特許第6248191号(P6248191)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6248191
(24)【登録日】2017年11月24日
(45)【発行日】2017年12月13日
(54)【発明の名称】窓用断熱フィルム、窓用断熱材および窓
(51)【国際特許分類】
   B32B 5/02 20060101AFI20171204BHJP
   E06B 5/00 20060101ALI20171204BHJP
【FI】
   B32B5/02 A
   B32B5/02 C
   E06B5/00 C
【請求項の数】13
【全頁数】43
(21)【出願番号】特願2016-523575(P2016-523575)
(86)(22)【出願日】2015年5月29日
(86)【国際出願番号】JP2015065557
(87)【国際公開番号】WO2015182745
(87)【国際公開日】20151203
【審査請求日】2016年11月29日
(31)【優先権主張番号】特願2014-113111(P2014-113111)
(32)【優先日】2014年5月30日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2015-109490(P2015-109490)
(32)【優先日】2015年5月29日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】306037311
【氏名又は名称】富士フイルム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000109
【氏名又は名称】特許業務法人特許事務所サイクス
(72)【発明者】
【氏名】岡崎 賢太郎
(72)【発明者】
【氏名】清都 尚治
【審査官】 伊藤 寿美
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2012/165150(WO,A1)
【文献】 特開2012−238579(JP,A)
【文献】 特開昭56−120341(JP,A)
【文献】 国際公開第2015/170695(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00−43/00
E06B 5/00− 5/20
G02B 5/20− 5/28
JSTPlus(JDreamIII)
JST7580(JDreamIII)
JSTChina(JDreamIII)
JSTPlus(JDreamIII)
JST7580(JDreamIII)
JSTChina(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
可撓性支持体と、繊維状金属粒子を含む繊維状金属粒子含有層とを有し、前記繊維状金属粒子が銀または銀の合金を含み、前記繊維状金属粒子の平均短径が35nm以下かつ平均長径が5μm以上であり、前記繊維状金属粒子含有層の繊維状金属粒子の単位面積当たりの含有量が10mg/m2以上であり、
前記繊維状金属粒子含有層がさらにSi、Ti、ZrおよびAlからなる群より選ばれる元素(b)のアルコキシド化合物を加水分解及び重縮合して得られるゾルゲル硬化物を含み、
前記可撓性支持体がポリカーボネート、ポリエーテルスルホン、ポリエステル、アクリル樹脂から選ばれる少なくとも一種の素材から構成される
窓用断熱フィルム。
【請求項2】
前記繊維状金属粒子含有層において前記ゾルゲル硬化物の形成に使用される前記アルコキシド化合物の質量と、前記繊維状金属粒子含有層に含まれる前記繊維状金属粒子の質量の比が0.25/1〜30/1である、請求項に記載の窓用断熱フィルム。
【請求項3】
前記窓用断熱フィルムが窓の屋内側に配置される用途である、請求項1または2に記載の窓用断熱フィルム。
【請求項4】
可視光透過率が80%以上である、請求項1〜のいずれか一項に記載の窓用断熱フィルム。
【請求項5】
前記繊維状金属粒子含有層に含まれる長径15μm以上の繊維状金属粒子の個数比率が20%以下である請求項1〜のいずれか一項に記載の窓用断熱フィルム。
【請求項6】
請求項1〜のいずれか一項に記載の窓用断熱フィルムと厚み0.5mm以上の基板とが、粘着材で貼合され
前記基板がガラスである
窓用断熱材。
【請求項7】
前記粘着材が、紫外線吸収剤を含有する、請求項に記載の窓用断熱材。
【請求項8】
厚み0.5mm以上の基板と、繊維状金属粒子を含む繊維状金属粒子含有層とを有し、
前記繊維状金属粒子が銀または銀の合金を含み、
前記繊維状金属粒子の平均短径が35nm以下かつ平均長径が5μm以上であり、
前記繊維状金属粒子含有層の繊維状金属粒子の単位面積当たりの含有量が10mg/m2以上であり、
前記繊維状金属粒子含有層がさらにSi、Ti、ZrおよびAlからなる群より選ばれる元素(b)のアルコキシド化合物を加水分解及び重縮合して得られるゾルゲル硬化物を含み、
前記基板がガラスである
窓用断熱材。
【請求項9】
前記繊維状金属粒子含有層において前記ゾルゲル硬化物の形成に使用される前記アルコキシド化合物の質量と、前記繊維状金属粒子含有層に含まれる前記繊維状金属粒子の質量の比が0.25/1〜30/1である請求項に記載の窓用断熱材。
【請求項10】
前記基板が、厚み2mm以上の基板である、請求項のいずれか一項に記載の窓用断熱材。
【請求項11】
遮熱係数が0.8以上である、請求項10のいずれか一項に記載の窓用断熱材。
【請求項12】
前記繊維状金属粒子含有層に含まれる長径15μm以上の繊維状金属粒子の個数比率が20%以下である請求項11のいずれか一項に記載の窓用断熱材。
【請求項13】
窓ガラスおよび前記窓ガラスに貼り合わせた請求項1〜のいずれか一項に記載の窓用断熱フィルムを含むか、あるいは、
請求項12のいずれか一項に記載の窓用断熱材を含む、窓。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、窓用断熱フィルム、窓用断熱材および窓に関する。より詳しくは、可視光透過性および温暖性が優れる窓用断熱フィルム、窓用断熱材および窓に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、二酸化炭素削減のための省エネルギー施策の一つとして環境負荷の少ない商品、いわゆるエコな商品が求められており、自動車や建物の窓に対する窓用日射調整フィルムが求められている。このような商品として窓用断熱フィルムが注目されている。窓用断熱フィルムとは窓に貼ることで屋内側と屋外側の熱の行き来を遅くさせるフィルムのことであり、これを使用することにより、屋外側の気温が屋内側よりも低い場合であっても、屋内側での暖房の使用量が減り、節電が期待できる。
一般的に断熱の度合いは熱貫流率で定義され、値が小さいほど断熱性が高いことになる。JIS A 5759(JISはJapanese Industrial Standards)によれば、熱貫流率は波長5μm〜50μmの遠赤外線の反射スペクトルから求めることができる。波長5μm〜50μmの遠赤外線の反射率を上げれば熱貫流率を下げることができるため、断熱性を高めるためには波長5μm〜50μmの遠赤外線の反射率を上げることが好ましいこととなる。
【0003】
赤外線の反射率を上げる方法として、様々な構成が知られている。
非特許文献1には、金属層を二つの誘電体層で挟むことにより赤外線を反射する層が作ることができることが記載されている。
【0004】
特許文献1には、表面保護層、プライマー層、遮熱層、基材からなる透明遮熱フィルムであり、遮熱層がポリアニリン等の導電性高分子を使用してなる透明遮熱フィルムが記載されている。
【0005】
特許文献2には、合成樹脂からなる基材の片面に、銀を主成分とする遠赤外線反射層と誘電体層からなる多層構造である金属層/カーボン層/ハードコート層を順に形成し、基材の他の片面に紫外線カット層を形成した、積層フィルムが記載されている。
【0006】
一方、タッチパネル分野の透明電極パターンの材料として、繊維状金属粒子(例えば銀ナノワイヤ)やその他の繊維状導電粒子(カーボンナノチューブ等)が知られている。
例えば、特許文献3には、基材上に、短軸径が150nm以下の銀を主成分とする導電性繊維を含み、かつ−M1−O−M1−(M1はSi、Ti、Zr及びAlからなる群から選ばれた元素を示す)で示される結合を含む三次元架橋結合を含んで構成される導電性層を備える導電性部材であって、基材と導電性層との間に、更に少なくとも一層の中間層を有する導電性部材が記載されている。
しかしながら、繊維状金属粒子を用いた層の断熱性についてはこれまで検討されていなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2006−264167号公報
【特許文献2】特開2012−206430号公報
【特許文献3】特開2012−238579号公報
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】H.A.Macleod.光学薄膜.日刊工業新聞社,1989,P599−P602
【非特許文献2】AndTech社刊「透明断熱・遮熱ウィンドウフィルム・素材の最新技術開発動向・機能性向上と将来展望」
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ここで、窓用断熱フィルムの自動車や建物の窓への適用を考えた場合、可視光透過率が高いことが好ましい。
また、窓用断熱フィルムの自動車や建物の窓への適用を考えた場合、断熱性は熱貫流率や遠赤外線の反射や吸収のみで評価しにくく、屋外側の気温が屋内側よりも低い場合に窓が設けられた自動車や建物の屋内側で人間が過ごすときの暖房の使用量を減らすためには、人間自体や屋内側に設置された暖房の放射する熱によって屋内側で過ごす人間が実際に官能的に暖かいと感じること(以下、温暖性と言う)が重要となる。
このような状況のもと、本発明者らは各文献に記載の材料の可視光透過率および温暖性について検討を行った。
【0010】
本発明者らが非特許文献1に記載の金属層(スパッタ蒸着された金属薄膜)を二つの誘電体層で挟むことにより得られる赤外線を反射する層の性能を検討したところ、可視光透過率が高いものを作ることが難しいことがわかった。
【0011】
特許文献1に記載の導電性高分子は、遮熱性に関わる近赤外線(700nm〜2500nm)を吸収するものの、特許文献1には断熱性に関わる遠赤外線(4000nm以上)を反射する性質は示唆されていない。本発明者らが検討を重ねた結果、特許文献1等に記載の導電性高分子材料を用いると透明性の高い近赤外線遮蔽材料が得られるものの、遠赤外線にかかわる断熱性はほとんど無いことがわかった。実際、特許文献1に記載の導電性高分子を用いてフィルムを貼った屋内側の温暖性を検討したところ、窓用途には適さない程度まで可視光透過率を減少させる程度に導電性高分子を多量に塗工した場合に、ようやく温暖性が高まったと感じられる程度であった。従って導電性高分子は可視光透過率および温暖性を両立し難く、必ずしも透明性の高い断熱材料として優れているとは言えないことがわかった。
また、特許文献1には、導電性高分子などの有機物以外の導電性材料を遮熱層に用いることは記載されていなかった。
【0012】
特許文献2に記載の積層フィルムは農業用と記載があり、特許文献2には農業用ハウスなどの温室栽培に用いる農業用フィルムには、植物の生育に必要となる太陽光(特に可視光)を効率良く取り入れるとともに、ハウス栽培において、栽培コストの多くを占める暖房費を削減するため、暖房熱である遠赤外線を反射し、暖房効率を高めることが必要、と記載がある。植物の生育に着目している特許文献2では、屋外側の気温が屋内側よりも低い場合に窓が設けられた自動車や建物の屋内側で人間が過ごすときの暖房の使用量を減らすことについては検討されていなかった。そのため、特許文献2を読んだ当業者が、人間自体や屋内側に設置された暖房の放射する熱によって屋内側で過ごす人間が実際に官能的に暖かいと感じる程度の断熱性(温暖性)と、可視光透過率をともに人間にとって快適な範囲まで高めることは容易ではなく、すなわち農業用フィルムを「窓用」に転用することは容易ではない。
また、特許文献2には得られた積層フィルムを、自動車や建物の窓(例えばガラスや樹脂板などの成形された基板)に貼り合わせることも記載されていなかった。
【0013】
特許文献3に記載の基材上に銀を主成分とする導電性繊維を含む導電性層は、タッチパネル分野の透明電極パターンの材料として記載され、タッチパネル及び太陽電池への応用は記載があるが、自動車や建物の窓に用いることや断熱性については記載されていなかった。
さらに、非特許文献2、43ページ、4〜6行目によれば、Agナノワイヤやカーボンナノチューブ等を用いた透明導電膜が開発されているが、赤外線の反射は十分ではないと記載があった。そのため、繊維状金属粒子を用いた層の断熱性についてはこれまで検討されていなかった上、特許文献3と非特許文献2を組み合わせて読むと、繊維状金属粒子を用いた層を断熱材に応用することは断熱性能の観点から期待されていなかったことがわかる。
【0014】
以上に記載したように、可視光透過率および温暖性が優れる窓用断熱フィルムはこれまで知られていなかった。
本発明が解決しようとする課題は、可視光透過性および温暖性が優れる窓用断熱フィルムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明者らは鋭意検討を行った結果、特定の範囲の長径および短径を有し、銀を含む繊維状金属粒子を用いて、繊維状金属粒子の単位面積当たりの含有量が特定の範囲となるようにした繊維状金属粒子含有層は、従来知られていなかった遠赤外遮蔽性を有し、かつ、可視光透過率も高い層を形成でき、特許文献1に記載の導電性高分子よりも温暖性が向上することを新たに見出すに至った。
【0016】
すなわち、上記課題は以下の構成の本発明によって解決される。
[1] 可撓性支持体と、繊維状金属粒子を含む繊維状金属粒子含有層とを有し、繊維状金属粒子が銀または銀の合金を含み、繊維状金属粒子の平均短径が35nm以下かつ平均長径が5μm以上であり、繊維状金属粒子含有層の繊維状金属粒子の単位面積当たりの含有量が10mg/m以上である、窓用断熱フィルム。
[2] [1]に記載の窓用断熱フィルムは、繊維状金属粒子含有層が、さらにSi、Ti、ZrおよびAlからなる群より選ばれる元素(b)のアルコキシド化合物を加水分解及び重縮合して得られるゾルゲル硬化物を含むことが好ましい。
[3] [2]に記載の窓用断熱フィルムは、繊維状金属粒子含有層においてゾルゲル硬化物の形成に使用されるアルコキシド化合物の質量と、繊維状金属粒子含有層に含まれる繊維状金属粒子の質量の比が0.25/1〜30/1であることが好ましい。
[4] [1]〜[3]のいずれか一つに記載の窓用断熱フィルムは、窓の屋内側に配置されることが好ましい。
[5] [4]に記載の窓用断熱フィルムは、繊維状金属粒子含有層が、支持体の窓側の面とは反対側の面上に配置されることが好ましい。
[6] [1]〜[5]のいずれか一つに記載の窓用断熱フィルムは、可視光透過率が80%以上であることが好ましい。
[7] [1]〜[6]のいずれか一つに記載の窓用断熱フィルムは、繊維状金属粒子含有層に含まれる長径15μm以上の繊維状金属粒子の個数比率が20%以下であることが好ましい。
[8] [1]〜[7]のいずれか一つに記載の窓用断熱フィルムと厚み0.5mm以上の基板とが、粘着材で貼合された、窓用断熱材。
[9] [8]に記載の窓用断熱材は、粘着材が、紫外線吸収剤を含有することが好ましい。
[10] 厚み0.5mm以上の基板と、繊維状金属粒子を含む繊維状金属粒子含有層とを有し、
繊維状金属粒子が銀または銀の合金を含み、
繊維状金属粒子の平均短径が35nm以下かつ平均長径が5μm以上であり、
繊維状金属粒子含有層の繊維状金属粒子の単位面積当たりの含有量が10mg/m以上である、窓用断熱材。
[11] [10]に記載の窓用断熱材は、繊維状金属粒子含有層がさらにSi、Ti、ZrおよびAlからなる群より選ばれる元素(b)のアルコキシド化合物を加水分解及び重縮合して得られるゾルゲル硬化物を含むことが好ましい。
[12] [11]に記載の窓用断熱材は、繊維状金属粒子含有層においてゾルゲル硬化物の形成に使用されるアルコキシド化合物の質量と、繊維状金属粒子含有層に含まれる繊維状金属粒子の質量の比が0.25/1〜30/1であることが好ましい。
[13] [10]〜[12]のいずれか一つに記載の窓用断熱材は、繊維状金属粒子含有層が、窓の屋内側に配置されることが好ましい。
