(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記パンチング工程は、前記第1のシートを、前記一方の面から前記他方の面に向かって、前記複数のパンチで打ち抜くと共に、前記吸収体を、前記吸収体の前記第1のシート側の面から前記第1のシートと反対側の面に向かって、前記複数のパンチで打ち抜くことにより、前記第1のシートと前記吸収体とに前記複数の孔部を形成する工程を含む、
請求項1乃至4のいずれか一項に記載の吸収性物品の製造方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1では、歯がシートの構成繊維をかき分けて孔部の側面(側壁)へ押し遣ることにより孔部が形成される。そのため、その後の製造工程において、シートに熱や圧力や張力などが加わると、押し遣られていた構成繊維が元の状態に戻ろうとして孔部を塞ぐおそれがある。また、特許文献2〜4では、シートの所定領域が幅方向に延伸して破裂することにより、孔部が形成される。そのため、この場合にも、シートに熱や圧力や張力などが加わると、幅方向に延伸していた構成繊維が元の状態に戻ろうして孔部を塞ぐおそれがある。これら孔部が塞がれる事態が生じると、孔部を介しては流体を下方へ移動させ難くなる。そのような孔部が塞がれたシートを表面シートに使用した吸収性物品では、孔部が塞がれていない表面シートを使用した吸収性物品と比較して、孔部を介した排泄物の吸収速度が低下してしまい、それにより吸収性能が低下するおそれがある。特に生理用ナプキンの場合、排泄物(経血)における粘度の高い成分が吸収され難いため、孔部に引き込まれて表面から除去されることが期待されるが、孔部が塞がれると、そのような成分が孔部に入ることが困難となり、表面に残存して、吸収されないおそれがある。
【0007】
そこで、本発明の目的は、嵩回復により表面シートの柔軟性やクッション性を向上させつつ、表面シートなどの孔部での繊維の侵入を起こさせずに吸収性能を維持することが可能な吸収性物品の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の吸収性物品の製造方法は次のとおりである。(1)不織布を含む表面シートと、裏面シートと、前記表面シートと前記裏面シートとの間に位置し、吸収性繊維を含む吸収体と、を備える吸収性物品の製造方法であって、前記表面シート用の第1のシートを熱処理して嵩回復させる嵩回復工程と、前記嵩回復された前記第1のシートにおいて、前記第1のシートの一方の面から、前記第1のシートの他方の面に向かって、パンチング加工用の複数のパンチで前記第1のシートを打ち抜くことにより、前記第1のシートに複数の孔部を形成するパンチング工程と、前記第1のシートと、前記吸収体と、前記裏面シート用のシートとが積層された積層体を形成する積層工程と、を備える、吸収性物品の製造方法。
【0009】
本吸収性物品の製造方法では、嵩回復された表面シート用の不織布の第1のシートを、パンチング加工用のパンチで打ち抜くことで、第1のシートに複数の孔部を形成する。その嵩回復により、第1のシートの柔軟性やクッション性を向上させることができる。それと共に、構成繊維が動き易い嵩回復工程をパンチング工程の前に行うので、嵩回復工程がパンチング工程の後に行われる場合に生じ得る、嵩回復過程で構成繊維が容易に動いて孔部を閉塞する、という事態を防止できる。更に、パンチング加工では孔部となる部分の構成繊維を打ち抜いて除去するため、その後の製造工程において第1のシートに圧力や張力などの変形が加わっても、孔部を塞ぎ得るような構成繊維がほとんどなく、それにより孔部の閉塞を抑制できる。そして、排泄物(経血)などにおける粘度の高い、吸収され難い成分を孔部に引き込んで表面から除去することが可能となる。更に、パンチング加工では、孔部の吸収体をパンチで打ち抜いて除去するとき、打ち抜かれた孔部の側面部分における繊維密度の増加を低く抑えることができる。その結果、孔部の側面部分での繊維密度を、その側面部分の外側の周囲部分での繊維密度と同程度にできる。それゆえ、孔部の側面部分に吸収された排泄液は、側面部分に留まることなく、その後に周囲部分に拡散することができる。それにより孔部を介して排泄物を効率よく伝達でき、かつ孔部以外の部分、特に周囲部分を介しても排泄物を効率よく伝達できる。よって嵩回復により表面シートの柔軟性やクッション性を向上させつつ、表面シートの孔部での繊維の侵入を起こさせずに吸収速度のような吸収性能を維持することが可能な吸収性物品の製造方法を提供できる。
【0010】
本発明の吸収性物品の製造方法は、(2)前記嵩回復工程後であって、前記パンチング工程前に、前記第1のシートを冷却する冷却工程を更に備える、上記(1)に記載の吸収性物品の製造方法、であってもよい。
嵩回復工程直後の第1のシートはふっくらとしていて、その構成繊維間の距離が拡がっている。そのため、第1のシートは断熱性があり、嵩回復により内部に蓄積された熱を放出するのに時間が掛かる。そのため、放熱が不十分な状態でパンチング工程を実行すると、第1のシートの構成繊維が動き易く、形成された孔部が変形してしまうおそれがある。そこで本吸収性物品の製造方法では、嵩回復工程後であって、パンチング工程前に冷却工程を更に備えているので、嵩回復した第1のシートの構成繊維を冷却により変形し難くできる。それによりパンチング工程で孔部を形成するときに、第1のシートの構成繊維の配置を維持しつつ、孔部を形成することができる。すなわち、孔部の形成の際に孔部の閉塞を抑制できる。
【0011】
本発明の吸収性物品の製造方法は、(3)前記第1のシートの前記一方の面が、前記表面シートにおける肌側の面に対応しており、前記パンチング工程は、前記第1のシートの前記一方の面が、前記第1のシートの製造時に繊維支持体に接していた面であるネット面になるように、前記第1のシートを供給する工程を含む、上記(1)又は(2)に記載の吸収性物品の製造方法、であってもよい。
表面シート用のシート(不織布)は、ネットのような繊維支持体に繊維を堆積させて製造される。そのシートは、製造時に繊維支持体(ネット)に接していた面、すなわちネット面と、そのネット面の反対側の反ネット面と、を有する。そのシートにおけるネット面側の部分では、反ネット面側の部分と比較して、構成繊維の繊維密度が高く、概ね均一で凹凸が少ない。そのため、嵩回復工程において、ネット面側の部分では、厚みがより増加して、柔軟性がより高まり易く、凹凸の少ない面を得ることができる。一方、シートにおける反ネット面側の部分では、ネット面側の部分と比較して、構成繊維の繊維密度が低く、構成繊維の移動が容易である。そのため、嵩回復工程において、反ネット面側の部分では、表面が毛羽立ち易く、構成繊維が排泄口付近に接触することによる違和感を着用者に生じさせ易い。
そこで、本吸収性物品の製造方法では、表面シートの肌側の面に対応する第1のシートの一方の面をネット面として、ネット面側の部分からパンチング加工用のパンチを貫通させる。それにより柔軟性の高いネット面側の部分が肌に接するので、より良好な触感を着用者に与えることができる。それと共にパンチング工程ではネット面側の部分からパンチを打ち込むため、ネット面側の部分における孔部の開口の周辺に凸部を生じさせないようにでき、凸部が排泄口付近に接触することによる違和感を着用者に生じさせないようにできる。
【0012】
本発明の吸収性物品の製造方法は、(4)前記表面シートは肌側の上層シートと非肌側の下層シートとを含み、前記嵩回復工程は、前記上層シート用の第2のシートを熱処理して嵩回復させる工程と、前記嵩回復された前記第2のシートの一方の面と、前記下層シート用の第3のシートの一方の面とを接合して、嵩回復した前記第1のシートを形成する工程と、を含み、前記第2のシートの前記一方の面は、前記第2のシートの製造時に繊維支持体に接していなかった面である反ネット面であり、前記第3のシートの前記一方の面は、前記第3のシートの製造時に繊維支持体に接していなかった面である反ネット面であり、前記第2のシートの前記一方の面とは反対側の他方の面が、前記第1のシートの前記一方の面に対応している、上記(3)に記載の吸収性物品の製造方法、であってもよい。
シートにおける反ネット面側の部分では、ネット面側の部分と比較して、構成繊維の繊維密度が低く、構成繊維の移動が容易であり、毛羽立ち易い。
