【実施例】
【0110】
以下の実施例で用いた生物の取り扱いは、農業・食品産業技術総合研究機構において規定される基準を遵守した。
【0111】
(実施例1:40℃でキシルロースを高収率で発酵する酵母の選抜)
約1400株の酵母株から、キシルロース資化能に基づいて一次スクリーニングを行い、キシルロース資化能の高い株を選抜し、さらにこれらのキシルロース資化株よりキシルロース発酵能の高い株を二次スクリーニングにより選抜した。得られたキシルロース高発酵酵母株について、高温耐性やエタノール耐性を確認し、40℃においてキシルロースからのエタノール生産能が高い株であるCandida glabrata NFRI3163(NITE受託番号 P−
02496)を取得した。
【0112】
以下にその手順を示す。
【0113】
(キシルロースの調製)
スクリーニングに必要となるD−キシルロース(以下、キシルロースと略す)は、Olssonらの方法(Olsson, L., Enzyme and Microbial Technology, vo1.16,pp.388−394(1994))に基づき調製した。以下に概略を示す。140gのキシロースを200mLの水に溶かし、8gの固定化グルコースイソメラーゼ(Novozymes、Sweetzyme IT Extra、350U/g)を加え、60℃で1日反応させた。ここで、グルコースイソメラーゼの酵素活性1U(Unit)とは、標準的な分析条件下で、初速度1μmol/分でグルコ-スをフルクト-スへと変換する酵素量を表す。濾過によりグルコースイソメラーゼを除いた後、ロータリーエバポレーター(岩城硝子、モデルREN−1)により、液量が約120mLになるまで50℃で濃縮した。この濃縮液に120mLの無水エタノールを加え、4℃で1週間静置し、未反応のキシロースを析出させた。析出したキシロースを濾過により取り除いた後、ロータリーエバポレーターにより濾液からエタノールを50℃で留去させた。
【0114】
次に、反応液中に生成したキシルロースをカラムクロマトグラフィーにより精製した。あらかじめ1M 亜硫酸水素ナトリウム水溶液で処理することによって、カウンターイオンを亜硫酸型に置換した250gの陰イオン交換樹脂(Dowex 1 X8、100−200メッシュ)を、内径2.5cm×長さ50cmのカラムに充填した。蒸留水を移動相に用い、流速1mL/分で溶出し、7mLずつフラクションを分取した。各フラクションに含まれるキシルロースおよびキシロースの量を高速液体クロマトグラフィー(HPLC)により解析した。HPLC装置(島津製作所)は、送液ポンプ(モデルLC−20AT)、デガッサー(モデルDGU−20A3)、オートサンプラー(モデルSIL−20AC)、カラムオーブン(モデルCTO−20A)、示唆屈折率検出器(モデルRID−10A)、システムコントローラー(モデルCBM−20A)から構成され、解析ソフトにはLC Solution(島津製作所)を用いた。配位子交換クロマトグラフィー用カラム(Shodex SC1011、内径8.0mm×長さ150mm)を用いて、カラム温度75℃で、移動相に超純水を用いて流速0.6mL/分で分析を行った。また、カラムの保護のためにSC−Gガードカラム(Shodex)を用いた。キシルロースの純度の高いフラクションを集め、ロータリーエバポレーターを使用して55℃で濃縮し、純度99%のキシルロースを約30g得た。発明者の知見では、本実施例のような規模でキシルロース発酵酵母のスクリーニングを行った例は知られていない。
【0115】
(キシルロース資化能に基づいた一次スクリーニング)
96穴の丸底型マイクロタイタープレート(CORNING、モデル3799)の各ウエルに100μLのYPD培地(10g/L Yeast Extract(Difco)、20g/L Polypepton(日本製薬)、20g/L グルコース)を添加し、滅菌した爪楊枝を用いて、各ウエルに酵母株を植菌した。各マイクロタイタープレートには、農業・食品産業技術総合研究機構 食品総合研究所が保有する酵母(1枚のプレートに95株ずつ)と、コントロールとしてS. cerevisiae ATCC24860株を植菌した。30℃で24時間静置培養した後、この培養液の一部(約1.2μL)を48ピン・コピープレートレプリケーター(トッケン)を用いて、1%(w/v)キシロース及び1%(w/v)キシルロースを含むYNB培地(6.7g/L Yeast Nitrogen Base without amino acids(Difco))100μLを各ウエルに入れた96穴の丸底型マイクロタイタープレート(CORNING、モデル3799)に植菌した。30℃で24時間、静置培養後、マイクロプレートリーダー(BioTek、モデルElx800)を用いて、630nmの波長の吸光度を測定し、培養液中の菌体濃度を求めた。コントロール株であるATCC24860よりも菌体濃度が高いものをキシルロース資化能の高い株として選抜した。
【0116】
(キシルロース発酵能に基づいた二次スクリーニング)
96穴の丸底型マイクロタイタープレート(CORNING、モデル3799)の各ウエルに100μLのYPD培地を添加し、滅菌した爪楊枝を用いて、各ウエルに酵母株を植菌した。各マイクロタイタープレートには、前項の方法によって選抜したキシルロース資化能の高い酵母株と、コントロールとしてS. cerevisiae ATCC24860株を植菌した。30℃で24時間静置培養した後、この培養液の一部(30μL)を2%(w/v)キシルロースを含むYNB培地400μLを各ウエルに添加した96穴の深型マイクロタイタープレート(Matrix、Screenmates DeepWell plate)に植菌した。ウエルをシリコン製マット(Matrix、Screenmates CapMat)で覆い、ビニールテープを用いてマイクロタイタープレートとマットを強固に密着させた。30℃で72時間、振とう培養(毎分200回転)した後、遠心分離機(トミー精工、モデルSUPREMA25、スイングローターTS−36N)を用いて3,100xgで10分間遠心することにより、菌体と培養上清を分離した。290μLの培養上清を96穴のマイクロタイタープレート(Nunc、モデル267245)に移し、シリコン製マット(Axygen、Axymat AM−2ML−RD)で覆った後、HPLCにより、糖およびエタノール濃度を定量解析した。先に記載のHPLC装置にイオン排除クロマトグラフィー用カラム(BioRad、Aminex Fermentation Monitoring Column)を接続し、移動相に0.005M 硫酸を用いて、流速0.6ml/分、カラム温度50℃で分析を行った。また、カラムの保護のためにCation−H Cartridge(BioRad)も接続した。コントロール株であるS. cerevisiae ATCC24860と同程度のエタノールが検出された株をキシルロース発酵能の高い株として選抜した。
【0117】
次に、キシルロース発酵能の高かった選抜酵母株について、Kurtzmanらの方法(Kurtzman, C.P. et al., Antonie Van Leeuwenhoek Vol.73 pp.331−371 (1998))に従い、リボソームDNAの塩基配列を解析することにより種の同定を行った。NL−1プライマーおよびNL−4プライマーを用いて、酵母菌体懸濁液から26SリボソームDNAのD1/D2領域(約600塩基)を増幅した。使用したプライマーの配列を以下に示す。
【0118】
NL−1:5’−gcatatcaataagcggaggaaaag−3’(配列番号1)
NL−4:5’−ggtccgtgtttcaagacgg−3’(配列番号2)
PCRはKOD FX polymerase(東洋紡ライフサインス)を使用し、94℃4分+[98℃10秒、52℃30秒、68℃1分]×30サイクルの条件で行った。得られた0.6kbのDNA断片をシリカメンブレンカラム(GEヘルスケア、illustra GFX PCR DNA and Gel Band Purification Kit)を用いて精製した後、BigDye Terminator v1.1 Cycle Sequencing Kit(Applied Biosystems)を使用したサイクルシークエンス法によりシークエンス反応を行い、ABI PRISM310 Genetic Analyzer(Applied Biosystems)を用いて塩基配列を解読した。解読した塩基配列の相同性をBLAST(Basic Local Alignment Search Tool(http://blast.ncbi.nlm.nih.gov/Blast.cgi))プログラムを用いて解析し、種の同定を行った。なお、本明細書中の実施例におけるPCRおよびサイクルシークエンスはすべてVeritiサーマルサイクラー装置(Applied Biosystems)を用いて行った。
【0119】
(40℃においてキシルロース発酵能の高い株の選抜方法)
96穴の丸底型マイクロタイタープレート(CORNING、モデル3799)の各ウエルに100μLのYPD培地を添加し、滅菌した爪楊枝を用いて、各ウエルに酵母株を植菌した。このマイクロタイタープレートには、前述の方法によって選抜したキシルロース発酵能の高い酵母株と、コントロール株であるS. cerevisiae ATCC24860を植菌した。30℃で24時間静置培養した後、この培養液の一部(30μL)を2%(w/v)キシルロースを含むYNB培地400μLを各ウエルに添加した96穴の深型マイクロタイタープレート(Matrix、Screenmates DeepWell plate)に植菌した。ウエルをシリコン製マット(Matrix、Screenmates CapMat)で覆い、ビニールテープを用いてマイクロタイタープレートとマットを強固に密着させた。40℃で72時間、振とう培養(毎分200回転)した後、遠心分離機(トミー精工、モデルSUPREMA25、スイングローターTS−36N)を用いて3,100xgで10分間遠心することにより、菌体と培養上清を分離した。290μLの培養上清を96穴のマイクロタイタープレート(Nunc、モデル267245)に移し、シリコン製マット(Axygen、Axymat AM−2ML−RD)で覆った後、HPLCにより、前述の条件で糖及びエタノール濃度を定量解析した。最も高い濃度のエタノールが検出されたCandida glabrata NFRI3163をキシルロースの高温発酵能を有している株として選抜した。
