(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6249236
(24)【登録日】2017年12月1日
(45)【発行日】2017年12月20日
(54)【発明の名称】フォトリソグラフィマスクの画像を相関させるための装置及び方法
(51)【国際特許分類】
G03F 1/86 20120101AFI20171211BHJP
G03F 1/74 20120101ALI20171211BHJP
H01J 37/28 20060101ALI20171211BHJP
G01Q 30/04 20100101ALI20171211BHJP
G01Q 30/02 20100101ALI20171211BHJP
【FI】
G03F1/86
G03F1/74
H01J37/28 X
H01J37/28 B
G01Q30/04
G01Q30/02
【請求項の数】24
【外国語出願】
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2014-252222(P2014-252222)
(22)【出願日】2014年12月12日
(65)【公開番号】特開2015-129928(P2015-129928A)
(43)【公開日】2015年7月16日
【審査請求日】2015年2月18日
(31)【優先権主張番号】10 2013 225 936.0
(32)【優先日】2013年12月13日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】503263355
【氏名又は名称】カール・ツァイス・エスエムティー・ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100092093
【弁理士】
【氏名又は名称】辻居 幸一
(74)【代理人】
【識別番号】100082005
【弁理士】
【氏名又は名称】熊倉 禎男
(74)【代理人】
【識別番号】100067013
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 文昭
(74)【代理人】
【識別番号】100086771
【弁理士】
【氏名又は名称】西島 孝喜
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100109335
【弁理士】
【氏名又は名称】上杉 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120525
【弁理士】
【氏名又は名称】近藤 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100158469
【弁理士】
【氏名又は名称】大浦 博司
(72)【発明者】
【氏名】ディーター ウェーバー
(72)【発明者】
【氏名】マルクス ヴァイブリンガー
【審査官】
新井 重雄
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許第05214282(US,A)
【文献】
特開2011−017705(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2005/0226494(US,A1)
【文献】
国際公開第2013/010976(WO,A2)
【文献】
特開平04−034824(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03F 1/86
G01Q 30/02
G01Q 30/04
G03F 1/74
H01J 37/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも部分的に重なるフォトリソグラフィマスク(200、300、510)の少なくとも2つの画像(500、600、650)を相関させるための装置(400)であって、
前記少なくとも2つの画像(500、600、650)を前記相関させるための前記フォトリソグラフィマスク(200、300、510)の少なくとも1つの構造要素(220、390、520)の前記少なくとも2つの画像に存在する少なくとも1つのランダム変動(540、550、560、570))を使用するために与えられた相関ユニット(485)、
を含み、
前記少なくとも2つの画像(500、600、650)の前記少なくとも部分的な重なりは、最小画像の面積の≧20%の少なくとも重なった領域を含む
ことを特徴とする装置(400)。
【請求項2】
前記少なくとも2つの画像(500、600、650)のうちの少なくとも1つの画像(500)が、粒子顕微鏡(420)によって記録されることを特徴とする請求項1に記載の装置(400)。
【請求項3】
前記粒子顕微鏡(420)は、前記フォトリソグラフィマスク(200、300、510)の撮像のために電子及び/又はイオン及び/又は光子を使用することを特徴とする請求項2に記載の装置(400)。
【請求項4】
前記少なくとも2つの画像(500、600、650)のうちの少なくとも1つの画像(600)が、走査プローブ顕微鏡(440)によって記録されることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の装置(400)。
【請求項5】
前記走査プローブ顕微鏡(440)は、原子間力顕微鏡及び/又は走査トンネル顕微鏡及び/又は磁気力顕微鏡及び/又は近接場走査光学顕微鏡及び/又は近接場走査音響顕微鏡及び/又は走査型静電容量顕微鏡を含むことを特徴とする請求項4に記載の装置(400)。
【請求項6】
前記相関ユニット(485)は、同じ粒子顕微鏡(420)又は走査プローブ顕微鏡(440)によって時間的にシフトされて記録された少なくとも2つの画像(500、600)を相関させるように与えられることを特徴とする請求項1に記載の装置(400)。
【請求項7】
前記少なくとも2つの画像(500、600、650)の前記少なくとも部分的な重なりは、最小画像の面積の≧40%、好ましくは≧60%、最も好ましくは≧80%の少なくとも重なった領域を含むことを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の装置(400)。
【請求項8】
前記少なくとも1つの構造要素(220、390、520)の前記少なくとも1つのランダム変動(540、550、560、570)は、少なくとも1つの周期的構造要素(220、390、520)のランダム偏差を含むことを特徴とする請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の装置(400)。
【請求項9】
前記少なくとも1つのランダム変動(540、550、560、570)は、前記少なくとも1つの構造要素(220、390、520)の表面粗度を含むことを特徴とする請求項1から請求項8のいずれか1項に記載の装置(400)。
【請求項10】
前記表面粗度は、前記少なくとも1つの構造要素(220、390、520)のエッジ粗さを含むことを特徴とする請求項1から請求項9のいずれか1項に記載の装置(400)。
【請求項11】
前記少なくとも1つのランダム変動(540、550、560、570)は、前記少なくとも1つの構造要素(220、390、520)の粒状構造(525)を含むことを特徴とする請求項1から請求項10のいずれか1項に記載の装置(400)。
【請求項12】
前記相関ユニット(485)は、前記少なくとも2つの画像(500、600、650)を互いに変換する変換(990)を決定するために与えられることを特徴とする請求項1から請求項11のいずれか1項に記載の装置(400)。
