(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下において、本発明の内容について詳細に説明する。以下に記載する構成要件の説明は、本発明の代表的な実施態様や具体例に基づいてなされることがあるが、本発明はそのような実施態様や具体例に限定されるものではない。なお、本明細書において「〜」を用いて表される数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値を下限値および上限値として含む範囲を意味する。
【0014】
[一般式(1)で表される化合物]
本発明の発光材料は、下記一般式(1)で表される化合物からなることを特徴とする。また、本発明の有機発光素子は、下記一般式(1)で表される化合物を発光層の発光材料として含むことを特徴とする。そこで、一般式(1)で表される化合物について、まず説明する。
【化7】
【0015】
一般式(1)において、R
1〜R
4は各々独立に置換もしくは無置換のカルバゾリル基、置換もしくは無置換のアリール基、置換もしくは無置換のヘテロアリール基、置換もしくは無置換のアルキル基、または置換もしくは無置換のシクロアルキル基を表す。
ここでいうカルバゾリル基の結合位置はいずれであってもよいが、好ましいのは9−カルバゾリル基、3−カルバゾリル基であり、より好ましいのは9−カルバゾリル基である。
アリール基は、単環であっても融合環であってもよく、炭素数は6〜14が好ましく、6〜10がより好ましい。好ましい具体例としてフェニル基を挙げることができる。
ヘテロアリール基も、単環でも融合環でもよく、炭素数は2〜12が好ましく、3〜10がより好ましく、3〜6がさらに好ましい。具体例としてピリジル基、ピロリル基を挙げることができ、なかでも1−ピリジル基、2−ピリジル基、3−ピリジル基、1−ピロリル基、2−ピロリル基、3−ピロリル基を好ましく挙げることができる。
アルキル基は、直鎖状、分枝状のいずれであってもよく、炭素数は1〜12が好ましく、1〜6がより好ましく、1〜4がさらに好ましい。具体例としてメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基を挙げることができ、なかでもtert−ブチル基を好ましく挙げることができる。
シクロアルキル基は、単環でも融合環でもよく、炭素数が5〜12が好ましく、5〜7がより好ましい。具体例としてシクロヘプチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基を挙げることができ、なかでもシクロヘキシル基を好ましく挙げることができる。
【0016】
R
1〜R
4がとりうるカルバゾリル基、アリール基、ヘテロアリール基、アルキル基、シクロアルキル基は、それぞれ置換基を有していてもよい。置換基を有するときの置換位置や置換数は特に制限されない。各基の置換数は、0〜6個が好ましく、0〜4個がより好ましく、例えば0〜2個とすることも好ましい。複数の置換基を有するとき、それらは互いに同一であっても異なっていてもよいが、同一であることがより好ましい。置換基として、例えばヒドロキシ基、ハロゲン原子、シアノ基、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数1〜12のアルコキシ基、炭素数1〜12のアルキルチオ基、炭素数1〜12のアルキル置換アミノ基、炭素数2〜12のアシル基、炭素数6〜14のアリール基、炭素数3〜13のヘテロアリール基、炭素数12〜20のジアリールアミノ基、炭素数12〜20の置換もしくは無置換のカルバゾリル基、炭素数2〜10のアルケニル基、炭素数2〜10のアルキニル基、炭素数2〜10のアルコキシカルボニル基、炭素数1〜10のアルキルスルホニル基、炭素数1〜10のハロアルキル基、アミド基、炭素数2〜10のアルキルアミド基、炭素数3〜12のトリアルキルシリル基、炭素数4〜12のトリアルキルシリルアルキル基、炭素数5〜14のトリアルキルシリルアルケニル基、炭素数5〜14のトリアルキルシリルアルキニル基およびニトロ基等が挙げられる。これらの具体例のうち、さらに置換基により置換可能なものは置換されていてもよい。一般式(1)のR
1およびR
2がとりうるカルバゾリル基、アリール基、ヘテロアリール基、アルキル基、シクロアルキル基は、無置換であるものも好ましい。また、アルキル置換アリール基も好ましく、例えばトリル基、ジアルキルフェニル基、トリアルキルフェニル基を挙げることができ、より具体的には、1−トリル基、2−トリル基、3−トリル基、2,6−ジメチルフェニル基、2,4−ジメチルフェニル基、2,4,6−トリメチルフェニル基を挙げることができる。
【0017】
一般式(1)におけるR
1〜R
4は、各々独立に置換もしくは無置換の9−カルバゾリル基、置換もしくは無置換のフェニル基、置換もしくは無置換のピリジル基、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数5〜7のシクロアルキル基であることが好ましい。また、R
1〜R
4は各々独立に9−カルバゾリル基、フェニル基、トリル基、ジメチルフェニル基、トリメチルフェニル基、ビフェニル基、ピリジル基、ピロリル基、tert−ブチル基、またはシクロヘキシル基であることがより好ましい。
【0018】
一般式(1)におけるn1〜n4は、各々独立に0〜4のいずれかの整数を表し、0〜3のいずれかの整数を表すことが好ましく、0〜2のいずれかの整数を表すことがより好ましい。n1が2以上であるとき、複数のR
1は同一であっても異なっていてもよく、n2が2以上であるとき、複数のR
2は同一であっても異なっていてもよい。また、n3が2以上であるとき、複数のR
3は同一であっても異なっていてもよく、n4が2以上であるとき、複数のR
4は同一であっても異なっていてもよい。n1〜n4は、同一であってもよいし、異なっていてもよい。同一であるときは、例えばいずれも0である場合、いずれも1である場合、いずれも2である場合を例示することができる。また、異なる場合は、n1とn3が1であって、n2とn4が0である場合、n1とn2が1であって、n3とn4が0である場合を例示することができる。 一般式(1)におけるn1〜n4は、少なくとも1つが1〜4のいずれかの整数であることが好ましい。また、n1〜n4が各々独立に1〜4のいずれかの整数であることも好ましい。
【0019】
一般式(1)においてR
1〜R
