(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
ベースポリマーが、フェノール性水酸基を有する繰り返し単位を含み、酸不安定基を有する繰り返し単位を含まない化学増幅ネガ型レジスト材料である請求項1又は2に記載の化学増幅レジスト材料。
請求項1乃至9のいずれか1項に記載のレジスト材料を基板上に塗布する工程と、加熱処理後、高エネルギー線で露光する工程と、現像液を用いて現像する工程とを含むことを特徴とするパターン形成方法。
高エネルギー線で露光する工程が、波長193nmのArFエキシマレーザー又は波長248nmのKrFエキシマレーザーによることを特徴とする請求項10に記載のパターン形成方法。
【背景技術】
【0002】
LSIの高集積化と高速度化に伴い、パターンルールの微細化が急速に進んでいる。特にフラッシュメモリー市場の拡大と記憶容量の増大化が微細化を牽引している。最先端の微細化技術としては、ArFリソグラフィーによる65nmノードのデバイスの量産が行われており、次世代のArF液浸リソグラフィーによる45nmノードの量産準備が進行中である。次世代の32nmノードとしては、水よりも高屈折率の液体と高屈折率レンズ、高屈折率レジスト材料を組み合わせた超高NAレンズによる液浸リソグラフィー、波長13.5nmの真空紫外光(EUV)リソグラフィー、ArFリソグラフィーの2重露光(ダブルパターニングリソグラフィー)などが候補であり、検討が進められている。
【0003】
EBやX線などの非常に短波長な高エネルギー線においては、レジスト材料に用いられている炭化水素のような軽元素は吸収がほとんどなく、ポリヒドロキシスチレンベースのレジスト材料が検討されている。
EB用レジスト材料は、実用的にはマスク描画用途に用いられてきた。近年、マスク製作技術が問題視されるようになってきた。露光に用いられる光がg線の時代から縮小投影露光装置が用いられており、その縮小倍率は1/5であったが、チップサイズの拡大と、投影レンズの大口径化と共に1/4倍率が用いられるようになってきたため、マスクの寸法ズレがウエハー上のパターンの寸法変化に与える影響が問題になっている。パターンの微細化と共に、マスクの寸法ズレの値よりもウエハー上の寸法ズレの方が大きくなってきていることが指摘されている。マスク寸法変化を分母、ウエハー上の寸法変化を分子として計算されたMask Error Enhancement Factor(MEEF)が求められている。45nm級のパターンでは、MEEFが4を超えることも珍しくない。縮小倍率が1/4でMEEFが4であれば、マスク製作において実質等倍マスクと同等の精度が必要であることが言える。
マスク製作用露光装置は線幅の精度を上げるため、レーザービームによる露光装置から電子ビーム(EB)による露光装置が用いられてきた。更にEBの電子銃における加速電圧を上げることによってより一層の微細化が可能になることから、10keVから30keV、最近は50keVが主流であり、100keVの検討も進められている。
酸発生剤を添加し、光あるいは電子線の照射によって酸を発生させて脱保護反応を起こす化学増幅ポジ型レジスト材料、及び酸による架橋反応を起こす化学増幅ネガ型レジスト材料にとって、酸の未露光部分への拡散を制御し、コントラストを向上させる目的でのクエンチャーの添加効果は非常に効果的であった。そのために多くのアミンクエンチャーが提案された(特許文献1〜3:特開2001−194776号公報、特開2002−226470号公報、特開2002−363148号公報)。
【0004】
微細化が進行し、光の回折限界に近づくにつれて、光のコントラストが低下してくる。光のコントラストの低下によって、ポジ型レジスト膜においてはホールパターンやトレンチパターンの解像性や、フォーカスマージンの低下が生じる。
【0005】
光のコントラスト低下によるレジストパターンの解像性低下の影響を防ぐために、レジスト膜の溶解コントラストを向上させる試みが行われている。
酸によって酸が発生する酸増殖機構を利用した化学増幅型レジスト材料が提案されている。
通常、露光量の増大によって酸の濃度が線形的に漸増するが、酸増殖の場合は酸の濃度が露光量の増大に対して非線形に急激に増大する。酸増殖システムは、化学増幅レジスト膜の高コントラスト、高感度といった長所を更に伸ばすメリットがあるが、アミンの汚染による環境耐性が劣化し、酸拡散距離増大による限界解像性の低下といった化学増幅レジスト膜の欠点を更に劣化させるため、これを実用に供しようとする場合、非常にコントロールしづらい機構である。
【0006】
コントラストを上げるためのもう一つの手法は、露光量の増大に従ってアミンの濃度を低下させる方法である。このためには、光によってクエンチャーとしての機能を失う化合物の適用が考えられる。
【0007】
ArF用のメタクリレートポリマーに用いられている酸不安定基は、α位がフッ素で置換されたスルホン酸が発生する光酸発生剤を使うことによって脱保護反応が進行するが、α位がフッ素で置換されていないスルホン酸、カルボン酸が発生する酸発生剤では脱保護反応が進行しない。α位がフッ素で置換されたスルホン酸が発生するスルホニウム塩、ヨードニウム塩に、α位がフッ素で置換していないスルホン酸が発生するスルホニウム塩、ヨードニウム塩を混合すると、α位がフッ素で置換していないスルホン酸が発生するスルホニウム塩、ヨードニウム塩は、α位がフッ素で置換されたスルホン酸とイオン交換を起こす。光によって発生したα位がフッ素で置換されたスルホン酸は、イオン交換によってスルホニウム塩、ヨードニウム塩に逆戻りするために、α位がフッ素で置換されていないスルホン酸やカルボン酸のスルホニウム塩、ヨードニウム塩はクエンチャーとして機能する。
【0008】
更に、α位がフッ素で置換していないスルホン酸が発生するスルホニウム塩、ヨードニウム塩は光分解によってクエンチャー能を失うために、光分解性のクエンチャーとしても機能する。
構造式は明らかにしていないが、光分解性のクエンチャーの添加によってトレンチパターンのマージンが拡大することが示されている(非特許文献3:SPIE Vol. 7639 p76390W (2010))。しかしながら、性能向上に与える影響は僅かであり、よりコントラストを向上させるクエンチャーの開発が望まれている。
【0009】
特許文献4(特開2012−137729号公報)には、酸によって酸不安定基が脱離し、次いでラクタムが生成することによって塩基性が低下するアミンクエンチャーが提案されている。酸によって塩基性が低下する機構によって、酸の発生量が少ない未露光部分は高い塩基性によって酸の拡散が制御されていて、酸の発生量が多い過露光部分はクエンチャーの塩基性が低下することによって酸の拡散が大きくなっている。これによって露光部と未露光部の酸量の差を広げることができ、コントラストの向上が期待される。しかしながら、ベースポリマーの脱保護反応と、クエンチャーの脱保護反応と次いで起こるラクタム形成反応が同時並行に起こるために、コントラスト向上の効果が低いという問題があった。クエンチャーの脱保護反応がベースポリマーの脱保護反応よりも遅い場合は、コントラスト向上の効果が低い。更なるコントラスト向上を図ることができるクエンチャーの開発が望まれている。
【0010】
特許文献5(国際公開第2008/090640号)には、ヒドロキシ基が置換又は非置換のオキシム化合物が添加されている非化学増幅ネガ型レジストが提案されている。露光によってオキシム化合物からラジカルを発生させ、重合性2重結合を有するモノマーを重合することによって現像液に不溶となるメカニズムである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明に係る無置換のオキシム基を有する化合物は下記一般式(1)に示される。
【化4】
(式中、R
1、R
2は水素原子、炭素数1〜30の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基、炭素数6〜30のアリール基、炭素数7〜30のアラルキル基、炭素数2〜30のアルケニル基、炭素数2〜10のアルキニル基、又は炭素数4〜12の複素環含有基であり、これらの基が複合してもよく、またこれらの基がヒドロキシ基、メルカプト基、カルボキシル基、エーテル基、チオエーテル基、エステル基、スルホン酸エステル基、スルホニル基、ラクトン環、カルボニル基、シアノ基、ニトロ基、ハロゲン原子、トリフルオロメチル基、アミド基、イミド基、スルホンアミド基、カーボネート基、スルフィド基、オキシム基のいずれかを有していてもよい。)
【0020】
