特許第6249886号(P6249886)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6249886
(24)【登録日】2017年12月1日
(45)【発行日】2017年12月20日
(54)【発明の名称】光学測定セル及び光学分析計
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/09 20060101AFI20171211BHJP
   G01N 21/05 20060101ALI20171211BHJP
【FI】
   G01N21/09
   G01N21/05
【請求項の数】4
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2014-120980(P2014-120980)
(22)【出願日】2014年6月11日
(65)【公開番号】特開2016-1135(P2016-1135A)
(43)【公開日】2016年1月7日
【審査請求日】2016年9月9日
(73)【特許権者】
【識別番号】000155023
【氏名又は名称】株式会社堀場製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100121441
【弁理士】
【氏名又は名称】西村 竜平
(74)【代理人】
【識別番号】100154704
【弁理士】
【氏名又は名称】齊藤 真大
(72)【発明者】
【氏名】有本 公彦
【審査官】 横尾 雅一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2000−046728(JP,A)
【文献】 特開2006−234663(JP,A)
【文献】 米国特許第05120129(US,A)
【文献】 特開2011−257146(JP,A)
【文献】 特開2012−137303(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/00−21/83
G01N 31/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料を収容する内部空間及び当該内部空間を挟む一対の透光部材と、
前記一対の透光部材を収容する収容部を有し、当該収容部に収容された前記一対の透光部材とともに前記内部空間を形成するセル本体と、
前記収容部に収容された前記一対の透光部材を前記セル本体に固定する固定機構とを具備し、
前記一対の透光部材の少なくとも一方が、
前記内部空間に収容された被検液に接触する接液面を有する接液部材と、
前記接液部材の前記接液面とは反対側の面に接触して前記接液部材を補強する補強部材とを備えており、
前記固定機構が、
少なくとも前記接液部材を前記セル本体に押圧するための押圧部材と、
前記押圧部材及び前記接液部材の間に介在して設けられ、前記接液部材の前記接液面とは反対側の面において前記補強部材よりも外側に接触するシール部材とを備えている光学測定セル。
【請求項2】
前記シール部材が、前記収容部の内周面において前記接液部材よりも前記補強部材側に密着する請求項1記載の光学測定セル。
【請求項3】
前記接液部材が、前記被検液に対して耐腐食性を有する材質からなり、
前記補強部材が、前記接液部材よりも機械的強度が強い材質からなる請求項1又は2記載の光学測定セル。
【請求項4】
請求項1乃至3の何れか一項に記載の光学測定セルと、
前記光学測定セルに対して光を照射する光照射部と、
前記光学測定セルを透過した光を検出する光検出部とを有する光学分析計。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば半導体等の製造工程においてフッ酸(HF)等の薬液の濃度等を測定するために用いられる光学測定セル及び当該光学測定セルを用いた光学分析計に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の光学測定セルは、半導体製造装置の薬液配管に接続されて、内部空間を薬液が通過するものであり、当該内部空間を挟む一対の光学窓を有している。そして、この光学測定セルの一方の光学窓に測定光が照射されて、他方の光学窓から出た透過光が受光される。これによって光学測定セルを流れる薬液の透過光強度から当該薬液に含まれる所定成分の濃度等が算出されて、薬液の濃度制御が行われる。
【0003】
従来、この光学測定セルにおいて、一対の光学窓を形成する透光部材には、サファイアや石英が用いられている。
