【実施例】
【0105】
実施例1
1. 検出プローブの作製
下記式で示される構造を有する四重らせん構造検出プローブ(L1Cy5-7OTD)を作製した。
【0106】
【化4】
【0107】
すなわち、7つのオキサゾールからなる大環状構造を有し、側鎖としてCy5基を有するL1Cy5-7OTDを、次のスキームに従って合成した。
【0108】
【化5】
【0109】
(1)反応a
トリオキサゾール1(1070mg)を、THFと水の混合溶媒(混合比率3:1 = v/v 30mL)に溶かし、一水和水酸化リチウム(98mg)を加えることにより、カルボン酸を生成させた。反応は、0℃で45分間行った。反応溶液をイオン交換樹脂Dowex50WX4(商品名)により中和し、樹脂を濾液により除き、濾液を精製することなく次の反応に用いた。
【0110】
(2)反応b
トリオキサゾール2(1020mg)を、水素をエアレーションしたテトラヒドロフラン(THF)とメタノールの混合溶媒(混合比率1:1 = v/v 30mL)に溶解し、水酸化パラジウム/炭素の存在下(30mg)に、ベンジルオキシカルボニル基(Cbz)を脱離した。反応は、25℃で14時間行った。反応溶液を珪藻土により濾過し、濾液を精製することなく次の反応に用いた。
【0111】
(3)反応c
トリオキサゾール1から合成したカルボン酸と、トリオキサゾール2から合成したアミンとを、THF、水およびMeOHの混合溶媒に溶かし、N−メチルモルホリン4−(4,6−ジメトキシ−1,3,5−トリアジン−2−イル)−4−メチルモルホルニウムクロライド(DMT−MM)(986mg)とN−メチルモルホリン(NMM)(400μL)を加えることにより、91%の収率で直鎖状ヘキサオキサゾール3を1.64g得た。反応は、25℃で25時間行った。
【0112】
(4)反応d−f
反応aと同じ条件で、ヘキサオキサゾール3のCbz基を脱離させ、反応bと同じ条件で、ヘキサオキサゾール3のメチルエステルを脱保護した。その後、生じたアミノ酸を、ジイソプロピルエチルアミン(Et
iPr
2N) (250μL)、4−ジメチルアミノピリジン(DMAP)(179mg)及びジフェニルリン酸アジド(DPPA)(320μL)を加えたN‘N−ジメチルホルムアミドとジクロロメタン(1:2 = v/v 100mL)の混合溶媒中に、3mMとなるよう高希釈して環化し、ヘキサオキサゾール3から69%の収率で大環状ビスアミド4を179mg得た。反応は、25℃で3日間行った。
【0113】
(5)反応g−i
大環状ビスアミド4(228mg)をTHF (40mL)に溶かし、HF・ピリジン (1.6mL)により、tert−ブチルジメチルシリル(TBS)基を脱保護し、メタンスルホニルクロリド(MsCl)(110μL)とトリエチルアミン(Et
3N)(300μL)によるメシレーション後(25℃、1時間)、ジアザビシクロウンデセン(DBU)(420μL)の処理(25℃、1時間)により96%の収率でオレフィン5を186mg得た。
【0114】
(7)反応j
アセトニトリル溶媒中において、オレフィン5(25mg)をN−ブロムスクシンイミド(NBS)(7mg)、さらに炭酸セシウム(59mg)により環化して(65℃、14時間)、36%の収率でヘプタオキサゾール6を9mg得た。
【0115】
(8)反応k及びl
クロロホルム (9.5mL) 溶媒中において、ヘプタオキサゾール6のtert−ブトキシカルボニル(Boc)基をトリフルオロ酢酸(TFA)(0.5mL)により脱保護し(25℃、24時間)、99%の収率でアミンを得た。その後得られたアミン (19mg) をDMF (1mL) 中、炭酸水素ナトリウム (23mg) 中、蛍光色素であるCy5と連結したスクシンイミド (25mg) と反応させた。反応は、60℃で36時間行い、78%の収率で生成物(L1Cy5−7OTD)を21mg得た。
【0116】
(9)NMRスペクトル測定
上記スキームにより合成されたL1Cy5−7OTDについて、重水素置換溶媒中において核磁気共鳴装置で測定を行い、NMRスペクトルを測定した。その結果は以下のとおりである。
【0117】
1H NMR (500 MHz、ref 2.5 ppm for DMSO d-6)
δ9.05 (1H、s)、9.02 (1H、s)、8.99 (1H、s)、8.98 (1H、s)、8.97 (1H、s)、8.96 (1H、s)、8.84 (1H、s)、8.65-8.63 (1H、d、J = 7.45 Hz)、8.29-8.24 (2H、dd、J = 13.75、12.60 Hz)、7.72 (1H、m)、7.60-7.54 (2H、d、J = 7.45 Hz)、7.38-7.18 (4H、m)、6.48 (1H、d、J = 12.60 Hz)、6.24-6.21 (1H、d、J = 13.75 Hz)、6.20-6.17 (1H、d、J = 13.75 Hz)、5.51 (1H、m)、4.07 (1H、t、J = 7.45)、2.93 (2H、m)、2.02-1.05 (29H、m)