そこで、本吸収性物品の製造方法では、表面シートを上層シートと下層シートとの二層構造とし、製造時には、嵩回復した後の第2シート(上層シート)の反ネット面と第3シート(下層シート)の反ネット面とを対向させて接合する。それにより、第2のシートと第3のシートとが接合された第1のシートにおいて、反ネット面が外側に向かず、すなわち表面の毛羽立った構成繊維が外側に出ないので、その後の工程等で構成繊維がほぐれて孔部に入ることを抑制できる。
【0013】
本発明の吸収性物品の製造方法は、(5)前記嵩回復工程後であって、前記パンチング工程前に、前記第1のシートに、前記吸収体を接合する吸収体接合工程を更に備え、前記パンチング工程は、前記第1のシートと前記吸収体との接合体を、前記厚さ方向に前記複数のパンチで打ち抜くことにより、前記接合体に前記複数の孔部を形成する孔部形成工程を含む、上記(1)乃至(4)のいずれか一項に記載の吸収性物品の製造方法、であってもよい。
吸収体に形成された孔部は、表面シート上の排泄物(経血における粘度の高い、吸収され難い成分を含む)吸収体の内部へ誘導する流路であり、吸収体の表面積の増加にも寄与する。したがって、吸収体の孔部は、排泄物を吸収体の内部へ移行させ易くでき、吸収性物品の吸収速度を向上させることができる。
ただし、孔部の形成方法によっては、孔部の側面部分の構成繊維の密度が相対的に高くなってしまい、孔部の側面部分に吸収された排泄液が、側面部分に留まり、その周囲部分に拡散し難くなるおそれがある。その結果、孔部を介して排泄物を吸収体の内部へ効率よく拡散できないおそれがある。
そこで、本吸収性物品の製造方法では、上記構成を有することにより、第1のシートに加えて、吸収体にも、パンチング加工用のパンチで複数の孔部を形成する。パンチング加工では、孔部の吸収体をパンチで打ち抜いて除去することができるので、孔部の閉塞を抑制できる。また、吸収体が打ち抜かれた孔部の側面部分における繊維密度の増加を低く抑えることができる。それにより、吸収体の孔部の側面部分での繊維密度を、その側面から離れた吸収体の周囲部分での繊維密度と同程度にできる。その結果、吸収体の孔部の側面部分に吸収された排泄液は、その側面部分に留まることなく、吸収体の周囲部分に拡散することができる。それにより、吸収体の孔部を介して排泄物を効率よく拡散・吸収でき、かつ、吸収体の孔部の周囲部分を介しても排泄物を効率よく拡散・吸収できる。また、パンチング加工で形成された吸収体の孔部は貫通孔であり、圧搾されて形成される高密度な底部が存在せず、また上述のように孔部の側面部分での繊維密度は周囲部分と同等で、高くない。よって、着用者に違和感を生じさせないようにでき、良好な触感を付与できる。
【0014】
本発明の吸収性物品の製造方法は、(6)前記吸収体接合工程は、前記第1のシートの前記他方の面に、前記吸収体を接合する工程を含み、前記孔部形成工程は、前記第1のシートを、前記一方の面から前記他方の面に向かって、前記複数のパンチで打ち抜くと共に、前記吸収体を、前記吸収体の前記第1のシート側の面から前記第1のシートと反対側の面に向かって、前記複数のパンチで打ち抜くことにより、前記第1のシートと前記吸収体とに前記複数の孔部を形成する工程を含む、上記(5)に記載の吸収性物品の製造方法、であってもよい。
本吸収性物品の製造方法において、パンチング工程(孔部形成工程)では、接合体における第1のシートから吸収体へ向かってパンチを打ち込むため、第1のシートにおける孔部の開口の周辺に、外側に向かってはみ出た凸部を生じさせないようにできる。それにより凸部が排泄口付近に接触することによる違和感を着用者に生じさせないようにできる。
【0015】
本発明の吸収性物品の製造方法は、(7)前記吸収体は、吸収性コアと、少なくとも前記第1のシート側の前記吸収性コアを覆うコアラップと、を含み、前記孔部形成工程は、前記吸収性コア及び前記コアラップを貫通するように前記複数の孔部を形成する工程、を含む、上記(5)又は(6)に記載の吸収性物品の製造方法、であってもよい。
本吸収性物品の製造方法では、孔部形成工程において、孔部が表面シート及びコアラップを貫通し、吸収性コアへ延びている。そのため、孔部形成工程により、表面シートにおける孔部の縁部の構成繊維と、コアラップにおける孔部の縁部の構成繊維と、吸収性コアにおける孔部の縁部の構成繊維とが、厚さ方向において互いに絡み合う。その結果、表面シートと吸収体との一体化を促進でき、すなわち表面シートの孔部と吸収体の孔部との一体化を促進できる。このとき、エンボス工程のような圧搾で吸収体が潰れて表面シートと吸収体とが一体化するのとは異なり、構成繊維同士が絡むことで表面シートと吸収体とが一体化されるので、吸収性物品に剛性の高い部分が形成されない。それにより、吸収性物品の形状の維持に寄与しつつ、柔軟性を確保できる。
【0016】
本発明の吸収性物品の製造方法は、(8)前記吸収体接合工程後に、前記第1のシートの前記一方の面に、所定の機能を有する添加剤を塗布する添加剤塗布工程を更に備える、上記(5)乃至(7)のいずれか一項に記載の吸収性物品の製造方法、であってもよい。
本吸収性物品の製造方法では、第1のシートに添加剤が塗布されており、すなわち第1のシートの構成繊維同士のつながりが添加剤で補強されている。そのため、添加剤塗布工程後において、第1のシートにおける孔部の開口部分の構成繊維がほつれることを抑制でき、孔部内へ構成繊維が侵入することを抑制できる。
【0017】
本発明の吸収性物品の製造方法は、(9)前記添加剤は、スキンケア機能を有する添加剤であり、前記孔部形成工程は、前記添加剤塗布工程の後に実行される、上記(8)に記載の吸収性物品の製造方法、であってもよい。
スキンケア機能を有する添加剤は、表面シートに存在してその機能を発揮する。本吸収性物品の製造方法では、スキンケア機能を有する添加剤を、嵩回復工程の後、孔部形成工程の前に第1のシートに塗布する。孔部形成工程の前に添加剤を塗布することで、孔部に落ち込んで機能を発揮できなくなる添加剤が生じるのを防止して、その添加剤を第1のシート(表面シート)に残すことができ、その機能を効果的に発揮させることができる。そのとき、嵩回復工程後における構成繊維の密度が相対的に低い第1のシートに添加剤を塗布しているので、その添加剤を第1のシート内に程よく拡散させることができる。それにより、嵩回復工程前における構成繊維の密度が相対的に高いシートに添加剤を塗布したために添加剤がそのシート内に入りきらず表面に高濃度に残る、という事態を防止できる。
【0018】
本発明の吸収性物品の製造方法は、(10)前記添加剤は、血液改質機能を有する添加剤であり、前記孔部形成工程は、前記添加剤塗布工程の前に実行される、上記(8)に記載の吸収性物品の製造方法、であってもよい。
血液改質機能を有する添加剤は、表面シートだけでなく孔部に存在してもその機能を発揮する。そこで、本吸収性物品の製造方法では、血液改質機能を有する添加剤を、嵩回復工程の後、且つ、孔部形成工程の後に第1のシートに塗布する。それにより、第1のシート及び吸収体の孔部内に確実に添加剤を塗布することができる。また、孔部の厚さ方向の深さが相対的に深くなり、孔部の側面(側壁)の表面積が相対的に大きい段階で添加剤を塗布するので、より多くの添加剤を孔部に塗布することができ、血液改質機能を有する添加剤にその機能を効果的に発揮させることができる。すなわち、嵩回復工程前における孔部の厚さ方向の深さが相対的に浅く、孔部の側面の表面積が相対的に小さい段階で添加剤を塗布した後、嵩回復工程で孔部の厚さ方向の深さが深くなる場合と比較して、孔部での添加剤を多くすることができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、嵩回復により表面シートの柔軟性やクッション性を向上させつつ、表面シートなどの孔部での繊維の侵入を起こさせずに吸収性能を維持することが可能な吸収性物品の製造方法を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本実施の形態に係る吸収性物品について生理用ナプキンを例に説明する。この場合、吸収性物品の吸収対象の排泄物は経血である。吸収性物品の種類及び用途は特に限定されるものではなく、本発明の範囲を逸脱しない限り、他の吸収性物品でもよい。その吸収性物品として、例えばパンティライナー、軽失禁パッド、使い捨ておむつが挙げられる。
【0022】
図1〜
