(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
レジスト組成物が化学増幅型ポジ型であり、高分子化合物が、更に酸の作用により分解し、高分子化合物のアルカリ現像液中での溶解度を増大させる繰り返し単位を含有することを特徴とする請求項6に記載のレジスト組成物。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明について詳細に記述する。なお、以下の説明中、化学式で表される構造によっては不斉炭素が存在し、エナンチオ異性体(enantiomer)やジアステレオ異性体(diastereomer)が存在し得るものがあるが、その場合は一つの式でそれら異性体を代表して表す。それらの異性体は単独で用いてもよいし、混合物として用いてもよい。
【0018】
[スルホニウム塩]
本発明では、下記一般式(0−1)で示されるスルホニウム塩を提供する。
【化8】
(式中、Wはエーテル性酸素原子を含んでもよい炭素数1〜10のアルキレン基又は炭素数6〜18のアリーレン基を表す。R
01はヘテロ原子で置換されていてもよく、ヘテロ原子が介在してもよい炭素数1〜10の直鎖状、又は炭素数3〜20の分岐状又は環状の一価炭化水素基を示す。mは0〜2の整数を示す。kは0≦k≦5+4mを満たす整数を示す。R
101、R
102及びR
103はそれぞれ独立に、ヘテロ原子で置換されていてもよく、ヘテロ原子が介在してもよい炭素数1〜20の直鎖状、又は炭素数3〜20の分岐状又は環状の一価炭化水素基を示す。またR
101、R
102及びR
103のうちのいずれか2つ以上が相互に結合して式中の硫黄原子と共に環を形成してもよい。Lは単結合を示すか、エステル結合、スルホン酸エステル結合、カーボネート結合あるいはカーバメート結合のいずれかを示す。)
【0019】
上記一般式(0−1)で示されるオニウム塩の好ましい形態は、下記一般式(1)で示されるオニウム塩である。
【化9】
(式中、R
01、m、k、R
101、R
102及びR
103、Lは上記と同様である。R
02はヘテロ原子で置換されていてもよく、ヘテロ原子が介在してもよい炭素数1〜10の直鎖状、又は炭素数3〜20の分岐状又は環状の一価炭化水素基を示す。nは0〜2の整数を示す。lは0≦l≦4+4nを満たす整数を示す。)
【0020】
上記一般式(0−1)及び(1)中、R
01及びR
02はそれぞれ独立に、ヘテロ原子で置換されていてもよく、ヘテロ原子が介在してもよい炭素数1〜10の直鎖状、又は炭素数3〜20の分岐状又は環状の一価炭化水素基を示す。具体的にはメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基、tert−アミル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−オクチル基、n−ノニル基、n−デシル基、ペンチロキシ基、ヘキシロキシ基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロペンチロキシ基、シクロヘキシロキシ基、2−エチルヘキシル基、シクロペンチルメチル基、シクロペンチルエチル基、シクロペンチルブチル基、シクロヘキシルメチル基、シクロヘキシルエチル基、シクロヘキシルブチル基、ノルボルニル基、オキサノルボルニル基、トリシクロ[5.2.1.0
2,6]デカニル基、アダマンチル基等を例示できるが、これらに限定されるものではない。
R
02はSO
3-基のオルト位に位置していることが好ましい。酸として働く部位であるSO
3-基が立体的な嵩高さにより遮蔽され、見かけ上酸拡散が抑制される効果が得られるためである。
【0021】
上記一般式(0−1)及び(1)中、Lは単結合を示すか、エステル結合、スルホン酸エステル結合、カーボネート結合あるいはカーバメート結合のいずれかを示す。
【0022】
上記一般式(0−1)及び(1)中、mは0〜2の整数を示し、kは0≦k≦5+4mを満たす整数を示す。mは現像時の溶解性制御の観点から0又は1が好ましく、0が特に好ましい。kは、本発明の塩に置換基を導入して、露光により発生する酸に適度な嵩高さを付与するために、0〜5であることが好ましく、1〜3であることがより好ましい。
【0023】
上記一般式(0−1)及び(1)中、nは0〜2の整数を示し、lは0≦l≦4+4nを満たす整数を示す。nは0又は1が好ましく、0が特に好ましい。lは、本発明の塩に置換基を導入して、露光により発生する酸の拡散性を制御するために、0〜4であることが好ましく、2〜3であることがより好ましい。
【0024】
上記一般式(0−1)中、Wで示されるエーテル性酸素原子を含んでもよい炭素数1〜10のアルキレン基又は炭素数6〜18のアリーレン基として、具体的には下記のものを例示できるが、これらに限定されるものではない。
【化10】
(式中、2つの破線は結合手を示す。この結合手は、一般式(0−1)中のL及びSO
3-基と結合を形成し、いずれか一方がLと結合した時、もう一方はSO
3-基と結合する。)
【0025】
上記一般式(0−1)及び(1)中のR
01、及びLが結合している芳香環の構造として、具体的には下記のものを例示できるが、これらに限定されるものではない。
【化11】
(式中、破線はLとの結合手を示す。)
【0026】
上記一般式(0−1)及び(1)で示されるスルホニウム塩のアニオン部における好ましい構造として、
(a)上記(W−1)〜(W−16)で示される単位、
(b)(B−1)〜(B−16)で示される単位、
(c)Lで示される結合様式
の3つを任意に組み合わせて表される構造を挙げることができる。
【0027】
上記一般式(0−1)及び(1)で示されるスルホニウム塩のアニオン部における特に好ましい構造として、具体的に下記のものを例示できるが、これらに限定されるものではない。
【化12】
【0030】
上記一般式(0−1)及び(1)中、R
101、R
102及びR
103はそれぞれ独立に、ヘテロ原子で置換されていてもよく、ヘテロ原子が介在してもよい炭素数1〜20の直鎖状、又は炭素数3〜20の分岐状又は環状の一価炭化水素基を示す。また、R
101、R
102及びR
103のうちのいずれか2つ以上が相互に結合して式中の硫黄原子と共に環を形成してもよい。具体的にはメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、tert−ブチル基、シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロプロピルメチル基、4−メチルシクロヘキシル基、シクロヘキシルメチル基、ノルボルニル基、アダマンチル基等のアルキル基、ビニル基、アリル基、プロペニル基、ブテニル基、ヘキセニル基、シクロヘキセニル基等のアルケニル基、フェニル基、ナフチル基、チエニル基等のアリール基、ベンジル基、1−フェニルエチル基、2−フェニルエチル基等のアラルキル基等が挙げられ、好ましくはアリール基である。また、これらの基の水素原子の一部が酸素原子、硫黄原子、窒素原子、ハロゲン原子といったヘテロ原子と置き換わっていてもよく、酸素原子、硫黄原子、窒素原子等のヘテロ原子が介在していてもよく、その結果ヒドロキシ基、シアノ基、カルボニル基、エーテル結合、エステル結合、スルホン酸エステル結合、カーボネート結合、ラクトン環、スルトン環、カルボン酸無水物、ハロアルキル基等を形成又は介在してもよい。一方、R
101、R
102及びR
103のうちのいずれか2つは、相互に結合して式中の硫黄原子と共に環を形成してもよく、その場合には、下記式で示される基等が挙げられる。
【0031】
【化15】
(式中、R
5は、上記R
101、R
102及びR
103として例示した基と同じものを示す。)
【0032】
上記一般式(0−1)及び(1)で示されるスルホニウム塩のカチオン部の具体的な構造としては、下記に示すものが挙げられる。但し本発明はこれらに限定されるわけではない。
【化16】
【0033】
本発明のスルホニウム塩の具体的構造については、上記に例示したアニオンとカチオンの任意の組み合わせが挙げられる。
【0034】
上記一般式(1)で表されるスルホニウム塩を得るための方法について、Lがエステル結合又はスルホン酸エステル結合である場合について、下記スキームに例示するが、これに限定されるものではない。以下、式中で用いられる破線は結合手を示す。
【化17】
(式中、R
01、R
02、m、n、k、l、R
101、R
102及びR
103は上記と同様である。Gはカルボニル基又はスルホニル基を表す。Mはリチウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン、及び置換もしくは未置換のアンモニウムイオンのいずれかを示す。X
-はハライドイオン又はメチル硫酸イオンを示す。)
【0035】
上記ステップ(i)は、酸塩化物(S−1)とヒドロキシアリールスルホン酸塩(S−2)の求核置換反応により、スルホン酸塩(S−3)を得る工程である。反応は常法に従って行うことができ、溶媒中、酸塩化物(S−1)、ヒドロキシアリールスルホン酸塩(S−2)、及び塩基を順次又は同時に加え、必要に応じ、冷却又は加熱して行うのがよい。
【0036】
反応に用いることができる溶媒として、水、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジ−n−ブチルエーテル、1,4−ジオキサン等のエーテル類、n−ヘキサン、n−ヘプタン、ベンゼン、トルエン、キシレン等の炭化水素類、アセトニトリル、ジメチルスルホキシド(DMSO)、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)等の非プロトン性極性溶媒類、塩化メチレン、クロロホルム、四塩化炭素等の塩素系有機溶媒等が挙げられる。これらの溶媒は、反応条件により適宜選択して用いればよく、1種単独又は2種以上を混合して用いることができる。
【0037】
また、上記ステップ(i)で示される反応に用いることができる塩基として、例えば、アンモニア、トリエチルアミン、ピリジン、ルチジン、コリジン、N,N−ジメチルアニリン等のアミン類、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化テトラメチルアンモニウム等の水酸化物類、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム等の炭酸塩類等が挙げられる。これらの塩基は、1種単独又は2種以上を混合して用いることができる。
【0038】
ステップ(ii)は、スルホン酸塩(S−3)とスルホニウム塩(S−4)とのイオン交換反応により、スルホニウム塩(1’)を得る工程である。スルホン酸塩(S−3)はステップ(i)の反応を行った後に、通常の水系後処理を経て単離したものを用いてもよいし、反応を停止した後に特に後処理をしていないものを用いてもよい。
