【実施例】
【0050】
以下に示す実施例1〜5のシクロデキストリン誘導体(a)〜(e)を合成した。以下、合成法について詳細に記載する。
【0051】
【化9】
【0052】
(オクタアジ化γシクロデキストリン[3]の合成)
下記化6に示すように、Huisgen反応の原料となるオクタアジ化されたγシクロデキストリン[3]を、オクタクロロ化シクロデキストリン[2]を経由して合成した。具体的には、シクロデキストリン[1]をジメチルホルムアミドに溶解し、これに塩化メタンスルホニルを加えて65℃にて20時間攪拌することでオクタクロロ化シクロデキストリン[2]を得た。これをジメチルホルムアミドに溶解した後、アジ化ナトリウムを加え、100℃にて17時間反応してオクタアジ化γシクロデキストリン[3]を得た。その構造はH−NMR、IRによって確認した。
【0053】
【化10】
【0054】
以下、オクタクロロ化シクロデキストリン[2]及びオクタアジ化γシクロデキストリン[3]の合成方法及び化合物データについて具体的に述べる。
(オクタクロロ化シクロデキストリン[2])
凍結乾燥したγシクロデキストリン[1] 2.11 g (1.62 mmol) を乾燥DMF 20 mlに溶解し、氷浴中で塩化メタンスルホニル 7.44 g (64.9 mmol) を加えた。アルゴン雰囲気下、室温で30分間攪拌し、その後、65 ℃の油浴中で20時間攪拌した。溶媒を減圧留去し、残渣にメタノール10 mlを加えた。氷浴中で3 M ナトリウムメトキシド/メタノール溶液をpH 9になるまで加え、生じた沈殿をろ取した。これを氷水を用いて洗浄し、凍結乾燥し、白色固体の目的物1.94 g (1.34 mmol, 83%) を得た。
R
f = 0.62 (H
2O/1-PrOH/AcOEt=5/7/7 (v/v/v))
1H NMR (400 MHz, DMSO-d
6) δ=3.33-3.40 (H-2,4), 3.60 (H-3), 3.82-3.84 (H-5,6), 4.02 (H-6), 4.98 (H-1), 5.94 (OH-3), 5.98 (OH-2)
MALDI-TOF-MS: [M+Na]
+ Calcd. for C
48H
7235Cl
637Cl
2NaO
32: 1467, Found: 1467.
[M+K]
+ Calcd. for C
48H
7235Cl
637Cl
2KO
32: 1483, Found: 1483.
(オクタアジ化γシクロデキストリン[3])
オクタクロロ化シクロデキストリン [2] 1.00 g (692 μmol) を乾燥DMF 20 mlに溶解し、アジ化ナトリウム1.80 g (27.7 mmol) を加え、アルゴン雰囲気下、100 ℃の油浴中で17時間攪拌した。溶媒を減圧留去し、水を用いた洗浄を3回行い、得られた固体を凍結乾燥し、白色固体の目的物909 mg (607 μmol, 88%) を得た。
R
f = 0.62 (H
2O/1-PrOH/AcOEt=5/7/7 (v/v/v))
1H NMR (400 MHz, DMSO-d
6):δ=3.32-3.40 (H-4,6), 3.54-3.60 (H-5,6), 3.71-3.74 (H-2,3), 4.93 (H-1), 5.88-5.94 (OH)
FT-IR (KBr, cm
-1) 669.18, 757.89, 842.74, 943.02, 1049.09, 1078.98, 1156.12, 1288.22, 1437.67, 1630.52, 1741.41, 2105.89, 2925.48, 3397.96
(実施例1)
・化合物(a)の合成
上記のようにして合成したオクタアジ化γシクロデキストリン[3] 200 mg (134 mmol) をDMSO 10 ml に溶解し、アスコルビン酸ナトリウム水溶液(265 mg/ml) を1 ml (265 mg, 1.34 mmol)、硫酸銅水溶液 (26.8 mg/ml) を1 ml (26.8 mg, 107 mmol)、シクロヘキシルメチルプロパルギルアミン(250 mg, 1.65 mmol)のDMSO溶液10 ml を加え、マイクロ波加熱(120 ℃)下で10分間攪拌した。これをろ過した後、溶媒を減圧留去し、残渣をアセトンで洗浄し、引き続き10% アンモニア水で洗浄し、得られた固体を凍結乾燥し、シクロヘキシルメチルアミノ部を持つ実施例1の化合物(a) 312 mg (86%) を得た
R
f = 0.00 (H
2O/1-propanol/AcOEt (5/7/7))
1H NMR (400 MHz, DMSO-d
6): d = 0.78-1.59 (cyclohexane), 2.27-2.33 (CH
2), 3.35-4.20 ( H-2,3,4,5,6), 5.09 (H-1), 6.02-6.17 (OH), 7.73 (triazole)
13C NMR (125 MHz, DMSO-d
6): d = 25.6, 26.3, 31.0 (CH
2), 37.3 (CH), 44.2 (CCH
2NH), 49.5 (C-6), 55.5 (CH
2NH), 69.8 (C-5), 72.1, 72.3 (C-2,3), 82.4 (C-4), 101.6 (C-1), 123.4 (C-5 triazole), 146.0 (C-4 triazole)
MALDI-TOF-MS: [M + K]
+ Calcd. for C
128H
208KN
32O
32: 2744.5, Found: 2744.7.
