特許第6249733号(P6249733)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6249733ルテニウム錯体及びその製造方法、ルテニウム含有薄膜及びその作製方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6249733
(24)【登録日】2017年12月1日
(45)【発行日】2017年12月20日
(54)【発明の名称】ルテニウム錯体及びその製造方法、ルテニウム含有薄膜及びその作製方法
(51)【国際特許分類】
   C07F 17/02 20060101AFI20171211BHJP
   C07C 255/03 20060101ALI20171211BHJP
   C07C 253/30 20060101ALI20171211BHJP
   C07C 49/203 20060101ALI20171211BHJP
   C07C 45/77 20060101ALI20171211BHJP
   C23C 16/18 20060101ALI20171211BHJP
   C07F 15/00 20060101ALN20171211BHJP
【FI】
   C07F17/02CSP
   C07C255/03
   C07C253/30
   C07C49/203 Z
   C07C45/77
   C23C16/18
   !C07F15/00 A
【請求項の数】20
【全頁数】52
(21)【出願番号】特願2013-239628(P2013-239628)
(22)【出願日】2013年11月20日
(65)【公開番号】特開2015-44786(P2015-44786A)
(43)【公開日】2015年3月12日
【審査請求日】2016年10月20日
(31)【優先権主張番号】特願2012-268396(P2012-268396)
(32)【優先日】2012年12月7日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2013-156294(P2013-156294)
(32)【優先日】2013年7月29日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003300
【氏名又は名称】東ソー株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000173762
【氏名又は名称】公益財団法人相模中央化学研究所
(72)【発明者】
【氏名】多田 賢一
(72)【発明者】
【氏名】山本 俊樹
(72)【発明者】
【氏名】尾池 浩幸
(72)【発明者】
【氏名】摩庭 篤
(72)【発明者】
【氏名】千葉 洋一
(72)【発明者】
【氏名】岩永 宏平
(72)【発明者】
【氏名】河野 和久
【審査官】 水野 浩之
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−342286(JP,A)
【文献】 国際公開第2009/094259(WO,A1)
【文献】 NAVARRO CLEMENTE, M. Elena, et al.,Organometallics,2002年,21(4),pp. 592-605
【文献】 RAJAPAKSHE, Asha, et al.,Organometallics,2006年,25(8),pp. 1914-1923
【文献】 TRAKARNPRUK, Wimonrat, et al.,Organometallics,1992年,11(4),pp. 1686-1692
【文献】 SANCHEZ-CASTRO, M. Esther, et al.,Organometallics,2008年,27(23),pp. 6071-6082
【文献】 CHAZARO-RUIZ, Luis F. , et al.,Journal of Electroanalytical Chemistry ,2007年,611(1-2),pp. 96-106
【文献】 NAVARRO, M. Elena, et al.,Journal of Electroanalytical Chemistry ,2000年,480(1-2),pp. 18-25
【文献】 TRAKARNPRUK, Wimonrat, et al.,Organometallics,1994年,13(6),pp. 2423-2429
【文献】 GUTIERREZ, Alicia C. , et al.,Journal of Flow Chemistry,2011年,1,pp. 24-27
【文献】 SCHRENK, Janet L. , et al.,Inorganic Chemistry ,1986年,25(19),pp. 3501-3504
【文献】 DURACZYNSKA, Dorota, et al.,Dalton Transactions ,2003年,(3),449-457
【文献】 TROST, Barry M. , et al.,Organometallics,2002年,21(12),pp. 2544-2546
【文献】 MCNAIR, Amy M. , et al.,Inorganic Chemistry ,1987年,26(7),pp. 1182-1185
【文献】 GUSEV, Oleg V. , et al.,Journal of Organometallic Chemistry,1997年,534,pp. 57-66
【文献】 PEREKALIN, Dmitry S. , et al.,European Journal of Inorganic Chemistry,2012年,2012(9),pp. 1485-1492
【文献】 KVIETOK, Frank, et al.,Organometallics,1994年,13(1),pp. 60-68
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07F
C07C
C07D
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(1a)
【化1】
(式中、R1a、R2a、R3a、R4a及びR5aは各々独立に、水素原子又は炭素数1〜6のアルキル基を表す。ただしR1a、R2a、R3a、R4a及びR5a全てが同時にメチル基の場合を除く。R6a及びR7aは各々独立に炭素数1〜6のアルキル基を表す。)で示されるルテニウム錯体。
【請求項2】
1aが炭素数1〜6のアルキル基であり、R2a、R3a、R4a及びR5aが水素原子であり、R6a及びR7aがメチル基である請求項1に記載のルテニウム錯体。
【請求項3】
1aがメチル基又はエチル基であり、R2a、R3a、R4a及びR5aが水素原子であり、R6a及びR7aがメチル基である請求項1又は2に記載のルテニウム錯体。
【請求項4】
一般式(2)
【化2】
(式中、R、R、R、R及びRは各々独立に、水素原子又は炭素数1〜6のアルキル基を表す。R21は炭素数1〜4のアルキル基を表す。Zは対アニオンを表す。)で示されるカチオン性トリス(ニトリル)錯体と、一般式(3)
【化3】
(式中、R及びRは各々独立に炭素数1〜6のアルキル基を表す。)で示されるエノン誘導体を、塩基の存在下反応させることを特徴とする、一般式(1)
【化4】
(式中、R、R、R、R、R、R及びRは各々独立に、水素原子又は炭素数1〜6のアルキル基を表す。)で示されるルテニウム錯体の製造方法。
【請求項5】
が炭素数1〜6のアルキル基であり、R、R、R及びRが水素原子であり、R及びRがメチル基である請求項4に記載の製造方法。
【請求項6】
がメチル基又はエチル基であり、R、R、R及びRが水素原子であり、R及びRがメチル基である請求項4又は5に記載の製造方法。
【請求項7】
塩基がアルカリ金属炭酸塩又はアルキルアミンである請求項4〜6のいずれかに記載の製造方法。
【請求項8】
一般式(2b)
【化5】
(式中、R1bは炭素数2〜6のアルキル基を表す。R21bは炭素数1〜4のアルキル基を表す。Zbは対アニオンを表す。)で示されるカチオン性トリス(ニトリル)錯体。
【請求項9】
21bがメチル基である、請求項8に記載のカチオン性トリス(ニトリル)錯体。
【請求項10】
1bがエチル基であり、R21bがメチル基である、請求項8又は9に記載のカチオン性トリス(ニトリル)錯体。
【請求項11】
一般式(4)
【化6】
(式中、R、R、R、R及びRは各々独立に、水素原子又は炭素数1〜6のアルキル基を表す。Xは、一般式(5)
【化7】
(式中、R、R、R、R及びRは前記と同意義を表す。)で示されるη−(無置換又は置換)シクロペンタジエニル配位子、又はη−2,4−ジメチル−2,4−ペンタジエニル配位子を表す。)で示されるルテノセン誘導体と、一般式R21CN(R21は炭素数1〜4のアルキル基を表す。)で示されるニトリルと、一般式H(式中、Zは対アニオンを表す。)で示されるプロトン酸とを反応させることを特徴とする、一般式(2)
【化8】
(式中、R、R、R、R、R、R21及びZは前記と同意義を表す。)で示されるカチオン性トリス(ニトリル)錯体の製造方法。
【請求項12】
Xが一般式(5)
【化9】
(式中、R、R、R、R及びRは各々独立に、水素原子又は炭素数1〜6のアルキル基を表す。)で示されるη−(無置換又は置換)シクロペンタジエニル配位子である請求項11に記載の製造方法。
【請求項13】
21がメチル基である請求項11又は12に記載の製造方法。
【請求項14】
一般式(4)
【化10】
(式中、R、R、R、R及びRは各々独立に、水素原子又は炭素数1〜6のアルキル基を表す。Xは、一般式(5)
【化11】
(式中、R、R、R、R及びRは前記と同意義を表す。)で示されるη−(無置換又は置換)シクロペンタジエニル配位子、又はη−2,4−ジメチル−2,4−ペンタジエニル配位子を表す。)で示されるルテノセン誘導体と、一般式R21CN(R21は炭素数1〜4のアルキル基を表す。)で示されるニトリルと、一般式H(式中、Zは対アニオンを表す)で示されるプロトン酸とを反応させることにより、一般式(2)
【化12】
(式中、R、R、R、R、R、R21及びZは前記と同意義を表す。)で示されるカチオン性トリス(ニトリル)錯体を製造し、さらに該カチオン性トリス(ニトリル)錯体と一般式(3)
【化13】
(式中、R及びRは各々独立に炭素数1〜6のアルキル基を示す。)で示されるエノン誘導体を、塩基の存在下反応させることを特徴とする、一般式(1)
【化14】
(式中、R、R、R、R、R、R及びRは前記と同意義を表す。)で示されるルテニウム錯体の製造方法。
【請求項15】
Xが一般式(5)
【化15】
(式中、R、R、R、R及びRは各々独立に、水素原子又は炭素数1〜6のアルキル基を表す。)で示されるη−(無置換又は置換)シクロペンタジエニル配位子である請求項14に記載の製造方法。
【請求項16】
21がメチル基である請求項14又は15に記載の製造方法。
【請求項17】
一般式(1)
【化16】
(式中、R、R、R、R及びRは各々独立に、水素原子又は炭素数1〜6のアルキル基を表す。R及びRは各々独立に炭素数1〜6のアルキル基を表す。)で示されるルテニウム錯体を気化させ、基板上で分解することを特徴とする、ルテニウム含有薄膜の作製方法。
【請求項18】
化学気相蒸着法によるルテニウム含有薄膜の作製方法であることを特徴とする、請求項17に記載の作製方法。
【請求項19】
酸化性ガスを用いないことを特徴とする、請求項17又は18に記載の作製方法。
【請求項20】
ルテニウム含有薄膜が金属ルテニウム薄膜である請求項17〜19のいずれかに記載の作製方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体素子の製造用原料として有用なルテニウム錯体及びその製造方法、該ルテニウム錯体を用いたルテニウム含有薄膜及びその作製方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ルテニウムは、高い導電性を示すこと、導電性酸化物が形成可能であること、仕事関数が高いこと、エッチング特性にも優れること、銅との格子整合性に優れることなどの特長を持つため、DRAMなどのメモリー電極、ゲート電極、銅配線シード層/密着層などの材料として注目を集めている。次世代の半導体デバイスには、記憶容量や応答性をさらに向上させる目的のため、高度に細密化され、かつ高度に三次元化されたデザインが採用されている。したがって次世代の半導体装置を構成する材料としてルテニウムを使用するためには、三次元化された基板上に数ナノ〜数十ナノメートル程度の厚みのルテニウム含有薄膜を均一に形成する技術の確立が必要とされている。三次元化された基板上に金属薄膜を作製するための技術としては、原子層蒸着法(ALD法)や化学気相蒸着法(CVD法)など、化学反応に基づく気相蒸着法の活用が有力視されている。次世代のDRAM下部電極や銅配線シード層/密着層としてルテニウムが使用される場合、下地にはバリアメタルとして窒化チタンや窒化タンタルなどが採用される見込みである。ルテニウム含有薄膜を作製する際にバリアメタルが酸化されると、バリア性能の劣化、抵抗値の上昇に起因するトランジスタとの導通不良、及び配線間容量の増加に起因する応答性の低下などの問題が生じる。これらの問題を回避するため、酸素やオゾンなどの酸化性ガスを用いない条件下でもルテニウム含有薄膜の作製を可能とする材料が求められている。
【0003】
非特許文献1及び非特許文献2には、本発明のルテニウム錯体(1a)に類似の構造を持つ化合物として、(η−2,4−ジメチル−1−オキサ−2,4−ペンタジエニル)(η−1,2,3,4,5−ペンタメチルシクロペンタジエニル)ルテニウム及び(η−2,4−ジ−tert−ブチル−1−オキサ−2,4−ペンタジエニル)(η−1,2,3,4,5−ペンタメチルシクロペンタジエニル)ルテニウムが記載されている。しかし、該文献に記載されているのはη−1,2,3,4,5−ペンタメチルシクロペンタジエニル配位子を有する錯体に限定されている。また該文献に記載の合成方法は、クロロ(η−1,2,3,4,5−ペンタメチルシクロペンタジエニル)ルテニウムとリチウムエノラトとの反応、及びクロロ(η−1,2,3,4,5−ペンタメチルシクロペンタジエニル)ルテニウムとエノン誘導体と炭酸カリウムとの反応によるものであり、本発明の製造方法とは異なる。さらに該文献にはこれらの錯体をルテニウム含有薄膜を作製するための材料として用いることに関する記述は一切ない。
【0004】
カチオン性のルテニウム錯体[(η−シクロペンタジエニル)トリス(ニトリル)ルテニウム]は、種々の本発明のルテニウム錯体をはじめとする種々のルテニウム錯体の合成原料として有用である。非特許文献3には[Ru(η−C)(η−C)][PF]をアセトニトリル中で光照射することにより[Ru(η−C)(MeCN)][PF]を製造する方法が記載されている。また非特許文献4にはルテノセンと塩化アルミニウム、アルミニウム、塩化チタン、ナフタレン及びホウフッ化カリウムとを反応させてη−ナフタレン錯体を調製し、さらにアセトニトリルを反応させることにより[Ru(η−C)(MeCN)][PF]を製造する方法が記載されている。
