特許第6248945号(P6248945)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6248945
(24)【登録日】2017年12月1日
(45)【発行日】2017年12月20日
(54)【発明の名称】近赤外線カットフィルタ
(51)【国際特許分類】
   G02B 5/22 20060101AFI20171211BHJP
   G02B 5/28 20060101ALI20171211BHJP
   C09K 3/00 20060101ALI20171211BHJP
【FI】
   G02B5/22
   G02B5/28
   C09K3/00 105
【請求項の数】11
【全頁数】51
(21)【出願番号】特願2014-551135(P2014-551135)
(86)(22)【出願日】2013年12月5日
(86)【国際出願番号】JP2013082683
(87)【国際公開番号】WO2014088063
(87)【国際公開日】20140612
【審査請求日】2016年7月15日
(31)【優先権主張番号】特願2012-267054(P2012-267054)
(32)【優先日】2012年12月6日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2013-120894(P2013-120894)
(32)【優先日】2013年6月7日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000044
【氏名又は名称】旭硝子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001092
【氏名又は名称】特許業務法人サクラ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】塩野 和彦
(72)【発明者】
【氏名】有嶋 裕之
(72)【発明者】
【氏名】小西 哲平
(72)【発明者】
【氏名】保高 弘樹
【審査官】 野尻 悠平
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2013/054864(WO,A1)
【文献】 特開2012−008532(JP,A)
【文献】 特開2011−208101(JP,A)
【文献】 特開2005−258389(JP,A)
【文献】 特開2010−61119(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 5/22
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(A1)で示される近赤外線吸収色素(A1)から選択される1種以上を含む近赤外線吸収色素(A)と、屈折率が1.45以上の透明樹脂(B)とを含有する近赤外線吸収層を有する近赤外線カットフィルタ。
【化1】
ただし、式(A1)中の記号は以下のとおりである。
Xは、独立して1つ以上の水素原子が炭素数1〜12のアルキル基またはアルコキシ基で置換されていてもよい下記式(1)または式(2)で示される2価の有機基である。
−(CHn1− …(1)
式(1)中n1は、2または3である。
−(CHn2−O−(CHn3− …(2)
式(2)中、n2とn3はそれぞれ独立して0〜2の整数であり、n2+n3は1または2である。
は、独立して飽和環構造を含んでもよく、分岐を有してもよい炭素数1〜12の飽和もしくは不飽和炭化水素基、炭素数3〜12の飽和環状炭化水素基、炭素数6〜12のアリール基または炭素数7〜13のアルアリール基を示す。
およびRは、独立して水素原子、ハロゲン原子、または、炭素数1〜10のアルキル基もしくはアルコキシ基を示す。
は、独立して置換基を有しない下記式(4)で示される炭素数5〜25の分枝状の炭化水素基である。
−CH3−m13 …(4)
(ただし、式(4)中、mは1、2または3であり、R13はそれぞれ独立して、炭素原子間に不飽和結合、酸素原子、飽和もしくは不飽和の環構造を含んでもよい直鎖状または分枝状の炭化水素基(ただし、mが1のときは分枝状である。)を示し、かつm個のR13の炭素数の合計は4〜24である。)
【請求項2】
下記式(A1)で示される近赤外線吸収色素(A1)から選択される1種以上を含む近赤外線吸収色素(A)と、屈折率が1.45以上の透明樹脂(B)とを含有する近赤外線吸収層を有し、前記近赤外線吸収色素(A)を下記(ii−1)および(ii−2)の条件を満たす含有量で含有する場合に、前記近赤外線吸収層が下記(ii−3)の条件を満たす近赤外線カットフィルタ。
(ii−1)650〜800nmの波長域において透過率が1%となる最も短い波長λが、675nm≦λ≦720nm。
(ii−2)650〜800nmの波長域において透過率が1%となる最も長い波長λと前記λとの関係が、λ−λ=30nm。
(ii−3)650〜800nmの波長域において前記λよりも短波長側で透過率が70%となる波長λと、前記λと、前記透明樹脂(B)の屈折率n(B)との関係が、n(B)×(λ−λ)≦115。
【化2】
ただし、式(A1)中の記号は以下のとおりである。
Xは、独立して1つ以上の水素原子が炭素数1〜12のアルキル基またはアルコキシ基で置換されていてもよい下記式(1)または式(2)で示される2価の有機基である。
−(CHn1− …(1)
式(1)中n1は、2または3である。
−(CHn2−O−(CHn3− …(2)
式(2)中、n2とn3はそれぞれ独立して0〜2の整数であり、n2+n3は1または2である。
は、独立して飽和環構造を含んでもよく、分岐を有してもよい炭素数1〜12の飽和もしくは不飽和炭化水素基、炭素数3〜12の飽和環状炭化水素基、炭素数6〜12のアリール基または炭素数7〜13のアルアリール基を示す。
およびRは、独立して水素原子、ハロゲン原子、または、炭素数1〜10のアルキル基もしくはアルコキシ基を示す。
は、独立して1つ以上の水素原子がハロゲン原子、水酸基、カルボキシ基、スルホ基、またはシアノ基で置換されていてもよく、炭素原子間に不飽和結合、酸素原子、飽和もしくは不飽和の環構造を含んでよい、少なくとも1以上の分岐を有する炭素数5〜25の炭化水素基である。
【請求項3】
下記式(A1)で示される近赤外線吸収色素(A1)から選択される1種以上を含む近赤外線吸収色素(A)と、屈折率が1.45以上の透明樹脂(B)とを含有する近赤外線吸収層を有し、前記近赤外線吸収層の片側または両側に、下記(iii−1)および(iii−2)の特性を有する選択波長遮蔽層を有する近赤外線カットフィルタ。
(iii−1)420〜695nmの波長域において透過率が90%以上。
(iii−2)前記近赤外線吸収層の650〜800nmの波長域における透過率が1%となる最も長い波長λから1100nmまでの波長域において透過率が2%以下。
【化3】
ただし、式(A1)中の記号は以下のとおりである。
Xは、独立して1つ以上の水素原子が炭素数1〜12のアルキル基またはアルコキシ基で置換されていてもよい下記式(1)または式(2)で示される2価の有機基である。
−(CHn1− …(1)
式(1)中n1は、2または3である。
−(CHn2−O−(CHn3− …(2)
式(2)中、n2とn3はそれぞれ独立して0〜2の整数であり、n2+n3は1または2である。
は、独立して飽和環構造を含んでもよく、分岐を有してもよい炭素数1〜12の飽和もしくは不飽和炭化水素基、炭素数3〜12の飽和環状炭化水素基、炭素数6〜12のアリール基または炭素数7〜13のアルアリール基を示す。
およびRは、独立して水素原子、ハロゲン原子、または、炭素数1〜10のアルキル基もしくはアルコキシ基を示す。
は、独立して1つ以上の水素原子がハロゲン原子、水酸基、カルボキシ基、スルホ基、またはシアノ基で置換されていてもよく、炭素原子間に不飽和結合、酸素原子、飽和もしくは不飽和の環構造を含んでよい、少なくとも1以上の分岐を有する炭素数5〜25の炭化水素基である。
【請求項4】
前記式(A1)中、Xが下記式(3)で示される2価の有機基である請求項1〜3のいずれか1項に記載の近赤外線カットフィルタ。
−CR11−(CR12n4− …(3)
ただし、式(3)は、左側がベンゼン環に結合し右側がNに結合する2価の基を示し、式(3)中、n4は1または2である。
11はそれぞれ独立して、分岐を有してもよい炭素数1〜12のアルキル基またはアルコキシ基であり、R12はそれぞれ独立して、水素原子または、分岐を有してもよい炭素数1〜12のアルキル基またはアルコキシ基である。
【請求項5】
前記式(3)において、R11はそれぞれ独立して、分岐を有してもよい炭素数1〜6のアルキル基またはアルコキシ基であり、R12はそれぞれ独立して、水素原子または、分岐を有してもよい炭素数1〜6のアルキル基またはアルコキシ基である請求項記載の近赤外線カットフィルタ。
【請求項6】
前記式(A1)中Xが下記式(11−1)〜下記式(12−3)で示される2価の有機基のいずれかである請求項1〜3のいずれか1項に記載の近赤外線カットフィルタ。
−C(CH−CH(CH)− …(11−1)
−C(CH−CH− …(11−2)
−C(CH−CH(C)− …(11−3)
−C(CH−CH−CH− …(12−1)
−C(CH−CH−CH(CH)− …(12−2)
−C(CH−CH(CH)−CH− …(12−3)
ただし、式(11−1)〜(12−3)で示される基は、いずれも左側がベンゼン環に結合し右側がNに結合する。
【請求項7】
前記式(A1)におけるRの炭素数は、独立して6〜20である請求項1〜のいずれか1項に記載の近赤外線カットフィルタ。
【請求項8】
前記透明樹脂(B)が、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、エン・チオール樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリサルホン樹脂、ポリエーテルサルホン樹脂、ポリパラフェニレン樹脂、ポリアリーレンエーテルフォスフィンオキシド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリオレフィン樹脂、環状オレフィン樹脂およびポリエステル樹脂からなる群より選択される少なくとも1種を含む、請求項1〜7のいずれか1項に記載の近赤外線カットフィルタ。
【請求項9】
前記透明樹脂(B)100質量部に対する前記近赤外線吸収色素(A)の割合が0.1〜20質量部である請求項1〜8のいずれか1項に記載の近赤外線カットフィルタ。
【請求項10】
前記選択波長遮蔽層は、屈折率が1.45以上1.55未満の誘電体膜と屈折率が2.2〜2.5の誘電体膜とを交互に積層した誘電体多層膜からなる請求項に記載の近赤外線カットフィルタ。
【請求項11】
下記(iv−1)〜(iv−3)の条件を満たす請求項または10記載の近赤外線カットフィルタ。
(iv−1)420〜620nmの波長域における平均透過率が80%以上。
(iv−2)710〜1100nmの波長域における透過率が2%以下。
(iv−3)600〜700nmの波長域において、主面に直交する方向から入射した光の透過率が20%となる波長の値と、主面に直交する線に対して30度の角度をなす方向から入射した光の透過率が20%となる波長の値の差が3nm以下。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、近赤外線遮蔽効果を有する近赤外線カットフィルタに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、様々な用途に、可視波長領域の光は十分に透過するが、近赤外線波長領域の光は遮蔽する光学フィルタが使用されている。
【0003】
例えば、デジタルスチルカメラ、デジタルビデオ等の撮像装置には、固体撮像素子(CCD、CMOS等)が使用されている。固体撮像素子の感度を人間の視感度に近づけるため、撮像レンズと固体撮像素子との間に光学フィルタを配置している。
【0004】
これらのうちでも撮像装置用の光学フィルタとしては、近赤外線波長領域の光を選択的に吸収するように、フツリン酸塩系ガラスや、リン酸塩系ガラスにCuO等を添加したガラスフィルタが知られている。しかし、光吸収型のガラスフィルタは、高価である上に、薄型化にするとガラスの成分に基づく機能が十分に発揮できないおそれがあり、近年の撮像装置の小型化・薄型化の要求に十分に応えることができないという問題があった。
【0005】
そこで、上記問題を解決すべく、基板上に、例えば酸化シリコン(SiO)層と酸化チタン(TiO)層とを交互に積層し、光の干渉によって近赤外線波長領域の光を反射する反射層と、近赤外線を吸収する色素を含有する樹脂層とを積層した光学フィルタが開発されている(例えば、特許文献1参照)。
【0006】
しかしながら、これら従来の撮像装置用の光学フィルタでは、近赤外線領域の波長の光を遮蔽する性能や、暗部をより明るく撮影するために求められる波長帯(630〜700nm)の透過性が十分でない。さらに、固体撮像素子の機能を阻害させないという層形成上の制約もあるため、十分な近赤外線カットフィルタ機能を有する光学フィルタが得られていないのが現状である。
【0007】