4の少なくとも一つが存在するとき、その結合位置は、カルバゾール環の1〜8位のいずれであってもよい。好ましいのは2〜7位であり、より好ましいのは3、4、6、7位であり、さらに好ましいのは3、6位である。例えば、3位のみにR
1が結合している場合や、3位にR
1が結合し6位にR
2が結合している場合、3位にR
1とR
3が結合している場合や、3位にR
1とR
3が結合し6位にR
2とR
4が結合している場合を挙げることができる。一般式(1)においてR
1〜R
4が2つ以上存在する場合、それらは互いに同一であっても異なっていてもよい。
【0020】
一般式(1)において、R
5およびR
6は各々独立に置換もしくは無置換のアルキル基を表す。アルキル基の説明と好ましい範囲については、R
1〜R
4がとりうるアルキル基の説明を参照することができる。例えば、R
5およびR
6として無置換のアルキル基を採用したり、メチル基を好ましく採用したりすることができる。
n5は0〜3のいずれかの整数を表し、n6は0〜4のいずれかの整数を表す。n5およびn6は各々独立に0〜2であることが好ましく、0または1であることがより好ましく、いずれも0であることも好ましい。n5が2以上であるとき、複数のR
5は同一であっても異なっていてもよく、また、n6が2以上であるとき、複数のR
6は同一であっても異なっていてもよい。n5とn6は、同一であってもよいし、異なっていてもよい。同一であるときは、例えばいずれも0である場合、いずれも1である場合を好ましく例示することができる。
R
5が存在する場合の置換位置は、カルバゾール環の1〜4位のうちカルバゾリル基で置換されてない位置であればいずれであってもよい。R
6が存在する場合の置換位置は、カルバゾール環の5〜8位のうちカルバゾリル基で置換されてない位置であればいずれであってもよい。カルバゾリル基は、カルバゾール環の3位および6位に置換していることが好ましい。
【0021】
一般式(1)において、R
7、R
8およびR
9は各々独立に置換もしくは無置換のアリール基、置換もしくは無置換のアルキル基、または置換もしくは無置換のカルバゾリル基を表す。アリール基、アルキル基、カルバゾリル基、置換基の説明と好ましい範囲については、R
1〜R
4の対応する説明を参照することができる。
n7は0〜4のいずれかの整数を表し、n8およびn9は各々独立に0〜5のいずれかの整数を表す。n7は0〜2であることが好ましく、0または1であることがより好ましく、0であることも好ましい。n8およびn9は0〜2であることが好ましく、0または1であることがより好ましい。n7が2以上であるとき、複数のR
7は同一であっても異なっていてもよく、n8が2以上であるとき、複数のR
8は同一であっても異なっていてもよく、さらに、n9が2以上であるとき、複数のR
9は同一であっても異なっていてもよい。n8とn9は、同一であってもよいし、異なっていてもよい。同一であるときは、例えばいずれも0である場合、いずれも1である場合を好ましく例示することができる。また、異なる場合は、n8が1であってn9が0である場合を例示することができる。
R
7が存在する場合の置換位置は、ベンゼン環のいずれの位置であってもよい。また、R
8やR
9が存在する場合の置換位置は、2〜6位のいずれであってもよい。
【0022】
一般式(1)のR
8およびR
9の好ましい具体例として、フェニル基、トリル基、ジメチルフェニル基、トリメチルフェニル基を挙げることができ、より具体的には、フェニル基、1−トリル基、2−トリル基、3−トリル基、2,6−ジメチルフェニル基、2,4−ジメチルフェニル基、2,4,6−トリメチルフェニル基を挙げることができる。一般式(1)のR
8およびR
9が置換もしくは無置換のカルバゾリル基である場合も好ましい。このとき、置換もしくは無置換のカルバゾリル基は、トリアジン環に結合しているフェニル基の4位に結合していることが好ましい。また、ここでいう置換カルバゾリル基の例として、カルバゾリル基で置換されたカルバゾリル基を挙げることができる。例えば、以下の一般式(2)で表される構造を好ましく例示することができる。
【0024】
上式において、D1〜D3は各々独立に以下の一般式(3)で表される構造を有する。ただし、D3は水素原子、置換もしくは無置換のアリール基、置換もしくは無置換のアルキル基であってもよい。R
7'、R
8'およびR
9'は各々独立に置換もしくは無置換のアリール基、置換もしくは無置換のアルキル基を表す。n7’、n8’およびn9’は各々独立に0〜4のいずれかの整数を表す。
【化9】
【0025】
一般式(3)におけるR
1〜R
6およびn1〜n6の定義と好ましい範囲については、一般式(1)における対応する説明を参照することができる。
【0026】
一般式(2)におけるD1とD2は同一であっても異なっていてもよい。また、D3も一般式(2)で表される構造を有する場合、D1〜D3はすべてが同一であっても、いずれか2つが同一であっても、すべてが異なっていてもよい。D1〜D3はすべてが同一である化合物は合成が容易であるという利点を有する。
【0027】
以下において、一般式(1)で表される化合物の具体例を例示するが、本発明において用いることができる一般式(1)で表される化合物はこれらの具体例によって限定的に解釈されるべきものではない。
【0028】
【化10】
【化11】
【化12】
【化13】
【0030】
一般式(1)で表される化合物の分子量は、例えば一般式(1)で表される化合物を含む有機層を蒸着法により製膜して利用することを意図する場合には、1500以下であることが好ましく、1200以下であることがより好ましく、1000以下であることがさらに好ましく、800以下であることがさらにより好ましい。分子量の下限値は、804以上である。
【0031】
本発明を応用して、分子内に一般式(1)で表される構造を複数個含む化合物を、有機発光素子の発光層に用いることも考えられる。
例えば、一般式(1)で表される構造を有する重合性モノマーを重合させた重合体を、有機発光素子の発光層に用いることが考えられる。具体的には、一般式(1)のR
1〜R
9のいずれか、好ましくはR
1〜R
4、R
8、R
9のいずれかに重合性官能基を有するモノマーを用意して、これを単独で重合させるか、他のモノマーとともに共重合させることにより、繰り返し単位を有する重合体を得て、その重合体を有機発光素子の発光層に用いることが考えられる。あるいは、一般式(1)で表される構造を有する化合物どうしをカップリングさせることにより、二量体や三量体を得て、それらを有機発光素子の発光層に用いることも考えられる。
