(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記不連続部から前記孔に向かう表面プラズモンは、前記照射光の照射により前記内側エッジで励起され前記不連続部で反射した表面プラズモンを含む請求項1〜3のいずれか一項記載の光学素子。
前記不連続部から前記孔に向かう表面プラズモンは、前記照射光の照射により前記不連続部で励起された表面プラズモンを含む請求項1〜3のいずれか一項記載の光学素子。
露光光が照射される入射面、少なくとも一部が前記入射面の反対方向を向く射出面、及び前記入射面と前記射出面とを結ぶように形成された孔を有する金属膜を備えるフォトマスクであって、
前記入射面は、前記入射面側の前記孔の端部の周囲に配置され前記孔の内面と結ばれる内側エッジを有する第1面と、前記第1面の周囲に配置され前記第1面の外側エッジとの間に不連続部を形成する第2面とを含み、
前記露光光の照射により前記内側エッジで励起され前記孔に向かう表面プラズモンと前記不連続部から前記孔に向かう表面プラズモンとの干渉により前記孔から前記射出面側に射出される露光光の強度が高くなるように、前記内側エッジと前記外側エッジとの距離が前記表面プラズモンの波長に応じて定められ、
前記内側エッジと前記外側エッジとの距離をL、前記表面プラズモンの波長をλspとしたとき、
L=m・λsp/2 (mは、正の整数)
の条件を満たす、フォトマスク。
前記不連続部から前記孔に向かう表面プラズモンは、前記露光光の照射により前記内側エッジで励起され前記不連続部で反射した表面プラズモンを含む請求項20〜22いずれか一項記載のフォトマスク。
前記不連続部から前記孔に向かう表面プラズモンは、前記露光光の照射により前記不連続部で励起された表面プラズモンを含む請求項20〜23のいずれか一項記載のフォトマスク。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明するが、本発明はこれに限定されない。以下の説明においては、XYZ直交座標系を設定し、このXYZ直交座標系を参照しつつ各部の位置関係について説明する。水平面内の所定方向をX軸方向、水平面内においてX軸方向と直交する方向をY軸方向、X軸方向及びY軸方向のそれぞれと直交する方向(すなわち鉛直方向)をZ軸方向とする。また、X軸、Y軸、及びZ軸まわりの回転(傾斜)方向をそれぞれ、θX、θY、及びθZ方向とする。
【0029】
<第1実施形態>
第1実施形態について説明する。
図1は、第1実施形態に係る光学素子1Aの一例を示す側断面図、
図2は、光学素子1Aを+Z側から見た平面図、
図3は、
図1の一部を拡大した図である。
【0030】
図1、
図2、及び
図3において、光学素子1Aは、照射光ELを透過可能な透明部材2と、透明部材2の表面の少なくとも一部に形成される金属膜3とを備えている。
【0031】
本実施形態において、透明部材2は、例えば石英ガラスによって形成される。金属膜3は、例えば金によって形成される。なお、金属膜3が、銀によって形成されてもよいし、アルミニウムによって形成されてもよいし、他の材料によって形成されてもよい。また、金属膜3が、金と金とは別の物質とを含んでもよいし、銀と銀とは別の物質とを含んでもよいし、アルミニウムとアルミニウムとは別の物質とを含んでもよい。金属膜3の厚さは、例えば50nm〜1000nmでもよい。金属膜3の厚さは、例えば、約5、10、20、30、40、50、60、70、80、90、100、150、200、250、300、350、400、450、500、550、600、650、700、750、800、850、900、950、1000nm、又はそれ以上にできる。照射光ELの波長は、λ
Rである。
【0032】
本実施形態において、透明部材2の表面は、+Z方向を向く上面21と、少なくとも一部が上面21の反対方向(すなわち−Z方向)を向く下面22とを含む。金属膜3は、下面22に形成される。本実施形態において、上面21は、平坦である。本実施形態において、照射光ELは、上面21に照射される。上面21に照射された照射光ELは、透明部材2を介して、金属膜3の少なくとも一部に照射される。
【0033】
金属膜3は、照射光ELが照射される入射面4と、少なくとも一部が入射面4の反対方向を向く射出面5と、入射面4と射出面5とを結ぶように形成された孔(ピンホール)6とを有する。
【0034】
入射面4は、入射面4側の孔6の端部の周囲に配置され、孔6の内面61と結ばれる内側エッジEaを有する第1面41と、第1面41の周囲に配置され、第1面41の外側エッジEbとの間に不連続部7を形成する第2面42とを含む。
【0035】
また、本実施形態において、入射面4は、第2面42の周囲に配置され、第1面41と実質的に平行な第3面43を含む。
【0036】
本実施形態において、内面61は、Z軸と実質的に平行である。第1面41は、XY平面と実質的に平行である。第2面42は、Z軸と実質的に平行である。第3面41は、XY平面と実質的に平行である。
【0037】
図2に示すように、XY平面内において、孔6の形状は、円形である。第1面41の外形は、円形である。XY平面内において、孔6の中心と第1面41の中心とは実質的に一致する。なお、孔6の中心と第1面41の中心とがずれていてもよい。また、第1面41の外形が、例えば楕円形でもよいし、四角形、八角形等の多角形でもよい。
【0038】
本実施形態において、内側エッジEaは、第1面41と孔6の内面61とで形成される角部C1を含む。換言すれば、内側エッジEaに角部C1が形成される。XZ平面内(YZ平面内)において、第1面41と内面61とがなす角度は、約90度である。本実施形態において、角部C1は、尖っている。なお、角部C1が、丸みを帯びていてもよい。
【0039】
本実施形態において、第2面42は、孔6の中心に対する放射方向に関して内側(径方向内方)を向くように第1面41の周囲に配置される。本実施形態において、不連続部7は、第1面41と第2面42とで形成される角部C2を含む。換言すれば、外側エッジEbに角部C2が形成される。不連続部7は、角部C2によって形成される。換言すると、光学素子1Aは、段差構造を含む孔壁(hole wall)を有する。本実施形態において、段差構造は、金属膜3からなり、角部(コーナー)C1、第1面(アキシアル面)41、角部(コーナー)C2、第2面(ラジアル面)42、及び内面(ラジアル面)61を含む。角部C1及び角部C2は、孔6の軸方向と交差する同一のアキシアル面(第1面)につながっている。すなわち、アキシアル面(第1面41)が、角部C1と角部C2とを結ぶ。本実施形態において、少なくとも第1面41と、角部C1と、角部C2とは、照射光ELに直接的に照射される。後述するように、この孔壁の段差構造は、表面プラズモンの波長に応じて設計されている。段差構造において、2つの角部C1、C2の各々で励起した表面プラズモンが互いに干渉するようになっている。
【0040】
図1に示すように、本実施形態においては、光学系10を介して照射光ELが光学素子1Aに照射される。本実施形態においては、照射光ELが孔6及び内側エッジEaに照射されるように、光学系10が照射光ELを集光する。
【0041】
なお、光学系10の開口数は、1以上でもよい。なお、光学系10と光学素子1A(透明部材2)との間を液体(例えばイマージョンオイル)で満たした状態で、光学系10からの照射光ELを光学素子1Aに照射してもよい。その場合、光学素子1Aに照射される照射光ELの照射領域(スポット光)の大きさを、例えば空気中における回折限界以下とすることができる。
【0042】
本実施形態において、孔6の寸法(直径)は、金属膜3に照射される照射光ELの波長λ
Rの2倍以下でもよい。なお、波長λ
Rは、照射光ELが透明部材2を通過するときの波長(光学波長)を含む。例えば、孔6の寸法が、波長λ
Rの1/20〜2倍に定められてもよい。例えば、波長λ
Rが633nmの照射光ELを用いる場合、孔6の寸法を、30nm〜1200nmに定めてもよい。
【0043】
金属膜3に照射光ELが照射されることによって、その金属膜3において表面プラズモンが励起される。一般に、表面プラズモンは、照射光ELの波長λ
R、透明部材2の誘電率、及び金属膜3の誘電率によって一意に定まる特定の波数k
spにおいて励起される。
【0044】
例えば、照射光ELの波長λ
Rが633nmの場合、金属膜3として金が用いられることによって、表面プラズモンが効率良く励起される。また、照射光ELの波長λ
Rが600〜400nmの場合、金属膜3として銀が用いられることによって、表面プラズモンが効率良く励起される。また、照射光ELの波長λ
Rが150〜400nmの場合、金属膜3としてアルミニウムが用いられることによって、表面プラズモンが効率良く励起される。
【0045】
本実施形態において、金属膜3に照射光ELが照射された場合、表面プラズモンは、主に内側エッジEa(角部C1)で励起される。
【0046】
図4は、内側エッジEa(角部C1)において励起された表面プラズモンを模式的に示す図である。
図4に示すように、照射光ELの照射により内側エッジEaにおいて励起された表面プラズモンのうち、一部の表面プラズモンは、孔6に向かい、一部の表面プラズモンは、孔6の中心に対する放射方向に関して外側(径方向外方)に向かう。
【0047】
以下の説明において、内側エッジEaにおいて励起された表面プラズモンのうち、孔6に向かう表面プラズモンを適宜、第1群の表面プラズモンG1、と称し、孔6の中心に対する放射方向に関して外側(径方向外方)に向かう表面プラズモンを適宜、第2群の表面プラズモンG2、と称する。
【0048】
第2群の表面プラズモンG2は、孔6の中心に対する放射方向に関して外側(径方向外方)に向かって第1面41を伝搬し、不連続部7に到達する。本実施形態において、不連続部7は、所定の一方向に伝搬する表面プラズモンの伝搬を阻止する部分を含む。本実施形態において、不連続部7は、外側エッジEb(角部C2)である。内側エッジEaから孔6の中心に対する放射方向に関して外側(径方向外方)に向かって第1面41を伝搬する第2群の表面プラズモンG2は、不連続部7において、外側への伝搬を阻止される。
【0049】
孔6の中心に対する放射方向に関して外側(径方向外方)に向かって第1面41を伝搬し、不連続部7に到達した第2群の表面プラズモンG2は、その不連続部7で反射する。不連続部7で反射した第2群の表面プラズモンG2は、その不連続部7から孔6に向かって第1面41を伝搬する。
【0050】
本実施形態において、内側エッジEaと外側エッジEb(不連続部7)との距離Lは、照射光ELの照射により内側エッジEaで励起され、孔6に向かう第1群の表面プラズモンG1と、不連続部7から孔6に向かう第2群の表面プラズモンG2との干渉により、孔6から射出面5側に射出される光の強度が高くなるように、表面プラズモンの波長λ
spに応じて定められている。
【0051】
本実施形態においては、内側エッジEaと外側エッジEbとの距離をL、表面プラズモンの波長をλ
spとしたとき、
L=m・λ
sp/2 (mは、正の奇数) …(1)
の条件を満たす。なお、距離Lは、第2群の表面プラズモンG2が伝搬する方向に関する距離であり、本実施形態においては、孔6の中心に対する放射方向に関する距離である。
【0052】
これにより、第1群の表面プラズモンG1と第2群の表面プラズモンG2とが干渉し、孔6から射出面5側に射出される光(球面波)の強度が高まる。
【0053】
なお、金属膜3と透明部材2(誘電体)との界面を伝搬する表面プラズモンの波数(伝搬定数)k
spは、真空中の波数をk
0、金属膜の複素誘電率をε
m、透明部材の複素誘電率をε
dとしたとき、
k
sp=k
0〔ε
m・ε
d/(ε
m+ε
d)〕
1/2 …(2)で表される。
【0054】
また、表面プラズモンの波長λ
spは、
λ
sp=2π/k
sp …(3)
で表される。
【0055】
なお、(1)式の条件を満たす場合において、Lの値が大きすぎると、第1面41を伝搬する表面プラズモン(第2群の表面プラズモンG2)の損失が大きくなるため、Lの値をλ
spの2倍以下になるように定めてもよい。例えば、(1)式において、mの値を1又は3としてもよい。
【0056】
一例として、透明部材2(石英ガラス)と金属膜3との界面を伝搬する表面プラズモンは、透明部材2及び金属膜3それぞれの誘電率から理論的に求められる。表面プラズモンの波長λ
spは、例えば約380nmである。透明部材2と金属膜3との界面を伝搬する表面プラズモンを反射させるために、内側エッジEaと外側エッジEbとの距離Lを、例えば波長λ
spの1/2倍(すなわち、約190nm)としてもよい。この場合、内側エッジEaで励起され、孔6に向かう第1群の表面プラズモンG1の位相と、不連続部7から孔6に向かう第2群の表面プラズモンG2の位相とが一致する。これにより、孔6に対する表面プラズモンの入射効率が最大となり、孔6から射出される光の強度が高くなる。
第1群の表面プラズモンG1及び第2群の表面プラズモンG2のそれぞれは、孔6の内側に伝播して、射出面5側の孔6の端部に到達すると、空間伝搬光に再変換され、孔6から射出される。これにより、エネルギーが高められた光(疑似点光源)が得られる。