これに対して、特許文献2には、近赤外線吸収色素として、スクアリリウム系色素を使用することが記載されている。特許文献2に記載されている色素は、従来の近赤外線吸収色素に比べると、630〜700nmの透過率が高いものの、その透過率は十分に高いものではなく、また、樹脂に対する溶解性が低いため、近赤外線吸収層を十分に薄型化できない点で問題であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2008−051985号公報
【特許文献2】特開2012−008532号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、近赤外線遮蔽特性に優れる、すなわち透過スペクトルが可視光領域と近赤外線領域の境界付近で急峻な傾斜を有することで可視光透過性と近赤外線遮蔽性をともに高いレベルで備えるとともに、十分な小型化、薄型化ができる近赤外線カットフィルタの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、以下の構成を有する近赤外線カットフィルタを提供する。
[1]下記式(A1)で示される近赤外線吸収色素(A1)から選択される1種以上を含む近赤外線吸収色素(A)と、屈折率が1.45以上の透明樹脂(B)とを含有する近赤外線吸収層を有する近赤外線カットフィルタ。
【化1】
ただし、式(A1)中の記号は以下のとおりである。
Xは、独立して1つ以上の水素原子が炭素数1〜12のアルキル基またはアルコキシ基で置換されていてもよい下記式(1)または式(2)で示される2価の有機基である。
−(CHn1− …(1)
式(1)中n1は、2または3である。
−(CHn2−O−(CHn3− …(2)
式(2)中、n2とn3はそれぞれ独立して0〜2の整数であり、n2+n3は1または2である。
は、独立して飽和環構造を含んでもよく、分岐を有してもよい炭素数1〜12の飽和もしくは不飽和炭化水素基、炭素数3〜12の飽和環状炭化水素基、炭素数6〜12のアリール基または炭素数7〜13のアルアリール基を示す。
およびRは、独立して水素原子、ハロゲン原子、または、炭素数1〜10のアルキル基もしくはアルコキシ基を示す。
は、独立して1つ以上の水素原子がハロゲン原子、水酸基、カルボキシ基、スルホ基、またはシアノ基で置換されていてもよく、炭素原子間に不飽和結合、酸素原子、飽和もしくは不飽和の環構造を含んでよい、少なくとも1以上の分岐を有する炭素数5〜25の炭化水素基である。
【0011】
[2]前記式(A1)中、Xが下記式(3)で示される2価の有機基である[1]記載の近赤外線カットフィルタ。
−CR11−(CR12n4− …(3)
ただし、式(3)は、左側がベンゼン環に結合し右側がNに結合する2価の基を示し、式(3)中、n4は1または2である。
11はそれぞれ独立して、分岐を有してもよい炭素数1〜12のアルキル基またはアルコキシ基であり、R12はそれぞれ独立して、水素原子または、分岐を有してもよい炭素数1〜12のアルキル基またはアルコキシ基である。
[3]前記式(3)において、R11はそれぞれ独立して、分岐を有してもよい炭素数1〜6のアルキル基またはアルコキシ基であり、R12はそれぞれ独立して、水素原子または、分岐を有してもよい炭素数1〜6のアルキル基またはアルコキシ基である[2]記載の近赤外線カットフィルタ。
【0012】
[4]前記式(A1)中Xが下記式(11−1)〜下記式(12−3)で示される2価の有機基のいずれかである[1]記載の近赤外線カットフィルタ。
−C(CH−CH(CH)− …(11−1)
−C(CH−CH− …(11−2)
−C(CH−CH(C)− …(11−3)
−C(CH−CH−CH− …(12−1)
−C(CH−CH−CH(CH)− …(12−2)
−C(CH−CH(CH)−CH− …(12−3)
ただし、式(11−1)〜(12−3)で示される基は、いずれも左側がベンゼン環に結合し右側がNに結合する。
[5]前記式(A1)中、Rが独立して置換基を有しない下記式(4)で示される炭素数5〜25の分枝状の炭化水素基である[1]〜[4]のいずれかに記載の近赤外線カットフィルタ。
−CH3−m13 …(4)
(ただし、式(4)中、mは1、2または3であり、R13はそれぞれ独立して、炭素原子間に不飽和結合、酸素原子、飽和もしくは不飽和の環構造を含んでもよい直鎖状または分枝状の炭化水素基(ただし、mが1のときは分枝状である。)を示し、かつm個のR13の炭素数の合計は4〜24である。)
[6]前記式(A1)におけるRの炭素数は、独立して6〜20である[1]〜[5]のいずれかに記載の近赤外線カットフィルタ。
【0013】
[7]前記近赤外線吸収色素(A)を下記(ii−1)および(ii−2)の条件を満たす含有量で含有する場合に、前記近赤外線吸収層が下記(ii−3)の条件を満たす[1]〜[6]のいずれかに記載の近赤外線カットフィルタ。
(ii−1)650〜800nmの波長域において透過率が1%となる最も短い波長λが、675nm≦λ≦720nm
(ii−2)650〜800nmの波長域において透過率が1%となる最も長い波長λと前記λとの関係が、λ−λ=30nm
(ii−3)650〜800nmの波長域において前記λよりも短波長側で透過率が70%となる波長λと、前記λと、前記透明樹脂(B)の屈折率n(B)との関係が、n(B)×(λ−λ)≦115
【0014】
[8]前記透明樹脂(B)が、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、エン・チオール樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリサルホン樹脂、ポリエーテルサルホン樹脂、ポリパラフェニレン樹脂、ポリアリーレンエーテルフォスフィンオキシド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリオレフィン樹脂、環状オレフィン樹脂およびポリエステル樹脂からなる群より選択される少なくとも1種を含む、[1]〜[7]のいずれかに記載の近赤外線カットフィルタ。
[9]前記透明樹脂(B)100質量部に対する前記近赤外線吸収色素(A)の割合が0.1〜20質量部である[1]〜[8]のいずれかに記載の近赤外線カットフィルタ。
【0015】
[10]前記近赤外線吸収層の片側または両側に、下記(iii−1)および(iii−2)の特性を有する選択波長遮蔽層を有する[1]〜[9]のいずれかに記載の近赤外線カットフィルタ。
(iii−1)420〜695nmの波長域において透過率が90%以上
(iii−2)前記近赤外線吸収層の650〜800nmの波長域における透過率が1%となる最も長い波長λから1100nmまでの波長域において透過率が2%以下
[11]前記選択波長遮蔽層は、屈折率が1.45以上1.55未満の誘電体膜と屈折率が2.2〜2.5の誘電体膜とを交互に積層した誘電体多層膜からなる[10]に記載の近赤外線カットフィルタ。
[12]下記(iv−1)〜(iv−3)の条件を満たす[10]または[11]記載の近赤外線カットフィルタ。
(iv−1)420〜620nmの波長域における平均透過率が80%以上
(iv−2)710〜1100nmの波長域における透過率が2%以下
(iv−3)600〜700nmの波長域において、主面に直交する方向から入射した光の透過率が20%となる波長の値と、主面に直交する線に対して30度の角度をなす方向から入射した光の透過率が20%となる波長の値の差が3nm以下
【発明の効果】
【0016】
本発明の近赤外線カットフィルタは、使用する近赤外線吸収色素が、その光の吸収曲線において可視光領域と近赤外線領域の境界付近の傾斜が急峻であり、かつ樹脂に対する溶解性が高いことから、透明樹脂とともに形成される近赤外線吸収層が薄膜であっても、優れた近赤外線吸収特性を有し、素子を小型化または薄型化できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1A】本発明の実施形態に係る近赤外線カットフィルタの一例を概略的に示す断面図である。
図1B】本発明の実施形態に係る近赤外線カットフィルタの別の一例を概略的に示す断面図である。
図1C】本発明の実施形態に係る近赤外線カットフィルタのさらに別の一例を概略的に示す断面図である。
図2】本発明の実施例と比較例における近赤外線吸収層の透過スペクトルを示す図である。
図3図2の透過スペクトルの近赤外線波長領域を拡大して示す図である。
図4】本発明の実施形態に係る近赤外線吸収層と組合せて用いる誘電体多層膜(選択波長遮蔽層)の透過スペクトルを示す図である。
図5】本発明の実施形態に係る近赤外線吸収層と組合せて用いる誘電体多層膜(反射防止層)の透過スペクトルを示す図である。
図6】本発明の実施例の近赤外線カットフィルタの入射角0度、30度および40度の透過スペクトルにおける近赤外線波長領域を拡大して示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に本発明の実施の形態を説明する。なお、本発明は、下記説明に限定して解釈されるものではない。
本発明の近赤外線カットフィルタ(以下、本フィルタという)は、近赤外線吸収色素(A)と透明樹脂(B)とを含有する近赤外線吸収層を有する。本発明における近赤外線吸収層は透明樹脂(B)を主体とする樹脂層であり、近赤外線吸収色素(A)は該樹脂層中に分散された状態で存在する。前記色素(A)は、上記式(A1)で示される色素(以下、色素(A1)と略する)から選択される1種以上を含み、前記透明樹脂(B)の屈折率が1.45以上である。
ここで、本明細書においては、特に断りのない限り、屈折率とは、20℃において波長589nmにおける屈折率(以下、ndともいう)をいう。
【0019】
本フィルタは、近赤外線吸収層が単独であるいは他の選択波長遮蔽部材と組合せて用いた際に、良好な近赤外線遮蔽機能を有し、かつ撮像装置の十分な小型化、薄型化、低コスト化を達成できる。
なお、近赤外線吸収層が良好な近赤外線遮蔽機能を有するとは、光の吸収曲線において可視光領域と近赤外線領域の境界付近(波長630〜700nm)の傾斜が急峻であり、かつ近赤外線吸収波長域が広く、他の選択波長遮蔽部材と組合せて用いた場合に吸収が十分でない波長域が出現することが殆どないことをいう。
【0020】
近赤外線カットフィルタ(以下、NIRフィルタという)には、一般に、700nm以上の赤外領域の光を精度よく遮蔽でき、遮蔽する波長域も広く選択できる性能を有する選択波長遮蔽部材が使用されている。選択波長遮蔽部材としては、屈折率が異なる誘電体膜を交互に積層した誘電体多層膜が広く使用されている。誘電体多層膜は、光の入射角により吸収波長がシフトし角度依存性を有する。
【0021】
本フィルタにおいては、色素(A)による吸収のため、誘電体多層膜を有しても、角度依存性による影響を小さくでき、必要な波長域の光を十分に吸収できる。また、透過スペクトルにおいて、可視光領域の透過率を高く維持しつつ、可視光領域と近赤外線領域の境界付近の傾斜が急峻なためスペクトルの傾斜波長領域の透過率を高く維持できる。さらに、耐熱性の高い色素(A)を使用することで熱信頼性の高いNIRフィルタが得られる。
【0022】
(近赤外線吸収色素(A1))
本フィルタに使用する下記式(A1)で示される色素(A1)について説明する。本明細書において、式(1)で示される基を基(1)と略し、他の基についても同様とする。
【0023】
【化2】
【0024】
ただし、式(A1)中の記号は以下のとおりである。
Xは、独立して1つ以上の水素原子が炭素数1〜12のアルキル基またはアルコキシ基で置換されていてもよい下記式(1)または式(2)で示される2価の有機基である。
−(CHn1− …(1)
式(1)中n1は、2または3である。
−(CHn2−O−(CHn3− …(2)
式(2)中、n2とn3はそれぞれ独立して0〜2の整数であり、n2+n3は1または2である。
は、独立して飽和環構造を含んでもよく、分岐を有してもよい炭素数1〜12の飽和もしくは不飽和炭化水素基、炭素数3〜12の飽和環状炭化水素基、炭素数6〜12のアリール基または炭素数7〜13のアルアリール基を示す。
およびRは、独立して水素原子、ハロゲン原子、または、炭素数1〜10のアルキル基もしくはアルコキシ基を示す。
は、独立して1つ以上の水素原子がハロゲン原子、水酸基、カルボキシ基、スルホ基、またはシアノ基で置換されていてもよく、炭素原子間に不飽和結合、酸素原子、飽和もしくは不飽和の環構造を含んでよい、少なくとも1以上の分岐を有する炭素数5〜25の炭化水素基である。
【0025】
なお、本明細書において、飽和もしくは不飽和の環構造とは、炭化水素環および環構成原子として酸素原子を有するヘテロ環をいう。さらに、環を構成する炭素原子に炭素数1〜10のアルキル基が結合した構造もその範疇に含むものとする。
また、本明細書において、アリール基は芳香族化合物が有する芳香環、例えば、ベンゼン環、ナフタレン環、ビフェニル、フラン環、チオフェン環、ピロール環等を構成する炭素原子を介して結合する基をいう。アルアリール基は、1以上のアリール基で置換された、飽和環構造を含んでもよい直鎖状もしくは分枝状の飽和もしくは不飽和炭化水素基または飽和環状炭化水素基をいう。
【0026】
