【文献】
Suna, Yuki et al.,Ambipolar Behavior of Hydrogen-Bonded Diketopyrrolopyrrole-Thiophene Co-oligomers Formed from Their Soluble Precursors,Organic Letters,米国,2012年,14(13),p.3356-3359
【文献】
Tamayo, Arnold B. et al.,A Low Band Gap, Solution Processable Oligothiophene with a Diketopyrrolopyrrole Core for Use in Organic Solar Cells,Journal of Physical Chemistry C,米国,2008年,112(30),p.11545-11551
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明について詳細に説明する。
【0014】
本明細書において、ある部材が他の部材「上に」位置しているというとき、これはある部材が他の部材に接している場合だけでなく、両部材の間にまた他の部材が存在する場合も含む。
【0015】
本発明の一具体例に係る有機太陽電池は、アノード、カソード、及び上記アノード及び上記カソードの間に配置された1層以上の有機物層を含み、
上記1層以上の有機物層のうち少なくとも一つは、熱処理、光処理又は酸処理された化合物を含み、
上記熱処理、光処理又は酸処理された化合物は、水素結合可能基を含み、
上記熱処理、光処理又は酸処理される前の化合物は、熱処理、光処理又は酸処理によって除去される脱離基を含む。
【0016】
具体的に、本明細書の一具体例に係る有機太陽電池は、アノード、カソード、及び上記アノード及びカソードの間に配置された1層以上の有機物層を含み、上記1層以上の有機物層は、熱処理、光処理又は酸処理によって除去される置換基(脱離基)が導入された化合物を用いて薄膜を形成した後、熱処理、光処理又は酸処理するステップを含む方法によって形成された有機物層を含み、
上記熱処理、光処理又は酸処理して形成された有機物層は、水素結合可能基を有する化合物を含む。
【0017】
本明細書の一実施態様において、上記熱処理、光処理又は酸処理の後に脱離基が除去された化合物は、熱処理、光処理又は酸処理して形成された有機物層の全体固形分の含量に基づいて90%以上である。
【0018】
本明細書において、上記水素結合可能基とは、水素結合ができる官能基を意味する。
【0019】
また、本明細書において、上記脱離基とは、熱処理、光処理又は酸処理によって除去される置換基を意味する。
【0020】
本明細書の一具体例に係る有機太陽電池は、アノード、カソード、及び上記アノード及び上記カソードの間に配置された1層以上の有機物層を含み、
上記1層以上の有機物層のうち少なくとも一つは、水素結合可能基;及び脱離基を有する化合物を用いて形成され、上記脱離基は、熱処理、光処理又は酸処理によって除去される。
【0021】
本明細書の一具体例に係る有機物層は、上記脱離基が除去されながら、脱離基の代りに水素原子が置換され、上記置換された水素原子が分子内及び/又は分子外の水素結合可能基と水素結合を形成することができる。
【0022】
一般に、有機太陽電池を製造するのに使用される有機物層物質は、ファンデルワールスエネルギーによる相互作用だけでパッキングをなすため、分子間の引力が十分強くなく、これにより分子間の結合力が弱くて分子間の距離が十分近くなることができないので、分子間のキャリアの移動が十分高くないという短所を持っている。また、分子間のパッキングが十分でなくて、外部から空気や水分が有機物層内に流入されやすいので、これにより素子の安定性が低下する傾向を示す。
【0023】
かかる短所を解決するために、本明細書は、有機太陽電池を作製するにあたって、有機物層物質間の結合力が弱いファンデルワールス結合よりも結合力が強い水素結合ができる化合物を用いて有機物層を形成することを特徴とする。
【0024】
一般に、水素結合は、O、N、S、Fなどのように電気陰性度が大きい原子に結合されている水素が、隣接する他の分子のO、N、S、Fなどの原子の非共有電子対と相互作用をすることで生成される。このようなO、N、S、Fなどの電気陰性度は、水素原子の電気陰性度よりもかなり大きいため、水素原子には部分的に正電荷が生成され、O、N、S、Fなどの原子には部分的に負電荷が生成される。このような部分的な正電荷を帯びた水素原子が、隣接する負電荷を帯びた酸素、窒素、硫黄、フッ素などの原子と強い引力を示すようになるので、二つの分子間の距離が非常に近くパッキングされ、一定に配列しやすい。このような分子間のパッキングは分子間の距離を減少させることにより、光活性層内のキャリア移動を円滑にすることができる。また、水素結合による光活性層は、空気や水分による有機太陽電池の安定性を増加させることができる。
【0025】
本明細書に係る有機太陽電池において、上記有機物層は、水素結合可能基を有する化合物を用いて当該技術分野に知られている方法で形成することができる。
【0026】
本明細書の一具体例において、上記有機物層は、上記熱処理、光処理又は酸処理される前の化合物は、水素結合可能基を含み、脱離基が導入された化合物を用いて形成される。
【0027】
通常、有機太陽電池の製造時に光活性層を形成する方法は、真空蒸着法と溶液塗布法とに分けることができる。具体的に、真空蒸着法は、高温と高い真空度を要するので、大面積化が難しく、装備の価格が相対的に高く、工程が比較的複雑である。これに対し、スピンコート法、インクジェット印刷法、ディップコート法、ロールコート法、スクリーン印刷法などで代表される溶液塗布法は、大面積の薄膜形成が可能であり、常温常圧下での工程が可能であるため、工程の単価を下げることができるという長所がある。
【0028】
ところで、 強い分子間の相互作用を有する化合物は、分子内に有機溶媒の浸透を難しくして、物質の溶解度が低い傾向がある。
【0029】
したがって、本明細書は、有機太陽電池を作製するにあたって、有機物層物質間の水素結合の長所を利用するために、水素結合可能基を含む化合物で有機物層を形成することで、分子間のパッキングと結晶化度を高め、真空蒸着法を用いて有機物層を形成するか、分子内に有機溶媒の浸透が容易になるように水素結合可能基にバルキーな置換体を導入することで、有機物層物質の溶解度を高くして、上記有機物層を溶液プロセスで形成する方法を提供する。
【0030】
具体的に、本明細書に係る有機太陽電池の有機物層は、水素結合可能基を有する化合物によって形成されることができる。
【0031】
すなわち、N、O、S、F原子などに結合されて水素結合可能基を含む化合物の上記官能基に、熱、光又は酸によって除去できる置換基を導入して水素結合を除去することで、分子間の相互作用を弱化させる。特に、上記置換基が溶媒に対する溶解度を増加させることができる置換基、例えばバルキー(bulky)な置換基の場合、上記化合物の溶解度は増加して容易に溶液に製造されることができるので、製造された溶液を用いて溶液塗布法によって薄膜を形成することができる。次いで、形成された薄膜を熱、光、又は酸処理して上記置換基を除去することで、再度水素結合を形成できる結合力が強い有機半導体物質が生成される。よって、上述した本明細書に係る有機太陽電池の製造方法は、溶液プロセスによって薄膜を形成しながらも、結果として形成された膜が水素結合によって分子間のパッキングと結晶化度が高いと共に、水分や空気に対する安定性を向上する。
【0032】
本明細書において、水素結合可能基を有する化合物としては、上述した作用原理によって水素結合が可能であり、半導体の役割ができる化合物であれば、その種類に制限されずに使用されることができる。
【0033】
本明細書において、上記水素結合可能基は、アルコール基;フェノール基;カテコール基;カルボニル基;チオール基;及びアミン基からなる群より選択される。
【0034】
本明細書の一具体例において、上記熱処理、光処理又は酸処理の前の化合物は、水素結合可能基を含み、脱離基が導入された化合物である。
【0035】
本明細書において、脱離基が導入された化合物とは、水素が脱離基で置換されるものを意味し、上記化合物を熱、光又は酸で処理する場合に、上記脱離基が除去され、水素に置換される化合物を意味する。
【0036】
本明細書の一実現例において、上記水素結合可能基であるアルコール基、フェノール基、カテコール基、カルボニル基、チオール基、アミン基などは、上記脱離基とエーテル(ether)結合、エステル(ester)結合、チオエーテル(thioether)結合、チオエステル(thioester)結合、アミド(amide)結合を形成して脱離基を導入することができる。
【0037】
本明細書において、下記にそれぞれの水素結合可能基に導入された脱離基を説明するが、これに限定されない。
【0038】