下記の反応式に示すように、オキシム基は酸の存在によってベックマン転移を起こし、ラクタムを形成する。オキシムはラクタムよりも塩基性度が高く、酸によって塩基性度が変化する。露光量が少なく酸の発生が少ない領域では、オキシム基を有する化合物がクエンチャーとして機能するだけの十分な塩基性を有し、酸の発生量が多い領域ではラクタム生成による塩基性の低下によりクエンチャーとしての機能を失う。酸の発生量が多い領域でのコントラストが向上し、トレンチパターンやホールパターンにおける解像性やDOFマージンが向上する。酸の発生量の多い領域でコントラストが向上する効果は酸増殖剤を添加した場合と同じであるが、酸増殖剤の添加は酸拡散が急激に増大するために解像性が劣化する場合があるのに対して、本方法の塩基性化合物を使った場合の酸拡散の増大は僅かである。
【0022】
一般式(1)で示されるオキシム化合物は、具体的には下記に例示される。
【化6】
【0027】
本発明のオキシム基を有する化合物を含有するレジスト材料は、ポジ型レジスト材料でも、ネガ型レジスト材料でもよいが、どちらも酸発生剤を含有する化学増幅レジスト材料である必要がある。本発明のオキシム基を有する化合物は、未露光部分は酸を捕捉することによって酸の拡散を抑制し、露光部分は酸によるオキシム基を有する化合物のベックマン転移反応でラクタムの生成による塩基性の低下によってコントラストを向上させる。ベース樹脂の脱保護反応よりもラクタムの生成反応の方が早く、コントラストの向上効果が高い。それ故、酸を触媒とする化学増幅レジスト材料への適用が好ましい。
【0028】
本発明の化学増幅レジスト材料は、上記式(1)の塩基性化合物(オキシム化合物)と、後述するベースポリマー及び酸発生剤を含有するが、上記式(1)の塩基性化合物の配合量は、ベースポリマー100質量部に対し、感度と酸拡散抑制効果の点から0.001〜20質量部、特に0.01〜10質量部とすることが好ましい。
【0029】
ベースポリマーとしては、化学増幅ポジ型レジスト材料の場合、酸不安定基を有する繰り返し単位を含む。酸不安定基を有する繰り返し単位は、下記一般式(2)中の繰り返し単位a1で表される酸不安定基で置換された(メタ)アクリレート、スチレンカルボン酸、又はビニルナフタレンカルボン酸に由来する繰り返し単位、又はa2で表される酸不安定基で置換されたヒドロキシスチレンに由来する繰り返し単位が好ましい。
【化11】
【0030】
ここで、R
3、R
5は同一でも異なっていてもよく、水素原子あるいはメチル基である。Xは単結合、エステル基又はラクトン環を有する炭素数1〜12の連結基、フェニレン基、又はナフチレン基である。Yは単結合、又はエステル基である。また、R
4、R
6は酸不安定基である。
【0031】
酸不安定基を有する繰り返し単位a1は、好ましくは(メタ)アクリル酸、スチレンカルボン酸、ビニルナフタレンカルボン酸のカルボキシル基の水素原子を酸不安定基で置換したモノマーに由来するものであり、具体的には下記に例示することができる。
【0032】
【化12】
(式中、R
3、R
4は前述と同様である。)
【0033】
上記繰り返し単位a1及びa2中のR
4、R
6で示される酸不安定基は種々選定されるが、同一でも異なっていてもよく、特に下記式(A−1)〜(A−3)で置換された基で示されるものが挙げられる。
【0035】
式(A−1)において、R
30は炭素数4〜20、好ましくは4〜15の3級アルキル基、各アルキル基がそれぞれ炭素数1〜6のトリアルキルシリル基、炭素数4〜20のオキソアルキル基又は上記式(A−3)で示される基を示し、3級アルキル基として具体的には、tert−ブチル基、tert−アミル基、1,1−ジエチルプロピル基、1−エチルシクロペンチル基、1−ブチルシクロペンチル基、1−エチルシクロヘキシル基、1−ブチルシクロヘキシル基、1−エチル−2−シクロペンテニル基、1−エチル−2−シクロヘキセニル基、2−メチル−2−アダマンチル基等が挙げられ、トリアルキルシリル基として具体的には、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、ジメチル−tert−ブチルシリル基等が挙げられ、オキソアルキル基として具体的には、3−オキソシクロヘキシル基、4−メチル−2−オキソオキサン−4−イル基、5−メチル−2−オキソオキソラン−5−イル基等が挙げられる。aは0〜6の整数である。
【0036】
式(A−2)において、R
31、R
32は水素原子又は炭素数1〜18、好ましくは1〜10の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基を示し、具体的にはメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、2−エチルヘキシル基、n−オクチル基等を例示できる。R
33は炭素数1〜18、好ましくは1〜10の酸素原子等のヘテロ原子を有してもよい1価の炭化水素基を示し、直鎖状、分岐状もしくは環状のアルキル基、これらの水素原子の一部が水酸基、アルコキシ基、オキソ基、アミノ基、アルキルアミノ基等に置換されたものを挙げることができ、具体的には下記の置換アルキル基等が例示できる。
【0038】
R
31とR
32、R
31とR
33、R
32とR
33とは結合してこれらが結合する炭素原子又は炭素原子及び酸素原子と共に環を形成してもよく、環を形成する場合には環の形成に関与するR
31、R
32、R
33はそれぞれ炭素数1〜18、好ましくは1〜10の直鎖状又は分岐状のアルキレン基を示し、好ましくは環の炭素数は3〜10、特に4〜10である。
【0039】
上記式(A−1)の酸不安定基としては、具体的にはtert−ブトキシカルボニル基、tert−ブトキシカルボニルメチル基、tert−アミロキシカルボニル基、tert−アミロキシカルボニルメチル基、1,1−ジエチルプロピルオキシカルボニル基、1,1−ジエチルプロピルオキシカルボニルメチル基、1−エチルシクロペンチルオキシカルボニル基、1−エチルシクロペンチルオキシカルボニルメチル基、1−エチル−2−シクロペンテニルオキシカルボニル基、1−エチル−2−シクロペンテニルオキシカルボニルメチル基、1−エトキシエトキシカルボニルメチル基、2−テトラヒドロピラニルオキシカルボニルメチル基、2−テトラヒドロフラニルオキシカルボニルメチル基等が例示できる。
【0040】
更に、下記式(A−1)−1〜(A−1)−10で示される置換基を挙げることもできる。
【化15】
【0041】
ここで、R
37は互いに同一又は異種の炭素数1〜10の直鎖状、分岐状もしくは環状のアルキル基、又は炭素数6〜20のアリール基、R
38は水素原子、又は炭素数1〜10の直鎖状、分岐状もしくは環状のアルキル基である。
また、R
39は互いに同一又は異種の炭素数2〜10の直鎖状、分岐状もしくは環状のアルキル基、又は炭素数6〜20のアリール基である。aは0〜6の整数である。
【0042】
上記式(A−2)で示される酸不安定基のうち、直鎖状又は分岐状のものとしては、下記式(A−2)−1〜(A−2)−72のものを例示することができる。
【0048】
上記式(A−2)で示される酸不安定基のうち、環状のものとしては、テトラヒドロフラン−2−イル基、2−メチルテトラヒドロフラン−2−イル基、テトラヒドロピラン−2−イル基、2−メチルテトラヒドロピラン−2−イル基等が挙げられる。
【0049】
また、下記式(A−2a)あるいは(A−2b)で表される酸不安定基によってベース樹脂が分子間あるいは分子内架橋されていてもよい。
【化21】
【0050】
式中、R
40、R
41は水素原子又は炭素数1〜8の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基を示す。又は、R
40とR
41は結合してこれらが結合する炭素原子と共に環を形成してもよく、環を形成する場合にはR
40、R
41は炭素数1〜8の直鎖状又は分岐状のアルキレン基を示す。R
42は炭素数1〜10の直鎖状、分岐状又は環状のアルキレン基、b1、d1は0又は1〜10、好ましくは0又は1〜5の整数、c1は1〜7の整数である。Aは、(c1+1)価の炭素数1〜50の脂肪族もしくは脂環式飽和炭化水素基、芳香族炭化水素基又はヘテロ環基を示し、これらの基はヘテロ原子を介在してもよく、又はその炭素原子に結合する水素原子の一部が水酸基、カルボキシル基、カルボニル基又はフッ素原子によって置換されていてもよい。Bは−CO−O−、−NHCO−O−又は−NHCONH−を示す。
【0051】