色素(A1)は、分子構造の中央にスクアリリウム骨格を有し、スクアリリウム骨格の左右に各1個のベンゼン環が結合し、その各ベンゼン環は4位で窒素原子と結合し該窒素原子とベンゼン環の4位と5位の炭素原子を含む複素環が形成された縮合環構造を左右に1個ずつ有する。さらに、色素(A1)は、左右に各1個のベンゼン環の2位でそれぞれ−NHC(=O)Rと結合する。
【0027】
色素(A1)において、左右に1個ずつ存在する縮合環構造を構成するベンゼン環以外の環の構成は、上記Xにより決定され、それぞれ独立して員数が5または6の複素環である。前記複素環の一部を構成する2価の基Xは、上記式(1)で示されるように骨格が炭素原子のみで構成されてもよく、上記式(2)で示されるように炭素原子以外に酸素原子を含んでもよい。式(2)において、酸素原子の位置は、特に制限されない。すなわち、窒素原子と酸素原子が結合してもよく、ベンゼン環に酸素原子が直接結合してもよい。また、炭素原子に挟まれるように酸素原子が位置してもよい。
【0028】
なお、色素(A1)中、左右のXは同一であっても異なってもよいが、生産性の観点から同一が好ましい。またR〜Rについても、スクアリリウム骨格を挟んで左右で同一であっても異なってもよいが、生産性の観点から同一が好ましい。
【0029】
色素(A1)は上記構造を有しており、有機溶媒や屈折率1.45以上の透明樹脂(B)に対する溶解性が高い。これにより、近赤外線吸収層が薄膜であっても優れた近赤外線吸収特性を有し、素子を小型化または薄型化できる。また、透明樹脂(B)に溶かした場合に、可視光領域と近赤外線領域の境界付近の光の吸収曲線の傾斜が急峻となる近赤外線吸収特性を有する。これにより、色素(A1)と透明樹脂(B)を含有する近赤外線吸収層は、高い可視光透過率を示し、近赤外線吸収波長域の吸収幅を広く確保できる。
【0030】
化合物は一般に有機溶媒への溶解性が高いほど、樹脂への相溶性が高くなる。すなわち、色素(A1)の有機溶媒への溶解性が高いほど、透明樹脂(B)への相溶性が高くなる。その結果、近赤外線吸収層を薄くしても、誘電体多層膜を組み合わせた際に誘電体多層膜の有する角度依存性を十分に排除できる。さらに、溶媒の選択幅が広がると、コーティング条件の調整が容易になるという製造上の利点を有する。
【0031】
色素(A1)は、耐熱性にも優れる。近赤外線吸収層と他の選択波長遮蔽部材とを組合せて、本フィルタを製造する場合、透明樹脂(B)の成膜または、選択波長遮蔽層の形成において熱処理が施される場合がある。色素(A1)は耐熱性を有するため、熱処理による色素(A1)の性能低下はほとんどなく、製造上有利である。それにより、近赤外線吸収層と組合せて使用する選択波長遮蔽層の種類の自由度が増し、高性能の光学フィルタの製造が可能となる。
【0032】
色素(A1)のXは、下記式(3)で示される2価の有機基が好ましい。
−CR11−(CR12n4− …(3)
ただし、式(3)は、左側がベンゼン環に結合し右側がNに結合する2価の基を示す。式(3)中、n4は1または2であり、n4は1が好ましい。また、R11はそれぞれ独立して、分岐を有してもよい炭素数1〜12のアルキル基またはアルコキシ基であり、炭素数1〜6の分岐を有してもよいアルキル基またはアルコキシ基が好ましい。さらに、R12はそれぞれ独立して、水素原子または、分岐を有してもよい炭素数1〜12のアルキル基またはアルコキシ基であり、水素原子または、炭素数1〜6の分岐を有してもよいアルキル基またはアルコキシ基が好ましい。
【0033】
式(A1)におけるXとしては、下記式(11−1)〜(12−3)で示される2価の有機基のいずれかであることが特に好ましい。ただし、式(11−1)〜(12−3)は、左側がベンゼン環に結合し右側がNに結合する2価の基を示す。
−C(CH−CH(CH)− …(11−1)
−C(CH−CH− …(11−2)
−C(CH−CH(C)− …(11−3)
−C(CH−CH−CH− …(12−1)
−C(CH−CH−CH(CH)− …(12−2)
−C(CH−CH(CH)−CH− …(12−3)
【0034】
これらのうちでも、式(A1)におけるXとしては、基(11−1)〜(11−3)のいずれかが好ましく、基(11−1)がより好ましい。
以下に、Xが左右ともに基(11−1)である色素(A11)および、基(12−1)である色素(A12)の構造式を示す。なお、色素(A11)、(A12)中、R〜Rは色素(A1)におけるのと同じ意味である。
【0035】
【化3】
【0036】
【化4】
【0037】
色素(A1)中、Rは、耐熱性と信頼性向上の観点から、独立して分岐を有してもよい炭素数1〜12のアルキル基またはアルコキシ基が好ましく、分岐を有してもよい炭素数1〜6のアルキル基またはアルコキシ基がより好ましい。透明樹脂への溶解性を高めるため、分岐を有する炭素数1〜6のアルキル基がさらに好ましい。
また、色素(A1)中、RおよびRは、独立して、水素原子、ハロゲン原子または、炭素数1〜6のアルキル基もしくはアルコキシ基が好ましい。RおよびRは、いずれも水素原子がより好ましい。
【0038】
色素(A1)中のRは、下記式(4)で示される炭素数5〜25の分枝状の炭化水素基が好ましい。
−CH3−m13 …(4)
ただし、式(4)中、mは1、2または3であり、R13はそれぞれ独立して、炭素原子間に不飽和結合、酸素原子、飽和もしくは不飽和の環構造を含んでもよい直鎖状または分枝状の炭化水素基(ただし、mが1のときは分枝状である。)を示し、かつm個のR13の炭素数の合計は4〜24である。透明樹脂への溶解性の観点から、mは2または3が好ましい。
【0039】
13が有してもよい飽和環構造としては、炭素数4〜14の環状エーテル、シクロアルカン、アダマンタン環、ジアダマンタン環等が挙げられる。また、不飽和環構造としてはベンゼン、トルエン、キシレン、フラン、ベンゾフラン等が挙げられる。環構造を有する場合、R13の炭素数は環の炭素数を含む数で示される。
【0040】
また、Rは、有機溶媒および透明樹脂(B)への溶解性の観点から独立して置換基を有しない炭素数6〜20の分枝状の炭化水素基が好ましい。Rの炭素数はより好ましくは6〜17であり、さらに好ましいのは6〜14である。
【0041】
が、m=1の基(4)である場合、R13は炭素原子間に不飽和結合、酸素原子、飽和もしくは不飽和の環構造を含んでもよい炭素数4〜24の分枝状の炭化水素基である。R13は酸素原子、飽和もしくは不飽和の環構造を含んでもよい飽和炭化水素基が好ましい。R13の炭素数は、有機溶媒および透明樹脂(B)への溶解性向上の観点から、5〜19が好ましく、5〜16がより好ましく、5〜13が特に好ましい。
【0042】
mが1の場合の分枝状のR13(以下、必要に応じて分枝状のR13を「R13b」と記す。)として、具体的には、主鎖の炭素数が4〜23であり、側鎖に1〜5個のメチル基またはエチル基、好ましくはメチル基を有するR13bが挙げられる。側鎖の数は、末端以外は1個の炭素原子につき1個が好ましい。R13bの末端は−C(CHが好ましい。R13bとしては、1−メチルプロピル基、2−メチルプロピル基、1,1−ジメチルエチル基、1−メチルブチル基、2−メチルブチル基、1,3,3−トリメチルブチル基、1,2,2−トリメチルブチル基、3,5,5−トリメチルヘキシル基等が好ましい。これらのなかでも、1,3,3−トリメチルブチル基、2−メチルプロピル基がより好ましく、2−メチルプロピル基が特に好ましい。
【0043】
13bが酸素原子や飽和もしくは不飽和の環構造を含む基として、具体的には、上に例示したR13bの主鎖の炭素原子間に酸素原子または環構造を含む基、主鎖の炭素原子間に酸素原子および環構造の両方を含む基等が挙げられる。R13bが酸素原子および環構造を共に有する場合、それぞれが別の炭素原子間に存在してもよく、例えば、−O−Ph−(ただし、Phはベンゼン環を示す。)のように連続して存在してもよい。
【0044】
が、m=2の基(4)である場合、2個のR13は、それぞれ独立して、不飽和結合、酸素原子、飽和もしくは不飽和の環構造を含んでもよい炭素数1〜23の直鎖状または分枝状の炭化水素基であり、2個のR13の合計炭素数は4〜24である。R13は、酸素原子、飽和もしくは不飽和の環構造を含んでもよい飽和炭化水素基が好ましく、その炭素数は、1〜18が好ましく、1〜10がより好ましい。2個のR13の合計炭素数は5〜19が好ましく、5〜16がより好ましく、5〜13が特に好ましい。
【0045】
基(4)において、mが2の場合、具体的には、2個のR13がいずれも直鎖状の飽和炭化水素基である下記式(31−a)で示される基(31−a)、一方が直鎖状であり他方が分枝状のいずれも飽和炭化水素基である基(31−b)、両方が分枝状の飽和炭化水素基である基(31−c)が挙げられる。いずれの場合も、mが1の場合に説明したのと同様に炭素原子間に酸素原子や飽和もしくは不飽和の環構造を含んでもよい。
【0046】
【化5】
【0047】
式(31−a)中、k1、k2は独立して0〜22であり、k1+k2=2〜22である。k1、k2は同じであっても異なってもよい。k1、k2はそれぞれ0〜14が好ましく、1〜10がより好ましい。また、k1+k2=3〜14が好ましく、3〜10がより好ましい。
【0048】
基(31−b)としては、一方のR13が直鎖状であって−(CHk3−CH(k3=0〜20)で示され、他方のR13が分枝状であって、その炭素数が3〜23であり、2個のR13の炭素数の合計が4〜24の基が挙げられる。
【0049】
基(31−b)において、直鎖状のR13を示す−(CHk3−CHの、k3は1〜10が好ましく、2〜8がより好ましい。
分枝状のR13bとしては、例えば、主鎖の炭素数が2〜7であり、側鎖に1〜5個のメチル基またはエチル基、好ましくはメチル基を有するR13bが挙げられる。側鎖の数は、末端以外は1個の炭素原子につき1個が好ましい。R13bの末端は−C(CHが好ましい。R13bとして具体的には、1−メチルエチル基、1−メチルプロピル基、2−メチルプロピル基、1,1−ジメチルエチル基、1−メチルブチル基、2−メチルブチル基、1,3,3−トリメチルブチル基、1,2,2−トリメチルブチル基、3,5,5−トリメチルヘキシル基等が好ましい。
【0050】
基(31−b)における、直鎖状のR13と分枝状のR13bの好ましい組み合わせとしては、−(CHk3−CH(k3=1〜10)と、3,5,5−トリメチルヘキシル基および1,3,3−トリメチルブチル基から選ばれる1種との組み合わせが挙げられる。
【0051】
基(31−c)としては、基(31−b)で上に説明した分枝状のR13bを2個有する基が挙げられる。2個のR13bの好ましい組み合わせとしては、1−メチルブチル基、2−メチルブチル基、1,3,3−トリメチルブチル基および3,5,5−トリメチルヘキシル基から選ばれる2種の組み合わせが挙げられる。
【0052】
が、m=3の基(4)である場合、3個のR13は、それぞれ独立して、酸素原子、飽和もしくは不飽和の環構造を含んでもよい、炭素数1〜22の直鎖状または分枝状の飽和炭化水素基であって、3個のR13の合計炭素数が4〜24である。この場合、R13の炭素数は1〜14が好ましく、3個のR13の合計炭素数が5〜18であることが好ましい。
【0053】
基(4)において、mが3の場合、具体的には、3個のR13がいずれも直鎖状の飽和炭化水素基である下記式(32−a)で示される基(32−a)、2個が直鎖状であり1個が分枝状のいずれも飽和炭化水素基である基(32−b)、1個が直鎖状であり2個が分枝状のいずれも飽和炭化水素基である基(32−c)、3個が分枝状の飽和炭化水素基である基(32−d)が挙げられる。いずれの場合も、mが1の場合に説明したのと同様に炭素原子間に酸素原子や飽和もしくは不飽和の環構造を含んでもよい。
【0054】
【化6】
【0055】
式(32−a)中、k4〜k6は独立して0〜21であり、k4+k5+k6=1〜21である。k4〜k6は同じであっても異なってもよい。k5およびk6がいずれも0の場合、有機溶媒および樹脂への溶解性を高めるため、k4は2〜21が好ましい。また、k5およびk6がいずれも1以上の場合、有機溶媒および樹脂への溶解性を高めるため、k4は1〜10で、かつk4≠k5≠k6として、対称性を低くすることが好ましい。
【0056】
基(32−a)としては、k5およびk6がいずれも0でありk4が2〜13である基が好ましい。また、その場合の−(CHk4−CHは、末端が−CHの代わりに−O−Ph(CH)−CHである基であってもよい。
【0057】
基(32−b)、基(32−c)における直鎖状のR13は、基(32−a)における−(CHk4−CH(k4=0〜19)と同様とできる。基(32−b)、基(32−c)、基(32−d)における分枝状のR31bとしては、基(31−b)で上に説明した分枝状のR31bと同様にできる。
【0058】
色素(A1)中のRとしては、基(4)のうちでも、m=1の基として下記式(1a)、(1b)で示される基が、m=2の基として下記式(2a)〜(2e)で示される基が、m=3の基として下記式(3a)〜(3e)で示される基が好ましい。これらのなかでも、基(1b)、(2a)〜(2e)、(3b)が特に好ましい。
【0059】
【化7】
【化8】
【0060】
