特許第6249197号(P6249197)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6249197
(24)【登録日】2017年12月1日
(45)【発行日】2017年12月20日
(54)【発明の名称】ジアミン化合物
(51)【国際特許分類】
   C07C 229/60 20060101AFI20171211BHJP
   C07C 217/84 20060101ALI20171211BHJP
   C07C 217/86 20060101ALI20171211BHJP
   C07C 217/76 20060101ALI20171211BHJP
【FI】
   C07C229/60CSP
   C07C217/84
   C07C229/60
   C07C217/86
   C07C217/76
【請求項の数】3
【全頁数】61
(21)【出願番号】特願2017-1421(P2017-1421)
(22)【出願日】2017年1月6日
(62)【分割の表示】特願2013-551678(P2013-551678)の分割
【原出願日】2012年12月21日
(65)【公開番号】特開2017-116940(P2017-116940A)
(43)【公開日】2017年6月29日
【審査請求日】2017年1月10日
(31)【優先権主張番号】特願2011-289973(P2011-289973)
(32)【優先日】2011年12月28日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003986
【氏名又は名称】日産化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101236
【弁理士】
【氏名又は名称】栗原 浩之
(74)【代理人】
【識別番号】100166914
【弁理士】
【氏名又は名称】山▲崎▼ 雄一郎
(72)【発明者】
【氏名】森内 正人
(72)【発明者】
【氏名】南 悟志
【審査官】 高橋 直子
(56)【参考文献】
【文献】 特表2010−528069(JP,A)
【文献】 特表2008−515933(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/002465(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C 229/60
C07C 217/76
C07C 217/84
C07C 217/86
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式[2]で表されることを特徴とするジアミン化合物。
【化1】
(式中、R11は炭素数2〜6のアルキレン基を表し、R12は炭素数2〜4のアルキレン基を表す。)
【請求項2】
下記式[3]で表されることを特徴とするジアミン化合物。
【化2】
(式[3]中、Aは以下のものより選ばれる。R13は炭素数2〜6のアルキレン基を表す。)
【化3】
(式中、*はOとの結合位置を表し、**はR13との結合位置を表す。)
【請求項3】
下記式[4]で表されることを特徴とするジアミン化合物。
【化4】
(式[4]中、Bは以下のものより選ばれる。kは0〜1、lは1〜6の整数、mは1(ただし、nが0の場合はmも0)、nは0〜6の整数である。)
【化5】
(式中、*は−(CH−との結合位置を表し、**はOとの結合位置を表す。)
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶配向剤、液晶配向剤、液晶配向膜、液晶表示素子及びジアミン化合物に関する。
【背景技術】
【0002】
基板に対して垂直に配向している液晶分子を電界によって応答させる方式(垂直配向方式ともいう)の液晶表示素子の中には、その製造過程において液晶分子に電圧を印加しながら紫外線を照射する工程を含むものがある。
【0003】
このような垂直配向方式の液晶表示素子では、あらかじめ液晶組成物中に光重合性化合物を添加し、ポリイミド等の垂直配向膜と共に用いて、液晶セルに電圧を印加しながら紫外線を照射することで、液晶の応答速度を速くする技術(例えば、特許文献1及び非特許文献1参照。)が知られている(PSA型液晶ディスプレイ)。通常、電界に応答した液晶分子の傾く方向は、基板上に設けられた突起や表示用電極に設けられたスリットなどによって制御されているが、液晶組成物中に光重合性化合物を添加し液晶セルに電圧を印加しながら紫外線を照射することにより、液晶分子の傾いていた方向が記憶されたポリマー構造物が液晶配向膜上に形成されるので、突起やスリットのみで液晶分子の傾き方向を制御する方法と比べて、液晶表示素子の応答速度が速くなるといわれている。
【0004】
このPSA方式の液晶表示素子においては、液晶に添加する重合性化合物の溶解性が低く、添加量を増やすと低温時に析出するといった問題がある。他方で、重合性化合物の添加量を減らすと良好な配向状態が得られなくなる。また、液晶中に残留する未反応の重合性化合物は液晶中の不純物(コンタミ)となるため液晶表示素子の信頼性を低下させるといった問題もある。また、PSAモードで必要なUV照射処理はその照射量が多いと、液晶中の成分が分解し、信頼性の低下を引き起こす。
【0005】
ここで、光重合性化合物を液晶組成物中ではなく液晶配向膜中に添加することによっても、液晶表示素子の応答速度が速くなることが報告されている(SC−PVA型液晶ディスプレイ)(例えば、非特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2003−307720号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】K.Hanaoka,SID 04 DIGEST、P.1200-1202
【非特許文献2】K.H Y.-J.Lee,SID 09 DIGEST、P.666-668
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
このようなSC−PVAモードでは、光重合性化合物を添加した液晶配向剤を用いるが、光重合性化合物は液晶配向剤への溶解性もそれ程高くない為、液晶配向剤中に添加する光重合性化合物の添加量を多くすると、液晶配向剤の保存安定性に悪影響を与える。また、未反応の光重合性化合物が液晶配向膜から液晶中に溶け出すと、それが不純物となり、液晶表示素子の信頼性を低下させる原因となる。
【0009】
本発明の課題は、上述の従来技術の問題点を解決することにあり、光重合性化合物を添加しなくとも液晶表示素子の応答速度を向上させることが出来る液晶配向剤、液晶配向膜、液晶表示素子及びジアミン化合物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
発明者らは、上記の課題を解決する為、鋭意検討を行った結果、光二量化反応を起こす基及び光重合反応を起こす基を側鎖に有する新規なジアミン化合物(以下、特定ジアミン化合物とも言う。)を含有するジアミン成分とテトラカルボン酸二無水物成分との反応によって得られるポリイミド前駆体及びそれをイミド化して得られるポリイミドから選ばれる少なくとも1つを含有する液晶配向剤を使用することにより、上記の課題を解決出来ることを見出し、本発明を完成させた。即ち、本発明は、以下の要旨を有するものである。
【0011】
1.下記式[1]で表されるジアミン化合物を含むジアミン成分と、テトラカルボン酸二無水物成分との反応で得られるポリイミド前駆体及びこれをイミド化して得られるポリイミドから選択される少なくとも1種の重合体を含有する液晶配向剤。
【0012】
【化1】
(式中、Rは−CH−、−O−、−CONH−、−NHCO−、−COO−、−OCO−、−NH−、−CO−より選ばれる基を表す。Rは、炭素数1から炭素数30で形成されるアルキレン基、二価の炭素環もしくは複素環であり、このアルキレン基、二価の炭素環もしくは複素環の1つまたは複数の水素原子は、フッ素原子もしくは有機基で置き換えられていてもよい。また、Rは、次に挙げるいずれかの基が互いに隣り合わない場合において、−CH−がこれらの基に置き換えられていてもよい;−O−、−NHCO−、−CONH−、−COO−、−OCO−、−NH−、−NHCONH−、−CO−。Rは、−CH−、−O−、−CONH−、−NHCO−、−COO−、−OCO−、−NH−、−CO−、単結合のいずれかを表す。Rは光二量化を起こす基を表す。Rは単結合、または、炭素数1から炭素数30で形成されるアルキレン基、二価の炭素環もしくは複素環であり、このアルキレン基、二価の炭素環もしくは複素環の1つまたは複数の水素原子は、フッ素原子もしくは有機基で置き換えられていてもよい。また、Rは、次に挙げるいずれかの基が互いに隣り合わない場合において、−CH−がこれらの基に置き換えられていてもよい;−O−、−NHCO−、−CONH−、−COO−、−OCO−、−NH−、−NHCONH−、−CO−。Rは光重合性基を示す。)
【0013】
2.Rが、下記式で表される二価の基である、1.に記載の液晶配向剤。
【0014】
【化2】
(式中、*はRもしくはRとの結合位置を表す。)
【0015】
3.Rが、下記式で表される一価の基である、1または2に記載の液晶配向剤。
【0016】
【化3】
(式中、*はRとの結合位置を表す。)
【0017】
4.ジアミン成分が、さらに液晶を垂直に配向させる側鎖を有するジアミン化合物を含む、1.〜3.のいずれかに記載の液晶配向剤。
【0018】
5.式[1]で表されるジアミン化合物が、ジアミン成分中の10モル%〜80モル%である、1.〜4.のいずれかに記載の液晶配向剤。
【0019】
6.液晶を垂直に配向させる側鎖を有するジアミン化合物が、ジアミン成分中の5モル%〜70モル%である、2.〜5.のいずれかに記載の液晶配向剤。
【0020】
7.1.〜6.のいずれかに記載の液晶配向剤から得られる液晶配向膜。
【0021】
8.7.の液晶配向膜を具備する液晶表示素子。
【0022】
9.下記式[2]で表されるジアミン化合物。
【0023】
【化4】
(式中、R11は炭素数2〜6のアルキレン基を表し、R12は炭素数2〜4のアルキレン基を表す。)
【0024】
10.下記式[3]で表されるジアミン化合物。
【0025】
【化5】
(式[3]中、Aは以下のものより選ばれる。R13は炭素数2〜6のアルキレン基を表す。)
【0026】
【化6】
(式中、*はOとの結合位置を表し、**はR13との結合位置を表す。)
【0027】
11.下記式[4]で表されるジアミン化合物。
【0028】
【化7】
(式[4]中、Bは以下のものより選ばれる。kは0〜1、lは1〜6の整数、mは1(ただし、nが0の場合はmも0)、nは0〜6の整数である。)
【0029】
【化8】
(式中、*は−(CH−との結合位置を表し、**はOとの結合位置を表す。)
【発明の効果】
【0030】
本発明によれば、光重合性化合物を含有しなくとも、液晶表示素子、特に垂直配向方式の液晶表示素子の応答速度を向上させることができる液晶配向剤を提供することができる。そして、この液晶配向剤は、垂直配向方式の液晶表示素子に限らず、例えば偏光の紫外線を照射して配向処理を行う液晶表示素子に用いることができ、液晶の配向が良好で交流(AC)残像の改善に効果のある液晶配向膜を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明の液晶配向剤は、上記式[1]で表されるジアミン化合物を含むジアミン成分と、テトラカルボン酸二無水物成分との反応で得られるポリイミド前駆体及びこれをイミド化して得られるポリイミドから選択される少なくとも1種の重合体を含有するものである。なお、液晶配向剤とは液晶配向膜を作成するための溶液であり、液晶配向膜とは液晶を所定の方向に配向させるための膜である。本発明の液晶配向剤に含有される各成分等について、以下に詳述する。
【0032】
<特定ジアミン化合物>
本発明の液晶配向剤が含有するポリイミド前駆体及びこれをイミド化して得られるポリイミドから選択される少なくとも1種の重合体の原料であるジアミン成分は、上記式[1]で表されるジアミン化合物を含む。
【0033】
式[1]中のR−R−Rは、側鎖におけるジアミノベンゼン骨格と光二量化を起こす基であるRを結ぶスペーサー部位であり、Rはこのスペーサー部位におけるジアミノベンゼン骨格との結合基を表す。この結合基Rは、−CH−(すなわちメチレン)、−O−(すなわちエーテル)、−CONH−(すなわちアミド)、−NHCO−(すなわち逆アミド)、−COO−(すなわちエステル)、−OCO−(すなわち逆エステル)、−NH−(すなわちアミノ)、−CO−(すなわちカルボニル)から選ばれる。これらの結合基Rは通常の有機合成的手法で形成させることができるが、合成の容易性の観点から、−CH−、−O−、−COO−、−NHCO−、−NH−が好ましい。
【0034】
式[1]中のRは、スペーサー部位の中心となる部分であり、炭素数1から炭素数30で形成されるアルキレン基、二価の炭素環もしくは複素環である。ただし、このアルキレン基、二価の炭素環もしくは複素環の任意の水素原子は、フッ素原子もしくは有機基で置き換えられていてもよい。また、置き換えられる水素原子は、1箇所であっても複数の箇所であってもよい。また、このアルキレン基、二価の炭素環もしくは複素環の1つまたは複数の−CH−は、次に挙げるいずれかの結合基が互いに隣り合わない場合において、これらの結合基に置き換えられていてもよい;−O−、−NHCO−、−CONH−、−COO−、−OCO−、−NH−、−NHCONH−、−NH、−CO−。これは、Rが、アルキレン基、二価の炭素環もしくは複素環−該結合基−アルキレン基、二価の炭素環もしくは複素環という構成を含んでいてもよいことを意味している。加えて、Rが−CH−の場合、RにおけるR側の末端は該結合基であってもよいことを意味している。同様に、Rが−CH−場合、RにおけるR側の末端は該結合基であってもよいことを意味している。よって、Rが−CH−であり、かつ、Rが−CH−場合、Rは該結合基−アルキレン基、二価の炭素環もしくは複素環−該結合基という構成や、Rは該結合基のいずれかという構成であってもよいことを意味している。なお、該結合基で置き換えられる−CH−は、1箇所であってもよく、該結合基同士が隣り合わなければ複数の箇所であってもよい。二価の炭素環や複素環としては、具体的には以下のような構造が挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0035】
【化9】
【0036】
式[1]中のRは、スペーサー部位におけるRとの結合基を表す。この結合基Rは−CH−、−O−、−CONH−、−NHCO−、−COO−、−OCO−、−NH−、−CO−、単結合から選ばれる。これらの結合基Rは、通常の有機合成的手法で形成させることができるが、合成の容易性の観点から、−CH−、−O−、−COO−、−NHCO−、−NH−が好ましい。
【0037】
式[1]中のRは、光二量化を起こす基で構成される2価の有機基を示す。光二量化を起こす基とは、光照射によって反応することにより2量体となる官能基である。Rとして、例えば、シンナモイル基、クマリン基や、カルコン基を含む二価の基が挙げられ、具体的には下記式で表される二価の基が挙げられるが、これに限定されるものではない。なお、下記式で表される基の1つまたは複数の水素原子は、有機基で置換されていてもよい。
【0038】
【化10】
(式中、*はRもしくはRとの結合位置を表す。)
【0039】
式[1]中のRは、側鎖における光二量化を起こす基であるRと光重合性基であるRを結んだ部位であり、Rは、単結合、または、炭素数1から炭素数30で形成されるアルキレン基、二価の炭素環または複素環である。ただし、このアルキレン基、二価の炭素環もしくは複素環の任意の水素原子は、フッ素原子もしくは有機基で置き換えられていてもよい。また、置き換えられる水素原子は、1箇所であっても複数の箇所であってもよい。また、このアルキレン基、二価の炭素環もしくは複素環の1つまたは複数の−CH−は、次に挙げるいずれかの結合基が互いに隣り合わない場合において、これらの結合基に置き換えられていてもよい;−O−、−NHCO−、−CONH−、−COO−、−OCO−、−NH−、−NHCONH−、−NH−、−CO−。これは、例えば、Rが、アルキレン基、二価の炭素環もしくは複素環−該結合基−アルキレン基、二価の炭素環もしくは複素環という構成や、該結合基−アルキレン基、二価の炭素環もしくは複素環という構造を含んでいてもよいことを意味している。なお、該結合基で置き換えられる−CH−は、1箇所であってもよく、該結合基同士が隣り合わなければ複数の箇所であってもよい。二価の炭素環や複素環としては、具体的には以下のような構造が挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0040】
【化11】
【0041】
式[1]中のRは、光重合性基を示す。光重合性基とは、光を照射することにより重合を生じさせる官能基である。Rとして、例えばアクリル基、メタクリル基、ラクトン基、マレイミド基、ビニル基、アリル基や、スチリル基を含む一価の基が挙げられ、具体的には下記式で表される1価の基が挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0042】
【化12】
(式中、*はRとの結合位置を表す。)
【0043】
このような上記式[1]で表されるジアミン化合物を原料として得られるポリイミド前駆体及びこれをイミド化して得られるポリイミドから選択される少なくとも1種の重合体を含有する液晶配向剤とすることにより、上記式[1]で表されるジアミン化合物に由来する光重合性基による架橋反応及び光二量化を起こす基による二量化反応が進行し、結果生じた架橋部位や二量化部位によって液晶分子が傾く方向が記憶されることで、得られる液晶表示素子の応答速度を速くすることができる。
【0044】
なお、本発明で用いる上記式[1]で表されるジアミン化合物(特定ジアミン化合物)は、文献未知の新規化合物である。上記式[1]で表されるジアミン化合物としては、例えば、下記式[2]で表されるジアミン化合物が挙げられる。
【0045】
【化13】
(式中、R11は炭素数2〜6のアルキレン基を表し、R12は炭素数2〜4のアルキレン基を表す。)
【0046】
また、上記式[2]で表されるジアミン化合物の具体例としては、下記ジアミン化合物が挙げられる。
【0047】
【化14】
【0048】
また、上記式[1]で表されるジアミン化合物としては、例えば、下記式[3]で表されるジアミン化合物が挙げられる。
【0049】
【化15】
(式[3]中、Aは以下のものより選ばれる。R13は炭素数2〜6のアルキレン基を表す。)
