(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
複数の液体を混合可能な流路を備えるマイクロリアクターを用いて、重合性単量体を有機リチウム試薬の存在下でリビングアニオン重合させる重合体の製造方法であって、重合性単量体がフッ素化アルキル基含有エチレン性不飽和単量体を含み、前記流路に流す流体のレイノルズ数を2〜300で連続的にコントロールすることを特徴とする重合体の製造方法。
複数の液体を混合可能な流路を備えるマイクロリアクターを用いて、第1の重合性単量体を有機リチウム試薬の存在下でリビングアニオン重合させ、中間重合体を形成する中間重合体形成工程;並びに、前記中間重合体と、前記第1の重合性単量体と異なる第2の重合性単量体と、を前記マイクロリアクターに導入し、前記マイクロリアクター内で、前記中間重合体の成長末端に前記第2の重合性単量体をリビングアニオン重合させ、ブロック共重合体を形成するブロック共重合体形成工程;を有する重合体の製造方法であって、前記第1の重合性単量体及び/又は前記第2の重合性単量体がフッ素化アルキル基含有エチレン性不飽和単量体を含み、前記流路に流す流体のレイノルズ数を2〜300で連続的にコントロールすることを特徴とする重合体の製造方法。
前記マイクロリアクターは、伝熱性反応容器に流路が設置されたものであり、前記伝熱性反応容器は、表面に複数の溝部が形成された伝熱性プレート状構造体を積層してなる構造を有するものである請求項1又は2に記載の重合体の製造方法。
【背景技術】
【0002】
近年、石油エネルギーの高騰から化学製品の製造方法の抜本的な見直しが迫られてきている。その中で、マイクロリアクターに対する関心が高まってきている。マイクロリアクターは狭い空間で反応を行う装置であり大掛かりな装置の導入も不必要で、投資コスト、製造コストの削減も期待される。
【0003】
近年、化学合成の分野において、マイクロリアクターと呼ばれる微小容器を用いた化学反応が研究されている。前記マイクロリアクターは、複数の液体を混合可能な流路と、前記流路に連通し、前記流路に液体を導入する導入路とを備える微小容器であり、流路径としては、数μmから数百μmのものが代表的である。前記マイクロリアクターの前記導入路を通じて供給された複数の液体は、前記流路で合流することにより、混合され、反応が生じる。
マイクロリアクターを用いた反応では、反応溶液の精確な流れの制御、温度制御、迅速な混合が可能となると考えられており、従来実施されているバッチ方式の反応と比較して転化率や選択性の向上が期待され、高効率な生産方法として注目されている。
【0004】
一方、ポリマーの反応方法として、リビングアニオン重合は精密なポリマー設計が可能な点で、最良な重合方法の一つと考えられるものの、バッチ方式においてはリビング重合の開始反応を揃えるために、モノマー及び開始剤を−78℃以下に冷却しながら混合しなければならないため、超低温冷却設備を要するという問題があった。また、リビング重合の開始反応を揃えるために、モノマーを霧状又は低濃度(例えば、1.5M未満)で加えなければならないため、大量生産に向かないという問題があった。
【0005】
これに対し、マイクロリアクターを用いて分子量分布の狭い重合体を合成する新規な技術、特別な冷却装置などを用いることなく、効率よく高い転化率で重合体を製造可能な方法、及び、連続的な工程でブロック共重合体を製造可能な方法が開示されている(例えば、特許文献1、2参照。)。
また、フッ素モノマーはフッ素原子が大きな電気陰性度を有するため重合性が大きく異なることが予想されるが、特許文献1及び2には、マイクロリアクターを用いたフッ素モノマーのリビングアニオン重合に関しては何ら記載が無かった。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明は、フッ素化アルキル基含有エチレン性不飽和単量体をマイクロリアクターを用いるリビング重合反応によって製造する発明である。
【0015】
本発明の第1の発明において重合体は、複数の液体を混合可能な流路を備えるマイクロリアクター、好ましくは流路が設置された伝熱性反応容器を有するマイクロリアクター、より好ましくは内部に微小管状流路が形成された伝熱性反応容器を有するマイクロリアクター、特に好ましくは表面に複数の溝部が形成された伝熱性プレート状構造体を積層してなる伝熱性反応容器を有するマイクロリアクターの、流路内に、フッ素化アルキル基含有エチレン性単量体と、開始剤とを含有する流体を、好ましくはフッ素化アルキル基含有エチレン性単量体が液である状態を保ちながら、液密状態で、且つ、連続的に流通させることができるように、該流路の温度と圧力をコントロールしながら重合反応を行うことにより製造されることが好ましい。
