特許第6248561号(P6248561)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日本ゼオン株式会社の特許一覧

<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6248561
(24)【登録日】2017年12月1日
(45)【発行日】2017年12月20日
(54)【発明の名称】感放射線性樹脂組成物、及び積層体
(51)【国際特許分類】
   G03F 7/023 20060101AFI20171211BHJP
   G03F 7/004 20060101ALI20171211BHJP
【FI】
   G03F7/023
   G03F7/004 501
【請求項の数】3
【全頁数】26
(21)【出願番号】特願2013-235649(P2013-235649)
(22)【出願日】2013年11月14日
(65)【公開番号】特開2015-94910(P2015-94910A)
(43)【公開日】2015年5月18日
【審査請求日】2016年9月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】000229117
【氏名又は名称】日本ゼオン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000486
【氏名又は名称】とこしえ特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】田邉 彰洋
(72)【発明者】
【氏名】堤 隆志
(72)【発明者】
【氏名】平野 孝明
【審査官】 倉持 俊輔
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−208322(JP,A)
【文献】 特開2010−224533(JP,A)
【文献】 特開2003−288991(JP,A)
【文献】 特開2000−298352(JP,A)
【文献】 特開2000−109694(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/040324(WO,A1)
【文献】 国際公開第2003/056391(WO,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2006/0008734(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03F 7/004−7/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
プロトン性極性基を有する単量体単位の含有割合が40モル%以上、80モル%未満である環状オレフィン重合体(A)、光酸発生剤(B)、オルトエステル(C)、および架橋剤(D)を含有する感放射線性樹脂組成物。
【請求項2】
前記環状オレフィン重合体(A)100重量部に対する、前記オルトエステル(C)の含有割合が、3〜70重量部である請求項1に記載の感放射線性樹脂組成物。
【請求項3】
請求項1または2に記載の感放射線性樹脂組成物を用いて形成される樹脂膜と、基板とを有する積層体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、感放射線性樹脂組成物、及び積層体に係り、さらに詳しくは、露光感度に優れ、かつ、高温高湿環境下における信頼性に優れた樹脂膜を与える感放射線性樹脂組成物、及び該感放射線性樹脂組成物から形成される樹脂膜を有する積層体に関する。
【背景技術】
【0002】
有機EL素子や液晶表示素子などの各種表示素子、集積回路素子、固体撮像素子、カラーフィルター、ブラックマトリックス等の電子部品には、その劣化や損傷を防止するための保護膜、素子表面や配線を平坦化するための平坦化膜、電気絶縁性を保つための電気絶縁膜等として種々の樹脂膜が設けられている。また、有機EL素子には、発光体部を分離するために画素分離膜としての樹脂膜が設けられており、さらに、薄膜トランジスタ型液晶用の表示素子や集積回路素子等の素子には、層状に配置される配線の間を絶縁するために層間絶縁膜としての樹脂膜が設けられている。
【0003】
従来、これらの樹脂膜を形成するための樹脂材料としては、エポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂材料が汎用されていた。近年においては、配線やデバイスの高密度化に伴い、これらの樹脂材料にも、微細なパターニングが可能であり、低誘電性等の電気特性に優れた新しい感放射線性樹脂材料の開発が求められている。
【0004】
これらの要求に対応するため、例えば、特許文献1には、酸性基を有する脂環式オレフィン樹脂、酸発生剤、架橋剤、及び溶剤を含有する感放射線性樹脂組成物において、酸性基を有する脂環式オレフィン樹脂として、酸性基の含有割合が特定の範囲にあるものを用いる技術が開示されている。しかしながら、この特許文献1に記載の樹脂組成物を用いて得られる保護膜は、高温高湿環境下における信頼性が必ずしも十分でなく、そのため、高温高湿環境下における信頼性の向上が望まれていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第03/056391号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、露光感度に優れ、かつ、高温高湿環境下における信頼性に優れた樹脂膜を与える感放射線性樹脂組成物、及び該感放射線性樹脂組成物から形成される樹脂膜を有する積層体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者等は、上記目的を達成するために鋭意研究した結果、プロトン性極性基を有する単量体単位の含有割合が40モル%以上、80モル%未満である環状オレフィン重合体に、感放射線化合物、オルトエステル、および架橋剤を配合してなる感放射線性樹脂組成物により、上記課題を解決することができることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0008】
すなわち、本発明によれば、プロトン性極性基を有する単量体単位の含有割合が40モル%以上、80モル%未満である環状オレフィン重合体(A)、感放射線化合物(B)、オルトエステル(C)、および架橋剤(D)を含有する感放射線性樹脂組成物が提供される。
本発明の感放射線性樹脂組成物において、前記環状オレフィン重合体(A)100重量部に対する、前記オルトエステル(C)の含有割合が、3〜70重量部であることが好ましい。
【0009】
また、本発明によれば、上記いずれかの感放射線性樹脂組成物を用いて形成される樹脂膜と、基板とを有する積層体が提供される。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、露光感度に優れ、かつ、高温高湿環境下における信頼性に優れた樹脂膜を与える感放射線性樹脂組成物、及び該感放射線性樹脂組成物から形成される樹脂膜を有する積層体を提供することができる。特に、本発明の積層体は、本発明の感放射線性樹脂組成物から形成される樹脂膜を有するものであるため、露光感度に優れた樹脂膜を備え、しかも、高温高湿環境下における信頼性、特に、高温高湿環境下に保持した際における、オフリーク電流値の上昇を有効に抑制が可能であるという優れた信頼性を有するものであり、種々の電子部品、特に半導体デバイスとして有用である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の感放射線性樹脂組成物は、プロトン性極性基を有する単量体単位の含有割合が40モル%以上、80モル%未満である環状オレフィン重合体(A)、感放射線化合物(B)、オルトエステル(C)、および架橋剤(D)を含む組成物である。
【0012】
(プロトン性極性基を有する単量体単位の含有割合が40モル%以上、80モル%未満である環状オレフィン重合体(A))
本発明で用いる、プロトン性極性基を有する単量体単位の含有割合が40モル%以上、80モル%未満である環状オレフィン重合体(A)(以下、単に、「環状オレフィン系重合体(A)」とする。)は、主鎖に、環状オレフィン単量体単位の環状構造(脂環又は芳香環)を有する、環状オレフィン単量体の単独重合体又は共重合体であり、かつ、該重合体を構成する単量体単位として、プロトン性極性基を有する単量体単位を、40モル%以上、80モル%未満の割合で有するものである。
【0013】
なお、本発明で用いる環状オレフィン重合体(A)中における、プロトン性極性基を有する単量体単位の含有割合は、全単量体単位中、40モル%以上、80モル%未満であり、好ましくは45〜75モル%、より好ましくは50〜70モル%である。本発明においては、環状オレフィン重合体(A)中における、プロトン性極性基を有する単量体単位の含有割合を上記範囲とすることにより、得られる樹脂膜の露光感度を向上させることができる。なお、環状オレフィン重合体(A)中における、プロトン性極性基を有する単量体単位の含有割合が、少なすぎると、露光感度が不十分となり、生産性が低下してしまうこととなり、一方、多すぎると、現像時に現像液に溶解してしまい、所定パターンを有する樹脂膜を形成することができなくなってしまう。
【0014】
このような環状オレフィン系重合体(A)としては、1または2以上の環状オレフィン単量体の重合体、又は、1または2以上の環状オレフィン単量体と、これと共重合可能な単量体との共重合体が挙げられるが、本発明においては、環状オレフィン系重合体(A)を形成するための単量体として、少なくともプロトン性極性基を有する環状オレフィン単量体(a1)を用いることが好ましい。
【0015】
ここで、プロトン性極性基とは、周期律表第15族又は第16族に属する原子に水素原子が直接結合している原子を含む基をいう。周期律表第15族又は第16族に属する原子は、好ましくは周期律表第15族又は第16族の第1又は第2周期に属する原子であり、より好ましくは酸素原子、窒素原子又は硫黄原子であり、特に好ましくは酸素原子である。
【0016】
このようなプロトン性極性基の具体例としては、水酸基、カルボキシ基(ヒドロキシカルボニル基)、スルホン酸基、リン酸基等の酸素原子を有する極性基;第一級アミノ基、第二級アミノ基、第一級アミド基、第二級アミド基(イミド基)等の窒素原子を有する極性基;チオール基等の硫黄原子を有する極性基;等が挙げられる。これらの中でも、酸素原子を有するものが好ましく、酸性基であることがより好ましく、さらに好ましくはカルボキシ基である。たとえば、プロトン性極性基として、酸性基を有する環状オレフィン系重合体(A)を用いる場合には、酸性基を有する単量体単位の含有割合を、全単量体単位中、40モル%以上、80モル%未満、好ましくは45〜75モル%、より好ましくは50〜70モル%とすればよく、これにより、環状オレフィン系重合体(A)の酸価を所望の範囲に調整することができ、露光感度をより適切に高めることができる。
本発明において、プロトン性極性基を有する環状オレフィン樹脂に結合しているプロトン性極性基の数に特に限定はなく、また、相異なる種類のプロトン性極性基が含まれていてもよい。
【0017】