【0050】
【化16】
(式中、*はOとの結合位置を表し、**はR13との結合位置を表す。)
【0051】
また、上記式[3]で表されるジアミン化合物の具体例としては、下記ジアミン化合物が挙げられる。
【0052】
【化17】
【0053】
また、上記式[1]で表されるジアミン化合物としては、例えば、下記式[4]で表されるジアミン化合物が挙げられる。
【0054】
【化18】
(式[4]中、Bは以下のものより選ばれる。kは0〜1、lは1〜6の整数、mは1(ただし、nが0の場合はmも0)、nは0〜6の整数である。)
【0055】
【化19】
(式中、*は−(CH−との結合位置を表し、**はOとの結合位置を表す。)
【0056】
また、上記式[4]で表されるジアミン化合物の具体例としては、下記ジアミン化合物が挙げられる。
【0057】
【化20】
【0058】
本発明の液晶配向剤が含有するポリイミド前駆体及びこれをイミド化して得られるポリイミドから選択される少なくとも1種の重合体の原料であるジアミン成分に含まれる上記式[1]で示されるジアミンの割合は特に限定されないが、応答速度を向上させる観点から、ポリイミド前駆体の合成に用いるジアミン成分中の10モル%〜80モル%となる量を用いることが好ましく、より好ましくはジアミン成分の10モル%〜50モル%であり、特に好ましくは20モル%〜50モル%である。
【0059】
上記式[1]で表されるジアミン化合物を合成する方法は特に限定されないが、例えば下記式[1a]で表されるジニトロ化合物のニトロ基を還元してアミノ基に変換することで得ることができる。
【0060】
【化21】
(式[1a]中、R、R、R、R、R及びRは、式[1]の定義と同義である。)
【0061】
上記式[1a]で表されるジニトロ化合物を還元する際に、二重結合が水素化されないような触媒を用いて還元を行う。還元反応は、酢酸エチル、トルエン、テトラヒドロフラン、ジオキサン、アルコール系などの溶媒中で、亜鉛、スズ、塩化スズ、鉄などを塩化アンモニウム、塩化水素などと共に用いることが好ましい。
【0062】
上記式[1a]で表されるジニトロ化合物は、ジニトロベンゼンに対してRを介して側鎖部位である−R−R−R−R−Rを結合させる方法などで得ることができる。例えば、Rがアミド結合(−CONH−)の場合には、ジニトロベンゼン酸クロリドと−R−R−R−R−Rを含むアミノ化合物とを、アルカリ存在下で反応させる方法が挙げられる。
【0063】
が逆アミド結合(−HNCO−)の場合には、アミノ基含有ジニトロベンゼンと、−R−R−R−R−Rを含む酸クロリドとを、アルカリ存在下で反応させる方法が挙げられる。
【0064】
がエステル結合(−COO−)の場合には、ジニトロベンゼン酸クロリドと、−R−R−R−R−Rを含むアルコール化合物とを、アルカリ存在下で反応させる方法が挙げられる。また、Rが逆エステル結合(−OCO−)の場合には、ヒドロキシ基含有ジニトロベンゼンと、−R−R−R−R−Rを含む酸クロリド化合物とを、アルカリ存在下で反応させる方法が挙げられる。
【0065】
がエーテル結合(−O−)の場合には、ハロゲン基含有ジニトロベンゼンと、−R−R−R−R−Rを含むアルコール化合物とをアルカリ存在下で反応させる方法が挙げられる。
【0066】
がアミノ結合(−NH−)の場合には、ハロゲン基含有ジニトロベンゼンと、−R−R−R−R−Rを含むアミノ化合物とを、アルカリ存在下で反応させる方法が挙げられる。
【0067】
がカルボニル結合(−CO−)の場合には、アルデヒド基含有ジニトロベンゼンと、−R−R−R−R−Rを含むホウ素酸化合物とを、パラジウムや銅触媒存在下でカップリング反応を行う方法が挙げられる。
【0068】
が炭素結合(−CH−)の場合には、ハロゲン基含有ジニトロベンゼンと、−R−R−R−R−RのR側の末端に不飽和結合を有する化合物とを、ヘック反応や薗頭クロスカップリング反応を利用する方法が挙げられる。
【0069】
上記のジニトロベンゼン酸クロリドとしては、3,5−ジニトロ安息香酸クロリド、3,5−ジニトロ安息香酸、2,4−ジニトロ安息香酸クロリド、2,4−ジニトロ安息香酸、3,5−ジニトロベンジルクロリド、2,4−ジニトロベンジルクロリド、また、アミノ基含有ニトロベンゼンとしては、2,4−ジニトロアニリン、3,5−ジニトロアニリン、2,6−ジニトロアニリンなどが挙げられる。ヒドロキシ基含有ニトロベンゼンとしては、2,4−ジニトロフェノール、3,5−ジニトロフェノール、2,6−ジニトロフェノールなどが挙げられる。ハロゲン基含有ジニトロベンゼンとしては、2,4−ジニトロフルオロベンゼン、3,5−ジニトロフルオロベンゼン、2,6−ジニトロフルオロベンゼン、2,4−ジニトロヨードベンゼン、3,5−ジニトロヨードベンゼン、2,6−ジニトロヨードベンゼンなどが挙げられる。アルデヒド基含有ジニトロベンゼンとしては、2,4−ジニトロアルデヒド、3,5−ジニトロアルデヒド、2,6−ジニトロアルデヒドなどが挙げられる。
【0070】
側鎖部位である−R−R−R−R−Rを合成する方法としては、次に挙げる方法で合成する方法などが挙げられる。例えば、−R−R−R−R−Rの構造中にアミド結合(−CONH−)をもつ場合には、−Rを含む酸クロリド化合物と−R−R−Rアミノ化合物、−R−R−Rを含む酸クロリド化合物と−R−Rを含むアミノ化合物、もしくは、−R−R−R−Rを含む酸クロリド化合物と−Rを含むアミノ化合物を、アルカリ存在下で反応させる方法が挙げられる。
【0071】
−R−R−R−R−Rの構造中に逆アミド結合(−HNCO−)をもつ場合には、−Rを含むアミノ化合物と−R−R−Rを含む酸クロリド化合物、−R−R−Rを含むアミノ化合物と−R−Rを含む酸クロリド化合物、もしくは、−R−R−R−Rを含むアミノ化合物と−Rを含む酸クロリド化合物を、アルカリ存在下で反応させる方法が挙げられる。
【0072】
−R−R−R−R−Rの構造中にエステル結合(−COO−)をもつ場合には、−Rを含む酸クロリド化合物と−R−R−Rを含むアルコール化合物、−R−R−Rを含む酸クロリド化合物と−R−Rを含むアルコール化合物、もしくは、−R−R−R−Rを含む酸クロリド化合物と−Rを含むアルコール化合物を、アルカリ存在下で反応させる方法が挙げられる。
【0073】
−R−R−R−R−Rの構造中に逆エステル結合(−OCO−)をもつ場合には、−Rを含むアルコール化合物と−R−R−Rを含む酸クロリド化合物、−R−R−Rを含むアルコール化合物と−R−Rを含む酸クロリド化合物、もしくは、−R−R−R−Rを含むアルコール化合物と−Rを含む酸クロリド化合物を、アルカリ存在下で反応させる方法が挙げられる。
【0074】
−R−R−R−R−Rの構造中に、エーテル結合(−O−)をもつ場合には、−Rを含むハロゲン化合物と−R−R−Rを含むアルコール化合物、−R−R−Rを含むハロゲン化合物と−R−Rを含むアルコール化合物、−R−R−R−Rを含むハロゲン化合物と−Rを含むアルコール化合物、−Rを含むアルコール化合物と−R−R−Rを含むハロゲン化合物、−R−R−Rを含むアルコール化合物と−R−Rを含むハロゲン化合物、もしくは、−R−R−R−Rを含むアルコール化合物と−Rを含むハロゲン化合物を、アルカリ存在下で反応させる方法が挙げられる。
【0075】
−R−R−R−R−Rの構造中にアミノ結合(−NH−)をもつ場合には、−Rを含むハロゲン化合物と−R−R−Rを含むアミノ化合物、−R−R−Rを含むハロゲン化合物と−R−Rを含むアミノ化合物、−R−R−R−Rを含むハロゲン化合物と−Rを含むアミノ化合物、−Rを含むアミノ化合物と−R−R−Rを含むハロゲン化合物、−R−R−Rを含むアミノ化合物と−R−Rを含むハロゲン化合物、もしくは、−R−R−R−Rを含むアミノ化合物と−Rを含むハロゲン化合物を、アルカリ存在下で反応させる方法が挙げられる。
【0076】
−R−R−R−R−Rの構造中にカルボニル結合(−CO−)をもつ場合には、−Rを含むアルデヒド化合物と−R−R−Rを含むホウ素酸化合物、−R−R−Rを含むアルデヒド化合物と−R−Rを含むホウ素酸化合物、−R−R−R−Rを含むアルデヒド化合物と−Rを含むホウ素酸化合物、−Rを含むボロン酸化合物と−R−R−Rを含むアルデヒド化合物、−R−R−Rを含むホウ素酸化合物と−R−Rを含むアルデヒド化合物、もしくは、−R−R−R−Rを含むホウ素酸化合物と−Rを含むアルデヒド化合物を、アルカリ存在下で反応させる方法が挙げられる。
【0077】
<液晶を垂直に配向させる側鎖を有するジアミン化合物>
また、本発明の液晶配向剤が含有するポリイミド前駆体及びこれをイミド化して得られるポリイミドから選択される少なくとも1種の重合体の原料であるジアミン成分は、上記式[1]で表されるジアミン化合物以外に、液晶を垂直に配向させる側鎖を有するジアミン化合物を含んでいてもよい。液晶を垂直に配向させる側鎖を有するジアミン化合物としては、長鎖のアルキル基、長鎖アルキル基の途中に環構造や枝分かれ構造を有する基、ステロイド基や、これらの基の水素原子の一部又は全部をフッ素原子に置き換えた基を側鎖として有するジアミン、例えば下記の式[A−1]〜式[A−24]で示されるジアミンを例示することができるが、これに限定されるものではない。
【0078】
【化22】
(式[A−1]〜式[A−5]中、Aは、炭素数2〜24のアルキル基又はフッ素含有アルキル基である。)
【0079】
【化23】
(式[A−6]及び式[A−7]中、Aは、−O−、−OCH−、−CHO−、−COOCH−、又は−CHOCO−を示し、Aは炭素数1〜22のアルキル基、アルコキシ基、フッ素含有アルキル基又はフッ素含有アルコキシ基である。)
【0080】
【化24】
(式[A−8]〜式[A−10]中、Aは、−COO−、−OCO−、−CONH−、−NHCO−、−COOCH−、−CHOCO−、−CHO−、−OCH−、又は−CH−を示し、Aは炭素数1〜22のアルキル基、アルコキシ基、フッ素含有アルキル基又はフッ素含有アルコキシ基である。)
【0081】
【化25】
(式[A−11]及び式[A−12]中、Aは、−COO−、−OCO−、−CONH−、−NHCO−、−COOCH−、−CHOCO−、−CHO−、−OCH−、−CH−、−O−、又は−NH−を示し、Aはフッ素基、シアノ基、トリフルオロメタン基、ニトロ基、アゾ基、ホルミル基、アセチル基、アセトキシ基、又は水酸基である。)
【0082】
【化26】
(式[A−13]及び式[A−14]中、Aは、炭素数3〜12のアルキル基であり、1,4−シクロヘキシレンのシス−トランス異性は、それぞれトランス異性体である。)
【0083】
【化27】
(式[A−15]及び式[A−16]中、Aは、炭素数3〜12のアルキル基であり、1,4−シクロヘキシレンのシス−トランス異性は、それぞれトランス異性体である。)
【0084】
【化28】
【0085】
また、液晶を垂直に配向させる側鎖を有するジアミン化合物の具体例としては、下記の式[A−25]〜式[A−30]で示されるジアミンも挙げることができる。
【0086】
【化29】
(式[A−25]〜式[A−30]中、A12は、−COO−、−OCO−、−CONH−、−NHCO−、−CH−、−O−、−CO−、又は−NH−を示し、A13は炭素数1〜22のアルキル基又はフッ素含有アルキル基を示す。)
【0087】
また、液晶を垂直に配向させる側鎖を有するジアミン化合物の具体例としては、下記の式[A−31]〜式[A−32]で示されるジアミンも挙げることができる。
【0088】
【化30】
【0089】
この中でも、液晶を垂直に配向させる能力、液晶の応答速度の観点から、[A−1]、[A−2]、[A−3]、[A−4]、[A−5]、[A−25]、[A−26]、[A−27]、[A−28]、[A−29]、[A−30]のジアミンが好ましい。
【0090】
上記のジアミンは、液晶配向膜とした際の液晶配向性、プレチルト角、電圧保持特性、蓄積電荷などの特性に応じて、1種類または2種類以上を混合して使用することもできる。
【0091】
本発明の液晶配向剤が含有するポリイミド前駆体及びこれをイミド化して得られるポリイミドから選択される少なくとも1種の重合体の原料であるジアミン成分に含まれる液晶を垂直に配向させる側鎖を有するジアミンの割合は特に限定されないが、ポリイミド前駆体の合成に用いるジアミン成分中の5モル%〜70モル%となる量を用いることが好ましく、より好ましくはジアミン成分中の10モル%〜50モル%であり、特に好ましくは20モル%〜50モル%である。このように液晶を垂直に配向させる側鎖を有するジアミンを、ポリイミド前駆体の合成に用いるジアミン成分中の5モル%〜70モル%となる量用いると、応答速度の向上や液晶の配向固定化能力の点で特に優れる。
【0092】
<その他のジアミン化合物>
また、本発明の液晶配向剤が含有するポリイミド前駆体及びこれをイミド化して得られるポリイミドから選択される少なくとも1種の重合体の原料であるジアミン成分は、本発明の効果を損なわない限りにおいて、上記式[1]で表されるジアミン化合物や上記液晶を垂直に配向させる側鎖を有するジアミン以外の、その他のジアミンを含んでいてもよい。その他のジアミンとしては、例えば、p−フェニレンジアミン、2,3,5,6−テトラメチル−p−フェニレンジアミン、2,5−ジメチル−p−フェニレンジアミン、m−フェニレンジアミン、2,4−ジメチル−m−フェニレンジアミン、2,5−ジアミノトルエン、2,6−ジアミノトルエン、2,5−ジアミノフェノール、2,4−ジアミノフェノール、3,5−ジアミノフェノール、3,5−ジアミノベンジルアルコール、2,4−ジアミノベンジルアルコール、4,6−ジアミノレゾルシノール、4,4’−ジアミノビフェニル、3,3’−ジメチル−4,4’−ジアミノビフェニル、3,3’−ジメトキシ−4,4’−ジアミノビフェニル、3,3’−ジヒドロキシ−4,4’−ジアミノビフェニル、3,3’−ジカルボキシ−4,4’−ジアミノビフェニル、3,3’−ジフルオロ−4,4’−ビフェニル、3,3’−トリフルオロメチル−4,4’−ジアミノビフェニル、3,4’−ジアミノビフェニル、3,3’−ジアミノビフェニル、2,2’−ジアミノビフェニル、2,3’−ジアミノビフェニル、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、3,3’−ジアミノジフェニルメタン、3,4’−ジアミノジフェニルメタン、2,2’−ジアミノジフェニルメタン、2,3’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,3’−ジアミノジフェニルエーテル、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、2,2’−ジアミノジフェニルエーテル、2,3’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−スルホニルジアニリン、3,3’−スルホニルジアニリン、ビス(4−アミノフェニル)シラン、ビス(3−アミノフェニル)シラン、ジメチル−ビス(4−アミノフェニル)シラン、ジメチル−ビス(3−アミノフェニル)シラン、4,4’−チオジアニリン、3,3’−チオジアニリン、4,4’−ジアミノジフェニルアミン、3,3’−ジアミノジフェニルアミン、3,4’−ジアミノジフェニルアミン、2,2’−ジアミノジフェニルアミン、2,3’−ジアミノジフェニルアミン、N−メチル(4,4’−ジアミノジフェニル)アミン、N−メチル(3,3’−ジアミノジフェニル)アミン、N−メチル(3,4’−ジアミノジフェニル)アミン、N−メチル(2,2’−ジアミノジフェニル)アミン、N−メチル(2,3’−ジアミノジフェニル)アミン、4,4’−ジアミノベンゾフェノン、3,3’−ジアミノベンゾフェノン、3,4’−ジアミノベンゾフェノン、1,4−ジアミノナフタレン、2,2’−ジアミノベンゾフェノン、2,3’−ジアミノベンゾフェノン、1,5−ジアミノナフタレン、1,6−ジアミノナフタレン、1,7−ジアミノナフタレン、1,8−ジアミノナフタレン、2,5−ジアミノナフタレン、2,6ジアミノナフタレン、2,7−ジアミノナフタレン、2,8−ジアミノナフタレン、1,2−ビス(4−アミノフェニル)エタン、1,2−ビス(3−アミノフェニル)エタン、1,3−ビス(4−アミノフェニル)プロパン、1,3−ビス(3−アミノフェニル)プロパン、1,4−ビス(4−アミノフェニル)ブタン、1,4−ビス(3−アミノフェニル)ブタン、ビス(3,5−ジエチル−4−アミノフェニル)メタン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノフェニル)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノフェニル)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノベンジル)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、4,4’−[1,4−フェニレンビス(メチレン)]ジアニリン、4,4’−[1,3−フェニレンビス(メチレン)]ジアニリン、3,4’−[1,4−フェニレンビス(メチレン)]ジアニリン、3,4’−[1,3−フェニレンビス(メチレン)]ジアニリン、3,3’−[1,4−フェニレンビス(メチレン)]ジアニリン、3,3’−[1,3−フェニレンビス(メチレン)]ジアニリン、1,4−フェニレンビス[(4−アミノフェニル)メタノン]、1,4−フェニレンビス[(3−アミノフェニル)メタノン]、1,3−フェニレンビス[(4−アミノフェニル)メタノン]、1,3−フェニレンビス[(3−アミノフェニル)メタノン]、1,4−フェニレンビス(4−アミノベンゾエート)、1,4−フェニレンビス(3−アミノベンゾエート)、1,3−フェニレンビス(4−アミノベンゾエート)、1,3−フェニレンビス(3−アミノベンゾエート)、ビス(4−アミノフェニル)テレフタレート、ビス(3−アミノフェニル)テレフタレート、ビス(4−アミノフェニル)イソフタレート、ビス(3−アミノフェニル)イソフタレート、N,N’−(1,4−フェニレン)ビス(4−アミノベンズアミド)、N,N’−(1,3−フェニレン)ビス(4−アミノベンズアミド)、N,N’−(1,4−フェニレン)ビス(3−アミノベンズアミド)、N,N’−(1,3−フェニレン)ビス(3−アミノベンズアミド)、N,N’−ビス(4−アミノフェニル)テレフタルアミド、N,N’−ビス(3−アミノフェニル)テレフタルアミド、N,N’−ビス(4−アミノフェニル)イソフタルアミド、N,N’−ビス(3−アミノフェニル)イソフタルアミド、9,10−ビス(4−アミノフェニル)アントラセン、4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)ジフェニルスルホン、2,2’−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2’−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、2,2’−ビス(4−アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2’−ビス(3−アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2’−ビス(3−アミノ−4−メチルフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2’−ビス(4−アミノフェニル)プロパン、2,2’−ビス(3−アミノフェニル)プロパン、2,2’−ビス(3−アミノ−4−メチルフェニル)プロパン、3,5−ジアミノ安息香酸、2,5−ジアミノ安息香酸、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)プロパン、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)プロパン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ブタン、1,4−ビス(3−アミノフェノキシ)ブタン、1,5−ビス(4−アミノフェノキシ)ペンタン、1,5−ビス(3−アミノフェノキシ)ペンタン、1,6−ビス(4−アミノフェノキシ)へキサン、1,6−ビス(3−アミノフェノキシ)へキサン、1,7−ビス(4−アミノフェノキシ)ヘプタン、1,7−(3−アミノフェノキシ)ヘプタン、1,8−ビス(4−アミノフェノキシ)オクタン、1,8−ビス(3−アミノフェノキシ)オクタン、1,9−ビス(4−アミノフェノキシ)ノナン、1,9−ビス(3−アミノフェノキシ)ノナン、1,10−(4−アミノフェノキシ)デカン、1,10−(3−アミノフェノキシ)デカン、1,11−(4−アミノフェノキシ)ウンデカン、1,11−(3−アミノフェノキシ)ウンデカン、1,12−(4−アミノフェノキシ)ドデカン、1,12−(3−アミノフェノキシ)ドデカンなどの芳香族ジアミン、ビス(4−アミノシクロヘキシル)メタン、ビス(4−アミノ−3−メチルシクロヘキシル)メタンなどの脂環式ジアミン、1,3−ジアミノプロパン、1,4−ジアミノブタン、1,5−ジアミノペンタン、1,6−ジアミノへキサン、1,7−ジアミノヘプタン、1,8−ジアミノオクタン、1,9−ジアミノノナン、1,10−ジアミノデカン、1,11−ジアミノウンデカン、1,12−ジアミノドデカンなどの脂肪族ジアミンが挙げられる。
