(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、発明の実施の形態を通じて本発明を説明するが、以下の実施形態は特許請求の範囲にかかる発明を限定するものではない。また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0010】
図1は、本実施形態に係る裏面照射型の撮像素子100の断面図である。撮像素子100は、入射光に対応した画素信号を出力する撮像チップ113と、画素信号を処理する信号処理チップ111と、画素信号を記憶するメモリチップ112とを備える。これら撮像チップ113、信号処理チップ111およびメモリチップ112は積層されており、Cu等の導電性を有するバンプ109により互いに電気的に接続される。
【0011】
なお、図示するように、入射光は主に白抜き矢印で示すZ軸プラス方向へ向かって入射する。本実施形態においては、撮像チップ113において、入射光が入射する側の面を裏面と称する。また、座標軸に示すように、Z軸に直交する紙面左方向をX軸プラス方向、Z軸およびX軸に直交する紙面手前方向をY軸プラス方向とする。以降のいくつかの図においては、
図1の座標軸を基準として、それぞれの図の向きがわかるように座標軸を表示する。
【0012】
撮像チップ113の一例は、裏面照射型のMOSイメージセンサである。PD層106は、配線層108の裏面側に配されている。PD層106は、二次元的に配され、入射光に応じた電荷を蓄積する複数のPD(フォトダイオード)104、および、PD104に対応して設けられたトランジスタ105を有する。
【0013】
PD層106における入射光の入射側にはパッシベーション膜103を介してカラーフィルタ102が設けられる。カラーフィルタ102は、互いに異なる波長領域を透過する複数の種類を有しており、PD104のそれぞれに対応して特定の配列を有している。カラーフィルタ102の配列については後述する。カラーフィルタ102、PD104およびトランジスタ105の組が一つの画素を形成する。
【0014】
カラーフィルタ102における入射光の入射側には、それぞれの画素に対応して、マイクロレンズ101が設けられる。マイクロレンズ101は、対応するPD104へ向けて入射光を集光する。
【0015】
配線層108は、PD層106からの画素信号を信号処理チップ111に伝送する配線107を有する。配線107は多層であってもよく、また、受動素子および能動素子が設けられてもよい。
【0016】
配線層108の表面には複数のバンプ109が配される。当該複数のバンプ109が信号処理チップ111の対向する面に設けられた複数のバンプ109と位置合わせされて、撮像チップ113と信号処理チップ111とが加圧等されることにより、位置合わせされたバンプ109同士が接合されて、電気的に接続される。
【0017】
同様に、信号処理チップ111およびメモリチップ112の互いに対向する面には、複数のバンプ109が配される。これらのバンプ109が互いに位置合わせされて、信号処理チップ111とメモリチップ112とが加圧等されることにより、位置合わせされたバンプ109同士が接合されて、電気的に接続される。
【0018】
なお、バンプ109間の接合には、固相拡散によるCuバンプ接合に限らず、はんだ溶融によるマイクロバンプ結合を採用しても良い。また、バンプ109は、例えば後述する一つの単位ブロックに対して一つ程度設ければ良い。したがって、バンプ109の大きさは、PD104のピッチよりも大きくても良い。また、画素が配列された画素領域以外の周辺領域において、画素領域に対応するバンプ109よりも大きなバンプを併せて設けても良い。
【0019】
信号処理チップ111は、表裏面にそれぞれ設けられた回路を互いに接続するTSV(シリコン貫通電極)110を有する。TSV110は、周辺領域に設けられることが好ましい。また、TSV110は、撮像チップ113の周辺領域、メモリチップ112にも設けられて良い。
【0020】
図2は、撮像チップ113の画素配列と単位ブロック131を説明する図である。特に、撮像チップ113を裏面側から観察した様子を示す。撮像チップ113の撮像領域120には2000万個以上もの画素がマトリックス状に配列されている。