【請求項13】
前記相関ユニット(485)は、前記変換(990)を2段処理で、すなわち、前記少なくとも1つの構造要素(220、390、520)の前記少なくとも1つのランダム変動(540、550、560、570)を使用することによる第1の段階とピクセル毎方式の第2の段階とにおいて決定するために与えられることを特徴とする請求項12に記載の装置(400)。
【請求項14】
前記相関ユニット(485)は、更に、前記実行された相関の品質ファクタを決定するために与えられることを特徴とする請求項1から請求項13のいずれか1項に記載の装置(400)。
【請求項15】
前記相関ユニット(485)は、前記少なくとも2つの画像(500、600)の少なくとも第1のもの(500又は600)から該少なくとも2つの画像(500、600)の第2のもの(500又は600)の模擬画像(650)を発生させるために与えられ、
前記第2のもの(500又は600)の模擬画像(650)は、前記第1及び第2の画像(500、600)を前記相関させるために使用される、
ことを特徴とする請求項1から請求項14のいずれか1項に記載の装置(400)。
【請求項16】
前記少なくとも2つの画像(500、600、650)のうちの少なくとも1つの画像(600)が、走査プローブ顕微鏡(440)によって記録され、前記相関ユニット(485)は、前記走査プローブ顕微鏡(440)によって記録された少なくとも1つの画像(600)から粒子顕微鏡(420)の少なくとも1つの模擬画像(650)を決定するために与えられることを特徴とする請求項15に記載の装置(400)。
【請求項17】
前記少なくとも2つの画像(500、600、650)のうちの少なくとも1つの画像(500)が、粒子顕微鏡(420)によって記録され、前記相関ユニット(485)は、前記粒子顕微鏡(420)の少なくとも1つの模擬画像(650)と該粒子顕微鏡(420)によって記録された少なくとも1つの画像(500)とを相関させるために与えられることを特徴とする請求項16に記載の装置(400)。
【請求項18】
前記少なくとも2つの画像(500、600、650)のうちの少なくとも1つの画像(500)が、粒子顕微鏡(420)によって記録され、前記相関ユニット(485)は、前記粒子顕微鏡(420)によって記録された少なくとも1つの画像から走査プローブ顕微鏡(440)の少なくとも1つの模擬画像を決定するために与えられることを特徴とする請求項15に記載の装置(400)。
【請求項19】
前記少なくとも2つの画像(500、600、650)のうちの少なくとも1つの画像(600)が、走査プローブ顕微鏡(440)によって記録され、前記相関ユニット(485)は、前記走査プローブ顕微鏡(440)の少なくとも1つの模擬画像と該走査プローブ顕微鏡(440)を用いて記録された少なくとも1つの画像(600)とを相関させるために与えられることを特徴とする請求項18に記載の装置(400)。
【請求項20】
前記少なくとも2つの画像(500、600、650)うちの少なくとも1つに存在する前記フォトリソグラフィマスク(200、300、510)の少なくとも1つの欠陥(580)を補正するための手段を更に含むことを特徴とする請求項1から請求項19のいずれか1項に記載の装置(400)。
【請求項21】
少なくとも部分的に重なるフォトリソグラフィマスク(200、300、510)の少なくとも2つの画像(500、600、650)を相関させる方法であって、
前記少なくとも2つの画像(500、600、650)を前記フォトリソグラフィマスク(200、300、510)の少なくとも1つの構造要素(220、390、520)の該少なくとも2つの画像(500、600、650)に存在する少なくとも1つのランダム変動(540、550、560、570)を使用して相関させる段階、
を含み、
前記少なくとも2つの画像(500、600、650)の前記少なくとも部分的な重なりは、最小画像の面積の≧20%の少なくとも重なった領域を含む
ことを特徴とする方法。
【請求項22】
更に請求項1から請求項20のいずれか1項に記載の装置を利用することを特徴とする請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記少なくとも2つの画像(500、600、650)のうちの少なくとも1つに存在する前記フォトリソグラフィマスク(200、300、510)の少なくとも1つの欠陥(580)を補正する段階を更に含むことを特徴とする請求項21又は請求項22のいずれか1項に記載の方法。
【請求項24】
コンピュータプログラムであって、
前記コンピュータプログラムがコンピュータ(480)によって実行された時に請求項21から請求項23に記載の方法の段階を実施する命令、
を有することを特徴とするコンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フォトリソグラフィマスクの画像を相関させるための装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体産業における増大する集積密度(ムーアの法則)の結果として、フォトリソグラフィマスクは、ウェーハの上に益々小さい構造を投影しなければならなくなっている。増大する集積密度に向うこの傾向は、取りわけ、リソグラフィデバイスの露光波長を益々小さい波長にシフトすることによって対処される。現在、リソグラフィデバイスにおいて、ArF(フッ化アルゴン)エキシマレーザが、約193nmの波長で放出する光源として多くの場合に使用されている。
【0003】
現在、EUV(極紫外線)波長範囲(10nmから15nmの範囲)で電磁波照射線を使用するリソグラフィ系が開発されている。これらのEUVリソグラフィ系は、好ましくは反射性フォトマスクを含む反射光学要素を使用する完全に新しいビームラインの概念に基づいている。
【0004】
EUV範囲の小さい波長により、フォトマスクは、予め決められた表面の精度に関して極端な要件を満たす必要がある。1桁のナノメートル範囲のフォトリソグラフィEUVマスクの多層ミラー系における表面トポロジーの偏差は、EUVビーム内の反射強度の有意な変動を既に導いている。今日の及び特に将来のフォトリソグラフィマスクの製造に対する技術的問題、及びそれによって示唆される高額な費用により、予め決められた仕様を満たさないフォトマスクは、可能な時にはいつも修復される。
【0005】
典型的なフォトマスクは、一様で周期的に繰り返すパターンを有する多くの大きい領域を含むことができる。
図1は、マスク100の基板120上に配置された構造要素としての吸収トラック110の周期的な配置(「線及びスペース」)を有するフォトマスク100の区画を典型的な例として概略的に示している。フォトマスクの区画の2つの画像の周期的パターンとの一意的な相関は困難である。本出願の関連内では、用語フォトリソグラフィマスク、フォトマスク、及びマスクは、同義的に使用される。
【0006】
フォトマスク、特にEUVマスクに関するある一定の欠陥は、それらが十分なトポロジーコントラストを発生しないので走査電子顕微鏡の画像内に可視ではない。他方、原子間力顕微鏡の画像において、これらの欠陥は、例えば、1桁ナノメートル範囲の高さ又は深さを有する膨らみ又は窪みとして現れる。そのような欠陥は、例えば、電子ビーム修復ツール、例えば、本出願人のMeRiT(登録商標)ツールによって修復することができる。しかし、このためには、適切な位置で修復するために、原子間力顕微鏡(AFM)及び走査電子顕微鏡(SEM)の画像を1桁ナノメートル範囲の精度で重ね合わせる必要がある。上述の問題により、これは深刻な困難に直面する。