【0057】
さらに詳しくは、例えば、透明部材2の材料を石英ガラス(ε
d=2.434)、金属膜3の材料をアルミニウム(ε
m=−4.711)とし、波長が193nmの照射光ELを照射する場合を考える。このとき、真空中の波数k
0は2π/λ
0=0.03256nm
−1と表され、(2)式より表面プラズモンの波数k
spが0.07306nm
−1と求まる。そして、求めたk
spを(3)式に代入すると表面プラズモンの波長λ
spが86nmと求まる。したがって、このような条件の場合、(1)式より、内側エッジEaと外側エッジEbとの距離Lを43nmの正の奇数倍とすれば良い。
【0058】
なお、第2面42の高さ(Z軸方向に関する寸法)が小さい場合(例えば約10nm以下である場合)、内側エッジEaで励起され、不連続部7に向かって伝搬した第2群の表面プラズモンG2は、その不連続部7(第2面42)において十分に反射されない可能性がある。一方、第2面42の高さが大きい場合(例えば約500nm以上である場合)、不連続部7(第2面42)において反射した第2群の表面プラズモンG2が、孔6への伝搬中に損失し、その結果、孔6へ到達する第2群の表面プラズモンG2のエネルギーが減少する可能性がある。そのため、孔6から射出される光の強度が低くならないように、第2面42の高さが適宜調整されてもよい。
【0059】
以上説明したように、本実施形態によれば、第1群の表面プラズモンG1と第2群の表面プラズモンG2との干渉により孔6から射出面5側に射出される光の強度が高くなるように、内側エッジEaと外側エッジEbとの距離Lを表面プラズモンの波長λ
spに応じて定めたので、孔6の寸法(直径)を小さくしても、所望の強度の光(球面波)を射出面5側に射出させることができる。また、孔6の寸法(直径)を小さくすることによって、球面波を良好に形成することができる。
【0060】
<第2実施形態>
次に、第2実施形態について説明する。以下の説明において、上述の実施形態と同一又は同等の構成部分については同一の符号を付し、その説明を簡略若しくは省略する。
【0061】
図5は、第2実施形態に係る光学素子1Bの一例を示す側断面図、
図6は、光学素子1Bを+Z側から見た平面図である。
【0062】
本実施形態において、透明部材2Bは、固体液浸レンズ(solid immersion lens)である。照射光ELが照射される透明部材2Bの上面(入射面)21Bは、曲面である。固体液浸レンズは、半球状のレンズであり、例えば高屈折率ガラス及び人工ダイヤモンド等の高屈折率材料によって形成される。
【0063】
本実施形態において、金属膜3が形成される透明部材(固体液浸レンズ)2Bの下面22Bは、固体液浸レンズ2Bの焦点面である。これにより、固体液浸レンズ2Bの上面21Bに入射した照射光ELは、固体液浸レンズ2Bを介して、金属膜3の孔6及び内側エッジEaに良好に照射される。
【0064】
<第3実施形態>
次に、第3実施形態について説明する。以下の説明において、上述の実施形態と同一又は同等の構成部分については同一の符号を付し、その説明を簡略若しくは省略する。
【0065】
図7は、第3実施形態に係る光学素子1Cの一例を示す側断面図、
図8は、光学素子1Cを+Z側から見た平面図である。
【0066】
本実施形態において、金属膜3Cは、孔6の周囲に配置される周壁
部8を有する。本実施形態において、第2面42は、周壁部8の内面である。第3面43は、周壁部8の上面である。本実施形態においても、孔6から射出面5側に射出される光の強度を高めることができる。換言すると、光学素子1Cは、段差構造を含む孔壁(hole wall)を有する。本実施形態において、段差構造は、金属膜3Cからなり、第1角部(コーナー)、第1面(アキシアル面)41、第2角部(コーナー)、第2面(ラジアル面)42、第3面(アキシアル面)43、及び内面(ラジアル面)(6)を含む。第1角部は、第1面41と、内面(6)との間である。第2角部は、第1面41と第2面との間である。第1角部及び第2角部は、孔6の軸方向と交差する同一のアキシアル面(第1面41)につながっている。すなわち、アキシアル面(第1面41)が、第1角部と第2角部とを結ぶ。本実施形態において、少なくとも第1面41と、第1角部と、第2角部とは、照射光ELに直接的に照射される。この孔壁の段差構造も、表面プラズモンの波長に応じて設計されている。段差構造において、2つの角部で励起した表面プラズモンが互いに干渉するようになっている。
【0067】
なお、本実施形態において、周壁部8の幅(周壁部8の内面と外面との距離)は、波長λ
Rの1/20〜1倍に定められてもよい。例えば、波長λ
Rが633nmである場合、周壁部8の幅が、約200nmに定められてもよい。
【0068】
<第4実施形態>
次に、第4実施形態について説明する。以下の説明において、上述の実施形態と同一又は同等の構成部分については同一の符号を付し、その説明を簡略若しくは省略する。
【0069】
図9は、第4実施形態に係る光学素子1Dの一例を示す側断面図、
図10は、光学素子1Dを+Z側から見た平面図、
図11は、
図9の一部を拡大した図である。
【0070】
図9、
図10、及び
図11において、光学素子1Dは、照射光ELを透過可能な透明部材2Dと、透明部材2Dの表面の少なくとも一部に形成される金属膜3Dとを備えている。
【0071】
金属膜3Dは、照射光ELが照射される入射面4Dと、少なくとも一部が入射面4Dの反対方向を向く射出面5と、入射面4Dと射出面5とを結ぶように形成された孔(ピンホール)6とを有する。
【0072】
入射面4Dは、入射面4D側の孔6の端部の周囲に配置され、孔6の内面61と結ばれる内側エッジEaを有する第1面41Dと、第1面41Dの周囲に配置され、第1面41Dの外側エッジEbとの間に不連続部7を形成する第2面42Dとを含む。
【0073】
また、本実施形態において、入射面4Dは、第2面42Dの周囲に配置され、第1面41Dと実質的に平行な第3面43Dを含む。
【0074】
本実施形態において、内側エッジEaは、第1面41Dと孔6の内面61とで形成される角部C3を含む。換言すれば、内側エッジEaに角部C3が形成される。XZ平面内(YZ平面内)において、第1面41Dと内面61とがなす角度は、約90度である。本実施形態において、角部C3は、尖っている。なお、角部C3が、丸みを帯びていてもよい。
【0075】
本実施形態において、第2面42Dは、孔6の中心に対する放射方向に関して外側(径方向外方)を向くように第1面41Dの周囲に配置される。本実施形態において、不連続部7は、第1面41Dと第2面42Dとで形成される角部C4を含む。換言すれば、外側エッジEbに角部C4が形成される。不連続部7は、角部C4によって形成される。換言すると、光学素子1Dは、段差構造を含む孔壁(hole wall)を有する。本実施形態において、段差構
造は、金属膜3Dからなり、角部(コーナー)C3、第1面(アキシアル壁)41D、角部(コーナー)C4、第2面(ラジアル面)42D、及び内面(ラジアル壁)61を含む。角部C3は、第1面41Dと、内面61との間である。角部C4は、第1面41Dと第2面42Dとの間である。角部C3及び角部C4は、孔6の軸方向と交差する同一のアキシアル面(第1面41D)につながっている。すなわち、アキシアル面(第1面41D)が、角部C3と角部C4とを結ぶ。本実施形態において、少なくとも第1面41Dと、角部C3と、角部C4とは、照射光ELに直接的に照射される。この孔壁の段差構
造も、表面プラズモンの波長に応じて設計されている。段差構
造において、2つの角部C3、C4で励起した表面プラズモンが互いに干渉するようになっている。
【0076】
金属膜3Dに照射光ELが照射されることによって、その金属膜3Dにおいて表面プラズモンが励起される。
【0077】
本実施形態において、金属膜3Dに照射光ELが照射された場合、表面プラズモンは、主に内側エッジEa(角部C3)で励起される。
【0078】
また、本実施形態において、金属膜3Dに照射光ELが照射された場合、表面プラズモンは、第1面41Dの外側エッジEbと第2面42Dとの間の不連続部7(角部C4)においても励起される。
【0079】
図12は、内側エッジEa(角部C3)において励起された表面プラズモンを模式的に示す図である。
図12に示すように、照射光ELの照射により内側エッジEaにおいて励起された表面プラズモンは、孔6に向かう第1群の表面プラズモンG1と、孔6の中心に対する放射方向に関して外側(径方向外方)に向かう第2群の表面プラズモンG2とを含む。
【0080】
第2群の表面プラズモンG2は、孔6の中心に対する放射方向に関して外側(径方向外方)に向かって第1面41を伝搬し、不連続部7に到達する。本実施形態において、不連続部7は、外側エッジEb(角部C4)である。内側エッジEaから孔6の中心に対する放射方向に関して外側(径方向外方)に向かって第1面41Dを伝搬する第2群の表面プラズモンG2は、不連続部7において、外側への伝搬を阻止される。
【0081】
孔6の中心に対する放射方向に関して外側(径方向外方)に向かって第1面41Dを伝搬し、不連続部7に到達した第2群の表面プラズモンG2は、その不連続部7で反射する。不連続部7で反射した第2群の表面プラズモンG2は、その不連続部7から孔6に向かって第1面41Dを伝搬する。
【0082】
また、本実施形態において、第1面41Dの外側エッジEbと第2面42Dとの間の不連続部7において励起された表面プラズモンの少なくとも一部は、その不連続部7から孔6に向かって第1面41Dを伝搬する。
【0083】
以下の説明において、照射光ELの照射により不連続部7(外側エッジEb)において励起され、不連続部7から孔6に向かう表面プラズモンを適宜、第3群の表面プラズモンG3、と称する。
【0084】
本実施形態において、内側エッジEaと外側エッジEb(不連続部7)との距離Lは、照射光ELの照射により内側エッジEaで励起され、孔6に向かう第1群の表面プラズモンG1と、不連続部7から孔6に向かう第2群の表面プラズモンG2との干渉により、孔6から射出面5側に射出される光の強度が高くなるように、表面プラズモンの波長λ
spに応じて定められている。
【0085】
また、本実施形態において、内側エッジEaと外側エッジEb(不連続部7)との距離Lは、照射光ELの照射により内側エッジEaで励起され、孔6に向かう第1群の表面プラズモンG1と、不連続部7から孔6に向かう第3群の表面プラズモンG3との干渉により、孔6から射出面5側に射出される光の強度が高くなるように、表面プラズモンの波長λ
spに応じて定められている。
【0086】
本実施形態においては、内側エッジEaと外側エッジEbとの距離をL、表面プラズモンの波長をλ
spとしたとき、
L=m・λ
sp/2 (mは、正の偶数) …(4)
の条件を満たす。
【0087】
これにより、第1群の表面プラズモンG1と第2群の表面プラズモンG2とが干渉し、孔6から射出面5側に射出される光(球面波)の強度が高まる。また、第1群の表面プラズモンG1と第3群の表面プラズモンG3とが干渉し、孔6から射出面5側に射出される光(球面波)の強度が高まる。
【0088】
具体的には、透明部材2の材料を石英ガラス、金属膜3の材料をアルミニウムとし、波長が193nmの照射光ELを照射したとき、(2)式及び(3)式より表面プラズモンの波長λ
spが86nmと求まる。したがって、このような条件の場合、(4)式より、内側エッジEaと外側エッジEbとの距離Lを43nmの正の偶数倍とすれば良い。
【0089】
<第5実施形態>
次に、第5実施形態について説明する。以下、上述の光学素子1Aの効果を確認した実験の結果について説明する。
【0090】
上述の第1実施形態で説明した光学素子1Aに対して、波長λ
Rが633nmの照射光ELを照射したときの孔6から射出される光の強度を、シミュレーション及び実際の実験から求めた。
【0091】
図13は、シミュレーションの結果を示す図である。シミュレーション条件は、金属膜3の厚み(第1面41と射出面5との距離)を300nmとした。また、孔6の寸法(直径)が160nm及び600nmのそれぞれである場合について孔6から射出される光の強度を求めた。
【0092】
図13において、縦軸は、孔6から射出される光の強度を、不連続部がない(入射面が平坦な)金属膜の孔から射出される光の強度で規格化した値を示す。横軸は、内側エッジEaと外側エッジEbとの距離Lを示す。また、
図13において、ラインSL1は、孔6の寸法が160nmである場合、ラインSL2は、孔6の寸法が600nmである場合を示す。また、透明部材2と金属膜3との界面を伝搬する表面プラズモンの波長λ
spは、透明部材2及び金属膜3それぞれの誘電率から理論的に求められ、本実験においては、約380nmである。
【0093】
図13に示すように、距離Lが約180nm、約560nmであるとき、孔6から射出される光の強度が高くなる。上述のように、表面プラズモンの波長λ
spは、約380nmであるため、距離Lの値は、上述の(1)式において、m=1である場合、及びm=3である場合に相当する。このように、(1)式の条件を満足するように光学素子1Aを製造することによって、孔6から射出される光の強度を高くすることができることが分かる。