【0005】
しかし非特許文献3及び非特許文献4に記載のカチオン性トリス(ニトリル)錯体の合成方法は、強力な紫外線を照射する設備を必要とする点、高価な原料や大量の反応剤を使用する点などの問題を有しているため、コストメリットに優れた実用的な製造法とは言い難い。
【0006】
一置換シクロペンタジエニル配位子を持つカチオン性トリス(ニトリル)ルテニウム錯体として、[(η−メチルシクロペンタジエニル)トリス(アセトニトリル)ルテニウム]が非特許文献5に記載されている。また五置換シクロペンタジエニル配位子を持つカチオン性のルテニウム錯体として、[(η−1,2,3,4,5−ペンタメチルシクロペンタジエニル)トリス(アセトニトリル)ルテニウム]が非特許文献6に記載されている。しかし炭素数2から6のアルキル基を有する一置換シクロペンタジエニル配位子を持つカチオン性トリス(ニトリル)ルテニウム錯体の報告例はない。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Organometallics、第11巻、1686ページ(1992年)。
【0008】
【非特許文献2】Organometallics、第21巻、592ページ(2002年)。
【非特許文献3】Organometallics、第21巻、2544ページ(2002年)。
【0009】
【非特許文献4】Advanced Synthesis & Catalysis、第346巻、901ページ(2004年)。
【0010】
【非特許文献5】Dalton Transactions、449ページ(2003年)。
【0011】
【非特許文献6】Inorganic Chemistry、第25巻、3501ページ(1986年)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、酸化性ガス条件下に加えて非酸化性ガス条件下においてもルテニウム含有薄膜を作製することが出来る作製方法、該作製方法の材料として有用なルテニウム錯体、及び該ルテニウム錯体の製造方法を提供することを課題とする。また一般式(2)で示されるカチオン性トリス(ニトリル)錯体は、一般式(1)及び(1a)で示されるルテニウム錯体の合成原料として有用である。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者らは上記の課題を解決すべく鋭意検討した結果、一般式(1)及び(1a)で示されるルテニウム錯体が酸化性ガス条件下に加えて非酸化性ガス条件下においてもルテニウム含有薄膜を作製するための材料として有用なことを見出し、またルテニウム錯体(1)及び(1a)の合成原料として有用な、一般式(2)で示されるカチオン性トリス(ニトリル)錯体を、ルテノセン誘導体とニトリルとプロトン酸とを反応させることによって良好な収率で製造出来ることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち本発明は、一般式(1a)
【0014】
【化1】
【0015】
(式中、R1a、R2a、R3a、R4a及びR5aは各々独立に、水素原子又は炭素数1〜6のアルキル基を表す。ただしR1a、R2a、R3a、R4a及びR5a全てが同時にメチル基の場合を除く。R6a及びR7aは各々独立に炭素数1〜6のアルキル基を表す。)で示されるルテニウム錯体に関する。また本発明は、
一般式(2)
【0016】
【化2】
【0017】
(式中、R、R、R、R及びRは各々独立に、水素原子又は炭素数1〜6のアルキル基を表す。R21は炭素数1〜4のアルキル基を表す。Zは対アニオンを表す。)で示されるカチオン性トリス(ニトリル)錯体と、一般式(3)
【0018】
【化3】
【0019】
(式中、R及びRは各々独立に炭素数1〜6のアルキル基を表す。)で示されるエノン誘導体を、塩基の存在下反応させることを特徴とする、一般式(1)
【0020】
【化4】
【0021】
(式中、R、R、R、R、R、R及びRは各々独立に、水素原子又は炭素数1〜6のアルキル基を表す。)で示されるルテニウム錯体の製造方法に関する。さらに本発明は、
一般式(2b)
【0022】
【化5】
【0023】
(式中、R1bは炭素数2〜6のアルキル基を表す。R21bは炭素数1〜4のアルキル基を表す。Zbは対アニオンを表す。)で示されるカチオン性トリス(ニトリル)錯体に関する。さらに本発明は、
一般式(4)
【0024】
【化6】
【0025】
(式中、R、R、R、R及びRは各々独立に、水素原子又は炭素数1〜6のアルキル基を表す。Xは、一般式(5)
【0026】
【化7】
【0027】
(式中、R、R、R、R及びRは前記と同意義を表す。)で示されるη−(無置換又は置換)シクロペンタジエニル配位子、又はη−2,4−ジメチル−2,4−ペンタジエニル配位子を表す。)で示されるルテノセン誘導体と、一般式R21CN(R21は前記と同意義を表す。)で示されるニトリルと、一般式H(式中、Zは前記と同意義を表す。)で示されるプロトン酸とを反応させることを特徴とする、一般式(2)
【0028】
【化8】
【0029】
(式中、R、R、R、R、R、R21及びZは前記と同意義を表す。)で示されるカチオン性トリス(ニトリル)錯体の製造方法に関する。さらに本発明は、一般式(4)
【0030】
【化9】
【0031】
(式中、R、R、R、R及びRは各々独立に、水素原子又は炭素数1〜6のアルキル基を表す。Xは、一般式(5)
【0032】
【化10】
【0033】
(式中、R、R、R、R及びRは前記と同意義を表す。)で示されるη−(無置換又は置換)シクロペンタジエニル配位子、又はη−2,4−ジメチル−2,4−ペンタジエニル配位子を表す。)で示されるルテノセン誘導体と、一般式R21CN(R21は前記と同意義を表す。)で示されるニトリルと、一般式H(式中、Zは対アニオンを表す)で示されるプロトン酸とを反応させることにより、一般式(2)
【0034】
【化11】
【0035】
(式中、R、R、R、R、R、R21及びZは前記と同意義を表す。)で示されるカチオン性トリス(ニトリル)錯体を製造し、さらに該カチオン性トリス(ニトリル)錯体と一般式(3)
【0036】
【化12】
【0037】
(式中、R及びRは各々独立に炭素数1〜6のアルキル基を示す。)で示されるエノン誘導体を、塩基の存在下反応させることを特徴とする、一般式(1)で示されるルテニウム錯体の製造方法に関する。さらに本発明は、一般式(1)で示されるルテニウム錯体を材料として用いることを特徴とするルテニウム含有薄膜の作製方法に関する。さらに本発明は、一般式(1)で示されるルテニウム錯体を材料として用いて作製されることを特徴とするルテニウム含有薄膜に関する。さらに本発明は、一般式(1)で示されるルテニウム錯体を材料として用いて作製されるルテニウム含有薄膜を電極部分及び/又は配線部分に使用することを特徴とする半導体デバイスに関する。
【0038】
以下、本発明を更に詳細に説明する。一般式(1a)で示されるルテニウム錯体は、一般式(1)で示されるルテニウム錯体の下位概念に相当する。一般式(1a)で示されるルテニウム錯体は、R1a、R2a、R3a、R4a及びR5a全てが同時にメチル基の場合を含まない。一方、一般式(1)で示されるルテニウム錯体は、R、R、R、R及びR全てが同時にメチル基の場合を含む。
【0039】
次に、一般式(1a)中のR1a、R2a、R3a、R4a、R5a、R6a及びR7aの定義について説明する。R1a、R2a、R3a、R4a及びR5aで表される炭素数1〜6のアルキル基としては、直鎖状、分岐状及び環状のいずれでも良く、具体的にはメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、シクロプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、シクロブチル基、ペンチル基、1−メチルブチル基、2−メチルブチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、tert−ペンチル基、シクロペンチル基、シクロブチルメチル基、ヘキシル基、1−メチルペンチル基、2−メチルペンチル基、3−メチルペンチル基、4−メチルペンチル基、1,1−ジメチルブチル基、1,2−ジメチルブチル基、1,3−ジメチルブチル基、2,2−ジメチルブチル基、2,3−ジメチルブチル基、3,3−ジメチルブチル基、シクロヘキシル基、シクロペンチルメチル基、1−シクロブチルエチル基、2−シクロブチルエチル基などを例示することが出来る。本発明のルテニウム錯体(1a)がCVD材料やALD材料として好適な蒸気圧及び熱安定性を持つ点で、R1aが炭素数1〜6のアルキル基であり、R2a、R3a、R4a及びR5aが水素原子であることが好ましく、R1aがメチル
基又はエチル基であり、R2a、R3a、R4a及びR5aが水素原子であることが更に好ましい。
【0040】
6a及びR7aで表される炭素数1〜6のアルキル基としては、直鎖状、分岐状及び環状のいずれでも良く、具体的にはメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、シクロプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、シクロブチル基、ペンチル基、1−メチルブチル基、2−メチルブチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、tert−ペンチル基、シクロペンチル基、シクロブチルメチル基、ヘキシル基、1−メチルペンチル基、2−メチルペンチル基、3−メチルペンチル基、4−メチルペンチル基、1,1−ジメチルブチル基、1,2−ジメチルブチル基、1,3−ジメチルブチル基、2,2−ジメチルブチル基、2,3−ジメチルブチル基、3,3−ジメチルブチル基、シクロヘキシル基、シクロペンチルメチル基、1−シクロブチルエチル基、2−シクロブチルエチル基などを例示することが出来る。本発明のルテニウム錯体(1a)がCVD材料やALD材料として好適な蒸気圧及び熱安定性を持つ点で、R6a及びR7aはメチル基であることが好ましい。
【0041】
本発明のルテニウム錯体(1a)の具体例を表1−1〜1−6に示した。なお、Me、Et、Pr、Pr、Bu、Bu、Bu、Bu、Pe、Pe及びHxは、それぞれメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、シクロペンチル基及びヘキシル基を示す。
【0042】
【表1】
【0043】
【表2】
【0044】
【表3】
【0045】
【表4】
【0046】
【表5】
【0047】
【表6】
【0048】
表1−1〜1−6に挙げた例示の中でも、(η−シクロペンタジエニル)(η−2,4−ジメチル−1−オキサ−2,4−ペンタジエニル)ルテニウム(1a−1)、(η−2,4−ジメチル−1−オキサ−2,4−ペンタジエニル)(η−メチルシクロペンタジエニル)ルテニウム(1a−2)、(η−2,4−ジメチル−1−オキサ−2,4−ペンタジエニル)(η−エチルシクロペンタジエニル)ルテニウム(1a−3)、(η−2,4−ジメチル−1−オキサ−2,4−ペンタジエニル)(η−プロピルシクロペンタジエニル)ルテニウム(1a−4)、(η−2,4−ジメチル−1−オキサ−2,4−ペンタジエニル)(η−イソプロピルシクロペンタジエニル)ルテニウム(1a−5)、(η−2,4−ジメチル−1−オキサ−2,4−ペンタジエニル)(η−ブチルシクロペンタジエニル)ルテニウム(1a−6)、(η−2,4−ジメチル−1−オキサ−2,4−ペンタジエニル)(η−イソブチルシクロペンタジエニル)ルテニウム(1a−7)、(η−2,4−ジメチル−1−オキサ−2,4−ペンタジエニル)(η−(sec−ブチル)シクロペンタジエニル)ルテニウム(1a−8)、(η−2,4−ジメチル−1−オキサ−2,4−ペンタジエニル)(η−(tert−ブチル)シクロペンタジエニル)ルテニウム(1a−9)、(η−2,4−ジメチル−1−オキサ−2,4−ペンタジエニル)(η−ペンチルシクロペンタジエニル)ルテニウム(1a−10)、(η−(シクロペンチル)シクロペンタジエニル)(η−2,4−ジメチル−1−オキサ−2,4−ペンタジエニル)ルテニウム(1a−11)及び(η−2,4−ジメチル−1−オキサ−2,4−ペンタジエニル)(η−ヘキシルシクロペンタジエニル)ルテニウム(1a−12)が好ましく、1a−2及び1a−3が更に好ましい。
【0049】
次に本発明のルテニウム錯体(1a)の製造方法について説明する。ルテニウム錯体(1a)は、下記のルテニウム錯体(1)の製造方法1に従って製造することが出来る。製造方法1は、カチオン性トリス(ニトリル)錯体(2)と、エノン誘導体(3)を、塩基の存在下反応させることによりルテニウム錯体(1)を製造する方法である。
【0050】
【化13】
【0051】
(式中、R、R、R、R、R、R、R、R21及びZは前記と同意義を表す。)
次に一般式(1)中のR、R、R、R、R、R及びRの定義について説明する。R、R、R、R及びRで表される炭素数1〜6のアルキル基としては、直鎖状、分岐状及び環状のいずれでも良く、具体的にはメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、シクロプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、シクロブチル基、ペンチル基、1−メチルブチル基、2−メチルブチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、tert−ペンチル基、シクロペンチル基、シクロブチルメチル基、ヘキシル基、1−メチルペンチル基、2−メチルペンチル基、3−メチルペンチル基、4−メチルペンチル基、1,1−ジメチルブチル基、1,2−ジメチルブチル基、1,3−ジメチルブチル基、2,2−ジメチルブチル基、2,3−ジメチルブチル基、3,3−ジメチルブチル基、シクロヘキシル基、シクロペンチルメチル基、1−シクロブチルエチル基、2−シクロブチルエチル基などを例示することが出来る。収率が良い点でRが炭素数1〜6のアルキル基でありR、R、R及びRが水素原子であることが好ましく、Rがメチル基又はエチル基であってR、R、R及びRが水素原子であることが更に好ましい。
【0052】