【0007】
AFM並びにSEMの両方は、これらのデバイスが絶対マスク座標を用いて作動するように、周辺領域かつダイ間の全てのフォトマスク上に存在するマークを用いて較正することができる。しかし、個々のマーカーは、一般的に、これらがSEM又はAFMによって発生された画像又は画像区画に示されないような距離だけマスク上で互いから離間している。AFM及びSEMを用いて記録された2つの画像又は画像区画の重ね合わせの精度は、次に、修復ツールの顕微鏡台の移動の較正及び精度によって制限される。達成可能な精度は、SEMによって上述の欠陥を確実に修復することができるためには一般的に十分ではない。しかし、マスク上のマーカーによる較正の助けにより、マスクの画像又は画像区画が少なくとも部分的に重なることを保証することができる。
【0008】
2つの画像の精密位置合わせに対して、現在、3つの方法が存在しており、最初に、マーカーは、修復ツールを用いて仮定欠陥位置の回りに「盲目的に」位置決めすることができる。次に、これらのマーカーは、その後にAFMを用いて記録される画像で明瞭に可視である。修復のために、AFM走査及びSEM走査から発生された2つの画像は、次に、正確に重ね合わせることができる。この方法は、マーカーが間違った位置に潜在的に位置決めされる可能性があり、これによってフォトマスクが間違った位置で処理される場合があるという欠点を有する。更に、追加のマークつけ段階は、更なる時間を消費する。
【0009】
第2に、WO 2013/010976 A2は、3つの異なる測定デバイスを使用してフォトリソグラフィマスクの基板上の上述の欠陥を局限し、かつ欠陥の近くにマーカーを適用する方法を説明している。従って、この開示された方法は、一方では労働集約的であり、他方では、追加の処理段階で修復処理の終りに再度適用されたマーカーを取り除く必要がある場合がある。
【0010】
最後に、SEMによる欠陥位置の以前の走査は、「スキャンボックス」と呼ばれるものを残す場合があり、それは、次に、AFMによる欠陥位置のその後の走査において対応する画像に可視である。スキャンボックスは、電子ビームが撮像面上に吸収された有機分子を本質的に炭化し、従って、炭素を含有する恒久的生成物を堆積させる時に生成される。この方法は、スキャンボックスが望まないものであるという欠点を有する。これに加えて、それらは、SEMが揮発性有機化合物で汚染される場合にのみ生成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】WO 2013/010976 A2
【特許文献2】WO 2012/146647 A2
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、従って、少なくとも部分的に上述の欠点及び制限を回避するフォトリソグラフィマスクの2つ又はそれよりも多くの画像を相関させるための装置及び方法を提供する問題に基づいている。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の実施形態によって、この問題は、フォトリソグラフィマスクの少なくとも2つの画像を相関させるための装置によって解決される。実施形態において、少なくとも部分的に重なるフォトリソグラフィマスクの少なくとも2つの画像を相関させるための装置は、少なくとも2つの画像の相関のためのフォトリソグラフィマスクの少なくとも1つの構造要素の少なくとも2つの画像に存在する少なくとも1つのランダム変動を使用するために与えられる相関ユニットを含む。
【0014】
本発明の装置は、構造要素のランダム変動の形態でフォトマスク上に常に存在するマーカーを利用する。従って、本発明は、フォトマスクの区画の2つ又はそれよりも多くの画像を重ね合わせるためのマーカーを適用する必要はないという利点を有する。関連の処理段階は、従って、省略することができる。更に、フォトリソグラフィマスクの処理工程が終了した後に更に別の処理段階で適用されたマーカーをフォトマスクから再度取り除く必要もない。
【0015】
態様において、少なくとも2つの画像のうちの少なくとも1つの画像は、粒子顕微鏡によって記録される。更に別の態様によって、粒子顕微鏡は、フォトリソグラフィマスクの撮像のために電子及び/又はイオン及び/又は光子を使用する。
【0016】
現時点で、粒子顕微鏡は、好ましくは、ラスター化又は走査原理に基づいて作動し、現時点で、これらのデバイスは、必要な分解能を与える。
【0017】
用語「本質的に」は、本明細書並びに説明内の他の箇所で通常の測定誤差内のそれぞれの物理量の実験的決定を指定する。
【0018】
別の態様において、少なくとも2つの画像のうちの少なくとも1つの画像は、走査プローブ顕微鏡によって記録される。更に別の態様によって、走査プローブ顕微鏡は、原子間力顕微鏡及び/又は走査トンネル顕微鏡及び/又は磁気力顕微鏡及び/又は
近接場走査光学顕微鏡及び/又は
近接場走査音響顕微鏡及び/又は走査型静電容量顕微鏡を含む。
【0019】
好ましい態様によって、相関ユニットは、同じ粒子顕微鏡又は走査プローブ顕微鏡によって時間的にシフトされて記録された少なくとも2つの画像を相関させるように与えられる。
【0020】
粒子顕微鏡又は走査プローブ顕微鏡によって記録された状態でフォトマスクの区画の画像は、周期的又は非周期的時間間隔後にフォトマスク又は測定デバイスの撮像部分が時間と共に互いに関してシフトされたか否かを決定するために格納することができる。これは、例えば、熱ドリフトによるものである可能性がある。時間的にシフトされて記録され、かつ同じ測定デバイスを用いて記録されたフォトマスクの同じ区画の画像の助けにより、測定デバイスとフォトマスクの間の相対位置の緩やかな変化は、決定されてその後に補正することができる。
【0021】
第1及び第2の画像は、フォトリソグラフィマスクの完全に異なる区画を描写してはならない。しかし、2つ又はそれよりも多くの画像がフォトマスクの同じ区画を示す必要はない。説明する装置を使用するためには、画像が部分的重なりを含むことで十分である。更に、2つ又はそれよりも多くの画像が同じスケーリングを含む必要はない。更に、相関させるべき画像は、互いに対して回転させるか又は歪ませることができる。
【0022】
好ましくは、少なくとも2つの画像の少なくとも部分的重なりは、最小画像の面積の≧20%、好ましくは≧40%、より好ましくは≧60%、最も好ましくは≧80%の少なくとも重なった領域を含む。
【0023】
特に好ましい態様において、少なくとも1つの構造要素の少なくとも1つのランダム変動は、少なくとも1つの周期的構造要素のランダム偏差を含む。更に別の有益な態様によって、少なくとも1つのランダム変動は、少なくとも1つの構造要素の表面粗度を含む。更に別の好ましい態様によって、表面粗度は、少なくとも1つの構造要素のエッジ粗さを含む。更に別の有益な態様において、少なくとも1つのランダム変動は、少なくとも1つの構造要素の粒状構造を含む。
【0024】
フォトマスクに適用される構造要素のランダム変動は、好ましくは、画像に描写されたフォトマスクの区画の一意的な「指紋」を形成する。定められた装置は、これらの測定デバイスによって発生されるフォトマスクの区画の2つ又はそれよりも多くの画像が部分的に重なるように測定デバイスを位置合わせするためにフォトマスク上に存在するマーカーとしてランダム変動を使用する。上で定められた装置を使用するための要件は、相関させるべき画像が、フォトマスクの区画の「指紋」が互いに相関させるべき画像において明瞭に可視であるように、十分な解像度及び低ノイズを含むことである。現時点で利用可能な粒子顕微鏡及び走査プローブ顕微鏡は、容易にこれらの要件を満たすことができる。