【0032】
一般式(1)で表される構造を含む重合体を構成する繰り返し単位の構造例として、一般式(1)のR
1〜R
9のいずれか、好ましくはR
1〜R
4、R
8、R
9のいずれかが下記一般式(17)または(18)で表される構造であるものを挙げることができる。
【化17】
【0033】
一般式(17)および(18)において、L
1およびL
2は連結基を表す。連結基の炭素数は、好ましくは0〜20であり、より好ましくは1〜15であり、さらに好ましくは2〜10である。連結基は−X
11−L
11−で表される構造を有するものであることが好ましい。ここで、X
11は酸素原子または硫黄原子を表し、酸素原子であることが好ましい。L
11は連結基を表し、置換もしくは無置換のアルキレン基、または置換もしくは無置換のアリーレン基であることが好ましく、炭素数1〜10の置換もしくは無置換のアルキレン基、または置換もしくは無置換のフェニレン基であることがより好ましい。
一般式(17)および(18)において、R
101、R
102、R
103およびR
104は、各々独立に置換基を表す。好ましくは、炭素数1〜6の置換もしくは無置換のアルキル基、炭素数1〜6の置換もしくは無置換のアルコキシ基、ハロゲン原子であり、より好ましくは炭素数1〜3の無置換のアルキル基、炭素数1〜3の無置換のアルコキシ基、フッ素原子、塩素原子であり、さらに好ましくは炭素数1〜3の無置換のアルキル基、炭素数1〜3の無置換のアルコキシ基である。
【0034】
繰り返し単位の具体的な構造例として、一般式(1)のR
1〜R
9のいずれか、好ましくはR
1〜R
4、R
8、R
9のいずれかが下記式(21)〜(24)であるものを挙げることができる。R
1〜R
9のうちの2つ以上が、下記式(21)〜(24)であってもよいが、好ましいのはR
1〜R
9のうちの1つが下記式(21)〜(24)のいずれかである場合である。
【化18】
【0035】
これらの式(21)〜(24)を含む繰り返し単位を有する重合体は、一般式(1)のR
1〜R
9の少なくとも1つ、好ましくはR
1〜R
4、R
8、R
9の少なくとも1つをヒドロキシ基にしておき、それをリンカーとして下記化合物を反応させて重合性基を導入し、その重合性基を重合させることにより合成することができる。
【化19】
【0036】
分子内に一般式(1)で表される構造を含む重合体は、一般式(1)で表される構造を有する繰り返し単位のみからなる重合体であってもよいし、それ以外の構造を有する繰り返し単位を含む重合体であってもよい。また、重合体の中に含まれる一般式(1)で表される構造を有する繰り返し単位は、単一種であってもよいし、2種以上であってもよい。一般式(1)で表される構造を有さない繰り返し単位としては、通常の共重合に用いられるモノマーから誘導されるものを挙げることができる。例えば、エチレン、スチレンなどのエチレン性不飽和結合を有するモノマーから誘導される繰り返し単位を挙げることができる。
【0037】
[一般式(4)で表される化合物]
一般式(1)で表される化合物のうち、下記一般式(4)で表される化合物は新規化合物である。
【化20】
【0038】
一般式(4)において、R
11〜R
14は各々独立に置換もしくは無置換のカルバゾリル基、置換もしくは無置換のアリール基、置換もしくは無置換のヘテロアリール基、置換もしくは無置換のアルキル基、または置換もしくは無置換のシクロアルキル基を表し、R
15およびR
16は各々独立にアルキル基を表し、R
17、R
18およびR
19は各々独立に置換もしくは無置換のアリール基、置換もしくは無置換のアルキル基、または置換もしくは無置換のカルバゾリル基を表し、n11〜n14およびn17は各々独立に0〜4のいずれかの整数を表し、n15およびn16は0〜3のいずれかの整数を表し、n18およびn19は各々独立に0〜5のいずれかの整数を表す。ただし、n11〜n14の少なくとも1つは1〜4のいずれかの整数である。n11〜n19が2以上の整数であるとき、各n11〜n19に対応する複数のR
11〜R
19はそれぞれ互いに同一であっても異なっていてもよい。
【0039】
一般式(4)におけるR
11〜R
19およびn11〜n19の好ましい範囲については、一般式(1)におけるR
1〜R
9およびn1〜n9の説明を参照することができる。ただし、一般式(4)においては、n11〜n14の少なくとも1つが1〜4のいずれかの整数である点で、一般式(1)のn1〜n4とは異なる。一般式(4)におけるn11〜n14は少なくとも2つが1〜4のいずれかの整数であることがより好ましい。例えば、n11〜n14のすべてが1〜4のいずれかの整数であることも好ましい。例えば、n11〜n14がすべて1である場合、n11とn12が1であって、n13とn14が0である場合、n11とn13が1であって、n12とn14が0である場合を挙げることができる。R
11〜R
14が存在する場合、カルバゾール環の3位にR
11とR
13が結合していることが好ましく、カルバゾール環の6位にR
12とR
14が結合していることが好ましい。
【0040】
一般式(4)で表される化合物の合成法は特に制限されない。一般式(4)で表される化合物の合成は、既知の合成法や条件を適宜組み合わせることにより行うことができる。例えば、以下の反応により一般式(4)で表される化合物を合成することが可能である。
【0042】
上式におけるR
1〜R
9およびn1〜n9は、一般式(1)における定義と同じである。Xはハロゲン原子を表し、好ましくは塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子であり、より好ましくは臭素原子である。上記の反応は、通常のアミンとハロゲン化物のカップリング反応に採用されている条件を適宜最適化して行うことができる。また、反応原料であるアミンとハロゲン化物も既知の合成法を活用することにより合成することができる。例えば、カルバゾリルカルバゾールの合成法については、Appl. Phys. Lett. 101, 093306 (2012)などを参照して合成することが可能である。上記の反応の詳細については、後述の合成例を参考にすることができる。また、一般式(4)で表される化合物は、その他の公知の合成反応を組み合わせることによっても合成することができる。
【0043】
[有機発光素子]