及びRで表される炭素数1〜6のアルキル基としては、直鎖状、分岐状及び環状のいずれでも良く、具体的にはメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、シクロプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、シクロブチル基、ペンチル基、1−メチルブチル基、2−メチルブチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、tert−ペンチル基、シクロペンチル基、シクロブチルメチル基、ヘキシル基、1−メチルペンチル基、2−メチルペンチル基、3−メチルペンチル基、4−メチルペンチル基、1,1−ジメチルブチル基、1,2−ジメチルブチル基、1,3−ジメチルブチル基、2,2−ジメチルブチル基、2,3−ジメチルブチル基、3,3−ジメチルブチル基、シクロヘキシル基、シクロペンチルメチル基、1−シクロブチルエチル基、2−シクロブチルエチル基などを例示することが出来る。収率が良い点でR及びRはメチル基であることが好ましい。
【0053】
ルテニウム錯体(1)の具体例としては、表1−1〜1−6に示した1a−1〜1a−210に加えて、表2に示した化合物を挙げることが出来る。
【0054】
【表7】
【0055】
表1−1〜1−6及び表2に挙げた例示の中でも、1a−1、1a−2、1a−3、1a−4、1a−5、1a−6、1a−7、1a−8、1a−9、1a−10、1a−11及び、1−12がCVD材料やALD材料として好適な蒸気圧及び熱安定性を持つ点で好ましく、1a−2及び1a−3が更に好ましい。
【0056】
カチオン性トリス(ニトリル)錯体(2)におけるR21で表される炭素数1〜4のアルキル基としては、直鎖状、分岐状及び環状のいずれでも良く、具体的にはメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、シクロプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、シクロブチル基などを例示することが出来る。ルテニウム錯体(1)の収率が良い点で、R21がメチル基であることが好ましい。
【0057】
カチオン性トリス(ニトリル)錯体(2)のカチオン部分の具体例としては、[トリス(アセトニトリル)(η−シクロペンタジエニル)ルテニウム(II)]([Ru(η−C)(MeCN)])、[トリス(アセトニトリル)(η−メチルシクロペンタジエニル)ルテニウム(II)]([Ru(η−CMeH)(MeCN)])、[トリス(アセトニトリル)(η−エチルシクロペンタジエニル)ルテニウム(II)]([Ru(η−CEtH)(MeCN)])、[トリス(アセトニトリル)(η−プロピルシクロペンタジエニル)ルテニウム(II)]([Ru(η−CPrH)(MeCN)])、[トリス(アセトニトリル)(η−イソプロピルシクロペンタジエニル)ルテニウム(II)]([Ru(η−CPrH)(MeCN)])、[トリス(アセトニトリル)(η−ブチルシクロペンタジエニル)ルテニウム(II)]([Ru(η−CBuH)(MeCN)])、[トリス(アセトニトリル)(η−イソブチルシクロペンタジエニル)ルテニウム(II)]([Ru(η−CBuH)(MeCN)])、[トリス(アセトニトリル)(η−(sec−ブチル)シクロペンタジエニル)ルテニウム(II)]([Ru(η−CBuH)(MeCN)])、[トリス(アセトニトリル)(η−(tert−ブチル)シクロペンタジエニル)ルテニウム(II)]([Ru(η−CBuH)(MeCN)])、[トリス(アセトニトリル)(η−ペンチルシクロペンタジエニル)ルテニウム(II)]([Ru(η−CPeH)(MeCN)])、[トリス(アセトニトリル)(η−(シクロペンチル)シクロペンタジエニル)ルテニウム(II)]([Ru(η−CPeH)(MeCN)])、[トリス(アセトニトリル)(η−ヘキシルシクロペンタジエニル)ルテニウム(II)]([Ru(η−CHxH)(MeCN)])、[トリス(アセトニトリル)(η−1,2,3,4,5−ペンタメチルシクロペンタジエニル)ルテニウム(II)]([Ru(η−CMe)(MeCN)])、[(η−シクロペンタジエニル)トリス(プロピオニトリル)ルテニウム(II)]([Ru(η−C)(EtCN)])、[(η−メチルシクロペンタジエニル)トリス(プロピオニトリル)ルテニウム(II)]([Ru(η−CMeH)(EtCN)])、[(η−エチルシクロペンタジエニル)トリス(プロピオニトリル)ルテニウム(II)]([Ru(η−CEtH)(EtCN)])、[トリス(プロピオニトリル)(η−プロピルシクロペンタジエニル)ルテニウム(II)]([Ru(η−CPrH)(EtCN)])、[(η−イソプロピルシクロペンタジエニル)トリス(プロピオニトリル)ルテニウム(II)]([Ru(η−CPrH)(EtCN)])、[(η−ブチルシクロペンタジエニル)トリス(プロピオニトリル)ルテニウム(II)]([Ru(η−CBuH)(EtCN)])、[(η−イソブチルシクロペンタジエニル)トリス(プロピオニトリル)ルテニウム(II)]([Ru(η−CBuH)(EtCN)])、[(η−(sec−ブチル)シクロペンタジエニル)トリス(プロピオニトリル)ルテニウム(II)]([Ru(η−CBuH)(EtCN)])、[(η−(tert−ブチル)シクロペンタジエニル)トリス(プロピオニトリル)ルテニウム(II)]([Ru(η−CBuH)(EtCN)])、[(η−ペンチルシクロペンタジエニル)トリス(プロピオニトリル)ルテニウム(II)]([Ru(η−CPeH)(EtCN)])、[(η−(シクロペンチル)シクロペンタジエニル)トリス(プロピオニトリル)ルテニウム(II)]([Ru(η−CPeH)(EtCN)])、[(η−ヘキシルシクロペンタジエニル)トリス(プロピオニトリル)ルテニウム(II)]([Ru(η−CHxH)(EtCN)])、[(η−シクロペンタジエニル)トリス(ピバロニトリル)ルテニウム(II)]([Ru(η−C)(BuCN)])、[(η−メチルシクロペンタジエニル)トリス(ピバロニトリル)ルテニウム(II)]([Ru(η−CMeH)(BuCN)])、[(η−エチルシクロペンタジエニル)トリス(ピバロニトリル)ルテニウム(II)]([Ru(η−CEtH)(BuCN)])、[トリス(ピバロニトリル)(η−プロピルシクロペンタジエニル)ルテニウム(II)]([Ru(η−CPrH)(BuCN)])、[(η−イソプロピルシクロペンタジエニル)トリス(ピバロニトリル)ルテニウム(II)]([Ru(η−CPrH)(BuCN)])、[(η−ブチルシクロペンタジエニル)トリス(ピバロニトリル)ルテニウム(II)]([Ru(η−CBuH)(BuCN)])、[(η−イソブチルシクロペンタジエニル)トリス(ピバロニトリル)ルテニウム(II)]([Ru(η−CBuH)(BuCN)])、[(η−(sec−ブチル)シクロペンタジエニル)トリス(ピバロニトリル)ルテニウム(II)]([Ru(η−CBuH)(BuCN)])、[(η−(tert−ブチル)シクロペンタジエニル)トリス(ピバロニトリル)ルテニウム(II)]([Ru(η−CBuH)(BuCN)])、[(η−ペンチルシクロペンタジエニル)トリス(ピバロニトリル)ルテニウム(II)]([Ru(η−CPeH)(BuCN)])、[(η−(シクロペンチル)シクロペンタジエニル)トリス(ピバロニトリル)ルテニウム(II)]([Ru(η−CPeH)(BuCN)])、[(η−ヘキシルシクロペンタジエニル)トリス(ピバロニトリル)ルテニウム(II)]([Ru(η−CHxH)(BuCN)])などを例示することが出来る。
【0058】
一般式(2)における対アニオンZの例としては、カチオン性金属錯体の対アニオンとして一般的に用いられているものを挙げることが出来る。具体的にはテトラフルオロホウ酸イオン(BF)、ヘキサフルオロリン酸イオン(PF)、ヘキサフルオロアンチモン酸イオン(SbF)、テトラフルオロアルミン酸イオン(AlF)などのフルオロ錯アニオン、トリフルオロメタンスルホン酸イオン(CFSO)、メタンスルホン酸イオン(MeSO)、メチル硫酸イオン(MeSO)などの一価スルホン酸イオン、硝酸イオン(NO)、過塩素酸イオン(ClO)、テトラクロロアルミン酸イオン(AlCl)、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)アミドイオン((CFSO)などの一塩基酸の対アニオン、硫酸イオン(SO2−)、硫酸水素イオン(HSO)、リン酸イオン(PO3−)、リン酸一水素イオン(HPO2−)、リン酸二水素イオン(HPO)、ジメチルリン酸イオン((MeO)PO)、ジエチルリン酸イオン((EtO)PO)などの多塩基酸の対アニオン又はその誘導体などを例示することが出来る。ルテニウム錯体(1)の収率が良い点で、対アニオンZとしてはBF、PFなどのフルオロ錯アニオン、CFSO、MeSOなどの一価スルホン酸イオンが好ましい。
【0059】
具体的なカチオン性トリス(ニトリル)錯体(2)の更に好ましい例としては、[トリス(アセトニトリル)(η−シクロペンタジエニル)ルテニウム(II)][テトラフルオロボラト]([Ru(η−C)(MeCN)][BF])、[トリス(アセトニトリル)(η−メチルシクロペンタジエニル)ルテニウム(II)][テトラフルオロボラト]([Ru(η−CMeH)(MeCN)][BF])、[トリス(アセトニトリル)(η−エチルシクロペンタジエニル)ルテニウム(II)][テトラフルオロボラト]([Ru(η−CEtH)(MeCN)][BF])、[トリス(アセトニトリル)(η−1,2,3,4,5−ペンタメチルシクロペンタジエニル)ルテニウム(II)][テトラフルオロボラト]([Ru(η−CMe)(MeCN)][BF])、[トリス(アセトニトリル)(η−シクロペンタジエニル)ルテニウム(II)][ヘキサフルオロホスファト]([Ru(η−C)(MeCN)][PF])、[トリス(アセトニトリル)(η−メチルシクロペンタジエニル)ルテニウム(II)][ヘキサフルオロホスファト]([Ru(η−CMeH)(MeCN)][PF])、[トリス(アセトニトリル)(η−エチルシクロペンタジエニル)ルテニウム(II)][ヘキサフルオロホスファト]([Ru(η−CEtH)(MeCN)][PF])、[トリス(アセトニトリル)(η−1,2,3,4,5−ペンタメチルシクロペンタジエニル)ルテニウム(II)][ヘキサフルオロホスファト]([Ru(η−CMe)(MeCN)][PF])、[トリス(アセトニトリル)(η−シクロペンタジエニル)ルテニウム(II)][トリフルオロメタンスルホナト]([Ru(η−C)(MeCN)][CFSO])、[トリス(アセトニトリル)(η−メチルシクロペンタジエニル)ルテニウム(II)][トリフルオロメタンスルホナト]([Ru(η−CMeH)(MeCN)][CFSO])、[トリス(アセトニトリル)(η−エチルシクロペンタジエニル)ルテニウム(II)][トリフルオロメタンスルホナト]([Ru(η−CEtH)(MeCN)][CFSO])、[トリス(アセトニトリル)(η−1,2,3,4,5−ペンタメチルシクロペンタジエニル)ルテニウム(II)][トリフルオロメタンスルホナト]([Ru(η−CMe)(MeCN)][CFSO])、[トリス(アセトニトリル)(η−シクロペンタジエニル)ルテニウム(II)][メタンスルホナト]([Ru(η−C)(MeCN)][MeSO])、[トリス(アセトニトリル)(η−メチルシクロペンタジエニル)ルテニウム(II)][メタンスルホナト]([Ru(η−CMeH)(MeCN)][MeSO])、[トリス(アセトニトリル)(η−エチルシクロペンタジエニル)ルテニウム(II)][メタンスルホナト]([Ru(η−CEtH)(MeCN)][MeSO])、[トリス(アセトニトリル)(η−1,2,3,4,5−ペンタメチルシクロペンタジエニル)ルテニウム(II)][メタンスルホナト]([Ru(η−CMe)(MeCN)][MeSO])などを挙げることが出来る。
【0060】
一般式(3)におけるR及びRで表される炭素数1〜6のアルキル基としては、直鎖状、分岐状及び環状のいずれでも良く、具体的にはメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、シクロプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、シクロブチル基、ペンチル基、1−メチルブチル基、2−メチルブチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、tert−ペンチル基、シクロペンチル基、シクロブチルメチル基、ヘキシル基、1−メチルペンチル基、2−メチルペンチル基、3−メチルペンチル基、4−メチルペンチル基、1,1−ジメチルブチル基、1,2−ジメチルブチル基、1,3−ジメチルブチル基、2,2−ジメチルブチル基、2,3−ジメチルブチル基、3,3−ジメチルブチル基、シクロヘキシル基、シクロペンチルメチル基、1−シクロブチルエチル基、2−シクロブチルエチル基などを例示することが出来る。
【0061】
エノン誘導体(3)の具体例としては、4−メチルペンタ−3−エン−2−オン(メシチルオキシド)、5−メチルヘキサ−4−エン−3−オン、2−メチルヘプタ−2−エン−4−オン、2,5−ジメチルヘキサ−4−エン−3−オン、2−メチルオクタ−2−エン−4−オン、2,6−ジメチルヘプタ−2−エン−4−オン、2,5−ジメチルヘプタ−2−エン−4−オン、2,2,5−トリメチルヘキサ−4−エン−3−オン、2−メチルノナ−2−エン−4−オン、2,5,5−トリメチルヘプタ−2−エン−4−オン、2−メチルデカ−2−エン−4−オン、1−シクロヘキシル−3−メチルブタ−2−エン−1−オン、4−メチルヘキサ−3−エン−2−オン、4−メチルヘプタ−3−エン−2−オン、4,5−ジメチルヘキサ−3−エン−2−オン、4−メチルオクタ−3−エン−2−オン、4,6−ジメチルヘプタ−3−エン−2−オン、4,5−ジメチルヘプタ−3−エン−2−オン、4,5,5−トリメチルヘキサ−3−エン−2−オン、4−メチルノナ−3−エン−2−オン、4−メチルデカ−3−エン−2−オン、4−シクロヘキシルペンタ−3−エン−2−オン、5−メチルヘプタ−4−エン−3−オン、6−メチルノナ−5−エン−4−オン、2,5,6−トリメチルヘプタ−4−エン−3−オン、2,2,5,6,6−ペンタメチルヘプタ−4−エン−3−オン、3,3,6,7,7−ペンタメチルノナ−5−エン−4−オンなどを挙げることが出来る。ルテニウム錯体(1)の収率が良い点で、メシチルオキシド又は2,2,5,6,6−ペンタメチルヘプタ−4−エン−3−オンが好ましく、メシチルオキシドが更に好ましい。
【0062】