【0025】
好ましくは、相関ユニットは、少なくとも2つの画像の相関に使用するための少なくとも1つの構造要素のエッジ粗さから少なくとも2つの画像の各々における少なくとも1つの特性点を決定するために与えられる。別の態様において、相関ユニットは、少なくとも2つの画像の相関に使用するための少なくとも1つの構造要素の粒状構造及び/又はエッジ粗さから少なくとも2つの画像の各々における少なくとも1つの特性点を決定するために与えられる。
【0026】
更に別の態様によって、少なくとも1つの特性点は、フォトリソグラフィマスクの少なくとも1つの構造要素のランダム窪み及び/又はランダム膨らみの頂点を含む。好ましくは、相関ユニットは、フォトリソグラフィマスクの少なくとも1つの予め決められた構造要素のフォトリソグラフィマスクの少なくとも1つの予め決められた構造要素の少なくとも画像との比較から少なくとも1つの特性点を決定するために与えられる。
【0027】
更に別の好ましい態様によって、相関ユニットは、少なくとも2つの画像を互いに変換する変換を決定するために与えられる。好ましくは、相関ユニットは、同等の画像座標点を使用して変換を実行するために与えられる。
【0028】
これに関連して、変換は、互いに対する2つの画像の平行移動を含むだけということはできない。そうではなく、変換はまた、第2の画像に対する第1の画像の回転及びスケーリングを含むことができる。
【0029】
更に別の有益な態様によって、相関ユニットは、少なくとも1つの構造要素の少なくとも1つのランダム変動を使用することによる第1の段階とピクセル毎方式の第2の段階とにおける2段処理において変換を決定するために与えられる。
【0030】
好ましくは、互いに対する2つ又はそれよりも多くの画像の位置合わせは、3段処理である。第1の段において、導入部に説明するように、粒子顕微鏡及び/又は走査プローブ顕微鏡が絶対マスク座標内で作動することができるように、フォトマスク上に存在するマーカーが使用される。このようにして、粒子顕微鏡によって記録されるべきフォトマスクの区画が決定され、従って、同じく走査プローブ顕微鏡によって走査されるべき区画が決定される。2つの測定デバイスの画像は、いずれのマーカーも含む必要はないが、絶対マスク座標内で作動することにより、これらの測定デバイスによって発生された画像が少なくとも部分的に重なることが保証される。第2の段において、2つ(又はそれよりも多く)の画像は、フォトマスクの構造要素のランダム変動の助けによって互いに位置合わせされる。最後に、第3の段階において、2つの画像の最適一致のための変換は、ピクセル毎方式の計算を使用して決定することができる。従って、定められた装置は、位置合わせにおける高精度と画像を互いに位置合わせしている変換の迅速決定とを同時に組み合わせる。
【0031】
更に別の態様によって、相関ユニットは、実行される相関の品質ファクタを決定するために与えられる。品質ファクタは、画像の位置合わせが成功したか否かを説明する。これが真であるためには、品質ファクタは、予め決められた閾値を超える必要がある。このようにして、画像の不正確な重ね合わせの場合に、間違った位置での処理を通じたフォトマスクの損傷が回避される。
【0032】
好ましくは、相関ユニットは、少なくとも2つの画像の少なくとも第1のものから少なくとも2つの画像の第2のもののシミュレーションを発生させるために与えられ、模擬画像は、第1及び第2の画像の相関に使用される。
【0033】
更に別の態様によって、相関ユニットは、走査プローブ顕微鏡によって記録された少なくとも1つの画像から粒子顕微鏡の少なくとも1つの模擬画像を決定するために与えられる。本発明の更に別の態様によって、相関ユニットは、粒子顕微鏡の少なくとも1つの模擬画像と粒子顕微鏡によって記録された少なくとも1つの画像とを相関させるために与えられる。
【0034】
これに代えて又はこれに加えて、相関ユニットは、粒子顕微鏡によって記録された少なくとも1つの画像から走査プローブ顕微鏡の少なくとも1つの模擬画像を決定するために与えられる。本発明の更に別の態様によって、相関ユニットは、走査プローブ顕微鏡の少なくとも1つの模擬画像と走査プローブ顕微鏡を用いて記録された少なくとも1つの画像とを相関させるために与えられる。
【0035】
好ましくは、装置は、少なくとも2つの画像うちの少なくとも1つに存在するフォトリソグラフィマスクの少なくとも1つの欠陥を補正するための手段を更に含む。
【0036】
定められた装置の特定の利点は、修復のために使用される顕微鏡タイプによっては欠陥が潜在的に可視にされない場合があるいう事実にもかかわらず、フォトマスクの欠陥の補正に対してそれを使用することができるということである。
【0037】
実施形態において、少なくとも部分的に重なるフォトリソグラフィマスクの少なくとも2つの画像を相関させる方法は、フォトリソグラフィマスクの少なくとも1つの構造要素の少なくとも2つの画像に存在する少なくとも1つのランダム変動を使用して少なくとも2つの画像を相関させる段階を含む。
【0038】
更に別の態様によって、本方法は、上述の態様のうちの1つによる装置を利用する。
【0039】
更に、本方法の別の好ましい態様は、少なくとも2つの画像のうちの少なくとも1つに存在するフォトリソグラフィマスクの少なくとも1つの欠陥を補正する段階を含む。
【0040】
最後に、本発明は、コンピュータプログラムに関し、その命令は、コンピュータプログラムがコンピュータによって実行された時に上述の態様による方法の段階を実施する。
【0041】
以下の詳細説明において、本発明の現在好ましい実施形態を以下の図を参照して説明する。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【
図1】吸収及び反射するか又は吸収及び透過する線状領域の周期的シーケンスを有する理想的リソグラフィマスクの区画を示す概略的上面図である。
【
図2】吸収構造要素を有する透過フォトマスクを通した切断面を概略的に示す図である。
【
図3】吸収構造要素を有する反射フォトマスクを通した概略切断面を示す図である。
【
図4】走査電子顕微鏡、原子間力顕微鏡、及び相関ユニットを含む装置の一部の不可欠な構成要素を通した概略切断面を表す図である。
【
図5】吸収及び反射するか又は透明な線状領域を有するマスクの実際の区画の第1の画像を概略的に示す図である。
【
図6】
図5のマスクの実際の区画の第2の画像を概略的に示す図である。
【
図7】
図5及び
図6の画像の第1の位置合わせを概略的に表す図である。
【
図8】少なくとも2つの画像を相関させるための定められた装置を使用する
図5及び
図6に示す画像の位置合わせ又は重ね合わせを概略的に示す図である。
【
図9】画像5及び6に示すフォトマスクの構造要素の粒状構造を相関させた後の
図5及び
図6の画像の完全な位置合わせを示す図である。
【
図10】フォトリソグラフィマスクの欠陥を修復する方法の流れ図である。
【発明を実施するための形態】
【0043】
フォトリソグラフィマスクの少なくとも2つの画像を相関させるための装置の並びに本発明の方法の好ましい実施形態を説明する。これらは、フォトマスクの重ね合わせを使用して例示的に説明される。本発明の装置及び方法は、しかし、電磁スペクトルの紫外線又は極紫外線波長に限定されない。
【0044】