水素結合可能基がアルコール基の場合、アルコール基に導入された脱離基は、メチルエーテル(methyl ether)、メトキシメチルエーテル(methoxymethyl ether)、メトキシチオメチルエーテル(methoxythiomethyl ether)、2−メトキシエトキシメチルエーテル(2-methoxyethoxymethyl ether)、ビス(2−クロロエトキシ)メチルエーテル(bis(2-chloroethoxy)methyl ether)、テトラヒドロピラニルエーテル(tetrahydropyranyl ether)、4−メトキシテトラヒドロピラニルエーテル(4-methoxytetrahydropyranyl ether)、テトラヒドロチオピラニルエーテル(tetrahydrothiopyranyl ether)、4−メトキシテトラヒドロピラニルエーテル(4-methoxytetrahydropyranyl ether)、4−メトキシテトラヒドロチオピラニルエーテル(4-methoxythetrahydrothiopyranyl ether)、テトラヒドロフラニルエーテル(tetrahydrofuranyl ether)、テトラヒドロチオフラニルエーテル(tetrahydrothiofuranyl ether)、1−エトキシエチルエーテル(1-ethoxyethyl ether)、1−メチル−1−メトキシエチルエーテル(1-methyl-1-methoxyethyl ether)、2−(フェニルセレニル)エチルエーテル(2-(phenylselenyl)ethyl ether)、t−ブチルエーテル(t-butyl ether)、アリルエーテル(allyl ether)、ベンジルエーテル(benzyl ether)、o−ニトロベンジルエーテル(o-nitrobenzyl ether)、トリフェニルメチルエーテル(triphenylmethyl ether)、a−ナフチルジフェニルメチルエーテル(anaphthyldiphenylmethyl ether)、p−メトキシフェニルジフェニルメチルエーテル(pmethoxyphenyldiphenylmethyl ether)、9−(9−フェニル−10−オキソ)アントリルエーテル(9-(9-phenyl-10-oxo)anthryl ether)、トリメチルシリルエーテル(trimethylsilyl ether)、イソプロピルジメチルシリルエーテル(isopropyldimethylsilyl ether)、t−ブチルジメチルシリルエーテル (tbutyldimethylsilyl ether)、t−ブチルジフェニルシリルエーテル(t-butyldiphenylsilyl ether)、トリベンジルシリルエーテル(tribenzylsilyl ether)、トリイソプロピルシリルエーテル(triisopropylsilyl ether)、ホルマートエステル(formate ester)、アセテートエステル(acetate ester)、トリクロロアセテートエステル(trichloroacetate ester)、フェノキシアセテートエステル(phenoxyacetate ester)、イソブチレートエステル(isobutyrate ester)、ピバロエートエステル(pivaloate ester)、アダマントエートエステル(adamantoate ester)、ベンゾエートエステル(benzoate ester)、2,4,6−トリメチルベンゾエートエステル(2,4,6-trimethylbenzoate ester)、メチルカーボネート(methyl carbonate)、2,2,2−トリクロロエチルカーボネート(2,2,2-trichloroethyl carbonate)、アリルカーボネート(allyl carbonate)、p−ニトロフェニルカーボネート(p-nitrophenyl carbonate)、ベンジルカーボネート(benzyl carbonate)、s−ベンジルチオカーボネート(s-benzyl thiocarbonate)、N−フェニルカーボネート(N-phenyl carbonate)、ナイトレートエステル(nitrate ester)、2,4−ジニトロフェニルスルフェナートエステル(2,4-dinitrophenylsulfenate ester)などを含む。
【0039】
好ましくは、水素結合可能基がアルコール基の場合、アルコール基に導入された脱離基は、トリクロロアセテートエステル(trichloroacetate ester)、メチルカーボネート(methyl carbonate)、2,2,2−トリクロロエチルカーボネート(2,2,2-trichloroethyl carbonate)、アリルカーボネート(allyl carbonate)、p−ニトロフェニルカーボネート(pnitrophenyl carbonate)、ベンジルカーボネート(benzyl carbonate)、s−ベンジルチオカーボネート(s-benzyl thiocarbonate)、ナイトレートエステル(nitrate ester)及び2,4−ジニトロフェニルスルフェナートエステル(2,4-dinitrophenylsulfenate ester)を含む。
【0040】
より好ましくは、水素結合可能基がアルコール基の場合、アルコール基に導入された脱離基は、ナイトレートエステル(nitrate ester)及び2,4−ジニトロフェニルスルフェナートエステル(2,4-dinitrophenylsulfenate ester)を含む。
【0041】
水素結合可能基がフェノール基やカテコール基の場合、フェノール基やカテコール基に導入された脱離基は、メチルエーテル(methyl ether)、メトキシメチルエーテル(methoxymethyl ether)、2−メトキシエトキシメチルエーテル(2-methoxyethoxymethyl ether)、メトキシチオメチルエーテル(methoxythiomethyl ether)、フェナシルエーテル(penacyl ether)、アリルエーテル(allyl ether)、シクロヘキシルエーテル(cyclohexyl ether)、t−ブチルエーテル(t-butyl ether)、ベンジルエーテル(benzyl ether)、o−ニトロベンジルエーテル(onitrobenzyl ether)、9−アントリルメチルエーテル(9-anthrylmethyl ether)、4−ピコリルエーテル(4-picolyl ether)、t−ブチルジメチルシリルエーテル(t-butyldimethylsilyl ether)、アリールアセテート(aryl acetate)、アリールピバロエート(aryl pivaloate)、アリールベンゾエート(aryl benzoate)、アリール9−フルオレンカルボキシレート(aryl 9-fluorenecarboxylate)、アリールメチルカーボネート(aryl methyl carbonate)、アリール2,2,2−トリクロロエチルカーボネート(aryl 2,2,2-trichloroethyl carbonate)、アリールビニルカーボネート(aryl vinyl carbonate)、アリールベンジルカーボネート(aryl benzyl carbonate)、アリールメタンスルホネート(aryl methanesulfonate)、メチレンジオキシ誘導体(methylenedioxy derivatives)、アセトニド誘導体(acetonide derivatives)、ジフェニルメチレンジオキシ誘導体(diphenylmethylenedioxy derivatives)、環状ボレート(cyclic borate)、環状カーボネート(cyclic carbonate)などを含む。
【0042】
水素結合可能基がカルボニル基の場合、カルボニル基に導入された脱離基は、ジメチルアセタールとケタール(dimethyl acetal and ketal)、ビス(2,2,2−トリクロロエチル)アセタールとケタール(bis(2,2,2-trichloroethyl acetal and ketal)、1,3−ジオキサン(1,3-dioxanes)、5−メチレン−1,3−ジオキサン(5-methylene-1,3-dioxanes)、5,5−ジブロモ−1,3−ジオキサン(5,5-dibromo-1,3-dioxanes)、1,3−ジオキソラン(1,3-dioxolanes)、4−ブロモメチル−1,3−ジオキソラン(4-bromomethyl-1,3-dioxolanes)、4−o−ニトロフェニル−1,3−ジオキソラン(4-o-nitrophenyl-1,3-dioxolanes)、S,S’−ジメチルアセタールとケタール(S,S'-dimethyl acetal and ketal)、1,3−ジチアン(1,3-dithianes)、1,3−ジチオラン(1,3-dithiolane)、1,3−オキサチオラン(1,3-oxathiolanes)、o−トリメチルシリルシアノヒドリン(otrimethylsilyl cyanohydrins)、N,N−ジメチルヒドラゾン(N,N-dimethylhydrazones)、2,4−ジニトロフェニルヒドラゾン(2,4-dinitrophenylhydrazones)、o−フェニルチオメチルオキシム(o-phenylthiomethyl oximes)、置換されたメチレン誘導体(substituted methylene derivatives)、ビスメチレンジオキシ誘導体(bismethylenedioxy derivatives)、メチルエステル(methyl ester)、メトキシメチルエステル(methoxymethyl ester)、メチルチオメチルエステル(methylthiomethyl ester)、テトラヒドロピラニルエステル(tetrahydropiranyl