[14] [13]に記載の窓用断熱材は、繊維状金属粒子含有層が、基板の窓側の面とは反対側の面上に配置されることが好ましい。
[15] [8]〜[14]のいずれか一つに記載の窓用断熱材は、基板が、ガラスまたは樹脂板であることが好ましい。
[16] [8]〜[15]のいずれか一つに記載の窓用断熱材は、基板が、厚み2mm以上の基板であることが好ましい。
[17] [8]〜[16]のいずれか一つに記載の窓用断熱材は、遮熱係数が0.8以上であることが好ましい。
[18] [8]〜[17]のいずれか一つに記載の窓用断熱材は、繊維状金属粒子含有層に含まれる長径15μm以上の繊維状金属粒子の個数比率が20%以下であることが好ましい。
[19] 窓ガラスおよび窓ガラスに貼り合わせた[1]〜[7]のいずれか一つに記載の窓用断熱フィルムを含むか、あるいは、
[8]〜[18]のいずれか一つに記載の窓用断熱材を含む、窓。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、可視光透過性および温暖性が優れる窓用断熱フィルムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1図1は、本発明の窓用断熱フィルムの一例の断面を示す概略図である。
図2図2は、本発明の窓用断熱フィルムの他の一例の断面を示す概略図である。
図3図3は、本発明の窓用断熱フィルムの他の一例の断面を示す概略図である。
図4図4は、本発明の窓用断熱材の一例の断面を示す概略図である。
図5図5は、本発明の窓用断熱材の他の一例の断面を示す概略図である。
図6図6は、本発明の窓用断熱材の他の一例の断面を示す概略図である。
図7図7は、繊維状金属粒子の配列の様子を示す電子顕微鏡写真である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下において、本発明について詳細に説明する。以下に記載する構成要件の説明は、代表的な実施形態や具体例に基づいてなされることがあるが、本発明はそのような実施形態に限定されるものではない。なお、本明細書において「〜」を用いて表される数値範囲は「〜」前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む範囲を意味する。
【0020】
[窓用断熱フィルム]
本発明の窓用断熱フィルムは、可撓性支持体と、繊維状金属粒子を含む繊維状金属粒子含有層とを有し、繊維状金属粒子が銀または銀の合金を含み、繊維状金属粒子の平均短径が35nm以下かつ平均長径が5μm以上であり、繊維状金属粒子含有層の繊維状金属粒子の単位面積当たりの含有量が10mg/m以上である。
このような構成により、可視光透過性および温暖性が優れる窓用断熱フィルムを提供できる。
暖房に用いられる熱源の温度に対応する遠赤外線を反射することで熱の窓外への放射を防ぐことが出来る(断熱という)。
遠赤外線を反射する材料は、金属などの自由電子密度が高い材料であることが知られている。
窓用には透明であることが求められるため、金属でも可視光を透過できる程度の薄膜が用いられるのが一般的であるが、光透過率と遠赤外線反射はトレードオフの関係であった。
一方、透明導電材料と呼ばれるITOや導電性高分子も遠赤外線を反射するが、自由電子密度が低いために、反射率は十分ではない。
繊維状金属粒子は金属特有の自由電子密度の高さを有し、繊維の短径を細くすることで可視光を透過するため、ナノ領域まで細くした繊維状金属粒子は窓用断熱フィルムや窓用断熱材に用いられる窓用遠赤外線反射材料として理想的な特性を示す。
繊維状金属粒子が銀または銀の合金を含むことで、特開2006−264167号公報に記載されているようなポリアニリン等の導電性高分子よりも温暖性を高めることができる。繊維状金属粒子は、平均短径(平均短軸長や平均直径と同義)が35nm以下であると、温暖性を高めることができる。繊維状金属粒子は、平均長径(平均長軸長と同義)が5μm以上であると、波長5μm〜50μmの遠赤外線の反射ができ、十分な断熱性を得ることが容易となり、温暖性を高めることができる。繊維状金属粒子含有層の繊維状金属粒子の単位面積当たりの含有量が10mg/m以上であると、温暖性を高めることができる。このような繊維状金属粒子含有層は、スパッタ金属積層体と比較すると可視光透過率も高い。
【0021】
本発明の窓用断熱フィルムの好ましい態様では、繊維状金属粒子含有層が支持体の窓側の面とは反対側の面上に配置される(より好ましくは、できるだけ屋内側の最外層に繊維状金属粒子含有層を入れる)と、遠赤外線を反射でき、好ましい。窓に窓用断熱フィルムが配置されていないときは屋内の遠赤外線がガラスや樹脂板などの窓に吸収されて、ガラスや樹脂板などの窓の中を熱伝導することにより、屋内の熱が屋外に出てしまうが、窓用断熱フィルムがあると遠赤外線を屋内に反射するため屋内の熱が屋外に出にくくなる。
【0022】
本発明の窓用断熱フィルムは繊維状金属粒子含有層を塗布により製造できるため、スパッタ金属積層体と比較すると製造コストが低く、大面積化が容易である。
【0023】
以下、本発明の窓用断熱フィルムの好ましい態様を説明する。
【0024】
<特性>
本発明の窓用断熱フィルムは、可視光透過性および温暖性が優れる。
本発明の窓用断熱フィルムの光学特性は、粘着材を介してガラスに貼合した状態で測定する。窓用断熱フィルムに粘着材を以下の方法で貼り合わせ、粘着層を形成する。粘着材としてパナック(株)製パナクリーンPD−S1(粘着層25μm)を使用して、粘着材の軽剥離セパレータ(シリコーンコートPET)を剥がしてから、可撓性支持体の金属粒子含有層とは反対側の表面に貼り合わせる。上記の方法で形成した粘着層から粘着材PD−S1の他方の重剥離セパレータ(シリコーンコートPET)を剥がし、フィルム施工液であるリアルパーフェクト(リンテック(株)製)の0.5質量%希釈液を使用してソーダ石灰珪酸塩である板ガラス(板ガラス厚み:3mmの青板ガラス)と貼り合わせて、光学特性の測定用サンプルを調製する。
可視光透過率の好ましい範囲は、後述の実施例中に記載の好ましい範囲と同様であり、光学特性の測定用サンプルとした本発明の窓用断熱フィルムは可視光透過率が75%を超えることが実用上求められ、可視光透過率が80%以上であることが好ましい。
光学特性の測定用サンプルとした本発明の窓用断熱フィルムのヘイズの測定はJIS−K−7105に準じて行う。光学特性の測定用サンプルとした本発明の窓用断熱フィルムのヘイズは好ましくは5%以下、更に好ましくは2%以下、特に好ましくは1.8%以下、最も好ましくは1.6%以下である。
本発明において、色度a*値、b*値は、JIS−Z8729:1994に規定される方法によって測定して得られた値である。JIS−Z8729の測定方法としては、透過による測定方法、反射による測定方法がある。本発明の窓用断熱フィルムの色度は、透過色度においてa*は−10〜+5が好ましく、更に好ましくは−5〜3、最もこのましくは−1〜1である。b*は−10から+5が好ましく、更に好ましくは−5〜3であり、最も好ましくは−1〜1である。一方、反射色度においては、a*は−5〜10が好ましく、更に好ましくは−3〜5、最もこのましくは−1〜1である。b*は−5〜10が好ましく、更に好ましくは−3〜5であり、最も好ましくは−1〜1である。
【0025】
<構成>
本発明の窓用断熱フィルムの構成について、説明する。
図1〜3に本発明の窓用断熱フィルムの一例の断面を示す概略図を示した。
図1に記載の本発明の窓用断熱フィルム103は、可撓性支持体10と、可撓性支持体10の上に配置された繊維状金属粒子含有層20とを含む。
本発明の窓用断熱フィルム103は、図1中のOUT側に配置される窓の屋内側(内側、日中における太陽光入射側とは反対側、図1中のIN側)に配置されることが好ましい(窓は図1には不図示)。
繊維状金属粒子含有層20は、可撓性支持体10の窓側(図1中のOUT側)の面とは反対側の面上に配置されることが好ましい。本発明では、繊維状金属粒子含有層20は、屋内側の最外層または最外層の次の層にあることが温暖性を高める観点から好ましく、屋内側の最外層にあることがより好ましい。ここで、特開2006−264167号公報では赤外線遮蔽材料の基板への貼合について、窓の屋内側または屋外側のいずれに貼り合わせるか、あるいは、導電性高分子材料塗工面のガラスや樹脂板などの窓側、屋内側のいずれに貼り合わせるかに関して記載は無い。
可撓性支持体10と繊維状金属粒子含有層20とは直接接して積層されていてもよく、図2に示すように可撓性支持体10と繊維状金属粒子含有層20とが接着層31を介して貼り合わせられていてもよい。接着層31は単層でも2層以上の積層体でもよい。また、可撓性支持体10上に、接着層31を設けた積層体を、接着層付きの可撓性支持体101と言うことがある。
本発明の窓用断熱フィルム103は、近赤外遮蔽材料を含んでいてもよい。図3では、本発明の窓用断熱フィルム103が、近赤外遮蔽材料を含む近赤外遮蔽層41を有する態様を示した。近赤外遮蔽材料は、近赤外遮蔽層41を単独で形成せずに、その他の層に含まれていてもよい。例えば、近赤外遮蔽材料が、繊維状金属粒子含有層20に含まれていてもよく、接着層31に含まれていてもよい。本発明の窓用断熱フィルム103の外部に任意に設けられてもよい粘着材(図1〜3には不図示)に含まれていてもよい。近赤外遮蔽材料は、可撓性支持体10の窓側(図1中のOUT側)の面側の層に含まれることが、近赤外光を遮熱する観点から好ましい。
以下、本発明の窓用断熱フィルムを構成する各層の好ましい態様を説明する。
【0026】
<可撓性支持体>
上記可撓性支持体としては、繊維状金属粒子含有層を担うことができるものである限り、目的に応じて種々のものを使用することができる。一般的には、板状またはシート状のものが使用される。
支持体は、透明であっても、不透明であってもよい。可撓性支持体を構成する素材としては、例えば、ポリカーボネート、ポリエーテルスルホン、ポリエステル、アクリル樹脂、塩化ビニル樹脂、芳香族ポリアミド樹脂、ポリアミドイミド、ポリイミド等の合成樹脂などを挙げることができる。これらの可撓性支持体の繊維状金属粒子含有層が形成される表面は、所望により、アルカリ性水溶液による清浄化処理、シランカップリング剤などの薬品処理、プラズマ処理、イオンプレーティング、スパッタリング、気相反応法、真空蒸着などにより前処理がされていてもよい。
可撓性支持体の厚さは、用途に応じて所望の範囲のものが使用される。一般的には、1μm〜500μmの範囲から選択され、3μm〜400μmがより好ましく、5μm〜300μmが更に好ましい。
可撓性支持体は可視光透過率が75%を超えることが好ましく、85%以上であることがより好ましく、90%以上であることが更に好ましい。なお、支持体の可視光透過率は、ISO 13468−1(1996)(ISOはInternational Organization for Standardization)に準拠して測定される。
【0027】
<繊維状金属粒子含有層>
繊維状金属粒子含有層は、繊維状金属粒子を含み、繊維状金属粒子含有層の繊維状金属粒子の単位面積当たりの含有量が10mg/m以上である。
繊維状金属粒子含有層の代表例の顕微鏡写真を図7に示した。繊維状金属粒子含有層は、図7に示すような構造であることが好ましい。例えば、遠赤外線を反射させるには空隙サイズが小さいことが好ましく、例えば繊維状金属粒子含有層の断面写真において、80%以上の空隙サイズが25(μm)以下の空隙面積であることがより好ましい。
【0028】
(繊維状金属粒子含有層の表面抵抗の異方性)
本発明において繊維状金属粒子の配列は無秩序であることが好ましい。繊維状金属粒子が遠赤外線を反射する際、繊維状金属粒子の向きと遠赤外線偏光の相互作用において反射の効率が高い組合せがある。電気ヒーターといった一般的な熱源から輻射される遠赤外線の偏光方向は一定ではなく、反射の効率を高めるためには遠赤外線の偏光同様に無秩序な方向に繊維状金属粒子が配列されていることが好ましい。繊維状金属粒子の配列の程度は繊維状金属粒子含有層の表面抵抗の異方性で定量化することが出来る。直線上に探針が並んだ四探針で測定した任意の方向の表面抵抗に対するそれに直行する方向の表面抵抗の差の絶対値のパーセンテージで示した場合、本発明においては25%以下が好ましく、更に好ましくは15%以下、最も好ましくは10%以下である。表面抵抗の異方性が25%以下である遠赤外線の漏れが抑制しやすくなることが原因と考えられる温暖性の向上が大きく好ましい。
【0029】
(繊維状金属粒子)
繊維状金属粒子は、銀または銀の合金を含み、繊維状金属粒子の平均短径が35nm以下かつ平均長径が5μm以上である。
繊維状金属粒子は繊維状であり、繊維状は、ワイヤ状や線状と同義である。
繊維状金属粒子は導電性を有することが好ましい。
繊維状金属粒子としては、金属ナノワイヤ、棒状金属粒子を挙げることができる。繊維状金属粒子としては、金属ナノワイヤが好ましい。以下、金属ナノワイヤを繊維状金属粒子の代表例として説明することがあるが、金属ナノワイヤに関する説明は繊維状金属粒子の一般的な説明として用いることができる。
繊維状金属粒子含有層は、金属ナノワイヤなどの繊維状金属粒子は、中実構造であることが好ましい。
【0030】
−平均短径−
より透明な繊維状金属粒子含有層を形成しやすいという観点からは、例えば、金属ナノワイヤなどの繊維状金属粒子は、平均短径が1nm〜35nmのものが好ましい。
繊維状金属粒子の平均短径は35nm以下であり、30nm以下であることが好ましく、25nm以下であることが温暖性の観点とヘイズに関して一段と優れるものが得られる観点からより好ましい。平均短径を1nm以上とすることにより、耐酸化性が良好で、対候性に優れる繊維状金属粒子含有層が容易に得られる。平均短径は5nm以上であることがより好ましく、10nm以上であることが更に好ましく、15nm以上であることが特に好ましい。
金属ナノワイヤなどの繊維状金属粒子の平均短径は、ヘイズ、耐酸化性、及び耐候性の観点から、1nm〜35nmであることが好ましく、5nm〜35nmであることがより好ましく、10nm〜35nmであることが特に好ましく、15nm〜30nmであることがより特に好ましく、15nm〜25nmであることがさらにより特に好ましい。
【0031】
−平均長径−
金属ナノワイヤなどの繊維状金属粒子の平均長径は、5μm〜50μmであることが好ましく、5μm〜40μmがより好ましく、5μm〜30μmが特に好ましく、5〜15μmがより特に好ましい。金属ナノワイヤの平均長径が50μm以下であると、金属ナノワイヤを凝集物が生じることなく合成することが容易となり、平均長径が5μm以上であると、十分な温暖性を得ることが容易となる。
金属ナノワイヤなどの繊維状金属粒子の平均短径(平均直径)及び平均長径は、例えば、透過型電子顕微鏡(Transmission Electron Microscope;TEM)と光学顕微鏡を用い、TEM像や光学顕微鏡像を観察することにより求めることができる。具体的には、金属ナノワイヤなどの繊維状金属粒子の平均短径(平均直径)及び平均長径は、透過型電子顕微鏡(日本電子株式会社製、商品名:JEM−2000FX)を用い、ランダムに選択した300個の金属ナノワイヤについて、各々短径と長径を測定し、その平均値から金属ナノワイヤなどの繊維状金属粒子の平均短径と平均長径を求めることができる。本明細書ではこの方法で求めた値を採用している。なお、金属ナノワイヤの短軸方向断面が円形でない場合の短径は、短軸方向の測定で最も長い箇所の長さを短径とする。また。金属ナノワイヤなどの繊維状金属粒子が曲がっている場合、それを弧とする円を考慮し、その半径、及び曲率から算出される値を長径とする。
【0032】
−サイズ分布−
ある実施態様においては、繊維状金属粒子含有層における全繊維状金属粒子の含有量に対する、短径(直径)が35nm以下であり、かつ長径が5μm以上である繊維状金属粒子の含有量が、金属量で50質量%以上であることが好ましく、60質量%以上であることがより好ましく、75質量%以上であることが更に好ましい。
短径(直径)が35nm以下であり、長径が5μm以上である金属ナノワイヤなどの繊維状金属粒子の割合が、50質量%以上であることで、波長5〜50μmの遠赤外線を反射しやすい金属ナノワイヤの比率が増えて好ましい。繊維状金属粒子以外の金属粒子が繊維状金属粒子含有層に実質的に含まれない構成では、プラズモン吸収が強い場合にも透明度の低下を避け得る。