【0093】
上記その他のジアミンは、液晶配向膜とした際の液晶配向性、プレチルト角、電圧保持特性、蓄積電荷などの特性に応じて、1種類または2種類以上を混合して使用することもできる。
【0094】
<テトラカルボン酸二無水物成分>
ポリイミド前駆体を得るために、上記のジアミン成分と反応させるテトラカルボン酸二無水物成分は、特に限定されない。具体的には、ピロメリット酸、2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸、1,2,5,6−ナフタレンテトラカルボン酸、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸、2,3,6,7−アントラセンテトラカルボン酸、1,2,5,6−アントラセンテトラカルボン酸、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸、2,3,3’,4−ビフェニルテトラカルボン酸、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エーテル、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)スルホン、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)メタン、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)プロパン、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)プロパン、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)ジメチルシラン、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)ジフェニルシラン、2,3,4,5−ピリジンテトラカルボン酸、2,6−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)ピリジン、3,3’,4,4’−ジフェニルスルホンテトラカルボン酸、3,4,9,10−ペリレンテトラカルボン酸、1,3−ジフェニル−1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸、オキシジフタルテトラカルボン酸、1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸、1,2,3,4−シクロペンタンテトラカルボン酸、1,2,4,5−シクロヘキサンテトラカルボン酸、1,2,3,4−テトラメチル−1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸、1,2−ジメチル−1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸、1,3−ジメチル−1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸、1,2,3,4−シクロヘプタンテトラカルボン酸、2,3,4,5−テトラヒドロフランテトラカルボン酸、3,4−ジカルボキシ−1−シクロへキシルコハク酸、2,3,5−トリカルボキシシクロペンチル酢酸、3,4−ジカルボキシ−1,2,3,4−テトラヒドロ−1−ナフタレンコハク酸、ビシクロ[3,3,0]オクタン−2,4,6,8−テトラカルボン酸、ビシクロ[4,3,0]ノナン−2,4,7,9−テトラカルボン酸、ビシクロ[4,4,0]デカン−2,4,7,9−テトラカルボン酸、ビシクロ[4,4,0]デカン−2,4,8,10−テトラカルボン酸、トリシクロ[6.3.0.0<2,6>]ウンデカン−3,5,9,11−テトラカルボン酸、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸、4−(2,5−ジオキソテトラヒドロフラン−3−イル)−1,2,3,4−テトラヒドリナフタレン−1,2−ジカルボン酸、ビシクロ[2,2,2]オクト−7−エン−2,3,5,6−テトラカルボン酸、5−(2,5−ジオキソテトラヒドロフリル)−3−メチル−3−シクロへキサン−1,2−ジカルボン酸、テトラシクロ[6,2,1,1,0,2,7]ドデカ−4,5,9,10−テトラカルボン酸、3,5,6−トリカルボキシノルボルナン−2:3,5:6ジカルボン酸、1,2,4,5−シクロヘキサンテトラカルボン酸等が挙げられる。勿論、テトラカルボン酸二無水物も、液晶配向膜にした際の液晶配向性、電圧保持特性、蓄積電荷などの特性に応じて、1種類または2種類以上併用してもよい。
【0095】
<ポリイミド前駆体の合成>
本発明の液晶配向剤に含有され得るポリイミド前駆体とは、ポリアミック酸もしくはポリアミック酸エステルを指す。
【0096】
上記ジアミン成分と上記テトラカルボン酸二無水物成分との反応により、ポリアミック酸を得るにあたっては、公知の合成手法を用いることができる。一般的には、ジアミン成分とテトラカルボン酸二無水物成分とを有機溶媒中で反応させる方法である。ジアミン成分とテトラカルボン酸二無水物成分との反応は、有機溶媒中で比較的容易に進行し、かつ副生成物が発生しない点で有利である。
【0097】
上記反応に用いる有機溶媒としては、生成したポリアミック酸が溶解するものであれば特に限定されない。さらに、ポリアミック酸が溶解しない有機溶媒であっても、生成したポリアミック酸が析出しない範囲で、上記溶媒に混合して使用してもよい。なお、有機溶媒中の水分は重合反応を阻害し、さらには生成したポリアミック酸を加水分解させる原因となるので、有機溶媒は脱水乾燥させたものを用いることが好ましい。反応に用いる有機溶媒としては、例えば、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジエチルホルムアミド、N−メチルホルムアミド、N−メチル−2−ピロリドン、N−エチル−2−ピロリドン、2−ピロリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、3−メトキシ−N,N−ジメチルプロパンアミド、N−メチルカプロラクタム、ジメチルスルホキシド、テトラメチル尿素、ピリジン、ジメチルスルホン、ヘキサメチルスルホキシド、γ−ブチロラクトン、イソプロピルアルコール、メトキシメチルペンタノール、ジペンテン、エチルアミルケトン、メチルノニルケトン、メチルエチルケトン、メチルイソアミルケトン、メチルイソプロピルケトン、メチルセルソルブ、エチルセルソルブ、メチルセロソルブアセテート、ブチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート、ブチルカルビトール、エチルカルビトール、エチレングリコール、エチレングリコールモノアセテート、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコール、プロピレングリコールモノアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコール−tert−ブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコール、ジエチレングリコールモノアセテート、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノアセテートモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノアセテートモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノアセテートモノプロピルエーテル、3−メチル−3−メトキシブチルアセテート、トリプロピレングリコールメチルエーテル、3−メチル−3−メトキシブタノール、ジイソプロピルエーテル、エチルイソブチルエーテル、ジイソブチレン、アミルアセテート、ブチルブチレート、ブチルエーテル、ジイソブチルケトン、メチルシクロへキセン、プロピルエーテル、ジヘキシルエーテル、ジオキサン、n−へキサン、n−ペンタン、n−オクタン、ジエチルエーテル、シクロヘキサノン、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、乳酸メチル、乳酸エチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸n−ブチル、酢酸プロピレングリコールモノエチルエーテル、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル、3−メトキシプロピオン酸メチル、3−エトキシプロピオン酸メチルエチル、3−メトキシプロピオン酸エチル、3−エトキシプロピオン酸、3−メトキシプロピオン酸、3−メトキシプロピオン酸プロピル、3−メトキシプロピオン酸ブチル、ジグライム、4−ヒドロキシ−4−メチル−2−ペンタノン、2−エチル−1−ヘキサノール等が挙げられる。これらの有機溶媒は単独で使用しても、混合して使用してもよい。
【0098】
ジアミン成分とテトラカルボン酸二無水物成分とを有機溶媒中で反応させる際には、ジアミン成分を有機溶媒に分散あるいは溶解させた溶液を攪拌し、テトラカルボン酸二無水物成分をそのまま、または有機溶媒に分散あるいは溶解させて添加する方法、逆にテトラカルボン酸二無水物成分を有機溶媒に分散あるいは溶解させた溶液にジアミン成分を添加する方法、テトラカルボン酸二無水物成分とジアミン成分とを交互に添加する方法などが挙げられ、これらのいずれの方法を用いてもよい。また、ジアミン成分又はテトラカルボン酸二無水物成分が複数種の化合物からなる場合は、あらかじめ混合した状態で反応させてもよく、個別に順次反応させてもよく、さらに個別に反応させた低分子量体を混合反応させ高分子量体としてもよい。
【0099】
ジアミン成分とテトラカルボン酸二無水物成分とを反応させる際の温度は、任意の温度を選択することができ、例えば−20℃〜150℃、好ましくは−5℃〜100℃の範囲である。また、反応は任意の濃度で行うことができ、例えば反応液に対してジアミン成分とテトラカルボン酸二無水物成分との合計量が1〜50質量%、好ましくは5〜30質量%である。
【0100】
上記の重合反応における、ジアミン成分の合計モル数に対するテトラカルボン酸二無水物成分の合計モル数の比率は、得ようとするポリアミック酸の分子量に応じて任意の値を選択することができる。通常の重縮合反応と同様に、このモル比が1.0に近いほど生成するポリアミック酸の分子量は大きくなる。あえて好ましい範囲を示すならば0.8〜1.2である。
【0101】
本発明に用いられるポリアミック酸を合成する方法は上記の手法に限定されず、一般的なポリアミック酸の合成方法と同様に、上記のテトラカルボン酸二無水物成分として、対応する構造のテトラカルボン酸又はテトラカルボン酸ジハライドなどのテトラカルボン酸誘導体を用い、公知の方法で反応させることでも対応するポリアミック酸を得ることができる。
【0102】
ポリアミック酸エステルは、以下に示す(1)〜(3)の方法で合成することができる。
【0103】
(1)ポリアミック酸から合成する場合
ポリアミック酸エステルは、テトラカルボン酸二無水物とジアミン成分から得られるポリアミック酸をエステル化することによって合成することができる。具体的には、ポリアミック酸とエステル化剤を有機溶剤の存在下で−20℃〜150℃、好ましくは0℃〜50℃において、30分〜24時間、好ましくは1〜4時間反応させることによって合成することができる。
【0104】
エステル化剤としては、精製によって容易に除去できるものが好ましく、N,N−ジメチルホルムアミドジメチルアセタール、N,N−ジメチルホルムアミドジエチルアセタール、N,N−ジメチルホルムアミドジプロピルアセタール、N,N−ジメチルホルムアミドジネオペンチルブチルアセタール、N,N−ジメチルホルムアミドジ−t−ブチルアセタール、1−メチル−3−p−トリルトリアゼン、1−エチル−3−p−トリルトリアゼン、1−プロピル−3−p−トリルトリアゼン、4−(4,6−ジメトキシー1,3,5−トリアジンー2−イル)−4−メチルモルホリニウムクロリドなどが挙げられる。エステル化剤の添加量は、ポリアミック酸の繰り返し単位1モルに対して、2〜6モル当量が好ましい。
【0105】
上記の反応に用いる溶媒は、ポリマーの溶解性からN,N−ジメチルホルムアミド、N−メチル−2−ピロリドン、又はγ−ブチロラクトンが好ましく、これらは1種又は2種以上を混合して用いてもよい。合成時の濃度は、ポリマーの析出が起こりにくく、かつ高分子量体が得やすいという観点から、1〜30質量%が好ましく、5〜20質量%がより好ましい。
【0106】
(2)テトラカルボン酸ジエステルジクロリドとジアミン成分との反応により合成する場合
ポリアミック酸エステルは、テトラカルボン酸ジエステルジクロリドとジアミン成分から合成することができる。具体的には、テトラカルボン酸ジエステルジクロリドとジアミン成分とを塩基と有機溶剤の存在下で−20℃〜150℃、好ましくは0℃〜50℃において、30分〜24時間、好ましくは1〜4時間反応させることによって合成することができる。
【0107】
前記塩基には、ピリジン、トリエチルアミン、4−ジメチルアミノピリジンなどが使用できるが、反応が穏和に進行するためにピリジンが好ましい。塩基の添加量は、除去が容易な量で、かつ高分子量体が得やすいという観点から、テトラカルボン酸ジエステルジクロリドに対して、2〜4倍モルであることが好ましい。
【0108】
上記の反応に用いる溶媒は、モノマーおよびポリマーの溶解性からN−メチル−2−ピロリドン、γ−ブチロラクトンが好ましく、これらは1種又は2種以上を混合して用いてもよい。合成時のポリマー濃度は、ポリマーの析出が起こりにくく、かつ高分子量体が得やすいという観点から、1〜30質量%が好ましく、5〜20質量%がより好ましい。また、テトラカルボン酸ジエステルジクロリドの加水分解を防ぐため、ポリアミック酸エステルの合成に用いる溶媒はできるだけ脱水されていることが好ましく、窒素雰囲気中で、外気の混入を防ぐのが好ましい。
【0109】
(3)テトラカルボン酸ジエステルとジアミン成分との反応により合成する場合
ポリアミック酸エステルは、テトラカルボン酸ジエステルとジアミン成分を重縮合することにより合成することができる。具体的には、テトラカルボン酸ジエステルとジアミン成分を縮合剤、塩基、有機溶剤の存在下で0℃〜150℃、好ましくは0℃〜100℃において、30分〜24時間、好ましくは3〜15時間反応させることによって合成することができる。
【0110】
前記縮合剤には、トリフェニルホスファイト、ジシクロヘキシルカルボジイミド、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩、N,N’−カルボニルジイミダゾール、ジメトキシ−1,3,5−トリアジニルメチルモルホリニウム、O−(ベンゾトリアゾール−1−イル)−N,N,N’,N’−テトラメチルウロニウム テトラフルオロボラート、O−(ベンゾトリアゾール−1−イル)−N,N,N’,N’−テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスファート、(2,3−ジヒドロ−2−チオキソ−3−ベンゾオキサゾリル)ホスホン酸ジフェニルなどが使用できる。縮合剤の添加量は、テトラカルボン酸ジエステルに対して、2〜3倍モルであることが好ましい。
【0111】
前記塩基には、ピリジン、トリエチルアミンなどの3級アミンが使用できる。塩基の添加量は、除去が容易な量で、かつ高分子量体が得やすいという観点から、ジアミン成分に対して、2〜4倍モルが好ましい。
【0112】
また、上記反応において、ルイス酸を添加剤として加えることで反応が効率的に進行する。ルイス酸としては、塩化リチウム、臭化リチウムなどのハロゲン化リチウムが好ましい。ルイス酸の添加量はジアミン成分に対して、0〜1.0倍モルが好ましい。
【0113】
