【実施例】
【0069】
以下、本発明を実施例によりさらに詳しく説明するが本発明はこれらの例に何ら限定されるものではない。
【0070】
実施例1
原料として、Fe
2O
3(平均粒径:0.6μm)21.5kg、Mn
3O
4(平均粒径:0.9μm)7.5kg、MgO(平均粒径:0.8μm)1.0kg、SrCO
3(平均粒径:0.6μm)0.25kgを純水10.0kg中に分散し、還元剤としてカーボンブラックを120g、分散剤としてポリカルボン酸アンモニウム系分散剤を180g添加して混合物とした。この混合物を湿式ボールミル(メディア径2mm)により粉砕処理し、混合スラリーを得た。
この混合スラリーをスプレードライヤーにて約130℃の熱風中に噴霧し、粒径10μm〜75μmの乾燥造粒物を得た。この造粒物から粒径25μm以下の微小な粒子は篩を用いて除去した。
この造粒物を、電気炉に投入し1200℃まで4.5時間かけて昇温した。その後1200℃で8時間保持することにより焼成を行った。その後10時間かけて室温まで冷却した。このとき、電気炉内の酸素濃度は1.0%とした。
得られた焼成物をハンマーミル(三庄インダストリー社製「ハンマークラッシャーNH−34S」,スクリーン目開き:0.3mm)で解粒、振動ふるいを用いて分級しフェライト粒子本体を得た。フェライト粒子本体のSEM写真を
図1に示す。
【0071】
得られたフェライト粒子本体の表面をカップリング剤で処理し、表面処理が施されたキャリア芯材を作製した。具体的には、フェライト粒子本体2.2kgに対し、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン2.2g(0.1wt%)と溶媒としてメタノール550g(25wt%)と水22g(1.0wt%)を万能撹拌機(ダルトン社製 型式:5DM−L−03−r)を用いて30℃の温度下で1時間混合した。その後、120℃まで昇温し溶媒であるメタノールを揮発させたのち、1時間撹拌を行った。140℃に設定された送風乾燥機(エスペック社製 MODEL:PHH−102)で2時間加熱処理を行い、得られた乾燥物を、目開き75μmの振動篩にて解粒処理を行うことにより、平均粒径34.6μmの表面がカップリング剤で処理されたキャリア芯材を得た。
【0072】
次に得られたキャリア芯材の表面を樹脂で被覆してキャリアを作製した。具体的には、キャリア芯材2.2kgに対し、アクリル/スチレン混合樹脂66g(3.0wt%)をハイスピードミキサー(深江パウテック社製「FS−GS−10JD型」)を用いて塗布しキャリアを得た。ハイスピードミキサーの撹拌回転数は400rpm、撹拌時間は90分間とした。
【0073】
得られたキャリア芯材の組成、Rz、Rsm、体積平均粒子径(平均粒径)、炭素含有量、磁気特性、静的抵抗率、キャリアの動的抵抗率などを後述の方法で測定した。測定結果を表2に示す。また
図2に、得られたキャリアのSEM写真を示す。SEM写真において白色部分が樹脂被覆が薄いか無い部分、すなわちキャリア芯材が露出している部分である。
【0074】
実施例2
カップリング剤として3−アミノプロピルトリメトキシシラン2.2g(0.1wt%)を用いた以外は実施例1と同様にして平均粒径34.3μmのキャリア芯材を得た。
得られたキャリア芯材の組成、Rz、Rsm、キャリア芯材の平均粒径、炭素含有量、磁気特性、静的抵抗率、キャリアの動的抵抗率などを後述の方法で測定した。測定結果を表2に示す。また
図3に、得られたキャリアのSEM写真を示す。
【0075】
実施例3
カップリング剤として3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン2.2g(0.1wt%)を用いた以外は実施例1と同様にして平均粒径34.4μmのキャリア芯材を得た。
得られたキャリア芯材の組成、Rz、Rsm、キャリア芯材の平均粒径、炭素含有量、磁気特性、静的抵抗率、キャリアの動的抵抗率などを後述の方法で測定した。測定結果を表2に示す。また
図4に、得られたキャリアのSEM写真を示す。
【0076】
実施例4
原料として、Fe
2O
3(平均粒径:0.6μm)21.5kg、Mn
3O
4(平均粒径:0.9μm)7.50kg、SrCO