繊維状金属粒子含有層に含まれる長径15μm以上の繊維状金属粒子の個数比率が低いことがヘイズを小さくする観点から好ましく、具体的には30%以下であることが好ましく、20%以下であることがより好ましく、15%以下であることが特に好ましく、10%以下であることがより特に好ましい。平均長径の測定方法において、長径を測定した300個の繊維状金属粒子のうち長径15μm以上の繊維状金属粒子の個数を数え、長径15μm以上の粒子の個数比率を求める。
【0033】
繊維状金属粒子含有層に用いられる金属ナノワイヤなどの繊維状金属粒子の短径(直径)の変動係数は、40%以下が好ましく、35%以下がより好ましく、30%以下が更に好ましい。
変動係数が40%以下であると、透明性の観点で好ましい。
金属ナノワイヤなどの繊維状金属粒子の短径(直径)の変動係数は、例えば透過型電子顕微鏡(TEM)像からランダムに選択した300個のナノワイヤの短径(直径)を計測し、その標準偏差と算術平均値を算出し、標準偏差を算術平均値で除することにより、求めることができる。
【0034】
−繊維状金属粒子のアスペクト比−
本発明に用いうる金属ナノワイヤなどの繊維状金属粒子のアスペクト比は、10以上であることが好ましい。ここで、アスペクト比とは、平均短径に対する平均長径の比(平均長径/平均短径)を意味する。前述の方法により算出した平均長径と平均短径から、アスペクト比を算出することができる。
【0035】
金属ナノワイヤなどの繊維状金属粒子のアスペクト比は、10以上であれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、10〜100,000が好ましく、50〜100,000がさらに好ましく、100〜100,000がより好ましい。
アスペクト比が10以上であると、金属ナノワイヤなどの繊維状金属粒子同士が接触したネットワークが容易に形成され、高い温暖性を有する繊維状金属粒子含有層が容易に得られる。また、アスペクト比が100,000以下であると、例えば支持体上に繊維状金属粒子含有層を塗布により設ける際の塗布液において、金属ナノワイヤなどの繊維状金属粒子同士が絡まって凝集物を形成することが抑制され、安定な塗布液が得られるので、繊維状金属粒子含有層の製造が容易となる。
繊維状金属粒子含有層に含まれる全繊維状金属粒子の質量に対するアスペクト比が10以上の金属ナノワイヤなどの繊維状金属粒子の含有量は特に制限されない。例えば、70質量%以上であることが好ましく、75質量%以上であることがより好ましく、80%質量%以上であることが最も好ましい。
【0036】
金属ナノワイヤなどの繊維状金属粒子の形状としては、例えば円柱状、直方体状、断面が多角形となる柱状など任意の形状であり得るが、高い透明性が必要とされる用途では、円柱状や断面が5角形以上の多角形であって鋭角的な角が存在しない断面形状であるものが好ましい。
金属ナノワイヤなどの繊維状金属粒子の断面形状は、支持体上に金属ナノワイヤなどの繊維状金属粒子水分散液を塗布し、断面を透過型電子顕微鏡(TEM)で観察することにより検知することができる。
【0037】
−金属−
金属ナノワイヤなどの繊維状金属粒子を形成する金属は、銀または銀の合金を含む。
繊維状金属粒子を形成する金属は、1種の金属以外にも2種以上の金属を組み合わせて用いてもよく、合金を用いることも可能である。これらの中でも、銀単体又は銀化合物から形成されるものが好ましく、銀単体から形成されるものがより好ましい。
【0038】
金属としては、具体的には銀、あるいは、銅、金、白金、パラジウム、ニッケル、錫、コバルト、ロジウム、イリジウム、鉄、ルテニウム、オスミウム、マンガン、モリブデン、タングステン、ニオブ、タンタル、チタン、ビスマス、アンチモン、鉛のうち1種以上の金属および銀を含む合金などが挙げられる。これらの中でも、銀、あるいは、銅、銀、金、白金、パラジウム、ニッケル、錫、コバルト、ロジウム、イリジウム又はこれらの合金が好ましく、パラジウム、銅、銀、金、白金、錫のうち1種以上の金属および銀を含む合金がより好ましく、銀または銀の合金(すなわち銀を含有する合金)が特に好ましい。ここで銀を含有する合金における銀の含有量は合金の全量に対して50モル%以上であることが好ましく、60モル%以上であることがより好ましく、80モル%以上であることがさらに好ましい。
【0039】
繊維状金属粒子含有層に含まれる金属ナノワイヤなどの繊維状金属粒子は、高い温暖性を実現するという観点から、銀ナノワイヤを含むことが好ましく、平均短径が35nm以下かつ、平均長径が5μm以上の銀ナノワイヤを含むことがより好ましく、平均短径が5nm〜30nmであって、平均長径が5μm〜30μmの銀ナノワイヤを含むことが更に好ましい。繊維状金属粒子含有層に含まれる全繊維状金属粒子の質量に対する銀ナノワイヤの含有量は、本発明の効果を妨げない限り特に制限されない。例えば、繊維状金属粒子含有層に含まれる全繊維状金属粒子の質量に対する銀ナノワイヤの含有量は50質量%以上であることが好ましく、80質量%以上であることがより好ましく、全繊維状金属粒子が実質的に銀ナノワイヤであることが更に好ましい。ここで「実質的に」とは、不可避的に混入する銀以外の金属原子を許容することを意味する。
【0040】
−含有量−
本発明の窓用断熱フィルムは、繊維状金属粒子含有層の繊維状金属粒子の単位面積当たりの含有量が10mg/m以上である。
繊維状金属粒子含有層に含まれる金属ナノワイヤなどの繊維状金属粒子の含有量は、金属ナノワイヤなどの繊維状金属粒子の種類等に応じて、繊維状金属粒子含有層の可視光透過率(より好ましくはさらにヘイズ)が所望の範囲となるような量とされることが好ましい。本発明では、繊維状金属粒子が銀または銀の合金を含むため、繊維状金属粒子含有層の繊維状金属粒子の単位面積当たりの含有量(繊維状金属粒子含有層1mあたりの金属ナノワイヤなどの繊維状金属粒子の含有量)は、好ましくは10〜500mg/mの範囲であり、より好ましくは20〜200mg/mの範囲であり、特に好ましくは20〜100mg/mの範囲であり、より特に好ましくは20〜50mg/mの範囲であり、さらにより特に好ましくは25〜50mg/mの範囲である。このように特開2012−238579号公報に記載のタッチパネル分野の透明電極パターンの材料よりも繊維状金属粒子含有層の繊維状金属粒子の単位面積当たりの含有量がより多い範囲が、温暖性を高める観点から好ましい。
【0041】
繊維状金属粒子含有層は、温暖性の観点から、平均短径が1〜35nmかつ平均長径が5〜50μmの金属ナノワイヤなどの繊維状金属粒子を10〜500mg/mの範囲で含むことが好ましい。
繊維状金属粒子含有層は、平均短径が10nm〜35nmかつ平均長径が5μm〜40μmの金属ナノワイヤなどの繊維状金属粒子を20〜200mg/mの範囲で含むことがより好ましい。
繊維状金属粒子含有層は、平均短径が15nm〜25nmかつ平均長径が5〜15μmの金属ナノワイヤなどの繊維状金属粒子を20〜100mg/mの範囲で含むことが特に好ましく、25〜50mg/mの範囲で含むことがより特に好ましい。
【0042】
−繊維状金属粒子の製造方法−
金属ナノワイヤなどの繊維状金属粒子は、特に制限はなく、いかなる方法で作製されたものであってもよい。以下のように、ハロゲン化合物と分散剤を溶解した溶媒中で金属イオンを還元することによって製造することが好ましい。また、金属ナノワイヤなどの繊維状金属粒子を形成した後は、常法により脱塩処理を行うことが、分散性、繊維状金属粒子含有層の経時安定性の観点から好ましい。
金属ナノワイヤなどの繊維状金属粒子の製造方法としては、特開2009−215594号公報、特開2009−242880号公報、特開2009−299162号公報、特開2010−84173号公報、特開2010−86714号公報などに記載の方法を用いることができる。
【0043】
金属ナノワイヤなどの繊維状金属粒子の製造に用いられる溶媒としては、親水性溶媒が好ましく、例えば、水、アルコール系溶剤、エーテル系溶剤、ケトン系溶剤などが挙げられ、これらは1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
アルコール系溶剤としては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、エチレングリコールなどが挙げられる。
エーテル系溶剤としては、例えば、ジオキサン、テトラヒドロフランなどが挙げられる。
ケトン系溶剤としては、例えば、アセトンなどが挙げられる。
加熱する場合、その加熱温度は、250℃以下が好ましく、20℃以上200℃以下がより好ましく、30℃以上180℃以下が更に好ましく、40℃以上170℃以下が特に好ましい。上記温度を20℃以上とすることで、形成される金属ナノワイヤなどの繊維状金属粒子の長さが分散安定性を確保しうる好ましい範囲となり、且つ、250℃以下とすることで、金属ナノワイヤの断面外周が鋭角を有しない、なめらかな形状となるため、金属粒子の表面プラズモン吸収による着色が抑えられ、透明性の観点から好適である。
なお、必要に応じて、粒子形成過程で温度を変更してもよく、途中での温度変更は核形成の制御や再核発生の抑制、選択成長の促進による単分散性向上の効果があることがある。
【0044】
加熱処理は、還元剤を添加して行うことが好ましい。
還元剤としては、特に制限はなく、通常使用されるものの中から適宜選択することができ、例えば、水素化ホウ素金属塩、水素化アルミニウム塩、アルカノールアミン、脂肪族アミン、ヘテロ環式アミン、芳香族アミン、アラルキルアミン、アルコール、有機酸類、還元糖類、糖アルコール類、亜硫酸ナトリウム、ヒドラジン化合物、デキストリン、ハイドロキノン、ヒドロキシルアミン、エチレングリコール、グルタチオンなどが挙げられる。これらの中でも、還元糖類、その誘導体としての糖アルコール類、エチレングリコールが特に好ましい。
これらの中でも、還元糖類、その誘導体としての糖アルコール類、エチレングリコールが特に好ましい。
還元剤によっては、機能として分散剤や溶媒としても機能する化合物があり、同様に好ましく用いることができる。
【0045】
金属ナノワイヤなどの繊維状金属粒子の製造は分散剤と、ハロゲン化合物又はハロゲン化金属微粒子を添加して行うことが好ましい。
分散剤とハロゲン化合物の添加のタイミングは、還元剤の添加前でも添加後でもよく、金属イオンあるいはハロゲン化金属微粒子の添加前でも添加後でもよいが、単分散性のよりよい繊維状金属粒子を得るためには、核形成と成長を制御できるためか、ハロゲン化合物の添加を2段階以上に分けることが好ましい。
【0046】
分散剤を添加する段階は特に制限されない。金属ナノワイヤなどの繊維状金属粒子を調製する前に添加し、分散剤存在下で金属ナノワイヤなどの繊維状金属粒子を添加してもよいし、金属ナノワイヤなどの繊維状金属粒子調製後に分散状態の制御のために添加しても構わない。
分散剤としては、例えばアミノ基含有化合物、チオール基含有化合物、スルフィド基含有化合物、アミノ酸又はその誘導体、ペプチド化合物、多糖類、多糖類由来の天然高分子、合成高分子、又はこれらに由来するゲル等の高分子化合物類、などが挙げられる。これらのうち分散剤として用いられる各種高分子化合物類は、後述するポリマーに包含される化合物である。
【0047】
分散剤として好適に用いられるポリマーとしては、例えば保護コロイド性のあるポリマーであるゼラチン、ポリビニルアルコール、メチルセルロース、ヒドロキシプルピルセルロース、ポリアルキレンアミン、ポリアクリル酸の部分アルキルエステル、ポリビニルピロリドン、ポリビニルピロリドン構造を含む共重合体、アミノ基やチオール基を有するポリアクリル酸、等の親水性基を有するポリマーが好ましく挙げられる。
分散剤として用いるポリマーはゲル浸透クロマトグラフィー(Gel Permeation Chromatography;GPC)により測定した重量平均分子量(weight average molecular weight;Mw)が、3000以上300000以下であることが好ましく、5000以上100000以下であることがより好ましい。
分散剤として使用可能な化合物の構造については、例えば「顔料の事典」(伊藤征司郎編、株式会社朝倉書院発行、2000年)の記載を参照できる。
使用する分散剤の種類によって得られる金属ナノワイヤの形状を変化させることができる。
【0048】
ハロゲン化合物は、臭素、塩素、ヨウ素を含有する化合物であれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、臭化ナトリウム、塩化ナトリウム、ヨウ化ナトリウム、ヨウ化カリウム、臭化カリウム、塩化カリウム、ヨウ化カリウム等のアルカリハライドや下記の分散添加剤と併用できる化合物が好ましい。
ハロゲン化合物は、分散添加剤として機能するものがありうるが、同様に好ましく用いることができる。
ハロゲン化合物の代替としてハロゲン化銀微粒子を使用してもよいし、ハロゲン化合物とハロゲン化銀微粒子を共に使用してもよい。
【0049】
また、分散剤の機能とハロゲン化合物の機能との双方を有する単一の物質を用いてもよい。即ち、分散剤としての機能を有するハロゲン化合物を用いることで、1つの化合物で、分散剤とハロゲン化合物の双方の機能を発現する。
分散剤の機能を有するハロゲン化合物としては、例えば、アミノ基と臭化物イオンを含むヘキサデシル−トリメチルアンモニウムブロミド、アミノ基と塩化物イオンを含むヘキサデシル−トリメチルアンモニウムクロライド、アミノ基と臭化物イオン又は塩化物イオンを含むドデシルトリメチルアンモニウムブロミド、ドデシルトリメチルアンモニウムクロリド、ステアリルトリメチルアンモニウムブロミド、ステアリルトリメチルアンモニウムクロリド、デシルトリメチルアンモニウムブロミド、デシルトリメチルアンモニウムクロリド、ジメチルジステアリルアンモニウムブロミド、ジメチルジステアリルアンモニウムクロリド、ジラウリルジメチルアンモニウムブロミド、ジラウリルジメチルアンモニウムクロリド、ジメチルジパルミチルアンモニウムブロミド、ジメチルジパルミチルアンモニウムクロリド、などが挙げられる。
金属ナノワイヤの製造方法においては、金属ナノワイヤ形成後に脱塩処理を行うことが好ましい。金属ナノワイヤ形成後の脱塩処理は、限外ろ過、透析、ゲルろ過、デカンテーション、遠心分離などの手法により行うことができる。
【0050】
金属ナノワイヤなどの繊維状金属粒子は、アルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオン、ハロゲン化物イオン等の無機イオンをなるべく含まないことが好ましい。金属ナノワイヤを水性溶媒に分散させてなる分散物の電気伝導度は1mS/cm以下が好ましく、0.1mS/cm以下がより好ましく、0.05mS/cm以下が更に好ましい。
金属ナノワイヤなどの繊維状金属粒子の水性分散物の25℃における粘度は、0.5mPa・s〜100mPa・sが好ましく、1mPa・s〜50mPa・sがより好ましい。
電気伝導度及び粘度は、水性分散物における金属ナノワイヤなどの繊維状金属粒子の濃度を0.45質量%として測定される。水性分散物における金属ナノワイヤなどの繊維状金属粒子の濃度が上記濃度より高い場合には、水性分散物を蒸留水にて希釈して測定する。
【0051】
繊維状金属粒子含有層の平均膜厚は、通常、0.005μm〜2μmの範囲で選択される。例えば、平均膜厚を0.001μm以上0.5μm以下とすることで、十分な耐久性、膜強度が得られる。特に、平均膜厚を0.01μm〜0.1μmの範囲とすれば、製造上の許容範囲が確保され得るので好ましい。
本発明は、後述の条件(i)または(ii)の少なくとも一つを満たす繊維状金属粒子含有層とすることで、温暖性と透明性とを高く維持しうるとともに、ゾルゲル硬化物に起因して、金属ナノワイヤなどの繊維状金属粒子が安定に固定化されるとともに、高い強度と耐久性とを実現し得ることが好ましい。例えば、繊維状金属粒子含有層の膜厚を0.005μm〜0.5μmという薄層としても、実用上問題のない耐摩耗性、耐熱性、耐湿熱性及び耐屈曲性を有する繊維状金属粒子含有層を得ることができる。このため、本発明の一実施形態である窓用断熱フィルムは種々の用途に好適に使用される。薄層を必要とする態様では、膜厚は、0.005μm〜0.5μmとしてもよく、0.007μm〜0.3μmがさらに好ましく、0.008μm〜0.2μmがより好まく、0.01μm〜0.1μmが最も好ましい。このように繊維状金属粒子含有層をより薄層とすることで、繊維状金属粒子含有層の透明性がさらに向上し得る。
【0052】
