特許第6248417号(P6248417)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6248417
(24)【登録日】2017年12月1日
(45)【発行日】2017年12月20日
(54)【発明の名称】撮像素子およびカメラ
(51)【国際特許分類】
   H04N 5/369 20110101AFI20171211BHJP
   H04N 9/07 20060101ALI20171211BHJP
   H04N 5/374 20110101ALI20171211BHJP
【FI】
   H04N5/369
   H04N9/07 A
   H04N5/374
【請求項の数】4
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2013-110725(P2013-110725)
(22)【出願日】2013年5月27日
(65)【公開番号】特開2014-230235(P2014-230235A)
(43)【公開日】2014年12月8日
【審査請求日】2016年4月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004112
【氏名又は名称】株式会社ニコン
(74)【代理人】
【識別番号】100084412
【弁理士】
【氏名又は名称】永井 冬紀
(74)【代理人】
【識別番号】100078189
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 隆男
(72)【発明者】
【氏名】小石 裕之
(72)【発明者】
【氏名】森 吉造
【審査官】 鈴木 明
(56)【参考文献】
【文献】 特開平10−262260(JP,A)
【文献】 特開昭59−030384(JP,A)
【文献】 特開昭59−063892(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04N 5/30−5/378
H04N 9/04−9/11
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
各々が長方形の受光面を有し、少なくとも色光に感度を有する第1層と、少なくとも緑色光に感度を有する第2層と、少なくとも色光に感度を有する第3層と、を有する複数の撮像画素を、長辺方向が第1方向となるように二次元状に配列された撮像領域を備え、
前記複数の撮像画素は、奇数列目と偶数列目とで前記第1方向における重心位置が異なるように配列され、前記受光面の長辺の長さと短辺の長さとの比は1より大きく2より小さい撮像素子。
【請求項2】
請求項1に記載の撮像素子において、
前記第1層は、赤色光、緑色光、および青色光を光電変換し、前記第2層は、前記第1層を通過した赤色光および緑色光を光電変換し、前記第3層は、前記第2層を通過した赤色光を光電変換する撮像素子。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の撮像素子において、
前記撮像領域は、長辺方向が前記第1方向となる長方形である撮像素子。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項に記載の撮像素子を備えるカメラ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、撮像素子およびカメラに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、多数の撮像画素を二次元状に配列し被写体のデジタル画像データを得る撮像素子が知られている(例えば特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−267912号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来技術には、解像力を高めるため撮像画素を小さくすると、撮像画素ごとの受光面積が減少して感度が悪くなってしまうという問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1に記載の撮像素子は、各々が長方形の受光面を有し、少なくとも色光に感度を有する第1層と、少なくとも緑色光に感度を有する第2層と、少なくとも色光に感度を有する第3層と、を有する複数の撮像画素を、長辺方向が第1方向となるように二次元状に配列された撮像領域を備え、前記複数の撮像画素は、奇数列目と偶数列目とで前記第1方向における重心位置が異なるように配列され、前記受光面の長辺の長さと短辺の長さとの比は1より大きく2より小さい。
請求項4に記載のカメラは、請求項1〜3のいずれか一項に記載の撮像素子を備える。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、感度の向上と解像力の向上を両立させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本発明の第1の実施の形態に係る撮像装置の構成を模式的に示す断面図である。
図2】撮像素子3の構成を示す断面図である。
図3】撮像素子3の画素配列を示す上面図である。
図4】ベイヤー配列のカラーフィルタを有する単板式の撮像素子の撮像面を模式的に示す平面図である。
図5】3層のフォトダイオードを積層した構成の撮像素子の撮像面を模式的に示す平面図である。