【0004】
ところが、サファイアを用いたものでは、フッ酸(HF)等の薬液に対して耐蝕性を有するものの、主成分である酸化アルミニウム(Al)が薬液中に溶け出して酸化アルミニウムによるコンタミネーション(汚染)が生じてしまう。その結果、半導体製造装置には適さない場合がある。一方で、石英を用いたものでは、フッ酸(HF)等の薬液に対して耐蝕性が無く、それらの薬液の分析に用いることができない。
【0005】
このため、透光部材にフッ素系樹脂を用いることが考えられている。フッ素樹脂を用いたものでは、フッ酸(HF)等の薬液に対して耐蝕性を有するとともに、薬液へのコンタミネーションを防ぐことができる。
【0006】
しかしながら、フッ素系樹脂は機械的強度が低く、薬液等の被検液の温度又は圧力変動により変形してしまう。その結果、一対の光学窓間の光路長(セル長)が変化してしまい、測定誤差が発生してしまうという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平8−68746号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで本発明は、上記問題点を解決すべくなされたものであり、光学窓を形成する透光部材の変形を抑えつつ、被検液へのコンタミネーションを防ぐことをその主たる課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
すなわち本発明に係る光学測定セルは、被検液を収容する内部空間及び当該内部空間を挟む一対の光学窓を有する光学測定セルであって、前記一対の光学窓を形成する一対の透光部材と、前記一対の透光部材を収容する収容部を有し、当該収容部に収容された前記一対の透光部材とともに前記内部空間を形成するセル本体と、前記収容部に収容された前記一対の透光部材を前記セル本体に固定する固定機構とを具備し、前記一対の透光部材の少なくとも一方が、前記内部空間に収容された被検液に接触する接液面を有する接液部材と、前記接液部材の前記接液面とは反対側の反対面に接触して前記接液部材を補強する補強部材とを備えており、前記固定機構が、少なくとも前記接液部材を前記セル本体に押圧するための押圧部材と、前記押圧部材及び前記接液部材の間に介在して設けられ、前記接液部材の前記接液面とは反対側の面において前記補強部材よりも外側に密着するシール部材とを備えていることを特徴とする。
【0010】
このような光学測定セルであれば、透光部材が、一枚構成では無く、接液部材及び補強部材を備えているので、接液部材に被検液に対して耐蝕性を有しコンタミネーション成分を生じない材質を用い、補強部材に接液部材の機械的強度を保つような材質を用いることによって、光学窓を形成する透光部材の変形を抑えつつ、被検液へのコンタミネーションを防ぐことができる。つまり、透光部材を少なくとも接液部材及び補強部材を有する複数枚構成にすることにより、光学窓を形成する透光部材の変形を抑えつつ、被検液へのコンタミネーションを防ぐように、材質の選択を行うことができる。
また、固定機構の押圧部材及び接液部材の間に介在して設けられたシール部材が、接液部材の接液面とは反対側の面において補強部材よりも外側に密着しているので、内部空間の被検液が接液部材及びセル本体の間から補強部材側に漏れ出た場合であっても、被検液が補強部材に接触することを防ぐことができる。これにより、補強部材が被検液により腐食されてしまうことを防ぐことができ、また、補強部材において、被検液に耐蝕性を有する材質を選択する必要が無くなる。
【0011】
前記シール部材が、前記収容部の内周面において前記接液部材よりも前記補強部材側に密着することが望ましい。
これならば、内部空間の被検液が接液部材及びセル本体の間から補強部材側に漏れ出た場合であっても、セル外部への液リークを防ぐことができる。また、単一のシール部材により、補強部材の腐食及びセル外部への液リークの両方を防ぐことができ、部品点数を削減及び構造の簡略化が可能となる。
【0012】
具体的な実施の態様としては、前記接液部材が、前記被検液に対して耐蝕性を有する材質からなり、前記補強部材が、前記接液部材よりも機械的強度が強い材質からなることが望ましい。
例えば、被検液がフッ酸(HF)の場合には、接液部材に、PTFEやPFA等のフッ素樹脂といったフッ酸(HF)に対して耐蝕性を有する材質を用いることができ、補強部材に、サファイアや石英等のフッ酸(HF)に対して耐蝕性を有さない又はコンタミネーション成分を生じるが、接液部材よりも機械的強度が強い材質を用いることができる。