繊維状金属粒子含有層の平均膜厚は、電子顕微鏡による繊維状金属粒子含有層断面の直接観察により、繊維状金属粒子含有層の膜厚を5点測定し、その算術平均値として算出される。なお、繊維状金属粒子含有層の膜厚は例えば、触針式表面形状測定器(Dektak(登録商標)150、Bruker AXS製)を用いて、繊維状金属粒子含有層を形成した部分と繊維状金属粒子含有層を除去した部分の段差として測定することもできる。しかし、繊維状金属粒子含有層を除去する際に支持体の一部まで除去してしまう恐れがあることがあり、また形成される繊維状金属粒子含有層が薄膜なため誤差が生じやすい。そのため、後述の実施例においては電子顕微鏡を用いて測定される平均膜厚を記載している。
【0053】
繊維状金属粒子含有層は、優れた耐摩耗性を有することが好ましい。この耐摩耗性は、例えば、特開2013−225461号公報の[0067]の(1)または(2)の方法により評価することができる。
【0054】
(マトリックス)
繊維状金属粒子含有層は、マトリックスを含んでもよい。ここで「マトリックス」は、金属ナノワイヤなどの繊維状金属粒子を含んで層を形成する物質の総称である。マトリックスを含むことにより、繊維状金属粒子含有層における金属ナノワイヤなどの繊維状金属粒子の分散が安定に維持される上、支持体表面に繊維状金属粒子含有層を、接着層を介することなく形成した場合においても支持体と繊維状金属粒子含有層との強固な接着が確保される傾向がある。
【0055】
−ゾルゲル硬化物−
繊維状金属粒子含有層は、マトリックスとしての機能も有するゾルゲル硬化物を含むことが好ましく、Si、Ti、ZrおよびAlからなる群より選ばれる元素(b)のアルコキシド化合物を加水分解及び重縮合して得られるゾルゲル硬化物を含むことがより好ましい。
繊維状金属粒子含有層は、金属元素(a)を含み且つ平均短径が150nm以下である金属ナノワイヤ、並びに、Si、Ti、ZrおよびAlからなる群より選ばれる元素(b)のアルコキシド化合物を加水分解及び重縮合して得られるゾルゲル硬化物を少なくとも含むことがより好ましい。
【0056】
繊維状金属粒子含有層は、下記条件(i)または(ii)の少なくとも一つを満たすことが好ましく、下記条件(ii)を少なくとも満たすことがより好ましく、下記条件(i)および(ii)を満たすことが特に好ましい。
(i)繊維状金属粒子含有層に含まれる元素(b)の物質量と、繊維状金属粒子含有層に含まれる金属元素(a)の物質量との比〔(元素(b)のモル数)/(金属元素(a)のモル数)〕が0.10/1〜22/1の範囲にある。
(ii)繊維状金属粒子含有層においてゾルゲル硬化物の形成に使用されるアルコキシド化合物の質量と、繊維状金属粒子含有層に含まれる金属ナノワイヤの質量の比〔(アルコキシド化合物の含有量)/(金属ナノワイヤの含有量)〕が0.25/1〜30/1の範囲にある。
【0057】
繊維状金属粒子含有層は、前述の金属ナノワイヤの使用量に対する特定アルコキシド化合物の使用量の比率、即ち、〔(特定アルコキシド化合物の質量)/(金属ナノワイヤの質量)〕の比が0.25/1〜30/1の範囲で形成されることが好ましい。上記質量比が0.25/1以上である場合、温暖性と透明性が優れると同時に、耐摩耗性、耐熱性、耐湿熱性および耐屈曲性の全てが優れた繊維状金属粒子含有層となり得る。上記質量比が30/1以下である場合、耐屈曲性が優れた繊維状金属粒子含有層となり得る。
上記質量比は、より好ましくは0.5/1〜25/1の範囲、更に好ましくは1/1〜20/1、最も好ましくは2/1〜15/1の範囲である。質量比を好ましい範囲とすることで、得られた繊維状金属粒子含有層は、高い温暖性と高い可視光透過率と、を有すると共に、耐摩耗性、耐熱性および耐湿熱性に優れ、かつ耐屈曲性に優れることになり、好適な物性を有する窓用断熱フィルムを安定的に得ることができる。
【0058】
最適な態様として、繊維状金属粒子含有層において、元素(b)の物質量と、金属元素(a)の物質量との比〔(元素(b)のモル数)/(金属元素(a)のモル数)〕が0.10/1〜22/1の範囲にある態様が挙げられる。モル比は、より好ましくは0.20/1〜18/1、特に好ましくは0.45/1〜15/1、より特に好ましくは0.90/1〜11/1の範囲であり、さらにより特に好ましくは1.5/1〜10/1の範囲である。
モル比が上記範囲にあると、繊維状金属粒子含有層は、温暖性と透明性とが両立し、且つ、物性の観点からは、耐摩耗性、耐熱性、耐湿熱性に優れ、且つ、耐屈曲性にも優れたものとなり得る。
繊維状金属粒子含有層の形成時に用いられた特定アルコキシド化合物は、加水分解及び重縮合により消尽され、繊維状金属粒子含有層中にはアルコキシド化合物は実質的に存在しないが、得られた繊維状金属粒子含有層には、特定アルコキシド化合物由来のSi等である元素(b)が含まれる。含有するSi等の元素(b)と金属ナノワイヤ由来の金属元素(a)との物質量比を上記範囲に調整することで、優れた特性を有する繊維状金属粒子含有層が形成される。
【0059】
繊維状金属粒子含有層における特定テトラアルコキシド化合物由来のSi、Ti、ZrおよびAlからなる群より選ばれる元素(b)成分、及び、金属ナノワイヤ由来の金属元素(a)成分は以下の方法で解析可能である。
即ち、繊維状金属粒子含有層をX線光電子分析(Electron Spectroscopy FOR Chemical Analysis(ESCA)に付することで、物質量比、すなわち、(元素(b)成分モル数)/(金属元素(a)成分モル数)の値を算出しうる。しかし、ESCAによる分析方法では元素によって測定感度が異なるために、得られた値は必ずしも直ちに元素成分のモル比を示すものではない。このため、予め元素成分のモル比が既知の繊維状金属粒子含有層を用いて検量線を作成し、その検量線から実際の繊維状金属粒子含有層の物質量比を計算することが可能となる。本明細書における、各元素のモル比は、上記方法に算出した値を用いている。
【0060】
窓用断熱フィルムは、高い温暖性と高い透明性を有すると共に、耐摩耗性、耐熱性及び耐湿熱性に優れ、かつ耐屈曲性に優れ得るという効果を奏することが好ましい。そのような効果を奏する理由は必ずしも明らかではないが、以下のような理由によるものと推定される。
即ち、繊維状金属粒子含有層が金属ナノワイヤを含み、かつ特定アルコキシド化合物を加水分解及び重縮合して得られるゾルゲル硬化物であるマトリックスを含んでいることにより、マトリックスとして一般的な有機高分子樹脂(例えば、アクリル樹脂、ビニル重合樹脂など)を含む繊維状金属粒子含有層の場合に比べて、繊維状金属粒子含有層に含まれるマトリックスの割合が少ない範囲であっても、空隙が少なく、且つ、架橋密度の高い緻密な繊維状金属粒子含有層が形成されるため、耐摩耗性、耐熱性及び耐湿熱性に優れる窓用断熱フィルムが得られる。そして、特定アルコキシド化合物由来の元素(b)/金属ナノワイヤ由来の金属元素(a)の含有モル比が0.25/1〜30/1の範囲とされること、及び、0.25/1〜30/1の範囲とされていることと関連して、特定アルコキシド化合物/金属ナノワイヤの質量比が0.25/1〜30/1の範囲とされていることのいずれかを満たすことで、上記の作用がバランスよく高まり、温暖性と透明性が維持されつつ、耐摩耗性、耐熱性及び耐湿熱性に優れると同時に、耐屈曲性にも優れるという効果がもたらされるものと推定している。
【0061】
−その他マトリックス−
繊維状金属粒子含有層に含まれる前述のゾルゲル硬化物はマトリックスとしての機能も有するが、繊維状金属粒子含有層はさらにゾルゲル硬化物以外のマトリックス(以下、「その他マトリックス」という。)を含んでもよい。その他マトリックスを含む繊維状金属粒子含有層は、後述の液状組成物中に、その他マトリックスを形成し得る材料を含有させておき、これを支持体上に(例えば、塗布により)付与して形成すればよい。
その他マトリックスは、有機高分子ポリマーのような非感光性のものであっても、フォトレジスト組成物のような感光性のものであっても良い。
繊維状金属粒子含有層がその他マトリックスを含む場合、その含有量は、繊維状金属粒子含有層に含まれる特定アルコキシド化合物に由来するゾルゲル硬化物の含有量に対して、0.10質量%〜20質量%、好ましくは0.15質量%〜10質量%、更に好ましくは0.20質量%〜5質量%の範囲から選ばれることが温暖性、透明性、膜強度、耐摩耗性および耐屈曲性の優れる繊維状金属粒子含有層が得られるので有利である。
その他マトリックスは、前述のとおり、非感光性のものであっても、感光性のものであっても良い。非感光性マトリックスが好ましい。
【0062】
−−有機高分子ポリマー−−
好適な非感光性マトリックスには、有機高分子ポリマーが含まれる。有機高分子ポリマーの具体例には、ポリメタクリル酸、ポリメタクリレート(例えば、ポリ(メタクリル酸メチル))、ポリアクリレート、およびポリアクリロニトリルなどのポリアクリル酸、ポリビニルアルコール、ポリエステル(例えば、ポリエチレンテレフタレート(polyethylene terephthalate;PET)、ポリエステルナフタレート、およびポリカーボネート)、フェノールまたはクレゾール−ホルムアルデヒド(Novolacs(登録商標))、ポリスチレン、ポリビニルトルエン、ポリビニルキシレン、ポリイミド、ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド、ポリスルフィド、ポリスルホン、ポリフェニレン、およびポリフェニルエーテルなどの高芳香性を有する高分子、ポリウレタン、エポキシ、ポリオレフィン(例えば、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン、および環状オレフィン)、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体、セルロース、シリコーンおよびその他のシリコン含有高分子(例えば、ポリシルセスキオキサンおよびポリシラン)、ポリ塩化ビニル、ポリビニルアセテート、ポリノルボルネン、合成ゴム(例えば、ethylene propylene rubber(EPR)、styrene−butadiene rubber(SBR)、ethylene propylene diene monomer rubber(EPDM)、およびフッ化炭素系重合体(例えば、ポリビニリデンフルオライド、ポリテトラフルオロエチレン、またはポリヘキサフルオロプロピレン)、フルオロ−オレフィンの共重合体、および炭化水素オレフィン(例えば、旭硝子株式会社製「LUMIFLON」(登録商標))、および非晶質フルオロカーボン重合体または共重合体(例えば、旭硝子株式会社製の「CYTOP」(登録商標)またはデュポン社製の「Teflon」(登録商標)AF)が挙げられるがそれだけに限定されない。
【0063】
−−架橋剤−−
架橋剤は、フリーラジカル又は酸及び熱により化学結合を形成し、繊維状金属粒子含有層を硬化させる化合物で、例えばメチロール基、アルコキシメチル基、アシロキシメチル基から選ばれる少なくとも1つの基で置換されたメラミン系化合物、グアナミン系化合物、グリコールウリル系化合物、ウレア系化合物、フェノール系化合物もしくはフェノールのエーテル化合物、エポキシ系化合物、オキセタン系化合物、チオエポキシ系化合物、イソシアネート系化合物、又はアジド系化合物、メタクリロイル基又はアクリロイル基などを含むエチレン性不飽和基を有する化合物、などが挙げられる。これらの中でも、膜物性、耐熱性、溶剤耐性の点でエポキシ系化合物、オキセタン系化合物、エチレン性不飽和基を有する化合物が特に好ましい。
また、オキセタン樹脂は、1種単独で又はエポキシ樹脂と混合して使用することができる。特にエポキシ樹脂との併用で用いた場合には反応性が高く、膜物性を向上させる観点から好ましい。
繊維状金属粒子含有層中における架橋剤の含有量は、前述の金属ナノワイヤなどの繊維状金属粒子を含む光重合性組成物の固形分の総質量を100質量部としたとき、1質量部〜250質量部が好ましく、3質量部〜200質量部がより好ましい。
【0064】
−−分散剤−−
分散剤は、光重合性組成物中における前述の金属ナノワイヤなどの繊維状金属粒子が凝集することを防止しつつ分散させるために用いられる。分散剤としては、金属ナノワイヤを分散させることができれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。例えば、顔料分散剤として市販されている分散剤を利用でき、特に金属ナノワイヤに吸着する性質を持つ高分子分散剤が好ましい。このような高分子分散剤としては、例えばポリビニルピロリドン、BYKシリーズ(登録商標、ビックケミー社製)、ソルスパースシリーズ(登録商標、日本ルーブリゾール社製など)、アジスパーシリーズ(登録商標、味の素株式会社製)などが挙げられる。
繊維状金属粒子含有層中における分散剤の含有量は、特開2013−225461号公報の[0086]〜[0095]に記載のバインダーを用いる場合、のバインダー100質量部に対し、0.1質量部〜50質量部が好ましく、0.5質量部〜40質量部がより好ましく、1質量部〜30質量部が特に好ましい。
バインダーに対する分散剤の含有量を0.1質量部以上とすることで、分散液中での金属ナノワイヤなどの繊維状金属粒子の凝集が効果的に抑制され、50質量部以下とすることで、塗布工程において安定な液膜が形成され、塗布ムラの発生が抑制されるため好ましい。
【0065】
−−溶媒−−
溶媒は、前述の金属ナノワイヤなどの繊維状金属粒子並びに特定アルコキシド化合物と、光重合性組成物とを含む組成物を支持体の表面、または接着層付き支持体の接着層の表面に膜状に形成するための塗布液とするために使用される成分であり、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、3−エトキシプロピオン酸エチル、3−メトキシプロピオン酸メチル、乳酸エチル、3−メトキシブタノール、水、1−メトキシ−2−プロパノール、イソプロピルアセテート、乳酸メチル、N−メチルピロリドン、γ−ブチロラクトン、プロピレンカーボネート、などが挙げられる。この溶媒は、前述の金属ナノワイヤの分散液の溶媒の少なくとも一部が兼ねていてもよい。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
このような溶媒を含む塗布液の固形分濃度は、0.1質量%〜20質量%の範囲であることが好ましい。
【0066】
−−金属腐食防止剤−−
繊維状金属粒子含有層は金属ナノワイヤなどの繊維状金属粒子の金属腐食防止剤を含有することが好ましい。このような金属腐食防止剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えばチオール類、アゾール類などが好適である。
金属腐食防止剤を含有させることで、防錆効果を発揮させることができ、繊維状金属粒子含有層の経時による温暖性及び透明性の低下を抑制することができる。金属腐食防止剤は繊維状金属粒子含有層形成用組成物中に、適した溶媒で溶解した状態、又は粉末で添加するか、後述する繊維状金属粒子含有層用塗布液による繊維状金属粒子含有層を作製後に、これを金属腐食防止剤浴に浸すことで付与することができる。
金属腐食防止剤を添加する場合、繊維状金属粒子含有層中におけるその含有量は、金属ナノワイヤなどの繊維状金属粒子の含有量に対して0.5質量%〜10質量%であることが好ましい。
【0067】
その他マトリックスとしては、前述の金属ナノワイヤなどの繊維状金属粒子の製造の際に使用された分散剤としての高分子化合物を、マトリックスを構成する成分の少なくとも一部として使用することが可能である。
【0068】
−−他の導電性材料−−
繊維状金属粒子含有層には、金属ナノワイヤなどの繊維状金属粒子に加え、他の導電性材料、例えば、導電性粒子などを本発明の効果を損なわない限りにおいて併用しうる。効果の観点からは、金属ナノワイヤなどの繊維状金属粒子(好ましくは、アスペクト比が10以上の金属ナノワイヤ)の含有率は、金属ナノワイヤなどの繊維状金属粒子を含む導電性材料の総量に対して体積基準で、50%以上が好ましく、60%以上がより好ましく、75%以上が特に好ましい。金属ナノワイヤなどの繊維状金属粒子の含有率を50%とすることにより、金属ナノワイヤなどの繊維状金属粒子同士の密なネットワークが形成され、高い導電性を有する繊維状金属粒子含有層を容易に得ることができる。
また、金属ナノワイヤなどの繊維状金属粒子以外の形状の導電性粒子は、繊維状金属粒子含有層における導電性に大きく寄与しない上に可視光領域に吸収を持つ場合がある。特に導電性粒子が金属であって、球形などのプラズモン吸収が強い形状ではないことが、繊維状金属粒子含有層の透明度が悪化しないようにする観点から好ましい。
【0069】
