(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0012】
(1)第1の実施の形態
本発明の第1の実施の形態を図面を参照しつつ説明する。
【0013】
(1−1)全体構成
図1は、本実施の形態に係る自動分析装置の全体構成を概略的に示す図である。
【0014】
図1において、自動分析装置は、ラック搬送機構2、反応ディスク4、試薬ディスク5、R1試薬分注機構8、R2/3試薬分注機構9、測光部10、制御部11、反応セル洗浄気候13等により概略構成されている。
【0015】
ラック搬送機構2には、複数の試料容器1を搭載した試料容器ラック12が搬送される。試料容器1には、分析対象である血清や血漿、尿などの生体試料(以下、単に試料と称する)が収容されている。ラック搬送機構2は、図示しない駆動機構によって試料容器ラック12を搬送することにより、試料容器1を試料の分注を行う試料分注位置などの所定の位置に搬送する。
【0016】
試薬ディスク7には、分析処理に用いる試薬14(後の
図2参照)が収容された複数の試薬容器6が周方向に並べて配置されている。試薬ディスク7は、図示しない回転駆動機構によって周方向に回転駆動されることにより、試薬容器6を試薬分注位置などの所定の位置に移動させる。
【0017】
反応ディスク4には、試料と試薬14を混合して反応させるための複数の反応セル3が周方向に並べて配置されている。反応ディスク1は、図示しない回転駆動機構によって周方向に回転駆動されることにより、反応セル3を試料分注位置や試薬分注位置、測定位置などの所定の位置に移動させる。
【0018】
試料分注機構5a,5bは、分注位置において、試料容器1に収容された試料を吸引し反応セル3に吐出する試料分注処理を行う。また、R1試薬分注機構8及びR2/3試薬分注機構9は、試薬分注位置において、試薬容器6に収容されたR1試薬14及びR2/3試薬14を吸引し反応セル3に吐出することにより試薬分注処理を行う。反応セル3に分注された試料と試薬14の混合液(反応液)は、図示しない攪拌機構により攪拌される。
【0019】
測光部10は、反応ディスク4の反応セル3に収容された反応液の測光を行い、測定結果を制御部11に送る分析処理を行う。
【0020】
洗浄機構13は、反応ディスク4における反応セル3の搬送起動上における洗浄位置に配置されており、測定の終了した試料(反応液)が収容された反応セル3の洗浄処理を行う。
【0021】
制御部11は、試料分注処理、試薬分注処理、分析処理などの処理動作を含む自動分析装置全体の動作を制御する。
【0022】
(1−1.1)R1試薬分注機構8、R2/3試薬分注機構9
図2は試薬分注機構の構成を概略的に示す図である。
【0023】
図2に示すように、R1試薬分注機構8及びR2/3試薬分注機構9は、試薬容器6の試料14に浸漬して試薬の吸引を行う分注ノズル30と、分注ノズル30を支持する第2アーム29と、第2アーム29を支持する第1アーム28と、第1アーム28を支持する第1アームシャフト31と、第1アーム用ベルト21を介して接続された第1アームシャフトを回転駆動する第1アーム駆動モータ23と、第2アーム用ベルト26により第2アーム29と接続された第2アームシャフト32と、第2アームシャフト32を回転駆動する第2アーム駆動モータ22と、第1及び第2アームシャフト31,32を支持するスライダ25を上下動作用ベルト24を介して上下方向に駆動する上下動作駆動モータ23とから概略構成されている。
【0024】
第1アーム28は水平方向に延在するよう設けられており、その一端を第1アームシャフト31により支持されている。第1アームシャフト31は、回転軸線を上下方向に向けて配置されており、第1アーム用ベルト21を介して第1アーム駆動モータ20によって軸線周りに回転駆動されることにより、第1アーム28を水平方向に回動駆動する。
【0025】
第2アーム29は、第1アーム28の他端(すなわち、第1アームシャフト31と反対側の端部)にシャフト27を介して水平方向に回動可能に接続されている。第2アームシャフト32は、第1アームシャフト31の内部に同軸状に配置されており、第1アームシャフト31に対して軸線周りに相対回転可能に設けられている。シャフト27は、第2アーム29に対して固定されるとともに、第1アーム28に対して回動可能に設けられている。シャフト27と第2アームシャフト32の上端は、第2アーム用ベルト26を介して接続されており、第2アーム駆動モータ22によって第2アームシャフト32が第1アームシャフト31に対して相対的に軸線周りに回転駆動されることにより、第1アーム28に対して第2アーム29を水平方向に回動駆動する。