【0094】
図14は、実際の実験の結果を示す図である。金属膜3の厚み(第1面41と射出面5との距離)が300nm、孔6の寸法(直径)が460nmである光学素子1Aを作成し、その光学素子1Aに波長λ
Rが633nmの照射光ELを照射したときの孔6から射出される光の強度を計測した。また、同様の条件の下でシミュレーションを行った。
【0095】
図14において、縦軸は、孔6から射出される光の強度を、不連続部がない(入射面が平坦な)金属膜の孔から射出される光の強度で規格化した値を示す。横軸は、内側エッジEaと外側エッジEbとの距離Lを示す。
図14において、ラインSL3は、実際の実験の結果である。ラインSL4は、シミュレーションの結果である。表面プラズモンの波長λ
spは、約380nmである。
【0096】
図14に示すように、距離Lが約170nmであるとき、孔6から射出される光の強度が高くなる。上述のように、表面プラズモンの波長λ
spは、約380nmであるため、距離Lの値は、上述の(1)式において、m=1である場合に相当する。このように、(1)式の条件を満足するように光学素子1Aを製造することによって、孔6から射出される光の強度を高くすることができることが分かる。
【0097】
なお、上述の第1〜第5実施形態においては、金属膜3が透明部材2の表面の少なくとも一部に配置されることとしたが、光学素子1A〜1Cにおいて、透明部材2は無くてもよい。
【0098】
<第6実施形態>
次に、第6実施形態について説明する。以下の説明において、上述の実施形態と同一又は同等の構成部分については同一の符号を付し、その説明を簡略若しくは省略する。
【0099】
図15は、第6実施形態に係る測定装置100の一例を示す図、
図16は、測定装置100が備える照明装置50の一例を示す図である。
【0100】
本実施形態に係る測定装置100は、波面収差を測定するための装置(波面収差測定装置)である。本実施形態においては、一例として、測定装置100がフィゾー干渉計である場合を例にして説明する。
【0101】
図15において、測定装置100は、光学素子1Aを有し、光学素子1Aの孔6から射出された光(球面波)で物体110を照明可能な照明装置50と、照明装置50の孔6から射出され、物体110の表面110aに照射された光(球面波)の反射光を検出する検出装置120と、検出装置120の検出結果に基づいて物体110の表面(測定面)110aの波面収差を算出する演算装置130とを備えている。光学素子1Aは、疑似点光源として機能する。
【0102】
検出装置120は、ビームスプリッター101と、コリメーターレンズ102と、基準板103と、リレーレンズ104と、撮像素子105とを有する。物体110は、基準板103と対向するように配置される。本実施形態において、コリメーターレンズ102、基準板103、及びリレーレンズ104は、合成石英ガラス及び蛍石(フッ化カルシウム)等の硝材で形成されている。
【0103】
本実施形態において、基準板103は、高精度に研磨された平面ガラス板である。基準板103は、参照面103aを有する。物体110は、参照面103aと表面110aとが対向するように配置される。参照面103aと測定面110aとは、間隙(空隙)を介して対向する。
【0104】
ビームスプリッター101は、照明装置50からの光(球面波)を透過可能である。本実施形態において、照明装置50からの球面波は、ビームスプリッター101、及びコリメーターレンズ102を透過して、平行光となる。
【0105】
照明装置50から射出され、ビームスプリッター101を透過した光の一部は、コリメーターレンズ102及び基準板103を介して、物体110の表面110aに照射され、その表面110aで反射する。物体110の表面110aに照射された光の反射光は、基準板103及びコリメーターレンズ102を介して、ビームスプリッター101に入射する。
【0106】
また、照明装置50から射出され、ビームスプリッター101を透過した光の一部は、コリメーターレンズ102を介して、基準板103の参照面103aに照射され、その参照面103aで反射する。基準板103の参照面103aに照射された光の反射光は、コリメーターレンズ102を介して、ビームスプリッター101に入射する。
【0107】
以下、照明装置50から射出されビームスプリッター101及びコリメーターレンズ102を透過した光のうち、参照面103aで反射した光を適宜、参照光、と称し、表面(測定面)110aで反射した光を適宜、測定光、と称する。
【0108】
本実施形態においては、参照面103aが光の分割手段(振幅分割)であり、重ね合わせ手段となっている。参照面103aは、例えば光の波長の20分の1以下(30nm以下)の凹凸しかない、高い面精度を有する。
【0109】
参照面103aからの反射光(参照光)及び表面110aからの反射光(測定光)は、ビームスプリッター101に入射する。参照光と測定光とは、ビームスプリッター101において干渉する。ビームスプリッター101で反射した光(参照光と測定光との干渉光)は、リレーレンズ104に供給される。リレーレンズ104は、ビームスプリッター101からの光(参照光と測定光との干渉光)を撮像素子105へ導く。
【0110】
撮像素子105は、干渉光を検出可能である。撮像素子105は、例えば二次元CCD等の光電変換素子を含む。撮像素子105において、干渉縞画像が得られる。
【0111】
撮像素子105で検出された干渉縞画像を含む検出データは、演算装置130に出力される。演算装置130は、検出装置120から出力された検出結果(干渉縞画像を含む検出データ)に基づいて、波面収差(測定面110aの形状)を算出する。また、演算装置130は、検出装置120から出力された検出結果(干渉縞画像を含む検出データ)を不図示のモニターに表示する。また、演算装置130は、検出装置120から出力された検出結果を解析して、表面110aにおいて生じる波面収差を数値的に求め、その波面収差に関する数値をモニターに表示する。
【0112】
フィゾー干渉計においては、参照面103aと測定面110aとは、間隙(空隙)を介して対向する。参照面103aよりも照明装置50側の光路(図中、−Y側の光路)は共通であり、参照面103aと測定面110aとの差が干渉縞となって捉えられる。つまり、参照面103aは高精度な平面であるため、参照面103aと測定面110aとの差は、事実上、測定面110aの形状となる。なお、参照面103aからの反射光(参照光)と測定面110aからの反射光(測定光)とには、光の波長に比べて大きな光路差があるため、可干渉性に優れたレーザー光を使用することが必要となる。
【0113】
図16に示すように、照明装置50は、光学素子1Aと、光学素子1Aに照射光ELを照射する光学系10とを備えている。光学素子1Aは、上述の第1実施形態で説明した光学素子1Aである。なお、光学素子1Aが、上述の第2〜第4実施形態で説明した光学素子1B〜1Dのいずれか一つでもよい。
【0114】
光学系10は、光源からの光を集光する第1レンズ10Aと、第1レンズ10Aからの光を平行光にする第2レンズ10Bと、光学素子1A(透明部材2)が対向する位置に配置され、第2レンズ10Bからの光を光学素子1Aに導く第3レンズ10Cとを備えている。
【0115】
<第7実施形態>
次に、第7実施形態について説明する。以下の説明において、上述の実施形態と同一又は同等の構成部分については同一の符号を付し、その説明を簡略若しくは省略する。
【0116】
図17は、第7実施形態に係る測定装置200の一例を示す図である。測定装置200は、
図16を参照して説明したような照明装置50を備えている。
【0117】
本実施形態に係る測定装置200は、波面収差を測定するための装置(波面収差測定装置)である。本実施形態においては、一例として、測定装置200がマイケルソン干渉計である場合を例にして説明する。
【0118】
図17において、測定装置200は、光学素子1A(1B〜1D)を有する照明装置50と、照明装置50から射出され物体210を経由した測定光を検出する検出装置220と、検出装置220の検出結果に基づいて、物体210の表面(測定面)210aの波面収差を算出する演算装置230とを備えている。
【0119】
検出装置220は、コリメーターレンズ201と、ハーフミラー202と、補正板203と、参照ミラー204と、集光レンズ205と、リレーレンズ206と、撮像素子207とを有する。また、ハーフミラー202から光が出射する+Y側には、波面収差を測定する対象となる表面(測定面)210aを有する物体210が配置される。
【0120】
照明装置50から発した+Y方向に進む球面波は、コリメーターレンズ201により平行光となり、ハーフミラー202により2つの光路に分割される。2つに分かれた光のうち+Z方向に進む光は、補正板203を透過後に高精度に研磨された平面を有する参照ミラー204の参照面204aに到達して反射する。一方、2つに分かれた光のうち+Y方向に進む光は、サンプル210の被検面210aに到達して反射する。これらの光は元の光路を逆戻りしてハーフミラー202により重ね合わせられ、集光レンズ205、リレーレンズ206を経由して撮像素子207へと導かれ、干渉縞画像が得られる。この干渉縞画像から、波面収差(被検面210aの形状)が計算される。
【0121】
測定装置200に配置されたコリメーターレンズ201、補正板203、集光レンズ205、及びリレーレンズ206は、合成石英ガラスまたは蛍石(フッ化カルシウム)等の硝材を用いて形成されている。
【0122】
撮像素子207は、干渉光を検出するものであり、TVカメラを用いることができる。撮像素子207で検出された干渉縞画像を含む検出データは、演算装置230に出力される。
【0123】
演算装置230は、検出装置220から出力された検出結果(干渉縞画像を含む検出データ)を不図示のモニターに表示し、または検出結果を解析して被検面210aにおいて生ずる波面収差を数値的に求めて、得られた数値をモニターに表示する。
【0124】
マイケルソン干渉計では、2つの光路長を波長オーダーで一致させることができるので、必ずしもレーザー光を使用する必要はなく、白色光や低コヒーレンス光を光源として用いることができる。ただし、白色光や低コヒーレンス光を用いる場合には、2つの光路長を正確に一致させる必要がある。この場合、レンズ面等からの反射光があってもノイズとならず、表面形状を正確に測定することができる。
【0125】
なお、上述の実施形態においては、光源がArFエキシマレーザー光源の場合を例に挙げて説明したが、これに限らない。例えば、光源としては、g線(波長436nm)、i線(波長365nm)を射出する超高圧水銀ランプ、またはKrFエキシマレーザー(波長248nm)、F
2レーザー(波長157nm)、Kr
2レーザー(波長146nm)、YAGレーザーの高周波発生装置、若しくは半導体レーザーの高周波発生装置を用いることができる。
【0126】
さらに、光源としてDFB半導体レーザーまたはファイバーレーザーから発振される赤外域、または可視域の単一波長レーザー光を、例えばエルビウム(またはエルビウムとイットリビウムの両方)がドープされたファイバーアンプで増幅し、非線形光学結晶を用いて紫外光に波長変換した高調波を用いてもよい。例えば、単一波長レーザーの発振波長を1.51〜1.59μmの範囲内とすると、発生波長が189〜199nmの範囲内である8倍高調波、または発生波長が151〜159nmの範囲内である10倍高調波が出力される。
【0127】
特に、発振波長を1.544〜1.553μmの範囲内とすると、発生波長が193〜194nmの範囲内の8倍高調波、すなわちArFエキシマレーザー光と実質的に同一波長となる紫外光が得られ、発振波長を1.57〜1.58μmの範囲内とすると、発生波長が157〜158nmの範囲内の10倍高調波、すなわちF
2レーザー光と実質的に同一波長となる紫外光が得られる。また、発振波長を1.03〜1.12μmの範囲内とすると、発生波長が147〜160nmの範囲内である7倍高調波が出力され、特に発振波長を1.099〜1.106μmの範囲内とすると、発生波長が157〜158μmの範囲内の7倍高調波、すなわちF
2レーザー光と実質的に同一波長となる紫外光が得られる。この場合、単一波長発振レーザーとしては例えばイットリビウム・ドープ・ファイバーレーザーを用いることができる。
【0128】
また、上述の実施形態では、測定装置に配置されたコリメーターレンズ、基準板、及びリレーレンズ、並びに光入射手段を構成する円錐レンズ、球面レンズ、及び対物レンズ等の各種レンズは、合成石英ガラスまたは蛍石(フッ化カルシウム)等の硝材を用いる場合を例に挙げて説明したが、これに限らない。例えば、これら各種レンズは、光源から射出される光の波長に応じて、蛍石(フッ化カルシウム:CaF
2)、フッ化マグネシウム(MgF
2)、フッ化リチウム(LiF)、フッ化バリウム(BaF
2)、フッ化ストロンチウム(SrF
2)、LiCAF(コルキライト:LiCaAlF
6)、LiSAF(LiSrAlF
6)、LiMgAlF
6、LiBeAlF
6、KMgF
3、KCaF
3、KSrF