ここで、金属ナノワイヤなどの繊維状金属粒子の比率は、下記のように求めることができる。例えば、繊維状金属粒子が銀ナノワイヤであり、導電性粒子が銀粒子である場合には、銀ナノワイヤ分散液をろ過して、銀ナノワイヤと、それ以外の導電性粒子とを分離し、誘導結合プラズマ(Inductively Coupled Plasma;ICP)発光分析装置を用いてろ紙に残っている銀の量と、ろ紙を透過した銀の量とを各々測定し、金属ナノワイヤの比率を算出することができる。金属ナノワイヤなどの繊維状金属粒子のアスペクト比は、ろ紙に残っている金属ナノワイヤなどの繊維状金属粒子をTEMで観察し、300個の金属ナノワイヤなどの繊維状金属粒子の短径及び長径をそれぞれ測定することにより算出される。
金属ナノワイヤなどの繊維状金属粒子の平均短径及び平均長径の測定方法は既述の通りである。
【0070】
(繊維状金属粒子含有層の製造方法)
繊維状金属粒子含有層の製造方法としては特に制限はない。好ましい実施態様において、繊維状金属粒子含有層を支持体上に形成する方法としては、前述の平均短径が150nm以下の金属ナノワイヤと前述の特定アルコキシド化合物とを、その質量比(すなわち、(特定アルコキシド化合物の含有量)/(金属ナノワイヤの含有量))が0.25/1〜30/1の範囲となるように、或いは特定アルコキシド化合物に由来する元素(b)と金属ナノワイヤに由来する金属元素(a)との含有モル比が0.10/1〜22/1の範囲となるように、含む液状組成物(以下、「ゾルゲル塗布液」ともいう。)を、支持体上に塗布して液膜を形成すること、及び、この液膜中で特定アルコキシド化合物の加水分解と重縮合の反応(以下、この加水分解と重縮合の反応を「ゾルゲル反応」ともいう。)を起こさせることにより繊維状金属粒子含有層を形成すること、を少なくとも含む方法により製造することができる。この方法は、更に必要に応じて、液状組成物中に溶媒として含まれ得る水を加熱により蒸発させること(乾燥)を含んでもよく含まなくてもよい。
ある実施態様では、ゾルゲル塗布液は、金属ナノワイヤの水分散液を調製し、これと特定アルコキシド化合物とを混合して調製されてもよい。ある実施態様では、特定アルコキシド化合物を含む水溶液を調製し、この水溶液を加熱して特定アルコキシド化合物の少なくとも一部を加水分解および重縮合させてゾル状態とし、このゾル状態にある水溶液と金属ナノワイヤの水分散液とを混合してゾルゲル塗布液を調製してもよい。
ゾルゲル反応を促進させるために、酸性触媒または塩基性触媒を併用することが反応効率を高められるので、実用上好ましい。
繊維状金属粒子含有層用の分散液調製法としては、後述の実施例に記載した分散液調製法1−Aに代表される態様と、分散液調製法1−Bに代表される態様の2つの好ましい態様があり、より細い(短径が短い)金属ナノワイヤなどの繊維状金属粒子が合成し易いという点において、分散液調製法1−Aに代表される態様がより好ましい。
【0071】
−溶剤−
上記の液状組成物は、必要に応じて、水及び/または有機溶剤を含有してもよい。有機溶剤を含有することにより支持体上に、より均一な液膜を形成することができる。
このような有機溶剤としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン等のケトン系溶剤、メタノール、エタノール、2−プロパノール、1−プロパノール、1−ブタノール、tert−ブタノール等のアルコール系溶剤、クロロホルム、塩化メチレン等の塩素系溶剤、ベンゼン、トルエン等の芳香族系溶剤、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソプロピルなどのエステル系溶剤、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル系溶剤、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル等のグリコールエーテル系溶剤、などが挙げられる。
液状組成物が有機溶剤を含む場合、液状組成物の総質量に対して50質量%以下の範囲が好ましく、更に30質量%以下の範囲がより好ましい。
【0072】
支持体上に形成されたゾルゲル塗布液の塗布液膜中においては、特定アルコキシド化合物の加水分解及び縮合の反応が起こるが、その反応を促進させるために、上記塗布液膜を加熱、乾燥することが好ましい。ゾルゲル反応を促進させるための加熱温度は、30℃〜200℃の範囲が適しており、50℃〜180℃の範囲がより好ましい。加熱、乾燥時間は10秒間〜300分間が好ましく、1分間〜120分間がより好ましい。
【0073】
−繊維状金属粒子含有層の形成方法−
前述の繊維状金属粒子含有層を支持体上に形成する方法には特に制限はなく、一般的な塗布方法で行うことができ、目的に応じて適宜選択することができる。例えばロールコート法、バーコート法、ディップコーティング法、スピンコーティング法、キャスティング法、ダイコート法、ブレードコート法、グラビアコート法、カーテンコート法、スプレーコート法、ドクターコート法、などが挙げられる。
【0074】
<中間層>
窓用断熱フィルムは、支持体と繊維状金属粒子含有層との間に少なくとも一層の中間層を有することが好ましい。支持体と繊維状金属粒子含有層との間に中間層を設けることにより、支持体と繊維状金属粒子含有層との密着性、繊維状金属粒子含有層の可視光透過率、繊維状金属粒子含有層のヘイズ、及び繊維状金属粒子含有層の膜強度のうちの少なくとも一つの向上を図り得る。
中間層としては、支持体と繊維状金属粒子含有層との接着力を向上させるための接着層、繊維状金属粒子含有層に含まれる成分との相互作用により機能性を向上させる機能性層などが挙げられ、目的に応じて適宜設けられる。
【0075】
中間層を更に有する窓用断熱フィルムの構成について、図面を参照しながら説明する。
図2においては、支持体上に中間層(接着層31)を有してなる接着層付きの支持体101上に繊維状金属粒子含有層20が設けられている。支持体10と繊維状金属粒子含有層20との間に、支持体10との親和性に優れた第1の接着層と、繊維状金属粒子含有層20との親和性に優れた第2の接着層とを含む中間層を備えることも好ましい。
図2以外の構成の中間層を有していてもよく、例えば、支持体10と繊維状金属粒子含有層20との間に、第1の実施形態と同様の第1の接着層及び第2の接着層に加え、繊維状金属粒子含有層20に隣接して機能性層を備えて構成される中間層を有することも好ましい(不図示)。
【0076】
中間層に使用される素材は特に限定されず、上記の特性のいずれか少なくとも一つを向上させるものであればよい。
例えば、中間層として接着層を備える場合、接着層には、接着剤に使用されるポリマー、シランカップリング剤、チタンカップリング剤、Siのアルコキシド化合物を加水分解および重縮合させて得られるゾルゲル膜などから選ばれる素材が含まれる。
繊維状金属粒子含有層と接する中間層(即ち、中間層が単層の場合には、この中間層が、そして中間層が複数のサブ中間層を含む場合には、そのうちの繊維状金属粒子含有層と接するサブ中間層)が、この繊維状金属粒子含有層20に含まれる金属ナノワイヤなどの繊維状金属粒子と静電的に相互作用することのできる官能基(以下「相互作用可能な官能基」という)を有する化合物を含む機能性層であることが、可視光透過率、ヘイズ、及び膜強度に優れた繊維状金属粒子含有層が得られることから好ましい。このような中間層を有する場合においては、繊維状金属粒子含有層20が金属ナノワイヤなどの繊維状金属粒子と有機高分子とを含むものであっても、膜強度に優れた繊維状金属粒子含有層が得られる。
【0077】
この作用は明確ではないが、繊維状金属粒子含有層20に含まれる金属ナノワイヤなどの繊維状金属粒子と相互作用可能な官能基を有する化合物を含む中間層を設けることで、繊維状金属粒子含有層に含まれる金属ナノワイヤなどの繊維状金属粒子と中間層に含まれる上記の官能基を有する化合物との相互作用により、繊維状金属粒子含有層における繊維状金属粒子の凝集が抑制され、均一分散性が向上し、繊維状金属粒子含有層中における繊維状金属粒子の凝集に起因する透明性やヘイズの低下が抑制されるとともに、密着性に起因して膜強度の向上が達成されるものと考えられる。このような相互作用性を発現しうる中間層を、以下、機能性層と称することがある。機能性層は、金属ナノワイヤなどの繊維状金属粒子との相互作用によりその効果を発揮することから、繊維状金属粒子含有層が金属ナノワイヤなどの繊維状金属粒子を含んでいれば、繊維状金属粒子含有層が含むマトリックスに依存せずに、その効果を発現する。
【0078】
上記の金属ナノワイヤなどの繊維状金属粒子と相互作用可能な官能基としては、例えば金属ナノワイヤなどの繊維状金属粒子が銀ナノワイヤの場合には、アミド基、アミノ基、メルカプト基、カルボン酸基、スルホン酸基、リン酸基、ホスホン酸基又はそれらの塩が挙げられ、これらからなる群より選ばれる一つまたは複数の官能基を化合物が有することがより好ましい。この官能基は、アミノ基、メルカプト基、リン酸基、ホスホン酸基又はそれらの塩であることがより好ましく、更に好ましくはアミノ基である。
上記のような官能基を有する化合物としては、例えばウレイドプロピルトリエトキシシラン、ポリアクリルアミド、ポリメタクリルアミドなどのようなアミド基を有する化合物、例えばN−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、ビス(ヘキサメチレン)トリアミン、N,N’−ビス(3−アミノプロピル)−1,4−ブタンジアミン四塩酸塩、スペルミン、ジエチレントリアミン、メタ−キシレンジアミン、メタフェニレンジアミンなどのようなアミノ基を有する化合物、例えば3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、2−メルカプトベンゾチアゾール、トルエン−3,4−ジチオールなどのようなメルカプト基を有する化合物、例えばポリ(パラ−スチレンスルホン酸ナトリウム)、ポリ(2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸)などのようなスルホン酸またはその塩の基を有する化合物、例えばポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリアスパラギン酸、テレフタル酸、ケイ皮酸、フマル酸、コハク酸などのようなカルボン酸基を有する化合物、例えばホスマーPE、ホスマーCL、ホスマーM、ホスマーMH(商品名、ユニケミカル株式会社製)、およびそれらの重合体、ポリホスマーM−101、ポリホスマーPE−201、ポリホスマーMH−301(商品名、DAP株式会社製)などのようなリン酸基を有する化合物、例えばフェニルホスホン酸、デシルホスホン酸、メチレンジホスホン酸、ビニルホスホン酸、アリルホスホン酸などのようなホスホン酸基を有する化合物が挙げられる。
これらの官能基を選択することで、繊維状金属粒子含有層形成用の塗布液を塗布後、金属ナノワイヤなどの繊維状金属粒子と中間層に含まれる官能基とが相互作用を生じて、乾燥する際に金属ナノワイヤなどの繊維状金属粒子が凝集するのを抑制し、金属ナノワイヤなどの繊維状金属粒子が均一に分散された繊維状金属粒子含有層を形成することができる。
【0079】
中間層は、中間層を構成する化合物が溶解した、もしくは分散、乳化した液を支持体上に塗布し、乾燥することで形成することができ、塗布方法は一般的な方法を用いることができる。その方法としては特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えばロールコート法、バーコート法、ディップコーティング法、スピンコーティング法、キャスティング法、ダイコート法、ブレードコート法、グラビアコート法、カーテンコート法、スプレーコート法、ドクターコート法、などが挙げられる。
【0080】
<保護層>
窓用断熱フィルムは、繊維状金属粒子含有層(図1中の符号20)の上に保護層(不図示)を有していてもよい。保護層としては特に制限は無いが、優れた耐摩耗性を有することが好ましい。
【0081】
<近赤外遮蔽材料>
窓用断熱フィルムは、さらに近赤外遮蔽材料を用いることが、繊維状金属粒子含有層に近赤外遮蔽材料を併用することで排気ガス暴露時の温暖性や黄変も改善される観点から好ましい。排気ガス暴露時の温暖性や黄変が改善されるメカニズムは、いかなる理論に拘泥するものではないが、太陽光は近赤外光を多く含んでおり、この近赤外光を繊維状金属粒子が吸収することで劣化する過程があり、それを近赤外遮蔽材料がよく抑制した、と考えている。
なお、近赤外遮蔽材料を用いることで、必要に応じて窓用断熱フィルムの遮蔽係数を下げ、太陽光の流入熱量を下げることもできる。
ただし、窓用断熱フィルムを電気自動車に用いる場合では、窓用断熱フィルムに遮熱機能がないことが有利である。電気自動車では夏場の冷房よりも冬場の暖房の方が燃費を下げる要因として大きく、むしろ近赤外の透過が望まれているためである。
【0082】
近赤外遮蔽材料としては、平板状金属粒子(例えば、銀ナノディスク)、有機多層膜、球状の金属酸化物粒子(例えば、スズドープ酸化インジウム(Indium Tin Oxide;ITO)粒子、アンチモンドープ酸化スズ(Antimony Tin Oxide;ATO)粒子、セシウムドープ酸化タングステン(cesium−doped tungsten oxide;CWO)粒子)などを挙げることができる。
また、近赤外遮蔽材料は、近赤外遮蔽層を単独で形成することが好ましい。
【0083】
(平板状金属粒子を用いた近赤外遮蔽層)
熱線遮蔽性(日射熱取得率)の観点からは、吸収した光の屋内への再放射(吸収した日射エネルギーの約1/3量)がある熱線吸収型より再放射がない熱線反射型が望ましい。近赤外光の反射をする観点からは、近赤外遮蔽材料として平板状金属粒子を用いることが好ましい。このような平板状金属粒子を用いた近赤外遮蔽層は、特開2013−228694号公報の[0019]〜[0046]、特開2013−083974号公報、特開2013−080222号公報、特開2013−080221号公報、特開2013−077007号公報、特開2013−068945号公報などに記載の近赤外遮蔽材料を用いることができ、これらの公報の記載は本明細書に組み込まれる。
具体的には、近赤外遮蔽層は、少なくとも1種の金属粒子を含有する層であり、金属粒子が、六角形状乃至円形状の平板状金属粒子を60個数%以上有し、六角形状乃至円形状の平板状金属粒子の主平面が、近赤外遮蔽層の一方の表面に対して平均0°〜±30°の範囲で面配向していることが好ましい。
【0084】
金属粒子としては、六角形状乃至円形状の平板状金属粒子を60個数%以上有し、六角形状乃至円形状の平板状金属粒子の主平面が、近赤外遮蔽層の一方の表面に対して平均0°〜±30°の範囲で面配向していれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
金属粒子の材料としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、熱線(近赤外線)の反射率が高い点から、銀、金、アルミニウム、銅、ロジウム、ニッケル、白金などが好ましい。
【0085】
−平板状金属粒子−
平板状金属粒子としては、2つの主平面からなる粒子であれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、六角形状、円形状、三角形状などが挙げられる。これらの中でも、可視光透過率が高い点で、六角形状以上の多角形状〜円形状であることがより好ましく、六角形状または円形状であることが特に好ましい。
平板状金属粒子の材料としては、特に制限はなく、金属粒子と同じものを目的に応じて適宜選択することができる。平板状金属粒子は、少なくとも銀を含むことが好ましい。
【0086】
近赤外遮蔽層の一方の表面(支持体表面)に対して平板状金属粒子の主平面が面配向しているかどうかの評価としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、適当な断面切片を作製し、この切片における近赤外遮蔽層(支持体表面)及び平板状金属粒子を観察して評価する方法であってもよい。具体的には、近赤外遮蔽層を、ミクロトーム、集束イオンビーム(Focused Ion Beam;FIB)を用いて近赤外遮蔽層の断面サンプルまたは断面切片サンプルを作製し、これを、各種顕微鏡(例えば、電界放射型走査電子顕微鏡(Field Emission Scanning Electron Microscope;FE−SEM)等)を用いて観察して得た画像から評価する方法などが挙げられる。