図1は、理想的リソグラフィマスク110の区画100の上面図である。区画100は、吸収線状構造要素120の周期的シーケンスを例示的に示し、その構造要素120は、フォトマスク110の基板130の上に配置される(線及びスペース)。フォトマスク110の区画100の「線及びスペース」構造は、2次元の平行移動の下で対称である。基板130が透明である場合に、区画100は、透過フォトマスク110を示している。
【0045】
図2は、透過フォトリソグラフィマスク200の断面図を概略的に表している。フォトマスク又はマスク200は基板210を含み、基板210は、第1又は前面230及び第2又は背面240を含む。基板210は、ウェーハ上でフォトレジストを露出するのに使用される波長に対して本質的に透明である必要がある。露光波長は、電磁スペクトルの深紫外線(DUV)スペクトル範囲、特に193nmの領域内にあるとすることができる。基板材料は、一般的に石英を含む。基板は、典型的に、152mm×152mmの横方向寸法及び基本的に6.35mmの厚み又は高さを含む。マスク200の基板210は、その前面230上に、典型的にクロムから又は元素タンタル(Ta)、モリブデン(Mo)、シリコン(Si)、及び酸素(O)の化合物から製造される構造要素220を有する。
【0046】
構造要素220は、これらが、半導体要素が生成される予め決められた構造又はパターンを生成するようにフォトレジストの上に投影される。構造要素220を担持するフォトリソグラフィマスク200の基板210の一部は、マスク200の活性区域250と呼ばれるのに対して、構造要素220を含まない周辺部分は、非活性区域260と呼ばれる。レーザビーム270は、基板210の第2又は背面240から露光波長でマスク200の基板210を照射する。
【0047】
図1のフォトマスク110の基板130が透明でなくて入射光を反射する場合に、
図1の区画100は、反射フォトマスク110を表している。
図3は、電磁スペクトルの極紫外線(EUV)スペクトル範囲でその後に使用するための特に約13.5nmの露光波長のための反射フォトリソグラフィマスク300の概略断面図である。
図2のフォトマスク200と比べて、マスク300は、多層ミラー構造355に基づく反射光学要素である。マスク300の多層ミラー構造355は、例えば、石英ガラス基板のような適切な基板310の前側基板面330上に堆積される。異なる透明誘電材料のガラス材料又は半導体材料も、ZERODUR(登録商標)、ULE(登録商標)、又はCLEARCERAM(登録商標)のようなEUVマスクのための基板として使用することができる。
【0048】
多層ミラー系355は、約40対の交互するモリブデン(Mo)350及びシリコン(Si)層360を含む。各Mo層350の厚みは、合計4.15nmになり、Si層360は、2.80nm厚である。多層構造355を保護するために、シリコン、ルテニウム、又は酸化チタン(TiO
2)からのカバー層370が構造上に配置される。多層ミラー構造355において、Mo層は、散乱層として機能するのに対して、シリコン層360は、分離層として機能する。散乱層に関して、例えば、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、タングステン(W)、レニウム(Rh)、又はイリジウム(Ir)のような高原子番号の他の元素をMoの代わりに使用することができる。多層構造355に入射するEUV光子319の少なくともより多くの部分は、反射される放射線397として多層構造355によって反射される。
【0049】
カバー層370上では、EUVマスク300は、バッファ構造380を含む。バッファ層380に可能な材料は、例えば、石英(SiO
2)、ルテニウム(Ru)、クロム(Cr)、及び/又は窒化クロム(CrN)である。吸収構造要素390は、EUV範囲の光子に対して大きい吸光係数を含む材料を含む。そのような材料の例は、Cr、窒化チタン(TiN)、及び/又は窒化タンタル(TaN)である。領域における約15nmの厚みは、本質的に構造要素390に入射する全てのEUV光子295を吸収するために既に十分である。これに加えて、光子395が構造要素390によって反射されないことを保証する反射防止層(AR層)を吸収構造要素390(
図3には示さず)上に配置することができる。AR層のための材料は、例えば、酸窒化タンタル(TaON)である。
【0050】
図4は、真空チャンバ402において互いの隣に配置された走査粒子顕微鏡420と走査プローブ顕微鏡440とを含む顕微鏡システム400の一部の構成要素を概略的に示している。走査粒子顕微鏡420は、粒子キャノン425及びコラム430を含む。粒子キャノン425は、粒子ビーム435を生成し、コラム430は、粒子ビーム435にフォーカスし、それをサンプル405の上、例えば、フォトマスク200、300の区画の上に向ける。
【0051】
サンプル405は、サンプル台415の上に配置される。矢印によって
図4に記号で表すように、サンプル台415は、走査粒子顕微鏡420及び走査プローブ顕微鏡440に対して3つの空間次元内で移動することができる。代替実施形態において、サンプル台415は、移動できない場合があり、走査粒子顕微鏡420及び走査プローブ顕微鏡440は、サンプル台415に対して一緒に移動する。解析デバイス420及び440とサンプル台415との間の相対移動を任意的に配分することが更に可能である。一例として、サンプル台415は、粒子ビーム435に垂直な平面内で移動することができ、走査粒子顕微鏡420及び走査プローブ顕微鏡440は、ビーム方向に移動することができる。移動は、1つ又はそれよりも多くの微細平行移動要素(
図4には示さず)を用いて実施することができる。3次元移動機能を有するサンプル台415、並びに解析デバイス420及び440を提供することも更に可能である。
【0052】
粒子ビーム435は、第1の測定点490でサンプル405に衝突する。サンプル405は、あらゆる任意的な微細構造化構成要素又は部分とすることができる。従って、サンプル405は、例えば、透過(
図2を参照)又は反射フォトマスク(
図3を参照)を含むことができる。
【0053】
図4に示す顕微鏡システム400の実施形態において、走査粒子顕微鏡420は、走査電子顕微鏡(SEM)を含む。粒子ビーム435として電子ビームを使用することで、ビームが本質的にサンプル405、例えば、マスク200、300に損傷を与えることができないという利点を有する。
図4に示す電子キャノン430とサンプル405の間の小さい作動距離により、電子ビーム435は、第1の測定点490で10nm未満、好ましくは、3nm未満、最も好ましくは、1nm未満の直径を有する点にフォーカスさせることができる。
【0054】
走査電子顕微鏡の代わりに、顕微鏡システム400は、透過フォトマスク200のための走査粒子顕微鏡420として走査型透過電子顕微鏡(STEM)を使用することができる。更に、走査粒子顕微鏡420はまた、電子の代わりにイオンビームを使用することができ、すなわち、この場合に、走査粒子顕微鏡420は、FIB(集束イオンビーム)デバイスを含む。更に、走査粒子顕微鏡420は、フォトマスク200、300の検査のために短い波長の光子を使用することができる。使用する光子の波長は、非常に小さくする必要があるので、光子が生成する画像は、ナノメートルの範囲で構造を解像することができる。この波長の範囲の光子の生成に対して、例えば、シンクロトロンを使用することができる。
【0055】
走査プローブ顕微鏡440は、