図3は本実施の形態に係る吸収性物品1(生理用ナプキン)の構成例を示す図である。
図1は展開した状態の吸収性物品1の平面図を示し、
図2は
図1のII−II線に沿う断面図を示し、
図3は
図2の一部を拡大した部分断面図を示す。吸収性物品1は、互いに直交する長手方向L、幅方向W及び厚さ方向Tを有し、平面視にて、長手方向Lに延びる本体部2と、本体部2における長手方向Lの略中央部から幅方向Wの両外側に延出する一対のフラップ部3、3とを備える。吸収性物品1は、幅方向Wの中心を通り長手方向Lに延びる長手方向中心線CLと、一対のフラップ部3、3の長手方向Lの中心を通り幅方向Wに延びる幅方向中心線CWとを有する。吸収性物品1の長手方向L、幅方向W及び厚さ方向Tと、吸収性物品1の各資材の長手方向、幅方向及び厚さ方向とは一致するので、吸収性物品1及びその各資材に対して共通に長手方向L、幅方向W及び厚さ方向Tを用いる。長手方向Lの一方及び他方をそれぞれ前方及び後方とし、幅方向Wの一方及び他方をそれぞれ左方及び右方とし、厚さ方向Tの一方及び他方をそれぞれ上方及び下方とする。
図1に描かれた吸収性物品1においては、向かって上方及び下方がそれぞれ長手方向Lの前方及び後方であり、向かって左方及び右方がそれぞれ幅方向Wの左方及び右方であり、向かって手前及び奥が厚さ方向Tの上方及び下方である。「平面視」とは展開した状態の吸収性物品1を上面側から厚さ方向Tに見ることをいう。「肌側」及び「非肌側」とは、装着者が吸収性物品1を装着したとき、厚さ方向Tにて相対的に装着者の肌面に近い側及び遠い側をそれぞれ意味する。「面内方向」とは幅方向W及び長手方向Lを含む面と平行な方向である。長手方向中心線CLに向かう方向及び遠ざかる方向をそれぞれ幅方向Wの内側及び外側の方向とする。幅方向中心線CWに向かう方向及び遠ざかる方向をそれぞれ長手方向Lの内側及び外側の方向とする。これら定義も吸収性物品1の各資材に共通に用いる。後述される凸部に関して「中実」という場合、凸部内での液体の移動を妨げるような中空領域(繊維密度が周囲と比較して著しく低い空間)を有さないことをいう。
【0023】
本体部2は、平面視にて、長手方向Lに延びる角丸長方形又はレーストラック形の形状を有し、本体部2の長手方向Lの両端縁部の外縁は、略半円形又はお椀形の形状を有する。一対のフラップ部3、3の各々は、下底が長手方向Lに沿って延びる台形又は弦が長手方向Lに沿って延びる半円形若しくは半楕円形の形状を有し、下底又は弦が本体部2の幅方向Wの両側縁に接している。なお、本体部2、フラップ部3の形状は任意である。
【0024】
吸収性物品1は、表面シート8と、裏面シート14と、表面シート8の非肌側で裏面シート14の肌側、すなわち表面シート8と裏面シート14との間に位置する吸収体12と、を備える。表面シート8は、着用者の肌側に位置する液透過性シートである。表面シート8としては、例えば液透過性の不織布や織布、液透過孔を有する合成樹脂フィルム、これらの複合シート等、任意の液透過性シートが挙げられ、特に熱処理で嵩回復したシートが用いられる。本実施の形態では、吸収性物品1は、表面シート8の幅方向Wの両端部に接合された、幅方向Wの両外側に延出する一対のサイドシート13、13を更に備えている。一対のサイドシート13、13は、排泄物の幅方向Wへの漏洩を抑制する撥水性シートである。各サイドシートとしては、撥水処理を施した不織布や通気性を有する合成樹脂フィルムが挙げられる。表面シート8は、厚さ方向Tに二層でもよい。表面シート8の坪量は、例えば5g/m
2〜100g/m
2であり、好ましくは20g/m
2〜50g/m
2である。また、裏面シート14は、着用者の非肌側に位置する液不透過性のシートである。裏面シート14としては、例えば液不透過性の不織布や合成樹脂フィルム、不織布と合成樹脂フィルムとの複合シート、SMS不織布等、任意の液不透過性シートが挙げられる。なお、裏面シート14の非肌面側に通気性の外装シートが接着剤等で更に接合されてもよい。吸収体12は、本体部2より一回り小さい角丸長方形、レーストラック形又は砂時計形の形状を有し、液吸収性能及び液保持性能を有する層であり、本実施の形態では、吸収性コア12bと吸収性コア12bの少なくとも肌面側を覆うコアラップ12aとを含む。吸収性コア12bは、液保持性物質及び吸収性ポリマーを含む。液保持性物質としては、例えばパルプなどの吸収(水)性繊維が挙げられる。吸収性ポリマーとしては、水を吸収し保持できる、粒子状又は繊維状の高吸収性ポリマー(SAP)が挙げられる。コアラップ12aとしては、液透過性を有するシートであり、例えばティッシュなどの親水性の不織布が挙げられる。吸収性ポリマーは、ホットメルト接着剤等(図示されず)でコアラップ12aに固定されることが好ましいが、固定されずにコアラップ12aで覆われてもよい。吸収体12の厚みは、例えば0.2〜15mmであり、好ましくは1〜10mmが挙げられる。吸収体12の坪量は、例えば20〜1000m/m
3であり、好ましくは50〜800g/m
3が挙げられる。吸収性ポリマーの坪量は、吸収体12全体としては例えば50〜500g/m
2であり、好ましくは100〜400g/m
2が挙げられる。
【0025】
本体部2では、表面シート8の非肌側の面と吸収体12の肌側の面とは接着剤(例示:ホットメルト接着剤)等で接合され、吸収体12の非肌側の面と裏面シート14の肌側の面とは接着剤等で接合される。また、表面シート8の非肌側の面の周縁部と、裏面シート14の肌側の面とは接着剤等で接合される。表面シート8の肌側の面の幅方向Wの両端部と、一対のサイドシート13、13の各々の非肌側の面における幅方向Wの内側の端部とは接着剤等で接合される。一対のフラップ部3、3では、一対のサイドシート13、13の各々の非肌側の面と裏面シート14の肌側の面における幅方向Wの外側の端部とは接着剤等で接合される。
【0026】
吸収性物品1は、本体部2及び一対のフラップ部3、3の非肌の面にそれぞれ配置された粘着部15及び一対の粘着部17、17を更に備える。吸収性物品1が着用者の下着に装着されるとき、粘着部15は本体部2の非肌側の面を下着の肌側の面に貼り付け、一対の粘着部17、17は下着の下方へ折り返された一対のフラップ部3、3の肌側の面(折り返し前の非肌側の面)をそれぞれ下着の非肌側の面に貼り付ける。それにより、吸収性物品1は下着に固定される。各粘着剤は、公知の材料を用いることができる。
【0027】
本実施の形態では、表面シート8は、二枚のシートが厚さ方向Tに積層された構成を有する。
図4は表面シート8の構成例を示す図である。
図4(a)は表面シート8の部分平面図であり、
図4(b)は
図4(a)のIVb−IVb’断面図である。表面シート8は、肌側の上層シート8aと、非肌側の下層シート8bと、を備える。上層シート8aは、所謂表面シートであり、厚さ方向Tの上方の面である第1の上面8aEと、下向きの面である第1の下面8aFとを有し、面内方向に拡がるシートである。上層シート8aは、第1の上面8aEに、長手方向Lに沿って連続的に延設された複数の凸部21と、互いに隣接する凸部21の間に長手方向Lに沿って連続的に延設された基部23と、を含む。凸部21は、第1の上面8aEの基部23から厚さ方向Tの上方に突出した突出部であり、柔らかく膨らんだ部分である。下層シート8bは、所謂セカンドシートであり、厚さ方向Tの上向きの面である第2の上面8bEと、下向きの面である第2の下面8bFとを有し、面内方向に拡がるシートである。下層シート8bは凸部21において厚さ方向Tの上向きにやや盛り上がっていてもよい。すなわち上層シート8aと下層シート8bとの境界は凸部21においてやや凸であってもよい。上層シート8aと下層シート8bとは、第1の下面8aFと第2の上面8bEとにおいて接合部24で接合される。
【0028】
接合部24は、上層シート8aの第1の下面8aFと下層シート8bの第2の上面8bEとを接合し、本実施の形態ではホットメルト接着剤に例示される接着剤であり、図に明示していないが厚さ方向Tの上方及び下方に拡散している。接合部24は、上層シート8aの複数の凸部21の各々に対応する領域と厚さ方向Tに重なる。厚さ方向Tの上方から見ると、すなわち平面視で、各凸部21の領域の少なくとも一部に、接合部24の少なくとも一部が含まれる。接合部24のパターンは、本実施の形態では、長手方向Lに沿って延び、幅方向Wに互いに平行に並んだ複数の線状のパターン(ストライプパターン)である。ただし、接合部24のパターンとしては、凸部21に対応する領域と厚さ方向Tに重なれば特に制限は無く、オメガパターン、ウェブパターン、スパイラルパターンでもよい。上記各パターンであれば、表面シート8の全域のうち、少しの領域において凸部21の領域に接合部24が含まれていない領域が存在してもよい。
