特許第6248134号(P6248134)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6248134
(24)【登録日】2017年11月24日
(45)【発行日】2017年12月13日
(54)【発明の名称】荷電粒子ビーム描画装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/027 20060101AFI20171204BHJP
   G03F 7/20 20060101ALI20171204BHJP
   H01J 37/305 20060101ALI20171204BHJP
   H01J 37/16 20060101ALI20171204BHJP
【FI】
   H01L21/30 541G
   G03F7/20 504
   G03F7/20 521
   H01J37/305 B
   H01J37/16
【請求項の数】15
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2016-82649(P2016-82649)
(22)【出願日】2016年4月18日
(62)【分割の表示】特願2012-140873(P2012-140873)の分割
【原出願日】2012年6月22日
(65)【公開番号】特開2016-157968(P2016-157968A)
(43)【公開日】2016年9月1日
【審査請求日】2016年4月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】504162958
【氏名又は名称】株式会社ニューフレアテクノロジー
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【弁理士】
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100103034
【弁理士】
【氏名又は名称】野河 信久
(74)【代理人】
【識別番号】100075672
【弁理士】
【氏名又は名称】峰 隆司
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100179062
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 正
(74)【代理人】
【識別番号】100189913
【弁理士】
【氏名又は名称】鵜飼 健
(74)【代理人】
【識別番号】100120569
【弁理士】
【氏名又は名称】大阿久 敦子
(72)【発明者】
【氏名】安田 聡
(72)【発明者】
【氏名】河島 辰裕
【審査官】 新井 重雄
(56)【参考文献】
【文献】 特開2001−284219(JP,A)
【文献】 特開2004−104021(JP,A)
【文献】 特開2005−327901(JP,A)
【文献】 特開2001−148341(JP,A)
【文献】 特開2002−151401(JP,A)
【文献】 特開平01−270602(JP,A)
【文献】 特表2012−518898(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/027
G03F 7/20
H01J 37/16
H01J 37/305
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上面に開口を有するチャンバと、前記チャンバの中に設けられるステージとを備えた描画室と、
前記開口を介して前記ステージに向けて荷電粒子ビームを照射するビーム照射手段を内蔵し、下部に前記チャンバの前記開口の半径方向に外方へ向くフランジが形成された光学鏡筒と、
前記フランジと前記チャンバとの間に形成され、Oリングが設けられる溝部を有するシール部と、
前記シール部の前記溝部に設けられ、シールを形成するOリングと、
を有し、
記シール部の少なくとも前記溝部とその近傍、リンおよび硫黄の濃度がいずれも所定の濃度以下である高純度の低熱膨張材料によって構成され
前記チャンバは、リンまたは硫黄の濃度のいずれか一方が前記所定の濃度を超える濃度である低純度の低熱膨張性材料によって構成されている、
電粒子ビーム描画装置。
【請求項2】
前記所定の濃度は、0.001質量パーセントである、請求項1に記載の荷電粒子ビーム描画装置。
【請求項3】
前記シール部の前記高純度の低熱膨張材料のリンおよび硫黄の濃度が、前記チャンバの前記低純度の低熱膨張性材料のリンおよび硫黄の濃度の1/10以下である、請求項1に記載の荷電粒子ビーム描画装置。
【請求項4】
前記低熱膨張材料は、室温で2×10−6/K以下の線膨張係数を有する材料によって構成されることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか一項に記載の荷電粒子ビーム描画装置。
【請求項5】
前記低熱膨張材料は、少なくともニッケルを含む鉄合金である、請求項1ないし4のいずれか一項に記載の荷電粒子ビーム描画装置。
【請求項6】
前記チャンバは、複数の部材が接合されて構成され、または、他の部材とのシール部を有しており、
前記チャンバの前記複数の部材の各接合部または前記他の部材とのシール部は、前記高純度の低熱膨張材料によって構成されていることを特徴とする請求項1に記載の荷電粒子ビーム描画装置。
【請求項7】
前記光学鏡筒は、さらに、前記チャンバの開口に嵌合し、前記荷電粒子ビームを前記ステージに向けて照射するための開口を端部に有する凸部を備え、
荷電粒子ビーム描画装置は、更に、前記ステージを載置し、前記チャンバから独立して前記光学鏡筒の前記凸部に吊り下げられて接続される吊り下げ部を、前記チャンバの内部に有する、請求項1に記載の荷電粒子ビーム描画装置。
【請求項8】
前記吊り下げ部を構成する部材の少なくとも接合部は、前記低純度の低熱膨張性材料によって構成されている、請求項7に記載の荷電粒子ビーム描画装置。
【請求項9】
上面に開口を有するチャンバと、
前記チャンバの中に設けられるステージとを備えた描画室と
前記開口を介して前記ステージに向けて荷電粒子ビームを照射するビーム照射手段を内蔵し、下部に前記チャンバの前記開口の半径方向に外方へ向くフランジが形成された光学鏡筒と
Oリングが設けられる、前記フランジに面した第1の溝部を有した第1のシール部と、他のOリングが設けられる、前記チャンバに面した第2の溝部を有した第2のシール部とを備える接続部材と、
前記接続部材の前記第1の溝部と前記第2の溝部に設けられ、それぞれシールを形成する2つのOリングと、
を有し、
前記接続部材の少なくとも前記第1のシール部と前記第2のシール部とは、リンおよび硫黄の濃度がいずれも所定の濃度以下である高純度の低熱膨張材料によって構成され、
前記チャンバは、リンまたは硫黄の濃度のいずれか一方が前記所定の濃度を超える濃度である低純度の低熱膨張性材料によって構成されている、
荷電粒子ビーム描画装置。
【請求項10】
前記接続部材の前記第1のシール部と前記第2のシール部以外の部分は、前記高純度の低熱膨張材料または前記低純度の低熱膨張材料で構成される、請求項9に記載の荷電粒子ビーム描画装置。
【請求項11】
前記所定の濃度は、0.001質量パーセントである、請求項9に記載の荷電粒子ビーム描画装置。