【0087】
近赤外遮蔽層における平板状金属粒子を構成する金属のプラズモン共鳴波長λは、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、熱線反射性能を付与する点で、400nm〜2,500nmであることが好ましく、可視光透過率を付与する点から、700nm〜2,500nmであることがより好ましい。
【0088】
−近赤外遮蔽層の媒質−
近赤外遮蔽層における媒質としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。近赤外遮蔽層がポリマーを含むことが好ましく、透明ポリマーを含むことがより好ましい。ポリマーとしては、例えば、ポリビニルアセタール樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリアクリレート樹脂、ポリメチルメタクリレート樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、(飽和)ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ゼラチンやセルロース等の天然高分子等の高分子などが挙げられる。その中でも、本発明では、ポリマーの主ポリマーがポリビニルアルコール樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、(飽和)ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂であることが好ましく、ポリエステル樹脂およびポリウレタン樹脂であることが六角形状乃至円形状の平板状金属粒子の80個数%以上を近赤外遮蔽層の表面からd/2の範囲に存在させやすい観点からより好ましく、ポリエステル樹脂であることが本発明の熱線遮蔽材のこすり耐性をより改善する観点から特に好ましい。近赤外遮蔽層に含まれるポリマーの主ポリマーとは、近赤外遮蔽層に含まれるポリマーの50質量%以上を占めるポリマー成分のことを言う。
媒質の屈折率nは、1.4〜1.7であることが好ましい。
【0089】
−近赤外遮蔽層の厚み−
近赤外遮蔽層の厚みdは、金属粒子の厚みをaとし、平均粒子径(平均円相当径)をbとしたときに、a/2≦d≦2bを満たすことが好ましく、a≦d≦bを満たすことがより好ましい。
【0090】
−平板状金属粒子の合成方法−
平板状金属粒子の合成方法としては、六角形状〜円形状の平板状金属粒子を合成し得るものであれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、化学還元法、光化学還元法、電気化学還元法等の液相法などが挙げられる。これらの中でも、形状とサイズ制御性の点で、化学還元法、光化学還元法などの液相法が特に好ましい。六角形乃至三角形状の平板状金属粒子を合成後、例えば、硝酸、亜硫酸ナトリウム等の銀を溶解する溶解種によるエッチング処理、加熱によるエージング処理などを行うことにより、六角形乃至三角形状の平板状金属粒子の角を鈍らせて、六角形状乃至円形状の平板状金属粒子を得てもよい。
【0091】
−各種添加物の添加−
平板状金属粒子は平板状金属粒子を構成する銀などの金属の酸化を防止するために、メルカプトテトラゾール、アスコルビン酸等の酸化防止剤を吸着していてもよい。また、酸化防止を目的として、Ni等の酸化犠牲層が平板状金属粒子の表面に形成されていてもよい。また、酸素を遮断することを目的として、SiOなどの金属酸化物膜で被覆されていてもよい。
平板状金属粒子は、分散性付与を目的として、例えば、4級アンモニウム塩、アミン類等のN元素、S元素、及びP元素の少なくともいずれかを含む低分子分散剤、高分子分散剤などの分散剤を添加してもよい。
【0092】
(有機多層膜、球状の金属酸化物粒子)
有機多層膜を用いた近赤外遮蔽層としては、特開2012−256041号公報の[0039]〜[0044]に記載のものを好ましく用いることができ、この公報の記載は本明細書に組み込まれる。
球状の金属酸化物粒子を用いた近赤外遮蔽層としては、特開2013−37013号公報の[0038]〜[0039]および特開2013−228698号公報の[0060]〜[0061]に記載のものを好ましく用いることができ、この公報の記載は本明細書に組み込まれる。
【0093】
[窓用断熱材]
本発明の窓用断熱材の第1の態様は、本発明の窓用断熱フィルムと厚み0.5mm以上の基板とが、粘着材で貼合された、窓用断熱材である。
本発明の窓用断熱材の第2の態様は、厚み0.5mm以上の基板と、繊維状金属粒子を含む繊維状金属粒子含有層とを有し、繊維状金属粒子が銀または銀の合金を含み、繊維状金属粒子の平均短径が35nm以下かつ平均長径が5μm以上であり、繊維状金属粒子含有層の繊維状金属粒子の単位面積当たりの含有量が10mg/m以上である、窓用断熱材である。
なお、本発明の窓用断熱材の第2の態様を製造する方法としては、厚み0.5mm以上の基板の上に、直接、繊維状金属粒子を含む繊維状金属粒子含有層用の塗工液を塗工する方法などを挙げることができる。
【0094】
<特性>
本発明の窓用断熱材は、可視光透過性および温暖性が優れる。
本発明の窓用断熱材は、さらに紫外線透過率が20%以下であることが、後述の自動車用途で用いる場合に排気ガスに暴露されたときに時間と共に断熱性能が低下する問題や排気ガスに暴露されたときに時間と共に変色(黄変)する問題を改善する観点から好ましく、10%以下であることがより好ましく、5%以下であることが特に好ましく、2%以下であることがより特に好ましい。
本発明の窓用断熱材は、遮熱係数が0.8以上であることが好ましく、0.9以上であることがより好ましい。
【0095】
<構成>
本発明の窓用断熱材の構成について、説明する。
図4〜6に本発明の窓用断熱材の一例の断面を示す概略図を示した。
図4に記載の本発明の窓用断熱材111は、本発明の窓用断熱材の第1の態様を示したものであり、本発明の窓用断熱フィルム103と基板61とが、粘着材51で貼合された窓用断熱材である。本発明の窓用断熱フィルム103は、上述のとおり可撓性支持体10と繊維状金属粒子含有層20を少なくとも含む。
図5に記載の本発明の窓用断熱材111は、本発明の窓用断熱材の第2の態様を示したものであり、基板61と、繊維状金属粒子を含む繊維状金属粒子含有層20とを有する。このように、可撓性支持体を含まない窓用断熱材も、本発明の窓用断熱材に含まれる。
図6に記載の本発明の窓用断熱材111は、本発明の窓用断熱材の第1の態様の他の一例を示したものであり、可撓性支持体10の一方の面上に、接着層31を介して繊維状金属粒子含有層20が積層され、可撓性支持体10の他方の面上に近赤外遮蔽層41を有する本発明の窓用断熱フィルム103を含み、本発明の窓用断熱フィルム103(近赤外遮蔽層41側)と、基板61とが、粘着材51で貼合された窓用断熱材である。
繊維状金属粒子含有層20は、基板61が窓の一部(窓ガラス)である場合に、窓の屋内側(内側、室内側、日中における太陽光入射側とは反対側、図4〜6中のIN側)に配置されることが好ましい。
本発明の窓用断熱材は、繊維状金属粒子含有層20が、基板61の窓側の面とは反対側の面上に配置されることが好ましい。
本発明の窓用断熱材111は、可撓性支持体10の窓(基板61)側の面に粘着材51を有することが好ましい。本発明の窓用断熱材111は、基板61と粘着材51を貼り合わせられることが好ましい。
【0096】
<基板>
基板は、厚み0.5mm以上の基板であり、厚み1mm以上の基板であることが好ましく、基板の厚みに起因する熱伝導を抑制して温暖性を高める観点からは厚み2mm以上の基板であることがより好ましい。
基板は一般的には、板状またはシート状のものが使用される。
基板としては、白板ガラス、青板ガラス、シリカコート青板ガラス等の透明ガラス;ポリカーボネート、ポリエーテルスルホン、ポリエステル、アクリル樹脂、塩化ビニル樹脂、芳香族ポリアミド樹脂、ポリアミドイミド、ポリイミド等の合成樹脂;アルミニウム、銅、ニッケル、ステンレス等の金属;セラミック、半導体基板に使用されるシリコンウエハーなどを挙げることができる。これらの中でも、基板が、ガラスまたは樹脂板であることが好ましく、ガラスであることがより好ましい。
なお、基板として用いられるガラスは、表面が平滑であることが好ましく、フロートガラスであることが好ましい。
窓用断熱材は、基板の種類によって、窓用断熱ガラスや窓用断熱樹脂板などとして用いることができる。
【0097】
<粘着材>
本発明の窓用断熱材は、粘着材を含有することが好ましい。
【0098】
粘着材は、紫外線吸収剤を含有することが、以下の観点から好ましい。
特に窓用断熱フィルムや窓用断熱材を自動車用途で用いる場合は、繊維状金属粒子含有層を用いた窓用断熱フィルムや窓用断熱材は時間とともに断熱性能が低下し易いことがわかった。本発明者らが検討したところ、このように時間と共に断熱性能が低下することは、排気ガスに含まれる成分による繊維状金属粒子の劣化が原因であることが分かった。特に日光が照射されている状況では繊維状金属粒子の劣化が激しいが、紫外線吸収剤を含有する粘着材で繊維状金属粒子含有層を基板に貼合することで、自動車用途で用いる場合に排気ガスに暴露されたときに時間と共に断熱性能が低下する問題を改善できることがわかった。
また、特に窓用断熱フィルムや窓用断熱材を自動車用途で用いる場合は、建築物用途として用いる場合よりも、繊維状金属粒子含有層を用いた窓用断熱フィルムや窓用断熱材は時間とともに変色(黄変)し易いことがわかった。本発明者らが検討したところ、このように時間と共に変色(黄変)することも、排気ガスに含まれる成分による繊維状金属粒子の劣化が原因であることが分かった。特に日光が照射されている状況では繊維状金属粒子の劣化が激しいが、紫外線吸収剤を含有する粘着材で繊維状金属粒子含有層を基板に貼合することで、自動車用途で用いる場合に排気ガスに暴露されたときに時間と共に変色(黄変)する問題を改善できることがわかった。なお、繊維状金属粒子含有層を用いた窓用断熱フィルムや窓用断熱材は変色すると赤外反射性能も低下するので、変色を改善すると、省エネ効果も改善される。
紫外線吸収剤が繊維状金属粒子含有層よりも屋外側にあることが自動車用途で用いる場合に排気ガスに暴露されたときに時間と共に断熱性能が低下する問題や変色(黄変)する問題を改善しやすいため、紫外線吸収剤は粘着材に含まれることが好ましい。
【0099】
遮熱機能のない銀ナノワイヤ等の繊維状金属粒子を用いた窓用断熱フィルムまたは窓用断熱材と、紫外線吸収剤を含有する粘着材を組み合わせることで、排気ガスに暴露された場合に断熱性能が安定した、省エネルギー自動車を構成できる。
遮熱機能のない銀ナノワイヤ等の繊維状金属粒子を用いた窓用断熱フィルムまたは窓用断熱材と、紫外線吸収剤を含有する粘着材と、電気自動車の組み合わせで、排気ガスの影響をより抑制することができ、排気ガスに暴露された場合により断熱性能が安定した、省エネルギー自動車を構成できる。そのため、紫外線吸収剤を含有する粘着材で繊維状金属粒子含有層を用いた窓用断熱フィルムや窓用断熱材を貼合することにより、電気自動車の消費電力が長時間に渡って改善される。すなわち、本発明の窓用断熱フィルムまたは窓用断熱材を、紫外線吸収剤を含有する粘着材を介して電気自動車の窓に適合させることで、驚くべきことに電気自動車の冬場の走行距離が伸びる。
【0100】
粘着材の形成に利用可能な材料としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ポリビニルブチラール樹脂、アクリル樹脂、スチレン/アクリル樹脂、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、シリコーン樹脂などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの材料からなる粘着材は、塗布により形成することができる。
紫外線吸収剤としては特開2012−215811号公報の[0041]〜[0046]に記載のものを好ましく用いることができ、この公報の記載は本明細書に組み込まれる。
さらに、粘着材には帯電防止剤、滑剤、ブロッキング防止剤などを添加してもよい。
粘着材の厚みとしては、0.1μm〜10μmが好ましい。
【0101】
[窓]
本発明の窓は、窓ガラスと、窓ガラスに貼り合わせた本発明の窓用断熱フィルムを含むか、あるいは、本発明の窓用断熱材を含む、窓である。
ガラスや窓ガラスを構成する成分としては特に制限は無く、ガラスや窓ガラスとして、例えば、白板ガラス、青板ガラス、シリカコート青板ガラス等の透明ガラスを用いることができる。一方、本発明の窓用断熱材を含む窓である場合は、本発明の窓は、基板の例として上述した樹脂板を窓ガラスの代わりに用いた窓であってもよい。
本発明の窓用断熱材の可視光透過率を求める際に、本発明の窓用断熱フィルムを3mmの青板ガラスに貼り合わせて測定することもできる。3mmの青板ガラスについてはJISA5759に記載されているガラスを使用することが好ましい。
本発明の窓用断熱フィルムは、窓の内側、すなわち窓ガラスの屋内側に貼り付けることが好ましい。本発明の窓用断熱フィルムや本発明の窓用断熱材が奏する効果は、遠赤外反射効果であることが好ましいため、遠赤外線を吸収する材料を積層しないことが遠赤外反射効率を高める観点から好ましい。樹脂板もガラスも遠赤外線を吸収するため、屋内側の(実質的)最表面に繊維状金属粒子含有層があることが好ましい。
本発明の窓用断熱材または本発明の窓は、本発明の窓用断熱フィルムの繊維状金属粒子含有層が、可撓性支持体の窓(ガラスや樹脂板など)側の面とは反対側の面上に配置されることが好ましい。本発明では、繊維状金属粒子含有層は、その層の厚みにも依るが繊維状金属粒子含有層と屋内側の最外面の距離が1μm以内にあることが温暖性を高める観点から好ましく、0.5μm以内であることが更に好ましい。
また、繊維状金属粒子含有層は、窓の屋内側の最外層または最外層の次の層にあることが温暖性を高める観点から好ましく、窓の屋内側の最外層にあることがより好ましい。
【0102】
本発明の窓用断熱材または本発明の窓は、近赤外遮蔽層をなるべく太陽光側に設置している方が、屋内へ入射しようとする赤外線をあらかじめ反射できるため好ましく、この観点において近赤外遮蔽層を太陽光入射側に設置されるように粘着材を積層することが好ましい。具体的には近赤外遮蔽層の上、または、近赤外遮蔽層上に設けられたオーバーコート層等の機能性層の上に粘着材を設け、その粘着材を介して窓ガラスや樹脂板などの窓へ貼合することが好ましい。
窓ガラスや樹脂板などの窓に本発明の窓用断熱フィルムを貼り付ける際、粘着材を塗工、あるいは、ラミネートにより設けた本発明の窓用断熱フィルムを準備し、あらかじめ窓ガラスや樹脂板などの窓表面と粘着材表面に界面活性剤(主にアニオン系)を含んだ水溶液を噴霧してから、粘着材を介して窓ガラスや樹脂板などの窓に本発明の窓用断熱フィルムを設置すると良い。水分が蒸発するまでの間、粘着材の粘着力は落ちるため、ガラスや樹脂板などの窓の表面では本発明の窓用断熱フィルムの位置の調整が可能である。窓ガラスや樹脂板などの窓に対する本発明の窓用断熱フィルムの貼り付け位置が定まった後、スキージー等を用いて窓ガラスと本発明の窓用断熱フィルムの間に残る水分をガラス中央から端部に向けて掃き出すことにより、窓ガラスや樹脂板などの窓表面に本発明の窓用断熱フィルムを固定できる。このようにして、窓ガラスや樹脂板などの窓に本発明の窓用断熱フィルムを設置することが可能である。
【0103】
<建築材料、建築物、乗物>
本発明の窓用断熱フィルム、窓用断熱材および窓は、使用される態様に特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。例えば、乗物用、建築材料や建築物用、農業用などが挙げられる。これらの中でも、省エネルギー効果の点で、建築材料、建築物、乗物に用いられることが好ましい。
上記の建築材料は、本発明の窓用断熱フィルムまたは本発明の窓用断熱材を含む建築材料である。
上記の建築物は、本発明の窓用断熱フィルム、本発明の窓用断熱材、上記の建築材料または本発明の窓を含む建築物である。建築物としては、家、ビル、倉庫などを挙げることができる。
上記の乗物は、本発明の窓用断熱フィルム、本発明の窓用断熱材または本発明の窓を含む乗物である。乗物としては、自動車(特に電気自動車)、鉄道車両、船舶などを挙げることができる。
【実施例】
【0104】