また、本発明の第2の発明において重合体は、複数の液体を混合可能な流路を備えるマイクロリアクター、好ましくは流路が設置された伝熱性反応容器を有するマイクロリアクター、より好ましくは内部に微小管状流路が形成された伝熱性反応容器を有するマイクロリアクター、特に好ましくは表面に複数の溝部が形成された伝熱性プレート状構造体を積層してなる伝熱性反応容器を有するマイクロリアクターを用いて、第1の重合性単量体を開始剤の存在下でリビング重合させ、中間重合体を形成する中間重合体形成工程;並びに、前記中間重合体と、前記第1の重合性単量体と異なる第2の重合性単量体と、を前記マイクロリアクターに導入し、前記マイクロリアクター内で、前記中間重合体の成長末端に前記第2の重合性単量体をリビング重合させ、ブロック共重合体を形成するブロック共重合体形成工程;を有し、前記第1の重合性単量体及び/又は前記第2の重合性単量体がフッ素化アルキル基含有エチレン性不飽和単量体を含み、前記第1の重合性単量体と開始剤、前記第2の重合性単量体と開始剤を含有する流体を、好ましくはフッ素化アルキル基含有エチレン性単量体が液である状態を保ちながら、液密状態で、且つ、連続的に流通させることができるように、該流路の温度と圧力をコントロールしながら重合反応を行うことにより製造されることが好ましい。
【0016】
本発明の第1の発明において使用される重合性単量体は、フッ素化アルキル基含有エチレン性単量体を含むものである。また、第2の発明において使用される第1の重合性単量体及び/又は第2の重合性単量体は、フッ素化アルキル基含有エチレン性単量体を含むものである。上記フッ素化アルキル基含有エチレン性単量体としては、例えば、フッ素化アルキル基とエチレン性不飽和基を有する化合物であれば制限なく用いることができる。
【0017】
なお、本発明に用いるフッ素化アルキル基を含有する重合性単量体において、フッ素化アルキル基とは、アルキル基中の全ての水素原子がフッ素原子に置換されたもの(パーフルオロアルキル基)と、アルキル基中の一部の水素原子がフッ素原子で置換されたもの〔例えば、−(CF
2)
6H等〕との総称であり、直鎖状でも分岐状であっても良い。更に、該フッ素化アルキル基中に酸素原子を含むもの〔例えば−OCF
2CF
2(OCF(CF
3)CF
2)
2CF
2CF
3、−(OCF
2CF
2)
8−等〕も本定義中に含めるものとする。
【0018】
フッ素化アルキル基含有エチレン性不飽和単量体の具体例として以下の如きものが挙げられる。
a−1 :CH
2=CHCOOCH
2CH
2C
8F
17
a−2 :CH
2=C(CH
3)COOCH
2CH
2C
8F
17
a−3 :CH
2=CHCOOCH
2CH
2C
12F
25
a−4 :CH
2=CHCOOCH
2CH
2C
6F
13
a−5 :CH
2=CHCOOCH
2CH
2C
4F
9
a−6 :CH
2=CFCOOCH
2CH
2C
6F
13
a−7 :CH
2=CHCOOCH
2CF
3
a−8 :CH
2=C(CH
3)COOCH
2CF(CF
3)
2
a−9 :CH
2=C(CH
3)COOCH
2CFHCF
3
a−10:CH
2=CHCOOCH
2(CF
2)
6H
a−11:CH
2=CHCOOCH
2CH(OH)CH
2C
8F
17
a−12:CH
2=CHCOOCH
2CH
2N(C
3H
7)SO
2C
8F
17
a−13:CH
2=CHCOOCH
2CH
2N(C
2H
5)COC
7F
15
a−14:CH
2=CHCOOC
2H
4(CF(CF
3)OCF
2)
3C
2F
5
a−15:CH
2=CHCOOCH
2(CF(CF
3)OCF
2)
2C
2F
5
a−16:CH
2=CHCOOCH
2CH
2NHSO
2C
4F
9
a−17:CH
2=CHCOOCH
2CH
2N(CH
3)SO
2C
4F
9
a−18:CH
2=CHCOOCH
2CH
2N(C
2H
5)SO
2C
4F
9
a−19:CH
2=CHCOOCH
2CH
2N(C
3H
7)SO
2C
4F
9
a−20:CH
2=C(CH
3)COOCH
2CH
2N(CH
3)SO
2C
4F
9
【0021】
フッ素化アルキル基含有エチレン性単量体の濃度は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、0.01〜4.0M(mol/l、以下同じ)が好ましく、0.03〜3.0Mがより好ましく、0.05〜2.0Mが特に好ましい。前記濃度が0.01〜4.0Mであると、より効率的に重合反応熱を除熱できる点で有利である
【0022】
本発明の第1の発明においては、上記重合性単量体とは構造が異なり、共重合可能な他の重合性単量体を用いることができる。他の重合性単量体としては、例えばビニル芳香族炭化水素、(メタ)アクリル系モノマー、共役ジエンなどが挙げられる。 前記ビニル芳香族炭化水素としては、例えば、スチレン、スチレン誘導体(p−ジメチルシリルスチレン、(p−ビニルフェニル)メチルスルフィド、p−ヘキシニルスチレン、p−メトキシスチレン、p−tert−ブチルジメチルシロキシスチレン、o−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−tert−ブチルスチレン、α−メチルスチレンなど)、ビニルナフタレン、ビニルアントラセン、1,1−ジフェニルエチレン、などが挙げられる。