図6】本実施形態の撮像素子3の撮像面を模式的に示した平面図である。
図7】撮像素子3、5の周波数解像域を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
(第1の実施の形態)
図1は、本発明の第1の実施の形態に係る撮像装置の構成を模式的に示す断面図である。撮像装置1はいわゆる一眼レフレックス方式のデジタルカメラであり、撮像光学系2により結像された被写体像を、撮像素子3により撮像してデジタル画像データを作成する。
【0009】
撮像素子3はCMOSイメージセンサである。撮像素子3の撮像面は長方形であり、長辺方向は水平方向(横方向)と略一致している。撮像素子3の撮像面の縦横比は、約2対3である。制御装置4は、撮像素子3により出力された撮像信号に種々の画像処理を施してデジタル画像データを作成する。
【0010】
図2は、撮像素子3の構成を示す断面図である。撮像素子3は、3層のフォトダイオードを積層した構成を有している。撮像面の最も浅い位置にある第1層31は、青に相当する波長域の光(青色光)と、緑に相当する波長域の光(緑色光)と、赤に相当する波長域の光(赤色光)とを光電変換する。次に浅い位置にある第2層32は、緑に相当する波長域の光(緑色光)と、赤に相当する波長域の光(赤色光)とを光電変換する。最も深い位置にある第3層33は、赤に相当する波長域の光(赤色光)のみを光電変換する。シリコン基板の内部へは波長が長い光ほどより深く進入するので、上記のようにフォトダイオードを積層することで、各色の光量を個別に検出することができる。
【0011】
例えば緑色光の光量は、第2層32により検出された光量から、第3層33により検出された光量を引くことにより検出可能である。同様に、青色光の光量は、第1層31により検出された光量から、第2層32により検出された光量を引くことにより検出可能である。
【0012】
図3は、撮像素子3の画素配列を示す上面図である。なお図3では、撮像領域(撮像面)に配列された撮像画素の一部のみを拡大して図示しており、実際には図3に示したよりも多数(例えば数百万以上)の撮像画素が撮像領域に配列されている。
【0013】
撮像面に配列された複数の撮像画素30は、それぞれ長方形状の受光面を有している。撮像画素30の長辺方向は、撮影画面の長辺方向(すなわち撮像素子3の撮像領域の長辺方向)と略一致している。撮像画素30の受光面の長辺は、短辺の約√2倍程度の長さを有している。複数の撮像画素30は、奇数列34と偶数列35とで、撮像画素30の水平方向における重心位置が異なっている。具体的には、偶数列35に配列された撮像画素30の重心位置は、奇数列34に配列された撮像画素30の重心位置から、0.5Lだけ水平方向にずれている。換言すると、撮像画素30は千鳥配列されている。
【0014】
以上のように構成された撮像素子3は、従来の撮像素子に比べて高い解像力を有する。以下、この点について、撮像面に正方形状の受光面を有する撮像画素が正方配列された従来の撮像素子と、本実施形態の撮像素子3とを比較して説明する。なお以下の説明では、従来の撮像素子として、ベイヤー配列のカラーフィルタを有する単板式の撮像素子と、本実施形態の撮像素子3と同様に3層のフォトダイオードを積層した構成の撮像素子とを挙げる。また、撮像画素の大きさについては、本実施形態の撮像素子3が有する撮像画素30の縦方向の長さをLとし、従来の撮像素子は、各辺が長さLの撮像画素を有するものとして説明する。つまり、本実施形態の撮像素子3が有する撮像画素30は、従来の撮像素子が有する撮像画素を横方向に引き延ばした形状を有するものとして説明する。
【0015】
図4は、ベイヤー配列のカラーフィルタを有する単板式の撮像素子の撮像面を模式的に示す平面図である。図4に図示した撮像素子5の撮像面には、赤色のカラーフィルタを有する赤色画素50Rと、緑色のカラーフィルタを有する緑色画素50Gと、青色のカラーフィルタを有する青色画素50Bとが複数配列されている。
【0016】
よく知られているように、ベイヤー配列においては、緑色画素50Gの数が、赤色画素50Rの数および青色画素50Bの数よりも多くなっている。従って、ベイヤー配列を採用する撮像素子5の解像度は、緑色光と、赤色光および青色光とで分けて考える必要がある。
【0017】
まず、緑色光に対する解像度について検討する。図4(a)に示すように、緑色画素50Gは、横方向にLの間隔で配列されている。縦方向についても同様に、緑色画素50Gの配列間隔はLである。斜め45度方向について見ると、緑色画素50Gは、(√2)×L(約1.4L)の間隔で配列されている。つまり緑色画素50Gは、垂直方向および水平方向に伸びる白黒の直線を、白の直線と黒の直線の間隔がL以上であれば解像できる。また、斜め45度方向に伸びる白黒の直線を、白の直線と黒の直線の間隔が約1.4L以上であれば解像できる。
【0018】
次に、赤色光に対する解像度について検討する。赤色画素50Rは、緑色画素50Gより疎に配置されているので、赤色光に対する解像度は緑色光の解像度よりも低い。図4(b)に示すように、赤色画素50Rは、横方向および縦方向に2Lの間隔で配列されている。また、斜め45度方向について見ると、赤色画素50Rは(√2)×L(約1.4L)の間隔で配列されている。つまり、撮像素子5の赤色光に対する解像度は、垂直方向および水平方向については緑色光の半分であり、斜め45度方向については緑色光と同等である。
【0019】
なお、青色光に対する解像度は赤色光の場合と同一であるので説明を省略する。
【0020】