3等のフッ化物結晶またはこれらの混晶、またはフッ素や水素等の物質をドープした石英硝子等の真空紫外光を透過する化学材料から適宜選択される。
【0129】
また、上述の実施形態では、反射光学素子の波面収差測定を例に挙げて説明したが、本発明の実施形態である測定装置はこれらの例に限定されない。本発明の態様の照明光学系は、例えば、国際公開第99/60361号、国際公開第2006/016584号、又は国際公開第2006/16584号等に開示されているような、透過光学素子の波面収差等を測定するための測定装置に用いることができる。また、本発明の態様の照明装置は、例えば国際公開第2003/029751号に開示されているような、光学系を被検物とする測定装置に適用することもできる。これらの場合、従来の測定装置のピンホールに代えて本発明の態様の照明装置を用いれば良く、照明装置から出射した球面波は測定光として被検物(光学系)に照射され、被検物(光学系)を経由した測定光は検出装置に導かれ、検出結果に基づいて波面収差等の光学特性が測定される。本発明の態様の照明装置は、高精度かつ高強度な球面波を出射するので、透過光学素子や光学系の光学特性を測定する場合であっても、反射光学素子の場合と同様に、高精度でS/N比の高い測定結果を得ることができる。なお、法令の許容範囲内において、上記公報及における開示を援用して本明細書の記載の一部とする。
【0130】
<第8実施形態>
次に、第8実施形態について説明する。以下の説明において、上述の実施形態と同一又は同等の構成部分については同一の符号を付し、その説明を簡略若しくは省略する。
【0131】
第8実施形態においては、上述の実施形態で説明した光学素子1A(1B〜1D)をフォトマスクとして使用する場合を例にして説明する。
【0132】
図18は、本実施形態に係るフォトマスクMの一例を示す図である。
図18において、フォトマスクMは、上面及び下面を有する透明部材2Mと、透明部材2Mの下面に配置された金属膜3Mとを備えている。金属膜3Mは、露光光ELが照射される入射面4M、少なくとも一部が入射面4Mの反対方向を向く射出面5M、及び入射面4Mと射出面5Mとを結ぶように形成された孔6Mを有する。金属膜3Mにおいて、孔6Mは複数形成されている。
【0133】
金属膜3Mの入射面4Mは、入射面4M側の孔6Mの端部の周囲に配置され、孔6Mの内面と結ばれる内側エッジを有する第1面41Mと、第1面41Mの周囲に配置され、第1面41Mの外側エッジとの間に不連続部7Mを形成する第2面42Mとを含む。内側エッジと外側エッジとの距離は、露光光ELの照射により内側エッジで励起され、孔6Mに向かう第1群の表面プラズモンG1と、不連続部7Mから孔6Mに向かう第2群の表面プラズモンG2との干渉により、孔6Mから射出面5M側に射出される露光光ELの強度が高くなるように、表面プラズモンの波長に応じて定められている。
【0134】
図18に示す例では、内側エッジは、第1面41Mと孔6Mの内面とで形成される角部を含む。また、不連続部7Mは、第1面41Mと第2面42Mとで形成される角部を含む。不連続部7Mから孔6Mに向かう表面プラズモンは、例えば
図4等を参照して説明したような、露光光ELの照射により内側エッジで励起され、不連続部7Mで反射した表面プラズモンを含む。
【0135】
なお、例えば
図12等を参照して説明したように、第2面42Mが、孔6Mの中心に対する放射方向に関して外側(径方向外方)を向くように第1面41Mの周囲に配置され、不連続部7Mから孔6Mに向かう表面プラズモンが、露光光ELの照射により不連続部7Mで励起された表面プラズモンを含んでもよい。
【0136】
図18に示す例では、フォトマスクMと基板Pとが接近又は接触した状態で、フォトマスクMが露光光ELで照明される。フォトマスクMの透明部材2Mに照射された露光光ELは、その透明部材2Mを介して金属膜3Mに照射される。これにより、孔6Mから露光光ELが射出される。基板Pは、感光材(フォトレジスト)の膜が形成された半導体ウエハ又はガラス基板を含む。基板Pは、孔6Mから射出された露光光ELで露光される。
【0137】
図19は、フォトマスクMを用いる露光装置EXの一例を示す模式図である。
図19において、露光装置EXは、フォトマスクMを保持して移動可能なマスクステージMTと、基板Pを保持して移動可能な基板ステージPTと、露光光ELで照明されたフォトマスクMのパターン(孔6M)の像を基板Pに投影する投影光学系PLとを備えている。フォトマスクMが露光光ELで照明されると、その露光光ELは、金属膜3において表面プラズモンを励起させる。これにより、孔6Mから高精度で高強度な露光光ELが射出される。基板Pは、フォトマスクMからの露光光ELで露光される。
【0138】
以上説明したように、上述の第1〜第4実施形態で説明した光学素子1A〜1Dを、フォトマスクMとして使用することができる。
【0139】
なお、フォトマスクMの孔6Mは、円形でもよいし、
図20に示すように、長方形(スリット)でもよい。金属膜3Mに、
図20に示す孔6Mを複数形成することによって、ライン・アンド・スペースパターンを形成することができる。
【0140】
なお、フォトマスクMを用いる露光によって、半導体デバイス等のマイクロデバイスが製造されてもよい。マイクロデバイスは、
図21に示すように、マイクロデバイスの機能・性能設計を行うステップ301、この設計ステップに基づいたフォトマスク(レチクル)Mを製作するステップ302、デバイスの基材である基板Pを製造するステップ303、上述の実施形態に従って、フォトマスクを露光光ELで照明し、そのフォトマスクMのパターン(孔3M)からの露光光ELで基板Pを露光すること、及び露光された基板Pを現像することを含む基板処理(露光処理)を含む基板処理ステップ304、デバイス組み立てステップ(ダイシング工程、ボンディング工程、パッケージ工程などの加工プロセスを含む)305、検査ステップ306等を経て製造される。
【0141】
なお、上述の各実施形態で説明した光学素子において、第2面は第1面に対して実質的に垂直(Z軸と実質的に平行)であるものとしたが、第2面は第1面に対して垂直でなくても良く、第1面側あるいは第3面側に傾斜して設けられていてもよい。
【0142】
なお、上述の第1〜第4の実施形態で説明した光学素子は、光ディスク装置の記録・再生ヘッドに用いることもできる。この場合、光ディスクへの記録・読み込みを適切に行うためには、光学素子の射出面と光ディスクとの間隔を適切に維持する必要があり、光学素子の射出面をできるだけ平滑に形成しておくことが望ましい。
【0143】
<第9実施形態>
次に、第9実施形態として、波面収差等の光学特性を計測する機能を備えた露光装置について説明する。以下の説明において、上述の実施形態と同一又は同等の構成部分については同一の符号を付し、その説明を簡略若しくは省略する。
【0144】
図22は、露光装置500の全体構成を概略的に示す。露光装置500は、ステップ・アンド・スキャン方式の投影露光装置(スキャニング・ステッパ(スキャナとも呼ばれる))である。
【0145】
図22に示すように、露光装置500は、光源501及び照明光学系512を含む照明系、レチクルRを保持するレチクルステージRST、投影光学系PL、ウエハWが載置されるウエハステージWST及び装置全体を統括制御する主制御装置520等を備えている。
【0146】
光源501としては、ここでは、ArF(アルゴンフッ素)エキシマレーザ光源(出力波長193nm)が用いられる。光源501では、狭帯化及び波長選択の少なくとも一方により直線偏光光を主成分とするレーザ光(照明光)が生成され出力される。
【0147】
一例において、光源501は、照明光学系512、レチクルステージRST、投影光学系PL、及びウエハステージWST等が収納されたチャンバ(不図示)が設置されたクリーンルームとは別のクリーン度の低いサービスルームに設置されている。そのチャンバに、ビームマッチングユニット(BMU)と呼ばれる光軸調整用光学系を少なくとも一部に含む不図示の送光光学系を介して光源501が接続されている。光源501において、主制御装置520からの制御情報に基づいて、内部のコントローラにより、レーザビームLBの出力のオン・オフ、レーザビームLBの1パルスあたりのエネルギ、発振周波数(繰り返し周波数)、中心波長及びスペクトル半値幅などが制御される。
【0148】
照明光学系512は、シリンダレンズ、ビームエキスパンダ、偏光制御ユニット502、ズーム光学系、回折光学素子ユニット、偏光変換ユニット503、並びにオプティカルインテグレータ(ホモジナイザ)505、照明系開口絞り板506、第1リレーレンズ508A、第2リレーレンズ508B、固定レチクルブラインド509A及び可動レチクルブラインド509B、光路折り曲げ用のミラー500M及びコンデンサレンズ510等を備えている。
図22では、シリンダレンズ、ビームエキスパンダ、ズーム光学系及び回折光学素子ユニットについて図示が省略されている。オプティカルインテグレータ505としては、フライアイレンズ、内面反射型インテグレータ(ロッドインテグレータ等)あるいは回折光学素子などを用いることができる。本実施形態では、フライアイレンズが用いられているので、以下では、「フライアイレンズ505」とも記述する。
【0149】
照明光学系512は、不図示の光透過窓を介して上述の送光光学系に接続されている。光源501でパルス発光され、光透過窓を介して入射したレーザビームLBは、例えばシリンダレンズやビームエキスパンダを用いて、その断面形状が整形される。
【0150】
偏光制御ユニット502は、例えば照明光学系512の光軸(投影光学系の光軸AXに一致するものとする)に一致する回転軸を中心に回転可能な1/2波長板を備えている。上記整形されたレーザビームLBは、この1/2波長板に入射すると、進相軸方向成分の位相力進相軸方向に直交する方向の成分に対して1/2波長進むようになるので、その偏光方向が変化する。その変化は、入射するレーザビームLBの偏光方向と、1/2波長板の進相軸とのそれぞれの回転位置によって定まる。偏光制御ユニット502では、1/2波長板の回転位置を調整することにより、射出されるレーザビームLBの偏光方向を制御することが可能となる。1/2波長板の回転位置は、主制御装置520の指示の下、不図示の駆動装置の駆動により制御される。
【0151】
なお、光源501から発せられるレーザビームLBが楕円偏光である場合、偏光制御ユニット502には、1/2波長板に加え、照明光学系512の光軸AXに一致する回転軸を中心に回転可能な1/4波長板を備えるようにしてもよい。この場合、楕円偏光のレーザビームは、1/4波長板によって直線偏光に変換された上で、1/2波長板により、その偏光方向が調整されることになる。また、偏光制御ユニット502では、レーザビームLBの偏光性を解消する素子を、レーザビームLBの光路上に挿脱可能に配置することもできる。これにより、露光装置500では、レチクルRを照明するに際し、ランダム偏光照明も可能となる。
【0152】
偏光制御ユニット502においてその偏光方向が調整されたレーザビームLBは、凹レンズと凸レンズとの組合せからなる不図示のズーム光学系を経て、不図示の回折光学素子ユニットに入射する。回折光学素子ユニットには、回折光の回折角及び方向が異なる位相型の回折光学素子がターレット状の部材に複数配列されている。複数の回折光学素子のうちいずれか1つの回折光学素子が、主制御装置520の指示の下、選択的にレーザビームの光路上に配置される。レーザビームLBの光路上に配置する回折光学素子を切り換えることにより、レーザビームLBの断面形状を所望の形状とすることができる。通常は、エネルギ効率の観点から、後述する照明系開口絞り506において選択される絞りの形状に応じて、光路上に配置する回折光学素子が決定される。このようにすれば、レーザビームLBは、照明系開口絞り503の開口部に大部分が集光する。これは、エネルギ効率の点で有利である。
【0153】
光路上に配置された回折光学素子で断面形状が規定されたレーザビームLBは、偏光変換ユニット503に入射する。
【0154】
偏光変換ユニット503から射出されたレーザビームLBは、フライアイレンズ505に入射する。フライアイレンズ505は、レチクルRを均一な照度分布で照明するために、このレーザビームLBの入射により、その射出側焦点面(照明光学系512の瞳面とほぼ一致)に多数の点光源(光源像)から成る面光源を形成する。この2次光源から射出されるレーザビームを、以下では「照明光IL」と呼ぶものとする。
【0155】
フライアイレンズ505の射出側焦点面の近傍に、円板状部材力成る照明系開口絞り板506が配置されている。照明系開口絞り板506には、例えば、ほぼ等角度間隔で、例えば輪帯照明用の輪帯状の開口絞り(輪帯照明絞り)、及び変形光源法用に複数の開口を偏心させて配置して成る変形開口絞り(4極照明絞り、2極照明絞り)、通常の円形開口より成る開口絞り(通常照明絞り)等が配置されている。
【0156】