【請求項12】
前記第1のシール部と前記第2のシール部の前記高純度の低熱膨張材料のリンおよび硫黄の濃度が、前記チャンバの前記低純度の低熱膨張性材料のリンおよび硫黄の濃度の1/10以下である、請求項9に記載の荷電粒子ビーム描画装置。
【請求項13】
前記低熱膨張材料は、少なくともニッケルを含む鉄合金である、請求項9ないし12のいずれか一項に記載の荷電粒子ビーム描画装置。
【請求項14】
荷電粒子ビーム描画装置は、更に、前記ステージを載置し、前記接続部材に吊り下げられて接続される吊り下げ部を、前記チャンバの内部に有する、請求項9に記載の荷電粒子ビーム描画装置。
【請求項15】
前記吊り下げ部を構成する部材の少なくとも接合部は、前記低純度の低熱膨張性材料によって構成されている、請求項14に記載の荷電粒子ビーム描画装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、荷電粒子ビーム描画装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、大規模集積回路(LSI:Large Scale Integration)の高集積化および大容量化に伴い、半導体素子に要求される回路線幅は益々狭くなっている。
【0003】
半導体素子は、回路パターンが形成された原画パターン(マスクまたはレチクルを指す。以下では、マスクと総称する。)を用い、いわゆるステッパと呼ばれる縮小投影露光装置でウェハ上にパターンを露光転写して回路形成することにより製造される。ここで、微細な回路パターンをウェハに転写するためのマスクの製造には、電子ビーム描画装置などの荷電粒子ビーム描画装置が用いられる(例えば、特許文献1参照。)。
【0004】
図12は、従来の電子ビーム描画装置の構成を説明するための模式図である。図12において、電子ビーム描画装置1001は、描画室1011と、描画室1011内に設けられてマスク1022が載置されるステージ1021と、描画室1011の天井部に配置された電子光学鏡筒1031とを備えている。電子光学鏡筒1031内には、電子銃1032と、偏向器1033,1035と、アパーチャ1034とが設けられている。電子銃1032から発せられた電子ビームBは、偏向器1033,1035とアパーチャ1034によって、形状と寸法を調節され、また、マスク1022への照射位置を決められる。
【0005】
図12において、マスク1022が載置されるステージ1021は、描画室1011の底板に取り付けられている。また、ステージ1021は、駆動部1025によって、互いに直交するX方向とY方向に移動自在に構成されている。描画室1011の側壁には、レーザ干渉計1023が固定されている。レーザ干渉計1023によって、ステージ1021の端部近傍に設けられたミラー1024の位置を測定することで、ステージ1021の位置が把握される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平5−144711号公報
【特許文献2】実開昭53−13070号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
描画を行なう際には、真空ポンプ(図示せず)などによって、電子光学鏡筒と描画室の内部が真空引きされる。このため、これらの内と外とで圧力差が生じることになる。図12に示す従来の電子ビーム描画装置1001では、大気圧の変動によってこの圧力差が大きくなると、描画室1011に微小な変形が生じて、電子光学鏡筒1031を傾かせる。すると、電子ビームBの形状や寸法、照射位置が所望の値からずれて、描画精度を低下させるおそれがあった。
【0008】
本発明は、こうした問題に鑑みてなされたものである。すなわち、本発明の目的は、圧力の変化によって引き起こされる描画精度の低下を抑制することのできる荷電粒子ビーム描画装置を提供することにある。
【0009】
本発明の他の目的および利点は、以下の記載から明らかとなるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、上面に開口を有するチャンバと、
チャンバの中に設けられるステージ載置部と、
ステージ載置部に載置されるステージとを備えた描画室と、
上記開口を介してステージに向けて荷電粒子ビームを照射するビーム照射手段を内蔵する光学鏡筒とを有し、
ステージ載置部は、チャンバから独立して光学鏡筒に接続していることを特徴とする荷電粒子ビーム描画装置に関する。
【0011】
本発明において、描画室は、ステージに設けられるミラーと、
ステージ載置部に設けられて、ミラーとの間で入反射した光を受光してステージの位置を測定するレーザ干渉計とを有し、
ステージ載置部は、ステージが載置される第1の部材と、第1の部材の上に配置されて、光学鏡筒の開口に接続する第2の部材とを有し、
レーザ干渉計は、第2の部材に取り付けられていることが好ましい。
【0012】
本発明において、チャンバとステージ載置部は、室温で2×10−6/K以下の線膨張係数を有する材料によって構成されていることが好ましい。
【0013】
この場合、光学鏡筒は、チャンバの開口に嵌合する凸部と、
凸部の周囲に設けられてチャンバとの間でシール部を形成するフランジとを有し、
チャンバのシール部は、他の部分よりリンおよび硫黄の濃度が低い材料によって構成されていることが好ましい。
【0014】
また、さらにチャンバは、複数の部材が接合されて構成されており、
複数の部材の各接合部は、他の部分よりリンおよび硫黄の濃度が低い材料によって構成されていることが好ましい。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、圧力の変化によって引き起こされる描画精度の低下を抑制することのできる荷電粒子ビーム描画装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】実施の形態1における電子ビーム描画装置の構成図である。
図2】電子ビームによる描画方法の説明図である。
図3】実施の形態1における描画室内の構成を説明するための横断面図である。
図4】実施の形態1における描画室内の構成を説明するための上断面図である。
図5】実施の形態1における、電子光学鏡筒と吊り下げ部材との接続部分を説明するための拡大断面図である。
図6】実施の形態1における駆動部近傍の構成例を説明するための図である。
図7】実施の形態1における電子ビーム描画装置の描画精度の安定性を説明するための概念図である。
図8】実施の形態2における描画室内の構成を説明するための横断面図である。
図9】実施の形態2における、電子光学鏡筒と吊り下げ部材との接続部分を説明するための拡大断面図である。
図10】実施の形態2における、電子光学鏡筒と吊り下げ部材との接続部分の別の構成例を説明するための拡大断面図である。
図11】電子ビーム描画装置の別の構成例を説明するための横断面図である。
図12】従来の電子ビーム描画装置の構成を説明するための模式図である。
図13】従来の電子ビーム描画装置における描画精度の安定性を説明するための概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
実施の形態1.