【0120】
以下の表に、得られた40℃でのキシルロース発酵能の高い酵母株、スクリーニング時に生産したエタノール濃度およびリボソームDNAの塩基配列に基づき決定した種名を示す。
【0121】
【表1】
【0122】
(実施例2 40℃におけるエタノール耐性の比較)
本実施例において、実施例1において得られたC. glabrata NFRI3163及びコントロール株であるS. cerevisiae ATCC24860について、以下の条件で培養を行った。10の8乗、10の7乗、10の6乗、10の5乗、10の4乗CFU(Colony Forming Unit)の菌体を含む菌体懸濁液5μLをそれぞれエタノール濃度の異なる3種類(0、5%(w/v)、7.5%(w/v)エタノール)のYPD寒天培地(10g/L Yeast Extract(Difco)、20g/L Polypepton(日本製薬)、20g/L グルコース、20g/L BactoAgar(Difco))に滴下し、40℃で3日間静置培養を行った。寒天培地上のコロニーの大きさを目視で確認し、エタノール耐性を比較した。
【0123】
結果を
図2に示す。その結果、NFRI3163は、ATCC24860よりも、40℃においてエタノール存在下でも良好な生育を示した。
【0124】
(実施例3 キシロース代謝系を有するSaccharomyces cerevisiaeおよびCandida glabrataの遺伝子組換え体によるグルコース・キシロース混合培地のエタノール発酵)
公知の方法と同様に、XR遺伝子、XDH遺伝子およびXK遺伝子を導入することによって作製したキシロース発酵能を有する遺伝子組換え酵母を5%(w/v)グルコースおよび2%(w/v)キシロースを含むYP培地(10g/L Yeast Extract(Difco)、20g/L Polypepton(日本製薬))で培養し、エタノール発酵を行った。以下に、XR遺伝子、XDH遺伝子およびXK遺伝子の導入手順を示すとともに、
図3に導入のためのベクターの構築法の概略を図示した。なお、本明細書で使用した制限酵素は、タカラバイオ、東洋紡ライフサイエンス、New England Biolabs、いずれかの製品である。
【0125】
(pYPGE15Lの構築方法)
酵母の発現用ベクターpYPGE15の遺伝子発現能力を向上させるため、当該ベクターに含まれる0.27kb長のホスホグリセリン酸キナーゼ1遺伝子プロモーター(PGK1p)をより上流領域を含む0.75kb長のPGK1pに置換した。まず、pYPGE15を制限酵素BstXIで消化し、生じた粘着末端をT4 DNA Polymerase(タカラバイオ DNA Blunting Kit)を用いて平滑化した。その後、制限酵素XbaIで消化し、元々pYPGE15に存在した0.27kb長のPGK1pの大部分の領域を除去した。次に、Saccharomyces cerevisiae InvSc1(Invitrogen)のゲノムDNAを鋳型に、PGKp−SmaIプライマー及びPGKp−XbaI−asプライマーを用いてPCRにより、0.75kb長のPGK1pを増幅した。使用したプライマーの配列を以下に示す。
【0126】
PGKp−SmaI:5’−gctctagacccgggagatattataacatctgcataatag−3’(配列番号3)
PGKp−XbaI−as:5’−gccgccgtctagatgttttatatttgttgtaaaaagtag−3’(配列番号4)
PCRはPfuUltra II fusion HS DNA Polymerase(Stratagene)を使用して、95℃2分+[95℃20秒、55℃20秒、72℃15秒]×30サイクル+72℃3分の条件で行った。得られた0.75kbのDNA断片を制限酵素XbaIおよびSmaIで消化し、上述の処理を行ったpYPGE15とQuick Ligation Kit(New England Biolabs)を用いて連結し、大腸菌DH5αコンピテントセル(東洋紡ライフサイエンス)を形質転換し、アンピシリン耐性を獲得した大腸菌よりillustra plasmidPrep Mini Spin Kit(GEヘルスケア)を用いて0.75kb長のPGK1pを含有するベクターを調製し、pYPGE15Lと命名した。
【0127】
(XR遺伝子、XDH遺伝子およびXK遺伝子のクローニング方法)
まず、Pichia stipitis NBRC10063のゲノムDNAを鋳型にして、XR−XbaIプライマーおよびXR−KpnIプライマーを用いてXR遺伝子(0.96kb)をPCR増幅により単離した。使用したプライマーの配列を以下に示す。
【0128】
XR−XbaI:5’−gggtctagaatgccttctattaagttgaactctgg−3’(配列番号5)
XR−KpnI:5’−ggggtaccttagacgaagataggaatcttgtc−3’(配列番号6)
PCRはPfuUltra II fusion HS DNA Polymeraseを使用して、95℃2分+[95℃20秒、55℃20秒、72℃15秒]×30サイクル+72℃3分の条件で行った。得られたDNA断片を制限酵素XbaIおよびKpnIで消化した後、XbaIおよびKpnIで消化したpYPGE15LにQuick Ligation Kitを用いて連結した。連結物で大腸菌DH5αコンピテントセルを形質転換し、アンピシリン耐性を獲得した大腸菌よりillustra plasmidPrep Mini Spin Kitを用いてXRがクローニングされたpYPGE15L−XRを調製した。
【0129】
次に、P. stipitis NBRC10063のゲノムDNAを鋳型にして、XDH−XbaIプライマーおよびXDH−XhoIプライマーを用いてXDH遺伝子(1.1kb)をPCR増幅により単離した。使用したプライマーの配列を以下に示す。
【0130】
XDH−XbaI:5’−ggctctagaatgactgctaacccttccttggtg−3’(配列番号7)
XDH−XhoI:5’−ccgctcgagttactcagggccgtcaatgag−3’(配列番号8)
PCRはPfuUltra II fusion HS DNA Polymeraseを使用して、95℃2分+[95℃20秒、58℃20秒、72℃15秒]×30サイクル+72℃3分の条件で行った。得られたDNA断片を制限酵素XbaIおよびXhoIで消化し、XbaIおよびXhoIで消化したpYPGE15LにQuick Ligation Kitを用いて連結した。連結物で大腸菌DH5αコンピテントセルを形質転換し、アンピシリン耐性を獲得した大腸菌よりillustra plasmidPrep Mini Spin Kitを用いてXDHがクローニングされたpYPGE15L−XDHを調製した。
【0131】
さらに、S. cerevisiae InvSc1のゲノムDNAを鋳型にして、XK−XbaIプライマーおよびXK−XhoIプライマーを用いてXK遺伝子(1.8kb)をPCR増幅により単離した。使用したプライマーの配列を以下に示す。
【0132】
XK−XbaI:5’−ggctctagaatgttgtgttcagtaattcagagacag−3’(配列番号9)
XK−XhoI:5’−ccgctcgagttagatgagagtcttttccag−3’(配列番号10)
PCRはPfuUltra II fusion HS DNA Polymeraseを使用して、95℃2分+[95℃20秒、55℃20秒、72℃30秒]×30サイクル+72℃3分の条件で行った。得られたDNA断片を制限酵素XbaIおよびXhoIで消化し、XbaIおよびXhoIで消化したpYPGE15LにQuick Ligation Kitを用いて連結した。連結物で大腸菌DH5αコンピテントセルを形質転換し、アンピシリン耐性を獲得した大腸菌よりillustra plasmidPrep Mini Spin Kitを用いてXKがクローニングされたpYPGE15L−XKを調製した。
【0133】
(XR−XDH−XK共発現ベクターの構築方法)
まず、pYPGE15L−XKを鋳型にして、PGKp−SphIプライマーおよびCYCt−SbfIプライマーを用いてPGK1プロモーター、XK遺伝子、CYC1ターミネーターから成るPGK1p−XK−CYC1t遺伝子カセット(2.9kb)をPCR増幅により単離した。使用したプライマーの配列を以下に示す。
【0134】
PGKp−SphI:5’−gaccgcatgccacagatattataacatctgcataatag−3’(配列番号11)
CYCt−SbfI:5’−agcccctgcaggaagctttgcaaattaaagccttcg−3’(配列番号12)
PCRはPfuUltra II fusion HS DNA Polymeraseを使用して、95℃2分+[95℃20秒、56℃20秒、72℃45秒]×30サイクル+72℃3分の条件で行った。得られたDNA断片を制限酵素SphIおよびSbfIで消化し、SphIおよびSbfIで消化したpAUR101(タカラバイオ;配列番号38)にQuick Ligation Kitを用いて連結した。連結物で大腸菌DH5αコンピテントセルを形質転換し、アンピシリン耐性を獲得した大腸菌よりillustra plasmidPrep Mini Spin Kitを用いてXK発現用ベクターであるpAUR−XK(配列番号39)を調製した。
【0135】
次に、pYPGE15L−XDHを鋳型にして、PGKp−SbfIプライマーおよびCYCt−SalIプライマーを用いてPGK1プロモーター、XDH遺伝子、CYC1ターミネーターから成るPGK1p−XDH−CYC1t遺伝子カセット(2.2kb)をPCR増幅により単離した。使用したプライマーの配列を以下に示す。