プロトン性極性基を有する環状オレフィン単量体(a)(以下、適宜、「単量体(a)」という。)の具体例としては、5−ヒドロキシカルボニルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−メチル−5−ヒドロキシカルボニルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−カルボキシメチル−5−ヒドロキシカルボニルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5,6−ジヒドロキシカルボニルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、8−ヒドロキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン、9−ヒドロキシカルボニルテトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ−4−エン、9−メチル−9−ヒドロキシカルボニルテトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ−4−エン、9,10−ジヒドロキシカルボニルテトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ−4−エン等のカルボキシ基含有環状オレフィン;5−(4−ヒドロキシフェニル)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−メチル−5−(4−ヒドロキシフェニル)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、9−(4−ヒドロキシフェニル)テトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ−4−エン、9−メチル−9−(4−ヒドロキシフェニル)テトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ−4−エン等の水酸基含有環状オレフィン等が挙げられる。これらのなかでも、得られる樹脂膜の密着性が高くなるという点より、カルボキシ基含有環状オレフィンが好ましく、8−ヒドロキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エンが特に好ましい。これら単量体(a)は、それぞれ単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0018】
環状オレフィン重合体(A)中における、単量体(a)の単位の含有割合は、環状オレフィン系重合体(A)中における、プロトン性極性基を有する単量体単位の含有割合が上記範囲となるような割合とすればよいが、全単量体単位に対して、通常、40モル%以上、80モル%未満、好ましくは45〜75モル%、より好ましくは50〜70モル%である。なお、後述する共重合可能な単量体(b)として、プロトン性極性基を有する単量体を用いない場合には、単量体(a)の使用量を調整することで、環状オレフィン系重合体(A)中における、プロトン性極性基を有する単量体単位の含有割合を調整することができる。また、後述する共重合可能な単量体(b)として、単量体(a)以外のプロトン性極性基を有する単量体をさらに使用する場合には、単量体(a)と、単量体(a)以外のプロトン性極性基を有する単量体との合計の使用量を調整することで、環状オレフィン系重合体(A)中における、プロトン性極性基を有する単量体単位の含有割合を調整することができる。
【0019】
また、本発明で用いる環状オレフィン重合体(A)は、プロトン性極性基を有する環状オレフィン単量体(a)と、これと共重合可能な単量体(b)とを共重合して得られる共重合体であってもよい。このような共重合可能な単量体としては、プロトン性極性基以外の極性基を有する環状オレフィン単量体(b1)、極性基を持たない環状オレフィン単量体(b2)、および環状オレフィン以外の単量体(b3)(以下、適宜、「単量体(b1)」、「単量体(b2)」、「単量体(b3)」という。)が挙げられる。
【0020】
プロトン性極性基以外の極性基を有する環状オレフィン単量体(b1)としては、たとえば、N−置換イミド基、エステル基、シアノ基またはハロゲン原子を有する環状オレフィンが挙げられる。
【0021】
N−置換イミド基を有する環状オレフィンとしては、たとえば、下記式(1)で表される単量体、または下記式(2)で表される単量体が挙げられる。
【化1】
(上記式(1)中、Rは炭素数5〜16の分岐状アルキル基またはフェニル基を表す。)
【化2】
(上記式(2)中、Rは炭素数1〜3の2価のアルキレン基、Rは、炭素数1〜10の1価のアルキル基、または、炭素数1〜10の1価のハロゲン化アルキル基を表す。)
【0022】
上記式(1)中において、Rは炭素数5〜16の分岐状アルキル基又はフェニル基であり、炭素数5〜16の分岐状アルキル基としては、例えば、1−メチルブチル基、2−メチルブチル基、1−メチルペンチル基、1−エチルブチル基、2−メチルヘキシル基、2−エチルヘキシル基、4−メチルヘプチル基、1−メチルノニル基、1−メチルトリデシル基、1−メチルテトラデシル基などが挙げられる。これらの中でも、耐熱性および極性溶剤への溶解性により優れることから、炭素数6〜14の分岐状アルキル基が好ましく、炭素数7〜10の分岐状アルキル基がより好ましい。炭素数が4以下であると極性溶剤への溶解性に劣り、炭素数が17以上であると耐熱性に劣り、さらに樹脂膜をパターン化した場合に、熱により溶融しパターンを消失してしまうという問題がある。
【0023】
上記式(1)で表される単量体の具体例としては、N−フェニル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド、N−(1−メチルブチル)−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド、N−(2−メチルブチル)−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド、N−(1−メチルペンチル)−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド、N−(2−メチルペンチル)−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド、N−(1−エチルブチル)−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド、N−(2−エチルブチル)−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド、N−(1−メチルヘキシル)−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド、N−(2−メチルヘキシル)−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド、N−(3−メチルヘキシル)−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド、N−(1−ブチルペンチル)−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド、N−(2−ブチルペンチル)−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド、N−(1−メチルヘプチル)−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド、N−(2−メチルヘプチル)−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド、N−(3−メチルヘプチル)−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド、N−(4−メチルヘプチル)−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド、N−(1−エチルヘキシル)−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド、N−(2−エチルヘキシル)−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド、N−(3−エチルヘキシル)−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド、N−(1−プロピルペンチル)−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド、N−(2−プロピルペンチル)−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド、N−(1−メチルオクチル)−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド、N−(2−メチルオクチル)−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド、N−(3−メチルオクチル)−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド、N−(4−メチルオクチル)−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド、N−(1−エチルヘプチル)−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド、N−(2−エチルヘプチル)−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド、N−(3−エチルヘプチル)−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド、N−(4−エチルヘプチル)−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド、N−(1−プロピルヘキシル)−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド、N−(2−プロピルヘキシル)−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド、N−(3−プロピルヘキシル)−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド、N−(1−メチルノニル)−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド、N−(2−メチルノニル)−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド、N−(3−メチルノニル)−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド、N−(4−メチルノニル)−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド、N−(5−メチルノニル)−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド、N−(1−エチルオクチル)−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド、N−(2−エチルオクチル)−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド、N−(3−エチルオクチル)−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド、N−(4−エチルオクチル)−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド、N−(1−メチルデシル)−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド、N−(1−メチルドデシル)−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド、N−(1−メチルウンデシル)−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド、N−(1−メチルドデシル)−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド、N−(1−メチルトリデシル)−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド、N−(1−メチルテトラデシル)−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド、N−(1−メチルペンタデシル)−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド、等が挙げられる。なお、これらはそれぞれ単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0024】