図1は、実施の形態1における電子ビーム描画装置の描画部の構成図である。また、図3は、図1の電子ビーム描画装置における描画室内の構成を説明する横断面図である。
【0018】
図1では、電子ビーム描画装置101の描画部を示している。描画部は、電子ビームBを生成してこれを試料102に照射する部分である。尚、描画部には、図示しない制御部が接続しており、制御部によって、描画部における電子ビームBの形状や照射位置、照射のタイミング、あるいは、試料102の位置などが制御される。
【0019】
描画部は、描画室300と、描画室300の天井部に設けられた電子光学鏡筒(コラムとも称す。)301とを備えている。描画室300は、開口318を有するチャンバ300aと、チャンバ300aの中に配置されるステージ302と、ステージ302に設けられたミラー302aとを有する。また、電子光学鏡筒301は、チャンバ300aの開口318に嵌合する凸部330を有する。凸部330の端部には開口が設けられており、この開口からステージ302に向けて電子ビームBが照射される。
【0020】
電子光学鏡筒301の内部には、ステージ302に向けて電子ビームBを照射する電子ビーム照射手段が設けられている。図1では上から順に、電子銃303、照明レンズ304、ブランキング偏向器305、ブランキングアパーチャ306、第1成形アパーチャ307、投影レンズ308、成形偏向器309、第2成形アパーチャ310、主偏向器311、対物レンズ312、副偏向器313が配置されている。これらは、電子ビーム照射手段の構成要素である。
【0021】
電子銃303から発せられた電子ビームBは、照明レンズ304により、第1成形アパーチャ307に照射される。尚、ブランキングオン時(非描画時期)には、電子ビームBは、ブランキング偏向器305により偏向されて、ブランキングアパーチャ306上に照射され、第1成形アパーチャ307には照射されない。
【0022】
第1成形アパーチャ307には、矩形状の開口が設けられている。これにより、電子ビームBは、第1成形アパーチャ307を透過する際に、その断面形状が矩形に成形される。その後、電子ビームBは、投影レンズ308によって、第2成形アパーチャ310上に投影される。ここで、成形偏向器309は、第2成形アパーチャ310への電子ビームBの投影場所を変化させる。これによって、電子ビームBの形状と寸法が制御される。
【0023】
第2成形アパーチャ310を透過した電子ビームBの焦点は、対物レンズ312により試料102上に合わせられる。そして、主偏向器311と副偏向器313とによって、試料102上での電子ビームBの照射位置が制御される。
【0024】
描画室300内には、ステージ302が設けられている。試料102は、ステージ302上に設けられたピン(図示せず)によって支持される。試料102は、例えば、ガラス基板上にクロム膜などの遮光膜とレジスト膜とが積層されたマスクである。
【0025】
ステージ302には、ミラー302aが設けられている。レーザ干渉計402からのレーザ光をミラー302aで入反射することにより、ステージ302の位置が測定される。
【0026】
次に、電子ビーム描画装置101の動作について説明する。図2に示すように、試料102上に描画されるパターン5は、主偏向で偏向可能なY方向幅の短冊状の複数のストライプ51に分割され、さらに、各ストライプ51は、行列上の多数のサブフィールド52に分割されている。パターン5の描画に際しては、ステージ302をストライプ51の幅方向に直交するX方向に連続移動させつつ、電子ビームBを主偏向により各サブフィールド52に位置決めし、副偏向によりサブフィールド52の所定位置に電子ビームBを照射する。このようにして、図形53が描画される。そして、1つのストライプ51の描画を終了すると、ステージ302をY方向にステップ移動させてから、次のストライプ51の描画を行う。この工程を繰り返すことで、試料102全体にパターン5を描画することができる。
【0027】
本実施の形態の電子ビーム描画装置101では、図1に示すように描画室300の内部に吊り下げ部材404が設けられている。尚、本明細書において、吊り下げ部材は、ステージ載置部とも称する。吊り下げ部材404は、電子光学鏡筒301に接続されており、ステージ302は、吊り下げ部材404の上に配置されている。また、吊り下げ部材404には、取り付け部材407を介して、レーザ干渉計402が取り付けられている。
【0028】
上記のような構成を有することで、本実施の形態の電子ビーム描画装置101は、大気圧などによる描画精度の変動を抑制することが可能となる。すなわち、上記のように、電子ビーム描画装置101では、ステージ302が描画室300の底部ではなく、吊り下げ部材404の上に配置されており、また、吊り下げ部材404が電子光学鏡筒301に接続されている。
【0029】
上記構造によれば、大気圧の影響で描画室300が微小に変形して電子光学鏡筒301が傾斜すると、電子光学鏡筒301に追随して吊り下げ部材404も傾斜する。このため、電子光学鏡筒301とステージ302の相対的位置関係は、傾斜が起こる前と後で保持され、試料102に対する電子光学鏡筒301の位置関係も保持される。したがって、描画室300に変形が生じた場合であっても、電子ビームBの照射位置が調整された位置からずれるのを抑制できる。すなわち、所望の形状および寸法となるように、アパーチャ上での照射位置を調整され、また、所望の位置に描画されるように、試料102上での照射位置を調整された電子ビームBについて、その照射位置が各調整位置からずれるのを最小限にすることができる。
【0030】
図3は、図1に示す本実施の形態の電子ビーム描画装置101における描画室300内の構成を説明する横断面図である。図3に示すように、描画室300は、天井部に開口318が形成されたチャンバ300aの中にステージ302が配置された構造を有する。
【0031】
図3に示すように、本実施の形態の電子ビーム描画装置101は、チャンバ300aの天井部に取り付けられた電子光学鏡筒301と、電子光学鏡筒301に接続する吊り下げ部材404とを有する。電子光学鏡筒301から出射した電子ビームBは、チャンバ300aの開口318から描画室300に入り、ステージ302上に載置された試料102に照射される。
【0032】
吊り下げ部材(ステージ載置部)404は、ステージ302が載置される矩形状の下板405と、下板405の四隅に配置された支柱部材406と、支柱部材406と電子光学鏡筒301を接続する接続部材510と、レーザ干渉計402を取り付けるための取り付け部材407とを有する。接続部材510は、支柱部材406と電子光学鏡筒301とを電子光学鏡筒301の開口で接続する。下板405、支柱部材406、接続部材510および取り付け部材407は、例えばネジによって互いに接続することができる。
【0033】
支柱部材406、接続部材510および取り付け部材407は、一体として構成されることもできる。この場合、一体として構成された、支柱部材406、接続部材510および取り付け部材407を第2の部材とすれば、第2の部材は、第1部材としての下板405の上に配置されて、電子光学鏡筒301の開口に接続する。そして、レーザ干渉計402は、第2の部材に取り付けられる。尚、下板405、支柱部材406、接続部材510および取り付け部材407を一体として構成することも可能である。