図2の例においては、隣接する4画素×4画素の16画素が一つの単位ブロック131を形成する。図の格子線は、隣接する画素がグループ化されて単位ブロック131を形成する概念を示す。単位ブロック131を形成する画素の数はこれに限られず1000個程度、例えば32画素×64画素でもよいし、それ以上でもそれ以下でもよい。
【0021】
撮像領域120の部分拡大図に示すように、単位ブロック131は、緑色画素Gb、Gr、青色画素Bおよび赤色画素Rの4画素から成るいわゆるベイヤー配列を、上下左右に4つ内包する。緑色画素は、カラーフィルタ102として緑色フィルタを有する画素であり、入射光のうち緑色波長帯の光を受光する。同様に、青色画素は、カラーフィルタ102として青色フィルタを有する画素であって青色波長帯の光を受光し、赤色画素は、カラーフィルタ102として赤色フィルタを有する画素であって赤色波長帯の光を受光する。
【0022】
図3は、撮像チップ113の単位ブロック131に対応する回路図である。図において、代表的に点線で囲む矩形が、1画素に対応する回路を表す。なお、以下に説明する各トランジスタの少なくとも一部は、
図1のトランジスタ105に対応する。
【0023】
上述のように、単位ブロック131は、16画素から形成される。それぞれの画素に対応する16個のPD104は、それぞれ転送トランジスタ302に接続され、各転送トランジスタ302の各ゲートには、転送パルスが供給されるTX配線307に接続される。本実施形態において、TX配線307は、16個の転送トランジスタ302に対して共通接続される。
【0024】
各転送トランジスタ302のドレインは、対応する各リセットトランジスタ303のソースに接続されると共に、転送トランジスタ302のドレインとリセットトランジスタ303のソース間のいわゆるフローティングディフュージョンFDが増幅トランジスタ304のゲートに接続される。リセットトランジスタ303のドレインは電源電圧が供給されるVdd配線310に接続され、そのゲートはリセットパルスが供給されるリセット配線306に接続される。本実施形態において、リセット配線306は、16個のリセットトランジスタ303に対して共通接続される。
【0025】
各々の増幅トランジスタ304のドレインは電源電圧が供給されるVdd配線310に接続される。また、各々の増幅トランジスタ304のソースは、対応する各々の選択トランジスタ305のドレインに接続される。選択トランジスタ305の各ゲートには、選択パルスが供給されるデコーダ配線308に接続される。本実施形態において、デコーダ配線308は、16個の選択トランジスタ305に対してそれぞれ独立に設けられる。そして、各々の選択トランジスタ305のソースは、共通の出力配線309に接続される。負荷電流源311は、出力配線309に電流を供給する。すなわち、選択トランジスタ305に対する出力配線309は、ソースフォロアにより形成される。なお、負荷電流源311は、撮像チップ113側に設けても良いし、信号処理チップ111側に設けても良い。
【0026】
ここで、電荷の蓄積開始から蓄積終了後の画素出力までの流れを説明する。リセット配線306を通じてリセットパルスがリセットトランジスタ303に印加され、同時にTX配線307を通じて転送パルスが転送トランジスタ302に印加されると、PD104およびフローティングディフュージョンFDの電位はリセットされる。
【0027】
PD104は、転送パルスの印加が解除されると、受光する入射光を電荷に変換して蓄積する。その後、リセットパルスが印加されていない状態で再び転送パルスが印加されると、蓄積された電荷はフローティングディフュージョンFDへ転送され、フローティングディフュージョンFDの電位は、リセット電位から電荷蓄積後の信号電位になる。そして、デコーダ配線308を通じて選択パルスが選択トランジスタ305に印加されると、フローティングディフュージョンFDの信号電位の変動が、増幅トランジスタ304および選択トランジスタ305を介して出力配線309に伝わる。これにより、リセット電位と信号電位とに対応する画素信号は、単位画素から出力配線309に出力される。
【0028】