ester)、ベンジルオキシメチルエステル(benzyloxymethyl ester)、フェナシルエステル(penacyl ester)、N−フタルイミドメチルエステル(N-phthalimidomethyl ester)、2,2,2−トリクロロエチルエステル(2,2,2-trichloroethyl ester)、2−ハロエチルエステル(2-haloethyl ester)、2−(p−トルエンスルホニル)エチルエステル(2-(ptoluenesulfonyl)ethyl ester)、t−ブチルエステル(t-butyl ester)、シンナミルエステル(cinnamyl ester)、ベンジルエステル(benzy ester)、トリフェニルメチルエステル(triphenylmethyl ester)、ビス(o−ニトロフェニル)メチルエステル(bis(onitrophenylmethyl ester)、9−アントリルメチルエステル(9-anthrylmethyl ester)、2−(9,10−ジオキソ)アントリルメチルエステル(2-(9,10-dioxo)anthrylmethyl ester)、ピペロニルエステル(piperonyl ester)、トリメチルシリルエステル(trimethylsilyl ester)、t−ブチルジメチルシリルエステル(t-butyldimethylsilyl ester)、s−t−ブチルエステル(s-tbutyl ester)、2−アルキル−1,3−オキサゾリン(2-alkyl-1,3-oxazolines)、N,N−ジメチルアミド(N,Ndimethylamide)、N−7−ニトロインドイルアミド(N-7-nitroindoylamide)、ヒドラジド(hydrazide)、N−フェニルヒドラジド(N-phenylhydrazide)、N,N’−ジイソプロピルヒドラジド(N,N'-diisopropylhydrizide)などを含む。
【0043】
水素結合可能基がチオール基の場合、チオール基に導入された脱離基は、s−ベンジルチオエーテル(s-benzyl thioether)、s−p−メトキシベンジルチオエーテル(s-pmethoxybenzyl thioether)、s−p−ニトロベンジルチオエーテル(s-pnitrobenzyl thioether)、s−4−ピコリルチオエーテル(s-4-picolyl thioether)、s−2−ピコリル N−オキシドチオエーテル(s-2-picolyl N-oxide thioether)、s−9−アントリルメチルチオエーテル(s-9-anthrylmethyl thioether)、s−ジフェニルメチルチオエーテル(s-diphenylmethyl thioether)、s−ジ(p−メトキシフェニル)メチルチオエーテル(s-di(p-methoxyphenyl)methyl dithioether)、s−トリフェニルメチルチオエーテル(s-triphenylmethyl thioether)、s−2,4−ジニトロフェニルチオエーテル(s-2,4-dinitrophenyl thioether)、s−t−ブチルチオエーテル(s-t-butyl thioether)、s−イソブトキシメチルモノチオアセタール(s-isobutoxymethyl monothioacetal)、 s−2−テトラヒドロピラニルモノチオアセタール(s-2-tetrahydropiranyl monothioacetal)、s−アセトアミドメチルアミノチオアセタール(s-acetamidomethyl aminothioacetal)、s−シアノメチルチオエーテル(s-cyanomethyl thioether)、s−2−ニトロ−1−フェニルエチルチオエーテル(s-2-nitro-1-phenylethyl thioether)、s−2,2−ビス(カルボエトキシ)エチルチオエーテル(s-2,2-bis(carboethoxy)ethyl thioether)、s−ベンゾイル誘導体(s-benzoyl derivatives)、s−(N−エチルカルバメート)(s-(N-ethylcarbamate)、s−エチルジスルフィド(sethyl disulfide)などを含む。
【0044】
水素結合可能基がアミン基の場合、アミン基に導入された脱離基は、メチルカルバメート(methyl carbamate)、9−フルオレニルメチルカルバメート(9-fluorenylmethyl carbamate)、2,2,2−トリクロロエチルカルバメート(2,2,2-trichloroethyl carbamate)、2−トリメチルシリルエチルカルバメート(2-trimethylsilyl carbamate)、1,1−ジメチルプロピニルカルバメート(1,1-dimethylpropynyl carbamate)、1−メチル−1−フェニルエチルカルバメート(1-methyl-1-phenylethyl catbamate)、1−メチル−1−(4−ビフェニリル)エチルカルバメート(1-methyl-1-(4-biphenylyl)ethyl carbamate)、1,1−ジメチル−2−ハロエチルカルバメート(1,1-dimethyl-2-haloethyl carbamate)、1,1−ジメチル−2−シアノエチルカルバメート(1,1-dimethyl-2-cyanoethyl carbamate)、t−ブチルカルバメート(t-butyl carbamate)、シクロブチルカルバメート(cyclobutyl carbamate)、1−メチルシクロブチルカルバメート(1-methylcyclobutyl carbamate)、1−アダマンチルカルバメート(1-adamantyl carbamate)、ビニルカルバメート(vinyl carbamate)、アリルカルバメート(allyl carbamate)、シンナミルカルバメート(cinnamyl carbamate)、8−キノリルカルバメート(8-quinolyl carbamate)、 N−ヒドロキシピペリジニルカルバメート(N-hydroxypiperidinyl carbamate)、4,5−ジフェニル−3−オキサゾリン−2−オン(4,5-diphenyl-3-oxazoline-2-one)、ベンジルカルバメート(benzyl carbamate)、p−ニトロベンジルカルバメート(p-nitrobenzyl carbamate)、3,4−ジメトキシ−6−ニトロベンジルカルバメート(3,4-dimethoxy-6-nitrobenzyl carbamate)、2,4−ジクロロベンジルカルバメート(2,4-dichlorobenzyl carbamate)、5−ベンゾイソオキサゾリルメチルカルバメート(5-benzisoxazolylmethyl carbamate)、9−アントリルメチルカルバメート(9-anthrylmethyl carbamate)、ジフェニルメチルカルバメート(diphenylmethyl carbamate)、イソニコチニルカルバメート(isonicotinyl carbamate)、s−ベンジルカルバメート(s-benzyl carbamate)、N−(N’−フェニルアミノチオカルボニル)誘導体(N-(N'-phenylaminothiocarbonyl) derivatice)、N−ホルミル(N-formyl)、N−アセチル(N-acetyl)、N−クロロアセチル(Nchloroacetyl)、N−トリクロロアセチル(Ntrichloroacetyl)、N−トリフルオロアセチル(N-trifluoroacetyl)、N−o−ニトロフェニルアセチル(N-o-nitrophenylacetyl)、N−o−ニトロフェノキシアセチル(N-o-nitrophenoxyacetyl)、N−アセトアセチル(Nacetoacetyl)、N−3−フェニルプロピオニル(N-3-phenylpropionyl)、N−3−(p−ヒドロキシフェニル)プロピオニル(N-3-(phydroxyphenyl)propionyl)、N−2−メチル−2−(o−ニトロフェノキシ)プロピオニル(N-2-methyl-2-(onitrophenoxy)propionyl)、 N−2−メチル−2−(o−フェニルアゾフェノキシ)プロピオニル(N-2-methyl-2-(ophenylazophenoxy)propionyl)、N−4−クロロブチリル(N-4-chlorobutyryl)、N−o−ニトロシンナモイル(N-onitrocinnamoyl)、N−ピコリノイル(N-picolinoyl)、N−(N’−アセチルメチオニル)(N-(N'-acetylmethionyl)、N−ベンゾイル(Nbenzoyl)、N−フタロイル(N-phthaloyl)、N−ジチアスクシノイル(N-dithiasuccinoyl)、N−アリル(N-allyl)、N−フェナシル(Nphenacyl)、N−3−アセトキシプロピル(N-3-acetoxypropyl)、4級アンモニウム塩(quaternary ammonium salt)、N−メトキシメチル(N-methoxymethyl)、 