【0034】
上記構成により、本実施の形態の電子ビーム描画装置101では、吊り下げ部材404がチャンバ300aから独立して電子光学鏡筒301に接続し、ステージ302は、吊り下げ部材404によってチャンバ300aの内部に吊り下げられる構造となる。このように、ステージ302をチャンバ300aから独立して電子光学鏡筒301に吊り下げることにより、大気圧や温度の変動でチャンバ300aが変形しても、ステージ302に影響が及ぶのを最小限にすることができる。したがって、試料102に対する電子光学鏡筒301の相対的位置や、レーザ干渉計402に対するミラー302aの相対的位置がずれるのを防いで、描画精度の低下を抑制することが可能となる。
【0035】
ステージ302は、XYステージ315と、XYステージ315上に配置され、Z方向に移動自在なZステージ316と、Zステージ316上に配置された台座317と、台座317上に固定された図示されないピンとを有している。台座317には、ミラー302aが設けられている。試料102は、上記のピンによってその裏面を支持される。
【0036】
XYステージ315には、チャンバ300aの側壁に形成された開口部322から挿入された駆動ロッド320が、カップリング323を介して、取り付けられている。駆動ロッド320は、開口部322を塞ぐように設けられた駆動部321に接続されている。駆動部321で駆動ロッド320の駆動を制御することにより、XYステージ315を、互いに直交するX方向とY方向に移動させることができる。カップリング323は、大気圧の変動などによってチャンバ300aに微小な変形が生じた場合に、その変形量を吸収する機能を有している。したがって、チャンバ300aに生じた微小な変形がXYステージ315に伝達されるのを防いで、XYステージ315の走行精度や描画精度の低下を抑制することが可能になる。
【0037】
図4は、図1に示す本実施の形態の電子ビーム描画装置101における描画室300内の構成を説明するための上断面図である。図4に示すように、描画室300には、4本の支柱部材406a〜406dが、下板405の四隅に取り付けられている。ステージ302は、下板405の上に配置されており、これによって、ステージ302が描画室300内で吊り下げられる構造となっている。
【0038】
図4において、取り付け部材407の形状は、例えば、矩形の平面板状とすることができる。この場合、駆動ロッド320は、取り付け部材407と下板405の隙間で駆動する。取り付け部材407の一端は、支柱部材406aに接続し、取り付け部材407の他端は、支柱部材406bに接続する。また、取り付け部材407には、レーザ干渉計402が取り付けられている。レーザ干渉計402の構成については図示を省くが、光源であるレーザヘッドと、光源から出射された後にミラー302aで反射されて戻った光を受光する光学系とを備える。尚、ミラー302aをレーザ干渉計402の構成要素の1つとし、ミラー302aを含めてレーザ干渉計402と称することもできる。
【0039】
尚、図1図3および図4において、レーザ干渉計402は1つのみであるが、ステージ302のX方向の位置を測定するレーザ干渉計と、ステージ302のY方向の位置を測定するレーザ干渉計とがあってもよい。そのため、吊り下げ部材404における、取り付け部材407とミラー302aの位置や数は、レーザ干渉計の位置や数に応じて適宜決められる。また、取り付け部材407の形状は、吊り下げ部材404にレーザ干渉計402を取り付けて、レーザ干渉計402から出射された光をミラー302aで反射し、さらにこの反射光をレーザ干渉計402で受光できるようにするものであれば、上記に限定されない。例えば、支柱部材406aと406b、406bと406c、406cと406d、406dと406aの間にそれぞれ面状の壁を設け、この壁にレーザ干渉計402を取り付けてもよい。尚、駆動ロッド320は、壁に開口を設けることで駆動可能である。
【0040】
次に、本実施の形態の電子ビーム描画装置101における、電子光学鏡筒301と吊り下げ部材404との接続部分の構造を説明する。図5は、図3に示す点線で囲まれた部分A、すなわち、電子光学鏡筒301と吊り下げ部材404との接続部分を説明するための拡大断面図である。
【0041】
電子光学鏡筒301の下部には、チャンバ300aの開口318の半径方向に外方へ向くフランジ401が形成されている。チャンバ300aの縁部319であって、フランジ401とチャンバ300aとの間には、Oリング409によってシールが形成されている。これにより、チャンバ300aの内外の雰囲気が切り分けられる。
【0042】
本実施の形態の電子ビーム描画装置101では、接続部材510が電子光学鏡筒301にネジ止めされることにより、電子光学鏡筒301と吊り下げ部材404とが接続される。
【0043】
図5に示すように、接続部材510において、支柱部材406(図3)に接続する側と反対側には、ネジ穴400bが形成されている。また、電子光学鏡筒301にはメネジ400aが形成されており、これらネジ穴400bおよびメネジ400aに、ネジ415がチャンバ300aの内側からねじ込まれることによって、電子光学鏡筒301に吊り下げ部材404が接続される。
【0044】
ネジ止めによる接続方法であれば、電子光学鏡筒301と接続部材510の材質が異なる場合であっても、十分な強度を有して、吊り下げ部材404を電子光学鏡筒301に固定することが可能である。本実施の形態において、電子光学鏡筒301は、例えば、ステンレス鋼や鉄により構成される。これに対して、吊り下げ部材404には、後述するように、インバーなどの低熱膨張材料が用いられる。
【0045】
ここで、吊り下げ部材に関連する従来技術として、実開昭53−13070号公報記載のものがある。この公報では、レンズアッセンブリを含む電子柱の下方端が、リング内の孔の半径方向に内方に向くフランジに支持される電子ビーム微小製作装置が開示されている。この装置において、ベースプレートは、リングの面に平行にかつ支柱とともに延び、蓋、壁およびベースによって形成される室内において自由に保持される。ステージは、平面鏡を保持する鏡支持器を保持し、また、このステージは、ベースプレートによって保持される。さらに、干渉計ヘッドは、剛性支持体によってリングに支持される。
【0046】
しかしながら、上記装置では、ステージを保持するための部材が、真空室から独立して電子柱に接続していない。このため、大気圧の変動で真空室が変形した場合に、ステージに影響が及び、サブストレート(試料)に対する電子柱の相対的位置や、干渉計ヘッドに対する平面鏡の相対的位置がずれて、描画精度を低下させるおそれがある。
【0047】
さらに従来の電子ビーム描画装置は、大気圧の変動以外の要因によっても変形するおそれがある。具体的には、ステージの動作に伴うガイドの摩擦やモータの起電力などによる発熱によって、電子光学鏡筒や描画室が熱膨張を起こすと、電子ビーム描画装置に微小な変形が生じる。すると、試料に対する電子光学鏡筒の相対的位置や、レーザ干渉計に対するミラーの相対的位置がずれて、描画精度の低下を招くことになる。
【0048】