上記3つのポリアミック酸エステルの合成方法の中でも、高分子量のポリアミック酸エステルが得られるため、上記(1)又は上記(2)の合成法が特に好ましい。
【0114】
上記のようにして得られるポリアミック酸エステルの溶液は、よく撹拌させながら貧溶媒に注入することで、ポリマーを析出させることができる。析出を数回行い、貧溶媒で洗浄後、常温あるいは加熱乾燥して精製されたポリアミック酸エステルの粉末を得ることができる。貧溶媒は、特に限定されないが、水、メタノール、エタノール、ヘキサン、ブチルセロソルブ、アセトン、トルエン等が挙げられる。
【0115】
<可溶性ポリイミドの合成>
上記したポリアミック酸をイミド化させてポリイミドとする方法としては、ポリアミック酸の溶液をそのまま加熱する熱イミド化や、ポリアミック酸の溶液に触媒を添加する触媒イミド化が挙げられる。なお、ポリアミック酸からポリイミドへのイミド化率は、必ずしも100%である必要はない。
【0116】
ポリアミック酸を溶液中で熱イミド化させる場合の温度は、100℃〜400℃、好ましくは120℃〜250℃であり、イミド化反応により生成する水を系外に除きながら行うことが好ましい。
【0117】
ポリアミック酸の触媒イミド化は、ポリアミック酸の溶液に、塩基性触媒と酸無水物とを添加し、−20〜250℃、好ましくは0〜180℃で攪拌することにより行うことができる。塩基性触媒の量はアミド酸基の0.5〜30倍モル、好ましくは2〜20倍モルであり、酸無水物の量はアミド酸基の1〜50倍モル、好ましくは3〜30倍モルである。塩基性触媒としてはピリジン、トリエチルアミン、トリメチルアミン、トリブチルアミン、トリオクチルアミンなどを挙げることができ、中でもピリジンは反応を進行させるのに適度な塩基性を持つので好ましい。酸無水物としては、無水酢酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸などを挙げることができ、中でも無水酢酸を用いると反応終了後の精製が容易となるので好ましい。触媒イミド化によるイミド化率は、触媒量と反応温度、反応時間を調節することにより制御することができる。
【0118】
ポリアミック酸又はポリイミドの反応溶液から、生成したポリアミック酸又はポリイミドを回収する場合には、反応溶液を貧溶媒に投入して沈殿させればよい。沈殿に用いる貧溶媒としてはメタノール、アセトン、ヘキサン、ブチルセルソルブ、ヘプタン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、エタノール、トルエン、ベンゼン、水などを挙げることができる。貧溶媒に投入して沈殿させたポリマーは濾過して回収した後、常圧あるいは減圧下で、常温あるいは加熱して乾燥することができる。また、沈殿回収した重合体を、有機溶媒に再溶解させ、再沈殿回収する操作を2〜10回繰り返すと、重合体中の不純物を少なくすることができる。この際の貧溶媒として、例えば、アルコール類、ケトン類、炭化水素などが挙げられ、これらの内から選ばれる3種類以上の貧溶媒を用いると、より一層精製の効率が上がるので好ましい。
【0119】
<液晶配向剤>
本発明の液晶配向剤は、上述したように、上記式[1]で表されるジアミン化合物を含むジアミン成分と、テトラカルボン酸二無水物成分との反応で得られるポリイミド前駆体及び該ポリイミド前駆体をイミド化して得られるポリイミドから選択される少なくとも1種の重合体を含有するものである。液晶配向剤が含有する、上記式[1]で表されるジアミン化合物を含むジアミン成分と、テトラカルボン酸二無水物成分との反応で得られるポリイミド前駆体及び該ポリイミド前駆体をイミド化して得られるポリイミドから選択される少なくとも1種の重合体の総量は、1〜10(質量)%であることが好ましい。
【0120】
また、本発明の液晶配向剤は、上記式[1]で表されるジアミン化合物を含むジアミン成分とテトラカルボン酸二無水物成分との反応により得られるポリイミド前駆体、及び、このポリイミド前駆体をイミド化して得られるポリイミドから選択される少なくとも一種の重合体以外の他の重合体を含有していてもよい。その際、重合体全成分中における上記式[1]で表されるジアミン化合物を含むジアミン成分とテトラカルボン酸二無水物成分との反応により得られるポリイミド前駆体、及び、このポリイミド前駆体をイミド化して得られるポリイミドから選択される少なくとも一種の重合体の割合は10(質量)%以上が好ましい。
【0121】
液晶配向剤が有する重合体の分子量は、液晶配向剤を塗布して得られる液晶配向膜の強度及び、塗膜形成時の作業性、塗膜の均一性を考慮した場合、GPC(Gel Permeation Chromatography)法で測定した重量平均分子量で5,000〜1,000,000とするのが好ましく、より好ましくは、10,000〜150,000である。
【0122】
液晶配向剤が含有する溶媒に特に限定はなく、上記式[1]で表されるジアミン化合物を含むジアミン成分とテトラカルボン酸二無水物成分との反応により得られるポリイミド前駆体、及び、このポリイミド前駆体をイミド化して得られるポリイミドから選択される少なくとも一種の重合体等の含有成分を溶解または分散できるものであればよい。例えば、上記のポリアミック酸の合成で例示したような有機溶媒を挙げることができる。中でもN−メチル−2−ピロリドン、γ−ブチロラクトン、N−エチル−2−ピロリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、3−メトキシ−N,N−ジメチルプロパンアミドは、溶解性の観点から好ましい。勿論、2種類以上の混合溶媒を用いてもよい。
【0123】
また、塗膜の均一性や平滑性を向上させる溶媒を、液晶配向剤の含有成分の溶解性が高い溶媒に混合して使用すると好ましい。塗膜の均一性や平滑性を向上させる溶媒としては、例えば、イソプロピルアルコール、メトキシメチルペンタノール、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、メチルセロソルブアセテート、ブチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート、ブチルカルビトール、エチルカルビトール、エチルカルビトールアセテート、エチレングリコール、エチレングリコールモノアセテート、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコール、プロピレングリコールモノアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコール−tert−ブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコール、ジエチレングリコールモノアセテート、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノアセテートモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノアセテートモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノアセテートモノプロピルエーテル、3−メチル−3−メトキシブチルアセテート、トリプロピレングリコールメチルエーテル、3−メチル−3−メトキシブタノール、ジイソプロピルエーテル、エチルイソブチルエーテル、ジイソブチレン、アミルアセテート、ブチルブチレート、ブチルエーテル、ジイソブチルケトン、メチルシクロへキセン、プロピルエーテル、ジヘキシルエーテル、n−へキサン、n−ペンタン、n−オクタン、ジエチルエーテル、乳酸メチル、乳酸エチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸n−ブチル、酢酸プロピレングリコールモノエチルエーテル、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル、3−メトキシプロピオン酸メチル、3−エトキシプロピオン酸メチルエチル、3−メトキシプロピオン酸エチル、3−エトキシプロピオン酸、3−メトキシプロピオン酸、3−メトキシプロピオン酸プロピル、3−メトキシプロピオン酸ブチル、1−メトキシ−2−プロパノール、1−エトキシ−2−プロパノール、1−ブトキシ−2−プロパノール、1−フェノキシ−2−プロパノール、プロピレングリコールモノアセテート、プロピレングリコールジアセテート、プロピレングリコール−1−モノメチルエーテル−2−アセテート、プロピレングリコール−1−モノエチルエーテル−2−アセテート、ジプロピレングリコール、2−(2−エトキシプロポキシ)プロパノール、乳酸メチルエステル、乳酸エチルエステル、乳酸n−プロピルエステル、乳酸n−ブチルエステル、乳酸イソアミルエステル、2−エチル−1−ヘキサノールなどが挙げられる。これらの溶媒は複数種類を混合してもよい。これらの溶媒を用いる場合は、液晶配向剤に含まれる溶媒全体の5〜80質量%であることが好ましく、より好ましくは20〜60質量%である。
【0124】
液晶配向剤には、上記以外の成分を含有してもよい。その例としては、液晶配向剤を塗布した際の膜厚均一性や表面平滑性を向上させる化合物、液晶配向膜と基板との密着性を向上させる化合物などが挙げられる。
【0125】
膜厚の均一性や表面平滑性を向上させる化合物としては、フッ素系界面活性剤、シリコーン系界面活性剤、ノ二オン系界面活性剤などが挙げられる。より具体的には、例えば、エフトップEF301、EF303、EF352(トーケムプロダクツ社製)、メガファックF171、F173、R−30(大日本インキ社製)、フロラードFC430、FC431(住友スリーエム社製)、アサヒガードAG710、サーフロンS−382、SC101、SC102、SC103、SC104、SC105、SC106(旭硝子社製)などが挙げられる。これらの界面活性剤を使用する場合、その使用割合は、液晶配向剤に含有される重合体の総量100質量部に対して、好ましくは0.01〜2質量部、より好ましくは0.01〜1質量部である。
【0126】
液晶配向膜と基板との密着性を向上させる化合物の具体例としては、官能性シラン含有化合物やエポキシ基含有化合物などが挙げられる。例えば、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、2−アミノプロピルトリメトキシシラン、2−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3−ウレイドプロピルトリメトキシシラン、3−ウレイドプロピルトリエトキシシラン、N−エトキシカルボニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−エトキシカルボニル−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−トリエトキシシリルプロピルトリエチレントリアミン、N−トリメトキシシリルプロピルトリエチレントリアミン、10−トリメトキシシリル−1,4,7−トリアザデカン、10−トリエトキシシリル−1,4,7−トリアザデカン、9−トリメトキシシリル−3,6−ジアザノニルアセテート、9−トリエトキシシリル−3,6−ジアザノニルアセテート、N−ベンジル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−ベンジル−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−ビス(オキシエチレン)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−ビス(オキシエチレン)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、トリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、グリセリンジグリシジルエーテル、2,2−ジブロモネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、1,3,5,6−テトラグリシジル−2,4−ヘキサンジオール、N,N,N’,N’−テトラグリシジル−m−キシレンジアミン、1,3−ビス(N,N−ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサン、N,N,N’,N’−テトラグリシジル−4、4’−ジアミノジフェニルメタン、3−(N−アリル−N−グリシジル)アミノプロピルトリメトキシシラン、3−(N,N−ジグリシジル)アミノプロピルトリメトキシシランなどが挙げられる。また液晶配向膜の膜強度をさらに上げるために2,2’−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジヒドロキシメチルフェニル)プロパン、テトラ(メトキシメチル)ビスフェノール等のフェノール化合物を添加してもよい。これらの化合物を使用する場合は、液晶配向剤に含有される重合体の総量100質量部に対して0.1〜30質量部であることが好ましく、より好ましくは1〜20質量部である。
【0127】
さらに、液晶配向剤には、上記の他、本発明の効果が損なわれない範囲であれば、液晶配向膜の誘電率や導電性などの電気特性を変化させる目的の誘電体や導電物質を添加してもよい。
【0128】
<液晶配向膜>
この液晶配向剤を基板上に塗布して焼成することにより、液晶を垂直に配向させる液晶配向膜を形成することができる。
【0129】
この際、用いる基板としては透明性の高い基板であれば特に限定されず、ガラス基板、アクリル基板やポリカーボネート基板などのプラスチック基板などを用いることができる。また、液晶駆動のためのITO(Indium Tin Oxide)電極などが形成された基板を用いることがプロセスの簡素化の観点から好ましい。また、反射型の液晶表示素子では片側の基板のみにならばシリコンウエハー等の不透明な物でも使用でき、この場合の電極はアルミ等の光を反射する材料も使用できる。
【0130】
液晶配向剤の塗布方法は特に限定されず、スクリーン印刷、オフセット印刷、フレキソ印刷、インクジェットなどで行う方法や、ディップ、ロールコーター、スリットコーター、スピンナーなどが挙げられる。
【0131】
液晶配向剤を塗布することにより形成された塗膜の焼成温度は限定されず、例えば100℃〜350℃の任意の温度で行うことができるが、好ましくは120℃〜300℃であり、さらに好ましくは150℃〜250℃である。この焼成はホットプレート、熱風循環炉、赤外線炉などで行うことができる。
【0132】
また、焼成して得られる液晶配向膜の厚みは特に限定されないが、好ましくは5〜300nm、より好ましくは10〜100nmである。
【0133】
<液晶表示素子>
本発明の液晶表示素子は、対向するように配置された2枚の基板と、基板間に設けられた液晶層と、基板と液晶層との間に設けられ本発明の液晶配向剤により形成された上記液晶配向膜とを有する液晶セルを具備する液晶表示素子である。具体的には、本発明の液晶配向剤を2枚の基板上に塗布して焼成することにより液晶配向膜を形成し、この液晶配向膜が対向するように2枚の基板を配置し、この2枚の基板の間に液晶で構成された液晶層を挟持し、液晶配向膜及び液晶層に電圧を印加しながら紫外線を照射することで作製される液晶セルを具備する液晶表示素子である。このような本発明の液晶表示素子としては、ツイストネマティック(TN:Twisted Nematic)方式、垂直配向(VA:Vertical Alignment)方式や、水平配向(IPS:In-Plane Switching)方式等、種々のものが挙げられる。
【0134】
このように本発明の液晶配向剤により形成された液晶配向膜を用い、液晶配向膜及び液晶層に電圧を印加しながら紫外線を照射して、ポリイミド前駆体やポリイミドの側鎖が持つ光重合性基及び光二量化を起こす基、すなわち、上記式[1]で表されるジアミン化合物由来の光重合性基及び光二量化を起こす基を反応させることにより、光重合性化合物を液晶配向剤に含有させなくても、光重合性化合物を含有する液晶配向剤を用いた液晶配向膜より効率的に液晶の配向が固定化され、応答速度が顕著に優れた液晶表示素子となる。もちろん、本発明の液晶配向剤に、光重合性化合物を添加しても、同様或いはそれ以上の応答速度の液晶表示素子を得ることは可能である。
【0135】
本発明の液晶表示素子に用いる基板としては、透明性の高い基板であれば特に限定されないが、通常は、基板上に液晶を駆動するための透明電極が形成された基板である。具体例としては、上記液晶配向膜で記載した基板と同様のものを挙げることができる。従来の電極パターンや突起パターンが設けられた基板を用いてもよいが、本発明の液晶表示素子においては、液晶配向膜を形成する液晶配向剤として上記本発明の液晶配向剤を用いているため、片側基板に1から10μmのライン/スリット電極パターンを形成し、対向基板にはスリットパターンや突起パターンを形成していない構造においても動作可能であり、この構造の液晶表示素子によって、製造時のプロセスを簡略化でき、高い透過率を得ることができる。
【0136】
また、TFT型の素子のような高機能素子においては、液晶駆動のための電極と基板の間にトランジスタの如き素子が形成されたものが用いられる。
【0137】
透過型の液晶表示素子の場合は、上記の如き基板を用いることが一般的であるが、反射型の液晶表示素子では、片側の基板のみにならばシリコンウエハー等の不透明な基板も用いることが可能である。その際、基板に形成された電極には、光を反射するアルミニウムの如き材料を用いることもできる。
【0138】
液晶配向膜は、この基板上に本発明の液晶配向剤を塗布した後焼成することにより形成されるものであり、詳しくは上述したとおりである。
【0139】
本発明の液晶表示素子の液晶層を構成する液晶材料は特に限定されず、従来の垂直配向方式で使用される液晶材料、例えばメルク社製のMLC−6608、MLC−6609などのネガ型の液晶や、MLC−2041などを用いることができる。
【0140】
この液晶層を2枚の基板の間に挟持させる方法としては、公知の方法を挙げることができる。例えば、液晶配向膜が形成された1対の基板を用意し、一方の基板の液晶配向膜上にビーズ等のスペーサーを散布し、液晶配向膜が形成された側の面が内側になるようにしてもう一方の基板を貼り合わせ、液晶を減圧注入して封止する方法が挙げられる。また、液晶配向膜が形成された1対の基板を用意し、一方の基板の液晶配向膜上にビーズ等のスペーサーを散布した後に液晶を滴下し、その後液晶配向膜が形成された側の面が内側になるようにしてもう一方の基板を貼り合わせて封止を行う方法でも液晶セルを作製することができる。このときのスペーサーの厚みは、好ましくは1〜30μm、より好ましくは2〜10μmである。