本発明の一般式(1)で表される化合物は、有機発光素子の発光材料として有用である。このため、本発明の一般式(1)で表される化合物は、有機発光素子の発光層に発光材料として効果的に用いることができる。一般式(1)で表される化合物の中には、遅延蛍光を放射する遅延蛍光材料(遅延蛍光体)が含まれている。すなわち本発明は、一般式(1)で表される構造を有する遅延蛍光体の発明と、一般式(1)で表される化合物を遅延蛍光体として使用する発明と、一般式(1)で表される化合物を用いて遅延蛍光を発光させる方法の発明も提供する。そのような化合物を発光材料として用いた有機発光素子は、遅延蛍光を放射し、発光効率が高いという特徴を有する。その原理を、有機エレクトロルミネッセンス素子を例にとって説明すると以下のようになる。
【0044】
有機エレクトロルミネッセンス素子においては、正負の両電極より発光材料にキャリアを注入し、励起状態の発光材料を生成し、発光させる。通常、キャリア注入型の有機エレクトロルミネッセンス素子の場合、生成した励起子のうち、励起一重項状態に励起されるのは25%であり、残り75%は励起三重項状態に励起される。従って、励起三重項状態からの発光であるリン光を利用するほうが、エネルギーの利用効率が高い。しかしながら、励起三重項状態は寿命が長いため、励起状態の飽和や励起三重項状態の励起子との相互作用によるエネルギーの失活が起こり、一般にリン光の量子収率が高くないことが多い。一方、遅延蛍光材料は、項間交差等により励起三重項状態へとエネルギーが遷移した後、三重項−三重項消滅あるいは熱エネルギーの吸収により、励起一重項状態に逆項間交差され蛍光を放射する。有機エレクトロルミネッセンス素子においては、なかでも熱エネルギーの吸収による熱活性化型の遅延蛍光材料が特に有用であると考えられる。有機エレクトロルミネッセンス素子に遅延蛍光材料を利用した場合、励起一重項状態の励起子は通常通り蛍光を放射する。一方、励起三重項状態の励起子は、デバイスが発する熱を吸収して励起一重項へ項間交差され蛍光を放射する。このとき、励起一重項からの発光であるため蛍光と同波長での発光でありながら、励起三重項状態から励起一重項状態への逆項間交差により、生じる光の寿命(発光寿命)は通常の蛍光やりん光よりも長くなるため、これらよりも遅延した蛍光として観察される。これを遅延蛍光として定義できる。このような熱活性化型の励起子移動機構を用いれば、キャリア注入後に熱エネルギーの吸収を経ることにより、通常は25%しか生成しなかった励起一重項状態の化合物の比率を25%以上に引き上げることが可能となる。100℃未満の低い温度でも強い蛍光および遅延蛍光を発する化合物を用いれば、デバイスの熱で充分に励起三重項状態から励起一重項状態への項間交差が生じて遅延蛍光を放射するため、発光効率を飛躍的に向上させることができる。
【0045】
本発明の一般式(1)で表される化合物を発光層の発光材料として用いることにより、有機フォトルミネッセンス素子(有機PL素子)や有機エレクトロルミネッセンス素子(有機EL素子)などの優れた有機発光素子を提供することができる。有機フォトルミネッセンス素子は、基板上に少なくとも発光層を形成した構造を有する。また、有機エレクトロルミネッセンス素子は、少なくとも陽極、陰極、および陽極と陰極の間に有機層を形成した構造を有する。有機層は、少なくとも発光層を含むものであり、発光層のみからなるものであってもよいし、発光層の他に1層以上の有機層を有するものであってもよい。そのような他の有機層として、正孔輸送層、正孔注入層、電子阻止層、正孔阻止層、電子注入層、電子輸送層、励起子阻止層などを挙げることができる。正孔輸送層は正孔注入機能を有した正孔注入輸送層でもよく、電子輸送層は電子注入機能を有した電子注入輸送層でもよい。具体的な有機エレクトロルミネッセンス素子の構造例を
図1に示す。
図1において、1は基板、2は陽極、3は正孔注入層、4は正孔輸送層、5は発光層、6は電子輸送層、7は陰極を表わす。
以下において、有機エレクトロルミネッセンス素子の各部材および各層について説明する。なお、基板と発光層の説明は有機フォトルミネッセンス素子の基板と発光層にも該当する。
【0046】
(基板)
本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子は、基板に支持されていることが好ましい。この基板については、特に制限はなく、従来から有機エレクトロルミネッセンス素子に慣用されているものであればよく、例えば、ガラス、透明プラスチック、石英、シリコンなどからなるものを用いることができる。
【0047】
(陽極)
有機エレクトロルミネッセンス素子における陽極としては、仕事関数の大きい(4eV以上)金属、合金、電気伝導性化合物およびこれらの混合物を電極材料とするものが好ましく用いられる。このような電極材料の具体例としてはAu等の金属、CuI、インジウムチンオキシド(ITO)、SnO
2、ZnO等の導電性透明材料が挙げられる。また、IDIXO(In
2O
3−ZnO)等非晶質で透明導電膜を作製可能な材料を用いてもよい。陽極はこれらの電極材料を蒸着やスパッタリング等の方法により、薄膜を形成させ、フォトリソグラフィー法で所望の形状のパターンを形成してもよく、あるいはパターン精度をあまり必要としない場合は(100μm以上程度)、上記電極材料の蒸着やスパッタリング時に所望の形状のマスクを介してパターンを形成してもよい。あるいは、有機導電性化合物のように塗布可能な材料を用いる場合には、印刷方式、コーティング方式等湿式成膜法を用いることもできる。この陽極より発光を取り出す場合には、透過率を10%より大きくすることが望ましく、また陽極としてのシート抵抗は数百Ω/□以下が好ましい。さらに膜厚は材料にもよるが、通常10〜1000nm、好ましくは10〜200nmの範囲で選ばれる。
【0048】
(陰極)
一方、陰極としては、仕事関数の小さい(4eV以下)金属(電子注入性金属と称する)、合金、電気伝導性化合物およびこれらの混合物を電極材料とするものが用いられる。このような電極材料の具体例としては、ナトリウム、ナトリウム−カリウム合金、マグネシウム、リチウム、マグネシウム/銅混合物、マグネシウム/銀混合物、マグネシウム/アルミニウム混合物、マグネシウム/インジウム混合物、アルミニウム/酸化アルミニウム(Al
2O
3)混合物、インジウム、リチウム/アルミニウム混合物、希土類金属等が挙げられる。これらの中で、電子注入性および酸化等に対する耐久性の点から、電子注入性金属とこれより仕事関数の値が大きく安定な金属である第二金属との混合物、例えば、マグネシウム/銀混合物、マグネシウム/アルミニウム混合物、マグネシウム/インジウム混合物、アルミニウム/酸化アルミニウム(Al