【0026】
第1アームシャフト31及び第2アームシャフト32は、スライダ25により軸線周りに回転可能に支持されており、スライダ25が上下動作用ベルト24を介して上下動作駆動モータ23によって上下方向に駆動されることにより、図示しないガイド機構に沿って上下方向に駆動される。
【0027】
第2アーム29の一端(すなわち、第1アーム28と反対側の端部)には、下方に向かって延在するように分注ノズル30が配置されている。分注ノズル30の上端が第2アーム29に支持されており、第2アーム29の内部配管を介して図示しないシリンジ等の吸引吐出機構と接続されている。分注ノズル30は、第1アーム28及び第2アーム29の回動駆動や、第1及び第2アームシャフト31,32の上下駆動によって所定の位置に移動され、分注対象である試薬の吸引や吐出を行う。分注ノズル30の位置は、パルスモータなどにより構成される各駆動モータ21,22,23の駆動信号(パルス制御の場合はパルス信号)などから制御部11で算出される。例えば、分注ノズル30の先端の位置(高さ)は、モータ上下動作駆動モータ23に送られる駆動信号(パルス信号の回数)から算出される高さ方向の移動距離により容易に求められる。
【0028】
分注ノズル30には、その先端(下端)が試薬容器6内の試薬14の液面(試薬液面14a)に接触したことを検知する液面高さ検知(LLD:Liquid Level Detection)機構35が備えられている。LLD機構35は、例えば、電気伝導度や静電容量の変化などに基づいて、分注ノズル30の先端が試薬液面14aに接触したことを検出する(LLD機能)。LLD機構35の液面検出手段として、例えば、静電容量を用いた場合には、検出した静電容量Cが予め定めた閾値Cthよりも小さくなった場合に、分注ノズル30の先端が試薬液面14aに接触したと判定する。閾値Cthは、分注ノズル30を試薬液面14aに接触させた場合の静電容量などから経験的に求められる。
【0029】
また、分注ノズル30には、異物に衝突したことを検知する異常検知部34が設けられている。異常検知部34は、分注ノズル30の移動時にその先端が異物に衝突した際の第2アーム29に対する相対移動をフォトカプラ(フォトインタラプタ)などを用いて検出する。異常検知部34による衝突の検知に伴って分注ノズル30の動作を停止することで、分注ノズル30の破損や他の機器への影響を抑制することができる。
【0030】
(1−2)試薬分注処理
図3は、試薬分注処理の全体を示すフローチャートである。
【0031】
図3において、分析処理に伴って試薬分注処理の開始が指示されると、制御部11は、まず、分注対象の試薬容器6が試薬ディスク7におけるどの位置に配置されているかを示す試薬配置位置情報を読み出し(ステップS100)、試薬ディスク7における試薬の吸引を行う試薬分注位置に分注対象の試薬容器6及び分注ノズル30を移動させる(ステップS110)。次に、分注対象の試薬容器6を試薬分注位置に移動させるのに要した試薬ディスク7の回転角度θを取得し(ステップS120)、回転角度θが予め定めた閾値θth(例えば、θth=90°)よりも小さいかどうかを判定する(ステップS130)。ステップS130での判定結果がYESの場合は、LLD機能を用いるノズル下降停止処理(液面検知下降制御)を行い(ステップS140)、判定結果がNOの場合はパルス制御に基づくノズル下降停止処理(駆動信号下降制御)を行う(ステップS150)。ステップS140又はS150の処理が終了すると、分注ノズル30により試薬を吸引し(ステップS160)、分注ノズル30を上昇させる(ステップS170)。続いて、反応ディスク4における試薬の吐出を行う試薬分注位置に分注ノズル30を移動させ(ステップS180)、反応セル3に分注ノズル30から試薬を吐出して(ステップS190)、処理を終了する。
【0032】
(1−2.1)LLD機能を用いるノズル下降停止処理(液面検知下降制御)
図4は、
図3に示したLLD機能を用いるノズル下降停止処理の詳細を示すフローチャートである。
【0033】
