(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記ポリテトラメチレングリコール(a1)、ポリエーテルトリオール(a2)及びポリエーテルポリオール(a3)の含有量の合計が、ポリオール(x)全量中25質量%以下である請求項1記載の湿気硬化型ウレタンホットメルト樹脂組成物。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の湿気硬化型ウレタンホットメルト樹脂組成物は、イソシアネート基を有するウレタンプレポリマー(A)、及び、加水分解性シリル基を有するウレタン化合物(B)を含有するものである。
【0010】
前記イソシアネート基を有するウレタンプレポリマーとしては、例えば、ポリオール(x)とポリイソシアネート(y)とを反応させることにより得られるものを用いることができる。
【0011】
前記ポリオール(x)としては、例えば、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリブタジエンポリオール、水添ポリブタジエンポリオール、ポリアクリルポリオール、ダイマージオール等を用いることができる。これらのポリオールは単独で用いても2種以上を併用してもよい。これらの中でも、ポリエーテルポリオール及びポリエステルポリオールを用いることが好ましい。
【0012】
前記ポリエーテルポリオールとしては、ポリテトラメチレングリコール(a1)、ポリエーテルトリオール(a2)、エチレンオキサイドとプロピレンオキサイドとを反応させて得られるポリエーテルポリオール(a3)、ポリオキシブチレンポリオール、ポリオキシエチレンポリオキシブチレンポリオール、ポリオキシプロピレンポリオキシブチレンポリオール等を用いることができる。これらのポリエーテルポリオールは単独で用いても2種以上を併用してもよい。これらの中でも、内部硬化性、脱型性及び成型性をより一層向上できる点から、ポリテトラメチレングリコール(a1)、ポリエーテルトリオール(a2)、及び、エチレンオキサイドとプロピレンオキサイドとを反応させて得られるポリエーテルポリオール(a3)を用いることが好ましい。
【0013】
前記ポリテトラメチレングリコール(a1)としては、例えば、テトラヒドロフランを開環重合して得られるポリテトラメチレングリコール、テトラヒドロフランとアルキル置換テトラヒドロフランを共重合させた変性ポリテトラメチレングリコール、ネオペンチルグリコールとテトラヒドロフランを共重合させた変性ポリテトラメチレングリコール等を用いることができる。また、前記ポリテトラメチレングリコール(a1)の官能基数としては、脱型性、成型性及び粘度の点から、1.5〜2.5の範囲であることが好ましい。
【0014】
前記ポリテトラメチレングリコール(a1)の数平均分子量としては、脱型性及び成型性をより一層向上できる点から、500〜5,000の範囲であることが好ましく、1,000〜3,000の範囲がより好ましい。なお、前記ポリテトラメチレングリコール(a1)の数平均分子量は、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)法により、下記の条件で測定した値を示す。
【0015】
測定装置:高速GPC装置(東ソー株式会社製「HLC−8220GPC」)
カラム:東ソー株式会社製の下記のカラムを直列に接続して使用した。
「TSKgel G5000」(7.8mmI.D.×30cm)×1本
「TSKgel G4000」(7.8mmI.D.×30cm)×1本
「TSKgel G3000」(7.8mmI.D.×30cm)×1本
「TSKgel G2000」(7.8mmI.D.×30cm)×1本
検出器:RI(示差屈折計)
カラム温度:40℃
溶離液:テトラヒドロフラン(THF)
流速:1.0mL/分
注入量:100μL(試料濃度0.4質量%のテトラヒドロフラン溶液)
標準試料:下記の標準ポリスチレンを用いて検量線を作成した。
【0016】
(標準ポリスチレン)
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン A−500」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン A−1000」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン A−2500」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン A−5000」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F−1」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F−2」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F−4」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F−10」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F−20」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F−40」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F−80」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F−128」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F−288」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F−550」
【0017】
前記ポリエーテルトリオール(a2)としては、例えば、ポリエチレントリオール、ポリプロピレントリオール、ポリブチレントリオール等を用いることができる。これらのポリエーテルトリオールは単独で用いても2種以上を併用してもよい。前記ポリエーテルトリオール(a2)としては、成型性及び耐熱性をより一層向上できる点から、ポリプロピレントリオールを用いることが好ましい。
【0018】
前記ポリエーテルトリオール(a2)の数平均分子量としては、成型性、耐熱性及び内部硬化性等をより一層向上できる点から、1,000〜5,000の範囲であることが好ましく、2,000〜4,000の範囲がより好ましい。なお、前記ポリエーテルトリオール(a2)の数平均分子量は、前記ポリテトラメチレングリコール(a1)の数平均分子量と同様にして得られた値を示す。
【0019】
前記ポリエーテルトリオール(a2)を用いる場合の使用量としては、成型性、耐熱性及び内部硬化性をより一層向上できる点から、前記ポリテトラメチレングリコール(a1)100質量部に対して、30〜300質量部の範囲であることが好ましく、50〜200質量部の範囲がより好ましい。
【0020】
前記ポリエーテルポリオール(a3)は、エチレンオキサイドとプロピレンオキサイドとを公知の方法により得られるポリエーテルポリオールである。また、前記ポリエーテルポリオール(a3)の官能基数としては、内部硬化性の点から1.5〜2.5の範囲であることが好ましい。
【0021】
前記エチレンオキサイドと前記プロピレンオキサイドとの反応モル比[EO/PO]としては、内部硬化性をより一層向上できる点から、3/97〜90/10の範囲であることが好ましく、5/95〜85/15の範囲がより好ましい。
【0022】
前記ポリエーテルポリオール(a3)の数平均分子量としては、内部硬化性をより一層向上できる点から、500〜5,000の範囲であることが好ましく、1,000〜3,000の範囲がより好ましい。なお、前記ポリエーテルポリオール(a3)の数平均分子量は、前記ポリテトラメチレングリコール(a1)の数平均分子量と同様にして得られた値を示す。
【0023】
前記ポリエーテルポリオール(a3)は、例えば、「ED−36」、「ED−56」(以上、三井武田ケミカル株式会社製)等が市販品として入手することができる。
【0024】
前記ポリエーテルポリオール(a3)を用いる場合の使用量としては、内部硬化性をより一層向上できる点から、前記ポリテトラメチレングリコール(a1)100質量部に対して、10〜300質量部の範囲であることが好ましく、20〜100質量部の範囲がより好ましい。
【0025】
また、前記ポリテトラメチレングリコール(a1)、ポリエーテルトリオール(a2)及びポリエーテルポリオール(a3)を用いる場合の3成分の含有量の合計としては、脱型性をより一層向上できる点から、前記ポリオール(x)全量中25質量%以下であることが好ましく、10〜22質量%の範囲がより好ましい。
【0026】
前記ポリエステルポリオールとしては、例えば、結晶性ポリエステルポリオール(a4)、非晶性ポリエステルポリオール、芳香族ポリエステルポリオール等を用いることができる。これらのポリエステルポリオールは単独で用いても2種以上を併用してもよい。これらの中でも、脱型性をより一層向上できる点から、結晶性ポリエステルポリオールを用いることが好ましい。
【0027】
前記結晶性ポリエステルポリオールとしては、例えば、水酸基を有する化合物と多塩基酸との反応物を用いることができる。なお、本発明において、「結晶性」とは、JIS K7121:2012に準拠したDSC(示差走査熱量計)測定において、結晶化熱あるいは融解熱のピークを確認できるものを示し、「非晶性」とは、前記ピークを確認できないものを示す。
【0028】