一方、上記式(2)において、Rは炭素数1〜3の2価のアルキレン基であり、炭素数1〜3の2価のアルキレン基としては、メチレン基、エチレン基、プロピレン基およびイソプロピレン基が挙げられる。これらの中でも、重合活性が良好であるため、メチレン基およびエチレン基が好ましい。
【0025】
また、上記式(2)において、Rは、炭素数1〜10の1価のアルキル基、または、炭素数1〜10の1価のハロゲン化アルキル基である。炭素数1〜10の1価のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ヘキシル基およびシクロヘキシル基などが挙げられる。炭素数1〜10の1価のハロゲン化アルキル基としては、例えば、フルオロメチル基、クロロメチル基、ブロモメチル基、ジフルオロメチル基、ジクロロメチル基、ジフルオロメチル基、トリフルオロメチル基、トリクロロメチル基、2,2,2−トリフルオロエチル基、ペンタフルオロエチル基、ヘプタフルオロプロピル基、パーフルオロブチル基およびパーフルオロペンチル基などが挙げられる。これら中でも、極性溶剤への溶解性に優れるため、Rとしては、メチル基およびエチル基が好ましい。
【0026】
なお、上記式(1)、(2)で表される単量体は、たとえば、対応するアミンと、5−ノルボルネン−2,3−ジカルボン酸無水物とのアミド化反応により得ることができる。また、得られた単量体は、アミド化反応の反応液を公知の方法で分離・精製することにより効率よく単離できる。
【0027】
エステル基を有する環状オレフィンとしては、例えば、5−アセトキシビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−メトキシカルボニルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−メチル−5−メトキシカルボニルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、9−アセトキシテトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ−4−エン、9−メトキシカルボニルテトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ−4−エン、9−エトキシカルボニルテトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ−4−エン、9−n−プロポキシカルボニルテトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ−4−エン、9−イソプロポキシカルボニルテトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ−4−エン、9−n−ブトキシカルボニルテトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ−4−エン、9−メチル−9−メトキシカルボニルテトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ−4−エン、9−メチル−9−エトキシカルボニルテトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ−4−エン、9−メチル−9−n−プロポキシカルボニルテトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ−4−エン、9−メチル−9−イソプロポキシカルボニルテトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ−4−エン、9−メチル−9−n−ブトキシカルボニルテトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ−4−エン、9−(2,2,2−トリフルオロエトキシカルボニル)テトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ−4−エン、9−メチル−9−(2,2,2−トリフルオロエトキシカルボニル)テトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ−4−エン等が挙げられる。
【0028】
シアノ基を有する環状オレフィンとしては、例えば、9−シアノテトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ−4−エン、9−メチル−9−シアノテトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ−4−エン、5−シアノビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン等が挙げられる。
【0029】
ハロゲン原子を有する環状オレフィンとしては、例えば、9−クロロテトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ−4−エン、9−メチル−9−クロロテトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ−4−エン等が挙げられる。
【0030】
これら単量体(b1)は、それぞれ単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0031】
極性基を持たない環状オレフィン単量体(b2)としては、ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン(「ノルボルネン」ともいう。)、5−エチル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−ブチル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−エチリデン−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−メチリデン−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−ビニル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、トリシクロ[5.2.1.02,6]デカ−3,8−ジエン(慣用名:ジシクロペンタジエン)、テトラシクロ[10.2.1.02,11.04,9]ペンタデカ−4,6,8,13−テトラエン、テトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ−4−エン(「テトラシクロドデセン」ともいう。)、9−メチル−テトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ−4−エン、9−エチル−テトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ−4−エン、9−メチリデン−テトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ−4−エン、9−エチリデン−テトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ−4−エン、9−ビニル−テトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ−4−エン、9−プロペニル−テトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ−4−エン、ペンタシクロ[9.2.1.13,9.02,10]ペンタデカ−5,12−ジエン、シクロペンテン、シクロペンタジエン、9−フェニル−テトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ−4−エン、テトラシクロ[9.2.1.02,10.03,8]テトラデカ−3,5,7,12−テトラエン、ペンタシクロ[9.2.1.13,9.02,10]ペンタデカ−12−エン等が挙げられる。
これら単量体(b2)は、それぞれ単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0032】
環状オレフィン以外の単量体(b3)の具体例としては、エチレン;プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、3−メチル−1−ブテン、3−メチル−1−ペンテン、3−エチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ヘキセン、4,4−ジメチル−1−ヘキセン、4,4−ジメチル−1−ペンテン、4−エチル−1−ヘキセン、3−エチル−1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセン、1−テトラデセン、1−ヘキサデセン、1−オクタデセン、1−エイコセン等の炭素数2〜20のα−オレフィン;1,4−ヘキサジエン、4−メチル−1,4−ヘキサジエン、5−メチル−1,4−ヘキサジエン、1,7−オクタジエン等の非共役ジエン、及びこれらの誘導体;シクロブテン、シクロペンテン、シクロヘキセン、シクロオクテン、3a,5,6,7a−テトラヒドロ−4,7−メタノ−1H−インデンなどのシクロオレフィン等が挙げられる。これらの中でも、α−オレフィン、特にエチレンが好ましい。
これら単量体(b3)は、それぞれ単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0033】
これら単量体(b1)〜(b3)のなかでも、本発明の効果がより一層顕著となるという観点より、プロトン性極性基以外の極性基を有する環状オレフィン単量体(b1)が好ましく、N−置換イミド基を有する環状オレフィンが特に好ましい。
【0034】