LLD機能を用いるノズル下降停止処理(液面検知下降制御)は、分注ノズル30の試薬容器6への下降動作時に、LLD機能の液面の検出結果に基づいて、分注ノズル30の下降動作の停止を制御する処理である。
【0034】
LLD機能を用いるノズル下降停止処理では、分注ノズル30の下降を開始し(ステップS141)、液面高さ検知機構35に関する静電容量Cを取得する(ステップS142)。取得した静電容量Cが予め定めた閾値Cthよりも小さいかどうかを判定し(ステップS143)、判定結果がNOの場合は、ステップS142,143の処理を繰り返す。また、ステップS143での判定結果がYESの場合は、分注ノズル30の先端が試薬液面14aに到達したとして、分注ノズル30の先端を予め定めた一定量だけ試薬14に浸漬させ(ステップS144)、試薬分注のする30の下降を停止し(ステップS145)、
図3のステップS160に進む。
【0035】
(1−2.2)パルス制御に基づくノズル下降停止処理(駆動信号下降制御)
図5は、
図3に示したパルス制御に基づくノズル停止処理の詳細を示すフローチャートである。
【0036】
パルス制御に基づくノズル下降停止処理(駆動信号下降制御)は、分注ノズル30の試薬容器6への下降動作時に、予め算出した試薬容器6の試薬の液面位置と、分注ノズル30の下降動作を担う上下動作駆動モータ23の駆動信号(パルス信号)により算出される分注ノズル30の位置とに基づいて、分注ノズル30の下降動作の停止を制御する処理である。
【0037】
パルス制御に基づくノズル下降停止処理では、分注ノズル30の下降を開始し(ステップS151)、分注ノズル30の上下駆動を行う上下動作駆動モータ23の駆動信号(パルス信号)に関する情報を取得し(ステップS152)、取得した情報(パルス信号の回数等)から分注ノズル30の先端の位置を算出する(ステップS153)。続いて、ステップS153で算出した分注ノズル30の先端の位置が、試薬の使用回数等から予め算出した試薬量における試薬液面14aの位置であるかどうかを判定し(ステップS154)、判定結果がNOの場合は、ステップS152〜S154の処理を繰り返す。また、ステップS154での判定結果がYESの場合は、分注ノズル30の先端が試薬液面14aに到達したとして、分注ノズル30の先端を予め定めた一定量だけ試薬14に浸漬させ(ステップS155)、試薬分注のする30の下降を停止し(ステップS156)、
図3のステップS160に進む。
【0038】
(1−3)動作
以上のように構成した本実施の形態における動作を説明する。
【0039】
分析処理の実施が指示されると、分析対象の試料14が収容された試料容器1がラック搬送機構2により試料容器ラック12に搭載されて試料分注位置に搬送される。また、反応ディスク4が回転駆動されて試料が分注される反応セル3が試料分注位置に移動される。この状態で、試料分注機構5a,5bにより試料容器1の試料14が反応セル3に分注される。
【0040】
次に、試薬分注処理の開始が指示され、試薬ディスク7及び反応ディスク4が回転駆動されて、分析に用いる試薬が収容された試薬容器6と試料の分注された反応セル3とが試薬分注位置に移動される(
図3のステップS100,S110)。このとき、試薬容器6が元の場所から試薬分注位置まで移動するのに要した試薬ディスク7の回転角度θを取得し、予め定めた閾値θthよりも小さいかどうかを判定する(
図3のステップS120,S130)。回転角度θは、試薬ディスク7(試薬容器搬送機構)による試薬容器6の搬送状態に関して定義する変数である試薬容器搬送状態変数である。
【0041】
閾値θthは、試薬ディスク7の回転動作による試薬容器6の移動及び試薬分注位置での停止によって、試薬容器6に収容された試薬が波立つ、或いは泡立つ場合とそうでない場合とを判定するための基準である。
【0042】
したがって、試薬容器6の移動における試薬ディスク7の回転角度θが閾値θth(例えば、閾値θth=90°)よりも小さい場合は、試薬容器6の試薬の波立ちや泡立ちは、試薬分注機構8,9の分注ノズル30による吸引精度(すなわち、LLD機能を用いたノズル下降停止処理の精度)に影響を与えない程度、すなわち、分析結果に影響を与えない程度であると判定し、LLD機能を用いるノズル下降停止処理を行って、分注ノズル30の試薬容器6への下降を行い、分注ノズル30により試薬を吸引し、分注ノズル30を上昇させ、反応ディスク4における試薬の吐出を行う試薬分注位置に移動させて、反応セル3に試薬を吐出して、試薬分注処理を終了する(