【0039】
単離したスルホン酸塩(S−3)を用いる場合は、スルホン酸塩(S−3)を水、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジ−n−ブチルエーテル、1,4−ジオキサン等のエーテル類、n−ヘキサン、n−ヘプタン、ベンゼン、トルエン、キシレン等の炭化水素類、アセトニトリル、ジメチルスルホキシド(DMSO)、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)等の非プロトン性極性溶媒類、塩化メチレン、クロロホルム、四塩化炭素等の塩素系有機溶媒等に溶解し、スルホニウム塩(S−4)と混合し、必要に応じ、冷却あるいは加熱することで反応混合物を得ることができる。反応混合物から通常の水系後処理(aqueous work−up)によりスルホニウム塩(1’)を得ることができ、必要があれば蒸留、再結晶、クロマトグラフィー等の常法に従って精製することができる。
【0040】
スルホン酸塩(S−3)を合成する反応を停止した後に、特に後処理をしていないものを用いる場合は、スルホン酸塩(S−3)の合成反応を停止した混合物に対してスルホニウム塩(S−4)を加え、必要に応じ、冷却あるいは加熱することでスルホニウム塩(1’)を得ることができる。その際、必要に応じて水、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジ−n−ブチルエーテル、1,4−ジオキサン等のエーテル類、n−ヘキサン、n−ヘプタン、ベンゼン、トルエン、キシレン等の炭化水素類、アセトニトリル、ジメチルスルホキシド(DMSO)、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)等の非プロトン性極性溶媒類、塩化メチレン、クロロホルム、四塩化炭素等の塩素系有機溶媒等を加えてもよい。反応混合物から通常の水系後処理(aqueous work−up)によりスルホニウム塩(1’)を得ることができ、必要があれば再結晶、クロマトグラフィー等の常法に従って精製することができる。
【0041】
本発明の上記一般式(1)で示されるスルホニウム塩は、フッ素置換されていないスルホン酸のスルホニウム塩構造を有しているため、高エネルギー線照射により適度な強度の酸を発生させることができる。また、嵩高い置換基を有していることから、発生酸の移動、拡散を適度に制御することが可能であり、ラフネスの向上に寄与する。なお、このスルホニウム塩は十分な脂溶性をもつことから、その製造、取り扱いは容易である。
【0042】
なお、本発明の上記一般式(1)で示されるスルホニウム塩の合成方法と同様な手法により、ヨードニウム塩、アンモニウム塩等を合成することが可能であり、このようなオニウム塩を、化学増幅型レジスト組成物に適用することもできる。
【0043】
より具体的なヨードニウムカチオンとして、例えばジフェニルヨードニウム、ビス(4−メチルフェニル)ヨードニウム、ビス(4−(1,1−ジメチルエチル)フェニル)ヨードニウム、ビス(4−(1,1−ジメチルプロピル)フェニル)ヨードニウム、(4−(1,1−ジメチルエトキシ)フェニル)フェニルヨードニウムなどが挙げられ、アンモニウム塩としては、例えばトリメチルアンモニウム、トリエチルアンモニウム、トリブチルアンモニウム、N,N−ジメチルアニリニウムなどの3級アンモニウム塩や、テトラメチルアンモニウム、テトラエチルアンモニウム、テトラブチルアンモニウムなどの4級アンモニウム塩などが挙げられる。このようなヨードニウム塩及びアンモニウム塩は、光酸発生効果や熱酸発生効果を有するものとして用いることができる。
【0044】
[レジスト組成物]
本発明は、高エネルギー線照射又は熱により下記一般式(0−1a)、(1a)で示されるスルホン酸を発生する上記一般式(0−1)又は(1)のスルホニウム塩を酸発生剤として含有するレジスト組成物を提供するものである。
【化18】
(式中、W、R
01、R
02、m、n、k、l、Lは上記と同様である。)
このようなレジスト組成物として、例えば、本発明の酸発生剤、ベース樹脂及び有機溶剤を含有する化学増幅型レジスト組成物が挙げられる。
【0045】
ここで、本発明のスルホニウム塩を酸発生剤として配合する場合、その配合量は、ベース樹脂100質量部に対して0.1〜40質量部、特に1〜20質量部であることが好ましい。40質量部を超えると、非常に高感度となり、保存安定性に欠けるおそれがある。0.1質量部未満では、酸不安定基の脱保護に必要な酸量が発生しないおそれがある。
【0046】
[ポジ型レジスト組成物]
ポジ型レジスト組成物を調製する際には、ベース樹脂として、酸の作用により分解し、アルカリ現像液中での溶解度が増大する樹脂(高分子化合物)を含有することが好ましい。
【0047】
上記ベース樹脂は、下記一般式(U−1)で示される繰り返し単位を含む高分子化合物であることが望ましい。
【化19】
(式中、qは0又は1を表す。rは0〜2の整数を表す。R
1は水素原子、フッ素原子、メチル基、及びトリフルオロメチル基のいずれかを表し、R
2はそれぞれ独立に水素原子又は炭素数1〜6のアルキル基を示す。B
1は単結合、又はエーテル結合を含んでいてもよい炭素数1〜10のアルキレン基を示す。aはa≦5+2r−bを満足する整数である。bは1〜3の整数である。)
【0048】
上記式(U−1)で示される繰り返し単位を含む高分子化合物のうち、リンカー(−CO−O−B
1−)のない繰り返し単位は、ヒドロキシスチレン単位等に代表される水酸基が置換された芳香環に1位置換もしくは非置換のビニル基が結合されたモノマーに由来する単位であるが、好ましい具体例としては、3−ヒドロキシスチレン、4−ヒドロキシスチレンや、5−ヒドロキシ−2−ビニルナフタレンもしくは6−ヒドロキシ−2−ビニルナフタレン等に由来する単位を挙げることができる。
【0049】
リンカー(−CO−O−B
1−)を有する場合の繰り返し単位は、(メタ)アクリル酸エステルに代表される、カルボニル基が置換したビニルモノマーに由来する単位である。
【0050】
リンカー(−CO−O−B
1−)を有する場合の上記一般式(U−1)で示される繰り返し単位の具体例を以下に示す。
【化20】
【0051】
上述の一般式(U−1)で示される単位は、1種のみでも複数種を組み合わせて使用してもよく、本発明に係る高分子化合物の全繰り返し単位に対し30〜90モル%、好ましくは30〜80モル%の範囲で導入されることが好ましい。但し、後述の本発明で使用するポリマーにより高いエッチング耐性を与える単位である一般式(U−3)及び/又は(U−4)を使用し、その単位が置換基としてフェノール性水酸基を有する場合には、その比率も加えて上記範囲内とされる。
【0052】
また、本発明のレジスト組成物は、ポジ型レジスト組成物として露光部がアルカリ水溶液に溶解する特性を与えるため、ベース樹脂は、酸不安定基により保護された酸性官能基を有する単位(酸不安定基により保護され、酸の作用によりアルカリ可溶性となる単位)が含まれることが好ましい。本発明に係る高分子化合物に含むことができる、酸不安定基により保護され、酸の作用によりアルカリ可溶性となる単位の最も好ましいものとして、下記一般式(U−2)で表される繰り返し単位が挙げられる。
【化21】
(式中、sは0又は1を表す。tは0〜2の整数を表す。R
1、R
2、B
1は上記と同様である。cはc≦5+2t−eを満足する整数である。dは0又は1であり、eは1〜3の整数である。Xはeが1の場合には酸不安定基を、eが2以上の場合には水素原子又は酸不安定基を表すが、そのうちの1つ以上は酸不安定基を表す。)
【0053】
上記一般式(U−2)は、上記一般式(U−1)で示される単位の芳香環に置換したフェノール性水酸基の少なくとも1つを酸不安定基で保護したもの、あるいは、フェノール性水酸基がカルボキシル基に置換され、カルボン酸が酸不安定基で保護されたものであり、酸不安定基としては、既に公知の多数の化学増幅型レジスト組成物で用いられてきた、酸によって脱離して酸性基を与えるものを、基本的にはいずれも使用することができるが、アセタール基が好ましい。
【0054】
上記のフェノール性水酸基、カルボキシル基のいずれの場合の3級アルキル基による保護は、得られた重合用のモノマーを蒸留によって得るために、炭素数4〜18のものであることが好ましい。また、該3級アルキル基の3級炭素が有するアルキル置換基としては、炭素数1〜15の、一部エーテル結合やカルボニル基のような酸素含有官能基を含んでいてもよい、直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基を挙げることができ、3級炭素の置換アルキル基同士が結合して環を形成していてもよい。
【0055】
好ましいアルキル置換基の具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、アダマンチル基、ノルボルニル基、テトラヒドロフラン−2−イル基、7−オキサノルボルナン−2−イル基、シクロペンチル基、2−テトラヒドロフリル基、トリシクロ[5.2.1.0
2,6]デシル基、8−エチル−8−トリシクロ[5.2.1.0
2,6]デシル基、3−メチル−3−テトラシクロ[4.4.0.1
2,5,1
7,10]ドデシル基、テトラシクロ[4.4.0.1
2,5,1
7,10]ドデシル基、3−オキソ−1−シクロヘキシル基を挙げることができ、また、3級アルキル基として具体的には、tert−ブチル基、tert−ペンチル基、1−エチル−1−メチルプロピル基、1,1−ジエチルプロピル基、1,1,2−トリメチルプロピル基、1−アダマンチル−1−メチルエチル基、1−メチル−1−(2−ノルボルニル)エチル基、1−メチル−1−(テトラヒドロフラン−2−イル)エチル基、1−メチル−1−(7−オキサノルボルナン−2−イル)エチル基、1−メチルシクロペンチル基、1−エチルシクロペンチル基、1−プロピルシクロペンチル基、1−シクロペンチルシクロペンチル基、1−シクロヘキシルシクロペンチル基、1−(2−テトラヒドロフリル)シクロペンチル基、1−(7−オキサノルボルナン−2−イル)シクロペンチル基、1−メチルシクロヘキシル基、1−エチルシクロヘキシル基、1−シクロペンチルシクロヘキシル基、1−シクロヘキシルシクロヘキシル基、2−メチル−2−ノルボニル基、2−エチル−2−ノルボニル基、8−メチル−8−トリシクロ[5.2.1.0
2,6]デシル基、8−エチル−8−トリシクロ[5.2.1.0
2,6]デシル基、3−メチル−3−テトラシクロ[4.4.0.1
2,5,1
7,10]ドデシル基、3−エチル−3−テトラシクロ[4.4.0.1
2,5,1
