(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0013】
次に、添付図面を参照しながら、本発明の好ましい実施形態について説明する。本明細書において、特段の定めがない限り、数値範囲を示す「〜」とは、その前後に記載された数値を下限値および上限値として含む意味で使用される。
【0014】
なお、図面中の記載において、同一又は対応する部材又は部品には、同一又は対応する符号を付すことにより、重複する説明を省略する。また、図面は、特に指定しない限り、部材又は部品間の相対比を示すことを目的としない。よって、具体的な寸法は、以下の限定的でない実施形態に照らし、当業者により決定することができる。
【0015】
〔液晶表示装置10〕
図1は、液晶表示装置10の概略構成を示した液晶表示装置10の側面図である。
図2は、液晶表示装置10に組み込まれた実施形態のガラス板12の平面図である。
【0016】
図1のように、液晶表示装置10は、ガラス板12を有する面状発光装置14と、液晶パネル16とを備えて構成される。液晶表示装置10は、例えば液晶テレビ、デジタルサイネージ等の薄型化が図られた電子機器に搭載される。
【0017】
〈液晶パネル16〉
液晶パネル16は、厚さ方向の中央に配設される液晶層を挟むように配向層、透明電極、ガラス基板及び偏光フィルターが積層されて構成される。また、液晶層の片面には、カラーフィルターが配設されている。液晶層の分子は、透明電極に駆動電圧を印加することにより配光軸周りに回転し、これにより所定の表示を行う。
【0018】
〈面状発光装置14〉
面状発光装置14としては、薄型化を図るためエッジライト型が採用されている。面状発光装置14は、光源18、ガラス板12、反射シート20、各種光学シート(拡散シート・輝度向上シート等)22、及び反射ドット24A〜24Cを有している。
【0019】
光源18からガラス板12の内部に入射した光は、
図1の矢印で示すように、ガラス板12の光出射面26の内面、及び光反射面32の内面にて繰り返し全反射されながら進行する。また、反射ドット24A〜24C及び反射シート20によって進行方向を変えた光が、ガラス板12の液晶パネル16と対向した光出射面26から外部に出射される。外部に出射された光は、各種光学シート(拡散シート・輝度向上シート等で構成され、単一であっても複数であってもよい。)22によって拡散された後、液晶パネル16に入射する。
【0020】
光源18は、特に限定されるものではないが、LED(Light Emitting Diode)、熱陰極管、又は冷陰極管を用いることができる。光源18は、ガラス板12の入光端面(第1端面)28と対向する位置に配置される。
【0021】
また、光源18の背面側にリフレクタ30が設けられることによって、光源18から放射状に発射される光のガラス板12への入射効率が高められている。
【0022】
反射シート20を、ガラス板12の光反射面32に対向するように配設してもよい。反射シート20は、アクリル樹脂等の樹脂シートの表面に光反射部材を被膜することにより構成される。加えて、反射シート20は、非入光端面34、36、38(
図2参照)に配設されてもよい。反射シート20は、いずれも、ガラス板12から空間を空けて配設してもよいし、ガラス板12に粘着剤によって貼合してもよい。光反射面32とは、ガラス板12の光出射面26に対向する主平面である。また、入光端面28とは、光源18と対向するガラス板12の端面である。非入光端面34、36、38とは、入光端面28を除くガラス板12の端面である。
【0023】
なお、反射シート20の詳細を以下に述べるが、反射シート20を用いる以外に、ガラス板12の光反射面32及び非入光端面34,36,38に印刷や塗布等により反射膜を形成してもよい。
【0024】
反射シート20を構成する樹脂シートの材質として、アクリル樹脂を例示するが、これに限定されず、例えば、PET樹脂等のポリエステル樹脂、ウレタン樹脂、及びそれらを組み合わせてなる材料等を用いることができる。
【0025】
反射シート20を構成する光反射部材としては、例えば、樹脂に気泡や粒子を内包させた膜や、金属蒸着フィルム等を用いることができる。
【0026】
反射シート20には粘着層が設けられ、ガラス板12に貼合されてもよい。反射シート20に設けられる粘着層としては、例えば、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、ウレタン樹脂、合成ゴム等を用いることができる。
【0027】
反射シート20の厚さは特に限定されないが、例えば0.01〜0.50mmのものを用いることができる。
【0028】
各種光学シート22には、乳白色のアクリル樹脂製フィルム等を用いることができる。各種光学シート22は、ガラス板12の光出射面26から出射した光を拡散するため、液晶パネル16の背面側には輝度ムラのない均一な光が照射される。なお、各種光学シート22は、ガラス板12に当接しないよう所定位置に対向して配設される。
【0029】
〈ガラス板12の物性〉
ガラス板12は、透明度の高いガラスによって構成されている。実施形態では、ガラス板12として用いられるガラスの材料として、多成分系の酸化物ガラスが用いられている。
【0030】
具体的には、ガラス板12として、光路長50mmでの、波長400〜700nmにおける平均内部透過率が90%以上であるガラスを用いることが好ましい。これにより、ガラス板12に入射した光の減衰を極力抑えることができる。光路長50mmでの透過率は、ガラス板12を主平面に垂直な方向で割断することにより、当該ガラス板の中心部分から、縦50mm×横50mmの寸法で採取され、相互に対向する第1および第2の割断面が、算術平均粗さRa≦0.03μmとなるようにされたサンプルAにおいて、前記第1の割断面から法線方向の50mm長で、光路長50mmでの測定が可能な分光測定装置(たとえば、UH4150:日立ハイテクノロジーズ社製)によって、スリット等で入射光のビーム幅を板厚よりも狭くしたうえで、測定する。このようにして得られた光路長50mmでの透過率から、表面での反射による損失を除去することにより、光路長50mmでの内部透過率が得られる。光路長50mmでの、波長400〜700nmにおける平均内部透過率は、92%以上が好ましく、95%以上がより好ましく、98%以上が更に好ましく、99%以上が特に好ましい。
【0031】