【0136】
PGKp−SbfI:5’−gcccctgcaggagatattataacatctgcataatag−3’(配列番号13)
CYCt−SalI:5’−agccgtcgacaagctttgcaaattaaagccttcg−3’(配列番号14)
PCRはPfuUltra II fusion HS DNA Polymeraseを使用して、95℃2分+[95℃20秒、55℃20秒、72℃45秒]×30サイクル+72℃3分の条件で行った。得られたDNA断片を制限酵素SbfIおよびSalIで消化し、SbfIおよびSalIで消化したpAUR―XKにQuick Ligation Kitを用いて連結した。連結物で大腸菌DH5αコンピテントセルを形質転換し、アンピシリン耐性を獲得した大腸菌よりillustra plasmidPrep Mini Spin Kitを用いてXDH及びXK共発現用ベクターであるpAUR−XDHXKを調製した。
【0137】
さらに、pYPGE15L−XRを鋳型にして、PGKp−SmaIプライマー(配列番号3)およびCYCt−SacIプライマーを用いてPGK1プロモーター、XR遺伝子、CYC1ターミネーターから成るPGK1p−XR−CYC1t遺伝子カセット(2.1kb)をPCR増幅により単離した。CYCt−SacIプライマーの配列を以下に示す。
【0138】
CYCt−SacI:5’−ggcgagctcaagctttgcaaattaaagccttcg−3’(配列番号15)
PCRはPfuUltra II fusion HS DNA Polymeraseを使用して、95℃2分+[95℃20秒、55℃20秒、72℃45秒]×30サイクル+72℃3分の条件で行った。得られたDNA断片を制限酵素SmaIおよびSacIで消化した。pAUR―XDHXKをSmaIで消化後、SacIで部分消化し、11.8kbのDNA断片を調製した。これとPGK1p−XR−CYC1tをQuick Ligation Kitを用いて連結し、大腸菌DH5αコンピテントセルを形質転換し、アンピシリン耐性を獲得した大腸菌よりillustra plasmidPrep
Mini Spin Kitを用いてXR、XDH及びXK共発現用ベクターであるpAUR−XRXDHXKを調製した。
【0139】
(XR遺伝子、XDH遺伝子およびXK遺伝子の酵母への導入方法)
酵母の形質転換はElbleによる酢酸リチウム法(Elble R, BioTechniques, Vol.13, pp.18−20 (1992))に基づいて行った。以下に手順を示す。YPD培地で1日培養したS. cerevisiae NBRC0224およびC. glabrata NFRI3163をそれぞれ1mLの培養液から遠心分離により集菌し、各々1mLの滅菌水で洗浄後、再度集菌した。S. cerevisiaeの形質転換用には、1μgのpAUR−XRXDHXKを制限酵素BsiWIで消化し、C. glabrataの形質転換用には、5μgのpAUR−XRXDHXKを制限酵素SphIで消化した。これらの直鎖状ベクターをシリカメンブレンカラム(GEヘルスケア illustra GFX PCR DNA and Gel Band Purification Kit)を用いて精製した後、10μLの滅菌水で溶出し、10μLのキャリアーDNA(ニシン精子DNA、100μg)と混合した。これに500μLのPLATE溶液[40%(w/v)ポリエチレングリコール#4000(ナカライテスク)、0.1M 酢酸リチウム、10mM Tris−HCl(pH 7.5),1mM EDTA]を加え混合した溶液で、前述の酵母菌体を懸濁した。室温で1日静置後、遠心分離により集菌し、200μLの滅菌水で菌体を懸濁した。この菌体懸濁液を100μLずつ、2枚のYPD−AbA寒天培地(10g/L Yeast Extract(Difco)、20g/L Polypepton(日本製薬)、20g/L グルコース、0.5μg/mL オーレオバシジンA(タカラバイオ)、20g/L バクトアガー(Difco))に塗布した。30℃で3日間静置培養し、オーレオバシジンA耐性を示したコロニーを単離することにより、XR−XDH−XK系を導入したS. cerevisiaeおよびC. glabrataを取得し、 それぞれS. cerevisiae XR−XDH−XKおよびC. glabrata XR−XDH−XKと命名した。
【0140】
(遺伝子組換え酵母によるグルコース・キシロース混合培地のエタノール発酵)
上記により製造した遺伝子組換え酵母のエタノール発酵収率を以下の手順により測定した。S. cerevisiae XR−XDH−XKおよびC. glabrata XR−XDH−XKをそれぞれ、30℃でYPD培地を用いて好気的に一晩種培養した後、波長600nmにおける吸光度(OD600)を測定し、種培養液の菌体濃度を求めた。菌体濃度は、OD600=1の場合、0.3g(乾燥重量)/Lに相当するものとして計算した。種培養液を遠心分離により集菌し、菌体を滅菌水で洗浄した後、容量10mLのガラスバイアル(日電理化硝子、SVG−10)に入った5%(w/v)グルコースおよび2%(w/v)キシロースを含有する7mLのYP培地に、初発菌体濃度0.3g(乾燥重量)/Lとなるように添加した。バイアルをゴム栓(日電理化硝子、液状用ブチルゴム(大))および穴あきキャップ(日電理化硝子)にて密封した。恒温回転式浸とう培養器(タイテック、モデルBR−22FP・MR)を用いて、30℃、35℃、37℃および40℃の各温度で、200rpmで振とう培養を行った。注射針(テルモ、20G×70)を用いて経時的にサンプリングを行い、採取した発酵液から遠心分離によって酵母菌体を除いた後、HPLCによって、発酵液に含まれるエタノール及び糖類の定量分析を行った。HPLCには、前述の島津製作所製装置に配位子交換クロマトグラフィー用カラム(Shodex SP0810)を接続して使用した。移動相に水を用いて、流速0.6ml/分、カラム温度80℃で分析を行った。また、カラムの保護のために脱塩カートリッジ(BioRad)とガードカラム(Shodex SP−G)をSP0810カラムの前に連結した。得られたクロマトグラムについてLC Solution解析ソフトウエア(島津製作所)を使用してサンプルと標準品の保持時間およびピーク面積を比較することにより発酵液中のエタノールおよび糖類の定性および定量分析を行った。
【0141】
その結果を
図4に示す。S. cerevisiae XR−XDH−XK、C. glabrata XR−XDH−XKともグルコースの利用能は40℃でも維持されていた。一方、キシロースの利用能については、S. cerevisiae XR−XDH−XKでは35℃まで、C. glabrata XR−XDH−XKでは37℃までは、比較的高い利用能を維持していたものの、それぞれ37℃、40℃に発酵温度が上がると著しい低下が見られた。以上により、従来の方法に基づいて製造した組換え酵母では、酵母の種類を問わず、40℃においてキシロース発酵を行うことが困難であることを確認した。
【0142】
(実施例4 Candida glabrataおよびSaccharomyces cerevisiaeを用いたキシロースの同時異性化発酵)
2%(w/v)キシロースを含むYP培地にグルコースイソメラーゼ(Novozymes、Sweetzyme IT Extra,35U)を加えた培地を用いて、Candida glabrataおよびSaccharomyces cerevisiaeの非遺伝子組換え体について、同時異性化発酵能を解析した。以下に簡単な手順を示す。
【0143】
(同時異性化発酵の手順)
C. glabrata NFRI3163およびS. cerevisiae InvSc1をそれぞれ、30℃でYPD培地を用いて好気的に一晩種培養した後、OD600を測定し、種培養液の菌体濃度を求めた。菌体濃度は、OD600=1の場合、0.3g(乾燥重量)/Lに相当するものとして計算した。種培養液を遠心分離により集菌し、菌体を滅菌水で洗浄した後、容量10mLのガラスバイアル(日電理化硝子、SVG−10)に入った2%(w/v)キシロースを含有する5mLのYP培地に、初発菌体濃度が0.3g(乾燥重量)/Lとなるように添加した。さらに35Uのグルコースイソメラーゼ(Novozymes、Sweetzyme IT Extra)を加えた後、バイアルをゴム栓(日電理化硝子、液状用ブチルゴム(大))および穴あきキャップ(日電理化硝子)にて密封した。恒温回転式浸とう培養器(タイテック、モデルBR−22FP・MR)を用いて、30℃および40℃で、200rpmで振とう培養を行った。注射針(テルモ、20G×70)を用いてサンプリングを行い、採取した発酵液から遠心分離によって酵母菌体を除いた後、HPLCによって、発酵液に含まれるエタノール及び糖類の定量分析を行った。HPLCには、前述の島津製作所製装置に、配位子交換クロマトグラフィー用カラム(Shodex SP0810)を接続して使用した。移動相に水を用いて、流速0.6ml/分、カラム温度80℃で分析を行った。また、カラムの保護のために脱塩カートリッジ(BioRad)とガードカラム(Shodex SP−G)をSP0810カラムの前に連結した。得られたクロマトグラムについてLC Solution解析ソフトウエアを使用して発酵液中のエタノールおよび糖類の定性および定量分析を行った。
【0144】
以下の表に72時間発酵時の結果を示す。表中のエタノール収率は、添加基質量に対する収率であり、2%(w/v)キシロースを基質として初発菌体濃度0.3g(乾燥重量)/Lを用いて72時間発酵したときのエタノール収率を理論収率に対する百分率で示す。なお、1gのキシロースから0.51gのエタノールの生成を理論収率とした。
【0145】
【表2】
【0146】
その結果、C. glabrata NFRI3163は、40℃においてS. cerevisiae InvSc1よりも高いエタノール収率を示し、且つ40℃でも30℃と同等の発酵能を示した。ただし、副産物であるキシリトールの蓄積は、発酵温度にかかわらず、C. glabrata NFRI3163の方が、S. cerevisiae InvSc1よりも多かった。