【0029】
このように、凸部21の第1の下面12Fと下層シート8bの第2の上面13Eとを接合部24により接合するので、凸部21と下層シート8bとの間での隙間の形成を抑制でき、凸部21内を中実な形状にできる。それにより、凸部21が柔らかく膨らんだ状態を維持できるようにし、表面シート8の肌側の面に弾力性を持たせることができ、表面シート8に対して着用者の感じる柔らかさや肌触りを向上できる。すなわち、表面シート8の柔軟性やクッション性を向上させることができる。また、凸部21全体を液体の移動経路にでき、表面シート8の液透過性を向上できる。このようにして表面シート8では柔らかさや肌触りと液透過性とを両立させている。
【0030】
本実施の形態では、表面シート8は圧搾部22を更に備える。圧搾部22は、各基部23において長手方向Lに沿って間欠的に配置される。圧搾部22は、基部23にて長手方向Lに等間隔又は非等間隔に、幅方向Wに隣り合う基部23にて長手方向Lに互いに同じ位置又は異なる位置に、配置される。本実施の形態では、基部23に関して市松模様状に配置される。圧搾部22の平面視の形状は楕円状など任意である。圧搾部22は、厚さ方向Tにおいて上層シート8aの上方と下層シート8bの下方とから圧搾して形成され、上層シート8aと下層シート8bとを接合する。圧搾部22は形成されなくてもよい。
【0031】
本実施の形態では、上層シート8aはネットのような繊維支持体に繊維を堆積させて製造されており、その製造時にネット(繊維支持体)に接していた面をネット面と称し、そのネット面の反対側の面を反ネット面と称する。上層シート8aの第1の上面8aE及び第1の下面8aFは、それぞれ上層シート8aの製造時のネット面及び反ネット面である。更に、下層シート8bの第2の上面8bE及び第2の下面8bFは、それぞれ下層シート8bの製造時の反ネット面及びネット面である。したがって、本実施の形態では、上層シート8aの反ネット面と下層シート8bの反ネット面とが接合されている。
【0032】
上層シート8aにおける凸部21及び基部23の坪量は概ね同じである。凸部21の繊維密度は基部23の繊維密度よりも低い。基部23の繊維密度は圧搾部22の繊維密度よりも低い。凸部21の繊維密度が低いので着用者は柔らかさを感じられる。上層シート8aの坪量と下層シート8bの坪量とはどちらが高くてもよく、同じでもよい。
【0033】
上層シート8aは、液透過性であって、所定の熱処理で嵩が回復する嵩回復性のシートを用いる。嵩回復性のシートとしては不織布、例えばエアスルー不織布、エアレイド不織布、ニードルパンチ不織布、スパンレース不織布等の液透過性の不織布が挙げられる。上層シート8aの構成繊維として、例えばポリエステル系やポリオレフィン系の繊維、又はそれらの複合繊維が挙げられる。本実施の形態では、ポリエチレンテレフタレート(PET)/ポリエチレン(PE)の芯/鞘構造の複合繊維を用いる。一方、下層シート8bは、液透過性であれば、嵩回復性のシートを用いてもよく、用いなくてもよい。本実施の形態では、柔らかさの観点から、上層シート8aと同じ嵩回復性の不織布であるPET/PEの芯/鞘構造の繊維を用いる。ただし上層シート8aと異なるシートを用いてもよい。
【0034】
図1〜
図3に示すように、吸収性物品1では、平面視で、本体部2における表面シート8と吸収体12とが厚さ方向Tに重なる領域において、長手方向Lの中央やや前方寄りで幅方向Wの中央の領域に、排泄口当接域20が設定される。ここで、排泄口当接域とは、吸収性物品の着用時に、着用者の排泄口に対向する或いは当接する領域である。排泄口当接域20は、吸収性物品1の種類や用途(例示:排泄物の種類、着用者の年齢や性別)に応じて適宜設定される。排泄口当接域20は、例えば、長手方向Lにおいて吸収体12の略中央部又は前方寄りに、吸収体12全長の約1/3程度の長さで、且つ、幅方向Wにおいて吸収体12の略中央部に、吸収体12全長の約1/3程度の長さ、で設定される。本実施の形態では、長手方向Lにて、排泄口当接域20の両端部及び中央部の位置と一対のフラップ部3、3の両端部(付け根)及び中央部の位置がほぼ重なるように形成される。
【0035】
吸収性物品1は、平面視で、本体部2における表面シート8と吸収体12とが厚さ方向Tに重なる領域において、長手方向Lの中央やや前方寄りで幅方向Wの中央の領域に、孔部存在領域25を有している。孔部存在領域25には、厚さ方向Tにおいて、表面シート8を貫通し、好ましくは吸収体12の内部に延びる複数の孔部10が形成されている。すなわち孔部10は、表面シート8とコアラップ12aの肌側の面とを貫通し、吸収性コア12bの内部に延びている。孔部10は、好ましくは吸収性コア12bの厚さの半分の位置よりも深い位置に達しており、より好ましくは吸収性コア12bを貫通している。平面視で、吸収性物品1の孔部存在領域25の外側の領域は、孔部非存在領域である。複数の孔部10は、着用者の排泄物を表面シート8の表面から吸収体12の内部へ移送するための流路である。すなわち、複数の孔部10内には排泄物の移動の抵抗となる部材が実質的に存在しない。したがって、表面シート8上の排泄物を吸収体12の内部へ、複数の孔部10を介して素早く移送できる。また、吸収体12における排泄物を吸収する面の表面積が増加している。それらにより、表面シート8だけを介して吸収体12の内部へ排泄物を拡散・吸収させる場合と比較して、吸収体12による排泄物の吸収速度を高めることができる。特に、孔部10が吸収性コア12bの厚さの半分の位置よりも深い位置に達する場合や、吸収性コア12bを貫通する場合には、表面シート8上の排泄物を吸収体12のより深部又は下層へ、複数の孔部10を介してより速く移送することができる。それにより、吸収体12による排泄物の吸収速度をより高めることができる。孔部10の数は、平面視で、孔部存在領域25において、例えば0.5〜5個/cm
2であり、好ましくは1〜3個/cm
2である。孔部10の数が少な過ぎると上記効果が奏されず、多過ぎるとリウェットのおそれがある。また、孔部10同士の間隔(中心間距離)は、大よそ2〜20mmであり、好ましくは5〜15mmである。また、孔部10の開口径は、平面視で、例えば0.3〜6mmであり、好ましくは0.6〜3mmである。孔部10の開口径が小さ過ぎると上記効果が奏されず、大き過ぎると吸収性物品1の剛性が低くなり撚れ易くなる。
【0036】
複数の孔部10は、後述されるように、柱状、例えば円柱状のパンチで、表面シート8の資材、好ましくは表面シート8及び吸収体12の資材を打ち抜く手法、すなわちパンチングの手法により形成される。このようにパンチングの手法で孔部10を形成する場合、表面シートやコアラップが引き伸ばされて孔部の内側に深く入り込んだ孔部を形成する圧搾等の手法とは異なり、表面シート8やコアラップ12aが孔部10の内側にほとんど入り込まず、したがって孔部10の側面を覆うことが無い。そのため、孔部10の側面領域70での吸収体12は、表面シート8やコアラップ12aによる圧縮をあまり受けない。それゆえ、孔部10の側面領域70での吸収体12の繊維密度を、側面領域70と隣接する周囲領域71での吸収体12の繊維密度と同じにすることができる。ただし、側面領域70とは、孔部10の側面(側壁)10WALを、外側から面内方向の所定の厚さで囲む領域である。周囲領域71とは、側面領域70の側面(側壁)を、外側から面内方向の所定の厚さで囲む領域である。ここで、所定の厚さは、例えば孔部10の開口径の大きさ、又は、孔部10近傍での吸収性コア12bの厚さである。また、繊維密度が同じとは、一方の繊維密度と他方の繊維密度との相違が±10%の範囲以内のことである。孔部10の側面領域70での吸収体12の繊維密度が、周囲領域71での吸収体12の繊維密度よりも高いと、側面領域70に吸収された排泄物が側面領域70の外側の周囲領域71を含む領域に拡散することが困難となるおそれがある。本吸収性物品1のように側面領域70での吸収体12の繊維密度を周囲領域71での吸収体12の繊維密度と同じにすることで、側面領域70に吸収された排泄物を外側の周囲領域71を含む領域に容易に拡散させることができ、吸収性物品1の吸収速度をより確実に向上させることができる。また、パンチングの手法で形成された孔部10の内側では、吸収体12、すなわち吸収性コア12bやコアラップ12aの断面が露出し、吸収体12はそこから排泄物を容易に吸収できる。