以下、本発明の実施例を説明するが、本発明は、これらの実施例に何ら限定されるものではない。なお、実施例中の含有率としての「%」、及び、「部」は、いずれも質量基準に基づくものである。本実施例において、配合量を示す「部」は特に述べない限り、「質量部」を示す。
【0105】
[繊維状金属粒子のサイズの測定方法]
以下の例において、繊維状金属粒子の平均短径(平均直径)及び平均長径、短径の変動係数は以下のようにして測定した。
【0106】
<繊維状金属粒子の平均短径(平均直径)と平均長径、長径サイズ分布>
透過型電子顕微鏡(TEM;日本電子株式会社製、JEM−2000FX)を用いて拡大観察されるナノ金属繊維粒子から、ランダムに選択した300個の繊維状金属粒子の短径(短軸長、直径)と長径(長軸長)を測定し、その平均値から繊維状金属粒子の平均短径(平均短軸長、平均直径)と平均長径(平均長軸長)を求めた。
平均長径の測定方法において、長径を測定した300個の繊維状金属粒子のうち長径15μm以上の繊維状金属粒子の個数を数え、長径15μm以上の粒子の個数比率を求めた。
【0107】
<繊維状金属粒子の短径(短軸長、直径)の変動係数>
上記電子顕微鏡(TEM)像からランダムに選択した300個の繊維状金属粒子の短径(短軸長、直径)を測定し、その300個についての標準偏差と平均値を計算することにより、求めた。標準偏差の値を平均値で割ることにより変動係数を求めた。
なお、繊維状金属粒子の比率を求める際の繊維状金属粒子の分離は、メンブレンフィルター(Millipore社製、FALP 02500、孔径1.0μm)を用いて行った。
【0108】
[分散液調製法1−A]
<窓用断熱フィルム試料107で用いる銀ナノワイヤ分散液(1)の調製>
まず、予め、下記の添加液A、B、C、及び、Dを調製した。
【0109】
(添加液A)
ステアリルトリメチルアンモニウムクロリド60mg、ステアリルトリメチルアンモニウムヒドロキシド10%水溶液6.0g、グルコース3.0gを蒸留水120.0gに溶解させ、反応溶液A−1とした。さらに、硝酸銀粉末55mgを蒸留水2.0gに溶解させ、硝酸銀水溶液A−1とした。反応溶液A−1を25℃に保ち、激しく攪拌しながら、硝酸銀水溶液A−1を添加した。硝酸銀水溶液A−1の添加後から180分間、激しい攪拌をし、添加液Aとした。
【0110】
(添加液B)
硝酸銀粉末25.6gを蒸留水958gに溶解し、添加液Bとした。
【0111】
(添加液C)
25%アンモニア水75gを蒸留水925gと混合し、添加液Cとした。
【0112】
(添加液D)
ポリビニルピロリドン(K15)400gを蒸留水1.6kgに溶解し、添加液Dとした。
【0113】
次に、以下のようにして、銀ナノワイヤ分散液(1)を調製した。
ステアリルトリメチルアンモニウムブロミド粉末1.30gと臭化ナトリウム粉末33.1gとグルコース粉末1,000g、硝酸(1mol/L)115.0gを80℃の蒸留水12.7kgに溶解させた。この液を80℃に保ち、500rpmで攪拌しながら、添加液Aを添加速度250cm/分、添加液Bを500cm/分、添加液Cを500cm/分で順次添加した。攪拌速度を200rpm(round per minute)とし、80℃で加熱をした。攪拌速度を200rpmにしてから130分間、加熱攪拌を続けた後に、25℃に冷却した。攪拌速度を500rpmに変更し、添加液Dを500cm/分で添加した。この液を仕込液101とした。
次に、1−プロパノールを激しく攪拌しながら、そこへ仕込液101を混合比率が体積比1対1となるように一気に添加した。攪拌を3分間行い、得られた液を仕込液102とした。
分画分子量15万の限外濾過モジュールを用いて、限外濾過を次の通り実施した。仕込液102を4倍に濃縮した後、蒸留水と1−プロパノールの混合溶液(体積比1対1)の添加と濃縮を、最終的にろ液の伝導度が500μS/cm以下になるまで繰り返し、金属含有量0.45%の銀ナノワイヤ分散液(1)を得た。
得られた銀ナノワイヤ分散液(1)の銀ナノワイヤについて、前述のようにして平均短径、平均長径、銀ナノワイヤの短径の変動係数、平均アスペクト比を測定した。その結果、平均短径24nm、平均長径10μm、銀ナノワイヤの短径の変動係数が15.0%、平均アスペクト比は440であった。この銀ナノワイヤ分散液(1)を、後述の窓用断熱フィルム試料107で銀ナノワイヤ分散液として用いる。
【0114】
<窓用断熱フィルム試料101〜106、108〜110で用いる銀ナノワイヤ分散液の調製>
銀ナノワイヤ分散液(1)の調製とは仕込み液101調製時の添加液Aの量および添加液C添加後の温度、時間のみ異なる調製法によって、繊維状金属粒子(銀ナノワイヤ)の平均短径、平均長径を後掲の表1に記載のとおりに調節し、後述の各窓用断熱フィルム試料101〜106、108〜110で用いる銀ナノワイヤ分散液を調製した。なお、後掲の表1において分散液調製法(1−A)とは、上記の分散液調製法1−Aで得られ、平均短径および平均長径を調整した銀ナノワイヤ分散液を用いたことを示す。
【0115】
[分散液調製法1−B]
<参考例:銀ナノワイヤ分散液(3)の調製>
プロピレングリコール370gに硝酸銀粉末20gを溶解させ、硝酸銀溶液301を調製した。
プロピレングリコール4.45kgにポリビニルピロリドン(分子量55,000)72.0gを添加し、窒素ガスを容器の気相部分に通気しながら、90℃に昇温した。この液を反応溶液301とした。
窒素ガスの通気を保持したまま、激しく攪拌している反応溶液301へ硝酸銀溶液301を2.50g添加して、加熱攪拌を1分間行った。さらに、この溶液へテトラブチルアンモニウムクロリド11.8gをプロピレングリコール100gに溶解させた溶液を添加し、得られた液を反応溶液302とした。
93℃に保ち、攪拌速度500rpmで攪拌している反応溶液302へ、硝酸銀溶液301を添加速度50cm/分で200g添加した。攪拌速度を100rpmに落とし、窒素ガスの通気を止めて、加熱攪拌を18時間行った。90℃に保ち、攪拌速度100rpmで攪拌しているこの液へ、硝酸銀溶液301を添加速度0.5cm/分にて220g添加し、添加終了後から3時間、加熱攪拌を続けた。攪拌を500rpmに変更し、蒸留水1.0kgを添加した後に、25℃まで冷却して仕込液301を作製した。
分画分子量15万の限外濾過モジュールを用いて、限外濾過を次の通り実施した。蒸留水と1−プロパノールの混合溶液(体積比1対1)の添加と濃縮を、最終的にろ液の伝導度が500μS/cm以下になるまで繰り返し、金属含有量0.45%の銀ナノワイヤ分散液(3)を得た。
得られた銀ナノワイヤ分散液(3)の銀ナノワイヤについて、前述のようにして平均短径、平均長径、銀ナノワイヤの短径の変動係数、平均アスペクト比を測定した。その結果、平均短径34.5nm、平均長径10.2μm、銀ナノワイヤの短径変動係数が19.9%、平均アスペクト比は300であった。なお、この銀ナノワイヤ分散液(3)は、後述の各実施例や比較例では用いなかった。
【0116】
<窓用断熱フィルム試料111および112で用いる銀ナノワイヤ分散液の調製>
銀ナノワイヤ分散液(3)の調製とは仕込み液301調製時の硝酸銀溶液301の添加速度および添加後の温度、時間のみ異なる調製法によって、繊維状金属粒子(銀ナノワイヤ)の平均短径、平均長径を後掲の表1に記載のとおりに調節し、後述の各窓用断熱フィルム試料111および112で用いる銀ナノワイヤ分散液を調製した。なお、後掲の表1において分散液調製法(1−B)とは、上記の分散液調製法1−Bで得られ、平均短径および平均長径を調整した銀ナノワイヤ分散液を用いたことを示す。
【0117】
[分散液調製法1−C]
ポリアニリン粉末をハンマーミルで破砕後、ビーズミルにて平均粒子サイズ80nmまで微粒化した。微粒化したポリアニリン粉末に対し、10−カンファースルホン酸をドープし、導電率=10−2S/mmのポリアニリン粒子を得た。得られたポリアニリン粒子を、蒸留水と1−プロパノールの混合溶液(体積比1対1)に溶媒に分散し、ポリアニリン粒子分散液(1−C)を得た。
なお、ポリアニリン粒子分散液(1−C)は窓用断熱フィルム試料116および117で使用し、後掲の表1において窓用断熱フィルム試料116および117の分散液調製法を(1−C)と表記した。
【0118】
[分散液調製法1−D]
ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)/ポリ(スチレンスルホン酸)(以下、PEDOT/PSSとも言う)水溶液に、水/1−プロパノールが体積比1対1になるように1−プロパノールを加え、PEDOT/PSS分散液(1−D)を得た。
なお、PEDOT/PSS分散液(1−D)は窓用断熱フィルム試料118で使用し、後掲の表1において窓用断熱フィルム試料118の分散液調製法を(1−D)と表記した。
【0119】
[可撓性支持体の調製例2−A]
<PET基板101の作製>
下記の配合で接着用溶液1を調製した。
(接着用溶液1)
・タケラックWS−4000 5.0部
(コーティング用ポリウレタン、固形分濃度30%、三井化学(株)製)
・界面活性剤 0.3部
(ナロアクティーHN−100、三洋化成工業(株)製)
・界面活性剤 0.3部
(サンデットBL、固形分濃度43%、三洋化成工業(株)製)
・水 94.4部
【0120】
厚さ125μmのPETフィルムの両面にコロナ放電処理を施し、このコロナ放電処理を施した両面に、上記の接着用溶液1を塗布し120℃で2分間乾燥させて、厚さが0.11μmの第1の接着層をPETフィルムの両面上に形成した。
【0121】
以下の配合で、接着用溶液2を調製した。
(接着用溶液2)
・テトラエトキシシラン 5.0部
(KBE−04、信越化学工業(株)製)
・3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン 3.2部
(KBM−403、信越化学工業(株)製)
・2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン
1.8部
(KBM−303、信越化学工業(株)製)
・酢酸水溶液(酢酸濃度=0.05%、pH(power of Hydr
ogen)=5.2) 10.0部
・硬化剤 0.8部
(ホウ酸、和光純薬工業(株)製)
・コロイダルシリカ 60.0部
(スノーテックスO、平均粒子径10nm〜20nm、固形分濃度20%
、pH=2.6、日産化学工業(株)製)
・界面活性剤 0.2部
(ナロアクティーHN−100、三洋化成工業(株)製)
・界面活性剤 0.2部
(サンデットBL、固形分濃度43%、三洋化成工業(株)製)
【0122】
具体的な接着用溶液2の調製方法を以下に記載する。
酢酸水溶液を激しく攪拌しながら、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシランを、この酢酸水溶液中に3分間かけて滴下した。次に、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシランを酢酸水溶液中に強く攪拌しながら3分間かけて添加した。次に、テトラエトキシシランを、酢酸水溶液中に強く攪拌しながら5分かけて添加し、その後2時間攪拌を続けた。次に、コロイダルシリカと、硬化剤と、界面活性剤とを順次添加し、接着用溶液2を調製した。
【0123】
PETフィルムの両面に形成されている前述の第1の接着層の表面をコロナ放電処理したのち、その両面に、上記の接着用溶液2をバーコート法により塗布し、170℃で1分間加熱して乾燥し、厚さ0.5μmの第2の接着層を形成して、PET基板101を得た。
【0124】
[可撓性支持体の調製例2−B]
<PET基板102の作製>
PETフィルム(厚み50μm)の表面をコロナ放電処理したのちに、0.02%の(N−(β−アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン水溶液をバーコート法で塗布量8.8mg/mとなるように塗布し、100℃1分で乾燥し、表面処理されたPET基板102を得た。
【0125】
[実施例104〜112、比較例101〜103]
<窓用断熱フィルム試料107の作製>
下記組成のアルコキシド化合物(Si、Ti、ZrおよびAlからなる群より選ばれる元素(b)のアルコキシド化合物である、テトラエトキシシラン)の溶液を60℃で1時間撹拌して均一になったことを確認し、ゾルゲル液を得た。得られたゾルゲル液の重量平均分子量(Mw)をGPC(ポリスチレン換算)で測定したところMwは4,400であった。
【0126】
(アルコキシド化合物の溶液)
・テトラエトキシシラン 5.0部
(KBE−04、信越化学工業(株)製)
・1%酢酸水溶液 11.0部
・蒸留水 4.0部
【0127】
ゾルゲル液2.24部と前述の分散液調製法(1−A)で得られた銀ナノワイヤ分散液(1)17.76部を混合し、さらに蒸留水と1−プロパノールで希釈してゾルゲル塗布液を得た。得られた塗布液の溶剤比率は蒸留水:1−プロパノール=60:40であった。
可撓性支持体として上記の方法で作製したPET基板102を用い、PET基板102の片面にバーコート法で銀量が0.015g/m、全固形分塗布量が0.120g/mとなるように上記ゾルゲル塗布液を塗布した。そののち、100℃で1分間乾燥してゾルゲル反応を起こさせて、窓用断熱フィルム試料107を形成した。繊維状金属粒子含有層におけるテトラエトキシシラン(アルコキシド化合物)/銀ナノワイヤの質量比は7/1であった。
このようにして得られた窓用断熱フィルム試料107を、実施例107の窓用断熱フィルムとした。
また、実施例107の窓用断熱フィルムの繊維状金属粒子含有層の断面を日立製走査透過型電子顕微鏡(商品名:HD−2300、印加電圧:200kV)で観察した、繊維状金属粒子の配列の様子を示す電子顕微鏡写真を図7に示した。
【0128】
<窓用断熱フィルム試料101〜106、108〜112の作製>
銀ナノワイヤの平均短径および平均長径、ならびに単位面積当たりの繊維状金属粒子含有量窓用断熱フィルムを下記表1に記載のとおりに変更した以外は窓用断熱フィルム試料107の作製と同様にして、窓用断熱フィルム試料101〜106、108〜112を作製した。
このようにして得られた窓用断熱フィルム試料101〜106、108〜112を、それぞれ比較例101〜103、実施例104〜106および108〜112の窓用断熱フィルムとした。
【0129】
[比較例113および114]
<窓用断熱フィルム試料113、114の作製>
真空蒸着装置を用いて、前述の方法で得られたPET基板101の一方の表面の第2の接着層の上に銀を20mg/mとなるように蒸着し、窓用断熱フィルム試料113を得た。このとき銀粒子の平均短径および平均長径は25nmであり、球状金属粒子であった。
さらに窓用断熱フィルム試料113の作製において、銀量を250mg/mとなるまで蒸着すると銀粒子は連続した膜状となり、窓用断熱フィルム試料114を得た。
これらのようにして得られた窓用断熱フィルム試料113および114を、それぞれ比較例113および114の窓用断熱フィルムとした。
【0130】
[比較例115]
<窓用断熱フィルム試料115の作製>
可撓性支持体であるPET基板102を、窓用断熱フィルム試料115として用いた。この窓用断熱フィルム試料115を、比較例115の窓用断熱フィルムとした。
【0131】
[比較例116〜118]
<窓用断熱フィルム試料116〜118の作製>
可撓性支持体として用いたPET基板102の上に、ポリアニリン粒子分散液(1−C)を、下記表1に記載の単位面積当たりの粒子含有量となるように塗布し、窓用断熱フィルム試料116および117を作製した。
可撓性支持体として用いたPET基板102の上に、PEDOT/PSS分散液(1−D)を、下記表1に記載の単位面積当たりの粒子含有量となるように塗布し、窓用断熱フィルム試料118を作製した。
これらのようにして得られた窓用断熱フィルム試料116〜118を、それぞれ比較例116〜118の窓用断熱フィルムとした。
【0132】
[評価]
<可視光透過率>
各実施例および比較例の窓用断熱フィルムに粘着材を以下の方法で貼り合わせ、粘着層を形成した。粘着材としてパナック(株)製パナクリーンPD−S1(粘着層25μm)を使用して、粘着材の軽剥離セパレータ(シリコーンコートPET)を剥がしてから、可撓性支持体の金属粒子含有層とは反対側の表面に貼り合わせた。上記の方法で形成した粘着層から粘着材PD−S1の他方の重剥離セパレータ(シリコーンコートPET)を剥がし、フィルム施工液であるリアルパーフェクト(リンテック(株)製)の0.5質量%希釈液を使用してソーダ石灰珪酸塩である板ガラス(板ガラス厚み:3mmの青板ガラス)と貼り合わせて、光学特性の測定用サンプルを調製した。