【発明の効果】
【0013】
このように構成した本発明によれば、透光部材を、耐蝕性を有するとともにコンタミネーション成分を生じない材質からなる接液部材と、当該接液部材よりも機械的強度が強い補強部材とに分けて構成することができ、光学窓を形成する透光部材の変形を抑えつつ、被検液へのコンタミネーションを防ぐことができる。また、押圧部材及び接液部材の間に介在して設けられたシール部材が、接液部材の接液面とは反対側の面において補強部材よりも外側に密着しているので、被検液による補強部材の腐蝕を防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本実施形態の薬液濃度測定装置(光学分析計)の構成を示す模式図。
図2】同実施形態の光学測定セルの構成を模式的に示す断面図。
図3】同実施形態の光学測定セルの構成を模式的に示す平面図。
図4】同実施形態の光学測定セルの構成を模式的に示す分解断面図。
図5】変形同実施形態の光学測定セルの構成を模式的に示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に本発明に係る光学測定セルの一実施形態について図面を参照して説明する。
【0016】
本実施形態の光学測定セル10は、図1に示すように、半導体製造装置に設けられた配管に接続されて、フッ酸(HF)等の薬液(被検液)の濃度等を測定する光学分析計に用いられる。
【0017】
なお、図1に示す光学分析計100は、光学測定セル10と、光学測定セル10に対して光を照射する光照射部11と、光学測定セル10を透過した光を検出する光検出部12とを有する。ここで、光照射部11は、光源11aと、当該光源11aからの光を光学測定セル10に導く光ファイバ11b及び集光レンズ11c等を有する導光機構とを有する。また、光検出部12は、光検出器12aと、光学測定セル10を透過した光を光検出器12aに導く光ファイバ12b及び集光レンズ12c等を有する導光機構とを有する。そして、光検出器12aからの光強度信号を受信した演算部13により、被検液に含まれる所定成分の濃度が算出される。このようにして得られる濃度を用いて、薬液の濃度等が制御される。
【0018】
光学測定セル10は、図2に示すように、被検液が流れる流路(内部空間S)を挟んで互いに対向する一対の光学窓M1、M2を有するフローセルである。この光学測定セル10において、前記光照射部11からの光が一方の光学窓M1から被検液に照射され、他方の光学窓M2から出た光が光検出部12により検出される。
【0019】
具体的に光学測定セル10は、図2図4に示すように、セル本体2と、一対の透光部材3、4と、固定機構5とを備えている。なお、透光部材3は、光照射部11からの光が入射する入射側透光部材であり、透光部材4は、内部空間Sを通過した光を外部に射出する射出側透光部材である。
【0020】
セル本体2は、一対の透光部材3、4を収容して、当該一対の透光部材3、4とともに内部空間Sを形成する収容部21を有している。本実施形態のセル本体2は、例えばPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)を用いて形成されている。また、セル本体2には、前記収容部21の内側周面に連通する液導入部6及び液導出部7が設けられている。
【0021】
本実施形態の収容部21は、特に図2及び図4に示すように、各透光部材3、4を収容する2つの収容凹部211、212と、それら2つの収容凹部211、212の底壁を貫通するように形成された中間部213とからなる。2つの収容凹部211、212は、セル本体2の互いに対向する対向面にそれぞれ設けられている。
【0022】
各収容凹部211、212は、透光部材3、4を内部に収容するためのものである。そして収容凹部211、212は、互いに略同一形状をなすものであり、図3に示すように、略円筒形(平面視において略円形状)である。具体的に収容凹部211、212は、断面円形の内側周面と、当該内側周面に直交する平坦面である底面とを有している。
【0023】
そして液導入部6及び液導出部7は、中間部213の内側周面に連通するように設けられている。液導入部6は、内部空間Sに被検液を導入するためのものであり、外部配管(不図示)が接続される。また、液導出部7は、内部空間Sから被検液を導出するためのものであり、外部配管(不図示)が接続される。なお、図2等においては、液導入部6及び液導出部7が上下方向において互いに対向して設けられているが、それらの位置は図2等に限られない。