実開昭53−13070号公報では、真空室内の排気中または排気の結果として生じる、真空室の蓋、壁またはベースに生じる歪みを問題としており、熱膨張による変形に関する記載はない。また、リングが剛性部材である旨の記載しかないため、リングが熱変形を起こすと、リングに対するベースプレートの相対的位置が変化して、電子ビームの照射位置がずれるのを避けられないと考えられる。
【0049】
そこで、本実施の形態の電子ビーム描画装置101においては、チャンバ300aや吊り下げ部材404に低熱膨張材料を用いる。具体的には、室温付近で約2×10−6/K以下の線膨張係数を有する材料によって、チャンバ300aと吊り下げ部材404を構成することが好ましい。尚、チャンバ300aと吊り下げ部材404の線膨張係数は、同じであってもよく、異なっていてもよい。
【0050】
低熱膨張材料は、熱による変形が小さいため、ステージ302の動作に伴うガイドの摩擦や、モータの起電力などによる発熱の影響を受けにくい。したがって、このような材料を用いてチャンバ300aや吊り下げ部材404を構成することにより、温度変化に対する荷電粒子ビーム描画装置101の変形を抑制することができる。そして、ステージ302を吊り下げ部材404に載置する構成と相まって、描画精度の安定性をさらに向上させることができる。
【0051】
低熱膨張材料としては、例えば、低膨張率合金であるインバー(Fe−36%Ni)を用いることができる。インバーの線膨張係数は、室温付近で約1.2×10−6/Kであり、鉄やニッケルの約1/10の値である。このため、本実施の形態では、チャンバ300aおよび吊り下げ部材404を、インバー材を用いて構成することが好ましい。但し、本発明において、低熱膨張材料はインバーに限定されない。
【0052】
チャンバ300aには、大気側と真空側との間のリークを防止する真空保持機能が求められる。ここで、低純度の低熱膨張材料には、内部に気泡などの欠陥が含まれることがある。そうした場合、Oリング409を設けるための溝を形成するべく、チャンバ300aを加工すると、欠陥が表面に現れて良好なシール面を形成できず、所望の真空保持機能を発揮できなくなるおそれがある。こうしたことから、チャンバ300aには、高純度の低熱膨張材料を用いることが好ましい。
【0053】
チャンバ300aを高純度のインバーのみから構成することも可能である。しかしながら、高純度のものは低純度のものに比べて、製造工程が増えるため、入手が容易でなく、価格も高い。そこで、本実施の形態では、チャンバ300aのうちのシール部にのみ高純度のインバーを使用し、シール部以外の部分には低純度のインバーを使用することが好ましい。これにより、電子ビーム描画装置101の製造時間を短縮させるとともに、製造コストを低下させることが可能となる。
【0054】
例えば、Oリング409によってシールが形成される部分を高純度のインバーで構成する一方、それ以外の部分を低純度のインバーで構成する。この場合、シール部は、Oリング409が設けられる溝部とその近傍であり、チャンバ300aでは、図5の符号511で表される領域になる。一方、図5で符号512で表される領域は非シール部であり、低純度のインバーによって構成可能な部分である。
【0055】
本実施の形態において、インバーの純度は、リン(P)および硫黄(S)の濃度で表現することができる。具体的には、リン(P)および硫黄(S)の濃度が高くなるほど、インバーの純度は低くなる。本実施の形態では、リン(P)および硫黄(S)がいずれも所定濃度以下であるものを「高純度のインバー」と定義することができる。例えば、リン(P)および硫黄(S)が、それぞれ0.001質量%以下であるものを「高純度のインバー」とすることができる。この場合、リン(P)または硫黄(S)のいずれか一方が0.001質量%を超えるものは「低純度のインバー」である。
【0056】
本実施の形態では、シール部511におけるリン(P)および硫黄(S)の濃度が、非シール部512におけるリン(P)および硫黄(S)の濃度の1/10以下となるようにすることが好ましい。
【0057】
図5において、シール部511と非シール部512とは、溶接によって接合される。これらを構成するインバーは、純度が異なっても構成材料は同じであるので溶接が可能である。
【0058】
本実施の形態において、チャンバ300aや吊り下げ部材404に、インバー以外の低熱膨張材料を用いる場合にも、純度を考慮することで同様の効果を得ることが可能である。
【0059】
シール部は、電子光学鏡筒301のフランジ401とチャンバ300aとの間に限られるものではない。本実施の形態では、図4に示すように、チャンバ300aの側壁に形成された開口部322から駆動ロッド320がチャンバ300a内に挿入されている。このため、開口部322と駆動ロッド320の間はシール部となる。本実施の形態では、この部分のチャンバ300aも高純度の低熱膨張材料で構成することが好ましい。さらに、例えば、チャンバ300aに外部から覗ける窓を設ける場合には、窓の周囲がシール部となるため、この部分のチャンバ300aも高純度の低熱膨張材料で構成することが好ましい。
【0060】
尚、開口部322と駆動ロッド320の間に隙間を設けて、これらの間をシール部としないことも可能である。この場合、図6に示すように、駆動部321を気密に覆う真空カバー324をチャンバ300aに設ける構成を採用することができる。このような構成では、真空カバー324とチャンバ300a外壁の間とがシール部となる。よって、図6に示す構成を採用する場合には、この部分のチャンバ300aも高純度の低熱膨張材料で構成することが好ましい。尚、図6においては、真空カバー324に形成された溝部にOリング325が設けられており、チャンバ300aの内外の雰囲気が切り分けられている。
【0061】
また、高純度の低熱膨張材料で構成される部分はシール部に限られない。例えば、チャンバ300aを一体として構成せず、複数の部品から構成する場合、各部品同士は溶接によって接合される。このとき、各部品を例えば低純度のインバーで構成すると、接合部において、内部欠陥によるリークが発生することがある。比較的大きな内部欠陥であればX線検査などにより事前に発見できるものの、内部欠陥を初めから回避できる点で、接合部には、高純度のインバーを使用することが好ましい。これにより、内部欠陥の発生を生じ難くして、接合部におけるリークの発生を低減できる。尚、接合部と非接合部には、それぞれ純度の異なるインバーが使用されることになるが、純度が異なるだけであるのでこれらは溶接によって容易に接合される。
【0062】
吊り下げ部材404を一体として構成しない場合も同様である。例えば、下板405、支柱部材406、接続部材510および取り付け部材407を溶接によって互いに接合して吊り下げ部材404とする場合、これらの部材の各接合部には低純度のインバーを用いることができる。さらに、支柱部材406、接続部材510および取り付け部材407を一体として構成してこれを第2の部材とする場合、第2の部材と、第1部材としての下板405との接合部にも低純度のインバーを用いることができる。
【0063】