N−ベンジルオキシメチル(N-benzyloxymethyl)、N−ピバロイルオキシメチル(N-pivaloyloxymethyl)、N−テトラヒドロピラニル(Ntetrahydropyranyl)、N−2,4−ジニトロフェニル(N-2,4-dinitrophenyl)、N−ベンジル(Nbenzyl)、N−o−ニトロベンジル(N-o-nitrobenzyl)、N−ジ(p−メトキシフェニル)メチル(N-di(pmethoxyphenyl) methyl)、N−トリフェニルメチル(Ntriphenylmethyl)、N−(p−メトキシフェニル)ジフェニルメチル(N-(p-methoxyphenyl)diphenylmethyl)、N−ジフェニル−4−ピリジルメチル(Ndiphenyl-4-pyridylmethyl)、N−2−ピコリル N’−オキシド(N-2-picolyl N'-oxide)、N,N’−イソプロピリデン(N,N'-isopropylidene)、N−ベンジリデン(N-benzylidene)、N−p−ニトロベンジリデン(N-p-nitrobenzylidene)、N−サリチリデン(Nsalicylidene)、N−(5,5−ジメチル−3−オキソ−1−シクロヘキセニル)(N-(5,5-dimethyl-3-oxo-1-cyclohexenyl)、N−ニトロ(Nnitro)、N−オキシド(N-oxide)、N−ジフェニルホスフィニル(N-diphenylphosphinyl)、N−ジメチルチオホスフィニル(Ndimethylthiophosphinyl)、N−ベンゼンスルフェニル(Nbenzenesulfenyl)、N−o−ニトロベンゼンスルフェニル(N-onitrobenzenesulfenyl)、N−2,4,6−トリメチルベンゼンスルホニル(N-2,4,6-trimethylbenzenesulfonyl)、 N−トルエンスルホニル(Ntoluenesulfonyl)、N−ベンジルスルホニル(N-benzylsulfonyl)、N−トリフルオロメチルスルホニル(N-trifluoromethylsulfonyl)、N−フェナシルスルホニル(N-phenacyl sulfonyl)などを含む。
【0045】
好ましくは、水素結合可能基がアミン基の場合、アミン基に導入された脱離基は、1,1−ジメチル−2−ハロエチルカルバメート(1,1-dimethyl-2-haloethyl carbamate)、1,1−ジメチル−2−シアノエチルカルバメート(1,1-dimethyl-2-cyanoethyl carbamate)、t−ブチルカルバメート(t-butyl carbamate)及びN−(N’−アセチルメチオニル(N-(N'-acetylmethionyl))を含む。
【0046】
より好ましくは、水素結合可能基がアミン基の場合、アミン基に導入された脱離基は、1,1−ジメチル−2−ハロエチルカルバメート(1,1-dimethyl-2-haloethyl carbamate)及びt−ブチルカルバメート(t-butyl carbamate)を含む。
【0047】
最も好ましくは、水素結合可能基がアミン基の場合、アミン基に導入された脱離基は、t−ブチルカルバメート(t-butyl carbamate)である。
【0048】
本明細書の一具体例において、上記脱離基は、置換もしくは非置換のエステル基である。
【0049】
本明細書の一実現例において、上記脱離基は、tert−ブチルエステル基(又はt−ブトキシカルボニル(t-butoxycarbonyl))である。
【0050】
以下、本明細書において使用されることができる化合物を詳しく説明するために、下記の例を挙げて説明するが、これは単に理解を助けるためのものであって、かかる例に限定されるものではない。
【0051】
上記水素結合可能基を有する化合物において、水素結合可能基は、下記化学式1で表される化合物で表された官能基であってもよい。具体的に、本明細書の一具体例において、上記熱処理、光処理又は酸処理される前の化合物は、下記化学式1で表される。
【0052】
下記化学式1で表される化合物は、ケトン基と水素結合可能基としてNH基を含むことができる。下記の化学式1で表される化合物は、互いに水素結合をなして強力な相互作用をすることができる。よって、結合力が強いこれら化合物又はこれらを含む有機物層物質は、真空蒸着によって有機物層として形成されることができる。
【0054】
上記化学式1において、
R1及びR2は、互いに同一であるか異なっており、それぞれ独立して、置換もしくは非置換のエステル基、置換もしくは非置換のカルボニル基、置換もしくは非置換のC
1〜C
20のアルキル基、置換もしくは非置換のC
2〜C
20のアルケニル基、置換もしくは非置換のC
3〜C
20のシクロアルキル基、置換もしくは非置換のC
5〜C
30のシクロアルケニル基、置換もしくは非置換のC
1〜C
30のアルコキシ基、置換もしくは非置換のC
6〜C
60のアリールオキシ基、置換もしくは非置換のC
1〜C
30のアルキルチオキシ基、置換もしくは非置換のC
5〜C
60のアリールチオキシ基、置換もしくは非置換のC
1〜C
30のアルキルアミン基、置換もしくは非置換のC
5〜C
60のアリールアミン基、置換もしくは非置換のC
6〜C
60のアリール基、及び置換もしくは非置換のC
3〜C
60のヘテロアリール基からなる群より選択され、
Ar1及びAr2は、互いに同一であるか異なっており、それぞれ独立して、置換もしくは非置換のC
1〜C
20のアルキル基、置換もしくは非置換のC
2〜C
20のアルケニル基、置換もしくは非置換のC
3〜C
20のシクロアルキル基、置換もしくは非置換のC
5〜C
30のシクロアルケニル基、置換もしくは非置換の C
1〜C
30のアルコキシ基、置換もしくは非置換のC
6〜C
60のアリールオキシ基、置換もしくは非置換のC
1〜C
30のアルキルチオキシ基、置換もしくは非置換のC
5〜C
60のアリールチオキシ基、置換もしくは非置換のC
1〜C
30のアルキルアミン基、置換もしくは非置換のC
5〜C
60のアリールアミン基、置換もしくは非置換のC
6〜C
60のアリール基、及び置換もしくは非置換のC
3〜C
60のヘテロアリール基からなる群より選択される。
【0055】
具体的に、本明細書の一実施態様において、上記Ar1及びAr2は、置換もしくは非置換のヘテロアリール基である。
【0056】
また一つの実施態様において、上記Ar1及びAr2は、置換もしくは非置換のS、Se、O又はNを含むヘテロアリール基である。
【0057】
本明細書の一実施態様において、上記化学式1は、下記化学式1Aで表される。
【0059】
上記化学式1Aにおいて、
R1及びR2は、化学式1で定義した通りであり、
R3ないしR8は、互いに同一であるか異なっており、それぞれ独立して、水素、置換もしくは非置換のC
1〜C
20のアルキル基、置換もしくは非置換の C
2〜C
20のアルケニル基、置換もしくは非置換のC
3〜C
20のシクロアルキル基、置換もしくは非置換のC
5〜C
30のシクロアルケニル基、置換もしくは非置換のC
1〜C
30のアルコキシ基、置換もしくは非置換のC
6〜C
60のアリールオキシ基、置換もしくは非置換のC
1〜C
30のアルキルチオキシ基、置換もしくは非置換のC
5〜C
60のアリールチオキシ基、置換もしくは非置換のC
1〜C
30のアルキルアミン基、置換もしくは非置換のC
5〜C
60のアリールアミン基、置換もしくは非置換のC
6〜C
60のアリール基、及び置換もしくは非置換のC
3〜C
60のヘテロアリール基からなる群より選択され、
X1及びX2は、互いに同一であるか異なっており、それぞれ独立して、S、Se、O又はNRであり、
Rは、水素、置換もしくは非置換のカルボニル基、置換もしくは非置換のC
1〜C
20のアルキル基、置換もしくは非置換のC
2〜C
20のアルケニル基、置換もしくは非置換のC
3〜C
20のシクロアルキル基、置換もしくは非置換のC
5〜C
30のシクロアルケニル基、置換もしくは非置換のC
1〜C
30のアルコキシ基、置換もしくは非置換のC
6〜C
60のアリールオキシ基、置換もしくは非置換のC
1〜C
30のアルキルチオキシ基、置換もしくは非置換のC
5〜C
60のアリールチオキシ基、置換もしくは非置換のC
1〜C
30のアルキルアミン基、置換もしくは非置換のC
5〜C
60のアリールアミン基、置換もしくは非置換のC
6〜C
60のアリール基、及び置換もしくは非置換のC
3〜C
60のヘテロアリール基からなる群より選択される。
【0060】
上記化学式1のR1ないしR8、Ar1及びAr2に追加で置換され得る置換基としては、シアノ基、ハロゲン基、アルキル基、アルケニル基、アルコキシ基、シリル基、アリールアルケニル基、アリール基、ヘテロアリール基、カルバゾール基、アリールアミン基、アリール基で置換もしくは非置換のフルオレニル基、ニトリル基などが挙げられるが、これにのみ限定されるものではない。
【0061】
本明細書の一実施態様において、上記熱処理、光処理又は酸処理される前の化合物は、下記化学式3で表される。
【0063】
上記化学式3において、
R3ないしR8は、互いに同一であるか異なっており、それぞれ独立して、水素、置換もしくは非置換のC
1〜C
20のアルキル基、置換もしくは非置換のC
2〜C
20のアルケニル基、置換もしくは非置換のC
3〜C
20のシクロアルキル基、置換もしくは非置換のC
5〜C
30のシクロアルケニル基、置換もしくは非置換のC
1〜C
30のアルコキシ基、置換もしくは非置換のC
6〜C
60のアリールオキシ基、置換もしくは非置換のC
1〜C
30のアルキルチオキシ基、置換もしくは非置換のC
5〜C