明系開口絞り板506は、主制御装置520からの制御信号により制御されるモータ等の駆動装置507の駆動で回転され、いずれかの開口絞りが照明光ILの光路上に選択的に設定され、これにより瞳面における2次光源の形状や大きさ(照明光の光量分布)が、輪帯、大円形、あるいは四つ目等に制限される。なお、本実施形態では、照明系開口絞り板506を用いて、照明光学系512の瞳面上での照明光ILの光量分布(2次光源の形状や大きさ)、すなわちレチクルRの照明条件を変更するものとしたが、オプティカルインテグレータ(フライアイレンズ)505の入射面上での照明光の強度分布あるいは照明光の入射角度を可変として、前述の照明条件の変更に伴う光量損失を最小限に抑えることが好ましい。このために、照明系開口絞り板506の代わりに、あるいはそれと組み合わせて、例えば照明光学系512の光路上に交換して配置される複数の回折光学素子、照明光学系512の光軸に沿って移動可能な少なくとも1つのプリズム(円錐プリズムや多面体プリズムなど)、及びズーム光学系の少なくとも1つを含む光学ユニットを、光源501とオプティカルインテグレータ(フライアイレンズ)505との間に配置する構成を採用することができる。
【0157】
照明系開口絞り板506から出た照明光ILの光路上に、固定レチクルブラインド509A、可動レチクルブラインド509Bを介在させて第1リレーレンズ508A及び第2リレーレンズ508Bから成るリレー光学系が配置されている。
【0158】
固定レチクルブラインド509Aは、レチクルRのパターン面に対する共役面から僅かにデフォーカスした面に配置され、レチクルR上の照明領域を規定する矩形開口が形成されている。また、この固定レチクルブラインド509Aの近傍(レチクルRのパターン面に対する共役面)に走査方向(ここではY軸方向とする)及び非走査方向(X軸方向となる)にそれぞれ対応する方向の位置及び幅が可変の開口部を有する可動レチクルブラインド509Bが配置されている。走査露光の開始時及び終了時には、主制御装置520の制御により、その可動レチクルブラインド509Bを介してレチクルR上の照明領域をさらに制限することによって、不要な露光が防止される。
【0159】
リレー光学系を構成する第2リレーレンズ508B後方の照明光ILの光路上には、第2リレーレンズ508Bを通過した照明光ILをレチクルRに向けて反射する折り曲げミラー500Mが配置され、ミラー500M後方の照明光ILの光路上にコンデンサレンズ510が配置されている。
【0160】
以上の構成において、フライアイレンズ505の入射面、可動レチクルブラインド508Bの配置面及びレチクルRのパターン面は光学的に互いに共役に設定され、不図示の回折光学素子ユニットの回折光学素子、偏光変換ユニット503の偏光変換部材、フライアイレンズ505の射出側焦点面(照明光学系512の瞳面)、投影光学系PLの瞳面は光学的に互いに共役となるように設定されている。また、レチクルRのパターン面と、投影光学系PLの瞳面とは、フーリエ変換の関係を有する。
【0161】
このようにして構成された照明光学系512の作用を説明すると、光源5011からパルス発光されたレーザビームLBは、断面形状が整形されつつ、偏光制御ユニット502及び偏光変換ユニット503により、その断面内における偏光方向が所望の方向に規定された状態で、フライアイレンズ505に入射する。これにより、フライアイレンズ505の射出側 焦点面に前述した2次光源が形成される。
【0162】
上記の2次光源から射出された照明光ILは、照明系開口絞り板506上のいずれかの開口絞りを通過し、第1リレーレンズ508Aを経て固定レチクルブラインド509A、可動レチクルブラインド509Bの矩形開口を通過する。そして、第2リレーレンズ508を通過してミラー500Mによって光路が垂直下方に折り曲げられ、コンデンサレンズ510を経て、レチクルステージRST上に保持されたレチクルR上の矩形の照明領域を均一な照度分布で 照明する。
【0163】
レチクルステージRST上にはレチクルRが、例えば真空吸着により固定されている。レチクルステージRSTは、ここでは、リニアモータ等から成る不図示のレチクルステージ駆動系によって、投影光学系PLの光軸AXに垂直なXY平面内で微小駆動可能であるとともに、所定の走査方向(Y軸方向)に指定された走査速度で駆動可能となっている。
【0164】
レチクルステージRSTのステージ移動面内の位置は、レチクルレーザ干渉計(以下、「レチクル干渉計」という)516によって、移動鏡515を介して、例えば0.5〜1nm程度の分解能で常時検出される。レチクル干渉計516からのレチクルステージRSTの位置情報(又は速度情報)は、主制御装置520に送られ、主制御装置520ではその位置情報(又は速度情報)に基づいてレチクルステージ駆動系(図示省略)を介してレチクルステージRSTを移動させる。
【0165】
投影光学系PLは、レチクルステージRSTの下方に配置され、その光軸AXの方向がZ軸方向とされている。投影光学系PLは、例えば、両側テレセントリックな縮小系であり、共通のZ軸方向の光軸AXを有する不図示の複数のレンズエレメントを含む。投影光学系PLとしては、投影倍率βが例えば1/4、1/5、1/6などのものが使用されている。このため、上述のようにして、照明光(露光光)ILによりレチクルR上の照明領域が照明されると、そのレチクルRに形成されたパターンが投影光学系PLによって投影倍率βで縮小された像(部分倒立像)が、表面にレジスト(感光剤)が塗布されたウエハW上のスリット状の露光領域に投影される。
【0166】
なお、本実施形態では、上記の複数のレンズエレメントのうち、特定のレンズエレメント(例えば、所定の5つのレンズエレメント)がそれぞれ独立に移動可能となっている。かかる特定のレンズエレメントの移動は、特定のレンズエレメント毎に設けられた3個のピエゾ素子等の駆動素子によって行われる。すなわち、これらの駆動素子を個別に駆動することにより、特定のレンズエレメントを、それぞれ独立に、各駆動素子の変位量に応じて光軸AXに沿って平行移動させることもできるし、光軸AXと垂直な平面に対して所望の傾斜を与えることもできる。本実施形態では、上記の駆動素子を駆動するための駆動指示信号は、主制御装置520からの指令に基づいて結像特性補正コントローラ551によって出力され、これによって各駆動素子の変位量が制御される。
【0167】
上述のようにして構成された投影光学系PLでは、主制御装置520による結像特性補正コントローラ551を介したレンズエレメントの移動制御により、ディストーション、像面湾曲、非点収差、コマ収差、あるいは球面収差等の諸収差 (光学特性の一種)が調整可能となっている。
【0168】
ウエハステージWSTは、投影光学系PLの下方で、不図示のベース上に配置され、その上面にウエハホルダ525が載置されている。ウエハホルダ525上にウエハWが例えば真空吸着等によって固定されている。
【0169】
ウエハステージWSTは、モータ等を含むウエハステージ駆動系524により走査方向(Y軸方向)及び走査方向に垂直な非走査方向(X軸方向)に駆動される。そして、ウエハステージWSTによって、ウエハW上の各ショット領域を走査(スキャン)露光するためにウエハWをレチクルRに対して相対走査する動作と、次のショットの露光のための走査開始位置(加速開始位置)まで移動する動作とを繰り返すステップ・アンド・スキャン動作が実行される。
【0170】
ウエハステージWSTのXY平面内での位置は、ウエハレーザ干渉計(以下、「ウエハ干渉計」という)518によって、移動鏡517を介して、例えば0.5〜1nm程度の分解能で常時検出されている。ウエハステージWSTの位置情報(又は速度情報)は、主制御装置520に送られ、主制御装置520ではその位置情報(又は速度情報)に基づきウエハステージ駆動系524を介してウエハステージWSTの駆動制御を行う。
【0171】
また、ウエハステージWSTは、ウエハステージ駆動系524によりZ軸方向、θx方向(X軸回りの回転方向:ピッチング方向)、θy方向(Y軸回りの回転方向:ローリング方向)及びθz方向(Z軸回りの回転方向:ヨーイング方向)にも微小駆動される。また、ウエハステージWSTの+Y側には、後述する光学特性計測装置590が設けられている。
【0172】
投影光学系PLの側面には、アライメント検出系ASが配置されている。本実施形態では、ウエハW上に形成されたストリートラインや位置検出用マーク(ファインアライメントマーク)を観測する結像式アライメントセンサがアライメント検出系ASとして用いられている。このアライメント検出系ASの詳細な構成は、例えば、特開平9−219354号公報及びこれに対応する米国特許第5,859,707号などに開示されている。アライメント検出系ASによる観測結果は、主制御装置520に供給される。法令の許容範囲内において、上記公報及び特許における開示を援用して本明細書の記載の一部とする。
【0173】
図22に示す装置には、ウエハW表面の露光領域内部及びその近傍の領域のZ軸方向(光軸AX方向)の位置を検出するための斜入射方式のフォーカス検出系(焦点検出系)の1つである、多点フォーカス位置検出系(21、22)が設けられている。多点フォーカス位置検出系(21、22)の詳細な構成等については、例えば、特開平6−283403号公報及びこれに対応する米国特許第5,448,332号等に開示されている。多点フォーカス位置検出系(21、22)による検出結果は、主制御装置520に供給される。法令の許容範囲内において、上記公報及び特許における開示を援用して本明細書の記載の一部とする。
【0174】
次に、ウエハステージWSTに設けられた光学特性計測装置590について説明する。
図23には、
図22に示される光学特性計測装置590の筐体の上面あるいは内部に配置された構成要素が模式的に示されている。
図23に示されるように、光学特性計測装置590は、標示板591と、コリメータ光学系592と、光学系ユニット593と、受光器595とを備えている。
【0175】
標示板591は、ウエハステージWST上に保持されたウエハWの表面と同じ高さ位置(Z軸方向位置)に、光軸AXと直交するように配置されている(
図22参照)。標示板591の表面には、クロム等の金属の蒸着により反射膜を兼ねる遮光膜が形成されており、その遮光膜の中央部に、円形の開口591aが形成されている。遮光膜によって投影光学系PLの波面収差の計測の際にコリメータ光学系592に対する不要な光の入射を遮ることができる。また、遮光膜の開口591aの周辺には、開口591aとの位置関係が設計上既知の3組以上(
図23では、4組)の2次元位置検出用マーク591bが形成されている。この2次元位置検出用マーク591としては、本実施形態では、十字マークが採用されている。十字マークは、上述のアライメント検出系ASによって検出可能である。他の実施形態において、十字マーク以外のマークを使用できる。
【0176】
本実施形態において、コリメータ光学系592は、標示板591の下方に配置されている。標示板591の開口591aを介した照明光ILは、コリメータ光学系592により鉛直下向きの平行光に変換される。
【0177】
光学系ユニット593には、開口部597と、マイクロレンズアレイ598と、偏光検出系599とが所定の回転軸を中心に、所定の角度間隔で配置されている。この回転軸の回転により、開口部597と、マイクロレンズアレイ598と、偏光検出系599のいずれかを、コリメータ光学系592を介した光の光路上(光軸AX1に対応する位置)に、選択的に配置可能である。この回転軸の回転は、主制御装置520の指示の下、不図示の駆動装置によって行われる。
【0178】
開口部597は、コリメータ光学系592から射出された平行光をそのまま通過させる。開口部597を照明光ILの光路上に配置することにより、受光器595では、瞳像を計測することが可能となる。ここで、瞳像とは、後述するピンホールパターンを介して投影光学系PLに入射する光によって投影光学系PLの瞳面に形成される光源像を指す。なお、開口部597に、平行光をそのまま透過させる透過部材を備えるようにしてもよい。
【0179】
マイクロレンズアレイ598は、複数の小さなレンズ(マイクロレンズ)が光路に対して直交する面内にアレイ状に配置されて構成されている。詳述すると、マイク口レンズアレイ598は、一辺の長さが等しい正方形状の多数のマイクロレンズがマトリクス状に密に配列されたものである。なお、マイクロレンズアレイ598は、平行平面ガラス板にエッチング処理を施すことにより作製される。マイクロレンズアレイ598では、マイクロレンズ毎に、標示板591の開口591aに形成された後述するピンホールパターンを介した像の結像光束を射出する。
【0180】
受光器595は、2次元CCD等から成る受光素子(以下、「CCD」と呼ぶ)595aと、例えば電荷転送制御回路等の電気回路595b等から構成されている。CCD595aは、コリメータ光学系592に入射し、マイクロレンズアレイ598から射出される光束のすべてを受光するのに十分な面積を有している。また、CCD595aは、開口591aに形成される後述するピンホールパターンの像がマイクロレンズアレイ598の各マイクロレンズによって再結像される結像面であって、開口部591aの形成面の光学的な共役面に受光面を有している。また、この受光面は、開口部597が、上記の光路上に配置されている状態では、投影光学系PLの瞳面の共役面から少しだけずれた面に位置する。
【0181】