7,10]ドデシル基、2−メチル−2−アダマンチル基、2−エチル−2−アダマンチル基、1−メチル−3−オキソ−1−シクロヘキシル基、1−メチル−1−(テトラヒドロフラン−2−イル)エチル基、5−ヒドロキシ−2−メチル−2−アダマンチル基、5−ヒドロキシ−2−エチル−2−アダマンチル基を例示できるが、これらに限定されない。
【0056】
また、下記一般式(10)
(式中、R
6は水素原子、又は炭素数1〜10の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基を表し、Qは炭素数1〜30の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基を示す。)
で示されるアセタール基は酸不安定基としてよく利用され、比較的パターンと基板の界面が矩形であるパターンを安定して与える酸不安定基として有用な選択肢である。特に、より高い解像性を得るためには炭素数7〜30の多環式アルキル基が含まれることが好ましい。またQが多環式アルキル基を含む場合、該多環式環構造を構成する2級炭素とアセタール酸素との間で結合を形成していることが好ましい。なぜなら、環構造の3級炭素上で結合している場合、ポリマーが不安定な化合物となり、レジスト組成物として保存安定性に欠け、解像力も劣化することがあるためである。逆にQが炭素数1以上の直鎖状のアルキル基を介在した1級炭素上で結合した場合、ポリマーのガラス転移温度(Tg)が低下し、現像後のレジストパターンがベークにより形状不良を起こすことがある。
【0057】
式(10)の具体例としては、下記のものを例示することができる。
(式中、R
6は上記と同様である。)
【0058】
なお、R
6は水素原子、又は炭素数1〜10の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基であるが、酸に対する分解性基の感度の設計に応じて適宜選択される。例えば比較的高い安定性を確保した上で強い酸で分解するという設計であれば水素原子が選択され、比較的高い反応性を用いてpH変化に対して高感度化という設計であれば直鎖状のアルキル基が選択される。レジスト組成物に配合する酸発生剤や塩基性化合物との組み合わせにもよるが、上述のような末端に比較的大きなアルキル基が置換され、分解による溶解性変化が大きく設計されている場合には、R
6としてアセタール炭素との結合を持つ炭素が2級炭素であるものが好ましい。2級炭素によってアセタール炭素と結合するR
6の例としては、イソプロピル基、sec−ブチル基、シクロペンチル基、シクロへキシル基等を挙げることができる。
【0059】
その他の酸不安定基の選択としては、フェノール性水酸基に、(−CH
2COO−3級アルキル基)を結合させるという選択を行うこともできる。この場合に使用する3級アルキル基は、上述のフェノール性水酸基の保護に用いる3級アルキル基と同じものを使用することができる。
【0060】
上述の一般式(U−2)で示され、酸不安定基により保護され、酸の作用によりアルカリ可溶性となる単位は、1種のみでも複数種を組み合わせて使用してもよく、高分子化合物の全繰り返し単位に対し5〜45モル%の範囲で導入されることが好ましい。
【0061】
また、本発明に係る高分子化合物(ベース樹脂)は、更に、ポリマーの主要構成単位として、下記一般式(U−3)及び/又は(U−4)で示される繰り返し単位を含むものとすることができる。
【化22】
(式中、fは0〜6の整数であり、R
3はそれぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子に置換されていてもよい炭素数1〜6のアルキル基、ハロゲン原子に置換されていてもよい1級又は2級アルコキシ基、及びハロゲン原子に置換されていてもよい炭素数1〜7のアルキルカルボニルオキシ基のいずれかを表す。gは0〜4の整数であり、R
4はそれぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子に置換されていてもよい炭素数1〜6のアルキル基、ハロゲン原子に置換されていてもよい1級又は2級アルコキシ基、及びハロゲン原子に置換されていてもよい炭素数1〜7のアルキルカルボニルオキシ基のいずれかを表す。)
【0062】
これらの繰り返し単位(上記一般式(U−3)及び一般式(U−4)で示される繰り返し単位のうち少なくとも1以上)を構成成分として使用した場合には、芳香環が持つエッチング耐性に加えて主鎖に環構造が加わることによるエッチングやパターン検査の際の電子線照射耐性を高めるという効果を得ることができる。
【0063】
上記一般式(U−3)及び一般式(U−4)で示される、主鎖に環構造を与え、エッチング耐性を向上させる単位は、1種のみでも複数種を組み合わせて使用してもよく、エッチング耐性を向上させるという効果を得るためには高分子化合物を構成する全モノマー単位に対して5モル%以上の導入が好ましい。また、一般式(U−3)や(U−4)で示される単位が、一般式(U−3)や(U−4)が有する官能基の作用によって、極性を持ち基板への密着性を与える単位であるか、置換基が上述の酸不安定基により保護され、酸の作用によりアルカリ可溶性となる単位である場合の導入量は、上述のそれぞれの好ましい範囲に合算され、官能基を持たない場合や、官能基がそのいずれでもない場合には、30モル%以下であることが好ましい。官能基を持たない場合や、官能基がそのいずれでもない場合の導入量が30モル%以下であれば、現像欠陥が発生するおそれがないために好ましい。
【0064】
また、本発明のレジスト組成物に使用される上記高分子化合物は、好ましくは、主要構成単位として上記一般式(U−1)及び(U−2)、更に導入可能な一般式(U−3)、(U−4)の単位が高分子化合物を構成する全モノマー単位の60モル%以上を占めることによって本発明のレジスト組成物の特性が確実に得られ、更に好ましくは70モル%以上、特に好ましくは85モル%以上である。
【0065】
また、全構成単位が式(U−1)〜(U−4)より選ばれた繰り返し単位である高分子化合物である場合は、高いエッチング耐性と解像性の両立に優れる。式(U−1)〜(U−4)以外の繰り返し単位としては、常用される酸不安定基で保護された(メタ)アクリル酸エステル単位や、ラクトン構造等の密着性基を持つ(メタ)アクリル酸エステル単位を使用してもよい。これらのその他の繰り返し単位によってレジスト膜の特性の微調整を行ってもよいが、これらの単位を含まなくてもよい。
【0066】
[ネガ型レジスト組成物]
化学増幅型ネガ型レジスト組成物を調製する際には、ベース樹脂として、酸の作用によりアルカリ不溶性となる樹脂(高分子化合物)を用いる。この酸の作用によりアルカリ不溶性となる樹脂としては、特に限定されないが、酸の作用により樹脂同士が架橋構造を形成して高分子量化するものや、酸の作用により後述の架橋剤と反応して高分子量化するものを用いることが好ましい。
【0067】
上記ベース樹脂は、下記一般式(U−1)で示される繰り返し単位を含むことが好ましく、更に下記一般式(UN−2)で示される繰り返し単位を含むものであることが好ましい。
【化23】
(式中、qは0又は1を表す。rは0〜2の整数を表す。R
1は水素原子、フッ素原子、メチル基、及びトリフルオロメチル基のいずれかを表し、R
2はそれぞれ独立に水素原子又は炭素数1〜6のアルキル基を示す。B
1は単結合、又はエーテル結合を含んでいてもよい炭素数1〜10のアルキレン基を示す。aはa≦5+2r−bを満足する整数である。bは1〜3の整数である。)
【化24】
(式中、R
1、B
1は上記と同様である。Zは水素原子、炭素数1〜20の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基、炭素数2〜20のヒドロキシアルキル基、炭素数2〜20のアルコキシアルキル基、炭素数2〜20のアルキルチオアルキル基、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、スルフィニル基、又はスルホニル基を示し、Yは炭素数1〜20のアルキル基又は炭素数1〜20のアシル基を示す。hは0〜4の整数、iは0〜5の整数である。uは0又は1を示し、vは0〜2の整数を示す。)
【0068】
上記一般式(UN−2)で示される繰り返し単位はエッチング耐性を与えると共に、アルカリ現像液に対する溶解性を制御するための繰り返し単位であり、既に多くのKrFエキシマレーザー用レジスト組成物や電子線用レジスト組成物で用いられている。
【0069】
上記一般式(UN−2)中、B
1は単結合、又はエーテル結合を介在していてもよい炭素数1〜10のアルキレン基を示す。
好ましいアルキレン基の例としては、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基、ヘキシレン基、及び分岐状又は環状構造を持つ炭素骨格の構造異性体等が挙げられ、エーテル結合を含む場合には、一般式(UN−2)中のuが1である場合には、エステル酸素に対してα位の炭素とβ位の炭素の間を除くいずれの箇所に入ってもよい。また、uが0である場合には、主鎖と結合する原子がエーテル性酸素となり、該エーテル性酸素に対してα位の炭素とβ位の炭素の間を除くいずれの箇所に第2のエーテル結合が入ってもよい。なお、上記アルキレン基の炭素数が10以下であれば、アルカリ現像液に対する溶解性を十分に得ることができるため好ましい。
【0070】
上記一般式(UN−2)中に示されたZは水素原子、炭素数1〜20の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基、炭素数2〜20、好ましくは2〜10のアルコキシアルキル基、炭素数2〜20、好ましくは2〜10のアルキルチオアルキル基、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、スルフィニル基、又はスルホニル基を示す。より具体的な好ましい置換基としては、水素原子、ハロゲン原子としては、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、へキシル基及びその構造異性体、シクロペンチル基、シクロへキシル基等が挙げられる。炭素数が20以下であれば、ベース樹脂としてのアルカリ現像液に対する溶解性を制御・調整する効果(主に、下げる効果)を適切なものとすることができ、スカム(現像欠陥)の発生を抑制することができる。また、上述の好ましい置換基の中で、特にモノマーとして準備し易く、有用に用いられる置換基としては、水素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、メチル基、エチル基を挙げることができる。
【0071】