60のアリールチオキシ基、置換もしくは非置換のC
1〜C
30のアルキルアミン基、置換もしくは非置換のC
5〜C
60のアリールアミン基、置換もしくは非置換のC
6〜C
60のアリール基、及び置換もしくは非置換のC
3〜C
60のヘテロアリール基からなる群より選択され、
X1及びX2は、互いに同一であるか異なっており、それぞれ独立して、S、Se、O又はNRであり、
Rは、水素、置換もしくは非置換のカルボニル基、置換もしくは非置換のC
1〜C
20のアルキル基、置換もしくは非置換のC
2〜C
20のアルケニル基、置換もしくは非置換のC
3〜C
20のシクロアルキル基、置換もしくは非置換のC
5〜C
30のシクロアルケニル基、置換もしくは非置換のC
1〜C
30のアルコキシ基、置換もしくは非置換のC
6〜C
60のアリールオキシ基、置換もしくは非置換のC
1〜C
30のアルキルチオキシ基、置換もしくは非置換のC
5〜C
60のアリールチオキシ基、置換もしくは非置換のC
1〜C
30のアルキルアミン基、置換もしくは非置換のC
5〜C
60のアリールアミン基、置換もしくは非置換のC
6〜C
60のアリール基、及び置換もしくは非置換のC
3〜C
60のヘテロアリール基からなる群より選択される。
【0064】
上記水素結合可能基を含む化合物において、水素結合をなす水素原子をtert−ブチルエステル基(又はt−ブトキシカルボニル(t-butoxycarbonyl) 基)のようなバルキーな置換基で置換すれば、下記化学式3のような化合物として水素結合をなすことができなくなる。
【0065】
したがって、上記化学式3で表される化合物は、非常にバルキーな置換基が導入されて水素結合をなすことができないので、分子間の結合力が弱くなり、溶解度が非常に増加して、溶液に製造されることができるので、溶液プロセスによって薄膜の形成が可能である。
【0066】
本明細書の一実施態様において、上記熱処理、光処理又は酸処理される前の化合物は、下記化学式1−1又は1−2で表される。
【0068】
上記化学式3で表される化合物は、水素原子がt−ブトキシカルボニル (t-butoxycarbonyl))で置換されたものであって、熱処理、光処理又は酸処理によって分子結合が壊れて水素原子に置換されることができる。
【0069】
上記熱処理、光処理又は酸処理による水素結合分子の再形成は、よく有機化学反応で官能基の保護(protection)と脱保護(deprotection)で使用される方法である。このとき、水素結合可能基の代りに置換される置換基は、上記化学式1−1、1−2又は化学式3で表される化合物の置換基であるt−ブトキシカルボニル(t-butoxycarbonyl))のみに限定されるものではない。一般的に水素結合可能基であるアルコール基、フェノール基、カテコール基、カルボニル基、チオール基、アミン基などは、エーテル(ether)結合、エステル(ester)結合、チオエーテル(thioether)結合、チオエステル(thioester)結合、アミド(amide)結合などで保護されることができる。
【0070】
本明細書の一具体例において、上記熱処理、光処理又は酸処理された化合物は、化学式1中のR1及びR2は、水素である。
【0071】
本明細書の一具体例において、上記熱処理、光処理又は酸処理された化合物は、下記化学式2で表される。
【0073】
上記化学式2において、Ar1及びAr2は、上述した定義の通りである。
【0074】
本明細書の一具体例において、上記熱処理、光処理又は酸処理された化合物は、下記化学式4で表される。
【0076】
上記化学式4において、
R3ないしR8は、互いに同一であるか異なっており、それぞれ独立して、水素、置換もしくは非置換のC
1〜C
20のアルキル基、置換もしくは非置換のC
2〜C
20のアルケニル基、置換もしくは非置換のC
3〜C
20のシクロアルキル基、置換もしくは非置換のC
5〜C
30のシクロアルケニル基、置換もしくは非置換のC
1〜C
30のアルコキシ基、置換もしくは非置換のC
6〜C
60のアリールオキシ基、置換もしくは非置換のC
1〜C
30のアルキルチオキシ基、置換もしくは非置換のC
5〜C
60のアリールチオキシ基、置換もしくは非置換のC
1〜C
30のアルキルアミン基、置換もしくは非置換のC
5〜C
60のアリールアミン基、置換もしくは非置換のC
6〜C
60のアリール基、及び置換もしくは非置換のC
3〜C
60のヘテロアリール基からなる群より選択され、
X1及びX2は、互いに同一であるか異なっており、それぞれ独立して、S、Se、O又はNRであり、
Rは、水素、置換もしくは非置換のカルボニル基、置換もしくは非置換のC
1〜C
20のアルキル基、置換もしくは非置換のC
2〜C
20のアルケニル基、置換もしくは非置換のC
3〜C
20のシクロアルキル基、置換もしくは非置換のC
5〜C
30のシクロアルケニル基、置換もしくは非置換のC
1〜C
30のアルコキシ基、置換もしくは非置換のC
6〜C
60のアリールオキシ基、置換もしくは非置換のC
1〜C
30のアルキルチオキシ基、置換もしくは非置換のC
5〜C
60のアリールチオキシ基、置換もしくは非置換のC
1〜C
30のアルキルアミン基、置換もしくは非置換のC
5〜C
60のアリールアミン基、置換もしくは非置換のC
6〜C
60のアリール基、及び置換もしくは非置換のC
3〜C
60のヘテロアリール基からなる群より選択される。
【0077】
具体的に、上記化学式3で表される化合物において、熱処理、酸処理又は光処理を通じて、t−ブトキシカルボニル(t-butoxycarbonyl))が除去され、化学式4の化合物が生成されることができる。
【0078】
したがって、上記化学式3で表される化合物は、非常にバルキーな置換基が導入されて水素結合をなすことができないため、分子間の結合力が弱くなり、溶解度が非常に増加して、溶液に製造されることができるので、溶液プロセスによって薄膜の形成が可能である。
【0079】
また、薄膜の形成後に、熱処理、光処理又は酸処理によって化学式2で表される化合物を形成して結合力の強い分子間の水素結合が形成されて、分子間の距離が非常に近くパッキングされ、一定に配列しやすい。
【0080】
具体的に、本明細書の一実施態様によって、上記化学式1で表される化合物は、熱処理、光処理又は酸処理によって、上記化学式2で表される化合物になり、上記化学式2で表される化合物は、下記のように水素結合を形成することができる。
【0082】
本明細書の一実施態様において、上記熱処理、光処理又は酸処理された化合物は、下記化学式2−1又は2−2で表される。
【0084】
本明細書に係る化合物において、上記置換基をより具体的に説明すれば、下記の通りである。
【0085】
上記「置換」という用語は、化合物の炭素原子に結合された水素原子が他の置換基に変わることを意味し、置換される位置は、水素原子が置換される位置、すなわち置換基が置換可能な位置であれば限定せず、2以上置換される場合、2以上の置換基は互いに同一であるか異なっていてもよい。
【0086】
また、本明細書において「置換もしくは非置換の」という用語は、重水素、ハロゲン基、アルキル基、アルケニル基、アルコキシ基、シリル基、アリールアルケニル基、アリール基、ヘテロアリール基、カルバゾール基、アリールアミン基、アリール基及びニトリル基からなる群より選択された1以上の置換基で置換もしくは非置換されるか、上記例示された置換基のうち2以上の置換基が連結された置換基で置換もしくは非置換されたものを意味する。例えば、「2以上の置換基が連結された置換基」は、ビフェニル基であってもよい。すなわち、ビフェニル基は、アリール基であってもよく、2つのフェニル基が連結された置換基と解釈されることができる。
【0087】
上記アルキル基は、直鎖又は分枝鎖であってもよく、炭素数は特に限定されないが、1ないし20であることが好ましい。例えば、上記アルキル基又はアルキレン基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、s−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、ヒドロキシメチル基、1−ヒドロキシエチル基、2−ヒドロキシエチル基、2−ヒドロキシイソブチル基、1,2−ジヒドロキシエチル基、1,3−ジヒドロキシイソプロピル基、2,3−ジヒドロキシ−t−ブチル基、1,2,3−トリヒドロキシプロピル基、クロロメチル基、1−クロロエチル基、2−クロロエチル基、2−クロロイソブチル基、1,2−ジクロロエチル基、1,3−ジクロロイソプロピル基、2,3−ジクロロ−t−ブチル基、1,2,3−トリクロロプロピル基、ブロモメチル基、1−ブロモエチル基、2−ブロモエチル基、2−ブロモイソブチル基、1,2−ジブロモエチル基、1,3−ジブロモイソプロピル基、2,3−ジブロモ−t−ブチル基、1,2,3−トリブロモプロピル基、 ヨードメチル基、1−ヨードエチル基、2−ヨードエチル基、2−ヨードイソブチル基、1,2−ジヨードエチル基、1,3−ジヨードイソプロピル基、2,3−ジヨード−t−ブチル基、1,2,3−トリヨードプロピル基、アミノメチル基、1−アミノエチル基、2−アミノエチル基、2−アミノイソブチル基、1,2−ジアミノエチル基、1,3−ジアミノイソプロピル基、2,3−ジアミノ−t−ブチル基、1,2,3−トリアミノプロピル基、シアノメチル基、1−シアノエチル基、2−シアノエチル基、2−シアノイソブチル基、1,2−ジシアノエチル基、1,3−ジシアノイソプロピル基、2,3−ジシアノ−t−ブチル基、1,2,3−トリシアノプロピル基、ニトロメチル基、1−ニトロエチル基、2−ニトロエチル基、2−ニトロイソブチル基、1,2−ジニトロエチル基、1,3−ジニトロイソプロピル基、2,3−ジニトロ−t−ブチル基、1,2,3−トリニトロプロピル基などが挙げられるが、これにのみ限定されるものではない。