図4に示す例においては原子間力顕微鏡(AFM)である。AFMの代わりに、走査トンネル顕微鏡も使用することができる。例えば、フォトマスク200、300のようなサンプル405を検査するために、トンネル電流(走査トンネル顕微鏡)及びファンデルワールス力(力顕微鏡)以外に多くの更に別の物理量を使用することができる。磁気力顕微鏡は、例えば、サンプル405とプローブ又はその先端との間の磁気相互作用を利用する。サンプル405の検査のために走査音響顕微鏡は
フォノンを使用し、
近接場走査光学顕微鏡は光子を使用する。異なるタイプの走査プローブ顕微鏡のこの羅列は、例示に過ぎず決して完全ではない。
【0056】
図4に示す例示的な顕微鏡システム400において、AFM440は、スイベル445(
図4には示さず)の助けにより電子キャノン430のマウントに取りつけられる。スイベル445は、AFM440を停止位置(
図4には示さず)から作動位置にもたらす。更に、スイベル445は、プローブを替えるための位置にAFM440をもたらすことができる。
【0057】
マウント450は、AFM440の測定ヘッドを電子ビーム435がフォトマスク200、300に衝突する第1の測定点490の近くに案内する。マウント450は、検査すべきサンプル405に対してAFM440の位置を調節するために1つ又はそれよりも多くの平行移動要素(
図4には示さず)を更に含むことができる。
【0058】
AFM440の圧電アクチュエータ455の上端は、マウント450と接続される。圧電アクチュエータ455の他端は、AFM440のプローブを担持する。圧電アクチュエータ455は、てこ作用アーム460を含み、当業分野で一般的であるように以下では片持ち梁460と呼ぶ。片持ち梁460は、その自由端に測定先端465を担持する。測定先端465は、第2の測定点495でサンプル405又はフォトマスク200、300との相互作用に入る。
【0059】
コンピュータシステム480は、フォトマスク200、300の区画の表面の2次元又は3次元輪郭を決定するために、コンピュータシステム480がフォトマスク200、300にわたって走査するように圧電アクチュエータ460に信号を出力することができる。
【0060】
検出器470は、第1の測定点490で電子ビーム435によって生成された2次電子及び/又はサンプル405によって後方散乱した電子を電子測定信号に変換し、その信号をコンピュータシステム480に転送する。検出器470は、これらのエネルギ及び/又は空間角度(
図4には示さず)において電子を区別するためのフィルタ又はフィルタシステムを含むことができる。
【0061】
顕微鏡システム400は、第1の測定点490で入射電子ビーム435によって生成される光子の検出のための検出器475を更に含むことができる。検出器475は、例えば、生成された光子のエネルギスペクトルをスペクトル的に解像し、かつフォトマスク200、300の面に近い面又は層の組成物に関する推測を下すことを可能にすることができる。SEM420の作動領域(第1の測定点490)及びAFM440の作動領域(第2の測定点495)の空間的分離は、第2の検出器475の設置のための空間を与える。検出された電子及び光子に含まれる情報の組合せにより、単に1つの検出器470又は475の測定信号と比べて、フォトマスク200、300又はその材料組成のより完全な像を提供する。
【0062】
走査粒子顕微鏡420の第1の測定点490から走査プローブ顕微鏡440の第2の測定点495に到達するために、サンプル台415は、
図4に矢印によって示すように両方の点490及び495間の距離だけマスク200、300を平行移動させる。代替実施形態において、サンプル台415は、空間的に固定することができ、走査粒子顕微鏡420及び走査プローブ顕微鏡440は、2つの測定点490及び495間の距離だけ移動する。サンプル台415と2つの走査顕微鏡420及び440の複合移動も考えられる。
【0063】
これに加えて、例示的な顕微鏡システム400は、イオン源477を含み、イオン源477は、第1の測定点490の領域に低エネルギイオンを提供し、一部の事例では、電子ビーム435によるフォトマスク200、300の面の帯電、すなわち、入射電子ビーム435の空間分解能の低下を回避する。
【0064】
EUV波長範囲に対する将来のフォトマスクに対して、走査粒子顕微鏡420及び走査プローブ顕微鏡440によって生成された画像の解像度は、1桁ナノメートル範囲又はそれ未満にしなければならない。<10nmのビーム直径を有する走査粒子顕微鏡420は、それを達成することができる。走査プローブ顕微鏡440の例としてのAFMも、サブナノメートル範囲で構造を解像することができる。生成された画像のSN比は、5dB又はそれよりも高くしなければならない。
【0065】
コンピュータシステム480は、検出器470及び475の測定信号を解析し、これらから写真又は画像を生成する評価ユニット482を含み、評価ユニット482は、ディスプレイ487上に示されている。評価ユニット482はまた、AFM440の測定信号を処理し、ディスプレイ487上にそのグラフィック表現を提供する。コンピュータシステム480は、SEM420の電子キャノン425及びコラム430を制御することができる。コンピュータシステム480はまた、AFM440を制御することができる。電気信号を圧電アクチュエータ460の接続部に印加することにより、コンピュータシステム480はまた、その電気信号をフォトマスク200、300にわたってx及び/又はy方向に走査することができる。
【0066】
コンピュータシステム480は、マイクロプロセッサ、CPU、PC、及び/又はワークステーションとすることができる。コンピュータシステム480は、顕微鏡システム400に組み込むことができ、又はコンピュータシステム480は、個別のデバイスとすることができる。コンピュータシステム480はまた、例えば、キーボード、マウス、及び/又はプリンタのような入力及び/又は出力デバイスを含むことができる。コンピュータシステム480は、ハードウエア、ソフトウエア、ファームウエア、又はその組合せとして提供することができる。
【0067】
更に、コンピュータシステム480は、相関ユニット485を含む。相関ユニット485は、走査粒子顕微鏡420及び/又は走査プローブ顕微鏡440を使用して捕捉された画像データを互いに対して位置合わせすることができる。この目的のために、相関ユニット485は、検出器470及び/又は475においてAFM440の測定信号から発生された画像データを互いに関連付けるアルゴリズムを含む。現在好ましい実施形態において、相関ユニット485は、AFM440の画像データからの走査粒子顕微鏡420の模擬画像を含む。相関ユニット485は、次に、走査粒子顕微鏡420の模擬画像を走査粒子顕微鏡420から由来の画像データと比較する。このようにして、走査粒子顕微鏡420及び走査プローブ顕微鏡440の測定方法の異なる撮像特性が対処される。
【0068】
好ましい実施形態において、相関ユニット485のアルゴリズムは、フォトマスク200、300の区画の2つ又はそれよりも多くの画像の重ね合わせがどれだけ確実に行われているかを説明する品質ファクタを生成する。相関ユニット485によって使用するアルゴリズムは、指紋と比較するために又は顔認識のために使用することができるものに類似している。相関ユニット485によって実施する相関処理に関連する詳細は、以下の
図5から
図9の説明との関連で説明する。
【0069】