得られた光学特性の測定用サンプルの透過スペクトルを紫外可視近赤外分光機(日本分光株式会社製、V−670)を用いて測定し、JISR3106に従い可視光透過率を得た。
可視光透過率は、75%を超えることが実用上は好ましく、80%以上であることがより好ましく、さらにより高いほど好ましい。
得られた結果を下記表1に記載した。
【0133】
<温暖性>
窓用断熱フィルムを窓に貼った際の断熱性の官能評価として、以下に記載する温暖性の評価を行った。
窓用断熱フィルム試料113の作製において、銀量を1100mg/mとなるまで蒸着し、銀粒子が連続した膜状となった銀蒸着PET試料を得た。
各実施例および比較例の窓用断熱フィルム(または、後述の窓用断熱材の温暖性の評価では、窓用断熱フィルムを基板に貼合して得られた窓用断熱材)あるいは上記の銀蒸着PET試料を、1辺が15cmの立方体型の枠の向かい合う2組の面の合計4面の内側にそれぞれ同種のものを貼った筒をそれぞれ作製した。
得られた筒の中に被験者が右手または左手を入れ、筒の中に入れてから20秒後の手の温かさの感じ方を比較し、以下の方法で序列を決めた。比較例115の窓用断熱フィルム試料として用いたナノワイヤ分散液を未塗布のPET基板101を用いた場合を得点「1」とし、上記にて作製した可視光透過率0%(銀蒸着量1100mg/m)の銀蒸着PET試料を用いた場合を得点「10」とした10段階評価で得点化し、各実施例および比較例の窓用断熱フィルムを用いた筒の中に入れた手の温かさの感じ方に得点を付け、官能評価を行った。10人の被験者の官能評価を平均し、平均値を温暖性の評価結果とした。
温暖性評価は、4点以上であることが実用上は好ましく、より点数が高いほどより好ましい。
得られた結果を下記表1に記載した。
【0134】
【表1】
【0135】
上記表1に示したように、比較例101より、繊維状金属粒子の平均短径が本発明で規定する上限値より長い窓用断熱フィルム試料101は温暖性が低いことがわかった。
比較例102より、繊維状金属粒子の平均長径が本発明で規定する下限値よりも短い窓用断熱フィルム試料102は温暖性が低いことがわかった。
比較例103より、単位面積当たりの繊維状金属粒子含有量が本発明で規定する下限値よりも少ない窓用断熱フィルム試料103は温暖性が低いことがわかった。
比較例113より、蒸着にて繊維状ではない金属粒子を形成した窓用断熱フィルム試料113では温暖性が低いことがわかった。
比較例114より、繊維状金属粒子含有層ではなく、銀薄層を形成した窓用断熱フィルム試料114では温暖性は高いものの、可視光透過率が低く好ましい態様ではないことがわかった。
比較例115より、繊維状金属粒子含有層を形成なかった窓用断熱フィルム試料115では温暖性も低く、可視光透過率も低く、好ましい態様ではないことがわかった。
比較例116〜118より、有機化合物系の赤外吸収材料を用いた窓用断熱フィルム試料116〜118は、温暖性が低く、好ましい態様ではなかった。
一方、実施例104〜112より、本発明によって、可視光透過率が高く、温暖性が高い窓用断熱フィルムが得られることがわかった。特に、平均短径が短い方が塗工量を増やしても可視光透過率が下がらず、温暖性も高いため好ましい態様であるといえる。分散液調製法においては、より細い(短径が短い)金属ナノワイヤなどの繊維状金属粒子が合成し易いという点において、分散液調製法1−Aに代表される態様が、分散液調製法1−Bに代表される態様よりも好ましいことがわかった。
【0136】
[実施例201〜204]
<窓用断熱フィルム試料の作製>
実施例107窓用断熱フィルム試料107の作製において、銀ナノワイヤ(1)調製時の添加液Bの代わりに、添加液Bの硝酸銀のうち0.1モル%または0.5モル%を、塩化金酸(4水和物)または硫酸銅(5水和物)で置換したことのみ異なる添加液4種をそれぞれ用いた以外は窓用断熱フィルム試料107の作製と同様の方法で、4種の窓用断熱フィルム試料を作製した。
得られた4種の窓用断熱フィルム試料を、それぞれ実施例201〜204の窓用断熱フィルムとした。
【0137】
<窓用断熱フィルムの評価>
実施例201〜204の窓用断熱フィルムについて、実施例107と同様の評価を行った。
その結果、実施例201〜204の窓用断熱フィルムは、実施例107と同等の性能であり、可視光透過率が高く、温暖性が高い窓用断熱フィルムであることがわかった。また、実施例201〜204の窓用断熱フィルムの作製において得られた銀ナノワイヤの形状は、実施例107の窓用断熱フィルムの作製において得られた銀ナノワイヤの形状とほぼ同等であった。
以上より、繊維状金属粒子として銀の合金の繊維状粒子を用いた場合でも、銀の繊維状粒子を用いた場合と同様の可視光透過率が高く、温暖性の高い窓用断熱フィルムが得られることがわかった。
【0138】
[実施例301〜304、比較例305〜308]
<窓用断熱材の作製>
建築物または自動車の窓に本発明の窓用断熱フィルムを貼合した場合の温暖性を比較するために、下記表2に示す厚みのガラス基板に実施例107の窓用断熱フィルム試料および比較例113の窓用断熱フィルム試料をそれぞれ貼合し、実施例301〜304、比較例305〜308の窓用断熱材を作製し、それらの温暖性を評価した。
窓用断熱材の作製方法の詳細を以下に示す。
実施例107または比較例113の窓用断熱フィルムの繊維状金属粒子含有層の表面に粘着材を貼り合わせた。粘着材として、PD−S1(パナック社製)を用い、PD−S1の一方の離型シートを剥がした面を繊維状金属粒子含有層と貼り合わせ、PD−S1のもう一方の離型シートを剥がした面を下記表2に記載の厚さのフロートガラスと貼り合わせた。
【0139】
<温暖性評価>
実施例107において、1辺が15cmの立方体型の枠の向かい合う2組の面の合計4面の内側に実施例107の窓用断熱フィルムを貼る代わりに、実施例301〜304、比較例305〜308の窓用断熱材をそれぞれ貼った以外は実施例107と同様にして、得られた窓用断熱材の温暖性の官能評価を行い、ガラス貼合、ガラス厚みの効果を比較した。
得られた結果を下記表2に記載した。
【0140】
【表2】
【0141】
上記表2より、本発明の窓用断熱材は、可視光透過率が高く、温暖性が高いことがわかった。特に、厚さ1mmのガラスに実施例107の窓用断熱フィルムを貼合した実施例301の窓用断熱材よりも、厚さ2mm以上のガラスに実施例107の窓用断熱フィルムを貼合した実施例302〜304の窓用断熱材の方が温暖性が高く、本発明のより好ましい態様であることがいえる。
一方、蒸着にて繊維状ではない金属粒子を形成した比較例113の窓用断熱フィルムを用いた比較例305〜308の窓用断熱材では温暖性向上の効果は見られなかった。
なお、ガラスに繊維状金属粒子の分散液を直接塗工した窓用断熱材を別途作製したとこと、その場合も、可撓性支持体に繊維状金属粒子の分散液を塗工した窓用断熱フィルムを粘着材を介してガラスに貼り合わせた実施例301〜304の窓用断熱材とほぼ同様の性能であった。
【0142】
[実施例401〜404、比較例405〜408]
<窓用断熱材の作製>
実施例301〜304、比較例305〜308において、フロートガラスを樹脂板であるアクリル板に変えたことのみ異なる以外は実施例301〜304、比較例305〜308と同様にして、実施例401〜404、比較例405〜408の窓用断熱材を作製した。
【0143】
<窓用断熱フィルムの評価>
得られた実施例401〜404、比較例405〜408の窓用断熱材の評価を実施例301〜304、比較例305〜308と同様に行った。その結果、実施例301〜304、比較例305〜308と同様の傾向の結果を得られた。
したがって、基板として樹脂板を用いた実施例401〜404の窓用断熱材は、可視光透過率が高く、温暖性が高いことがわかった。また、窓用断熱材の基板として、ガラス以外の透明な樹脂板を用いた場合でも、2mm以上の基板を用いることが好ましい態様であることが言える。
なお、樹脂板に繊維状金属粒子の分散液を直接塗工した窓用断熱材を別途作製したとこと、その場合も、可撓性支持体に繊維状金属粒子の分散液を塗工した窓用断熱フィルムを粘着材を介して樹脂板に貼り合わせた実施例401〜404の窓用断熱材とほぼ同様の性能であった。
【0144】
[実施例501〜509]
<実施例501〜503の窓用断熱材の作製>
実施例302の窓用断熱材試料の作製において、粘着材PD−S1の代わりに、粘着材に紫外線吸収用の2−(5−クロロ−2−ベンゾトリアゾリル)−6−tert−ブチル−p−クレゾールを紫外線透過率(400nm)がそれぞれ下記表3に示す値になるように含有させた3種の粘着材を使用したこと以外は実施例302と同様にして、実施例501〜503の窓用断熱材を作製した。
【0145】
<実施例504〜509の窓用断熱材の作製>
また実施例501〜503の窓用断熱材の作製において、実施例107の窓用断熱フィルムの繊維状金属粒子含有層とは反対側に、特開2014−70255号公報の実施例5に記載の銀平板粒子層を参考にして、ガラス基板に貼り合わせた状態での遮蔽係数がそれぞれ下記表3に示す値になるように調整した銀平板粒子層を塗工により形成した窓用断熱フィルムを用いた以外は実施例501〜503と同様にして、実施例504〜509の窓用断熱材を作製した。
【0146】
<窓用断熱フィルムの評価>
(可視光透過率)
実施例504〜509で作製した、実施例107の窓用断熱フィルムにさらに各種の銀平板粒子層を塗工により形成した窓用断熱フィルムの可視光透過率を、実施例107と同様の方法で測定した。その結果を下記表3に記載した。
【0147】
<窓用断熱材の評価>
(紫外線透過率)
得られた実施例501〜509の窓用断熱材の紫外線透過率を、紫外可視近赤外分光機(日本分光株式会社製、V−670)を用いて、200nm〜380nmまで測定した各波長の透過率を平均して本願における紫外線透過率と定義した。
【0148】
(遮蔽係数)
得られた実施例501〜509の窓用断熱材の遮蔽係数を、紫外可視近赤外分光機(日本分光株式会社製、V−670)を用いて、300nm〜2500nmまで測定した各波長の透過率から、JISA5759記載の方法に基づき算出した。
【0149】
(温暖性(暴露前))
得られた実施例501〜509の窓用断熱材の温暖性を、実施例107と同様に評価した。
得られた結果を下記表3に記載した。
【0150】
(温暖性(暴露後))
排気ガス暴露の代用として、窒素酸化物混合空気(窒素酸化物濃度800ppm(parts per million))を満たしたデシケーター中に各窓用断熱材試料を、ガラス基板を光源側に向けて封入し、100W/mのキセノンランプの照射を積算で500時間となるように行った。
こうして得られた暴露後試料の温暖性を、実施例107と同様に評価した。
得られた結果を下記表3に記載した。
【0151】
(暴露後の黄変)
温暖性(暴露後)の評価において得られた暴露後試料の黄変を、目視にて評価した。
得られた結果を下記表3に記載した。
【0152】
【表3】
【0153】
上記表3より、本発明の窓用断熱材は、可視光透過率が高く、温暖性が高いことがわかった。特に、遮蔽係数が高い方が温暖性は高いが、暴露試験後の温暖性の紫外線透過率が高い場合は暴露試験前後の温暖性の低下が大きいことがわかった。紫外線吸収剤の含有量が少ないことにより紫外線透過率が高く、かつ、銀平板粒子層がないか銀平板使用量が少なくて遮蔽係数が高いといった場合においては、暴露後の温暖性の低下や黄変が大きかった(実施例501や504)。遮蔽係数が高い場合、紫外線透過率が低い方が暴露試験後の温暖性の低下が小さく、本発明の好ましい態様であることが言える。
【0154】
[実施例601]
<窓用断熱材の作製>
実施例107の窓用断熱フィルムの作製において、銀ナノワイヤ分散液1−Aの代わりに、銀ナノワイヤ分散液1−A調製時に純プロパノール置換とプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート置換を行った銀ナノワイヤ分散液を用い、テトラエトキシシランを含むゾルゲル溶液の代わりに、Si、Ti、ZrおよびAlからなる群より選ばれる元素(b)のアルコキシド化合物を含まない下記溶液Aを用いた以外は実施例107の窓用断熱フィルムの作製と同様にして、実施例601の窓用断熱フィルムを得た。
(溶液A)
・ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート 5.0部
・光重合開始剤:2,4−ビス−(トリクロロメチル)−6−[4−[N,
N−ビス(エトキシカルボニルメチル)アミノ]−3−ブロモフェニル]
−s−トリアジン 0.4部
・メチルエチルケトン 13.6部
【0155】
実施例302の窓用断熱材の作製において、実施例107の窓用断熱フィルムの代わりに実施例601の窓用断熱フィルムを用いた以外は実施例302と同様にして、実施例601の窓用断熱材を作製した。
【0156】
<評価>
得られた実施例601の窓用断熱材について、実施例302と同様の評価を行った。
その結果、実施例601の窓用断熱材も可視光透過率が高く、温暖性が高いことがわかった。ただし、実施例601においても本発明の効果は得られるが、実施例107の窓用断熱フィルムを使用した実施例302の窓用断熱材の方が、温暖性が高かった。そのため実施例302の窓用断熱材の方が、本発明のより好ましい態様と言える。
【0157】
[実施例701〜705]
<窓用断熱フィルムの作製と評価>
窓用断熱フィルム試料107とは前述の分散液調製法1−Aの添加液Aの調製量を下記表4に示した量に変更した以外は同様にして調製した窓用断熱フィルム試料119〜122を作製した。
これらの試料で使用した銀ナノワイヤの平均短径と平均長径を実施例301と同様の方法で求め、さらにそのときに長径サイズ分布を計測し、15μm以上の長径の粒子の個数比率を求め、下記表4に示した。
窓用断熱フィルム試料107、119〜122を用いて、実施例107と同様の方法で光学特性の測定用のサンプルを作製した。得られた光学特性の測定用サンプルの可視光透過率を実施例107と同様の方法で測定した。また、得られた光学特性の測定用サンプルのヘイズを、ヘイズメーター(NDH−2000、日本電色工業(株))を用いて、JIS−K−7105に準じてヘイズを測定した。得られた結果を下記表4に示した。
【0158】
<窓用断熱材の作製と評価>
窓用断熱フィルム試料107、119〜122を用いた以外は実施例301と同様の方法により、実施例701〜705の窓用断熱材を作製した。
実施例701〜705の窓用断熱材の温暖性を実施例301と同様の方法で測定した。得られた結果を下記表4に示した。
【0159】
【表4】
【0160】
上記表4に示すように、15μm以上の長径を有する銀ナノワイヤの個数比率が低い方がヘイズが低く、より好ましい態様であることが分かる。
【0161】
各実施例および比較例の窓用断熱フィルムまたは窓用断熱材の繊維状金属粒子の表面抵抗の異方性を本明細書中に記載の方法で測定したところ、実施例701〜705では10%以下であった。
各実施例および比較例の窓用断熱材の色度を本明細書中に記載の方法で測定したところ、実施例702〜704では透過色度におけるa*、b*、反射色度におけるa*、b*がいずれも−1〜1であった。
【産業上の利用可能性】
【0162】
本発明の窓用断熱フィルムを用いた本発明の窓用断熱材は、可視光透過性および温暖性が優れるため、本発明の窓用断熱フィルムが窓の内側に配置されると可視光透過性および温暖性が優れる窓を提供できる。このような本発明の窓用断熱フィルムは、建築材料として用いることで、可視光透過性および温暖性が優れる窓を含む建築物や乗物を提供することができる。このような窓が設けられた建築物は、窓の屋外側の光を屋内側に取り入れつつ、窓の屋内側から屋外側への熱交換の抑制をすることができるため、このような窓が設けられた建築物や乗物の屋内側(室内側、車内側)を望ましい環境に保つことができる。
また、本発明の窓用断熱フィルムは、既存の窓(例えば建築物や乗物の窓)に対して、窓の内側に貼ること(内貼り)によっても、可視光透過性および温暖性が優れる窓を提供できる。
【符号の説明】
【0163】
10 可撓性支持体
20 繊維状金属粒子含有層
31 接着層
41 近赤外遮蔽層
51 粘着材
61 基板(厚み0.5mm以上の基板)
101 接着層付きの可撓性支持体
103 窓用断熱フィルム
111 窓用断熱材
IN 屋内側
OUT 屋外側
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7