製造方法1で用いることが出来る塩基としては、無機塩基及び有機塩基を挙げることが出来る。該無機塩基としては、炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウムなどのアルカリ金属炭酸塩、炭酸水素リチウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウムなどのアルカリ金属炭酸水素塩、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸ストロンチウムなどの第2族金属炭酸塩、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化ストロンチウムなどの典型金属水酸化物、水素化リチウム、水素化ナトリウム、水素化カリウム、水素化マグネシウム、水素化カルシウム、水素化アルミニウムなどの典型金属水素化物、水素化ホウ素ナトリウム、水素化リチウムアルミニウムなどの典型金属水素化錯化合物、リチウムアミド、ナトリウムアミド、リチウムジアルキルアミドなどのアルカリ金属アミドなどを例示することが出来る。また該有機塩基としては、ジエチルアミン、トリエチルアミン、ジエチルイソプロピルアミン、トリブチルアミンなどのアルキルアミン、ピロリジン、ピペリジン、ピペラジン、1,4−ジアザビシクロオクタンなどの環状アミン、ピリジンなどを例示することが出来る。ルテニウム錯体(1)の収率が良い点で、塩基としてはアルカリ金属炭酸塩又はアルキルアミンが好ましく、炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム又はトリエチルアミンが更に好ましく、炭酸リチウム又はトリエチルアミンが殊更好ましい。
【0063】
製造方法1は、ルテニウム錯体(1)の収率が良い点で、不活性ガス中で実施するのが好ましい。該不活性ガスとして具体的には、ヘリウム、ネオン、アルゴン、クリプトン、キセノン、窒素ガスなどを例示することが出来、アルゴン又は窒素ガスが更に好ましい。
【0064】
製造方法1は、ルテニウム錯体(1)の収率が良い点で有機溶媒中で実施することが好ましい。製造方法1を有機溶媒中で実施する場合、該有機溶媒として具体的には、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、石油エーテルなどの脂肪族炭化水素、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル、シクロペンチルメチルエーテル、シクロペンチルエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、1,2−ジメトキシエタンなどのエーテル、アセトン、メチルエチルケトン、3−ペンタノン、シクロペンタノン、シクロヘキサノンなどのケトン、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、tert−ブタノール、エチレングリコールなどのアルコールなどを例示することが出来る。これら有機溶媒のうち一種類を単独で用いることが出来、複数を任意の比率で混合して用いることも出来る。ルテニウム錯体(1)の収率が良い点で、有機溶媒としてはジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、アセトン、メタノール及びヘキサンが好ましい。
【0065】
次にカチオン性トリス(ニトリル)錯体(2)及びエノン誘導体(3)の入手方法について説明する。カチオン性トリス(ニトリル)錯体(2)の入手方法としては、後述する本発明の製造方法2のほか、非特許文献3又は非特許文献4などに記載の製造方法を挙げることが出来る。エノン誘導体(3)の入手方法としては、市販の製品を入手するほか、Journal of Organometallic Chemistry,第402巻,17ページ(1991年)や特許3649441号公報などに記載の製造方法を挙げることが出来る。
【0066】
次に製造方法1を実施するときのカチオン性トリス(ニトリル)錯体(2)、エノン誘導体(3)及び塩基のモル比に関して説明する。好ましくはカチオン性トリス(ニトリル)錯体(2)1モルに対して等モル以上のエノン誘導体(3)及び塩基を用いることによって、収率良くルテニウム錯体(1)を製造することが出来る。
【0067】
また製造方法1では、反応温度及び反応時間には特に制限はなく、当業者が金属錯体を製造するときの一般的な条件を用いることが出来る。具体例としては、−80℃から120℃の温度範囲から適宜選択した反応温度において、10分間から120時間の範囲から適宜選択した反応時間を選択することによってルテニウム錯体(1)を収率良く製造することが出来る。
【0068】
製造方法1によって製造したルテニウム錯体(1)は、当業者が金属錯体を精製するときの一般的な精製方法を適宜選択して用いることによって精製することが出来る。具体的な精製方法としては、ろ過、抽出、遠心分離、デカンテーション、蒸留、昇華、結晶化などを挙げることが出来る。
【0069】
次に本発明のカチオン性トリス(ニトリル)錯体(2b)について説明する。一般式(2b)におけるR1bで表される炭素数2〜6のアルキル基としては、直鎖状、分岐状及び環状のいずれでも良く、具体的にはエチル基、プロピル基、イソプロピル基、シクロプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、シクロブチル基、ペンチル基、1−メチルブチル基、2−メチルブチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、tert−ペンチル基、シクロペンチル基、シクロブチルメチル基、ヘキシル基、1−メチルペンチル基、2−メチルペンチル基、3−メチルペンチル基、4−メチルペンチル基、1,1−ジメチルブチル基、1,2−ジメチルブチル基、1,3−ジメチルブチル基、2,2−ジメチルブチル基、2,3−ジメチルブチル基、3,3−ジメチルブチル基、シクロヘキシル基、シクロペンチルメチル基、1−シクロブチルエチル基、2−シクロブチルエチル基などを例示することが出来る。CVD材料やALD材料としてとりわけ好適な蒸気圧及び熱安定性を持つルテニウム錯体(1)の合成原料となる点で、R1bは炭素数2〜4のアルキル基であることが好ましく、エチル基であることが更に好ましい。
【0070】
一般式(2b)におけるR21bで表される炭素数1〜4のアルキル基としては、直鎖状、分岐状及び環状のいずれでも良く、具体的にはメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、シクロプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、シクロブチル基などを例示することが出来る。ルテニウム錯体(1)の合成原料として用いたときの収率が良い点で、R21がメチル基が好ましい。
【0071】
カチオン性トリス(ニトリル)錯体(2b)のカチオン部分の具体例としては、[トリス(アセトニトリル)(η−エチルシクロペンタジエニル)ルテニウム(II)]([Ru(η−CEtH)(MeCN)])、[トリス(アセトニトリル)(η−プロピルシクロペンタジエニル)ルテニウム(II)]([Ru(η−CPrH)(MeCN)])、[トリス(アセトニトリル)(η−イソプロピルシクロペンタジエニル)ルテニウム(II)]([Ru(η−CPrH)(MeCN)])、[トリス(アセトニトリル)(η−ブチルシクロペンタジエニル)ルテニウム(II)]([Ru(η−CBuH)(MeCN)])、[トリス(アセトニトリル)(η−イソブチルシクロペンタジエニル)ルテニウム(II)]([Ru(η−CBuH)(MeCN)])、[トリス(アセトニトリル)(η−(sec−ブチル)シクロペンタジエニル)ルテニウム(II)]([Ru(η−CBuH)(MeCN)])、[トリス(アセトニトリル)(η−(tert−ブチル)シクロペンタジエニル)ルテニウム(II)]([Ru(η−CBuH)(MeCN)])、[トリス(アセトニトリル)(η−ペンチルシクロペンタジエニル)ルテニウム(II)]([Ru(η−CPeH)(MeCN)])、[トリス(アセトニトリル)(η−(シクロペンチル)シクロペンタジエニル)ルテニウム(II)]([Ru(η−CPeH)(MeCN)])、[トリス(アセトニトリル)(η−ヘキシルシクロペンタジエニル)ルテニウム(II)]([Ru(η−CHxH)(MeCN)])、[(η−エチルシクロペンタジエニル)トリス(プロピオニトリル)ルテニウム(II)]([Ru(η−CEtH)(EtCN)])、[トリス(プロピオニトリル)(η−プロピルシクロペンタジエニル)ルテニウム(II)]([Ru(η−CPrH)(EtCN)])、[(η−イソプロピルシクロペンタジエニル)トリス(プロピオニトリル)ルテニウム(II)]([Ru(η−CPrH)(EtCN)])、[(η−ブチルシクロペンタジエニル)トリス(プロピオニトリル)ルテニウム(II)]([Ru(η−CBuH)(EtCN)])、[(η−イソブチルシクロペンタジエニル)トリス(プロピオニトリル)ルテニウム(II)]([Ru(η−CBuH)(EtCN)])、[(η−(sec−ブチル)シクロペンタジエニル)トリス(プロピオニトリル)ルテニウム(II)]([Ru(η−CBuH)(EtCN)])、[(η−(tert−ブチル)シクロペンタジエニル)トリス(プロピオニトリル)ルテニウム(II)]([Ru(η−CBuH)(EtCN)])、[(η−ペンチルシクロペンタジエニル)トリス(プロピオニトリル)ルテニウム(II)]([Ru(η−CPeH)(EtCN)])、[(η−(シクロペンチル)シクロペンタジエニル)トリス(プロピオニトリル)ルテニウム(II)]([Ru(η−CPeH)(EtCN)])、[(η−ヘキシルシクロペンタジエニル)トリス(プロピオニトリル)ルテニウム(II)]([Ru(η−CHxH)(EtCN)])、[(η−エチルシクロペンタジエニル)トリス(ピバロニトリル)ルテニウム(II)]([Ru(η−CEtH)(BuCN)])、[トリス(ピバロニトリル)(η−プロピルシクロペンタジエニル)ルテニウム(II)]([Ru(η−CPrH)(BuCN)])、[(η−イソプロピルシクロペンタジエニル)トリス(ピバロニトリル)ルテニウム(II)]([Ru(η−CPrH)(BuCN)])、[(η−ブチルシクロペンタジエニル)トリス(ピバロニトリル)ルテニウム(II)]([Ru(η−CBuH)(BuCN)])、[(η−イソブチルシクロペンタジエニル)トリス(ピバロニトリル)ルテニウム(II)]([Ru(η−CBuH)(BuCN)])、[(η−(sec−ブチル)シクロペンタジエニル)トリス(ピバロニトリル)ルテニウム(II)]([Ru(η−CBuH)(BuCN)])、[(η−(tert−ブチル)シクロペンタジエニル)トリス(ピバロニトリル)ルテニウム(II)]([Ru(η−CBuH)(BuCN)])、[(η−ペンチルシクロペンタジエニル)トリス(ピバロニトリル)ルテニウム(II)]([Ru(η−CPeH)(BuCN)])、[(η−(シクロペンチル)シクロペンタジエニル)トリス(ピバロニトリル)ルテニウム(II)]([Ru(η−CPeH)(BuCN)])、[(η−ヘキシルシクロペンタジエニル)トリス(ピバロニトリル)ルテニウム(II)]([Ru(η−CHxH)(BuCN)])などを例示することが出来、[Ru(η−CEtH)(MeCN)]、[Ru(η−CPrH)(MeCN)]、[Ru(η−CPrH)(MeCN)]、[Ru(η−CBuH)(MeCN)]、[Ru(η−CBuH)(MeCN)]、[Ru(η−CBuH)(MeCN)]、[Ru(η−CBuH)(MeCN)]などが好ましく、[Ru(η−CEtH)(MeCN)]が殊更好ましい。
【0072】
一般式(2b)における対アニオンZの例としては、カチオン性金属錯体の対アニオンとして一般的に用いられているものを挙げることが出来る。具体的にはテトラフルオロホウ酸イオン(BF)、ヘキサフルオロリン酸イオン(PF)、ヘキサフルオロアンチモン酸イオン(SbF)、テトラフルオロアルミン酸イオン(AlF)などのフルオロ錯アニオン、トリフルオロメタンスルホン酸イオン(CFSO)、メタンスルホン酸イオン(MeSO)、メチル硫酸イオン(MeSO)などの一価スルホン酸イオン、硝酸イオン(NO)、過塩素酸イオン(ClO)、テトラクロロアルミン酸イオン(AlCl)、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)アミドイオン((CFSO)などの一塩基酸の対アニオン、硫酸イオン(SO2−)、硫酸水素イオン(HSO)、リン酸イオン(PO3−)、リン酸一水素イオン(HPO2−)、リン酸二水素イオン(HPO)、ジメチルリン酸イオン((MeO)PO)、ジエチルリン酸イオン((EtO)PO)などの多塩基酸の対アニオン又はその誘導体などを例示することが出来る。ルテニウム錯体(1)の収率が良い点で、対アニオンZとしてはBF、PFなどのフルオロ錯アニオン、CFSO、MeSOなどの一価スルホン酸イオンが好ましい。
【0073】
更に具体的なカチオン性トリス(ニトリル)錯体(2b)の好ましい例としては、[トリス(アセトニトリル)(η−エチルシクロペンタジエニル)ルテニウム(II)][テトラフルオロボラト]([Ru(η−CEtH)(MeCN)][BF])、[トリス(アセトニトリル)(η−エチルシクロペンタジエニル)ルテニウム(II)][ヘキサフルオロホスファト]([Ru(η−CEtH)(MeCN)][PF])、[トリス(アセトニトリル)(η−エチルシクロペンタジエニル)ルテニウム(II)][トリフルオロメタンスルホナト]([Ru(η−CEtH)(MeCN)][CFSO])、[トリス(アセトニトリル)(η−プロピルシクロペンタジエニル)ルテニウム(II)][テトラフルオロボラト]([Ru(η−CPrH)(MeCN)][BF])、[トリス(アセトニトリル)(η−プロピルシクロペンタジエニル)ルテニウム(II)][ヘキサフルオロホスファト]([Ru(η−CPrH)(MeCN)][PF])、[トリス(アセトニトリル)(η−プロピルシクロペンタジエニル)ルテニウム(II)][トリフルオロメタンスルホナト]([Ru(η−CPrH)(MeCN)][CFSO])、[トリス(アセトニトリル)(η−イソプロピルシクロペンタジエニル)ルテニウム(II)][テトラフルオロボラト]([Ru(η−CPrH)(MeCN)][BF])、[トリス(アセトニトリル)(η−イソプロピルシクロペンタジエニル)ルテニウム(II)][ヘキサフルオロホスファト]([Ru(η−CPrH)(MeCN)][PF])、[トリス(アセトニトリル)(η−イソプロピルシクロペンタジエニル)ルテニウム(II)][トリフルオロメタンスルホナト]([Ru(η−CPrH)(MeCN)][CFSO])、[トリス(アセトニトリル)(η−ブチルシクロペンタジエニル)ルテニウム(II)][テトラフルオロボラト]([Ru(η−CBuH)(MeCN)][BF])、[トリス(アセトニトリル)(η−ブチルシクロペンタジエニル)ルテニウム(II)][ヘキサフルオロホスファト]([Ru(η−CBuH)(MeCN)][PF])、[トリス(アセトニトリル)(η−ブチルシクロペンタジエニル)ルテニウム(II)][トリフルオロメタンスルホナト]([Ru(η−CBuH)(MeCN)][CFSO])、[トリス(アセトニトリル)(η−イソブチルシクロペンタジエニル)ルテニウム(II)][テトラフルオロボラト]([Ru(η−CBuH)(MeCN)][BF])、[トリス(アセトニトリル)(η−イソブチルシクロペンタジエニル)ルテニウム(II)][ヘキサフルオロホスファト]([Ru(η−CBuH)(MeCN)][PF])、[トリス(アセトニトリル)(η−イソブチルシクロペンタジエニル)ルテニウム(II)][トリフルオロメタンスルホナト]([Ru(η−CBuH)(MeCN)][CFSO])、[トリス(アセトニトリル)(η−(sec−ブチル)シクロペンタジエニル)ルテニウム(II)][テトラフルオロボラト]([Ru(η−CBuH)(MeCN)][BF])、[トリス(アセトニトリル)(η−(sec−ブチル)シクロペンタジエニル)ルテニウム(II)][ヘキサフルオロホスファト]([Ru(η−CBuH)(MeCN)][PF])、[トリス(アセトニトリル)(η−(sec−ブチル)シクロペンタジエニル)ルテニウム(II)][トリフルオロメタンスルホナト]([Ru(η−CBuH)(MeCN)][CFSO])、[トリス(アセトニトリル)(η−(tert−ブチル)シクロペンタジエニル)ルテニウム(II)][テトラフルオロボラト]([Ru(η−CBuH)(MeCN)][BF])、[トリス(アセトニトリル)(η−(tert−ブチル)シクロペンタジエニル)ルテニウム(II)][ヘキサフルオロホスファト]([Ru(η−CBuH)(MeCN)][PF])、[トリス(アセトニトリル)(η−(tert−ブチル)シクロペンタジエニル)ルテニウム(II)][トリフルオロメタンスルホナト]([Ru(η−CBuH)(MeCN)][CFSO])などを挙げることが出来、[トリス(アセトニトリル)(η−エチルシクロペンタジエニル)ルテニウム(II)][テトラフルオロボラト]([Ru(η−CEtH)(MeCN)][BF])、[トリス(アセトニトリル)(η−エチルシクロペンタジエニル)ルテニウム(II)][ヘキサフルオロホスファト]([Ru(η−CEtH)(MeCN)][PF])、[トリス(アセトニトリル)(η−エチルシクロペンタジエニル)ルテニウム(II)][トリフルオロメタンスルホナト]([Ru(η−CEtH)(MeCN)][CFSO])などが更に好ましい。
【0074】
次に本発明のカチオン性トリス(ニトリル)錯体(2b)の製造方法について説明する。カチオン性トリス(ニトリル)錯体(2b)は、下記のカチオン性トリス(ニトリル)錯体(2)の製造方法2に従って製造することが出来る。製造方法2は、ルテノセン誘導体(4)とニトリルR21CNとプロトン酸Hとを反応させることによりカチオン性トリス(ニトリル)錯体(2)を製造する方法である。
【0075】
【化14】
【0076】
(式中、R、R、R、R、R、X、R21及びZは前記と同意義を表す。)
21で表される炭素数1〜4のアルキル基としては、直鎖状、分岐状及び環状のいずれでも良く、具体的にはメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、シクロプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、シクロブチル基などを例示することが出来る。収率が良い点で、R21がメチル基であることが好ましい。ニトリルとしてさらに具体的にはアセトニトリル、プロピオニトリル、ブチロニトリル、イソブチロニトリル、シクロプロパンカルボニトリル、ペンチロニトリル、イソペンチロニトリル、3−メチルブタンニトリル、2−メチルブタンニトリル、ピバロニトリル、シクロブタンカルボニトリルなどを例示することが出来、収率が良い点でアセトニトリルが好ましい。
一般式(4)におけるXは一般式(5)
【0077】
【化15】
【0078】
(式中、R、R、R、R及びRは前記と同意義を表す。)で示されるη−(無置換又は置換)シクロペンタジエニル配位子、又はη−2,4−ジメチル−2,4−ペンタジエニル配位子を表す。具体的なη−(無置換又は置換)シクロペンタジエニル配位子の例としては、η−シクロペンタジエニル配位子、η−メチルシクロペンタジエニル配位子、η−エチルシクロペンタジエニル配位子、η−プロピルシクロペンタジエニル配位子、η−イソプロピルシクロペンタジエニル配位子、η−ブチルシクロペンタジエニル配位子、η−イソブチルシクロペンタジエニル配位子、η−(sec−ブチル)シクロペンタジエニル配位子、η−(tert−ブチル)シクロペンタジエニル配位子、η−ペンチルシクロペンタジエニル配位子、η−(シクロペンチル)シクロペンタジエニル配位子、η−ヘキシルシクロペンタジエニル配位子、η−1,2−ジメチルシクロペンタジエニル配位子、η−1,3−ジメチルシクロペンタジエニル配位子、η−1,3−ジ(イソプロピル)シクロペンタジエニル配位子、η−1,2,4−トリ(イソプロピル)シクロペンタジエニル配位子、η−1,3−ジ(tert−ブチル)シクロペンタジエニル配位子、η−1,2,3,4,5−ペンタメチルシクロペンタジエニル配位子などを挙げることが出来る。ルテノセン誘導体(4)が入手しやすい点で、Xとしてはη−(無置換又は置換)シクロペンタジエニル配位子であることが好ましく、η−シクロペンタジエニル配位子、η−メチルシクロペンタジエニル配位子、η−エチルシクロペンタジエニル配位子が更に好ましい。
【0079】
ルテノセン誘導体(4)として更に具体的には、ビス(η−シクロペンタジエニル)ルテニウム((η−CRu)、ビス(η−メチルシクロペンタジエニル)ルテニウム((η−CMeHRu)、ビス(η−エチルシクロペンタジエニル)ルテニウム((η−CEtHRu)、ビス(η−プロピルシクロペンタジエニル)ルテニウム((η−CPrHRu)、ビス(η−イソプロピルシクロペンタジエニル)ルテニウム((η−CPrHRu)、ビス(η−ブチルシクロペンタジエニル)ルテニウム((η−CBuHRu)、ビス(η−イソブチルシクロペンタジエニル)ルテニウム((η−CBuHRu)、ビス(η−(sec−ブチル)シクロペンタジエニル)ルテニウム((η−CBuHRu)、ビス(η−(tert−ブチル)シクロペンタジエニル)ルテニウム((η−CBuHRu)、ビス(η−ペンチルシクロペンタジエニル)ルテニウム((η−CPeHRu)、ビス(η−(シクロペンチル)シクロペンタジエニル)ルテニウム((η−CPeHRu)、ビス(η−ヘキシルシクロペンタジエニル)ルテニウム((η−CHxHRu)、ビス(η−1,2−ジメチルシクロペンタジエニル)ルテニウム((η−CMeRu)、ビス(η−1,3−ジメチルシクロペンタジエニル)ルテニウム((η−CMeRu)、ビス(η−1,3−ジ(イソプロピル)シクロペンタジエニル)ルテニウム((η−CPr)Ru)、ビス(η−1,2,4−トリ(イソプロピル)シクロペンタジエニル)ルテニウム((η−CPr)Ru)、ビス(η−1,3−ジ(tert−ブチル)シクロペンタジエニル)ルテニウム((η−CBu)Ru)、ビス(η−1,2,3,4,5−ペンタメチルシクロペンタジエニル)ルテニウム((η−CMeRu)、(η−シクロペンタジエニル)(η−1,2,3,4,5−ペンタメチルシクロペンタジエニル)ルテニウム((η−C)(η−CMe)Ru)、(η−シクロペンタジエニル)(η−2,4−ジメチル−2,4−ペンタジエニル)ルテニウム(Ru(η−C)(η−CHC(Me)CHC(Me)CH))、(η−2,4−ジメチル−2,4−ペンタジエニル)(η−メチルシクロペンタジエニル)ルテニウム(Ru(η−CMeH)(η−CHC(Me)CHC(Me)CH))、(η−2,4−ジメチル−2,4−ペンタジエニル)(η−エチルシクロペンタジエニル)ルテニウム(Ru(η−CEtH)(η−CHC(Me)CHC(Me)CH))、(η−2,4−ジメチル−2,4−ペンタジエニル)(η−プロピルシクロペンタジエニル)ルテニウム(Ru(η−CPrH)(η−CHC(Me)CHC(Me)CH))、(η−2,4−ジメチル−2,4−ペンタジエニル)(η−イソプロピルシクロペンタジエニル)ルテニウム(Ru(η−CPrH)(η−CHC(Me)CHC(Me)CH))、(η−2,4−ジメチル−2,4−ペンタジエニル)(η−ブチルシクロペンタジエニル)ルテニウム(Ru(η−CBuH)(η−CHC(Me)CHC(Me)CH))、(η−2,4−ジメチル−2,4−ペンタジエニル)(η−イソブチルシクロペンタジエニル)ルテニウム(Ru(η−CBuH)(η−CHC(Me)CHC(Me)CH))、(η−2,4−ジメチル−2,4−ペンタジエニル)(η−(sec−ブチル)シクロペンタジエニル)ルテニウム(Ru(η−CBuH)(η−CHC(Me)CHC(Me)CH))、(η−2,4−ジメチル−2,4−ペンタジエニル)(η−(tert−ブチル)シクロペンタジエニル)ルテニウム(Ru(η−CBuH)(η−CHC(Me)CHC(Me)CH))、(η−2,4−ジメチル−2,4−ペンタジエニル)(η−ペンチルシクロペンタジエニル)ルテニウム(Ru(η−CPeH)(η−CHC(Me)CHC(Me)CH))、(η−2,4−ジメチル−2,4−ペンタジエニル)(η−(シクロペンチル)シクロペンタジエニル)ルテニウム(Ru(η−CPeH)(η−CHC(Me)CHC(Me)CH))、(η−2,4−ジメチル−2,4−ペンタジエニル)(η−ヘキシルシクロペンタジエニル)ルテニウム(Ru(η−CHxH)(η−CHC(Me)CHC(Me)CH))、(η−2,4−ジメチル−2,4−ペンタジエニル)(η−1,2,3,4,5−ペンタメチルシクロペンタジエニル)ルテニウム(Ru(η−CMe)(η−CHC(Me)CHC(Me)CH))などを例示することが出来、ビス(η−シクロペンタジエニル)ルテニウム((η−CRu)、ビス(η−メチルシクロペンタジエニル)ルテニウム((η−CMeHRu)、ビス(η−エチルシクロペンタジエニル)ルテニウム((η−CEtHRu)、ビス(η−プロピルシクロペンタジエニル)ルテニウム((η−CPrHRu)、ビス(η−イソプロピルシクロペンタジエニル)ルテニウム((η−CPrHRu)、ビス(η−ブチルシクロペンタジエニル)ルテニウム((η−CBuHRu)、ビス(η−イソブチルシクロペンタジエニル)ルテニウム((η−CBuHRu)、ビス(η−(sec−ブチル)シクロペンタジエニル)ルテニウム((η−CBuHRu)、ビス(η−(tert−ブチル)シクロペンタジエニル)ルテニウム((η−CBuHRu)、ビス(η−ペンチルシクロペンタジエニル)ルテニウム((η−CPeHRu)、ビス(η−(シクロペンチル)シクロペンタジエニル)ルテニウム((η−CPeHRu)、ビス(η−ヘキシルシクロペンタジエニル)ルテニウム((η−CHxHRu)、ビス(η−1,2−ジメチルシクロペンタジエニル)ルテニウム((η−CMeRu)、ビス(η−1,3−ジメチルシクロペンタジエニル)ルテニウム((η−CMeRu)、ビス(η−1,3−ジ(イソプロピル)シクロペンタジエニル)ルテニウム((η−CPr)Ru)、ビス(η−1,2,4−トリ(イソプロピル)シクロペンタジエニル)ルテニウム((η−CPr)Ru)、ビス(η−1,3−ジ(tert−ブチル)シクロペンタジエニル)ルテニウム((η−CBu)Ru)、ビス(η−1,2,3,4,5−ペンタメチルシクロペンタジエニル)ルテニウム((η−CMeRu)などが好ましく、ビス(η−シクロペンタジエニル)ルテニウム((η−CRu)、ビス(η−メチルシクロペンタジエニル)ルテニウム((η−CMeHRu)、ビス(η−エチルシクロペンタジエニル)ルテニウム((η−CEtHRu)、ビス(η−プロピルシクロペンタジエニル)ルテニウム((η−CPrHRu)、ビス(η−イソプロピルシクロペンタジエニル)ルテニウム((η−CPrH
Ru)、ビス(η−ブチルシクロペンタジエニル)ルテニウム((η−CBuHRu)、ビス(η−イソブチルシクロペンタジエニル)ルテニウム((η−CBuHRu)、ビス(η−(sec−ブチル)シクロペンタジエニル)ルテニウム((η−CBuHRu)、ビス(η−(tert−ブチル)シクロペンタジエニル)ルテニウム((η−CBuHRu)、ビス(η−ペンチルシクロペンタジエニル)ルテニウム((η−CPeHRu)、ビス(η−(シクロペンチル)シクロペンタジエニル)ルテニウム((η−CPeHRu)、ビス(η−ヘキシルシクロペンタジエニル)ルテニウム((η−CHxHRu)などが更に好ましく、ビス(η−シクロペンタジエニル)ルテニウム((η−CRu)、ビス(η−メチルシクロペンタジエニル)ルテニウム((η−CMeHRu)、ビス(η−エチルシクロペンタジエニル)ルテニウム((η−CEtHRu)が殊更好ましい。
【0080】
製造方法2の合成原料として用いることが出来るルテノセン誘導体(4)としては、市販のものをそのまま用いることが出来、またOrganic Syntheses,第41巻,96ページ(1961年)、特開2003−342286号公報、Organometallics,第5巻,2321ページ(1986年)などに記載の公知の方法に従って合成したものを用いることも出来る。
【0081】
製造方法2で用いることが出来るHのプロトン酸におけるZとしては、例えばテトラフルオロホウ酸イオン(BF)、ヘキサフルオロリン酸イオン(PF)などのフルオロ錯アニオン、トリフルオロメタンスルホン酸イオン(CFSO)、硫酸イオン(SO2−)、硫酸水素イオン(HSO)、などのスルホン酸イオン、塩化物イオン、臭化物イオンなどのハロゲン化物イオン等が挙げられ、具体的なプロトン酸としては、テトラフルオロホウ酸、ヘキサフルオロりん酸などのフルオロ錯酸;硫酸、トリフルオロメタンスルホン酸などのスルホン酸;塩化水素などのハロゲン化水素などを例示することが出来る。該プロトン酸は、ジメチルエーテルやジエチルエーテルなどのエーテルと錯体を形成していても良い。錯体を形成しているプロトン酸の例としては、テトラフルオロホウ酸ジメチルエーテル錯体、テトラフルオロホウ酸ジエチルエーテル錯体、ヘキサフルオロりん酸ジエチルエーテル錯体などを挙げることが出来る。
【0082】
カチオン性トリス(ニトリル)錯体(2)の収率が良い点で、テトラフルオロホウ酸ジエチルエーテル錯体又はトリフルオロメタンスルホン酸が好ましい。
【0083】
また製造方法2で用いるプロトン酸として、フルオロ錯アニオン含有塩と強酸とを反応させることにより、反応系中で生成させたフルオロ錯酸を用いることも出来る。この場合、用いることが出来るフルオロ錯アニオン含有塩の例としては、テトラフルオロホウ酸アンモニウム、テトラフルオロホウ酸リチウム、テトラフルオロホウ酸ナトリウム、テトラフルオロホウ酸カリウム、ヘキサフルオロりん酸アンモニウム、ヘキサフルオロりん酸リチウム、ヘキサフルオロりん酸ナトリウム、ヘキサフルオロりん酸カリウムなどを挙げることが出来る。用いることが出来る強酸としては、硫酸、メタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、塩化水素、臭化水素などを例示することが出来る。反応系中で生成させることができるフルオロ錯酸の具体例としては、テトラフルオロホウ酸及びヘキサフルオロりん酸を挙げることが出来る。コストメリットが高く収率が良い点で、テトラフルオロホウ酸アンモニウム、テトラフルオロホウ酸ナトリウム又はヘキサフルオロりん酸アンモニウムのいずれかを硫酸と混ぜて用いるのが好ましい。