【0147】
(実施例5 Candida glabrata NFRI3163にキシルロキナーゼを高発現させた株の作製)
本実施例では、同時異性化発酵によるキシロース発酵能のさらなる改善を目的として、C. glabrataのキシルロキナーゼ遺伝子を遺伝子組換えにより上記C. glabrata NFRI3163株に導入し、キシルロキナーゼの高発現により同時異性化発酵の収率を向上させた。以下にそのプロトコールを示す。
【0148】
(キシルロキナーゼ導入用ベクターの構築方法)
まず、S. cerevisiae由来のPGK1pプロモーターとCYC1tターミネーターおよびウラシル要求性マーカー遺伝子(URA3)を含有する酵母発現用ベクターを以下の手順で構築した。PGK1pを得るために、前出のpAUR−XKプラスミド(配列番号39)を鋳型にしてPGKp−1SプライマーとPGKp−1Aプライマーを用いてPCRを行った。プライマーの配列を以下に示す。
【0149】
PGKp−1S:5’−gaccgagctccacagatattataacatctgcataatag−3’(配列番号16)
PGKp−1A:5’−gccgccgtctagatgttttatatttgttgtaaaaagtag−3’(配列番号17)
PCRはPfuUltra II fusion HS DNA Polymeraseを使用して、95℃2分+[95℃20秒、55℃20秒、72℃15秒]×30サイクル+72℃3分の条件で行った。得られたDNA断片を制限酵素SacIおよびXbaIで消化し、pRS406ベクターのSacIおよびXbaIサイトにクローニングした。CYC1t(0.2kb)は、p424GPDベクターをKpnIおよびXhoIで消化することにより得た。このDNA断片を、PGK1pをクローニングしたpRS406のKpnIおよびXhoIサイトにクローニングし、pRS406−PGKpCYCtを作製した。製造したベクターpRS406−PGKpCYCtの概略図を
図5に示す。
【0150】
次に、GenBank DNAデータベースに登録されていたC. glabrata
CBS138の染色体DNA塩基配列(アクセス番号:CR380953)の中から、S. cerevisiaeのキシルロキナーゼ遺伝子と相同性を示す遺伝子(CgXK)を見出した。この配列情報を基にCgXK−1SプライマーとCgXK−2Aプライマーを合成し、C. glabrata NFRI3163のゲノムDNAを鋳型に用いてPCR増幅によりCgXKを単離した。使用したプライマーの配列を以下に示す。
【0151】
CgXK−1S:5’−cgaattccacaatgcaaggcgaaggttattac−3’(配列番号18)
CgXK−2A:5’−ccgctcgagttactttaactcttcttctaatttgctc−3’(配列番号19)
PCRはPfuUltra II fusion HS DNA Polymeraseを使用して、95℃2分+[95℃20秒、55℃20秒、72℃30秒]×30サイクル+72℃3分の条件で行った。得られた1.8kbのDNA断片を制限酵素EcoRIおよびXhoIで消化した後、pRS406−PGKpCYCtのEcoRIおよびXhoIサイトにクローニングし、pRS406−CgXKを作製した。製造したベクターpRS406−CgXKの概略図を
図6に示す(CgXKの核酸配列は配列番号28でありアミノ酸配列は配列番号29である。pRS406ベクターの配列は配列番号30である。pRS406−CgXKベクターの配列は配列番号31である。)。
【0152】
(C. glabrata NFRI3163のウラシル要求性変異株の単離)
C. glabrata NFRI3163の抗生物質の添加を必要としない形質転換を行うために、ウラシル要求性変異株の単離を行った。ウラシル要求性変異株の単離はBoekeらの方法(Boeke JD,et al., Molecular and General Genetics,Vol.197, pp.345−346)に基づいて行った。以下に簡単な手順を示す。
【0153】
C. glabrata NFRI3163をYPD培地で30℃、1日培養後、1mLの培養液から遠心分離によって集菌し、1mLの滅菌水で2回洗浄した。菌体を再度1mLの滅菌水に懸濁後、100μLずつ5−FOA寒天培地[6.7g/L Yeast Nitrogen Base without Amino acids(Difco)、0.77g/L CSM−Ura(Sunrise Science)、20g/L グルコース、50mg/L ウラシル、1g/L 5−フルオロオロト酸(ナカライテスク)、20g/L Bactoagar(Difco)]に塗布し、30℃で4日間静置培養した。5−FOA寒天培地上に生育してきたコロニーを、SC寒天培地[6.7g/L Yeast Nitrogen Base without Amino acids、0.79g/L CSM(Sunrise Science)、20g/L グルコース、20g/L Bactoagar]およびSC−Ura寒天培地[6.7g/L Yeast Nitrogen Base without Amino acids、0.77g/L CSM―Ura、20g/L グルコース、20g/L Bactoagar]にそれぞれ植菌し、30℃で2日間静置培養した後、SCで生育し、SC−Uraでは生育しない株をウラシル要求性変異株として選抜し、C. glabrata 3163 ura012と命名した。
【0154】
(CgXKのC. glabrataへの導入)
5μgのpRS406−CgXKを制限酵素SacIで直鎖状にした後、3163 ura012株をElbleによる酢酸リチウム法により形質転換した。SC−Ura寒天培地上で生育してきたコロニーを単離し、得られた形質転換株をCandida glabrata 3163−CgXK<NITE受託番号:P−
02494>と命名し、以下の実施例で用いた。
【0155】
(実施例6 キシルロキナーゼ遺伝子を高発現させたCandida glabrataによるキシロースの同時異性化発酵)
2%(w/v)キシロースを含む5mLのYP培地にグルコースイソメラーゼ(Novozymes、Sweetzyme IT Extra、35U)を加え、実施例5で作製したキシルロキナーゼを高発現させたC. glabrata 3163−CgXKを初発菌体濃度が0.3g(乾燥重量)/Lとなるよう添加し、72時間同時異性化発酵を行った。発酵液に含まれるエタノールおよび糖類をHPLCにより測定し、キシロース消費量、エタノール収率およびキシリトール蓄積量を求めた。同時異性化発酵およびHPLCによる解析は、実施例4と同様に行った。結果を以下の表に示す。表中のエタノール収率は、添加基質量に対する収率であり、2%(w/v)キシロースを基質として初発菌体濃度0.3g(乾燥重量)/Lを用いて72時間発酵したときのエタノール収率を理論収率(0.51g/g)に対する百分率で示す。
【0156】
【表3】
【0157】
その結果、Candida glabrata 3163−CgXKは、30℃、40℃ともに高いキシロース消費量およびエタノール収率を示した。親株であるNFRI3163株に比べ、発酵温度30℃において2.4倍、40℃において2.2倍、エタノール収率が向上し、40℃でも理論収率の70%を超える高いエタノール収率を示した。一方、40℃におけるキシリトール蓄積量はNFRI3163よりも高くなっていた。
【0158】
(実施例7 キシルロキナーゼを高発現させたSaccharomyces cerevisiaeによるキシロースの同時異性化発酵)
また、S. cerevisiae InvSc1(Invitrogenから入手可能)にキシルロキナーゼを高発現させた株(InvSc1−ScXK6)を作製し、これについても同時異性化発酵のデータを取得した。以下に手順を示す。
【0159】
(キシルロキナーゼを高発現するS. cerevisiaeの作製方法)
pAUR−XK(配列番号39)を鋳型にして、SXK−1SプライマーおよびSXK−1Aプライマーを用いてXK遺伝子をPCR増幅した。使用したプライマーの配列を以下に示す。
【0160】
ScXK−1S:5’−ccatcgatcacaatgttgtgttcagtaattcagag−3’(配列番号20)
ScXK−1A:5’−ccgctcgagttagatgagagtcttttcc−3’(配列番号21)
PCRはPfuUltra II fusion HS DNA Polymeraseを使用して、95℃2分+[95℃20秒、55℃20秒、72℃30秒]×30サイクル+72℃3分の条件で行った。得られた1.8kbのDNA断片を制限酵素ClaIおよびXhoIで消化した後、pRS406−PGKpCYCtのClaIおよびXhoIサイトにクローニングし、pRS406−XKを作製した。製造したベクターpRS406−XKの概略図を
図7に示す。
【0161】
2μgのpRS406−XKを制限酵素SbfIで直鎖状にした後、S. cerevisiae InvSc1をElbleによる酢酸リチウム法により形質転換した。SC−Ura寒天培地上で生育してきたコロニーを単離し、得られた形質転換株をS. cerevisiae InvSc1−ScXKと命名した。
【0162】
(キシルロキナーゼを高発現させたS. cerevisiaeによる同時異性化発酵)
2%(w/v)キシロースを含む5mLのYP培地にグルコースイソメラーゼ(Novozymes、Sweetzyme IT Extra、35U)を加え、S. cerevisiae InvSc1−ScXKを初発菌体濃度が0.3g(乾燥重量)/Lとなるよう添加し、72時間および150時間同時異性化発酵を行った。発酵液に含まれるエタノールおよび糖類をHPLCにより測定し、キシロース消費量、エタノール収率およびキシリトール蓄積量を求めた。同時異性化発酵およびHPLCによる解析は、実施例4と同様に行った。結果を以下の表に示す。表中のエタノール収率は、添加基質量に対する収率であり、2%(w/v)キシロースを基質として初発菌体濃度0.3g(乾燥重量)/Lを用いて、表4は72時間発酵したときの、表5は150時間発酵したときの、エタノール収率を理論収率(0.51g/g)に対する百分率で示す。
