33/12CLA
   C09D11/328
   B41J2/01 501
   B41M5/00 120
【請求項の数】7
【全頁数】26
(21)【出願番号】特願2014-57181(P2014-57181)
(22)【出願日】2014年3月19日
(65)【公開番号】特開2015-178577(P2015-178577A)
(43)【公開日】2015年10月8日
【審査請求日】2016年3月8日
(73)【特許権者】
【識別番号】306037311
【氏名又は名称】富士フイルム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002505
【氏名又は名称】特許業務法人航栄特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100115107
【弁理士】
【氏名又は名称】高松 猛
(74)【代理人】
【識別番号】100151194
【弁理士】
【氏名又は名称】尾澤 俊之
(72)【発明者】
【氏名】飯泉 隆史
(72)【発明者】
【氏名】立石 桂一
(72)【発明者】
【氏名】古川 和史
【審査官】 村守 宏文
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−177073(JP,A)
【文献】 特開2012−193333(JP,A)
【文献】 国際公開第2015/141095(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09B
B41J
B41M
C09D
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表される化合物。
一般式(1)
【化1】

一般式(1)中、Rは無置換のアルキル基を表す。
【請求項2】
Rがメチル基である請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の化合物を含有する着色組成物。
【請求項4】
請求項1又は2に記載の化合物を含有するインクジェット記録用インク。
【請求項5】
請求項に記載のインクジェット記録用インクを用いるインクジェット記録方法。
【請求項6】
請求項に記載のインクジェット記録用インクを充填したインクジェットプリンタカートリッジ。
【請求項7】
請求項に記載のインクジェット記録用インクを用いて、被記録材に着色画像を形成したインクジェット記録物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化合物、着色組成物、インクジェット記録用インク、インクジェット記録方法、インクジェットプリンタカートリッジ、及びインクジェット記録物に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェット記録方法は、材料費が安価であること、高速記録が可能なこと、記録時の騒音が少ないこと、更にカラー記録が容易であることから、急速に普及し、更に発展しつつある。
インクジェット記録方法には、連続的に液滴を飛翔させるコンティニュアス方式と画像情報信号に応じて液滴を飛翔させるオンデマンド方式が有り、その吐出方式にはピエゾ素子により圧力を加えて液滴を吐出させる方式、熱によりインク中に気泡を発生させて液滴を吐出させる方式、超音波を用いた方式、あるいは静電力により液滴を求引吐出させる方式がある。また、インクジェット記録用インクとしては、水性インク、油性インク、あるいは固体(溶融型)インクが用いられる。
【0003】
特許文献1には、特定の構造のアゾ化合物が、黒色用インクとして良好な色相を有し、ブロンズ光沢の発生が抑制され、耐光性及び耐オゾン性に優れる画像を提供できることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2012−177073号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載されたアゾ化合物は、上記のように優れた性能を示すものであるが、このアゾ化合物を含有するインクの貯蔵安定性に関して更なる性能向上の余地があった。
【0006】
本発明は、耐光性及び耐オゾン性に優れ、かつブロンズ光沢が抑制された画像を形成することができ、かつ貯蔵安定性に優れるインクを調製することができる化合物を提供することを目的とする。また、この化合物を含む着色組成物及びインクジェット記録用インク、インクジェット記録用インクを用いたインクジェット記録方法、インクジェットプリンタカートリッジ、並びにインクジェット記録物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の本発明の課題は、下記の手段によって解決できる。
<1>
下記一般式(1)で表される化合物。
一般式(1)
【化11】

一般式(1)中、Rは無置換のアルキル基を表す。
<2>
Rがメチル基である<1>に記載の化合物。

<1>又は<2>に記載の化合物を含有する着色組成物。

<1>又は<2>に記載の化合物を含有するインクジェット記録用インク。

>に記載のインクジェット記録用インクを用いるインクジェット記録方法。

>に記載のインクジェット記録用インクを充填したインクジェットプリンタカートリッジ。

>に記載のインクジェット記録用インクを用いて、被記録材に着色画像を形成したインクジェット記録物。
本発明は、上記<1>〜<>に係る発明であるが、以下、それ以外の事項についても参考のため記載している。
【0008】
[1]
下記一般式(1)で表される化合物。
一般式(1)
【0009】
【化1】
【0010】
一般式(1)中、Rは置換若しくは無置換のアルキル基又はハロゲン原子を表す。Gは窒素原子又は−C(R)=を表す。Rは水素原子、スルホ基、カルボキシ基、置換若しくは無置換のカルバモイル基又はシアノ基を表す。R11、R12、R13及びR14はそれぞれ独立に水素原子又は置換基を表す。Mはそれぞれ独立に水素原子又はカウンターカチオンを表す。
[2]
Rが炭素数1〜10のアルキル基又はハロゲン原子である[1]に記載の化合物。
[3]
11、R12、R13及びR14がそれぞれ独立に
水素原子、
ハロゲン原子、ヒドロキシル基若しくはイオン性親水性基が置換したアルキル基、又は
ハロゲン原子、ヒドロキシル基若しくはイオン性親水性基が置換したアリール基
である[1]又は[2]に記載の化合物。
[4]
Gが−C(R)=を表し、Rがシアノ基を表す[1]〜[3]のいずれか1項に記載の化合物。
[5]
Mがリチウムイオン、カリウムイオン又はナトリウムイオンを表す[1]〜[4]のいずれか1項に記載の化合物。
[6]
[1]〜[5]のいずれか1項に記載の化合物を含有する着色組成物。
[7]
[1]〜[5]のいずれか1項に記載の化合物を含有するインクジェット記録用インク。
[8]
[7]に記載のインクジェット記録用インクを用いるインクジェット記録方法。
[9]
[7]に記載のインクジェット記録用インクを充填したインクジェットプリンタカートリッジ。
[10]
[7]に記載のインクジェット記録用インクを用いて、被記録材に着色画像を形成したインクジェット記録物。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、耐光性及び耐オゾン性に優れ、かつブロンズ光沢が抑制された画像を形成することができ、かつ貯蔵安定性に優れるインクを調製することができる化合物を提供することができる。また、この化合物を含有する着色組成物及びインクジェット記録用インク、インクジェット記録用インクを用いたインクジェット記録方法、インクジェットプリンタカートリッジ、並びにインクジェット記録物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に本発明について詳細に説明する。
まず、本発明における置換基群A及び置換基群Bについて定義する。
【0013】
(置換基群A)