前記水酸基を有する化合物としては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、ヘプタンジオール、オクタンジオール、ノナンジオール、デカンジオール、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、グリセリン等を用いることができる。これらの化合物は単独で用いても2種以上を併用してもよい。これらの中でも結晶性を高め、脱型性をより一層向上できる点から、ブタンジオール、ヘキサンジオール、オクタンジオール、デカンジオールを用いることが好ましく、1,6−ヘキサンジオールがより好ましい。
【0029】
前記多塩基酸としては、例えば、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、1,12−ドデカンジカルボン酸等を用いることができる。これらの多塩基酸は単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0030】
前記結晶性ポリエステルポリオール(a4)の数平均分子量としては、脱型性をより一層向上できる点から、500〜5,000の範囲が好ましく、2,000〜4,000の範囲がより好ましい。なお、前記結晶性ポリエステルポリオール(a4)の数平均分子量は、前記ポリテトラメチレングリコール(a1)の数平均分子量と同様に測定して得られた値を示す。
【0031】
また、前記結晶性ポリエステルポリオール(a4)のガラス転移温度(Tg)としては、脱型性をより一層向上できる点から、40〜130℃の範囲が好ましい。なお、前記結晶性ポリエステルポリオール(a4)のガラス転移温度は、JISK7121:2012に準拠し、DSCにより測定した値を示し、具体的には、示差走査型熱量計装置内に前記(a4)を入れ、(Tg+50℃)まで昇温速度10℃/分で昇温した後、3分間保持し、その後急冷し、得られた示差熱曲線から読み取った中間点ガラス転移温度(Tmg)を示す。
【0032】
前記結晶性ポリエステルポリオール(a4)を用いる場合の使用量としては、脱型性をより一層向上できる点から、前記ポリオール(x)全量中40〜90質量%の範囲であることが好ましく、45〜80質量%の範囲がより好ましく、50〜75質量%の範囲が更に好ましい。
【0033】
前記ポリオール(A)は、前記ポリテトラメチレングリコール(A−1)、前記ポリエーテルトリオール(A−2)、前記ポリエーテルポリオール(A−3)及び前記結晶性ポリエステルポリオール(A−4)を必須の成分として含有するが、必要に応じて、その他のポリオールを含有してもよい。
【0034】
前記芳香族ポリエステルポリオールとしては、例えば、水酸基を有する化合物と芳香族多塩基酸を含む二塩基酸との反応物を用いることができる。
【0035】
前記水酸基を有する化合物としては、前記結晶性ポリエステルポリオール(a4)で用いるものと同様のものを用いることができる。
【0036】
前記芳香族多塩基酸としては、例えば、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、オルトフタル酸等を用いることができる。それ以外の多塩基酸としては、前記結晶性ポリエステルポリオール(a4)で用いるものと同様のものを用いることができる。これらの多塩基酸は単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0037】
前記芳香族ポリエステルポリオールの数平均分子量としては、成型品の耐熱性をより一層向上できる点から、500〜5,000の範囲であることが好ましく、2,000〜4,000の範囲であることがより好ましい。なお、前記芳香族ポリエステルポリオールの数平均分子量は、前記ポリテトラメチレングリコール(a1)の数平均分子量と同様に測定して得られた値を示す。
【0038】
前記芳香族ポリエステルポリオールを用いる場合の使用量としては、成型品の耐熱性をより一層向上できる点から、前記ポリオール(x)全量中3〜30質量%の範囲であることが好ましく、10〜25質量%の範囲がより好ましい。
【0039】
前記ポリイソシアネート(y)としては、例えば、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ポリメリックジフェニルメタンジイソシアネート、カルボジイミド変性ジフェニルメタンジイソシアネート、フェニレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート等の芳香族ポリイソシアネート;ヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、シクロヘキサンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート等の脂肪族又は脂環族ポリイソシアネートなどを用いることができる。これらのポリイソシアネートは単独で用いても2種以上を併用してもよい。これらの中でも、反応性及び機械的強度の点から、ジフェニルメタンジイソシアネート、ポリメリックジフェニルメタンジイソシアネートを用いることが好ましい。