図3のステップS140,S160〜S190)。
【0043】
また、試薬容器6の移動における試薬ディスク7の回転角度θが閾値θth(例えば、閾値θth=90°)よりも大きい場合は、試薬容器6の試薬の波立ちや泡立ちは、試薬分注機構8,9の分注ノズル30による吸引精度(すなわち、LLD機能を用いたノズル下降停止処理の精度)に影響を与える恐れがある程度、すなわち、分析結果に影響を与える恐れがある程度であると判定し、パルス制御に基づくノズル下降停止処理を行って、分注ノズル30の試薬容器6への下降を行い、分注ノズル30により試薬を吸引し、分注ノズル30を上昇させ、反応ディスク4における試薬の吐出を行う試薬分注位置に移動させて、反応セル3に試薬を吐出して、試薬分注処理を終了する(
図3のステップS150〜S190)。
【0044】
試薬分注処理が終了した反応セル3の反応液は測光部10により測光され、その結果に基づいて、分析対象試料の分析結果が算出される。
【0045】
(1−4)効果
以上のように構成した本実施の形態における効果を説明する。
【0046】
自動分析装置では、分析精度の向上に加えて分析処理の高速化が望まれており、例えば、試料容器や試薬容器などの搬送速度や分注機構の駆動速度、吸引・吐出速度など、分析処理に係る各処理を高速化することにより、分析処理全体の高速化を図っている。しかしながら、試薬容器の搬送速度が高速化するのに伴って、搬送開始時や停止時、搬送中などに試薬容器中の試薬に働く力も大きくなるので、試薬容器内での試薬の液揺れや泡立ちが生じ易くなり、試薬分注機構での泡吸いや殻吸いによる分注不良によって分析精度に悪影響を与える恐れがあった。
【0047】
これに対し、本実施の形態においては、試薬容器6に収容された試薬14の液面位置14aを検出し、その検出結果に基づいて、試薬分注機構8,9の下降動作における停止位置を制御する液面検知下降制御と、試薬分注機構を上下方向に駆動する駆動装置の動作を制御するための制御信号に基づいて、試薬分注機構の下降動作における停止位置を駆動信号下降制御とを定義し、試薬ディスク7(試薬容器搬送機構)による試薬容器6の搬送状態に関して定義する変数である回転角度θ(試薬容器搬送状態変数)に基づいて、液面検知下降制御と駆動信号下降制御の何れかを選択的に用いるように構成したので、試薬容器に収容された試薬の液揺れや泡立ちに起因する試薬の分注不良の発生を抑制することにより、分析精度の低下を抑制することができる。
【0048】
(2)第2の実施の形態
本発明の第2の実施の形態を図面を参照しつつ説明する。
【0049】
本実施の形態は、第1の実施の形態における試薬容器搬送状態変数に加え、試薬容器に収容された試薬の収容状態に関して定義する変数である試薬状態変数に基づいて液面検知下降制御と駆動信号下降制御の何れかを選択的に用いるように構成したものである。
【0050】
(2−1)試薬分注処理
図6は、本実施の形態における試薬分注処理の全体を示すフローチャートである。
【0051】
図6において、分析処理に伴って試薬分注処理の開始が指示されると、制御部11は、まず、分注対象の試薬容器6が試薬ディスク7におけるどの位置に配置されているかを示す試薬配置位置情報を読み出し(ステップS200)、試薬ディスク7における試薬の吸引を行う試薬分注位置に分注対象の試薬容器6及び分注ノズル30を移動させる(ステップS210)。次に、分注対象の試薬容器6を試薬分注位置に移動させるのに要した試薬ディスク7の回転角度θを取得し(ステップS120)、回転角度θが予め定めた閾値θth(例えば、θth=90°)よりも小さいかどうかを判定する(ステップS230)。
【0052】
ステップS230での判定結果がYESの場合は、試薬容器6に収容された試薬の残量Vが予め定めた閾値Vth1(例えば、Vth1=最大充填量の50%)よりも小さいかどうかを判定し(ステップS240)、判定結果がYESの場合は、LLD機能を用いるノズル下降停止処理(液面検知下降制御)を行い(ステップS250)、判定結果がNOの場合はパルス制御に基づくノズル下降停止処理(駆動信号下降制御)を行う(ステップS260)。
【0053】
