【実施例】
【0030】
以下の実施例及び比較例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例に何ら限定されるものではない。
【0031】
実施例で用いた化合物は以下の通りである。
【0032】
【表1】
【0033】
<除濁率又は分散率による各薬剤の評価>
(対照1〜3)
pH6.5のりん酸バッファーを用いて0.55質量%、1.1質量%、2.2質量%の懸濁物質濃度に希釈した試験用スラリーLBKP(カナディアンスタンダードフリーネス 205ml)180mlに対し、模擬ピッチとしてレヂテックスA−6001(株式会社レヂテックス製)をスラリーに対して100mg/L添加し、この混合液をハンドミキサーにて800rpmで10秒間撹拌した。その後、懸濁物質濃度が0.55質量%となるよう水道水で希釈し、20μm、5μm、1μm孔のろ紙でそれぞれ吸引ろ過し、ろ液の濁度を携帯用濁度計「2100P」(HACH社製)を用い常法に従って測定した。
【0034】
(実施例1−1−1〜実施例3−1−3)
pH6.5のりん酸バッファーを用いて所定の懸濁物質濃度に希釈した試験用スラリーLBKP(カナディアンスタンダードフリーネス 205ml)180mlに対し、模擬ピッチとしてレヂテックスA−6001(株式会社レヂテックス製)をスラリーに対して100mg/L添加し、この混合液をハンドミキサーにて800rpmで10秒間撹拌した。その後、薬剤A〜Cを前記混合液に対して20mg/L添加して更に30秒間撹拌し、水の質量に対する懸濁物質濃度が0.55%となるよう水道水で希釈し、20μm、5μm、1μm孔のろ紙でそれぞれ吸引ろ過し、ろ液の濁度を測定し、下記式(1)を用いて除濁率で評価した。除濁率はろ液中のピッチの原因物質の減少量に比例し、ピッチの原因物質が薬剤に定着した割合を示す。そのため、除濁率が高いほうが、より多くのピッチの原因物質が薬剤に定着したことを意味する。
【0035】
[(対応する対照の濁度)-(実施例の濁度)]/(対応する対照の濁度)×100[%] (1)
【0036】
(実施例1−2−1〜実施例3−2−3)
薬剤A〜Cを前記混合液に対して50mg/L添加したことを除いては実施例1−1−1〜実施例3−1−3と同様にして濁度を測定し、除濁率で評価した。
【0037】
(実施例1−3−1〜実施例3−3−3)
薬剤A〜Cを前記混合液に対して100mg/L添加したことを除いては実施例1−1−1〜実施例3−1−3と同様にして濁度を測定し、除濁率で評価した。
【0038】
(比較例4−1−1〜比較例9−3−3)
水の質量に対する懸濁物質濃度が1.1質量%、2.2質量%となるようpH6.5のリン酸バッファーで希釈したことを除いては、実施例1−1−1〜実施例3−1−3と同様にして濁度を測定し、除濁率で評価した。
【0039】
【表2】
【0040】
【表3】
【0041】
【表4】
【0042】
実施例1−1−1〜3−3−3において、薬剤A〜Cはスラリーの懸濁物質の濃度が低い方が除濁率は高く、模擬ピッチとの高い反応性を示した。模擬ピッチの大きさは1μmくらいであり、薬剤A〜Cはろ紙孔1μmでろ過した時の除濁率が高いため、これらの薬剤はピッチの原因物質を選択的に捕捉している。薬剤Aを用いた実施例1及び薬剤Cを用いた実施例3では薬剤の濃度が50mg/Lのときに、薬剤の濃度が100mg/Lのときとほぼ同じ除濁率を示した。薬剤Bを用いた実施例2では薬剤の濃度が20mg/Lのときに、薬剤の濃度が50mg/L及び100mg/Lのときとほぼ同じ除濁率を示し、濃度に関りなく薬剤Aより除濁率に優れていた。この違いは、薬剤の反応性の違いによると考えられる。この反応性の違いは、平均分子量の違いによると推測される。薬剤Aの平均分子量は1万〜5万、薬剤Bの平均分子量は5000〜1万程度である。そして、一般的にメラミン樹脂は添加量が少なくてもピッチを有効に抑制することができる。
【0043】
(実施例4−1−1〜実施例12−3−3)
pH6.5のりん酸バッファーを用いて所定の懸濁物質濃度に希釈した試験用スラリーLBKP(カナディアンスタンダードフリーネス 205ml)180mlに対し、模擬ピッチとしてレヂテックスA−6001(株式会社レヂテックス製)をスラリーに対して100mg/L添加し、この混合液をハンドミキサーにて800rpmで10秒間撹拌した。その後、薬剤D〜Lを前記混合液に対して20mg/L、50mg/L、又は100mg/L添加して、更に30秒間撹拌し、水の質量に対する懸濁物質濃度が0.55%となるよう水道水で希釈し、20μm、5μm、1μm孔のろ紙でそれぞれ吸引ろ過し、ろ液の濁度を測定し、下記式(2)を用いて分散率で評価した。分散率はろ液中にろ紙の孔より小さなピッチの原因物質の量が多いことを示す。そのため、分散率が高いほうが、より多くのピッチの原因物質は薬剤の存在により、凝集することなく分散していることを意味する。
【0044】
[(実施例の濁度)-(対応する対照の濁度)]/(対照の濁度)×100[%] (2)
【0045】
(比較例10−1−1〜比較例27−3−3)
懸濁物質濃度が1.1質量%、2.2質量%となるようpH6.5のリン酸バッファーで希釈したことを除いては実施例1−1−1〜実施例3−1−3と同様にして濁度を測定し、分散率で評価した。