【0040】
前記イソシアネート基を有するウレタンプレポリマー(A)は、空気中やウレタンプレポリマー(A)が塗布される筐体、被着体、鋳型、金型等に存在する水分と反応して架橋構造を形成しうるイソシアネート基をポリマー末端や分子内に有する。
【0041】
前記ウレタンプレポリマー(A)の製造方法としては、例えば、前記ポリイソシアネート(y)の入った反応容器に、前記ポリオール(x)の混合物を滴下した後に加熱し、前記ポリイソシアネート(y)の有するイソシアネート基が、前記ポリオール(x)の有する水酸基に対して過剰となる条件で反応させることによって製造することができる。
【0042】
前記ウレタンプレポリマー(A)を製造する際の、前記ポリイソシアネート(y)が有するイソシアネート基と前記ポリオール(x)が有する水酸基の当量比([NCO/OH])としては、脱型性及び内部硬化性をより一層向上できる点から、1.1〜5の範囲であることが好ましく、1.5〜3の範囲がより好ましい。
【0043】
前記ウレタンプレポリマー(A)は、通常、無溶剤下で製造することができるが、前記ポリオール(x)とポリイソシアネート(y)とを有機溶剤中で反応させることによって製造してもよい。有機溶剤中で反応させる場合には、反応を阻害しない酢酸エチル、酢酸n−ブチル、メチルエチルケトン、トルエン等の有機溶剤を用いることができるが、反応の途中又は反応終了後に減圧加熱等の方法により有機溶剤を除去することが必要である。
【0044】
以上の方法によって得られるウレタンプレポリマー(A)のイソシアネート基含有率(NCO%)としては、脱型性及び内部硬化性をより一層向上できる点から、1.5〜8%の範囲が好ましく、1.7〜5%の範囲がより好ましく、1.8〜3%の範囲が特に好ましい。なお、前記ウレタンプレポリマー(A)のイソシアネート基含有率は、JISK1603−1:2007に準拠し、電位差滴定法により測定した値を示す。
【0045】
前記ウレタンプレポリマー(A)の粘度としては、脱型性及び内部硬化性をより一層向上できる点から、120℃における溶融粘度が1,000〜50,000mPa・sの範囲であることが好ましく、2,000〜10,000mPa・sの範囲であることがより好ましい。なお、前記120℃における溶融粘度は、コーンプレート粘度計(ICI製、20Pコーン)で測定した値を示す。
【0046】
前記ウレタンプレポリマー(A)の軟化点としては、成型性をより一層向上できる点から、30〜120℃の範囲内であることが好ましい。なお、前記軟化点とは、ウレタンプレポリマー(A)の温度を段階的に上昇させた場合に、熱流動し始め凝集力を失う温度をいう。また、前記ウレタンプレポリマーの軟化点は、JISK5902:2006に準拠した環球法により求められた値を示す。
【0047】
前記加水分解性シリル基を有するウレタン化合物(B)は、内部硬化性に優れる湿気硬化型ウレタンホットメルト樹脂組成物を得るうえで必須の成分である。前記ウレタン化合物(B)は、ポリオールとポリイソシネートとの反応により得られるウレタン結合、及び、加水分解性シリル基を有するものであり、その他の反応性基を有しないものである。
【0048】
前記ポリオールとしては、前記ウレタンプレポリマー(A)の原料として用いることができるポリオール(x)と同様のものを用いることができる。また前記ポリイソシアネートとしては、前記ウレタンプレポリマー(A)の原料として用いることができるポリイソシアネート(y)と同様のものを用いることができる。
【0049】
前記ウレタン化合物(B)としては、化合物の親水性を高め、湿気を成形品内部まで浸透させやすく、内部硬化性をより一層向上できる点から、ポリエーテルポリオール残基を有するものを用いることが好ましい。
【0050】
また、前記ウレタン化合物(B)としては、内部硬化性をより一層向上できる点から、ヘキサメチレンジイソシアネート残基を有するものを用いることが好ましい。
【0051】
前記加水分解性シリル基としては、例えば、トリメトキシγ−プロピルシリル基、ジメトキシγ−プロピルシリル基等が挙げられる。
【0052】
前記ウレタン化合物(B)の粘度としては、内部硬化性をより一層向上できる点から、5,000〜50,000mPa・sの範囲であることが好ましく、6,000〜30,000の範囲がより好ましい。なお、前記ウレタン化合物(B)の粘度は25℃でB型粘度計(回転数;12rpm)にて測定した値を示す。
【0053】
前記ウレタン化合物(B)としては、「VORASIL602」、「VORASIL604」(ダウ・ケミカル社製)等を市販品として入手することができる。
【0054】
前記ウレタン化合物(B)の含有量としては、内部硬化性をより一層向上できる点から、前記ウレタンプレポリマー(A)100質量部に対して0.5〜50質量部の範囲であることが好ましく、1〜24質量部の範囲がより好ましい。
【0055】