また、ステップS230での判定結果がYESの場合は、試薬容器6に収容された試薬の残量Vが予め定めた閾値Vth2(例えば、Vth2=最大充填量の25%)よりも小さいかどうかを判定し(ステップS270)、判定結果がYESの場合は、LLD機能を用いるノズル下降停止処理(液面検知下降制御)を行い(ステップS280)、判定結果がNOの場合はパルス制御に基づくノズル下降停止処理(駆動信号下降制御)を行う(ステップS290)。
【0054】
なお、ステップS250,S280のLLD機能を用いるノズル下降停止処理(液面検知下降制御)及びステップS260,S290のパルス制御に基づくノズル下降停止処理(駆動信号下降制御)は、それぞれ第1の実施の形態におけるLLD機能を用いるノズル下降停止処理(
図3のステップS140)及びパルス制御に基づくノズル下降停止処理(
図3のステップS150)と同様の機能である。
【0055】
ステップS250,S260,S280,S290の何れかの処理が終了すると、分注ノズル30により試薬を吸引し(ステップS360)、分注ノズル30を上昇させる(ステップS310)。続いて、反応ディスク4における試薬の吐出を行う試薬分注位置に分注ノズル30を移動させ(ステップS320)、反応セル3に分注ノズル30から試薬を吐出して(ステップS330)、処理を終了する。
【0056】
(2−2)動作
以上のように構成した本実施の形態における動作を説明する。
【0057】
分析処理の実施が指示されると、分析対象の試料14が収容された試料容器1がラック搬送機構2により試料容器ラック12に搭載されて試料分注位置に搬送される。また、反応ディスク4が回転駆動されて試料が分注される反応セル3が試料分注位置に移動される。この状態で、試料分注機構5a,5bにより試料容器1の試料14が反応セル3に分注される。
【0058】
次に、試薬分注処理の開始が指示され、試薬ディスク7及び反応ディスク4が回転駆動されて、分析に用いる試薬が収容された試薬容器6と試料の分注された反応セル3とが試薬分注位置に移動される(
図6のステップS200,S210)。このとき、試薬容器6が元の場所から試薬分注位置まで移動するのに要した試薬ディスク7の回転角度θを取得し、予め定めた閾値θthよりも小さいかどうかを判定する(
図6のステップS220,S230)。回転角度θは、試薬ディスク7(試薬容器搬送機構)による試薬容器6の搬送状態に関して定義する変数である試薬容器搬送状態変数である。
【0059】
閾値θthは、試薬ディスク7の回転動作による試薬容器6の移動及び試薬分注位置での停止によって、試薬容器6に収容された試薬が波立つ、或いは泡立つ場合とそうでない場合とを判定するための基準である。
【0060】
また、試薬ディスク7の回転角度θに基づく判定(
図6のステップS220,S230)に加えて、試薬容器6に収容された試薬の残量Vが予め定めた閾値Vth1よりも小さいかどうか、又は、試薬容器6に収容された試薬の残量Vが予め定めた閾値Vth2よりも小さいかどうかを判定する(ステップS240,S270)。試薬の残量Vは、試薬容器7(試薬容器搬送機構)に収容された試薬14の収容状態に関して定義する変数である試薬状態変数である。
【0061】
閾値Vth1,Vth2は、試薬ディスク7の回転動作による試薬容器6の移動及び試薬分注位置での停止によって、試薬容器6に収容された試薬が波立つ、或いは泡立つ場合とそうでない場合とを判定するために、回転角度θの値に対応してそれぞれ定めた基準である。これは、試薬の残量が多くなるのにしたがって、波立ちや泡立ち等が生じやすい傾向にあるという知見から得られる基準である。
【0062】
したがって、試薬容器6の移動における試薬ディスク7の回転角度θが閾値θth(例えば、閾値θth=90°)よりも小さい場合は、試薬容器6の試薬の波立ちや泡立ちは、試薬分注機構8,9の分注ノズル30による吸引精度(すなわち、LLD機能を用いたノズル下降停止処理の精度)に影響を与えにくい程度であると判定し、さらに、試薬容器6に収容された試薬の残量Vが予め定めた閾値Vth1(例えば、Vth1=最大充填量の50%)よりも小さい場合は、試薬容器6の試薬の波立ちや泡立ちは、試薬分注機構8,9の分注ノズル30による吸引精度(すなわち、LLD機能を用いたノズル下降停止処理の精度)にさらに影響を与えにくい程度、すなわち、分析結果に影響を与えない程度であると判定し、LLD機能を用いるノズル下降停止処理を行って、分注ノズル30の試薬容器6への下降を行い、分注ノズル30により試薬を吸引し、分注ノズル30を上昇させ、反応ディスク4における試薬の吐出を行う試薬分注位置に移動させて、反応セル3に試薬を吐出して、試薬分注処理を終了する(