ガラス板12として用いられるガラスの鉄の含有量の総量Aは、100質量ppm以下であることが、上述した光路長50mmでの波長400〜700nmにおける平均内部透過率を満たすうえで好ましく、40質量ppm以下であることがより好ましく、20質量ppm以下であることがさらに好ましい。一方、ガラス板12として用いられるガラスの鉄の含有量の総量Aは、5質量ppm以上であることが、多成分系の酸化物ガラス製造時において、ガラスの溶解性を向上させるうえで好ましく、8質量ppm以上であることがより好ましく、10質量ppm以上であることがさらに好ましい。なお、ガラス板12として用いられるガラスの鉄の含有量の総量Aは、ガラス製造時に添加する鉄の量により調節できる。
【0032】
本明細書においては、ガラスの鉄の含有量の総量Aを、Fe
2O
3の含有量として表しているが、ガラス中に存在する鉄がすべてFe
3+(3価の鉄)として存在しているわけではない。通常、ガラス中にはFe
3+とFe
2+(2価の鉄)が同時に存在している。Fe
2+およびFe
3+は、波長400〜700nmの範囲に吸収が存在するが、Fe
2+の吸収係数(11cm
−1 Mol
−1)はFe
3+の吸収係数(0.96cm
−1 Mol
−1)よりも1桁大きいため、波長400〜700nmにおける内部透過率をより低下させる。そのため、Fe
2+の含有量が少ないことが、波長400〜700nmにおける内部透過率を高めるうえで好ましい。
【0033】
ガラス板12として用いられるガラスのFe
2+の含有量Bは、20質量ppm以下であることが、有効光路長で上述した可視光域の平均内部透過率を満たすうえで好ましく、10質量ppm以下であることがより好ましく、5質量ppm以下であることがさらに好ましい。一方、ガラス板12として用いられるガラスのFe
2+の含有量Bは、0.01質量ppm以上であることが、多成分系の酸化物ガラス製造時において、ガラスの溶解性を向上させるうえで好ましく、0.05質量ppm以上であることがより好ましく、0.1質量ppm以上であることがさらに好ましい。
【0034】
なお、ガラス板12として用いられるガラスのFe
2+の含有量は、ガラス製造時に添加する酸化剤の量、または溶解温度等により調節できる。ガラス製造時に添加する酸化剤の具体的な種類とそれらの添加量については後述する。Fe
2O
3の含有量Aは、蛍光X線測定によって求めた、Fe
2O
3に換算した全鉄の含有量(質量ppm)である。Fe
2+の含有量BはASTM C169−92に準じて測定した。なお、測定したFe
2+の含有量はFe
2O
3に換算して表記した。
【0035】
ガラス板12として用いられるガラスの組成の具体例を以下に示す。但し、ガラス板12として用いられるガラスの組成はこれらに限定されない。
【0036】
ガラス板12として用いられるガラスの一構成例(構成例A)は、酸化物基準の質量百分率表示で、SiO
2を60〜80%、Al
2O
3を0〜7%、MgOを0〜10%、CaOを0〜20%、SrOを0〜15%、BaOを0〜15%、Na
2Oを3〜20%、K
2Oを0〜10%、Fe
2O
3を5〜100質量ppm含む。
【0037】
ガラス板12として用いられるガラスの別の一構成例(構成例B)は、酸化物基準の質量百分率表示で、SiO
2を45〜80%、Al
2O
3を7%超30%以下、B
2O
3を0〜15%、MgOを0〜15%、CaOを0〜6%、SrOを0〜5%、BaOを0〜5%、Na
2Oを7〜20%、K
2Oを0〜10%、ZrO
2を0〜10%、Fe
2O
3を5〜100質量ppm含む。
【0038】
ガラス板12として用いられるガラスのさらに別の一構成例(構成例C)は、酸化物基準の質量百分率表示で、SiO
2を45〜70%、Al
2O
3を10〜30%、B
2O
3を0〜15%、MgO、CaO、SrOおよびBaOを合計で5〜30%、Li
2O、Na
2OおよびK
2Oを合計で0%以上、3%未満、Fe
2O
3を5〜100質量ppm含む。
【0039】
しかしながら、ガラス板12として用いられるガラスはこれらに限定されるものではない。
【0040】
上記した成分を有する本実施形態のガラス板12のガラスの組成の各成分の組成範囲について、以下に説明する。なお、各組成の含有量の単位はいずれも酸化物基準の質量百分率表示または質量ppm表示であり、それぞれ単に「%」「ppm」と表す。
【0041】
SiO
2は、ガラスの主成分である。SiO
2の含有量は、ガラスの耐候性、失透特性を保つため、酸化物基準の質量百分率表示で、構成例Aにおいては、好ましくは60%以上、より好ましくは63%以上であり、構成例Bにおいては、好ましくは45%以上、より好ましくは50%以上であり、構成例Cにおいては、好ましくは45%以上、より好ましくは50%以上である。
【0042】
一方、SiO
2の含有量は、溶解を容易にし、泡品質を良好なものとするために、またガラス中の二価鉄(Fe
2+)の含有量を低く抑え、光学特性を良好なものとするため、構成例Aにおいては、好ましくは80%以下、より好ましくは75%以下であり、構成例Bにおいては、好ましくは80%以下、より好ましくは70%以下であり、構成例Cにおいては、好ましくは70%以下、より好ましくは65%以下である。
【0043】
Al
2O
3は、構成例B及びCにおいてはガラスの耐候性を向上させる必須成分である。本実施形態のガラスにおいて実用上必要な耐候性を維持するためには、Al
2O
3の含有量は、構成例Aにおいては、好ましくは1%以上、より好ましくは2%以上であり、構成例Bにおいては、好ましくは7%超、より好ましくは10%以上であり、構成例Cにおいては、好ましくは10%以上、より好ましくは13%以上である。
【0044】
但し、二価鉄(Fe
2+)の含有量を低く抑え、光学特性を良好なものとし、泡品質を良好なものとするため、Al
2O
3の含有量は、構成例Aにおいては、好ましくは7%以下、より好ましくは5%以下であり、構成例Bにおいては、好ましくは30%以下、より好ましくは23%以下であり、構成例Cにおいては、好ましくは30%以下、より好ましくは20%以下である。
【0045】
B
2O
3は、ガラス原料の溶融を促進し、機械的特性や耐候性を向上させる成分であるが、揮発による脈理(ream)の生成、炉壁の侵食等の不都合が生じないために、B
2O
3の含有量は、ガラスAにおいては、好ましくは5%以下、より好ましくは3%以下であり、構成例B及びCにおいては、好ましくは15%以下、より好ましくは、12%以下である。
【0046】
Li
2O、Na
2O、及び、K