この場合、好ましくは、Aは2〜4価の炭素数1〜20の直鎖状、分岐状又は環状のアルキレン基、アルキルトリイル基、アルキルテトライル基、炭素数6〜30のアリーレン基であり、これらの基はヘテロ原子を介在していてもよく、またその炭素原子に結合する水素原子の一部が水酸基、カルボキシル基、アシル基又はハロゲン原子によって置換されていてもよい。また、c1は好ましくは1〜3の整数である。
【0052】
上記式(A−2a)、(A−2b)で示される架橋型アセタール基は、具体的には下記式(A−2)−100〜(A−2)−107のものが挙げられる。
【0054】
次に、式(A−3)において、R
34、R
35、R
36はそれぞれ独立に、炭素数1〜20の直鎖状、分岐状もしくは環状のアルキル基、アリール基、アルケニル基等の1価炭化水素基であり、酸素、硫黄、窒素、フッ素などのヘテロ原子を含んでもよく、R
34とR
35、R
34とR
36、R
35とR
36とは互いに結合してこれらが結合する炭素原子と共に、炭素数3〜20の環を形成してもよい。
【0055】
式(A−3)に示される3級アルキル基としては、tert−ブチル基、トリエチルカルビル基、1−エチルノルボニル基、1−メチルシクロヘキシル基、1−エチルシクロペンチル基、2−(2−メチル)アダマンチル基、2−(2−エチル)アダマンチル基、tert−アミル基等を挙げることができる。
【0056】
また、3級アルキル基としては、下記に示す式(A−3)−1〜(A−3)−18を具体的に挙げることもできる。
【化23】
【0057】
式(A−3)−1〜(A−3)−18中、R
43は同一又は異種の炭素数1〜8の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基、又は炭素数6〜20のフェニル基、ナフチル基等のアリール基を示す。R
44、R
46は水素原子、又は炭素数1〜20の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基を示す。R
45は炭素数6〜20のフェニル基等のアリール基を示す。
【0058】
更に、下記式(A−3)−19、(A−3)−20に示すように、2価以上のアルキレン基、アリーレン基であるR
47を含んで、ポリマーの分子内あるいは分子間が架橋されていてもよい。
【化24】
【0059】
式(A−3)−19、(A−3)−20中、R
43は前述と同様、R
47は炭素数1〜20の直鎖状、分岐状もしくは環状のアルキレン基、又はフェニレン基等のアリーレン基を示し、酸素原子や硫黄原子、窒素原子などのヘテロ原子を含んでいてもよい。e1は1〜3の整数である。
【0060】
式(A−1)、(A−2)、(A−3)中のR
30、R
33、R
36は、フェニル基、p−メチルフェニル基、p−エチルフェニル基、p−メトキシフェニル基等のアルコキシ置換フェニル基等の非置換又は置換アリール基、ベンジル基、フェネチル基等のアラルキル基等や、これらの基に酸素原子を有する、あるいは炭素原子に結合する水素原子が水酸基に置換されたり、2個の水素原子が酸素原子で置換されてカルボニル基を形成する下記式で示されるようなアルキル基、あるいはオキソアルキル基を挙げることができる。
【0062】
特に式(A−3)の酸不安定基としてメタクリル酸を置換した繰り返し単位としては、下記式(A−3)−21に示されるエキソ体構造を有する繰り返し単位が好ましく挙げられる。
【化26】
(式中、R
3は水素原子又はメチル基、R
c3は炭素数1〜8の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基又は炭素数6〜20の置換されていてもよいアリール基を示す。R
c4〜R
c9及びR
c12、R
c13はそれぞれ独立に水素原子又は炭素数1〜15のヘテロ原子を含んでもよい1価の炭化水素基を示し、R
c10、R
c11は水素原子又は炭素数1〜15のヘテロ原子を含んでもよい1価の炭化水素基を示す。R
c4とR
c5、R
c6とR
c8、R
c6とR
c9、R
c7とR
c9、R
c7とR
c13、R
c8とR
c12、R
c10とR
c11又はR
c11とR
c12は互いに結合してこれらが結合する炭素原子と共に非芳香環を形成していてもよく、その場合には環の形成に関与する基は炭素数1〜15のヘテロ原子を含んでもよいアルキレン基等の2価の炭化水素基を示す。またR
c4とR
c13、R
c10とR
c13又はR
c6とR
c8は隣接する炭素に結合するもの同士で何も介さずに結合し、2重結合を形成してもよい。また、本式により、鏡像体も表す。)
【0063】
ここで、式(A−3)−21に示すエキソ構造を有する繰り返し単位を得るためのエステル体のモノマーとしては特開2000−327633号公報に示されている。具体的には下記に挙げることができるが、これらに限定されることはない。
【0065】
次に、式(A−3)に示される酸不安定基を有する繰り返し単位としては、下記式(A−3)−22に示されるフランジイル基、テトラヒドロフランジイル基又はオキサノルボルナンジイル基を有する(メタ)アクリル酸エステルの酸不安定基を持つもの挙げることができる。
【化28】
(式中、R
3は前述の通りである。R
c14、R
c15はそれぞれ独立に炭素数1〜10の直鎖状、分岐状又は環状の1価炭化水素基を示す。R
c14、R
c15は互いに結合してこれらが結合する炭素原子と共に炭素数3〜8の脂肪族炭化水素環を形成してもよい。R
c16はフランジイル基、テトラヒドロフランジイル基又はオキサノルボルナンジイル基から選ばれる2価の基を示す。R
c17は水素原子又はヘテロ原子を含んでもよい炭素数1〜10の直鎖状、分岐状又は環状の1価炭化水素基を示す。)
【0066】
フランジイル基、テトラヒドロフランジイル基又はオキサノルボルナンジイル基を有する酸不安定基で置換された繰り返し単位を得るためのモノマーは下記に例示される。なお、下記例において、Meはメチル基、Acはアセチル基を示す。
【0069】
更に、酸不安定基を有する繰り返し単位として、2級の酸不安定基を有する繰り返し単位を共重合することもできる。具体的には下記に例示するモノマーを挙げることができる。
【0072】
化学増幅ポジ型レジスト材料のベースポリマーとしては、上述した酸不安定基で置換された(メタ)アクリレート、スチレンカルボン酸、又はビニルナフタレンカルボン酸に由来する繰り返し単位a1、又は酸不安定基で置換されたヒドロキシスチレンに由来する繰り返し単位a2に加え、密着性基としてフェノール性水酸基を有する繰り返し単位bを共重合することができる。
フェノール性水酸基を有する繰り返し単位bを得るためのモノマーは下記に示すことができる。
【0074】
更には、他の密着性基として上記フェノール性水酸基以外のヒドロキシ基、ラクトン環、エーテル基、エステル基、カルボニル基、又はシアノ基を有する密着性基の繰り返し単位cを共重合することができる。具体的には下記に例示することができる。
【0083】
ヒドロキシ基を有するモノマーの場合、重合時にヒドロキシ基をエトキシエトキシ基などの酸によって脱保護し易いアセタール基で置換しておいて重合後に弱酸と水によって脱保護を行ってもよいし、アセチル基、ホルミル基、ピバロイル基等で置換しておいて重合後にアルカリ加水分解を行ってもよい。
【0084】
更には、インデン、ベンゾフラン、ベンゾチオフェン、アセナフチレン、クロモン、クマリン、ノルボルナジエン及びこれらの誘導体に由来する繰り返し単位dを共重合することもでき、具体的には下記に例示することができる。
【化42】
【0085】
上記繰り返し単位以外に共重合できる繰り返し単位eとしては、スチレン、ビニルナフタレン、ビニルアントラセン、ビニルピレン、メチレンインダン、ビニルピリジン、ビニルカルバゾールに由来する繰り返し単位などが挙げられる。
重合性オレフィンを有するオニウム塩の酸発生剤に由来する繰り返し単位fを共重合することもできる。
特開2005−84365号公報には、特定のスルホン酸が発生する重合性オレフィンを有するスルホニウム塩、ヨードニウム塩が提案されている。特開2006−178317号公報には、スルホン酸が主鎖に直結したスルホニウム塩が提案されている。
【0086】
本発明では、下記一般式(3)で示されるスルホニウム塩を持つ繰り返し単位f1、f2、f3を共重合することができる。
【化43】
(式中、R
020、R
024、R
028は水素原子又はメチル基、R
021はフェニレン基、−O−R
0−、又は−C(=O)−Y
0−R
0−である。Y
0は酸素原子又はNH、R
0は炭素数1〜6の直鎖状、分岐状又は環状のアルキレン基、アルケニレン基又はフェニレン基であり、カルボニル基(−CO−)、エステル基(−COO−)、エーテル基(−O−)又はヒドロキシ基を含んでいてもよい。R