【0118】
13C NMR (125 MHz、ref 49.0 ppm for DMSO d-6)
δ173.07、172.38、171.48、163.97、159.41、155.80、155.63、155.35、155.23、155.08、154.63、153.66、143.07、142.61、141.84、140.92、140.84、140.63、140.40、139.69、138.94、138.87、138.60、136.51、129.97、129.62、128.68、128.12、124.53、124.43、122.16、122.05、110.86、103.06、102.92、69.68、48.69、47.53、37.91、34.91、33.82、31.00、28.45、27.01、26.86、26.47、25.57、24.72、21.25.
【0119】
(10)質量分析
上記スキームにより合成されたL1Cy5−7OTDについて、ESI−MS装置にて測定を行い、分子量を測定したところ、分子量は1062.4304であった。また、得られた分子量値から元素組成を推定したところC
59H
56N
11O
9(理論値1062.4263)であった。この結果から目的の化合物が合成できたことを確認した。
【0120】
(11)HPLC測定
上記スキームにより合成されたL1Cy5−7OTDについて、逆相カラムを用いた分析を行い、純度を測定したところ99%以上であった。
【0121】
実施例2 マウスゲノムDNA解析及び評価
1. マウスゲノムDNA解析
実施例1で作製した検出プローブを用いてマウスゲノムDNAを解析した。被検DNAは、マウスゲノムDNA中のCpG islandのみ(約16000個)をチップ上に固相化したDNAマイクロアレイ(Agilent社製G4811A)であった。具体的には以下の操作を行った。
【0122】
(1) 終濃度10 nM L1Cy5-7OTDをBuffer A (50mM Tris-HCl (pH7.5)、100mM KCl、1×Hi-RPM Hybridization Buffer (Agilent))を用いて調製した。
(2) ガスケットスライド(Agilent)に(1)で調製した10 nM L1Cy5-7OTDを240μL加え、そこにMouse CpG island array (Agilent、G4811A)を乗せ、ハイブリチャンバーにセットとした。
(3) ハイブリチャンバーにセットしたアレイをハイブリゼーションオーブン(Agilent)にセットし、25℃、1時間、20 rpmでインキュベートした。
(3) 1時間後、ハイブリチャンバーを解体し、アレイをBuffer B (50mM Tris-HCl (pH7.5)、100mM KCl)中で5分間、25℃で洗浄した。
(4) 洗浄後、アレイをAgilent DNA Microarray scanner with surescan High resolution thchnology (Agilent)を用いてスキャンし、蛍光画像を得た。
(5) 得られた蛍光画像から、各プローブの蛍光強度(rProcessedSignal)及び塩基番号をAgilent Feature Extraction及びAgilent Genomic Workbenchを用いて抽出した。
(6) すべてのプローブの蛍光強度の平均値(394)に対して十分高い蛍光強度を示したプローブ(1705以上)をMicrosoft Excelにより抽出した。その結果、3122配列が抽出された。
(7) 抽出された3122配列の内、グアニンの2連続配列を4箇所以上含む配列のみ抽出した。その結果、1998配列を抽出することができた。
【0123】
2.ルシフェラーゼレポーターアッセイ
上記1により同定された、四重らせん構造部位を持つ塩基配列のうち、いくつかのものについて、近傍遺伝子に対する影響をルシフェラーゼレポーターアッセイにより調べた。具体的には以下の操作を行った。
【0124】
(1) C57BL/6マウスゲノムDNAを鋳型として、Txndc5、Shd、Metrnl、Nup107、Rab1b、Smarcd1 CpG island (CGI)を以下の条件でPCR増幅した。
【0125】
【表2】
【0126】
【表3】