主制御装置520は、CPU(中央演算処理装置)、ROM(リード・オンリ・メモリ)、RAM(ランダム・アクセス・メモリ)等の内部メモリから成る、いわゆるマイクロコンピュータ(又はワークステーション)を含み、内部メモリ(RAM)にロードされたプログラムをこのCPUが実行することにより、露光装置500の統括制御が実現される。
【0182】
次に、本実施形態の露光装置500による露光動作を、主制御装置520の処理アルゴリズムを簡略化して示す
図24〜
図27のフローチャートに沿って説明する。なお、ここでは、ウエハW上への1層目の露光がすでに終了しており、2層目以降の露光を行うものとして説明する。
【0183】
図24に示すように、まず、ステップ502において、光学特性の計測のサブルーチンの処理を行う。サブルーチン502では、まず、
図25のステップ522において、光学特性の計測を行うための照明条件を設定する。具体的には、主制御装置520は、偏光制御ユニット502において、レーザビームLBの偏光をH偏光に設定し、駆動装置507を駆動して、照明系開口絞り506を回転させ、通常照明絞り506Dを照明光ILの光路上に配置させるとともに、駆動装置504を駆動して、偏光変換ユニット503を回転させ、開口部503DをレーザビームLBの光路上に配置させる。これにより、露光装置500による通常開口絞りによるレチクルRの照明が可能となる。この場合、投影光学系PLの瞳面内に形成される瞳像の形状は円形となる。
【0184】
次に、ステップ524において、不図示のレチクルローダを用いて、
図28に示される計測用レチクルをレチクルステージRSTにロードするとともに、所定の準備作業を 行う。
【0185】
計測用レチクルRTには、
図28に示されるように、複数個(
図28では、3×11=33のピンホールパターンPH
n(n=1〜33))が、レチクルステージRSTにロードされた状態で、X軸方向及びY軸方向をそれぞれ行方向及び列方向としてマトリクス状に配置されている。本実施形態において、計測用レチクルRTにおけるピンホールの構造は、
図1に示す光学素子1A、
図7に示す光学素子D、又は
図9に示す光学素子1Dに示したようなピンホールの構造と同様のものを有する。なお、ピンホールパターンPH
1〜PH
33は、
図28において点線で示されるスリット状の照明領域の大きさの領域内に形成されている。
【0186】
ここで、上記の所定の準備作業としては、計測用レチクルRTの投影光学系PLに対する相対位置の検出、アライメント検出系ASのベースラインの計測などが行われる。すなわち、不図示のレチクルアライメント系を用いて、ウエハステージWST上の不図示の基準マーク板上に形成された一対の第1基準マークと、これに対応する計測用レチクルRT上のレチクルアライメントマークの投影光学系PLを介した像との位置関係の検出を行う。この位置関係の検出は、計測用レチクルRT上の
図28中に点線で示される領域が、前述した照明領域とほぼ一致する位置に、レチクルステージRSTを移動させた状態で行われる。次いで、ウエハステージWSTを所定距離だけXY面内で移動させて、アライメント検出系ASの検出中心に対する位置関係を検出し、上記2つの位置関係とそれぞれの位置関係検出時の干渉計16、18の計測値とに基づいてアライメント検出系ASのベースラインを計測する。
【0187】
ステップ526では、光学特性計測装置590の光学系ユニット593を回転させて、マイクロレンズアレイ598を、光軸AX1上に配置する。
【0188】
ステップ528では、ウエハステージWSTに装着された光学特性計測装置590とウエハステージWSTとの位置関係の計測を行う。具体的には、ウエハステージWSTを順次移動してアライメント検出系ASを用いて光学特性計測装置590の標示板591上の少なくとも2つの2次元位置マーク591bそれぞれのウエハステージ座標系上における位置の検出を行い、その位置の検出結果に基づいて、例えば最小二乗法などの所定の統計演算により光学特性計測装置590の標示板591の開口591aとウエハステージWSTとの位置関係を正確に求める。
【0189】
この結果、ウエハ干渉計518から出力される位置情報(速度情報)に基づいて、開口591aのXY位置を正確に検出することができ、かつ、このXY位置の検出結果と先に計測したベースラインとに基づいて、ウエハステージWSTの位置を制御することにより、開口591aを所望のXY位置に精度良く位置決めできる。
【0190】
ステップ530では、多点フォーカス位置検出系(521、522)を用いて、投影光学系PLの光軸AXに直交する面(XY平面)に対する標示板591の傾斜を計測する。次のステップ532では、上記の傾斜の計測結果に基づいてウエハステージWSTの傾斜を調整することで、標示板591の上面の傾斜を投影光学系PLの像面(又は像面の近似平面)の傾斜と一致させる。
【0191】
ステップ534において、投影光学系PLの視野内の基準計測点、例えば視野中心の計測点、すなわち
図28に示されるピンホールパターンPH
17の投影光学系PLに関する共役位置(光軸AX上)の計測点に光学特性計測装置590の標示板591の開口591aが一致するようにウエハステージWSTを移動させる。これにより、被検光学系(照明光学系512及び投影光学系PL)の光軸AXと、光学特性計測装置590の光軸AX1とが一致するようになる。
【0192】
ステップ536では、照明光ILの偏光状態を設定する。具体的には、主制御装置520は、偏光制御ユニット502における1/2波長板等を回転させて、レーザビームLBの偏光方向を調整する。ここでは、照明光ILがH偏光となるように、1/2波長板の回転量を調整する。
【0193】
ステップ538では、マイクロレンズアレイ598を構成する各マイクロレンズによってCCD595aの受光面上に最結像されるピンホールパターンPH
17の像の撮像結果である撮像データIMD1に基づいてウエハステージWSTの最適Z位置(ベストフォー力ス位置)をサーチする。以下ではこのサーチ処理について具体的に説明する。
【0194】
この最適Z位置のサーチが行われる際の光学配置を、光学特性計測装置590の光軸AX1及び投影光学系PLの光軸AXに沿って展開したものが、
図29Aに示されている。
図29Aに示される光学配置において、主制御装置520が光源501からレーザビームLBを発振させ、照明光学系512から照明光ILが射出されると、計測用レチクルRTのピンホールパターンPH
17に到達した光(照明光IL)が、球面波となってピンホールパターンPH
17から射出される。そして、その光は、投影光学系PLを介した後、光学特性計測装置590の標示板591の開口591aに集光される。なお、ピンホールパターンPH
17以外のピンホールパターンPH
1〜PH
16、PH
18〜PH
33を通過した光は、開口591aには到達しないようになっている。上述のようにして開口591aに集光された光(標示板591表面の開口591aの内部に結像されたピンホールパターンPH
17の像光束)の波面は、投影光学系PLの波面収差を含んだ略球面となる。
【0195】
開口591aを通過した光は、コリメータ光学系592により平行光に変換され、マイクロレンズアレイ598に入射する。マイクロレンズアレイ598は、マイクロレンズ(
図29A参照)ごとに、標示板591表面の開口591aの内部に結像されたピンホールパターンPH
17の像を、標示板591の光学的な共役面すなわちCCD595aの撮像面(受光面)に結像させる。従って、CCD595aの撮像面には、マイクロレンズアレイ594を構成するマイクロレンズに対応する配置及び数のスポット像(ピンホールパターンPH
17の像)が形成される。CCD595aにより、それら撮像面(受光面)に形成されたスポット像の撮像が行われる。CCD595aの撮像により得られた撮像データIMD1は、主制御装置520に送信される。
【0196】
ウエハステージ駆動系524を介してウエハステージWSTをZ軸方向にステップ移動しつつ、上記撮像データIMD1の取り込みを行い、その取り込んだ撮像デー タIMD1に基づいて、例えばスポット像のコントラストが最大となるZ軸方向の位置を見つけることにより、ウエハステージWSTの最適Z位置をサーチする。
【0197】
ステップ540では、光学系ユニット593を回転させて、偏光検出系599を照明光ILの光軸AX1上に配置し、ステップ542において、照明光ILの偏光状態を計測する。一例において、主制御装置520は、ストークスパラメータを算出する。
【0198】
ステップ544では、主制御装置520では、スト一タスパラメータの算出値に基づいて、照明光ILがH偏光となっているか否かを判断する。この判断が肯定されれば、
図26のステップ552に進む。一方、このステップ544の判断が否定された場合には、ステップ546に進み、ストークスパラメータの算出値に基づいて偏光制御ユニット502を調整することにより、照明光ILの偏光状態を調整する。例えば、照明光ILの楕円偏光性が強い場合には、直線偏光となるように、偏光制御ユニット502内の偏光子を調整し、直線偏光ではあっても、その偏光方向がX軸方向からずれている場合には、偏光制御ユニット502内の1/2波長板の回転量を調整して、偏光方向がX軸方向、すなわちH偏光となるようにする。ステップ546終了後は、ステップ542に戻る。
【0199】
以降、ステップ544における判断が肯定されるまで、ステップ546で、例えば偏光制御ユニット502の1/2波長板又は1/4−波長板を回転調整するなどして、照明光ILの偏光状態を調整し、ステップ542に戻り、再度、照明光ILの偏光状態を上述のようにして計測する処理を繰り返す。これにより、最終的に照明光ILは、H偏光となる。
【0200】
このようにして、照明光ILがH偏光となるように調整された後、
図26のステップ552において、光学系ユニット593を回転させて開口部597を光軸AX1上に配置する。次のステップ554では、カウンタnの値(以下、「カウンタ値n」と呼ぶ)を1に初期化する。
【0201】
ステップ556では、光学特性計測装置590をn番目(ここでは1番目)の計測点に移動させる。すなわち、n番目のピンホールパターンPHの投影光学系PLに関する共役位置の計測点に光学特性計測装置590の標示板591の開口591aが一致するようにウエハステージWSTを移動させる。
【0202】
次のステップ558では、瞳像計測を行う。
図29Bには、瞳像計測の様子が示されている。
図29Bに示されるように、この状態では、照明光ILの光路上には、開口部597が配置されている。そのため、コリメータ光学系592を介した平行光は、そのままCCD595aに入射する。すなわち、CCD595aは、投影光学系PLの瞳面と共役な位置に配置されていることとみなすことができ、その瞳面における瞳像に対応する光束を受光することが可能となる。ここでは、CCD595aの撮像データIMD2を取り込み、その撮像データIMD2に基づいて瞳像の中心位置や大きさ、あるいは瞳像の強度分布を検出する。そして、その検出の結果をメモリに記憶する。
【0203】
次のステップ560では、カウンタ値nが計測点の総数N(ここではN=33)以上であるか否かを判断することで、全ての計測点において瞳像計測が終了したか否かを判断する。ここでは、最初の計測点について瞳像計測が終了しただけなので、ここでの判断は否定され、ステップ562に移行して、カウンタ値nを1インクリメントした後、ステップ556に戻る。
【0204】
以後、ステップ560における判断が肯定されるまで、ステップ556→ステップ558→ステップ560→ステップ562のループの処理判断を繰り返す。これにより、投影光学系PLの視野内の2〜33番目の計測点、すなわちピンホールパターンPH
2〜PH
33の投影光学系PLに関する共役位置の計測点について、瞳像計測が行われ、ピンホールパターンPH
2〜PH
33それぞれを介した瞳像の中心位置や大きさ、あるいは瞳像の強度分布が算出され、メモリ内に記憶される。
【0205】
全ての計測点についての瞳像計測が終了すると、ステップ564に進んで、カウンタ値nを1に初期化する。
【0206】
ステップ566では、光学系ユニット593を回転させてマイクロレンズアレイ598を再度光軸AX1上に配置した後、ステップ568では、光学特性計測装置590をn番目(ここでは1番目)の計測点に移動させる。すなわち、n番目のピンホールパターンPH
nの投影光学系PLに関する共役位置の計測点に光学特性計測装置590の標示板591の開口591aが一致するようにウエハステージWSTを移動する。
【0207】
ステップ570〜ステップ574では、そのn番目の計測点における波面収差計測を実行する。まず、ステップ570では、マイクロレンズアレイ598によりCCD595aの受光面上に形成される全てのスポット像の撮像を行い、その撮像データIMD1を取り込む。
【0208】
ステップ574において、メモリから各スポット像の位置情報を読み出して、計測用レチクルRTにおけるn番目(ここでは1番目)のピンホールパターンPH
1を介した光に関する投影光学系PLの波面収差を算出する。
【0209】
ここで、スポット像の位置情報から波面収差を計測できる理由は、上記のスポット像の撮像に際し、マイクロレンズアレイ598に入射する光の波面が投影光学系PLの波面収差を反映したものとなっているからである。