本発明の湿気硬化型ウレタンホットメルト樹脂組成物は、前記ウレタンプレポリマー(A)、及び、前記ウレタン化合物(B)を必須成分として含有するものであるが、必要に応じてその他の添加剤を含有してもよい。
【0056】
前記その他の添加剤としては、例えば、シランカップリング剤(C)、アミン化合物(D)、酸化防止剤、粘着付与剤、可塑剤、安定剤、充填材、染料、顔料、蛍光増白剤、シランカップリング剤、ワックス等を用いることができる。これらの添加剤は単独で用いても2種以上を併用してもよい。これらの中でも、内部硬化性をより一層向上できる点から、シランカップリング剤(C)、アミン化合物(D)を含有することが好ましい。
【0057】
前記シランカップリング剤(C)は反応性基を有するものであり、例えば、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルメチルジメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルメチルジエトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)プロピルトリメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)プロピルメチルジメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)プロピルトリエトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)プロピルメチルジエトキシシラン3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン等のエポキシ基を有するシランカップリング剤;γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン等のメルカプト基を有するシランカップリング剤;ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(βメトキシエトキシ)シラン、γ−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリエトキシラン等のビニル基を有するシランカップリング剤などを用いることができる。これらのシランカップリング剤は単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0058】
これらの中でも、内部硬化性をより一層向上できる点から、エポキシ基を有するシランカップリング剤、メルカプト基を有するシランカップリング剤を用いることが好ましく、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシランを用いることがより好ましい。
【0059】
前記シランカップリング剤(C)を用いる場合の使用量としては、内部硬化性をより一層向上できる点から、前記ウレタンプレポリマー(A)100質量部に対して、0.05〜2質量部の範囲であることが好ましい。
【0060】
前記3級アミン化合物(D)としては、例えば、トリエチルアミン、N,N−ジメチルシクロヘキシルアミン、ペンタメチルジエチレントリアミン、セバシン酸ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)等の脂肪族3級アミン化合物;ピリジン、メチルピリジン、ベンジルジメチルアミン、N−メチルピペリジン、N,N’−エンドエチレンピペラジン、N,N’−ジメチルピペラジン、ジメチルアニリン、ジメチルパラトルイジン等の芳香族3級アミン化合物などを用いることができる。これらの化合物は単独で用いても2種以上を併用してもよい。これらの中でも、内部硬化性をより一層向上できる点から、脂肪族3級アミン化合物を用いることが好ましい。
【0061】
前記3級アミン化合物(D)を用いる場合の使用量としては、内部硬化性をより一層向上できる点から、前記ウレタンプレポリマー(A)100質量部に対して、0.05〜5質量部の範囲であることが好ましい。
【0062】
次に、本発明の湿気硬化型ウレタンホットメルト樹脂組成物を用いて成型品を得る方法について説明する。
【0063】
本発明の湿気硬化型ウレタンホットメルト樹脂組成物の加工温度は、前記樹脂組成物の少なくとも融点以上であり、好ましくは80〜130℃の範囲、より好ましくは100〜120℃の範囲である。加工温度が融点より低い温度の場合には、成型作業上不具合が生じたり、作業効率が低下したりして、好ましくない。また、加工温度が過剰に高い場合には、高熱による樹脂組成物の変質、分解、ゲル化などが起こるおそれがあり、好ましくない。
【0064】
また、本発明の湿気硬化型ウレタンホットメルト樹脂組成物を成型加工に使用する場合には、その加工方法としては、例えば、射出成型機、押出成型機、アプリケーターなどの加工機器を使用してもよい。
【0065】