ハロゲン原子、アルキル基、アラルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、ヘテロ環基、シアノ基、ヒドロキシル基、ニトロ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、シリルオキシ基、ヘテロ環オキシ基、アシルオキシ基、カルバモイルオキシ基、アルコキシカルボニルオキシ基、アリールオキシカルボニルオキシ基、アミノ基、アシルアミノ基、アミノカルボニルアミノ基、アルコキシカルボニルアミノ基、アリールオキシカルボニルアミノ基、スルファモイルアミノ基、アルキル又はアリールスルホニルアミノ基、メルカプト基、アルキルチオ基、アリールチオ基、ヘテロ環チオ基、スルファモイル基、アルキル又はアリールスルフィニル基、アルキル又はアリールスルホニル基、アシル基、アリールオキシカルボニル基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、アリール又はヘテロ環アゾ基、イミド基、ホスフィノ基、ホスフィニル基、ホスフィニルオキシ基、ホスフィニルアミノ基、シリル基、イオン性親水性基が例として挙げられる。これらの置換基は更に置換されてもよく、更なる置換基としては、以上に説明した置換基群Aから選択される基を挙げることができる。
【0014】
ハロゲン原子としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、又はヨウ素原子が挙げられる。
【0015】
アルキル基としては、直鎖、分岐、環状の置換若しくは無置換のアルキル基が挙げられ、シクロアルキル基、ビシクロアルキル基、更に環構造が多いトリシクロ構造なども包含するものである。以下に説明する置換基の中のアルキル基(例えば、アルコキシ基、アルキルチオ基のアルキル基)もこのような概念のアルキル基を表す。
アルキル基としては、好ましくは、炭素数1から30のアルキル基、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、t−ブチル基、n−オクチル基、エイコシル基、2−クロロエチル基、2−シアノエチル基、2―エチルヘキシル基等が挙げられ、シクロアルキル基としては、好ましくは、炭素数3から30の置換又は無置換のシクロアルキル基、例えば、シクロヘキシル基、シクロペンチル基、4−n−ドデシルシクロヘキシル基等が挙げられ、ビシクロアルキル基としては、好ましくは、炭素数5から30の置換若しくは無置換のビシクロアルキル基、つまり、炭素数5から30のビシクロアルカンから水素原子を一個取り去った一価の基、例えば、ビシクロ[1,2,2]ヘプタン−2−イル基、ビシクロ[2,2,2]オクタン−3−イル基等が挙げられる。
【0016】
アラルキル基としては、置換若しくは無置換のアラルキル基が挙げられ、置換若しくは無置換のアラルキル基としては、炭素原子数が7〜30のアラルキル基が好ましい。例えばベンジル基及び2−フェネチル基を挙げられる。
【0017】
アルケニル基としては、直鎖、分岐、環状の置換若しくは無置換のアルケニル基が挙げられ、シクロアルケニル基、ビシクロアルケニル基を包含する。
アルケニル基としては、好ましくは、炭素数2から30の置換又は無置換のアルケニル基、例えば、ビニル基、アリル基、プレニル基、ゲラニル基、オレイル基等が挙げられ、シクロアルケニル基としては、好ましくは、炭素数3から30の置換若しくは無置換のシクロアルケニル基、つまり、炭素数3から30のシクロアルケンの水素原子を一個取り去った一価の基、例えば、2−シクロペンテン−1−イル基、2−シクロヘキセン−1−イル基等が挙げられ、ビシクロアルケニル基としては、置換若しくは無置換のビシクロアルケニル基、好ましくは、炭素数5から30の置換若しくは無置換のビシクロアルケニル基、つまり二重結合を一個持つビシクロアルケンの水素原子を一個取り去った一価の基、例えば、ビシクロ[2,2,1]ヘプト−2−エン−1−イル基、ビシクロ[2,2,2]オクト−2−エン−4−イル基等が挙げられる。
【0018】
アルキニル基としては、好ましくは、炭素数2から30の置換又は無置換のアルキニル基、例えば、エチニル基、プロパルギル基、トリメチルシリルエチニル基等が挙げられる。
【0019】
アリール基としては、好ましくは、炭素数6から30の置換若しくは無置換のアリール基、例えば、フェニル基、p−トリル基、ナフチル基、m−クロロフェニル基、o−ヘキサデカノイルアミノフェニル基等が挙げられる。
【0020】
ヘテロ環基としては、好ましくは、5又は6員の置換若しくは無置換の芳香族若しくは非芳香族のヘテロ環化合物から一個の水素原子を取り除いた一価の基であり、更に好ましくは、炭素数3から30の5又は6員の芳香族のヘテロ環基、例えば、2−フリル基、2−チエニル基、2−ピリミジニル基、2−ベンゾチアゾリル基等が挙げられる。非芳香族のヘテロ環基の例としては、モルホリニル基等が挙げられる。
【0021】
アルコキシ基としては、好ましくは、炭素数1から30の置換若しくは無置換のアルコキシ基、例えば、メトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基、t−ブトキシ基、n−オクチルオキシ基、2−メトキシエトキシ基等が挙げられる。
【0022】
アリールオキシ基としては、好ましくは、炭素数6から30の置換若しくは無置換のアリールオキシ基、例えば、フェノキシ基、2−メチルフェノキシ基、4−t−ブチルフェノキシ基、3−ニトロフェノキシ基、2−テトラデカノイルアミノフェノキシ基等が挙げられる。
【0023】
シリルオキシ基としては、好ましくは、炭素数0から20の置換若しくは無置換のシリルオキシ基、例えば、トリメチルシリルオキシ基、ジフェニルメチルシリルオキシ基等が挙げられる。
【0024】
ヘテロ環オキシ基としては、好ましくは、炭素数2から30の置換若しくは無置換のヘテロ環オキシ基、例えば、1−フェニルテトラゾール−5−オキシ基、2−テトラヒドロピラニルオキシ基等が挙げられる。
【0025】
アシルオキシ基としては、好ましくは、ホルミルオキシ基、炭素数2から30の置換若しくは無置換のアルキルカルボニルオキシ基、炭素数6から30の置換若しくは無置換のアリールカルボニルオキシ基、例えば、アセチルオキシ基、ピバロイルオキシ基、ステアロイルオキシ基、ベンゾイルオキシ基、p−メトキシフェニルカルボニルオキシ基等が挙げられる。
【0026】
カルバモイルオキシ基としては、好ましくは、炭素数1から30の置換若しくは無置換のカルバモイルオキシ基、例えば、N,N−ジメチルカルバモイルオキシ基、N,N−ジエチルカルバモイルオキシ基、モルホリノカルボニルオキシ基、N,N−ジ−n−オクチルアミノカルボニルオキシ基、N−n−オクチルカルバモイルオキシ基等が挙げられる。
【0027】
アルコキシカルボニルオキシ基としては、好ましくは、炭素数2から30の置換若しくは無置換アルコキシカルボニルオキシ基、例えば、メトキシカルボニルオキシ基、エトキシカルボニルオキシ基、t−ブトキシカルボニルオキシ基、n−オクチルカルボニルオキシ基等が挙げられる。
【0028】
アリールオキシカルボニルオキシ基としては、好ましくは、炭素数7から30の置換若しくは無置換のアリールオキシカルボニルオキシ基、例えば、フェノキシカルボニルオキシ基、p−メトキシフェノキシカルボニルオキシ基、p−n−ヘキサデシルオキシフェノキシカルボニルオキシ基等が挙げられる。
【0029】
アミノ基としては、アルキルアミノ基、アリールアミノ基、ヘテロ環アミノ基を含み、好ましくは、アミノ基、炭素数1から30の置換若しくは無置換のアルキルアミノ基、炭素数6から30の置換若しくは無置換のアニリノ基、例えば、メチルアミノ基、ジメチルアミノ基、アニリノ基、N−メチル−アニリノ基、ジフェニルアミノ基、トリアジニルアミノ基等が挙げられる。
【0030】
アシルアミノ基としては、好ましくは、ホルミルアミノ基、炭素数1から30の置換若しくは無置換のアルキルカルボニルアミノ基、炭素数6から30の置換若しくは無置換のアリールカルボニルアミノ基、例えば、アセチルアミノ基、ピバロイルアミノ基、ラウロイルアミノ基、ベンゾイルアミノ基、3,4,5−トリ−n−オクチルオキシフェニルカルボニルアミノ基等が挙げられる。
【0031】
アミノカルボニルアミノ基としては、好ましくは、炭素数1から30の置換若しくは無置換のアミノカルボニルアミノ基、例えば、カルバモイルアミノ基、N,N−ジメチルアミノカルボニルアミノ基、N,N−ジエチルアミノカルボニルアミノ基、モルホリノカルボニルアミノ基等が挙げられる。