図示するように、本実施形態においては、単位ブロック131を形成する16画素に対して、リセット配線306とTX配線307が共通である。すなわち、リセットパルスと転送パルスはそれぞれ、16画素全てに対して同時に印加される。したがって、単位ブロック131を形成する全ての画素は、同一のタイミングで電荷蓄積を開始し、同一のタイミングで電荷蓄積を終了する。ただし、蓄積された電荷に対応する画素信号は、それぞれの選択トランジスタ305が選択パルスによって順次印加されて、選択的に出力配線309に出力される。また、リセット配線306、TX配線307、出力配線309は、単位ブロック131毎に別個に設けられる。
【0029】
このように単位ブロック131を基準として回路を構成することにより、単位ブロック131ごとに撮像条件を異ならせることができる。例えば、隣接する単位ブロック131同士で、異なった電荷蓄積時間による画素信号をそれぞれ出力させることができる。更に言えば、一方の単位ブロック131に1回の電荷蓄積を行わせている間に、他方の単位ブロック131に何回もの電荷蓄積を繰り返させてその都度画素信号を出力させることにより、これらの単位ブロック131同士で異なるフレームレートで動画用の各フレームを出力することもできる。また、撮影感度を異ならせることもできる。
【0030】
図4は、本実施形態に係る撮像装置の構成を示すブロック図である。撮像装置500は、撮影光学系としての撮影レンズ520を備え、撮影レンズ520は、光軸OAに沿って入射する被写体光束を撮像素子100へ導く。撮影レンズ520は、撮像装置500に対して着脱できる交換式レンズであっても構わない。撮像装置500は、撮像素子100、システム制御部501、駆動部502、測光部503、ワークメモリ504、記録部505、および表示部506を主に備える。
【0031】
撮影レンズ520は、複数の光学レンズ群から構成され、シーンからの被写体光束をその焦点面近傍に結像させる。なお、
図4では瞳近傍に配置された仮想的な1枚のレンズで当該撮影レンズ520を代表して表している。駆動部502は、システム制御部501からの指示に従って撮像素子100のタイミング制御、領域制御等の電荷蓄積制御を実行する制御回路である。
【0032】
撮像素子100は、画素信号をシステム制御部501の画像処理部511へ引き渡す。画像処理部511は、ワークメモリ504をワークスペースとして種々の画像処理を施し、予め定められた形式の画像データを生成する。生成された画像データは、記録部505に記録されるとともに、表示信号に変換されて予め設定された時間の間、表示部506に表示される。
【0033】
測光部503は、画像データを生成する一連の撮影シーケンスに先立ち、シーンの輝度分布を検出する。測光部503は、例えば100万画素程度のAEセンサを含む。システム制御部501の演算部512は、測光部503の出力を受けてシーンの領域ごとの輝度を算出する。演算部512は、算出した輝度分布に従ってシャッタ速度、絞り値、ISO感度を決定する。測光部503は撮像素子100で兼用してもよい。なお、演算部512は、撮像装置500を動作させるための各種演算も実行する。
【0034】
駆動部502は、一部または全部が撮像チップ113に搭載されてもよいし、一部または全部が信号処理チップ111に搭載されてもよい。システム制御部501の一部が撮像チップ113または信号処理チップ111に搭載されてもよい。
【0035】
図5は、信号処理チップ111の一例としての具体的構成を示すブロック図である。信号処理チップ111は、駆動部502の機能を担う。
【0036】
信号処理チップ111は、分担化された制御機能としてのセンサ制御部441、ブロック制御部442、同期制御部443、信号制御部444、個別回路部450A等と、これらの各制御部を統括制御する駆動制御部420とを含む。信号処理チップ111は、さらに、信号処理チップ111側に配された画像処理部470、および、駆動制御部420と撮像装置500本体のシステム制御部501と間のI/F回路418を含む。これらセンサ制御部441、ブロック制御部442、同期制御部443、信号制御部444、駆動制御部420および画像処理部470は、信号処理チップ111に対して一つずつ設けられる。