3(平均粒径:0.6μm)0.52kg、TiO
2(平均粒径:0.6μm)0.30kgを純水10.7kg中に分散し、還元剤としてカーボンブラックを128g、分散剤としてポリカルボン酸アンモニウム系分散剤を191g添加して混合物とした。この混合物を湿式ボールミル(メディア径2mm)により粉砕処理し、混合スラリーを得た。
この混合スラリーをスプレードライヤーにて約130℃の熱風中に噴霧し、粒径10μm〜75μmの乾燥造粒物を得た。この造粒物から粒径25μm以下の微小な粒子は篩を用いて除去した。
この造粒物を、電気炉に投入し1170℃まで4.5時間かけて昇温した。その後1170℃で8時間保持することにより焼成を行った。その後10時間かけて室温まで冷却した。このとき、昇温段階及び焼成温度の保持段階での電気炉内の酸素濃度は10000ppm、冷却段階での酸素濃度は5000ppmとなるよう、酸素と窒素とを混合したガスを炉内に供給した。得られた焼成物をハンマーミル(三庄インダストリー社製「ハンマークラッシャーNH−34S」,スクリーン目開き:0.3mm)で解粒、振動ふるいを用いて分級し、キャリア芯材を得た以外は実施例1と同様にして平均粒径35.0μmの表面がカップリング剤で処理されたキャリア芯材を得た。
得られたキャリア芯材の組成、Rz、Rsm、キャリア芯材の平均粒径、炭素含有量、磁気特性、静的抵抗率、キャリアの動的抵抗率などを後述の方法で測定した。測定結果を表2に示す。
【0077】
実施例5
原料として、Fe
2O
3(平均粒径:0.6μm)21.5kg、Mn
3O
4(平均粒径:0.9μm)10.4kg、SrCO
3(平均粒径:0.6μm)0.28kgを純水10.5kg中に分散し、還元剤としてカーボンブラックを127g、分散剤としてポリカルボン酸アンモニウム系分散剤を190g添加して混合物とした。この混合物を湿式ボールミル(メディア径2mm)により粉砕処理し、混合スラリーを得た。
この混合スラリーをスプレードライヤーにて約130℃の熱風中に噴霧し、粒径10μm〜75μmの乾燥造粒物を得た。この造粒物から粒径25μm以下の微小な粒子は篩を用いて除去した。
この造粒物を、電気炉に投入し1170℃まで4.5時間かけて昇温した。その後1170℃で8時間保持することにより焼成を行った。その後10時間かけて室温まで冷却した。このとき、電気炉内の酸素濃度は1.0%とした。
得られた焼成物をハンマーミル(三庄インダストリー社製「ハンマークラッシャーNH−34S」,スクリーン目開き:0.3mm)で解粒、振動ふるいを用いて分級し、キャリア芯材を得た以外は実施例1と同様にして、平均粒径34.5μmの表面がカップリング剤で処理されたキャリア芯材を得た。
得られたキャリア芯材の組成、Rz、Rsm、キャリア芯材の平均粒径、炭素含有量、磁気特性、静的抵抗率、キャリアの動的抵抗率などを後述の方法で測定した。測定結果を表2に示す。
【0078】
実施例6
得られたキャリア芯材の表面をカップリング剤で処理する際に、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシランを0.22g(0.01wt%)用いた以外は実施例5と同様にして平均粒径34.7μmのキャリア芯材を得た。
得られたキャリア芯材の組成、Rz、Rsm、キャリア芯材の平均粒径、炭素含有量、磁気特性、静的抵抗率、キャリアの動的抵抗率などを後述の方法で測定した。測定結果を表2に示す。
【0079】
実施例7
得られたキャリア芯材の表面をカップリング剤で処理する際に、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシランを22g(1.00wt%)用いた以外は実施例1と同様にして平均粒径34.8μmのキャリア芯材を得た。
得られたキャリア芯材の組成、Rz、Rsm、キャリア芯材の平均粒径、炭素含有量、磁気特性、静的抵抗率、キャリアの動的抵抗率などを後述の方法で測定した。測定結果を表2に示す。
【0080】
実施例8
原料として、SrCO
3(平均粒径:0.6μm)0.16kg用いた以外は実施例5と同様にして平均粒径34.0μmのキャリア芯材を得た。