環状オレフィン重合体(A)中における、共重合可能な単量体(b)の単位の含有割合は、環状オレフィン系重合体(A)中における、プロトン性極性基を有する単量体単位の含有割合が上記範囲となるような割合とすればよく、上述した単量体(a)の単位の含有割合に応じて決定すればよい。
【0035】
なお、本発明においては、プロトン性極性基を有しない環状オレフィン系重合体に、公知の変性剤を利用してプロトン性極性基を導入することで、環状オレフィン重合体(A)としてもよい。なお、この際においては、プロトン性極性基を有する単量体単位の含有割合(変性剤により、プロトン性極性基が導入された単量体単位の含有割合)が、上記範囲となるように制御することで、環状オレフィン重合体(A)を得ることができる。
プロトン性極性基を有しない重合体は、上述した単量体(b1)および(b2)のうち少なくとも一種と、必要に応じて単量体(b3)とを任意に組み合わせて重合することによって得ることができる。
【0036】
プロトン性極性基を導入するための変性剤としては、通常、一分子内にプロトン性極性基と反応性の炭素−炭素不飽和結合とを有する化合物が用いられる。
このような化合物の具体例としては、アクリル酸、メタクリル酸、アンゲリカ酸、チグリン酸、オレイン酸、エライジン酸、エルカ酸、ブラシジン酸、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、メサコン酸、イタコン酸、アトロパ酸、ケイ皮酸等の不飽和カルボン酸;アリルアルコール、メチルビニルメタノール、クロチルアルコール、メタリルアルコール、1−フェニルエテン−1−オール、2−プロペン−1−オール、3−ブテン−1−オール、3−ブテン−2−オール、3−メチル−3−ブテン−1−オール、3−メチル−2−ブテン−1−オール、2−メチル−3−ブテン−2−オール、2−メチル−3−ブテン−1−オール、4−ペンテン−1−オール、4−メチル−4−ぺンテン−1−オール、2−ヘキセン−1−オール等の不飽和アルコール;等が挙げられる。
これら変性剤を用いた重合体の変性反応は、常法に従えばよく、通常、ラジカル発生剤の存在下で行われる。
【0037】
なお、本発明で用いる環状オレフィン重合体(A1)は、上述した単量体を開環重合させた開環重合体であってもよいし、あるいは、上述した単量体を付加重合させた付加重合体であってもよいが、本発明の効果がより一層顕著になるという点より、開環重合体であることが好ましい。
【0038】
開環重合体は、プロトン性極性基を有する環状オレフィン単量体(a)および必要に応じて用いられる共重合可能な単量体(b)を、メタセシス反応触媒の存在下に開環メタセシス重合することにより製造することができる。製造方法としては、たとえば、国際公開第2010/110323号の[0039]〜[0079]に記載されている方法等を用いることができる。 一方、付加重合体は、プロトン性極性基を有する環状オレフィン単量体(a)および必要に応じて用いられる共重合可能な単量体(b)を、公知の付加重合触媒、例えば、チタン、ジルコニウムまたはバナジウム化合物と有機アルミニウム化合物とからなる触媒を用いて重合させて得ることができる。
【0039】
また、本発明で用いる環状オレフィン重合体(A)が、開環重合体である場合には、さらに水素添加反応を行い、主鎖に含まれる炭素−炭素二重結合が水素添加された水素添加物とすることが好ましい。環状オレフィン重合体(A)が水素添加物である場合における、水素化された炭素−炭素二重結合の割合(水素添加率)は、通常50%以上であり、耐熱性の観点から、70%以上であるのが好ましく、90%以上であるのがより好ましく、95%以上であるのがさらに好ましい。
【0040】
(感放射線化合物(B))
本発明で用いる感放射線化合物(B)は、紫外線や電子線等の放射線の照射により、化学反応を引き起こすことのできる化合物である。本発明において感放射線化合物(B))は、感放射線性樹脂組成物から形成されてなる樹脂膜のアルカリ溶解性を制御できるものが好ましく、特に、光酸発生剤を使用することが好ましい。
【0041】
このような感放射線化合物(B)としては、例えば、アセトフェノン化合物、トリアリールスルホニウム塩、キノンジアジド化合物等のアジド化合物等が挙げられるが、好ましくはアジド化合物、特に好ましくはキノンジアジド化合物である。
【0042】
キノンジアジド化合物としては、例えば、キノンジアジドスルホン酸ハライドとフェノール性水酸基を有する化合物とのエステル化合物を用いることができる。キノンジアジドスルホン酸ハライドの具体例としては、1,2−ナフトキノンジアジド−5−スルホン酸クロライド、1,2−ナフトキノンジアジド−4−スルホン酸クロライド、1,2−ベンゾキノンジアジド−5−スルホン酸クロライド等が挙げられる。フェノール性水酸基を有する化合物の代表例としては、1,1,3−トリス(2,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)−3−フェニルプロパン、4,4’−[1−[4−[1−[4−ヒドロキシフェニル]−1−メチルエチル]フェニル]エチリデン]ビスフェノール等が挙げられる。これら以外のフェノール性水酸基を有する化合物としては、2,3,4−トリヒドロキシベンゾフェノン、2,3,4,4’−テトラヒドロキシベンゾフェノン、2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、トリス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1,1−トリス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)エタン、1,1,2,2−テトラキス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、ノボラック樹脂のオリゴマー、フェノール性水酸基を1つ以上有する化合物とジシクロペンタジエンとを共重合して得られるオリゴマー等が挙げられる。
これらの中でも、1,2−ナフトキノンジアジド−5−スルホン酸クロライドとフェノール性水酸基を有する化合物との縮合物が好ましく、1,1,3−トリス(2,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)−3−フェニルプロパン(1モル)と1,2−ナフトキノンジアジド−5−スルホン酸クロライド(2.0モル)との縮合物がより好ましい。
【0043】
また、感放射線化合物(B)としては、キノンジアジド化合物の他、オニウム塩、ハロゲン化有機化合物、α,α’−ビス(スルホニル)ジアゾメタン系化合物、α−カルボニル−α’−スルホニルジアゾメタン系化合物、スルホン化合物、有機酸エステル化合物、有機酸アミド化合物、有機酸イミド化合物等、公知のものを用いることができる。
これらの感放射線化合物(B)は、それぞれ単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0044】
本発明の感放射線性樹脂組成物中における感放射線化合物(B)の含有量は、特に限定されないが、環状オレフィン系重合体(A)100重量部に対して、好ましくは10〜50重量部、より好ましくは15〜45重量部、さらに好ましくは25〜40重量部の範囲である。感放射線化合物(B)の含有量がこの範囲にあれば、感放射線性樹脂組成物からなる樹脂膜をパターン化する際に、放射線照射部と放射線未照射部との現像液への溶解度差が大きくなり、放射線感度も高くなり、現像によるパターン化が容易であるので好適である。
【0045】
(オルトエステル(C))
本発明で用いるオルトエステル(C)は、一つの炭素原子に3個のアルコキシ基が結合した構造を有する化合物であり、典型的には、下記一般式(3)で表される化合物が挙げられる。
【化3】
(上記一般式(3)中、Rは、水素原子、または炭素数1〜3のアルキル基、好ましくは、水素原子、または炭素数1〜2のアルキル基であり、Rは、それぞれ独立して、炭素数1〜5のアルキル基、好ましくは、炭素数1〜3のアルキル基である。)
【0046】
本発明の感放射線性樹脂組成物においては、オルトエステル(C)を配合することで、得られる樹脂膜中において、水トラップ剤として作用するものであり、たとえば、本発明の感放射線性樹脂組成物を用いて得られる樹脂膜と、基板との積層体を得て、該積層体を高温高湿環境下に保持した際に、樹脂膜と基板との界面に水が入り込み、性能劣化(たとえば、オフリーク電流値が上昇してしまう等の性能劣化)が発生してしまうことを有効に防止することができる。そして、これにより、得られる積層体を信頼性に優れたものとすることができる。
【0047】
オルトエステル(C)の具体例としては、オルト蟻酸トリメチル、オルト蟻酸トリエチル、オルト蟻酸トリヘキシルなどのオルト蟻酸エステル類;オルト酢酸トリメチル、オルト酢酸トリエチル、オルト酢酸トリヘキシルなどのオルト酢酸エステル類;オルトプロピオン酸トリエチル、オルトプロピオン酸トリエチルなどのオルトプロピオン酸エステル類;オルト酪酸トリメチル、オルト酪酸トリエチルなどのオルト酪酸エステル類;オルトオクタン酸トリメチル、オルトオクタン酸トリエチルなどのオルトオクタン酸エステル類;オルトステアリン酸トリメチル、オルトステアリン酸トリエチルなどのオルトステアリン酸エステル類;などが挙げられる。これらのオルトエステル(C)は、それぞれ単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの中でも、オルト蟻酸エステル類、オルト酢酸エステル類が好ましく、オルト蟻酸トリメチル、オルト蟻酸トリブチル、オルト酢酸トリメチルが好ましい。
【0048】
本発明の感放射線性樹脂組成物中におけるオルトエステル(C)の含有量は、特に限定されないが、環状オレフィン系重合体(A)100重量部に対して、好ましくは3〜70重量部、より好ましくは5〜60重量部、さらに好ましくは10〜50重量部の範囲である。オルトエステル(C)の含有量がこの範囲にあれば、電気特性など他の特性を損なうことなく、その添加効果、すなわち、高温高湿条件下における信頼性向上効果を十分なものとすることができるため好適である。
【0049】
(架橋剤(D))
本発明で用いる架橋剤(D)は、加熱により架橋剤分子間に架橋構造を形成するものや、環状オレフィン系重合体(A)と反応して樹脂分子間に架橋構造を形成するものであり、具体的には、2以上の反応性基を有する化合物が挙げられる。このような反応性基としては、例えば、アミノ基、カルボキシ基、水酸基、エポキシ基、イソシアネート基等が挙げられ、より好ましくはアミノ基、エポキシ基及びイソシアネート基であり、さらに好ましくはアミノ基及びエポキシ基であり、エポキシ基を有するエポキシ化合物が特に好ましい。また、エポキシ基としては、末端エポキシ基、脂環式エポキシ基が好ましく、脂環式エポキシ基がより好ましい。
【0050】
架橋剤(D)の分子量は、特に限定されないが、通常、100〜100,000、好ましくは300〜50,000、より好ましくは500〜10,000である。架橋剤は、それぞれ単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0051】