2Oといったアルカリ金属酸化物は、ガラス原料の溶融を促進し、熱膨張、粘性等を調整するのに有用な成分である。
【0047】
そのため、Na
2Oの含有量は、構成例Aにおいては、好ましくは3%以上、より好ましくは、8%以上である。Na
2Oの含有量は、構成例Bにおいては、好ましくは7%以上、より好ましくは、10%以上である。但し、溶解時の清澄性を保持し、製造されるガラスの泡品質を保つために、Na
2Oの含有量は、構成例A及びBにおいては、20%以下とするのが好ましく、15%以下とするのがさらに好ましく、構成例Cにおいては、3%以下とするのが好ましく、1%以下とするのがより好ましい。
【0048】
また、K
2Oの含有量は、構成例A及びBにおいては、好ましくは10%以下、より好ましくは、7%以下であり、構成例Cにおいては、好ましくは2%以下、より好ましくは、1%以下である。
【0049】
また、Li
2Oは、任意成分であるが、ガラス化を容易にし、原料に由来する不純物として含まれる鉄含有量を低く抑え、バッチコストを低く抑えるために、構成例A、B及びCにおいて、Li
2Oを2%以下含有させることができる。
【0050】
また、これらアルカリ金属酸化物の合計含有量(Li
2O+Na
2O+K
2O)は、溶解時の清澄性を保持し、製造されるガラスの泡品質を保つために、構成例A及びBにおいては、好ましくは5%〜20%、より好ましくは8%〜15%であり、構成例Cにおいては、好ましくは0%〜2%、より好ましくは、0%〜1%である。
【0051】
MgO、CaO、SrO、及びBaOといったアルカリ土類金属酸化物は、ガラス原料の溶融を促進し、熱膨張、粘性等を調整するのに有用な成分である。
【0052】
MgOは、ガラス溶解時の粘性を下げ、溶解を促進する作用がある。また、比重を低減させ、ガラス板に疵をつきにくくする作用があるために、構成例A、B及びCにおいて、含有させることができる。また、ガラスの熱膨張係数を低く、失透特性を良好なものとするために、MgOの含有量は、構成例Aにおいては、好ましくは10%以下、より好ましくは8%以下であり、構成例Bにおいては、好ましくは15%以下、より好ましくは12%以下であり、構成例Cにおいては、好ましくは10%以下、より好ましくは5%以下である。
【0053】
CaOは、ガラス原料の溶融を促進し、また粘性、熱膨張等を調整する成分であるので、構成例A、B及びCにおいて含有させることができる。上記の作用を得るためには、構成例Aにおいては、CaOの含有量は、好ましくは3%以上、より好ましくは5%以上である。また、失透を良好にするためには、構成例Aにおいては、好ましくは20%以下、より好ましくは10%以下であり、構成例Bにおいては、好ましくは6%以下であり、より好ましくは4%以下である。
【0054】
SrOは、熱膨張係数の増大及びガラスの高温粘度を下げる効果がある。かかる効果を得るために、構成例A、B及びCにおいて、SrOを含有させることができる。但し、ガラスの熱膨張係数を低く抑えるため、SrOの含有量は、構成例A及びCにおいては、15%以下とするのが好ましく、10%以下とするのがより好ましく、構成例Bにおいては、5%以下とするのが好ましく、3%以下とするのがより好ましい。
【0055】
BaOは、SrO同様に熱膨張係数の増大及びガラスの高温粘度を下げる効果がある。上記の効果を得るためにBaOを含有させることができる。但し、ガラスの熱膨張係数を低く抑えるため、構成例A及びCにおいては、15%以下とするのが好ましく、10%以下とするのがより好ましく、構成例Bにおいては、5%以下とするのが好ましく、3%以下とするのがより好ましい。
【0056】
また、これらアルカリ土類金属酸化物の合計含有量(MgO+CaO+SrO+BaO)は、熱膨張係数を低く抑え、失透特性を良好なものとし、強度を維持するために、構成例Aにおいては、好ましくは10%〜30%、より好ましくは13%〜27%であり、構成例Bにおいては、好ましくは1%〜15%、より好ましくは3%〜10%であり、構成例Cにおいては、好ましくは5%〜30%、より好ましくは10%〜20%である。
【0057】
本実施形態のガラス板12のガラスのガラス組成においては、ガラスの耐熱性及び表面硬度の向上のために、任意成分としてZrO
2を、構成例A、B及びCにおいて、10%以下、好ましくは5%以下含有させてもよい。10%以下とすることでガラスが失透しにくくなる。
【0058】
本実施形態のガラス板12のガラスのガラス組成においては、ガラスの溶解性向上のため、Fe
2O
3を、構成例A、B及びCにおいて、5〜100ppm含有させてもよい。なお、Fe
2O
3量の好ましい範囲は上述のとおりである。
【0059】
また、本実施形態のガラス板12のガラスは、清澄剤としてSO
3を含有してもよい。この場合、SO
3含有量は、質量百分率表示で0%超、0.5%以下が好ましい。0.4%以下がより好ましく、0.3%以下がさらに好ましく、0.25%以下であることがさらに好ましい。
【0060】
また、本実施形態のガラス板12のガラスは、酸化剤及び清澄剤としてSb
2O
3、SnO
2及びAs
2O
3のうちの一つ以上を含有してもよい。この場合、Sb
2O
3、SnO
2またはAs
2O
3の含有量は、質量百分率表示で0〜0.5%が好ましい。0.2%以下がより好ましく、0.1%以下がさらに好ましく、実質的に含有しないことがさらに好ましい。
【0061】
ただし、Sb
2O
3、SnO
2及びAs
2O
3は、ガラスの酸化剤として作用するため、ガラスのFe
2+の量を調節する目的により上記範囲内で添加してもよい。ただし、環境面からはAs
2O
3を実質的に含有しないことが好ましい。
【0062】
また、本実施形態のガラス板12のガラスは、NiOを含有してもよい。NiOを含有する場合、NiOは、着色成分としても機能するので、NiOの含有量は、上記したガラス組成の合量に対し、10ppm以下とするのが好ましい。特に、NiOは、波長400〜700nmにおけるガラス板の内部透過率を低下させないという観点から、1.0ppm以下とするのが好ましく、0.5ppm以下とすることがより好ましい。
【0063】
本実施形態のガラス板12のガラスは、Cr
2O
3を含有してもよい。Cr
2O
3を含有する場合、Cr
2O
3は、着色成分としても機能するので、Cr
2O
3の含有量は、上記したガラス組成の合量に対し、10ppm以下とするのが好ましい。特に、Cr
2O
3は、波長400〜700nmにおけるガラス板の内部透過率を低下させないという観点から、1.0ppm以下とするのが好ましく、0.5ppm以下とすることがより好ましい。