【0037】
吸収性物品1は、孔部存在領域25における幅方向W及び/又は長手方向Lの両外側に連続的又は間欠的に位置する圧搾溝18を備える。本実施の形態では、圧搾溝18は、孔部存在領域25の前方に位置し、幅方向Wに延びる圧搾溝18aと、孔部存在領域25の幅方向Wの両外側に位置する前方側の圧搾溝18b、18b及び後方側の18c、18cと、孔部存在領域25の後方に位置し、幅方向Wに延びる圧搾溝18dとを含む。本実施の形態では、更に、吸収性物品1は、圧搾溝18aの前方及び圧搾溝18dの後方に、それぞれ圧搾溝19及び圧搾溝19を含む。各圧搾溝は、吸収体12の肌側のコアラップ12aと吸収性コア12bと、又は、表面シート8と吸収体12の肌側のコアラップ12aと吸収性コア12bと、が圧搾されて形成される。本実施の形態では、各圧搾溝は、表面シート8とコアラップ12aと吸収性コア12bとが圧搾されて形成されている。
【0038】
次に、吸収性物品1の製造方法について説明する。
図5は吸収性物品1の製造装置300の構成例を示す模式図である。製造装置300は、第1の形成ユニット300Aと、第2の形成ユニット300Bと、第3の形成ユニット300Cと、第4の形成ユニット300Dと、第5の形成ユニットと、を備える。製造装置300を用いた吸収性物品の製造方法は、第1の形成ユニット300Aが実行する第1の形成工程と、第2の形成ユニット300Bが実行する第2の形成工程と、第3の形成ユニット300Cが実行する第3の形成工程と、第4の形成ユニット300Dが実行する第4の形成工程と、第5の形成ユニット300Eが実行する第5の形成工程と、を備える。また、
図6〜
図10は吸収性物品1の製造方法を模式的に説明する図である。なお、製造装置300は、シートなどの各資材(部材)や各半製品(後述)の搬送に関し、搬送方向MD、搬送方向MDに直交し搬送面に沿う横断方向CD、及び搬送方向MDと横断方向CDとに直交する上下方向TDを有する。本実施の形態では、各資材や各半製品の長手方向、幅方向及び厚さ方向はいずれも搬送方向MD、横断方向CD及び上下方向TDと同じである。したがって各資材や各半製品においても、長手方向、幅方向及び厚さ方向についてそれぞれ搬送方向MD、横断方向CD及び上下方向TDを用いる。
【0039】
第1の形成工程(嵩回復シート供給工程)では、第1の形成ユニット300Aの積繊装置110の回転ドラム111が回転されて、材料供給器113から供給された積繊材料(吸収性ポリマーを含む)が、回転ドラム111の外周面に並んで設置された複数のパターンプレート112における、負圧室111Nに連通した溝(図示されず)の内部に堆積される。それにより、各パターンプレート112の溝の内部に、吸収体12の吸収性コア12bが形成される。次に、各パターンプレート112が吸収性コア12bと共に正圧室111Pに到達すると、吸収性コア12bがパターンプレート112から離脱される。一方、連続シート状の上層ティッシュシートUTがロールWR1から搬送ベルト115に供給される。上層ティッシュシートUTの一方の面には塗布装置301によりホットメルト接着剤が塗布されている。そして、吸収性コア12bは、搬送ベルト115上の上層ティッシュシートUTの一方の面の上に押し付けられる。それにより上層ティッシュシートUT上に吸収性コア12bが接合された半製品P1が形成される。半製品P1はサクション装置116で吸引され搬送ベルト115で搬送方向MDに搬送される。次に、連続シート状の下層ティッシュシートLTがロールWR2から搬送ベルト115に供給される。下層ティッシュシートLTの一方の面には塗布装置302によりホットメルト接着剤が塗布されている。下層ティッシュシートLTの一方の面が搬送ベルト115上の半製品P1に押し付けられる。それにより、上層ティッシュシートUTと下層ティッシュシートLTとの間に吸収性コア12bが狭持された半製品P2が形成される。次に、半製品P2は押圧装置120で押圧され、切断装置130で吸収体12の形状に切断される。それにより、吸収体12である半製品P3が形成される。上層ティッシュシートUT及び下層ティッシュシートLTは、切断によりコアラップ12aとなる。半製品P3は搬送ロール141へ受け渡される。
【0040】
次に、第2の形成工程では、第2の形成ユニット300Bの嵩回復装置250により嵩回復された連続シート状の嵩回復表面シートP10(第1のシート)が搬送ロール260へ受け渡される。嵩回復表面シートP10の一方の面には基部と凸部が形成されている。嵩回復装置250の嵩回復工程については後述される。連続シート状のサイドシートSSa、SSbがロールWR3a、WR3bから搬送ロール261に供給される。サイドシートSSa、SSbの一方の面には塗布装置303a、303bによりホットメルト接着剤が塗布される。搬送ロール261から供給されるサイドシートSSa、SSbは、嵩回復表面シートP10における一方の面の横断方向CDの両端部に搬送ロール260上で押し付けられる。それにより、嵩回復表面シートP10の横断方向の両側にサイドシートSSa、SSbが接合された連続表面シートP11が形成される。連続表面シートP11は搬送ベルト140へ受け渡される。このとき、連続表面シートP11の嵩回復表面シートP10の一方の面、すなわち基部と凸部を有する面が搬送ベルト140に接するように配置される。の連続表面シートP11の他方の面には塗布装置304によりホットメルト接着剤が塗布される。なお、嵩回復表面シートP10の一方の面はネット面である(後述)。吸収性物品1の肌側のシートがサイドシート13、13を用いず表面シート8のみで構成されている場合、本工程において、連続表面シートP11は、嵩回復表面シートP10のみで形成される。
【0041】
次に、第3の形成工程(吸収体接合工程)では、
図5、
図6に示すように、第3の形成ユニット300Cにおいて連続表面シートP11が搬送方向MDに搬送されつつ、連続表面シートP11の他方の面に、搬送ロール141から供給される個々の半製品P3(吸収体12)が所定の間隔で載置され、押し付けられる。それにより、
図7に示すように、連続表面シートP11と半製品P3とが接合された、半製品P4(接合体)が形成される。
【0042】
次に、第4の形成工程(パンチング工程、孔部形成工程)では、
図5、
図8に示すように、第4の形成ユニット300Dにおいて、パンチング加工用の複数のパンチ160bPを外周面に有するパンチングロール160bと、複数のパンチ160bPに対応する位置に複数の穴160aHを有するアンビルロール160aとが対面配置されたパンチング装置160に、の半製品P4が供給される。このとき、半製品P4中の連続表面シートP11における嵩回復表面シートP10(表面シート8に対応)がパンチングロール160bに対面し、半製品P4中の半製品P3(吸収体12に対応)がアンビルロール160aに対面するように、半製品P4がパンチング装置160に挿入される。そして、半製品P4の一方の面(連続表面シートP11側の面)から、半製品P4の他方の面(半製品P3の側の面)に向かって、複数のパンチ160bPが半製品P4に打ち込まれる。孔部10の位置の半製品P4は、パンチ160bPが半製品P4を押圧する初期的な段階から切断され始め、パンチ160bPが半製品P4を通過するとほぼ同時に打ち抜かれる。したがって、圧搾の場合と比較して、孔部10の側面領域が圧縮される時間は短く、圧縮の程度も小さい。打ち抜かれた部分は、複数の穴160aHへ除去される。それにより、
図9に示すように、複数の孔部10が形成された半製品P4である半製品P5が形成される。本実施の形態では、円筒状で先端に歯を有するパンチ160bPが用いられる。
【0043】