022、R
023、R
025、R
026、R
027、R
029、R
030、R
031は同一又は異種の炭素数1〜12の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基であり、カルボニル基、エステル基又はエーテル基を含んでいてもよく、又は炭素数6〜12のアリール基、炭素数7〜20のアラルキル基又はチオフェニル基を表す。Z
0は単結合、メチレン基、エチレン基、フェニレン基、フッ素化されたフェニレン基、−O−R
032−、又は−C(=O)−Z
1−R
032−である。Z
1は酸素原子又はNH、R
032は炭素数1〜6の直鎖状、分岐状又は環状のアルキレン基、アルケニレン基又はフェニレン基であり、カルボニル基、エステル基、エーテル基又はヒドロキシ基を含んでいてもよい。M
-は非求核性対向イオンを表す。0≦f1≦0.3、0≦f2≦0.3、0≦f3≦0.3、0≦f1+f2+f3≦0.3である。)
【0087】
M
-の非求核性対向イオンとしては、塩化物イオン、臭化物イオン等のハライドイオン、トリフレート、1,1,1−トリフルオロエタンスルホネート、ノナフルオロブタンスルホネート等のフルオロアルキルスルホネート、トシレート、ベンゼンスルホネート、4−フルオロベンゼンスルホネート、1,2,3,4,5−ペンタフルオロベンゼンスルホネート等のアリールスルホネート、メシレート、ブタンスルホネート等のアルキルスルホネート、ビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド、ビス(パーフルオロエチルスルホニル)イミド、ビス(パーフルオロブチルスルホニル)イミド等のイミド酸、トリス(トリフルオロメチルスルホニル)メチド、トリス(パーフルオロエチルスルホニル)メチドなどのメチド酸を挙げることができる。
【0088】
更には、下記一般式(K−1)に示されるα位がフルオロ置換されたスルホネート、下記一般式(K−2)に示されるα,β位がフルオロ置換されたスルホネートが挙げられる。
【化44】
【0089】
一般式(K−1)中、R
102は水素原子、炭素数1〜20の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基、炭素数2〜20のアルケニル基、又は炭素数6〜20のアリール基であり、エーテル基、エステル基、カルボニル基、ラクトン環、又はフッ素原子を有していてもよい。
一般式(K−2)中、R
103は水素原子、炭素数1〜30の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基、アシル基、炭素数2〜20のアルケニル基、炭素数6〜20のアリール基、又はアリーロキシ基であり、エーテル基、エステル基、カルボニル基、又はラクトン環を有していてもよい。
【0090】
特開2008−158339号公報に記載されているα位がフッ素化されていないスルホン酸、及びカルボン酸のスルホニウム塩、ヨードニウム塩、アンモニウム塩等のオニウム塩をクエンチャーとして用いることもできる。α位がフッ素化されたスルホン酸、イミド酸、メチド酸はカルボン酸エステルの酸不安定基を脱保護させるために必要であるが、α位がフッ素化されていないオニウム塩との塩交換によってα位がフッ素化されていないスルホン酸、及びカルボン酸が放出される。α位がフッ素化されていないスルホン酸、及びカルボン酸は脱保護反応を起こさないために、クエンチャーとして機能する。特にα位がフッ素化されていないスルホン酸、及びカルボン酸のスルホニウム塩、ヨードニウム塩は光分解性があるために、光強度が強い部分のクエンチ能が低下すると共にα位がフッ素化されたスルホン酸、イミド酸、メチド酸の濃度が増加する。これによって露光部分のコントラストが向上する。有機溶剤によるネガティブトーンの形成において、露光部のコントラストが向上すると、ネガティブパターンの矩形性が向上する。α位がフッ素化されていないスルホン酸、及びカルボン酸のスルホニウム塩、ヨードニウム塩、アンモニウム塩等のオニウム塩はα位がフッ素化されたスルホン酸、イミド酸、メチド酸の拡散を押さえる効果が高い。これは、交換後のオニウム塩の分子量が大きいために、動きにくくなっていることによる。ネガティブ現像でホールパターンを形成する場合は、酸の発生領域が非常に多いために、露光部分から未露光部分に拡散していく酸の制御が非常に重要である。このため、α位がフッ素化されていないスルホン酸、及びカルボン酸のスルホニウム塩、ヨードニウム塩、アンモニウム塩等のオニウム塩や、本発明の塩基性化合物の添加は、酸拡散の制御の観点から重要である。
【0091】
ポリマー主鎖に酸発生剤を結合させることによって酸拡散を小さくし、酸拡散のぼけによる解像性の低下を防止できる。また、酸発生剤が均一に分散することによってラインエッジラフネス(LER、LWR)が改善される。
【0092】
アルカリ水溶液の現像液を用いるポジ型レジスト材料用又は有機溶剤現像液を用いるネガ型レジスト材料用のベースポリマーとしては、酸不安定基を有する繰り返し単位a1及び/又はa2を必須成分とする。この場合、a1、a2、b、c、d、e、f1、f2、f3の共重合比率は、0≦a1<1.0、0≦a2<1.0、0<a1+a2<1.0、0≦b≦0.9、0<c≦0.9、0≦d≦0.8、0≦e≦0.8、0≦f1≦0.5、0≦f2≦0.5、0≦f3≦0.5であり、好ましくは0≦a1≦0.9、0≦a2≦0.9、0.1≦a1+a2≦0.9、0≦b≦0.8、0<c≦0.8、0≦d≦0.7、0≦e≦0.7、0≦f1≦0.4、0≦f2≦0.4、0≦f3≦0.4であり、更に好ましくは0≦a1≦0.8、0≦a2≦0.8、0.1≦a1+a2≦0.8、0≦b≦0.75、0<c≦0.75、0≦d≦0.6、0≦e≦0.6、0≦f1≦0.3、0≦f2≦0.3、0≦f3≦0.3である。なお、a1+a2+b+c+d+e+f1+f2+f3=1.0である。
【0093】
一方、架橋剤を含有し、アルカリ水溶液の現像液を用いるネガ型レジスト材料用のベースポリマーとしては、酸不安定基は必ずしも必要ではなく、b、c、d、e、f1、f2、f3の共重合比率は、0<b≦1.0、0≦c≦0.9、0≦d≦0.8、0≦e≦0.8、0≦f1≦0.5、0≦f2≦0.5、0≦f3≦0.5であり、好ましくは、0.2≦b≦1.0、0≦c≦0.8、0≦d≦0.7、0≦e≦0.7、0≦f1≦0.4、0≦f2≦0.4、0≦f3≦0.4、更に好ましくは、0.3≦b≦1.0、0≦c≦0.7、0≦d≦0.6、0≦e≦0.6、0≦f1≦0.3、0≦f2≦0.3、0≦f3≦0.3である。なお、b+c+d+e+f1+f2+f3=1.0である。
【0094】
これら高分子化合物を合成するには、1つの方法としては、繰り返し単位a1、a2、b、c、d、e、f1、f2、f3で示されるモノマーを、有機溶剤中、ラジカル重合開始剤を加え加熱重合を行い、共重合体の高分子化合物を得ることができる。
【0095】
重合時に使用する有機溶剤としてはトルエン、ベンゼン、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、ジオキサン等が例示できる。重合開始剤としては、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、ジメチル2,2−アゾビス(2−メチルプロピオネート)、ベンゾイルパーオキシド、ラウロイルパーオキシド等が例示でき、好ましくは50〜80℃に加熱して重合できる。反応時間としては2〜100時間、好ましくは5〜20時間である。
【0096】
ヒドロキシスチレン、ヒドロキシビニルナフタレンを共重合する場合は、ヒドロキシスチレン、ヒドロキシビニルナフタレンの代わりにアセトキシスチレン、アセトキシビニルナフタレンを用い、重合後上記アルカリ加水分解によってアセトキシ基を脱保護してポリヒドロキシスチレン、ヒドロキシポリビニルナフタレンにする方法もある。
【0097】
アルカリ加水分解時の塩基としては、アンモニア水、トリエチルアミン等が使用できる。また反応温度としては−20〜100℃、好ましくは0〜60℃であり、反応時間としては0.2〜100時間、好ましくは0.5〜20時間である。
【0098】
本発明のレジスト材料に用いられる高分子化合物は、それぞれ溶剤としてテトラヒドロフラン(THF)を用いたゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によるポリスチレン換算重量平均分子量が1,000〜500,000、好ましくは2,000〜30,000である必要がある。重量平均分子量が小さすぎるとレジスト材料が耐熱性に劣るものとなり、大きすぎるとアルカリ溶解性が低下し、パターン形成後に裾引き現象が生じ易くなってしまう。