架橋剤(D)の具体例としては、ヘキサメチレンジアミン等の脂肪族ポリアミン類;4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、ジアミノジフェニルスルフォン等の芳香族ポリアミン類;2,6−ビス(4’−アジドベンザル)シクロヘキサノン、4,4’−ジアジドジフェニルスルフォン等のアジド類;ナイロン、ポリヘキサメチレンジアミンテレレフタルアミド、ポリヘキサメチレンイソフタルアミド等のポリアミド類;N,N,N’,N’’,N’’,N’’−(ヘキサアルコキシアルキル)メラミン等のメチロール基やイミノ基等を有していてもよいメラミン類(商品名「サイメル303、サイメル325、サイメル370、サイメル232、サイメル235、サイメル272、サイメル212、マイコート506」{以上、サイテックインダストリーズ社製}等のサイメルシリーズ、マイコートシリーズ);N,N’,N’’,N’’’−(テトラアルコキシアルキル)グリコールウリル等のメチロール基やイミノ基等を有していてもよいグリコールウリル類(商品名「サイメル1170」{以上、サイテックインダストリーズ社製}等のサイメルシリーズ);エチレングリコールジ(メタ)アクリレート等のアクリレート化合物;ヘキサメチレンジイソシアネート系ポリイソシアネート、イソホロンジイソシアネート系ポリイソシアネート、トリレンジイソシアネート系ポリイソシアネート、水添ジフェニルメタンジイソシアネート等のイソシアネート系化合物;1,4−ジ−(ヒドロキシメチル)シクロヘキサン、1,4−ジ−(ヒドロキシメチル)ノルボルナン;1,3,4−トリヒドロキシシクロヘキサン;ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ポリフェノール型エポキシ樹脂、環状脂肪族エポキシ樹脂、脂肪族グリシジルエーテル、エポキシアクリレート重合体等のエポキシ化合物;を挙げることができる。
【0052】
エポキシ化合物の具体例としては、ジシクロペンタジエンを骨格とする3官能性のエポキシ化合物(商品名「XD−1000」、日本化薬社製)、2,2−ビス(ヒドロキシメチル)1−ブタノールの1,2−エポキシ−4−(2−オキシラニル)シクロヘキサン付加物(シクロヘキサン骨格及び末端エポキシ基を有する15官能性の脂環式エポキシ樹脂、商品名「EHPE3150」、ダイセル化学工業社製)、エポキシ化3−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸ビス(3−シクロヘキセニルメチル)修飾ε−カプロラクトン(脂肪族環状3官能性のエポキシ樹脂、商品名「エポリードGT301」、ダイセル化学工業社製)、エポキシ化ブタンテトラカルボン酸テトラキス(3−シクロヘキセニルメチル)修飾ε−カプロラクトン(脂肪族環状4官能性のエポキシ樹脂、商品名「エポリードGT401」、ダイセル化学工業社製)等の脂環構造を有するエポキシ化合物;
【0053】
ビスフェノールA型多官能エポキシ化合物(商品名 コンポセラン「E103」「E103A」「E102」「E102B」「E201」「E202C」「SQ506」「SQ502−8」、荒川化学工業社製);フルオレン系エポキシ樹脂(商品名 オンコート「EX−1010」「EX−1011」「EX−1012」「EX−1020」「EX−1030」「EX−1040」「EX−1050」「EX−1051」「EX−1060」、ナガセケムテックス社製)、(商品名「オグゾール PG100」「オグゾール EG−200」、大阪ガスケミカル社製)、複素環含有エポキシ化合物(商品名「TEPIC」、日産化学工業社製)、芳香族アミン型多官能エポキシ化合物(商品名「H−434」、東都化成工業社製)、クレゾールノボラック型多官能エポキシ化合物(商品名「EOCN−1020」、日本化薬社製)、フェノールノボラック型多官能エポキシ化合物(エピコート152、154、ジャパンエポキシレジン社製)、ナフタレン骨格を有する多官能エポキシ化合物(商品名EXA−4700、大日本インキ化学株式会社製)、鎖状アルキル多官能エポキシ化合物(商品名「SR−MK3」、坂本薬品工業社製)、多官能エポキシポリブタジエン(商品名「エポリードPB3600」、ダイセル化学工業社製)、グリセリンのグリシジルポリエーテル化合物(商品名「SR−GLG」、阪本薬品工業株式会社製)、ジグリセリンポリグリシジルエーテル化合物(商品名「SR−DGE」、阪本薬品工業株式会社製、ポリグリセリンポリグリシジルエーテル化合物(商品名「SR−4GL」、阪本薬品工業株式会社製)等の脂環構造を有さないエポキシ化合物;を挙げることができる。
【0054】
エポキシ化合物の中でも、エポキシ基を2つ以上有する多官能エポキシ化合物が好ましく、感放射線性樹脂組成物を用いて得られる樹脂膜を耐熱形状保持性に優れるものとすることができることから、脂環構造を有し、かつ、エポキシ基が3個以上の多官能エポキシ化合物が、特に好ましい。
【0055】
本発明の感放射線性樹脂組成物中における架橋剤(D)の含有量は、特に限定されず、本発明の樹脂組成物を用いて得られる樹脂膜にパターンを設ける場合に求められる耐熱性の程度を考慮して任意に設定すればよいが、環状オレフィン系重合体(A)100重量部に対して、好ましくは20〜120重量部、好ましくは25〜100重量部、より好ましくは30〜80重量部である。架橋剤(D)が多すぎても少なすぎても耐熱性が低下する傾向がある。
【0056】
(溶剤(E))
また、本発明の感放射線性樹脂組成物には、溶剤(E)がさらに含有されていてもよい。溶剤(E)としては、特に限定されず、樹脂組成物の溶剤として公知のもの、例えばアセトン、メチルエチルケトン、シクロペンタノン、2−ヘキサノン、3−ヘキサノン、2−ヘプタノン、3−ヘプタノン、4−ヘプタノン、2−オクタノン、3−オクタノン、4−オクタノンなどの直鎖のケトン類;n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、シクロヘキサノールなどのアルコール類;エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、ジオキサンなどのエーテル類;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテルなどのアルコールエーテル類;ギ酸プロピル、ギ酸ブチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、酪酸メチル、酪酸エチル、乳酸メチル、乳酸エチルなどのエステル類;セロソルブアセテート、メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート、プロピルセロソルブアセテート、ブチルセロソルブアセテートなどのセロソルブエステル類;プロピレングリコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノブチルエーテルなどのプロピレングリコール類;ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテルなどのジエチレングリコール類;γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、γ−カプロラクトン、γ−カプリロラクトンなどの飽和γ−ラクトン類;トリクロロエチレンなどのハロゲン化炭化水素類;トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素類;ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド、N−メチルアセトアミドなどの極性溶媒などが挙げられる。これらの溶剤(E)は、単独でも2種以上を組み合わせて用いてもよい。溶剤(E)の含有量は、環状オレフィン系重合体(A)100重量部に対して、好ましくは10〜10000重量部、より好ましくは50〜5000重量部、さらに好ましくは100〜1000重量部の範囲である。なお、樹脂組成物に溶剤を含有させる場合には、溶剤は、通常、樹脂膜形成後に除去されることとなる。
【0057】
(その他の配合剤)
また、本発明の感放射線性樹脂組成物は、本発明の効果が阻害されない範囲であれば、所望により、界面活性剤、酸性化合物、カップリング剤またはその誘導体、増感剤、潜在的酸発生剤、酸化防止剤、光安定剤、消泡剤、顔料、染料、フィラー等のその他の配合剤;等を含有していてもよい。
【0058】
界面活性剤は、ストリエーション(塗布筋あと)の防止、現像性の向上等の目的で使用される。界面活性剤の具体例としては、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル等のポリオキシエチレンアルキルエーテル類;ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル等のポリオキシエチレンアリールエーテル類;ポリオキシエチレンジラウレート、ポリオキシエチレンジステアレート等のポリオキシエチレンジアルキルエステル類等のノニオン系界面活性剤;フッ素系界面活性剤;シリコーン系界面活性剤;メタクリル酸共重合体系界面活性剤;アクリル酸共重合体系界面活性剤;等が挙げられる。
【0059】
カップリング剤またはその誘導体は、感放射線性樹脂組成物からなる樹脂膜と、半導体素子基板を構成する半導体層を含む各層との密着性をより高める効果を有する。カップリング剤またはその誘導体としては、ケイ素原子、チタン原子、アルミニウム原子、ジルコニウム原子から選ばれる1つの原子を有し、該原子に結合したヒドロカルビルオキシ基またはヒドロキシ基を有する化合物等が使用できる。
【0060】
カップリング剤またはその誘導体としては、例えば、
テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラ−n−プロポキシシラン、テトラ−i−プロポキシシラン、テトラ−n−ブトキシシランなどのテトラアルコキシシラン類、
メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、n−プロピルトリメトキシシラン、n-プロピルトリエトキシシラン、i−プロピルトリメトキシシラン、i−プロピルトリエトキシシラン、n−ブチルトリメトキシシラン、n−ブチルトリエトキシシラン、n−ペンチルトリメトキシシラン、n−ヘキシルトリメトキシシラン、n−ヘプチルトリメトキシシラン、n−オクチルトリメトキシシラン、n−デシルトリメトキシシラン、p−スチリルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、シクロヘキシルトリメトキシシラン、シクロヘキシルトリメトキシシラン、シクロヘキシルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、3−クロロプロピルトリメトキシシラン、3−クロロプロピルトリエトキシシラン、3,3,3−トリフルオロプロピルトリメトキシシラン、3,3,3−トリフルオロプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、2−ヒドロキシエチルトリメトキシシラン、2−ヒドロキシエチルトリエトキシシラン、2−ヒドロキシプロピルトリメトキシシラン、2−ヒドロキシプロピルトリエトキシシラン、3−ヒドロキシプロピルトリメトキシシラン、3−ヒドロキシプロピルトリエトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、3−イソシアナートプロピルトリメトキシシラン、3−イソシアナートプロピルトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン、3−(メタ)アクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、3−(メタ)アクリルオキシプロピルトリエトキシシラン、3−ウレイドプロピルトリメトキシシラン、3−ウレイドプロピルトリエトキシシラン、3−エチル(トリメトキシシリルプロポキシメチル)オキセタン、3−エチル(トリエトキシシリルプロポキシメチル)オキセタン、3−トリエトキシシリル−N−(1,3−ジメチル−ブチリデン)プロピルアミン、ビス(トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィドなどのトリアルコキシシラン類、
ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジエチルジメトキシシラン、ジエチルジエトキシシラン、ジ−n−プロピルジメトキシシラン、ジ−n−プロピルジエトキシシラン、ジ−i−プロピルジメトキシシラン、ジ−i−プロピルジエトキシシラン、ジ−n−ブチルジメトキシシラン、ジ−n−ペンチルジメトキシシラン、ジ−n−ペンチルジエトキシシラン、ジ−n−ヘキシルジメトキシシラン、ジ−n−ヘキシルジエトキシシラン、ジ−n−へプチルジメトキシシラン、ジ−n−ヘプチルジエトキシシラン、ジ−n−オクチルジメトキシシラン、ジ−n−オクチルジエトキシシラン、ジ−n−シクロヘキシルジメトキシシラン、ジ−n−シクロヘキシルジエトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−メタクリルオキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−アクリルオキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−メタクリルオキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−アクリルオキシプロピルメチルジエトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシランなどのジアルコキシシラン類の他、
メチルトリアセチルオキシシラン、ジメチルジアセチルオキシシラン等のケイ素原子含有化合物;
【0061】
テトラ−i−プロポキシチタン、テトラ−n−ブトキシチタン、テトラキス(2−エチルヘキシルオキシ)チタン、チタニウム−i−プロポキシオクチレングリコレート、ジ−i−プロポキシ・ビス(アセチルアセトナト)チタン、プロパンジオキシチタンビス(エチルアセトアセテート)、トリ−n−ブトキシチタンモノステアレート、ジ−i−プロポキシチタンジステアレート、チタニウムステアレート、ジ−i−プロポキシチタンジイソステアレート、(2−n−ブトキシカルボニルベンゾイルオキシ)トリブトキシチタン、ジ−n−ブトキシ・ビス(トリエタノールアミナト)チタンの他、プレンアクトシリーズ(味の素ファインテクノ株式会社製)等のチタン原子含有化合物;
アセトアルコキシアルミウムジイソプロピレート等のアルミニウム原子含有化合物;
テトラノルマルプロポキシジルコニウム、テトラノルマルブトキシジルコニウム、ジルコニウムテトラアセチルアセトネート、ジルコニウムトリブトキシアセチルアセトネート、ジルコニウムものブトキシアセチルアセトネートビス(エチルアセトアセテート)、ジルコニウムジブトキシビス(エチルアセトアセテート)、ジルコニウムテトラアセチルアセトネート、ジルコニウムトリブトキシステアレート等のジルコニウム原子含有化合物;が挙げられる。
【0062】
増感剤の具体例としては、2H−ピリド−(3,2−b)−1,4−オキサジン−3(4H)−オン類、10H−ピリド−(3,2−b)−1,4−ベンゾチアジン類、ウラゾール類、ヒダントイン類、バルビツール酸類、グリシン無水物類、1−ヒドロキシベンゾトリアゾール類、アロキサン類、マレイミド類等が挙げられる。
【0063】
酸化防止剤としては、通常の重合体に使用されている、フェノール系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、イオウ系酸化防止剤、ラクトン系酸化防止剤等が使用できる。例えば、フェノール類として、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール、p−メトキシフェノール、スチレン化フェノール、n−オクタデシル−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、2,2’−メチレン−ビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2−t−ブチル−6−(3’−t−ブチル−5’−メチル−2’−ヒドロキシベンジル)−4−メチルフェニルアクリレート、4,4’−ブチリデン−ビス−(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4’−チオ−ビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、ペンタエリスリトールテトラキス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、アルキル化ビスフェノール等を挙げることができる。リン系酸化防止剤としては、亜リン酸トリフェニル、亜リン酸トリス(ノニルフェニル)、イオウ系としては、チオジプロピオン酸ジラウリル等が挙げられる。
【0064】
光安定剤としては、ベンゾフェノン系、サリチル酸エステル系、ベンゾトリアゾール系、シアノアクリレート系、金属錯塩系等の紫外線吸収剤、ヒンダ−ドアミン系(HALS)等、光により発生するラジカルを捕捉するもの等のいずれでもよい。これらのなかでも、HALSはピペリジン構造を有する化合物で、感放射線性樹脂組成物に対し着色が少なく、安定性がよいため好ましい。具体的な化合物としては、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル/トリデシル1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート、ビス(1−オクチロキシ−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート等が挙げられる。
【0065】
本発明の感放射線性樹脂組成物の調製方法は、特に限定されず、感放射線性樹脂組成物を構成する各成分を公知の方法により混合すればよい。
混合の方法は特に限定されないが、感放射線性樹脂組成物を構成する各成分を溶剤(E)に溶解または分散して得られる溶液または分散液を混合するのが好ましい。これにより、感放射線性樹脂組成物は、溶液または分散液の形態で得られる。
【0066】
感放射線性樹脂組成物を構成する各成分を溶剤に溶解または分散する方法は、常法に従えばよい。具体的には、攪拌子とマグネティックスターラーを使用した攪拌、高速ホモジナイザー、ディスパー、遊星攪拌機、二軸攪拌機、ボールミル、三本ロール等を使用して行なうことができる。また、各成分を溶剤に溶解または分散した後に、例えば、孔径が0.5μm程度のフィルター等を用いて濾過してもよい。
【0067】
本発明の感放射線性樹脂組成物の固形分濃度は、通常、1〜70重量%、好ましくは5〜60重量%、より好ましくは10〜50重量%である。固形分濃度がこの範囲にあれば、溶解安定性、塗布性や形成される樹脂膜の膜厚均一性、平坦性等が高度にバランスされ得る。
【0068】
(積層体)
本発明の積層体は、上述した本発明の感放射線性樹脂組成物から形成される樹脂膜と、基板とを有し、たとえば、上述した本発明の感放射線性樹脂組成物を用いて基板上に樹脂膜を形成させた後、必要に応じて樹脂膜を架橋させることにより、得ることができる。
【0069】
本発明において、基板は、例えば、プリント配線基板、シリコンウエハー基板、ガラス基板、プラスチック基板等を用いることができる。基板は、基板表面が物理的及び/又は化学的に表面処理を施されていてもよく、また基板表面に他の薄膜が形成された複数の層構造を有していてもよい。また、ディスプレイ分野において使用される、ガラス基板やプラスチック基板等に薄型トランジスタ型液晶表示素子、薄膜トランジスタ、有機ELなどの各種素子、カラーフィルター、ブラックマトリックス等が形成されたものも好適に用いられる。
【0070】
樹脂膜を基板上に形成する方法は、特に限定されず、例えば、塗布法やフィルム積層法等の方法を用いることができる。
【0071】
塗布法は、例えば、感放射線性樹脂組成物を、塗布した後、加熱乾燥して溶剤を除去する方法である。感放射線性樹脂組成物を塗布する方法としては、例えば、スプレー法、スピンコート法、ロールコート法、ダイコート法、ドクターブレード法、回転塗布法、バー塗布法、スクリーン印刷法等の各種の方法を採用することができる。加熱乾燥条件は、各成分の種類や配合割合に応じて異なるが、通常、30〜150℃、好ましくは60〜120℃で、通常、0.5〜90分間、好ましくは1〜60分間、より好ましくは1〜30分間で行なえばよい。
【0072】
フィルム積層法は、感放射線性樹脂組成物を、樹脂フィルムや金属フィルム等のBステージフィルム形成用基材上に塗布した後に加熱乾燥により溶剤を除去してBステージフィルムを得、次いで、このBステージフィルムを、基材上に、積層する方法である。加熱乾燥条件は、各成分の種類や配合割合に応じて適宜選択することができるが、加熱温度は、通常、30〜150℃であり、加熱時間は、通常、0.5〜90分間である。フィルム積層は、加圧ラミネータ、プレス、真空ラミネータ、真空プレス、ロールラミネータ等の圧着機を用いて行なうことができる。
【0073】
基板上に形成される樹脂膜の厚さとしては、特に限定されず、用途に応じて適宜設定すればよいが、樹脂膜の厚さは、好ましくは0.1〜100μm、より好ましくは0.5〜50μm、さらに好ましくは0.5〜30μmである。
【0074】
また、本発明の感放射線性樹脂組成物は架橋剤(D)を含むものであるため、上記した塗布法又はフィルム積層法により形成した樹脂膜について、架橋反応を行なうことができる。このような架橋は、架橋剤(D)の種類に応じて適宜方法を選択すればよいが、通常、加熱により行なう。加熱方法は、例えば、ホットプレート、オーブン等を用いて行なうことができる。加熱温度は、通常、180〜250℃であり、加熱時間は、樹脂膜の面積や厚さ、使用機器等により適宜選択され、例えばホットプレートを用いる場合は、通常、5〜60分間、オーブンを用いる場合は、通常、30〜90分間の範囲である。加熱は、必要に応じて不活性ガス雰囲気下で行ってもよい。不活性ガスとしては、酸素を含まず、かつ、樹脂膜を酸化させないものであればよく、例えば、窒素、アルゴン、ヘリウム、ネオン、キセノン、クリプトン等が挙げられる。これらの中でも窒素とアルゴンが好ましく、特に窒素が好ましい。特に、酸素含有量が0.1体積%以下、好ましくは0.01体積%以下の不活性ガス、特に窒素が好適である。これらの不活性ガスは、それぞれ単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0075】
また、本発明の感放射線性樹脂組成物を用いて形成された樹脂膜は、パターン化されていてもよい。
樹脂膜をパターン化する方法としては、例えば、パターン化前の樹脂膜に活性放射線を照射して潜像パターンを形成し、次いで潜像パターンを有する樹脂膜に現像液を接触させることによりパターンを顕在化させる方法などが挙げられる。
【0076】