ここで、孔部を圧搾の手法で形成した場合、孔部の側面領域が圧縮されるため、孔部の側面領域での吸収体の繊維密度は、周囲領域での吸収体の繊維密度よりも高くなる。特に、嵩回復されたシートは、柔軟性が高く圧搾の影響を受け易いため、側面領域での繊維密度は、周囲領域での繊維密度よりもより高くなる。その場合、孔部から側面領域に吸収された排泄物が、側面領域の外側の周囲領域を含む領域に拡散することが困難となるおそれがある。そうなると、孔部及びその側面領域は排泄物を吸収できるが、側面領域の外側の周囲領域を含む領域は排泄物を吸収することが困難となる。その結果、吸収体の吸収速度や吸収容量が低下するおそれがある。一方、本吸収性物品1では、パンチングの手法で孔部10を形成することにより、孔部10の側面領域70での吸収体12の繊維密度と周囲領域71での吸収体12の繊維密度とを同じにすることができる。それにより側面領域70に吸収された排泄物を、周囲領域71を含む外側の領域に容易に拡散させることができる。その結果、吸収性物品1の吸収速度や吸収容量をより確実に向上できる。また、パンチング加工で形成された吸収体12の孔部10は貫通孔であり、圧搾されて形成される高密度な底部が存在せず、また上述のように孔部10の側面領域70での繊維密度は周囲領域71と同等で、高くない。したがって、着用者が孔部10の周辺の部分の固さを感じ難い。そのため、着用者に違和感を生じさせないようにでき、良好な触感を付与できる。
【0044】
その後、半製品P5が搬送方向MDに搬送されつつ、圧搾装置170のアンビルロールとエンボスロールとに挟まれることにより圧搾される(エンボス加工)。それにより、圧搾溝18、19が形成された半製品P5である半製品P6が形成される。半製品P6は搬送ロール180に受け渡される。
【0045】
次に、第5の形成工程では、第5の形成ユニット300Eにおいて、裏面シート用の連続シート状の裏面シートBSがロールWR5から搬送ロール181に供給される。裏面シートBSの一方の面には塗布装置305によりホットメルト接着剤が塗布される。その後、搬送ロール181から供給される裏面シートBSは、半製品P6の一方の面に搬送ロール180上で押し付けられる。それにより、
図10に示すように、裏面シートBSを接合された半製品P6である半製品P7が形成される。その後、半製品P7に粘着剤付きの剥離シートCTが接合され(粘着部15、17)、周囲部分を切断され、吸収性物品1の形状に分離されて、吸収性物品1が形成される。吸収性物品1は包装工程へ搬送される。ただし、公知の方法で行われる包装工程については記載を省略する。なお、第3〜5の形成工程は、表面シート、吸収体、裏面シートを積層する積層工程ということができる。
【0046】
以上のようにして、吸収性物品1が製造される。
【0047】
吸収性物品の製造方法では、嵩回復により、嵩回復表面シートP10の柔軟性やクッション性を向上させることができる。それと共に、構成繊維が動き易い嵩回復工程をパンチング工程の前に行うので、嵩回復工程がパンチング工程の後に行われる場合に生じ得る、嵩回復過程で構成繊維が容易に動いて孔部10を閉塞する、という事態を防止できる。更に、パンチング加工では孔部10となる部分の構成繊維を打ち抜いて除去するため、その後の製造工程において嵩回復表面シートP10に圧力や張力などの変形が加わっても、孔部10を塞ぎ得るような構成繊維がほとんどなく、それにより孔部10の閉塞を抑制できる。そして、排泄物(経血)における粘度の高い、吸収され難い成分を孔部に引き込んで表面から除去することが可能となる。更に、パンチング加工では、孔部10の吸収体をパンチで打ち抜いて除去するとき、打ち抜かれた孔部10の側面領域70における繊維密度の増加を低く抑えることができる。その結果、孔部10の側面領域70での繊維密度を、その周囲領域71での繊維密度と同程度にできる。それゆえ、孔部10の側面領域70に吸収された排泄液は、側面領域70に留まることなく、その後に周囲領域71に拡散できる。それにより、孔部10を介して排泄物を効率よく伝達でき、かつ、孔部10以外の部分、特に周囲部分を介しても排泄物を効率よく伝達できる。よって、嵩回復により表面シート8の柔軟性やクッション性を向上させつつ、表面シート8の孔部10での構成繊維の侵入を起こさせずに吸収速度のような吸収性能を維持することが可能となる。
【0048】
本実施の形態の好ましい態様では、表面シート用のシート(不織布)は、ネットのような繊維支持体に繊維を堆積させて製造される。そのシートは、製造時に繊維支持体(ネット)に接していた面、すなわちネット面と、そのネット面の反対側の反ネット面と、を有する。そのシートにおけるネット面側の部分では、反ネット面側の部分と比較して、構成繊維の繊維密度が高く、概ね均一で凹凸が少ない。そのため、嵩回復工程において、ネット面側の部分では、厚みがより増加して、柔軟性がより高まり易く、凹凸の少ない面を得ることができる。一方、シートにおける反ネット面側の部分では、ネット面側の部分と比較して、構成繊維の繊維密度が低く、構成繊維の移動が容易である。そのため嵩回復工程において、反ネット面側の部分では、表面が毛羽立ち易く、構成繊維が排泄口付近に接触することによる違和感を着用者に生じさせ易い。そこで、本実施の形態の好ましい吸収性物品の製造方法では、第4の形成工程(パンチング工程)において、表面シート8の肌側の面に対応する連続表面シートP11における嵩回復表面シートP10の一方の面をネット面として、ネット面側からパンチング加工用のパンチ160bPを貫通させる。それにより柔軟性の高いネット面側の部分が肌に接するので、より良好な触感を着用者に与えることができる。それと共に、パンチング工程ではネット面側からパンチ160bPを打ち込むため、ネット面側の部分に孔部10の開口の周辺に凸部を生じさせないようにでき、凸部が排泄口付近に接触することによる違和感を着用者に生じさせないようにできる。
【0049】
本実施の形態の好ましい態様では、第4の形成工程(孔部形成工程)において、孔部10が嵩回復表面シートP10(表面シート8)及び半製品P3(吸収体12)のコアラップ12aを貫通し、吸収性コア12bへ延びている。そのため表面シート8における孔部10の縁部の構成繊維と、コアラップ12aにおける孔部10の縁部の構成繊維と、吸収性コア12bにおける孔部10の縁部の構成繊維とが、上下方向TD(厚さ方向T)において互いに絡み合う。その結果、表面シート8と吸収体12との一体化を促進でき、すなわち表面シート8の孔部10と吸収体12の孔部10との一体化を促進できる。このとき、エンボス工程のような圧搾で吸収体が潰れて表面シートと吸収体とが一体化するのとは異なり、構成繊維同士が絡むことで一体化されるので、吸収性物品1に剛性の高い部分が形成されない。よって吸収性物品1の形状の維持に寄与しつつ、柔軟性を確保できる。
【0050】
次に、第2の形成工程の嵩回復装置250により実行される嵩回復シート供給工程の一例について説明する。
図11は嵩回復装置250の構成例を示す模式図である。嵩回復装置250は、第1の熱処理装置251と、第1のロール252、第2のロール253及び接合ロール256を有する賦形装置257と、第2の熱処理装置254と、接着剤塗布装置255と、冷却装置258とを備える。嵩回復シート供給工程は、第1の熱処理装置251を用いた第1の熱処理工程と、第1のロール252及び第2のロール253を用いた賦形工程と、第2の熱処理装置254を用いた第2の熱処理工程と、接着剤塗布装置255、第1のロール252及び接合ロール256を用いた接合工程と、冷却装置258を用いた冷却工程とを備える。
図12〜
図15は第2の形成工程(嵩回復シート供給工程)を模式的に説明する図である。
【0051】
第1の熱処理工程では、第1の資材ロールWR4aから巻き戻された上層用シート(第2のシート)P12aが、搬送方向MDに搬送されつつ、第1の熱処理装置251により熱処理されて嵩回復する。上層用シートP12aの材料は嵩回復可能なシートであり、上層シート8aの材料と同じであり、本実施の形態では、PET/HDPEの芯/鞘構造の繊維が用いられる。このとき、
図12(a)に示すように、上層用シートP12aの一方の面220aはネット面であり、他方の面220bは反ネット面である。第1の熱処理装置251内では、上層用シートP12aの一方の面220a及び他方の面220bが熱風又は加熱雰囲気に曝される。それにより、
図12(b)に示すように、上層用シートP12aが嵩回復して、上層用シートP12bが形成される。上層用シートP12bは上層用シートP12aと比較して、坪量は概ね一定だが、厚さが厚くなり、構成繊維の密度が全体的に低下している。このときの熱処理の温度は、上層用シートP12aの材料を嵩回復させる観点から、上層用シートP12aを構成する材料のうちの最も低い融点の材料の当該融点よりも低く、(当該融点−50度)の温度よりも高い処理温度である。本実施の形態では、上層用シートP12aの材料としてPET/HDPEの芯/鞘構造の繊維を用いており、HDPEの融点を140℃として、処理温度を例えば130℃とする。