前記アクリル系モノマーとしては、例えば、メチルアクリレート、エチルアクリレート、イソプロピルアクリレート、イソブチルアクリレート、エポキシアクリレート、エチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、テトラメチレングリコールテトラアクリレート、2−ヒドロキシ−1,3−ジアクリロキシプロパン、2,2−ビス[4−(アクリロキシメトキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(アクリロキシエトキシ)フェニル]プロパン、ジシクロペンテニルアクリレートトリシクロデカニルアクリレート、トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート、ウレタンアクリレートなどが挙げられる。
また、例えばメチルメタアクリレート(MMA)などの、前記アクリレートをメタクリレートにしたものが挙げられる。
前記共役ジエンとしては、例えば、1,3−ブタジエン、2−メチル−1,3−ブタジエン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、1,3−ヘキサジエン、1,3−シクロヘキサジエンなどが挙げられる。
【0023】
本発明の第2の発明においては、第1の重合性単量体、第2の重合性単量体の少なくともいずれかがフッ素化アルキル基含有エチレン性単量体を含有するものである。すなわち、A)第1の重合性単量体がフッ素化アルキル基含有エチレン性単量体を含有し、第2の重合性単量体がフッ素化アルキル基含有エチレン性単量体でない重合性単量体である場合、B)第1の重合性単量体がフッ素化アルキル基含有エチレン性単量体でない重合性単量体であり、第2の重合性単量体がフッ素化アルキル基含有エチレン性単量体を含有する場合、C)第1の重合性単量体、第2の重合性単量体のいずれもがフッ素化アルキル基含有エチレン性単量体を含有する場合である。第1の重合性単量体と第2の重合性単量体は、共重合可能であるが、構造が異なる。フッ素化アルキル基含有エチレン性単量体としては、上記した化合物が例示できる。フッ素化アルキル基含有エチレン性単量体でない重合性単量体は、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、上記したビニル芳香族炭化水素、(メタ)アクリル系モノマー、共役ジエンなどが挙げられる。なお、a)においては第1の重合性単量体、b)においては第2の重合性単量体、c)においては第1の重合性単量体、第2の重合性単量体が、フッ素化アルキル基含有エチレン性単量体とは共重合可能であるが構造が異なる他の重合性単量体を含有することができる。かかる他の重合性単量体としては、上記したものを例示することができる。
【0024】
前記第2の重合性単量体は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記第2の重合性単量体の濃度としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、0.01〜4.0M(mol/l、以下同じ)が好ましく、0.03〜3.0Mがより好ましく、0.05〜2.0Mが特に好ましい。前記濃度が0.01〜4.0Mであると、より効率的に重合反応熱を除熱できる点で有利である。
【0025】
本発明の第1の発明においては、前記した重合性単量体を、リビング重合反応用の開始剤、有機溶剤を用いて、溶媒に可溶化された液体の状態で、マイクロリアクターに導入して、重合する。
前記開始剤としては、リビングアニオン重合が進行すれば、特に制限はないが、例えば、有機リチウム試薬が挙げられる。
前記有機リチウム試薬としては、特に制限は無く、従来公知の有機リチウム試薬から適宜選択することができ、例えば、メチルリチウム、エチルリチウム、プロピルリチウム、ブチルリチウム(n−ブチルリチウム、sec−ブチルリチウム、iso−ブチルリチウム、tert−ブチルリチウムなど)、ペンチルリチウム、ヘキシルリチウム、メトキシメチルリチウム、エトキシメチルリチウム等のアルキルリチウム;α−メチルスチリルリチウム、1,1−ジフェニルヘキシルリチウム、1,1−ジフェニル−3−メチルペントリルリチウム、3−メチル−1,1−ジフェニルペンチルリチウム等のベンジルリチウム;ビニルリチウム、アリルリチウム、プロペニルリチウム、ブテニルリチウム等のアルケニルリチウム;エチニルリチウム、ブチニルリチウム、ペンチニルリチウム、ヘキシニルリチウム等のアルキニルリチウム;ベンジルリチウム、フェニルエチルリチウム等のアラルキルリチウム;フェニルリチウム、ナフチルリチウム等のアリールリチウム;2−チエニルリチウム、4−ピリジルリチウム、2−キノリルリチウム等のヘテロ環リチウム;トリ(n−ブチル)マグネシウムリチウム、トリメチルマグネシウムリチウム等のアルキルリチウムマグネシウム錯体等が挙げられる。中でも、反応性が高いため、高速な開始反応を行える点で、アルキルリチウムが好ましく、sec−ブチルリチウムがより好ましい。