Anal.: + 7.5H
2O Calcd. for C
128H
223N
32O
39.5: C 54.09, H 7.91, N 15.77. Found: C 54.47, H 7.35, N 15.04.
FT-IR: (KBr, cm
-1) 598.8, 1044.3, 1079.0, 1151.2, 1607.4, 1644.0, 2850.3, 2923.6, 3379.6
(実施例2)
シクロデキストリン誘導体(b)の合成
(アセチル化オクタアジ化γシクロデキストリン[4]の合成)
【0055】
【化11】
【0056】
オクタアジ化γシクロデキストリン [3] 108 mg (72.3 μmol) を乾燥ピリジン3 mlで3回共沸し、そこに乾燥ピリジン1 ml、無水酢酸1 ml (10.6 mmol) を加え、アルゴン雰囲気下、室温で15時間攪拌した。溶液を減圧留去し、残渣にジクロロメタン20 mlを加え、水を用いた洗浄、飽和食塩水を用いた脱水後、硫酸ナトリウムを用いて乾燥した。それを順相シリカゲルカラム (ヘキサン/酢酸エチル ) にて精製した。該当分画を回収し, 溶媒を減圧留去し, 白色結晶[4]121 mg (56.0 μmol, 77%) を得た。
R
f = 0.58 (CH
2Cl
2/CH
3OH=9/1 (v/v))
1H NMR (400 MHz, CDCl
3): δ=2.08-2.09 (CH
3), 3.60 (H-6), 3.71-3.79 (H-4,6), 3.96-3.98 (H-5), 4.77 (H-2), 5.16 (H-1), 5.32 (H-3)
MALDI-TOF-MS: [M + Na]
+ Calcd. for C
80H
104N
24NaO
48: 2192, Found: 2192.
[M + K]
+ Calcd. for C
80H
104KN
24O
48: 2208, Found: 2208.
(アセチル化オクタアジ化γシクロデキストリン[4]を用いたクリック反応)
硫酸銅 9.29 mg(3.69×10
-5 mol)を120 μlの純水に溶かし、アスコルビン酸ナトリウム91.5 mg(4.61×10
-4 mol)を280 μlの純水に溶かしたものを加えた。その溶液を、DMSO 2 mlに溶かした化合物[4] 100 mg(4.61×10
-5 mol)に加えた。ここにDMSO2.5 mlに溶かした第三ブトキシカルボニル化2−エチルブチルアミノプロピン110.3 mg(4.61×10
-4 mol)を加えた。これにマイクロ波を照射し加熱(10 min, 120℃)した後、酢酸エチルに溶かし、これを5 %EDTA二ナトリウム水溶液で洗浄し、減圧留去にて溶媒を除去した残渣をシリカゲルカラム(ヘキサン/酢酸エチル) により精製し、白色固体143 mgを得た(収率75.9 %)。
TLC R
f=0.74 (ヘキサン/酢酸エチル=1/9)
1H NMR (400 MHz, CDCl
3):
δ= 0.82-0.86 (CH
3), 1.24-1.28 (CH
2), 1.41 (C(CH
3)
3), 1.60 (CH), 2.04-2.05 (COCH
3), 3.11-3.16(CH
2), 3.58 (H-4), 4.35-4.49 (H-5, 6), 4.67-4.69 (H-2), 4.83-4.98 (CH
2), 5.39-5.40 (H-3), 5.65 (H-1), 7.71 (triazole)
13C NMR (100 MHz, CDCl
3): d = 10.6-10.6 (CH
3), 20.7-20.8 (CH
3-acetyl), 23.1 (CH
2), 28.0-28.4 ((CH
3)
3-Boc), 29.7 (CH), 39.0-39.4 (CH), 42.4 (C6), 49.8 (CH
2-triazole), 50.4 (CH
2-N(Boc)), 69.7-70.8 (C5, C2, C3, C4), 79.7 (C(CH