2O
3)混合物、リチウム/アルミニウム混合物、アルミニウム等が好適である。陰極はこれらの電極材料を蒸着やスパッタリング等の方法により薄膜を形成させることにより、作製することができる。また、陰極としてのシート抵抗は数百Ω/□以下が好ましく、膜厚は通常10nm〜5μm、好ましくは50〜200nmの範囲で選ばれる。なお、発光した光を透過させるため、有機エレクトロルミネッセンス素子の陽極または陰極のいずれか一方が、透明または半透明であれば発光輝度が向上し好都合である。
また、陽極の説明で挙げた導電性透明材料を陰極に用いることで、透明または半透明の陰極を作製することができ、これを応用することで陽極と陰極の両方が透過性を有する素子を作製することができる。
【0049】
(発光層)
発光層は、陽極および陰極のそれぞれから注入された正孔および電子が再結合することにより励起子が生成した後、発光する層であり、発光材料を単独で発光層に使用しても良いが、好ましくは発光材料とホスト材料を含む。発光材料としては、一般式(1)で表される本発明の化合物群から選ばれる1種または2種以上を用いることができる。本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子および有機フォトルミネッセンス素子が高い発光効率を発現するためには、発光材料に生成した一重項励起子および三重項励起子を、発光材料中に閉じ込めることが重要である。従って、発光層中に発光材料に加えてホスト材料を用いることが好ましい。ホスト材料としては、励起一重項エネルギー、励起三重項エネルギーの少なくとも何れか一方が本発明の発光材料よりも高い値を有する有機化合物を用いることができる。その結果、本発明の発光材料に生成した一重項励起子および三重項励起子を、本発明の発光材料の分子中に閉じ込めることが可能となり、その発光効率を十分に引き出すことが可能となる。本発明の有機発光素子または有機エレクトロルミネッセンス素子において、発光は発光層に含まれる本発明の発光材料から生じる。この発光は蛍光発光および遅延蛍光発光の両方を含む。但し、発光の一部或いは部分的にホスト材料からの発光があってもかまわない。
ホスト材料を用いる場合、発光材料である本発明の化合物が発光層中に含有される量は0.1重量%以上であることが好ましく、1重量%以上であることがより好ましく、また、50重量%以下であることが好ましく、20重量%以下であることがより好ましく、10重量%以下であることがさらに好ましい。
発光層におけるホスト材料としては、正孔輸送能、電子輸送能を有し、かつ発光の長波長化を防ぎ、なおかつ高いガラス転移温度を有する有機化合物であることが好ましい。
【0050】
(注入層)
注入層とは、駆動電圧低下や発光輝度向上のために電極と有機層間に設けられる層のことで、正孔注入層と電子注入層があり、陽極と発光層または正孔輸送層の間、および陰極と発光層または電子輸送層との間に存在させてもよい。注入層は必要に応じて設けることができる。
【0051】
(阻止層)
阻止層は、発光層中に存在する電荷(電子もしくは正孔)および/または励起子の発光層外への拡散を阻止することができる層である。電子阻止層は、発光層および正孔輸送層の間に配置されることができ、電子が正孔輸送層の方に向かって発光層を通過することを阻止する。同様に、正孔阻止層は発光層および電子輸送層の間に配置されることができ、正孔が電子輸送層の方に向かって発光層を通過することを阻止する。阻止層はまた、励起子が発光層の外側に拡散することを阻止するために用いることができる。すなわち電子阻止層、正孔阻止層はそれぞれ励起子阻止層としての機能も兼ね備えることができる。本明細書でいう電子阻止層または励起子阻止層は、一つの層で電子阻止層および励起子阻止層の機能を有する層を含む意味で使用される。
【0052】
(正孔阻止層)
正孔阻止層とは広い意味では電子輸送層の機能を有する。正孔阻止層は電子を輸送しつつ、正孔が電子輸送層へ到達することを阻止する役割があり、これにより発光層中での電子と正孔の再結合確率を向上させることができる。正孔阻止層の材料としては、後述する電子輸送層の材料を必要に応じて用いることができる。
【0053】
(電子阻止層)
電子阻止層とは、広い意味では正孔を輸送する機能を有する。電子阻止層は正孔を輸送しつつ、電子が正孔輸送層へ到達することを阻止する役割があり、これにより発光層中での電子と正孔が再結合する確率を向上させることができる。
【0054】
(励起子阻止層)
励起子阻止層とは、発光層内で正孔と電子が再結合することにより生じた励起子が電荷輸送層に拡散することを阻止するための層であり、本層の挿入により励起子を効率的に発光層内に閉じ込めることが可能となり、素子の発光効率を向上させることができる。励起子阻止層は発光層に隣接して陽極側、陰極側のいずれにも挿入することができ、両方同時に挿入することも可能である。すなわち、励起子阻止層を陽極側に有する場合、正孔輸送層と発光層の間に、発光層に隣接して該層を挿入することができ、陰極側に挿入する場合、発光層と陰極との間に、発光層に隣接して該層を挿入することができる。また、陽極と、発光層の陽極側に隣接する励起子阻止層との間には、正孔注入層や電子阻止層などを有することができ、陰極と、発光層の陰極側に隣接する励起子阻止層との間には、電子注入層、電子輸送層、正孔阻止層などを有することができる。阻止層を配置する場合、阻止層として用いる材料の励起一重項エネルギーおよび励起三重項エネルギーの少なくともいずれか一方は、発光材料の励起一重項エネルギーおよび励起三重項エネルギーよりも高いことが好ましい。
【0055】
(正孔輸送層)
正孔輸送層とは正孔を輸送する機能を有する正孔輸送材料からなり、正孔輸送層は単層または複数層設けることができる。
正孔輸送材料としては、正孔の注入または輸送、電子の障壁性のいずれかを有するものであり、有機物、無機物のいずれであってもよい。使用できる公知の正孔輸送材料としては例えば、トリアゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、カルバゾール誘導体、インドロカルバゾール誘導体、ポリアリールアルカン誘導体、ピラゾリン誘導体およびピラゾロン誘導体、フェニレンジアミン誘導体、アリールアミン誘導体、アミノ置換カルコン誘導体、オキサゾール誘導体、スチリルアントラセン誘導体、フルオレノン誘導体、ヒドラゾン誘導体、スチルベン誘導体、シラザン誘導体、アニリン系共重合体、また導電性高分子オリゴマー、特にチオフェンオリゴマー等が挙げられるが、ポルフィリン化合物、芳香族第3級アミン化合物およびスチリルアミン化合物を用いることが好ましく、芳香族第3級アミン化合物を用いることがより好ましい。