得られたキャリア芯材の組成、Rz、Rsm、キャリア芯材の平均粒径、炭素含有量、磁気特性、静的抵抗率、キャリアの動的抵抗率などを後述の方法で測定した。測定結果を表2に示す。
【0081】
実施例9
カップリング剤としてビニルトリメトキシシラン2.2g(0.1wt%)を用いた以外は実施例5と同様にして平均粒径34.6μmのキャリア芯材を得た。
得られたキャリア芯材の組成、Rz、Rsm、キャリア芯材の平均粒径、炭素含有量、磁気特性、静的抵抗率、キャリアの動的抵抗率などを後述の方法で測定した。測定結果を表2に示す。
【0082】
実施例10
カップリング剤として3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン2.2g(0.1wt%)を用いた以外は実施例5と同様にして平均粒径34.4μmのキャリア芯材を得た。
得られたキャリア芯材の組成、Rz、Rsm、キャリア芯材の平均粒径、炭素含有量、磁気特性、静的抵抗率、キャリアの動的抵抗率などを後述の方法で測定した。測定結果を表2に示す。
【0083】
実施例11
カップリング剤として3−イソシアネートプロピルトリメトキシシラン2.2g(0.1wt%)を用いた以外は実施例5と同様にして平均粒径34.7μmのキャリア芯材を得た。
得られたキャリア芯材の組成、Rz、Rsm、キャリア芯材の平均粒径、炭素含有量、磁気特性、静的抵抗率、キャリアの動的抵抗率などを後述の方法で測定した。測定結果を表2に示す。
【0084】
実施例12
カップリング剤としてメチルトリメトキシシラン2.2g(0.1wt%)を用いた以外は実施例5と同様にして平均粒径35.1μmのキャリア芯材を得た。
得られたキャリア芯材の組成、Rz、Rsm、キャリア芯材の平均粒径、炭素含有量、磁気特性、静的抵抗率、キャリアの動的抵抗率などを後述の方法で測定した。測定結果を表2に示す。
【0085】
比較例1
キャリア芯材をカップリング剤での処理を行わなかった以外は実施例1と同様にして平均粒径34.4μmのキャリア芯材を得た。得られたキャリア芯材の組成、Rz、Rsm、キャリア芯材の平均粒径、炭素含有量、磁気特性、静的抵抗率、キャリアの動的抵抗率などを後述の方法で測定した。測定結果を表2に示す。また
図5に、得られたキャリアのSEM写真を示す。
【0086】
比較例2
キャリア芯材の表面を樹脂で被覆してキャリアを作製する際に、アクリル/スチレン混合樹脂量を66g(3.0wt%)から44g(2.0wt%)に減らした以外は比較例1と同様にして平均粒径34.4μmのキャリア芯材を得た。
得られたキャリア芯材の組成、Rz、Rsm、キャリア芯材の平均粒径、炭素含有量、磁気特性、静的抵抗率、キャリアの動的抵抗率などを後述の方法で測定した。測定結果を表2に示す。また
図6に、得られたキャリアのSEM写真を示す。
【0087】
比較例3
得られたキャリア芯材の表面をカップリング剤で処理する際に、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシランを0.11g(0.005wt%)とした以外は実施例5と同様にして平均粒径34.9μmのキャリア芯材を得た。
得られたキャリア芯材の組成、Rz、Rsm、キャリア芯材の平均粒径、炭素含有量、磁気特性、静的抵抗率、キャリアの動的抵抗率などを後述の方法で測定した。測定結果を表2に示す。
【0088】
比較例4
原料として、Fe
2O
3(平均粒径:0.6μm)21.5kg、Mn
3O
4(平均粒径:0.9μm)7.2kg、MgO(平均粒径:0.8μm)1.6kg用い、得られた造粒物を電気炉を用いて焼成を行う際、1170℃における保持時間を4時間とした以外は実施例1と同様にして平均粒径33.2μmのキャリア芯材を得た。
得られたキャリア芯材の組成、Rz、Rsm、キャリア芯材の平均粒径、炭素含有量、磁気特性、静的抵抗率、キャリアの動的抵抗率などを後述の方法で測定した。測定結果を表2に示す。
【0089】
(組成分析)
(Feの分析)
鉄元素を含むキャリア芯材を秤量し、塩酸と硝酸の混酸水に溶解させた。この溶液を蒸発乾固させた後、硫酸水を添加して再溶解し過剰な塩酸と硝酸とを揮発させる。この溶液に固体Alを添加して液中のFe
3+を全てFe
2+に還元する。続いて、この溶液中のFe