3)
3-Boc), 95.6 (C1), 124.7-125.3 (CH-triazole), 145.3 (=C-N-triazole), 155.5-155.9 (C=O-Boc) , 169.69-170.2 (C=O-acetyl)
FT-IR :(KBr, cm
-1) 782.958, 878.417, 949.77, 1045.23, 1168.65, 1242.9, 1367.28, 1416.46, 1463.71, 1689.34, 1758.76, 2877.27, 2934.16, 2965.02, 3434.6
Calcd. for C
192H
304N
32O
64+ 2.0 H
2O: C 55.96, H 7.53, N 10.88. Found: C 55.95, H 7.58, N 10.64
(第三ブトキシカルボニル基の脱保護)
上記のクリック反応生成物18.4 mg(4.50×10
-6 mol)にトリフルオロ酢酸500 mlを加えて溶解させた。その後、20分攪拌し、減圧留去により白色固体18.9 mg (収率100 %)を得た。
【0057】
TLC R
f=0.05 (ヘキサン/酢酸エチル=1/9)
1H NMR (400 MHz, DMSO-d
6): δ= 0.82-0.84 (CH
3), 1.22-1.27 (CH
2), 1.52-1.56 (CH), 1.98-2.07 (CO-acetyl), 2.77 (CH
2), 3.50-3.70 (H-4), 4.19-4.32 (CH
2) 4.44 (H-5), 4.61-4.64 (H-6), 4.76 (H-3), 5.27-5.31 (H-3), 5.39 (H-1), 8.19 ( H-triazole), 9.20 (NH)
(アセチル基の脱保護)
上記の第三ブトキシカルボニル基を脱保護された化合物18.9 mg(4.50×10
-3 mol)にメタノール1 mlを加えて溶解させた。続いて、ナトリウムメトキシドを1.94 mg (3.6×10
-2 mol)加え、室温で4時間攪拌した。その後、陽イオン交換樹脂をpH 7になるまで加えた。陽イオン交換樹脂を濾去し、減圧留去により実施例2のシクロデキストリン誘導体(b)を白色固体12.1 mg(収率76.1 %)として得た。
【0058】
TLC R
f=0.57 (アンモニア/水/1-プロパノール/酢酸エチル=3/2/7/7)
1H NMR (400 MHz, DMSO-d
6): δ=0.76-0.79 (CH
3), 1.23-1.32 (CH
2), 1.55-1.58 (CH), 2.81 (CH
2), 3.50-3.70 (H-4, H-5, H-6), 3.68-3.70 (H-2), 4.12 (CH
2), 4.47 (H-3), 5.11 (H-1),6.07-6.10 (OH), 8.09 (triazole) 9.12 (NH)
MS: [M+Na]
+Calcd. for C
120H
208N
32NaO
32: 2632.5530, Found: 2632.5270, [M+K]
+ Calcd. for C
120H
208KN
32O
32: 2648.5269, Found: 2648.5031
(実施例3)
シクロデキストリン誘導体(c)の合成
(化合物[4]を用いたクリック反応)
硫酸銅 10.2 mg (4.06×10
-5mol)を250 μlの純水に溶かし、アスコルビン酸ナトリウム100.6 mg(5.07×10
-4 mol)を250 μlの純水に溶かしたものを加えた。その溶液を、DMSO 2 mlに溶かした化合物[4] 122 mg(5.62×10
-5 mol)に加えた。ここにDMSO 2 mlに溶かした第三ブトキシカルボニル化2−メチルプロピルアミノプロピン107.1 mg(5.07×10