【0127】
【表4】
【0128】
(2) PCR産物をWizard(登録商標) SV Gel and PCR Clean-Up System(Promega)を用いて精製し、以下の組成でPCR産物とSfiI (NEB)を混合し、50℃2時間インキュベートすることによりPCR産物を切断した。
【0129】
【表5】
【0130】
(3) (2)と同様にホタルルシフェラーゼ遺伝子を持つpGL4.10[luc] vector (promega)をSfiIで切断した。組成は以下に示す。
【0131】
【表6】
【0132】
(4) (2)、(3)で切断したPCR産物及びpGL4 vectorを1%アガロースを用いて電気泳動し、目的のバンドを切り出し、Wizard(商品名) SV Gel and PCR Clean-Up System(Promega)を用いて精製した。
【0133】
(5) (4)で調製したpGL4 vector (18 fmol)、PCR産物(54 fmol)を混合し、Quickligation(NEB)を用いて5min 室温でライゲーションした。組成は以下に示す。
【0134】
【表7】
【0135】
(6) (5)で得られたライゲーションサンプルを7μL用い、70μLのJM110コンピテントセル(Agilent)に加え、30分氷上でインキュベートした。30分後、ヒートショック(42℃45秒インキュベート後、氷上で2分間インキュベート)を行い、得られた菌体をアンピシリンを含むLBプレートにプレーティングし、37℃で一晩培養した。
(7) 得られたコロニーをピックアップし、3mLのLB培地で37℃で一晩培養した。
(8) 得られた菌体からPureYield(商品名)Plasmid Miniprep System(promega)を用いてプラスミドを調製した。
(9) 得られたプラスミドをシークエンスし、ルシフェラーゼ遺伝子上流の目的の位置に標的CpG islandがクローニングされていることを確認した。
(10) 600 fmolの各プラスミドとコントロールベクターである12 fmolのウミシイタケルシフェラーゼ遺伝子発現vector pGL4.74(promega)を混合し、Opti-MEM(Invitrogen)を用いて300μLに調整し、6μL Lipofectoamine2000 (Invitrogen)と294μLのOpti-MEMを加え、20分間室温でインキュベートした。
(11)前日に2.5×10
4 cell/wellで24wellプレートに播種したNIH3T3細胞の培地を400μLのOpti-MEMに交換し、そこに(10)で調製したプラスミド混合溶液を100μLずつ6wellに加え、37℃、5% CO
2条件下で4時間インキュベートした。
(12) 4時間後、1uM 7OTDを含む培地又は7OTDを含まない培地に交換し、20時間37℃、5% CO
2条件下で培養した。
(13) 20時間後、Dual-Luciferase reporter Assay system (promega)を用いて、ホタルルシフェラーゼ及びウミシイタケルシフェラーゼの発光量を定量した。発光量はARVOMX 1420 Multilabel counter(Perkin Elmer)を用いて定量した。
【0136】
(14) それぞれのホタルルシフェラーゼの発現量はコントロールベクターから発現したウミシイタケルシフェラーゼの発現量で標準化した。その結果、プロモーターをクローニングしていないベクターをトランスフェクションした場合と比較すると、Txndc5、Shd、Metrnl、Nup107、Rab1b、Smarcd1 CGIをクローニングした場合のホタルルシフェラーゼの発現量はそれぞれ7.9、2.9、0.5、0.8、517、34倍になった(表8)。つまり、Txndc5、Shd、Rab1b、Smarcd1 CGIはNIH 3T3細胞中でプロモーター活性を持つことが示された。1μM Gqリガンドを培地に加えるとTxndc5又はRab1b CGIをクローニングしたvectorではホタルルシフェラーゼの発現量の上昇が観察された。つまり、Txndc5 CGIとRab1b CGIはG4構造を形成することにより、転写活性が上昇することが示唆された。
【0137】
【表8】
【0138】
3. ゲルシフトアッセイ
1で同定された1998配列の中から配列(下記表9)をランダムに選択し、これら97配列が実際にL1Cy5-7OTDと結合するかゲルシフトアッセイを実施した。
【0139】
【表9-1】
【0140】
【表9-2】
【0141】
【表9-3】
【0142】
【表9-4】
【0143】