【0064】
本実施形態のガラス板12のガラスは、MnO
2を含有してもよい。MnO
2を含有する場合、MnO
2は、可視光を吸収する成分としても機能するので、MnO
2の含有量は、上記したガラス組成の合量に対し、50ppm以下とするのが好ましい。特に、MnO
2は、波長400〜700nmにおけるガラス板の内部透過率を低下させないという観点から、10ppm以下とするのが好ましい。
【0065】
本実施形態のガラス板12のガラスは、TiO
2を含んでいてもよい。TiO
2を含有する場合、TiO
2は、可視光を吸収する成分としても機能するので、TiO
2の含有量は、上記したガラス組成の合量に対し、1000ppm以下とするのが好ましい。TiO
2は、波長400〜700nmにおけるガラス板の内部透過率を低下させないという観点から、含有量を500ppm以下とすることがより好ましく、100ppm以下とすることが特に好ましい。
【0066】
本実施形態のガラス板12のガラスは、CeO
2を含んでいてもよい。CeO
2には鉄のレドックスを下げる効果があり、全鉄量に対するFe
2+量の比率を小さくすることができる。一方で、鉄のレドックスを3%未満に下がることを抑制するためにも、CeO
2の含有量は、上記したガラス組成の合量に対し、1000ppm以下とするのが好ましい。また、CeO
2の含有量は、500ppm以下とするのがより好ましく、400ppm以下とするのがさらに好ましく、300ppm以下とするのが特に好ましく、250ppm以下とするのが最も好ましい。
【0067】
本実施形態のガラス板12のガラスは、CoO、V
2O
5及びCuOからなる群より選ばれる少なくとも1種の成分を含んでいてもよい。これらの成分を含有する場合、可視光を吸収する成分としても機能するので、前記成分の含有量は、上記したガラス組成の合量に対し、10ppm以下とするのが好ましい。特に、これら成分は、波長400〜700nmにおけるガラス板の内部透過率を低下させないように、実質的に含有しないことが好ましい。
【0068】
〈ガラス板12の形状〉
図3は、ガラス板12の全体斜視図であり、
図4はガラス板12の端面拡大図であり、
図5〜7は、ガラス板12の断面拡大図である。なお、
図5〜7では、主平面および入光端面28に対して垂直な断面の一部を、拡大して表示している。
【0069】
平面視矩形状のガラス板12は、光出射面26、光反射面32、入光端面28、非入光端面34、36、38、入光側面取り面40、及び非入光側面取り面42を有している。
【0070】
ここで、光出射面26及び光反射面32が本実施形態の主平面に相当し、入光端面28が本実施形態の第1端面に相当する。また、非入光端面34、36、38が本実施形態の第2端面に相当し、入光側面取り面40が本実施形態の面取り面に相当する。
【0071】
光出射面26は、液晶パネル16(
図1参照)と対向する面である。実施形態では、光出射面26を平面視において略矩形状としたが、光出射面26の形状はこれに限定されるものではない。また、光出射面26の大きさは、液晶パネル16に対応して決定されるため、特に限定されるものではないが、導光板としてガラス板12を使用する場合には、例えば、300mm×300mm以上のサイズが好適であり、500mm×500mm以上のサイズがより好適である。ガラス板12は高い剛性を有するため、サイズが大きいほどその効果を発揮する。
【0072】
光反射面32は、光出射面26と対向する面である。光反射面32は、光出射面26に対して平行となるよう構成されている。また、光反射面32の形状及びサイズは、光出射面26と略同一となるよう構成されている。
【0073】
なお、光反射面32は光出射面26に対して必ずしも平行とする必要はなく、段差や傾斜を設けた構成としてもよい。また、光反射面32のサイズも光出射面26と異なるサイズとしてもよい。
【0074】
光反射面32には、複数の円形状の反射ドット24A、24B、24Cが備えられる。反射ドットの配置は、
図2の如く格子状(グリッド)であってもよいし、その他の任意のパターンであってもよいし、ランダムであってもよいが、光出射面26から出射する光の輝度の分布が均一になるよう、適宜調整される。反射ドット24A〜24Cは、樹脂をドット状にガラス板12に印刷等の方法で形成することや、反射ドット24A〜24Cが印刷された透明樹脂フィルムをガラス板12に貼合することや、反射ドット24A〜24Cが印刷された透明樹脂フィルムをガラス板12に載置することや、反射ドット24A〜24Cの代わりに入射した光を反射するような溝を光反射面32に形成することや、レーザー加工やケミカルエッチング加工によりガラス板12の表面に加工することによっても、同等の効果を得ることができる。反射ドット24A〜24Cは散乱粒子または気泡を含有していてもよい。入光端面28から入射した光の輝度は強いが、その輝度は、ガラス板12の内部で繰り返し反射しながら進行するに従い漸次低下していく。
【0075】
このため実施形態では、入光端面28から非入光端面38に向けて、反射ドット24A、24B、24Cの大きさを異ならせている。具体的には、入光端面28に近い領域における反射ドット24Aの直径(L
A)は小さく設定されており、これより光の進行方向に向かうに従い反射ドット24Bの直径(L
B)、及び反射ドット24Cの直径(L
C)が大きくなるよう設定されている(L
A<L
B<L
C)。反射ドットの直径は、光出射面26から出射する光の輝度の分布が均一になるよう、適宜調整される。
【0076】
このように、反射ドット24A、24B、24Cの大きさをガラス板12の内部の光の進行方向に向けて変化させることにより、光出射面26から出射する出射光の輝度を均一化でき、輝度ムラの発生を抑制することができる。なお、反射ドット24A、24B、24Cの大きさに代えて、反射ドット24A、24B、24Cの数密度をガラス板12の内部の光の進行方向に向けて変化させることによっても、同等の効果を得ることができる。また、反射ドット24A、24B、24Cに代えて、入射した光を反射するような溝を光反射面32に形成することによっても、同等の効果を得ることができる。
【0077】