色素(A1)は、従来公知の方法、例えば、米国特許第5,543,086号明細書に記載された方法で製造可能である。具体的には、色素(A1)は、3,4−ジヒドロキシ−3−シクロブテン−1,2−ジオン(以下、スクアリン酸ともいう)と、スクアリン酸と結合して式(A1)に示す構造を形成可能な縮合環を有する化合物とを反応させることで製造できる。例えば、色素(A1)が左右対称の構造である場合には、スクアリン酸1当量に対して上記範囲で所望の構造の縮合環を有する化合物2当量を反応させればよい。
【0061】
以下に、具体例として、色素(A11)を得る際の反応経路を示す。下記反応式(F1)においてスクアリン酸を(s)で示す。反応式(F1)によれば、インドール骨格に所望の置換基(R〜R)を有する化合物(d)の、ベンゼン環にアミノ基を導入し(f)、さらに所望の置換基Rを有するカルボン酸塩化物(g)を反応させてアミド化合物(h)を得る。スクアリン酸(s)1当量に対し、アミド化合物(h)2当量を反応させて、色素(A11)を得る。
【0062】
【化9】
反応式(F1)中、R〜Rは、式(A1)におけるのと同じ意味であり、Meはメチル基、THFはテトラヒドロフランを示す。以下、本明細書中、Me、THFは前記と同じ意味で用いられる。
【0063】
本発明においては、色素(A1)として、上記式(A1)で表される色素から選ばれる1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。また、近赤外線域において光の吸収曲線の急峻性の効果を損なわない範囲であれば、必要に応じて色素(A1)とともに、それ以外の近赤外吸収色素を用いることも可能である。色素(A)は、実質的に、色素(A1)のみで構成されることが好ましく、色素(A1)の1種を単独で使用することがより好ましい。
【0064】
(透明樹脂(B))
本フィルタに使用する近赤外線吸収層は、前記色素(A)と屈折率1.45以上の透明樹脂(B)とを含有する。透明樹脂(B)の屈折率は、1.5以上が好ましく、1.6以上がより好ましい。透明樹脂(B)の屈折率の上限は特にないが、入手のしやすさ等から1.72程度が挙げられる。
【0065】
また、透明樹脂(B)のガラス転移温度(Tg)は、0〜380℃が好ましく、40〜370℃がより好ましく、100℃〜360℃がさらに好ましい。透明樹脂(B)のガラス転移温度(Tg)が上記範囲内であれば、上記範囲では熱による劣化や変形が抑制できる。
【0066】
透明樹脂(B)としては、屈折率が1.45以上の透明樹脂であれば、特に制限されない。具体的には、屈折率が1.45以上のアクリル樹脂、エポキシ樹脂、エン・チオール樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリサルホン樹脂、ポリエーテルサルホン樹脂、ポリパラフェニレン樹脂、ポリアリーレンエーテルフォスフィンオキシド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリオレフィン樹脂、環状オレフィン樹脂、ポリエステル樹脂が挙げられる。透明樹脂全体として屈折率が1.45以上であれば、これらの樹脂から1種を単独で使用してもよく、2種以上を混合して使用してもよい。
【0067】
上記のなかでも、色素(A1)の透明樹脂(B)に対する溶解性と透明性の観点から、透明樹脂は、アクリル樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、エン・チオール樹脂、エポキシ樹脂、または環状オレフィン樹脂が好ましい。ポリエステル樹脂としては、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンナフタレート樹脂等が好ましい。透明樹脂は、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、または環状オレフィン樹脂がより好ましい。また、耐熱性が求められる用途ではTgが高いポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂が好ましい。
【0068】
透明樹脂(B)は、屈折率が1.45以上であれば、複数の異なるポリマーを組み合わせたポリマーアロイであってもよい。
【0069】
透明樹脂(B)は、原料成分の分子構造を調整する等により、屈折率を上記範囲に調整して使用できる。具体的には、原料成分のポリマーの主鎖や側鎖に特定の構造を有することが挙げられる。ポリマー内に有する構造は特に限定されないが、例えば、下記式(B1)で示されるフルオレン骨格が挙げられる。なお、フルオレン骨格のうちでも、より高い屈折率および耐熱性が得られる点で、下記式(B2)で示される9,9−ビスフェニルフルオレン骨格が好ましい。
【0070】
透明樹脂(B)としては市販品を用いてもよい。透明樹脂(B)は、屈折率1.45以上であり、100℃以上の蒸着温度で行う高温蒸着により誘電体多層膜を形成する際、樹脂の熱劣化、変形が伴わない樹脂が好ましい。また、150℃以上の加工成形で色素の劣化が生じない樹脂が好ましい。このような、アクリル樹脂として、具体的にはオグソールEA−F5003(商品名、大阪ガスケミカル社製、屈折率:1.60)を硬化させた樹脂や、BR50(屈折率:1.56)およびBR52(商品名、三菱レーヨン社製)のような熱可塑性アクリル樹脂が挙げられる。
【0071】
また、ポリエステル樹脂の市販品としては、OKPH4HT(屈折率:1.64)、OKPH4(屈折率:1.61)、B−OKP2(屈折率:1.64)、いずれも大坂ガスケミカル社製やバイロン103(東洋紡社製、屈折率:1.55)、ポリカーボネート樹脂としてLeXanML9103(sabic社製、屈折率1.59)、SP3810(帝人化成社製、屈折率1.63)、SP1516(帝人化成社製、屈折率1.60)、TS2020(帝人化成社製、屈折率1.59)、EP5000(三菱ガス化学社製、屈折率1.63)、パンライトAM−8シリーズ(帝人化成社製)が挙げられる。ポリマーアロイとしてはポリカーボネートとポリエステルのアロイとしてxylex 7507(sabic社製)が挙げられる。
【0072】
またTgが高い環状オレフィンポリマーを用いてもよい。市販品としてはARTON(商品名、JSR社製、屈折率1.51、Tg165℃)、ZEONEX(商品名、日本ゼオン社製、屈折率1.53、Tg138℃)が挙げられる。
【0073】
【化10】
【0074】
前記フルオレン骨格や9,9−ビスフェニルフルオレン骨格を有する樹脂としては、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエーテル樹脂およびポリエステル樹脂が好ましい。また、共重合により、上記フルオレン骨格をこれらの樹脂に含有させてもよい。耐熱性、入手の容易さ、透明性の観点からポリカーボネート樹脂およびポリエステル樹脂が特に好ましい。
【0075】
フルオレン骨格を有するアクリル樹脂としては、例えば、少なくとも、9,9−ビスフェニルフルオレンの2個のフェニル基に、末端に(メタ)アクリロイル基を有する置換基を各1個導入した9,9−ビスフェニルフルオレン誘導体を含む原料成分を重合させて得られるアクリル樹脂が挙げられる。なお、本明細書における「(メタ)アクリロイル…」とは、「メタクリロイル…」と「アクリロイル…」の総称である。
【0076】
また、前記(メタ)アクリロイル基を有する9,9−ビスフェニルフルオレン誘導体に水酸基を導入した化合物と、ウレタン(メタ)アクリレート化合物を重合させて得られるアクリル樹脂を用いてもよい。ウレタン(メタ)アクリレート化合物としては、水酸基を有する(メタ)アクリレート化合物とポリイソシアネート化合物の反応生成物として得られる化合物や、水酸基を有する(メタ)アクリレート化合物とポリイソシアネート化合物とポリオール化合物の反応生成物として得られる化合物が挙げられる。
【0077】
フルオレン骨格が導入されたポリエステル樹脂としては、例えば、下記式(B2−1)に示される9,9−ビスフェニルフルオレン誘導体が芳香族ジオールとして導入されたポリエステル樹脂が挙げられる。この場合、上記芳香族ジオールと反応させるジカルボン酸の種類は特に制限されない。このようなポリエステル樹脂は、屈折率値や可視光領域における透明性の点から透明樹脂(B)として好適に用いられる。
【0078】
【化11】
(ただし、式(B2−1)中、R41は炭素数が2〜4のアルキレン基、R42、R43、R44およびR45は、各々独立に水素原子、炭素数が1〜7の飽和炭化水素基、または炭素数が6〜7のアリール基を表す。)
【0079】
(近赤外線吸収層)
本フィルタが有する近赤外線吸収層は、色素(A)と屈折率が1.45以上の透明樹脂(B)を含有する層であり、色素(A)は、1以上の色素(A1)を含有する。
【0080】
本フィルタが有する好ましい近赤外線吸収層は、下記条件を満たす色素(A)と透明樹脂(B)を含有する。すなわち、近赤外線吸収層において、色素(A)を下記条件(ii−1)および(ii−2)を満たす量で含有した場合に、前記近赤外線吸収層の透過率が、下記条件(ii−3)を満たすことが好ましい。
(ii−1)650〜800nmの波長域において透過率が1%となる最も短い波長λが、675nm≦λ≦720nm
(ii−2)650〜800nmの波長域において透過率が1%となる最も長い波長λと前記λとの関係が、λ−λ=30nm
(ii−3)650〜800nmの波長域において前記λよりも短波長側で透過率が70%となる波長λと、上記λと、上記透明樹脂(B)の屈折率n(B)との関係が、n(B)×(λ−λ)≦115
【0081】
なお、上記(ii−1)におけるλの波長範囲は、680nm≦λ≦720nmが好ましい。
【0082】
また、近赤外線吸収層の透過率は、紫外可視分光光度計を用いて測定できる。例えば、ガラス基板上に近赤外線吸収層を有する場合、前記透過率は、ガラス基板のみの透過率を減じて算出する。なお、近赤外線吸収層の光の透過率は、特に断りのない限り、検体の主面に直交する方向から入射した光に対してその光が検体内部を直進して反対側に透過した割合をいう。また、光の透過率の測定において検体の主面に直交する方向以外の方向から光を入射させて透過率を測定する場合、主面に直交する線に対して光が入射する方向を示す直線のなす角度を入射角という。
【0083】
色素(A)を条件(ii−1)および(ii−2)を満たす量で含有するように近赤外線吸収層を作製した場合に、該層に条件(ii−3)を満足させることができる色素(A)が、NIRフィルタに好適な色素である。すなわち、上記条件を満たす色素(A)を含有する近赤外線吸収層と選択波長遮蔽部材、特に、誘電体多層膜とを組合せて使用すれば、誘電体多層膜の有する角度依存性を十分に排除できるため好ましい。また、デジタルスチルカメラやデジタルビデオ等のNIRフィルタとして用いた場合に、近赤外線波長領域の光を遮蔽しつつ可視光波長域の光の利用効率を向上できるため好ましい。そのため、暗部撮像でのノイズ抑制の点で有利となる。
【0084】
条件(ii−3)において、n(B)×(λ−λ)により算出される値(以下、この値を「I値」と示すこともある。)は、近赤外線吸収層の透過スペクトルについて、可視光領域と近赤外線領域の境界付近おける吸収曲線の急峻性を示す指標となる値である。この値が115以下であれば、近赤外線吸収層について可視光領域と近赤外線領域の境界付近の吸収曲線は急峻であり、NIRフィルタに好適といえる。
【0085】
すなわち、近赤外線吸収層の透過スペクトルについて、650〜800nmにおいて透過率が1%となる最も短い波長λと、λよりも短波長側で透過率が70%となる波長λとの差(λ−λ)が小さくなるほど、可視光領域と近赤外線領域の境界付近の吸収曲線は急峻になる。ここで、λ−λは、透過率が1%以下の波長幅(λ−λ;λは650〜800nmの波長域において透過率が1%となる最も長い波長)にも依存する。そのため、近赤外線吸収層の透過スペクトルの上記領域の吸収曲線の急峻性を比較評価するために、λ−λを30nmと固定している。すなわち、本フィルタが有する近赤外線吸収層のλ−λは30nmに限定されない。
【0086】
また、I値においては、近赤外線吸収層が含有する透明樹脂(B)の屈折率n(B)を係数として(λ−λ)に掛けている。これは、樹脂間の急峻性の違いを規格化するためである。
【0087】
図2および図3により近赤外線吸収層の透過スペクトルを具体的に説明する。図2の実線は、実施例(例7)の色素(A11−7)とポリエステル樹脂(屈折率1.64)からなる近赤外線吸収層の波長域340〜800nmの透過スペクトルを示す。図3の実線は、図2に示す透過スペクトルの600〜740nmの拡大図である。図2および図3に示されるように、該近赤外線吸収層の透過スペクトルにおいて、650〜800nmの波長域で透過率が1%となる最も短い波長λa−7(例7の場合のλをλa−7と示す。以下、λ、λ、Iについても同様である。)は700nmであり、該透過スペクトルにおいて650〜800nmの波長域で透過率が1%となる最も長い波長λb−7は730nmであり、その差λb−7−λa−7は30nmである。また、λa−7よりも短波長側で透過率が70%となる波長λc−7は636nmであり、その差λa−7−λc−7は64nmであり、これと上記屈折率(n(B))1.64から算出されるIs−7値は、105.0である。
【0088】