【0032】
アルコキシカルボニルアミノ基としては、好ましくは、炭素数2から30の置換若しくは無置換アルコキシカルボニルアミノ基、例えば、メトキシカルボニルアミノ基、エトキシカルボニルアミノ基、t−ブトキシカルボニルアミノ基、n−オクタデシルオキシカルボニルアミノ基、N−メチルーメトキシカルボニルアミノ基等が挙げられる。
【0033】
アリールオキシカルボニルアミノ基としては、好ましくは、炭素数7から30の置換若しくは無置換のアリールオキシカルボニルアミノ基、例えば、フェノキシカルボニルアミノ基、p−クロロフェノキシカルボニルアミノ基、m−n−オクチルオキシフェノキシカルボニルアミノ基等が挙げられる。
【0034】
スルファモイルアミノ基としては、好ましくは、炭素数0から30の置換若しくは無置換のスルファモイルアミノ基、例えば、スルファモイルアミノ基、N,N−ジメチルアミノスルホニルアミノ基、N−n−オクチルアミノスルホニルアミノ基等が挙げられる。
【0035】
アルキル又はアリールスルホニルアミノ基としては、好ましくは、炭素数1から30の置換若しくは無置換のアルキルスルホニルアミノ基、炭素数6から30の置換若しくは無置換のアリールスルホニルアミノ基、例えば、メチルスルホニルアミノ基、ブチルスルホニルアミノ基、フェニルスルホニルアミノ基、2,3,5−トリクロロフェニルスルホニルアミノ基、p−メチルフェニルスルホニルアミノ基等が挙げられる。
アルキルチオ基としては、好ましくは、炭素数1から30の置換若しくは無置換のアルキルチオ基、例えば、メチルチオ基、エチルチオ基、n−ヘキサデシルチオ基等が挙げられる。
【0036】
アリールチオ基としては、好ましくは、炭素数6から30の置換若しくは無置換のアリールチオ基、例えば、フェニルチオ基、p−クロロフェニルチオ基、m−メトキシフェニルチオ基等が挙げられる。
【0037】
ヘテロ環チオ基としては、好ましくは、炭素数2から30の置換又は無置換のヘテロ環チオ基、例えば、2−ベンゾチアゾリルチオ基、1−フェニルテトラゾール−5−イルチオ基等が挙げられる。
【0038】
スルファモイル基としては、好ましくは、炭素数0から30の置換若しくは無置換のスルファモイル基、例えば、N−エチルスルファモイル基、N−(3−ドデシルオキシプロピル)スルファモイル基、N,N−ジメチルスルファモイル基、N−アセチルスルファモイル基、N−ベンゾイルスルファモイル基、N−(N‘−フェニルカルバモイル)スルファモイル基等が挙げられる。
【0039】
アルキル又はアリールスルフィニル基としては、好ましくは、炭素数1から30の置換又は無置換のアルキルスルフィニル基、炭素数6から30の置換又は無置換のアリールスルフィニル基、例えば、メチルスルフィニル基、エチルスルフィニル基、フェニルスルフィニル基、p−メチルフェニルスルフィニル基等が挙げられる。
【0040】
アルキル又はアリールスルホニル基としては、好ましくは、炭素数1から30の置換又は無置換のアルキルスルホニル基、炭素数6から30の置換又は無置換のアリールスルホニル基、例えば、メチルスルホニル基、エチルスルホニル基、フェニルスルホニル基、p−メチルフェニルスルホニル基等が挙げられる。
【0041】
アシル基としては、好ましくは、ホルミル基、炭素数2から30の置換又は無置換のアルキルカルボニル基、炭素数7から30の置換若しくは無置換のアリールカルボニル基、炭素数2から30の置換若しくは無置換の炭素原子でカルボニル基と結合しているヘテロ環カルボニル基、例えば、アセチル基、ピバロイル基、2−クロロアセチル基、ステアロイル基、ベンゾイル基、p−n−オクチルオキシフェニルカルボニル基、2−ピリジルカルボニル基、2−フリルカルボニル基等が挙げられる。
【0042】
アリールオキシカルボニル基としては、好ましくは、炭素数7から30の置換若しくは無置換のアリールオキシカルボニル基、例えば、フェノキシカルボニル基、o−クロロフェノキシカルボニル基、m−ニトロフェノキシカルボニル基、p−t−ブチルフェノキシカルボニル基等が挙げられる。
【0043】
アルコキシカルボニル基としては、好ましくは、炭素数2から30の置換若しくは無置換アルコキシカルボニル基、例えば、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、t−ブトキシカルボニル基、n−オクタデシルオキシカルボニル基等が挙げられる。
【0044】
カルバモイル基としては、好ましくは、炭素数1から30の置換若しくは無置換のカルバモイル基、例えば、カルバモイル基、N−メチルカルバモイル基、N,N−ジメチルカルバモイル基、N,N−ジ−n−オクチルカルバモイル基、N−(メチルスルホニル)カルバモイル基等が挙げられる。
【0045】
アリール又はヘテロ環アゾ基としては、好ましくは炭素数6から30の置換若しくは無置換のアリールアゾ基、炭素数3から30の置換若しくは無置換のヘテロ環アゾ基、例えば、フェニルアゾ、p−クロロフェニルアゾ、5−エチルチオ−1,3,4−チアジアゾール−2−イルアゾ等が挙げられる。
【0046】
イミド基としては、好ましくは、N−スクシンイミド基、N−フタルイミド基等が挙げられる。
【0047】
ホスフィノ基としては、好ましくは、炭素数0から30の置換若しくは無置換のホスフィノ基、例えば、ジメチルホスフィノ基、ジフェニルホスフィノ基、メチルフェノキシホスフィノ基等が挙げられる。
【0048】
ホスフィニル基としては、好ましくは、炭素数0から30の置換若しくは無置換のホスフィニル基、例えば、ホスフィニル基、ジオクチルオキシホスフィニル基、ジエトキシホスフィニル基等が挙げられる。
【0049】
ホスフィニルオキシ基としては、好ましくは、炭素数0から30の置換若しくは無置換のホスフィニルオキシ基、例えば、ジフェノキシホスフィニルオキシ基、ジオクチルオキシホスフィニルオキシ基等が挙げられる。
【0050】
ホスフィニルアミノ基としては、好ましくは、炭素数0から30の置換若しくは無置換のホスフィニルアミノ基、例えば、ジメトキシホスフィニルアミノ基、ジメチルアミノホスフィニルアミノ基が挙げられる。
【0051】
シリル基としては、好ましくは、炭素数0から30の置換若しくは無置換のシリル基、例えば、トリメチルシリル基、t−ブチルジメチルシリル基、フェニルジメチルシリル基等が挙げられる。
【0052】
イオン性親水性基としては、スルホ基、カルボキシル基、チオカルボキシル基、スルフィノ基、ホスホノ基、ジヒドロキシホスフィノ基、4級アンモニウム基などが挙げられる。特に好ましくはスルホ基、カルボキシル基である。またカルボキシル基、ホスホノ基及びスルホ基は塩の状態であってもよく、塩を形成する対カチオンの例には、アンモニウムイオン、アルカリ金属イオン(例、リチウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン)及び有機カチオン(例、テトラメチルアンモニウムイオン、テトラメチルグアニジウムイオン、テトラメチルホスホニウム)が含まれ、リチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩が好ましく、リチウム塩又はリチウム塩を主成分とする混合塩が更に好ましく、リチウム塩が最も好ましい。
【0053】
(置換基群B)