ガラス板12の非入光端面34、36、38は、光源18からの光は入光されないため、その表面を入光端面28ほどに高精度に加工しなくともよいが、非入光端面34、36、38の算術平均粗さRaは、入光端面28の算術平均粗さRaと同等、もしくは以下であってもよい。この場合、非入光端面34、36、38の表面粗さRaは、0.8μm以下とされている。ただし、端面で光が散乱されて輝度ムラが生じるのを抑制するために、非入光端面34、36、38の表面粗さRaは、好ましくは0.4μm以下であり、より好ましくは0.2μm以下であり、さらに好ましくは0.1μm以下である。なお、本明細書において、表面粗さRaと記載した場合、JIS B 0601〜JIS B 0031による算術平均粗さ(中心線平均粗さ)を指すものとする。
【0078】
入光端面28は、ガラス板12であるガラスの製造時に研磨具によって研磨加工されてもよい。入光端面28の表面粗さRaは、光源18からの光をガラス板12の内部に有効に入光させるために0.1μm以下であり、好ましくは0.03μm未満であり、さらに好ましくは0.01μm以下であり、特に好ましくは0.005μm以下である。よって、光源18からガラス板12の内部に入光される光の入光効率が高められている。非入光端面34、36、38の表面粗さRaは、生産効率を向上させる観点から入光端面28の表面粗さRaよりも大きくしてもよいし、非入光端面34、36、38も入光端面28と同様の取扱いができるように、入光端面28の表面粗さRaと同等でもよい。
【0079】
光出射面26と入光端面28との間に、光出射面26に隣接する入光側面取り面40が備えられている。同様に、光反射面32と入光端面28との間に、光反射面32に隣接する入光側面取り面40が備えられている。
【0080】
本実施形態では、光出射面26側と光反射面32側の双方に、入光側面取り面40を備えたものを例示しているが、いずれか一方にのみ入光側面取り面40を備えた構成としても良い。また、入光側面取り面40の表面粗さRaは0.8μm以下であり、0.5μm以下であることが好ましく、0.1μm以下であることがより好ましく、0.05μm以下であることがさらに好ましく、0.03μm未満であることがことさらに好ましい。入光側面取り面40の表面粗さRaを0.1μm以下とすることで、ガラス板12から出射される光の輝度ムラの発生を抑制することができる。また、検査工程における散乱光の発生も抑制することができ、入光端面28および入光側面取り面40の表面状態の測定精度を向上させることができる。
【0081】
生産効率を向上させる観点からは、入光端面28の表面粗さRaは入光側面取り面40より小さい(入光端面28のRa<入光側面取り面40のRa)ことが好ましいが、入光端面28の表面粗さRaと入光側面取り面40の表面粗さRaが同等でもよい。なお、非入光端面34、36、38については、切断加工処理を行った面をそのまま非入光端面34、36、38として使用してもよい。
【0082】
図4に示すように入光側面取り面40の幅寸法をX(mm)とすると、この幅寸法Xの面取り面長手方向(以下、単に長手方向という)における平均値X
aveは0.1mm〜0.5mmであることが好ましい。X
aveが0.5mm以下であれば入光側面取り面40の幅寸法を大きくすることができる。X
aveが0.1mm以上であれば、後述するXの誤差を小さくすることができる。
【0083】
入光側面取り面40の幅寸法Xには、実際には長手方向において面取り加工時の加工ムラに起因する誤差が生じる。このように、入光側面取り面40の幅寸法Xの長手方向における平均値がX
ave(mm)である場合に、Xの長手方向における誤差はX
aveの50%以内であることが好ましい。すなわち、Xは、0.5X
ave≦X≦1.5X
aveを満たす。より好ましくは40%以内であり、更に好ましくは30%以内であり、特に好ましくは20%以内である。これにより、長手方向における、入光側面取り面40の幅寸法及び入光端面28の幅寸法の誤差が小さくなるため、面状発光装置14で発生する輝度ムラを小さくすることができる。
【0084】
本実施形態のように薄型化が要求されている面状発光装置14では、ガラス板12の厚さも薄くする必要がある。このため、本実施形態に係るガラス板12の厚さは、例えば0.7〜3.0mmである。ガラス板12の厚さが3.0mm以下であることで、面状発光装置14を薄くすることができ、0.7mm以上であることで、十分な剛性を得ることができる。なお、ガラス板12の厚さは、この値に限定されるものではないが、この厚さであれば、厚さ4mm以上のアクリル製の導光板を有する面状発光装置と比較して、十分な強度を備えた面状発光装置14を提供できる。
【0085】
次に、
図5〜7に基づいて説明する。
図5は、ガラス板12の特徴を拡大して示した説明図であり、主平面である光出射面26及び光反射面32と、第1端面である入光端面28とに対して垂直な断面図である。
図6は、ガラス板12の入光端面28と入光側面取り面40の境界付近を特に拡大して示した説明図である。
図7は、ガラス板12の光出射面26と入光側面取り面40の境界付近を特に拡大して示した説明図である。
【0086】
なお、
図1では、形状が直線状の入光端面28および光出射面26を示したが、実際には入光端面28および光出射面26の形状は直線状、または、曲線状である。従来のガラスの端面および主面においても、設計上は直線状になっているものはあっても、実際には端面および主面が曲線状となっていることがある。
【0087】
したがって、
図5〜7に示すように、光出射面26および入光端面28に対して垂直な断面において、入光端面28または光出射面26の曲線を最小二乗法により近似した直線を、それぞれ入光端面28の仮想線T
1または光出射面26の仮想線T
2とする。
【0088】
また、入光側面取り面40も同様に
図5〜7に示すように実際には直線状、または、曲線状である。従来のガラスの面取り面においても、設計上は直線状になっているものはあっても、実際には面取り面が曲線状となっていることがある。
【0089】
したがって、光出射面26及び入光端面28に対して垂直な断面において、入光側面取り面40に接する接線で、接触長が最も長くなる点における接線を入光側面取り面40の仮想線T
3とする。
【0090】
本実施形態のガラス板12は、光出射面26及び入光端面28に対して垂直な断面において、入光側面取り面40に接する接線で、接触長が最も長くなる点における接線を入光側面取り面40の仮想線T
3が仮想線T
1に対して所定の傾き角度θを持った入光側面取り面40を備えている。傾き角度θは特に限定されないが、ガラスの破損を効果的に抑制するためにも、θは30°〜60°が好ましく、40°〜50°がより好ましい。また、光源の光量を損失せず有効利用するためには、θは、0.01≦tanθ≦0.75を満たすことが好ましい。