【0037】
一方、個別回路部450A、450B、450C、450D、450Eは、単位ブロック131A、131B、131C、131D、131Eごとに設けられる。個別回路部450A、450B、450C、450D、450Eは、同一の構成を有するので、以下、個別回路部450Aについて説明する。個別回路部450Aは、CDS回路410、マルチプレクサ411、A/D変換回路412、デマルチプレクサ413、メモリ414および演算回路415を含む。
【0038】
演算回路415は、I/F回路418を介してシステム制御部501との間で信号を送受信する。本実施形態において、信号処理チップ111とシステム制御部501側の画像処理部511とは別パッケージであって、互いに信号線490で電気的に接続されている。よって、演算回路415は、I/F回路418および信号線490を介して画像処理部511と信号を送受信する。
【0039】
個別回路部450Aは対応する単位ブロック131Aの画素が配された領域に重畳した領域に配されていることが好ましい。これにより、各チップを面方向に大きくすることなく、複数の単位ブロック131Aのそれぞれに個別回路部450Aを設けることができる。
【0040】
駆動制御部420は、タイミングメモリ430を参照して、システム制御部501からの指示を、各制御部が実行可能な制御信号に変換してそれぞれに引き渡す。特に、駆動制御部420は、単位ブロック131A等のそれぞれに対して別個の制御パラメータで制御する場合に、単位ブロック131Aを特定する情報ともに各制御部に当該制御パラメータを引き渡す。駆動制御部420は、1枚の画像取得制御において撮影指示の信号をシステム制御部501から一旦受け取ると、その後は各画素の制御についてその都度システム制御部501から指示を受けること無く、蓄積制御を完了させることができる。
【0041】
センサ制御部441は、撮像チップ113へ送出する、各画素の電荷蓄積、電荷読み出しに関わる制御パルスの送出制御を担う。具体的には、センサ制御部441は、対象画素に対してリセットパルスと転送パルスを送出することにより、電荷蓄積の開始と終了を制御し、読み出し画素に対して選択パルスを送出することにより、画素信号を出力配線309へ出力させる。
【0042】
ブロック制御部442は、撮像チップ113へ送出する、制御対象となる単位ブロック131を特定する特定パルスの送出を実行する。各画素がTX配線307およびリセット配線306を介して受ける転送パルスおよびリセットパルスは、センサ制御部441が送出する各パルスとブロック制御部442が送出する特定パルスの論理積となる。このように、各領域を互いに独立したブロックとして制御することができる。
【0043】
同期制御部443は、同期信号を撮像チップ113へ送出する。各パルスは、同期信号に同期して撮像チップ113においてアクティブとなる。例えば、同期信号を調整することにより、同一の単位ブロック131A等に属する画素の特定画素のみを制御対象とするランダム制御、間引き制御等を実現する。
【0044】
信号制御部444は、主にA/D変換回路412に対するタイミング制御を担う。出力配線309を介して出力された画素信号は、CDS回路410およびマルチプレクサ411を経てA/D変換回路412に入力される。CDS回路410は画素信号からノイズを取り除く。
【0045】
A/D変換回路412は、信号制御部444によって制御されて、入力された画素信号をデジタル信号に変換する。デジタル信号に変換された画素信号は、デマルチプレクサ413に引き渡され、そしてそれぞれの画素に対応するメモリ414にデジタルデータの画素値として格納される。
【0046】
メモリ414には、引渡要求に従って画素信号を伝送するデータ転送インタフェースが設けられている。データ転送インタフェースは、画像処理部511と繋がるデータ転送ラインと接続されている。データ転送ラインは例えばバスラインのうちのデータバスによって構成される。この場合、システム制御部501から駆動制御部420への引渡要求は、アドレスバスを利用したアドレス指定によって実行される。
【0047】