また、本実施の形態では、レーザ干渉計402を吊り下げ部材404に取り付けたが、本発明はこれに限られず、レーザ干渉計402をチャンバ300aの外部に設けてもよい。この場合には、レーザ干渉計402にリファレンスミラーを設けて、チャンバ300aの変形によって生じる、レーザ干渉計402に対するミラー302aの相対的位置ずれを補正する。例えば、レーザヘッドから出射したレーザ光を、ビームスプリッタで参照光と測定光に分けた後、それぞれインターフェロメータに入射させる。インターフェロメータは、内部に半透鏡を有していて、この半透鏡によって入射した光を異なる2つの光路に分ける。そして、参照光の一方をリファレンスミラーに入射させ、測定光の一方をステージ302に取り付けられたミラー302aに入射させる。次いで、これらのミラーによって反射された反射光を観測することで、ステージ302の正確な位置を把握することができる。
【0064】
尚、ステージ302の位置を把握するための別の構成例として、レーザ干渉計402の他に、あるいは、レーザ干渉計402に代えて、マーク列から成るリニアスケールと、このリニアスケールに臨むリニアセンサとをXYステージ315に搭載したものを挙げることができる。この場合、リニアセンサによってそれぞれのマーク列を検出し、ステージ302の位置を把握することとなる。
【0065】
以上述べたように、本実施の形態の電子ビーム描画装置によれば、大気圧の変動や温度変化による描画精度の低下を抑制することが可能である。また、チャンバを低熱膨張材料で構成することで、描画精度の低下を一層抑制することができる。加えて、シール部のみに高純度の低熱膨張材料を用いることで、電子ビーム描画装置の製造コストを低下させるとともに、製造時間を短縮させることができる。
【0066】
図7および図13は、大気圧変動や温度変化の影響を受けて、電子ビーム描画装置が変形した状態を説明するための概念図である。図7は、本実施の形態の電子ビーム描画装置101である。一方、図13は、マスク1022を載置するステージ1021が描画室1011の底部に取り付けられるとともに、レーザ干渉計1023が描画室1011の側壁に固定された、従来の荷電粒子ビーム描画装置1001である。尚、図7において、図3に示す駆動ロッド320、駆動部321および開口部322の図示は省略されている。図13においても同様である。
【0067】
図7では、大気圧変動や温度変化の影響を受けて、電子ビーム描画装置101が微小に変形した状態における、電子光学鏡筒301の中心軸L、ステージ302の水平面M、およびレーザ干渉計402からのレーザ光の入射方向Nがそれぞれ破線で示されている。
【0068】
また、図7において、点線は、電子ビーム描画装置101が変形していない状態、すなわち、初期状態における、電子光学鏡筒301の中心軸、ステージ302の水平面およびレーザ干渉計402からのレーザ光の入射方向を示している。
【0069】
電子ビーム描画装置101の初期状態では、電子光学鏡筒301の中心軸と水平面が垂直に交わり、水平面と入射方向とが平行となっている。ここで、高い描画精度を実現するためには、試料102に対する電子光学鏡筒301の相対的位置や、レーザ干渉計402に対するミラー302aの相対的位置にずれが生じないことが要求される。つまり、大気圧変動や温度変化の影響を受け、電子ビーム描画装置101が微小に変化したとしても、上記相対的位置が維持されることが求められる。
【0070】
図13においても、大気圧変動や温度変化の影響を受けて、電子ビーム描画装置1001が微小に変形した状態における、電子光学鏡筒1031の中心軸L、ステージ1021の水平面M、およびレーザ干渉計1023からのレーザ光の入射方向Nがそれぞれ破線で示されている。一方、点線は、電子ビーム描画装置1001が変形していない状態、すなわち、初期状態における、電子光学鏡筒1031の中心軸、ステージ1021の水平面およびレーザ干渉計1023からのレーザ光の入射方向を示している。
【0071】
図13に示す従来の電子ビーム描画装置1001では、大気圧変動や温度変化の影響によって電子ビーム描画装置1001が微小に変形する結果、電子光学鏡筒1031の中心軸Lは、初期状態の中心軸に対して傾斜する。また、ステージ1021の水平面Mは、初期状態の水平面に対して傾斜する。さらに、レーザ干渉計1023からのレーザ光の入射方向Nも、初期状態の入射方向に対して傾斜する。これらの傾斜角は、何れも異なる角度になると予想され、マスク1022に対する電子光学鏡筒1031の相対的位置ずれ量や、レーザ干渉計1023に対するミラー1024の相対的位置ずれ量を予測することは困難である。
【0072】
これに対して、図7に示す本実施の形態の電子ビーム描画装置101では、ステージ302が、電子光学鏡筒301に接続された吊り下げ部材404によって吊り下げられる構造となっている。このため、大気圧変動や温度変化の影響を受け、電子光学鏡筒301の中心軸Lが傾斜すると、吊り下げ部材404も傾斜する。電子光学鏡筒301と吊り下げ部材404は物理的に接続されているので、これらの傾斜角は同じとなる。したがって、吊り下げ部材404の上にあるステージ302の水平面Mも、同じ傾斜角を有して傾斜する。すなわち、電子光学鏡筒301とステージ302とが、点線で示される中心軸と水平面とに対して同じ傾斜角を有して傾斜するため、試料102に対する電子光学鏡筒301の相対的位置は保持される。
【0073】
また、図7に示す本実施の形態の荷電粒子ビーム描画装置101では、レーザ干渉計402が、取り付け部材407によって吊り下げ部材404に取り付けられている。このため、大気圧変動や温度変化の影響を受け、電子光学鏡筒301の中心軸Lおよびステージ302の水平面Mが傾斜すると、吊り下げ部材404を介して、レーザ干渉計402からのレーザ光の入射方向Nも、同じ傾斜角を有して傾斜する。すなわち、レーザ干渉計402からのレーザ光の入射方向が、(点線で示される)電子光学鏡筒301の中心軸およびステージ302の水平面と同じ傾斜角を有して傾斜するため、レーザ干渉計402に対するミラー302aの相対的位置が保持される。
【0074】
さらに、本実施の形態の電子ビーム描画装置101では、チャンバ300aや吊り下げ部材404が高純度の低熱膨張材料によって構成される。これにより、温度変化に対する電子ビーム描画装置101の変形を抑制することができる。このとき、チャンバ300aや吊り下げ部材404のシール部や接合部のみを高純度の低熱膨張材料で構成し、それ以外の部分を低純度の低熱膨張材料で構成するようにすれば、それらのすべてを高純度の低熱膨張材料により構成した場合と比較して、電子ビーム描画装置101を製造するコストを低下させ、製造時間を短縮することができるようにもなる。
【0075】
以上説明した本実施の形態の荷電粒子ビーム描画装置は、換言すると、次のように言い表すことができる。すなわち、この荷電粒子ビーム描画装置は、開口を有するチャンバと、チャンバの中に設けられるステージ載置部と、ステージ載置部に載置されるステージと、ステージに設けられるミラーと、ステージ載置部に設けられて、ミラーとの間で入反射した光を受光してステージの位置を測定するレーザ干渉計とを備えた描画室と、チャンバの開口に嵌合する凸部と、凸部の周囲に設けられてチャンバとの間でシール部を形成するフランジとを備え、凸部の端部に設けられた開口からステージに向けて荷電粒子ビームを照射するビーム照射手段を内蔵する光学鏡筒とを有し、ステージ載置部は、チャンバから独立して光学鏡筒に接続し、チャンバとステージ載置部は、低熱膨張材料、例えばインバーによって構成されているものである。
【0076】
実施の形態2.