【0210】
すなわち、投影光学系PLに波面収差が無い場合には、
図29Aにおいて点線で示されるように、その波面WFは光軸AX1と直交する平面となり、この場合、マイクロレンズ598に入射した光の波面が光軸と直交し、そのマイクロレンズアレイ598の各マイクロレンズの光軸とCCD595aの撮像面の交点を中心とするスポット像が、CCD595aの受光面に結像される。これに対し、投影光学系PLに波面収差が有る場合には、
図29Aにおいて二点鎖線で示されるように、その波面WF’は光軸AX1と直交する平面とはならず、その平面上の位置に応じた角度の傾きを有する面となる。この場合、マイクロレンズ598に入射した光の波面は傾いており、その傾き量に応じた距離だけ、そのマイクロレンズ598の光軸とCCD595aの受光面の交点からずれた点を中心とするスポット像がCCD595aの受光面に結像される。
【0211】
従って、このステップ574では、波面収差が無いときに期待される各スポット像位置(上記のマイクロレンズ598の光軸とCCD595aの撮像面の交点)と検出された各スポット像位置との差(位置誤差)から、ツェルニケ多項式の係数を求めることで、計測用レチクルRTにおけるn番目のピンホールパターンPH
nを介した光に関する投影光学系PLの波面収差を算出する。
【0212】
ただし、波面収差が無いときに期待される各スポット像位置が、上記のマイクロレンズアレイ98の各マイクロレンズの光軸とCCD595aの受光面の交点と一致するのは、入射する光の光軸にずれがなぐ光軸AX1とCCD595aとが正確に直交する理想的な場合のみである。そこで、本実施形態では、上記の位置誤差を算出するに際し、メモリ内に記憶されてる、対応する計測点における光源像のデータ(中心位置や大きさなどの光源像の位置情報)に基づいて、波面収差が無いときに期待される各スポット像位置(各スポット像のずれ量を算出するための基準位置)をそれぞれ補正し、検出された各スポット像位置と補正後の各基準位置との差を算出する。これにより、光学特性計測装置590に入射される光の光軸のずれに起因する、波面収差が無いときの各スポット像の基準位置の誤差をキャンセルすることができ、より高精度に波面収差を求めることができる。
【0213】
図26に戻り、ステップ576では、カウンタ値nが計測点の総数N(ここではN=33)以上であるか否かを判断することで、全ての計測点において波面収差の計測が終了したか否かを判断する。ここでは、最初の計測点について波面収差の計測が終了したのみなので、判断は否定され、ステップ578に移行して、カウンタ値nを1だけインクリメントした後、ステップ568に戻る。
【0214】
以後、ステップ576における判断が肯定されるまで、ステップ568→ステップ570→ステップ572→ステップ574→ステップ576→ステップ578のループの処理を繰り返す。これにより、投影光学系PLの視野内の2〜33番目の計測点、すなわちピンホールパターンPH
2〜PH
33の投影光学系PLに関する共役位置の計測点について、波面収差計測が行われ、ピンホールパターンPH
2〜PH
33それぞれを介した光に関する波面収差が算出され、不図示のメモリ内に記憶される。
【0215】
全ての計測点についての波面収差計測が終了し、ステップ576における判断が肯定されると、次のステップ580に進む。
【0216】
ステップ580では、照明光ILをV偏光(偏光方向がY軸方向である直線偏光)としたときの計測が終了したか否かを判断する。この場合、H偏光の計測が終了しただけなのでこのステップ580での判断が否定され、
図25のステップ536に戻る。
【0217】
ステップ536では、偏光制御ユニット502の1/2波長板が590度回転され、レーザビームLBの偏光方向が90度変更される。これにより照明光ILはV偏光となるように設定される。そして、ステップ538において、ウェハステージWSTの最適Z位置を改めてサーチする。ここで、再度、最適Z位置をサーチするのは、照明光ILの偏光方向を変えたことにより、各計測点に対応する波面が変化し、その波面の変化に伴って最適Z位置も変化すると考えられるからである。ステップ540〜ステップ544、
図26のステップ552〜ステップ576において、照明光ILをV偏光に設定したときの通常照明絞り506Dに対応する各計測点の瞳像及び波面が計測される。そして、このようにしてV偏光の計測が終了すると、ステップ580における判断が肯定され、
図27のステップ582に進む。
【0218】
図27のステップ582では、上で求めた投影光学系PLの視野内のN個(ここでは33個)の計測点における波面収差のデータに基づいて、投影光学系PLの波面収差が許容範囲外である計測点があるか否かを判断する。そして、この判断が肯定された場合には、ステップ584に移行して、投影光学系PLの波面収差の計測結果に基づき、現在発生している波面収差を低減させるように、結像特性補正コントローラ551を介してレンズエレメントを駆動して投影光学系PLの波面収差の調整を行う。この調整は、実際の露光の際に設定される照明条件に基づいて設定される。なお、場合によっては、人手により投影光学系PLのレンズエレメントのXY平面内での移動やレンズエレメントの交換を行うこととしても良い。
【0219】
ステップ582で判断が否定された後、又はステップ584が行われた後に行われるステップ586では、実際の露光に適用される照明条件を設定する。具体的には、偏光制御ユニット502により、レーザビームLBの偏光方向をH偏光とし、偏光変換ユニット503を回転させることにより、偏光変換部材503Aを、照明光ILの光路上に配置するとともに、照明系開口絞り板506を駆動装置507により回転させて、輪帯照明絞り506Aを照明光ILの光路上に配置する。そして、ステップ588では、光学特性計測装置590を、計測点に移動させ、ステップ590で、光学系ユニット593の開口部598を光路上に配置し、ステップ592で、瞳像を計測する。このとき、輪帯照明絞り506Aが照明光ILの光路上に配置されているため、瞳像も輪帯形状となる。ここでは、瞳像の撮像データIMD2を取り込み、その撮像データIMD2に基づいてCCD595aの受光面における瞳像の位置や大きさ、あるいは瞳像の強度分布などを検出し、その結果をメモリに記憶する。
【0220】
ステップ594では、光学特性計測装置590における光学系ユニット593を回転させて、偏光検出系599を光軸AX1上に配置し、ステップ596で、照明光ILの偏光状態を計測する。
【0221】
本実施形態において、照明光学系512の照明絞りとして輪帯照明絞り506Aが選択されている。この場合、の照明光ILは、光軸AXを中心とする円の円周方向をその偏光方向とする直線偏光となる。そこで、上記ステップ592において計測した、瞳像の位置、大きさに基づいて、CCD595aの受光面の領域を分割し、分割された領域毎に、ストークスパラメータの算出値に基づいて、偏光方向を計測する。
【0222】
ステップ598では、照明光ILの偏光状態が、所望の状態(すなわち光軸AXを中心とする円の円周方向となる直線偏光)となっているか否かを判断し、判断が肯定された場合には、サブルーチン502の処理を終了し、判断が否定された場合には、ステップ600に進み、偏光制御ユニット502の波長板などの回転量を調整し、照明光ILの偏光状態を調整し、ステップ596に戻る。すなわち、ステップ598で、判断が肯定されるまで、ステップ596→ステップ598→ステップ600の処理、判断を繰り返す。
【0223】
ステップ598の判断が肯定された後は、サブルーチン502の処理を終了し、
図24のステップ504に進む。
【0224】
ステップ504では、不図示のレチクルローダを介してレチクルステージRST上にロードされている計測用レチクルRTをアンロードするとともに、転写対象のパターンが形成されたレチクルRをレチクルステージRST上にロードする。
【0225】
ステップ506では、前述のレチクルアライメント系及び不図示の基準マーク板を用いたレチクルアライメント、アライメント検出系AS及び基準マーク板を用いたベースライン計測を、通常のスキャニング・ステッパと同様の手順で行う。
【0226】
ステップ508では、不図示のウエハローダを介してウエハステージWST上のウエハ交換を行う(但し、ウエハステージWST上にウエハがロードされていない場合は、ウエハを単にロードする)。
【0227】
ステップ510では、ウエハWに対するアライメント(例えばEGA方式のウエハアライメントなど)を行う。このウエハアライメントの結果、ウエハW上の複数のショット領域の配列座標が精度良く求められる。
【0228】
ステップ512では、上記のウエハアライメントの結果に基づいて、ウエハW上の各ショット領域の露光のために走査開始位置(加速開始位置)にウエハステージWSTを移動させる動作と、レチクルステージRSTとウエハステージWSTとを同期してY軸方向に相対走査しつつレチクルRを照明光ILで照明してレチクルRのパターンをウエハW上のショット領域に転写する動作とを繰り返す、ステップ・アンド・スキャン方式の露光を行う。この露光においては、高解像度での露光が実現される。
【0229】
なお、上記の相対走査中、特に走査露光中には、レチクル干渉計516によって検出されるレチクルステージRSTのXY位置の情報、ウェハ干渉計518によって検出されるウエハステージWSTの位置情報、及び多点フォーカス位置検出系(521、522)によって検出されるウエハWのZ位置及びレベリング情報などに基づいて、レチクルステージRSTとウエハステージWSTとの位置関係が適切に保たれるよう、レチクルステージRST及びウエハステージWSTの位置制御が行われる。
【0230】
ステップ514では、予定枚数(例えば1ロット)のウエハに対する露光が終了したか否かを判断し、この判断が否定されると、ステップ508に戻り、以後、ステップ514における判断が肯定されるまで、ステップ508→ステップ510→ステップ512→ステップ514のループの処理・判断を繰り返し行い、各ウエハに対する露光を行う。
【0231】
そして、予定枚数のウエハに対する露光が終了すると、ステップ514における判断が肯定され、本ルーチンの一連の処理を終了する。
【0232】
以上説明したように、本実施形態によれば、照明光ILの偏光状態及び投影光学系PLの波面収差などを計測可能な状態に、照明光学系12及び投影光学系PLを介した照明光ILを変換するマイクロレンズアレイ98や偏光検出系99などを含む複数の光学系を有する光学系ユニット93を備えている。また、本実施形態において、計測用レチクルRTに設けられた複数のピンホールは、表面プラズモンが効果的に励起される構造を有する。そのため、計測用レチクルRTから高精度かつ高強度な球面波が出射され、高精度でS/N比の高い測定が可能となる。
【0233】
投影光学系PLを透過した光は、コリメータ光学系592にて平行光に変換された後に、2次元レンズアレイ598に入射される。入射した光の被検波面が理想的な波面、即ち投影光学系に収差が無い場合の波面から偏差を有していると、該偏差は集光位置検出部上で理想的な波面の集光位置に対し被検波面の集光位置が位置ずれとして現れる。主制御装置520は、2次元レンズアレイ598の個々のレンズの集光点の位置ずれに基づいて、投影光学系PLの波面収差を算出することができる。投影光学系PLによる結像面のうち、一点において、理想波面の各集光点に対する被検波面の各測定点の位置ずれを測定することにより、投影光学系PLの収差として、球面収差や非点隔差を求めることができる。また、投影光学系PLの結像面内における複数点のそれぞれにおいて、理想波面の各集光点に対する被検波面の各測定点の位置ずれを測定し、それら各測定結果から、投影光学系PLの収差として、コマ収差、像面湾曲、ディストーション、非点収差を求めることができる。
【0234】
表面プラズモンが効果的に励起される構造(プラズモン励起構造)は、計測用レチクルRT以外の光学素子にも適用可能である。例えば、その構造を、
図29Aに示す、開口591aを有する標示板591に適用することができる。その他の光学素子にも、プラズモン励起構造を適用することが可能である。
【0235】
計測用レチクルRTに設けられるピンホールの数は33に限定されない。他の実施形態において、ピンホールは、少なくとも1つあればよく、ピンホールの数は33以外にできる。ピンホールが1つの場合、
図29A及び
図29Bに示す標示板591を省くことができる。
【0236】
プラズモン励起構造を有する光学素子を用いて計測される光学特性は、波面収差に限定されない。そうした構造の光学素子を用いて、波面収差以外の光学特性を計測することができる。
【0237】
本実施形態では、光学特性計測装置590を用いることにより、露光装置500のパターン像面上における照明光ILの偏光状態を計測することができる。そのため、解像度を向上させるべく偏光照明を行う場合に、照明光ILの偏光状態が所望の状態であるか否かを確認することができ、高精度な露光を確実に行うことができる。
【0238】