図6のステップS250,S300〜S330)。また、試薬容器6に収容された試薬の残量Vが予め定めた閾値Vth1(例えば、Vth1=最大充填量の50%)よりも大きい場合は、試薬容器6の試薬の波立ちや泡立ちは、試薬分注機構8,9の分注ノズル30による吸引精度(すなわち、LLD機能を用いたノズル下降停止処理の精度)に影響を与える恐れがある程度、すなわち、分析結果に影響を与える恐れがある程度になると判定し、パルス制御に基づくノズル下降停止処理を行って、分注ノズル30の試薬容器6への下降を行い、分注ノズル30により試薬を吸引し、分注ノズル30を上昇させ、反応ディスク4における試薬の吐出を行う試薬分注位置に移動させて、反応セル3に試薬を吐出して、試薬分注処理を終了する(
図6のステップS260,S300〜S330)。
【0063】
また、試薬容器6の移動における試薬ディスク7の回転角度θが閾値θth(例えば、閾値θth=90°)よりも大きい場合は、試薬容器6の試薬の波立ちや泡立ちは、試薬分注機構8,9の分注ノズル30による吸引精度(すなわち、LLD機能を用いたノズル下降停止処理の精度)に影響を与える恐れがある程度、すなわち、分析結果に影響を与える恐れがある程度であると判定し、さらに、試薬容器6に収容された試薬の残量Vが予め定めた閾値Vth2(例えば、Vth2=最大充填量の25%)よりも小さい場合は、試薬容器6の試薬の波立ちや泡立ちは、試薬分注機構8,9の分注ノズル30による吸引精度(すなわち、LLD機能を用いたノズル下降停止処理の精度)に影響を与えにくい程度、すなわち、分析結果に影響を与えない程度になると判定し、LLD機能を用いるノズル下降停止処理を行って、分注ノズル30の試薬容器6への下降を行い、分注ノズル30により試薬を吸引し、分注ノズル30を上昇させ、反応ディスク4における試薬の吐出を行う試薬分注位置に移動させて、反応セル3に試薬を吐出して、試薬分注処理を終了する(
図6のステップS280,S300〜S330)。また、試薬容器6に収容された試薬の残量Vが予め定めた閾値Vth2(例えば、Vth2=最大充填量の25%)よりも大きい場合は、試薬容器6の試薬の波立ちや泡立ちは、試薬分注機構8,9の分注ノズル30による吸引精度(すなわち、LLD機能を用いたノズル下降停止処理の精度)に影響を与える恐れがある程度、すなわち、分析結果に影響を与える恐れがある程度になると判定し、パルス制御に基づくノズル下降停止処理を行って、分注ノズル30の試薬容器6への下降を行い、分注ノズル30により試薬を吸引し、分注ノズル30を上昇させ、反応ディスク4における試薬の吐出を行う試薬分注位置に移動させて、反応セル3に試薬を吐出して、試薬分注処理を終了する(
図6のステップS290,S300〜S330)。
【0064】
試薬分注処理が終了した反応セル3の反応液は測光部10により測光され、その結果に基づいて、分析対象試料の分析結果が算出される。
【0065】
その他の構成は、第1の実施の形態と同様である。
【0066】
(2−3)効果
以上のように構成した本実施の形態においても、第1の実施の形態と同様の効果を得ることができる。
【0067】
また、試薬容器に収容された試薬の収容状態に関して定義する変数である試薬状態変数に基づいて液面検知下降制御と駆動信号下降制御の何れかを選択的に用いるように構成したので、分析処理の高速化に伴う試薬消費量増加を鑑みての試薬容量増加にも対応することができ、試薬容器に収容された試薬の液揺れや泡立ちに起因する試薬の分注不良の発生をさらに抑制することにより、分析精度の低下を抑制することができる。
【0068】
(3)その他
図7に示すように、穿孔方式の試薬容器6Aを使用する場合、試薬サンプリング機構の分注ノズルアラームや試薬の飛び散りによる分析性能への影響があることから、LLD機能を用いたノズル下降停止処理、又は、パルス制御に基づくノズル下降停止処理のどちらの動作でも、分注ノズル30が穿孔蓋33を通過する前後(低速領域L1,L2)で、分注ノズル30の動作速度を低速に制御することもできる。
【0069】
なお、本発明の第1及び第2の実施の形態においては、分注対象として試薬容器に収容された試薬を例にとり説明しているが、これに限られず、試料容器に収容された試料、その他の対象物を分注する場合にも適用可能であることは言うまでもない。