【0163】
【表4】
【0164】
【表5】
【0165】
S. cerevisiaeでもキシルロキナーゼの高発現によって同時異性化発酵におけるキシロース消費量の増加およびエタノール収率の向上効果が得られた。キシルロキナーゼを高発現させたInvSc1−ScXKは、親株であるInvSc1株に比べ、72時間発酵時のエタノール収率は、30℃で2.6倍、40℃で3.2倍、150時間発酵時のエタノール収率は30℃で2.0倍、40℃で4.2倍、向上した。このように、酵母の種類に関わらず、キシロース発酵能(キシロースをエタノールに変換する能力)の向上に対して、発酵温度30℃においてだけでなく、40℃においても、キシルロキナーゼの高発現の効果があることが確認された。しかしながら、S. cerevisiaeでは40℃におけるエタノール収率は40%程度に留まった。すなわち、実施例6で達成されたような40℃において70%を超える高いエタノール収率を得るには、単にキシルロキナーゼを高発現させれば良い訳ではなく、40℃で高いキシルロース発酵能(キシルロースをエタノールに変換する能力)を有する酵母株を宿主として使用することが必要であることが確認された。C. glabrataが40℃において高いキシルロース発酵能を有することはこれまで報告されておらず、したがって、C. glabrata NFRI3163にキシルロキナーゼを高発現させることにより40℃において顕著に高いキシロース同時異性化発酵能が得られることは予測できなかったものである。
【0166】
(実施例8 相同組換えによるCandida glabrata染色体上のアルドースレダクターゼ遺伝子の破壊)
C. glabrataはS. cerevisiaeと異なり、通常、非相同末端結合により外来遺伝子の染色体への挿入が起こるが、相同部分を0.45塩基対と長くとることにより、相同組換えを起こすことができた。具体的には以下のとおりに行った。その模式図は、
図8上パネルに示している。
図8上パネルでは、相同組換えのスキームおよび非相同末端結合の模式図を示している。以下に行った手順の概要を示す。
【0167】
(アルドースレダクターゼ遺伝子破壊用DNA断片の調製方法)
GenBank DNAデータベースに登録されていたC. glabrata CBS138の染色体DNA塩基配列(アクセス番号:CR380955)の中から、S. cerevisiaeのアルドースレダクターゼ遺伝子(GRE3)と相同性を示す遺伝子(CgGRE3)を見出した。この配列情報を基にCgGRE3−1SプライマーとCgGRE3−1Aプライマーを合成し、C. glabrata NFRI3163のゲノムDNAを鋳型に用いてPCR増幅によりCgGRE3をコードするDNA断片(1.0kb)を単離した。使用したプライマーの配列を以下に示す。
【0168】
CgGRE3−1S:5’−GGCGGATCCATGTCTAGTGTTGTTACTTTGAACAATGG−3’(配列番号22)
CgGRE3−1A:5’−CCGCTCGAGTTAAGCAAAGATTGGGAACTTACCATC−3’(配列番号23)
PCRはPfuUltra II fusion HS DNA Polymeraseを使用して、95℃2分+[95℃20秒、58℃20秒、72℃15秒]×30サイクル+72℃3分の条件で行った。得られたDNA断片を制限酵素BamHIおよびXhoIで消化した後、BamHIとXhoIで消化したpBluescript II KS(+)ベクター(Stratagene)にクローニングし、pBS−CgGRE3と命名した。
図9に模式図を示す。
【0169】
次に、S. cerevisiaeのURA3遺伝子およびURA3プロモーターを、pRS406ベクターを鋳型に、ScURA3−1SプライマーおよびScURA3−1Aプライマーを用いて、PCRによって増幅した。使用したプライマーの配列を以下に示す。
【0170】
ScURA3−1S:5’−CCATCGATTAAGATTCGGTAATCTCCGAACAGAAGG−3’(配列番号24)
ScURA3−1A:5’−CCATCGATTAATTAGTTTTGCTGGCCGCATCTTC−3’(配列番号25)
PCRはPfuUltra II fusion HS DNA Polymeraseを使用して、95℃2分+[95℃20秒、56℃20秒、72℃15秒]×30サイクル+72℃3分の条件で行った。得られたDNA断片を制限酵素ClaIで消化した。pBS−CgGRE3をClaIで消化し、セルフライゲーションを防ぐためにAntarctic Phospahtase(New England Biolabs)を使用して脱リン酸化処理を行った後、URA3およびURA3プロモーターを挿入し、pBS−CgGRE3−URA3を作製した。
図10に模式図を示す。pBS−CgGRE3−URA3を鋳型に、CgGRE3−2SプライマーとCgGRE3−2Aプライマーを用いてPCRを行い、CgGRE3の5’−末端から0.45kbの位置にURA3およびURA3プロモーターが挿入されたDNA断片(2.0kb)を増幅した。使用したプライマーの配列を以下に示す。
【0171】
CgGRE3−2S:5’−ATGTCTAGTGTTGTTACTTTGAACAATGG−3’(配列番号26)
CgGRE3−2A:5’−TTAAGCAAAGATTGGGAACTTACCATC−3’(配列番号27)
PCRはPfuUltra II fusion HS DNA Polymeraseを使用して、95℃2分+[95℃20秒、50℃20秒、72℃30秒]×30サイクル+72℃3分の条件で行った。
【0172】
(アルドースレダクターゼ遺伝子が欠損したC. glabrata株の作製方法)
前項で得られた2.0kbのDNA断片を用いて、C. glabrata 3163 ura012株をElbleによる酢酸リチウム法により形質転換した。SC−Ura寒天培地上で生育してきたコロニーの中から、相同組換えを起こした組換え体をコロニーPCRにより選抜し、C. glabrataのアルドースレダクターゼ(CgGRE3)破壊株を取得した。コロニーPCRは、以下の条件で行った。
【0173】
プライマーにはCgGRE3−2S(配列番号26)とCgGRE3−2A(配列番号27)を用いて、耐熱性DNAポリメラーゼにはMightyAmp Ver.2 Polymerase(タカラバイオ)を使用した。SC−Ura寒天培地上に生育してきたコロニーをPCR反応液に懸濁し、98℃2分+[98℃10秒、50℃15秒、68℃2分]×30サイクルの条件でPCRを行った。反応終了後、反応液の一部を0.8%(w/v)アガロースゲル(タカラバイオ、アガロースLO3)で電気泳動し、PCR産物のサイズを解析した。
【0174】
その結果を
図8下パネルに示す。下パネルで示すように、コロニーPCRに供した47コロニーのうち、レーン1および2のコロニー#17およびコロニー#35が相同組換えを起こしていることが判明した。レーン3は非相同末端結合を起こしたコロニー#19の、レーン4は親株である3163 ura012株のPCRの結果を参考に示す。コロニー#35をC. glabrata 3163 Δgre3−35<NITE受託番号 P−
02495>と命名し、以下の実施例に使用した。
【0175】
(実施例9 アルドースレダクターゼ破壊株によるキシロースの同時異性化発酵)
2%(w/v)キシロースを含む5mLのYP培地にグルコースイソメラーゼ(Novozymes、Sweetzyme IT Extra、35U)を加え、実施例8で作製したアルドースレダクターゼ遺伝子を破壊したCandida glabrata 3163 Δgre3−35を用いて、72時間同時異性化発酵を行った。
【0176】
その結果、C. glabrata 3163 Δgre3−35は、30℃、40℃ともに、キシリトールの蓄積量が著しく減少した。キシリトール/エタノール比は、元のNFRI3163株に比べ、30℃において21分の1に、40℃において9分の1に減少した。また、キシロース消費量は親株と同等であるにもかかわらず、エタノール収率がNFRI3163株よりも増加しており、キシリトールの生成抑制がエタノール収率の向上に有効であることを確認した。結果を以下の表に示す。表中のエタノール収率は、添加基質量に対する収率であり、2%(w/v)キシロースを基質として初発菌体濃度0.3g(乾燥重量)/Lを用いて72時間発酵したときのエタノール収率を理論収率(0.51g/g)に対する百分率で示す。
【0177】
【表6】
【0178】
(実施例10 キシルロキナーゼ高発現とアルドースレダクターゼ欠損を組み合わせた遺伝子組換え体によるキシロースの同時異性化発酵)
本実施例では、キシルロキナーゼを高発現させ、アルドースレダクターゼを欠損させたCandida glabrata 3163 dgXK1<NITE受託番号 P−
02493>を用いてキシロースの同時異性化発酵を行った。C. glabrata 3163 dgXK1の作製は以下のとおりに行った。
【0179】
(作製手順)
実施例5に記載の方法と同様に5−フルオロオロト酸耐性を利用したスクリーニング方法により、C. glabrata 3163 Δgre3−35株についてウラシル要求性変異株を取得し、3163 Δgre3−35 ura05と命名した。実施例5で作製したpRS−CgXKを制限酵素SacIで消化した後、Elbleの酢酸リチウム法により、3163 Δgre3−35 ura05を形質転換した。SC−Ura寒天培地上で生育したコロニーを単離し、C. glabrata 3163 dgXK1を取得した。
【0180】