-4 mol)を加えた。これにマイクロ波を照射し加熱(90 min, 120℃)した後、酢酸エチルに溶かし、これを5 %EDTA二ナトリウム水溶液で洗浄し、減圧留去にて溶媒を除去した残渣をシリカゲルカラム (塩化メチレン/メタノール) により精製し、白色固体107.6 mg(収率49.6 %)を得た。
TLC R
f=0.48 (塩化メチレン/メタノール=20/1)
1H NMR (400 MHz, CDCl
3): δ= 0.84 (CH
3), 1.41 (C(CH
3)
3), 1.95 (CH), 2.04-2.09 (COCH
3), 2.96-3.06 (CH
2), 3.48-3.57(H-4), 4.39-4.55 (H-6,H-5), 4.66-4.68 (H-2), 4.86-4.89 (CH
2), 5.38 (H-3), 5.62 (H-1), 7.68-7.73(triazole)
13C NMR (100 MHz, CDCl
3): d = 20.0 (CH
3), 20.7-21.9 (CH
3-acetyl), 27.2-27.5 (CH
2), 28.4 ((CH
3)
3-Boc), 29.70 (CH), 42.5-42.9 (CH), 49.4 (C6), 54.4 (CH
2-triazole), 54.75 (CH
2-N(Boc)), 70.9-70.6 (C5, C2, C3, C4), 79.7 (OC(CH
3)
3-Boc)], 95.7 (C1), 125.4 (CH
2-triazole), 145.3 (=C-N-triazole), 155.9 (C=O-Boc), 169.6-170.2 (C=O-acetyl)
FT-IR :(KBr, cm
-1) 408.835, 457.047, 599.753, 784.886, 1045.23, 1167.69, 1246.75, 1367.28, 1416.46, 1465.63, 1688.37, 1756.83, 2964.05, 3460.63
MS: [M+Na]
+Calcd. for C
176H
272NaN
32O
64: 3880.9, Found: 3880.4
(第三ブトキシカルボニル基の脱保護)
上記のクリック反応生成物61.0 mg(1.58×10
-5 mol)にトリフルオロ酢酸6 mlを加えて溶解させた。その後、30分攪拌し、減圧留去により白色固体62.7 mg(収率100.0 %)を得た。
【0059】
TLC R
f=0.15 (ヘキサン/酢酸エチル=1/9)
1H NMR (400 MHz, DMSO-d
6): δ=0.85-0.88 (CH
3), 1.88-1.96(CO-acetyl, CH), 2.50-2.73 (CH
2), 3.57 (H-4), 4.18 (H-6), 4.35 (H-5), 4.64-4.71 (H-2, CH
2), 5.28-5.03 (H-3), 5.38 (H-1), 8.14-8.25 ( H-triazole), 9.21 (NH)
(アセチル基の脱保護)
上記の第三ブトキシカルボニル基を脱保護された化合物30.0 mg(7.58×10
-6 mol)にメタノール2 mlを加えて溶解させた。続いて、ナトリウムメトキシド3.28 mg(6.06×10
-5 mol)を加え、室温で8時間攪拌した。その後、陽イオン交換樹脂をpH 7になるまで加えた。陽イオン交換樹脂を濾去し、減圧留去により実施例3の化合物(c)を白色固体22.9 mg(収率91.6 %)として得た。
TLC R
f=0.15 (アンモニア/水/1-プロパノール/酢酸エチル=0.5/2/5/3)、
1H NMR (400 MHz, DMSO-d
6,): δ= 0.88-0.89 (CH
3), 1.90-1.93 (CH), 2.72 (CH
2), 3.22-3.50 (H-4, H-5, H-6), 3.68-3.70 (H-2), 4.11 (CH
2), 4.43 (H-3), 5.11 (H-1), 6.08-6.12 (OH]) 8.08 (triazole), 9.15 (NH).