その結果、すべてのプローブDNAがL1Cy5-7OTDと結合していることが確認された。また、これら97配列がG4構造を形成しているかCDスペクトルを測定したところ、G4構造特有のCDスペクトルを示したことから、これらがG4構造を形成していることが確認された。なお、この操作は具体的には次のように行った。
【0144】
(1) 500μM L1Cy5-7OTDを25 mM Tris-HCl (pH7.0)、250mM KClを用いて調製した。
(2) (1)で調製した500μM L1Cy5-7OTD 1.0μLに、25 mM Tris-HCl (pH7.0)、250mM KClを5.0μL、150mg/mL Ficol 400水溶液を2.0μL、種々の50μM DNAを2.0μL加え、これを電気泳動サンプルとした(L1Cy5-7OTDの終濃度は50μM、DNAの終濃度は10μM)。また、10 bp DNA ladder (Invitrogen) を、同量の150mg/mL Ficol 400水溶液と混合し、これを泳動用DNAラダーとした。
(3) 12%非変性ポリアクリルアミドゲルに、(2)で調製した電気泳動サンプル0.5μLおよび泳動用DNAラダー2.0μLをロードし、1×TBE bufferを用いて100 Vで10分間、その後200 Vで30分間電気泳動を行った。
(4) 泳動開始から40分後、ゲルをゲル板から外し、染色液A (1.0mg/mL Stains-all(商品名) ホルムアミド溶液200μLを染色バッファー(10% ホルムアミド、25% 2-プロパノール、65% 15 mM Tris (pH 8.8) 混合溶液100mL)に加えたもの) を用いて振とう撹拌により15分間染色した。
(5) 15分後、ゲルを染色液Aから取り出し、染色液B (10mg/mL エチジウムブロミド水溶液 10μLを1×TAE buffer 200mLに加えたもの) を用いて振とう撹拌により5分間染色した。
(6) 5分後、ゲルを染色液Bから取り出し、1×TBE bufferを用いて振とう撹拌により15分間脱色した。
(7) 脱色後、ゲルをTyphoon 8600 (GE Healthcare) を用いてスキャンし、ゲルの画像を得た。なお、フィルターは580-640 band pass filter(Stains-allおよびエチジウムブロミド検出用)および640-700 band pass filter(Cy5検出用)を用いた。
(8) DNAを染色した蛍光画像(緑)及びL1Cy5-7OTDの蛍光画像(赤)をImageJを用いてmergeし、L1Cy5-7OTDがDNAに結合しているか解析した。
(9)その結果、解析した97配列すべてがL1Cy5-7OTDと結合していることが確認できた。
【0145】
5. CDスペクトル解析
さらに以下の通り、CDスペクトル解析を行い、四重らせん(G-quadruplex)構造の種類を調べた。
【0146】
(1) 200μM L1Cy5-7OTDを50mM Tris-HCl (pH7.5)、100mM KClを用いて調製した。
(2) (1)で調製した200μM L1Cy5-7OTD 1μLに50mM Tris-HCl (pH7.5)、100mM KCl bufferを97μL、種々の50μM DNA 2.0μLを加え、これらをCDスペクトル測定サンプルとした。また、リガンド非存在化の場合と比較するため50mM Tris-HCl (pH7.5)、100mM KCl buffer 98μLに種々の50μM DNA 2.0μLを加えたものも別途調製した。
(3) (2)で調製したCDスペクトル測定サンプル全量を、石英セル (Agilent、Microcell 50μL 10mM Path UV) に入れ、J-720 (JASCO) を用いて測定した。測定条件は、25℃において以下のように設定した。
【0147】
【表10】
【0148】
(4) 測定したスペクトルを、スペクトルマネージャーを用いてtxt.ファイルに変換し、グラフを作成した。
(5)以下の基準をもとに解析したDNAが3種類のG4構造(parallel type、anti-parallel type、hybrid type)のうち、どの構造を形成するか検討した。
【0149】
【表11】
【0150】
(6) その結果、L1Cy5-7OTD非存在下において、#60_SP130_CGI、#70_NCOR2_CGIはanti-parallel type G-quadruplex構造を形成し、#11_SMRD1_CGI、#21_SPAS2_CGI、#27_BAI1_CGI、#30_BRM1L_CGI、#38_KDM5B_CGI、#48_MED4_CGI、#51_UBP11_CGI、#94_EDC3_CGIはhybrid type G-quadruplex構造を形成し、残り87配列はすべてparallel type G-quadruplex構造を形成することが示された(添付ファイル名:120424_CDスペクトル.pptx)。