【0099】
更に、本発明のレジスト材料に用いられる高分子化合物においては、多成分共重合体の分子量分布(Mw/Mn)が広い場合は低分子量や高分子量のポリマーが存在するために、露光後、パターン上に異物が見られたり、パターンの形状が悪化したりするおそれがある。それ故、パターンルールが微細化するに従ってこのような分子量、分子量分布の影響が大きくなり易いことから、微細なパターン寸法に好適に用いられるレジスト材料を得るには、使用する多成分共重合体の分子量分布は1.0〜2.0、特に1.0〜1.5と狭分散であることが好ましい。
【0100】
本発明のレジスト材料に用いられる高分子化合物は、組成比率や分子量分布や分子量が異なる2つ以上のポリマーをブレンドすることも可能である。
【0101】
本発明のレジスト材料に用いる式(1)の塩基性化合物は、酸発生剤を添加してなる化学増幅ポジ型レジスト材料あるいは化学増幅ネガ型レジスト材料として好適で、これにベース樹脂となる前述の高分子化合物、有機溶剤、溶解阻止剤、界面活性剤、架橋剤等を目的に応じて適宜組み合わせて配合してポジ型レジスト材料及びネガ型レジスト材料を構成することによって、露光部では前記高分子化合物が触媒反応により現像液に対する溶解速度が加速されるので、極めて高感度のポジ型レジスト材料及びネガ型レジスト材料とすることができ、レジスト膜の溶解コントラスト及び解像性が高く、露光余裕度があり、プロセス適応性に優れ、露光後のパターン形状が良好でありながら、特に酸拡散を抑制できることから粗密寸法差が小さく、これらのことから実用性が高く、超LSI用レジスト材料として非常に有効なものとすることができる。特に、酸発生剤を含有させ、酸触媒反応を利用した化学増幅ポジ型レジスト材料とすると、より高感度のものとすることができると共に、諸特性が一層優れたものとなり極めて有用なものとなる。
【0102】
また、ポジ型レジスト材料の場合、溶解阻止剤を配合することによって、露光部と未露光部との溶解速度の差を一層大きくすることができ、解像度を一層向上させることができる。ネガ型レジスト材料の場合は、架橋剤を添加することによって、露光部の溶解速度を低下させることによりネガパターンを得ることができる。
【0103】
本発明の塩基性化合物と併用して、従来から提案された塩基性化合物を添加することによって、例えばレジスト膜中での酸の拡散速度を更に抑制したり、形状を補正したりすることができるし、界面活性剤を添加することによってレジスト材料の塗布性を一層向上あるいは制御することができる。
従来型の塩基性化合物としては、第一級、第二級、第三級の脂肪族アミン類、混成アミン類、芳香族アミン類、複素環アミン類、カルボキシル基を有する含窒素化合物、スルホニル基を有する含窒素化合物、水酸基を有する含窒素化合物、ヒドロキシフェニル基を有する含窒素化合物、アルコール性含窒素化合物、アミド類、イミド類、カーバメート類等が挙げられ、特開2008−111103号公報の段落[0146]〜[0164]に記載の1級、2級、3級のアミン化合物、特にはヒドロキシ基、エーテル基、エステル基、ラクトン環、シアノ基、スルホン酸エステル基を有するアミン化合物あるいは特許第3790649号公報に記載のカーバメート基を有する化合物を挙げることができる。
【0104】
本発明のポジ型レジスト材料及びネガ型レジスト材料には、本発明のパターン形成方法に用いる化学増幅ポジ型レジスト材料及び化学増幅ネガ型レジスト材料を機能させるために酸発生剤を含み、例えば、活性光線又は放射線に感応して酸を発生する化合物(光酸発生剤)を含有する。光酸発生剤の成分としては、高エネルギー線照射により酸を発生する化合物であればいずれでも構わない。好適な光酸発生剤としてはスルホニウム塩、ヨードニウム塩、スルホニルジアゾメタン、N−スルホニルオキシイミド、オキシム−O−スルホネート型酸発生剤等がある。酸発生剤の具体例としては、特開2008−111103号公報の段落[0122]〜[0142]に記載されている。
【0105】
本発明のレジスト材料は、レジスト用ベースポリマー、本発明の塩基性化合物、酸発生剤を必須成分とし、これに加えて、有機溶剤、溶解阻止剤、架橋剤、界面活性剤、アセチレンアルコール類、従来から提案されている塩基性化合物のいずれか1つ以上を含有することができる。
【0106】
有機溶剤の具体例としては、特開2008−111103号公報の段落[0144]〜[0145]に記載のシクロヘキサノン、シクロペンタノン、メチル−2−n−アミルケトン等のケトン類、3−メトキシブタノール、3−メチル−3−メトキシブタノール、1−メトキシ−2−プロパノール、1−エトキシ−2−プロパノール等のアルコール類、プロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル等のエーテル類、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、乳酸エチル、ピルビン酸エチル、酢酸ブチル、3−メトキシプロピオン酸メチル、3−エトキシプロピオン酸エチル、酢酸tert−ブチル、プロピオン酸tert−ブチル、プロピレングリコールモノtert−ブチルエーテルアセテート等のエステル類、γ−ブチロラクトン等のラクトン類及びその混合溶剤が挙げられる。従来型の塩基性化合物としては段落[0146]〜[0164]、界面活性剤としては段落[0165]〜[0166]に記載のものが挙げられる。溶解阻止剤としては重量平均分子量が100〜1,000、好ましくは150〜800で、かつ分子内にフェノール性水酸基を2つ以上有する化合物の該フェノール性水酸基の水素原子を酸不安定基により全体として平均0〜100モル%の割合で置換した化合物又は分子内にカルボキシル基を有する化合物の該カルボキシル基の水素原子を酸不安定基により全体として平均50〜100モル%の割合で置換した化合物を配合する。具体的には、ビスフェノールA、トリスフェノール、フェノールフタレイン、クレゾールノボラック、ナフタレンカルボン酸、アダマンタンカルボン酸、コール酸のヒドロキシ基、カルボキシル基の水素原子を酸不安定基で置換した化合物であり、特開2008−122932号公報の段落[0155]〜[0178]に記載の材料である。アセチレンアルコール類としては段落[0179]〜[0182]に記載のものが挙げられる。
【0107】
架橋剤としてはメチロール基、アルコキシメチル基、アシロキシメチル基から選ばれる少なくとも一つの基で置換されたメラミン化合物、グアナミン化合物、グリコールウリル化合物又はウレア化合物、エポキシ化合物、イソシアネート化合物、アジド化合物、アルケニルエーテル基などの2重結合を含む化合物等を挙げることができる。これらは添加剤として用いてもよいが、ポリマー側鎖にペンダント基として導入してもよい。また、ヒドロキシ基を含む化合物も架橋剤として用いることができる。具体的には、エポキシ化合物を例示すると、トリス(2,3−エポキシプロピル)イソシアヌレート、トリメチロールメタントリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、トリエチロールエタントリグリシジルエーテルなどが例示される。メラミン化合物を具体的に例示すると、ヘキサメチロールメラミン、ヘキサメトキシメチルメラミン、ヘキサメチロールメラミンの1〜6個のメチロール基がメトキシメチル化した化合物又はその混合物、ヘキサメトキシエチルメラミン、ヘキサアシロキシメチルメラミン、ヘキサメチロールメラミンのメチロール基の1〜6個がアシロキシメチル化した化合物又はその混合物が挙げられる。グアナミン化合物としては、テトラメチロールグアナミン、テトラメトキシメチルグアナミン、テトラメチロールグアナミンの1〜4個のメチロール基がメトキシメチル化した化合物又はその混合物、テトラメトキシエチルグアナミン、テトラアシロキシグアナミン、テトラメチロールグアナミンの1〜4個のメチロール基がアシロキシメチル化した化合物又はその混合物が挙げられる。グリコールウリル化合物としては、テトラメチロールグリコールウリル、テトラメトキシグリコールウリル、テトラメトキシメチルグリコールウリル、テトラメチロールグリコールウリルのメチロール基の1〜4個がメトキシメチル化した化合物又はその混合物、テトラメチロールグリコールウリルのメチロール基の1〜4個がアシロキシメチル化した化合物又はその混合物が挙げられる。ウレア化合物としてはテトラメチロールウレア、テトラメトキシメチルウレア、テトラメチロールウレアの1〜4個のメチロール基がメトキシメチル化した化合物又はその混合物、テトラメトキシエチルウレアなどが挙げられる。