図8は、本実施の形態の電子ビーム描画装置における描画室の横断面図である。尚、図3と同じ符号を付した部分は同じものであることを示している。
【0077】
電子ビーム描画装置501は、描画室と、描画室の天井部に設けられた電子光学鏡筒(コラムとも称す。)301とを備えている。描画室は、開口318を有するチャンバ300aと、チャンバ300aの中に配置されるステージ302と、ステージ302に設けられたミラー302aとを有する。電子光学鏡筒301は、チャンバ300aの開口318に嵌合する凸部331を有する。凸部331の端部には開口が設けられており、この開口からステージ302に向けて電子ビームが照射される。また、凸部331の周囲には、フランジ401が設けられている。
【0078】
電子光学鏡筒301の内部には、ステージ302に向けて電子ビームを照射する電子ビーム照射手段(図示せず)が設けられている。この電子ビーム照射手段は、実施の形態1と同様であり、電子銃、照明レンズ、ブランキング偏向器、ブランキングアパーチャ、第1成形アパーチャ、投影レンズ、成形偏向器、第2成形アパーチャ、主偏向器、対物レンズおよび副偏向器などによって構成される。
【0079】
図8に示すように、本実施の形態の電子ビーム描画装置501も吊り下げ部材(ステージ載置部)504を有している。吊り下げ部材504は、ステージ302が載置される下板405と、下板405の四隅に配置された支柱部材406と、支柱部材406と電子光学鏡筒301を接続する接続部材412と、レーザ干渉計402を取り付けるための取り付け部材407とを有する。かかる構成により、本実施の形態の電子ビーム描画装置501では、吊り下げ部材504によってステージ302が吊り下げられる構造となる。
【0080】
本実施の形態では、接続部材412が、チャンバ300aにも接続されている点で実施の形態1と異なる。具体的には、接続部材412は、チャンバ300aの開口318の縁部319に接続されている。すなわち、電子光学鏡筒301のフランジ401と、チャンバ300aの縁部319とは同一面上にあり、この面に接続部材412が接続することによって、電子光学鏡筒301とチャンバ300aに接続部材412が接続する構成となっている。
【0081】
尚、下板405、支柱部材406、接続部材412および取り付け部材407は、例えば溶接によって互いに接続することができるが、一体として構成しても構わない。例えば、支柱部材406、接続部材412および取り付け部材407は、一体として構成されることもできる。この場合、一体として構成された、支柱部材406、接続部材412および取り付け部材407を第2の部材とすれば、第2の部材は、第1部材としての下板405の上に配置されて、電子光学鏡筒301の開口318とチャンバ300aに接続する。そして、レーザ干渉計402は、第2の部材に取り付けられる。尚、下板405、支柱部材406、接続部材412および取り付け部材407を一体として構成することも可能である。
【0082】
電子光学鏡筒301と吊り下げ部材504との接続部分について、図9を用いてさらに詳しく説明する。
【0083】
図9は、図8に示す点線で囲まれた部分C、すなわち、電子光学鏡筒301と吊り下げ部材504との接続部分の拡大断面図である。
【0084】
吊り下げ部材504を構成する接続部材412は、チャンバ300aの縁部319に対応した開口部を有するリング形状を呈する。フランジ401と接続部材412の間、チャンバ300aと接続部材412の間には、それぞれ、Oリング513,514によってシールが形成されている。これにより、チャンバ300aの内外の雰囲気が切り分けられる。
【0085】
図9において、接続部材412に形成された第1シール部404aは、Oリング514が設けられる溝部とその近傍の領域に対応する。一方、接続部材412に形成された第2シール部404bは、Oリング513が設けられる溝部とその近傍の領域に対応する。第1シール部404aと、フランジ401に設けられたシール部414によって、フランジ401と接続部材412の間の気密性が保たれている。同様に、第2シール部404bと、チャンバ300aに設けられたシール部413によって、チャンバ300aと接続部材412の間の気密性が保たれている。
【0086】
尚、図10のように、チャンバ300aやフランジ401に溝部を設けず、接続部材412のみに溝部を設け、Oリング513,514によってシールを形成してもよい。この場合、チャンバ300aに設けられたシール部416およびフランジ401に設けられたシール部417は平面上に形成され、この平面部分が、第1シール部404aおよび第2シール部404bに接触し、チャンバ300aの内外の雰囲気が切り分けられることとなる。
【0087】
チャンバ300aは、低熱膨張材料またはステンレス鋼によって構成される。一方、吊り下げ部材504を構成する各部材、すなわち、接続部材412、支柱部材406、取り付け部材407および下板405は、それぞれ、低熱膨張材料を用いて構成される。
【0088】
特に、接続部材412には、大気側と真空側との間のリークを防止する真空保持機能が求められる。このため、接続部材412は、高純度の低熱膨張材料により構成することが好ましい。一方、支柱部材406と、取り付け部材407と、下板405とは、低純度の低熱膨張材料により構成することができる。
【0089】
上記のようにすることで、吊り下げ部材504のすべてを高純度の低熱膨張材料で構成する場合と比較して、電子ビーム描画装置501を製造するコストを低下させ、製造時間を短縮することができるようになる。
【0090】
上記構成においては、吊り下げ部材504を構成する各部材同士を、例えばネジによって互いに接続することができる。
【0091】
また、接続部材412を全て高純度の低熱膨張材料で構成せずに、部分的に高純度の低熱膨張材料としてもよい。具体的には、チャンバ300aおよびフランジ401と接触する、第1シール部404aおよび第2シール部404bを高純度の低熱膨張材料で構成し、これら以外の領域を低純度の低熱膨張材料で構成することができる。このようにすることにより、電子ビーム描画装置501を製造するコストをさらに低下させ、製造時間をさらに短縮することができる。
【0092】
図11は、電子ビーム描画装置の別の構成例を説明する横断面図である。
【0093】