炭素数1〜12の直鎖又は分岐鎖アルキル基、炭素数7〜18の直鎖又は分岐鎖アラルキル基、炭素数2〜12の直鎖又は分岐鎖アルケニル基、炭素数2〜12の直鎖又は分岐鎖アルキニル基、炭素数3〜12のシクロアルキル基、炭素数3〜12のシクロアルケニル基(例えばメチル、エチル、n−プロピル、i−プロピル、n−ブチル、i−ブチル、sec−ブチル、t−ブチル、2−エチルヘキシル、2−メチルスルホニルエチル、3−フェノキシプロピル、トリフルオロメチル、シクロペンチル)、ハロゲン原子(例えば、塩素原子、臭素原子)、アリール基(例えば、フェニル、4−t−ブチルフェニル、2,4−ジ−t−アミルフェニル)、ヘテロ環基(例えば、イミダゾリル、ピラゾリル、トリアゾリル、2−フリル、2−チエニル、2−ピリミジニル、2−ベンゾチアゾリル)、シアノ基、ヒドロキシル基、ニトロ基、カルボキシ基、アミノ基、アルキルオキシ基(例えば、メトキシ、エトキシ、2−メトキシエトキシ、2−メチルスルホニルエトキシ)、アリールオキシ基(例えば、フェノキシ、2−メチルフェノキシ、4−t−ブチルフェノキシ、3−ニトロフェノキシ、3−t−ブチルオキシカルボニルフェノキシ、3−メトキシカルボニルフェニルオキシ、アシルアミノ基(例えば、アセトアミド、ベンズアミド、4−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシフェノキシ)ブタンアミド)、アルキルアミノ基(例えば、メチルアミノ、ブチルアミノ、ジエチルアミノ、メチルブチルアミノ)、アリールアミノ基(例えば、フェニルアミノ、2−クロロアニリノ)、ウレイド基(例えば、フェニルウレイド、メチルウレイド、N,N−ジブチルウレイド)、スルファモイルアミノ基(例えば、N,N−ジプロピルスルファモイルアミノ)、アルキルチオ基(例えば、メチルチオ、オクチルチオ、2−フェノキシエチルチオ)、アリールチオ基(例えば、フェニルチオ、2−ブトキシ−5−t−オクチルフェニルチオ、2−カルボキシフェニルチオ)、アルキルオキシカルボニルアミノ基(例えば、メトキシカルボニルアミノ)、アルキルスルホニルアミノ基及びアリールスルホニルアミノ基(例えば、メチルスルホニルアミノ、フェニルスルホニルアミノ、p−トルエンスルホニルアミノ)、カルバモイル基(例えば、N−エチルカルバモイル、N,N−ジブチルカルバモイル)、スルファモイル基(例えば、N−エチルスルファモイル、N,N−ジプロピルスルファモイル、N−フェニルスルファモイル)、アルキルスルホニル基(例えば、メチルスルホニル、オクチルスルホニル)、アリールスルホニル基(例えば、フェニルスルホニル、p−トルエンスルホニル)、アルキルオキシカルボニル基(例えば、メトキシカルボニル、ブチルオキシカルボニル)、ヘテロ環オキシ基(例えば、1−フェニルテトラゾール−5−オキシ、2−テトラヒドロピラニルオキシ)、アゾ基(例えば、フェニルアゾ、4−メトキシフェニルアゾ、4−ピバロイルアミノフェニルアゾ、2−ヒドロキシ−4−プロパノイルフェニルアゾ)、アシルオキシ基(例えば、アセトキシ)、カルバモイルオキシ基(例えば、N−メチルカルバモイルオキシ、N−フェニルカルバモイルオキシ)、シリルオキシ基(例えば、トリメチルシリルオキシ、ジブチルメチルシリルオキシ)、アリールオキシカルボニルアミノ基(例えば、フェノキシカルボニルアミノ)、イミド基(例えば、N−スクシンイミド、N−フタルイミド)、ヘテロ環チオ基(例えば、2−ベンゾチアゾリルチオ、2,4−ジ−フェノキシ−1,3,5−トリアゾール−6−チオ、2−ピリジルチオ)、スルフィニル基(例えば、3−フェノキシプロピルスルフィニル)、ホスホニル基(例えば、フェノキシホスホニル、オクチルオキシホスホニル、フェニルホスホニル)、アリールオキシカルボニル基(例えば、フェノキシカルボニル)、アシル基(例えば、アセチル、3−フェニルプロパノイル、ベンゾイル)、イオン性親水性基(カルボキシル基、スルホ基など)が挙げられる。これらの置換基は更に置換されてもよく、更なる置換基としては、以上に説明した置換基群Bから選択される基を挙げることができる。
【0054】
〔一般式(1)で表される化合物〕
下記一般式(1)で表される化合物について説明する。
一般式(1)
【0055】
【化2】
【0056】
一般式(1)中、Rは置換若しくは無置換のアルキル基又はハロゲン原子を表す。Gは窒素原子又は−C(R)=を表す。Rは水素原子、スルホ基、カルボキシ基、置換若しくは無置換のカルバモイル基又はシアノ基を表す。R11、R12、R13及びR14はそれぞれ独立に水素原子又は置換基を表す。Mはそれぞれ独立に水素原子又はカウンターカチオンを表す。
【0057】
一般式(1)で表される化合物は、アゾ基に結合したフェニル基のアゾ基に対するオルト位にシアノ基を有し、かつパラ位に置換若しくは無置換のアルキル基又はハロゲン原子を有することで、貯蔵安定性に優れるインクが得られるものと考えられる。この作用機構の詳細は不明であるがパラ位に疎水的な置換若しくは無置換のアルキル基又はハロゲン原子を有することで親水的な水などの求核剤が近づきにくくなったものと考えられる。
【0058】
一般式(1)中、Rは置換若しくは無置換のアルキル基又はハロゲン原子を表す。
Rは炭素数1〜10のアルキル基又はハロゲン原子が好ましい。
Rが置換若しくは無置換のアルキル基を表す場合のアルキル基としては、炭素数1〜10のアルキル基が好ましく、炭素数1〜6のアルキル基がより好ましく、炭素数1〜4のアルキル基が更に好ましい。具体的には、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基が好ましく、メチル基、エチル基、イソプロピル基、tert−ブチル基がより好ましく、メチル基が更に好ましい。アルキル基は置換基を有していてもよく、置換基を有する場合の置換基としては、上記置換基群Aから選ばれる置換基が挙げられ、アミノ基、アルキルアミノ基(好ましくは炭素数1〜12のアルキルアミノ基であり、より好ましくは炭素数1〜6のアルキルアミノ基であり、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基が更に好ましい。)、アリールアミノ基(好ましくは炭素数6〜20のアリールアミノ基であり、より好ましくは炭素数6〜10のアリールアミノ基であり、フェニルアミノ基、シアノフェニルアミノ基が更に好ましい。)、ヒドロキシル基、アルコキシ基(好ましくは炭素数1〜12のアルコキシ基であり、より好ましくは炭素数1〜6のアルコキシ基であり、エトキシ基、メトキシ基が更に好ましい。)、アリールチオ基(好ましくは炭素数6〜20のアリールチオ基であり、より好ましくは炭素数6〜10のアリールチオ基であり、フェニルチオ基、エチルベンゼンチオ基が更に好ましい。)、アルキルチオ基(好ましくは炭素数1〜20のアルキルチオ基であり、より好ましくは炭素数1〜10のアルキルチオ基であり、メチルチオ基、エチルチオ基が更に好ましい。)、アルキルスルホニル基(好ましくは炭素数1〜10のアルキルスルホニル基であり、より好ましくは炭素数1〜6のアルキルスルホニル基であり、メタンスルホニル基、エタンスルホニル基が更に好ましい。)が好ましい。
Rがハロゲン原子表す場合、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が好ましく挙げられ、塩素原子がより好ましい。
【0059】
一般式(1)中、Gは窒素原子又は−C(R)=を表す。Rは水素原子、スルホ基、カルボキシ基、置換若しくは無置換のカルバモイル基又はシアノ基を表す。カルバモイル基が置換基を有する場合の置換基としてはアルキル基(好ましくは炭素数1〜6のアルキル基であり、より好ましくは炭素数1〜4のアルキル基であり、特に好ましくはメチル基、エチル基)、アリール基(好ましくは炭素数6〜8のアリール基であり、より好ましくはフェニル基)を挙げることができる。Rは、カルボキシ基、置換若しくは無置換のカルバモイル基又はシアノ基であることが好ましく、シアノ基がより好ましい。
Gは窒素原子又は−C(CN)=を表すことが好ましく、−C(CN)=を表すことがより好ましい。
【0060】
一般式(1)中、R11、R12、R13及びR14はそれぞれ独立に水素原子又は置換基を表す。R11及びR12のうち一方が水素原子を表し、他方が置換基を表すことが好ましい。R13及びR14のうち一方が水素原子を表し、他方が置換基を表すことが好ましい。