一方、図2および図3において、破線は比較例(例76)の色素(A11−20)とポリエステル樹脂(屈折率1.64)からなる近赤外線吸収層の透過スペクトルを示す。この場合、λa−76が694nm、λb−76が724nm、λc−76が619nmであり、λb−76−λa−76=30nm、λa−76−λc−76=75nmであって、Is−76値は、123.0である。
【0089】
条件(ii−3)において、近赤外線吸収層の透過スペクトルについて可視光領域と近赤外線領域の境界付近における光の吸収曲線の傾斜の急峻性を高めるため、n(B)×(λ−λ)は、110以下がより好ましい。
【0090】
近赤外線吸収層の膜厚は、特に限定されるものではなく、用途、すなわち使用する装置内の配置スペースや要求される吸収特性等に応じて適宜定められる。前記膜厚は、0.1〜100μmが好ましい。膜厚が0.1μm未満では、近赤外線吸収能を十分に発現できないおそれがある。また、膜厚が100μm超では膜の平坦性が低下し、吸収率のバラツキが生じるおそれがある。膜厚は、0.5〜50μmがより好ましい。この範囲にあれば、十分な近赤外線吸収能と膜厚の平坦性を両立できる。
【0091】
色素(A)の透明樹脂(B)に対する溶解性が高いほど、近赤外線吸収層を薄くしても所望の光学特性を維持できる。すなわち、溶解性が高いほど近赤外線吸収層の膜厚の設計自由度が高まる。ここで、色素(A1)は、透明樹脂(B)に対する溶解性が高いため、色素(A1)の含有量が大きくなると、色素(A)の透明樹脂(B)への溶解性が高くなる。近赤外線吸収層における色素(A1)の含有量は、透明樹脂(B)100質量部に対して、0.1〜20質量部が好ましく、1〜15質量部がより好ましい。
【0092】
近赤外線吸収層は、色素(A)および透明樹脂(B)以外に、本発明の効果を阻害しない範囲で必要に応じて、通常、近赤外線吸収層が含有する各種任意成分を含有してもよい。任意成分として、具体的には、近赤外線ないし赤外線吸収剤、色調補正色素、紫外線吸収剤、レベリング剤、帯電防止剤、熱安定剤、光安定剤、酸化防止剤、分散剤、難燃剤、滑剤、可塑剤等が挙げられる。近赤外線吸収層における、これら任意成分の含有量は、透明樹脂(B)100質量部に対して、それぞれ15質量部以下が好ましい。より好ましくは0.01〜10質量部、さらに好ましくは0.05〜5質量部である。
【0093】
前記光安定化剤は、光による色素や透明樹脂の劣化を抑制する機能を有する材料からなり、上記近赤外線吸収層において色素(A)や透明樹脂(B)の劣化を抑制するために含有することが好ましい任意成分である。光安定化剤として、具体的には、重金属不活性剤、紫外線吸収剤、およびクエンチャー等が挙げられる。
【0094】
前記重金属不活性剤とは、金属イオンをキレートで安定化し、光照射による前記金属イオンからのラジカルの生成を抑制する材料である。上記近赤外線吸収層において、例えば、透明樹脂(B)とともに持ち込まれる金属イオンからラジカルが生成すればこれにより色素(A)や透明樹脂(B)が劣化されるおそれがあり、該劣化を抑制するために前記重金属不活性剤は任意成分として含有される。重金属不活性剤として、具体的には、ヒドラジド系、アミド系の化合物が挙げられる。
【0095】
前記紫外線吸収剤は、最大吸収波長が400nm以下の紫外線領域にあり、熱や光に対して安定な材料が好ましい。一般に、樹脂や有機化合物の色素は、紫外線によって劣化しやすい。そのため、色素(A)や透明樹脂(B)の紫外線による劣化を抑制する観点から、上記近赤外線吸収層において紫外線吸収剤の含有は好ましい。紫外線吸収剤としては、例えば、ベンゾトリアゾール系、ベンゾフェノン系、サリシレート系、シアノアクリレート系、トリアジン系、オキザニリド系、ニッケル錯塩系、または無機系の化合物が好ましく挙げられる。前記無機系の紫外線吸収剤としては、例えば、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化セリウム、酸化ジルコニウム、マイカ、カオリン、セリサイト等の微粒子が挙げられる。
【0096】
前記ベンゾトリアゾール系の化合物としては、TINUVIN 928(Ciba社製)等が挙げられる。
前記トリアジン系の化合物としては、例えば、TINUVIN 400(Ciba社製)、TINUVIN 405(Ciba社製)、TINUVIN 460(Ciba社製)、または、TINUVIN 479(Ciba社製)が挙げられる。
【0097】
前記クエンチャーは、光照射により生じる1重項酸素を補足する化合物であり、有機金属錯体やアミン系化合物等が挙げられる。上記近赤外線吸収層がクエンチャーを含有すれば、1重項酸素による色素(A)や透明樹脂(B)の劣化を抑制できるため好ましい。
前記クエンチャーの有機金属錯体としては、ニッケル錯体化合物、銅錯体化合物コバルト錯体化合物および亜鉛錯体化合物等が挙げられる。
ニッケル錯体化合物としては、例えば、ニッケルビス(オクチルフェニル)サルファイド、ニッケルコンプレクス−3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジルリン酸モノエチラート、ニッケルジブチルジチオカーバメートが挙げられる。
亜鉛錯体化合物としては、例えば、Zn(II)ビス(ジイソプロプルジチオカルバメート)が挙げられる。
【0098】
前記クエンチャーの有機金属錯体としては、下記式(X1)で示されるベンゼンジチオールの金属錯体が好ましく挙げられる。
【0099】
【化12】
【0100】
上記式(X1)において、Mは遷移金属であり、Aは第4級アンモニウムカチオン、もしくは第4級ホスホニウムカチオンであり、R51〜R58はそれぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜6のアルキル基または−SOである。
遷移金属としては、例えば、ニッケル、コバルト、銅が挙げられる。
の第4級アンモニウムカチオンとしては、テトラエチルアンモニウムカチオンおよびテトラブチルアンモニウムカチオン等が挙げられる。Aの第4級ホスホニウムカチオンとしては、テトラエチルホスホニウムカチオン、テトラブチルホスホニウムカチオン等が挙げられる。
前記−SOのRとしては、下記式(Y1)〜(Y7)で示される1価の基、およびフェニル基から選ばれる基が挙げられる。
【0101】
【化13】
【0102】
上記式(Y1)〜(Y7)において、R61はそれぞれ独立に炭素数1〜4のアルキル基、炭素数6〜10のアリール基、またはヘテロ原子として窒素原子を含む環員数5〜7の1価複素環基(ピリミジル基等)である。nは、3〜5の整数である。Zは、酸素原子、硫黄原子またはNH基である。なお、式(Y2)を除いて、シクロ環における炭素原子に結合する水素原子については記載を省略した。
【0103】
上記式(X1)で示されるベンゼンチオールの金属錯体としては、具体的には下記表1で表される化合物が挙げられる。
【0104】
【表1】
【0105】
なお、表1中の式(Y01)〜(Y61)は、それぞれ下記式(Y01)〜(Y61)で示される基を示す。
【化14】
【0106】
前記クエンチャーのアミン系化合物としては、下記式(X2)または下記式(X3)で表されるビスイミウム塩が挙げられる。
【0107】
【化15】
上記式(X2)、(X3)において、Rはそれぞれ独立に炭素数1〜10の分岐を有してもよいアルキル基を示し、Q12−は2価のアニオンをQ2は1価のアニオンをそれぞれ示す。
【0108】
その他のクエンチャーとして機能する化合物としては下記式(X4)で表されるニトロソ化合物が挙げられる。
【化16】
上記式(X4)において、Rはそれぞれ独立に炭素数1〜4のアルキル基を示す。
【0109】
上記近赤外線ないし赤外線吸収剤としては、色素(A1)による近赤外線域における光の吸収曲線の急峻性の効果を損なわないものが使用される。このような近赤外線ないし赤外線吸収剤として、無機微粒子が好ましく使用でき、具体的には、ITO(Indium Tin Oxides)、ATO(Antimony-doped Tin Oxides)、タングステン酸セシウム、ホウ化ランタンなどが挙げられる。なかでも、ITO微粒子、タングステン酸セシウム微粒子は、可視波長領域の光の透過率が高く、かつ1200nmを超える赤外波長領域も含めた広範囲の光吸収性を有するため、赤外波長領域の光の遮蔽性を必要とする場合に特に好ましい。
【0110】
上記無機微粒子の数平均凝集粒子径は、散乱を抑制し、透明性を維持する点から、5〜200nmが好ましく、5〜100nmがより好ましく、5〜70nmがさらに好ましい。ここで、本明細書において、数平均凝集粒子径とは、検体微粒子を水、アルコール等の分散媒に分散させた粒子径測定用分散液について、動的光散乱式粒度分布測定装置を用いて測定した値をいう。
【0111】
また、近赤外線吸収層は、以下に説明する近赤外線吸収層を形成する際に用いる塗工液に添加する成分、例えば、シランカップリング剤、熱もしくは光重合開始剤、重合触媒に由来する成分等を含んでいてもよい。用いるシランカップリング剤の種類は、組合せて使用する透明樹脂(B)に応じて適宜選択できる。シランカップリング剤の含有量は、該塗工液において、透明樹脂(B)100質量部に対して、好ましくは1〜20質量部、より好ましくは5〜15質量部である。
【0112】
近赤外線吸収層は、例えば、色素(A)および透明樹脂(B)または透明樹脂(B)の原料成分を溶媒に分散し、溶解させて調製した塗工液を基材上に塗工し、乾燥させ、さらに必要に応じて硬化させることで製造できる。近赤外線吸収層をこのような方法で成膜することで、所望の膜厚で均一に製造できる。色素(A1)は透明樹脂(B)および塗工液に用いる溶媒の双方に溶解性が良好であり、膜の均一性を確保しやすい点からも好ましい。上記基材は、本フィルタの構成部材として適用することが可能な透明基材であってもよいし、近赤外線吸収層を成形する際のみに用いる基材、例えば剥離性の基材であってもよい。
【0113】
上記溶媒としては、色素(A)、および透明樹脂(B)または透明樹脂(B)の原料成分を安定に分散できる分散媒または溶解できる溶媒であれば、特に限定されない。なお、本明細書において「溶媒」の用語は、分散媒および溶媒の両方を含む概念で用いられる。溶媒として、具体的には、ケトン類、エーテル類、エステル類、アルコール類、炭化水素類、アセトニトリル、ニトロメタン、水等が挙げられる。これらは2種以上を併用してもよい。
【0114】
溶媒の量は、透明樹脂(B)100質量部に対して、10〜5,000質量部が好ましく、30〜2,000質量部が特に好ましい。なお、塗工液中の不揮発成分(固形分)の含有量は、塗工液全量に対して2〜50質量%が好ましく、5〜40質量%が特に好ましい。
【0115】
塗工液の調製には、マグネチックスターラー、自転・公転式ミキサー、ビーズミル、遊星ミル、超音波ホモジナイザ等の撹拌装置を使用できる。高い透明性を確保するためには、撹拌を十分に行うことが好ましい。撹拌は、連続的に行ってもよく、断続的に行ってもよい。
【0116】
塗工液の塗工には、浸漬コーティング法、キャストコーティング法、スプレーコーティング法、スピンナーコーティング法、ビードコーティング法、ワイヤーバーコーティング法、ブレードコーティング法、ローラーコーティング法、カーテンコーティング法、スリットダイコーター法、グラビアコーター法、スリットリバースコーター法、マイクログラビア法、インクジェット法、またはコンマコーター法等のコーティング法を使用できる。その他、バーコーター法、スクリーン印刷法、フレキソ印刷法等も使用できる。
【0117】
塗工液を塗工する剥離性の基材は、フィルム状であっても板状であってもよく、剥離性を有するものであれば、材料も特に限定されない。具体的には、ガラス板や、離型処理されたプラスチックフィルム、例えば、ポリエステル樹脂、ポリオレフィン樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、塩化ビニル樹脂、フッ素樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリビニルアルコール樹脂等からなるフィルム、ステンレス鋼板等が使用される。
【0118】
また、その表面に上記塗工液が塗工され、その後適宜処理されて得られる近赤外線吸収層とともに、そのまま本フィルタの構成部材となる透明基材としては、後述の透明基材が挙げられる。
【0119】
これら基材上に上記塗工液を塗工した後、乾燥させることで該基材上に近赤外線吸収層が形成される。塗工液が透明樹脂(B)の原料成分を含有する場合には、さらに硬化処理を行う。反応が熱硬化の場合は乾燥と硬化を同時に行うことができるが、光硬化の場合は、乾燥と別に硬化処理を設ける。また、剥離性の基材上に形成された近赤外線吸収層は剥離して本フィルタの製造に用いる。
【0120】
本フィルタに係る近赤外線吸収層は、透明樹脂(B)の種類によっては、押出成形によりフィルム状に製造することも可能であり、さらに、このように製造した複数のフィルムを積層し熱圧着等により一体化させてもよい。
【0121】
(近赤外線カットフィルタ)
本フィルタの構成は、近赤外線吸収層を有する以外は特に制限されない。近赤外線吸収層それ単独でNIRフィルタを構成してもよく、他の構成要素とともにNIRフィルタを構成してもよい。他の構成要素としては、近赤外線吸収層を保持する透明基材や、特定の波長域の光の透過と遮蔽を制御する選択波長遮蔽層等が挙げられる。