【0141】
液晶配向膜及び液晶層に電圧を印加しながら紫外線を照射することにより液晶セルを作製する工程は、例えば基板上に設置されている電極間に電圧をかけることで液晶配向膜及び液晶層に電界を印加し、この電界を保持したまま紫外線を照射する方法が挙げられる。ここで、電極間にかける電圧としては例えば5〜30Vp−p、好ましくは5〜20Vp−pである。紫外線の照射量は、例えば1〜60J、好ましくは40J以下であり、紫外線照射量が少ないほうが、液晶表示素子を構成する部材の破壊により生じる信頼性低下を抑制でき、かつ紫外線照射時間を減らせることで製造効率が上がるので好適である。
【0142】
このように、液晶配向膜及び液晶層に電圧を印加しながら紫外線を照射すると、ポリイミド前駆体やポリイミドの側鎖が持つ光重合性基及び光二量化を起こす基の反応が進行し、すなわち、上記式[1]で表されるジアミン化合物由来の光重合性基による架橋反応及び光二量化を起こす基による二量化反応が進行し、結果生じた架橋部位や二量化部位によって液晶分子が傾く方向が記憶されることで、得られる液晶表示素子の応答速度を速くすることができる。
【0143】
また、上記液晶配向剤は、PSA型液晶ディスプレイやSC−PVA型液晶ディスプレイ等の垂直配向方式の液晶表示素子を作製するための液晶配向剤として有用なだけでなく、ラビング処理や光配向処理によって作製される液晶配向膜の用途でも好適に使用できる。
【0144】
以下に実施例を挙げ、本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【実施例】
【0145】
合成例において使用したテトラカルボン酸二無水物及びジアミンの略号とその構造を以下に示す。
【0146】
【化31】
【0147】
【化32】
【0148】
【化33】
【0149】
【化34】
【0150】
実施例等で使用した有機溶媒等の略号は以下の通りである。
NMP: N−メチル−2−ピロリドン
BCS: ブチルセロソルブ
THF: テトラヒドロフラン
DMF: N,N−ジメチルホルムアミド
DMAc: N,N−ジメチルアセトアミド
EtOH: エタノール
HEMA: メタクリル酸2−ヒドロキシエチル
EDC: 1−(3−ジメチルアミノプロピル)−3−エチルカルボジイミド塩酸塩
DMAP: 4−ジメチルアミノピリジン
【0151】
<重合体の分子量の測定>
ポリイミドまたはポリアミック酸の分子量は、(株)Shodex社製常温ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)装置(GPC−101)、Shodex社製カラム(KD−803、KD−805)を用い以下のようにして測定した。
カラム温度:50℃
溶離液:N,N−ジメチルホルムアミド(添加剤として、臭化リチウム−水和物(LiBr・HO)が30mmol/L、リン酸・無水結晶(o−リン酸)が30mmol/L、テトラヒドロフラン(THF)が10ml/L)
流速:1.0mL/分
検量線作成用標準サンプル:東ソー社製 TSK 標準ポリエチレンオキサイド(分子量 約900,000、150,000、100,000、30,000)、および、ポリマーラボラトリー社製 ポリエチレングリコール(分子量 約12,000、4,000、1,000)。
【0152】
HNMRの測定>
装置:フーリエ変換型超伝導核磁気共鳴装置(FT−NMR)INOVA−400(Varian製)400MHz
溶媒:重水素化ジメチルスルホキシド(DMSO−d)、重水素化クロロホルム(CDCl
標準物質:テトラメチルシラン(TMS)
【0153】
(実施例1)DA−4の合成
【0154】
(実施例1−1)DA−4の前駆体DA−4−1の合成
【0155】
【化35】
【0156】
1L三口フラスコに、trans−p−クマル酸を102.0g、エタノールを500mL、硫酸を5.8g、加えて、還流加熱しながら攪拌した。反応終了後、3Lの水に反応系を注ぎ、沈殿物を濾過した後に、この濾過物を乾燥させ、90.0gの目的物DA−4−1(白色固体)を得た(収率75%)。
【0157】
(実施例1−2) DA−4の前駆体DA−4−2の合成
【0158】
【化36】
【0159】
500mL三口フラスコに、DA−4−1を19.2g、ジメチルホルムアミドを250mL、6−クロロ−1−ヘキサノールを20.5g、炭酸カリウムを41.5g、ヨウ化カリウムを1.7g加えて、60℃で攪拌した。反応終了後、1.2Lの水に反応系を注ぎ、1N−HCl水溶液で中和を行い、沈殿物を濾過した。この濾過物を300mLの酢酸エチルに溶解し、飽和食塩水を用いて抽出をおこない、有機層に無水硫酸マグネシウムを加えて脱水乾燥、濾過した後に、ロータリーエバポレーターを用いて溶媒留去を行い、26.99gの目的物DA−4−2(透明粘体)を得た(収率92%)。
【0160】
(実施例1−3) DA−1の前駆体DA−4−3の合成
【0161】
【化37】
【0162】
500mL三口フラスコに、DA−4−2を14.7g、エタノールを200mL、10wt%KOH水溶液を30.0g加えて、還流加熱しながら攪拌した。反応終了後、600mLの水に反応系を注ぎ、1N−HCl水溶液で中和を行い、沈殿物を濾過した。この濾過物を酢酸エチルで洗浄し、乾燥させ、11.8gの目的物DA−4−3(白色固体)を得た(収率89%)。
【0163】
(実施例1−4) DA−1の前駆体DA−4−4の合成
【0164】
【化38】
【0165】
300mL三口フラスコに、DA−4−3を11.7g、トリエチルアミン(EtN)を4.9gおよびテトラヒドロフランを200mL加えた。系内を冷却して0℃にし、3,5−ジニトロベンゾイルクロリドを15.2g加え、室温で攪拌した。反応終了後、純水を50mL加えて攪拌したのち、酢酸エチルを加えて有機層を抽出し、有機層に無水硫酸マグネシウムを加えて脱水乾燥、濾過した後に、ロータリーエバポレーターを用いて溶媒留去を行った。残渣を酢酸エチルにて再結晶を行い、7.2gの目的物DA−4−4(黄白色固体)を得た(収率35%)。
【0166】
(実施例1−5) DA−4の前駆体DA−4−5の合成
【0167】
【化39】
【0168】
200mL三口フラスコに、DA−4−4を6.9g、テトラヒドロフランを60mL、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル(HEMA)を3.0g、1−(3−ジメチルアミノプロピル)−3−エチルカルボジイミド塩酸塩(EDC)を4.4g、4−ジメチルアミノピリジン(DMAP)を0.2g加えて、室温で攪拌した。反応終了後、有機層をクロロホルムで抽出し、有機層に無水硫酸マグネシウムを加えて脱水乾燥、濾過した後に、ロータリーエバポレーターを用いて溶媒留去を行い、残渣をイソプロピルアルコール/ヘキサン=1/5で再結晶を行い、5.9gの目的物DA−4−5(黄白色固体)を得た(収率69%)。
【0169】
(実施例1−6) DA−4の合成
【0170】
【化40】
【0171】
300mL三口フラスコに、DA−4−5を5.9g、テトラヒドロフランを60mLおよび純水を60mL加えて、系内を攪拌し、塩化すずを13.3g加え、系内を70℃まで加熱して攪拌した。反応終了後、300mLの酢酸エチルに反応系を注ぎ、炭酸水素ナトリウムを用いて、pHを7〜8にした。白色沈殿物を濾過により取り除き、有機層を酢酸エチルで抽出し、有機層に無水硫酸マグネシウムを加えて脱水乾燥、濾過した後に、ロータリーエバポレーターを用いて溶媒留去を行った。残渣を酢酸エチル/ヘキサン=1/5を用いて再結晶を行い、5.7gの目的物DA−4(橙色固体)を得た(収率99%)。得られた固体をH−NMRで測定した結果を以下に示す。この結果から、得られた固体が、目的のDA−4であることを確認した。
1H NMR(400MHz,[D6]-DMSO):δ7.54-7.67(d,2H),7.60(s,1H),6.94-6.97(d,2H),6.48-6.52(d,1H),6.42-6.43(s,2H),6.01-6.05(m,2H),5.70(s,1H),4.99(s,4H),4.36-4.40(m,4H),4.15-4.19(m,2H),4.00-4.03(m,2H),1.88(s,3H),1.66-1.75(m,4H),1.36-1.46(m,4H)
【0172】
(実施例2)DA−5の合成
【0173】
(実施例2−1) DA−5の前駆体DA−5−1の合成
【0174】
【化41】
【0175】
2L四口フラスコに4−ブロモヒドロキシベンゼン(100g、578mmol)、アクリル酸tert−ブチル(156g、1.21mol)、酢酸パラジウム(II)(2.6g、11.6mmol)、トリ(o−トリル)ホスフィン(7.0g、23.1mmol)、トリブチルアミン(321g、1.73mol)、N、N‘−ジメチルアセトアミド(以下、DMAcと表記)(500g)を加え、100℃で加熱撹拌を行なった。反応をHPLCにて追跡し、反応終了後、反応溶液を1M塩酸水溶液(2L)へ注ぎしばらく撹拌した。そこに酢酸エチル(1L)を加え分液操作にて水層を除去した後、有機層を飽和食塩水(500mL)で3回洗浄し、有機層を硫酸マグネシウムで乾燥、ろ過し、溶媒を留去し、DA−5−1(赤褐色粘体)を158g得た。なお、得られた化合物は、そのまま次の工程に使用した。
【0176】
(実施例2−2) DA−5の前駆体DA−5−2の合成
【0177】
【化42】
【0178】
500mL四口フラスコに、DA−5−1を22.0g、N,N−ジメチルホルムアミドを250mL、6−クロロ−1−ヘキサノールを19.1g、炭酸カリウムを41.5g、ヨウ化カリウムを1.7g加えて、100℃に加熱しながら攪拌した。反応終了後、1Lの水に反応系を注ぎ、1N−塩酸水溶液で中和を行い、沈殿物を濾過した。この濾過物をイソプロピルアルコールで洗浄し、乾燥させ、DA−5−2(白色固体)を13.2g得た。(収率43%)
【0179】
(実施例2−3) DA−5の前駆体DA−5−3の合成
【0180】
【化43】
【0181】
300mL四口フラスコに、DA−5−2を6.4g、テトラヒドロフランを60mL、2,4−ジニトロフルオロベンゼンを3.7g、トリエチルアミンを2.4g加え、80℃に加熱しながら攪拌した。反応終了後、500mLの酢酸エチルに反応系を注ぎ、飽和食塩水を用いて抽出を行った。抽出した有機層に無水硫酸マグネシウムを加えて脱水乾燥し、無水硫酸マグネシウムを濾過した。得られた濾液をロータリーエバポレーターを用いて溶媒留去し、ギ酸を50mL加え、50℃に加熱しながら攪拌した。反応終了後、500mLの水に反応系を注ぎ、沈殿物を濾過した。この濾過物をイソプロピルアルコールで洗浄し、乾燥させ、DA−5−3(黄色固体)を7.4g得た(収率81%)。
【0182】
(実施例2−4) DA−5の前駆体DA−5−4の合成
【0183】
【化44】
【0184】
300mL四口フラスコに、DA−5−3を6.9g、テトラヒドロフランを70mL、メタクリル酸2−ヒドロキシエチルを2.5g、1−(3−ジメチルアミノプロピル)−3−エチルカルボジイミド塩酸塩を5.3g、4−ジメチルアミノピリジンを0.2g加えて、室温で攪拌した。反応終了後、200mLの水に反応系を注ぎ、沈殿物を濾過した。この濾過物をイソプロピルアルコールで洗浄し、乾燥させ、DA−5−4(黄白色固体)を8.6g得た(収率96%)。
【0185】
(実施例2−5) DA−5の合成
【0186】
【化45】
【0187】
300mL四口フラスコに、DA−5−4を7.6g、酢酸エチルを70mL、純水を70ml、還元鉄を7.8g、塩化アンモニウムを6.0g加え、60℃に加熱しながら攪拌した。反応終了後、還元鉄を濾過し、有機層を酢酸エチルで抽出した。有機層に無水硫酸マグネシウムを加えて脱水乾燥し、無水硫酸マグネシウムを濾過した。得られた濾液をロータリーエバポレーターを用いて溶媒留去した。残渣をイソプロパノールにて洗浄し、乾燥させ、DA−5(黄白色固体)を5.3g得た(収率78%)。得られた固体をH−NMRで測定した結果を以下に示す。この結果から、得られた固体が、目的のDA−5であることを確認した。
1H NMR (400 MHz,[D6]-DMSO): δ7.62-7.64 (d,2H), 7.56-7.68 (d,1H), 6.91-6.93 (d,2H), 6.44-6.48 (d,1H), 6.42 (s,1H), 6.00 (s,1H), 5.91 (s,1H), 5.69-5.72 (d,2H), 5.66 (s,1H), 4.36 (s,2H), 4.32 (s,2H), 3.96-4.00 (t,2H), 3.71-3.74 (t,2H), 1.84 (s,3H), 1.62-1.72 (m,4H), 1.40-1.44 (m,4H)
【0188】
(実施例3)DA−6の合成
【0189】
(実施例3−1) DA−6の前駆体DA−6−1の合成
【0190】
【化46】
(上記反応式中、Msはメタンスルホニルを表す。)
【0191】
500mL四口フラスコに、メタクリル酸2−ヒドロキシエチルを23.4g、トリエチルアミンを22.1gおよびテトラヒドロフランを250mL加えた。系内を冷却して0℃にし、メタンスルホニルクロリドを25.0g加え、室温で攪拌した。反応終了後、純水を50mL加えて攪拌したのち、酢酸エチルを加えて有機層を抽出し、有機層に無水硫酸マグネシウムを加えて脱水乾燥、濾過した後に、ロータリーエバポレーターを用いて溶媒を留去し、DA−6−1(赤色粘体)を37.5g得た。なお、得られた化合物は、そのまま次の工程に使用した。
【0192】
(実施例3−2) DA−6の前駆体DA−6−2の合成
【0193】
【化47】
(上記反応式中、Msはメタンスルホニルを表す。)
【0194】
1L四口フラスコに、DA−5−1を22.0g、N,N−ジメチルホルムアミドを500mL、DA−6−1を24.9g、炭酸カリウムを41.4g加えて、60℃に加熱しながら攪拌した。反応終了後、1Lの水に反応系を注ぎ、1N−塩酸水溶液で中和を行い、酢酸エチルを用いて抽出を行った。抽出した有機層に無水硫酸マグネシウムを加えて脱水乾燥し、無水硫酸マグネシウムを濾過した。得られた濾液をロータリーエバポレーターを用いて溶媒留去し、ギ酸を200mL加え、50℃に加熱しながら攪拌した。反応終了後、500mLの水に反応系を注ぎ、沈殿物を濾過した。この濾過物をイソプロピルアルコールで洗浄し、乾燥させ、DA−6−2(白色固体)を16.5g得た(収率60%)。
【0195】
(実施例3−3) DA−6の前駆体DA−6−3の合成
【0196】
【化48】
【0197】
300mL四口フラスコに、DA−6−2を11.5g、テトラヒドロフランを150mL、1,6−ヘキサンジオールを23.6g、1−(3−ジメチルアミノプロピル)−3−エチルカルボジイミド塩酸塩を11.9g、4−ジメチルアミノピリジンを0.49g加えて、室温で攪拌した。反応終了後、300mLの酢酸エチルに反応系を注ぎ、飽和食塩水を用いて抽出を行った。抽出した有機層に無水硫酸マグネシウムを加えて脱水乾燥し、無水硫酸マグネシウムを濾過した。得られた濾液をロータリーエバポレーターを用いて溶媒を留去し、DA−6−3(赤褐色粘体)を15.4g得た。なお、得られた化合物は、そのまま次の工程に使用した。
【0198】
(実施例3−4) DA−6の前駆体DA−6−4の合成
【0199】
【化49】
【0200】
300mL四口フラスコに、DA−6−3を15.4g、N,N−ジメチルホルムアミドを150mL、2,4−ジニトロフルオロベンゼンを8.2g、トリエチルアミンを8.3g加え、80℃に加熱しながら攪拌した。反応終了後、500mLの酢酸エチルに反応系を注ぎ、飽和食塩水を用いて抽出を行った。抽出した有機層に無水硫酸マグネシウムを加えて脱水乾燥し、無水硫酸マグネシウムを濾過した。得られた濾液をロータリーエバポレーターを用いて溶媒留去した。残渣を酢酸エチル/ヘキサン(1:4)溶液で洗浄し、乾燥させ、DA−6−4(肌色固体)を12.6g得た(収率56%)。
【0201】
(実施例3−5) DA−6の合成
【0202】
【化50】
【0203】
500mL四口フラスコに、DA−6−4を12.6g、酢酸エチルを150mL、純水を150ml、還元鉄を7.7g、塩化アンモニウムを9.9g加え、60℃に加熱しながら攪拌した。反応終了後、還元鉄を濾過し、有機層を酢酸エチルで抽出した。有機層に無水硫酸マグネシウムを加えて脱水乾燥し、無水硫酸マグネシウムを濾過した。得られた濾液をロータリーエバポレーターを用いて溶媒留去した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル:ヘキサン=2:1体積比)にて単離し、DA−6(赤褐色粘体)を7.1g得た(収率63%)。得られた粘体をH−NMRで測定した結果を以下に示す。この結果から、得られた粘体が、目的のDA−6であることを確認した。
1H NMR (400 MHz,[D6]-DMSO):δ7.66-7.68 (d,2H), 7.58-7.62 (d,1H), 6.99-7.02 (d,2H), 6.48-6.52 (d,1H), 6.46 (s,1H), 6.03 (s,1H), 5.95 (s,1H), 5.73-5.76 (d,1H), 5.70 (s,1H), 4.40-4.45 (m,4H), 4.29-4.34 (m,4H), 4.12-4.15 (t,2H), 3.74-3.78 (t,2H), 1.88 (s,3H), 1.64-1.68 (m,4H), 1.42-1.43 (m,4H)
【0204】
(実施例4)DA−7の合成
【0205】
【化51】
【0206】
反応容器に4−ブロモヒドロキシベンゼン(100g、578mmol)、アクリル酸tert-ブチル(156g、1.21mol)、酢酸パラジウム(II)(2.6g、11.6mmol)、トリ(o−トリル)ホスフィン(7.0g、23.1mmol)、トリブチルアミン(321g、1.73mol)、N、N‘−ジメチルアセトアミド(以下、DMAcと表記)(500g)を加え、100℃で加熱撹拌を行なった。反応をHPLCにて追跡し、反応終了後、反応溶液を1M塩酸水溶液(2L)へ注ぎしばらく撹拌した。そこに酢酸エチル(1L)を加え分液操作にて水層を除去した後、有機層を飽和食塩水(500mL)で3回洗浄し、有機層を硫酸マグネシウムで乾燥、ろ過し、溶媒を留去し、化合物[1]を得た(158g)。得られた化合物をH−NMRで測定した結果を以下に示す。なお、得られた化合物は、そのまま次の工程に使用した。
1H-NMR(400MHz, CDCl3, δppm):7.52(1H, d), 7.40(2H, d), 6.76(1H, d), 6.22(2H, d), 1.52(9H, s).