また、本実施形態では、投影光学系PLの瞳面内の複数の異なる領域と、共役なCCD595の受光面内の領域から得られた受光結果に基づいて、その領域の照明光ILの偏光状態を計測する。このようにすれば、偏光照明のように、投影光学系PLの瞳面の異なる領域で、照明光ILの偏光方向が異なる場合でも、それぞれの領域で、偏光方向を確実に計測することが可能となる。
【0239】
また、本実施形態では、光学特性計測装置590の光学系ユニット593における偏光検出系599が、照明光ILの光軸を中心に互いに相対的に回転する偏光ビームスプリッタ599Bと、1/4波長板599Aとを備えている。このようにすれば、偏光検出系599を通過する照明光ILの光量は、両者の相対回転量が変化するに従って、その偏光状態に応じて変化する。そのため、この相対回転量を変化させつつ、偏光検出系599を通過する照明光ILの光量を計測すれば、照明光ILの偏光状態を計測することが可能となる。
【0240】
なお、光学特性計測装置590を利用して、投影光学系PLの開口数NAを計測することも可能である。照明光学系512内における照明光ILの光路上に、拡散板を設置して、通過する光束の径の大きさを投影光学系PLの開口数よりも大きくし、光学特性計測装置590の開口部597を光軸AX1上に配置すれば、CCD595aには、投影光学系PLの瞳を通過した光束が到達する。したがって、このCCD595aの撮像結果力投影光学系PLの瞳の大きさを算出することができるようになり、投影光学系PLの開口数を算出することが可能となる。投影光学系PLの開口数を算出することができれば、上記拡散板をはずした場合の瞳像(光源像)の計測結果より、照明光学系512のコヒーレンスファクタ(いわゆる照明σ)を求めることも可能である。
【0241】
近年においては、デバイスに形成するパターンの微細化に伴い、露光装置の解像度の向上が図られている。解像度向上のためには、露光光(上記実施形態では照明光IL)の短波長化を図り、投影光学系の開口数(NA)を大きくすればよい。そこで、露光装置が備える投影光学系と基板(上記実施形態ではウェハW)との間に気体よりも屈折率の高い液体を充満させて投影光学系の開口数を実質的に大きくして解像度を向上させる液浸式の露光装置が提案されている。
【0242】
この液浸式の露光装置に、上記実施形態の光学特性計測装置590と同等の計測装置を適用する場合について説明する。
【0243】
液浸式の露光装置で光学特性計測装置590と同等の計測装置(光学特性計測装置590’とする)では、
図30に示されるように、標示板591’を平凸レンズで構成すればよい。標示板591’は、投影光学系PL側に対向する平坦部(平坦面)59lbと、コリメータ光学系592側に対向し、所定の曲率を有する曲面部591cを備える。標示板591’は、石英あるいは蛍石など照明光を透過する硝材で形成できる。
【0244】
標示板591’の平坦部591bの表面には、遮光膜が形成されており、その遮光膜の中央部に、円形の開口591a’が形成されている。液体LQが光学特性計測装置590’内に浸入しないように、標示板591’と光学特性計測装置590’の筐体590aとの間に、シール材590b等によって防水(防液)対策が施されている。標示板591’の開口59la’及びその周囲の領域には、その表面に撥液膜(撥水コート)が形成されている。
【0245】
液体LQが投影光学系PLと標示板591’の上面との間に供給されている状態においては、投影光学系PLに入射した露光光は、投影光学系PLの先端部において全反射されずに投影光学系PLを通過して液体LQに入射する。
図30に示されるように、液体LQに入射した露光光は、開口591a’に入射した露光光のみが標示板591’内に入射する。ここで、標示板591’を構成する平凸レンズの屈折率は、液体LQの屈折率と同程度又は液体LQの屈折率よりも高いため、開口591a’に入射する露光光の入射角が大きくても、開口591a’に入射した露光光は、平坦部591bで反射することなく標示板591’内に入射する。また、標示板591’内に入射した露光光は、曲面部591cによって屈折された後、コリメータ光学系592に射出される。このように、投影光学系PLと標示板591’との間に気体よりも屈折率の高い液体を充満させて投影光学系の開口数を大きくしたとしても、平凸レンズで構成された標示板591’を介してコリメータ光学系592に導くことが可能になる。
【0246】
図31は、CCDを有する受光ユニット(撮像ユニット)の変形例を示している。
図31において、ユニット611は、FOP612とCCD613とを有している。FOP612は、複数の光ファイバーを一定の間隔で束ねるとともに、板状に成形された光学基材であり、紫外線が透過不能であると共に可視光が透過可能な材料からなる。FOP612の光ファイバーは、
図31の上下方向に各々延在しかつ並列して配列されている。FOP612の入射面から入射する光束は、各々の光ファイバーを伝搬してFOP612の射出面側に導かれる。
【0247】
FOP612の入射面上には、波長選択膜614と、蛍光膜615と、保護膜617とが順に積層している。一方、FOP612の射出面には、CCD613が取り付けられている。なお、FOP612の横分解能の低下を抑制する観点から、FOP612の入射面上に形成される波長選択膜614および蛍光膜615の合計厚さは、FOP612における各々の光ファイバーの直径以下に設定される。
【0248】
波長選択膜614は、FOP612と蛍光膜615との間に形成されており、可視光を透過させるとともに紫外線を反射する特性を有している。一例として、波長選択膜614は、誘電体多層膜ミラーで構成されている。
【0249】
蛍光膜615は、紫外線により蛍光を発し、紫外域の計測光を可視域の計測光に変換する機能を有する。
【0250】
保護膜617は、蛍光膜615の表面を被覆している。保護膜617は、耐水性および撥水性の少なくとも一方を有することができる。保護膜617は、液体の浸透を抑制するとともに、空気や水蒸気から下層の膜を保護する機能を有する。
【0251】
CCD613は、複数の受光素子(図示せず)が二次元的に配列された受光面を有している。CCD613の受光面はFOP612の射出面に接した状態となっている。なお、本実施形態では、CCD613にカバーガラスやフィルタなどを装着することなく、CCD613の受光面に接着などの手段でFOP612を直接固定することができる。
【0252】
図31のユニット611に、例えば短波長紫外線(ArFエキシマレーザやKrFエキシマレーザなど)が照射される。蛍光膜615に短波長紫外線が入射する。蛍光膜615は、入射した短波長紫外線の強度に応じて可視域の蛍光を発する。上記の蛍光は波長選択膜614をほとんど減衰せずに透過してFOP612に入射する。そして、FOP612から射出された計測光(蛍光)がCCD613によって計測される。一方、蛍光膜615を透過した短波長紫外線は波長選択膜614で実質的に反射される。
【0253】
図31のユニット611によれば、波長選択膜614によってFOP612への短波長紫外線の入射がほぼカットされるため、短波長紫外線によるFOP612の劣化を抑制できる。紫外域の計測光は蛍光膜615で可視域の蛍光に変換されて波長選択膜614を透過する。その結果、ユニット611では、蛍光を用いて計測を確実に行うことができる。
【0254】
また、本実施形態では、光源から入射した短波長紫外線と波長選択膜614で反射された短波長紫外線とがいずれも蛍光の発生に寄与するので、蛍光膜615で強度の高い蛍光を比較的容易に得ることができ、蛍光膜615の薄膜化も容易となる。また、蛍光膜615はフッ化物を母材として形成されているので、短波長紫外線に対して蛍光膜615が高い耐久性を有している。また、本実施形態では蛍光膜615が真空蒸着法で成膜されているので、例えば、蛍光体粒子をバインダに混練して塗布した場合と比べて蛍光の散乱が少なく、良好な光学特性の蛍光膜615を得ることができる。
【0255】
また、本実施形態では、蛍光膜615を保護膜617で被覆することで、蛍光膜615の劣化が抑制される。例えば、液浸型露光装置に搭載される光学特性計測装置に受光ユニット(撮像ユニット)を使用するケースでは、被検光学系(露光装置の投影光学系)とFOP612との間には水などの液体が充填される。
図31において、保護膜617で蛍光膜615が液体から保護される。また、空気中にて紫外線が照射されるケースでは、フッ化物の蛍光膜615と空気との界面では酸化や水酸化が生じて光学性能が劣化する。しかし、
図31において、保護膜617によってかかる蛍光膜615の劣化も抑制できる。さらに、保護膜617が十分な膜強度を有する場合には、拭きによって表面汚損を容易に除去することも可能となる。
【0256】
図31に示すユニット611によれば、FOP612を備えているため、被検光学系の像面内の広い領域を一度に且つ高精度に検出することが可能になる。そのため、リレー光学系等を簡略又は省略した構成を採用でき、装置の小型化に貢献できる。また、FOP612の入射面にFOP612を構成する個々の光ファイバーの直径以下の厚みを有する蛍光膜615が形成されている。FOP612の横分解能の低下が抑制される。また、紫外域の計測光が可視域の計測光に変換される。その結果、可視域の計測光を確実に撮像素子613に導光することができる。更に、蛍光膜615によって、紫外域の計測光が可視域の計測光に変換され、コヒーレントノイズの発生が低減される。したがって、ユニット611によれば、回転拡散板等を簡略又は省略でき、装置のコンパクト化に有利である。
【0257】
なお、
図22等に示す本実施形態において、1ロットのウエハWを露光する前に行われる光学特性の計測に光学特性計測装置590を用いる場合について説明した。光学特性計測装置590は、露光装置が組み立てられた後の定期メンテナンス時、露光装置の製造における投影光学系PLの調整時に用いることもできるのは勿論である。なお、露光装置の製造時における投影光学系PLの調整にあたっては、上記の実施形態において行われる投影光学系PLを構成する一部のレンズエレメントの位置調整に加えて、他のレンズエレメントの位置調整、レンズエレメントの再加工、レンズエレメントの交換等を行うことが可能である。
【0258】
また、本実施形態では、光学特性計測装置590内部のコリメータ光学系592などの受光光学系の収差は、無視できる程小さいものとしている。さらに高い精度の波面収差計測を行う場合などには、波面収差を算出するまでのいずれかの時点で、受光光学系単独の波面収差を計測することができる。かかる受光光学系単独の波面収差の計測は、投影光学系PLを介した照明光ILの照射により球面波を発生する程度の大きさのピンホールパターンが形成されたパターン板を、標示板591の近傍に設け、このパターン板のピンホールパターンで開口591aを更に制限した状態で、投影光学系PL力も射出される照明光ILをパターン板に照射して、上述と同様の波面収差の計測を行うことで実現できる。そして、投影光学系PLの波面収差の算出の際に、上記の受光光学系単独の波面収差を補正値として用いることができる。
【0259】
本実施形態では、光学特性計測装置590がウエハステージWSTに常設され固定されている。他の実施形態において、光学特性計測装置590はウエハステージWSTに着脱可能にできる。また、ウエハステージとは異なる別のステージを設け、この別のステージに光学特性計測装置590と同様の光学特性計測装置を配置することもできる。
【0260】
露光装置の光源501としては、F
2レーザ光源(157nm)、ArFエキシマレ一ザ光源(193nm)、KrFエキシマレーザ光源(248nm)などの紫外パルス光源に限らず、g線(波長436nm)、i線(波長365nm)などの輝線を発する超高圧水銀ランプを用いることも可能である。また、DFB半導体レーザ又はファイバレーザから発振される赤外域、又は可視域の単一波長レーザ光を、例えばエルビウム(又はエルビウムとイッテルビウムの両方)がドープされたファイバーアンプで増幅し、非線形光学結晶を用いて紫外光に波長変換した高調波を用いても良い。また、投影光学系の倍率は縮小系のみならず等倍および拡大系のいずれでも良い。
【0261】
本実施形態では、走査型露光装置を説明した。他の実施形態において、露光装置として、ステップ・アンド・リピート機、ステップ・アンド・スキャン機、ステップ・アンド・スティッチング機等、他の形態にできる。
【0262】
露光装置の用途としては、半導体製造用の露光装置に限定されない。例えば、角型のガラスプレートに液晶標示素子パターンを転写する液晶用の露光装置や、有機EL、薄膜磁気ヘッド、マイクロマシーン及びDNAチップなどを製造するための露光装置にも適用できる。また、半導体素子などのマイクロデバイスだけでなぐ光露光装置、EUV露光装置、X線露光装置、及び電子線露光装置などで使用されるレチクル又はマスクを製造するために、ガラス基板又はシリコンウエハなどに回路パターンを転写する露光装置にも適用できる。
【0263】
なお、上述の各実施形態の要件は、適宜組み合わせることができる。また、一部の構成要素を用いない場合もある。また、法令で許容される限りにおいて、上述の各実施形態及び変形例で引用した露光装置などに関する全ての公開公報及び米国特許の開示を援用して本文の記載の一部とする。