2%(w/v)キシロースを含む5mLのYP培地にグルコースイソメラーゼ(Novozymes、Sweetzyme IT Extra、35U)を加え、72時間同時異性化発酵を行った。その結果を表7に示す。C. glabrata 3163 dgXK1は、30℃、40℃ともに高いエタノール収率と低いキシリトール蓄積を示した。エタノール収率は元のNFRI3163株に比べ、30℃において2.6倍、40℃において2.3倍に向上した。また、キシリトール/エタノール比は、30℃において84分の1、40℃において12分の1であった。表中のエタノール収率は、添加基質量に対する収率であり、2%(w/v)キシロースを基質として初発菌体濃度0.3g(乾燥重量)/Lを用いて72時間発酵したときのエタノール収率を理論収率(0.51g/g)に対する百分率で示す。
【0181】
【表7】
【0182】
好ましい実施形態としてのCandida glabrataはキシルロキナーゼを高発現させることにより40℃におけるキシロースの同時異性化発酵において70%を超えるエタノール収率を得られたが、キシリトールの蓄積量が多く、エタノール収率の低下を招いていると考えられた。そこで、さらに好ましい実施形態を作製するために相同組換えによりC. glabrata NFRI3163の染色体上に存在するアルドースレダクターゼをコードする遺伝子を欠損させることにより、同時異性化発酵の過程でキシロースからキシリトールが生成されることを抑制した。
【0183】
以上の改良により、40℃において、理論収率の75%以上の収率でのキシロースからのエタノールの生産を達成することができた。
【0184】
実施例3で示したように、従来の方法でもキシルロキナーゼを遺伝子組換えにより酵母で高発現させているものの、40℃でキシロースを効率的に発酵することはできなかった。したがって、キシルロキナーゼの高発現が40℃という高温におけるキシロース発酵能の向上に有効であることは予測されていなかった。また、アルドースレダクターゼの欠損により、40℃という高温でのキシロース発酵能が上昇することも予測されていなかった。そして、40℃でキシルロース発酵能が高い株に対して、キシルロキナーゼ活性の増強およびアルドースレダクターゼの欠損を行うことによって、得られた本実施例で証明された効果は、これまで報告されていなかったような高いキシロース発酵能である。本実施例のように同時異性化発酵に用いるために、キシルロキナーゼの高発現やアルドースレダクターゼの欠損をさせた報告はなく、両改良が40℃という高温で同時異性化発酵においても同様の効果を起こすことは予測されていなかった。
【0185】
したがって、本発明の高温でのキシロース同時異性化発酵収率向上の効果は、顕著なものと評価することができる。
【0186】
また、40℃で発酵する酵母の報告はあるものの、本発明で作製された、特に、C. glabrataのような菌株ほどのキシロース発酵能は報告がなく、キシロース発酵能を絶対値としてみた場合でも本発明は顕著な効果を奏するというべきである。
【0187】
(実施例11 遺伝子組換え体によるグルコース・キシロース混合培地の同時異性化発酵)
稲わらのグルコースおよびキシロースの含有比を模して5%(w/v)グルコースおよび2%(w/v)キシロースを加えた5mLのYP培地に、グルコースイソメラーゼ(Novozymes、Sweetzyme IT Extra、 35U)を添加し、初発菌体濃度0.3g(乾燥重量)/LとなるようにCandida glabrata 3163 dgXK1を植菌して、同時異性化発酵を行った。
【0188】
結果を
図11に示す。C. glabrata 3163 dgXK1は、30℃、40℃ともに高いエタノール収率と低いキシリトール蓄積を示した。特に40℃においては、発酵72時間で理論収率の92%に相当する非常に高い収率でエタノールを生産した。また、グルコースイソメラーゼによって、グルコースはフルクトースに変換されるが、本株はグルコースだけでなくフルクトースも問題無くエタノール発酵することを確認した。72時間培養時のエタノール発酵の結果を以下の表に示す。表中のエタノール収率は、添加基質量に対する収率であり、初発菌体濃度0.3g(乾燥重量)/Lを用いて表示された基質を72時間発酵したときのエタノール収率を理論収率に対する百分率で示す。
【0189】
【表8】
【0190】
以上の実験から、本発明では、グルコース・キシロース混合培地の同時異性化発酵も効率よく行うことができることが示された。
【0191】
(実施例12:並行複発酵と同時異性化発酵との組み合わせによる稲わらからのエタ
ノール生産)
本実施例では、作製したCandida glabrata 3163 dgXK1の有するバイオマス原料からのエタノール発酵能を示すために、稲わらを用いて30℃および40℃において同時異性化発酵を組み合わせた並行複発酵によるエタノール生産を行った。以下に実験方法を示す。
【0192】
(稲わらの前処理方法)
徳安らの方法(特許文献5)に従い行った。乾燥稲わら(2010年度茨城県産コシヒカリ)をコーワカッター(新興和産業、モデルSU−16)で約13mmに切断後、ハンマーミル刃を装填したマルチミル(グローエンジニアリング、モデルRD−15)で約0.5mmに粉砕した。その後、グラインダー(ウエスト、モデルMPW−G008)をクリアランス0.5mmに設定して更に粉砕した。この粉砕稲わら(500mg)と水酸化カルシウム(100mg)を容量10mLのガラスバイアル(日電理化硝子、SVG−10)に入れよく混合した後、3.33mLの蒸留水を加え、ガラスバイアルをゴム栓(日電理化硝子、液状用ブチルゴム(大))および穴あきキャップ(日電理化硝子)にて密封し、120℃で1時間加熱処理を行った。室温まで冷却した後、注射針(テルモ、20G×70)を使用してバイアル内の空気を二酸化炭素ガスに置換し、さらに、二酸化炭素ガスを1.5気圧に加圧しながら約5mL注入した。一晩、室温に放置し、稲わら前処理物を完成させた。
【0193】
(同時異性化発酵を組み合わせた並行複発酵方法)
稲わら前処理物の入ったバイアルを一旦開封し、グルコースイソメラーゼ(Novozymes、Sweetzyme IT Extra、35U)を添加した後、バイアルを再び密封し、二酸化炭素ガスを1.5気圧に加圧しながら約5mL注入した。セルラーゼ製剤(Novozymes、Cellclast 1.5L、1.1mg)、β−グルコシダーゼ製剤(Novozymes、Novozyme 188、0.28mg)およびヘミセルラーゼ製剤(Novozymes、Ultraflo L、0.45mg)を注射針(テルモ、20G×70)で添加した。YPD培地で一晩好気的に培養したC. glabrata 3163 dgXK1を遠心分離で集菌し、滅菌水で洗浄した後、初発菌体濃度が1.5g(乾燥重量)/Lとなるよう、稲わら前処理物および酵素の入ったバイアルに注射針(テルモ、20G×70)で添加した。酵母を加えたバイアルを30℃および40℃に設定した恒温器内に設置した転倒回転型撹拌器(ATR、Rotamix)に取り付け、50RPMで回転させながら発酵を行った。注射針(テルモ、20G×70)を用いて経時的にサンプリングを行い、採取した発酵液から遠心分離によって酵母菌体および稲わら残渣を除き、続いて限外ろ過(ポール、ナノセップ遠心ろ過デバイス、10K)により上清から糖化酵素を除去した後、HPLCによって発酵液に含まれるエタノール及び糖類の定量分析を行った。HPLCによる解析は、実施例4に記載の方法により行った。
【0194】
データを、以下の表および
図12に示す。表中の数値は120時間発酵時の結果を示す。
【0195】
【表9】
【0196】
以上のように、稲わら前処理物も40℃で並行複発酵可能であり、理論収率(稲わら中に含まれる全ての糖がエタノールに変換された場合)の75%でエタノール発酵されたことを確認した。40℃で並行複発酵と同時異性化発酵を組み合わせて行った例はこれまでになく、まさに、本発明において初めて達成された例であるといえる。
【0197】
(実施例13:基質キシロース濃度および初発菌体濃度の変動の影響)
本実施例では、基質キシロース濃度および初発菌体濃度を変更したときの影響を確認する実験を行った。実験手順は以下のとおりである。
【0198】
2%(w/v)もしくは6%(w/v)キシロースを含有する5mLのYP培地を発酵用培地とした。YPD培地で一晩、好気的に種培養した酵母(C. glabrata 3163 dgXK1およびS. cerevisiae InvSc1)を遠心分離により集菌した後、菌体を滅菌水で洗浄し、発酵試験に用いる酵母菌体とした。
【0199】
上記発酵用培地5mLを10mL容量のガラスバイアル(日電理化硝子、SVG−10)に入れ、そこに0.3g(乾燥重量)/L、2g(乾燥重量)/Lもしくは6g(乾燥重量)/Lとなるよう酵母菌体を加えた。さらにグルコースイソメラーゼ(Novozymes、Sweetzyme IT Extra)を2%(w/v)キシロースを含む培地には35U、6%(w/v)キシロースを含む培地には105U加えた後、バイアルを液状用ブチルゴム(大)と穴あきキャップ(日電理化硝子)にて密封し、40℃で同時異性化発酵を行った。発酵液に含まれるエタノールおよび糖類を高速液体クロマトグラフィーにより測定し、エタノール収率およびキシリトール蓄積量を求めた。同時異性化発酵およびHPLCによる解析は、実施例4と同様に行った。
【0200】
以下の表に72時間発酵における結果を示す。
【0201】
【表10】
【0202】
C. glabrata 3163 dgXK1の40℃でのキシロース同時異性化発酵において、初発菌体濃度を増やすことにより、エタノール収率の向上が確認された。一方、キシリトールの蓄積量の増加はほとんど無かった。6%(w/v)という高濃度のキシロースに対しても、初発菌体濃度を2g(乾燥重量)/Lに増やすことにより、70%以上のエタノール収率を確保していた。一方、S. cerevisiae InvSc1においても、初発菌体濃度を増やすことによりエタノール収率の向上が見られたが、キシロース濃度にかかわらず、初発菌体濃度6g(乾燥重量)/Lを用いても本発明により製造したC. glabrata 3163 dgXK1の初発菌体濃度6g(乾燥重量)/Lの場合はもとより、0.3g(乾燥重量)/Lの場合のエタノール収率も上回ることはできなかった。このことは、C. glabrata 3163 dgXK1の40℃でのキシロース同時異性化発酵において顕著に優れた性能を有していることを示している。