(7)また、L1Cy5-7OTD存在下で構造が変わるDNA配列として、#60_SP13_CGI(anti-parallel typeからhybrid type)、#11_SMRD1_CGI(hybrid typeからparallel type)、#48_MED4_CGI(hybrid typeからparallel type)、#45_DLX1_CGI(parallel typeからhybrid type)に変化する配列を同定している。
【0151】
実施例3 ヒトゲノムDNA解析
(1) UCSC genome browser(カリフォルニア大学サンタクルーズ校により提供されているデータベース(http://genome.ucsc.edu/cgi-bin/hgTracks?org=human)からすべてのヒトCpG island領域(28691箇所)の塩基番号を取得した。塩基番号はすべてhg19(UCSCヒトゲノム19)に対応している。
(2) 28691箇所のCpG island領域の上流90bp、下流90bpを含む領域に対してagilent e-array(商品名)を用いてタイリングアレイを作製した。(Probe length: 60-mer、space:26-bp、probe #: 962646)
(3) 終濃度10 nML1Cy5-7OTDをBuffer A (50mM Tris-HCl (pH7.5)、100mM KCl、1×Hi-RPM Hybridization Buffer (Agilent))を用いて調製した。
(4) ガスケットスライド(Agilent)に(1)で調製した10 nM L1Cy5-7OTDを490μL加え、そこに作製したヒトタイリングアレイを乗せ、ハイブリチャンバーにセットした。
(5) ハイブリチャンバーにセットしたアレイをハイブリゼーションオーブン(Agilent)にセットし、25℃、1時間、4 rpmでインキュベートした。
(6) 1時間後、ハイブリチャンバーを解体し、アレイをBuffer B (50mM Tris-HCl (pH7.5)、100mM KCl)中で5分間、25℃で洗浄した。
(7) 洗浄後、アレイをAgilent DNA Microarray scanner with surescan High resolution thchnology (Agilent)を用いてスキャンし、蛍光画像を得た。
(8) 得られた蛍光画像から、各プローブの蛍光強度(rProcessedSignal)及び塩基番号をAgilent Feature Extractionを用いて抽出した。
(9) L1Cy5-7OTDが結合しているプローブの蛍光強度の閾値を5360とし、5360以上の蛍光強度を示したプローブをMicrosoft Excel(商品名)により抽出し、さらにそれらの内、グアニンの2連続配列を4箇所以上含む配列のみ抽出した。その結果、3594プローブが抽出された。
(11) ヒトゲノムにおいて、得られ3594プローブ配列上流5kbp、下流5kbp中に存在する遺伝子をUCSC genome browerから抽出し、各プローブ近傍に存在する遺伝子をリストアップし、近傍に遺伝子が存在する2018プローブのみリストアップした(上記表1)。
【0152】
実施例4 CDスペクトル解析(その2)
(1) 終濃度2.0μM L1Cy5-7OTDを50mM Tris-HCl(pH7.5)、100mM KClを用いてサンプルを調製した。
(2) (1)で調製した2.0μM L1Cy5-7OTD 98μLに、50μM DNA 2.0μLを加え、これをCDスペクトル測定サンプルAとした。また、同様に50mM Tris-HCl (pH7.5)、100mM KClに、50μM DNA 2.0μLを加え、これをCDスペクトル測定サンプルBとした。
(3) (2)で調製した二種のCDスペクトル測定サンプル全量を、石英セル (Agilent、Microcell 50μL 10mM Path UV) に入れ、J-720 (JASCO) を用いて測定した。測定条件は、25℃において以下のように設定した。
【0153】
【表12】
【0154】
(4) 測定したスペクトルを、スペクトルマネージャーを用いてtxt.ファイルに変換した。
(5) txtファイルのデータを基に、グラフを作成し、スペクトルを解析した。