【0091】
光出射面26および入光端面28に対して垂直な断面において、入光端面28の仮想線T
1と入光側面取り面40の仮想線T
3とが交差する第1交差点P
1を通り、仮想線T
1に垂直な直線を、入光側面取り面40に対して延長したとき、その直線と入光側面取り面40の交差する点(垂線の足)を第2交差点P
2とする。第1交差点P
1と第2交差点P
2を結ぶ線分L
1の長さは10μm以下である。これにより、検査工程において入光端面28と入光側面取り面40の境界部付近で散乱する光量を低減することができ、入光端面28の寸法の測定精度を向上させることができる。なお、入光端面28および入光側面取り面40がいずれも理想的な直線状である場合、第1交差点P
1と第2交差点P
2は一致し、線分L
1の長さは0μmである。線分L
1の長さは好ましくは7μm以下であり、より好ましくは5μm以下、3μm以下、1μm以下である。機械的強度および生産性を向上する観点からは線分L
1の長さは0.1μm以上であることが好ましい。
【0092】
また、光出射面26および入光端面28に対して垂直な断面において、第2交差点P
2における入光側面取り面40の曲率半径R
1は、110μm以下である。これにより、検査工程において入光端面28と入光側面取り面40の境界部付近で散乱する光量を低減することができ、入光端面28の寸法の測定精度を向上させることができる。なお、入光端面28および入光側面取り面40がいずれも理想的な直線状である場合、第4交差点は曲率を持たない点であるが、曲率半径R
1が0μmであると見なす。曲率半径R
1は好ましくは77μm以下であり、より好ましくは55μm以下、33μm以下、11μm以下である。機械的強度および生産性を向上する観点からは曲率半径R
1は1μm以上であることが好ましい。
【0093】
光出射面26および入光端面28に対して垂直な断面において、光出射面26の仮想線T
2と入光側面取り面40の仮想線T
3とが交差する第3交差点P
3を通り、仮想線T
2に垂直な直線を入光側面取り面40に対して延長したとき、その直線と入光側面取り面40の交差する点(垂線の足)を第4交差点P
4とする。第3交差点P
3と第4交差点P
4を結ぶ線分L
2の長さは10μm以下であることが好ましい。これにより、検査工程において光出射面26と入光側面取り面40の境界部付近で散乱する光量を低減することができ、入光側面取り面40の寸法の測定精度を向上させることができる。なお、光出射面26および入光側面取り面40がいずれも理想的な直線状である場合、第3交差点P
3と第4交差点P
4は一致し、線分L
2の長さは0μmである。線分L
2の長さは好ましくは7μm以下であり、より好ましくは5μm以下、3μm以下、1μm以下である。機械的強度および生産性を向上する観点からは線分L
2の長さは0.1μm以上であることが好ましい。
【0094】
また、光出射面26および入光端面28に対して垂直な断面において、第4交差点P
4における入光側面取り面40の曲率半径R
2は、110μm以下であることが好ましい。これにより、検査工程において光出射面26と入光側面取り面40の境界部付近で散乱する光量を低減することができ、入光側面取り面40の寸法の測定精度を向上させることができる。なお、光出射面26、入光端面28および入光側面取り面40がいずれも理想的な直線状である場合、第4交差点は曲率を持たない点であるが、曲率半径R
2が0μmであると見なす。曲率半径R
2は好ましくは77μm以下であり、より好ましくは55μm以下、33μm以下、11μm以下である。機械的強度および生産性を向上する観点からは曲率半径R
2は1μm以上であることが好ましい。
【0095】
なお、光出射面26および入光端面28に対して垂直な断面における、上記のようなガラス板12の形状の特徴は、いずれもキーエンス社製画像寸法測定器IM−6120を用いて、次の手順を踏むことで測定、評価することができる。なお、本測定方法は、オフライン検査においてのみ用いることができるものであり、特に高精度な形状評価に適している。
1;ガラス板12の光出射面26および入光端面28に対して垂直な断面に、断面全面のみを覆うように遮光膜を設ける。
2;ステージ上に、光出射面26および入光端面28に対して垂直な断面が水平となるよう、ガラス板12を載置する。
3;ガラス板12の光出射面26および入光端面28に対して垂直な断面の輪郭から、「基本測定」タブの「線−線」モードにより、ガラス板12の板厚を測定する。輪郭は、画像の白黒の境界として認識できる。「線−線」モードにおいては、輪郭のうち光出射面26および光反射面32に相当する直線上で、それぞれ任意の2点を手動で選択することで、光出射面26および光反射面32の近似直線が自動的に得られ、板厚を測定できる。
4;ガラス板12の光出射面26および入光端面28に対して垂直な断面の輪郭、および測定された板厚を元に、先述の線分L
1、L
2や曲率半径R
1、R
2を評価する。
【0096】
〔ガラス板12の製造方法〕
図8〜10は、ガラス板12の製造方法を説明するための図である。
図8は、ガラス板12の製造方法を示す工程図である。
図9は、ガラス素材44の平面図であり、
図10は、ガラス基材46の平面図である。
【0097】
ガラス板12を製造するには、まず
図9のガラス素材44を用意する。ガラス素材の厚さは0.7〜3.0mmであり、光路長50mmでの、波長400〜700nmにおける平均内部透過率が90%以上のものである。ガラス素材44は、ガラス板12の既定形状よりも大きい、もしくは同じ形状とされている。
【0098】
〈切断工程〉
ガラス素材44には、まず
図8のステップ(S10)で示す切断工程が実施される。切断工程(S10)では、切削装置を用いて
図9の破線で示す各位置(1箇所の入光端面側の位置と3箇所の非入光端面側の位置)の少なくとも1箇所において切断加工が実施される。なお、切断加工は必ずしも1箇所の入光端面側の位置と3箇所の非入光端面側の位置のいずれかに対して実施されなくてもよく、いずれの箇所においても切断をおこなわずガラス素材44の形状をそのまま用いてもよい。
【0099】
切断加工を実施することにより、
図9のガラス素材44から
図10のガラス基材46が切り出される。なお、実施形態では、ガラス板12が平面視で矩形状とされているため、1箇所の入光端面側の位置と3箇所の非入光端面側の位置に対して切断加工を実施したが、切断位置は、ガラス板12の形状に応じて適宜選定される。
【0100】
〈第1面取り工程〉