【0052】
賦形工程では、第1のロール252の歯部252a及び溝部252bと第2のロール253の歯部253a及び溝部253bとの噛み合い領域B1に、上層用シートP12bが供給される。このとき、
図13に示すように、第1のロール252に接する上層用シートP12bの一方の面220aに複数の凸部221が形成され、隣接する凸部221の間に基部223が形成され、第2のロール253に接する上層用シートP12bの他方の面220bに複数の凹部222が形成される。その結果、上層用シートP12cが形成される。一方の面220a及び他方の面220bは上層シート8aの第1の上面8aE及び第1の下面8aFに対応し、凸部221及び基部223は凸部21及び基部23に対応する。
【0053】
このとき、上層用シートP12bでは、第1のロール252の歯部252a間の部分が、第2のロール253の歯部253aにより、他方の面220b側から一方の面220a側へ向かって、すなわち第1のロール252の溝部252bの底部252sに向かって押し出される。このとき、第2のロール253の歯部253aの頂部253tに対応する上層用シートP12bの部分は底部252sに接触しない(底当たりしない)。更に、上層用シートP12bでは、第2のロール253の歯部253a間の部分が、第1のロール252の歯部252aの頂部252tにより、一方の面220a側から他方の面220b側へ向かって、すなわち第2のロール253の底部253sに向かって押し付けられて圧縮される。その圧縮により、基部223の形状が固定される。これらにより、上層用シートP12bの一方の面220aに凸な形状、すなわち凸部221を形成でき、隣り合う凸部221間に基部223を形成でき、かつ、上層用シートP12bの他方の面220bに凹な形状、すなわち凹部222を形成できる。なお、第1のロール252では少なくとも外周面が例えば金属(例示:ステンレス)製であり、第2のロール253では少なくとも外周面が例えば誘電体(例示:合成樹脂)製である。
【0054】
そのとき、上層用シートP12bでは、上層用シートP12bの凸部21が、第1のロール252の底部252sには押し付けられておらず、圧縮されていない。したがって、構成繊維同士の熱溶着や塑性変形が起こらないため、上層用シートP12bの凸部221及び凹部222は、実質的に上下方向TDに固定されない。その結果、第2のロール253の歯部253aが取り除かれると、構成繊維の反発力(又は弾性力)により、上層用シートP12bの凹部222は歯部253aにより噛まれる前の状態に戻り得る状態にある。すなわち、第2のロール253に接する上層用シートP12cの他方の面220bの複数の凹部222は元の凹んでいない状態に回復可能な状態で一時的に形成される。
【0055】
その後、上層用シートP12cの一方の面220aが第1のロール252と接した状態を維持しつつ、上層用シートP12cの他方の面220bを第2のロール253から引き離す。
図14示すように、上層用シートP12cの一方の面220aが第1のロール252と接し続けて、第1のロール252に接する上層用シートP12cの一方の面220aに複数の凸部221が安定的に維持される。一方、上層用シートP12cの他方の面220bが第2のロール253から引き離され、第2のロール253に接する上層用シートP12cの他方の面220bの複数の凹部222は元の凹んでいない状態に回復してゆく。
【0056】
第2の熱処理工程では、第2の資材ロールWR4bから巻き戻された下層用シート(第3のシート)P13aが、搬送方向MDに搬送されつつ、第2の熱処理装置254により熱処理されて嵩回復する。下層用シートP13aの材料は嵩回復可能なシートであり、下層シート8bの材料と同じであり、本実施の形態では、PET/HDPEの芯/鞘構造の繊維が用いられる。下層用シートP13aの一方の面230aは反ネット面であり、他方の面230bはネット面である。第2の熱処理装置254内では、下層用シートP13aの一方の面230a及び他方の面230bが熱風又は加熱雰囲気に曝されて、下層用シートP13aが嵩回復して、下層用シートP13bが形成される。下層用シートP13bは下層用シートP13aと比較して、坪量は概ね一定だが、厚さが厚くなり、構成繊維の密度が全体的に低下する。この熱処理の温度は、第1の熱処理工程と同様である。なお一方の面230a及び他方の面230bは表面シートの第2の上面8bE及び第2の下面8bFに対応する。ただし、下層用シートP13aについては嵩回復を実行しなくてもよい。
【0057】
次いで、接合工程の接着剤塗布工程では、熱処理された下層用シートP13bが、接着剤塗布装置255に供給される。そして、下層用シートP13bは、一方の面230aに接着剤(例示:ホットメルト接着剤)を所定のパターンで塗布される。それにより、接着剤を塗布された下層用シートP13b、すなわち下層用シートP13cが形成される。本実施の形態では、所定のパターンは、
図4に示されるような搬送方向に沿って延び、横断方向に所定間隔で並んだ、所定幅のストライプパターンである。所定のパターンは、後工程で、上層用シートP12cの他方の面220bと下層用シートP13cの一方の面230aとが接合されたとき、上層用シートP12cの複数の凸部221の各々に対応する領域と接着剤とが上下方向TDに重なるように設定される。ただし、接着剤、すなわち接合部224の幅や間隔は、凸部221の幅や間隔と同じでも良いし、異なってもよい。
【0058】
次いで、接合工程の接合本工程では、第1のロール252の歯部252a及び溝部252bと接合ロール256の基部256q及びピン256pとの対面領域B2に上層用シートP12c及び下層用シートP13cが供給される。そのとき上層用シートP12cの一方の面220aが第1のロール252と接した状態が維持され、複数の凸部221が維持される。一方、上層用シートP12cの他方の面220bが第2のロール253から離され、複数の凹部222の形状が緩和する(凹みが小さくなる)。そして
図15に示すように、接合ロール256の基部256q及びピン256p並びに第1のロール252の歯部252aにより、上層用シートP12cと下層用シートP13cとが挟持され、上層用シートP12cの他方の面220bと、下層用シートP13cの一方の面230aとが密接され接合部224(接着剤)で接合される。上層用シートP12cと下層用シートP13cとの積層体である嵩回復表面シートP10が形成される。嵩回復表面シートP10は実質的に表面シート8である。このとき上層用シートP12cの一方の面220aと下層用シートP13cの他方の面220bとの距離を、基部223からの凸部221の上下方向TDの高さの5%以内、好ましくは1%以内とすることができ、したがって凸部221を中実の形状とすることができる。よって凸部221全体での液体の透過性を高められる。
【0059】
本実施の形態では好ましい態様として、上層用シートP12cと下層用シートP13cとを接合するとき、両シートの反ネット面同士を接合する。そのため、反ネット面は繊維密度が低く、毛羽立ち易いため、反ネット面同士を対向させることで、互いの毛羽立った構成繊維が接触して、両者の間に中空領域が形成されることをより確実に抑制できる。すなわち、より確実に凸部221内に中実構造を形成することができる。また、上層用シートP12cと下層用シートP13cとが接合された嵩回復表面シートP10において、反ネット面が外側に向かず、すなわち表面の毛羽立った構成繊維が外側に出難いので、その後の工程等で構成繊維がほぐれて孔部10に入ることを抑制できる。
【0060】
本実施の形態では好ましい態様として、更に接合ロール256のピン256pと第1のロール252の歯部252aとにより、上層用シートP12c及び下層用シートP13cが狭持され、圧縮(圧搾)されて、圧搾された箇所に圧搾部227が形成される。すなわち、上層用シートP12cの基部23において、搬送方向MDに沿って間欠的に、上下方向TDの圧縮が行われるので、上層用シートP12cと下層用シートP13cとが間欠的に接合され、かつ接合部224(接着剤)の接合も強化される。