【0056】
(電子輸送層)
電子輸送層とは電子を輸送する機能を有する材料からなり、電子輸送層は単層または複数層設けることができる。
電子輸送材料(正孔阻止材料を兼ねる場合もある)としては、陰極より注入された電子を発光層に伝達する機能を有していればよい。使用できる電子輸送層としては例えば、ニトロ置換フルオレン誘導体、ジフェニルキノン誘導体、チオピランジオキシド誘導体、カルボジイミド、フレオレニリデンメタン誘導体、アントラキノジメタンおよびアントロン誘導体、オキサジアゾール誘導体等が挙げられる。さらに、上記オキサジアゾール誘導体において、オキサジアゾール環の酸素原子を硫黄原子に置換したチアジアゾール誘導体、電子吸引基として知られているキノキサリン環を有するキノキサリン誘導体も、電子輸送材料として用いることができる。さらにこれらの材料を高分子鎖に導入した、またはこれらの材料を高分子の主鎖とした高分子材料を用いることもできる。
【0057】
有機エレクトロルミネッセンス素子を作製する際には、一般式(1)で表される化合物を発光層に用いるだけでなく、発光層以外の層にも用いてもよい。その際、発光層に用いる一般式(1)で表される化合物と、発光層以外の層に用いる一般式(1)で表される化合物は、同一であっても異なっていてもよい。例えば、上記の注入層、阻止層、正孔阻止層、電子阻止層、励起子阻止層、正孔輸送層、電子輸送層などにも一般式(1)で表される化合物を用いてもよい。これらの層の製膜方法は特に限定されず、ドライプロセス、ウェットプロセスのどちらで作製してもよい。
【0058】
以下に、有機エレクトロルミネッセンス素子に用いることができる好ましい材料を具体的に例示する。ただし、本発明において用いることができる材料は、以下の例示化合物によって限定的に解釈されることはない。また、特定の機能を有する材料として例示した化合物であっても、その他の機能を有する材料として転用することも可能である。なお、以下の例示化合物の構造式におけるR、R’、R
1〜R
10は、各々独立に水素原子または置換基を表す。Xは環骨格を形成する炭素原子または複素原子を表し、nは3〜5の整数を表し、Yは置換基を表し、mは0以上の整数を表す。
【0059】
まず、発光層のホスト材料としても用いることができる好ましい化合物を挙げる。
【0065】
次に、正孔注入材料として用いることができる好ましい化合物例を挙げる。
【0067】
次に、正孔輸送材料として用いることができる好ましい化合物例を挙げる。
【0074】
次に、電子阻止材料として用いることができる好ましい化合物例を挙げる。
【0076】
次に、正孔阻止材料として用いることができる好ましい化合物例を挙げる。
【0078】
次に、電子輸送材料として用いることができる好ましい化合物例を挙げる。
【0082】
次に、電子注入材料として用いることができる好ましい化合物例を挙げる。
【0084】
さらに添加可能な材料として好ましい化合物例を挙げる。例えば、安定化材料として添加すること等が考えられる。
【0086】
上述の方法により作製された有機エレクトロルミネッセンス素子は、得られた素子の陽極と陰極の間に電界を印加することにより発光する。このとき、励起一重項エネルギーによる発光であれば、そのエネルギーレベルに応じた波長の光が、蛍光発光および遅延蛍光発光として確認される。また、励起三重項エネルギーによる発光であれば、そのエネルギーレベルに応じた波長が、りん光として確認される。通常の蛍光は、遅延蛍光発光よりも蛍光寿命が短いため、発光寿命は蛍光と遅延蛍光で区別できる。
一方、りん光については、本発明の化合物のような通常の有機化合物では、励起三重項エネルギーは不安定で熱等に変換され、寿命が短く直ちに失活するため、室温では殆ど観測できない。通常の有機化合物の励起三重項エネルギーを測定するためには、極低温の条件での発光を観測することにより測定可能である。
【0087】
本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子は、単一の素子、アレイ状に配置された構造からなる素子、陽極と陰極がX−Yマトリックス状に配置された構造のいずれにおいても適用することができる。本発明によれば、発光層に一般式(1)で表される化合物を含有させることにより、発光効率が大きく改善された有機発光素子が得られる。本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子などの有機発光素子は、さらに様々な用途へ応用することが可能である。例えば、本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子を用いて、有機エレクトロルミネッセンス表示装置を製造することが可能であり、詳細については、時任静士、安達千波矢、村田英幸共著「有機ELディスプレイ」(オーム社)を参照することができる。また、特に本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子は、需要が大きい有機エレクトロルミネッセンス照明やバックライトに応用することもできる。
【実施例】
【0088】
以下に合成例および実施例を挙げて本発明の特徴をさらに具体的に説明する。以下に示す材料、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。したがって、本発明の範囲は以下に示す具体例により限定的に解釈されるべきものではない。
【0089】
(合成例1)
本合成例において、以下のスキームにしたがって化合物2を合成した。
【化41】
【0090】
[Scheme 1] 9−トシル−3,3”,6,6”−テトラフェニル−3’,6’−ジカルバゾリルカルバゾールの合成
3,6−ジブロモ−9−トシルカルバゾール(1.92g、4.0mmol)、3,6−ジフェニルカルバゾール(2.58g、8.08mmol)、酸化銅(1.39g、9.7mmol)にドデシルベンゼン(3.5ml)を加え、220℃で一晩反応させた。反応終了後、ジクロロメタンで抽出し、有機層を硫酸マグネシウムで乾燥させ、エバポレーターで濃縮した。シリカゲルのカラムクロマトグラフィー(溶離液:ヘキサン/ジクロロメタン=70/30)で精製した(収量1.42g、収率19.0%).