【0084】
次に製造方法2で使用するルテノセン誘導体(4)、ニトリル及びプロトン酸のモル比について説明する。カチオン性トリス(ニトリル)錯体(2)の収率が良い点でルテノセン誘導体1モルあたり3モル以上のニトリルを用いるのが好ましい。溶媒量のニトリルを使用するのが収率が良い点で更に好ましく、具体的にはルテノセン誘導体1モルあたり5モル以上1000モル以下の範囲から適宜選択した量を用いるのが殊更好ましい。またプロトン酸の好ましい使用量はプロトン酸の種類によって異なる。例えばプロトン酸が一塩基酸の場合、収率が良い点でルテノセン誘導体1モルあたり1モル以上のプロトン酸を使用することが好ましく、二塩基酸の場合にはルテノセン誘導体1モルあたり0.5モル以上のプロトン酸を使用することが好ましい。プロトン酸としてフルオロ錯アニオン含有塩と強酸との混合物を用いる場合、ルテノセン誘導体1モルあたり1モル以上のフルオロ錯アニオン含有塩、及び0.5モル〜2.0モルの強酸を適宜用いることにより、収率良くカチオン性トリス(ニトリル)錯体(2)を得ることが出来る。
【0085】
製造方法2は、カチオン性トリス(ニトリル)錯体(2)の収率が良い点で、不活性ガス中で実施するのが好ましい。該不活性ガスとして具体的には、ヘリウム、ネオン、アルゴン、クリプトン、キセノン、窒素ガスなどを例示することが出来、アルゴン又は窒素ガスが更に好ましい。
【0086】
製造方法2は、カチオン性トリス(ニトリル)錯体(2)の収率が良い点で過剰量のニトリルを溶媒として用いる条件下で実施するのが好ましい。また製造方法2は有機溶媒中で実施することも出来る。該有機溶媒として具体的には、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、石油エーテルなどの脂肪族炭化水素、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル、シクロペンチルメチルエーテル、シクロペンチルエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、1,2−ジメトキシエタンなどのエーテル、アセトン、メチルエチルケトン、3−ペンタノン、シクロペンタノン、シクロヘキサノンなどのケトン、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、tert−ブタノール、エチレングリコールなどのアルコールなどを例示することが出来る。これら有機溶媒のうち一種類を単独で用いることが出来、複数を任意の比率で混合して用いることも出来る。カチオン性トリス(ニトリル)錯体(2)の収率が良い点で、有機溶媒としてはジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、アセトン、メタノールが好ましい。
【0087】
また製造方法2では、反応温度及び反応時間には特に制限はなく、当業者が金属錯体を製造するときの一般的な条件を用いることが出来る。具体例としては、−80℃から150℃の温度範囲から適宜選択した反応温度において、10分間から120時間の範囲から適宜選択した反応時間を選択することによってカチオン性トリス(ニトリル)錯体(2)を収率良く製造することが出来る。
【0088】
製造方法2によって製造したカチオン性トリス(ニトリル)錯体(2)は、当業者が金属錯体を精製するときの一般的な精製方法を適宜選択して用いることによって精製することが出来る。具体的な精製方法としては、ろ過、抽出、遠心分離、デカンテーション、結晶化などを挙げることが出来る。
【0089】
またルテニウム錯体(1)は、製造方法2と製造方法1とを連続して実施することによっても製造することが可能である。この場合、製造方法2よって製造したカチオン性トリス(ニトリル)錯体(2)を、精製することなく製造方法1の製造原料として用いることが出来、また当業者が金属錯体を精製するときの一般的な精製方法を適宜選択して用いることによって精製したカチオン性トリス(ニトリル)錯体(2)を製造方法1の製造原料
として用いることも出来る。
【0090】
なお、本発明のルテニウム錯体(1a)も、製造方法2と製造方法1とを連続して実施することによってルテニウム錯体(1)と同様に製造することが出来る。
【0091】
次に、ルテニウム錯体(1)を材料として用いることを特徴とする、ルテニウム含有薄膜の作製方法について詳細に説明する。本発明のルテニウム含有薄膜を作製する方法としては、一般式(1)で示されるルテニウム錯体を気化させ、基板上で分解する方法であり、気化させ基板上に分解する方法としては当業者が金属含有薄膜を作製するのに用いる通常の技術手段を挙げることが出来る。具体的には、CVD法、ALD法など化学反応に基づく気相蒸着法、並びにディップコート法、スピンコート法又はインクジェット法などの溶液法などを例示することが出来る。本明細書中では、化学反応に基づく気相蒸着法とは熱CVD法、プラズマCVD法、光CVD法などのCVD法や、ALD法など当業者が通常用いる技術手段を含む。化学反応に基づく気相蒸着法によってルテニウム含有薄膜を作製する場合、三次元化された構造を持つ基板の表面にも均一に薄膜を形成しやすい点で、化学気相蒸着法が好ましく、CVD法又はALD法が更に好ましい。CVD法は成膜速度が良好な点で更に好ましく、またALD法は段差被覆性が良好な点で更に好ましい。例えばCVD法又はALD法によりルテニウム含有薄膜を作製する場合、ルテニウム錯体(1)を気化させて反応チャンバーに供給し、反応チャンバー内に備え付けた基板上でルテニウム錯体(1)を分解することにより、該基板上にルテニウム含有薄膜を作製することが出来る。ルテニウム錯体(1)を分解する方法としては、当業者が金属含有薄膜を作製するのに用いる通常の技術手段を挙げることが出来る。具体的にはルテニウム錯体(1)と反応ガスとを反応させる方法や、ルテニウム錯体(1)に熱、プラズマ、光などを作用させる方法などを例示することが出来る。これらの分解方法を適宜選択して用いることにより、ルテニウム含有薄膜を作製することが出来る。複数の分解方法を組み合わせて用いることも出来る。反応チャンバーへのルテニウム錯体(1)の供給方法としては、例えばバブリング、液体気化供給システムなどが挙げられ、特に限定されるものではない。
【0092】
CVD法又はALD法によりルテニウム含有薄膜を作製する際のキャリアガス及び希釈ガスとしては、ヘリウム、ネオン、アルゴン、クリプトン、キセノンなどの希ガス又は窒素ガスが好ましく、経済的な理由から窒素ガス、ヘリウム、ネオン、アルゴンが特に好ましい。キャリアガス及び希釈ガスの流量は反応チャンバーの容量などに応じて適宜調節される。例えば反応チャンバーの容量が1〜10Lの場合、キャリアガスの流量は特に制限は無く、経済的な理由から1〜10000sccmが好ましい。なお、sccmとは気体の流量を表す単位であり、1sccmは理想気体に換算すると2.68mmol/hの速度で気体が移動していることを表す。
【0093】
CVD法又はALD法によりルテニウム含有薄膜を作製する際の反応ガスとしては、例えばアンモニア、水素、モノシラン、ヒドラジンなどの非酸化性ガス、酸素、オゾン、水蒸気、過酸化水素、笑気ガス、塩化水素、硝酸ガス、ぎ酸、酢酸などの酸化性ガスを挙げることが出来る。成膜装置の仕様による制約が少なく、取扱いが容易である点でアンモニア、水素、酸素、オゾン、水蒸気が好ましい。反応ガスとして酸化性ガスを用いずに非酸化性ガスを用いる条件下でルテニウム含有薄膜を作製する場合は、ルテニウム含有薄膜の成膜速度が良好な点でアンモニアが好ましい。反応ガスの流量は材料の反応性と反応チャンバーの容量に応じて適宜調節される。例えば反応チャンバーの容量が1〜10Lの場合、反応ガスの流量は特に制限は無く、経済的な理由から1〜10000sccmが好ましい。
【0094】
CVD法又はALD法によりルテニウム含有薄膜を作製する際の基板温度は、熱、プラズマ、光などの使用の有無、反応ガスの種類などにより適宜選択される。例えば光やプラズマを併用することなく反応ガスとしてアンモニアを用いる場合には、基板温度に特に制限は無く、経済的な理由から200℃〜1000℃が好ましい。成膜速度が良好な点で300℃〜750℃が好ましく、350℃〜700℃が殊更好ましい。また、光やプラズマ、オゾン、過酸化水素などを適宜使用することで200℃以下の温度域でルテニウム含有薄膜を作製することが出来る。
【0095】
本発明の作製方法により得られるルテニウム含有薄膜としては、例えばルテニウム錯体を単独で用いた場合は、金属ルテニウム薄膜、酸化ルテニウム薄膜、窒化ルテニウム薄膜、酸窒化ルテニウム薄膜などが得られ、また他の金属材料と組み合わせて用いた場合は、ルテニウム含有複合薄膜が得られる。例えば、ストロンチウム材料と組み合わせて用いればSrRuO薄膜が得られる。ストロンチウム材料としては、例えば、ビス(ジピバロイルメタナト)ストロンチウム、ジエトキシストロンチウム、ビス(1,1,1,5,5,5−ヘキサフルオロ−2,4−ペンタンジオナト)ストロンチウムなどが挙げられる。また、CVD法又はALD法によりルテニウム含有複合薄膜を作製する場合において、ルテニウム錯体(1)と他の金属材料とを反応チャンバー内に別々に供給しても、混合してから供給しても良い。
【0096】
なお、ルテニウム錯体(1a)もルテニウム錯体(1)と同様にルテニウム含有薄膜とすることができる。
【0097】
本発明のルテニウム含有薄膜を構成部材として用いることで、記憶容量や応答性を向上させた高性能な半導体デバイスを製造することが出来る。半導体デバイスとしてはDRAM、FeRAM、ReRAMなどの半導体記憶装置や電界効果トランジスタなどを例示することが出来る。これらの構成部材としてはキャパシタ電極、ゲート電極、銅配線ライナーなどを例示することが出来る。
【発明の効果】
【0098】
本発明の新規なルテニウム錯体(1a)及びルテニウム錯体(1)を材料として用いることによって、酸化性ガスを用いない条件下でもルテニウム含有薄膜を作製することが出来る。またルテノセン誘導体とニトリルとプロトン酸とを反応させることによって、ルテニウム錯体(1)の合成原料として有用な、一般式(2)で示されるカチオン性トリス(ニトリル)錯体を製造することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0099】
図1】実施例14〜37、比較例1〜6で用いたCVD装置を示す図である。
図2】実施例15で得られた膜の原子間力顕微鏡(以下、AFM)像を示す図である。
図3】実施例27で得られた膜のAFM像を示す図である。
図4】実施例28で得られた膜のAFM像を示す図である。
図5】実施例29で得られた膜のAFM像を示す図である。
図6】実施例31で得られた膜のAFM像を示す図である。
図7】実施例33で得られた膜のAFM像を示す図である。
図8】実施例39で得られた膜の断面FE−SEM像を示す図である。
図9】実施例40で得られた膜の断面FE−SEM像を示す図である。
【実施例】
【0100】
以下、実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、Me、Et及びBuは、それぞれメチル基、エチル基及びtert−ブチル基を示す。H及び13C NMRスペクトルは、Varian社製VXR−500S NMR Spectrometerを用いて測定した。
【0101】
実施例1
【0102】
【化16】
【0103】
アルゴン雰囲気下で、ビス(η−シクロペンタジエニル)ルテニウム((η−CRu)3.15g(13.6mmol)とアセトニトリル30mLを混合することにより調製した懸濁液に、0℃下でテトラフルオロホウ酸ジエチルエーテル錯体2.35g(14.5mmol)を加えた。この混合物を室温で20時間撹拌した後、溶媒を減圧下で留去した。残った固体をジクロロメタンとジエチルエーテルの混合物(ジクロロメタン:ジエチルエーテル=1:13(vol%))で洗浄することにより、[トリス(アセトニトリル)(η−シクロペンタジエニル)ルテニウム(II)][テトラフルオロボラト]([Ru(η−C)(MeCN)][BF])を黄色固体として得た(4.30g,収率84%)。
H−NMR(500MHz,CDCl,δ)
4.21(s,5H),2.43(s,9H).
13C−NMR(125MHz,CDCl,δ)
125.5,68.8,4.05.
実施例2
【0104】
【化17】
【0105】
アルゴン雰囲気下で、ビス(η−メチルシクロペンタジエニル)ルテニウム((η−CMeHRu)6.52g(25.1mmol)とアセトニトリル50mLを混合することにより調製した溶液に、0℃下でテトラフルオロホウ酸ジエチルエーテル錯体4.28g(26.4mmol)を加えた。この混合物を室温で20時間撹拌した後、溶媒を減圧下で留去した。残った固体をジクロロメタンとジエチルエーテルの混合物(ジクロロメタン:ジエチルエーテル=1:10(vol%))で洗浄することにより、[トリス(アセトニトリル)(η−メチルシクロペンタジエニル)ルテニウム(II)][テトラフルオロボラト]([Ru(η−CMeH)(MeCN)][BF])を黄褐色固体として得た(8.61g,収率88%)。
H−NMR(500MHz,CDCl,δ)
4.13−4.16(brs,2H),3.88−3.91(brs,2H),2.42(s,9H),1.70(s,3H).
13C−NMR(125MHz,CDCl,δ)
124.9,92.2,70.6,63.5,12.9,4.0.
実施例3
【0106】
【化18】
【0107】
アルゴン雰囲気下で、ビス(η−エチルシクロペンタジエニル)ルテニウム((η−CEtHRu)4.31g(15.0mmol)とアセトニトリル40mLを混合することにより調製した溶液に、0℃下でテトラフルオロホウ酸ジエチルエーテル錯体2.55g(15.7mmol)を加えた。この混合物を室温で20時間撹拌した後、溶媒を減圧下で留去した。残った固体をジクロロメタンとジエチルエーテルの混合物(ジクロロメタン:ジエチルエーテル=1:10(vol%))で洗浄することにより、[トリス(アセトニトリル)(η−エチルシクロペンタジエニル)ルテニウム(II)][テトラフルオロボラト]([Ru(η−CEtH)(MeCN)][BF])を黄褐色固体として得た(5.93g,収率98%)。
H−NMR(500MHz,CDCl,δ)
4.10−4.15(m,2H),3.89−3.94(m,2H),2.40(s,9H),2.03(q,J=7.0Hz,2H),1.07(t,J=7.0Hz,3H).