活性放射線としては、感放射線性樹脂組成物に含有される感放射線化合物(B)を活性化させ、感放射線化合物(B)を含む感放射線性樹脂組成物のアルカリ可溶性を変化させることができるものであれば特に限定されない。具体的には、紫外線、g線やi線等の単一波長の紫外線、KrFエキシマレーザー光、ArFエキシマレーザー光等の光線;電子線のような粒子線;等を用いることができる。これらの活性放射線を選択的にパターン状に照射して潜像パターンを形成する方法としては、常法に従えばよく、例えば、縮小投影露光装置等により、紫外線、g線、i線、KrFエキシマレーザー光、ArFエキシマレーザー光等の光線を所望のマスクパターンを介して照射する方法、又は電子線等の粒子線により描画する方法等を用いることができる。活性放射線として光線を用いる場合は、単一波長光であっても、混合波長光であってもよい。照射条件は、使用する活性放射線に応じて適宜選択されるが、例えば、波長200〜450nmの光線を使用する場合、照射量は、通常10〜1,000mJ/cm、好ましくは50〜500mJ/cmの範囲であり、照射時間と照度に応じて決まる。このようにして活性放射線を照射した後、必要に応じ、保護膜を60〜130℃程度の温度で1〜2分間程度加熱処理する。
【0077】
次に、パターン化前の樹脂膜に形成された潜像パターンを現像して顕在化させる。現像液としては、通常、アルカリ性化合物の水性溶液が用いられる。アルカリ性化合物としては、例えば、アルカリ金属塩、アミン、アンモニウム塩を使用することができる。アルカリ性化合物は、無機化合物であっても有機化合物であってもよい。これらの化合物の具体例としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、ケイ酸ナトリウム、メタケイ酸ナトリウム等のアルカリ金属塩;アンモニア水;エチルアミン、n−プロピルアミン等の第一級アミン;ジエチルアミン、ジ−n−プロピルアミン等の第二級アミン;トリエチルアミン、メチルジエチルアミン等の第三級アミン;テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド、コリン等の第四級アンモニウム塩;ジメチルエタノールアミン、トリエタノールアミン等のアルコールアミン;ピロール、ピペリジン、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エン、1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]ノナ−5−エン、N−メチルピロリドン等の環状アミン類;等が挙げられる。これらアルカリ性化合物は、それぞれ単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0078】
アルカリ水性溶液の水性媒体としては、水;メタノール、エタノール等の水溶性有機溶剤を使用することができる。アルカリ水性溶液は、界面活性剤等を適当量添加したものであってもよい。
潜像パターンを有する樹脂膜に現像液を接触させる方法としては、例えば、パドル法、スプレー法、ディッピング法等の方法が用いられる。現像は、通常、0〜100℃、好ましくは5〜55℃、より好ましくは10〜30℃の範囲で、通常、30〜180秒間の範囲で適宜選択される。
【0079】
このようにして目的とするパターンが形成された樹脂膜は、必要に応じて、現像残渣を除去するために、リンス液でリンスすることができる。リンス処理の後、残存しているリンス液を圧縮空気や圧縮窒素により除去する。
さらに、必要に応じて、感放射線化合物(B)を失活させるために、基板全面に、活性放射線を照射することもできる。活性放射線の照射には、上記潜像パターンの形成に例示した方法を利用できる。照射と同時に、又は照射後に樹脂膜を加熱してもよい。加熱方法としては、例えば、基板をホットプレートやオーブン内で加熱する方法が挙げられる。温度は、通常、100〜300℃、好ましくは120〜200℃の範囲である。
【0080】
本発明において、樹脂膜は、パターン化した後に、架橋反応を行なうことができる。架橋は、上述した方法にしたがって行なえばよい。
【0081】
本発明によれば、積層体を構成する樹脂膜を、上述した本発明の感放射線性樹脂組成物を用いて形成するため、本発明の積層体を、露光感度に優れた樹脂膜を備え、しかも、高温高湿環境下における信頼性、特に、高温高湿環境下に保持した際における、オフリーク電流値の上昇を有効に抑制が可能であるという優れた信頼性を有するものとすることができる。そのため、本発明の積層体は、種々の電子部品、特に半導体デバイスとして有用であり、特に、高温高湿環境下に保持した際における、オフリーク電流値の上昇を有効に抑制が可能であることから、アクティブマトリックス基板などを構成する薄膜トランジスタ(具体的には、本発明の感放射線性樹脂組成物を用いて得られる樹脂膜を、ゲート絶縁膜や、保護膜として用いてなる薄膜トランジスタ)に好適に用いることができる。
【実施例】
【0082】
以下に、実施例および比較例を挙げて、本発明についてより具体的に説明する。各例中の「部」および「%」は、特に断りのない限り、重量基準である。
なお、各特性の定義および評価方法は、以下のとおりである。
【0083】
<露光感度>
ソーダガラス基板上に、感放射線性樹脂組成物をスピンコート法により塗布し、ホットプレートを用いて110℃で2分間プリベークして、膜厚2.5μmの樹脂膜を形成した。次いで、2.38重量%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液を用いて、23℃で40秒間現像処理を行った後、超純水で30秒間リンスした。次いで、樹脂膜をパターニングするために、5μmのコンタクトホールパターンを形成可能なマスクを用いて、200mJ/cmから350mJ/cmまで50mJ/cm毎に露光量を変化させることにより、空気中にて、露光工程を行い、次いで、オーブンを用いて、窒素雰囲気において230℃で30分間加熱するポストベークを行うことにより、露光量の異なるコンタクトホールパターンを有する樹脂膜と、ソーダガラス基板とからなる積層体を得た。
【0084】
そして、光学顕微鏡を用いて、得られた積層体のコンタクトホール形成部分を観察し、各露光量で露光された部分の樹脂膜のコンタクトホールパターンの最長部の長さをそれぞれ測定した。そして、各露光量と、対応する露光量において形成された樹脂膜のコンタクトホールパターンの最長部の長さの関係から近似曲線を作成し、コンタクトホールパターンが5μmとなる時の露光量を算出し、その露光量を露光感度として算出した。コンタクトホールパターンが5μmとなる時の露光量が低いほど、低いエネルギーで、または短い時間でコンタクトホールを形成できることができるため、好ましい。
○:コンタクトホールパターンが5μmとなる時の露光量が、250mJ/cm未満
△:コンタクトホールパターンが5μmとなる時の露光量が、250mJ/cm以上、300mJ/cm未満
×:コンタクトホールパターンが5μmとなる時の露光量が、300mJ/cm以上
【0085】
<高温高湿環境下保持後のオフリーク電流値>
アクティブマトリックス基板を、60℃、90%RHの高温、高湿環境に200時間保持し、高温、高湿環境に保持した後のアクティブマトリックス基板についてオフリーク電流値の測定を行った。具体的には、高温、高湿環境に保持した後のアクティブマトリックス基板のソース電極とドレイン電極の間に20Vの電圧を印加し、ゲート電極に印加する電圧を−20〜+30Vに変化させて、ソース電極とドレイン電極との間に流れる電流を、マニュアルプローバーおよび半導体パラメータアナライザー(Agilent社製、4156C)を用いて測定することで、オフリーク電流値の測定を行なった。
【0086】
《合成例1》
<環状オレフィン重合体(A−1)の調製>
N−フェニル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド(NBPI)40モル%、および4−ヒドロキシカルボニルテトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ−9−エン(TCDC)60モル%からなる単量体混合物100部、1,5−ヘキサジエン2.0部、(1,3−ジメシチルイミダゾリン−2−イリデン)(トリシクロヘキシルホスフィン)ベンジリデンルテニウムジクロリド(Org.Lett.,第1巻,953頁,1999年 に記載された方法で合成した)0.02部、およびジエチレングリコールエチルメチルエーテル200部を、窒素置換したガラス製耐圧反応器に仕込み、攪拌しつつ80℃にて4時間反応させて重合反応液を得た。
【0087】
そして、得られた重合反応液をオートクレーブに入れて、150℃、水素圧4MPaで、5時間攪拌して水素化反応を行い、環状オレフィン重合体(A−1)を含む重合体溶液を得た。得られた環状オレフィン重合体(A−1)の重合転化率は99.7%、ポリスチレン換算重量平均分子量は7,150、数平均分子量は4,690、分子量分布は1.52、水素添加率は99.7%であり、得られた環状オレフィン重合体(A−1)の重合体溶液の固形分濃度は34.4重量%であった。また、環状オレフィン重合体(A−1)中のN−フェニル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド(NBPI)単位と、4−ヒドロキシカルボニルテトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ−9−エン(TCDC)単位との含有割合は、仕込み比と同じであった(後述する合成例2〜5においても同様。)。
【0088】
《合成例2》
<環状オレフィン重合体(A−2)の調製>
単量体混合物として、N−フェニル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド(NBPI)30モル%、および4−ヒドロキシカルボニルテトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ−9−エン(TCDC)70モル%からなるものを用いた以外は、合成例1と同様にして、環状オレフィン重合体(A−2)を含む重合体溶液を得た。得られた環状オレフィン重合体(A−2)の重合転化率は99.7%、ポリスチレン換算重量平均分子量は7,100、数平均分子量は4,750、分子量分布は1.52、水素添加率は99.8%であった。また、得られた環状オレフィン重合体(A−2)の重合体溶液の固形分濃度は34.4重量%であった。
【0089】
《合成例3》
<環状オレフィン重合体(A−3)の調製>
単量体混合物として、N−フェニル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド(NBPI)50モル%、および4−ヒドロキシカルボニルテトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ−9−エン(TCDC)50モル%からなるものを用いた以外は、合成例1と同様にして、環状オレフィン重合体(A−3)を含む重合体溶液を得た。得られた環状オレフィン重合体(A−3)の重合転化率は99.5%、ポリスチレン換算重量平均分子量は7,180、数平均分子量は4,680、分子量分布は1.52、水素添加率は99.6%であった。また、得られた環状オレフィン重合体(A−3)の重合体溶液の固形分濃度は34.4重量%であった。
【0090】
《合成例4》
<環状オレフィン重合体(A’−4)の調製>