イソシアネート化合物としては、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、シクロヘキサンジイソシアネート等が挙げられ、アジド化合物としては、1,1’−ビフェニル−4,4’−ビスアジド、4,4’−メチリデンビスアジド、4,4’−オキシビスアジドが挙げられる。
アルケニルエーテル基を含む化合物としては、エチレングリコールジビニルエーテル、トリエチレングリコールジビニルエーテル、1,2−プロパンジオールジビニルエーテル、1,4−ブタンジオールジビニルエーテル、テトラメチレングリコールジビニルエーテル、ネオペンチルグリコールジビニルエーテル、トリメチロールプロパントリビニルエーテル、ヘキサンジオールジビニルエーテル、1,4−シクロヘキサンジオールジビニルエーテル、ペンタエリスリトールトリビニルエーテル、ペンタエリスリトールテトラビニルエーテル、ソルビトールテトラビニルエーテル、ソルビトールペンタビニルエーテル、トリメチロールプロパントリビニルエーテルなどが挙げられる。
【0108】
更に、特開2008−239918号公報に記載のポリマー型のクエンチャーを添加することもできる。このものは、コート後のレジスト表面に配向することによってパターン後のレジストの矩形性を高める。ポリマー型クエンチャーは、液浸露光用の保護膜を適用したときのパターンの膜減りやパターントップのラウンディングを防止する効果もある。
【0109】
ここで、光酸発生剤の配合量は、ベースポリマー100質量部に対し0.1〜50質量部、特に1〜40質量部であることが好ましい。
また、有機溶剤の配合量は、ベースポリマー100質量部に対し100〜10,000質量部、特に200〜8,000質量部であることが好ましい。
ポジ型レジスト材料の場合、溶解阻止剤の配合量は、ベースポリマー100質量部に対し0〜50質量部、特に5〜40質量部であることが好ましい。
ネガ型レジスト材料の場合、架橋剤の配合量は、ベースポリマー100質量部に対し0.1〜50質量部、特に1〜40質量部であることが好ましい。
更に、界面活性剤の配合量は、ベースポリマー100質量部に対し0.0001〜10質量部、アセチレンアルコール類の配合量は、ベースポリマー100質量部に対し0〜5質量部が好ましく、式(1)の塩基性化合物以外の従来型の塩基性化合物及びポリマー型のクエンチャーの配合量は、ベースポリマー100質量部に対し0〜5質量部、特に0〜4質量部が好ましい。
【0110】
本発明のポジ型レジスト材料は、例えば有機溶剤と、一般式(1)で示される塩基性化合物と、ベースポリマー(高分子化合物)と、酸発生剤を含む化学増幅ポジ型レジスト材料を種々の集積回路製造に用いる場合は、特に限定されないが公知のリソグラフィー技術を適用することができる。
【0111】
例えば、本発明のポジ型レジスト材料を、集積回路製造用の基板(Si、SiO
2、SiN、SiON、TiN、WSi、BPSG、SOG、有機反射防止膜等)あるいはマスク回路製造用の基板(Cr、CrO、CrON、MoSi、SiO
2等)上にスピンコート、ロールコート、フローコート、ディップコート、スプレーコート、ドクターコート等の適当な塗布方法により塗布膜厚が0.1〜2.0μmとなるように塗布する。これをホットプレート上で60〜150℃、10秒〜30分間、好ましくは80〜120℃、30秒〜20分間プリベークする。次いで、紫外線、遠紫外線、電子線、X線、エキシマレーザー、γ線、シンクロトロン放射線、真空紫外線(軟X線)等の高エネルギー線から選ばれる光源で目的とするパターンを所定のマスクを通じてもしくは直接露光を行う。露光量は1〜200mJ/cm
2程度、特に10〜100mJ/cm
2、又は0.1〜100μC/cm
2程度、特に0.5〜50μC/cm
2となるように露光することが好ましい。次に、ホットプレート上で60〜150℃、10秒〜30分間、好ましくは80〜120℃、30秒〜20分間ポストエクスポージャベーク(PEB)する。
【0112】
更に、0.1〜10質量%、好ましくは2〜5質量%のテトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド(TEAH)、テトラプロピルアンモニウムヒドロキシド(TPAH)、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド(TBAH)等のアルカリ水溶液の現像液を用い、3秒〜3分間、好ましくは5秒〜2分間、浸漬(dip)法、パドル(puddle)法、スプレー(spray)法等の常法により現像することにより、光を照射した部分は現像液に溶解し、露光されなかった部分は溶解せず、基板上に目的のポジ型のパターンが形成される。ネガレジストの場合はポジレジストの場合とは逆であり、即ち光を照射した部分は現像液に不溶化し、露光されなかった部分は溶解する。なお、本発明のレジスト材料は、特に高エネルギー線の中でもKrFエキシマレーザー、ArFエキシマレーザー、電子線、真空紫外線(軟X線)、X線、γ線、シンクロトロン放射線による微細パターニングに最適である。
【0113】
酸不安定基を有するポジ型レジスト用のポリマーを用い、有機溶剤現像によってネガ型のパターンを得るネガティブ現像を行うこともできる。現像液としては、2−オクタノン、2−ノナノン、2−ヘプタノン、3−ヘプタノン、4−ヘプタノン、2−ヘキサノン、3−ヘキサノン、ジイソブチルケトン、メチルシクロヘキサノン、アセトフェノン、メチルアセトフェノン、酢酸プロピル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、酢酸アミル、酢酸ブテニル、酢酸イソアミル、蟻酸プロピル、蟻酸ブチル、蟻酸イソブチル、蟻酸アミル、蟻酸イソアミル、吉草酸メチル、ペンテン酸メチル、クロトン酸メチル、クロトン酸エチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、3−エトキシプロピオン酸エチル、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸プロピル、乳酸ブチル、乳酸イソブチル、乳酸アミル、乳酸イソアミル、2−ヒドロキシイソ酪酸メチル、2−ヒドロキシイソ酪酸エチル、安息香酸メチル、安息香酸エチル、酢酸フェニル、酢酸ベンジル、フェニル酢酸メチル、蟻酸ベンジル、蟻酸フェニルエチル、3−フェニルプロピオン酸メチル、プロピオン酸ベンジル、フェニル酢酸エチル、酢酸2−フェニルエチルから選ばれる1種以上を挙げることができる。
【0114】
現像の終了時には、リンスを行う。リンス液としては、現像液と混溶し、レジスト膜を溶解させない溶剤が好ましい。このような溶剤としては、炭素数3〜10のアルコール、炭素数8〜12のエーテル化合物、炭素数6〜12のアルカン、アルケン、アルキン、芳香族系の溶剤が好ましく用いられる。
【0115】
具体的に、炭素数6〜12のアルカンとしては、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン、ウンデカン、ドデカン、メチルシクロペンタン、ジメチルシクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、ジメチルシクロヘキサン、シクロヘプタン、シクロオクタン、シクロノナンなどが挙げられる。炭素数6〜12のアルケンとしては、ヘキセン、ヘプテン、オクテン、シクロヘキセン、メチルシクロヘキセン、ジメチルシクロヘキセン、シクロヘプテン、シクロオクテンなどが挙げられ、炭素数6〜12のアルキンとしては、ヘキシン、ヘプチン、オクチンなどが挙げられ、炭素数3〜10のアルコールとしては、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、1−ブチルアルコール、2−ブチルアルコール、イソブチルアルコール、tert−ブチルアルコール、1−ペンタノール、2−ペンタノール、3−ペンタノール、tert−アミルアルコール、ネオペンチルアルコール、2−メチル−1−ブタノール、3−メチル−1−ブタノール、3−メチル−3−ペンタノール、シクロペンタノール、1−ヘキサノール、2−ヘキサノール、3−ヘキサノール、2,3−ジメチル−2−ブタノール、3,3−ジメチル−1−ブタノール、3,3−ジメチル−2−ブタノール、2−エチル−1−ブタノール、2−メチル−1−ペンタノール、2−メチル−2−ペンタノール、2−メチル−3−ペンタノール、3−メチル−1−ペンタノール、3−メチル−2−ペンタノール、3−メチル−3−ペンタノール、4−メチル−1−ペンタノール、4−メチル−2−ペンタノール、4−メチル−3−ペンタノール、シクロヘキサノール、1−オクタノールなどが挙げられる。