また、上記一般式(UN−2)中に示されたYは炭素数1〜20、好ましくは1〜6のアルキル基又は炭素数1〜20、好ましくは2〜7のアシル基を示すが、Yがアルキル基である場合、OYはアルコキシ基であり、アシル基である場合には、OYはアシルオキシ基である。好ましいアルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、ペンチルオキシ基、へキシルオキシ基及びその炭化水素部の構造異性体、シクロペンチルオキシ基、シクロへキシルオキシ基等が挙げられ、特にメトキシ基及びエトキシ基が有用に利用できる。また、アシルオキシ基は、ポリマーの重合後でも容易に化学修飾法で導入することができ、ベース樹脂のアルカリ現像液に対する溶解性の微調整に有利に用いることができる。この場合、メチルカルボニルオキシ基、エチルカルボニルオキシ基、プロピルカルボニルオキシ基、ブチルカルボニルオキシ基、ペンチルカルボニルオキシ基、ヘキシルカルボニルオキシ基及びその構造異性体、シクロペンチルカルボニルオキシ基、シクロヘキシルカルボニルオキシ基、ベンゾイルオキシ基等を好ましく用いることができる。
【0072】
上記一般式(UN−2)中、hは0〜4の整数、iは0〜5の整数であるが、vが0の場合、好ましくはhは0〜3の整数、iは0〜3の整数であり、vが1又は2の場合、好ましくはhは0〜4の整数、iは0〜5の整数である。
なお、vは0〜2の整数を表し、0の場合はベンゼン骨格、1の場合はナフタレン骨格、2の場合はアントラセン骨格をそれぞれ示す。
【0073】
上記一般式(UN−2)で示される繰り返し単位の基本骨格うち、uが0かつB
1が単結合である場合、つまり芳香環が高分子化合物の主鎖に直接結合した、即ちリンカーのない場合の繰り返し単位の基本骨格は、スチレン骨格に代表される芳香環に1位置換あるいは非置換のビニル基が結合されたモノマーに上記Z及び/又はOYが置換された単位であるが、好ましい基本骨格の具体例としては、スチレン、4−クロロスチレン、4−メチルスチレン、4−メトキシスチレン、4−ブロモスチレン、4−(2−ヒドロキシプロピル)スチレン、4−(2−ヒドロキシブチル)スチレン、4−(1−ヒドロキシシクロペンチル)スチレン、4−(2−ヒドロキシ−2−アダマンチル)スチレン、2−ビニルナフタレン、3−ビニルナフタレン等を挙げることができる。
【0074】
また、uが1である場合、つまりリンカーとしてエステル骨格を有する場合の繰り返し単位は、(メタ)アクリル酸エステルに代表される、カルボニル基が置換したビニルモノマー単位である。
【0075】
(メタ)アクリル酸エステル由来のリンカー(−CO−O−B
1−)を持つ場合の一般式(UN−2)の基本骨格に関する好ましい具体例を以下に示す。
【化25】
【0076】
【化26】
(式中、Meはメチル基を示す。)
【0077】
本発明に係るネガ型レジスト組成物は、上述の一般式(U−1)で示される繰り返し単位が高分子化合物の全繰り返し単位に対し30〜90モル%の範囲、上述の一般式(UN−2)で示される繰り返し単位が1〜45モル%の範囲で導入されることが好ましい。
【0078】
また、本発明に係るネガ型レジスト組成物に使用される高分子化合物は、更に、ポリマーの主要構成単位として、下記一般式(U−3)及び/又は(U−4)で示される繰り返し単位を含むものとすることができる。
【化27】
(式中、fは0〜6の整数であり、R
3はそれぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子に置換されていてもよい炭素数1〜6のアルキル基、ハロゲン原子に置換されていてもよい1級又は2級アルコキシ基、及びハロゲン原子に置換されていてもよい炭素数1〜7のアルキルカルボニルオキシ基のいずれかを表す。gは0〜4の整数であり、R
4はそれぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子に置換されていてもよい炭素数1〜6のアルキル基、ハロゲン原子に置換されていてもよい1級又は2級アルコキシ基、及びハロゲン原子に置換されていてもよい炭素数1〜7のアルキルカルボニルオキシ基のいずれかを表す。)
【0079】
これらの繰り返し単位(上記一般式(U−3)及び一般式(U−4)で示される繰り返し単位のうち少なくとも1以上)を構成成分として使用した場合には、芳香環が持つエッチング耐性に加えて主鎖に環構造が加わることによるエッチングやパターン検査の際の電子線照射耐性を高めるという効果を得ることができる。
【0080】
上記一般式(U−3)及び一般式(U−4)で示される、主鎖に環構造を与え、エッチング耐性を向上させる単位は、1種のみでも複数種を組み合わせて使用してもよく、エッチング耐性を向上させるという効果を得るためには高分子化合物を構成する全モノマー単位に対して5モル%以上の導入が好ましい。また、一般式(U−3)や(U−4)で示される単位が、一般式(U−3)や(U−4)が有する官能基の作用によって、極性を持ち基板への密着性を与える単位であるか、置換基が上述の酸不安定基により保護され、酸の作用によりアルカリ可溶性となる単位である場合の導入量は、上述のそれぞれの好ましい範囲に合算され、官能基を持たない場合や、官能基がそのいずれでもない場合には、30モル%以下であることが好ましい。官能基を持たない場合や、官能基がそのいずれでもない場合の導入量が30モル%以下であれば、現像欠陥が発生するおそれがないために好ましい。
【0081】
本発明の化学増幅型ネガ型レジスト組成物には、ベース樹脂の架橋構造を形成又は強化するため、更に架橋剤を配合することができる。本発明で使用可能な架橋剤の具体例を列挙すると、メチロール基、アルコキシメチル基、アシロキシメチル基から選ばれる少なくとも1つの基で置換されたメラミン化合物、グアナミン化合物、グリコールウリル化合物、ウレア化合物、エポキシ化合物、イソシアネート化合物、アジド化合物、及びアルケニルエーテル基などの2重結合を含む化合物等を挙げることができる。これらは添加剤として用いてもよいが、ポリマー側鎖にペンダント基として導入してもよい。また、ヒドロキシ基を含む化合物も架橋剤として用いることができる。
【0082】
前記架橋剤の具体例のうち、更にエポキシ化合物を例示すると、トリス(2,3−エポキシプロピル)イソシアヌレート、トリメチロールメタントリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、トリエチロールエタントリグリシジルエーテルなどが例示される。
【0083】
メラミン化合物を具体的に例示すると、ヘキサメチロールメラミン、ヘキサメトキシメチルメラミン、ヘキサメチロールメラミンの1〜6個のメチロール基がメトキシメチル化した化合物又はその混合物、ヘキサメトキシエチルメラミン、ヘキサアシロキシメチルメラミン、ヘキサメチロールメラミンの1〜6個のメチロール基がアシロキシメチル化した化合物又はその混合物が挙げられる。
【0084】
グアナミン化合物としては、テトラメチロールグアナミン、テトラメトキシメチルグアナミン、テトラメチロールグアナミンの1〜4個のメチロール基がメトキシメチル化した化合物又はその混合物、テトラメトキシエチルグアナミン、テトラアシロキシグアナミン、テトラメチロールグアナミンの1〜4個のメチロール基がアシロキシメチル化した化合物又はその混合物が挙げられる。
【0085】
グリコールウリル化合物としては、テトラメチロールグリコールウリル、テトラメトキシグリコールウリル、テトラメトキシメチルグリコールウリル、テトラメチロールグリコールウリルの1〜4個のメチロール基がメトキシメチル化した化合物又はその混合物、テトラメチロールグリコールウリルの1〜4個のメチロール基がアシロキシメチル化した化合物又はその混合物が挙げられる。
【0086】
ウレア化合物としてはテトラメチロールウレア、テトラメトキシメチルウレア、テトラメチロールウレアの1〜4個のメチロール基がメトキシメチル化した化合物又はその混合物、テトラメトキシエチルウレアなどが挙げられる。
【0087】
イソシアネート化合物としては、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、シクロヘキサンジイソシアネート等が挙げられる。
【0088】
アジド化合物としては、1,1’−ビフェニル−4,4’−ビスアジド、4,4’−メチリデンビスアジド、4,4’−オキシビスアジドが挙げられる。
【0089】
アルケニルエーテル基を含む化合物としては、エチレングリコールジビニルエーテル、トリエチレングリコールジビニルエーテル、1,2−プロパンジオールジビニルエーテル、1,4−ブタンジオールジビニルエーテル、テトラメチレングリコールジビニルエーテル、ネオペンチルグリコールジビニルエーテル、トリメチロールプロパントリビニルエーテル、ヘキサンジオールジビニルエーテル、1,4−シクロヘキサンジオールジビニルエーテル、ペンタエリスリトールトリビニルエーテル、ペンタエリスリトールテトラビニルエーテル、ソルビトールテトラビニルエーテル、ソルビトールペンタビニルエーテル、トリメチロールプロパントリビニルエーテルなどが挙げられる。
【0090】
架橋剤の配合量は、ベース樹脂100質量部に対して0〜50質量部が好ましく、より好ましくは5〜50質量部、更に好ましくは10〜30質量部であり、単独又は2種以上を混合して使用できる。配合する場合は5質量部以上であれば十分な解像性の向上が得られ、50質量部以下であれば、パターン間がつながり解像度が低下するおそれが少ない。
【0091】
本発明のレジスト組成物(上記ポジ型及びネガ型レジスト組成物)には、塩基性化合物として、カルボキシル基を有し、かつ塩基性中心である窒素原子に共有結合で結合する水素を含有しないアミン化合物が含有されてもよい。
【0092】
パターン形成において、被加工体の材料によって基板近傍で形状が変化する、いわゆるパターンの基板依存性の問題は、目的とするパターンの微細化に伴い、小さな形状変化も問題となるようになってきており、特にフォトマスクブランクを加工する際、フォトマスクブランクの最表面の材料であるクロム酸化窒化物上で化学増幅型ネガ型レジスト組成物を用いてパターン形成を行うと、基板接触部でパターンに切れ込みが入ってしまう、いわゆるアンダーカットが発生することがあった。しかし、カルボキシル基を有し、かつ塩基性中心である窒素原子に共有結合で結合する水素を含有しないアミン化合物を配合することで、上述のアンダーカットの発生を防止することができる。
【0093】
上述のアンダーカットの発生を防止する点において、カルボキシル基を有する第1級アミンのように塩基性中心である窒素原子に共有結合で結合する水素を有するアミン化合物よりも、塩基性中心である窒素原子に共有結合で結合する水素を含まない第3級アミンが効果を最大限発揮するため好ましい。
【0094】
また、上記の第3級アミンの中でも、2−キノリンカルボン酸やニコチン酸のような塩基性中心が芳香環に含まれる窒素である弱塩基のアミン化合物よりも強い塩基性を示すものであれば、カルボキシル基が基板側にうまく配列され、酸発生剤等に由来の発生酸が基板へ拡散して失活することをより効果的に防止することができる。