1H NMR (500 MHz, CDCl
3): δ (ppm) 8.66(d, J=9.0Hz, 2H), 8.40(d, J=2.0Hz, 4H), 8.18(d, J=2.0Hz, 2H), 7.97 (d, J=8.50Hz, 2H), 7.82(dd, J=2.0Hz, J=2.0Hz, 2H), 7.72 (d, J=7.0Hz, 8H), 7.67(dd, J=2.0Hz, J=2.0Hz, 4H), 7.48-7.46(m, 12H), 7.36-7.33(m, 6H), 2.42(s, 3H)
【0091】
[Scheme 2] 3,3”,6,6”テトラフェニル−3’,6’−ジカルバゾリルカルバゾールの合成
9−トシル−3,3”,6,6”テトラフェニル−3’,6’−ジカルバゾリルカルバゾール(0.25g、0.25mmol)、水酸化カリウム(0.14g、2.5mmol)にTHF(2.3ml)、DMSO(1.4ml)、水(0.3ml)を加え、4時間加熱還流させた。反応終了後、1N HClで中和した。水、ジクロロメタンで抽出し、有機層を硫酸マグネシウムで乾燥させた。有機層をエバポレーターで濃縮した。ヘキサン、ジクロロメタンで再結晶した(収量0.16g、収率80.0%)。
1H NMR(500 MHz, CDCl
3): δ (ppm) 8.52(s,1H), 8.42(d, J=2.0Hz, 4H), 8.30(d, J=2.0Hz, 2H), 7.77(d, J=8.5Hz, 2H), 7.73(d, J=8.0Hz, 8H), 7.70(d, J=2.0Hz, 1H), 7.67(dd, J=2.0Hz, J=1.5Hz, 5H), 7.49-7.46(m, 12H), 7.35-7.33(m, 4H)
【0092】
[Scheme 3] 9
’−(4−(4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン−2−イ
ル)フェニル)−9
’H−(3
’6
’−ジフェニルカルバゾリル)カルバゾール
3,3”,6,6”テトラフェニル−3’,6’−ジカルバゾリルカルバゾール(0.97g、1.2mmol)、ジフェニルトリアジン(0.47g、1.21mmol)、ヨウ化銅(0.004g、0.02mmol)、18−クラウン−6−エーテル(0.035g、0.13mmol)、炭酸カリウム(0.17g、1.43mmol)にドデシルベンゼン(1.2ml)を加え、220℃で2日間反応させた。反応終了後、ジクロロメタンで抽出し、有機層を硫酸マグネシウムで乾燥させ、エバポレーターで濃縮した。シリカゲルのカラムクロマトグラフィー(溶離液:ヘキサン/ジクロロメタン=70/30)で精製することにより化合物2を得た(収量0.20g、収率15.3%)。
1H NMR(500MHz, d6-DMSO) : δ (ppm) 9.16(d, J=9.0Hz, 2H), 8.87-8.83(m, 6H), 8.77(d, J=8.5Hz, 4H),8.23(d, J=8.5Hz, 2H),7.96(d, J=8.5Hz, 2H),7.86-7.80(m, 16H), 7.76-7.71(m, 4H), 7.55(d, J=8.5Hz, 4H), 7.52-7.49(m, 8H), 7.37-7.34(m, 4H)
【0093】
(合成例2)
本合成例において、以下のスキームにしたがって化合物3を合成した。
【化42】
【0094】
[Scheme 1] 3,3”,6,6”−テトラ−tertブチル−9
’−トシル−3’,
6’−ジカルバゾリルカルバゾールの合成
3,6−ジtert−ブチルカルバゾール(2.69g、9.59mmol)、3,6−ジブロモカルバゾール(2.40g、5.00mmol)、酸化銅(1.71g、12.3mmol)にドデシルベンゼン(4ml)、NMP(1ml)を加え、220℃で一晩反応させた。反応終了後、ろ過により酸化銅を取り除き、エバポレーターで濃縮した。シリカゲルのカラムクロマトグラフィー(シクロヘキサン/ジクロロメタン=50/50)により精製したところ、目的物と思われるものが0.44g程度(収率10%程度)であった。さらにモノ体および原料が含まれるものに酸化銅(II)0.85g(5.94mmol)、ドデシルベンゼン(2ml)を加え、220℃で一晩加熱還流させた(収量1.02g、収率23.3%)。
1H NMR(500MHz, CDCl
3) :・(ppm) 8.56(d, J=8.5Hz, 2H), 8.14(d, J=1.5Hz, 4H), 8.05(d, J=2.0Hz, 2H),7.91(d, J=8.5Hz, 2H),7.73(dd, J=2.0Hz, J=2.0Hz, 2H),7.44(dd, J=2.0Hz, J=2.0Hz, 4H), 7.33-7.2.8(m, 6H), 2.39(s, 3H), 1.45(s, 36H)
【0095】
[Scheme 2](3,6−ジ(3,6−ジtert−ブチルカルバゾリル))−カルバゾールの合成
3,3”,6,6”−テトラ−tert−ブチル−9
’−トシル−3’,6’−ジカルバゾ
リルカルバゾール(4.78g、5.45mmol)、水酸化カリウム(2.41g、56mmol)にTHF(49ml)、DMSO(24ml)、水(5ml)を加えて、3時間加熱かくはんした。反応終了後、1N HClにて中和し、ジクロロメタンで抽出した。有機層を硫酸マグネシウムで乾燥させ、エバポレーターで濃縮した。シリカゲルのカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:シクロヘキサン/ジクロロメタン=70/30)で精製した。ヘキサンで再結晶した(収量2.95、収率75%)。