データ転送インタフェースによる画素信号の伝送は、アドレス指定方式に限らず、さまざまな方式を採用しうる。例えば、データ転送を行うときに、各回路の同期に用いられるクロック信号の立ち上がり・立ち下がりの両方を利用して処理を行うダブルデータレート方式を採用し得る。また、アドレス指定などの手順を一部省略することによってデータを一気に転送し、高速化を図るバースト転送方式を採用し得る。また、制御部、メモリ部、入出力部を並列に接続している回線を用いたバス方式、直列にデータを1ビットずつ転送するシリアル方式などを組み合わせて採用することもできる。
【0048】
このように構成することにより、画像処理部511は、必要な画素信号に限って受け取ることができるので、特に低解像度の画像を形成する場合などにおいて、高速に画像処理を完了させることができる。また、演算回路415に積算処理を実行させる場合には、画像処理部511が積算処理を実行しなくて良いので、機能分担と並行処理により、画像処理の高速化を図ることができる。
【0049】
信号処理チップ111は、フラッシュRAM等により形成されるタイミングメモリ430を有する。タイミングメモリ430は、いずれの単位ブロック131A等に対して何回の電荷蓄積を繰り返すかについての蓄積回数情報等の制御パラメータを、単位ブロック131A等を特定する情報に対応づけて格納する。制御パラメータのいずれかは、個別回路部450A等の演算回路415により算出されて、上記タイミングメモリ430に格納される。
【0050】
駆動制御部420は、撮像チップ113に対する電荷蓄積制御を実行するに留まらず、読み出し制御の実行においてもタイミングメモリ430を参照する。例えば、駆動制御部420は、各単位ブロック131の蓄積回数情報を参照して、デマルチプレクサ413から出力される画素信号をメモリ414の対応アドレスに格納する。
【0051】
駆動制御部420は、システム制御部501からの引渡要求に従って、対象画素信号をメモリ414から読み出し、画像処理部511へ引き渡す。メモリ414は、各画素に対応する画素信号を格納できるメモリ空間を有する。
【0052】
画像処理部470は、個別回路部450A、450B等のそれぞれ演算回路415から画素信号を取得して、縮小画像を生成する。画像処理部470は、当該縮小画像に基づいて、個別回路部450A、450B等に対応する単位ブロック131の画素信号の圧縮率を特定して、それぞれの演算回路415に送信する。
【0053】
上記の通り、単位ブロック131のそれぞれに対応して出力配線309が設けられている。撮像素子100は撮像チップ113、信号処理チップ111およびメモリチップ112を積層しているので、これら出力配線309にバンプ109を用いたチップ間の電気的接続を用いることにより、各チップを面方向に大きくすることなく配線を引き回すことができる。同様に、各制御部から単位ブロックへの信号線についても、バンプ109を用いたチップ間の電気的接続を用いることにより、各チップを面方向に大きくすることなく配線を引き回すことができる。
【0054】
図6は、画像処理部470の機能ブロックを示す。画像処理部470は、縮小画像生成部472と、領域決定部474と、圧縮率設定部478とを有する。
【0055】
縮小画像生成部472は、各個別回路部450A等のメモリ414に格納された画素信号を取得し、撮像領域に含まれる画素よりも少ない画素数の縮小画像を生成する。この場合に例えば、縮小画像生成部472は、画素を間引く、隣接画素同士で平均値を代表値とする等によって縮小画像を生成する。
【0056】
領域決定部474は、縮小画像の顕著性を判断し、当該縮小画像における顕著性が高い着目領域に対応する単位ブロック131と、それ以外の周辺領域に対応する単位ブロック131とを特定する。例えば、領域決定部474は、縮小画像にガウシアンフィルタを階層的に施し、当該階層間の差をとることで、周辺領域と性質の異なる領域を着目領域として特定する。
【0057】
圧縮率設定部478は、着目領域に対応する単位ブロック131に適用する圧縮率と、周辺領域に対応する単位ブロック131に適用する圧縮率とを設定する。この場合に、周辺領域に対応する単位ブロック131に適用する圧縮率が、着目領域に対応する単位ブロック131に適用する圧縮率よりも高く設定されることが好ましい。