(実施例4)
シクロデキストリン誘導体(d)の合成
(クリック反応)
硫酸銅 45.6 mg(2.30×10
-4 mol)を100 μlの純水に溶かし、アスコルビン酸ナトリウム4.58 mg(1.84×10
-4 mol)を100 μlの純水に溶かしたものを加えた。その溶液をDMSO 1 mlに溶かした化合物[4] 50 mg(2.30×10
-5 mol)に加えた。ここにDMSO 1 mlに溶かした第三ブトキシカルボニル化シクロブチルメチルアミノプロピン 51.3 mg(2.30×10
-4 mol)を加えた。これにマイクロ波を照射し加熱(30 min, 120℃)した。さらに硫酸銅45.6 mg(2.30×10
-4 mol)を100 μlの純水に溶かし、アスコルビン酸ナトリウム4.58 mg(1.84×10
-4 mol)を100 μlの純水に溶かしたものを加え、続いてDMSO 0.5 mlに溶かした第三ブトキシカルボニル化シクロブチルメチルアミノプロピン20.3 mg(9.10×10
-5mol)を加えた。マイクロ波を照射して加熱(10 min, 120℃) した後、酢酸エチルに溶かし、これを5 %EDTA二ナトリウム水溶液で洗浄し、減圧留去にて溶媒を除去した残渣をシリカゲルカラム(塩化メチレン/メタノール)により精製し、白色固体71.5 mg (収率78.7 %)を得た。
TLC R
f=0.20 (塩化メチレン/メタノール=20/1 (v/v))
1H NMR (400 MHz, CDCl
3): δ= 1.42 [C(CH
3)
3], 1.67 [CH
2], 1.80-1.94 [CH
2], 1.93 [CH
2], 2.00-2.05 [CH
3], 2.55 [CH
2], 3.23-3.34 [CH
2], 3.55-3.61 [CH], 4.34-4.48 [CH, CH
2], 4.67-4.69 [CH], 4.86 [CH
2], 5.36-5.40 [CH], 5.64 [CH], 7.69-7.71 [NH]
FT-IR (KBr, cm
-1) 462.83, 601.68, 785.85, 881.31, 1046.19, 1145.51, 1168.65, 1245.79, 1368.25, 1413.57, 1458.89, 1625,70, 1692.23, 1757.80, 2974.66, 3446.17
(アセチル基の脱保護)
上記のクリック反応生成物40.0 mg(1.01×10
-5 mol)にメタノール3 mlを加えて溶解させた。続いて、ナトリウムメトキシドをpH 9になるまで加え、室温で12時間攪拌した。その後、陽イオン交換樹脂をpH 7になるまで加えた。陽イオン交換樹脂を濾去し、減圧留去により白色固体35.1 mg (収率100 %)を得た。
TLC R
f=0.80 (アンモニア/水/1-プロパノール/酢酸エチル=3/2/7/7)
1H NMR (400 MHz, DMSO-d
6): δ= 1.23 [C(CH
3)
3], 1.34 [CH
2], 1.47 [CH
2], 1.57 [CH
2], 3.17-3.24 [CH
2, CH
2], 3.64-3.66 [CH], 4.03 [CH], 4.14 [CH], 4.35 [CH
2], 5.11 [CH], 5.94 [OH], 7.69-7.71 [NH]
(第三ブトキシカルボニル基の脱保護)
アセチル基を脱保護された化合物30.3 mg(9.23×10
-6 mol)にトリフルオロ酢酸1 mlを加えて溶解させた。その後、30分攪拌し、減圧留去により実施例4の化合物(d)を白色固体33.4 mg (収率100 %)として得た。
TLC R
f=0.35 (アンモニア/水/1-プロパノール/酢酸エチル=3/2/7/7 )
1H NMR (400 MHz, DMSO-d
6): δ= 1.73 [CH
2], 2.50-2.57 [CH], 2.95 [CH
2], 3.39-3.40 [CH
2], 3.68-3.70 [CH], 4.10 [CH], 4.45-4.53 [CH
2], 5.11 [CH], 6.08 [OH], 8.08 [NH], 9.10 [NH
2]
(実施例5)
シクロデキストリン誘導体(e)の合成
(クリック反応)
硫酸銅 4.57 mg(1.85×10
-5 mol)を160 μlの純水に溶かし、アスコルビン酸ナトリウム45.2 mg(2.31×10
-4 mol)を140 μlの純水に溶かしたものを加えた。その溶液をDMSO 1 mlに溶かした化合物[4] 50 mg(2.30×10