【0203】
初発菌体濃度を増やせばエタノール収率は向上するが、より多くの酵母菌体を調製するために種培養の量も増やさなければならない。初発菌体濃度0.3g(乾燥重量)/Lは、発酵液の1/10量程度の種培養で済むため、現実的な条件である。また、並行複発酵では、発酵終了後の発酵液の中にバイオマスの残渣が存在するため、発酵液から酵母をバイオマス残渣と分けて回収し、再利用することは困難である。したがって出来るだけ少ない酵母量で発酵を行えることが並行複発酵を経済的に行うための重要な特徴のひとつであるところ、本発明では、比較的少ない種培養でも効率よく並行複発酵行うことができた点も留意すべきであることが理解される。
【0204】
(実施例14 40℃においてキシルロース発酵能の高いSaccharomyces cerevisiaeを用いたキシロースの同時異性化発酵)
実施例1に記載の方法で、農業・食品産業技術総合研究機構 食品総合研究所が保有する酵母株の中から40℃においてキシルロース発酵能が高いSaccharomyces cerevisiae株としてSt10−1−1<受託番号 NITE P−01620>を単離した。S. cerevisiae St10−1−1の同時異性化発酵能について、2%(w/v)キシロースを含むYP培地にグルコースイソメラーゼ(Novozymes、Sweetzyme IT Extra,35U)を加えた培地を用いて解析した。以下に手順を示す。
【0205】
(同時異性化発酵の手順)
S. cerevisiae St10−1−1を、30℃でYPD培地を用いて好気的に一晩種培養した後、OD600を測定し、種培養液の菌体濃度を求めた。菌体濃度は、OD600=1の場合、0.4g(乾燥重量)/Lに相当するものとして計算した。種培養液を遠心分離により集菌し、菌体を滅菌水で洗浄した後、容量10mLのガラスバイアル(日電理化硝子、SVG−10)に入った2%(w/v)キシロースを含有する5mLのYP培地に、初発菌体濃度が0.3g(乾燥重量)/Lとなるように添加した。さらに35Uのグルコースイソメラーゼ(Novozymes、Sweetzyme IT Extra)を加えた後、バイアルをゴム栓(日電理化硝子、液状用ブチルゴム(大))および穴あきキャップ(日電理化硝子)にて密封した。恒温回転式浸とう培養器(タイテック、モデルBR−22FP・MR)を用いて、30℃および40℃で、200rpmで振とう培養を行った。注射針(テルモ、20G×70)を用いてサンプリングを行い、採取した発酵液から遠心分離によって酵母菌体を除いた後、HPLCによって、発酵液に含まれるエタノール及び糖類の定量分析を行った。HPLCには、前述の島津製作所製装置に、配位子交換クロマトグラフィー用カラム(バイオラッド、Aminex HPX−87H)を接続して使用した。移動相に水を用いて、流速0.6ml/分、カラム温度50℃で分析を行った。また、カラムの保護のためにガードカラム(Shodex SH−G)をHPX−87Hカラムの前に連結した。得られたクロマトグラムについてLC Solution解析ソフトウエアを使用して発酵液中のエタノールおよび糖類の定性および定量分析を行った。
【0206】
以下の表に72時間発酵時の結果を示す。表中のエタノール収率は、添加基質量に対する収率であり、2%(w/v)キシロースを基質として初発菌体濃度0.3g(乾燥重量)/Lを用いて72時間発酵したときのエタノール収率を理論収率に対する百分率で示す。なお、1gのキシロースから0.51gのエタノールの生成を理論収率とした。
【0207】
【表11】
【0208】
その結果、S. cerevisiae St10−1−1は、40℃において発酵能が低下することなく、むしろ30℃よりも高いエタノール収率を示した。
【0209】
(実施例15 キシルロキナーゼを高発現させた40℃においてキシルロース発酵能の高いSaccharomyces cerevisiaeを用いたキシロースの同時異性化発酵)
本実施例では、S. cerevisiaeのキシルロキナーゼ遺伝子を遺伝子組換えにより上記S. cerevisiae St10−1−1株に導入し、キシルロキナーゼの高発現により同時異性化発酵の収率を向上させた。以下にそのプロトコールを示す。
【0210】
(キシルロキナーゼを高発現株の作製)
実施例3で作成したpAUR−XK(配列番号39)を制限酵素BsiWIで直鎖状にした後、S. cerevisiae St10−1−1をElbleによる酢酸リチウム法により形質転換した。YPD−AbA寒天培地上で生育してきたコロニーを単離し、得られた形質転換株をS. cerevisiae St10−ScXK<受託番号 NITE P−01618>と命名した。
【0211】
(同時異性化発酵の手順)
2%(w/v)キシロースを含む5mLのYP培地にグルコースイソメラーゼ(Novozymes、Sweetzyme IT Extra、35U)を加え、S. cerevisiae St10−ScXK(受託番号 NITE P−01618)を初発菌体濃度が0.3g(乾燥重量)/Lとなるよう添加し、72時間同時異性化発酵を行った。発酵液に含まれるエタノールおよび糖類をHPLCにより測定し、キシロース消費量、エタノール収率およびキシリトール蓄積量を求めた。同時異性化発酵およびHPLCによる解析は、実施例14と同様に行った。結果を以下の表に示す。表中のエタノール収率は、添加基質量に対する収率であり、2%(w/v)キシロースを基質として初発菌体濃度0.3g(乾燥重量)/Lを用いて、72時間発酵したときのエタノール収率を理論収率(0.51g/g)に対する百分率で示す。
【0212】
【表12】
【0213】
その結果、S. cerevisiae St10−ScXKは、30℃、40℃ともに高いキシロース消費量およびエタノール収率を示した。親株であるSt10−1−1株に比べ、発酵温度30℃において2.4倍、40℃において1.9倍、エタノール収率が向上し、40℃でも理論収率の75%を超える高いエタノール収率を示した。
【0214】
S. cerevisiaeでもキシルロキナーゼの高発現によって同時異性化発酵におけるキシロース消費量の増加およびエタノール収率の向上効果が得られることは、すでに実施例7で示しているが、この時の40℃におけるエタノール収率は40%程度に留まった。すなわち、本実施例で達成されたような40℃において75%を超える高いエタノール収率を得るには、単にキシルロキナーゼを高発現させれば良い訳ではなく、40℃で高いキシルロース発酵能(キシルロースをエタノールに変換する能力)を有する酵母株を宿主として使用することが必要であることがここでも確認された。一般にS. cerevisiaeの発酵に適した温度は30℃〜35℃とされており、S. cerevisiaeにキシルロキナーゼを高発現させることにより40℃において顕著に高いキシロース同時異性化発酵能が得られることは予測できなかったものである。
【0215】
(実施例16 相同組換えによるSaccharomyces cerevisiae染色体上のアルドースレダクターゼ遺伝子の破壊)
相同組換えに基づく外来遺伝子の染色体への挿入によって、Saccharomyces cerevisiaeの内在性アルドースレダクターゼ遺伝子(GRE3)の破壊を行った。S. cerevisiae St10−1−1は二倍体であるため、
図13に示したように、2種類の抗生物質耐性遺伝子を利用して、2本の相同染色体上のGRE3遺伝子を両方とも破壊した。以下に行った手順の概要を示す。
【0216】
(1本の染色体上のアルドースレダクターゼ遺伝子が欠損したS. cerevisiae株の作製方法)
GenBank DNAデータベースに登録されていたS. cerevisiae S288cの染色体DNA塩基配列(アクセス番号:BK006934)の中から、アルドースレダクターゼ遺伝子(GRE3)およびその近傍の配列情報を得た。GRE3遺伝子5’―上流領域の40塩基に対する相同配列とpPICZ Bプラスミド(インビトロジェン)上のTEF1プロモーターの20塩基に対する相同配列とを連結したGRE3ZEOR−1Sプライマー、およびGRE3遺伝子3’―下流領域の40塩基に対する相同配列とpPICZ Bプラスミド上のCYC1ターミネーターの20塩基に対する相同配列とを連結したGRE3ZEOR−1Aプライマーを合成した。これらのプライマーを用いてpPICZ Bプラスミドを鋳型にPCR増幅することにより、ゼオシン耐性遺伝子(ZEO)発現カセット(TEF1プロモーター―ZEO―CYC1ターミネーターの融合遺伝子)の両端に、GRE3遺伝子の5’―および3’―近傍領域の相同配列が40塩基ずつ付加されたDNA断片を得た。使用したプライマーの配列を以下に示す。下線部分がGRE3遺伝子の近傍領域に対する相同配列である。
【0217】
GRE3ZEOR−1S:5’−
ATAGTTGTCAGTGCAATCCTTCAAGACGATTGGGAAAATAAGTGAGACCTTCGTTTGTGC−3’(配列番号32)
GRE3ZEOR−1A:5’−
ATGTAAAAATTTATACACATATACAGCATCGGAATGAGGGATTAAAGCCTTCGAGCGTCC−3’(配列番号33)
PCRはPfuUltra II fusion HS DNA Polymeraseを使用して、95℃2分+[95℃20秒、55℃20秒、72℃30秒]×10サイクル+[95℃20秒、65℃20秒、72℃30秒]×20サイクル+72℃3分の条件で行った。
【0218】
PCRにより得られたDNA断片を用いてS. cerevisiae St10−1−1株をElbleによる酢酸リチウム法により形質転換し、50 mg/L ゼオシン(インビトロジェン)を含むYPD寒天培地上で生育したコロニーを単離し、S. cerevisiae St10 GRE3::ZEOを取得した。