前記有機リチウム試薬は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0026】
前記開始剤の濃度としては、特に制限はなく、前記モノマーの種類及び濃度に応じて適宜選択されるが、0.001〜1.0Mが好ましく、0.002〜0.75Mがより好ましく、0.01〜0.5Mが更に好ましく、0.02〜0.2Mが特に好ましい。前記濃度が前記特に好ましい範囲であると、マイクロリアクターの流路が閉塞を起こさずに、より実践的に反応を行える点で有利である。
【0027】
前記有機溶剤(溶媒)としては、たとえば、ペンタン、オクタン、シクロヘキサン、ベンゼン、トルエン、キシレン、デカリン、テトラリン、及びこれらの誘導体等の炭化水素類、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン(THF)、1,4−ジオキサン、1,2−ジメトシキエタン、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジグライム等のエーテル類等が挙げられる。これらの中でも前記開始剤の溶解性や対カチオンに対する溶媒和の強さ、重合速度の速さの点でテトラヒドロフラン(THF)が好ましい。本発明においては、得られるフッ素重合体の分子量分布を狭くする目的で、塩化リチウム、過塩素酸リチウム、リチウムアルコキシド、リチウムシラノレート、N,N,N‘,N’−テトラメチルエチレンジアミン、ピリジン等の添加剤をマイクロリアクターに導入し用いてもよい。前記添加剤の量としては、特に制限はなく、前記開始剤の量に応じて適宜選択されるが、添加剤1モルに対して0.05〜10Mが好ましく、0.1〜5Mが特に好ましい。
【0028】
本発明の第2の発明においては、まず前記した第1の重合性単量体を、リビング重合反応用の開始剤、有機溶剤を用いて、溶媒に可溶化された液体の状態で、マイクロリアクターに導入して、重合する。開始剤、有機溶剤は、前記したものを用いることができる。ついで、得られた中間重合体と第2の重合性単量体を、リビング重合反応用の開始剤、有機溶剤を用いて、溶媒に可溶化された液体の状態で、マイクロリアクターに導入して、重合する。開始剤、有機溶剤は、前記したものを用いることができる。
【0029】
本発明における重合反応時の反応温度としては、第1の発明、第2の発明とも特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、従来のバッチ方式で適用される−78℃以下でも好適に適用できるが、工業的に実施可能な温度条件として、−40℃以上の温度に適用される。このような温度としては、−40℃以上が好ましく、−28℃以上がより好ましい。前記温度が−40℃以上であると、簡易な構成の冷却装置を用いてブロック共重合体を製造することができ、製造コストを低減できる点で好ましい。また、前記温度が−28℃以上であると、より簡易な構成の冷却装置を用いてブロック共重合体を製造することができ、製造コストを大幅に低減できる点で好ましい。
【0030】
本発明に用いる複数の液体を混合可能なマイクロミキサーを備えるマイクロリアクターにおけるマイクロミキサーとしては、例えば、市販されているマイクロミキサーを用いることが可能であり、例えばインターディジタルチャンネル構造体を備えるマイクロリアクター、インスティチュート・フュール・マイクロテクニック・マインツ(IMM)社製シングルミキサーおよびキャタピラーミキサー;ミクログラス社製ミクログラスリアクター;CPCシステムス社製サイトス;山武社製YM−1、YM−2型ミキサー;島津GLC社製ミキシングティーおよびティー(T字コネクタ);マイクロ化学技研社製IMTチップリアクター;東レエンジニアリング開発品マイクロ・ハイ・ミキサー等が挙げられ、いずれも本発明で使用することができる。
【0031】
さらに、好ましい形態のマイクロミキサーシステムとして、重合体が通る流路をもつプロセスプレートと重合開始剤が通る流路をもつプロセスプレートを上下に積層し、流路出口で該2流体を合一させるマイクロミキサーと、合流後の流体が通る流路をもつマイクロミキサーを組み合わせることが好ましい。
【0032】
上記の形成方法で説明した反応流路は、少なくとも2つの部材を組み合わせて、部材間に形成された空間を反応流路とするものであるが、それ以外にも単なる管やパイプ形状のものを反応流路として用いても構わない。流路を流す流速としては、フッ素化アルキル基含有エチレン性単量体と共重合可能である単量体、重合開始剤とを含有する流体の反応容器内でのレイノルズ数を2〜300で連続的にコントロールすることにより、前記フッ素化アルキル基含有エチレン性単量体と共重合可能である単量体、開始剤とを含有する流体の混合性が乱流効果によりさらに高められることにより、さらに効率良く製造することができる。