2+イオンの量を過マンガン酸カリウム溶液で電位差滴定することにより定量分析し、Fe(Fe
2+)の滴定量を求めた。
(Mnの分析)
キャリア芯材のMn含有量は、JIS G1311−1987記載のフェロマンガン分析方法(電位差滴定法)に準拠して定量分析を行った。本願発明に記載したキャリア芯材のMn含有量は、このフェロマンガン分析方法(電位差滴定法)で定量分析し得られたMn量である。
(Mgの分析)
キャリア芯材のMg含有量は、以下の方法で分析を行った。本願発明に係るキャリア芯材を酸溶液中で溶解し、ICPにて定量分析を行った。本願発明に記載したキャリア芯材のMg含有量は、このICPによる定量分析で得られたMg量である。
(Srの分析)
キャリア芯材のSr含有量は、Mgの分析同様にICPによる定量分析で行った。
(Tiの分析)
キャリア芯材のTi含有量は、Mgの分析同様にICPによる定量分析で行った。
【0090】
(最大山谷深さRz、平均長さRSm)
超深度カラー3D形状測定顕微鏡(「VK−X100」株式会社キーエンス製)を用い、100倍対物レンズで表面を観察して求めた。具体的には、まず、表面の平坦な粘着テープにフェライト粒子を固定し、100倍対物レンズで測定視野を決定した後、オートフォーカス機能を用いて焦点を粘着テープ面に調整した。フェライト粒子を固定した平坦な粘着テープ面に対し、垂直方向(Z方向)からレーザー光線を照射し、面のX方向Y方向に走査した。また、表面からの反射光の強度が最大となった時のレンズの高さ位置をつなぎ合わせることでZ方向のデータを取得した。これらX、YおよびZ方向の位置データをつなぎ合わせフェライト粒子表面の3次元形状を得た。なお、フェライト粒子表面の3次元形状の取り込みにはオート撮影機能を用いた。
各パラメータの測定には、粒子粗さ検査ソフトウェア(三谷商事製)を用いて行った。まず、前処理として、得られたフェライト粒子表面の3次元形状の粒子認識と形状選別を行った。粒子認識は以下の方法で行った。撮影によって得られた3次元形状のうち、Z方向の最大値を100%、最小値を0%として最大値から最小値までの間を100等分する。この100〜35%にあたる領域を抽出し、独立した領域の輪郭を粒子輪郭として認識した。次に形状選別で粗大、微小、会合などの粒子を除外した。この形状選別を行うことで以降に行う極率補正時の誤差を小さくすることができる。具体的には面積相当径28μm以下、38μm以上、針状比1.15以上に該当する粒子を除外した。ここで針状比とは粒子の最大長/対角幅の比から算出したパラメータであり、対角幅とは最大長に平行な2本の直線で粒子を挟んだときの2直線の最短距離を表す。
つぎに表面の3次元形状から解析に用いる部分の取り出しを行った。まず上記の方法で認識した粒子輪郭から求められる重心を中心として15.0μmの正方形を描く。描いた正方形の中に21本の平行線を引き、その線分上にあたる粗さ曲線を21本分取り出した。
フェライト粒子は略球形状であるため、取り出した粗さ曲線は、バックグラウンドとして一定の曲率を持っている。このため、バックグラウンドの補正として、最適な二次曲線をフィッティングし、粗さ曲線から差し引く補正を行った。この場合、ローパスフィルターを1.5μmの強度で適用し、カットオフ値λを80μmとした。
また、解析に用いるキャリア芯材の平均粒子径については32〜34μmに限定した。このように測定対象となるキャリア芯材の平均粒子径を狭い範囲に限定することで、曲率補正の際に生じる残渣による誤差を小さくすることができる。
【0091】
最大山谷深さRzは、粗さ曲線の中で最も高い山の高さと最も深い谷の深さの和として求めた。最大高さRzの算出には、各パラメータの平均値として、30粒子の平均値を用いることとした。
【0092】
平均長さRSmは、粗さ曲線のうち、谷と山の組み合わせを一つの要素と規定し、それぞれの要素の長さを平均したものである。平均長さRSmの算出には、各パラメータの平均値として、30粒子の平均値を用いることとした。
【0093】
以上説明した最大高さRz、平均長さRSmの測定は、JIS B0601(2001年度版)に準拠して行われるものである。
【0094】
(見掛密度)
キャリア芯材の見掛け密度はJIS Z 2504に準拠して測定した。