11、R12、R13及びR14としては水素原子又は上記置換基群Bから選ばれる置換基を好ましく挙げることができ、水素原子、置換若しくは無置換のアルキル基、置換若しくは無置換のアリール基、又は置換若しくは無置換のヘテロ環基であることが好ましく、水素原子、置換若しくは無置換のアルキル基、又は置換若しくは無置換のアリール基であることがより好ましく、水素原子、ハロゲン原子、ヒドロキシル基若しくはイオン性親水性基が置換したアルキル基、又はハロゲン原子、ヒドロキシル基若しくはイオン性親水性基が置換したアリール基であることが更に好ましく、水素原子、ヒドロキシル基若しくはイオン性親水性基が置換したアルキル基、又はヒドロキシル基若しくはイオン性親水性基が置換したアリール基であることが特に好ましく、水素原子、イオン性親水性基が置換したアルキル基、又はイオン性親水性基が置換したアリール基であることが最も好ましい。アルキル基としては、炭素数1〜10のアルキル基が挙げられ、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、又はt−ブチル基が好ましく、メチル基、エチル基、又はn−プロピル基がより好ましく、エチル基が更に好ましい。アリール基としては、炭素数6〜20のアリール基が挙げられ、フェニル基、ナフチル基が好ましく、フェニル基がより好ましい。イオン性親水性基としてはスルホ基又はカルボキシル基又はヒドロキシ基が好ましく、スルホ基がより好ましく、スルホ基のリチウム塩(−SOLi)、スルホ基のナトリウム塩(−SONa)、又はスルホ基のカリウム塩(−SOK)が更に好ましく、スルホ基のリチウム塩(−SOLi)が特に好ましい。
【0061】
11、R12、R13及びR14が置換基を表す場合の具体例を以下に示すが本発明はこれらに限定されない。*は結合位置を表す。
【0062】
【化3】
【0063】
一般式(1)中、Mはそれぞれ独立に水素原子又はカウンターカチオンを表す。カウンターカチオンとしては、例えばアンモニウムイオン、アルカリ金属イオン(例えば、リチウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン)及び有機カチオン(例えば、テトラメチルアンモニウムイオン、テトラメチルグアニジウムイオン、テトラメチルホスホニウム)が挙げられる。
Mはカウンターカチオンを表すことが好ましく、アルカリ金属イオン又はアンモニウムイオンを表すことがより好ましく、アルカリ金属イオンを表すことが更に好ましく、リチウムイオン、カリウムイオン又はナトリウムイオンを表すことが特に好ましく、リチウムイオンを表すことが最も好ましい。
【0064】
以下に一般式(1)で表される化合物の具体例を以下に示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。下記構造式中、Meはメチル基を表す。
【0065】
【化4】
【0066】
【化5】
【0067】
【化6】
【0068】
〔合成方法〕
一般式(1)で表される化合物は、ジアゾ成分とカプラーとのカップリング反応によって合成することができるが、それらについては、特開2012−177073号公報、特開2003−306623号公報、及び特開2005−139427号公報などに記載がある。
【0069】
〔水溶液〕
一般式(1)で表される化合物は、水を主たる溶媒に溶解させて水溶液とすることができる。
一般式(1)で表される化合物(色素)を含有する水溶液は、色素が水溶性である場合には、水性媒体に溶解して調製し、色素が油溶性である場合には、親油性媒体及び/又は水性媒体に溶解及び/又は分散させて調製することが好ましい。水性媒体とは、水を主体に含む溶媒であり、所望により水混和性有機溶剤等の有機溶媒が含まれる。この有機溶媒は、粘度低下剤としての機能を有していてもよい。親油性媒体とは、有機溶媒を主体とするものである。
水溶液において、主たる溶媒は水であり、好ましくは全溶媒中の水の含有量が50質量%〜100質量%であり、より好ましくは全溶媒中の水の含有量が60質量%〜100質量%である。また、上記水溶液は、水以外に、水混和性有機溶剤、及び親油性媒体を含んでいてもよい。
【0070】
上記水溶液においては、一般式(1)で表される化合物は、溶媒中に溶解又は分散しており、好ましくは溶解している。水溶液において、一般式(1)で表される化合物の含有量は、水溶液の全質量に対して、好ましくは1質量%〜25質量%であり、より好ましくは2質量%〜20質量%であリ、更に好ましくは2質量%〜15質量%である。含有量を上記の範囲とすることで水溶液の貯蔵安定性が良好でありかつインクジェット用水溶性インクの調液が容易という効果がある。
上記水溶液は25℃でのpHが7.0〜9.0であることが好ましく、7.5〜8.5であることがより好ましい。pHを上記の範囲とすることで水溶液中のアゾ化合物の高い溶液安定性を付与できることとインクジェット用水溶性インクの調液が容易という効果がある。
上記水溶液を「インク原液」と称する場合がある。
上記水溶液の用途は、特に制限はないが、インクジェット用に用いることが好ましい。
【0071】
〔防腐剤〕
上記水溶液は、腐敗による不溶解物の生成が問題となることがある。これを防止するために、水溶液には防腐剤を添加することができる。
本発明に使用可能な防腐剤としては、種々のものが使用可能である。
防腐剤としては、重金属イオンを含有する無機物系の防腐剤(銀イオン含有物など)や塩類をまず挙げることができる。有機系の防腐剤としては、第4級アンモニウム塩(テトラブチルアンモニウムクロリド、セチルピリジニウムクロリド、ベンジルトリメチルアンモニウムクロリド等)、フェノール誘導体(フェノール、クレゾール、ブチルフェノール、キシレノール、ビスフェノール等)、フェノキシエーテル誘導体(フェノキシエタノール等)、ヘテロ環化合物(ベンゾトリアゾール、プロキセル(PROXEL)、1,2−ベンゾイソチアゾリン−3−オン等)、酸アミド類、カルバミン酸、カルバメート類、アミジン・グアニジン類、ピリジン類(ナトリウムピリジンチオン−1−オキシド等)、ジアジン類、トリアジン類、ピロール・イミダゾール類、オキサゾール・オキサジン類、チアゾール・チアジアジン類、チオ尿素類、チオセミカルバジド類、ジチオカルバメート類、スルフィド類、スルホキシド類、スルホン類、スルファミド類、抗生物質類(ペニシリン、テトラサイクリン等)、デヒドロ酢酸ナトリウム、安息香酸ナトリウム、p−ヒドロキシ安息香酸エチルエステル、及びその塩など種々のものが使用可能である。また、防腐剤としては防菌防微ハンドブック(技報堂:1986)、防菌防黴剤事典(日本防菌防黴学会事典編集委員会編)等に記載のものも使用し得る。
防腐剤としてはフェノール誘導体、ヘテロ環化合物が好ましく、ヘテロ環化合物がより好ましく、ヘテロ環化合物(プロキセルXL−II:フジフイルムイメージングカララント社製)が更に好ましい。
防腐剤は単独で添加することも、2種以上を組み合わせ水溶液に添加することもできる。これらの防腐剤は油溶性の構造、水溶性の構造のものなど種々のものが使用可能であるが、好ましくは水溶性の防腐剤である。
中でも、少なくとも1種の防腐剤が、ヘテロ環化合物であることが好ましい。本発明では、防腐剤を2種以上併用して使用すると、本発明の効果が更に良好に発揮される。例えば、ヘテロ環化合物と抗生物質の組み合わせ、ヘテロ環化合物とフェノール誘導体との組み合わせ等が好ましく挙げられる。2種の防腐剤を組み合わせる場合の含有量比は、特に限定的ではないが、防腐剤A/防腐剤B=0.01〜100(質量比)の範囲が好ましい。
水溶液への防腐剤の添加量は広い範囲で使用可能であるが、好ましくは、0.001〜10質量%、より好ましくは、0.1〜5質量%である。防腐剤の含有量を上記の範囲とすることで水溶液中の菌の増殖を抑制するという効果がある。
【0072】
上記水溶液は、更に、pH調整剤を含有することができる。
【0073】
また、上記水溶液には、一般式(1)で表される化合物とともに他の着色剤を併用して、より好ましい色相に調整してもよい。併用する染料としては、任意の染料が用いられ得る。
【0074】
〔着色組成物〕
本発明の着色組成物は、上記一般式(1)で表される化合物を含有する。
【0075】
一般式(1)で表される化合物の着色組成物中での含有量は、0.2〜20質量%が好ましく、0.5〜10質量%がより好ましく、1.0〜8.0質量%が特に好ましい。
本発明の着色組成物は、全染料を好ましくは、0.2〜20質量%含有し、より好ましくは、0.5〜10質量%含有し、特に好ましくは1.0〜8.0質量%含有する。
【0076】
本発明の着色組成物はpH調整剤により、25℃での着色組成物のpHが7.0〜10.0に調整されていることが好ましく、pHが7.5〜9.5に調整されていることがより好ましい。pHが7.0以上である場合は染料の溶解性が向上してノズルの詰まりを防止できる。また、pHが10.0以下であればインクの長期貯蔵安定性に優れる傾向がある。