ここで、該流体の流路内の移動をレイノルズ数2より大きい値でコントロールすることによりフッ素化アルキル基含有エチレン性単量体と共重合可能である単量体、開始剤とを含有する流体の混合性が著しく低下せず、その結果、短時間に反応が起こらずに生産効率が悪くなるといった不具合が防止でき、滞留時間が長くならないで反応が終了することから好ましい。また、レイノルズ数300超にコントロールすることは装置上困難である。
【0033】
尚、本発明でいうレイノルズ数とは下記の式(1)に従って計算されるものである。
【0034】
レイノルズ数=(D×u×ρ)/μ・・・式(1)
ここで、D(流路の内径)、u(平均流速)、ρ(流体密度)、μ(流体粘度)である。
本発明の製造方法で用いる反応装置としては、流路が伝熱性反応容器に設置された反応装置が好ましく、前記流路としては、微小管状であるものが加熱の迅速な制御が可能なことから好ましい。微小管状流路としては、流体断面積が0.1〜4.0mm
2となる空隙サイズを有する流路が、重合反応温度を制御する上で好ましい。なお、本発明において「断面」とは、流路中の流れ方向に対して垂直方向の断面を意味し、「断面積」はその断面の面積を意味する。
【0035】
流路の、断面形状は、正方形、長方形を含む矩形、台形や平行四辺形、三角形、五角形などを含む多角形状(これらの角が丸められた形状、アスペクト比の高い、すなわちスリット形状を含む)、星形状、半円、楕円状を含む円状などであってもよい。流路の断面形状は一定である必要はない。
【0036】
前記反応流路の形成方法は特に限定されるものではないが、一般的には、表面に複数の溝を有する部材(X)の、溝を有する面に他の部材(Y)が積層、接合等により固着され、部材(X)と部材(Y)との間に空間として形成される。
【0037】
前記流路には、さらに熱交換機能が設けられても良い。その場合には、例えば、部材(X)表面に温調流体が流れるための溝を設け、該温調流体が流れる為の溝を設けた面に他の部材を接着ないし積層するなどの方法により固着すればよい。一般的には、表面に溝を有する部材(X)と温調流体が流れるための溝を設けた部材(Y)とが、溝を設けた面と、他の部材の溝を設けた面と逆側の面とを固着することによって流路を形成し、これら部材(X)と部材(Y)とを複数交互に固着すればよい。
【0038】
この際、部材表面に形成された溝は、その周辺部より低い、いわゆる溝として形成されていても良いし、部材表面に立つ壁の間として形成されていても良い。部材の表面に溝を設ける方法は任意であり、例えば、射出成型、溶剤キャスト法、溶融レプリカ法、切削、エッチング、フォトリソグラフィー(エネルギー線リソグラフィーを含む)、レーザーアブレーションなどの方法を利用できる。
【0039】
部材中の流路のレイアウトは、用途目的に応じて直線、分岐、櫛型、曲線、渦巻き、ジグザグ、その他任意の配置の形をしていてもよい。
【0040】
流路は、その他、例えば、混合場、抽出場、分離場、流量測定部、検出部、貯液槽、膜分離機構、デバイス内外への接続口、絡路、クロマトグラフィーや電気泳動の展開路、バルブ構造の一部(弁の周囲部分)、加圧機構、減圧機構などと接続していてもよい。
【0041】
部材の外形は、特に限定する必要はなく、用途目的に応じた形状を採りうる。部材の形状としては、例えば、プレート状、シート状(フィルム状、リボン状などを含む。)、塗膜状、棒状、チューブ状、その他複雑な形状の成型物などであってよい。厚さなどの外形的寸法は一定であることが好ましい。部材の素材は任意であり、例えば、重合体、ガラス、セラミック、金属、半導体などであって良い。
【0042】
上記のように、本発明の製造方法で用いる反応装置としては、流路が伝熱性反応容器に設置された反応装置が好ましく、オイルバスや水浴等に浸漬されたチューブであっても良い。さらに、流路が形成された伝熱性反応容器からなる反応装置として、表面に複数の溝部が形成された伝熱性プレート状構造体を積層してなる構造を有する反応装置を用いることができる。
【0043】
このような反応装置としては、例えば、化学反応用デバイスとして用いられる部材中に前記流路(以下、単に「微小流路」ということがある)が設けられた装置等が挙げられる。
【0044】
以下、本発明で用いる好ましい形態の流路が設けられてなるマイクロリアクターの概略構成例を
図1及び
図2に記載する。
【0045】
前記化学反応用デバイス1は、例えば前記
図1において同一の長方形板状からなる第1プレート(前記
図1中の2)と第2プレート(前記