【0058】
図7は、演算回路415の機能ブロックを示す。
図7に示す演算回路415は、一例としてJPEGの非可逆圧縮に準じた圧縮回路を有する。すなわち、演算回路415は上述した機能に加えて、DCT(離散コサイン変換)部と、量子化部454と、量子化テーブル456と、符号化部458と、符号化テーブル460とを有する。
【0059】
DCT部452は、各画素位置での画素値で表されている画像信号を、周波数成分で表すときの各周波数成分に対するDCT係数を算出する。この場合にDCT部452は、4X4または8X8等の予め定められた画素数を単位としてDCT係数を算出する。単位ブロック131の画素数は、DCT部452がDCT係数を算出する画素数の単位の整数倍であることが好ましい。さらに単位ブロック131のX方向およびY方向の画素数は、それぞれ、DCT係数を算出する画素数の単位のX方向およびY方向の画素数の整数倍であることがより好ましい。
【0060】
量子化テーブル456は、DCT係数を量子化する量子化ステップを周波数成分ごとに指定したテーブルである。量子化テーブル456において、低い周波数成分の省略が少なく、高い周波数成分の省略が多くなるように量子化ステップが指定されている。当該量子化テーブル456は、圧縮率設定部478で設定された圧縮率に基づいて生成される。量子化部454は、量子化テーブル456の各量子化ステップに基づいて、DCT部452で算出されたDCT係数を量子化する。
【0061】
符号化テーブル460は、出現頻度が高いほどビット数の少ない符号を割り当てる符号化の規則を示すテーブルである。符号化部458は、量子化部454で量子化されたDCT係数を、符号化テーブル460で指定された符号化の規則に従って、符号化する。さらに、符号化部458は、符号化された画素信号を出力する。この場合に符号化部458は、上記量子化テーブル456、符号化テーブル460等そのものまたはそれらを識別する識別情報を、上記画素信号のヘッダ情報としてメモリ414へ出力する。
【0062】
図8は、撮像素子100の動作フローの一例を示す。当該動作フローはスルー画表示(またはライブビューと呼ばれることもある)、または、レリーズボタンの半押しがなされたことにより開始する。また、
図9は、縮小画像170の一例である。
【0063】
駆動制御部420は、スルー画表示用または圧縮率設定用として、センサ制御部441等を駆動して画素からの画素信号を取得し、メモリ414に格納する(S100)。この場合に駆動制御部420は、単位ブロック131毎に画素信号の蓄積および読み出しを制御する。
【0064】
縮小画像生成部472は、各個別回路部450A等のメモリ414に格納された画素信号を取得し、縮小画像を生成する(S102)。この場合に縮小画像生成部472は、画像領域に含まれる全ての単位ブロック131に含まれる画素信号を取得してもよいし、いくつかの単位ブロック131からの画素信号の取得を省略してもよい。
【0065】
領域決定部474は、縮小画像の顕著性を判断し(S104)、顕著性が高い着目領域に対応する単位ブロック131と、それ以外の周辺領域に対応する単位ブロック131とを特定する(S106)。例えば、
図9に示す縮小画像170が得られた場合に、被写体171が含まれる太枠内を着目領域173とし、その他を周辺領域175と特定する。
【0066】
圧縮率設定部478は、着目領域173に対応する単位ブロック131と、周辺領域175に対応する単位ブロック131とに対して異なる圧縮率を設定する(S108)。この場合に、圧縮率設定部478は、着目領域173に対応する単位ブロック131の演算回路415に、低い圧縮率の量子化テーブル456を設定する。一方、圧縮率設定部478は、周辺領域175に対応する単位ブロック131の演算回路415に、高い圧縮率の量子化テーブル456を設定する。これに代えて、各演算回路415が同一の量子化テーブル456を有しており、圧縮率設定部478が量子化テーブル456の全体に乗ずる係数を着目領域173と周辺領域175とに対してそれぞれ設定してもよい。
【0067】