-5 mol)に加えた。ここにDMSO1.3 mlに溶かした第三ブトキシカルボニル化シクロペンチルメチルアミノプロピン 54.6 mg(2.30×10
-4 mol)を加えた。これにマイクロ波を照射し加熱(10 min, 120℃) した後、酢酸エチルに溶かし、これを5 %EDTA二ナトリウム水溶液で洗浄し、減圧留去にて溶媒を除去した残渣をシリカゲルカラム(ヘキサン/酢酸エチル) により精製し、白色固体60.1 mg(収率64.2 %)を得た。
TLC R
f=0.66 (ヘキサン/酢酸エチル=1/9 (v/v))
1H NMR (400 MHz, CDCl
3): δ= 1.19 [CH
2], 1.41 [C(CH
3)
3], 1.51 [CH
2], 1.61 [CH
2], 2.04-2.05 [COCH
3], 2.17-2.21 [CH], 3.14-3.20 [CH
2], 3.57 [H-4], 4.38-4.48 [H-5, H-6], 4.67-4.69 [H-2], 4.86 [CH
2], 5.38 [H-3], 5.64 [H-1], 7.67-7.72 [triazole]
13C NMR (100 MHz, CDCl
3): d = 20.7-20.9 [CH
3CO], 24.9 [CH
2], 28.4 [(CH
3)
3-Boc], 29.7-30.1 [CH
2], 38.9 [CH], 42.1-42.5 [C6], 49.7 (CH
2-triazole), 51.6 (CH
2-N(Boc)), 69.6-70.7 [C5, C2, C3, C4], 79.6 [OC(CH
3)
3-Boc], 95.6 [C1], 124.7-125.3 [CH-triazol], 145.5 [=CN-triazol], 155.5-155.7 [C=O-Boc ], 169.6-170.2 [C=O-acetyl]
FT-IR :(KBr, cm
-1) 460.904, 524.543, 566.005, 601.682, 647.965, 733.782, 782.958, 822.491, 879.381, 949.77, 1045.23, 1161.9, 1245.79, 1367.28, 1415.49, 1461.78, 1545.67, 1691.27, 1758.76, 2869.56, 2953.45, 3148.22, 3480.88
Anal.: Calcd. for C
192H
288N
32O
64+ 2.0 H
2O: C 56.18, H 7.17, N 10.92. Found: C 56.27, H 7.25, N 10.63
(第三ブトキシカルボニル基の脱保護)
上記のクリック反応生成物のうち、42.3 mg(1.04×10
-2 mol)にトリフルオロ酢酸 1 mlを加えて溶解させた。その後、20分攪拌し、減圧留去により白色固体41.0 mg(収率94.3 %)を得た。
【0060】
TLC R
f=0.05 (ヘキサン/酢酸エチル=1/9 (v/v)、ナフトレゾルシン発色)
1H NMR (400 MHz, DMSO-d
6): δ=1.121-1.134 [CH
2], 1.459-1.531 [CH
2], 1.699-1.714 [CH
2], 1.995 [COCH
3], 2.065-2.103 [CH], 2.833 [CH
2], 3.446-3.569 [H-4, CH
2], 4.181 [H-6], 4.427 [H-5], 4.634-4.656 [H-2], 4.735 [CH
2], 5.276-5.321[H-3], 5.380 [H-1], 8.186[H-triazol], 9.244[NH]
(アセチル基の脱保護)
上記の第三ブトキシカルボニル基を脱保護された化合物 28.2 mg(6.75×10
-3mol)にメタノール1 mlを加えて溶解させた。続いて、ナトリウムメトキシドを2.91 mg(5.4×10
-2 mol)加え、室温で4時間攪拌した。その後、陽イオン交換樹脂をpH 7になるまで加えた。陽イオン交換樹脂を濾去し、減圧留去により実施例5の化合物(e)を白色固体18.1 mg(収率76.7 %)として得た。
TLC R
f=0.15 (アンモニア/水/1-プロパノール/酢酸エチル=3/2/7/7)
1H NMR (400 MHz, DMSO-d
6,): δ= 1.149-1.233 [CH
2], 1.475-1.547 [CH
2], 1.722 [CH
2], 2.083-2.103 [CH], 2.859 [CH