図5は、3層のフォトダイオードを積層した構成の撮像素子の撮像面を模式的に示す平面図である。図5に示した撮像素子6の撮像面には、赤色光、緑色光、青色光に感度を有する撮像画素60が複数配列されている。個々の撮像画素60の大きさが、図4に示した撮像素子5のそれと同一であるならば、撮像素子6の撮像出力から作成される画像の画素数は、図4に示した撮像素子5に比べて多くなる。
【0021】
撮像画素60は、横方向および縦方向にLの間隔で、斜め45度方向に(√2)/2×L(約0.7L)の間隔で配列されている。つまり撮像素子6の垂直方向および水平方向の解像度は、緑色光についてはベイヤー配列を採用する撮像素子5の解像度と同等であり、赤色光および青色光については撮像素子5の解像度よりも高い。また、斜め45度方向の解像度は、どの色の光であっても、ベイヤー配列を採用する撮像素子5の解像度よりも高い。
【0022】
図6は、本実施形態の撮像素子3の撮像面を模式的に示した平面図である。複数の撮像画素30の受光面は、それぞれ縦方向が短辺、横方向が長辺の長方形であり、縦方向の長さがL、横方向の長さが約(√2)×Lである。
【0023】
撮像画素30は、横方向に(√2)/2×L(約0.7L)の間隔で配列されている。また、縦方向にLの間隔で、斜め45度方向には((√2)−1)/2×L(約0.2L)の間隔で、それぞれ配列されている。つまり撮像素子3は、垂直方向に伸びる白黒の直線を、白の直線と黒の直線の間隔が約0.7L以上であれば解像できる。また、水平方向に伸びる白黒の直線は白の直線と黒の直線の間隔がL以上であれば、斜め45度方向に伸びる白黒の直線は白の直線と黒の直線の間隔が約0.2L以上であれば、それぞれ解像できる。
【0024】
図7は、本実施形態の撮像素子3および従来の撮像素子5のサンプリング信号が持つ周波数解像域を示す図である。図7の横軸は水平方向において撮像素子3および撮像素子5が解像可能な周波数帯域を、図7の縦軸は垂直方向において撮像素子3および撮像素子5が解像可能な周波数帯域を、それぞれ示している。図7に示すように、従来の撮像素子5のナイキスト周波数71は、水平方向および垂直方向に対称な形状になっているのに対し、本実施形態の撮像素子3のナイキスト周波数72は、それを水平方向に引き延ばした形状になっている。つまり、本実施形態の撮像素子3は、従来の撮像素子5よりも水平方向および斜め方向の解像力が高い。
【0025】
上述した第1の実施の形態による撮像素子によれば、次の作用効果が得られる。
(1)撮像素子3は、各々が長方形の受光面を有する複数の撮像画素30を、長辺方向が水平方向と略一致するように二次元状に配列された撮像領域を備える。複数の撮像画素30は、奇数列目と偶数列目とで、水平方向における重心位置が異なるように配列され、受光面の長辺の長さと短辺の長さとの比は1より大きく2より小さい約√2である。このようにしたので、感度の向上と解像力の向上を両立させることができる。感度の向上は、図4図5に示した従来の撮像素子5、6に比べて、撮像画素ごとの受光面が大きいことによる。また解像力の向上は、図6に示した通り、横方向および斜め45度方向において、従来より細かいピッチで撮像画素30が存在することによる。
【0026】
(2)撮像素子3の撮像領域は長方形であり、複数の撮像画素30の長辺方向は、撮像領域の長辺方向と略一致する。このようにしたので、撮像領域の長辺方向について解像力が向上する。また、本実施形態において撮像領域の長辺方向は水平方向である。人間の目は横方向に2つ並んでいるので、撮影の際や撮影画像を鑑賞する際には、水平方向に解像度が高い方がより望ましい。
【0027】
次のような変形も本発明の範囲内であり、変形例の一つ、もしくは複数を上述の実施形態と組み合わせることも可能である。
【0028】
(変形例1)
本発明を適用する撮像素子は、CMOSイメージセンサ以外のイメージセンサであってもよい。例えば特許文献1に記載された撮像素子のように、有機光電変換膜を用いたイメージセンサであってもよい。また、撮像素子は単板式でなくてもよい。例えばプリズム等で被写体光を赤色光、緑色光、青色光に分光して各色の光を当該光に対応する受光素子で受光する、いわゆる三板式の撮像素子にも本発明を適用することができる。
【0029】
(変形例2)
撮像画素30の短辺と長辺の比は、1:√2でなくてもよい。より具体的には、長辺の長さが、短辺に対し1より大きく2より小さい比率の長さであればよい。また、この比率は、撮像素子3の撮像領域の短辺と長辺の比と異なっていてよい。
【0030】
(変形例3)
上述した実施形態において、撮像画素30は水平方向(横方向)に長い受光面を有していたが、これを、垂直方向(縦方向)に長くしてもよい。また、撮像素子3の撮像領域は、垂直方向(縦方向)に長い長方形であってもよいし、正方形であってもよい。撮像素子3の撮像領域が長方形の場合において、その長辺方向は撮像画素30の長辺方向と一致していなくてもよい。
【0031】
本発明の特徴を損なわない限り、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想の範囲内で考えられるその他の形態についても、本発明の範囲内に含まれる。
【符号の説明】
【0032】
1…撮像装置、2…撮像光学系、3、5、6…撮像素子、4…制御装置、30、60…撮像画素、50R…赤色画素、50G…緑色画素、50B…青色画素
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7