【0122】
前記選択波長遮蔽層としては、可視領域の光を透過し、前記近赤外線吸収層の遮光域以外の波長の光を遮蔽する波長選択特性を有することが好ましい。なお、この場合、選択波長遮蔽層の遮光域は、近赤外線吸収層の近赤外線波長領域における遮光域を含んでもよい。
【0123】
本フィルタにおいては、近赤外線吸収層以外に選択波長遮蔽層の使用が好ましく、選択波長遮蔽層の光学特性は下記(iii−1)および(iii−2)の条件を満たすことが好ましい。
(iii−1)420〜695nmの波長域において透過率が90%以上
(iii−2)上記近赤外線吸収層の波長域650〜800nmの透過スペクトルにおける透過率が1%となる最も長い波長λから1100nmまでの波長域において透過率が2%以下
条件(iii−1)を満たすことで、可視光領域の光の利用効率を高められる。すなわち、可視光領域の透過率は高いほど好ましく、95%以上がより好ましい。
条件(iii−2)を満たすことで、本フィルタが、近赤外および赤外領域の光を遮蔽できる。それにより、撮像素子への近赤外光の入射を抑制し、ノイズを抑制できる。
なお、本明細書において、特定の波長領域の透過率について、透過率が例えば90%以上とは、その波長領域の全波長において透過率が90%を下回らないことをいい、同様に透過率が例えば2%以下とは、その波長領域の全波長において透過率が2%を超えないことをいう。
【0124】
前記選択波長遮蔽層は、さらに、400nm以下の紫外線波長領域の光の透過率が1%以下がより好ましく、410nm以下の光の透過率が1%以下が特に好ましい。
また、選択波長遮蔽層は、一層で所定の波長領域の光を遮蔽してもよく、複数層を組み合わせて所定の波長領域の光を遮蔽してもよい。選択波長遮蔽層は、本フィルタの用途に応じて前記近赤外線吸収層の片側のみに配置してもよく、または両側に配置してもよい。配置される選択波長遮蔽層の数は制限されない。片側のみに1以上の選択波長遮蔽層を配置してもよく、両側にそれぞれ独立した数の1以上の選択波長遮蔽層を配置してもよい。本フィルタの各構成要素の積層順は特に制限されない。本フィルタの用途に応じて適宜設定される。
【0125】
以下、図面を参照しながら本フィルタの実施形態について説明する。
図1A図1Cは、本フィルタの実施形態の例を概略的に示す断面図である。図1Aは、透明基材12上に近赤外線吸収層11を有する本フィルタの一実施形態のNIRフィルタ10Aの断面図である。また、図1Bは、近赤外線吸収層11の両方の主面に選択波長遮蔽層13が配置された本フィルタの別の実施形態のNIRフィルタ10Bの断面図である。図1Cは、透明基材12上に近赤外線吸収層11が形成された構成の両面に選択波長遮蔽層13が配置された本フィルタのさらに別の実施形態のNIRフィルタ10Cの断面図である。
【0126】
図1Aに示す構成は、透明基材12上に近赤外線吸収層11を直接形成させる方法、または、前記剥離性の基材を用いて得られたフィルム状の近赤外線吸収層11の単体を、フィルム状または板状の透明基材12のいずれかの主面に、図示されていない粘着剤層を介して貼着することにより作製する方法等が挙げられる。また、別の構成として、近赤外線吸収層11を2枚の透明基材12が挟み込む構成や、透明基材12の両方の主面に近赤外線吸収層11が形成または貼着された本フィルタの使用が挙げられる。また、近赤外線吸収層11の表面や、近赤外線吸収層11上に形成された選択波長遮蔽層13の表面に反射防止層が形成された構成であってもよい。
【0127】
透明基材12の形状は特に限定されるものではなく、ブロック状であっても、板状であっても、フィルム状であってもよい。また、透明基材12は、可視波長領域の光を透過するものであれば、構成する材料は特に制限されない。例えば、水晶、ニオブ酸リチウム、サファイヤ等の結晶、ガラス、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)等のポリエステル樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン酢酸ビニル共重合体等のポリオレフィン樹脂、ノルボルネン樹脂、ポリアクリレート、ポリメチルメタクリレート等のアクリル樹脂、ウレタン樹脂、塩化ビニル樹脂、フッ素樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリビニルアルコール樹脂等が挙げられる。
【0128】
これらの材料は、紫外線領域および/または近赤外線領域の波長に対して吸収特性を有するものであってもよい。透明基材12は、例えば、フツリン酸塩系ガラスやリン酸塩系ガラス等にCuO等を添加した吸収型のガラスフィルタであってもよい。
【0129】
また、水晶、ニオブ酸リチウム、サファイヤ等の結晶は、デジタルスチルカメラ、デジタルビデオカメラ、監視カメラ、車載用カメラ、ウェブカメラ等の撮像装置において、モアレや偽色を低減するためのローパスフィルタや波長板の材料として使用されており、透明基材12の材料として、これらの結晶を用いた場合には、本実施形態に係るNIRフィルタ10Aに、ローパスフィルタや波長板の機能も付与でき、撮像装置のさらなる小型化、薄型化ができる点から好ましい。
【0130】
さらに、上記撮像装置の固体撮像素子または固体撮像素子パッケージには、該固体撮像素子を保護するカバーが気密封着されている。このカバーを透明基材12として使用すれば、カバーとして使用可能なNIRフィルタが得られ、撮像装置のさらなる小型化、薄型化ができる。
【0131】
上記透明基材12がガラス板の場合、ガラス板の厚みは、装置の小型化、薄型化、および取り扱い時の破損を抑制する点から、0.03〜5mmの範囲が好ましく、軽量化および強度の点から、0.05〜1mmの範囲がより好ましい。
【0132】
透明基材12として、ポリエチレンテレフタレート(PET)等の透明プラスチックからなるフィルムを使用する場合、その厚みは、10〜300μmの範囲が好ましい。また、近赤外線吸収層11を形成する前に、フィルムの表面にコロナ処理や易接着処理を施すことが好ましい。
【0133】
透明基材12として、透明プラスチックからなるフィルムを使用した場合は、透明基材12の他方の主面を粘着剤または接着剤を介してガラス板に貼着できる。ガラス板には、透明基材12の材料として例示したものと同様のものを使用でき、特に、ホウケイ酸ガラスは、加工が容易で、光学面における傷や異物等の発生が抑えられるため好ましい。
【0134】
NIRフィルタ10Aは、透明基材12側を、例えば撮像装置の固体撮像素子に直接貼着して使用されることがある。この場合、透明基材12の線膨張係数と被貼着部の線膨張係数との差が30×10−7/K以下であることが、貼着後の剥がれ等を抑制する観点から好ましい。例えば、被貼着部の材質がシリコンであれば、線膨張係数が30×10−7〜40×10−7/K近傍の材料、例えば、ショット社製のAF33、テンパックス、旭硝子社製のSW−3、SW−Y、SW−YY、AN100、EN―A1等(以上、商品名)のガラスが透明基材12の材料として好適である。被貼着部の材質がアルミナ等のセラミックであれば、線膨張係数が50×10−7〜80×10−7/K近傍の材料、例えば、ショット社製のD263、B270、旭硝子社製のFP1、FP01eco等のガラスが透明基材12の材料として好適である。
【0135】
図1Bに示す構成のNIRフィルタ10Bにおいて近赤外線吸収層11の両方の主面に形成される選択波長遮蔽層13としては、誘電体多層膜や近赤外線ないし赤外線吸収剤、色調補正色素および紫外線吸収剤から選ばれる少なくとも1種を含有する特定の波長の光を吸収、または反射する層等が挙げられる。
【0136】
NIRフィルタ10BおよびNIRフィルタ10Cにおいて、組み合せる2枚の選択波長遮蔽層13は、同一でも異なってもよい。2枚の選択波長遮蔽層13が、光学特性の異なる第1の選択波長遮蔽層13a、第2の選択波長遮蔽層13bとして構成される場合、用いられる光学装置により選択波長遮蔽特性とその並び順が適宜調整される。この観点から、近赤外線吸収層11、第1の選択波長遮蔽層13aおよび第2の選択波長遮蔽層13bの位置関係として、具体的には以下の(1x)、(1y)、(1z)の位置関係が挙げられる。
【0137】
(1x)第1の選択波長遮蔽層13a、近赤外線吸収層11、第2の選択波長遮蔽層13b
(1y)近赤外線吸収層11、第1の選択波長遮蔽層13a、第2の選択波長遮蔽層13b
(1z)近赤外線吸収層11、第2の選択波長遮蔽層13b、第1の選択波長遮蔽層13a
上記(1y)(1z)の形態をとる場合には近赤外線吸収層上で反射による可視光透過率損失が発生するため近赤外線吸収層上に反射防止層を設けるのが好ましい。
【0138】
このようにして得られるNIRフィルタ10BおよびNIRフィルタ10Cを装置に設置する際の方向については、設計に応じて適宜選択される。
【0139】
前記誘電体多層膜は、低屈折率の誘電体膜と高屈折率の誘電体膜を交互に積層して得られる。これにより、光の干渉を利用して特定の波長域の光の透過と遮蔽を制御する機能を発現できる。ただし、低屈折率と高屈折率とは、隣接する層の屈折率に対して高い屈折率と低い屈折率を有することを意味する。
【0140】
前記高屈折率の誘電体膜は、低屈折率の誘電体膜よりも屈折率が高ければ、特に限定されない。前記高屈折率の屈折率は、1.6以上が好ましい。2.2〜2.5がより好ましい。このような屈折率を有する誘電体の材料としては、Ta(屈折率:2.22)、TiO(屈折率:2.41)、Nb(屈折率:2.3)などが挙げられる。これらのうち、成膜性と屈折率等をその再現性、安定性を含め総合的に判断して、TiO等がより好ましい。
【0141】
一方、前記低屈折率の屈折率は、1.45以上1.55未満が好ましく、1.45〜1.47がより好ましい。このような屈折率を有する誘電体の材料としては、SiO(屈折率:1.46)、SiO(屈折率:1.46以上1.55未満)などが挙げられる。これらのうち、屈折率、成膜性における再現性、安定性、経済性などの点から、SiOがより好ましい。
【0142】
前記反射防止層としては、誘電体多層膜や中間屈折率媒体、屈折率が漸次的に変化するモスアイ構造などが挙げられる。なかでも光学的効率、生産性の観点から誘電体多層膜を使用するのが好ましい。反射防止層に用いられる誘電体多層膜は上記選択波長遮蔽層13に使用される誘電体多層膜と同様に低屈折率の誘電体膜と高屈折率の誘電体膜を交互に積層して得ることができる。
【0143】
本フィルタにおいては、前記選択波長遮蔽層と近赤外線吸収層とを有し、下記(iv−1)〜(iv−3)の条件を満たすことが好ましい。本フィルタは、この(iv−1)〜(iv−3)の条件を満たすために、さらに、反射防止層を有することが好ましい。
(iv−1)420〜620nmの波長域における平均透過率が80%以上
(iv−2)710〜1100nmの波長域における透過率が2%以下
(iv−3)600〜700nmの波長域において、主面に直交する方向から入射した光の透過率が20%となる波長の値と、主面に直交する線に対して30度の角度をなす方向から入射した光の透過率が20%となる波長の値の差が3nm以下
【0144】
本フィルタにおいては、上記条件(iv−1)を満たすことで可視光線透過率が十分に確保され、さらに、条件(iv−2)および(iv−3)を満たすことで誘電体多層膜の有する角度依存性が解消され、近赤外線領域における遮光性が入射角の影響を受けることなく広い波長領域で十分に確保されている。
ここで、上記条件(iv−3)では、入射角が0度の場合と30度の場合の透過率20%における波長のシフトを指標として角度依存性を評価している。この条件を満たせば、他の入射角における波長シフトも本フィルタとして問題になることはないと言える。
【0145】
上記(iv−3)の波長シフトの条件を、図6により具体的に説明する。図6にそれぞれ実線と点線および破線で示されているのは、後述の実施例において本発明の実施例としての例110で得られたNIRフィルタ(反射防止層(誘電体多層膜)/近赤外線吸収層/ガラス板/選択波長遮蔽層(誘電体多層膜)の順に積層されたNIRフィルタ)における660〜690nmの波長領域の入射角0度の光の透過スペクトル(実線)と、入射角30度(点線)、入射角40度(破線)のそれぞれ光の透過スペクトルである。ここで、図6に示されるように、例110で得られたNIRフィルタにおいては、入射角が0度の場合の透過率20%の波長(λ20−0)は668nmであり、入射角が30度の場合の透過率20%の波長(λ20−30)は667nmであり、その差は1nmである。同様に、入射角が40度の場合の透過率20%の波長(λ20−40)は665nmであり、その差は3nmである。
【0146】
NIRフィルタの分光特性においては、透過光波長と遮光波長の境界波長領域で透過率を急峻に変化させる性能が求められる。透過光波長と遮光波長の境界波長領域で透過率を急峻に変化させる性能を得るためには、誘電体多層膜は、低屈折率の誘電体膜と高屈折率の誘電体膜との合計積層数として15層以上が好ましく、25層以上がより好ましく、30層以上がさらに好ましい。合計積層数が増えると製作時のタクトが長くなり、誘電体多層膜の反りなどが発生するため、また、誘電体多層膜の膜厚が増加するため、100層以下が好ましく、75層以下がより好ましく、60層以下がさらに好ましい。低屈折率誘電体膜と高屈折率誘電体膜の積層順は交互であれば、最初の層が低屈折率誘電体膜であっても高屈折率誘電体膜であってもよい。