【0095】
(流動度)
キャリア芯材の流動度はJIS Z 2502に準拠して測定した。
【0096】
(体積平均粒子径(平均粒径))
キャリア芯材の体積平均粒子径は、レーザー回折式粒度分布測定装置(日機装社製「マイクロトラックModel9320−X100」)を用いて測定した。
【0097】
(磁気特性)
室温専用振動試料型磁力計(VSM)(東英工業社製「VSM−P7」)を用いて、外部磁場を0〜79.58×10
4A/m(10000エルステッド)の範囲で1サイクル連続的に印加して、飽和磁化、残留磁化、保磁力及び79.58×10
3A/m(1000エルステッド)の磁場における磁化σ
1k(Am
2/kg)をそれぞれ測定した。
【0098】
(静的抵抗)
電極として表面を電解研磨した板厚2mmの真鍮板2枚を電極間距離が2mmとなるように配置し、2枚の電極板の間の空隙にキャリア芯材200mgを装入したのち、それぞれの電極板の背後に断面積240mm
2の磁石を配置して電極間に被測定粉体のブリッジを形成させた状態で電極間に500Vの直流電圧を印加し、キャリア芯材を流れる電流値を4端子法により測定した。その電流値と、電極間距離2mmおよび断面積240mm
2からキャリア芯材の電気抵抗を算出した。
【0099】
(炭素含有量)
炭素量を赤外線吸収法で測定した。具体的には、キャリア芯材1gを酸素気流中で燃焼させて、キャリア芯材に含有された炭素を二酸化炭素とし、赤外線吸収検出器(LECOジャパン株式会社製、炭素硫黄分析装置「CS−200型」)で二酸化炭素の赤外線吸収量を測定して炭素量を算出した。
【0100】
(動的抵抗率の評価)
動的抵抗率は、
図9に示すように、キャリア撹拌部、現像スリーブとアルミ電極からなる装置を用いて測定を行った。キャリア120gを
図9に示す装置に充填し、現像スリーブをアルミ電極に対してギャップd=0.055cmの間隔をあけて対向させ、対抗部において、現像スリーブを40rpm、アルミ電極を25rpmの回転数で同一方向に回転させた。この状態で、現像スリーブとアルミ電極間に300Vの直流電圧Vを印加したときの電流Iを計測し、キャリアの磁気ブラシ状態での動的抵抗率を求めた。
また、本測定においては、現像スリーブとして直径30mm長さ100mmのビーズブラスト処理を施したアルミ円筒体、アルミ電極として直径30mm長さ100mmのアルミ円筒体を用い、現像スリーブと規制板の距離を0.5mmとなるように調整し測定を行った。このとき、キャリアの形成する磁気ブラシとアルミ電極との接触面積Sを3.25cm
2として下記に示す式により動的抵抗率の算出を行った。直流電圧源としては、松定プレシジョン社製HJPQ−1*30を用い、エィーディシー社製8240型デジタルエレクトロメータを用いて電流Iを測定した。
動的抵抗率(Ω・cm)=(V/I)×(S/d)
(式中、V:直流電圧値,I:電流値,S:接触面積,d:現像スリーブとアルミ電極との間のギャップ)
【0101】
(現像剤の作製)
得られたキャリアと平均粒径5.0μm程度のトナーとを、ポットミルを用いて所定時間混合し、二成分系の電子写真現像剤を得た。この場合、キャリアとトナーとをトナーの重量/(トナーおよびキャリアの重量)=5/100となるように調整した。以下、全ての実施例、比較例についても同様にして現像剤を得た。
【0102】
(実機評価)
図8に示した構造の現像装置(現像ローラの周速度Vs:406mm/sec,感光体ドラムの周速度Vp:205mm/sec,感光体ドラム−現像ローラ間距離:0.3mm)に、作製した二成分現像剤を投入し、初期、1k印刷後、10k印刷後にそれぞれ評価用画像を各3枚印刷し、エッジ欠陥、ゴースト現像、トナー飛散を下記の手順及び基準で評価した。
【0103】
エッジ欠陥
前記評価機による評価用画像3枚についてベタとハーフトーン部の境界における白抜けの度合を目視により下記基準で評価した。
「◎」:境界部での白抜けが確認できず、画像として良好なもの。
「○」:白抜けが確認されるが、許容範囲内(使用可能)のもの。
「△」:白抜けが確認され、使用できないもの。
「×」:明確に白抜けが確認されるもの。
【0104】
ゴースト現像