【0207】
反応容器に化合物[1](20.00g、90.8mmol)、トリエチルアミン(11.94g、118mmol)、テトラヒドロフラン(以下、THFと表記)(200g)を仕込み、窒素置換後、内温が10℃を越えないように注意しながら3,5−ジニトロベンゾイルクロリド(25.12g、109mmol)のTHF(100g)溶液を滴下した。反応をHPLCにて追跡し、反応終了後、反応溶液を蒸留水(1.8L)へ注ぎ、析出した固体をろ過し、蒸留水で良く洗浄し、化合物[2]の粗物を得た。次に、得られた粗物にメタノール(240g)を加え、30分、加熱還流を行った後、室温まで放冷し、ろ過、固体を乾燥し化合物[2]を得た(収量18.0g、収率49%)。得られた化合物をH−NMRで測定した結果を以下に示す。
1H-NMR(400MHz, DMSO-d6, δppm):9.09-9.08(1H, m), 9.05-9.04(2H, m), 7.84-7.80(2H, m), 7.57(1H, m), 7.46-7.38(2H, m), 6.54(1H, d), 1.46(9H, s).
【0208】
反応容器に化合物[2](15.82g、38.2mmol)、ギ酸(80g)を加え、40℃で加熱撹拌した。反応をHPLCにて追跡し、反応終了確認後、反応溶液を蒸留水(800mL)へ注ぎ、固体をろ過、蒸留水で良く洗浄した。得られた固体を乾燥し化合物[3]を得た(収量13.1g、収率96%)。得られた化合物をH−NMRで測定した結果を以下に示す。
1H-NMR(400MHz, DMSO-d6, δppm):12.5(1H, brs), 9.10-9.09(1H, m), 9.09-9.04(2H, m), 7.84-7.80(2H, m), 7.60(1H, d), 7.44-7.41(2H, m), 6.54(1H, d).
【0209】
反応容器に化合物[3](13.07g、36.5mmol)、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル(以下、HEMAと表記)(5.70g、43.8mmol)、1−(3−ジメチルアミノプロピル)−3−エチルカルボジイミド(以下、EDCと表記)(9.09g、47.4mmol)、4−ジメチルアミノピリジン(以下、DMAPと表記)(0.45g、3.65mmol)、THF(200g)を加え、室温で撹拌を行なった。HPLCで反応終了確認後、反応溶液を蒸留水(1.2L)に注ぎ、酢酸エチルで抽出を行なった。有機層を蒸留水で3回洗浄後、硫酸マグネシウムで乾燥後、ろ過、エバポレーターで溶媒留去し、化合物[4]を得た(収量16.8g、収率98%)。得られた化合物をH−NMRで測定した結果を以下に示す。
1H-NMR(400MHz, DMSO-d6, δppm): 9.09-9.08(1H, m), 9.06-9.04(2H, m), 7.88-7.86(2H, m), 7.69(1H, d), 7.44-7.42(2H, m), 6.68(1H, d), 6.03-6.02(1H, m), 5.69-5.67(1H, m), 4.41-4.39(2H, m), 4.36-4.34(2H, m), 1.86-1.85(3H, m).
【0210】
反応容器に化合物[4](16.8g、35.7mmol)、塩化スズ(IV)(48.42g、255mmol)、THF(170g)、蒸留水(170g)を加え、70℃で加熱撹拌を行なった。HPLCで反応終了を確認後、酢酸エチル(1L)を入れたビーカーに反応溶液を注ぎ、撹拌しながら、炭酸水素ナトリウムの粉末を加え中和した。その後、析出した固体をろ過で除去し、ろ液を飽和炭酸水素ナトリウム水溶液(200g)で2回、飽和食塩水(500g)で3回洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥した。その後、ろ過、溶媒留去し目的の化合物DA−7を得た(収量12.9g、収率86%)。得られた化合物をH−NMRで測定した結果を以下に示す。
1H-NMR(400MHz, DMSO-d6, δppm): 7.85-7.84(3H, m), 7.66(1H, d), 7.45-7.43(2H, m), 6.41-6.38(2H, m), 6.05-6.01(2H, m), 5.70-5.63(1H, m), 4.96(4H, brs), 4.39-4.38(2H, m), 4.37-4.35(2H, m), 1.85-1.84(3H, m).
【0211】
(実施例5)DA−8の合成
【0212】
【化52】
【0213】
反応容器に化合物[1](127.3g、578mmol)、トリエチルアミン(70.19g、694mmol)、THF(800g)を仕込み、窒素置換後、内温が10℃を越えないように注意しながらメタクリロイルクロリド(63.4g、607mmol)のTHF(200g)溶液を滴下した。反応終了をHPLCで確認後、反応溶液を蒸留水(3L)へ注ぎ、酢酸エチル(1.5L)で抽出した。有機層を飽和食塩水(500g)で3回洗浄後、硫酸マグネシウムで乾燥し、ろ過、溶媒留去し、化合物[5]を得た。得られた化合物をH−NMRで測定した結果を以下に示す。なお、化合物[5]は精製を行なわずに、次工程に用いた。
1H-NMR(400MHz, DMSO-d6, δppm):7.78-7.72(2H, m), 7.53(1H, d), 7.21-7.18(2H, m), 6.48(1H, d), 6.25-6.24(1H, m), 5.88-5.86(1H, m), 1.97-1.95(3H, m), 1.45(9H, s).
【0214】
反応容器に化合物[5](166.0g、578mmol)、ジクロロメタン(以下、DCMと表記)(834g)を仕込み、窒素置換後、トリフルオロ酢酸(328g、2.88mol)を滴下した。HPLCで反応終了確認後、反応溶液を蒸留水(1L)へ注ぎ、析出した固体をろ過し、粗物を得た。次に、得られた粗物を酢酸エチル/ヘキサン重量比1:2の混合溶液(200g)で洗浄撹拌を行い、再度ろ過、固体を乾燥し化合物[6]を得た(収量79.5g、収率59%)。得られた化合物をH−NMRで測定した結果を以下に示す。
1H-NMR(400MHz, DMSO-d6, δppm):7.74-7.71(2H, m), 7.57(1H, d), 7.21-7.18(2H, m), 6.49(1H, d), 6.56-6.25(1H, m), 5.89-5.88(1H, m), 1.97-1.96(3H, m).
【0215】
反応容器に2−(2,4−ジニトロフェニル)エタノール(43.67g、206mmol)、化合物[6](45.53g、196mmol)、EDC(48.87g、255mmol)、DMAP(2.4g、19mmol)、THF(900g)を加え、室温で撹拌を行なった。HPLCで反応終了確認後、反応溶液を蒸留水(3L)に注ぎ、酢酸エチル(1L)で抽出を行なった。その後、有機層を蒸留水で3回洗浄後、硫酸マグネシウムで乾燥後、ろ過、エバポレーターで溶媒留去し、化合物[7]の粗物を得た。得られた粗物をメタノール(100mL)で分散洗浄し、ろ過、減圧乾燥後、化合物[7]を得た。(収量48.3g、収率58%)。得られた化合物をH−NMRで測定した結果を以下に示す。
1H-NMR(400MHz, DMSO-d6, δppm):8.71(1H, d), 8.47(2H, dd), 7.88(1H, d), 7.75-7.72(2H, m), 7.59(1H, d), 7.23-7.20(2H, m), 6.49(1H, d), 6.26-6.25(1H, m), 5.90-5.88(1H, m), 4.43(2H, 5), 3.35(2H, t), 1.97-1.96(3H, m).
【0216】
反応容器に化合物[7](48.25g、113mmol)、鉄分(37.91g、679mmol)、酢酸エチル(435g)、塩化アンモニウム(18.15g、340mmol)、蒸留水(160g)を加え、70℃で加熱撹拌を行なった。HPLCで反応終了を確認後、固体をセライトろ過、酢酸エチル(1L)で洗浄し除去した。ろ液を飽和食塩水(500g)で3回洗浄し、有機層を硫酸マグネシウムで乾燥後、溶媒をエバポレーターで留去し、化合物DA−8の粗物を得た。得られた粗物をメタノールで分散洗浄し、ろ過、減圧乾燥し、化合物DA−8を得た(収量29.8g、収率72%)。得られた化合物をH−NMRで測定した結果を以下に示す。
1H-NMR(400MHz, DMSO-d6, δppm):7.78-7.74(2H, m), 7.63(1H, d), 7.24-7.18(2H, m), 6.59(1H, d), 6.57(1H, s), 6.27-6.26(1H, m), 5.91-5.88(1H, m), 5.86(1H, d), 5.76(1H, dd), 3.99(4H, brs), 4.14(2H, t), 2.65(2H, t), 1.97-1.95(3H, m).
【0217】
(実施例6)DA−9の合成
【0218】
【化53】
(上記反応式中の●が表記してあるシクロヘキサン環は、立体構造が1,4-trans-シクロヘキサン環であることを表す。)
【0219】
反応容器にtrans−4−(4−ブロモフェニル)シクロヘキサノール(200g、784mmol)、アクリル酸tert−ブチル(211g、1.65mol)、酢酸パラジウム(II)(3.5g、15.7mmol)、トリ(o−トリル)ホスフィン(9.5g、31.4mmol)、トリブチルアミン(436g、2.35mol)、DMAc(1000g)を加え、100℃で加熱撹拌を行なった。反応終了をHPLCで確認後、反応溶液を1M塩酸水溶液(3.5L)へ注ぎしばらく撹拌した。そこに酢酸エチル(1.5L)を加え分液操作にて水層を除去した後、有機層を飽和食塩水(500mL)で3回洗浄し、有機層を硫酸マグネシウムで乾燥、ろ過し、溶媒を留去し、化合物[8]を得た(収量208g、収率88%)。得られた化合物をH−NMRで測定した結果を以下に示す。
1H-NMR(400MHz, DMSO-d6,δppm):7.58(2H, d), 7.50(1H, d), 7.25(2H, d), 6.44(1H, d),4.59(1H, d), 3.46-3.36(1H, m), 2.50-2.46(1H, m), 1.93-1.90(2H, m), 1.66-1.73(2H, m), 1.49-1.26(13H, m).
【0220】
反応容器に化合物[8](40.0g、132mmol)、トリエチルアミン(16.1g、159mmol)、THF(300g)を仕込み、窒素置換後、内温が10℃を越えないように注意しながら3,5−ジニトロベンゾイルクロリド(32.0g、139mmol)のTHF(180g)溶液を滴下した。反応終了をHPLCで確認後、反応溶液を蒸留水(2L)へ注ぎ、しばらく撹拌した。その後、析出した固体をろ過し、蒸留水で良く洗浄し、化合物[9]の粗物を得た。次に、得られた粗物にメタノール(300g)を加え、30分、室温で撹拌した後、ろ過、固体を乾燥し化合物[9]を得た(収量41.8g、収率64%)。得られた化合物をH−NMRで測定した結果を以下に示す。
1H-NMR(400MHz, DMSO-d6, δppm):9.02-9.01(1H, m), 8.89-8.88(2H, m), 7.58(2H, d), 7.49(1H, d), 7.28(2H, d), 6.43(1H, d), 5.06(1H, m), 2.47-2.43(1H, m), 2.17-1.15(2H, m), 1.88-1.86(2H, m), 1.75-1.60(4H, m), 1.44(9H, s).
【0221】
反応容器に化合物[9](41.80g、84.2mmol)、ギ酸(210g)を加え、40℃で加熱撹拌した。反応終了をHPLCで確認後、反応溶液を蒸留水(2L)へ注ぎ、固体をろ過、蒸留水で良く洗浄した。得られた固体を乾燥し化合物[10]を得た(収量37g、収率99%)。得られた化合物をH−NMRで測定した結果を以下に示す。
1H-NMR(400MHz, DMSO-d6, δppm):9.03-9.02(1H, m), 8.90-8.88(2H, m), 7.58(2H, d), 7.55(1H, d), 7.30(2H, d), 6.44(1H, d), 5.07-5.06(1H, m), 2.64-2.59(1H, m), 2.17-2.15(2H, m), 1.88-1.86(2H, m), 1.75-1.65(4H, m).
【0222】
反応容器に化合物[10](37.8g、85.8mmol)、HEMA(13.4g、103mmol)、EDC(21.38g、112mmol)、DMAP(1.05g、8.6mmol)、THF(570g)を加え、室温で撹拌を行なった。HPLCで反応終了確認後、反応溶液を蒸留水(1.8L)に注ぎ、酢酸エチルで抽出を行なった。有機層を蒸留水で3回洗浄後、硫酸マグネシウムで乾燥後、ろ過、エバポレーターで溶媒留去し、化合物[11]の粗物を得た。得られた粗物を2−プロパノール(100g)で洗浄し、化合物[11]を得た(収量47.1g、収率99%)。得られた化合物をH−NMRで測定した結果を以下に示す。
1H-NMR(400MHz, DMSO-d6, δppm): 9.02-9.01(1H, m), 8.89-8.88(2H, m), 7.63-7.55(3H, m), 7.30(2H, d), 6.59(1H, d), 6.01-5.99(1H, m), 5.69-5.67(1H, m), 5.15-4.99(1H, m), 4.37-4.32(4H, m), 2.64-2.58(1H, m), 2.17-2.15(2H, m), 1.95-1.62(11H, m).