レリーズボタンが押し下げられるまで待機し(S110:No)、レリーズボタンが押し下げられた場合に、駆動制御部420は、本撮影用として、センサ制御部441等を駆動して画素からの画素信号を取得し、メモリ414に格納する(S112)。さらに、各単位ブロック131の演算回路415は、設定された圧縮率で当該単位ブロック131の画素信号を圧縮する(S114)。
【0068】
図7に示す例において、圧縮率は、量子化テーブル456に反映される。すなわち、着目領域173に対応する単位ブロック131の演算回路415には低い圧縮率の量子化テーブル456が設定されるので、当該単位ブロック131の画素信号は低い圧縮率で圧縮される。一方、周辺領域175に対応する単位ブロック131の演算回路415には高い圧縮率の量子化テーブル456が設定されるので、当該単位ブロック131の画素信号は高い圧縮率で圧縮される。
【0069】
各演算回路415は、対応する単位ブロック131の圧縮された画素信号と共に、圧縮に用いた量子化テーブル456等を含むヘッダ情報を、メモリ414へ出力する(S116)。これにより、
図8のフローが終了する。
【0070】
図10は、システム制御部501の動作フローの一例を示す。当該動作フローはレリーズボタンが押し下げられて、撮像素子100から画素信号が入力された場合に開始する。
【0071】
画像処理部511は、I/F回路418および信号線490を介して各単位ブロック131に対応する画素信号をメモリ414から取得する(S120)。この場合に、画像処理部511は、単位ブロック131の画素信号に対応付けられたヘッダ情報も併せて取得する。
【0072】
画像処理部511は、各単位ブロック131に対応する画素信号を、圧縮されたときの圧縮率に対応して伸長する(S124)。この場合に、画像処理部511は、各単位ブロック131の画素信号に対応付けられたヘッダ情報に基づいて、量子化テーブルを特定し、当該量子化テーブルを用いて画素信号を伸長する。当該伸長処理の全体は、
図7の各部の動作を逆にたどるのと同等である。これにより、画像処理部511は一枚分の画像の画素信号を得る。
【0073】
画像処理部511は一枚分の画像の画素信号に対して、予め定められた画像処理を実行して(S124)、画像処理後に得られた画像を記録部505等に記録する。予め定められた画像処理には、画素の補間、画像のフォーマットを変更する処理等の処理が含まれる。これにより、
図10のフローが終了する。
【0074】
以上、本実施形態によれば、撮像領域120が設けられた撮像チップ113と画素信号を圧縮する個別回路部450A等が設けられた信号処理チップ111とが積層されているので、高速で圧縮処理を行うことができる。特に、撮像領域120と個別回路部450A等とが物理的に近くなるので、信号の減衰が小さくS/N比の劣化を防ぐことができる。
【0075】
さらに、個別回路部450Aが単位ブロック131ごとに設けられているので、より高速で圧縮処理を行うことができる。単位ブロック131ごとに圧縮率を設定することにより、処理速度と画質とのバランスを設定することができる。また、撮像領域120からの画素信号を圧縮をしてから外部の画像処理部511に受け渡すので、撮像素子100と画像処理部511との間の信号出力帯域を増大させることなく、高い画質の画素信号を受け渡すことができる。
【0076】
上記ヘッダ情報に量子化テーブル自体に代えて当該テーブルを特定する情報が含まれている場合に、画像処理部511は、内蔵している複数の量子化テーブルから当該情報により特定される量子化テーブルを読み出してもよい。また、量子化テーブルに代えてまたはこれに加えて、符号化テーブルで圧縮率を設定してもよい。さらに、信号処理チップ111と画像処理部511との間の画素信号の受け渡しにおいて、JPEG以外の圧縮・伸長方式を用いる場合に適用してもよい。
【0077】
縮小画像は、RGBのいずれか一色から構成されてもよいし、RGBの各画素における輝度値から構成されてもよい。また、圧縮を色毎に行ってもよい。さらに、画像処理部470において縮小画像生成部472を設けずに、領域決定部474が、撮像領域120の全体の画素からの画素信号に基づいて顕著性を判断してもよい。
【0078】