図1中の3)とが複数交互に積層されて構成されている。各1枚の第1プレートには流路(以下、反応流路という)が設けられている(以下、反応流路が設けられたプレートをプロセスプレートという)。また第2プレートには温調流体用の流路(以下、温調流路という)が設けられている(以下、温調流路が設けられたプレートを温調プレートという)。そして、
図2に示すようにそれらの供給口および排出口が、化学反応用デバイス1の端面1b、1c、側面1d、1eの各領域に分散して配置され、それら領域に、ラジカル重合開始剤、ラジカル重合性単量体、有機溶剤、さらに必要に応じて、連鎖移動剤等を含む流体と、温調流体を流すためのコネクタ30とジョイント部31とからなる継手部32がそれぞれ連結されている。
【0046】
これらの継手部を介して、ラジカル重合開始剤、ラジカル重合性単量体、有機溶剤、さらに必要に応じて、連鎖移動剤等を含む流体が端面1bから供給されて、端面1cに排出され、温調流体が側面1eから供給されて側面1dに排出されるようになっている。化学反応用デバイス1の平面視形状は図示のような長方形とは限定されず、正方形状、または端面1b、1c間よりも側面1d、1e間が長い長方形状としてもよい。
【実施例】
【0047】
<実施例で使用したマイクロミキサー>
本実施例で用いたマイクロリアクターは、T字型の管継手からなるマイクロミキサーと、前記マイクロミキサーの下流に連結されたチューブリアクターとを含んで構成される。
前記マイクロミキサーとしては、三幸精機工業株式会社製の特注品を使用した(本実施例の記載に基づいて製造を依頼し、同等のものを入手することが可能である)。なお、本実施例で使用したマイクロミキサーは、その内部に第一の導入路、第二の導入路及びこれらが合流する流路の一部を有し、前記マイクロミキサー内においては、そのいずれの内径も同じである。したがって、以下、これらの内径をまとめて「マイクロミキサーの内径」と称する。
【0048】
(実施例1)
フッ素化アルキル基含有エチレン性不飽和単量体の単独重合例
パーフルオロブチルエチルメタクリレート(FAMAC−4)の重合
アルゴンガスで置換した100mlナスフラスコ中に、注射器を用いパーフルオロブチルエチルメタクリレート9.49g(7.0ml)とテトラヒドロフラン(以下THFと略す)93.0mlを採取することにより、パーフルオロブチルエチルメタクリレート0.286M溶液100mlの調製を行った。一方、アルゴンガスで置換した100mlナスフラスコ中に、ジフェニルエチレン0.4506g、THF48.6mlを採取した後、氷水を浸した容器に浸漬させることにより冷却した。冷却後n−ブチルリチウム0.94mlを採取し攪拌することにより、濃度0.05Mの1,1−ジフェニルヘキシルリチウム50mlの調製を行った。マイクロリアクターを用いてパーフルオロブチルエチルメタクリレートを1,1−ジフェニルヘキシルリチウム(DPHLi)の存在下リビングアニオン重合を行った。本実施例で用いたマイクロリアクターはT字型の菅継手からなるマイクロミキサーと、マイクロミキサー下流に連結されたチューブリアクターから構成される。マイクロミキサーの菅継手径は250μm、チューブリアクターは内径1mm、長さ100cmで構成される。50mlガストシリンジ2本に、それぞれパーフルオロブチルエチルメタクリレート溶液と1,1−ジフェニルヘキシルリチウムを吸い込み、ハーバード社製 シリンジポンプ Model 11 Plusにセットした。反応温度は、マイクロリアクター全体を恒温層に埋没させることにより−28℃に調整した。パーフルオロブチルエチルメタクリレート4ml/min、1,1−ジフェニルヘキシルリチウム溶液を2ml/minの速度で送液することによりパーフルオロブチルエチルメタクリレートの重合を行った。次いで、マイクロリアクターを用いて、得られたパーフルオロブチルエチルメタクリレートの重合体をメタノールと混合して精製した。ここで用いたマイクロリアクターは、T字型の菅継手からなるマイクロミキサーと、マイクロミキサー下流に連結されたチューブリアクターから構成される。マイクロミキサーの菅継手径は500μm、チューブリアクターは内径1mm、長さ100cmで構成される。パーフルオロブチルエチルメタクリレート重合体6ml/min、メタノール1.5ml/minの速度で送液することにより、パーフルオロブチルエチルメタクリレート重合体の精製を行った。残存モノマーは検出されずポリマー転嫁率(反応率)100%であった。モノマーと開始剤の量から計算される理論分子量3,800に対し、Mn=4,600、Mw=5,020、Mw/Mn=1.1と理論分子量に非常に近く、分布の狭いポリマー溶液を得ることができた。簡略化した実施例1の反応手順を
図3に示す。
【0049】
(実施例2〜6)
実施例1において、パーフルオロブチルエチルメタクリレートの供給速度と反応温度を表1に示すとおりとした以外は、実施例1と同様にしてパーフルオロブチルエチルメタクリレート重合体を調製した。反応率、理論分子量、Mn、Mw/Mnを表1に示す。実施例2〜6のいずれにおいても、理論分子量に非常に近く、分布の狭いポリマー溶液を得ることができた。
【0050】