前記評価機による評価用画像3枚について1枚当たり5カ所の濃度を反射濃度計(東京電色社製の型番TC−6D)を用いて測定し下記基準で評価した。
「◎」:濃度の濃淡差の最大が0.1未満であり、濃度ムラ(ゴースト現像)が視認できない。
「○」:濃度の濃淡差の最大が0.1以上0.2未満あり、濃度ムラが視認できない。
「△」:濃度の濃淡差の最大が0.2以上0.3未満あり、濃度ムラが視認できる。
「×」:濃度の濃淡差の最大が0.3以上であり、濃度ムラが視認でき使用できない。
【0105】
トナー飛散
トナー飛散について、良好なレベルを「○」、問題があり使用できないレベルを「×」とした。
【0106】
【表1】
【0107】
【表2】
【0108】
表2から明らかなように、MnMgSr系フェライト粒子の粒子本体表面をエポキシ基を有するシランカップリング剤で処理した実施例1のキャリア芯材では、カップリング剤処理を行わなかった比較例1のキャリア芯材と比較して、キャリア化後の動的抵抗率が低く、「エッジ欠陥」、「ゴースト現像」及び「トナー飛散」のいずれも発生せず良好な評価結果であった。
【0109】
また、アミノ基を有するシランカップリング剤を使用した実施例2のキャリア芯材、メタクリル基を有するシランカップリング剤を使用した実施例3のキャリア芯材においても実施例1のキャリア芯材と同様にキャリア化後の動的抵抗率が低く、「エッジ欠陥」、「ゴースト現像」及び「トナー飛散」のいずれも実使用上問題のないレベルであった。
【0110】
これに対して、カップリング剤処理を行わず、被覆樹脂の使用量を2wt%と少なくした比較例2のキャリア芯材では、キャリア芯材の露出増加の影響と推測されるキャリアの動的抵抗率の低下が確認され、「エッジ欠陥」及び「ゴースト現像」は発生しなかったが、被覆樹脂量を減らしたことに起因する印刷枚数の増加による劣化で帯電付与能力が低下し、10k印刷後において「トナー飛散」が発生した。
【0111】
MnSrTi系フェライト粒子の粒子本体表面をエポキシ基を有するシランカップリング剤で処理した実施例4のキャリア芯材では、キャリア化後の動的抵抗率が低く、「エッジ欠陥」、「ゴースト現像」及び「トナー飛散」のいずれも発生せず良好な評価結果であった。
【0112】
また、MnSr系フェライト粒子の粒子本体表面をエポキシ基を有するシランカップリング剤で処理した実施例5のキャリア芯材でも、キャリア化後の動的抵抗率が低く、「エッジ欠陥」、「ゴースト現像」及び「トナー飛散」のいずれも発生せず良好な評価結果であった。また、カップリング剤の使用量を0.010wt%に減らした実施例6のキャリア芯材も、キャリア化後の動的抵抗率が低く、「エッジ欠陥」、「ゴースト現像」及び「トナー飛散」のいずれも実使用上問題のないレベルであった。反対に、カップリング剤の使用量を1.000wt%に増やした実施例7のキャリア芯材も、キャリア化後の動的抵抗率が低く、「エッジ欠陥」、「ゴースト現像」及び「トナー飛散」のいずれも実使用上問題のないレベルであった。
【0113】
また、Rzが1.4μmのMnSr系フェライト粒子の粒子本体表面をエポキシ基を有するシランカップリング剤で処理した実施例8のキャリア芯材も、キャリア化後の動的抵抗率が低く、「エッジ欠陥」、「ゴースト現像」及び「トナー飛散」のいずれも実使用上問題のないレベルであった。
【0114】
実施例5と同じMnSr系フェライト粒子の粒子本体表面をビニル基、メルカプト基、イソシアネート基、アルキル基の各置換基を有するシランカップリング剤でそれぞれ処理した実施例9〜12のキャリア芯材でも、キャリア化後の動的抵抗率が低く、「エッジ欠陥」、「ゴースト現像」及び「トナー飛散」のいずれも発生せず良好な評価結果であった。
【0115】
これに対して、カップリング剤の使用量が0.005wt%と少ない比較例3のキャリア芯材では、カップリング剤の使用量が少ないために樹脂被覆後のキャリア芯材の露出が十分に得られず、動的抵抗は高い値を示し、「エッジ欠陥」及び「ゴースト現像」が発生した。
【0116】
また、Rzが1.1μmと小さい比較例4のキャリア芯材では、樹脂被覆後のキャリア芯材の露出不足に起因してキャリア化後の動的抵抗率が高い値を示し、印刷初期から「エッジ欠陥」及び「ゴースト現像」が発生した。