【0223】
反応容器に化合物[11](47.4g、85.8mmol)、塩化スズ(IV)(114g、601mmol)、THF(470g)、蒸留水(470g)を加え、70℃で加熱撹拌を行なった。HPLCで反応終了を確認後、酢酸エチル(1.5L)を入れたビーカーに反応溶液を注ぎ、撹拌しながら、炭酸水素ナトリウムの粉末を加え中和した。その後、析出した固体をろ過により除去し、ろ液を飽和炭酸水素ナトリウム水溶液(200g)で2回、飽和食塩水(500g)で3回洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥した。その後、ろ過、溶媒留去し目的の化合物DA−9を得た(収量32.5g、収率76%)。得られた化合物をH−NMRで測定した結果を以下に示す。
1H-NMR(400MHz, DMSO-d6, δppm):7.64-7.59(3H, m), 7.29(2H, d), 6.58(1H, d), 6.40-6.39(2H, m), 6.01-5.98(2H, m), 5.67-5.66(1H, m), 4.97(4H, brs), 4.86-4.81(1H, m), 4.38-4.33(4H, m), 2.62-2.46(1H, m), 2.06-2.03(2H, m), 1.99-1.94(5H, m), 1.66-1.47(4H, m)
【0224】
(実施例7)DA−10の合成
【0225】
【化54】
(上記反応式中の●が表記してあるシクロヘキサン環は、立体構造が1,4-trans-シクロヘキサン環であることを表す。)
【0226】
反応容器に化合物[8](74.43g、261mmol)、トリエチルアミン(29.81g、295mmol)、THF(1000g)を仕込み、窒素置換後、内温が10℃を越えないように注意しながらメタクリロイルクロリド(27.01g、258mmol)のTHF(100g)溶液を滴下した。反応終了をHPLCで確認後、反応溶液を蒸留水(3L)へ注ぎ、酢酸エチル(1.5L)で抽出した。有機層を飽和食塩水(500g)で3回洗浄後、硫酸マグネシウムで乾燥し、ろ過、溶媒留去し、化合物[12]の粗物を得た。得られた粗物をメタノール(100g)で分散洗浄し、ろ過、固体を乾燥させ、化合物[12]を得た(収量72.9g、収率80%)。得られた化合物をH−NMRで測定した結果を以下に示す。
1H-NMR(400MHz, DMSO-d6, δppm):7.56(2H, d), 7.47(1H, d), 7.26(2H, d), 6.42(1H, d), 4.75-4.69(1H, m), 2.59-4.47(1H, m), 2.01-1.98(2H, m), 1.85-1.78(5H, m), 1.59-1.44(4H, m).
【0227】
反応容器に化合物[12](20.29g、54.8mmol)、DCM(100g)を仕込み、窒素置換後、トリフルオロ酢酸(31.2g、274mol)を滴下した。HPLCで反応終了確認後、反応溶液を蒸留水(200mL)へ注ぎ、酢酸エチル(1L)で抽出を行なった。その後、有機層を飽和食塩水(200g)で3回洗浄し、有機層を硫酸マグネシウムで乾燥後、ろ過、エバポレーターで溶媒留去し化合物[13]の粗物を得た。得られた粗物をメタノール(30g)で分散洗浄し、ろ過、乾燥し、化合物[13]を得た(収量10.9g、収率64%)。得られた化合物をH−NMRで測定した結果を以下に示す。
1H-NMR(400MHz, DMSO-d6, δppm):12.32(1H, brs), 7.58-7.50(3H, m),7.27(2H, d), 6.43(1H, d), 5.99-5.98(1H, m), 5.64-5.63(1H, m), 4.78-4.70(1H, m), 2.59-2.51(1H, m), 2.02-1.95(2H, m), 1.82-1.79(5H, m), 1.63-1.42(4H).
【0228】
反応容器に2−(2,4−ジニトロフェニル)エタノール(11.94g、56.3mmol)、化合物[13](10.89g、35.3mmol)、EDC(11.62g、61.0mmol)、DMAP(0.57g、4.7mmol)、THF(130g)を加え、室温で撹拌を行なった。HPLCで反応終了確認後、反応溶液を蒸留水(600mL)に注ぎ、析出した固体をろ過し、蒸留水で洗浄し化合物[14]の粗物を得た。得られた粗物をメタノール(100mL)で分散洗浄し、ろ過、減圧乾燥後、化合物[14]を得た(収量17.1g、収率96%)。得られた化合物をH−NMRで測定した結果を以下に示す。
1H-NMR(400MHz, DMSO-d6, δppm):8.70-8.69(1H, m), 8.48-8.45(1H, m), 7.87(1H, d), 7.58-7.52(3H, m), 7.27(2H, d), 6.44(1H, d),5.99-5.98(1H, m), 5.63-5.62(1H, m), 4.76-4.71(1H, m), 4.41(2H, t), 3.34(2H, t), 2.57-2.54(1H, m), 2.01-1.97(2H, m), 1.84-1.78(5H, m), 1.60-1.45(4H, m).
【0229】
反応容器に化合物[14](17.00g、33.4mmol)、鉄分(11.2g、201mmol)、酢酸エチル(150g)、塩化アンモニウム(5.35g、100mmol)、蒸留水(50g)を加え、70℃で加熱撹拌を行なった。HPLCで反応終了を確認後、固体をセライトろ過、酢酸エチル(200mL)で洗浄し除去した。ろ液を飽和食塩水(200g)で3回洗浄し、有機層を硫酸マグネシウムで乾燥後、溶媒をエバポレーターで留去し、化合物DA−10の粗物を得た。得られた粗物をメタノール(100g)で分散洗浄し、ろ過、減圧乾燥し、化合物DA−10を得た(収量10.3g、収率69%)。得られた化合物をH−NMRで測定した結果を以下に示す。
1H-NMR(400MHz, DMSO-d6, δppm):7.61-7.57(3H, m), 7.27(2H, d), 6.58-6.51(2H, m), 5.99(1H, s), 5.85(1H, d), 5.75(1H, dd), 5.65-5.63(1H, m), 4.80-4.71(1H, m), 4.63(2H, brs), 4.57(2H, brs), 4.12(2H, t), 2.64(2H, t), 2.59-2.53(1H, m), 2.00-1.98(2H, m), 1.85-1.79(5H, m), 1.64-1.44(4H, m).
【0230】
(実施例8)DA−11の合成
【0231】
【化55】
【0232】
反応容器に4´−ブロモ−[1,1´−ビフェニル]−4−オール(150g、602mmol)、アクリル酸tert-ブチル(162g、1.26mol)、酢酸パラジウム(II)(2.70g、12.0mmol)、トリ(o−トリル)ホスフィン(7.33g、24.1mmol)、トリブチルアミン(335g、1.81mol)、DMAc(750g)を加え、100℃で加熱撹拌を行なった。反応終了をHPLCで確認後、反応溶液を1M塩酸水溶液(3.5L)へ注ぎしばらく撹拌した。そこに酢酸エチル(1L)を加え分液操作にて水層を除去した後、有機層を飽和食塩水(500mL)で3回洗浄し、有機層を硫酸マグネシウムで乾燥、ろ過し、溶媒を留去し、化合物[15]を得た(収量176g、収率99%)。得られた化合物をH−NMRで測定した結果を以下に示す。
1H-NMR(400MHz, DMSO-d6,δppm):9.67(1H, s), 7.72(2H, d), 7.62(2H, d), 7.19-7.54(3H, m), 6.89-6.82(2H, m), 6.52(1H, d), 1.49(9H, s).
【0233】
反応容器に化合物[15](73.4g、318mmol)、トリエチルアミン(36.8g、364mmol)、THF(1000g)を仕込み、窒素置換後、内温が10℃を越えないように注意しながら3,5−ジニトロベンゾイルクロリド(73.37g、318mmol)のTHF(300g)溶液を滴下した。反応終了をHPLCで確認後、反応溶液を蒸留水(6L)へ注ぎ、しばらく撹拌した。その後、析出した固体をろ過し、蒸留水で良く洗浄し、化合物[16]の粗物を得た。次に、得られた粗物にメタノール(1L)を加え30分、室温で撹拌した後、ろ過、固体を乾燥し化合物[16]を得た(収量117.9g、収率79%)。得られた化合物をH−NMRで測定した結果を以下に示す。
1H-NMR(400MHz, DMSO-d6, δppm):9.14-9.13(1H, m), 9.13-9.10(2H, m), 7.88-7.76(6H, m), 7.74(1H, d), 7.52-7.50(2H, m), 6.59(1H, m), 1.50-1.49(9H, m).
【0234】
反応容器に化合物[16](117.9g、240mmol)、ギ酸(1180g)を加え、40℃で加熱撹拌した。反応終了をHPLCで確認後、反応溶液を蒸留水(3L)へ注ぎ、固体をろ過、蒸留水で良く洗浄した。得られた固体を乾燥し化合物[17]を得た(収量102g、収率98%)。得られた化合物をH−NMRで測定した結果を以下に示す。
1H-NMR(400MHz, DMSO-d6, δppm):9.15-9.13(1H, m), 9.11-9.10(2H, m), 7.89-7.86(2H, m), 7.83-7.77(4H, m), 7.64(1H, d), 7.55-7.49(2H, m), 6.60(1H, d),
【0235】
反応容器に化合物[17](40.0g、92.1mmol)、HEMA(18.0g、138mmol)、EDC(22.8g、120mmol)、DMAP(1.13g、9.2mmol)、THF(600g)を加え、室温で撹拌を行なった。HPLCで反応終了確認後、反応溶液を蒸留水(3L)に注ぎ、酢酸エチルで抽出を行なった。有機層を飽和食塩水(500g)で3回洗浄後、硫酸マグネシウムで乾燥後、ろ過、エバポレーターで溶媒留去し、化合物[18]の粗物を得た。得られた粗物をメタノール(300g)で洗浄し、化合物[18]を得た(収量27.8g、収率55%)。得られた化合物をH−NMRで測定した結果を以下に示す。
1H-NMR(400MHz, DMSO-d6, δppm): 9.14-9.12(1H, m), 9.10-9.09(2H, m), 7.88-7.84(4H, m), 7.79-7.71(3H, m), 7.52-7.50(2H, m), 6.73(1H, d), 6.07-6.06(1H, m), 5.72-5.71(1H, m), 4.46-4.43(2H, m), 4.40-4.38(2H, m), 1.90-1.89(3H, m).
【0236】
反応容器に化合物[18](27.8g、50.9mmol)、塩化スズ(IV)(67.6g、357mmol)、THF(280g)、蒸留水(220g)を加え、70℃で加熱撹拌を行なった。HPLCで反応終了を確認後、酢酸エチル(2L)を入れたビーカーに反応溶液を注ぎ、撹拌しながら、炭酸水素ナトリウムの粉末を加え中和した。その後、析出した固体をろ過により除去し、ろ液を飽和炭酸水素ナトリウム水溶液(200g)で2回、飽和食塩水(500g)で3回洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥した。その後、ろ過、溶媒留去し目的の化合物DA−11を得た(収量23.9g、収率97%)。得られた化合物をH−NMRで測定した結果を以下に示す。
1H-NMR(400MHz, DMSO-d6, δppm):7.86-7.71(7H, m), 7.32-7.30(2H, m), 6.73(1H, d), 6.61-6.60(2H, m), 6.12-6.11(1H, m), 6.06-6.05(1H, m), 5.72-5.71(1H, m), 5.12(4H, brs), 4.45-4.30(2H, m), 4.40-4.38(2H, m), 1.89-1.87(3H, m).
【0237】
(実施例9)DA−12の合成
【0238】
【化56】
【0239】
反応容器に化合物[15](89.15g、303mmol)、トリエチルアミン(36.8g、364mmol)、THF(1000g)を仕込み、窒素置換後、内温が10℃を越えないように注意しながらメタクリロイルクロリド(33.27g、318mmol)のTHF(330g)溶液を滴下した。反応終了をHPLCで確認後、反応溶液を蒸留水(6L)へ注ぎ、しばらく撹拌後、析出した固体をろ過、蒸留水でよく洗浄し、化合物[19]の粗物を得た。次に、得られた粗物にメタノール(1L)を加え、室温で30分撹拌後、ろ過、固体を乾燥し化合物[19]を得た(収量94.5g、収率86%)。得られた化合物をH−NMRで測定した結果を以下に示す。
1H-NMR(400MHz, DMSO-d6, δppm):7.81-7.73(6H, m), 7.60(1H, d), 7.32-7.28(2H, m), 6.59(1H, d), 6.33-6.30(1H, m), 5.93-5.92(1H, m), 2.02-2.00(3H, m), 1.49(9H, s), 1.59-1.44(4H, m).
【0240】
反応容器に化合物[19](94.51g、259mmol)、ギ酸(475g)を仕込み、窒素置換後、40℃で加熱撹拌を行なった。HPLCで反応終了確認後、反応溶液を蒸留水(3.5L)へ注ぎ、析出した固体をろ過、蒸留水でよく洗浄し、固体を減圧乾燥することで、化合物[20]を得た(収量74.9g、収率75%)。得られた化合物をH−NMRで測定した結果を以下に示す。
1H-NMR(400MHz, DMSO-d6, δppm):7.81-7.63(6H, m), 7.64(1H, d), 7.32-7.28(2H, m), 6.60(1H, d), 6.32-6.31(1H, m), 5.93-5.92(1H, m), 2.03-2.02(3H, m).
【0241】
反応容器に2−(2,4−ジニトロフェニル)エタノール(41.29g、195mmol)、化合物[20](50.00g、162mmol)、EDC(40.21g、211mmol)、DMAP(1.98g、16.2mmol)、THF(600g)を加え、室温で撹拌を行なった。HPLCで反応終了確認後、反応溶液を蒸留水(3.6L)に注ぎ、析出した固体をろ過し、蒸留水で洗浄し化合物[21]の粗物を得た。得られた粗物をメタノール(300mL)で分散洗浄し、ろ過、減圧乾燥後、化合物[21]を得た(収量65.1g、収率80%)。得られた化合物をH−NMRで測定した結果を以下に示す。
1H-NMR(400MHz, DMSO-d6, δppm):8.76-8.75(1H, m), 8.54-8.48(1H, m), 7.93(1H, d), 7.82-7.61(7H, m), 7.31-7.28(2H, m), 6.62-6.57(1H, m), 6.32-6.31(1H, m), 5.93-5.92(1H, m), 4.48(2H, t), 3.39(2H, t), 2.03-2.02(3H, m).