炭素数8〜12のエーテル化合物としては、ジ−n−ブチルエーテル、ジイソブチルエーテル、ジ−sec−ブチルエーテル、ジ−n−ペンチルエーテル、ジイソペンチルエーテル、ジ−sec−ペンチルエーテル、ジ−tert−アミルエーテル、ジ−n−ヘキシルエーテルから選ばれる1種以上の溶剤が挙げられる。
前述の溶剤に加えてトルエン、キシレン、エチルベンゼン、イソプロピルベンゼン、tert−ブチルベンゼン、メシチレン等の芳香族系の溶剤を用いることもできる。
【0116】
リンスを行うことによってレジストパターンの倒れや欠陥の発生を低減させることができる。また、リンスは必ずしも必須ではなく、リンスを行わないことによって溶剤の使用量を削減することができる。
【0117】
現像後のホールパターンやトレンチパターンをサーマルフローやRELACS
TM技術、DSA技術でシュリンクすることもできる。ホールパターン上にシュリンク剤を塗布し、ベーク中のレジスト層からの酸触媒の拡散によってレジストの表面でシュリンク剤の架橋が起こり、シュリンク剤がホールパターンの側壁に付着する。ベーク温度は70〜180℃、好ましくは80〜170℃で、時間は10〜300秒であり、余分なシュリンク剤を除去しホールパターンを縮小させる。
【0118】
ネガティブトーン現像によってホールパターンを形成する場合、X、Y方向の2回のラインパターンのダイポール照明による露光を行うことが最もコントラストが高い光を用いることができる。ダイポール照明に併せてs偏光照明を加えると、更にコントラストを上げることができる。
【0119】
特開2011−170316号公報の段落[0097]に記載のようにハーフトーン位相シフトマスクを用い、格子状のシフター格子の交点に現像後のホールパターンを形成することもできる。格子状パターンが透過率3〜15%のハーフトーン位相シフトマスクであることが好ましい。この場合、ハーフピッチ以下のライン幅による格子状の第1のシフターと、第1のシフター上に第1のシフターの線幅よりもウエハー上の寸法で2〜30nm太い第2のシフターが配列された位相シフトマスクを用い、太いシフターが配列されたところだけにホールパターンを形成すること、あるいはハーフピッチ以下のライン幅による格子状の第1のシフターと、第1のシフター上に第1のシフターの線幅よりもウエハー上の寸法で2〜100nm太いドットパターンの第2のシフターが配列された位相シフトマスクを用い、太いシフターが配列されたところだけにホールパターンを形成することが好ましい。
【0120】
以下、更に詳述すると、X、Y方向のラインを2回のダイポール照明と偏光照明を組み合わせた露光は、最も高コントラストの光が形成される方法であるが、2回の露光とその間のマスクの交換によってスループットが大幅に低下する欠点がある。マスクを交換しながら2回の露光を連続して行うためには、露光装置側のマスクのステージを2つ設ける必要があるが、現在の露光装置のマスクのステージは1つである。この場合、1枚露光する毎にマスクを交換するのではなく、FOUP(ウエハーケース)に入った25枚ウエハーをX方向のラインの露光を連続して行い、次にマスクを交換して同じ25枚のウエハーを連続してY方向のラインの露光を行う方がスループットを上げることができる。しかしながら、25枚のウエハーの最初のウエハーが次の露光されるまでの時間が長くなることによって環境の影響で現像後のレジスト膜の寸法や形状が変化してしまう問題が生じる。2回目の露光までのウエハー待機中の環境の影響を遮断するために、レジスト膜の上層に保護膜を敷くことが有効である。
マスクを1枚で済ませるために、格子状のパターンのマスクを用いてX、Y方向のそれぞれのダイポール照明で2回露光する方法が提案されている(前述非特許文献1)。この方法では、前述の2枚のマスクを用いる方法に比べると光学コントラストが若干低下するが、1枚のマスクを用いることができるためにスループットが向上する。前述の非特許文献1では、格子状のパターンのマスクを用いてX方向のダイポール照明によってX方向のラインを形成し、光照射によってX方向のラインを不溶化し、この上にもう一度フォトレジスト材料を塗布し、Y方向のダイポール照明によってY方向のラインを形成し、X方向のラインとY方向のラインの隙間にホールパターンを形成している。この方法では、マスクは1枚で済むが、2回の露光の間に1回目のフォトレジストパターンの不溶化処理と2回目のフォトレジストの塗布と現像のプロセスが入るために、2回の露光間にウエハーが露光ステージから離れ、このときにアライメントエラーが大きくなる問題が生じる。2回の露光間のアライメントエラーを最小にするためには、ウエハーを露光ステージから離さずに連続して2回の露光を行う必要がある。ダイポール照明にs偏光照明を加えると更にコントラストが向上するので好ましく用いられる。格子状のマスクを用いてX方向のラインとY方向のラインを形成する2回の露光を重ねて行ってネガティブトーンの現像を行うと、ホールパターンが形成される。
格子状のマスクを用いて1回の露光でホールパターンを形成する場合は、4重極照明(クロスポール照明)を用いる。これにX−Y偏光照明あるいは円形偏光のAzimuthally偏光照明を組み合わせてコントラストを向上させる。
【0121】
本発明の材料を用いたホールパターンの形成方法では、露光を2回行う場合、1回目の露光と2回目の露光の照明とマスクを変更して露光を行う方法が最も高コントラストで微細なパターンを寸法均一性よく形成できる。1回目の露光と2回目の露光に用いられるマスクは1回目のラインパターンと2回目のラインとが交差した交点に現像後のレジストのホールパターンを形成する。1回目のラインと2回目のラインの角度は直交が好ましいが、90度以外の角度でも構わなく、1回目のラインの寸法と2回目のラインの寸法やピッチが同じであっても異なってもよい。1回目のラインと、これと異なる位置に2回目のラインが1枚のマスクに有するマスクを用いて1回目の露光と2回目の露光を連続露光することも可能であるが、この場合露光できる最大の面積が半分になる。但し連続露光を行う場合は、アライメントエラーを最小にすることができる。もちろん1回の露光では、2回の連続露光よりもアライメントのエラーを小さくすることができる。
1枚のマスクを用いて、露光面積を縮小することなく2回の露光を行うためには、マスクパターンとしては、格子状のパターンを用いる場合、ドットパターンを用いる場合、ドットパターンと格子状パターンを組み合わせる場合がある。
格子状のパターンを用いる方が最も光のコントラストが向上するが、光の強度が低下するためにレジスト膜の感度が低下する欠点がある。一方ドットパターンを用いる方法は光のコントラストが低下するが、レジスト膜の感度が向上するメリットがある。
ホールパターンが水平と垂直方向に配列されている場合は前記の照明とマスクパターンを用いるが、これ以外の角度例えば45度の方向に配列している場合は、45度に配列しているパターンのマスクとダイポール照明あるいはクロスポール照明を組み合わせる。
2回の露光を行う場合はX方向ラインのコントラストを高めるダイポール照明に偏光照明を組み合わせた露光と、Y方向ラインのコントラストを高めるダイポール照明に偏光照明を組み合わせた2回の露光を行う。1枚のマスクを用いてX方向とY方向のコントラストを強調した2回の連続した露光は、現在の市販のスキャナーで行うことが可能である。
格子状のパターンのマスクを使って、X、Yの偏光照明とクロスポール照明を組み合わせる方法は、2回のダイポール照明の露光に比べると若干光のコントラストが低下するものの、1回の露光でホールパターンを形成することができ、かなりのスループットの向上が見込まれるし、2回露光によるアライメントズレの問題は回避される。このようなマスクと照明を用いれば、実用的なコストで40nmクラスのホールパターンを形成することが可能になる。
【0122】
格子状のパターンが配されたマスクでは、格子の交点が強く遮光される。このようなパターンのマスクを用いて露光を行い、ポジネガ反転を伴う有機溶剤による現像を行うことによって微細なホールパターンを形成することができる。
ドットパターンが配置されたマスクにおける光学像コントラストは格子状パターンのマスクに比べて低くなるものの、黒い遮光部分が存在するためにホールパターンの形成は可能である。