着色組成物に用いられるpH調整剤としては、炭酸水素リチウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウムが好ましく、炭酸水素リチウム、炭酸水素ナトリウムがより好ましい。
本発明の着色組成物の用途は、特に制限されるべきものではなく、インクジェットなどの印刷用のインク組成物、感熱記録材料におけるインクシート、電子写真用のカラートナー、LCD、PDPなどのディスプレイやCCDなどの撮像素子で用いられるカラーフィルター、各種繊維の染色のための染色液などの調製に好ましく用いることができるが、特にインクジェット記録用インク組成物が好ましい。
着色組成物の製造方法は、上記水溶液を用いることができる。
着色組成物は、ブラックインクが好適であるが、ブラックインクに制限されるべきものではなく、他の染料あるいは顔料との混合により任意の色のインクを包含することができる。
着色組成物の製造方法は、少なくとも水溶液を用いて上記粘度範囲の所望のインク組成物を作製する工程(以下、調液工程ともいう)を含む。
調液工程とは、上記のようにして得られた水溶液を特定の粘度を有し、かつ所望の用途のインク組成物に調液する工程であり、最終製品であってもよいし、中間製品であってもよい。この調液工程には水溶液を媒体、好ましくは水性媒体で希釈する工程が少なくとも含まれる。油溶性染料を含む水溶液は、この希釈工程で使用する媒体に特に制限はないが、水性媒体中に乳化分散され、水性インク組成物として調製されることが好ましい。この媒体には、必要な濃度の各種成分が含まれていてもよいし、この成分を別途水溶液に添加するようにしてもよいし、それら両者を組みあわせてもよい。
本発明により製造された着色組成物は、染料濃度が高濃度な水溶液を用いて製造されたために通常の方法で製造された着色組成物よりも染料の溶解性が向上し、ひいては吐出安定性が向上する。
【0077】
水溶液を作製する際には、濾過により固形分であるゴミを除く工程(濾過工程)を加えることが好ましい。この作業には濾過フィルターを使用するが、このときの濾過フィルターとは、有効径が1μm以下、好ましくは0.3μm以下のフィルターを用いる。フィルターの材質としては種々のものが使用できるが、特に水溶性染料の水溶液の場合には、水系の溶媒用に作製されたフィルターを用いるのが好ましい。中でも特にゴミの出にくい、ポリマー材料で作製されたジャケット型のフィルターを用いるのが好ましい。濾過法としては送液によりジャケットを通過させてもよいし、加圧濾過、減圧濾過のいずれの方法も利用可能である。
本発明では、粘度低下剤を用いていてもよく、上記濾過処理を抵抗なく行うことができる。
【0078】
水溶液を作製する工程や調液工程において、染料やその他の成分を溶解する方法としては、攪拌による溶解、超音波照射による溶解、振とうによる溶解等種々の方法が使用可能である。中でも特に攪拌法が好ましく使用される。攪拌を行う場合、公知の流動攪拌や反転アジターやディゾルバを利用した剪断力を利用した攪拌など、種々の方式が利用可能である。一方では、磁気攪拌子のように、容器底面との剪断力を利用した攪拌法も好ましく利用できる。
【0079】
次に、本発明の水溶液及び着色組成物に用いられる染料について説明する。この染料としては、特に制限はないが、λmaxが500nmから700nmにあり、かつ吸光度1.0に規格化した希薄溶液の吸収スペクトルにおける半値幅(Wλ,1/2)が100nm以上、好ましくは120nm以上500nm以下、更に好ましくは120nm以上350nm以下である一般式(1)で表されるアゾ化合物を少なくとも1種含むことが好ましい。
【0080】
この一般式(1)で表される化合物単独で、画像品質の高い「(しまりのよい)黒」=観察光源によらず、かつB,G,Rのいずれかの色調が強調されにくい黒を実現できる場合は、この染料を単独で水溶液又はインク組成物の原料として使用することも可能であるが、通常、インク組成物としてはこの染料の吸収が低い領域をカバーする染料と併用するのが一般的である。通常、一般式(1)で表されるアゾ化合物を用いるインク組成物の場合は、イエロー領域に主吸収(λmaxが350nmから500nm)を有する他の染料と併用するのが好ましい。また、更に他の染料と併用してインク組成物を作製することも可能である。
他の染料は、水溶液に用いることができるが、好ましくはインク組成物の調製のときに混合して用いることが貯蔵安定性の観点から好ましい。
【0081】
本発明の着色組成物は、必要に応じてその他の添加剤を、本発明の効果を害しない範囲内において含有しうる。その他の添加剤としては、後述のインクジェット記録用インクに使用しうる添加剤が挙げられる。
【0082】
[インクジェット記録用インク]
次に本発明のインクジェット記録用インクについて説明する。
本発明のインクジェット記録用インクは、本発明の着色組成物を含有する。
インクジェット記録用インクは、親油性媒体や水性媒体中に一般式(1)で表される化合物を溶解及び/又は分散させることによって作製することができる。好ましくは、水性媒体を用いたインクである。必要に応じてその他の添加剤を、本発明の効果を害しない範囲内において含有することができる。その他の添加剤としては、例えば、乾燥防止剤(湿潤剤)、褪色防止剤、乳化安定剤、浸透促進剤、紫外線吸収剤、防腐剤、防黴剤、pH調整剤、表面張力調整剤、消泡剤、粘度調整剤、分散剤、分散安定剤、防錆剤、キレート剤等の公知の添加剤が挙げられる。これらの各種添加剤は、水溶性インクの場合にはインク液に直接添加する。油溶性染料を分散物の形で用いる場合には、染料分散物の調製後分散物に添加するのが一般的であるが、調製時に油相又は水相に添加してもよい。
【0083】
本発明のインクジェット記録用インク100質量%中、一般式(1)で表される化合物を0.2質量%以上10質量%以下含有するのが好ましく、1質量%以上6質量%以下含有するのがより好ましい。また、本発明のインクジェット記録用インクには、一般式(1)で表される化合物とともに、他の色素を併用してもよい。2種類以上の色素を併用する場合は、色素の含有量の合計が上記範囲となっているのが好ましい。
【0084】
本発明のインクジェット記録用インクは、粘度が30mPa・s以下であるのが好ましい。また、その表面張力は25mN/m以上70mN/m以下であるのが好ましい。粘度及び表面張力は、種々の添加剤、例えば、粘度調整剤、表面張力調整剤、比抵抗調整剤、皮膜調整剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、褪色防止剤、防黴剤、防錆剤、分散剤及び界面活性剤を添加することによって、調整できる。
【0085】
本発明のインクジェット記録用インクは、単色の画像形成のみならず、フルカラーの画像形成に用いることができる。特にブラック色調のインクジェット記録用インクに好ましく利用される。
【0086】
本発明のインク組成物は、印捺、複写、マーキング、筆記、製図、スタンピングなどの記録方法に使用でき、特にインクジェット記録方法における使用に適する。
【0087】
[インクジェット記録方法]
本発明は、本発明の着色組成物又はインクジェット記録用インクを用いて、画像形成するインクジェット記録方法にも関する。
【0088】
[インクジェットプリンタカートリッジ、及びインクジェット記録物]
本発明のインクジェット記録用インクカートリッジは、上記した本発明のインクジェット記録用インクを充填したものである。また、本発明のインクジェット記録物は、上記した本発明のインクジェット記録用インクを用いて、被記録材に着色画像を形成したものである。
【0089】
以下に、本発明のインクを用いてインクジェットプリントをするのに用いられる記録紙及び記録フィルムについて説明する。
記録紙及び記録フィルムにおける支持体は、LBKP、NBKP等の化学パルプ、GP、PGW、RMP、TMP、CTMP、CMP、CGP等の機械パルプ、DIP等の古紙パルプ等からなり、必要に応じて従来公知の顔料、バインダー、サイズ剤、定着剤、カチオン剤、紙力増強剤等の添加剤を混合し、長網抄紙機、円網抄紙機等の各種装置で製造されたもの等が使用可能である。これらの支持体の他に合成紙、プラスチックフィルムシートのいずれであってもよく、支持体の厚みは10〜250μm、坪量は10〜250g/mが望ましい。
【0090】