【0046】
【表5】
【0047】
【表6】
【0048】
【表7】
【0049】
【表8】
【0050】
【表9】
【0051】
【表10】
【0052】
【表11】
【0053】
【表12】
【0054】
実施例4−1−1〜12−3−3において、本発明のいずれの薬剤も低SS濃度スラリーの方が分散率は高くなり、模擬ピッチとの高い反応性を示した。20μm、5μm、1μm穴のいずれのろ液の濁度も薬剤の濃度が高くなるにつれ大きくなり分散率が高くなった。模擬ピッチの大きさは1μmくらいであり、薬剤D〜Lはろ紙孔1μmでろ過した時の分散率が高いため、薬剤濃度が低くても模擬ピッチを分散させ続けることができる。
【0055】
<ジャーテストによる評価>
(対照4)
pH6.5のりん酸バッファーを用いて懸濁物質濃度0.03%に希釈した試験用スラリーLBKP(カナディアンスタンダードフリーネス 205ml)500mlに対し、模擬ピッチとしてレヂテックスA−6001(株式会社レヂテックス製)をスラリーに対して100mg/L添加し、150rpmで70秒間撹拌し、撹拌速度を50rpmにして60秒間撹拌した。その後180秒間静置した後、その上澄みの濁度を測定した。
【0056】
(実施例13−1〜13−4)
pH6.5のりん酸バッファーを用いて懸濁物質濃度0.03%に希釈した試験用スラリーLBKP(カナディアンスタンダードフリーネス 205ml)500mlに対し、模擬ピッチとしてレヂテックスA−6001(株式会社レヂテックス製)をスラリーに対して100mg/L添加し、150rpmで撹拌を開始した10秒後に、混合液に対して薬剤Aを5mg/L、10mg/L、25mg/L、又は50mg/L添加し、その5秒後に薬剤Mを10mg/L、その20秒後に薬剤Nを2mg/L添加した後、更に30秒後に撹拌速度を50rpmにして60秒間撹拌した。その後180秒間静置した後、その上澄みの濁度を測定し、式(1)を用いて除濁率で評価した。
【0057】
(実施例14−1〜24−4)
150rpmで撹拌を開始した10秒後に、混合液に対して薬剤Mを10mg/L、その5秒後に薬剤A〜Lを5mg/L、10mg/L、25mg/L、又は50mg/L添加し、その20秒後に薬剤Nを2mg/L添加したことを除いては実施例13−1〜実施例13−4と同様にして濁度を測定し、除濁率で評価した。
【0058】
(比較例30−1〜30−4)
150rpmで撹拌を開始した10秒後に薬剤Mを10mg/L、その5秒後に薬剤Oを5mg/L、10mg/L、25mg/L、又は50mg/L添加し、その20秒後に薬剤Nを2mg/L添加したことを除いては実施例13−1〜実施例13−4と同様にして濁度を測定し、除濁率で評価した。
【0059】
【表13】
【0060】
【表14】
【0061】
比較例29に示すように、硫酸アルミニウムMと高分子量のカチオンポリマーNとだけを添加しても濁度低下はほとんど見られなかった。また、比較例30に示すように、更に低分子量のカチオンポリマーOを添加しても濁度低下はほとんど見られなかった。
【0062】
他方、実施例14〜24に示すように、高分子量のカチオンポリマーNと薬剤A〜Lとを添加したとき、いずれの薬剤も14〜57%の高い濁度低下を示した。特にメチレンホルムアルデヒド樹脂A及びBは薬剤の濃度が大きいとき、高い除濁率を示した。
【0063】
分散型薬剤E、G、Iを用いたとき、比較例20、22、24に示すように、濁度が上昇する場合もあったが、高分子量のカチオンポリマーを更に添加することで、濁度が低下した。すなわちピッチをスカム側へ移行することができた。高分子カチオンポリマー単独と比べても濁度の低下は大きいことから、薬剤D〜Lを添加した効果と言える。
【0064】
実施例13と実施例14を比べると濁度は同等の値を示しており、添加順序に関わらず期待した効果を発揮すると言える。
【0065】
分散型薬剤は単独に添加しても繊維への定着あるいはスカムへ移行することはない。しかし高分子カチオンポリマーを併用した時に、高分子カチオンポリマー単独よりも濁度が低下した。ピッチ除去効果があると判断された。
【0066】
<ホットプレステストによる評価>
(実施例25〜36)
pH6.5のりん酸バッファーを用いて懸濁物質濃度1.1質量%に希釈した試験用スラリーLBKP(カナディアンスタンダードフリーネス 205ml)300mlに対し、模擬ピッチとしてレヂテックスA−6001(株式会社レヂテックス製)をスラリーに対して100mg/L添加し、ハンドミキサーにて800rpmで10秒間撹拌した。その後、各種薬剤をスラリーに対して100mg/L添加し更に30秒撹拌した。その後1μm孔のろ紙にてろ過した残渣を鏡面処理したSUS板へ95℃、−0.9MPaの真空下で10分間圧着させた。放冷の後マットを剥離しSUS板へ付着した面積[%]で評価を行った。
【0067】
【表15】
【0068】
薬剤の効果が高く、粘着性が低下した試料ほど付着面積は小さくなるが、実施例25〜36において、いずれの薬剤も比較例32と比べ付着面積が小さくなっていたことから、薬剤A〜Lを添加することで粘着性が低下したといえる。特に、エステラーゼE,F、ポリビニルアルコールGを用いたとき、付着面積が小さく、ピッチの原因物質の粘着性が小さくなった。