【0088】
上記アルケニル基は、直鎖又は分枝鎖であってもよく、炭素数は特に限定されないが、2ないし20であることが好ましい。例えば、ビニル基、アリル基、1−ブテニル基、2−ブテニル基、3−ブテニル基、1,3−ブタンジエニル基、1−メチルビニル基、スチリル基、2,2−ジフェニルビニル基、1,2−ジフェニルビニル基、1−メチルアリル基、1,1−ジメチルアリル基、2−メチルアリル基、1−フェニルアリル基、2−フェニルアリル基、3−フェニルアリル基、3,3−ジフェニルアリル基、1,2−ジメチルアリル基、1−フェニル−1−ブテニル基、3−フェニル−1−ブテニル基などが挙げられるが、これにのみ限定されるものではない。
【0089】
上記シクロアルキル基は、炭素数3ないし20の立体障害を与えないものが好ましい。具体的な例としては、シクロペンチル基、シクロヘキシル基などがあるが、これにのみ限定されるものではない。
【0090】
上記シクロアルケニル基は、炭素数3ないし20であることが好ましく、より具体的には、五角形又は六角形の環内にエテニレンを持つ環式化合物などが挙げられるが、これにのみ限定されるものではない。
【0091】
上記アルコキシ基は、炭素数1ないし30であることが好ましく、より具体的に、メトキシ、エトキシ、イソプロピルオキシなどが挙げられるが、これにのみ限定されるものではない。
【0092】
上記アリールオキシ基は、炭素数6ないし60であることが好ましく、より具体的に、フェニルオキシ、シクロヘキシルオキシ、ナフチルオキシ、ジフェニルオキシなどが挙げられるが、これにのみ限定されるものではない。
【0093】
上記アルキルアミン基は、炭素数1ないし30であることが好ましく、より具体的に、メチルアミン基、ジメチルアミン基、エチルアミン基、ジエチルアミン基などが挙げられるが、これにのみ限定されるものではない。
【0094】
上記アリールアミン基は、炭素数5ないし60であることが好ましく、より具体的に、フェニルアミン基、ナフチルアミン基、ビフェニルアミン基、アントラセニルアミン基、3−メチル−フェニルアミン基、4−メチル−ナフチルアミン基、2−メチル−ビフェニルアミン基、9−メチル−アントラセニルアミン基、ジフェニルアミン基、フェニルナフチルアミン基、ジトリルアミン基、フェニルトリルアミン基、トリフェニルアミン基などがあるが、これらに限定されるものではない。
【0095】
上記アリール基は、単環式又は多環式であってもよく、炭素数は特に限定されないが、6ないし60であることが好ましい。例えば、フェニル基、スチルベン、1−ナフチル基、2−ナフチル基、1−アントリル基、2−アントリル基、9−アントリル基、1−フェナントリル基、2−フェナントリル基、3−フェナントリル基、4−フェナントリル基、9−フェナントリル基、1−ナフタセニル基、2−ナフタセニル基、9−ナフタセニル基、1−ピレニル基、2−ピレニル基、4−ピレニル基、2−ビフェニリル基、3−ビフェニリル基、4−ビフェニリル基、p−ターフェニル−4−イル基、p−ターフェニル−3−イル基、p−ターフェニル−2−イル基、m−ターフェニル−4−イル基、m−ターフェニル−3−イル基、m−ターフェニル−2−イル基、o−トリル基、m−トリル基、p−トリル基、p−t−ブチルフェニル基、p−(2−フェニルプロピル)フェニル基、3−メチル−2−ナフチル基、4−メチル−1−ナフチル基、4−メチル−1−アントリル基、4’−メチルビフェニリル基、4’’−t−ブチル−p−ターフェニル−4−イル基などが挙げられるが、これにのみ限定されるものではない。
【0096】
上記ヘテロアリール基は、異種原子としてO、N、S、Se及びPのうち少なくとも一つを含む環式基であって、炭素数は特に限定されないが、炭素数3ないし60であることが好ましい。例えば、1−ピロリル基、2−ピロリル基、3−ピロリル基、ピラジニル基、2−ピリジニル基、3−ピリジニル基、4−ピリジニル基、1−インドリル基、2−インドリル基、3−インドリル基、4−インドリル基、5−インドリル基、6−インドリル基、7−インドリル基、1−イソインドリル基、2−イソインドリル基、3−イソインドリル基、4−イソインドリル基、5−イソインドリル基、6−イソインドリル基、7−イソインドリル基、2−フリル基、3−フリル基、2−ベンゾフラニル基、3−ベンゾフラニル基、4−ベンゾフラニル基、5−ベンゾフラニル基、6−ベンゾフラニル基、7−ベンゾフラニル基、1−イソベンゾフラニル基、3−イソベンゾフラニル基、4−イソベンゾフラニル基、5−イソベンゾフラニル基、6−イソベンゾフラニル基、7−イソベンゾフラニル基、2−キノリル基、3−キノリル基、4−キノリル基、5−キノリル基、6−キノリル基、7−キノリル基、8−キノリル基、1−イソキノリル基、3−イソキノリル基、4−イソキノリル基、5−イソキノリル基、6−イソキノリル基、7−イソキノリル基、8−イソキノリル基、2−キノキサリニル基、5−キノキサリニル基、6−キノキサリニル基、1−カルバゾリル基、2−カルバゾリル基、3−カルバゾリル基、4−カルバゾリル基、9−カルバゾリル基、1−フェナントリジニル基、2−フェナントリジニル基、3−フェナントリジニル基、4−フェナントリジニル基、6−フェナントリジニル基、7−フェナントリジニル基、8−フェナントリジニル基、9−フェナントリジニル基、10−フェナントリジニル基、1−アクリジニル基、2−アクリジニル基、3−アクリジニル基、4−アクリジニル基、9−アクリジニル基、1,7−フェナントロリン−2−イル基、1,7−フェナントロリン−3−イル基、1,7−フェナントロリン−4−イル基、1,7−フェナントロリン−5−イル基、1,7−フェナントロリン−6−イル基、1,7−フェナントロリン−8−イル基、1,7−フェナントロリン−9−イル基、1,7−フェナントロリン−10−イル基、1,8−フェナントロリン−2−イル基、1,8−フェナントロリン−3−イル基、1,8−フェナントロリン−4−イル基、1,8−フェナントロリン−5−イル基、1,8−フェナントロリン−6−イル基、1,8−フェナントロリン−7−イル基、1,8−フェナントロリン−9−イル基、1,8−フェナントロリン−10−イル基、1,9−フェナントロリン−2−イル基、1,9−フェナントロリン−3−イル基、1,9−フェナントロリン−4−イル基、1,9−フェナントロリン−5−イル基、1,9−フェナントロリン−6−イル基、1,9−フェナントロリン−7−イル基、1,9−フェナントロリン−8−イル基、1,9−フェナントロリン−10−イル基、1,10−フェナントロリン−2−イル基、1,10−フェナントロリン−3−イル基、1,10−フェナントロリン−4−イル基、1,10−フェナントロリン−5−イル基、2,9−フェナントロリン−1−イル基、2,9−フェナントロリン−3−イル基、2,9−フェナントロリン−4−イル基、2,9−フェナントロリン−5−イル基、2,9−フェナントロリン−6−イル基、2,9−フェナントロリン−7−イル基、2,9−フェナントロリン−8−イル基、2,9−フェナントロリン−10−イル基、2,8−フェナントロリン−1−イル基、2,8−フェナントロリン−3−イル基、2,8−フェナントロリン−4−イル基、2,8−フェナントロリン−5−イル基、2,8−フェナントロリン−6−イル基、2,8−フェナントロリン−7−イル基、2,8−フェナントロリン−9−イル基、2,8−フェナントロリン−10−イル基、2,7−フェナントロリン−1−イル基、2,7−フェナントロリン−3−イル基、2,7−フェナントロリン−4−イル基、2,7−フェナントロリン−5−イル基、2,7−フェナントロリン−6−イル基、2,7−フェナントロリン−8−イル基、2,7−フェナントロリン−9−イル基、2,7−フェナントロリン−10−イル基、1−フェナジニル基、2−フェナジニル基、1−フェノチアジニル基、2−フェノチアジニル基、3−フェノチアジニル基、4−フェノチアジニル基、10−フェノチアジニル基、1−フェノキサジニル基、2−フェノキサジニル基、3−フェノキサジニル基、4−フェノキサジニル基、10−フェノキサジニル基、2−オキサゾリル基、4−オキサゾリル基、5−オキサゾリル基、2−オキサジアゾリル基、5−オキサジアゾリル基、3−フラザニル基、2−チエニル基、3−チエニル基、2−メチルピロール−1−イル基、2−メチルピロール−3−イル基、2−メチルピロール−4−イル基、2−メチルピロール−5−イル基、3−メチルピロール−1−イル基、3−メチルピロール−2−イル基、3−メチルピロール−4−イル基、3−メチルピロール−5−イル基、2−t−ブチルピロール−4−イル基、3−(2−フェニルプロピル)ピロール−1−イル基、2−メチル−1−インドリル基、4−メチル−1−インドリル基、2−メチル−3−インドリル基、4−メチル−3−インドリル基、2−t−ブチル1−インドリル基、4−t−ブチル1−インドリル基、2−t−ブチル3−インドリル基、4−t−ブチル3−インドリル基などが挙げられるが、これにのみ限定されるものではない。
【0097】