【0095】
アンダーカットの問題は、表面の材料がTiN、SiN、SiON等の窒素化化合物である基板等である場合に発生し易いが、特に表面が金属クロム系化合物の場合、金属クロムや窒素及び/又は酸素を含有するクロム化合物の場合のいずれでも極めて発生し易く、その解消が難しい。しかし、上述の塩基性化合物を含有した本発明のレジスト組成物を用いた場合には、クロム系化合物が最表面である基板上でも良好な形状を持つパターンを形成することができ、フォトマスクブランクの加工等において有利に使用できる。
【0096】
上記カルボキシル基を有し、かつ塩基性中心である窒素原子に共有結合で結合する水素を含有しないアミン化合物の具体的な化学構造例としては、好ましいものとして、下記一般式(7)〜(9)で示されるアミン化合物、アミンオキサイド化合物を含む塩基性化合物を挙げることができるが、これらに限定されない。
【0097】
【化28】
(式中、R
12、R
13はそれぞれ炭素数1〜20の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基、炭素数6〜20のアリール基、炭素数7〜20のアラルキル基、炭素数2〜20のヒドロキシアルキル基、炭素数2〜20のアルコキシアルキル基、炭素数2〜20のアシルオキシアルキル基、又は炭素数2〜20のアルキルチオアルキル基である。またR
12とR
13とが結合してこれらが結合する窒素原子と共に環構造を形成してもよい。R
14は水素原子、炭素数1〜20の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基、炭素数6〜20のアリール基、炭素数7〜20のアラルキル基、炭素数2〜20のヒドロキシアルキル基、炭素数2〜20のアルコキシアルキル基、炭素数2〜20のアシルオキシアルキル基、炭素数2〜20のアルキルチオアルキル基、又はハロゲン原子である。R
15は単結合、炭素数1〜20の直鎖状、分岐状又は環状のアルキレン基、又は炭素数6〜20のアリーレン基である。R
16は炭素数2〜20の直鎖状又は分岐状の置換可アルキレン基であり、アルキレン基の炭素−炭素間にカルボニル基(−CO−)、エーテル基(−O−)、エステル基(−COO−)、スルフィド結合(−S−)を1個あるいは複数個含んでいてもよい。またR
17は炭素数1〜20の直鎖状、分岐状又は環状のアルキレン基、又は炭素数6〜20のアリーレン基である。)
【0098】
上記一般式(7)〜(9)中、炭素数1〜20の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基として具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、デシル基、シクロペンチル基、シクロへキシル基、デカヒドロナフタレニル基を、炭素数6〜20のアリール基として具体的には、フェニル基、ナフチル基、アントリル基、フェナントリル基、ピレニル基、ナフタセニル基、フルオレニル基を、炭素数7〜20のアラルキル基として具体的には、ベンジル基、フェネチル基、フェニルプロピル基、ナフチルメチル基、ナフチルエチル基、アントラセニルメチル基を、炭素数2〜20、好ましくは2〜10のヒドロキシアルキル基として具体的には、ヒドロキシメチル基、ヒドロキシエチル基、ヒドロキシプロピル基を、炭素数2〜20、好ましくは2〜10のアルコキシアルキル基として具体的には、メトキシメチル基、エトキシメチル基、プロポキシメチル基、イソプロポキシメチル基、ブトキシメチル基、イソブトキシメチル基、tert−ブトキシメチル基、tert−アミロキシメチル基、シクロヘキシルオキシメチル基、シクロペンチルオキシメチル基を、炭素数2〜20、好ましくは2〜10のアシルオキシアルキル基として具体的には、ホルミルオキシメチル基、アセトキシメチル基、プロピオニルオキシメチル基、ブチリルオキシメチル基、ピバロイルオキシメチル基、シクロヘキサンカルボニルオキシメチル基、デカノイルオキシメチル基を、炭素数2〜20、好ましくは2〜10のアルキルチオアルキル基として具体的には、メチルチオメチル基、エチルチオメチル基、プロピルチオメチル基、イソプロピルチオメチル基、ブチルチオメチル基、イソブチルチオメチル基、tert−ブチルチオメチル基、tert−アミルチオメチル基、デシルチオメチル基、シクロヘキシルチオメチル基を、それぞれ例示できるが、これらに限定されない。
【0099】
一般式(7)で表されるアミン化合物の好ましい具体例を以下に例示するが、これらに限定されない。
o−ジメチルアミノ安息香酸、p−ジメチルアミノ安息香酸、m−ジメチルアミノ安息香酸、p−ジエチルアミノ安息香酸、p−ジプロピルアミノ安息香酸、p−ジイソプロピルアミノ安息香酸、p−ジブチルアミノ安息香酸、p−ジペンチルアミノ安息香酸、p−ジヘキシルアミノ安息香酸、p−ジエタノールアミノ安息香酸、p−ジイソプロパノールアミノ安息香酸、p−ジメタノールアミノ安息香酸、2−メチル−4−ジエチルアミノ安息香酸、2−メトキシ−4−ジエチルアミノ安息香酸、3−ジメチルアミノ−2−ナフタレン酸、3−ジエチルアミノ−2−ナフタレン酸、2−ジメチルアミノ−5−ブロモ安息香酸、2−ジメチルアミノ−5−クロロ安息香酸、2−ジメチルアミノ−5−ヨード安息香酸、2−ジメチルアミノ−5−ヒドロキシ安息香酸、4−ジメチルアミノフェニル酢酸、4−ジメチルアミノフェニルプロピオン酸、4−ジメチルアミノフェニル酪酸、4−ジメチルアミノフェニルリンゴ酸、4−ジメチルアミノフェニルピルビン酸、4−ジメチルアミノフェニル乳酸、2−(4−ジメチルアミノフェニル)安息香酸、2−(4−(ジブチルアミノ)−2−ヒドロキシベンゾイル)安息香酸。
【0100】
一般式(8)で表されるアミンオキサイド化合物の好ましい具体例としては、上記一般式(7)の具体的に例示されたアミン化合物を酸化したものが挙げられるが、これらに限定されない。
【0101】
一般式(9)で表されるアミン化合物の好ましい具体例として、1−ピペリジンプロピオン酸、1−ピペリジン酪酸、1−ピペリジンリンゴ酸、1−ピペリジンピルビン酸、1−ピペリジン乳酸が挙げられるが、これらに限定されない。
【0102】
本発明の化学増幅型ネガ型レジスト組成物は、上述のアミン化合物、アミンオキサイド化合物等の塩基性化合物を1種又は2種以上の組み合わせとして含有することができる。
【0103】
本発明の化学増幅型ポジ型レジスト組成物及びネガ型レジスト組成物に用いられる高分子化合物は、公知の方法によって、それぞれの単量体を必要に応じて保護、脱保護反応を組み合わせ、共重合を行って得ることができる。共重合反応は特に限定されるものではないが、好ましくはラジカル重合、アニオン重合である。これらの方法については国際公開第2006/121096号、特開2008−102383号公報、特開2008−304590号公報、特開2004−115630号公報を参考にすることができる。
【0104】
上記のレジスト組成物に使用されるベース樹脂としての上記高分子化合物の好ましい分子量は、一般的な方法としてポリスチレンを標準サンプルとしてゲルパーミエーションクロマトグラフィー:GPCによって測定した場合、重量平均分子量が2,000〜50,000であることが好ましく、更に好ましくは3,000〜20,000である。重量平均分子量が2,000以上であれば、従来知られているように、パターンの頭が丸くなって解像力が低下すると共に、ラインエッジラフネスが劣化するといった現象が生じるおそれがない。一方、分子量が必要以上に大きくなった場合、解像するパターンにもよるが、ラインエッジラフネスが増大する傾向を示すため、50,000以下、特にパターン線幅が100nm以下のパターンを形成する場合には、分子量を20,000以下に制御することが好ましい。
GPC測定は一般的に用いられるテトラヒドロフラン(THF)溶媒を用いて行うことができる。
【0105】
更に、本発明のレジスト組成物に用いる高分子化合物においては、分子量分布(Mw/Mn)が1.0〜2.0、特に1.0〜1.8と狭分散であることが好ましい。このように狭分散の場合には、現像後、パターン上に異物が生じたり、パターンの形状が悪化することがない。
【0106】
本発明のレジスト組成物には、後述の溶剤を加えることによって基本的なレジスト性能が得られるが、必要に応じ、塩基性化合物、本発明に係る酸発生剤以外の酸発生剤、その他のポリマー、界面活性剤等を加えることもできる。
【0107】
上述の一般式(U−1)〜(U−4)及び、(UN−2)から選ばれる単位を含有する高分子化合物と、その他のポリマーとを混合して使用する場合の配合比率は、本発明に係る高分子化合物の配合比は30質量%以上であることが好ましく、より好ましくは50質量%以上である。本発明に係る高分子化合物の配合比が30質量%以上であると、現像時に欠陥が発生するおそれがないために好ましい。しかし、配合時に、配合されるポリマーの全繰り返し単位中の芳香環骨格を有する単位の割合が60モル%以下にならないよう配合されることが好ましい。なお、上記その他のポリマーは1種に限らず2種以上を添加することができる。複数種のポリマーを用いることにより、化学増幅型レジスト組成物の性能を調整することができる。
【0108】
本発明のレジスト組成物には、塗布性を向上させるために慣用されている界面活性剤を添加してもよい。界面活性剤を用いる場合、国際公開第2006/121096号、特開2008−102383号公報、特開2008−304590号公報、特開2004−115630号公報、特開2005−8766号公報にも多数の例が記載されているように多数のものが公知であり、それらを参考にして選択することができる。
【0109】
なお、界面活性剤の添加量としては、レジスト組成物中のベース樹脂100質量部に対して2質量部以下、好ましくは1質量部以下であり、0.01質量部以上とすることが好ましい。
【0110】
本発明のレジスト組成物を使用してパターンを形成するには、公知のリソグラフィー技術を採用して行うことができる。一般論としては、集積回路製造用の基板(Si、SiO
2、SiN、SiON、TiN、WSi、BPSG、SOG、有機反射防止膜等)、あるいはマスク回路製造用の基板(Cr、CrO、CrON、MoSi等)等の被加工基板上にスピンコーティング等の手法で膜厚が0.05〜2.0μmとなるように塗布し、これをホットプレート上で60〜150℃、1〜20分間、好ましくは80〜140℃、1〜10分間プリベークし、レジスト膜を形成する。
【0111】
次いで目的のパターンを形成するためのマスクを用い、あるいはビーム露光により、遠紫外線、エキシマレーザー、X線、電子線等の高エネルギー線を露光量1〜200mJ/cm
2、好ましくは10〜100mJ/cm
2となるようにパターン照射する。なお、本発明の化学増幅型レジスト組成物はEUV又は電子線によるパターン照射の場合に、特に有効である。露光は通常の露光法の他、場合によってはマスクとレジストの間を液浸するImmersion法を用いることも可能である。その場合には水に不溶な保護膜を用いることも可能である。