インクジェット記録紙及び記録フィルムの構成層(バックコート層を含む)には、ポリマーラテックスを添加してもよい。ポリマーラテックスは、寸度安定化、カール防止、接着防止、膜のひび割れ防止のような膜物性改良の目的で使用される。ポリマーラテックスについては、特開昭62−245258号、同62−136648号、同62−110066号の各公報に記載がある。ガラス転移温度が低い(40℃以下の)ポリマーラテックスを媒染剤を含む層に添加すると、層のひび割れやカールを防止することができる。また、ガラス転移温度が高いポリマーラテックスをバックコート層に添加しても、カールを防止することができる。
【0091】
本発明のインクは、インクジェットの記録方式に制限はなく、公知の方式、例えば静電誘引力を利用してインクを吐出させる電荷制御方式、ピエゾ素子の振動圧力を利用するドロップオンデマンド方式(圧力パルス方式)、電気信号を音響ビームに変えインクに照射して、放射圧を利用してインクを吐出させる音響インクジェット方式、及びインクを加熱して気泡を形成し、生じた圧力を利用するサーマルインクジェット方式等に用いられる。インクジェット記録方式には、フォトインクと称する濃度の低いインクを小さい体積で多数射出する方式、実質的に同じ色相で濃度の異なる複数のインクを用いて画質を改良する方式や無色透明のインクを用いる方式が含まれる。
【実施例】
【0092】
以下に実施例を挙げて本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。以下の実施例に示す材料、試薬、割合、機器、操作等は本発明の精神から逸脱しない限り適宜変更することができる。従って、本発明の範囲は以下に示す具体例に限定されるものではない。なお、以下の実施例において、特に断りのない限り「%」及び「部」は、「質量%」及び「質量部」を表し、分子量とは質量平均分子量のことを示す。
なお、実施例2、実施例−15〜18、23〜26は、それぞれ参考例2、参考例−15〜18、23〜26と読み替えるものとする。
【0093】
(BLACK−1の合成)
合成スキームを下記に示す。
【0094】
【化7】
【0095】
中間体(c−1)の合成:
2−アミノ−5−メチルベンゾニトリル(a−1)2.9gに水31mLを加え室温で撹拌し、12M塩酸水5.1mLを滴下後、反応液を内温0℃まで冷却した。内温を0−4℃に保ちながら亜硝酸ナトリウム1.6gの25%水溶液を滴下し内温0−5℃で1時間撹拌した。その後、スルファミン酸0.4gを加え10分撹拌しジアゾニウム塩溶液を得た。上記ジアゾニウム塩溶液とは別に、中間体(b−1)(特開2012−177073号公報記載の方法で合成)に水75mLを加え内温2℃まで冷却後、上記調製したジアゾニウム塩溶液を内温2−5℃で5分かけて滴下した。内温を室温まで昇温した後、1.5時間撹拌後、イソプロパノール500mlを滴下し、析出した結晶をろ過した。40℃で12時間乾燥し、c−1を15.5g得た。
1H NMR: δ=10.65 (brs, 1H), 10.32 (brs, 1H), 10.09 (brs, 1H), 8.92 (d, 2H), 8.18 (s, 1H), 8.06 (brs, 1H), 7.85 (brs, 1H), 7.79 (s, 1H), 7.70 (d, 2H), 7.53 (d, 1H), 7.48 (d, 1H), 7.42 (d, 1H), 7.31 (d, 1H), 3.68 (t, 2H), 2.80 (t, 2H), 2.37 (s, 3H), 400 MHz in DMSO-d6
【0096】
(BLACK−1)の合成:
上記で得られた(c−1)6.0gと中間体(d−1)(特開2012−177073号公報記載の方法で合成)3.5gを水180mLに完溶させ、塩酸水を滴下しpHを0.9にした。内温を40℃にした後、亜硝酸イソアミル0.8gを滴下し、同温度で30分撹拌した。その後、更に亜硝酸イソアミル1.2gを滴下し内温40℃で3時間撹拌した。反応液に水酸化リチウムを加え、pHを8.0にした後、イソプロパノール500mLを30分かけて滴下した。スラリー状の反応液をろ過しイソプロパノール200mLで洗浄し粗(BLACK−1)を得た。この粗体に水40mLを加え溶解し、Li型の陽イオン交換樹脂を通した後、水酸化リチウム溶液でpHを8.0にした。メンブランフィルターで除塵ろ過し不溶物を除いた後、エバポレーターで濃縮し、BLACK−1を3.4g得た。
溶液スペクトルのλmaxはDMF(ジメチルホルムアミド)中で691nm、水中で608nm、ESI−マススペクトル測定により分子量は1282.10で、イオンクロマトグラフィによりスルホン酸のカウンターカチオンがリチウムであることを確認した。
1H NMR: δ= 10.35 (s, 1H), 9.80 (brs, 1H), 9.67 (brs, 1H), 9.00 (brs, 1H),8.74 (brs, 1H), 8.10 (d, 1H), 8.02 (d, 1H), 7.88 (d, 1H),7.83 (d, 2H), 7.82 (d, 1H),7.78 (d, 2H), 7.69 (d, 2H), 7.64 (d, 2H), 7.59 (d, 2H), 7.49 (d, 2H), 7.19 (d, 1H), 7.10 (s, 1H),3.76 (t, 2H), 2.77 (t, 2H),2.69 (s, 3H), 2.37 (s, 3H), 400 MHz in DMSO-d6
【0097】
(BLACK−2の合成)
合成スキームを下記に示す。
【0098】
【化8】
【0099】
中間体(c−2)の合成:
2−アミノ−5−クロロベンゾニトリル(a−2)5.3gに水50mLを加え室温で撹拌し、12M塩酸水9.4mLを滴下後、反応液を内温0℃まで冷却した。内温を0−4℃に保ちながら亜硝酸ナトリウム2.5gの25%水溶液を滴下し内温0−5℃で1時間撹拌した。その後、スルファミン酸0.6gを加え10分撹拌しジアゾニウム塩溶液を得た。上記ジアゾニウム塩溶液とは別に、中間体(b−1)(特開2012−177073号公報記載の方法で合成)に水90mLを加え内温2℃まで冷却後、上記調製したジアゾニウム塩溶液を内温2−5℃で5分かけて滴下した。内温を室温まで昇温した後、1.5時間撹拌後、イソプロパノール500mlを滴下し、析出した結晶をろ過した。40℃で12時間乾燥し、c−2を25.2g得た。
ESI−マススペクトル測定により分子量は831.02であることを確認した。
【0100】
(BLACK−2)の合成:
酢酸50mlと濃硫酸15mlの混合溶媒を0度に冷却した後、40%ニトロシル硫酸(1.7g)を滴下し、内温を0−4℃に保ちながら上記で得られた(c−2)4.2gを分割添加して一時間撹拌した。その後、その後、スルファミン酸92mgを加え10分撹拌しジアゾニウム塩溶液を得た。上記ジアゾニウム塩溶液とは別に、中間体(d−1)(特開2012−177073号公報記載の方法で合成)に水25mLとメタノール200mlを加え内温2℃まで冷却後、上記調製したジアゾニウム塩溶液を内温2−5℃で5分かけて滴下した。反応液に水酸化リチウムを加え、pHを8.0にした後、イソプロパノール6500mLを30分かけて滴下した。スラリー状の反応液をろ過しイソプロパノール200mLで洗浄し粗(BLACK−2)を得た。この粗体に水50mLを加え溶解し、Li型の陽イオン交換樹脂を通した後、水酸化リチウム溶液でpHを7.0にした。メンブランフィルターで除塵ろ過し不溶物を除いた後、エバポレーターで濃縮し、BLACK−2を3.2g得た。
溶液スペクトルのλmaxはDMF中で707nm、水中で613nm、ESI−マススペクトル測定により分子量は1302.05で、イオンクロマトグラフィによりスルホン酸のカウンターカチオンがリチウムであることを確認した。
1H NMR: δ= 10.40 (s, 1H), 9.75 (brs, 1H), 9.62 (brs, 1H), 8.69 (brs, 1H), 8.63 (brs, 1H), 8.25 (d, 1H), 8.10 (d, 1H), 8.01 (d, 1H),7.94 (d, 1H), 7.86 (d, 2H),7.81 (d, 2H), 7.68 (d, 2H), 7.62 (d, 2H), 7.59 (d, 2H), 7.48 (d, 2H), 7.18 (d, 1H), 7.08 (d, 1H), 3.71 (t, 2H), 2.75 (t, 2H),2.75 (s, 3H), 400 MHz in DMSO-d6