図8のように、切断工程(S10)が終了すると、第1面取り工程(S12)を実施してもよい。第1面取り工程(S12)では、研削装置を用いて光出射面26と入光端面28との間、及び光反射面32と入光端面28との間を面取り加工する。これにより、入光側面取り面40’(不図示)が形成される。また、第1面取り工程(S12)では、光出射面26と非入光端面38との間、及び光反射面32と非入光端面38との間を面取り加工し、非入光側面取り面42をそれぞれ形成する。
【0101】
なお、光出射面26と非入光端面34との間、光反射面32と非入光端面34との間、光出射面26と非入光端面36との間、及び光反射面32と非入光端面36の間の全て、或いはいずれか一箇所に非入光側面取り面42を形成する場合には、この第1面取り工程(S12)において面取り加工を実施してもよい。
【0102】
第1面取り工程(S12)においては、非入光端面34、36、38に対し、研削処理又は研磨処理も実施されてもよい。非入光端面34、36、38に対する研削処理又は研磨処理を実施する時期は、非入光側面取り面42を形成する前段でも後段でもよく、同時に行うこととしてもよい。なお、非入光端面34、36、38、および、入光端面28は、切断加工を実施した面をそのまま非入光端面34、36、38、および、入光端面28として使用してもよい。
【0103】
第1面取り工程(S12)は、後述する研磨工程(S14)と同時に行うこともできるが、研磨工程(S14)の前段で行うことが好ましい。つまり、第1面取り工程(S12)の後、研磨工程(S14)を行うことが好ましい。これにより、ガラス板12の形状に応じた加工を第1面取り工程(S12)で比較的速いレートで実施することができるため生産性が向上する。切断加工処理を行った面をそのまま非入光端面34、36、38、および入光端面28として使用する場合は、後述する研磨工程を行わなくてもよい。
【0104】
〈研磨工程〉
第1面取り工程(S12)が終了すると、次に研磨工程(S14)を実施してもよい。研磨工程(S14)では、
図10に示すガラス基材46の入光端面28に対して鏡面加工が実施され、これによって入光端面28が形成される。
【0105】
入光端面28を形成する際に使用する研磨具としては、砥石を用いてもよく、また砥石の他に、布、皮、ゴム等からなるバフやブラシ等を用いてもよく、その際、酸化セリウム、アルミナ、カーボランダム、コロイダルシリカ等の研磨剤を用いてもよい。中でも表面粗さを小さくする観点から、研磨具としてはバフと研磨剤を用いることが好ましい。
【0106】
〈第2面取り工程〉
研磨工程(S14)が終了すると、次に必要に応じて第2面取り工程(S16)を実施してもよい。第2面取り工程(S16)では、第1面取り工程(S12)で形成したガラス基材46の入光側面取り面40’に対して再度面取り加工が実施され、これによって好適には第1交差点P
1と第2交差点P
2を結ぶ線分L
1の長さが10μm以下である入光側面取り面40が形成される。
【0107】
入光側面取り面40を形成する際に使用する研磨具としては、硬度の高いものを用いることが好ましい。中でもレジンボンド砥石やゴム砥石が好ましい。砥粒がダイヤモンド、アルミナ、カーボランダム、酸化セリウムからなる群から選ばれるいずれか1つを含むことが好ましい。また、砥石の他に、布、皮、ゴム等からなるバフであってショアA硬度が80以上のものを用いてもよく、その際、酸化セリウム、アルミナ、カーボランダム、コロイダルシリカ等の研磨剤を用いてもよい。特に、表面粗さおよび線分L2の長さを小さくする観点から、研磨具としては粒度表示で#170以上のレジンボンド砥石やゴム砥石を用いることが好ましい。
【0108】
以上のS10〜S16に示す各工程を経ることにより、ガラス板12が製造される。なお、反射ドット24A、24B、24Cは、ガラス板12が製造された後に光反射面32に対して印刷等の方法で形成されてもよいし、反射ドット24A、24B、24Cを形成した後に、以上のS10〜S16に示す各工程を行ってもよい。
【0109】
なお、本実施形態のガラス板12を製造する方法は、上記のものに限定されない。例えば、第1面取り工程(S12)で得られた入光側面取り面40’の線分L
1の長さが10μm以下であれば、第2面取り工程(S16)を省略できる。また、切断工程(S10)において線分L
1の長さが10μm以下である入光側面取り面および表面粗さRaが0.1μm以下である入光端面を形成できる方法であれば、第1面取り工程(S12)、研磨工程(S14)、第2面取り工程(S16)をいずれも省略できる。
【0110】
〈検査工程〉
以上のS10〜S16に示す各工程を経ることにより、ガラス板12が製造された後、好ましくは検査工程が実施される。検査工程においては、ガラス板12の特に入光端面28および入光側面取り面40の端面性状(寸法および表面状態)を、検査装置100により測定する。検査工程では好ましくはオンライン検査(全数検査)が行われ、検査装置100としては光学系測定装置が用いられることが好ましい。これにより、入光端面28全体を非破壊の状態で、高速度でかつ高い精度で測定することができる。
【0111】
検査装置100は、
図10に示すY方向、すなわち入光端面28に対向する方向に受光面(不図示)が配置されることが好ましい。これにより、入光端面28および入光側面取り面40の端面性状を同時に測定することができる。検査装置100がX方向に検査装置を平行移動するか、X方向にガラス板12が平行移動することにより、入光端面28および入光側面取り面40の全面を非破壊で測定することができる。
【0112】
一方、
図11に示すように検査装置110を非入光端面36に対向する方向に受光面が配置された場合、精度が高い反面、入光端面28および入光側面取り面40の全面を非破壊で測定することはできない。このような方法は、例えばオフライン検査(抜き取り検査)では有効であるが、高精度の測定には製品を破壊しなければならないため、オンライン検査には適用できない。
なお、入光側面取り面40のみを測定する場合、
図10に示すZ方向、すなわち光出射面26に対向する方向に受光面が配置されてもよい。
【0113】
本実施形態のガラス板12は、検査工程において、入光端面28および入光側面取り面40の全面にわたり、十分高い精度で測定可能な端面性状を有している。これにより、入光端面28および入光側面取り面40の、長手方向における幅寸法の誤差を測定可能となる。
【0114】