【表1】
【0051】
(実施例7、8)
パーフルオロヘキシルエチルメタクリレート(FAMAC−6)の重合
実施例1において、パーフルオロブチルエチルメタクリレートの代わりにパーフルオロヘキシルエチルメタクリレート0.3Mを用い、反応温度を0℃とした以外は、実施例1と同様にしてパーフルオロヘキシルエチルメタクリレート重合体を調製した(実施例7)。
また、実施例1において、パーフルオロブチルエチルメタクリレートの代わりにパーフルオロヘキシルエチルメタクリレート0.3Mを用い、反応温度を24℃とした以外は、実施例1と同様にしてパーフルオロヘキシルエチルメタクリレート重合体を調製した(実施例8)。簡略化した実施例7の反応手順を
図4に示す。また、反応率、理論分子量、Mn、Mw/Mnを表2に示す。実施例7、8のいずれにおいても、理論分子量に非常に近く、分布の狭いポリマー溶液を得ることができた。
【0052】
【表2】
【0053】
(実施例9)
フッ素化アルキル基含有エチレン性不飽和単量体と他のエチレン性不飽和単量体の単量体混合液の重合例
パーフルオロブチルエチルメタクリレートとメチルメタクリレート(MMA)の重合
アルゴンガスで置換した100mlナスフラスコ中に、注射器を用いパーフルオロブチルエチルメタクリレートとメチルメタクリレートとTHFを採取することにより、パーフルオロブチルエチルメタクリレート0.25M、メチルメタクリレート0.5Mの溶液100mlの調製を行った。一方、アルゴンガスで置換した100mlナスフラスコ中に、ジフェニルエチレン0.4506g、THF48.6mlを採取した後、氷水を浸した容器に浸漬させることにより冷却した。冷却後n−ブチルリチウム0.94mlを採取し攪拌することにより、濃度0.05Mの1,1−ジフェニルヘキシルリチウム50mlの調製を行った。マイクロリアクターを用いてパーフルオロブチルエチルメタクリレートとメチルメタクリレートを1,1−ジフェニルヘキシルリチウムの存在下リビングアニオン重合を行った。本実施例で用いたマイクロリアクターは実施例1のものと同一である。50mlガストンシリンジ2本に、それぞれパーフルオロブチルエチルメタクリレートとメチルメタクリレートの溶液と1,1−ジフェニルヘキシルリチウムを吸い込み、ハーバード社製 シリンジポンプ Model 11 Plusにセットした。反応温度は、マイクロリアクター全体を恒温層に埋没させることにより−28℃に調整した。パーフルオロブチルエチルメタクリレートとメチルメタクリレートの溶液4ml/min、1,1−ジフェニルヘキシルリチウム溶液を2ml/minの速度で送液することによりパーフルオロブチルエチルメタクリレートとメチルメタクリレートの重合を行った。次いで、マイクロリアクターを用いて、得られたパーフルオロブチルエチルメタクリレートとメチルメタクリレートとの共重合体をメタノールと混合して精製した。パーフルオロブチルエチルメタクリレートとメチルメタクリレートとの共重合体6ml/min、メタノール1.5ml/minの速度で送液することにより、パーフルオロブチルエチルメタクリレートとメチルメタクリレートとの共重合体の精製を行った。結果を表3に示す。パーフルオロブチルエチルメタクリレートの反応率は100%、メチルメタクリレートの反応率は99.7%、であった。Mn=3530、Mw/Mn=1.2であり、分布の狭いポリマー溶液を得ることができた。簡略化した実施例9の反応手順を
図5に示す。
【0054】
【表3】
【0055】
(実施例10)
実施例9において、パーフルオロブチルエチルメタクリレートとメチルメタクリレートの溶液の供給速度を6ml/minとした以外は、実施例9と同様にして共重合体の調製、精製を行った。結果を表3に示す。パーフルオロブチルエチルメタクリレートの反応率は100%、メチルメタクリレートの反応率は97.5%、Mn=5040、Mw/Mn=1.2であり、分布の狭いポリマー溶液を得ることができた。
【0056】
(実施例11)
実施例9において、メチルメタクリレートの代わりに、メトキシポリエチレングリコールモノメタクリレート(n=2)(PME−100)0.25Mを用いた以外は、実施例9と同様にしてパーフルオロブチルエチルメタクリレートとメトキシポリエチレングリコールモノメタクリレート(n=2)との共重合体を調製、精製した。結果を表4に示す。パーフルオロブチルエチルメタクリレートとメトキシポリエチレングリコールモノメタクリレート(n=2)の反応率は100%、Mn=3540、Mw/Mn=1.4であり、分布の狭いポリマー溶液を得ることができた。簡略化した実施例11の反応手順を
図6に示す
【0057】
【表4】
【0058】
フッ素化アルキル基含有エチレン性不飽和単量体と他のエチレン性不飽和単量体のブロック共重合体の重合例
(1)AB型ブロック共重合体調製例
(実施例12)