【0112】
次いで、ホットプレート上で、60〜150℃、1〜20分間、好ましくは80〜140℃、1〜5分間ポストエクスポージャベーク(PEB)する。更に、0.1〜5質量%、好ましくは2〜3質量%のテトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)等のアルカリ水溶液の現像液を用い、0.1〜3分間、好ましくは0.5〜2分間、浸漬(dip)法、パドル(puddle)法、スプレー(spray)法等の常法により現像して、基板上に目的のパターンが形成される。
【0113】
なお、本発明のレジスト組成物は、特に高いエッチング耐性を持ち、かつ露光後、露光後加熱までの時間が延長された場合にもパターン線幅の変化が小さく、ラインエッジラフネスが小さいことが要求される条件で使用される際に有用である。また、被加工基板として、レジストパターンの密着性が取り難いことからパターン剥がれやパターン崩壊を起こし易い材料を表面に持つ基板への適用に特に有用であり、金属クロムや酸素、窒素、炭素の1以上の軽元素を含有するクロム化合物をスパッタリング成膜した基板上、特にはフォトマスクブランクス上でのパターン形成に有用である。
【実施例】
【0114】
以下、合成例、実施例及び比較例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。なお、下記例中、Meはメチル基を示す。また、共重合組成比はモル比であり、重量平均分子量(Mw)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によるポリスチレン換算重量平均分子量を示す。
【0115】
[合成例1]スルホニウム塩の合成
本発明のスルホニウム塩PAG−1〜PAG−9を以下に示す処方で合成した。なお、合成した本発明のスルホニウム塩PAG−1〜PAG−9の構造及び比較例で使用する比較PAG−1〜比較PAG−3のスルホニウム塩の構造は、後述の表5,6に示した。
【0116】
[合成例1−1]トリフェニルスルホニウム=4−(2,4,6−トリイソプロピルベンゼンスルホニルオキシ)ベンゼンスルホネート(PAG−1)の合成
【化29】
4−ヒドロキシベンゼンスルホン酸ナトリウム(C−2)4.32gを、テトラヒドロフラン20g、H
2O15gに懸濁させ、25質量%NaOH3.20gを氷冷下滴下し、1時間撹拌した。2,4,6−トリイソプロピルベンゼンスルホニルクロリド(C−1)3.03gのテトラヒドロフラン溶液を滴下し、室温で3時間撹拌し、式(C−3)の化合物を得、次いでトリフェニルスルホニウムクロリド(C−4)の水溶液50g及び塩化メチレン50gを加えた。30分撹拌後、有機層を分取し、水洗を行い、その後減圧濃縮した。濃縮液にメチルイソブチルケトンを加え、再び濃縮を行い、析出した個体をジイソプロピルエーテルで洗浄した。得られた固体を減圧乾燥することで、目的物であるトリフェニルスルホニウム=4−(2,4,6−トリイソプロピルベンゼンスルホニルオキシ)ベンゼンスルホネート(PAG−1)3.02gを白色結晶として得た(収率43%)。
【0117】
[合成例1−2]トリフェニルスルホニウム=4−(2,4,6−トリイソプロピルベンゾイルオキシ)ベンゼンスルホネート(PAG−2)の合成
合成例1−1における、2,4,6−トリイソプロピルベンゼンスルホニルクロリド(C−1)の代わりに、2,4,6−トリイソプロピルベンゾイルクロリドを用いた以外は同様の手順で合成を行い、PAG−2を2.89g得た(収率51%)。
【0118】
[合成例1−3]トリフェニルスルホニウム=4−(2,4,6−トリシクロヘキシルベンゼンスルホニルオキシ)ベンゼンスルホネート(PAG−3)の合成
合成例1−1における、2,4,6−トリイソプロピルベンゼンスルホニルクロリド(C−1)の代わりに、2,4,6−トリシクロヘキシルベンゼンスルホニルクロリドを用いた以外は同様の手順で合成を行い、PAG−3を3.19g得た(収率55%)。
【0119】
[合成例1−4]トリフェニルスルホニウム=2,6−ジイソプロピル−4−(2,4,6−トリシクロヘキシルベンゼンスルホニルオキシ)ベンゼンスルホネート(PAG−4)の合成
合成例1−1における、2,4,6−トリイソプロピルベンゼンスルホニルクロリド(C−1)の代わりに、2,4,6−トリシクロヘキシルベンゼンスルホニルクロリドを用い、4−ヒドロキシベンゼンスルホン酸ナトリウム(C−2)の代わりに2,6−ジイソプロピル−4−ヒドロキシベンゼンスルホン酸ナトリウムを用いた以外は同様の手順で合成を行い、PAG−4を3.09g得た(収率53%)。
【0120】
[合成例1−5]10−フェニルフェノキサチイニウム=4−(2,4,6−トリイソプロピルベンゼンスルホニルオキシ)ベンゼンスルホネート(PAG−5)の合成
合成例1−1における、トリフェニルスルホニウムクロリド(C−4)の水溶液の代わりに、10−フェニルフェノキサチイニウムクロリドの水溶液を用いた以外は同様の手順で合成を行い、PAG−5を2.75g得た(収率48%)。
【0121】
[合成例1−6]10−フェニルフェノキサチイニウム=2−イソプロピル−5−メチル−4−(2,4,6−トリシクロヘキシルベンゾイルオキシ)ベンゼンスルホネート(PAG−6)の合成
合成例1−1における、2,4,6−トリイソプロピルベンゼンスルホニルクロリド(C−1)の代わりに、2,4,6−トリシクロヘキシルベンゾイルクロリドを用い、4−ヒドロキシベンゼンスルホン酸ナトリウム(C−2)の代わりに2−イソプロピル−5−メチル−4−ヒドロキシベンゼンスルホン酸ナトリウムを用い、トリフェニルスルホニウムクロリド(C−4)の水溶液の代わりに、10−フェニルフェノキサチイニウムクロリドの水溶液を用いた以外は同様の手順で合成を行い、PAG−6を3.10g得た(収率49%)。
【0122】
[合成例1−7]4−ターシャリーブチルフェニルジフェニルスルホニウム=4−(2,4,6−トリイソプロピルベンゼンスルホニルオキシ)ベンゼンスルホネート(PAG−7)の合成
合成例1−1における、トリフェニルスルホニウムクロリド(C−4)の水溶液の代わりに、4−ターシャリーブチルフェニルジフェニルスルホニウムクロリドの水溶液を用いた以外は同様の手順で合成を行い、PAG−7を3.11g得た(収率45%)。
【0123】
[合成例1−8]10−フェニルフェノキサチイニウム=4−(2,4,6−トリイソプロピルベンゼンスルホニルオキシ)エタンスルホネート(PAG−8)の合成
合成例1−1における、4−ヒドロキシベンゼンスルホン酸ナトリウムの代わりに、トリエチルアンモニウム=ヒドロキシエタンスルホネートを用い、トリフェニルスルホニウムクロリド(C−4)の水溶液の代わりに、10−フェニルフェノキサチイニウムクロリドの水溶液を用いた以外は同様の手順で合成を行い、PAG−8を2.75g得た(収率34%)。
【0124】
[合成例1−9]10−フェニルフェノキサチイニウム=4−(2,4,6−トリシクロヘキシルベンゾイルオキシ)エタンスルホネート(PAG−9)の合成
合成例1−1における、2,4,6−トリイソプロピルベンゼンスルホニルクロリド(C−1)の代わりに、2,4,6−トリシクロヘキシルベンゾイルクロリドを用い、4−ヒドロキシベンゼンスルホン酸ナトリウム(C−2)の代わりにトリエチルアンモニウム=ヒドロキシエタンスルホネートを用い、トリフェニルスルホニウムクロリド(C−4)の水溶液の代わりに、10−フェニルフェノキサチイニウムクロリドの水溶液を用いた以外は同様の手順で合成を行い、PAG−9を3.10g得た(収率32%)。
【0125】
[ポリマー合成例2]ポジ型レジスト組成物用高分子化合物の合成
本発明のポジ型レジスト組成物に用いた高分子化合物(ポリマー)を以下の処方で合成した。合成した各ポリマーの組成比は表1に、繰り返し単位の構造は、表2〜4に示した。
【0126】
[ポリマー合成例2−1]ポリマー1の合成
3Lのフラスコにアセトキシスチレン407.5g、アセナフチレン42.5g、溶媒としてトルエンを1,275g添加した。この反応容器を窒素雰囲気下、−70℃まで冷却し、減圧脱気、窒素フローを3回繰り返した。室温まで昇温後、重合開始剤として2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)(和光純薬工業(株)製V−65)を34.7g加え、55℃まで昇温後、40時間反応を行った。この反応溶液にメタノール970gと水180gの混合溶液を撹拌中滴下し、30分後に下層(ポリマー層)を減圧濃縮し、このポリマー層にメタノール0.45L、テトラヒドロフラン0.54Lに再度溶解し、トリエチルアミン160g、水30gを加え、60℃に加温して40時間脱保護反応を行った。この脱保護反応溶液を減圧濃縮し、濃縮液にメタノール548gとアセトン112gを加え溶液化した。ここに撹拌中ヘキサンを990g滴下し、30分後に下層(ポリマー層)にテトラヒドロフラン300gを加え、ここに撹拌中ヘキサンを1,030g滴下し、30分後に下層(ポリマー層)を減圧濃縮した。本ポリマー溶液を酢酸82gを用いて中和し、反応溶液を濃縮後、アセトン0.3Lに溶解し、水10Lに沈澱させ、濾過、乾燥を行い、白色重合体280gを得た。
得られた重合体を
1H−NMR、及びGPC測定したところ、以下の分析結果となった。
共重合組成比(モル比)
ヒドロキシスチレン:アセナフチレン=89.3:10.7
重量平均分子量(Mw)=5,000
分子量分布(Mw/Mn)=1.63
【0127】
得られたポリマー100gに(2−メチル−1−プロペニル)メチルエーテル50gを酸性条件下反応させて、中和、分液処理、晶出工程を経て、ポリマー1を得た。収量は125gであった。これをポリマー1とする。
【化30】
【0128】
[ポリマー合成例2−2]ポリマー2の合成
ポリマー合成例2−1における(2−メチル−1−プロペニル)メチルエーテルを、(2−メチル−1−プロペニル)−8−トリシクロ[5,2,1,0
2,6]デカニルエーテルに代えた以外はポリマー合成例2−1と同様の手順で合成を行い、ポリマー2を得た。
【0129】
[ポリマー合成例2−3]ポリマー3の合成
ポリマー合成例2−1における(2−メチル−1−プロペニル)メチルエーテルを、(2−メチル−1−プロペニル)−2−アダマンチルエーテルに代えた以外はポリマー合成例2−1と同様の手順で合成を行い、ポリマー3を得た。
【0130】
[ポリマー合成例2−4]ポリマー4の合成