前記成型加工としては、例えば、射出成型法の場合、前記樹脂組成物を融点以上の温度で溶融させ、この溶融物を流動可能な状態で加圧しながら密閉金型中に射出し、前記金型中で冷却固化した成型品を金型から取り出し(脱型し)、次いで湿気(水)により硬化させる。なお、前記密閉金型中には、成型前の部品を接着用あるいは封止用の部材として挿入することも可能である。
【0066】
この場合の湿気(水)は、例えば、大気中に存在する水分であっても、噴霧、浸漬など適当な手段により強制的に供給される水分であってよい。
【0067】
予め部品を金型内にセットしておき、本発明の湿気硬化型ウレタンホットメルト樹脂組成物を流動可能な状態で前記金型内に注入させれば、従来の成型実績と比べて極めて短時間で結晶固化が完結して、部品と樹脂組成物が強固に接着した成型品(即ちホットメルトモールディング)を得ることができるので、生産性の大幅な向上に多大な効果がある。
【実施例】
【0068】
以下、実施例を用いて、本発明をより詳細に説明する。
【0069】
[実施例1]
温度計、撹拌機、不活性ガス導入口及び還流冷却器を備えた四口フラスコに、ポリテトラメチレングリコール(数平均分子量2,000)7質量部、ポリプロピレントリオール(数平均分子量3,000)7質量部、ポリエーテルポリオール−1(エチレンオキサイドとプロピレンオキサイドを8:92のモル比で反応させたもの、数平均分子量2,000)4質量部、結晶性ポリエステルポリオール(1,6−ヘキサンジオールと1,12−ドデカンジカルボン酸を反応させたもの、数平均分子量2,000、官能基数2)53質量部、芳香族ポリエステルポリオール(エチレングリコール、ネオペンチルグリコール、テレフタル酸及びイソフタル酸を反応させたもの、数平均分子量3,500、官能基数2)18質量部を仕込み、減圧条件下で水分含有率が0.05質量%以下となるまで脱水した。
次いで、容器内温度70℃に冷却後、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(以下、「MDI」と略記する。)12質量部を加え、100℃まで昇温して、加水分解性シリル基を有するウレタン化合物(ダウ・ケミカル社製「VORASIL602」、粘度(25℃)18,000〜24,000mPa・s)5質量部、シランカップリング剤(信越化学株式会社製「KBM−403」)0.2質量部、セバシン酸ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジルを1質量部加え、イソシアネート基含有率が一定となるまで約3時間反応させて、イソシアネート基を有するウレタンプレポリマー(A−1)を含有する湿気硬化型ウレタンホットメルト樹脂組成物を得た。
【0070】
[実施例2〜6、比較例1〜5]
用いるシラン修飾ウレタン化合物の種類及び/又は量を表1に示す通り変更した以外は実施例1と同様にして湿気硬化型ウレタンホットメルト樹脂組成物を得た。
【0071】
[成型性の評価方法]
実施例及び比較例で得られた湿気硬化型ウレタンホットメルト樹脂組成物を110℃に加熱溶融させ、23℃のアルミ製金型(直径50mm×3
tmmクローズ型)に6質量部注入した。注入した時点を基点として30秒後の成型品表面のJISA硬度を測定した。なお、JISA硬度測定は、JISK6253:2012に準拠した。
なお、前記JISA硬度が20以上である場合は、樹脂組成物注入後30秒経過後には所望の硬度を有するため、金型からの脱型速度を早くすることができ、成型性が良好であることを示している。従って、かかる場合には「T」と評価した。
また、前記JISA硬度が20未満である場合には「F」と評価した。
【0072】
[脱型性の評価方法]
実施例及び比較例で得られた湿気硬化型ウレタンホットメルト樹脂組成物を110℃に加熱溶融させ、23℃のアルミ製金型(縦10cm、横10cm、厚さ3mm)に注入し、樹脂組成物を硬化させ成型品を得た。該成型品を脱型後、クラックの有無を目視で確認し、以下のように評価した。
「T」:クラックがない。
「F」:クラックが一部でもある。
【0073】
[内部硬化性の評価方法]
実施例及び比較例で得られた湿気硬化型ウレタンホットメルト樹脂組成物を110℃に加熱溶融させ、23℃のアルミ製金型(縦10cm、横10cm、厚さ3mm)に注入した。注入後、23℃、湿度50%の条件下で3日間放置後の成型品を80℃、湿度95%の条件下で100時間放置し、内部硬化性を以下のように評価した。
「T」:変形無し 「F」:変形有り
【0074】
【表1】
【0075】
表1中の略語について説明する。
「VORASIL604」;ダウ・ケミカル社製シラン修飾ウレタン化合物(粘度(25℃)8,000〜14,000mPa・s)
【0076】
本発明の湿気硬化型ウレタンホットメルト樹脂組成物である実施例1〜4のものは、内部硬化性、脱型性及び成型性に優れることがわかった。
【0077】
一方、比較例1は、加水分解性シリル基を有するウレタン化合物(B)を含有しない態様であるが、内部硬化性が不良であった。