1H NMR(500MHz, CDCl
3) :・(ppm) 8.42(s, 1H), 8.17-8.15(m, 6H), 7.69-7.67(m,
1H), 7.61(d, J=8.5Hz, 2H), 7.65-7.55(m, 1H), 7.47-7.43(m, 4H), 7.32-7.30(m, 4H), 1.48-1.46(m, 36H)
【0096】
[Scheme 3] 9’−(4−(4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン−2−イル
)フェニル)−9’H−(3’6’−ジtert−ブチルカルバゾリル)カルバゾール
(3,6−ジ(3,6−ジ(tert−ブチルカルバゾリル))−カルバゾール(0.51g、0.7mmol)、3,6−ジブロモ−9−トシルカルバゾール(0.31g、0.81mmol)、ヨウ化銅(0.007g、0.04mmol)、18−クラウン−6−エーテル(0.02g、0.08mmol)、炭酸カリウム(0.09g、0.65mmol)にドデシルベンゼン(0.6ml)を加え、一晩加熱還流させた。反応終了後、ジクロロメタンを加えセライトでろ過した。濃縮後、有機層を硫酸マグネシウムで乾燥させ、エバポレーターで濃縮した。シリカゲルのカラムクロマトグラフィーで精製(溶離液:ヘキサン/ジクロロメタン=50/50)することにより化合物3を得た(収量0.16g、収率22.5%)。
MALDI-TOF-MS:m/z=1030([M+1]
+)
【0097】
(実施例1)
本実施例において、化合物1〜3の各トルエン溶液(濃度10
-5mol/L)を調製して、窒素をバブリングしながら300Kで光照射したところ、発光が認められた。吸収波長、発光波長、量子収率は表1に示すとおりであった。また、各トルエン溶液には遅延蛍光が認められた。
【0098】
【表1】
【0099】
(実施例2)
本実施例において、有機フォトルミネッセンス素子を作製して、特性を評価した。
シリコン基板上に真空蒸着法にて、真空度5.0×10
-4Paの条件にて化合物1とDPEPOとを異なる蒸着源から蒸着し、化合物1の濃度が6重量%である薄膜を0.3nm/秒にて100nmの厚さで形成して有機フォトルミネッセンス素子とした。
化合物1のかわりに、化合物2および3の各化合物を用いて同様にして有機フォトルミネッセンス素子を作製した。
【0100】
作製した各有機フォトルミネッセンス素子にN
2レーザーにより337nmの光を照射した際の薄膜からの発光スペクトルを300Kで特性評価した。
化合物1を用いた有機フォトルミネッセンス素子の発光スペクトルを
図2に示し、化合物2を用いた有機フォトルミネッセンス素子の発光スペクトルを
図6に示し、化合物3を用いた有機フォトルミネッセンス素子の発光スペクトルを
図10に示す。
【0101】
(実施例3)
本実施例において、有機エレクトロルミネッセンス素子を作製して、特性を評価した。
膜厚100nmのインジウム・スズ酸化物(ITO)からなる陽極が形成されたガラス基板上に、各薄膜を真空蒸着法にて、真空度5.0×10
-4Paで積層した。まず、ITO上にα−NPDを35nmの厚さに形成し、その上にCBPを10nmの厚さに形成した。さらにその上に化合物1とDPEPOとを異なる蒸着源から蒸着し、化合物1の濃度が6重量%である薄膜を15nmの厚さに形成した。その上にTPBiを40nmの厚さに形成し、さらにフッ化リチウム(LiF)を0.8nm真空蒸着し、次いでアルミニウム(Al)を80nmの厚さに蒸着することにより陰極を形成し、有機エレクトロルミネッセンス素子とした。
化合物1のかわりに化合物2および化合物3の各化合物を用いて同様にして有機エレクトロルミネッセンス素子を作製した。
【0102】
作製した各有機エレクトロルミネッセンス素子を、半導体パラメータ・アナライザ(アジレント・テクノロジー社製:E5273A)、光パワーメータ測定装置(ニューポート社製:1930C)、光学分光器(オーシャンオプティクス社製:USB2000)およびストリークカメラ(浜松ホトニクス(株)製C4334型)を用いて測定した。
化合物1を用いた有機エレクトロルミネッセンス素子の発光スペクトルを
図2に示し、常圧下と真空中の時間分解スペクトルを
図3に示し、電圧−電流密度特性を
図4に示し、電流密度−外部量子効率特性を
図5に示す。化合物2を用いた有機エレクトロルミネッセンス素子の発光スペクトルを
図6に示し、常圧下と真空中の時間分解スペクトルを
図7に示し、電圧−電流密度特性を
図8に示し、電流密度−外部量子効率特性を
図9に示す。化合物3を用いた有機エレクトロルミネッセンス素子の発光スペクトルを
図10に示し、常圧下と真空中の時間分解スペクトルを
図11に示し、電圧−電流密度特性を
図12に示し、電流密度−外部量子効率特性を
図13に示す。
【0103】
(比較例1)
本比較例において、特開2009−21336号公報および特開2002−193952号公報に記載される下記化合物Aのトルエン溶液(濃度10
-5mol/L)を調製して、窒素をバブリングしながら300Kで光照射したところ、
図14に示す発光スペクトルが得られた。また、この溶液の時間分解スペクトルは
図15に示す通りであり、遅延蛍光成分は認められなかった。
【0104】
【化43】