まず、実施例1と同様にしてパーフルオロブチルエチルメタクリレートの重合体を調製した。ついで、得られたパーフルオロブチルエチルメタクリレートの重合体とメチルメタクリレート0.5M溶液とをメチルメタクリレートの供給速度を4.0ml/minで、実施例1においてメタノールとの混合に用いたマイクロリアクターを用いて混合し、パーフルオロブチルエチルメタクリレートとメチルメタクリレートとのブロック共重合体を調製した。その後、実施例1と同様にしてメタノールを用いて精製を行った。結果を表5に示す。パーフルオロブチルエチルメタクリレートとメチルメタクリレートの反応率は100%であり、分布の狭いポリマー溶液を得ることができた。簡略化した実施例12の反応手順を
図7に示す。
【0059】
【表5】
【0060】
(実施例13、14)
実施例12において、メチルメタクリレートの供給速度を6.0ml/min(実施例13)、8.0ml/min(実施例14)とした以外は、実施例12と同様にしてパーフルオロブチルエチルメタクリレートとメチルメタクリレートとのブロック共重合体を調製、精製した。結果を表5に示す。パーフルオロブチルエチルメタクリレートとメチルメタクリレートの反応率は100%であり、分布の狭いポリマー溶液を得ることができた。
【0061】
(2)BA型ブロック共重合体調製例
(実施例15)
アルゴンガスで置換した100mlナスフラスコ中に、注射器を用いメチルメタクリレートとTHFを採取することにより、メチルメタクリレート0.5M溶液100mlの調製を行った。一方、アルゴンガスで置換した100mlナスフラスコ中に、ジフェニルエチレン、THFを採取した後、氷水を浸した容器に浸漬させることにより冷却した。冷却後n−ブチルリチウムを採取し攪拌することにより、濃度0.05Mの1,1−ジフェニルヘキシルリチウム50mlの調製を行った。マイクロリアクターを用いてメチルメタクリレートを1,1−ジフェニルヘキシルリチウムの存在下リビングアニオン重合を行った。
本実施例で用いたマイクロリアクターはT字型の菅継手からなるマイクロミキサーと、マイクロミキサー下流に連結されたチューブリアクターから構成される。マイクロミキサーの菅継手径は250μm、チューブリアクターは内径1mm、長さ12.5cmで構成される。50mlガストシリンジ2本に、それぞれメチルメタクリレート溶液と1,1−ジフェニルヘキシルリチウムを吸い込み、ハーバード社製 シリンジポンプ Model 11 Plusにセットした。反応温度は、マイクロリアクター全体を恒温層に埋没させることにより−12℃に調整した。メチルメタクリレート3ml/min、1,1−ジフェニルヘキシルリチウム溶液を1ml/minの速度で送液することによりメチルメタクリレートの重合を行った。ついで、得られたメチルメタクリレートの重合体とパーフルオロヘキシルエチルメタクリレート0.1M溶液を、メチルメタクリレート重合体の供給速度を4.0ml/min、パーフルオロヘキシルエチルメタクリレートの供給速度を2.0ml/minで、実施例1においてメタノールとの混合に用いたマイクロリアクターを用いて混合し、パーフルオロヘキシルエチルメタクリレートとメチルメタクリレートとのブロック共重合体を調製した。その後、実施例1と同様にしてメタノールを用いて精製を行った。結果を表6に示す。メチルメタクリレートの反応率は100%、パーフルオロヘキシルエチルメタクリレートの反応率は96%であり、分布の狭いポリマー溶液を得ることができた。簡略化した実施例15の反応手順を
図8に示す。
【0062】
【表6】
【0063】
(実施例16)
実施例15において、反応温度を−28℃とした以外は、実施例15と同様にして、パーフルオロヘキシルエチルメタクリレートとメチルメタクリレートとのブロック共重合体を調製した。その後、実施例1と同様にしてメタノールを用いて精製を行った。結果を表6に示す。メチルメタクリレートの反応率は99.7%、パーフルオロヘキシルエチルメタクリレートの反応率は95.4%であり、分布の狭いポリマー溶液を得ることができた。
【0064】
(比較例1)
バッチ型反応器を用いて、パーフルオロブチルエチルメタクリレートを1,1−ジフェニルヘキシルリチウム存在下でリビングアニオン重合させた。アルゴンガスで置換した100mlナスフラスコに、0.25M パーフルオロブチルエチルメタクリレート溶液8ml仕込み、恒温層に浸して−28℃に冷却した。磁気攪拌機を用いて攪拌しながら、0.05M 1,1−ジフェニルヘキシルリチウム溶液4mlを、3秒(sec)かけて滴下し、−28℃で5分間攪拌した。そして、実施例1と同様の方法により、比較例1のポリマーについてポリマー転化率、数平均分子量及び分子量分布を評価した。結果を表7に示す。ポリマー転化率は100%であったが、理論分子量に対してMnが大きく、分子量分布の大きな重合体が得られた。
【0065】
【表7】
【0066】
(比較例2)
比較例1において、反応温度を0℃とした以外は、比較例1と同様にして重合体を得た(比較例2)。結果を表7に示す。比較例2はポリマー転化率が低く、分子量分布の大きな重合体が得られた。