相関ユニット485は、ハードウエア、ソフトウエア、ファームウエア、又はハードウエア、ソフトウエア、及び/又はファームウエアからの組合せとして提供することができる。相関ユニット485は、コンピュータシステム480に組み込むことができ、又は相関ユニット485は、顕微鏡システム400内の個別のユニットとして提供することができる。相関ユニット485は、無線又は有線を通じてコンピュータシステム480の評価ユニット482から走査粒子顕微鏡420及び/又は走査プローブ顕微鏡440の画像データを取得し、これらの画像データの相関を実行し、次に、結果をモニタ上に表示し、又はディスプレイ487によって表示するために相関結果をコンピュータシステム480に転送して戻す完全に個別のユニット(
図4には示さず)として提供することも更に可能である。
【0070】
更に、顕微鏡システム400は、真空チャンバ402(
図4には示さず)内に真空を発生させてこれを維持するために1つ又はそれよりも多くのポンプシステムを含む。
【0071】
図4に示す顕微鏡システム400が、フォトマスク110の1つ又はそれよりも多くの欠陥を修復し、すなわち、修復ツールになることを可能にするために、顕微鏡システム400は、1つ又はそれよりも多くの処理ガスを提供することができることが必要である。このために、顕微鏡システム400は、それぞれの弁及びガス給送システム(同様に
図4には示さず)と共に1つ又はそれよりも多くのガス容器を提供することができることが必要である。そのような修復ツールは、ここで参照されるPCT出願WO 2012/146647 A2において本出願人によって説明されている。修復ツールは、電子ビーム435及び1つ又はそれよりも多くの処理ガスの影響下で化学反応を局所的に誘導することができ、これを用いてフォトマスク200、300は、材料除去又は材料堆積によって選択的かつ局所的に変化させることができる。
【0072】
以下において、相関ユニット485によって実施される相関処理の詳細を
図5から
図9の助けによって説明する。
図5は、実際のフォトマスク510の区画500を示している。フォトマスク510は、透過200(
図2を参照)又は反射フォトリソグラフィマスク300(
図3を参照)とすることができる。以下において、簡単にするために、マスク510並びに更に説明するマスクは、透過フォトマスク200であり、すなわち、マスク510の基板530は、化学線の光子に対して透明であると考えられる。
【0073】
図1の理想的フォトマスク110の区画100と同様に、
図5は、周期的「線及びスペース」配置の構造要素520を含むフォトマスク510の区画500を提示している。フォトマスク510の区画500は、走査電子顕微鏡420、例えば、高解像度の
図4の顕微鏡システム400のSEMを用いて記録されたものである。このようにして、構造要素520の材料の粒状構造525が現れる。
【0074】
図5は、
図1に示す理想的フォトマスク110の設計において考えられるものとは異なる実際のフォトマスク500の構造要素520のエッジが理想的な直線ではないことを更に示している。そうではなく、吸収構造要素520は、これらの理想的形状からのランダム偏差を含む。
図5の例において、これらは、窪み550並びに膨らみ540、560、及び570である。フォトマスクの区画500のランダム変動540、550、560、及び570は、フォトマスク510の区画500の特定の指紋を形成する。フォトマスク510の区画500のランダム変動540、550、560、及び570に対して、特性点545、555、565、及び575を決定することができる。特性点545、555、565、及び575、例えば、窪み及び膨らみ540、550、560、及び570の頂点を選択することができる。しかし、異なる方法によるランダム窪み及び膨らみ540、550、560、及び570から特性点を選択することができる。例えば、エッジの非摂動位置からの窪み550及び膨らみ540、560、及び570の一定の割合の最大偏差は、特性点として定義することができる。
【0075】
構造要素520の幅は、使用するマスク510のタイプに依存する。EUVマスクに対して、構造要素520、並びに中間に位置する吸収体材料のないストライプの幅は、60nmの範囲にある。現在の仕様が許容する構造要素520のエッジの変動は、<3nmである。
【0076】
好ましい実施形態において、フォトマスク510の区画500の特性点545、555、565、及び575は、
図1の理想的フォトマスク110に示すようにマスクの設計に基づいて決定される。
【0077】
特性点545、555、565、及び575は、フォトマスク510の区画500をフォトマスク510の他の区画又は画像と重ね合わせるためにフォトマスク510の区画500の既に存在するマーカーとして以下では使用される。
【0078】
フォトマスク510の区画500には、点線で
図5に示されている欠陥580が存在する。この欠陥580は、例えば、フォトマスク510の基板530の局所突起又は局所窪みである。しかし、欠陥580のトポロジーコントラストは、フォトマスク510の区画500のSEM420の画像で目立つか又は可視であるようにするには十分ではない。
【0079】
図6は、
図4の走査プローブ顕微鏡440で、すなわち、AFMを用いて記録されたフォトマスク510の区画600を示している。区画600は、
図5の区画500と50%を超えて重なる。AFM440の分解能は、区画600が
図5の区画500よりもフォトマスク510の小さい部分を示すようにSEM420の分解能よりも僅かに高かった。構造要素520の窪み550及び2つの膨らみ560及び570が区画600に含まれている。フォトマスク510の区画600の特性点555、565、及び575は、構造要素520のエッジのランダム変動550、560、及び570から
図5との関連で上述したように決定される。
【0080】
図5及び
図6の比較から、区画500又は600が1つよりも多い特性点545、555、565、及び575を含むこと、及び特性点がフォトマスク510の区画500及び600全体を通して更に配分されることは有益であることが明らかになる。このようにして、小部分において重なるに過ぎないフォトマスク510の区画500及び600は、互いに対して位置合わせすることができる。同じくこのようにして、位置合わせは、高い精度で行うことができる。しかし、相関ユニット485を使用するために、区画500及び600が1つよりも多い共通特性点545、555、565、及び575を含むことは必ずしも必要ではない。
【0081】
特性点545、555、565、及び575は、フォトマスク510に適用されてそれらの位置合わせのために区画500及び600内で可視である追加のマーカーと組み合わせて使用することも可能である。区画500及び600を互いに変換するために、スキャンボックス及び特性点545、555、565、及び575を共に使用することも更に考えられる。
【0082】
図6に示すように、AFM440の分解能は、構造要素520の粒状構造525をフォトマスク510の区画600の画像内で可視にするほど十分に高い。
【0083】
上述したように、フォトマスク510の区画500及び600は、異なる分解能で記録されたものである。以下に説明し、かつ相関ユニット485によって実施される重ね合わせ処理に対しては、これは意味がない。相関ユニット485が相関処理のためにマーカーとして使用することができる少なくとも1つの共通特徴点545、555、565、及び575を区画500及び600が含む限り、フォトマスク510の区画500及び600は、少なくとも部分的に重なることのみが必要である。重ね合わせるべき区画500及び600は、互いに対して回転させることができ、及び/又は区画500又は600は、歪みを含むこともできる。
【0084】
図5の区画500のSEM420の走査の画像と比べて、欠陥580は、