以上、本発明の好ましい実施形態について詳述したが、本発明は上記した特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能なものである。
【0115】
〔実施例〕
以下に、実施例等により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの例によって限定されるものではない。
【0116】
以下の実験1、2では、ガラス板として、質量百分率表示で、SiO
2を71.6%、Al
2O
3を0.97%、MgOを3.6%、CaOを9.3%、Na
2Oを13.9%、K
2Oを0.05%、Fe
2O
3を0.005%含むガラス板(縦700mm、横700mm、板厚1.8mm)を使用した。該ガラス板は、フロート法により製造されたガラス板から切断加工工程において切り出したものである。(切り出しの際、割れ防止のためにガラス板のコーナー部をカットした。)該ガラス板は、光出射面と光反射面との間に4つの端面を有しており、4つの端面の内、1つの端面は入光端面であり、3つの端面は非入光端面である。
【0117】
切断加工処理の後に、第1面取り工程を実施した。第1面取り工程では、3つの非入光端面に対して研削処理を行った。その後、入光端面に対して研磨装置を用いて、種々の条件下で鏡面加工を行った。さらに、研削装置を用いて、該ガラス板の光出射面と非入光端面との間、光反射面と非入光端面との間、光出射面と入光端面との間、および光反射面と入光端面との間を面取り加工した。その後、研磨工程を実施し、入光端面をRaが0.01μmとなるように研磨加工した。
【0118】
(実験1)
上記研磨加工の後に、第2面取り工程を実施した。第2面取り工程では、第1面取り工程で研削した光出射面と入光端面との間、および光反射面と入光端面との間を再度、粒度表示#1500のダイヤモンド砥粒を含むレジンボンド砥石により面取り加工した。これにより入光側面取り面が得られた。
【0119】
これにより得られたガラス板の入光端面の拡大図を
図12に示す。このガラス板の光出射面及び入光端面に対して垂直な断面において、入光端面の仮想線と入光側面取り面の仮想線とが交差する点を第1交差点とし、第1交差点を通り入光端面の仮想線に垂直な直線を入光側面取り面に対して延長して、入光側面取り面と交差する点を第2交差点とするとき、第1交差点と第2交差点を結ぶ線分の長さL
1を、キーエンス社製画像寸法測定器IM−6120を用いて測定したところ、3μmであった。また、同様に、第2交差点における面取り面の曲率半径R
1を測定したところ、34μmであった。
【0120】
さらに、このガラス板の光出射面及び入光端面に対して垂直な断面において、光出射面の仮想線と入光側面取り面の仮想線とが交差する点を第3交差点とし、第3交差点を通り光出射面の仮想線に垂直な直線を入光側面取り面に対して延長して、入光側面取り面と交差する点を第4交差点とするとき、第3交差点と第4交差点を結ぶ線分の長さL
2を、キーエンス社製画像寸法測定器IM−6120を用いて測定したところ、4.2μmであった。また、同様に、第4交差点における面取り面の曲率半径R
2を測定したところ、51μmであった。
【0121】
このガラス板について、キーエンス社製画像寸法測定器IM−6120を用いて入光端面の幅寸法Wを測定したところ、1495μmであった。一方、オンライン検査を模してキーエンス社製マイクロスコープVHX−2000を用いて幅寸法Wを測定したところ、1501μmであった。したがって、2つの測定装置による寸法誤差は約0.4%であった。
【0122】
(実験2)
続いて、上記研磨加工の後に、第2面取り工程を実施していないガラス板について同様の評価を行った。
このガラス板の入光端面の拡大図を
図13に示す。このガラス板について同様に第1交差点と第2交差点を結ぶ線分の長さL
1を、キーエンス社製画像寸法測定器IM−6120を用いて測定したところ、32μmであった。また、第2交差点における面取り面の曲率半径R
1を測定したところ、340μmであった。
【0123】
さらに、このガラス板の第3交差点と第4交差点を結ぶ線分の長さL
2を、キーエンス社製画像寸法測定器IM−6120を用いて測定したところ、33μmであった。また、同様に、第4交差点における面取り面の曲率半径R
2を測定したところ、400μmであった。
【0124】
このガラス板について、キーエンス社製画像寸法測定器IM−6120を用いて入光端面の幅寸法Wを測定したところ、973μmであった。一方、オンライン検査で用いられるものと同様の測定装置であるキーエンス社製マイクロスコープVHX−2000を用いて幅寸法Wを測定したところ、1611μmであった。したがって、2つの測定装置による寸法誤差は約66%であった。
【0125】
図12、13は実験1、2で得られたガラス板をキーエンス社製マイクロスコープVHX−2000を用いて撮影した画像である。オンライン検査と同様に、
図10に示すY方向、すなわち入光端面に対向する方向に受光面が配置された状態で、マイクロスコープにより撮影した。
【0126】
ここで、入光端面28と入光側面取り面40との分岐点Aは、入光端面28上、かつ、仮想線T
1上にある点であり、入光端面28との接触長が最も長くなるよう決められる。分岐点Aは、入光側面取り面40との分岐点と、非入光側面取り面42との分岐点との2つの分岐点を有する。入光側面取り面40との分岐点と、非入光側面取り面42との分岐点とを結ぶ線分を入光端面の幅寸法Wとする。
【0127】
図12の画像では、分岐点Aの位置を画像の白黒(コントラスト)から明確に判別することができており、入光端面の幅寸法Wを高い精度で測定可能である。一方、
図13の画像では、分岐点Aの位置が画像のコントラストからは不明瞭になっており、幅寸法Wの測定精度が悪くなっていることが分かる。
【0128】
実験1、2より、寸法誤差を約1%以下とするためには、第1交差点と第2交差点を結ぶ線分の長さL
1を10μm以下とし、第2交差点における面取り面の曲率半径R
1を110μmとすればよいことが分かった。
【0129】
尚、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、適宜、変形、改良、等が可能である。その他、上述した実施形態における各構成要素の材質、形状、寸法、数値、形態、数、配置箇所、等は本発明を達成できるものであれば任意であり、限定されない。
【0130】
本出願は、2015年8月19日出願の日本特許出願、特願2015−161585に基づくものであり、その内容はここに参照として取り込まれる。