【0101】
[水溶液の調製]
色素化合物を含有する水溶液を、ここでは「インク原液」と称する。なお、水溶液は4mol/L水酸化リチウム水溶液を用いて、pHを8.1〜8.3に調整した。
【0102】
[実施例1]
色素化合物(BLACK−1)100gを超純水900gに室温で撹拌しながら溶解後、防腐剤(プロキセルXL−II:フジフイルムイメージングカララント社製)を固形分として0.1gを添加した。4mol/L水酸化リチウム水溶液を用いて、pHを8.2に調整し、引き続き、0.2μmのメンブランフィルターを用いて不要物のろ過を行い、インク原液−1を得た。
【0103】
[実施例2]
色素化合物(BLACK−1)の代わりに(BLACK−2)を用いた以外は、実施例1と同様の操作を行い、インク原液−2を得た。
【0104】
[比較例1]
色素化合物(BLACK−1)の代わりに下記比較化合物1を用いた以外は、実施例1と同様の操作を行い、比較用インク原液−01を得た。
比較化合物1
【0105】
【化9】
【0106】
〔インク原液の貯蔵安定性試験方法〕
pH値変化に関しては、インク原液調液直後のpH値(液温25℃)と強制熱経時試験(60℃で14日間保管)後のpH値(液温25℃)の値を基に、以下のような水準を設定した。
A:強制熱経時試験前後のpH値の差が、0.3未満
B:強制熱経時試験前後のpH値の差が、0.3以上0.5未満
C:強制熱経時試験前後のpH値の差が、0.5以上0.7未満
D:強制熱経時試験前後のpH値の差が、0.7以上
【0107】
ABS値変化に関しては、インク原液調液直後のインク原液を、インク原液の全質量に対する色素化合物の質量が1/5000になるように超純水で希釈後のABS(吸光度)値と強制熱経時試験(60℃で14日間保管)後インク原液を、インク原液の全質量に対する色素化合物の質量が1/5000になるように超純水で希釈後のABS値を基に、以下のような水準を設定した。
A:強制熱経時試験前後のABS値の差が、0.05未満
B:強制熱経時試験前後のABS値の差が、0.05以上0.10未満
C:強制熱経時試験前後のABS値の差が、0.10以上0.15未満
D:強制熱経時試験前後のABS値の差が、0.15以上
結果を下記表1に示す。
【0108】
【表1】
【0109】
[実施例−11〜26、比較例−11〜12]
〔インクジェット記録用インクの調製〕
以下の表2に示した組成に基づき、各インクジェット記録用インクを調製した。調製方法は、実施例1と同様に、色素化合物、防腐剤を含むインク原液を作成し、残りの各成分を加え希釈し、常温において30分間攪拌した後、4mol/L水酸化リチウム水溶液を用いて、pHを8.2に調整し、得られた溶液を目開き1.0μmのメンブランフィルターを用いて濾過することにより各インクジェット記録用インクを得た。なお表2中において、各成分の数値はインクジェット記録用インクの質量を100%とした場合の各成分の質量%を示し、更に水の量を示す「残」は、水以外の成分とあわせて合計100%になる量を示す。
このようにしてインクジェット記録用インクB−01〜B−18を調製した。
【0110】
【表2】
【0111】
【化10】
【0112】
〔インクジェット記録用インクの貯蔵安定性試験方法〕
pH値変化に関しては、インクジェット記録用インク調液直後のpH値(液温25℃)と強制熱経時試験(60℃で14日間)後のpH値(液温25℃)の値を基に、以下のような水準を設定した。
A:強制熱経時試験前後のpH値の差が、0.3未満
B:強制熱経時試験前後のpH値の差が、0.3以上0.5未満
C:強制熱経時試験前後のpH値の差が、0.5以上0.7未満
D:強制熱経時試験前後のpH値の差が、0.7以上
【0113】
ABS値変化に関しては、インクジェット記録用インク調液直後のインクジェット記録用インクを、インクジェット記録用インクの全質量に対する色素化合物の質量が1/5000になるように超純水で希釈後のABS(吸光度)値と強制熱経時試験(60℃で14日間)後インクジェット記録用インクを、インクジェット記録用インクの全質量に対する色素化合物の質量が1/5000になるように超純水で希釈後のABS値を基に、以下のような水準を設定した。
A:強制熱経時試験前後のABS値の差が、0.05未満
B:強制熱経時試験前後のABS値の差が、0.05以上0.10未満
C:強制熱経時試験前後のABS値の差が、0.10以上0.15未満
D:強制熱経時試験前後のABS値の差が、0.15以上
【0114】
インクジェットプリンタは、Stylus Color 880(商標)(商品名、セイコーエプソン株式会社製)を使用し、インクジェット専用記録媒体{写真用紙<光沢>(商品名、セイコーエプソン株式会社製)}用いた。インクカートリッジにインクジェット記録用インクを充填し、インクジェットプリンタに装填し、反射濃度計(X−Rite310TR)で測定したOD値が0.7〜1.8になるように階段状に濃度が変化した単色画像パターンを印字させ、画像堅牢性(耐光性・耐オゾンガス性)並びに画像品質(ブロンズ光沢)の評価を行った。
【0115】
〔ブロンズ光沢評価〕
ブロンズ光沢発生の有無については、記録した直後の画像を24時間自然乾燥させた後で、目視にて観察して評価した。ブロンズ光沢が全く確認できなかったものをA、僅かながらブロンズ現象が確認されたものをB、明らかにブロンズ光沢が確認されたものをCとした。
得られた結果を、表3に「画質ブロンズ」として示した。
【0116】
〔耐オゾン性試験方法〕
オゾンガス濃度が5ppm(25℃;60%RH)に設定された条件下で印字されたインクジェット専用記録媒体を7日間、オゾンガスに曝露した。オゾンガス濃度は、APPLICS製オゾンガスモニター(モデル:OZG−EM−01)を用いて設定した。曝露開始から一定期間経過ごとに、反射濃度計(X−Rite310TR)を使用して各印刷物に記録されているOD値を測定した。なお、反射濃度は曝露試験前のOD値が0.7、1.0及び1.8の3点で測定した。
得られた結果から次式:
ROD(%)=(D/D0)×100
を用いて光学濃度残存率(ROD)を求めた。式中、Dは曝露試験後のOD値、D0は曝露試験前のOD値を表す。
更に、上記試験の結果に基づき、下記の判定基準を用いて、インクジェット専用記録媒体に記録された耐オゾン性をA〜Dにランク付けた。
[判定基準]
評価A:試験開始から7日後のRODが、何れの濃度でも85%以上である。
評価B:試験開始から7日後のRODが、何れか1点の濃度が85%未満になる。
評価C:試験開始から7日後のRODが、何れか2点の濃度が85%未満になる。
評価D:試験開始から7日後のRODが、全ての濃度で85%未満になる。
本試験においては、オゾンに長時間曝露してもRODの低下が少ない記録物が優れる。得られた結果を「オゾンガス堅牢性」として表3に示した。
【0117】
〔耐光性試験方法〕
ウェザーメーター(アトラス社製)を使用し、印字されたインクジェット専用記録媒体にキセノン光(10万ルックス)を14日間照射した。照射開始から一定期間経過ごとに、反射濃度計(X−Rite310TR)を使用して各印刷物に記録されているOD値を測定した。なお、反射濃度は曝露試験前のOD値が0.7、1.0及び1.8の3点で測定した。
得られた結果から次式:
ROD(%)=(D/D0)×100
を用いて、光学濃度残存率(ROD)を求めた。式中、Dは曝露試験後のOD値、D0は曝露試験前のOD値を表す。
更に、上記試験の結果に基づき、下記の判定基準を用いて、インクジェット専用記録媒体に記録された耐光性をA〜Dにランク付けた。
[判定基準]
評価A:試験開始から14日後のRODが、何れの濃度でも85%以上である。
評価B:試験開始から14日後のRODが、何れか1点の濃度が85%未満になる。
評価C:試験開始から14日後のRODが、何れか2点の濃度が85%未満になる。
評価D:試験開始から14日後のRODが、全ての濃度で85%未満になる。
本試験においては、光に長時間曝露してもRODの低下が少ない記録物が優れる。得られた結果を表1−3に示した。
【0118】
【表3】