【0242】
反応容器に化合物[21](65.01g、130mmol)、塩化スズ(IV)(171.9g、906mmol)、THF(650g)、蒸留水(520g)を加え、70℃で加熱撹拌を行なった。HPLCで反応終了を確認後、酢酸エチル(3.5L)を入れたビーカーに反応溶液を注ぎ、撹拌しながら、炭酸水素ナトリウムの粉末を加え中和した。その後、析出した固体をろ過により除去し、ろ液を飽和炭酸水素ナトリウム水溶液(200g)で2回、飽和食塩水(500g)で3回洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥した。その後、ろ過、溶媒留去し目的の化合物DA−12の粗物を得た。次に、得られた粗物をメタノール(200g)で分散洗浄し、ろ過、固体を乾燥し化合物DA−12を得た(収量49.5g、収率76%)。得られた化合物をH−NMRで測定した結果を以下に示す。
1H-NMR(400MHz, DMSO-d6, δppm):7.84-7.55(7H, m),7.31-7.28(2H, m), 6.60(1H, d), 6.53(1H, d), 6.32-6.30(1H, m), 5.93-5.91(2H, m), 5.83-5.81(1H, m), 4.19-4.18(2H, m), 2.71-2.70(2H, m), 3,17(4H, brs), 2.03-2.27(3H, m)
【0243】
(実施例10)液晶配向剤の合成
CBDAを1.90g(0.0096mol)と、DA−1を0.27g(0.0025mol)、DA−4を3.06g(0.0060mol)、DA−2を0.57g(0.0015mol)をNMP 32.91g中、室温で16時間反応させ、ポリアミック酸(PAA−1)の溶液を調製した。このポリアミック酸は、数平均分子量が約13000、重量平均分子量が約44000であった。このポリアミック酸の溶液10gにNMP、BCSを加えて攪拌し、ポリアミック酸(PAA−1)が6質量%、NMPが74質量%、BCSが20質量%になるよう調製した後、細孔径1μmのメンブランフィルタで加圧濾過し、実施例10の液晶配向剤を得た。
【0244】
(実施例11)液晶配向剤の合成
CBDAを1.94g(0.0099mol)と、DA−4を4.34g(0.0085mol)、DA−2を0.57g(0.0015mol)とをNMP 38.83g中、室温で16時間反応させ、ポリアミック酸(PAA−2)の溶液を調製した。このポリアミック酸は、数平均分子量が約9000、重量平均分子量が約24000であった。このポリアミック酸の溶液10gにNMP、BCSを加えて攪拌し、ポリアミック酸(PAA−2)が6質量%、NMPが74質量%、BCSが20質量%になるよう調製した後、細孔径1μmのメンブランフィルタで加圧濾過し、実施例11の液晶配向剤を得た。
【0245】
(実施例12)液晶配向剤の合成
CBDAを1.94g(0.0099mol)と、DA−4を5.10g(0.01mol)とをNMP 39.93g中、室温で16時間反応させ、ポリアミック酸(PAA−3)の溶液を調製した。このポリアミック酸は、数平均分子量が約8000、重量平均分子量が約19000であった。このポリアミック酸の溶液10gにNMP、BCSを加えて攪拌し、ポリアミック酸(PAA−3)が6質量%、NMPが74質量%、BCSが20質量%になるよう調製した後、細孔径1μmのメンブランフィルタで加圧濾過し、実施例12の液晶配向剤を得た。
【0246】
(実施例13)液晶配向剤の合成
CBDAを1.94g(0.0099mol)と、DA−4を4.10g(0.0080mol)、DA−2を0.76g(0.0020mol)とをNMP 38.55g中、室温で16時間反応させ、ポリアミック酸(PAA−6)の溶液を調製した。このポリアミック酸は、数平均分子量が約10000、重量平均分子量が約20000であった。このポリアミック酸の溶液10gにNMP、BCSを加えて攪拌し、ポリアミック酸(PAA−6)が6質量%、NMPが74質量%、BCSが20質量%になるよう調製した後、細孔径1μmのメンブランフィルタで加圧濾過し、実施例13の液晶配向剤を得た。
【0247】
(実施例14)液晶配向剤の合成
CBDAを1.94g(0.0099mol)と、DA−5を3.86g(0.0080mol)、DA−2を0.76g(0.0020mol)とをNMP 37.19g中、室温で16時間反応させ、ポリアミック酸(PAA−7)の溶液を調製した。このポリアミック酸は、数平均分子量が約10000、重量平均分子量が約20000であった。このポリアミック酸の溶液10gにNMP、BCSを加えて攪拌し、ポリアミック酸(PAA−7)が6質量%、NMPが74質量%、BCSが20質量%になるよう調製した後、細孔径1μmのメンブランフィルタで加圧濾過し、実施例14の液晶配向剤を得た。
【0248】
(実施例15)液晶配向剤の合成
CBDAを1.94g(0.0099mol)と、DA−6を3.86g(0.0080mol)、DA−2を0.76g(0.0020mol)とをNMP 37.19g中、室温で16時間反応させ、ポリアミック酸(PAA−8)の溶液を調製した。このポリアミック酸は、数平均分子量が約9000、重量平均分子量が約18000であった。このポリアミック酸の溶液10gにNMP、BCSを加えて攪拌し、ポリアミック酸(PAA−8)が6質量%、NMPが74質量%、BCSが20質量%になるよう調製した後、細孔径1μmのメンブランフィルタで加圧濾過し、実施例15の液晶配向剤を得た。
【0249】
(実施例16)液晶配向剤の合成
CBDAを1.94g(0.0099mol)と、DA−8を2.93g(0.0080mol)、DA−2を0.76g(0.0020mol)とをNMP 31.92g中、室温で16時間反応させ、ポリアミック酸(PAA−10)の溶液を調製した。このポリアミック酸は、数平均分子量が約8000、重量平均分子量が約16000であった。このポリアミック酸の溶液10gにNMP、BCSを加えて攪拌し、ポリアミック酸(PAA−10)が6質量%、NMPが74質量%、BCSが20質量%になるよう調製した後、細孔径1μmのメンブランフィルタで加圧濾過し、実施例16の液晶配向剤を得た。
【0250】
(実施例17)液晶配向剤の合成
CBDAを1.94g(0.0099mol)と、DA−9を3.94g(0.0080mol)、DA−2を0.76g(0.0020mol)とをNMP 31.92g中、室温で16時間反応させ、ポリアミック酸(PAA−11)の溶液を調製した。このポリアミック酸は、数平均分子量が約9000、重量平均分子量が約22000であった。このポリアミック酸の溶液10gにNMP、BCSを加えて攪拌し、ポリアミック酸(PAA−11)が6質量%、NMPが74質量%、BCSが20質量%になるよう調製した後、細孔径1μmのメンブランフィルタで加圧濾過し、実施例17の液晶配向剤を得た。
【0251】
(実施例18)液晶配向剤の合成
CBDAを1.94g(0.0099mol)と、DA−10を3.59g(0.0080mol)、DA−2を0.76g(0.0020mol)とをNMP 35.65g中、室温で16時間反応させ、ポリアミック酸(PAA−12)の溶液を調製した。このポリアミック酸は、数平均分子量が約8000、重量平均分子量が約23000であった。このポリアミック酸の溶液10gにNMP、BCSを加えて攪拌し、ポリアミック酸(PAA−12)が6質量%、NMPが74質量%、BCSが20質量%になるよう調製した後、細孔径1μmのメンブランフィルタで加圧濾過し、実施例18の液晶配向剤を得た。
【0252】
(実施例19)液晶配向剤の合成
CBDAを1.94g(0.0099mol)と、DA−11を3.89g(0.0080mol)、DA−2を0.76g(0.0020mol)とをNMP 37.37g中、室温で16時間反応させ、ポリアミック酸(PAA−13)の溶液を調製した。このポリアミック酸は、数平均分子量が約7000、重量平均分子量が約20000であった。このポリアミック酸の溶液10gにNMP、BCSを加えて攪拌し、ポリアミック酸(PAA−13)が6質量%、NMPが74質量%、BCSが20質量%になるよう調製した後、細孔径1μmのメンブランフィルタで加圧濾過し、実施例19の液晶配向剤を得た。
【0253】
(実施例20)液晶配向剤の合成
CBDAを1.94g(0.0099mol)と、DA−12を3.54g(0.0080mol)、DA−2を0.76g(0.0020mol)とをNMP 35.37g中、室温で16時間反応させ、ポリアミック酸(PAA−14)の溶液を調製した。このポリアミック酸は、数平均分子量が約8000、重量平均分子量が約21000であった。このポリアミック酸の溶液10gにNMP、BCSを加えて攪拌し、ポリアミック酸(PAA−14)が6質量%、NMPが74質量%、BCSが20質量%になるよう調製した後、細孔径1μmのメンブランフィルタで加圧濾過し、実施例20の液晶配向剤を得た。
【0254】
(実施例21)液晶配向剤の合成
CBDAを1.94g(0.0099mol)と、DA−5を4.82g(0.01mol)とをNMP 38.35g中、室温で16時間反応させ、ポリアミック酸(PAA−15)の溶液を調製した。このポリアミック酸は、数平均分子量が約11000、重量平均分子量が約21000であった。このポリアミック酸の溶液10gにNMP、BCSを加えて攪拌し、ポリアミック酸(PAA−15)が6質量%、NMPが74質量%、BCSが20質量%になるよう調製した後、細孔径1μmのメンブランフィルタで加圧濾過し、実施例21の液晶配向剤を得た。
【0255】
(実施例22)液晶配向剤の合成
CBDAを1.94g(0.0099mol)と、DA−6を4.82g(0.01mol)とをNMP 38.35g中、室温で16時間反応させ、ポリアミック酸(PAA−16)の溶液を調製した。このポリアミック酸は、数平均分子量が約10000、重量平均分子量が約20000であった。このポリアミック酸の溶液10gにNMP、BCSを加えて攪拌し、ポリアミック酸(PAA−16)が6質量%、NMPが74質量%、BCSが20質量%になるよう調製した後、細孔径1μmのメンブランフィルタで加圧濾過し、実施例22の液晶配向剤を得た。
【0256】
(実施例23)液晶配向剤の合成
CBDAを1.94g(0.0099mol)と、DA−8を3.66g(0.01mol)とをNMP 31.76g中、室温で16時間反応させ、ポリアミック酸(PAA−18)の溶液を調製した。このポリアミック酸は、数平均分子量が約9000、重量平均分子量が約18000であった。このポリアミック酸の溶液10gにNMP、BCSを加えて攪拌し、ポリアミック酸(PAA−18)が6質量%、NMPが74質量%、BCSが20質量%になるよう調製した後、細孔径1μmのメンブランフィルタで加圧濾過し、実施例23の液晶配向剤を得た。
【0257】
(実施例24)液晶配向剤の合成
CBDAを1.94g(0.0099mol)と、DA−9を4.92g(0.01mol)とをNMP 38.91g中、室温で16時間反応させ、ポリアミック酸(PAA−19)の溶液を調製した。このポリアミック酸は、数平均分子量が約10000、重量平均分子量が約24000であった。このポリアミック酸の溶液10gにNMP、BCSを加えて攪拌し、ポリアミック酸(PAA−19)が6質量%、NMPが74質量%、BCSが20質量%になるよう調製した後、細孔径1μmのメンブランフィルタで加圧濾過し、実施例24の液晶配向剤を得た。
【0258】
(実施例25)液晶配向剤の合成
CBDAを1.94g(0.0099mol)と、DA−10を4.48g(0.01mol)とをNMP 36.42g中、室温で16時間反応させ、ポリアミック酸(PAA−20)の溶液を調製した。このポリアミック酸は、数平均分子量が約10000、重量平均分子量が約23000であった。このポリアミック酸の溶液10gにNMP、BCSを加えて攪拌し、ポリアミック酸(PAA−20)が6質量%、NMPが74質量%、BCSが20質量%になるよう調製した後、細孔径1μmのメンブランフィルタで加圧濾過し、実施例25の液晶配向剤を得た。
【0259】
(実施例26)液晶配向剤の合成
CBDAを1.94g(0.0099mol)と、DA−11を4.86g(0.01mol)とをNMP 38.57g中、室温で16時間反応させ、ポリアミック酸(PAA−21)の溶液を調製した。このポリアミック酸は、数平均分子量が約9000、重量平均分子量が約21000であった。このポリアミック酸の溶液10gにNMP、BCSを加えて攪拌し、ポリアミック酸(PAA−21)が6質量%、NMPが74質量%、BCSが20質量%になるよう調製した後、細孔径1μmのメンブランフィルタで加圧濾過し、実施例26の液晶配向剤を得た。
【0260】
(実施例27)液晶配向剤の合成
CBDAを1.94g(0.0099mol)と、DA−12を4.42g(0.01mol)とをNMP 36.08g中、室温で16時間反応させ、ポリアミック酸(PAA−22)の溶液を調製した。このポリアミック酸は、数平均分子量が約8000、重量平均分子量が約21000であった。このポリアミック酸の溶液10gにNMP、BCSを加えて攪拌し、ポリアミック酸(PAA−22)が6質量%、NMPが74質量%、BCSが20質量%になるよう調製した後、細孔径1μmのメンブランフィルタで加圧濾過し、実施例27の液晶配向剤を得た。
【0261】
(比較例1)液晶配向剤の合成
CBDAを1.94g(0.0099mol)と、DA−3を2.23g(0.0085mol)、DA−2を0.57g(0.0015mol)をNMP 18.97g中、室温で16時間反応させ、ポリアミック酸(PAA−4)の溶液を調製した。このポリアミック酸は、数平均分子量が約8000、重量平均分子量が約22000であった。このポリアミック酸の溶液10gにNMP、BCSを加えて攪拌し、ポリアミック酸(PAA−4)が6質量%、NMPが74質量%、BCSが20質量%になるよう調製した後、細孔径1μmのメンブランフィルタで加圧濾過し、比較例1の液晶配向剤を得た。
【0262】
(比較例2)液晶配向剤の合成
CBDAを1.84g(0.0094mol)と、DA−1を1.08g(0.01mol)とをNMP 26.32g中、室温で16時間反応させ、ポリアミック酸(PAA−5)の溶液を調製した。このポリアミック酸は、数平均分子量が約6000、重量平均分子量が約13000であった。このポリアミック酸の溶液10gにNMP、BCSを加えて攪拌し、ポリアミック酸(PAA−5)が6質量%、NMPが74質量%、BCSが20質量%になるよう調製した後、細孔径1μmのメンブランフィルタで加圧濾過し、比較例2の液晶配向剤を得た。
【0263】
(比較例3)液晶配向剤の合成
CBDAを1.94g(0.0099mol)と、DA−3を2.09g(0.0080mol)、DA−2を0.76g(0.0020mol)をNMP 18.97g中、室温で16時間反応させ、ポリアミック酸(PAA−23)の溶液を調製した。このポリアミック酸は、数平均分子量が約8000、重量平均分子量が約22000であった。このポリアミック酸の溶液10gにNMP、BCSを加えて攪拌し、ポリアミック酸(PAA−23)が6質量%、NMPが74質量%、BCSが20質量%になるよう調製した後、細孔径1μmのメンブランフィルタで加圧濾過し、比較例3の液晶配向剤を得た。
【0264】
(比較例4)液晶配向剤の合成
CBDAを1.94g(0.0099mol)と、DA−7を3.28g(0.0080mol)、DA−2を0.76g(0.0020mol)とをNMP 33.92g中、室温で16時間反応させ、ポリアミック酸(PAA−9)の溶液を調製した。このポリアミック酸は、数平均分子量が約7000、重量平均分子量が約15000であった。このポリアミック酸の溶液10gにNMP、BCSを加えて攪拌し、ポリアミック酸(PAA−9)が6質量%、NMPが74質量%、BCSが20質量%になるよう調製した後、細孔径1μmのメンブランフィルタで加圧濾過し、比較例4の液晶配向剤を得た。
【0265】
<液晶セルの作製>
実施例10の液晶配向剤を、画素サイズが100μm×300μmでライン/スペースがそれぞれ5μmのITO電極パターンが形成されているITO電極基板のITO面にスピンコートし、80℃のホットプレートで90秒間乾燥した後、200℃の熱風循環式オーブンで30分間焼成を行い、膜厚100nmの液晶配向膜を形成した。
【0266】
また、実施例10の液晶配向剤を電極パターンが形成されていないITO面にスピンコートし、80℃のホットプレートで90秒乾燥させた後、200℃の熱風循環式オーブンで30分間焼成を行い、膜厚100nmの液晶配向膜を形成した。
【0267】
上記の2枚の基板について一方の基板の液晶配向膜上に6μmのビーズスペーサーを散布した後、その上からシール剤(協立化学製XN−1500T)を印刷した。次いで、もう一方の基板の液晶配向膜が形成された側の面を内側にして、先の基板と貼り合せた後、シール剤を硬化させて空セルを作製した。この空セルに液晶MLC−6608(メルク社製商品名)を減圧注入法によって注入し、120℃のオーブン中でIsotropic処理(加熱による液晶の再配向処理)を行い、液晶セル(垂直配向モード用アンチパラレル液晶セル)を作製した。また、同様にして、実施例11、13〜20及び比較例1、3、4で調製した液晶配向剤を用いて、液晶セルをそれぞれ作成した。
【0268】
得られた実施例10〜11、13〜20及び比較例1、3、4の各液晶配向剤を用いた液晶セルの作製直後の応答速度を、下記方法により測定した。その後、この液晶セルに20Vp−pの電圧を印加した状態で、この液晶セルの外側から313nmのバンドパスフィルターを通したUVを10J照射した。その後、再び応答速度を測定し、UV照射前後での応答速度を比較した。液晶セル作製直後(表において「初期」と表記する)、及び、UVを照射した後(表において「UV後」と表記する)の応答速度の結果を表1に示す。
【0269】
「応答速度の測定方法」
まず、バックライト、クロスニコルの状態にした一組の偏光板、光量検出器の順で構成される測定装置において、一組の偏光板の間に液晶セルを配置した。このときライン/スペースが形成されているITO電極のパターンがクロスニコルに対して45°の角度になるようにした。そして、上記の液晶セルに電圧±4V、周波数1kHzの矩形波を印加し、光量検出器によって観測される輝度が飽和するまでの変化をオシロスコープにて取り込み、電圧を印加していない時の輝度を0%、±4Vの電圧を印加し、飽和した輝度の値を100%として、輝度が10%から90%まで変化するのにかかる時間を応答速度とした。
【0270】
この結果、光重合性基と光二量化を起こす基の両方を有する上記式[1]で表されるジアミン化合物を原料として用いた実施例10〜11、13〜20では、光重合性化合物を含有しなくても、十分応答速度が速かった。また、実施例10〜11、13〜20は、上記式[1]で表されるジアミン化合物の代わりに光重合性基を有するが光二量化を起こす基を有さないジアミン化合物を原料として用いた比較例1、3や、式[1]におけるRが単結合であるジアミン化合物を用いた比較例4と比べて、顕著に応答速度が速かった。
【0271】
【表1】
【0272】
<液晶セルの作製>
実施例12の液晶配向剤を2枚の透明電極付きガラス基板にそれぞれスピンコートし、90℃のホットプレート上で60秒間乾燥させた後、200℃の熱風循環式オーブンで30分間焼成を行い、膜厚100nmの液晶配向膜を形成した。これらの塗膜面を313nmのバンドパスフィルターと偏光板を通したUVをセルを組んだ際にアンチパラレルになるように基板配置して真上から500mJ照射した。
【0273】
上記の2枚の基板について一方の基板の液晶配向膜上に6μmのビーズスペーサーを散布した後、その上からシール剤(協立化学製XN−1500T)を印刷した。次いで、もう一方の基板の液晶配向膜が形成された側の面を内側にして、先の基板と貼り合せた後、シール剤を硬化させて空セルを作製した。この空セルに液晶MLC−2041(メルク社製商品名)を減圧注入法によって注入し、120℃のオーブン中でIsotropic処理(加熱による液晶の再配向処理)を行い、液晶セル(水平配向モード用アンチパラレルセル)を作製した。また、同様にして、実施例21〜27及び比較例2で調製した液晶配向剤を用いて、液晶セルを作成した。
【0274】
<液晶配向性の評価>
作成したセルをバックライト上にクロスニコルになるように配置した偏光板の間に挟みセルを観察し、下記の基準で液晶配向性の評価を行った。評価結果を表2に示す。
○:配向不良が観察されない。
×:配向不良が観察される。
【0275】
この結果、上記式[1]で表されるジアミン化合物を原料とする本発明の液晶配向剤は、水平配向モード用の液晶配向剤としても用いることができることが確認された。
【0276】
【表2】