13C−NMR(125MHz,CDCl,δ)
124.9,96.7,70.0,63.4,20.3,13.6,3.7.
実施例4
【0108】
【化19】
【0109】
アルゴン雰囲気下で、(η−2,4−ジメチル−2,4−ペンタジエニル)(η−エチルシクロペンタジエニル)ルテニウム(Ru(η−CEtH)(η−CHC(Me)CHC(Me)CH))10.2g(35.2mmol)とアセトニトリル40mLを混合することにより調製した溶液に、0℃下でテトラフルオロホウ酸ジエチルエーテル錯体5.98g(36.9mmol)を加えた。この混合物を室温で20時間撹拌した後、溶媒を減圧下で留去した。残った固体をジクロロメタンとジエチルエーテルの混合物(ジクロロメタン:ジエチルエーテル=1:10(vol%))で洗浄することにより、[トリス(アセトニトリル)(η−エチルシクロペンタジエニル)ルテニウム(II)][テトラフルオロボラト]([Ru(η−CEtH)(MeCN)][BF])を黄褐色固体として得た(14.1g,収率99%)。このようにして得た[Ru(η−CEtH)(MeCN)][BF]のH及び13C−NMRスペクトルを測定したところ、これらのスペクトルは実施例3で得たもののスペクトルと一致した。
【0110】
実施例5
【0111】
【化20】
【0112】
アルゴン雰囲気下で、ビス(η−エチルシクロペンタジエニル)ルテニウム((η−CEtHRu)1.10g(3.81mmol)をアセトニトリル5mLに溶かすことにより調製した溶液に、0℃下でトリフルオロメタンスルホン酸603mg(4.02mmol)を加えた。この混合物を室温で20時間撹拌した後、溶媒を減圧下で留去した。残った固体をジエチルエーテルで洗浄することにより、[トリス(アセトニトリル)(η−エチルシクロペンタジエニル)ルテニウム(II)][トリフルオロメタンスルホナト]([Ru(η−CEtH)(MeCN)][CFSO])を黄褐色固体として得た(1.61g,収率90%)。
H−NMR(500MHz,CDCl,δ)
4.13−4.15(m,2H),3.93−3.95(m,2H),2.41(s,9H),2.03(q,J=7.0Hz,2H),1.07(t,J=7.0Hz,3H).
13C−NMR(125MHz,CDCl,δ)
124.9,120.8(q,JC−F=318Hz),96.9,70.2,63.6,20.4,13.7,4.04.
実施例6
【0113】
【化21】
【0114】
アルゴン雰囲気下で、ビス(η−エチルシクロペンタジエニル)ルテニウム((η−CEtHRu)1.53g(5.32mmol)をピバロニトリル10mLに溶かすことにより調製した溶液に、0℃下でテトラフルオロホウ酸ジエチルエーテル錯体903mg(5.58mmol)を加えた。この混合物を室温で20時間撹拌した後、溶媒を減圧下で留去した。残った固体をテトラヒドロフランとヘキサンの混合溶媒(テトラヒドロフラン:ヘキサン=1:10)で洗浄することにより、[トリス(ピバロニトリル)(η−エチルシクロペンタジエニル)ルテニウム(II)][テトラフルオロボラト]([Ru(η−CEtH)(BuCN)][BF])を赤褐色油状物として得た(2.46g,収率87%)。
H−NMR(500MHz,CDCl,δ)
4.16−4.18(m,2H),3.94−3.96(m,2H),2.05(q,J=7.5Hz,2H),1.45(s,27H),1.10(t,J=7.5Hz,3H).
13C−NMR(125MHz,CDCl,δ)
133.5,97.8,71.2,63.7,30.2,28.3,20.3,13.6.
実施例7
【0115】
【化22】
【0116】
アルゴン雰囲気下で、[Ru(η−C)(MeCN)][BF]4.30g(11.4mmol)とヘキサン50mLを混合することにより調製した懸濁液に、メシチルオキシド13.0g(132mmol)及びトリエチルアミン4.22g(41.7mmol)を加えた。この混合物を室温で20分間撹拌した後、さらに50℃で10時間撹拌した。反応混合物をろ過した後、ろ液から溶媒を減圧留去した。残った黄色固体を昇華(加熱温度110℃/背圧10Pa)することにより、(η−シクロペンタジエニル)(η−2,4−ジメチル−1−オキサ−2,4−ペンタジエニル)ルテニウム(Ru(η−C)(η−CHC(Me)CHC(Me)O))を黄色固体として得た(1.27g,収率42%)。
H−NMR(500MHz,CDCl,δ)
5.55(s,1H),4.65(s,5H),3.93(s,1H),2.28(s,3H),1.72(s,3H),1.48(s,1H).
13C−NMR(125MHz,CDCl,δ)
134.4,101.1,84.0,75.6,51.9,26.9,24.3.
実施例8
【0117】
【化23】
【0118】
アルゴン雰囲気下で、[Ru(η−CMeH)(MeCN)][BF]8.61g(22.1mmol)をメシチルオキシド69.0g(700mmol)に溶かし、室温で24時間撹拌した。次いで、0℃下でトリエチルアミン8.95g(88.4mmol)を加えた後、50℃で8時間撹拌した。溶媒を減圧下で留去した後、残渣にヘキサン60mLを加えて室温で激しく撹拌した。生成した懸濁液をろ過した後、ろ液から溶媒を減圧留去した。残った固体を昇華(加熱温度135℃/背圧10Pa)することにより、(η−2,4−ジメチル−1−オキサ−2,4−ペンタジエニル)(η−メチルシクロペンタジエニル)ルテニウム(Ru(η−CMeH)(η−CHC(Me)CHC(Me)O))を橙色固体として得た(3.73g,収率61%)。
H−NMR(500MHz,CDCl,δ)
5.43(s,1H),4.56−4.61(m,2H),4.49−4.52(m,2H),3.79(s,1H),2.25(s,3H),1.80(s,3H),1.72(s,3H),1.55(s,1H).
13C−NMR(125MHz,CDCl,δ)
134.2,101.4,92.3,84.3,76.2,76.1,75.8,74.6,52.5,26.6,24.2,13.5.
実施例9
【0119】
【化24】
【0120】
アルゴン雰囲気下で、[Ru(η−CEtH)(MeCN)][BF]1.49g(3.68mmol)をメシチルオキシド13.0g(132mmol)に溶かした後、炭酸リチウム1.36g(18.4mmol)を加え50℃で8時間撹拌した。溶媒を減圧下で留去した後、残渣にヘキサン60mLを加えて室温で激しく撹拌した。生成した懸濁液をろ過した後、ろ液から溶媒を減圧留去した。残った液体を減圧蒸留(留出温度88℃/背圧5Pa)することにより、(η−2,4−ジメチル−1−オキサ−2,4−ペンタジエニル)(η−エチルシクロペンタジエニル)ルテニウム(Ru(η−CEtH)(η−CHC(Me)CHC(Me)O))を橙色液体として得た(0.93g,収率86%)。
H−NMR(500MHz,CDCl,δ)
5.44(s,1H),4.59−4.63(m,1H),4.51−4.55(m,1H),4.48−4.51(m,1H),4.37−4.40(m,1H),3.80(s,1H),2.24(s,3H),2.13(q,J=7.5Hz,2H),1.70(s,3H),1.53(s,1H),1.12(t,J=7.5Hz,3H).
13C−NMR(125MHz,CDCl,δ)
134.2,101.1,100.3,84.2,75.7,74.5,74.4,73.9,52.3,26.7,24.1,21.2,14.8.
実施例10
【0121】
【化25】
【0122】
アルゴン雰囲気下で、[Ru(η−CEtH)(MeCN)][BF]2.84g(7.03mmol)をテトラヒドロフラン20mLに溶かすことにより調製した溶液に、炭酸リチウム2.60g(35.2mmol)及び2,2,5,6,6−ペンタメチルヘプタ−4−エン−3−オン11.0g(60.6mmol)を加えた。この混合物を室温で20分間撹拌した後、さらに50℃で17時間撹拌した。溶媒を減圧下で留去した後、残渣にヘキサン150mLを加えて室温で激しく撹拌した。生成した懸濁液をろ過した後、ろ液から溶媒を減圧留去することにより、(η−2,4−ジ−tert−ブチル−1−オキサ−2,4−ペンタジエニル)(η−エチルシクロペンタジエニル)ルテニウム(Ru(η−CEtH)(η−CHC(Bu)CHC(Bu)O))を橙色液体として得た(1.41g,収率53%)。
H−NMR(500MHz,CDCl,δ)
5.68(s,1H),4.74−4.78(brs,1H),4.70−4.74(brs,1H),4.36−4.40(m,1H),4.07−4.10(m,1H),4.01(s,1H),2.34(q,J=7.5Hz,2H),1.40(s,1H),1.26(s,9H),1.23(t,J=7.5Hz,3H),1.03(s,9H).
13C−NMR(125MHz,CDCl,δ)
147.3,116.0,103.6,76.5,74.3,72.5,72.4,71.4,46.9,37.4,36.0,31.0,29.6,21.9,15.2.
実施例11
【0123】
【化26】
【0124】
アルゴン雰囲気下で、[Ru(η−CMe)(MeCN)][MeSO]2.69g(5.91mmol)とヘキサン30mLを混合することにより調製した懸濁液に、メシチルオキシド5.81g(59.2mmol)及びトリエチルアミン1.82g(18.0mmol)を加えた。この混合物を室温で20分間撹拌した後、さらに50℃で23時間撹拌した。溶媒を減圧下で留去した後、残渣にヘキサン150mLを加えて室温で激しく撹拌した。生成した懸濁液をろ過した後、ろ液から溶媒を減圧留去した。残った黄色固体をカラムクロマトグラフィー(アルミナ、テトラヒドロフラン)を用いて精製することにより、(η−2,4−ジメチル−1−オキサ−2,4−ペンタジエニル)(η−1,2,3,4,5−ペンタメチルシクロペンタジエニル)ルテニウム(Ru(η−CMe)(η−CHC(Me)CHC(Me)O))を黄色固体として得た(1.97g,収率100%)。
H−NMR(500MHz,C,δ)
4.88(s,1H),3.17(s,1H),2.04(s,3H),1.75(s,15H),1.64(s,1H),1.61(s,3H).
13C−NMR(125MHz,C,δ)
133.2,101.7,87.5,84.6,55.0,25.2,23.2,10.7.
実施例12
【0125】
【化27】
【0126】
アルゴン雰囲気下で、ビス(η−エチルシクロペンタジエニル)ルテニウム((η−CEtHRu)2.88g(10.0mmol)をアセトニトリル30mLに溶かし、0℃下でテトラフルオロホウ酸ジエチルエーテル錯体1.70g(10.5mmol)を加えた後、室温で8時間撹拌した。この時点での反応混合物を一部サンプリングしてH−NMRを用いて分析したところ、[Ru(η−CEtH)(MeCN)][BF]が生成していることが確認された。該反応混合物から溶媒を減圧下で留去した後、残った固体をアセトン30mLに溶かし、室温でメシチルオキシド9.84g(100mmol)を加え室温で8時間撹拌した。次いで、炭酸ナトリウム5.31g(50.1mmol)を加えた後、50℃で8時間撹拌した。反応混合物から溶媒を減圧下で留去した後、ヘキサン60mLを加えて室温で激しく撹拌した。生成した懸濁液をろ過した後、ろ液から溶媒を減圧留去した。残った液体を減圧蒸留(留出温度88℃/背圧5Pa)することにより、(η−2,4−ジメチル−1−オキサ−2,4−ペンタジエニル)(η−エチルシクロペンタジエニル)ルテニウム(Ru(η−CEtH)(η−CHC(Me)CHC(Me)O))を橙色液体として得た(2.06g,収率70%)。このようにして得たRu(η−CEtH)(η−CHC(Me)CHC(Me)O)のH及び13C−NMRスペクトルを測定したところ、これらのスペクトルは実施例9で得たもののスペクトルと一致した。
【0127】
実施例13
【0128】
【化28】
【0129】
アルゴン雰囲気下で、(η−2,4−ジメチル−2,4−ペンタジエニル)(η−エチルシクロペンタジエニル)ルテニウム(Ru(η−CEtH)(η−CHC(Me)CHC(Me)CH))3.25g(11.2mmol)をアセトニトリル20mLに溶かし、0℃下でテトラフルオロホウ酸ジエチルエーテル錯体2.00g(12.4mmol)を加えた後、室温で8時間撹拌した。この時点での反応混合物を一部サンプリングしてH−NMRを用いて分析したところ、[Ru(η−CEtH)(MeCN)][BF]が生成していることが確認された。該反応混合物から溶媒を減圧下で留去した後、得られた残渣をジクロロメタン20mLに溶かし、室温でメシチルオキシド11.0g(112mmol)を加え室温で8時間撹拌した。次いで、0℃下でトリエチルアミン1.25g(12.4mmol)を加えた後、室温で8時間撹拌した。反応混合物から溶媒を減圧下で留去した後、ヘキサン60mLを加えて室温で激しく撹拌した。生成した懸濁液をろ過した後、ろ液から溶媒を減圧留去した。残った液体を減圧蒸留(留出温度88℃/背圧5Pa)することにより、(η−2,4−ジメチル−1−オキサ−2,4−ペンタジエニル)(η−エチルシクロペンタジエニル)ルテニウム([Ru(η−CEtH)(η−CHC(Me)CHC(Me)O)])を橙色液体として得た(1.90g,収率58%)。このようにして得たRu(η−CEtH)(η−CHC(Me)CHC(Me)O)のH及び13C−NMRスペクトルを測定したところ、これらのスペクトルは実施例9で得たもののスペクトルと一致した。
【0130】
反応ガスとしてアンモニアを用いたルテニウム含有薄膜の作製例(実施例14〜17、比較例1、2)
ルテニウム錯体(1)、又は(η−CEtHRuを材料に用いてルテニウム含有薄膜を熱CVD法により作製した。薄膜作製のために使用した装置の概略を図1に示した。成膜条件は表3に示す通りであり、その他の条件は以下の通りである。
【0131】
材料容器内全圧:13.3kPa、キャリアガス流量:30sccm、材料供給速度:0.012sccm、アンモニア流量:100sccm、希釈ガス流量:70sccm、基板:SiO/Si、成膜時間:1時間。キャリアガス及び希釈ガスとしてアルゴンを用いた。なお、反応チャンバーへの材料供給速度は、(キャリアガス流量×材料の蒸気圧÷材料容器内全圧)の計算式に基づいて求めることが出来る。
【0132】
実施例14〜17のいずれの場合においても、作製した薄膜を蛍光X線分析で確認したところルテニウムに基づく特性X線が検出された。蛍光X線分析は理学電機社製3370Eを用いた。測定条件はX線源:Rh、出力:50kV 50mA、測定径:10mmとした。検出されたX線の強度から算出した膜厚を表3に示した。作製したルテニウム含有薄膜の電気特性を四探針法で測定し、得られた抵抗率を表3に示した。四探針法は三菱油化社製LORESTA HP MCP−T410を用いた。
【0133】
実施例15の条件で作製した膜(ただし、成膜時間は2.5時間とした。)に含まれる不純物について、二次イオン質量分析法により定量した。二次イオン質量分析法はPHI社製ADEPT1010を用いた。測定条件は一次イオン種:Cs、一次イオン加速電圧:2kV、二次イオン極性:Positive、電荷補償:E−gunとした。
C:0.13atm%,N:0.08atm%,O:0.13atm%.