【0024】
一対の透光部材3、4は、セル本体2の収容凹部211、212に収容されて所定の距離で対向配置されて光学セル100の一対の光学窓M1、M2を形成するものである。具体的には、一方の透光部材3が一方の収容凹部211に収容されるとともに、他方の透光部材4が他方の収容凹部212に収容されることによって、所定の距離で配向配置されることになる。つまり、一方の透光部材3が一方の収容凹部211の底面に接触し、他方の透光部材4が他方の収容凹部212の底面に接触することによって、一対の透光部材3、4が所定の距離で対向配置されることになる。このように本実施形態では、2つの収容凹部211、212の間に位置する底壁がスペーサ7として機能し、当該スペーサ7が収容部21の内側周面から内側に突出して一体形成された場合を示している。なお、このスペーサ7により、一対の透光部材3、4の対向面(接液面)同士が平行となり、所定の距離で配置されることになる。
【0025】
一対の透光部材3、4は、平面視において互いに略同一形状をなすものであり、図3に示すように、それぞれ収容凹部211、212に嵌る略円板形状をなすものである。
【0026】
具体的に各透光部材3、4は、図2図4に示すように、内部空間Sに収容された被検液に接触する接液面8aを有する接液部材8と、当該接液部材8の接液面8aとは反対側の面(外面)8bに接触して接液部材8を補強する補強部材9とを有する。
【0027】
接液部材8は、略円板形状をなすものであり、補強部材9よりも収容凹部211、212の底面側に位置して、当該収容凹部211、212の底面に接触するものである。接液部材8の接液面8aは、接液部材8における収容凹部211、212の底面側の面であり、具体的には、セル本体2の収容部21(具体的には中間部213)の内側周面とともに内部空間Sを形成する面である。
【0028】
この接液部材8は、フッ酸(HF)等の被検液に対して耐蝕性を有し、且つ、コンタミネーション成分を生じない材質から形成されており、本実施形態では、PTFEやPFA等のフッ素樹脂から形成されている。
【0029】
補強部材9は、略円板形状をなすものであり、平面視において前記接液部材8の直径よりも直径が小さい形状をなしている(図3参照)。この補強部材9は、接液部材8と同心状に設けられ、その一方の面の略全体が前記接液部材8の外面8bと面接触するものである。また、補強部材9は、平面視において、収容凹部211、212の底面(スペーサ7)との間で接液部材8を挟む込む程度の大きさを有し、つまり、中間部213の内側周面の直径よりも大きい直径を有するものである(図3参照)。言い換えれば、補強部材9は、接液部材8の外面8bにおいて、少なくとも光学窓となる領域全体に接触するように構成されている。なお、接液部材8及び補強部材9はともに、それらの中央部が光学窓M1、M2となる。また、補強部材9は、接液部材8の外面8bの光学窓となる領域の一部、具体的には、光が通過する部分に接触するように構成されていても良い。
【0030】
この補強部材9は、接液部材8よりも機械的強度が強い材質から形成されており、本実施形態では、石英又はサファイアから形成されている。このように、補強部材9は、被検液の温度変化や圧力変動に対して、所望の測定精度を確保できるものであれば良く、フッ酸(HF)等の薬液に対して耐蝕性を有さない又はコンタミネーション成分を生じるものであっても良い。
【0031】
固定機構5は、一対の透光部材3、4を押圧してセル本体2に固定するものである。具体的に固定機構5は、特に図2に示すように、一方の収容凹部211に配置された接液部材8及び補強部材9を当該収容凹部211の底面に向かって押圧して密着させ、他方の収容凹部212に配置された接液部材8及び補強部材9を当該収容凹部212の底面に向かって押圧して密着させることにより、一対の接液部材3、4の間に内部空間Sを形成するものである。
【0032】
この固定機構5は、セル本体2を挟む第1挟持板51及び第2挟持板52と、第1挟持板51及び第1透光部材3の間に介在する押圧部材たる第1傾斜リング53と、第2挟持板52及び第2透光部材4の間に介在する押圧部材たる第2傾斜リング54と、各挟持板51、52を連結するための例えばボルトである連結部材57とを備えている。
【0033】
第1挟持板51は、セル本体2における一方の収容凹部211側の側面に設けられて、一方の収容凹部211に収容された各部材を押さえるものである。第1挟持板51には、一方の光学窓M1に光を導入するための貫通孔51hと、連結部材57を挿通させる複数の挿通孔(不図示)とが設けられている。貫通孔51hは、一方の光学窓M1に対応する位置に設けられている。