単量体混合物として、N−フェニル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド(NBPI)70モル%、および4−ヒドロキシカルボニルテトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ−9−エン(TCDC)30モル%からなるものを用いた以外は、合成例1と同様にして、環状オレフィン重合体(A’−4)を含む重合体溶液を得た。得られた環状オレフィン重合体(A’−4)の重合転化率は99.7%、ポリスチレン換算重量平均分子量は7,120、数平均分子量は4,710、分子量分布は1.53、水素添加率は99.7%であった。また、得られた環状オレフィン重合体(A’−4)の重合体溶液の固形分濃度は34.4重量%であった。
【0091】
《合成例5》
<環状オレフィン重合体(A’−5)の調製>
単量体混合物として、N−フェニル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド(NBPI)20モル%、および4−ヒドロキシカルボニルテトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ−9−エン(TCDC)80モル%からなるものを用いた以外は、合成例1と同様にして、環状オレフィン重合体(A’−5)を含む重合体溶液を得た。得られた環状オレフィン重合体(A’−5)の重合転化率は99.6%、ポリスチレン換算重量平均分子量は7,090、数平均分子量は4,630、分子量分布は1.49、水素添加率は99.8%であった。また、得られた環状オレフィン重合体(A’−5)の重合体溶液の固形分濃度は34.4重量%であった。
【0092】
《合成例6》
(アクリル樹脂の調製)
スチレン20部、ブチルメタクリレート25部、2−エチルヘキシルアクリレート25部、メタクリル酸30部、2,2−アゾビスイソブチロニトリル0.5部、及びプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート300部を窒素気流中で撹拌しながら80℃で5時間加熱した。得られた樹脂溶液をロータリーエバポレーターで濃縮し、固形分濃度35%のアクリル樹脂溶液を得た。
【0093】
《合成例7》
(ポリイミドの調製)
乾燥空気気流下、4つ口フラスコ内で4,4’−ジアミノジフェニルエーテル9.61部、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン17.3部、ビス(3−アミノプロピル)テトラメチルジシロキサン1.24部及びシクロペンタノン102.5部を仕込み、40℃で溶解させた。その後、無水ピロメリット酸6.54部、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物9.67部、3,3’,4,4’−ジフェニルエーテルテトラカルボン酸二無水物12.41部及びシクロペンタノン30部を加え、50℃で3時間反応させた。この溶液をロータリーエバポレーターで濃縮し、固形分濃度35%のポリイミド溶液を得た。
【0094】
《実施例1》
<感放射線性樹脂組成物の調製>
環状オレフィン重合体(A)として、合成例1で得られた環状オレフィン重合体(A−1)100部、感放射線化合物(B)として、1,1,3−トリス(2,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)−3−フェニルプロパン(1モル)と1,2−ナフトキノンジアジド−5−スルホン酸クロライド(2モル)との縮合物30部、オルトエステル(C)として、オルト蟻酸トリメチル30部、架橋剤(D)として、(3’,4’−エポキシシクロヘキサン)メチル3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート(商品名「セロキサイド2021P」、ダイセル化学工業社製、分子量250、ASPEN PLUSにより測定したSP値(SP)19699.55(J/CUM)1/2)20部、同じく架橋剤(D)として、フルオレン系エポキシ樹脂(商品名 「オンコートEX−1040」、ナガセケムテックス社製)20、および溶剤(E)として、ジエチレングリコールエチルメチルエーテル(EDM)100部を混合し、溶解させた後、孔径0.45μmのポリテトラフルオロエチレン製フィルターでろ過して感放射線性樹脂組成物を調製した。
【0095】
<アクティブマトリックス基板の作製>
ガラス基板(商品名「コーニング1737」、コーニング社製)上に、スパッタリング装置を用いて、クロムを200nmの膜厚で形成し、フォトリソグラフィによリパターニングを行い、ゲート電極、ゲート信号線およびゲート端子部を形成した。次いで、CVD装置により、ゲート電極とゲート電極を覆って、ゲート絶縁膜となるシリコン窒化物膜を450nmの厚さ、半導体層となるa−Si層(アモルファスシリコン層)を250nmの厚さ、オーミックコンタクト層となるn+Si層を50nmの厚さで連続形成し、n+Si層とa−Si層をアイランド状にパターニングした。さらに、ゲート絶縁膜とn+Si層上にスパッタリング装置で、クロムを200nmの膜厚で形成し、フォトリソグラフィにより、ソース電極、ソース信号線、ドレイン電極、およびデータ端子部を形成し、ソース電極とドレイン電極の間の不要なn+Si層を除去してバックチャネルを形成し、ガラス基板上に複数の薄膜トランジスタが形成されたアレイ基板を得た。
【0096】
そして、得られたアレイ基板に、上記にて得られた感放射線性樹脂組成物をスピンコートした後、ホットプレートを用いて、90℃で2分間プリベークして、膜厚1.2μmの樹脂膜を形成した。次いで、この樹脂膜に、10μm×10μmのホールパターンのマスクを介して、365nmにおける光強度が5mW/cmである紫外線を、40秒間、空気中で照射した。次いで、0.4重量%のテトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液を用いて、25℃で90秒間現像処理を行なった後、超純水で30秒間リンスしてコンタクトホールのパターンを形成した後、230℃で15分間加熱することによりポストベークを行なうことにより、保護膜(樹脂膜)が形成されたアレイ基板を得た。
【0097】
そして、上記にて保護膜(樹脂膜)を形成したアレイ基板を真空槽に移し、スパッタリングガスとしてアルゴンと酸素との混合ガス(体積比100:4)を用い、圧力0.3Pa、DC出力400Wとし、マスクを通してDCスパッタリングすることにより、ドレイン電極に接するように、膜厚200nmのIn−Sn−O系の非晶質透明導電層(画素電極)を形成して、アクティブマトリックス基板を得た。
【0098】
そして、上記にて得られた感放射線性樹脂組成物を用いて、露光感度の測定を、また、上記にて得られたアクティブマトリックス基板を用いて、高温高湿環境下保持後のオフリーク電流値の測定を、それぞれ行った。結果を表1に示す。
【0099】
《実施例2》
オルトエステル(C)としてのオルト蟻酸トリメチルの配合量を30部から10部に変更した以外は、実施例1と同様にして、感放射線性樹脂組成物およびアクティブマトリックス基板を得て、同様に評価を行った。結果を表1に示す。
【0100】
《実施例3》
オルトエステル(C)としてのオルト蟻酸トリメチルの配合量を30部から50部に変更した以外は、実施例1と同様にして、感放射線性樹脂組成物およびアクティブマトリックス基板を得て、同様に評価を行った。結果を表1に示す。
【0101】
《実施例4》
オルトエステル(C)として、オルト蟻酸トリメチル30部に代えて、オルト蟻酸トリブチル30部を使用した以外は、実施例1と同様にして、感放射線性樹脂組成物およびアクティブマトリックス基板を得て、同様に評価を行った。結果を表1に示す。
【0102】
《実施例5》
オルトエステル(C)として、オルト蟻酸トリメチル30部に代えて、オルト酢酸トリメチル30部を使用した以外は、実施例1と同様にして、感放射線性樹脂組成物およびアクティブマトリックス基板を得て、同様に評価を行った。結果を表1に示す。
【0103】
《実施例6》
環状オレフィン重合体(A)として、環状オレフィン重合体(A−1)100部に代えて、合成例2で得られた環状オレフィン重合体(A−2)100部を使用した以外は、実施例1と同様にして、感放射線性樹脂組成物およびアクティブマトリックス基板を得て、同様に評価を行った。結果を表1に示す。
【0104】
《実施例7》
環状オレフィン重合体(A)として、環状オレフィン重合体(A−1)100部に代えて、合成例3で得られた環状オレフィン重合体(A−3)100部を使用した以外は、実施例1と同様にして、感放射線性樹脂組成物およびアクティブマトリックス基板を得て、同様に評価を行った。結果を表1に示す。
【0105】
《比較例1》
環状オレフィン重合体(A)としての環状オレフィン重合体(A−1)100部に代えて、合成例4で得られた環状オレフィン重合体(A’−4)100部を使用した以外は、実施例1と同様にして、感放射線性樹脂組成物およびアクティブマトリックス基板を得て、同様に評価を行った。結果を表1に示す。
【0106】
《比較例2》
環状オレフィン重合体(A)としての環状オレフィン重合体(A−1)100部に代えて、合成例5で得られた環状オレフィン重合体(A’−5)100部を使用した以外は、実施例1と同様にして、感放射線性樹脂組成物およびアクティブマトリックス基板を得て、同様に評価を行った。結果を表1に示す。
【0107】
《比較例3》
オルトエステル(C)としてのオルト蟻酸トリメチルを配合しなかった以外は、実施例1と同様にして、感放射線性樹脂組成物およびアクティブマトリックス基板を得て、同様に評価を行った。結果を表1に示す。
【0108】
《比較例4》
環状オレフィン重合体(A)としての環状オレフィン重合体(A−1)100部に代えて、合成例6で得られたアクリル樹脂100部を使用した以外は、実施例1と同様にして、感放射線性樹脂組成物およびアクティブマトリックス基板を得て、同様に評価を行った。結果を表1に示す。
【0109】
《比較例5》
環状オレフィン重合体(A)としての環状オレフィン重合体(A−1)100部に代えて、合成例7で得られたポリイミド100部を使用した以外は、実施例1と同様にして、感放射線性樹脂組成物およびアクティブマトリックス基板を得て、同様に評価を行った。結果を表1に示す。
【0110】
【表1】
【0111】
表1に示すように、プロトン性極性基を有する単量体単位の含有割合が40モル%以上、80モル%未満である環状オレフィン重合体(A)、感放射線化合物(B)、オルトエステル(C)、および架橋剤(D)を含有する感放射線性樹脂組成物を用いて得られる樹脂膜は、露光感度に優れ、しかも、該樹脂膜を用いて得られる積層体(アクティブマトリックス基板)は、高温高湿環境下に保持した後における、オフリーク電流値の上昇が抑えられており、信頼性に優れるものであった(実施例1〜7)。
【0112】
これに対して、プロトン性極性基の含有割合が40モル%未満である環状オレフィン重合体(A)を用いた場合には、得られる樹脂膜は、露光感度に劣る結果となった(比較例1)。
また、プロトン性極性基の含有割合が80モル%以上である環状オレフィン重合体(A)を用いた場合には、現像時に溶解してしまい、樹脂膜をパターン化することができないものであった(比較例2)。
さらに、オルトエステル(C)を配合しない場合、プロトン性極性基を有する単量体単位の含有割合が40モル%以上、80モル%未満である環状オレフィン重合体(A)の代わりに、アクリル樹脂やポリイミドを用いた場合には、得られる積層体(アクティブマトリックス基板)は、高温高湿環境下に保持した後における、オフリーク電流値の上昇が大きくなり、信頼性に劣るものであった(比較例3〜5)。