実施例15の条件で作製した膜の表面平滑性をAFMにより評価したところ、膜の算術平均粗さ(Ra)は2.1nm、二乗平均平方根粗さ(Rms)は2.7nmであった(図2)。AFMはBruker・AXS社製NanoScope IIIaを用いた。測定条件はタッピングモードとした。
【0134】
比較例1、2で作製した薄膜を蛍光X線分析で確認したところルテニウムに基づく特性X線が検出された。検出されたX線の強度から算出した膜厚を表3に示した。作製したルテニウム含有薄膜の電気特性を四探針法で評価したところ、絶縁膜であった。
【0135】
【表8】
【0136】
反応ガスとして酸素を用いたルテニウム含有薄膜の作製例(実施例18〜26、比較例3、4)
ルテニウム錯体(1)、又は(η−CEtHRuを材料に用いてルテニウム含有薄膜を熱CVD法により作製した。薄膜作製のために使用した装置の概略を図1に示した。成膜条件は表4に示す通りであり、その他の条件は以下の通りである。
【0137】
材料容器内全圧:13.3kPa、キャリアガス流量:30sccm、材料供給速度:0.012sccm、酸素流量:0.16sccm、希釈ガス流量:169sccm、基板:SiO/Si、成膜時間:1時間。キャリアガス及び希釈ガスとしてアルゴンを用いた。実施例18〜26のいずれの場合においても、作製した薄膜を蛍光X線分析で確認したところルテニウムに基づく特性X線が検出された。検出されたX線の強度から算出した膜厚を表4に示した。作製したルテニウム含有薄膜の電気特性を四探針法で測定し、得られた抵抗率を表4に示した。
【0138】
比較例3、4で作製した薄膜を蛍光X線分析で確認したところ、比較例3で作製した薄膜はルテニウムに基づく特性X線が検出され、比較例4で作製した薄膜はルテニウムに基づく特性X線は検出されなかった。検出されたX線の強度から算出した膜厚を表4に示した。作製したルテニウム含有薄膜の電気特性を四探針法で測定し、得られた抵抗率を表4に示した。
【0139】
【表9】
【0140】
実施例27
実施例9で得られたルテニウム錯体(1)を材料に用いてルテニウム含有薄膜を熱CVD法により作製した。薄膜作製のために使用した装置の概略を図1に示した。成膜条件は以下の通りである。
【0141】
材料容器温度:64℃、材料の蒸気圧:5.3Pa、材料容器内全圧:3.3kPa、基板温度:350℃、キャリアガス流量:30sccm、材料供給速度:0.048sccm、アンモニア流量:30sccm、基板:SiO/Si、成膜時間:5時間。キャリアガスとしてアルゴンを用い、希釈ガスは用いなかった。
【0142】
作製した薄膜を蛍光X線分析で確認したところルテニウムに基づく特性X線が検出された。検出されたX線の強度から算出したところ、14nmであった。得られた膜の表面平滑性をAFMにより評価したところ、膜のRaは0.5nm、Rmsは0.6nmであった(図3)。
【0143】
比較例5
(η−CEtHRuを材料に用いてルテニウム含有薄膜を熱CVD法により作製した。薄膜作製のために使用した装置の概略を図1に示した。成膜条件は以下の通りである。
【0144】
材料容器温度:62℃、材料の蒸気圧:5.3Pa、材料容器内全圧:3.3kPa、基板温度:350℃、キャリアガス流量:30sccm、材料供給速度:0.048sccm、アンモニア流量:30sccm、基板:SiO/Si、成膜時間:5時間。キャリアガスとしてアルゴンを用い、希釈ガスは用いなかった。
【0145】
作製した薄膜を蛍光X線分析で確認したところルテニウムに基づく特性X線は検出されなかった。
【0146】
実施例28
実施例9で得られたルテニウム錯体(1)を材料に用いてルテニウム含有薄膜を熱CVD法により作製した。薄膜作製のために使用した装置の概略を図1に示した。成膜条件は以下の通りである。
【0147】
材料容器温度:100℃、材料の蒸気圧:69Pa、材料容器内全圧:6.7kPa、基板温度:300℃、キャリアガス流量:20sccm、材料供給速度:0.21sccm、アンモニア流量:20sccm、基板:TaN/Ti/Si、成膜時間:6時間。キャリアガスとしてアルゴンを用い、希釈ガスは用いなかった。
【0148】
作製した薄膜を蛍光X線分析で確認したところルテニウムに基づく特性X線が検出された。検出されたX線の強度から算出したところ、8nmであった。得られた膜の表面平滑性をAFMにより評価したところ、膜のRaは1.1nm、Rmsは1.4nmであった(図4)。
【0149】
比較例6
(η−CEtHRuを材料に用いてルテニウム含有薄膜を熱CVD法により作製した。薄膜作製のために使用した装置の概略を図1に示した。成膜条件は以下の通りである。
【0150】
材料容器温度:88℃、材料の蒸気圧:69Pa、材料容器内全圧:6.7kPa、基板温度:300℃、キャリアガス流量:20sccm、材料供給速度:0.21sccm、アンモニア流量:20sccm、基板:TaN/Ti/Si、成膜時間:6時間。キャリアガスとしてアルゴンを用い、希釈ガスは用いなかった。
【0151】
作製した薄膜を蛍光X線分析で確認したところルテニウムに基づく特性X線が検出されなかった。
【0152】
反応ガスとしてアンモニアを用いたルテニウム含有薄膜の作製例(実施例29〜33)
実施例9で得られたルテニウム錯体(1)を材料に用いてルテニウム含有薄膜を熱CVD法により作製した。薄膜作製のために使用した装置の概略を図1に示した。成膜条件は表5に示す通りであり、その他の条件は以下の通りである。
【0153】
材料容器内全圧:6.7kPa、キャリアガス流量:30sccm、材料供給速度:0.024sccm、アンモニア流量:50sccm、希釈ガス流量:20sccm、基板:SiO/Si、成膜時間:2時間(ただし、実施例29、30は1時間)。キャリアガス及び希釈ガスとしてアルゴンを用いた。
【0154】
実施例29〜33のいずれの場合においても、作製した薄膜を蛍光X線分析で確認したところルテニウムに基づく特性X線が検出された。検出されたX線の強度から算出した膜厚を表5に示した。作製したルテニウム含有薄膜の電気特性を四探針法で測定し、得られた抵抗率を表5に示した。
【0155】
実施例29の条件で作製した膜の表面平滑性をAFMにより評価したところ、膜のRaは3.6nm、Rmsは4.5nmであった(図5)。さらに、実施例29の条件で作製した膜に含まれる不純物について、二次イオン質量分析法により定量した。
C:0.13atm%,N:0.01atm%,O:0.13atm%.
実施例31の条件で作製した膜の表面平滑性をAFMにより評価したところ、Raは0.9nm、Rmsは1.2nmであった(図6)。さらに、実施例31の条件で作製した膜に含まれる不純物について、二次イオン質量分析法により定量した。
C:0.67atm%,N:0.07atm%,O:0.07atm%.
実施例33の条件で作製した膜の表面平滑性をAFMにより評価したところ、膜のRaは0.4nm、Rmsは0.5nmであった(図7)。
【0156】
【表10】
【0157】
反応ガスとして水素を用いたルテニウム含有薄膜の作製例(実施例34〜37)
実施例9で得られたルテニウム錯体(1)を材料に用いてルテニウム含有薄膜を熱CVD法により作製した。薄膜作製のために使用した装置の概略を図1に示した。成膜条件は表6に示す通りであり、その他の条件は以下の通りである。
【0158】
材料容器内全圧:6.7kPa、キャリアガス流量:30sccm、材料供給速度:0.024sccm、水素流量:2sccm、希釈ガス流量:68sccm、基板:SiO/Si、成膜時間:1時間。キャリアガス及び希釈ガスとしてアルゴンを用いた。
【0159】
実施例34〜37のいずれの場合においても、作製した薄膜を蛍光X線分析で確認したところルテニウムに基づく特性X線が検出された。検出されたX線の強度から算出した膜厚を表6に示した。作製したルテニウム含有薄膜の電気特性を四探針法で測定し、得られた抵抗率を表6に示した。
【0160】
【表11】
【0161】
以上の実施例から以下のことが理解出来る。即ち、実施例14〜17、27〜37により、ルテニウム錯体(1)は、酸化性ガスを用いなくてもルテニウム含有薄膜を作製可能な材料であることが分かる。また、ルテニウム錯体(1)を材料として用いることで、酸化性ガスを用いなくても不純物の少ない金属ルテニウム膜が作製可能であることが分かる。さらに、ルテニウム錯体(1)を材料として用いて作製したルテニウム含有薄膜は、良好な電気伝導特性を有していることが分かる。実施例15、27、28より、ルテニウム錯体(1)を材料として用いることで、酸化性ガスを用いなくても表面平滑性に優れた金属ルテニウム膜が作製可能であることが分かる。
【0162】
実施例18〜26により、ルテニウム錯体(1)は、酸化性ガスを用いてもルテニウム含有薄膜を作製可能であることが分かる。さらに比較例4との比較から、ルテニウム錯体(1)は低温でルテニウム含有薄膜を作製可能な材料であることが分かる。したがって、ルテニウム錯体(1)は薄膜形成用材料として適用範囲が広い有用な材料である。
【0163】
実施例27と比較例5の比較、及び実施例28と比較例6の比較より、ルテニウム錯体(1)は酸化性ガスを用いなくても350℃以下の低温で表面平滑性に優れた膜を作製可能であることが分かる。
【0164】
実施例38
【0165】
【化29】
【0166】
アルゴン雰囲気下で、Organometallics,第5巻,2321ページ(1986年)に記載の方法によって合成した(η−C)(η−CMe)Ru4.49g(14.9mmol)と、アセトニトリル60mLを混合することにより調製した懸濁液に、0℃下でテトラフルオロホウ酸ジエチルエーテル錯体3.21g(19.8mmol)を加えた。この混合物を室温で21時間撹拌した後、溶媒を減圧下で留去した。残った固体をジクロロメタンとジエチルエーテルの混合物(ジクロロメタン:ジエチルエーテル=1:13(vol%))で洗浄することにより、[トリス(アセトニトリル)(η−1,2,3,4,5−ペンタメチルシクロペンタジエニル)ルテニウム(II)][テトラフルオロボラト]([Ru(η−CMe)(MeCN)][BF])を黄色固体として得た(6.62g,収率99%)。
H−NMR(500MHz,CDCl,δ)
2.30−2.46(br,9H),1.58(s,15H).
実施例39
実施例9で得られたルテニウム錯体(1)を材料に用いてルテニウム含有薄膜を熱CVD法により作製した。薄膜作製のために使用した装置の概略を図1に示した。成膜条件は以下の通りである。
【0167】
材料容器温度:64℃、材料の蒸気圧:5.3Pa、材料容器内全圧:6.7kPa、基板温度:400℃、キャリアガス流量:30sccm、材料供給速度:0.024sccm、アンモニア流量:100sccm、希釈ガス流量:70sccm、ホール基板:SiO/Si(ホール径400nm、ホール深さ1000nm)、成膜時間:5時間。キャリアガスとしてアルゴンを用いた。
【0168】
作製した薄膜を蛍光X線分析で確認したところルテニウムに基づく特性X線が検出された。検出されたX線の強度から算出したところ、8nmであった。作製したルテニウム含有薄膜の電気特性を四探針法で測定したところ、123μΩ・cmであった。膜の断面をFE−SEM(電界放射型電子顕微鏡)により観察したところ、ホール開口部とホール底部の膜厚は同等であった(図8)。FE−SEMは日本電子製JSM−7600Fを用いた。測定条件は加速電圧:5kV、観察倍率:100,000倍、試料前処理:試料切断→樹脂包埋→断面イオンミリング加工とした。
【0169】
実施例40
実施例9で得られたルテニウム錯体(1)を材料に用いてルテニウム含有薄膜を熱CVD法により作製した。薄膜作製のために使用した装置の概略を図1に示した。成膜条件は以下の通りである。
【0170】
材料容器温度:64℃、材料の蒸気圧:5.3Pa、材料容器内全圧:6.7kPa、基板温度:400℃、キャリアガス流量:30sccm、材料供給速度:0.024sccm、アンモニア流量:50sccm、希釈ガス流量:20sccm、ホール基板:SiO/Si(ホール径400nm、ホール深さ800nm)、成膜時間:5時間。キャリアガスとしてアルゴンを用いた。
【0171】
作製した薄膜を蛍光X線分析で確認したところルテニウムに基づく特性X線が検出された。検出されたX線の強度から算出したところ、7nmであった。作製したルテニウム含有薄膜の電気特性を四探針法で測定したところ、712μΩ・cmであった。膜の断面をFE−SEMにより観察したところ、ホール開口部とホール底部の膜厚は同等であった(図9)。実施例39、40より、本発明のルテニウム錯体(1)は酸化性ガスを用いなくても400℃以下の低温で段差のある基板に対して均一な膜を作製可能であることが分かる。
【符号の説明】
【0172】
1 材料容器
2 恒温槽
3 反応チャンバー
4 基板
5 反応ガス
6 希釈ガス
7 キャリアガス
8 マスフローコントローラー
9 マスフローコントローラー
10 マスフローコントローラー
11 油回転式ポンプ
12 排気
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9