【0034】
第2挟持板52は、セル本体2における他方の収容凹部212側の側面に設けられて、他方の収容凹部212に収容された各部材を押さえるものである。第2挟持板52には、他方の光学窓M2から出た光を導出するための貫通孔52hと、連結部材57を螺合させるための複数の雌ねじ孔(不図示)とが設けられている。
【0035】
第1傾斜リング53は、第1挟持板51及び第1透光部材3それぞれに接触して、第1挟持板51から第1透光部材3に押圧力を伝えるためのものである。具体的にこの第1傾斜リング53は、概略円筒形状であり、その外側周面と第1透光部材3に接する端面との一部を、斜めに切り欠いて形成されたテーパ状の傾斜面53xを有している。また、一方の収容凹部211に、第1透光部材3及び第1傾斜リング53を順次収容した高さが、収容凹部211の深さよりも高くなるように、第1傾斜リング53の厚みが設定されている。つまり、第1傾斜リング53の一部が、収容凹部211からはみ出るように設定されている。なお、第1傾斜リング53の中央部には、一方の光学窓M1に光を導入するための貫通孔53hが設けられている。
【0036】
第2傾斜リング54は、第2挟持板52及び第2透光部材4それぞれに接触して、第2挟持板52から第2透光部材4に押圧力を伝えるためのものである。具体的にこの第2傾斜リング54は、概略円筒形状であり、その外側周面と第2透光部材4に接する端面との一部を、斜めに切り欠いて形成されたテーパ状の傾斜面54xを有している。また、他方の収容凹部212に、第2透光部材4及び第2傾斜リング54を順次収容した高さが、第2収容凹部54の深さよりも高くなるように、第2傾斜リング54の厚みが設定されている。つまり、第2傾斜リング54の一部が、収容凹部212からはみ出るように設定されている。なお、第2傾斜リング54の中央部には、他方の光学窓M2から出た光を導出するための貫通孔54hが設けられている。
【0037】
そして、この固定機構5において、第1傾斜リング53及び第1透光部材3の間及び第2傾斜リング54及び第2透光部材4の間にシール部材55、56が設けられている。Oリング等のシール部材55、56は、接液部材8の接液面8aとは反対側の面8bにおいて補強部材9の外側、つまり、平面視において補強部材9の周囲を囲むように位置している(図2及び図4参照)。
【0038】
具体的には、第1傾斜リング53の傾斜面53xと、接液部材8の外面8bと、収容凹部211の内側周面との間に、Oリング等のシール部材55が配置される(図2参照)。また、第2傾斜リング54の傾斜面54xと、接液部材8の外面8bと、収容凹部212の内側周面との間に、Oリング等のシール部材56が配置される(図2参照)。
【0039】
なお、シール部材55、56であるOリングは、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)等を用いて形成される。
【0040】
そして、第1傾斜リング53が、一方の収容凹部211の底面に向かって押圧されると、傾斜面53xがOリング55に密着して(図2のA位置)、Oリング55がつぶれる。この状態において、Oリング55及び接液部材8の外面8bが気密されるように密着する(図2のB位置)。また、Oリング55及び一方の収容凹部211の内側周面が気密されるように密着する(図2のC位置)。また、第2傾斜リング54が、他方の収容凹部212の底面に向かって押圧されると、前記第1傾斜リング53と同様に、傾斜面54xがOリング56に密着してOリング56がつぶれる。この状態において、Oリング56及び接液部材8の外面8bが気密されるように密着する。また、Oリング56及び他方の収容凹部212の内側周面が気密されるように密着する。これにより、接液部材8により仕切られた内部空間Sと、内部空間Sとは反対側の空間とが気密に仕切られる。つまり、接液部材8の周縁部と補強部材9の周縁部との間が、Oリング55、56により気密に仕切られることになり、内部空間Sから接液部材8の外側、つまり収容凹部211、212に漏れ出た被検液の漏れ経路上に補強部材9が位置しないように構成している。
【0041】
その結果、流路を流れる被検液が、各透光部材3、4及びスペーサ7の間から収容凹部211、212の内側周面まで漏れ出した場合であっても、図2に示すC位置によって気密にシールされているので、セル外部への液リークを防ぐことができるとともに、図2に示すB位置によって気密にシールされているので、被検液が補強部材9に接触して補強部材9が腐食してしまうことを防ぐことができる。