図6の区画600のAFM440の走査の画像で明瞭に可視である。AFM440は、ナノメートル領域内にある欠陥580の窪み及び/又は突起を解像することができる。
【0085】
図7の画像700は、フォトマスク510の区画500及び600の不正確な重ね合わせを表している。AFM走査の画像の区画600の画像スケーリングは、区画500と重ね合わせる前にSEM走査の解像に適応されたものである。フォトマスク510の構造要素520は、互いの上に位置するが、窪み及び膨らみ540、550、560、及び570とこれらから決定された特性点545、555、565、及び575において現れる区画500及び600との指紋は一致しない。「線及びスペース」配置における構造要素520の2次元の平行移動対称性により、欠陥580は、x並びにy方向にシフトされた位置での重ね合わせ700で示されている。区画500及び600のそのような重ね合わせは、例えば、区画500及び600の相関に対してフォトマスク510に適用されたマーカーのみを使用している場合の結果とすることができる。
【0086】
SEM420が、重ね合わせ700から決定された位置で欠陥580を補正するために1つ又はそれよりも多くの処理ガスと組み合わせて使用されると考えられる場合に、欠陥580は修復されないであろう。最悪の場合には、重ね合わせ欠陥580ではなく、フォトマスク510の基板520は、更に別の欠陥の生成になる可能性がある修復処理中の損傷を受けるであろう。
【0087】
図8は、
図5及び
図6の2つの区画500及び600の重ね合わせ800を示し、その位置合わせは、特性点565及び575を使用して実施されたものである。
図8に示す例において、模擬SEM画像650は、AFM走査の画像データから計算されたものである。この計算は、相関ユニット485によって実施される。このようにして、走査粒子顕微鏡420及び走査プローブ顕微鏡440の異なる撮像特性が対処される。模擬SEM画像650を生成する時に、走査プローブ顕微鏡440の画像スケーリングは、SEM走査の記録に適応される。更に、模擬SEM画像650は、AFM走査の画像データの回転及び/又は歪みを補正する。
【0088】
図8に表示された区画500及び650の重ね合わせ800は、特性点565及び575の位置の良好な一致、すなわち、数ナノメートルの範囲の一致を示している。欠陥580が模擬SEM画像650において現れる時の欠陥580の位置は、従って、SEM走査の区画500における欠陥580の実際の位置と同じく良好に適合する(点線によって示す)。従って、SEM420は、欠陥580がSEM走査の区画500内で可視ではないという事実にもかかわらず、欠陥580の更なる修復に確実に使用することができる。
【0089】
図8において、SEM走査の画像は基準として使用され、AFM走査の画像データは、模擬SEM画像650の計算を通して基準に対して適応されたものである。基準として走査プローブ顕微鏡走査の画像を使用し、この基準に対して走査粒子顕微鏡走査の画像データを調節することも可能である。
【0090】
図8から集めることができるように、模擬SEM画像650とSEM走査の区画500との構造要素520の粒状構造525は、まだ適合していない。SEMの模擬SEM画像650及び測定された区画500の一致は、従って、依然として更に改善することができる。ピクセル毎方式で、区画500及び650の粒状構造525は、相関ユニット485によって高い程度で一致させることができる。
図9は、2つの区画500及び650の粒状構造525を相関させた後の区画500及び650を表している。2段位置合わせ処理の関連では、相関ユニット485は、模擬SEM画像650をSEM420によって測定された区画500と本質的に一致させる変換990を計算する。
【0091】
特性点545、555、565,575の助けによる変換990の決定は、僅かな計算労力のみを要し、従って、高速処理作動を可能にする。区画500及び650の構造要素520の粒状構造525を相関させることによる精緻化段階も、重ね合わせられる点が既に互いの近くに位置するので、中庸な計算労力を必要とするに過ぎない。更にかつそれはより重要な態様であるが、2段手法は、相関ユニット485が2次的最大値への変換990を誤って見出すのを防止する。画像を周期的構造要素と相関させるための標準的方法を使用する時に、これは、例示的に
図7に示すように起こる場合がある。
【0092】
1つ又はそれよりも多くの処理ガスを使用する走査粒子顕微鏡420による欠陥580の修復は、模擬SEM画像650の変換990を行った後では基本的に成功する。
【0093】
図8の説明中に既に上で詳しく示したように、代替実施形態において、相関ユニット485は、区画500及び650の構造要素520の粒状構造525の相関を実行することなく、単に特性点565及び575に基づいて変換990を計算することができる。
【0094】
最後に、
図10は、マスク欠陥580を修復するための処理の流れ
図1000を示し、2つ又はそれよりも多くの画像を相関させる方法の修復処理内への組み込みを示している。修復処理は1010において始まる。第1の段階1020において、フォトマスク200、300、510は、検査ツールを用いて存在する欠陥580に関して検査される。修復ツールとして、例えば、AIMS(登録商標)(空間像測定システム)デバイスを使用することができ、これは、ウェーハの代わりにリソグラフィデバイスの中に挿入され、この位置で生成された空間像を測定する。
【0095】
段階1030において、上述の段階1020で検出されるか又は識別された欠陥580は、例えば、顕微鏡システム400のAFMのような走査プローブ顕微鏡440を使用して測定され、かつ画像内に描写される。
【0096】
段階1040において、識別され(段階1020)かつ測定された(段階1030)欠陥580は、顕微鏡システム400の走査粒子顕微鏡420、例えば、SEMで撮像される。AIMS(登録商標)ツールを検査ツールとして使用する場合、又は例えばSEMに基づく異なる上流検査ツールが将来の欠陥580の撮像のための異なる分解能を更に提供する場合に、1つ又は複数の欠陥580は、検査ツールで直接に撮像することもでき、段階1020及び1040は一致する場合がある。
【0097】
ここで、段階1050において本発明の相関方法を使用するための要件が満たされる。段階1050において、走査プローブ顕微鏡440及び/又は走査粒子顕微鏡420の画像は、上述の相関ユニット485の助けにより互いに相関されるか又は互いに変換される。
【0098】
段階1060において、修復ツールは、欠陥580を修復するために互いに位置合わせされた画像500、650を使用する。好ましい実施形態において、走査粒子顕微鏡及び走査プローブ顕微鏡は、フォトマスク510の欠陥580を単一ツールにおいて解析かつ修復することができるように、修復ツール内に一体化される。
【0099】
図10の流れ
図1000において、段階1020から1040は、本発明の方法を使用するための準備段階であり、段階1060は、実際の修復処理である。これらの段階は、本発明の相関方法の領域外にあり、従って、
図10には点線で示されている。
【0100】
本出願は、1つ又はそれよりも多くの顕微鏡システムによって記録された画像を高い精度で互いに変換することができ、この目的のためにマーカーをフォトマスクに付加する必要のない相関ユニット485を説明するものである。
【符号の説明】
【0101】
500、650 区画
545、555、565、575 特性点
550、560、570 ランダム変動
580 欠陥
990 変換