【0061】
冷却工程では、嵩回復表面シートP10が、搬送方向MDに搬送されつつ、冷却装置258により冷却される。冷却装置258内では、嵩回復表面シートP10の一方の面及び他方の面が冷風又は冷却雰囲気に曝される。それにより、に、嵩回復表面シートP10の構成繊維の状態が固定され、その状態、例えば構成繊維の坪量や密度が概ね一定に維持される。嵩回復工程直後(第1の熱処理工程及び接合工程の直後を含む)の嵩回復表面シートP10はふっくらとしていて、その構成繊維間の距離が拡がっている。そのため、嵩回復表面シートP10は断熱性があり、嵩回復により内部に蓄積された熱を放出するのに時間が掛かる。そのため、放熱が不十分な状態でその後に上記第4の形成工程(パンチング工程)を実行すると、嵩回復表面シートP10の構成繊維が動き易く、形成された孔部10が変形してしまうおそれがある。そこで嵩回復工程後であって、パンチング工程前に冷却工程を実行することで、嵩回復した嵩回復表面シートP10の構成繊維を冷却により変形し難くできる。それによりパンチング工程で孔部10を形成するときに、嵩回復表面シートP10の構成繊維の配置を維持しつつ、孔部10を形成することができる。すなわち、孔部10の形成の際に孔部10の閉塞を抑制できる。
【0062】
なお、嵩回復工程については上記の好ましい一例に限定されるものではなく、例えば特開2004−137655に開示されているような公知の嵩回復方法を使用してもよい。
【0063】
以上説明されたように、本吸収性物品の製造方法では、賦形工程において、上層用シートP12bの一方の面220aに凸部221を形成し、他方の面(裏面)220bに凹部222を形成する。その後、接合工程において、第1のロール252で凸部221の形状を維持しつつ、第2のロール253から離れた凹部222の形状が、上層用シートP12cの構成繊維の反発力(又は弾性力)により緩和されて、凹部222がより小さい(浅く狭い)窪みになり、その窪みと下層用シートP13cとが接合部224で接合される。このように、その窪み(凹部222が回復して形成されたもの)、すなわち上層用シートP12cの他方の面220bにおける凸部221に対応する領域と下層用シートP13cとを接合することで、上層用シートP12cと下層用シートP13cとの間に生じ得る隙間、すなわち凸部221内の中空領域の形成を抑制でき、凸部221を中実に形成できる。加えて、上層用シートP12cの他方の面220bにおける凸部221に対応する領域と下層用シートP13cとが形状で接するだけでなく、接合部24で接合するので、その後の工程で上層用シートP12cが下層用シートP13cから部分的に離間して中空領域が後発的に形成されないようにできる。すなわち嵩回復表面シートP10の凸部21内に中空領域の形成を抑制でき、よって凸部21を中実にすることができる。それにより、中実な凸部21による柔らかさや肌触りと、液透過性の向上とを両立させることができる。
【0064】
本実施の形態では好ましい形態として、第3の形成工程(吸収体接合工程)の後に、連続表面シートP11(第1のシート)の肌側の面(一方の面)に、所定の機能を有する添加剤を塗布する添加剤塗布工程を更に備えていてもよい。連続表面シートP11に添加剤を塗布することにより、連続表面シートP11の構成繊維同士のつながりを添加剤で補強することができる。そのため、添加剤塗布工程後において、パンチング工程の孔部形成工程の後に、連続表面シートP11や半製品P3(吸収体)における孔部の開口部分の構成繊維がほつれることを抑制でき、孔部内へ構成繊維が侵入することを抑制できる。
【0065】
例えば、添加剤がスキンケア機能を有する添加剤M1である場合、パンチング工程の孔部形成工程は、添加剤塗布工程の後に実行されることが好ましい。吸収性物品1では、スキンケア機能を有する添加剤M1は、表面シート8(連続表面シートP11)に存在してその機能を発揮する。したがって、スキンケア機能を有する添加剤M1を、嵩回復工程の後、パンチング工程の孔部形成工程の前に連続表面シートP11に塗布する。それにより、添加剤M1の塗布後、孔部形成工程が行われたとき、
図13(a)に示すように、添加剤M1が孔部10に落ち込んで機能を発揮できなくなることが防止され、その添加剤M1を連続表面シートP11(表面シート8)に残すことができ、その機能を効果的に発揮させることができる。そのとき、嵩回復工程後における構成繊維の密度が相対的に低い連続表面シートP11の嵩回復表面シートP10に添加剤M1を塗布しているので、その添加剤M1を嵩回復表面シートP10内に程よく拡散させることができる。それにより、嵩回復工程前における構成繊維の密度が相対的に高いシートに添加剤を塗布したために添加剤がそのシート内に入りきらず表面に高濃度に残る、という事態を防止できる。添加剤M1としては保湿剤やローション等の各種スキンケア剤が挙げられる。
【0066】
あるいは、例えば添加剤が血液改質機能を有する添加剤M2であり、パンチング工程の孔部形成工程は、添加剤塗布工程の前に実行されることが好ましい。吸収性物品1では、血液改質機能を有する添加剤M2は、表面シート8(連続表面シートP11)だけでなく、表面シート8(連続表面シートP11)及び吸収体12(半製品P3)の孔部10内に存在してもその機能を発揮する。したがって血液改質機能を有する添加剤M2を、嵩回復工程の後、且つ、パンチング工程の孔部形成工程の後に連続表面シートP11に塗布する。それにより
図13(b)に示すように、連続表面シートP11及び半製品P3の孔部10内に確実に添加剤M2を塗布することができる。また、孔部10の厚さ方向Tの深さが相対的に深くなり、孔部10の側面(側壁)の表面積が相対的に大きい段階で添加剤M2を塗布するので、より多くの添加剤M2を孔部10に塗布することができ、その機能を効果的に発揮させることができる。すなわち、嵩回復工程前における孔部の厚さ方向の深さが相対的に浅く、孔部の側面の表面積が相対的に小さい段階で添加剤を塗布した後、嵩回復工程で孔部の厚さ方向の深さが深くなる場合と比較して、孔部10での添加剤M2を多くすることができる。添加剤M2としては特開2013−063245号公報、特開2013−179982等に記載の血液改質剤が挙げられる。
【0067】
上記各実施の形態で記載された坪量などは以下の方法で測定された。
<シートの坪量>
各シート(吸収層を含む)の坪量は以下の方法で測定した。(1)シートから5cm×5cmの大きさの部分を切り出して試料とする。(2)試料について、100℃以上の空気雰囲気で乾燥処理を行う。(3)試料の質量を測定する。(4)質量の測定値を試料の面積で割り算して試料の坪量を算出する。(5)10個の試料の坪量を平均した値をシートの坪量とする。
<シートの厚さ>
各シート(吸収層を含む)の厚さは以下の方法で測定した。(1)シートから5cm×5cmの大きさの部分を切り出して試料とする。(2)試料について、100℃以上の空気雰囲気で乾燥処理を行う。(3)15cm
2の測定子を備えた厚さ計((株)大栄化学精器製作所製 型式FS−60DS)を用い、3g/cm
2の測定荷重の条件でシートの厚さを測定する。(4)1個の試料で3か所の厚さを測定し、3か所の厚さの平均値をシートの厚さとする。なおシートの厚さはX線透視画像による3D画像から求めてもよい。<シートの繊維密度>
各シート(吸収層を含む)の繊維密度は以下の方法で測定した。(1)上記方法でシートの坪量及びシートの厚みを求める。(2)シートの秤量を、シートの厚みで割り算してシートの繊維密度を算出する。
【0068】
本発明の吸収性物品は、上述した各実施形態に制限されることなく、本発明の目的、趣旨を逸脱しない範囲内において、適宜組合せや変更等が可能である。
嵩回復により表面シートの柔軟性やクッション性を向上させつつ、表面シートの孔部での繊維の侵入を起こさせずに吸収性能を維持することが可能な吸収性物品の製造方法を提供する。吸収性物品の製造方法は、表面シート用の第1のシートを熱処理して嵩回復させる嵩回復工程と、嵩回復された第1のシート(P10)において、第1のシートの一方の面から、第1のシートの他方の面に向かって、パンチング加工用の複数のパンチで第1のシートを打ち抜くことにより、第1のシートに複数の孔部を形成するパンチング工程と、前記第1のシートと吸収体(P1)と裏面シート用のシート(BS)とが積層された積層体を形成する積層工程と、を備える。