顕著性の判断は、ガウシアンフィルタを用いるのに代えて、高周波数成分の大きさ、輝度値の大きさ、色相の度合、動きの有無等で判断してもよい。これに代えてまたはこれに加えて、顔を判定して顔を含む領域を着目領域としてもよい。これに代えてまたはこれに加えて、撮像領域120の中央部を含む領域を着目領域としてもよい。
【0079】
演算回路415は、撮像領域全体に対して1個であってもよい。または、演算回路415は、画素ごとに設けられてもよい。この場合には個別回路部450A等自体が画素ごとに設けられてもよい。
【0080】
図11は、着目領域を特定する他の例である。
図11において
図8と同じ動作には同じ参照番号を付して、説明を省略する。
【0081】
縮小画像生成部472は、ステップS102で生成した縮小画像を信号線490を介して画像処理部511へ出力する(S130)。画像処理部511はステップS104と同様の方法により顕著性を判断し(S132)、着目領域173を特定する(S134)。画像処理部511は、着目領域173を特定する情報を信号線490を介して圧縮率設定部478に出力する(S136)。この場合に画像処理部511は例えば、着目領域173に含まれる単位ブロック131を識別する情報を圧縮率設定部478に出力する。
【0082】
以上、
図11のように、圧縮率の設定は、システム制御部501側で実行されてもよい。この場合には、
図6の領域決定部474および圧縮率設定部478は、信号処理チップ111側の画像処理部470に設けなくてもよい。
【0083】
着目領域は、表示部506を用いて撮像者により特定されてもよい。この場合に、縮小画像生成部472により生成された縮小画像が表示部506に表示され、タッチパネル、十字キー等の操作によって、着目領域173が特定される。領域決定部474は、特定された着目領域173に含まれる単位ブロック131を特定する。なお、表示部506に縮小画像を表示するのに代えて、画像処理部511で生成された撮像画像が表示されてもよい。
【0084】
さらに、着目領域173は、表示部506以外の表示装置を用いて撮像者により特定されてもよい。この場合に、当該表示装置は、撮像装置500と通信接続された電子機器、例えばスマートフォンに備えられる。当該電子機器は縮小画像生成部472により生成された縮小画像を受信し、表示装置に表示さする。さらに当該電子機器のタッチパネル、十字キー等への撮像者からの操作によって、着目領域173が特定される。電子機器は着目領域を特定する情報を撮像装置500に送信する。撮像装置500の領域決定部474は、特定された着目領域173に含まれる単位ブロック131を特定する。なお、表示装置に縮小画像を表示するのに代えて、画像処理部511で生成された撮像画像が表示されてもよい。
【0085】
上記ステップS100およびS112の少なくとも一方において、着目領域173の単位ブロック131と、周辺領域175の単位ブロック131とで、撮像条件を異ならせてもよい。異ならせる撮影条件は、フレームレート、電荷蓄積時間、撮影感度等を含む。撮像条件がフレームレートである場合に、着目領域173のフレームレートを、周辺領域175のフレームレートよりも大きくすることが好ましい。撮像条件が撮影感度である場合に、着目領域173の撮影感度を、周辺領域175の撮影感度よりも高くすることが好ましい。
【0086】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。上記実施の形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。その様な変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【0087】
特許請求の範囲、明細書、および図面中において示した装置、システム、プログラム、および方法における動作、手順、ステップ、および段階等の各処理の実行順序は、特段「より前に」、「先立って」等と明示しておらず、また、前の処理の出力を後の処理で用いるのでない限り、任意の順序で実現しうることに留意すべきである。特許請求の範囲、明細書、および図面中の動作フローに関して、便宜上「まず、」、「次に、」等を用いて説明したとしても、この順で実施することが必須であることを意味するものではない。