【0147】
誘電体多層膜の膜厚としては、上記好ましい積層数を満たした上で、NIRフィルタの薄型化の観点からは、薄い方が好ましい。このような誘電体多層膜の膜厚としては、選択波長遮蔽特性によるが、2〜10μmが好ましい。なお、誘電体多層膜を反射防止層として用いる場合には、その膜厚は0.1〜1μmが好ましい。また、近赤外線吸収層の両面、もしくは透明基材と該透明基材上に形成された近赤外線吸収層の各々の面に誘電体多層膜を配設する場合、誘電体多層膜の応力により反りが生じる場合がある。この反りの発生を抑制するために各々の面に成膜される誘電体多層膜の膜厚の差は、所望の選択波長遮蔽特性を有するように成膜した上で、可能な限り少ない方が好ましい。
【0148】
誘電体多層膜は、その形成にあたっては、例えば、CVD法、スパッタ法、真空蒸着法等の真空成膜プロセスや、スプレー法、ディップ法等の湿式成膜プロセス等を使用できる。
【0149】
上記選択波長遮蔽層13として用いられる、近赤外線ないし赤外線吸収剤、色調補正色素および紫外線吸収剤から選ばれる少なくとも1種を含有する特定の波長の光を吸収する層としては、例えば、従来公知の方法で各吸収剤を透明樹脂に分散させた光吸収層が挙げられる。透明樹脂としては、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアミド樹脂、アルキド樹脂等の熱可塑性樹脂、エン・チオール樹脂、エポキシ樹脂、熱硬化型アクリル樹脂、光硬化型アクリル樹脂、シルセスキオキサン樹脂等の熱や光により硬化される樹脂等が挙げられる。これら光吸収層における各吸収剤の含有量は各吸収剤の光吸収能に応じて、本発明の効果を損ねない範囲で適宜調整される。
【0150】
本フィルタは、デジタルスチルカメラやデジタルビデオカメラ、監視カメラ、車載用カメラ、ウェブカメラ等の撮像装置や自動露出計等のNIRフィルタ、PDP用のNIRフィルタ等として使用できる。本フィルタは、上記撮像装置において好適に用いられ、例えば、撮像レンズと固体撮像素子との間に配置される。
【0151】
また、本フィルタは、上記撮像装置の固体撮像素子、自動露出計の受光素子、撮像レンズ、PDP等に粘着剤層を介して直接貼着して使用することもできる。さらに、車両(自動車等)のガラス窓やランプにも同様に粘着剤層を介して直接貼着して使用できる。
【実施例】
【0152】
以下に、本発明を実施例によりさらに詳細に説明する。本発明は、以下で説明する実施形態および実施例に何ら限定されるものではない。例1〜75、例110が本発明の実施例であり、例76〜109が比較例である。
【0153】
<色素の合成>
以下の方法により、各例に使用する色素を合成した。色素(A11−1)〜(A11−19)は、色素(A11)に含まれ、本発明の実施例に使用される。一方、色素(A11−20)〜(A11−27)は、上記式(A11)において、R以外は、式(A11)と構造が同じであり、本発明の比較例に使用される色素である。
【0154】
(1)近赤外線吸収色素(A11−1)〜(A11−27)の合成
以下の表2に示す構成の色素(A11−1)〜(A11−27)を合成した。なお、表2で、Rについては、式(4)におけるmの数とR13および炭素数を記載した。R13−1〜R13−3は、カルボニル基に結合するα位の炭素原子に結合する1個〜3個のR13を区別するものであって位置の区別はない。表2中、「−」は水素原子を意味する。表2中、n−は直鎖を示し、Phはベンゼン環を示す。i−Cは、1−メチルエチル基を示す。表2におけるRの具体的な構造は、上記式(1a)、(1b)、(2a)〜(2e)、(3a)〜(3e)に対応する。表2には対応する式番号も示した。なお、色素(A11−1)〜(A11−27)において、左右に1個ずつ計2個存在するRは左右で同じであり、R〜Rについても同様である。
【0155】
【表2】
【0156】
色素(A11−1)〜(A11−27)は、上記反応式(F1)にしたがって合成した。なお、反応式(F1)においては、色素(A11−1)〜(A11−27)は、色素(A11)で示される。色素(A11−1)〜(A11−27)の製造においては、反応式(F1)中のRおよびRは水素原子である。また、RおよびRは上記表2中の基を示す。
【0157】
[色素(A11−1)の製造]
以下、反応式(F1)を用いて色素(A11−1)の製造例を具体的に説明する。なお、以下の説明において、原料成分(g)や中間生成物((b)〜(h))におけるR〜Rについて記載しないが、Rはメチル基、RおよびRは水素原子であり、Rは基(2b)である。
【0158】
色素(A11−1)の製造においては、反応式(F1)中の化合物(c)(ただし、Rはメチル基、RおよびRは水素原子)が市販品として入手可能なため、出発物質として東京化成社製の化合物(c)を用いた。
【0159】
(化合物(d)の製造)
500mlのナスフラスコに化合物(c)を(25g、0.14mol),メタノール360mlを加え、0℃で水素化ホウ素ナトリウム(9.0g、0.22mol)をゆっくり加えた。添加後、室温で3時間撹拌した。反応終了後、水をゆっくり加え、その後、炭酸水素ナトリウム水溶液と酢酸エチルで分液を行った、分液後、得られた有機層を硫酸マグネシウムで乾燥しロータリーエバポレーターを用いて溶媒を留去しシリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製を行った。展開溶媒は酢酸エチル:ヘキサン=1:4とした。結果、化合物(d)(23g、0.13mol、収率91%)が得られた。
【0160】
(化合物(e)の製造)
2Lナスフラスコに化合物(d)(20g、0.11mol)、濃硫酸(80g、0.81mol)を加え、0℃に冷却した。その後、重量比で濃硝酸:濃硫酸=1:5の混合溶液を55g、ゆっくり滴下した。滴下終了後、反応温度を徐々に室温に戻し、同温度で16時間撹拌した。反応終了後、再び0℃に冷却して、水酸化ナトリウム水溶液をPHが9になるまでゆっくり加えた。沈殿物をろ過して、水とメタノールで十分洗浄した。洗浄後、得られた固形物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製を行った。展開溶媒はジクロロメタン:ヘキサン=1:5とした。結果、化合物(e)が(17g、0.077mol、収率67%)得られた。
【0161】
(化合物(f)の製造)
窒素雰囲気下、500mlのナスフラスコに、化合物(e)(15g、0.068mol)、150mlのメタノール、150mlのテトラヒドロフラン、ギ酸アンモニウム(23.5g、0.37mol)10wt%パラジウム炭素(12g)を加え、その後、反応系を開放して大気雰囲気下室温で12時間撹拌した。反応終了後、混合物のセライトろ過を行い、得られたろ液をロータリーエバポレーターを用いて濃縮した後、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製を行った(展開溶媒はヘキサン:酢酸エチル=1:4)。結果、化合物(f)が(9.7g、0.051mol 収率75%)得られた。
【0162】
(化合物(h)((A11-1)に用いる中間体)の製造)
窒素雰囲気下、300mlのナスフラスコに、化合物(f)の2.0g(0.011mol)、50mlのジクロロメタン、2.12g(0.021mol)のトリエチルアミン、触媒量のジメチルアミノピリジンを加え、反応器を0℃に冷却してから、置換基Rを有するカルボン酸塩化物として2プロピルバレリルクロリド(g)の2.55g(0.016mol)を加え、その後、窒素雰囲気下同温度で30分撹拌した。反応終了後、混合物に50mlの飽和食塩水を加え、100mlのジクロロメタンで抽出を行った。得られた有機層を無水硫酸ナトリウムにて乾燥し、ロータリーエバポレーターを用いて溶媒を留去した後、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製を行った。(展開溶媒はヘキサン:酢酸エチル=4:1)。結果、化合物(h;R=CH(n−C)(n−C))が(2.5g、0.0079mol、収率70%)得られた。
【0163】
(色素(A11−1)の製造)
500mlのナスフラスコにDean−Stark管を取り付け、A11−1に用いる中間体である化合物(h)(2.0g、0.0063mol)、140mlのベンゼン、60mlの1−ブタノール、0.36g(0.0032mol)のスクアリン酸を加え、アゼオトロープ加熱還流条件下で3時間撹拌した。反応終了後、ロータリーエバポレーターを用いて反応溶媒を留去した後、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製を行った。展開溶媒はヘキサン:酢酸エチル=7:3)。結果、色素(A11−1)(2.9g、0.0041mol、収率65%)が得られた。
【0164】
[色素(A11−2)〜(A11−4)、(A11−9)〜(A11−14)の製造]
色素(A11−1)の製造において、置換基Rを有するカルボン酸塩化物(g)のRを、それぞれ表2に示すRとした以外は同様にして、色素(A11−2)〜(A11−4)、(A11−9)〜(A11−14)を製造した。
【0165】
[色素(A11−5)〜(A11−8)の製造]
(化合物(c)((A11-5)〜(A11−8)に用いる中間体)の製造)
色素(A11−5)〜(A11−8)の製造においては、まず、反応式(F1)中の化合物(a)(ただし、R、Rは水素原子)から、化合物(b)を経由して、化合物(c)(ただし、RはC、n−Cまたはi−C、R、Rは水素原子)を以下のようにして製造した。
【0166】
500mlのナスフラスコに化合物(a)(25g、0.157mol)、n−ヨードエタン(98g、0.63mol)、酢酸エチル100mlを加え、24時間環流を行い反応させた。反応終了後、析出した固形物を酢酸エチルで十分に洗浄を行い、濾過することで化合物(b)(R=C)を44.1g(0.14mol、収率89%)得た。同様にして、n−ヨードエタンの代わりにn−ヨードプロパンを用いて化合物(b)(R=n−C)を、ヨードイソプロパンを用いて化合物(b)(R=i−C)を得た。n−ヨードプロパン、ヨードイソプロパンを用いる場合は溶媒に酢酸エチルを用いず、化合物(b)とn−ヨードプロパン、ヨードイソプロパンだけで環流を行った。
【0167】
500mlのナスフラスコに化合物(b)(R=C)を27g(0.086mol)、水酸化ナトリウム16g(0.40mol)、水300mlを加え、室温で3時間攪拌した。反応終了後、ジクロロメタンを加え、有機層を抽出し、得られた有機層を無水硫酸ナトリウムにて乾燥し、ロータリーエバポレーターを用いて溶媒を留去した後、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製を行った。結果、化合物(c)(R=C)を15g(0.080mol、収率94%)得た。化合物(b)(R=n−Cまたはi−C)から、同様にしてRがn−Cまたはi−Cの化合物(c)を得た。
【0168】
これらの3種の化合物(c)をそれぞれ表2に示すように用い、置換基Rを有するカルボン酸塩化物(g)のRを、それぞれ表2に示すRとした以外は色素(A11−1)の場合と同様にして、色素(A11−5)〜(A11−8)を製造した。
【0169】
[色素(A11−15)〜(A11−19)の製造]
2Lのナスフラスコに化合物(a)(49g、0.31mol)を加え、0℃で水素化ホウ素ナトリウム(12.9g、0.34mol)を少しずつ添加した。添加後、p−トルエンスルホン酸(58.3g、0.34mol)を0℃でゆっくり、反応系中に添加した。1時間反応させた後、ナスフラスコを再度0℃に冷やし、水を少しずつ滴下し、反応を終了させた。ジクロロメタンを加え、有機層をエバポレーターを用いて濃縮した。濃縮液を酢酸エチル:ヘキサン=1:6の展開溶液でカラム精製を行い、反応式(F1)中の化合物(b)と同様の骨格を有する化合物(b’)(ただし、R〜Rは水素原子である。)を(46g、収率93%)得た。
【0170】
2Lのナスフラスコに化合物(b’)(46g、0.29mol)、塩化銅(I)(3.07g、0.03mol)、2−クロロ−2−メチル−3−ブチン(35.0g、0.34mol)、およびTHFを570ml加えた。0℃でトリエチルアミン(34.6g,0.34mol)をゆっくり滴下した。4時間室温で反応させた後、反応溶液に水を500ml加えて反応を終了させた。反応溶液をジクロロメタンで抽出し、有機層をエバポレーターで濃縮した。濃縮液をヘキサン:ジクロロメタン=4:1でカラム精製を行い、反応式(F1)中の化合物(d)と同様の骨格を有する化合物(d’)(R=C(CHH)を40g(収率62%)得た。
【0171】