(6) 上記表11の基準をもとに解析したDNAが3種類のG4構造(parallel type、anti-parallel type、hybrid type)のうち、どの構造を形成するか検討した。
(7) その結果、L1Cy5-7OTD非存在下において、#60_SP130_CGIはanti-parallel type G-quadruplex構造を形成し、#13_DELE_CGI、 #95_CDC6_CGIはparallel type G-quadruplex構造を形成することが示された。
(8) また、L1Cy5-7OTD存在下では、#60_SP13_CGI、#13_DELE_CGI、#95_CDC6_CGIはいずれもhybrid typeのG-quadruplex構造に構造が変化することが示された。
【0155】
実施例5 DMSフットプリント
(1) 50mM Tris-HCl (pH7.5)を用いてDNAを終濃度5.0μMに希釈しサンプルAを100μL得た。同様に、50mM Tris-HCl (pH7.5)、100mM KClを用いてサンプルBを、50mM Tris-HCl (pH7.5)、100mM KCl、L1Cy5-7OTD 50μLを用いてサンプルCをそれぞれ調製した。
(2) (1)で調製したサンプルをそれぞれ100μLずつ 1.5mLチューブに分注した。
(3) (2)を95℃で3分間静置した後、徐々に室温まで冷却した。
(4) ジメチル硫酸 (DMS) をエタノールで希釈することにより、 5.0% DMSを120μL調整した。
(5) 3M 酢酸ナトリウム緩衝液 (pH7.0) 50μL、2-メルカプトエタノール42μL、100 mg/mL tRNA 2.0μL、滅菌水18μLを混合することで反応停止液を調整した。
(6) それぞれのサンプルに対して、室温にて(4)で調整した5% DMS 10μLを加え5分間静置することでDNAのメチル化反応を行った。
(7) (6)に(5)で調製した反応停止液10μL及びエタノールを 300μL加え、反応を停止し、-80℃にて30分間静置した。
(8) (7)を4℃、15,000 rpmの条件で30分間遠心分離した。
(9) (8)の上清を除去し、3M 酢酸ナトリウム緩衝液10μL、滅菌水100μL、エタノール250μLを加えた後、再び4℃ 、15,000 rpmの条件で30分間遠心分離した。
(10) (9)の上清を取り除き、70%エタノール800μLを加えた後、4℃ 、15,000 rpmの条件で5分間遠心分離した。この操作を2回繰り返した。
(11) (10)を1.5mLチューブの蓋を開け、大気中、95℃で乾燥させた。
(12) 99%ピペリジン 110μLをDW 990μLで希釈することにより10%ピペリジン1.1mLを調製した。
(13) (12)で調製した10%ピペリジン100μLを(11)に加え、95℃で30分間静置した。
(14) (13)で調製したサンプルを凍結乾燥することで、10%ピペリジンを留去するとともに、サンプルを乾燥した固体とした。
(15) ホルムアミド788μL、0.5 M エチレンジアミン四酢酸ナトリウム (pH 8.0) 40μL、滅菌水172μLを混合することで電気泳動用の緩衝液を1mL調製した。
(16) (15)で調製した緩衝液を(14)で乾燥させたDNAサンプルそれぞれに5.0μLずつ加え、95℃で3分間静置し、その後氷上で冷却した。
(17) 7Mウレアを含む20%ポリアクリルアミドゲルを用いて、(16)で調製したサンプル1μLを電気泳動した。1000 V で10分間電気泳動した後、2500 V で100分間電気泳動した。
(18) 泳動後、ゲルをTyphoon 8600 (GE Healthcare) を用いてスキャンすることで画像を得た。なお、フィルターは526 short pass filter(商品名)を用いた。
(19) 得られた画像を、ImageJ(商品名)を用いて解析した。
(20) その結果、KCl非存在下においては、DMSでメチル化されることにより、全てのグアニン部分でDNAが切断された。一方、KCl存在下においては、一部切断からの保護が認められた。また、KCl、L1Cy5-7OTD共存下においても、同様の傾向が認められたが、一部切断からの保護のパターンは異なるものも存在した。これは、G-quadruplex中のG-quartet形成によりグアニンが水素結合を形成したことで、グアニンがメチル化反応から保護されていることを示している。また、L1Cy5-7OTD存在下においてメチル化反応からの保護のパターンが異なる配列については、KClのみの時に比べ、異なる構造のG-quadruplexへと折りたたまれていることが示された。