窒素雰囲気とした滴下用シリンダーに362gの4−ヒドロキシフェニルメタクリレート、38.2gのアセナフチレン、40.9gのジメチル2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)(和光純薬工業(株)製V−601)、500gのメチルエチルケトンをとり、単量体溶液を調製した。窒素雰囲気とした別の重合用フラスコに、250gのメチルエチルケトンをとり、撹拌しながら80℃まで加熱した後、上記単量体溶液を4時間かけて滴下した。滴下終了後、重合液の温度を80℃に保ったまま4時間撹拌を続け、次いで室温まで冷却した。得られた重合液を、10kgのヘキサン/ジイソプロピルエーテル溶液に滴下し、析出した共重合体を濾別した。共重合体をヘキサン5kgで2回洗浄した後、50℃で20時間真空乾燥して、白色粉末固体状のポリマーを得た。得られたポリマー100gに(2−メチル−1−プロペニル)メチルエーテル40.5gを酸性条件下反応させて、中和、分液処理、晶出工程を経て、ポリマー4を得た。収量は128gであった。
【0131】
[ポリマー合成例2−5]ポリマー5の合成
ポリマー合成例2−4における(2−メチル−1−プロペニル)メチルエーテルを、(2−メチル−1−プロペニル)−8−トリシクロ[5,2,1,0
2,6]デカニルエーテルに代えた以外はポリマー合成例2−4と同様の手順で合成を行い、ポリマー5を得た。
【0132】
[ポリマー合成例2−6]ポリマー6の合成
ポリマー合成例2−4における(2−メチル−1−プロペニル)メチルエーテルを、(2−メチル−1−プロペニル)−2−アダマンチルエーテルに代えた以外はポリマー合成例2−4と同様の手順で合成を行い、ポリマー6を得た。
【0133】
[ポリマー合成例2−7〜2−12]ポリマー7〜12の合成
ヒドロキシスチレンユニットを含むポリマーの場合は、各単量体の種類、配合比を変えた以外は、ポリマー合成例2−1、2−2又は2−3と同様の手順により、表1に示したポリマーを製造した。また、4−ヒドロキシフェニルメタクリレートユニットを含むポリマーの場合は、各単量体の種類、配合比を変えた以外は、ポリマー合成例2−4、2−5又は2−6と同様の手順により、表1に示したポリマー7〜12を製造した。
【0134】
[ポリマー合成例2−13]ポリマー13の合成
窒素雰囲気とした滴下用シリンダーに42.4gの4−ヒドロキシフェニルメタクリレート、40.6gのメタクリル酸5−オキソ−4−オキサトリシクロ[4.2.1.0
3,7]ノナン−2−イル、16.9gのメタクリル酸1−メトキシ−2−メチル−1−プロピル、9.3gのジメチル2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)(和光純薬工業(株)製V−601)、124gのメチルエチルケトンをとり、単量体溶液を調製した。窒素雰囲気とした別の重合用フラスコに、62gのメチルエチルケトンをとり、撹拌しながら80℃まで加熱した後、上記単量体溶液を4時間かけて滴下した。滴下終了後、重合液の温度を80℃に保ったまま4時間撹拌を続け、次いで室温まで冷却した。得られた重合液を、1.5kgのヘキサン/ジイソプロピルエーテル溶液に滴下し、析出した共重合体を濾別した。共重合体をヘキサン300gで2回洗浄した後、50℃で20時間真空乾燥して、白色粉末固体状のポリマー13を得た。
【0135】
[ポリマー合成例2−14、2−15]ポリマー14、ポリマー15の合成
各単量体の種類、配合比を変えた以外は、ポリマー合成例2−13と同様の手順により、表1に示したポリマー14、15を製造した。
【0136】
[ポリマー合成例2−16]ポリマー16の合成
窒素雰囲気とした滴下用シリンダーに64.8gの4−アセトキシスチレン、9.1gのアセナフチレン、26.1gのアミロキシスチレン、11.0gのジメチル2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)(和光純薬工業(株)製V−601)、150gのメチルエチルケトンをとり、単量体溶液を調製した。窒素雰囲気とした別の重合用フラスコに、75gのメチルエチルケトンをとり、撹拌しながら80℃まで加熱した後、上記単量体溶液を4時間かけて滴下した。滴下終了後、重合液の温度を80℃に保ったまま18時間撹拌を続け、次いで室温まで冷却した。得られた重合液を、1.5kgのヘキサン/ジイソプロピルエーテル溶液に滴下し、析出した共重合体を濾別した。共重合体をヘキサン300gで2回洗浄した。この共重合体をテトラヒドロフラン180g、メタノール60gに溶解し、エタノールアミン24.4gを加えて、還流下、3時間撹拌を行い、反応液を減圧下濃縮した。酢酸エチルに溶解後、中和、分液処理、晶出工程を経て、ポリマー16を得た。収量は71gであった。
【0137】
表1中、各単位の構造を表2〜4に示す。なお、表1において、導入比はモル比を示す。
【表1】
【0138】
【表2】
【0139】
【表3】
【0140】
【表4】
【0141】
ポジ型レジスト組成物の調製
上記で合成したポリマー(ポリマー1〜16)、光酸発生剤、塩基性化合物を表6に示す組成で有機溶剤中に溶解してレジスト組成物を調合し、更に各組成物を0.2μmサイズのフィルターもしくは0.02μmサイズのナイロン又はUPEフィルターで濾過することにより、ポジ型レジスト組成物の溶液をそれぞれ調製した。塩基性化合物は下記Base−1で表される構造のものを使用した。また、使用した光酸発生剤の構造を下記の表5,6に示した。表7中の有機溶剤は、PGMEA(プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート)、EL(乳酸エチル)、CyH(シクロヘキサノン)、PGME(プロピレングリコールモノメチルエーテル)である。また、各組成物には、界面活性剤としてPF−636(OMNOVA SOLUTIONS製)を0.075質量部添加した。
【0142】
【化31】
【0143】
【表5】
【0144】
【表6】
【0145】
【表7】
【0146】
電子ビーム描画評価1(実施例1〜33、37、比較例1〜6)
上記調製したポジ型レジスト組成物(実施例1〜33、37、比較例1〜6)をACT−M(東京エレクトロン(株)製)で152mm角の最表面が酸化窒化クロム膜であるマスクブランク上にスピンコーティングし、ホットプレート上で90℃で600秒間プリベークして90nmのレジスト膜を作製した。得られたレジスト膜の膜厚測定は、光学式測定器ナノスペック(ナノメトリックス社製)を用いて行った。測定はブランク外周から10mm内側までの外縁部分を除くブランク基板の面内81箇所で行い、膜厚平均値と膜厚範囲を算出した。
【0147】
更に、電子線露光装置((株)ニューフレアテクノロジー製、EBM−5000plus、加速電圧50keV)を用いて露光し、120℃で600秒間ベーク(PEB:post exposure bake)を施し、2.38質量%のテトラメチルアンモニウムヒドロキシドの水溶液で現像を行うと、ポジ型のパターンを得ることができた。得られたレジストパターンを次のように評価した。
作製したパターン付きマスクブランクを上空SEM(走査型電子顕微鏡)で観察し、400nmの1:1のラインアンドスペースを1:1で解像する露光量を最適露光量(μC/cm
2)とし、400nmのラインアンドスペースを1:1で解像する露光量における最小寸法を解像度(限界解像性)とし、200nmLSのエッジラフネスをSEMで測定した。パターン形状については、矩形か否かを目視にて判定した。
また、CDU(CD uniformity)を評価するには、ブランク外周から20mm内側までの外縁部分を除くブランク基板の面内49箇所において、400nmの1:1のラインアンドスペースを1:1で解像する露光量(μC/cm
2)をかけた場合の線幅を測定し、その線幅平均値から各測定点を差し引いた値の3σ値を算出した。
EB描画における本発明のレジスト組成物及び比較用のレジスト組成物の評価結果を表8に示す。
【0148】
【表8】
【0149】
EUV露光評価1(実施例34〜36、比較例7)
上記調製したポジ型レジスト組成物(実施例34〜36、比較例7)をヘキサメチルジシラザン(HMDS)ベーパープライム処理した直径4インチのSi基板上にスピンコートし、ホットプレート上で105℃で60秒間プリベークして50nmのレジスト膜を作製した。これに、NA0.3、ダイポール照明でEUV露光を行った。
露光後直ちにホットプレート上で60秒間ポストエクスポージャベーク(PEB)を行い2.38質量%のTMAH水溶液で30秒間パドル現像を行い、ポジ型のパターンを得た。
【0150】
得られたレジストパターンを次のように評価した。35nmのラインアンドスペースを1:1で解像する露光量における、最小の寸法を解像力(限界解像性)とし、35nmLSのエッジラフネス(LER)をSEMで測定した。パターン形状については、矩形か否かを目視にて判定した。
EUV描画における本発明のレジスト組成物及び比較用のレジスト組成物の評価結果を表9に示す。
【0151】
【表9】
【0152】
上記表8及び表9の結果を説明する。上記一般式(1)で示されるスルホニウム塩を含有ポジ型レジスト組成物(実施例1〜33、37、あるいは、実施例34〜36)は、いずれも良好な解像性、良好なパターン矩形性を示し、CDU、ラインエッジラフネス特性も良好な値を示した。一方、上記一般式(1)で示されるスルホニウム塩よりも相対的に嵩高さが小さいスルホニウム塩を用いたレジスト組成物(比較例1〜6、あるいは、比較例7)は、解像性とCDU、ラインエッジラフネスが実施例と比べて悪い結果となった。これらは、比較例で用いたスルホニウム塩が上記一般式(1)で示されるスルホニウム塩よりも相対的に嵩高さが小さいため、酸の拡散を抑制できなかったことが原因と考えられる。
【0153】
[ポリマー合成例3]ネガ型レジスト組成物用高分子化合物の合成
本発明のネガ型レジスト組成物に用いた高分子化合物(ポリマー)を以下の処方で合成した。合成した各ポリマーの組成比は表10に、繰り返し単位の構造は、表11〜13に示した。
【0154】
[ポリマー合成例3−1]ポリマー17の合成
3Lのフラスコにアセトキシスチレン238.0g、4−クロロスチレン22.6g、インデン189.4g、溶媒としてトルエンを675g添加した。この反応容器を窒素雰囲気下、−70℃まで冷却し、減圧脱気、窒素フローを3回繰り返した。室温まで昇温後、重合開始剤として2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)(和光純薬工業(株)製V−65)を40.5g加え、45℃まで昇温後20時間反応させ、次に55℃まで昇温後、更に20時間反応させた。この反応溶液を1/2まで濃縮し、メタノール15.0L溶液中に沈澱させ、得られた白色固体を濾過後、40℃で減圧乾燥し、白色重合体311gを得た。