【0042】
このように構成した光学測定セル10によれば、透光部材3、4が、接液部材8及び補強部材9を備えているので、接液部材8に被検液に対して耐蝕性を有しコンタミネーション成分を生じない材質を用い、補強部材9に接液部材の機械的強度を保つような材質を用いることによって、光学窓M1、M2を形成する透光部材3、4の変形を抑えつつ、被検液へのコンタミネーションを防ぐことができる。
【0043】
また、固定機構5の傾斜リング53、54及び接液部材3、4の間に介在して設けられたシール部材55、56が、接液部材8の接液面8aとは反対側の面8bにおいて補強部材9よりも外側に密着しているので、内部空間Sの被検液が接液部材8及びセル本体2(具体的には収容凹部211、212)の間から補強部材9側に漏れ出た場合であっても、被検液が補強部材9に接触することを防ぐことができる。これにより、補強部材9が被検液により腐食されてしまうことを防ぐことができ、また、補強部材9において、被検液に耐蝕性を有する材質を選択する必要が無くなる。
【0044】
さらに、固定機構5のシール部材55、56が、収容凹部211、212の内側周面において接液部材8の補強部材9が設けられている側に密着しているので、内部空間Sの被検液が接液部材8から補強部材9側に漏れ出した場合であっても、外部への液リークを防ぐことができる。
【0045】
なお、本発明は前記実施形態に限られるものではない。
【0046】
例えば、前記実施形態では、スペーサがセル本体に一体形成されたものであったが、セル本体と別の部材としても良い。この場合、セル本体の1つの収容凹部を設け、当該収容凹部に第1透光部材、スペーサ及び第2透光部材をこの順で収容して、固定機構により収容凹部の底面に向かって押圧して固定しても良い。なお、収容凹部の底壁には、光を通過させるための貫通孔を形成する。
【0047】
また、前記実施形態では、一対の透光部材の両方が接液部材及び補強部材を有する構成としているが、何れか一方の透光部材が接液部材及び補強部材を有する構成としても良い。
【0048】
さらに、前記実施形態では、傾斜リングを用いることで、1つのOリングにより、収容凹部の内側周面に密着し、接液部材の外面に密着する構成としているが、複数のOリングを用いて、収容凹部の内側周面を密着するものと、接液部材の外面に密着するものと、それぞれ別々に設けても良い。
【0049】
その上、前記実施形態では、単一の傾斜リングにより、接液部材及び補強部材の両方を押圧する物であったが、傾斜リングが接液部材のみを押圧し、前記傾斜リングとは別の部材により補強部材を押圧する構成としても良い。
【0050】
前記実施形態は、平板状をなす一対の透光部材を用いて収容空間が形成されるものであったが、管形状をなす透光部材により収容空間を形成するものであっても良い。
【0051】
加えて、前記実施形態では、押圧部材である傾斜リングが接液部材をセル本体に押圧する構造であったが、図6に示す構造であっても良い。
つまり、補強部材9及びシール部材14がセル本体2の収容凹部211、212に固定されており、接液部材8が収容凹部211、212に対して移動自在に設けられたものであっても良い。そして、内部空間Sに試料が流れることによって、試料の圧力によって接液部材8の接液面8aが外側に押されることにより、接液部材8が補強部材9及びシール部材14側に移動する。そして、接液部材8の外面8bがシール部材14に押圧されることにより接液部材8の外面8bとシール部材14とが気密に密着する。なお、シール部材14は、収容凹部211、212の内側周面とも気密に密着している。
【0052】
また、前記実施形態の試料が液体であったが、ガスであっても良い。
【0053】
その他、本発明は前記実施形態に限られず、その趣旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能であるのは言うまでもない。
【符号の説明】
【0054】
100・・・薬液濃度測定装置(光学分析計)
10・・・光学測定セル
2・・・セル本体
21・・・収容部
M1、M2・・・光学窓
S・・・内部空間
3、4・・・透光部材
5・・・固定機構
53、54・・・押圧部材(傾斜リング)
55、56・・・シール部材
8・・・接液部材
8a・・・接液面
8b・・・接液面とは反対側の面
9・・・補強部材
図1
図2
図3
図4
図5