また、上記ヘテロアリール基は、下記構造式のような化合物が好ましいが、これにのみ限定されるものではない。
【0099】
上記ハロゲン基としては、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素などが挙げられるが、これにのみ限定されるものではない。
【0100】
本明細書の一実施態様において、上述した熱処理、光処理又は酸処理された化合物を含む有機物層は、アノードバッファー層である。具体的に、上記アノードバッファー層は、正孔輸送層として作用することができる。
【0101】
本明細書の一実施態様において、熱処理、光処理又は酸処理された化合物を含む有機物層は、光活性層及びアノードの間に備えられることができる。
【0102】
本明細書の一実施態様において、上記熱処理、光処理又は酸処理された化合物を含む有機物層は、光活性層である。
【0103】
一つの実施態様において、上記光活性層は、電子供与体物質及び電子受容体物質を含み、上記電子供与体物質は、上記熱処理、光処理又は酸処理された化合物を含む。
【0104】
また他の実施態様において、上記光活性層は、3層以上の有機物層を含み、上記有機物層は、p型有機物層;n−p型有機物層;及びn型有機物層を含み、
上記p型有機物層及びn−p型有機物層のうち1層以上は、熱処理、光処理又は酸処理された化合物を含む。
【0105】
上記光活性層の厚さは、10ないし10,000Åであってもよいが、これに限定されるものではない。
【0106】
本明細書において、上記光活性層をp型有機物層;n−p型有機物層;及び n型有機物層を含む3層構造で形成することにより、新しい正孔輸送層及び電子輸送層の生成で電荷取出(charge extraction)及び電荷輸送(charge transporting)を増加させることができ、これによって全体的な電荷移動性(charge mobility)を増加させることができる。また、エネルギーレベル(energy level)を自由に調節することができ、これによって正孔及び電子の移動を容易にすることができ、理想的なpn構造を形成できる特徴がある。
【0107】
上記3層構造の光活性層において、上記n型有機物層の厚さは、20〜400nmであってもよく、上記n−p型有機物層の厚さは、20〜400nmであってもよく、上記p型有機物層の厚さは、0超過300nm以下であってもよいが、これにのみ限定されるものではない。
【0108】
本明細書において、上記光活性層は、p型有機物層;n−p型有機物層;及びn型有機物層を順次含む構造であってもよい。このとき、上記電子供与体物質は、上述したような水素結合可能基を有する化合物であってもよく、より具体的に上記化学式1で表される化合物を含むことができる。
【0109】
本明細書において、上記電子受容体物質は、フラーレン、フラーレン誘導体、バソクプロイン、半導体性元素、半導体性化合物及びこれらの組合わせであってもよく、具体的にPC
61BM(phenyl C61-butyric acid methyl ester)又は PC
71BM(phenyl C71-butyric acid methyl ester)であってもよい。
【0110】
本明細書において、上記n−p型有機物層において、 上記電子供与体物質及び電子受容体物質は、1:10ないし10:1の割合(w/w)で混合することができ、混合した後に特性を最大化させるために、30ないし400℃で1秒ないし48時間熱処理するか、酢酸、HCl、H
2SO
4などのような酸で表面処理することができるが、これにのみ限定されるものではない。
【0111】
本明細書の一実施例に係る有機太陽電池は、アノード、光活性層及びカソード電極を含む。上記有機太陽電池は、基板、正孔輸送層及び/又は電子輸送層がさらに含まれることができる。
【0112】
本明細書の一実施態様において、上記有機太陽電池は、ノーマル(Normal) 構造である。上記ノーマル構造は、基板上にアノードが形成されることを意味することができる。
【0113】
本明細書の一実施態様において、上記有機太陽電池は、逆(Invertecd)構造である。本明細書の一実施態様に係る有機太陽電池が逆構造の場合、基板上にカソードが形成されることを意味することができ、上記アノードは、銀(Ag)又はMoO
3/Alであってもよい。
【0114】
本明細書に係る有機太陽電池は、光活性層をはじめ有機物層が本明細書の上述した化合物、すなわち上記水素結合可能基を有する化合物、例えば上記化学式2で表される化合物を含むことを除いては、当該技術分野に知られている材料と方法で製造されることができる。
【0115】
より具体的に、本明細書の一具体例に係る有機太陽電池の製造方法は、基板を準備するステップ;上記基板上にアノード又はカソードを形成するステップ;上記アノード又はカソード上に1層以上の有機物層を形成するステップ;及び上記1層以上の有機物層上にカソード又はアノードを形成するステップを含み、
上記1層以上の有機物層を形成するステップは、熱処理、光処理又は酸処理によって除去される脱離基を含む化合物を用いて薄膜を形成するステップ;及び上記形成された薄膜を熱処理、光処理又は酸処理するステップを含み、上記熱処理、光処理又は酸処理された薄膜は、水素結合可能基を含む化合物を含む。
【0116】
本明細書において上記脱離基を含む化合物を熱処理、光処理又は酸処理によって水素結合を再度誘導するにおいて、熱処理温度や時間に特に制限はなく、置換基の種類によって選択することができる。
【0117】
本明細書の一実施態様において、上記熱処理は、20ないし400℃の温度で1秒ないし48時間行われることができる。また一つの実施態様において、温度は20ないし350℃の範囲が好ましく、時間は1分ないし2時間以内で処理されることが好ましい。具体的に、150ないし300℃、より好ましくは180ないし280℃の温度で処理されることが好ましく、時間は1時間以内で処理されることが好ましい。
【0118】
光処理を行うにおいて、露光時間の場合、特に制限しないが、一般に30分未満であることが好ましい。
【0119】
上記酸処理は、酢酸、HCl、H
2SO
4などのような酸(acid)で表面処理する方法によって行われることができるが、これにのみ限定されるものではない。
【0120】
上記基板は、透明性、表面平滑性、取り扱い容易性及び防水性に優れたガラス基板又は透明プラスチック基板であってもよいが、これに限定されず、有機太陽電池に通常使用される基板であれば制限されない。具体的に、ガラス又はPET(polyethylene terephthalate)、PEN(polyethylene naphthalate)、PP(polypropylene)、PI(polyimide)、TAC(triacetyl cellulose)などがあるが、これに限定されるものではない。
【0121】
上記アノードは、透明で導電性に優れた物質を含むことができるが、これに限定されない。具体的に、酸化インジウムスズ(ITO)、酸化スズ(SnO
2)及び酸化亜鉛(ZnO)であってもよいが、これに限定されるものではない。
【0122】
上記カソードは、仕事関数が小さい金属を含むことができるが、これに限定されない。具体的に、リチウム、マグネシウム、アルミニウムのような金属又はこれらの合金、Al:Li、Al:BaF
2、Al:BaF
2:Baのような多層構造の物質であってもよいが、これに限定されるものではない。
【0123】
上記正孔輸送層及び/又は電子輸送層物質は、電子と正孔を光活性層に効率的に伝達させることで、生成される電荷が電極に移動される確率を高める物質であってもよいが、特に制限されない。上記正孔輸送層物質は、PEDOT:PSS(Poly(3,4-ethylenediocythiophene) doped with poly(styrenesulfonic acid))、モリブデン酸化物(MoO
x);バナジウム酸化物(V
2O
5);ニッケル酸化物(NiO);及びタングステン酸化物(WO
x)などであってもよいが、これらにのみ限定されるものではない。
【0124】
上記電子輸送層物質は、電子取出金属酸化物(electron-extracting metal oxides)であってもよく、具体的に8−ヒドロキシキノリンの金属錯体;Alq
3を含む錯体;Liqを含む金属錯体;LiF;Ca;チタン酸化物(TiO
x);亜鉛酸化物(ZnO);及び炭酸セシウム(Cs
2CO
3)などであってもよいが、これらにのみ限定されるものではない。
【0125】
上記有機太陽電池は、アノード電極、正孔輸送層、光活性層、電子輸送層及びカソード電極の順に配列されることもでき、カソード電極、電子輸送層、光活性層、正孔輸送層及びアノード電極の順に配列されることもできるが、これに限定されない。
【0126】
本明細書の他の実施態様において、上記有機太陽電池はタンデム構造である。この場合、上記有機太陽電池は、光活性層を1層又は2層以上含むことができる。
【0127】
以下、本明細書の理解を助けるために好ましい実施例を提示する。ところが、下記の実施例は本明細書を例示するためのものであり、これによって本明細書の範囲が限定されるものではない。
【実施例】
【0128】
<製造例1> 化学式1−1の製造
【化10】
【0129】
(1) 化合物1の合成