このポリマーをメタノール488g、テトラヒドロフラン540gに再度溶解し、トリエチルアミン162g、水32gを加え、60℃で40時間脱保護反応を行った。分画工程として反応溶液を濃縮後、メタノール548gとアセトン112gの混合溶媒に溶解し、この溶解溶液にヘキサン990gを10分間かけて滴下投入した。この混合白濁溶液に対し静置分液を行い、下層(ポリマー層)を取り出し、濃縮した。更に再び濃縮されたポリマーをメタノール548gとアセトン112gの混合溶媒に溶解し、この溶解溶液にヘキサン990gを用いる分散、分液操作を行い、得られた下層(ポリマー層)を濃縮した。この濃縮液を酢酸エチル870gに溶解し、水250gと酢酸98gの混合液で中和分液洗浄を1回、更に水225gとピリジン75gで1回、水225gで4回の分液洗浄を行った。この後、上層の酢酸エチル溶液を濃縮し、アセトン250gに溶解し、水15Lに沈澱させ、濾過、50℃、40時間の真空乾燥を行い、白色重合体187gを得た。
得られた重合体を
13C,1H−NMR、及びGPC測定したところ、以下の分析結果となった。
共重合組成比(モル比)
ヒドロキシスチレン:4−クロロスチレン:インデン=78.0:11.0:11.0
重量平均分子量(Mw)=4,500
分子量分布(Mw/Mn)=1.65
これを(ポリマー17)とする。
【0155】
[ポリマー合成例3−2]ポリマー18の合成
窒素雰囲気下、3Lの滴下シリンダーに、4−アセトキシスチレンを380.0g、4−クロロスチレンを70.0g、アセナフチレンを50.1g、ジメチル−2,2’−アゾビス−(2−メチルプロピオネート)(和光純薬工業(株)製、商品名V601)を59g、及び溶媒としてトルエンを900g添加した溶液を調製した。更に窒素雰囲気下とした別の3L重合用フラスコに、トルエンを300g加え、80℃に加温した状態で、上記で調製した溶液を4時間かけて滴下した。滴下終了後、重合温度を80℃に維持しながら18時間撹拌を続け、次いで室温まで冷却した。得られた重合液を10kgのヘキサンに滴下し、析出した共重合体を濾別した。濾別した共重合体をヘキサン:トルエン=10:1の混合液2,000gで2回洗浄した。得られた共重合体を窒素雰囲気下で、3Lフラスコ中、テトラヒドロフラン1,260gとメタノール420gとの混合溶剤に溶解し、エタノールアミン180gを加え、60℃で3時間撹拌した。この反応溶液を減圧濃縮し、得られた濃縮物を3,000gの酢酸エチルと水800gとの混合溶剤に溶解させ、得られた溶液を分液ロートに移し、酢酸90gを加え、分液操作を行った。下層を留去し、得られた有機層に水800g及びピリジン121gを加え、分液操作を行った。下層を留去し、更に得られた有機層に水800gを添加して水洗分液を行った(水洗分液は計5回)。各分液工程毎の静置時に、アセトンを150g加えて少し撹拌すると、分離性よく分液ができた。
【0156】
分液後の有機層を濃縮後、アセトン1,200gに溶解し、0.02μmのナイロンフィルターを通したアセトン溶液を水10Lに滴下して、得られた晶出沈澱物を濾過、水洗浄を行い、2時間吸引濾過を行った後、再度得られた濾別体をアセトン1,200gに溶解し、0.02μmのナイロンフィルターを通したアセトン溶液を水10kgに滴下して得られた晶出沈澱物を濾過、水洗浄、乾燥を行い、白色重合体を400g得た。
得られた重合体を
13C−NMR、及びGPCで測定したところ、以下の分析結果となった。
共重合組成比(モル比)
ヒドロキシスチレン:4−クロロスチレン:アセナフチレン=75.0:15.0:10.0
重量平均分子量(Mw)=4,100
分子量分布(Mw/Mn)=1.72
これを(ポリマー18)とする。
【0157】
[ポリマー合成例3−3〜3−10]ポリマー19〜26の合成
各単量体の種類、配合比を変えた以外は、ポリマー合成例3−1、3−2の処方を基本とした手順により、表10に示したポリマーを製造した。表10中、各単位の構造を表11〜13に示す。なお、下記表10において、導入比はモル比を示す。
【0158】
[ポリマー合成例3−11]ポリマー27の合成
窒素雰囲気とした滴下用シリンダーに64.7gの4−ヒドロキシフェニルメタクリレート、30.7gのインデン、4.6gの4−クロロスチレン、12.2gのジメチル2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)(和光純薬工業(株)製V−601)、150gのメチルエチルケトンをとり、単量体溶液を調製した。窒素雰囲気とした別の重合用フラスコに、75gのメチルエチルケトンをとり、撹拌しながら80℃まで加熱した後、上記単量体溶液を4時間かけて滴下した。滴下終了後、重合液の温度を80℃に保ったまま18時間撹拌を続け、次いで室温まで冷却した。得られた重合液を、1.5kgのヘキサン/ジイソプロピルエーテル溶液に滴下し、析出した共重合体を濾別した。共重合体をヘキサン300gで2回洗浄した。
得られた重合体を
13C−NMR、及びGPCで測定したところ、以下の分析結果となった。
共重合組成比(モル比)
4−ヒドロキシフェニルメタクリレート:4−クロロスチレン:インデン=68.0:22.0:10.0
重量平均分子量(Mw)=4,100
分子量分布(Mw/Mn)=1.72
これを(ポリマー27)とする。
【0159】
[ポリマー合成例3−12〜3−15]ポリマー28〜31の合成
各単量体の種類、配合比を変えた以外は、ポリマー合成例3−1、3−2の処方を基本とした手順により、表10に示したポリマーを製造した。表10中、各単位の構造を表11〜13に示す。なお、下記表10において、導入比はモル比を示す。
【0160】
【表10】
【0161】
【表11】
【0162】
【表12】
【0163】
【表13】
【0164】
ネガ型レジスト組成物の調製
上記で合成したポリマー(ポリマー17〜31)、光酸発生剤、塩基性化合物、架橋剤を表14に示す組成で有機溶剤中に溶解してレジスト組成物を調合し、更に各組成物を0.2μmサイズのフィルターもしくは0.02μmサイズのナイロン又はUPEフィルターで濾過することにより、ネガ型レジスト組成物の溶液をそれぞれ調製した。塩基性化合物は下記Base−2で表される構造のものを使用した。また、光酸発生剤は上記の表5,6に示した構造のものを使用した。架橋剤はTMGU(テトラメトキシメチルグリコールウリル)である。表14中の有機溶剤は、PGMEA(プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート)、EL(乳酸エチル)、CyH(シクロヘキサノン)、PGME(プロピレングリコールモノメチルエーテル)である。また、各組成物には、界面活性剤としてPF−636(OMNOVA SOLUTIONS製)を0.075質量部添加した。
【0165】
【化32】
【0166】
【表14】
【0167】
電子ビーム描画評価2(実施例38〜66、比較例8〜11)
上記調製したネガ型レジスト組成物(実施例38〜66、比較例8〜11)をACT−M(東京エレクトロン(株)製)で152mm角の最表面が酸化窒化クロム膜であるマスクブランク上にスピンコーティングし、ホットプレート上で90℃で600秒間プリベークして90nmのレジスト膜を作製した。得られたレジスト膜の膜厚測定は、光学式測定器ナノスペック(ナノメトリックス社製)を用いて行った。測定はブランク外周から10mm内側までの外縁部分を除くブランク基板の面内81箇所で行い、膜厚平均値と膜厚範囲を算出した。
更に、電子線露光装置((株)ニューフレアテクノロジー製、EBM−5000plus、加速電圧50keV)を用いて露光し、120℃で600秒間ベーク(PEB:post exposure bake)を施し、2.38質量%のテトラメチルアンモニウムヒドロキシドの水溶液で現像を行うと、ネガ型のパターンを得ることができた。得られたレジストパターンを次のように評価した。
【0168】
作製したパターン付きマスクブランクを上空SEM(走査型電子顕微鏡)で観察し、400nmの1:1のラインアンドスペースを1:1で解像する露光量を最適露光量(μC/cm
2)とし、400nmのラインアンドスペースを1:1で解像する露光量における最小寸法を解像度(限界解像性)とし、200nmLSのエッジラフネスをSEMで測定した。パターン形状については、矩形か否かを目視にて判定した。
また、CDU(CD uniformity)を評価するには、ブランク外周から20mm内側までの外縁部分を除くブランク基板の面内49箇所において、400nmの1:1のラインアンドスペースを1:1で解像する露光量(μC/cm
2)をかけた場合の線幅を測定し、その線幅平均値から各測定点を差し引いた値の3σ値を算出した。
EB描画における本発明のレジスト組成物及び比較用のレジスト組成物の評価結果を表15に示す。
【0169】
【表15】
【0170】
EUV露光評価2(実施例67〜69、比較例12、13)
上記調製したネガ型レジスト組成物(実施例67〜69、比較例12、13)をヘキサメチルジシラザン(HMDS)ベーパープライム処理した直径4インチのSi基板上にスピンコートし、ホットプレート上で105℃で60秒間プリベークして50nmのレジスト膜を作製した。これに、NA0.3、ダイポール照明でEUV露光を行った。
露光後直ちにホットプレート上で60秒間ポストエクスポージャベーク(PEB)を行い2.38質量%のTMAH水溶液で30秒間パドル現像を行い、ネガ型のパターンを得た。
【0171】
得られたレジストパターンを次のように評価した。35nmのラインアンドスペースを1:1で解像する露光量における、最小の寸法を解像力(限界解像性)とし、35nmLSのエッジラフネス(LER)をSEMで測定した。パターン形状については、矩形か否かを目視にて判定した。
EUV描画における本発明のレジスト組成物及び比較用のレジスト組成物の評価結果を表16に示す。
【0172】
【表16】
【0173】
上記表15及び表16の結果を説明する。上記一般式(1)で示されるスルホニウム塩を含有するネガ型レジスト組成物(実施例38〜66、あるいは、実施例67〜69)は、いずれも良好な解像性、良好なパターン矩形性を示し、CDU、ラインエッジラフネス特性も良好な値を示した。一方、上記一般式(1)で示されるスルホニウム塩よりも相対的に嵩高さが小さいスルホニウム塩を用いたレジスト組成物(比較例8〜11、あるいは、比較例12、13)は、解像性とCDU、ラインエッジラフネスが実施例と比べて悪い結果となった。これらは、比較例で用いたスルホニウム塩が上記一般式(1)で示されるスルホニウム塩よりも相対的に嵩高さが小さいため、酸の拡散を抑制できなかったことが原因と考えられる。
【0174】
以上説明したことから明らかなように、本発明のレジスト組成物を用いれば、露光によりCDU、ラインエッジラフネスが小さいパターンを形成することができる。これを用いたパターン形成方法は半導体素子製造、特にフォトマスクブランクスの加工におけるフォトリソグラフィーに有用である。
【0175】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に含有される。