【0156】
実施例6 ルシフェラーゼレポーターアッセイ(その2)
(1) C57BL/6マウスゲノムDNAを鋳型として、Dele、Sap130、Cdc6 CpG island (CGI)を以下の条件でPCR増幅した。
【0157】
【表13】
【0158】
【表14】
【0159】
【表15】
【0160】
(2) PCR産物をWizard(登録商標) SV Gel and PCR Clean-Up System(Promega)を用いて精製し、以下の組成でPCR産物とSfiI (NEB)を混合し、50℃、2時間インキュベートすることによりPCR産物を切断した。
【0161】
【表16】
【0162】
(3) (2)と同様にホタルルシフェラーゼ遺伝子を持つpGL4.23 vector (promega)をSfiIで切断した。組成は以下に示す。
【0163】
【表17】
【0164】
(4) (2)、(3)で切断したPCR産物及びpGL4 vectorを1%アガロースを用いて電気泳動し、目的のバンドを切り出し、Wizard(商品名) SV Gel and PCR Clean-Up System(Promega)を用いて精製した。
(5) (4)で調製したpGL4 vector (18 fmol)、PCR産物(54 fmol)を混合し、Ligation high Ver.2(LGK-201,TOYOBO)を用いて5min 室温でライゲーションした。組成は以下に示す。
【0165】
【表18】
【0166】
(6) (5)で得られたライゲーションサンプルを7μL用い、(200μLに対して3.4μLのβ-メルカプトエタノールを加え氷上で10分インキュベートした)70μLのJM110コンピテントセル(Agilent)に加え、30分氷上でインキュベートした。30分後、ヒートショック(42℃45秒インキュベート後、氷上で2分間インキュベート)を行い、得られた菌体をアンピシリンを含むLBプレートにプレーティングし、37℃で一晩培養した。
(7) 得られたコロニーをピックアップし、3mLのLB培地で37℃で一晩培養した。
(8) 得られた菌体からPureYield(商品名)Plasmid Miniprep System(promega)を用いてプラスミドを調製した。
(9) 得られたプラスミドをシークエンスし、ルシフェラーゼ遺伝子上流の目的の位置に標的CpG islandがクローニングされていることを確認した。
(10)600 fmolの各プラスミドとコントロールベクターである12 fmolのウミシイタケルシフェラーゼ遺伝子発現vector pGL4.74(promega)を混合し、Opti-MEM(Invitrogen)を用いて300μLに調整し、6μL Lipofectoamine2000 (Invitrogen)と294μL Opti-MEMの混合液300μLを加え、20分間室温でインキュベートした。
(11)前日に5×10
3 cell/wellで24wellプレートに播種したHeLa細胞の培地を400μLのOpti-MEMに交換し、そこに(10)で調製したプラスミド混合溶液を100μLずつ6wellに加え、37℃、5% CO
2条件下で4時間インキュベートした。
(12) 4時間後、1μM 7OTDを含む培地又は7OTDを含まない培地に交換し、20時間37℃、5% CO
2条件下で培養した。
(13) 20時間後、Dual-Luciferase reporter Assay system (promega)を用いて、ホタルルシフェラーゼ及びウミシイタケルシフェラーゼの発光量を定量した。発光量はARVOMX 1420 Multilabel counter(Perkin Elmer)を用いて定量した。
(14) それぞれのホタルルシフェラーゼの発現量はコントロールベクターから発現したウミシイタケルシフェラーゼの発現量で標準化した。
(15)その結果、プロモーターをクローニングしていないベクターをトランスフェクションした場合と比較すると、Dele、Sap130、Cdc6 CGIをクローニングした場合のホタルルシフェラーゼの発現量はそれぞれ46.4、365、157倍になった(下記表19)。つまり、Dele、Sap130、Cdc6 はHeLa細胞中でプロモーター活性もしくはエンハンサー活性を持つことが示された。1μM Gqリガンドを培地に加えるとSap130 CGIをクローニングしたvectorではホタルルシフェラーゼの発現量の減少が観察された。つまり、Sap130 CGIに7OTDが結合することにより転写活性が減少することが示唆された。
【0167】
【表19】