1Lのナスフラスコに化合物(d’)(ただし、RはC(CHHであり、R、Rは水素原子である。)を36g(0.16mol)、THFを300ml入れた。そして0℃で4gのPd/Cをナスフラスコに添加した。Pd/Cを添加後、0℃でエタノールを300ml加えた。その後、反応容器を脱気と窒素添加を2回繰り返し、脱気後に水素を添加した。反応は常圧下の水素雰囲気で8時間反応させた。反応終了後、Pd/Cをろ過で取り除き、ろ液をエバポレーターで濃縮した。濃縮液を展開溶媒ヘキサンでカラム精製を行い、化合物(d)(RはC(CHであり、R、Rは水素原子である。)を得た。
【0172】
得られた化合物(d)を使用し、置換基Rを有するカルボン酸塩化物(g)のRを、それぞれ表2に示すRとした以外は色素(A11−1)の場合と同様にして、色素(A11−15)〜(A11−19)を製造した。
【0173】
[色素(A11−20)〜(A11−27)の製造]
式(F1)における式(A11)においてRがメチル基、RおよびRが水素原子であって、Rが表2に示されるとおり色素(A11)の範囲外である色素(A11−20)〜(A11−27)を合成した。具体的には、色素(A11−1)の製造において、置換基Rを有するカルボン酸塩化物(g)のRを、それぞれ表2に示すRとした以外は同様にして、色素(A11−20)〜(A11−27)を製造した。
【0174】
(2)溶解性
上記で得られた色素(A11−1)〜(A11−10)、(A11−20)〜(A11−27)について、以下のとおり有機溶媒に対する溶解性を評価した。
溶解性試験では有機溶媒として、シクロヘキサノン、メチルイソブチルケトン(MIBK)、トルエンの3種を使用した。結果を表3に示す。なお、表3中において、%は、溶液全体の質量に対する色素の質量%である。また、溶解性試験における各有機溶媒の温度は50℃とした。
【0175】
【表3】
【0176】
色素(A11−1)〜(A11−8)および色素(A11−10)は、シクロヘキサンへの溶解度が高い。色素(A11−2)〜(A11−6)および色素(A11−8)は、MIBKへの溶解度が高い。色素(A11−1)、(A11−3)〜(A11−8)は、トルエンへの溶解度が高い。したがって、色素(A11−1)〜(A11−10)は、有機溶媒への溶解性が高いといえる。
【0177】
比較例用色素(A11−20)〜(A11−27)は、概ね実施例用の色素に比べて、有機溶媒への溶解度が低い。
【0178】
[カットフィルタの製造]
以下の例1〜例109において、上記で得られた色素(A11−1)〜(A11−27)と屈折率が1.45以上の透明樹脂(B)を含む近赤外線吸収層11を透明基板12上に形成して、図1Aに示す構成のNIRフィルタを製造した。なお、透明基板12として、厚さ0.3mmのガラス板(ソーダガラス)を用いた。
【0179】
(例1〜例75)
表4に示すとおり色素(A11−1)〜(A11−19)のいずれかと、ポリエステル樹脂の15質量%シクロヘキサノン溶液とを混合し、室温にて撹拌・溶解することで塗工液を得た。いずれの例においてもポリエステル樹脂100質量部に対し、膜厚3μm以下で、上記条件(ii−2)に規定される(λ−λ)(透過率が1%以下における吸収幅)が30nmになる含有量で色素(A11−1)〜(A11−19)を混合した。ポリエステル樹脂としては、B−OKP2(商品名、大阪ガスケミカル社製、屈折率1.64)を用いた。
【0180】
上記で得られた塗工液を、ガラス板上にスピンコート法により塗布し、90℃で5分乾燥したあと、得られたサンプルをさらに150℃で60分乾燥し、例1〜例17のNIRフィルタを得た。得られたNIRフィルタ1〜17の近赤外線吸収層の膜厚は、いずれも2.7μmであった。
【0181】
上記において、表4に記載の色素と、透明樹脂(B)として、ポリエステル樹脂(東洋紡社製、商品名:バイロン103、屈折率:1.55)を使用した以外は、例1〜17と同様にして例18〜例25のNIRフィルタ18〜25を得た。得られたNIRフィルタ18〜25の近赤外線吸収層の膜厚は、いずれも2.7μmであった。
【0182】
さらに、表5に記載の色素と、透明樹脂(B)としてポリイソブチルメタクリレート(東京化成工業社製、屈折率1.48)を使用し、近赤外線吸収層の膜厚を31.5μmとした以外は、例1〜17と同様にして例26〜例33のNIRフィルタ26〜33を得た。
【0183】
表5に記載の色素を使用し、透明樹脂(B)としてポリカーボネート(帝人化成社製、商品名:TS2020、屈折率:1.59)を使用し、近赤外線吸収層の膜厚を0.6μmとした以外は、例1〜10と同様にして例34〜例39のNIRフィルタ34〜39を得た。
【0184】
表5に記載の色素を使用し、透明樹脂(B)として環状オレフィンポリマー(JSR社製、商品名:ARTON、屈折率:1.51)を使用し、近赤外線吸収層の膜厚を1.7μmとした以外は、例1〜17と同様にして例40〜例45のNIRフィルタ40〜45を得た。
【0185】
表5に記載の色素を使用し、透明樹脂(B)としてポリカーボネート(帝人化成社製、商品名:SP1516、屈折率:1.60)を使用し、近赤外線吸収層の膜厚を0.9μmとした以外は、例1〜17と同様にして例46〜例51のNIRフィルタ46〜51を得た。
【0186】
表6に記載の色素を使用し、透明樹脂(B)としてポリカーボネート(三菱ガス化学社製、商品名:EP5000、屈折率:1.63)を使用し、近赤外線吸収層の膜厚を2.4μmとした以外は、例1〜17と同様にして例52〜例57のNIRフィルタ52〜57を得た。
【0187】
表6に記載の色素を使用し、透明樹脂(B)としてポリカーボネート(帝人化成社製、商品名:SP3810、屈折率:1.63)を使用し、近赤外線吸収層の膜厚を2.8μmとした以外は、例1〜17と同様にして例58〜例63のNIRフィルタ58〜63を得た。
【0188】
表6に記載の色素を使用し、透明樹脂(B)としてポリカーボネート(帝人化成社製、商品名:SP3810、屈折率:1.63)を使用し、近赤外線吸収層の膜厚を1.0μmとした以外は、例1〜17と同様にして例64〜例69のNIRフィルタ64〜69を得た。
【0189】
表6に記載の色素を使用し、透明樹脂(B)としてアクリル樹脂(三菱レーヨン社製、商品名:BR50、屈折率:1.56)を使用し、近赤外線吸収層の膜厚を2.3μmとした以外は、例1〜17と同様にして例70〜例75のNIRフィルタ70〜75を得た。
【0190】
(例76〜例109)
表7および表8に示すとおり、色素(A11−20)〜(A11−27)のいずれかと、透明樹脂(B)とを使用して、例76〜例109のNIRフィルタ76〜109を得た。それぞれのNIRフィルタの近赤外線吸収層の膜厚は、同じ透明樹脂(B)を使用する実施例の各例と同じ膜厚とした。
【0191】
<NIRフィルタの評価>
(1)吸光特性
上記で得られたNIRフィルタ1〜109の透過率(%/nm)について、紫外可視分光光度計(日立ハイテクノロジーズ社製、U−4100型分光光度計)を用いて透過スペクトルを測定し、算出した。NIRフィルタが有する近赤外線吸収層の透過スペクトルの分析結果をNIRフィルタ1〜25、26〜51、52〜75についてはそれぞれ表4、表5および表6に、NIRフィルタ76〜94、95〜109についてはそれぞれ表7および表8に示す。表4〜表8には、近赤外線吸収層における透明樹脂(B)100質量部に対する色素の割合(質量部)および膜厚を併せて記載した。
【0192】
また、本フィルタにおける近赤外線吸収層の好ましい透過スペクトルの条件、上記(ii−3)に示す式;n(B)×(λ−λ)で得られるI値を、条件(ii−1)におけるλ、条件(ii−2)におけるλ−λと併せて、表4〜表8中に記載する。なお、表4〜表8に示す値は、NIRフィルタの透過率から、ガラス板の透過率を減算した値である。具体的にはガラス板の吸収、ガラス板−近赤外線吸収層界面、ガラス板−空気界面の反射の影響を差し引いて、近赤外線吸収層−空気界面での反射を計算した値となっている。
【0193】
【表4】
【0194】
【表5】
【0195】
【表6】
【0196】
【表7】
【0197】
【表8】
【0198】
表4〜表6から本発明の実施例であるNIRフィルタ1〜75における近赤外線吸収層のI値は、色素(A11−1)〜(A11−19)の作用により、115以下である。すなわち、近赤外線吸収層の透過スペクトルについて、可視光領域と近赤外線領域の境界付近おける吸収曲線が急峻であることがわかる。
【0199】
表7、表8に示される比較例に相当するNIRフィルタ76〜109における近赤外線吸収層のI値は、色素(A11−20)〜(A11−27)を用いていることから、115を超えて高い。すなわち、可視光領域と近赤外線領域の境界付近おける吸収曲線は傾きが緩やかであることがわかる。
【0200】
(2)耐熱性
上記のNIRフィルタ7と、比較例であるNIRフィルタ76について耐熱性試験を行い、耐熱性を評価した。
耐熱性試験はNIRフィルタを180℃で5時間加熱する試験とした。また、耐熱性試験後に上記同様にしてNIRフィルタが有する近赤外線吸収層における透過率を測定した。耐熱性の評価は、以下の式により、波長680nmにおける耐熱性試験前後の吸光係数の百分率(%)を色素の残存率(%)として見積もることで行った。
【0201】
残存率(%)=680nmにおける耐熱性試験後の吸光係数(ε)/680nmにおける初期の吸光係数(ε)×100
【0202】
この結果、NIRフィルタ7の耐熱性試験後(180℃、5時間後)の色素残存率は93%であるのに対して、NIRフィルタ76の耐熱性試験後(180℃、5時間後)の色素残存率は、58%であった。本発明の効果としてNIRフィルタの耐熱性が向上していることが示された。
【0203】
[選択波長遮蔽層を有するNIRフィルタの製造]
以下の例110により、図1Cに示す構成のNIRフィルタにおいて、選択波長遮蔽層13aの代わりに反射防止層を有する以外は同様の選択波長遮蔽層(選択波長遮蔽層13b)を有するNIRフィルタを製造した。
【0204】
[透過率および20%シフト]
例110のNIRフィルタの透過率を、主面に直交する方向から入射した光、すなわち入射角0度の光の透過率、および主面に直交する線に対して30度の角度をなす方向から入射した光、すなわち入射角30度の光の透過率として、紫外可視分光光度計(日立ハイテクノロジーズ社製、U−4100型分光光度計)を用いて測定し、透過スペクトルを得た。20%シフト(30度)は、入射角0度の光の透過率が20%となる波長の値(「λ20−0」と示す。)と、入射角30度の光の透過率が20%となる波長の値(「λ20−30」と示す。)の差である。
さらに、同様にして入射角40度の光の透過スペクトルを得た。また、入射角0度の光の透過率が20%となる波長の値(λ20−0)と、入射角40度の光の透過率が20%となる波長の値(「λ20−40」と示す。)の差を、20%シフト(40度)として求めた。
【0205】
[遮蔽層の設計]
選択波長遮蔽層は、高屈折率誘電体膜であるTiO膜と低屈折率誘電体膜であるSiO膜を交互に積層する構成において、蒸着法により成膜した。
選択波長遮蔽層は、誘電体多層膜の積層数、TiO膜の膜厚およびSiO膜の膜厚をパラメータとして、所望の光学特性を有するようにシミュレーションして構成を決定した。上記選択波長遮蔽層としての誘電体多層膜の光学特性は、420〜715nmの波長域における透過率が90%以上、730〜1100nmの波長域における透過率が2%以下、400nm以下の全領域に亘り透過率が1%以下とした(図4)。
【0206】
反射防止層も、選択波長遮蔽層と同様に高屈折率誘電体膜であるTiO膜と低屈折率誘電体膜であるSiO膜を交互に積層する構成において、蒸着法により成膜した。反射防止層の設計も誘電体多層膜の積層数、TiO膜の膜厚およびSiO膜の膜厚をパラメータとして、所望の光学特性を有するようにシミュレーションして構成を決定した(図5)。
【0207】
(例110)
近赤外線吸収層形成のための塗工液の塗工面の反対側の面に、選択波長遮蔽層を成膜したガラス板を用いたこと以外は、例7と同様にして、ガラス板上に近赤外線吸収層を形成した。さらに、近赤外線吸収層の上に反射防止層を成膜することによりNIRフィルタ110を得た。膜厚は、選択波長遮蔽層は全体で約8.9μm、反射防止層は全体で約0.34μmであった。得られたNIRフィルタ110の透過率を測定し、20%シフト(30度)、(40度)を求めた。その結果を近赤外線吸収層の構成とともに表9に示す。図6に、NIRフィルタ110における、660〜690nmの波長領域の入射角0度の光の透過スペクトルと入射角30度および40度の光の透過スペクトルをそれぞれ実線と点線および破線で示す。表9からわかるように入射角0度と入射角30度の20%シフトは1nmであり、入射角40度においても3nmの20%シフトで収まっている。
【0208】
【表9】
【産業上の利用可能性】
【0209】
本フィルタは、単独であるいは他の選択波長遮蔽部材と組合せて用いた際に、良好な近赤外線遮蔽特性を有するとともに、十分な小型化、薄型化ができることから、デジタルスチルカメラ等の撮像装置、プラズマディスプレイ等の表示装置、車両(自動車等)用ガラス窓、ランプ等に有用である。
【符号の説明】
【0210】
10A,10B,10C…NIRフィルタ、12…透明基材、11…近赤外線吸収層、13…選択波長遮蔽層、13a…第1の選択波長遮蔽層、第1の誘導体多層膜、13b…第2の選択波長遮蔽層、第2の誘導体多層膜。
図1A
図1B
図1C
図2
図3
図4
図5
図6