二口丸底フラスコ(2-neck round bottom flask)にTPP(4.0g、13.3mmol)を無水物THFに溶かした後、ジメチルアモノピリジン(dimethylamonopyridine)を触媒(catalyst)として入れて、1時間程度撹拌した。そして、ジ−(t−ブチル)−ジカーボネート(Di-(t-butyl)-dicarbonate、7.26g、33.2mmol)を無水物THFによく溶かして注射器を用いて窒素条件下で入れて、R.T.で12時間撹拌した。TLCで反応を確認して、終了後にTHFを減圧した。ヘキサン(Hexane)+Et3Nを溶離液(eluent)としてシリカ(silica)パッキンをし、反応混合物(mixture)をローディング後、Hx:EA=4:1で流して不純物(impurities)を除去し、クロロホルム(chloroform)を流した。カラムを終えた後に減圧して溶媒を除去した後、ヘキサン(hexane)で洗浄し、真空オーブンでよく乾燥して、濃褐色の固体化合物t−Boc TPP 4.0gを得た(収率:60%)。
【0130】
上記化合物1のNMRの結果を下記
図2に示し、MSデータを下記
図3に示す。
【0131】
【化11】
【0132】
(2) 化合物2の合成
二口丸底フラスコ(2-neck round bottom flask)にt−Boc TPP(2.36g、4.71mmol)をCFに入れて常温で撹拌した。アルミ箔を用いて光保護(light protection)した後に、NBS(2.09g、2.5eq.)を入れて40時間以上撹拌した。TLCを通じて反応進行事項を確認し、反応が進行したら、粗混合物(crude mixture)をすぐ蒸発(evaporation)させ、CF/EtOHを用いて再結晶をして、濃褐色の針状の化合物2を1.6g(収率:50%)得た。
【0133】
上記化合物2のNMRの結果を下記
図4に示し、MSデータを下記
図5に示す。
【0134】
【化12】
【0135】
(3) 化合物4の合成
二口丸底フラスコ(2-neck round bottom flask)に化合物3(5g、8.9844mmol)、2−ブロモチオフェン(2-bromothiophene, 2.19g、13.4766mmol)、Pd(PPh
3)
4(0.46、3mol%)、2M K
2CO
3(10ml)を入れてTHFに入れて温度を加えながら撹拌した。反応が進行した後に、MCと水で抽出した有機層をMgSO
4で乾燥させた後、シリカカラム(eluent:Hx/MC=10/3)で粉末を得た(収率:78%)。
【0136】
よく乾燥した粉末(3.0g、5.8516mmol)をCFに入れて常温で撹拌した。アルミ箔を用いて光保護(light protection)した後、NBS(1.14g、1.05eq.)を入れて18時間撹拌した。TLCで確認後、シリカカラム(eluent:Hx/MC=10/3)で粉末を得た(収率:87%)。
【0137】
上記のよく乾燥した粉末(3.14g、5.3000mmol)を250mlのテトラヒドロフランに溶かして−70℃に温度を下げ、n−BuLi(2.5M in hexane、3.2ml)を入れて1時間撹拌した。2−イソプロポキシ−4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン(2-Isopropoxy-4,4,5,5-tetramethyl-1,3,2-dioxaborolane、1.48g)を入れた。反応後、シリカカラム(eluent:Hx/MC=10/5)で粉末を得た(収率:67%)。
【0138】
上記化合物3のNMRの結果を、下記
図6及び7に示す。
【0139】
【化13】
【0140】
(4) 化学式1−1の合成
250mlの二口丸底フラスコ(2-neck round bottom flask)に化合物2(0.5g、0.7594mmol)、化合物3(1.12g、1.7467mmol)を200mlのトルエン(toluene)に入れて撹拌した。温度を〜50℃まで上げた後、Pd(0)(0.26mg、3mol%)を入れた。数分間撹拌して、 2M aq.K
2CO
3を入れて90℃まで温度を上げて撹拌した。反応後、常温に温度を下げ、80℃で減圧して溶媒を飛ばして、水で数回洗浄し後、MC/EtOHで再結晶して得た(収率:83%)。
【0141】
<製造例2> 化学式1−2の製造
【化14】
【0142】
二口丸底フラスコ(2-neck round bottom flask)に化合物2(0.62g、0.94mmol)、2−トリブチルスタンニルベンゾ[b]チオフェン(2-Tributylstannylbenzo[b]thiophene、1.0g、2.39mmol)、Pd(PPh
3)
4 (3mol% based on the Br compound)を100mlのトルエンに入れて、100℃で3時間撹拌した。沈殿物を濾過して、ショートカラム(short column)と再結晶を通じて得た(収率:48%)。
【0143】
上記化学式1−2のMSデータを下記
図8に示す。
【0144】
<実験例>
上記化学式1−1のUVスペクトルを下記
図9に示す。
【0145】
上記化学式1−1の特性は、次の通りである。
− バンドギャップ(band gap):1.79eV
− 電気化学特性:HOMO(−5.33eV)、LUMO(−3.55eV)
−a、b、c及びdのねじれ角(Torsion angle of a, b, c): a(20.886度)、b(10.65度)、c(14.5度)、d(86.5度)
【0146】
【化15】
【0147】
− 平面性(Planarity):1.6188
【0148】
上記化合物の電気化学特性及びバンドギャップからして、有機太陽電池に適用できることを確認することができる。
【0149】
図1は、本発明の一具体例に係る化学式1−1の熱処理工程後のUVスペクトルの結果を示す図面である。
【0150】
図1の結果をみると、一定の温度以上での熱処理は、物質のブルーシフト(Blue-shift)を誘導することができる。このような現象は側鎖(side chain)の除去でp−pスタッキング(stacking)は阻害されるが、分子間の強い相互作用(水素結合)が起きることによって分子間のねじれ現象(twisted)によってバンドギャップが大きくなるからである。しかしながら、熱処理工程後に結晶性の良い高分子のような構造を形成し、新しい正孔輸送層及び電子供与体層として使用されて、電荷移動性(charge mobility)及び安定性を向上して、有機太陽電池の効率を向上することができる。
【0151】
図10は、化学式1−1の熱重量分析(TGA:Thermogravimetry Analysis)を示す図面である。
【0152】
図10の結果から、熱処理温度が260ないし300℃で化学式1−1のt−ブトキシカルボニル基が離れることを確認することができる。但し、熱処理温度が420℃を超過する場合には、コア構造が分解されることがある。
【0153】
図11は、化学式1−1のIRスペクトルを示す図面である。
【0154】
上記
図11の結果から、熱処理後には脱離基が化学式1−1から除去されながら水素が置換され、上記水素と化学式1−1の化合物の水素結合可能基とが形成する水素結合の強さが強くなることを確認することができる。
【0155】
比較例1.
上記化学式1−1とPCBMを1:2でクロロベンゼン(Chlorobenzene、CB)に溶かして複合溶液(composit solution)を製造した。このとき、濃度は2.0wt%に調節し、有機太陽電池はITO/PEDOT:PSS/光活性層/Alの構造にした。ITOがコーティングされたガラス基板は、蒸留水、アセトン、2−プロパノールを用いて超音波洗浄し、ITOの表面を10分間オゾン処理した後、45nmの厚さでPEDOT:PSS(baytrom P)をスピンコートして120℃で10分間熱処理した。光活性層のコーティングのためには、化合物−PCBM複合溶液を0.45μmPPシリンジフィルター(syringe filter)で濾過した後にスピンコートして、200nmの厚さでAlを蒸着して、有機太陽電池を製造した。
【0156】
実験例1.
上記化合物をスピンコートした後、3×10
−8torrの真空下で熱蒸発器(thermal evaporator)を用いて熱処理をしたことを除いては、同一の方法で有機太陽電池を製造した。
【0157】
【表1】
【0158】
表1において、V
ocは開放電圧、J
scは短絡電流、FFは充填率(Fill factor)、PCEはエネルギー変換効率を意味する。開放電圧と短絡電流は、それぞれ電圧−電流密度曲線の第4象限でX軸とY軸切片であり、この二つの値が高いほど太陽電池の効率は好ましく高くなる。また、充填率(Fill factor)は、曲線内部に描くことができる矩形の面積を短絡電流と開放電圧との積で割った値である。この3つの値を照射された光の強さで割ると、エネルギー変換効率を求めることができ、高い値であるほど好ましい。
【0159】
図12は、比較例1に係る有機太陽電池の電圧による電流密度を示す図面である。
【0160】
図13は、実験例1に係る有機太陽電池の電圧による電流密度を示す図面である。
【0161】
上記実験例1と比較例1の結果から、脱離基が熱処理、光処理又は酸処理で除去されながら水素が置換され、上記水素と水素結合可能基とが互いに結合して水素結合を通じて高い電荷の移動性により、高い効率の有機太陽電池を提供することを確認することができる。