図11に示すように、電子ビーム描画装置601は、電子光学鏡筒301のフランジ401が接続するチャンバ300aと、チャンバ300aの縁部319に接続する接続部材412と、接続部材412に接続する支柱部材406と、支柱部材406に取り付けられた下板405と、下板405上に配置されたステージ302とを備えている。すなわち、図11に示す電子ビーム描画装置601では、電子光学鏡筒301のフランジ401と、接続部材412とによって、チャンバ300aの縁部319が挟み込まれる構成となっている。
【0094】
支柱部材406は、下板405の四隅に配置されている。隣り合う2つの支柱部材406には、共通の取り付け部材407が接続されており、レーザ干渉計402が取り付け部材407に取り付けられている。レーザ干渉計402の構成については図示を省くが、光源であるレーザヘッドと、光源から出射された後にミラー302aで反射されて戻った光を受光する光学系とを備える。尚、ミラー302aをレーザ干渉計402の構成要素の1つとしてもよい。
【0095】
電子ビーム描画装置601は、接続部材412がチャンバ300aの内側の面に接続する点で、(図8および図9に示す)電子ビーム描画装置501と異なる。より詳しくは、チャンバ300aの内側の面に接続部材412が接続し、チャンバ300aの外側の面、すなわち大気側の面に電子光学鏡筒301のフランジ401が形成されている。かかる構成によって、チャンバ300a内外の雰囲気が切り分けられる。
【0096】
チャンバ300aの外側の面と電子光学鏡筒301のフランジ401とは、溝部(図示せず)に設けられたOリング(図示せず)を介して接続されており、これによってチャンバ300aとフランジ401との間の気密性が保たれている。図11において、シール部515は、Oリングが設けられる溝部とその近傍の領域である。
【0097】
接続部材412、接続部材412に接続する支柱部材406、支柱部材406に接続する下板405、レーザ干渉計402が取り付けられる取り付け部材407は、いずれも低熱膨張材料で構成することが好ましい。
【0098】
チャンバ300aは、ステンレス鋼を用いて構成することができるが、シール部515には、低熱膨張材料、特に、高純度の低熱膨張材料で構成することが好ましい。尚、この場合、接続部材412は、ステンレス鋼のチャンバ300aにネジ止めによって接続される。また、チャンバ300aの全体を低熱膨張材料で構成することもできる。
【0099】
このように、チャンバ300aと電子光学鏡筒301とのシール部515や、ステージ302が吊り下げられる接続部材412、支柱部材406、下板405、および、レーザ干渉計402が取り付けられる取り付け部材407に低熱膨張材料を用いることで、ステージ302の動作に伴う発熱で電子光学鏡筒301や描画室が熱膨張して変形しても、試料102に対する電子光学鏡筒301の相対的位置や、レーザ干渉計402に対するミラー302aの相対的位置がずれるのを抑制して、描画精度の低下を防ぐことが可能である。
【0100】
以上述べたように、実施の形態1や2によれば、圧力や温度の変化によって引き起こされる描画精度の低下を抑制することのできる電子ビーム描画装置が提供される。
【0101】
尚、本発明は、上記各実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内において、種々変形して実施することができる。例えば、上記各実施の形態では、電子ビームを用いたが、イオンビームなどの他の荷電粒子ビームを用いた場合にも適用可能である。
以下に、本願出願当初の特許請求の範囲に記載された発明を付記する。
[C1]
上面に開口を有するチャンバと、
前記チャンバの中に設けられるステージとを備えた描画室と、
前記開口を介して前記ステージに向けて荷電粒子ビームを照射するビーム照射手段を内蔵する光学鏡筒とを有し、
前記光学鏡筒は、前記チャンバの開口に嵌合する凸部と、
前記凸部の周囲に設けられて前記チャンバとの間でシール部を形成するフランジとを有し、
前記チャンバの前記シール部は、他の部分よりリンおよび硫黄の濃度が低い材料によって構成されていることを特徴とする荷電粒子ビーム描画装置。
[C2]
前記チャンバは、室温で2×10−6/K以下の線膨張係数を有する材料によって構成されることを特徴とする[C1]に記載の荷電粒子ビーム描画装置。
[C3]
前記チャンバは、複数の部材が接合されて構成されており、
前記複数の部材の各接合部は、他の部分よりリンおよび硫黄の濃度が低い材料によって構成されていることを特徴とする[C1]または[C2]に記載の荷電粒子ビーム描画装置。
【符号の説明】
【0102】
B 電子ビーム
5 パターン
51 ストライプ
52 サブフィールド
53 図形
101,501,601,1001 電子ビーム描画装置
102 試料
300,1011 描画室
300a チャンバ
301,1031 電子光学鏡筒
302,1021 ステージ
302a,1024 ミラー
303,1032 電子銃
304 照明レンズ
305 ブランキング偏向器
306 ブランキングアパーチャ
307 第1成形アパーチャ
308 投影レンズ
309 成形偏向器
310 第2成形アパーチャ
311 主偏向器
312 対物レンズ
313 副偏向器
315 XYステージ
316 Zステージ
317 台座
318 開口
319 縁部
320 駆動ロッド
321,1025 駆動部
322 開口部
323 カップリング
324 真空カバー
325,409,513,514 Oリング
330,331 凸部
400a メネジ
400b ネジ穴
401 フランジ
402,1023 レーザ干渉計
404,504 吊り下げ部材
404a 第1シール部
404b 第2シール部
405 下板
406,406a〜406d 支柱部材
407 取り付け部材
412,510 接続部材
413,414,416,417,511,515 シール部
415 ネジ
512 非シール部
1022 マスク
1033,1035 偏向器
1034 アパーチャ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
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図8
図9
図10
図11
図12
図13