ピッチや位置がランダムに配列された微細なホールパターンの形成が困難である。密集パターンは、ダイポール、クロスポール等の斜入射照明に位相シフトマスクと偏光を組み合わせた超解像技術によってコントラストを向上することができるが、孤立パターンのコントラストはそれほど向上しない。
【0123】
密集の繰り返しパターンに対して超解像技術を用いた場合、孤立パターンとの粗密(プロキシミティー)バイアスが問題になる。強い超解像技術を使えば使うほど密集パターンの解像力が向上するが、孤立パターンの解像力は変わらないために、粗密バイアスが拡大する。微細化に伴うホールパターンにおける粗密バイアスの増加は深刻な問題である。粗密バイアスを抑えるために、一般的にはマスクパターンの寸法にバイアスを付けることが行われている。粗密バイアスはフォトレジスト材料の特性、即ち、溶解コントラストや酸拡散によっても変わるために、フォトレジスト材料の種類毎にマスクの粗密バイアスが変化する。フォトレジスト材料の種類毎に粗密バイアスを変えたマスクを用いることになり、マスク製作の負担が増している。そこで、強い超解像照明で密集ホールパターンのみを解像させ、パターンの上に1回目のポジ型レジストパターンを溶解させないアルコール溶剤のネガ型レジスト膜を塗布し、不必要なホール部分を露光、現像することによって閉塞させて密集パターンと孤立パターンの両方を作製する方法(Pack and unpack;PAU法)が提案されている(Proc. SPIE Vol. 5753 p171 (2005))。この方法の問題点は、1回目の露光と2回目の露光の位置ズレが挙げられ、この点については文献の著者も指摘している。また、2回目の現像で塞がれないホールパターンは2回現像されることになり、これによる寸法変化も問題として挙げられる。
【0124】
ランダムピッチのホールパターンをポジネガ反転の有機溶剤現像で形成するためには、特開2011−170316号公報の段落[0102]に記載の格子状のパターンが全面に配列され、ホールを形成する場所だけに格子の幅を太くしたマスクを用いる。
同じく格子状のパターンを全面に配列し、ホールを形成する場所だけに太いドットを配置したマスクを用いることもできる。
格子状パターンが配列されていないマスクを用いた場合はホールの形成が困難であるか、もし形成できたとしても光学像のコントラストが低いために、マスク寸法のバラツキがホールの寸法のバラツキに大きく反映する結果となる。
【実施例】
【0125】
以下、実施例及び比較例を示して本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。
【0126】
下記に本発明のレジスト材料に用いたオキシム1〜11の構造を示す。
【化45】
【0127】
[合成例]高分子化合物(ポリマー1〜11)の合成
レジスト材料に添加される高分子化合物として、各々のモノマーを組み合わせてテトラヒドロフラン溶剤下で共重合反応を行い、メタノールに晶出し、更にヘキサンで洗浄を繰り返した後に単離、乾燥して、以下に示す組成の高分子化合物(ポリマー1〜11)を得た。得られた高分子化合物の組成は
1H−NMR、分子量及び分散度はゲルパーミエーションクロマトグラフ(溶剤:テトラヒドロフラン(THF))により確認した。
【0128】
【化46】
【0129】
【化47】
【0130】
【化48】
【0131】
[実施例、比較例]
上記で合成した高分子化合物を用いて、界面活性剤として住友スリーエム(株)製界面活性剤のFC−4430を100ppm溶解させた溶剤に表1〜4に示される組成で溶解させた溶液を、0.2μmサイズのフィルターで濾過してポジ型レジスト材料及びネガ型レジスト材料を調製した。
表1〜4中の各組成は次の通りである。
ポリマー1〜11(前記構造式参照)
有機溶剤:PGMEA(プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート)
PGME(プロピレングリコールモノメチルエーテル)
PGEE(プロピレングリコールモノエチルエーテル)
CyH(シクロヘキサノン)
CyP(シクロペンタノン)
【0132】
酸発生剤:PAG1,2(下記構造式参照)
【化49】
【0133】
塩基性化合物:オキシム1〜11(上記構造式参照)
比較アミン1〜6(下記構造式参照)
スルホニウム塩型クエンチャー(下記構造式参照)
【0134】
【化50】
【0135】
撥水剤ポリマー1(下記構造式参照)
【化51】
【0136】
架橋剤1(下記構造式参照)
【化52】
【0137】
ArF液浸露光評価
表1,2に示すレジスト材料を、シリコンウエハーに信越化学工業(株)製スピンオンカーボン膜ODL−50(カーボンの含有量が80質量%)を200nm、その上に珪素含有スピンオンハードマスクSHB−A940(珪素の含有量が43質量%)を35nmの膜厚で成膜したトライレイヤープロセス用の基板上にスピンコーティングし、ホットプレートを用いて100℃で60秒間ベークし、レジスト膜の厚みを80nmにした。これをArFエキシマレーザー液浸スキャナー((株)ニコン製、NSR−S610C,NA1.30、σ0.98/0.78、35度クロスポール照明、Azimuthally偏光照明、6%ハーフトーン位相シフトマスク)を用いて、ウエハー上寸法が70nmスペース,200nmピッチのマスクを用いて露光し、表1〜3に記載の温度で60秒間PEBを行い、2.38質量%のテトラメチルアンモニウムヒドロキシドの水溶液で30秒間現像を行って、寸法が60nmスペース,200nmピッチのトレンチパターンを得た。(株)日立ハイテクノロジーズ製測長SEM(CG−4000)を用いて、露光量を変化させて露光した時にトレンチの寸法が60nmになっている時の感度と、フォーカスを変化させて露光した時にトレンチの寸法が55〜65nmの範囲内に入っているときのフォーカスマージン(DOF)を求めた。結果を表1,2に示す。
【0138】
【表1】
【0139】
【表2】
【0140】
ArF露光パターニング評価
表3に示すレジスト材料を、シリコンウエハーに信越化学工業(株)製スピンオンカーボン膜ODL−50(カーボンの含有量が80質量%)を200nm、その上に珪素含有スピンオンハードマスクSHB−A940(珪素の含有量が43質量%)を35nmの膜厚で成膜したトライレイヤープロセス用の基板上にスピンコーティングし、ホットプレートを用いて100℃で60秒間ベークし、レジスト膜の厚みを80nmにした。これをArFエキシマレーザー液浸スキャナー((株)ニコン製、NSR−S610C,NA1.30、σ0.98/0.78、クロスポール開口20度、Azimuthally偏光照明、6%ハーフトーン位相シフトマスク)を用いて、ウエハー上寸法がピッチ100nm,幅50nmのラインアンドスペースパターンを露光量を変化させながら露光を行い、露光後表3に記載の温度で60秒間ベーク(PEB)し、現像ノズルから酢酸ブチルを3秒間30rpmで回転させながら吐出させ、その後静止パドル現像を27秒間行い、4−メチル−2−ペンタノールでリンス後スピンドライし、100℃で20秒間ベークしてリンス溶剤を蒸発させ、ネガ型のパターンを得た。
溶剤現像のイメージ反転されたトレンチパターンの寸法を(株)日立ハイテクノロジーズ製TDSEM(CG−4000)で測定し、50nm±5nmになっているスペース部分のフォーカスマージン(DOF)と感度を求めた。結果を表3に示す。
【0141】
【表3】
【0142】
電子ビーム描画評価
表4に示すレジスト材料を、ヘキサメチルジシラザン(HMDS)ベーパープライム処理したSi基板上にスピンコートし、ホットプレートを用いて110℃で60秒間プリベークして80nmのレジスト膜を作製した。これに、(株)日立製作所製HL−800Dを用いてHV電圧50keVで真空チャンバー内描画を行った。
描画後、直ちにホットプレートを用いて90℃で60秒間PEBを行い、2.38質量%のテトラメチルアンモニウムヒドロキシドの水溶液で30秒間現像を行ってパターンを得た。
得られたレジストパターンについて次の評価を行った。
ポジ型レジスト膜の場合、120nmのトレンチを寸法通りで解像する露光量における最小のトレンチの寸法を解像力とした。ネガ型レジスト膜の場合、120nmの孤立ラインを寸法通りで解像する露光量における最小の孤立ラインの寸法を解像力とした。なお、実施例3−1〜3−10、比較例3−1はポジ型レジスト材料、実施例3−11、比較例3−2はネガ型レジスト材料である。結果を表4に示す。
【0143】
【表4】
【0144】
表1〜4の結果より、本発明のオキシム化合物を添加したレジスト材料は、形状が良好で、十分な解像力とDOFマージンであることがわかった。