2], 3.219-3.394 [H-4, H-6], 3.698 [H-5], 4.098 [CH
2, H-2], 4.433 [H-3], 5.106 [H-1], 6.099 [OH], 8.080[triazole], 9.193 [NH]
MS: [M+H]
+ Calcd. for C
120H
193N
32O
32: 2594.4546, Found: 2594.4702
[M+Na]
+Calcd. for C
120H
192N
32NaO
32: 2616.4278, Found: 2616.4516
(評価)
上記のようにして合成した実施例1〜5のシクロデキストリン誘導体(a)〜(e)の抗菌性を最小発育濃度(MIC)で評価した。評価にはグラム陽性菌として黄色ブドウ球菌および枯草菌、グラム陰性菌として大腸菌、ネズミチフス菌、緑膿菌を使用した。
【0061】
評価方法は以下の通りである。
【0062】
すなわち、細菌は、一般細菌用乾燥ブイヨンあるいは大腸菌はポリペプトンを加えた最小塩培地で培養し、対数増殖期の状態のものを使用した。最小発育濃度は、Muller Hinton培地、菌液、各濃度の候補化合物溶液を、37℃で20時間、培養することにより、試験化合物がその細菌の生育を阻止した最小濃度とした。なお初期の菌濃度は1x10
4 細胞/mLとした。
【0063】
最小発育濃度(MIC)で評価の結果を表1に示す。
【0064】
【表1】
【0065】
一般に最小発育濃度が1000μg/mLを上回る場合には、その物質には抗菌性はないと判断され、10〜1000μg/mLの場合には中程度、10μg/mL以下では強力な抗菌性ありとされる。
【0066】
上記表1に示すように、末端が鎖上のアルキル部である2−メチルプロピルアミノメチルトリアゾール基を持つ実施例3の化合物(C)は、黄色ブドウ球菌に対して64μg/mLという中程度の抗菌性を示した。同じく末端が鎖上のアルキル部である2−エチルブチルアミノメチルトリアゾール基を持つ実施例2の化合物(b)は、グラム陽性菌である黄色ブドウ球菌および枯草菌、グラム陰性菌である大腸菌およびネズミチフス菌に対しては4または8μg/mLという強力な抗菌性を示し、緑膿菌に対しても64μg/mLという中程度の抗菌性を示した。
【0067】
一方、末端が環状のアルキル部である実施例1、4、5の化合物(a)、(d)、(e)については、グラム陽性菌である黄色ブドウ球菌および枯草菌、グラム陰性菌である大腸菌およびネズミチフス菌に対しては、いずれも抗菌性を示した。すなわち、シクロへキシル部を持つ実施例1の化合物(a)はグラム陰性菌である大腸菌およびネズミチフス菌に対する最小発育濃度はいずれも16μg/mLであり、グラム陽性菌には8μg/mLという強力な抗菌性を示した。また、シクロブチル部を持つ実施例4の化合物(d)は、ネズミチフス菌に対する最小発育濃度は32μg/mLであるものの、グラム陰性菌である大腸菌、およびグラム陽性菌には8μg/mLという強力な抗菌性を示した。さらに、シクロペンチル部を持つ実施例5の化合物(e)は、黄色ブドウ球菌、枯草菌、大腸菌およびネズミチフス菌の全てに対して4または8μg/mLという強力な抗菌性を示した。なお、グラム陰性菌である緑膿菌への最小発育濃度はいずれも128μg/mL超であった。
【0068】
以上の結果から、γシクロデキストリンに疎水性アルキル部を持つアミノトリアゾール基を導入した化合物は、抗菌性を発現する上で有効であることが分かった。また、アルキル部が鎖状または環状のいずれでも抗菌性を示すことが分かった。さらには、ここで示された抗菌性はその分子設計から膜傷害機構に起因するものと合理的に推定され、シクロデキストリンを利用して抗菌性を発現する物質を構築する前述の分子設計とその調製方法の有効性を実証している。
【0069】
そしてここでは、 親水性であるシクロデキストリンのグルコース部分にトリアゾール部を介してアルキルアミノメチル部を連結することで細菌への抗菌性を発現させた。これはグルコースの性質を利用して親水性と疎水性のバランスを適切に調節することにより抗菌物質ができることを示している。それゆえに、シクロデキストリンと同様にグルコースからなるオリゴ糖〜多糖にアルキルアミノアルキルトリアゾール部を導入することで抗菌物質が合成できると考えられる。さらに、グルコースの異性体で同様の性質を持つ単糖からなるオリゴ糖〜多糖からも抗菌物質が合成できることを合理的に推論できる。
【0070】
この発明は上記発明の実施の態様及び実施例の説明に何ら限定されるものではない。特許請求の範囲を逸脱せず、当業者が容易に想到できる範囲で種々の変形態様もこの発明に含まれる。