【0219】
(2本の染色体上のアルドースレダクターゼ遺伝子が欠損したS. cerevisiae株の作製方法)
次に、GRE3遺伝子5’―上流領域の40塩基に対する相同配列とp427―TEFプラスミド(デュアルシステムズ・バイオテック)上のTEF1プロモーターの20塩基に対する相同配列とを連結したGRE3KANR−1Sプライマーおよび、GRE3遺伝子3’―下流領域の40塩基に対する相同配列とp427―TEFプラスミド上のTEF1ターミネーターの20塩基に対する相同配列とを連結したGRE3KANR−1Aプライマーを合成した。これらのプライマーを用いてp427―TEFプラスミドを鋳型にPCR増幅することにより、G418耐性遺伝子(KAN)発現カセット(TEF1プロモーター―KAN―TEF1ターミネーターの融合遺伝子)の両端に、GRE3遺伝子の5’―および3’―近傍領域の相同配列が40塩基ずつ付加されたDNA断片を得た。使用したプライマーの配列を以下に示す。下線部分がGRE3遺伝子の近傍領域に対する相同配列である。なお、KAN遺伝子がすでにZEO遺伝子が挿入されている側の染色体と相同組換えを起こさないようにするため、KAN発現カセットの両端には、ZEO発現カセットの両端に付加したものよりも内側のGRE3近傍領域に対する相同配列を付加した。
【0220】
GRE3KANR−1S:5’−
GTAATATAAATCGTAAAGGAAAATTGGAAATTTTTTAAAGCCCAGAATACCCTCCTTGAC−3’
(配列番号34)
GRE3KANR−1A:5’−
TTGTTCATATCGTCGTTGAGTATGGATTTTACTGGCTGGAGGATGGCGGCGTTAGTATCG−3’(配列番号35)
PCRはPfuUltra II fusion HS DNA Polymeraseを使用して、95℃2分+[95℃20秒、55℃20秒、72℃30秒]×10サイクル+[95℃20秒、65℃20秒、72℃30秒]×20サイクル+72℃3分の条件で行った。
【0221】
PCRにより得られたDNA断片を用いてS. cerevisiae St10 GRE3::ZEO株をElbleによる酢酸リチウム法により形質転換し、200 mg/L G418(カルバイオケム)を含むYPD寒天培地上で生育したコロニーを単離し、S. cerevisiae St10 Δgre3−2<受託番号 NITE P−01619>と命名した。さらに、St10 Δgre3−2が、50 mg/L ゼオシンおよび200 mg/L G418を含むYPD寒天培地上でも生育し、両抗生物質に耐性を有していることも確認した。
【0222】
(実施例17 アルドースレダクターゼ破壊株によるキシロースの同時異性化発酵)
2%(w/v)キシロースを含む5mLのYP培地にグルコースイソメラーゼ(Novozymes、Sweetzyme IT Extra、35U)を加え、実施例16で作製したアルドースレダクターゼ遺伝子を破壊したSaccharomyces cerevisiae St10 Δgre3−2を用いて、72時間同時異性化発酵を行った。
【0223】
その結果、S. cerevisiae St10 Δgre3−2は、30℃ではキシリトールの蓄積量に変化は無かったが、40℃においてキシリトールの蓄積量が減少した。キシリトール/エタノール比は、親株であるSt10−1−1に比べ、40℃において19%減少した。結果を以下の表に示す。表中のエタノール収率は、添加基質量に対する収率であり、2%(w/v)キシロースを基質として初発菌体濃度0.3g(乾燥重量)/Lを用いて72時間発酵したときのエタノール収率を理論収率(0.51g/g)に対する百分率で示す。
【0224】
【表13】
【0225】
(実施例18 キシルロキナーゼ高発現とアルドースレダクターゼ欠損を組み合わせた遺伝子組換え体によるキシロースの同時異性化発酵)
本実施例では、キシルロキナーゼを高発現させ、アルドースレダクターゼを欠損させたSaccharomyces cerevisiae St10 dgXK1<NITE受託番号 P−01617>を用いてキシロースの同時異性化発酵を行った。S. cerevisiae St10 dgXK1の作製は以下のとおりに行った。
【0226】
(作製手順)
実施例15に記載の方法と同様にpAUR−XK(配列番号39)を制限酵素BsiWIで直鎖状にした後、S. cerevisiae St10 Δgre3−2(受託番号 NITE P−01619)をElbleによる酢酸リチウム法により形質転換した。YPD−AbA寒天培地上で生育してきたコロニーを単離し、得られた形質転換株をS. cerevisiae St10 dgXK1(受託番号 NITE P−01617)と命名した。
【0227】
(同時異性化発酵)
2%(w/v)キシロースを含む5mLのYP培地にグルコースイソメラーゼ(Novozymes、Sweetzyme IT Extra、35U)を加え、72時間同時異性化発酵を行った。その結果を表14に示す。S. cerevisiae St10 dgXK1は、30℃、40℃ともに高いエタノール収率と低いキシリトール蓄積を示した。特にエタノール収率は、40℃でも80%以上と非常に高い値を維持していた。親株であるSt10−1−1との比較では、エタノール収率は、30℃において2.5倍、40℃において2.0倍に向上した。また、キシリトール/エタノール比は、30℃において5.3分の1、40℃において3.3分の1であった。表中のエタノール収率は、添加基質量に対する収率であり、2%(w/v)キシロースを基質として初発菌体濃度0.3g(乾燥重量)/Lを用いて72時間発酵したときのエタノール収率を理論収率(0.51g/g)に対する百分率で示す。
【0228】
【表14】
【0229】
(実施例19 遺伝子組換え体によるグルコース・キシロース混合培地の同時異性化発酵)
稲わらのグルコースおよびキシロースの含有比を模して5%(w/v)グルコースおよび2%(w/v)キシロースを加えた5mLのYP培地に、グルコースイソメラーゼ(Novozymes、Sweetzyme IT Extra、 35U)を添加し、初発菌体濃度0.3g(乾燥重量)/LとなるようにSaccharomyces cerevisiae St10−1−1あるいはSt10 dgXK1を植菌して、同時異性化発酵を行った。
【0230】
結果を
図14に示す。S. cerevisiae St10 dgXK1(受託番号 NITE P−01617)は、30℃、40℃ともに親株であるSt10−1−1よりも高いエタノール収率と低いキシリトール蓄積を示した。特に40℃においては、発酵72時間で理論収率の88%に相当する非常に高い収率でエタノールを生産した。72時間培養時のエタノール発酵の結果を以下の表に示す。表中のエタノール収率は、添加基質量に対する収率であり、初発菌体濃度0.3g(乾燥重量)/Lを用いて表示された基質を72時間発酵したときのエタノール収率を理論収率に対する百分率で示す。
【0231】
【表15】
【0232】
以上の実験から、本発明では、グルコース・キシロース混合培地の同時異性化発酵も効率よく行うことができることが示された。
【0233】
(実施例20:並行複発酵と同時異性化発酵との組み合わせによる稲わらからのエタノール生産)
本実施例では、作製したSaccharomyces cerevisiae St10 dgXK1の有するバイオマス原料からのエタノール発酵能を示すために、稲わらを用いて30℃および40℃において同時異性化発酵を組み合わせた並行複発酵によるエタノール生産を行った。稲わらの前処理方法および同時異性化発酵を組み合わせた並行複発酵方法は、使用菌株を除き実施例12に記載した通りである。また、HPLCによる発酵液に含まれるエタノール及び糖類の定量分析は、実施例14に記載の方法により行った。
【0234】
データを、以下の表および
図15に示す。表中の数値は120時間発酵時の結果を示す。
【0235】
【表16】
【0236】
以上のように、稲わら前処理物も40℃で並行複発酵可能であり、理論収率(稲わら中に含まれる全ての糖がエタノールに変換された場合)の71%でエタノール発酵されたことを確認した。
【0237】
(実施例21:基質キシロース濃度および初発菌体濃度の変動の影響)
本実施例では、基質キシロース濃度および初発菌体濃度を変更したときの影響を確認する実験を行った。実験手順は以下のとおりである。
【0238】
2%(w/v)もしくは6%(w/v)キシロースを含有する5mLのYP培地を発酵用培地とした。YPD培地で一晩、好気的に種培養した酵母(Saccharomyces cerevisiae St10 dgXK1(受託番号 NITE P−01617))を遠心分離により集菌した後、菌体を滅菌水で洗浄し、発酵試験に用いる酵母菌体とした。
【0239】
上記発酵用培地5mLを10mL容量のガラスバイアル(日電理化硝子、SVG−10)に入れ、そこに0.3g(乾燥重量)/L、2g(乾燥重量)/Lもしくは6g(乾燥重量)/Lとなるよう酵母菌体を加えた。さらにグルコースイソメラーゼ(Novozymes、Sweetzyme IT Extra)を2%(w/v)キシロースを含む培地には35U、6%(w/v)キシロースを含む培地には105U加えた後、バイアルを液状用ブチルゴム(大)と穴あきキャップ(日電理化硝子)にて密封し、40℃で同時異性化発酵を行った。発酵液に含まれるエタノールおよび糖類を高速液体クロマトグラフィーにより測定し、エタノール収率およびキシリトール蓄積量を求めた。同時異性化発酵およびHPLCによる解析は、実施例14と同様に行った。
【0240】
以下の表に72時間発酵における結果を示す。
【0241】
【表17】
【0242】
以上のように、本発明の好ましい実施形態を用いて本発明を例示してきたが、本発明は、特許請求の範囲によってのみその範囲が解釈されるべきであることが理解される。本明細書において引用した特許、特許出願および文献は、その内容自体が具体的に本明細書に記載されているのと同様にその内容が本明細書に対する参考として援用されるべきであることが理解される。